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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】キナーゼ阻害剤の新規用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/551 20060101AFI20241018BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
   C07D 487/14 20060101ALN20241018BHJP
   C07D 519/00 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
A61K31/551
A61P35/00
A61P13/08
A61P43/00 111
C07D487/14
C07D519/00 301
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531407
(86)(22)【出願日】2022-11-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 CN2022134614
(87)【国際公開番号】W WO2023093878
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】202111426502.7
(32)【優先日】2021-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522116524
【氏名又は名称】薬捷安康(南京)科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TRANSTHERA SCIENCES (NANJING), INC.
【住所又は居所原語表記】Floor 3, Building 9, Accelerator Phase 2, Biotech and Pharmaceutical Valley, Jiangbei New Area, Nanjing, Jiangsu 210032, China
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】彭鵬
(72)【発明者】
【氏名】孫彩霞
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB11
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
キナーゼ阻害剤の新規用途。前立腺癌を治療及び/又は予防する薬物の製造における、一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形の用途であり、上記一般式の中の各変数は、明細書で定義された通りである。研究により、一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形は、前立腺癌に対して治療作用を有し、さらに、去勢抵抗性前立腺癌及び去勢感受性前立腺癌、並びに転移性去勢抵抗性前立腺癌に対して顕著な治療作用を有することが示されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺癌を治療及び/又は予防する薬物の製造における、一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形の用途であって、
そのうち、Arは、任意選択的に1~3個のR6で置換されるフェニル基であり、各R6は水素、アミノ基、シアノ基、ハロゲン、C1-4アルキル基及びトリフルオロメチル基から独立的に選ばれ、
YはCR3であり、
PはCR4であり、
WはNであり、
R3は水素又はC1-4アルキル基であり、
R4は、-(CH2n-(5~11)員複素環基であり、そのうち、n=0~6、前記複素環基中の環構成S原子は任意選択的にS(O)又はS(O)2に酸化され、環構成C原子は任意選択的にC(O)に酸化され、前記複素環基は任意選択的にC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から独立的に選ばれる1つから複数の置換基で置換される、
用途。
【請求項2】
請求項1に記載の用途であって、
そのうち、Arは、任意選択的に1~3個のR6で置換されるフェニル基であり、各R6は水素及びハロゲンから独立的に選ばれ、
YはCR3であり、
PはCR4であり、
WはNであり、
R3は水素であり、
R4は、-(CH2n-(5~6)員単複素環基及び-(CH2n-(7~11)員縮合複素環基から選ばれ、そのうち、n=0~6、前記複素環基中の環構成S原子は任意選択的にS(O)又はS(O)2に酸化され、環構成C原子は任意選択的にC(O)に酸化され、前記複素環基は任意選択的にC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から独立的に選ばれる1つから複数の置換基で置換される、
用途。
【請求項3】
請求項2に記載の用途であって、
そのうち、
R4
であり、n=0~3、そのうち、複素環基は任意選択的にC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から独立的に選ばれる1つから複数の置換基で置換される、
用途。
【請求項4】
前記化合物は以下の構造の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形から選ばれる、請求項3に記載の用途:

【請求項5】
前記化合物は
又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形である、請求項4に記載の用途。
【請求項6】
前立腺癌を治療及び/又は予防する薬物の製造における、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形を含む組成物又は組合せ製品の用途。
【請求項7】
