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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ヴィーガンベースの卵黄代替製品
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20241018BHJP
   A23J 3/14 20060101ALI20241018BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20241018BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20241018BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20241018BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20241018BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A23L15/00 A
A23J3/14
A23L29/256
A23L29/262
A23L5/00 M
A23L29/00
A21D2/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531522
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2022083153
(87)【国際公開番号】W WO2023094536
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】102021130963.8
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021130974.3
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021130977.8
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524198364
【氏名又は名称】ネッグスト フーズ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】500142051
【氏名又は名称】フラウンホーファー ゲゼルシャフト ツア フェルデルング デア アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア アルテアガ ヴェロニカ
(72)【発明者】
【氏名】ハーゼンコプフ カトリーン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーネン カール・ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】オッテ ディートマル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイヒェレ ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】チェルヴィンスケ ヤーナ フレデリケ
【テーマコード(参考)】
4B032
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B032DK01
4B032DK05
4B032DK09
4B032DK14
4B032DK15
4B032DK16
4B032DK17
4B032DK18
4B032DK21
4B032DK26
4B032DK30
4B032DK32
4B032DK35
4B032DK48
4B032DK51
4B032DL20
4B035LC16
4B035LE03
4B035LG01
4B035LG04
4B035LG07
4B035LG08
4B035LG11
4B035LG12
4B035LG13
4B035LG15
4B035LG21
4B035LG25
4B035LG32
4B035LG33
4B035LG38
4B035LG50
4B035LG51
4B035LK02
4B035LP21
4B035LP41
4B042AC10
4B042AD37
4B042AE08
4B042AK01
4B042AK02
4B042AK05
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK11
4B042AK13
4B042AP02
4B042AP14
4B042AP15
4B042AP27
(57)【要約】
本発明は、ヴィーガンベースの卵黄代替製品に関し、(a)飲料水、(b)豆果、油糧種子、穀物、藻類、または微生物に由来する1つまたは複数のタンパク質、(c)任意選択として少なくとも1つの乳化剤を含む植物性オイル、(d)1つまたは複数の可逆熱ゲル化親水コロイドと1つまたは複数の可逆ゲル化親水コロイドとの組み合わせ、(e)少なくとも1つのカロチノイド含有食品および/または天然の着色物質、(f)場合により少なくとも1つの部分的に予備糊化されたデンプン、(g)塩、の混合物を含み、1つまたは複数の可逆熱ゲル化親水コロイドと1つまたは複数の可逆ゲル化親水コロイドとの組み合わせの割合は0.5~5.0重量%である。さらに本発明は、卵黄代替製品を製造する方法、および、エマルジョンを作成するための、料理ないし焼き菓子または模造卵での、卵黄代替製品の使用に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)飲料水、