前記前立腺癌は、初期又は進行性前立腺癌である、請求項1~6のいずれか1項に記載の用途。
【請求項8】
前記前立腺癌は、転移性又は非転移性前立腺癌である、請求項1~6のいずれか1項に記載の用途。
【請求項9】
前記前立腺癌は、去勢感受性前立腺癌又は去勢抵抗性前立腺癌である、請求項1~6のいずれか1項に記載の用途。
【請求項10】
前記前立腺癌は、非転移性去勢抵抗性前立腺癌又は転移性去勢抵抗性前立腺癌である、請求項1~6のいずれか1項に記載の用途。
【請求項11】
前記前立腺癌は、標準治療に失敗したか、又は標準治療を受けていない前立腺癌である、請求項1~6のいずれか1項に記載の用途。
【請求項12】
転移性去勢抵抗性前立腺癌を治療及び/又は予防する薬物の製造における、化合物
又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬技術分野に属し、具体的には、キナーゼ阻害剤の新規用途に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌(prostate cancer, PCa)は、男性において最も一般的な悪性腫瘍の1つであり、世界中で、PCaの発生率は、男性腫瘍では2位、米国男性悪性腫瘍では1位を占め、病死率は肺癌だけに次ぐことになる。
【0003】
前立腺癌の病期分類及び危険度によって、治療レジメンも異なる。初期の低リスク前立腺癌患者に対しては、能動的監視が主である。初期前立腺癌には明らかな症状がないこと又は検出手段の制約などの理由により、前立腺癌の大部分は確定診断時に進行期にあり、その半数以上がすでに遠隔転移を起こしており、遠隔転移者の5年相対生存率はわずか30%である。進行性、転移性前立腺癌患者に対しては、薬物的去勢又は外科的去勢が主な治療手段であり、即ちアンドロゲン除去療法(Androgen Deprivation therapy, ADT)である。正常前立腺細胞及び前立腺癌細胞の増殖は、いずれもアンドロゲンに依存するため、外科的去勢又は薬物的去勢によって患者の体内のアンドロゲン濃度を最大限に低減することができ、それにより、アンドロゲンシグナル経路を阻害し、最終的に腫瘍細胞の増殖を阻害する。現在、ADTに用いられる治療薬は、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニスト(GnRHアゴニスト)、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト(GnRHアンタゴニスト)、アンドロゲン分泌阻害剤などを含む。患者の大部分は、治療開始時にADT療法に感受性があり、去勢感受性前立腺癌(castration sensitive prostate cancer, CSPC)であるが、遺伝又は薬物誘導などの理由により、2年後には、ほぼ全ての患者は去勢抵抗性前立腺癌(castration resistant prostate cancer, CRPC)に進行し、薬剤耐性になる。CRPCに進行すると、患者の生存期間中央値はわずか9~12ヶ月である。
【0004】
CRPCは、主に、遠隔転移を有する転移性去勢抵抗性前立腺癌(metastatic castration resistant prostate cancer, mCRPC)と、遠隔転移を有しない非転移性去勢抵抗性前立腺癌(non metastatic castration resistant prostate cancer, nmCRPC)との2つの独立した段階に分けられる。nmCRPC患者は、新規内分泌療法(アンドロゲン受容体阻害剤など)で治療が失敗した後、遠隔転移又は疾患進行が起こるとmCRPC段階に移行するため、mCRPCはPCa患者の最終段階と見なすことができる。現在、mCRPCに用いられる主な療法は、化学療法(ドセタキセル)、新規内分泌療法(アビラテロン酢酸エステル(Abiraterone acetate)、エンザルタミドなど)、免疫療法(Sipuleucel-T)、及び骨転移の放射線治療(ラジウム-223)を含む。ドセタキセル(Docetaxel)は、最も早くFDAにより承認されたmCRPCを治療する化学療法薬であり、効果的に患者の全生存期間(overall survival, OS)を約19.2ヶ月延長できるが、当該薬物は悪心、嘔吐、神経疾患、貧血などの一連の副作用を引き起こす。17α-ヒドロキシラーゼ/C17,20-リアーゼ(CPY17酵素)はアンドロゲン合成の過程で重要な役割を果たし、アビラテロン酢酸エステルは体内でアビラテロンに転換されるプロドラッグであり、アビラテロンはCYP17酵素を阻害できるアンドロゲン生合成阻害剤である。当該薬物は、CRPC患者への使用が2011年にFDAによってすでに承認された。エンザルタミド(Enzalutamide)は、第2世代のAR(アンドロゲン受容体)アンタゴニストであり、ARはエンザルタミドとの結合後に正常に細胞核内に輸送されないか、又は共活性化因子を動員することができなく、AR転写活性が低下する。エンザルタミドは、第1世代のARアンタゴニストであるビカルタミド(Bicalutamide)よりもARに対する親和性がより高い。アビラテロン酢酸エステル、エンザルタミドなどが承認されたことはmCRPCの治療に重要な意義があるが、一定期間の治療を経た後、多数の患者は最終的に薬剤耐性を生じる。
【0005】
治療薬の薬剤耐性や安全性の問題により、前立腺癌の治療は依然として臨床上の難題であり、効果的な治療法の探索が非常に急務である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一般式(I)の化合物はキナーゼ阻害剤であり、研究により、一般式(I)の化合物は前立腺癌に対して治療作用を有し、さらに、去勢抵抗性前立腺癌及び去勢感受性前立腺癌、並びに転移性去勢抵抗性前立腺癌に対して顕著な治療作用を有することが判明される。
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の形態を提供する。
【0008】
本発明は、前立腺癌を治療及び/又は予防する薬物の製造における、一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形の用途を提供し、