(b)豆果、油糧種子、穀物、藻類、または微生物に由来する1つまたは複数のタンパク質、
(c)任意選択として少なくとも1つの乳化剤を含む植物性オイル、
(d)1つまたは複数の可逆熱ゲル化親水コロイドと1つまたは複数の可逆ゲル化親水コロイドとの組み合わせ、
(e)少なくとも1つのカロチノイド含有食品および/または天然の着色物質、
(f)場合により、少なくとも1つの部分的に予備糊化されたデンプン、
(g)塩
の混合物を含むヴィーガンベースの卵黄代替製品であって、1つまたは複数の可逆熱ゲル化親水コロイドと1つまたは複数の可逆ゲル化親水コロイドとの組み合わせの割合は0.5~5.0重量%である、卵黄代替製品。
【請求項2】
カロチノイド含有食品はサツマイモを3.0~10.0重量%の量で含む、請求項1に記載の卵黄代替製品。
【請求項3】
前記混合物に、部分的に予備糊化されたデンプン(f)は含まれない、請求項2に記載の卵黄代替製品。
【請求項4】
前記混合物が、高架橋の親水コロイドまたは熱可逆ゲル化親水コロイドからなる被覆によって取り囲まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の卵黄代替製品。
【請求項5】
前記被覆は、アルギン酸カルシウムまたはk-カラギーナンからなる、請求項4に記載の卵黄代替製品。
【請求項6】
前記混合物は、硫黄化合物または硫黄塩を含む塩をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の卵黄代替製品。
【請求項7】
前記混合物は香辛料またはアロマ調合物をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の卵黄代替製品。
【請求項8】
前記親水コロイド(d)はメチルセルロースとカラギーナンとの組み合わせである、請求項1~7のいずれか一項に記載の卵黄代替製品。
【請求項9】
前記植物性オイル(c)はトウモロコシ胚芽油、菜種油、ココナッツ脂、および/またはヒマワリオイル、またはこれらの任意の組み合わせである、請求項1~8のいずれか一項に記載の卵黄代替製品。
【請求項10】
前記植物性タンパク質(b)はエンドウ豆タンパク質、ルピナス豆タンパク質、ジャガイモタンパク質、ヒヨコ豆タンパク質および/またはソラ豆タンパク質である、請求項1~9のいずれか一項に記載の卵黄代替製品。
【請求項11】
前記植物性タンパク質は、生の、および/または加水分解された、および/または発酵させた殻粉、タンパク質濃縮物、プロテインアイソレート、および/またはこれらの任意の組み合わせである、請求項1~10のいずれか一項に記載の卵黄代替製品。
【請求項12】
1重量%~35重量%のタンパク質含有率(b)を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の卵黄代替製品。
【請求項13】
1重量%~50重量%の脂肪含有率(c)を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の卵黄代替製品。
【請求項14】
前記植物性オイル(c)は、レシチン、パルミチン酸アスコルビル、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、アルギン酸プロピレングリコール、ポリオキシエチレンステアレート、ホスファチジン酸のアンモニウム塩、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、酒石酸モノグリセリド、酒石酸ステアリル、またはソルビタンモノステアレートから選択される乳化剤を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の卵黄代替製品。
【請求項15】
好ましくは0.001~3.00重量%でトランスグルタミナーゼを追加的に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の卵黄代替製品。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の卵黄代替製品を製造する方法であって、前記方法は、
(a1)タンパク質溶液(A)を作成するために飲料水または食塩水溶液に植物性タンパク質を分散させ、前記タンパク質溶液(A)を2つの部分(A1)および(A2)に分割するステップ、または、
(a2)タンパク質溶液(A1)を作成するために飲料水または食塩水溶液に植物性タンパク質を分散させ、飲料水だけを含む、または飲料水に溶解した第2の植物性タンパク質を含む、溶液(A2)を作成するステップ、
(b)少なくとも40℃で前記タンパク質溶液(A1)を熱ゲル化親水コロイドと混合することによって溶液(B)を作成するステップ、
(c)室温で、または30℃までの温度で、前記タンパク質溶液(A2)を可逆ゲル化親水コロイドと混合することによって溶液(C)を作成するステップ、
(d)溶液(B)および(C)を混合するステップ、ならびに、
(e)連続的に撹拌しながら、任意選択として乳化剤を含む植物性オイル、カロチノイド含有食品、および/または天然の着色物質および場合により添加物質を添加し、場合により均一化して溶液(D)を得るステップ
を有する、方法。
【請求項17】