【0009】
【化1】
【0010】
そのうち、Arは、任意選択的に1~3個のR6で置換されるフェニル基であり、各R6は水素、アミノ基、シアノ 基、ハロゲン、C1-4アルキル基及びトリフルオロメチル基から独立的に選ばれ、
YはCR3であり、
PはCR4であり、
WはNであり、
R3は水素又はC1-4アルキル基であり、
R4は、-(CH2n-(5~11)員複素環基であり、そのうち、n=0~6、上記複素環基中の環構成S原子は任意選択的にS(O)又はS(O)2に酸化され、環構成C原子は任意選択的にC(O)に酸化され、上記複素環基は任意選択的にC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から独立的に選ばれる1つから複数の置換基で置換される。
【0011】
いくつかの実施形態において、Arは、任意選択的に1~3個のR6で置換されるフェニル基であり、各R6は水素及びハロゲンから独立的に選ばれ、
YはCR3であり、
PはCR4であり、
WはNであり、
R3は水素であり、
R4は、-(CH2n-(5~6)員単複素環基及び-(CH2n-(7~11)員縮合複素環基から選ばれ、そのうち、n=0~6、上記複素環基中の環構成S原子は任意選択的にS(O)又はS(O)2に酸化され、環構成C原子は任意選択的にC(O)に酸化され、上記複素環基は任意選択的にC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から独立的に選ばれる1つから複数の置換基で置換される。
【0012】
さらなる実施形態において、上記(5~6)員単複素環基は(5~6)員飽和単複素環基であり、上記(7~11)員縮合複素環基は(7~11)員飽和縮合複素環基である。1つの好ましい実施形態において、上記(7~11)員飽和縮合複素環基は(7~11)員飽和結合複素環基、(7~11)員飽和スピロ複素環基又は(7~11)員飽和架橋複素環基である。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記R4は、
【0014】
【化2】
【0015】
であり、n=0~3、そのうち、上記複素環基は任意選択的にC1-3アルキル及びC3-6シクロアルキル基から独立的に選ばれる1つから複数の置換基で置換され、
好ましい実施形態において、上記R4は、好ましくは、
【0016】
【化3】
【0017】
であり、n=0~3、そのうち、上記複素環基は任意選択的にC1-3アルキル及びC3-6シクロアルキル基から独立的に選ばれる1つから複数の置換基で置換される。
【0018】
1つの実施形態において、一般式(I)の化合物は表1に示される化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形である。
【0019】
【表1-1】
【0020】
【表1-2】
【0021】
【表1-3】
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、一般式(I)の化合物以外の化合物、例えば、以下の表に示される具体的な化合物を含んでもよい。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
いくつかの実施形態において、上記化合物は、
【0027】
【化4】
【0028】
又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形である。
【0029】
本発明は、治療有効量の一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形、及び1つ又は複数の薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む、薬物組成物又は医薬組合せ製品をさらに提供する。任意選択的に、上記薬物組成物又は医薬組合せ製品は、1つ又は複数の他の活性剤をさらに含む。そのうち、一般式(I)の化合物は上記で定義された通りである。
【0030】
本発明は、前立腺癌を治療する方法であって、治療有効量の一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形、若しくは本発明に記載の薬物組成物又は医薬組合せ製品を、それを必要とする前立腺癌患者に投与することを含む、方法をさらに提供し、そのうち、一般式(I)の化合物は上記で定義された通りである。
【0031】
本発明は、一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形、若しくは本発明に記載の薬物組成物又は医薬組合せ製品の、前立腺癌の予防及び/又は治療における用途をさらに提供し、そのうち、一般式(I)の化合物は上記で定義された通りである。
【0032】
本発明は、一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形、若しくは本発明に記載の薬物組成物又は医薬組合せ製品の、前立腺癌を予防及び/又は治療するための薬物の製造における用途をさらに提供し、そのうち、一般式(I)の化合物は上記で定義された通りである。
【0033】
本発明は、前立腺癌を予防及び/又は治療するための、一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形、若しくは本発明に記載の薬物組成物又は医薬組合せ製品をさらに提供し、そのうち、一般式(I)の化合物は上記で定義された通りである。
【0034】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、転移性前立腺癌である。
【0035】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、非転移性前立腺癌である。
【0036】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、初期前立腺癌である。
【0037】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、進行性前立腺癌である。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、標準治療を受けていないものである。
【0039】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、標準治療に失敗したものである。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、化学療法に失敗したものである。
【0041】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、内分泌療法に失敗したものである。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、アンドロゲン除去療法に失敗したものである。
【0043】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、アンドロゲン合成阻害剤及び/又はアンドロゲン受容体阻害剤による治療に失敗したものである。
【0044】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、アビラテロンによる治療に失敗したものである。
【0045】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド及び/又はビカルタミドによる治療に失敗したものである。
【0046】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、初期及び/又は非転移性前立腺癌である。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記初期及び/又は非転移性前立腺癌は、標準治療を受けていないものである。
【0048】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、進行性及び/又は転移性前立腺癌である。
【0049】
いくつかの実施形態において、上記進行性及び/又は転移性前立腺癌は、標準治療を受けていないものである。
【0050】
いくつかの実施形態において、上記進行性及び/又は転移性前立腺癌は、標準治療に失敗したものである。
【0051】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、去勢感受性前立腺癌である。
【0052】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、去勢抵抗性前立腺癌である。
【0053】
いくつかの実施形態において、上記去勢感受性前立腺癌又は去勢抵抗性前立腺癌は、標準治療を受けていないものである。
【0054】
いくつかの実施形態において、上記去勢感受性前立腺癌又は去勢抵抗性前立腺癌は、標準治療に失敗したものである。
【0055】
いくつかの実施形態において、上記去勢感受性前立腺癌又は去勢抵抗性前立腺癌は、化学療法に失敗したものである。
【0056】
いくつかの実施形態において、上記去勢感受性前立腺癌又は去勢抵抗性前立腺癌は、内分泌療法に失敗したものである。
【0057】
いくつかの実施形態において、上記去勢感受性前立腺癌又は去勢抵抗性前立腺癌は、アンドロゲン除去療法に失敗したものである。
【0058】
いくつかの実施形態において、上記去勢感受性前立腺癌又は去勢抵抗性前立腺癌は、アンドロゲン合成阻害剤及び/又はアンドロゲン受容体阻害剤による治療に失敗したものである。
【0059】
いくつかの実施形態において、上記去勢感受性前立腺癌又は去勢抵抗性前立腺癌は、アビラテロンによる治療に失敗したものである。
【0060】
いくつかの実施形態において、上記去勢感受性前立腺癌又は去勢抵抗性前立腺癌は、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド及び/又はビカルタミドによる治療に失敗したものである。
【0061】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、転移性去勢感受性前立腺癌である。
【0062】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、非転移性去勢感受性前立腺癌である。
【0063】
いくつかの実施形態において、上記非転移性又は転移性去勢感受性前立腺癌は、標準治療を受けていないものである。
【0064】
いくつかの実施形態において、上記非転移性又は転移性去勢感受性前立腺癌は、標準治療に失敗したものである。
【0065】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、転移性去勢抵抗性前立腺癌である。
【0066】
いくつかの実施形態において、上記前立腺癌は、非転移性去勢抵抗性前立腺癌である。
【0067】
いくつかの実施形態において、上記非転移性又は転移性去勢抵抗性前立腺癌は、標準治療を受けていないものである。
【0068】
いくつかの実施形態において、上記非転移性又は転移性去勢抵抗性前立腺癌は、標準治療に失敗したものである。
【0069】
いくつかの実施形態において、上記非転移性又は転移性去勢抵抗性前立腺癌は、化学療法に失敗したものである。
【0070】
いくつかの実施形態において、上記非転移性又は転移性去勢抵抗性前立腺癌は、内分泌療法に失敗したものである。
【0071】
いくつかの実施形態において、上記非転移性又は転移性去勢抵抗性前立腺癌は、アンドロゲン除去療法に失敗したものである。
【0072】
いくつかの実施形態において、上記非転移性又は転移性去勢抵抗性前立腺癌は、アンドロゲン合成阻害剤及び/又はアンドロゲン受容体阻害剤による治療に失敗したものである。
【0073】
いくつかの実施形態において、上記非転移性又は転移性去勢抵抗性前立腺癌は、アビラテロンによる治療に失敗したものである。
【0074】
いくつかの実施形態において、上記非転移性又は転移性去勢抵抗性前立腺癌は、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド及び/又はビカルタミドによる治療に失敗したものである。