少なくとも1つの塩を前記溶液(C)に添加する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップ(e)の天然の着色物質はβカロチンである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの相からなるエマルジョンまたは液体を作成するための、またはその成分としての、料理ないし焼き菓子の添加物としての、または模造卵としての、請求項1~15のいずれか一項に記載の卵黄代替製品の使用。
【請求項20】
少なくとも1つの相からなるヴィーガンのエマルジョンまたは液体の成分としての、ヴィーガン料理ないしヴィーガン焼き菓子の添加物としての、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
少なくとも1つの相からなる非ヴィーガンのエマルジョンまたは液体の成分としての、非ヴィーガン料理ないし非ヴィーガン焼き菓子の添加物としての、請求項19に記載の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヴィーガンベースの卵黄代替製品に関する。
【背景技術】
【0002】
持続可能な生活様式の重要性に関する自覚は、純粋に植物性の食料品の意義をも継続して高めつつある。純粋なヴィーガン主義者やベジタリアン以外にも、動物性の製品の消費を減らそうと試みる人は増え続けている(フレックス菜食主義者やフレックスヴィーガン主義者)。このことは、相応の動物性の製品に似た味覚経験を消費者に提供する植物性の食品の需要がますます増え、利用可能になっていくことに帰結する。
【0003】
卵は高価値なタンパク質源であり、直接の飲食のほか、エマルジョンや泡の形成や、こねた生地の安定化など、食品で多くの役割を果たしている。使用の可能性が多様であるため、できる限りすべての分野を包摂する卵のヴィーガン代替品は大きなチャレンジとなる。
【0004】
鶏卵黄は水中脂肪エマルジョンであり、50%前後の水に加えて約30%の脂肪、約17%のタンパク質、ミネラル物質、およびビタミンを含んでいる。リン脂質の高い含有率に基づき(脂肪の約30%)、卵黄は非常に優れた乳化剤であり、含まれているカロチノイドは特徴的な黄・オレンジの色をもたらす。
【0005】
調理においては特に乳化剤として(たとえばマヨネーズ用)、クリームを柔らかくし、泡形成させ、固めるため、ならびに、焼き菓子の中身を安定化するために使用される。72℃を超えて加熱されると卵黄は固化する。
【0006】
特許文献1および特許文献2は、親水コロイドの高い含有率によって特徴づけられる、植物ベースの卵代替組成物に関する。
【0007】
特許文献3も、5%を超える親水コロイドを有する卵代替組成物に関する。
【0008】
特許文献4は、卵黄代替品が膜で取り囲まれ、天然の卵白身または処理された卵白身ないし卵白身類似品と組み合わされる卵代替品に関する。
【0009】
その他のさまざまな卵黄代替製品もすでに存在しており、そのベースとなるのは多くの場合、デンプンと親水コロイド、場合によりさらに植物性タンパク質からなる混合物である(特許文献5;特許文献6)。これらは乾燥製品または液体製品として食品で利用することができ、そこで全面的または部分的に卵黄の役割を担う(同等の色、固さ)。それに加えて、これらの製品のうちのいくつかは動物の卵黄に匹敵するレオロジーも有している。このような食品を、7日を超える期間、水分を含む白っぽい食品(たとえば卵白または卵白代替品)と接触させると、黄やオレンジの色が「卵黄」から「卵白」へと拡散してしまう。そのため、流動性のある形態の卵黄と卵白は、混ざることなく並存して貯蔵安定的なのではない。しかも、これらは新鮮な動物の卵黄の特徴的な湾曲した形態を有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許公開第2017/014967号パンフレット
【特許文献2】国際特許公開第2017/014806号パンフレット
【特許文献3】国際特許公開第2019/220431号パンフレット
【特許文献4】WO89/10704号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2013/0084361号明細書
【特許文献6】独国特許出願公表第60313732号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、色平衡が起こることなく、両方の材料が互いに混ざることもなく、かつ、両方の液相のうちの両方または一方が固化することなく、7日を超える期間、他の水含有食品と接触させることができる、ヴィーガンベースの卵黄類似の食品を提供することにある。この食品は動物の卵黄に準じて加工することができるのがよく、すなわちエマルジョンを形成し、安定化し、加熱時に固化するのがよい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、
(a)飲料水、
(b)豆果、油糧種子、穀物、藻類、または微生物に由来する1つまたは複数のタンパク質、
(c)任意選択として少なくとも1つの乳化剤を含む植物性オイル、
(d)1つまたは複数の可逆熱ゲル化親水コロイドと1つまたは複数の可逆ゲル化親水コロイドとの組み合わせ、
(e)少なくとも1つのカロチノイド含有食品および/または天然の着色物質、
(f)任意選択として少なくとも部分的に予備糊化されたデンプン、
および、
(g)塩
の混合物を含む卵黄代替製品によって解決され、1つまたは複数の可逆熱ゲル化親水コロイドと1つまたは複数の可逆ゲル化親水コロイドとの組み合わせの割合は0.5~5.0重量%である。
【0013】
以下の文章で挙げるパーセンテージ表記はそれぞれ重量%である。
【0014】
「ヴィーガンベースの」とは、動物性の成分または動物から得られた構成要素が含まれないことを意味する。
【0015】
本発明による製品は、特に1%~35%の、好ましくは3%~25%ないし20%の、非常に好ましくは4%~15%の、特に好ましくは5%~12%の、タンパク質含有率を有する。タンパク質源として好適なのは、豆果、穀物、油糧種子、(微細)藻類、および微生物の群に属する植物性原料であり、好ましくはエンドウ豆(Pisum sativum)、ヒヨコ豆(Cicer arientinum)、インゲン豆(Phaseolus vulgaris)、ソラ豆(Vicia faba)、ルピナス豆(Lupinus)、レンズ豆(Lens culinaris)、トウモロコシ(Zea mays)、アサ(Cannabis sativa)、サツマイモ(Ipomoea batatas)、キャッサバ(Manihot esculenta)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、カボチャ(Cucurbita)、アマ(Linum usitatissimum)、ナノハナ(Brassica napus)、大豆(Glycine max)、カラスムギ(Avena sativa)、バクテリア(たとえばLactobacillus spp.、Streptococcus spp.および Bifidobacterium spp.)、酵母菌(たとえばSaccharomyces cerevisiae)、糸状菌(たとえばAspergillus spp.、Mucor spp.およびRhizopus spp.)、海苔および/またはワカメの藻類であり、特に好ましくはエンドウ豆、ルピナス豆、ジャガイモ、ヒヨコ豆、およびソラ豆のタンパク質である。タンパク質源として、(生の、および/または加水分解された、および/または発酵させた)殻粉、タンパク質濃縮物、プロテインアイソレート、および/またはこれらの任意の組み合わせであって、植物および植物の一部そのもの、その種子、球根、および/または上に挙げた原料の果実から得ることができるものを使用することができる。食品テクノロジー分野の当業者には、植物およびそれぞれの植物の一部の加工や栄養工学的な適性は十分に知られている。
【0016】
いくつかの実施形態では、任意選択として、タンパク質溶液ないしタンパク質エマルジョンのテクスチャを改善するためにトランスグルタミナーゼを添加することができる。トランスグルタミナーゼがテクスチャに及ぼす効果は、特定の温度と時間条件のもとでタンパク質の架橋を促進する能力にある。トランスグルタミナーゼの量は好ましくは0.001%~3.00%の間であり、いっそう好ましくは0.01%~1.5%、さらに好ましくは0.1%~1.0%である。トランスグルタミナーゼは、タンパク質溶液ないしタンパク質エマルジョンが少なくとも15分、好ましくは30分、60分、90分、または120分、40℃~60℃の温度に加熱されている間に活性化する。トランスグルタミナーゼはマイクロカプセル化されていてよいが、されていなくてもよく、好ましくは卵代替製品の製造中に、パスツール処理またはUHT処理(75℃ないし120℃を上回る)によって不活性化させることができる。
【0017】
脂肪含有率は好ましくは1%~50%の間、好ましくは5%~30%の間、非常に好ましくは10%~25%の間、特に好ましくは12%~18%の間である。脂肪成分としては植物性オイル、たとえばオリーブオイル、ヤシ油、亜麻仁油、ウォールナッツオイル、ベニバナオイル、またはピーナッツオイルが適している;しかしながら、菜種油、ヒマワリオイル、ココナッツ脂、および/またはトウモロコシ胚芽油(コーン油)などの味覚中立的な脂肪、ならびに、これらのあらゆる組み合わせが好ましい。脂肪成分の割合に対して好ましくは最大50%まで、好ましくは5~40%、さらに好ましくは10~30%、乳化剤が脂質成分に添加されていてよい。これはたとえばレシチン(またはその構成要素、たとえばホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、またはホスファチジルイノシトール)、パルミチン酸アスコルビル、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、アルギン酸プロピレングリコール、ポリオキシエチレンステアレート、ホスファチジン酸のアンモニウム塩、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、酒石酸モノグリセリド、酒石酸ステアリル、またはソルビタンモノステアレートである。
【0018】