【0075】
いくつかの実施形態において、上記転移性去勢前立腺癌は、病理組織学的又は細胞学的に証明される、過去に初回の持続性アンドロゲン除去療法後に失敗した前立腺癌であり、且つ明確な骨又は軟部組織転移病巣を有することが画像学的に証明される。
【0076】
いくつかの実施形態において、上記転移性去勢前立腺癌は、組織病理学的又は細胞学的に証明された、標準治療という選択肢のない転移性去勢抵抗性前立腺癌である。
【0077】
いくつかの実施形態において、本発明は、具体的に以下のような、一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形の、前立腺癌患者を治療する投与量及び投与レジメンをさらに提供する。
【0078】
いくつかの実施形態において、上記一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形の単回投与量は、3 mg~20 mg、例えば、3 mg、4 mg、5 mg、6 mg、7 mg、8 mg、9 mg、10 mg、11 mg、12 mg、13 mg、14 mg、15 mg、16 mg、17 mg、18 mg、19 mg、20 mgである。投与頻度は、1日1回、1日2回、又は2日に1回、3日に1回である。好ましい投与頻度は1日1回である。
【0079】
いくつかの実施形態において、上記一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形はまた、1つ又は複数の薬学的に許容される担体と共に、薬学的に許容される任意の薬物製剤に製造することができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、上記薬物製剤は1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含むことができ、経口、非経口、直腸又は経肺投与などの方式で、このような治療を必要とする患者又は受験者に投与されることができる。経口投与に用いられる場合、上記薬物組成物は錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤などの通常の固体製剤に製造されてもよく、経口溶液剤、経口懸濁剤、シロップ剤などの経口液体製剤に製造されてもよい。経口製剤に製造される場合、適当な充填剤、接着剤、崩壊剤、潤滑剤などを添加することができる。非経口投与に用いられる場合、上記薬物組成物は注射液、注射用無菌粉末及び注射用濃溶液を含む注射剤に製造することができる。注射剤に製造される場合、従来の製薬分野での通常方法により生産することができ、注射剤を調製する場合、付加剤を加えなくてもよく、薬物の性質に応じて適当な付加剤を加えてもよい。直腸投与に用いられる場合、上記薬物組成物は、坐剤などに製造することができる。経肺投与に用いられる場合、上記薬物組成物は、吸入剤又は噴霧剤などに製造することができる。
【0081】
本発明に記載の「治療」とは、患者に有効量の薬物を投与し、患者の望ましくない生理学的変化又は病症、例えば、癌の増殖、形成又は拡散などの過剰増殖性状況を緩和又は治癒することにより、有利な又は所望の臨床結果を得ることを指し、かかる臨床結果には、検出可能又は検出不可能にかかわらず、症状を軽減すること、疾患の程度を弱めること、疾患状態を安定化する(即ち、悪化させない)こと、疾患の進行を遅らせるか又は緩めること、疾患状態を改善又は軽減すること、及び治まること(部分的又は完全的にかかわらず)が含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
本発明に記載の「治療」は、ネオアジュバント療法及び補助療法アジュバント療法を含み得る。
【0083】
「ネオアジュバント療法」とは、初期腫瘍患者に対して、計画中の手術治療又は手術+放射線治療の局所治療の前に行われる全身的治療を指し、異なる種類の腫瘍に応じて、ネオアジュバント療法の手段は、化学療法、内分泌、標的、免疫又は放射線療法であり得る。ネオアジュバント療法の目的は、即時の系統的治療を提供することであり、これによって微小転移を潜在的に根絶し、上記微小転移は、他の状況において、手術、続いて系統的療法の標準的な順序に従う場合に増殖する。ネオアジュバント療法は、腫瘍サイズを縮小するのにも役立ち、これにより、最初は切除できなかった腫瘍の完全な切除を可能にするか、又は臓器及びその機能の一部を保存することができる。さらに、ネオアジュバント療法は、薬物の効力のインビボ評価を可能にし、その後の治療の選択を指示することができる。
【0084】
「アジュバント療法」とは、体内に残存するいかなる癌細胞を破壊し、腫瘍の再発又は他の部位への転移の可能性を低減するために、根治的な手術(残存疾患の証拠が検出できない)の後に施される療法を指す。治療手段はネオアジュバント療法とほぼ同じである。アジュバント療法の目標は、癌の再発を予防すること、及び癌関連死の可能性を低減することである。アジュバント療法は、本明細書では、ネオアジュバント療法を明確に除外する。
【0085】
本発明に記載の「失敗した」、「治療に失敗した」又は「化学療法に失敗した」とは、治療過程中又は最終回の治療後に疾患進行(腫瘍組織評価のRECIST 1.1治療効果判定基準による疾患進行(PD)、又は前立腺癌の骨病巣評価基準PCWG3による疾患進行(PD))が現れること、又は治療過程中の毒性副作用により耐えられないことを指す。
【0086】
本発明に記載の「毒性副作用に耐えられない」とは、薬物による有害反応のために治療を継続できないことを指す。
【0087】
本発明に記載の「標準治療」は、アンドロゲン除去療法(外科的去勢、及びゴセレリン、リュープロレリン、トリプトレリン、デガレリクスを含むが、これらに限定されない薬物的去勢治療など)、化学療法、全身放射線治療、新規内分泌療法を含む。
【0088】
本発明に記載の「化学療法」は、ドセタキセル、ドセタキセルとプレドニゾンとの併用などを含むが、これらに限定されない。
【0089】