卵黄代替製品にふさわしい色を付与するために、さらに別の成分として少なくとも1つのカロチノイド含有食品および/または天然着色剤が添加される。それに好適なのは果実、野菜、および球根に由来する、好ましくは球根野菜および根菜に由来する、たとえばニンジン、アプリコット、トマト、パプリカ、カボチャ、ウイキョウ、および/またはサツマイモに由来する、調合品である。これらは好ましくはボイルしてからジャムに加工するか、細かく(微細に)刻まれるのが好ましい。いくつかの実施形態では、卵黄におけるカロチノイド含有食品の量は15.0%よりも低い(たとえば12.0%よりも低く、8.00%よりも低く、4.00%よりも低く、2.00%よりも低く、1.50%よりも低く、または0.50%よりも低い)。いくつかの実施形態では、卵黄におけるカロチノイド含有食品の量は0.01%~10.0%である(たとえば0.50%~9.50%、2.50%~7.50%、または3.00%~5.50%である)。カロチノイド含有食品としてのサツマイモの使用は、驚くべきことに、旧来の鶏卵黄に類似するテクスチャと色の形成につながることが見出されており、サツマイモの使用はタンパク質含有率と繊維質含有率も促進するとともに、デンプン成分を混合物に持ち込み、このことはテクスチャに好ましい影響を及ぼす。サツマイモはボイルしてからジャムに加工するか、細かく(微細に)刻まれるのが好ましい。サツマイモの量は3%~10%の間であってよく、好ましくは5%~8%の間であってよい。サツマイモがカロチノイド含有食品として含まれるケースでは、少なくとも部分的に予備糊化されたデンプンのその他の添加物が不要になり(0%)、または、0.5%よりも低い少量に抑えることができる。そうでない場合、少なくとも1つの(部分的に)予備糊化されたデンプンの添加が、好ましくは0.5%~4%、さらに好ましくは1.0%~3.0%の量で推奨される。(部分的に)糊化されたデンプンは、好ましくはトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、または米デンプンから機械式の加工により水の存在下で熱を適用して、または適用せずに、得られる。このとき一部または全部のデンプン粒子が破裂する。引き続いて粉末を乾燥させる。糊化されたデンプンは白色ないし黄味を帯びた白色の粉末として存在し、冷水中で膨潤する。これは良好な流動特性を有し、結合剤として適している。
【0019】
テクスチャ、食感、および色を調整するために、果実、野菜、および球根に由来するさらに別の適当な調合品を使用することができる。さらに、最善の色調整のために添加物、好ましくは脂溶性の天然着色剤、たとえばカロチノイド(たとえばβカロチン、リコピン、ゼアキサンチン)、ニンジンエキス、クルクミン、ならびに水に難溶性の着色剤、たとえばリボフラビンなどが適している。これらは単独で、または所望の色調を得るために組み合わせて、使用される。いくつかの実施形態では、卵黄における天然着色剤の量は2.00%よりも低い(たとえば1.50%よりも低く、1.00%よりも低く、0.75%よりも低く、または0.25%よりも低い)。いくつかの実施形態では、卵黄における天然着色剤の量は0.01%~2.00%である(たとえば0.25%~1.75%、1.00%~0.50%、または1.75%~0.25%である)。卵黄の色は、L*a*b*色空間においてイエローからダークオレンジに及んでいてよい。明度(L*)は70~85、好ましくは75~80に及ぶことができる;レッド-グリーン(a*)は15~30、好ましくは19~25に及ぶことができる;イエロー-ブルー(b*)は60~95、好ましくは70~90、特に好ましくは75~88であってよい。
【0020】
鶏卵に類似するアロマを生成するために、塩が添加される。NaCl、KCl、NaHPO、NaHPO、Na-クエン酸またはK-クエン酸、CaCl、NaPOおよび/またはカラナマック(ブラックソルト)またはカラナマックに匹敵する塩であって、硫黄化合物の割合を有するものが好ましい。この目的のために、いくつかの実施形態では塩の量は、好ましくはカラナマック塩の量は、2.00%よりも低く、たとえば0.75%よりも低く、0.50%よりも低く、0.25%よりも低く、または0.10%よりも低い。
【0021】
さらに卵黄代替製品は、追加の副成分を僅少量で(10.0%よりも低く、好ましくは5%、3%、または2%よりも低く)含むことができる。これはアロマ調合物、香辛料、乾燥した野菜または果実、砂糖、保存剤、増粘剤、または健康増進添加物であってよい。例示として、ここではヨウ素、ビタミン(たとえばビタミンB、B、B、B、B、B、B12、C、D、またはE)、および/またはミネラル(たとえばCaまたはMg)を挙げておく。
【0022】
所望の粘性の調整のために、および加熱時の固化のために、卵黄代替製品は親水コロイドを含む。このとき、1つまたは複数の熱ゲル化親水コロイドと、1つまたは複数の可逆ゲル化親水コロイドとの組み合わせが好ましいことが判明しており、これら両方の種類は温度変化時の挙動に関して相違している。>40℃まで温度上昇したときに急速にゲル化する親水コロイドは「熱ゲル化」または「熱可逆ゲル化」と呼ばれ、好ましくは改質セルロースであり、好ましくはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)および/またはヒドロキシプロピルセルロースである。ただし、それによって惹起されるゲル化は一時的なものにすぎない;<40°に冷却されると、ゲルは再び当初の粘性溶液へと転換する。熱ゲル化を生起するために、メチルセルロースの場合にはおよそ1.5g/lである、熱ゲル化親水コロイドの特定の最低濃度が存在するのがよい。それ以外の熱ゲル化親水コロイドについての最低濃度の決定は、当業者にとって、多大な実験コストなしに可能である。このような濃度を下回ると、水溶液の加熱時にゲル化が起こらない。可逆ゲル化親水コロイドは室温(約20℃)のもとでゲルを形成し、このゲルは-熱ゲル化親水コロイドとは異なり-特定の熱インターバル内で加熱されると溶融し、すなわち液化して粘性溶液を形成して、これがゲル化温度まで、またはこれ以下に冷却された後に再びゲル化する。