本発明に記載の「アビラテロンによる治療」は、アビラテロン、アビラテロンとプレドニゾンとの併用などを含むが、これらに限定されない。
【0090】
本発明に記載の「内分泌療法」は、従来のアンドロゲン除去療法(ADT)及び新規内分泌療法を含む、アンドロゲン(受容体)活性を阻害するか又は低下させることにより前立腺癌を治療する方法である。そのうち、ADT治療は、外科的去勢治療(精巣切除など)及び薬物的去勢治療(ゴセレリン、リュープロレリン、トリプトレリン、デガレリクスなどを含むが、これらに限定されない)を含む。新規内分泌療法は、アンドロゲン合成阻害剤(例えば、アビラテロンなど)、アンドロゲン受容体阻害剤(例えば、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド、ビカルタミドなど)を含む。
【0091】
無増悪生存期間(PFS):有効性分析セットにおける、治験薬の初回の使用から疾患進行又はいかなる原因による死亡が現れるまでの時間である。
【0092】
全生存期間(OS):治験薬による治療を開始する時点からいかなる原因による死亡までの時間である。分析時点でまだ死亡していない患者に対して、生存が最後に確認された日付を用いて審査を行う。
【0093】
客観的奏効率(ORR):各患者が試験薬を中止した場合に、最良奏効がCR又はPRである患者の割合である。
【0094】
奏効持続期間(DOR):最初のPR又はCRから最初のPD又は死亡までの時間。
【0095】
病勢コントロール率(DCR):最良奏効がCR、PR又はSDである患者の割合。
【0096】
治療効果判定基準は、RECIST1.1基準に従って、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定(SD)、進行(PD)に分けられる。
【0097】
完全奏効(CR):全ての標的病巣が消失し(全ての病理学的リンパ節の短径が<10 mmに減少しなければならない)、非標的病巣がいずれも消失し、新たな病巣の出現がない。
【0098】
部分奏効(PR):標的病巣の直径の合計がベースラインレベルよりも少なくとも30%減少し、非標的病巣が消失又は安定し、新たな病巣の出現がない。
【0099】
疾患進行(PD):標的病巣の直径の合計が相対的に少なくとも20%増加するか、又は非標的病巣が悪化するか、又は新たな病巣が出現する(3項のうちの1項が出現するとPDである)。
【0100】
疾患安定(SD):標的病巣の増加/減少がPRとPDとの間であり、且つ非標的病巣は安定又は消失し、新たな病巣はない。
【0101】
本発明に記載の「治療有効量」とは、患者へ投与される時、少なくとも患者の病症の症状を緩和できる上記化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形の量を指す。「治療有効量」を含む実際量は、複数の場合によって変わるが、複数の場合は、治療される特定の病症、病症の重症度、患者の体格と健康状況、及び投与経路を含むが、これらに限定されない。例えば、単回ボーラスで投与してもよいし、数回に分けて経時的に投与してもよいし、治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例的に減少又は増加させてもよい。なお、用量の値は、緩和されるべき症状のタイプ及び重症度に応じて変化し、且つ単回又は複数回の用量を含んでもよい。任意の特定の個体について、具体的な投与レジメンは、個体のニーズ及び組成物の投与又は組成物の投与を監督する者の専門的判断に従って、経時的に調整されるべきである。
【0102】
前立腺癌の予防及び/又は治療のための「対象」又は「個体」とは、ヒト、家畜及び農場動物、並びに動物園動物、スポーツ動物、又は愛玩動物、例えば犬、馬、猫、牛などを含む、哺乳動物に分類される任意の動物を指す。好ましくは、当該哺乳動物はヒトである。対象又は個体は患者であり得る。
【0103】
定義
本発明に記載の「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素などを指し、好ましくはフッ素と塩素である。
【0104】
本発明に記載の「ハロゲン化」とは、置換基の中のいずれか1個の水素原子が1つ又は複数の同じ又は異なるハロゲンで置換され得ることを指す。「ハロゲン」は上記で定義された通りである。
【0105】
本発明に記載の「シアノ基」とは、-CN基を指す。
【0106】
本発明に記載の「アミノ基」とは、-NH2基を指す。
【0107】
本発明に記載の「C1-4アルキル基」とは、1~4個の炭素原子を有するヒドロカルビル部から1個の水素原子を除去して派生した直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などである。上記「C1-3アルキル基」とは、1~3個の炭素原子を有する上記アルキル基を指す。
【0108】
本発明に記載の「C3-6シクロアルキル基」とは、3~6個の炭素原子を有する単環シクロアルキル基、二環シクロアルキル基系又は多環シクロアルキル基系を指す。これらの基は、飽和であるが芳香族ではない。特段の断りがない限り、形成可能な単環と縮合環構造を含む。その実例は、シクロプロパン基、シクロブタン基、シクロペンタン基、シクロヘキサン基、ビシクロ[2.2.2]ヘキサン、ビシクロ[3.2.1]ヘキサンを含むが、これらに限定されない。
【0109】
本発明に記載の「5~11員複素環基」とは、5~11個の環炭素原子を有する非芳香族環状基であり、そのうち、少なくとも1個の環炭素原子が、O、S、Nから選ばれる1つ又は複数のヘテロ原子で置換され、好ましくは1~3個のヘテロ原子で置換され、同時に炭素原子、窒素原子及び硫黄原子を含む環構成原子は酸化されることができる。
【0110】
上記の「複素環基」とは、単環複素環基、二環複素環基系又は多環複素環基系を指し、飽和、部分飽和の複素環基を含むが、芳香環を含まない。本発明に記載の「5~11員複素環基」とは、特段の断りがない限り、形成可能な単環と縮合環構造を含む。
【0111】