可逆ゲル化親水コロイドとしては、藻類に由来するもの、好ましくはカラギーナンおよび/またはアガーに由来するものが使用される。所望のコンシステンシーを調整するために、およびヴィーガン卵黄の持続的な固化を促進するために、別の親水コロイドが使用され、好ましくはゲランガム、イナゴ豆殻粉、グアー殻粉、アルギン酸塩、および/またはキサンタンが使用される。いくつかの実施形態では、卵黄における親水コロイドの量は5.00%よりも低い(たとえば4.75%、4.50%、4.25%、4.50%、4.25%、4.00%、3.75%、3.50%、3.25%、3.00%、2.75%、2.50%、2.25%、2.00%、1.75%、1.50%、1.00%、0.75%よりも低く、または0.50%に等しく、ないしはこれよりも低い)。いくつかの実施形態では、卵黄代替製品における親水コロイドの量は0.10%~4.5%である(たとえば0.20%~4.00%、0.25%~3.00%、0.50%~2.50%、または0.75%~2.00%)。熱ゲル化親水コロイドと可逆ゲル化親水コロイドの間の分割は、好ましくは50:50、好ましくは25:75、30:70、ないし40:60、または75:25、70:30、ないし60:40である。5.00%よりも低い親水コロイドの量は、液体状の生卵代替品の提供を可能にするが、その一方で、調理時に鶏卵に匹敵する安定性とテクスチャのために作用する。
【0023】
好ましい実施形態では、卵黄代替混合物は、高架橋の親水コロイドからなる、または熱可逆ゲル化親水コロイドからなる、好ましくはアルギン酸カルシウムまたはk-カラギーナンからなる、被覆で取り囲まれる。
【0024】
本発明によると、タンパク質源を水または水性塩溶液に分散させる(溶液(A))。溶液(A)を2つの部分((A1)および(A2))に分割することができる。あるいは、互いに独立して2つの溶液(A1)および(A2)を作成することも可能である:(A1)は、水性のタンパク質溶液ないしタンパク質・塩・溶液であってよく、(A2)は別のタンパク質の溶液または水のみであってよい。任意選択として、0.001%~2.00%のトランスグルタミナーゼを溶液(A1)に付け加えることができる。カプセル化されていないトランスグルタミナーゼが使用される場合、溶液を120分よりも短い間50℃に保つのがよい。溶液(B)は、溶液(A1)を少なくとも40℃まで、好ましくは50℃まで、ただし60℃を超えないように、加熱し、1つまたは複数の熱ゲル化親水コロイド(たとえば改質セルロース、メチルセルロース、および/またはヒドロキシプロピルセルロース)を添加することによって作成される。熱作用により、親水コロイドの改善された分散がもたらされる。親水コロイドの分散の前または後に、オイル(場合により0.01%~50%の乳化剤を含む)、場合によりカルシウムイオン源、カロチノイド含有食品ないし天然着色剤、および場合によりその他の添加剤を溶液(B)に混合する。溶液(A2)に1つまたは複数の可逆ゲル化親水コロイドを30℃よりも低い温度のもとで、好ましくは20℃、15℃、または10℃よりも低い温度のもとで、混合することによって、溶液(C)を作成する。これに加えて、さらに天然の味覚物質、アロマ調合物、オイル、および(カプセル化された)トランスグルタミナーゼ、またはその他の添加剤を溶液(C)に混合することができる。溶液(B)および(C)のすべての成分が完全に分散するとただちに、好ましくは30℃よりも低い温度のもとで溶液(B)および(C)を混合し、それによって完成した卵黄溶液(溶液(D))が生じる。上で説明した各溶液および分散液は、周知の分散技術を適用したうえで標準混合容器で作成する。
【0025】
オイル粒子の完全な細かい分布を実現するために、混合物(溶液(D)を均一化することができる。驚くべきことに、それによって食感が改善され、それにより舌で粗さが感じられなくなったばかりでなく、明度も改善され、それにより着色のために必要な着色剤が少なくなり、製品がいっそう強い光沢を有するようになった。均一化のために、圧力を5バール~300バールで、好ましくは25バール~225バールで、特に好ましくは50バール~250バールで、適用することができる。均一化は1段階式または2段階式であってよい。
【0026】
それぞれ独立した溶液とその混合を真空処理のもとで実行するのが好ましいが、必須というわけではない。真空は、卵黄中での気泡の形成を防止する。
【0027】
本発明によると、溶液((A)、(B)、(C)、および/または(D))の各々をパスツール処理または滅菌することができる。パスツール処理/滅菌を、たとえば紫外線および/または高圧プロセシングなどの別の技術によって補足することもできる。これらの方法は、当業者が取り扱うことができ、文献にも十分に記載されている標準技術である。
【0028】
溶液(D)は液体として存在するように(たとえば料理/焼き菓子を作るときやスクランブルエッグのための添加物として)利用することができ、または、目玉焼き、スクランブルエッグ、またはハードボイルドエッグなどの通常の卵の用途として利用するために、球形をなすように成形することができる。球形成のために、好ましくは下記の3つの方式が適している。
【0029】
方式1:球形成(カプセル化)のために、溶解性のカルシウム塩(たとえば乳酸カルシウムや塩化カルシウム)を内容物質の一部として溶液(B)および/または(C)に入れ、溶液(D)について上で説明したのと同じように溶液(B)および/または(C)をさらに処理する。カルシウム塩を含む溶液(D)を高架橋の親水性コロイドの水溶液の中へ、好ましくはアルギン酸ナトリウムの中へ、できる限り球形に調量するのがよく、この溶液と最大で5分、好ましくは4分よりも短く、さらに好ましくは3分よりも短く、接触したままに保って、充填物(溶液(D))が液状に保たれるようにする。溶液(D)を事前に球形の形状に部分凍結または完全凍結しておくことができ、次いで、カプセル形成のために、高架橋の親水コロイドの微温浴に入れることができる。溶液(D)から高架橋の親水コロイドの溶液の中へカリウムイオンが拡散することで外側の被覆が形成され、高架橋の親水コロイドがカリウムイオンと架橋反応することによって卵黄(=溶液(D))をカプセル化する。換言すると、溶液(D)の周りに表面層が形成され、それによって周知の動物の卵黄に非常によく似た形状が生じる。架橋反応を止めるために、カプセル封じされた卵黄をできる限りただちに水で洗流するのがよい。溶液(D)を取り囲む親水コロイドの量は、カプセル封じされる卵黄の総重量の1%を超えない。
【0030】
方式1の好ましい実施形態では、液体状の「卵黄」(溶液(D))を親水コロイド(好ましくはアルギン酸ナトリウム)溶液に球形の連続体(重量:5~20g)として、ノズルを用いて親水コロイド(好ましくはアルギン酸ナトリウム)溶液へ調量して、300秒よりも短い、好ましくは240秒、120秒、また60秒よりも短い時間帯の間、この溶液と接触させる。引き続いて、カプセル封じされた卵黄を脱イオン水浴で洗流して、余剰のアルギン酸塩を除去することができ、それによって「卵黄」が保管中に硬化することがなく、内部で液状に保たれる。驚くべきことに、この液体製品はそのカプセル化の中で非常に安定的に保たれ、それにより皿/フライパンへ完全な状態で移すことができ、そこで湾曲した状態のまま保たれ、液体内容物は被覆をかき回す/的確に壊すことによって初めて外に出る。
【0031】
方式2:球形成(カプセル化)のために、高架橋の親水コロイド(たとえばアルギン酸ナトリウム)を内容物質の一部として溶液(Bおよび/またはC)に入れ、溶液(D)について上で説明したのと同じように溶液(B)および/または(C)をさらに処理する。高架橋の親水コロイドを含む溶液(D)をカルシウム塩(たとえば乳酸カルシウムや塩化カルシウム)の水溶液の中へできる限り球形に調量するのがよく、この溶液と最大で5分、好ましくは4分よりも短く、さらに好ましくは3分よりも短く、接触したままに保って、充填物(溶液(D))が液状に保たれるようにする。溶液(D)を事前に球形の形状に部分凍結または完全凍結しておくことができ、次いで、カプセル形成のために、カルシウム塩の微温浴に入れることができる。カルシウム塩溶液からカルシウムイオンが拡散することで外側の被覆が形成され、高架橋の親水コロイドがカリウムイオンと架橋反応することによって卵黄(=溶液(D))をカプセル化する。換言すると、溶液(D)の周りに表面層が形成され、それによって周知の動物の卵黄に非常によく似た形状が生じる。架橋反応を止めるために、カプセル封じされた卵黄をできる限りただちに水で洗流するのがよい。驚くべきことに、この液体製品はそのカプセル中で非常に安定的に保たれ、それにより皿/フライパンへ完全な状態で移すことができ、そこで湾曲した状態のまま保たれ、液体内容物は被覆をかき回す/的確に壊すことによって初めて外に出る。溶液(D)を取り囲むカルシウム塩の量は、カプセル封じされる卵黄の総重量の1%を超えない。
【0032】
方式3:球形状の形成のために、上述した卵黄調合物(溶液(D))をシリコンゴム、プラスチック、特殊鋼などからなる適当な形態で、<0℃の温度のもとで、典型的には-18℃またはこれ以下のもとで、急速冷凍する。凍結された溶液(D)からなる、直径が1~4cm、理想的には2~3cm前後の、得られた球または半球を引き続いて液体窒素(沸点-196℃)によってさらに凍らせて、球の表面に目立ったガス泡発生が生じなくなるまで(熱力学的な平衡への到達)これを行う。事前に準備しておいた熱可逆ゲル化親水コロイドの溶液を、典型的にはアルギン酸ナトリウムおよび/またはk-カラギーナンを、35℃を超える温度のもとで水に溶かして、1~2%の澄んだ溶液を得る。この溶液を、引き続いて35℃~50℃の温度まで、理想的には45~50℃の範囲内に、冷却していく。急速冷却された溶液Dの球を、引き続いて親水コロイドの溶液に浸けて、冷却により表面にゲル層が形成されるようにする。ゲル層の厚みは、浸漬時間、球サイズ、および供給される親水コロイド溶液の量によって調整することができ、1~5mmであり、典型的には1~2mm前後である。換言すると、固化した溶液(D)の周りに表面層が形成され、それによって周知の動物の卵黄に非常によく似た形状が全体として生じる。驚くべきことに、融解後に液体製品はそのカプセル化の中で非常に安定的に保たれ、それにより皿/フライパンへ完全な状態で移すことができ、そこで湾曲した状態のまま保たれ、液体内容物は被覆をかき回す/的確に壊すことによって初めて外に出る。溶液(D)を取り囲む熱可逆ゲル化親水コロイドの量は、カプセル封じされる卵黄の総重量の1%を超えない。
【0033】