上記の単複素環基は、5~7員複素環基、5~6員複素環基、5~6員含酸素複素環基、5~6員含窒素複素環基、5~6員飽和複素環基などであってもよい。本発明に記載の5~6員単複素環基の実例は、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピロリル基、テトラヒドロチエニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、1,2-オキサゾリジニル基、1,3-オキサゾリジニル基、1,2-チアゾリジニル基、1,3-チアゾリジニル基、テトラヒドロ-2H-ピラニル基、テトラヒドロ-2H-チオピラニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、1,4-ジオキサシクロヘキサン基、1,4-オキサチアン基、4,5-ジヒドロイソオキサゾリル基、4,5-ジヒドロオキサゾリル基、2,5-ジヒドロオキサゾリル基、2,3-ジヒドロオキサゾリル基、3,4-ジヒドロ-2H-ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、2,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-3H-ピラゾリル基、4,5-ジヒドロチアゾリル基、2,5-ジヒドロチアゾリル基、2H-ピラニル基、4H-ピラニル基、2H-チオピラニル基、4H-チオピラニル基、2,3,4,5-テトラヒドロピリジル基、1,2-イソオキサジニル基、1,4-イソオキサジニル基又は6H-1,3-オキサジニル基などを含むが、これらに限定されない。
【0112】
上記の縮合複素環は、結合複素環基、スピロ複素環基、架橋複素環基を含み、飽和、部分飽和又は不飽和のものであってもよいが、芳香族ではない。本発明に記載の7~11員縮合複素環基は、特段の断りがない限り、形成可能な結合、スピロ、架橋構造を含む。
【0113】
上記の結合複素環基は、7~11員結合環基であってもよく、好ましくは7~11員飽和結合環基であり、その実例は、3,6-ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン、3,8-ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン基、3,7-ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン基、オクタヒドロピロロ[3,4-c]ピロール、オクタヒドロピロロ[3,4-b]ピロール、オクタヒドロピロロ[3,4-b][1,4]オキサジニル基、オクタヒドロ-1H-ピロロ[3,4-c]ピリジン、2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル、2,3-ジヒドロベンゾフラン-3-イル、ジヒドロインドール-1-イル、ジヒドロインドール-2-イル、ジヒドロインドール3-イル、2,3-ジヒドロベンゾチエニル-2-イル、オクタヒドロ-1H-インドリル基、オクタヒドロベンゾフラニル基を含むが、これらに限定されない。
【0114】
上記のスピロ複素環基は、7~11員スピロ複素環基であってもよく、好ましくは7~11員飽和スピロ複素環基であり、その実例は、
【0115】
【化5】
【0116】
を含むが、これらに限定されない。
【0117】
上記の架橋複素環基は、7~11員架橋複素環基であってもよく、好ましくは7~11員飽和架橋複素環基であり、その実例は、
【0118】
【化6】
【0119】
を含むが、これらに限定されない。
【0120】
本発明に記載の「薬学的に許容される塩」とは、薬用可能な酸と塩基の付加塩及び溶媒化物を指す。このような薬用可能な塩は、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸、亜硫酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硝酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、ヨウ化水素酸、アルカン酸(例えば、酢酸、HOOC-(CH2)n-COOH(そのうち、n=0~4))などの酸の塩を含む。このような薬用可能な塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウムなどの塩基の塩をさらに含む。様々な無毒の薬用可能な付加塩が当業者に知られている。
【0121】
本発明に記載の全ての数値範囲は、いずれも当該範囲の両端点、当該範囲内の全ての整数及びこれらの整数により形成されるサブ範囲を含むことを表す。例えば、「5~11員」は5、6、7、8、9、10、11員を含み、「5~6員」は5、6員を含み、「7~11員」は7、8、9、10、11員などを含む。
【0122】
置換基について、本発明に記載の「1つから複数」とは、置換基の数が置換される基の全ての化学的に置換可能な位置の数であってもよいことを指し、好ましくは1~6個であり、より好ましくは1~5個であり、さらに好ましくは1~3個であり、特に好ましくは1~2個である。
【0123】
本発明に記載の「結晶形」は、結晶形を製造するための当技術分野における通常の方法によって、一般式(I)の化合物から製造することができる。
【0124】
本発明に記載の一般式(I)の化合物の「立体異性体」とは、一般式(I)の化合物に不斉炭素原子が存在する場合、鏡像異性体が生成され、化合物に炭素-炭素二重結合又は環状構造が存在する場合、シス-トランス異性体が生成され、化合物にケトン又はオキシムが存在する場合、互変異性体が生成されるものを指す。一般式(I)の化合物の鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ異性体、シス-トランス異性体、互変異性体、幾何異性体、エピ異性体及びその混合物は、いずれも本発明の範囲に含まれる。
【0125】
本発明に記載の一般式(I)の化合物の製造は、WO2018108079A1の発明を実施するための形態の部分を参照することができる。
【0126】
本発明の有益な効果