方式4:球形状の形成のために、上述した卵黄調合物(カルシウムイオン源のない溶液(D))をシリコンゴム、プラスチック、特殊鋼などからなる適当な形態で、<0℃の温度で、典型的には-18℃またはこれ以下で急速冷凍する。場合により、凍結された溶液(D)からなる、直径が1~4cm、理想的には2~3cm前後の、得られた球または半球を引き続いて液体窒素(沸点-196℃)によってさらに凍らせて、球の表面に目立ったガス泡発生が生じなくなるまで(熱力学的な平衡への到達)これを行う。球ないし半球の表面にカルシウムイオンを吹き付けて、凍った表面にイオンが付着するようにすることができる。事前に準備しておいた熱可逆ゲル化親水コロイドの溶液を、典型的にはアルギン酸ナトリウムおよび/またはk-カラギーナンを、35℃を超える温度で水に溶かして、1~3%の澄んだ溶液を得る。この溶液を、引き続いて35℃~50℃の温度まで、理想的には45~50℃の範囲内に、冷却していく。理想的にはカルシウムイオンの均一な層を表面に有する、急速冷却された溶液Dの球を、引き続いて親水コロイドの溶液に浸けて、冷却により表面にゲル層が形成されるようにする。ゲル層の厚みは、浸漬時間、球サイズ、および供給される親水コロイド溶液の量によって調整することができ、1~5mmであり、典型的には1~2mm前後である。換言すると、固化した溶液(D)の周りに表面層が形成され、それによって周知の動物の卵黄に非常によく似た形状が全体として生じる。驚くべきことに、融解後に液体製品はそのカプセル化の中で非常に安定的に保たれ、それにより皿/フライパンへ完全な状態で移すことができ、そこで湾曲した状態のまま保たれ、液体内容物は被覆をかき回す/的確に壊すことによって初めて外に出る。溶液(D)を取り囲む熱可逆ゲル化親水コロイドの量は、カプセル封じされる卵黄の総重量の1%を超えない。
【0034】
カプセル封じされた卵黄を、たとえばNaCl、カルシウム塩、安息香酸、および/またはアスコルビン酸を含む保存溶液および/または緩衝溶液の中で保管することができる。
【0035】
最適な水量は、ある程度の限度内で、卵黄代替製品の厳密な組成に依存して決まる。この水量は、まず比較的少ない水量を混入することによって、簡易な仕方で決定することができる。液体の卵黄代替製品が所望よりもまだ厚い場合には、さらに多くの水を混入することができる。このように、上記の添加物に水を追加することによって、卵黄代替製品の粘性が調節される。この卵黄代替製品は、特定のせん断速度のもとでの変形に対する抵抗として定義される初期粘度(場合により行われる熱処理またはその他の処理の前)を、0.5Pa・s~200.0Pa・sの範囲内で、好ましくは0.7~150Pa・s;1.51Pa・s~100Pa・sまたは50Pa・s~80Pa・sで、有することができる。その一方で、卵黄は熱処理(たとえば煮沸)の後に、100Pa・s~10,000Pa・sの範囲内の、好ましくは300Pa・s~8,000Pa・s、700Pa・s~3,500Pa・sまたは900Pa・s~1,500Pa・sの、粘度を有することができる。粘度は、測定間隙d=1.136mmを有する円筒状の測定システム(CC27-SN12031)を有するレオメーター(MCR301 SN802801740、Anton Paar GmbH、Graz、Austria)を用いて測定することができる。レオメーターを用いてどのように粘度測定を実施するかは、当業者に周知である。以下では、あくまでも例示としての条件を説明する。シリンダーにたとえば15mlの試料を充填する。試料を5分間、10℃で平衡させ、測定のためにそのまま放置する。回転を60秒以内に2-100s-1へと線形に上昇させる。100s-1の回転を30秒間維持してから、60秒以内に100-2s-1へと戻す。粘度調整は、所与のタンパク質種類およびタンパク質濃度のもとで、水、親水コロイド、塩、および緩衝塩を追加することによって行い、粘度を測定しながら実験的に実行する。
【0036】
ボイルした卵黄は固体のテクスチャを有することができ、硬度[N]は150g~500g、たとえば200g~450g、250g~400g、または300g~350gの、破断力によって特徴づけられる。破断力は、たとえば評価ソフトウェアを有するテクスチャ分析機器である、Stable Micro Systems(Godalming、UK)のテクスチャアナライザを用いて決定することができる。例示としての条件は次のとおりである:50%の変形、5kgの負荷、40mmの直径を有する円筒状のスタンプ、および10mm/minのヘッド部分の速度。
【0037】
本発明の特に好ましい実施形態は以下を含む:
【0038】
【表1】
【0039】
驚くべきことに、この卵黄代替製品を用いて乳化剤を作成し(たとえばマヨネーズ)、料理を作り、菓子を安定化し、目玉焼きやボイルドエッグの卵黄を模造し、あるいは卵白または卵白代替製品と理想的には1:3の比率で混合することでスクランブルエッグを作ることもできる。
【0040】
本発明は、図面によってさらに明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1a】実施例1に基づいて卵黄代替製品を製造するための図である。
図1b】実施例2に基づいて卵黄代替製品を製造するための図である。
図1c】実施例3に基づいて卵黄代替製品を製造するための図である。
図2】鶏卵黄(A)と本発明による卵黄代替製品(B)との比較であり、卵黄代替製品は下記のレシピに基づいて製造した:
【表2】
図3】本発明による卵黄代替製品を用いた目玉焼きの製造
【実施例
【0042】
以下の実施例では、本発明による卵黄代替製品について説明する。これは、当該実施形態を厳密に限定するものではない。
【0043】
【表3】
【0044】
製造は図1aの図表に示すようにして行う。
【0045】
【表4】
【0046】
製造は図1bの図表に示すようにして行う。
【0047】
【表5】
【0048】
製造は図1cの図表に示すようにして行う。

図1a
図1b
図1c
図2
図3
【国際調査報告】