本発明の一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、結晶形は、前立腺癌に対して治療作用を有し、また、去勢抵抗性前立腺癌及び去勢感受性前立腺癌に対して顕著な治療作用を有し、さらに、転移性去勢抵抗性前立腺癌に対しても顕著な治療作用を有し、良好な臨床応用可能性を有する。
【0127】
本発明の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下で本発明をさらに詳細に説明する。無論、記載された実施形態は、本発明の一部の実施形態にすぎず、全ての実施形態ではない。本発明の実施形態に基づいて、創造的な努力をせずに当業者によって得られる他の全ての実施形態は、本発明の請求範囲に含まれるものとする。
【0128】
本発明に使用される略語及び英語表現は、以下の意味を有する。
【0129】
【0130】
実験例1 本発明に係る化合物の細胞活性試験
試験物:本発明に係る化合物29であって、その構造は上記に示される通りであり、製造方法はWO2018108079A1の発明を実施するための形態の部分を参照することができる。
【0131】
前立腺癌細胞材料:DU145、PC-3、VCaP、LNCaP clone FGC。
【0132】
試験機器:PE Envision多機能マイクロプレートリーダーを使用した。
【0133】
試験方法:
各細胞を384ウェルプレートに接種し、一晩接着培養した後、最大最終濃度が10000 nMになるように、濃度の異なる化合物(10個の用量組、DMSO系列で4倍希釈)を添加し、そのうち、DMSOの最終含量はいずれも0.33%であり、最終濃度10 uMのスタウロスポリンを系統的な陽性対照(100%阻害)として使用した。陰性対照ウェルは、等しい含有量のDMSOの培地(0%阻害)であった。37℃、5%のCO2、95%の湿度で72 hインキュベートした後に試験に備えた。ウェルごとに30 μLのCell titer-Glo試薬を添加し、室温で30 minインキュベートした後、マイクロプレートリーダーを使用して最終データを読み取った。
【0134】
データは、以下のように計算される:
阻害率(%)=100%-(化合物シグナル-系統的な陽性対照シグナル)/(陰性対照シグナル-系統的な陽性対照)×100%。
【0135】
試験結果は表2に示され、B:0~1000 nM、C:1000~10000 nM、D:>10000 nM。
【0136】
【表2】
【0137】
表2の実験結果から、本発明の化合物29は前立腺癌細胞株に対して良好な抗腫瘍増殖活性を示し、前立腺癌を臨床的に治療する可能性が良好であることが示された。
【0138】
実験例2 ヒト去勢抵抗性前立腺癌PDX皮下異種移植腫瘍モデルに対する本発明に係る化合物のインビボ薬力学的研究
試験物:本発明に係る化合物29であって、その構造は上記に示される通りであり、製造方法はWO2018108079A1の発明を実施するための形態の部分を参照することができる。アビラテロンは市販されている。
【0139】
動物、腫瘍塊由来患者情報などの材料:ヒト前立腺癌腫瘍試料LD1-0034-361929は、アビラテロンに耐性を有する男性患者に由来する。臨床診断:膀胱転移を伴う去勢抵抗性前立腺癌、病理診断:前立腺癌-低分化腺癌、
6~8週の雄Nu/Nuヌードマウス。
【0140】
試験方法:
1, 腫瘍担持マウスの構築と群分け
腫瘍塊をマウスの右背中に接種し、投与前に動物の体重を量り、腫瘤体積を測定し、腫瘤体積に従ってブロックデザインを使用して群分けした。
【0141】
2, 投与レジメン
以下の表に従って投与した。
【0142】
【0143】
注:溶媒対照:0.5%のMC、化合物29の処方:0.5%のMC、アビラテロンの処方:10%のDMSO+90%の植物油
【0144】
3, 実験の観察指標
動物の健康状況と死亡状況を毎日モニターし、体重と腫瘍体積を週に2回測定し、最終回の投与後に試料を収集した。腫瘍体積の大きさに対する治療効果はTGI%で評価され、相対腫瘍阻害率TGI(%)はTGI=1-T/C(%)である。T/C(%)は、相対腫瘍増殖率であり、即ち、ある時点において対照群の相対腫瘍体積に対する治療群の相対腫瘍体積のパーセンテージ値である。TとCは、それぞれある特定の時点において治療群と対照群の相対腫瘍体積(RTV)である。計算公式:T/C%=TRTV/CRTV×100%(TRTV:治療群の平均RTV、CRTV:溶媒対照群の平均RTV、RTV=Vt/V0、V0は群分け時の当該動物の腫瘍体積であり、Vtは治療後の当該動物の腫瘍体積である)。
【0145】
結果を表3に示す:
【0146】
【表3】
【0147】
表3の実験結果から、化合物29は、アビラテロン耐性ヒト去勢抵抗性前立腺癌PDX皮下異種移植腫瘍モデルLD1-0034-361929に対して顕著な阻害作用を有することが示された。本発明に係る化合物29は、アビラテロン耐性mCRPC腫瘍を治療するための比較的良好な臨床的応用可能性を有することが示された。
【0148】
実験例3 転移性去勢抵抗性前立腺癌患者を治療する本発明に係る化合物の臨床研究
試験薬物:化合物29であって、その構造は上記に示される通りであり、製造方法はWO2018108079A1の発明を実施するための形態の部分を参照することができる。
【0149】
組入基準:組織病理学的又は細胞学的に証明された、標準治療という選択肢のない転移性去勢抵抗性前立腺癌患者である。
【0150】
投与レジメン:化合物29は、所定の用量(例えば、8 mg、10 mg又は12 mg)に従って1日1回経口投与し、28日/サイクルで連続投与した。
【0151】
治療効果評価:治療効果評価データを有する11例の患者において(10例の患者の単回投与量が12 mgであり、1例の患者の単回投与量が10 mgである)、7例の患者は部分奏効(PR)を達成し、2例の患者は疾患安定(SD)を達成した。
【0152】
当該研究は、化合物29が転移性去勢抵抗性前立腺癌に対して臨床的に非常に良好な治療効果を有することを示した。
【0153】
以上は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の精神及び原則の範囲内で行われる任意の修正、同等の置換、改善などは、いずれも本発明の請求範囲に含まれるべきである。
【国際調査報告】