(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】バイオメトリック・スマートカード・モジュール
(51)【国際特許分類】
G06K 19/07 20060101AFI20241018BHJP
G06K 19/073 20060101ALI20241018BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G06K19/07 180
G06K19/073 054
G06K19/077 196
G06K19/077 244
G06K19/077 212
G06K19/077 216
G06K19/077 264
G06K19/077 296
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531576
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2022083712
(87)【国際公開番号】W WO2023094700
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517124778
【氏名又は名称】ズワイプ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, ローベルト
(57)【要約】
スマートカード本体3に積層後に埋め込まれる集積回路(IC)モジュール4が提供される。ICモジュールは、接点プレート5、生体センサ6、セキュア要素7、およびスマートカード本体3内に埋め込まれたアンテナ2への電気的接続のための手段9を備える。セキュア要素7は、接触および非接触通信ロジックを備え、生体センサ6を利用して少なくとも1つのスマートカード機能を実行するように構成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スマートカード本体に積層後に埋め込まれる集積回路(IC)モジュールであって、少なくとも1つのスマートカード機能を実行するように構成され、非接触インターフェースロジックおよび接触インターフェースロジックを備えているセキュア要素と、前記モジュールが前記スマートカード本体に埋め込まれたときに露出するように構成された複数の外部接点パッドを定めており、前記セキュア要素に通信した接点プレートと、前記モジュールが前記スマートカード本体に埋め込まれたときに露出するように構成されたセンサ表面を備えており、前記セキュア要素に通信した生体センサとを備えるモジュール。
【請求項2】
前記スマートカード本体に埋め込まれたアンテナに導電可能に接続されるアンテナ接点パッドをさらに備える、請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記スマートカード本体に埋め込まれたアンテナに誘導によって電気的に接続されるモジュールアンテナをさらに備える、請求項1に記載のモジュール。
【請求項4】
前記セキュア要素および/またはセンサのための電力を前記アンテナを介して受け取るように構成された、請求項2または3に記載のモジュール。
【請求項5】
前記セキュア要素は、前記アンテナを介して非接触で通信するように構成された、請求項2、3または4に記載のモジュール。
【請求項6】
前記少なくとも1つのスマートカード機能は、金融取引の承認のための検証を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項7】
前記少なくとも1つのスマートカード機能は、前記接点パッドまたは前記アンテナを介して受信した非生体認証識別コードの検証を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項8】
前記少なくとも1つのスマートカード機能は、前記生体センサへと提示された生体識別子に基づくユーザの生体認証登録を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項9】
前記センサ表面は、前記モジュールがスマートカード本体に埋め込まれたときに露出するように構成された保護コーティングを備え、前記保護コーティングは、接触スマートカード読取装置への挿入に耐えるように構成された、請求項1~8のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項10】
前記保護コーティングは、電気絶縁性保護コーティングである、請求項1~9のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項11】
前記生体センサは、指紋センサである、請求項1~10のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項12】
1mm未満の厚さ、15mm未満の幅、および15mm未満の高さを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項13】
前記生体センサの前記センサ表面は、前記外部接点パッドの間に位置し、10mm未満の高さおよび6mm未満の幅を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項14】
前記外部接点パッドは、前記ICモジュールの第1の面に位置し、前記生体センサの前記センサ表面は、前記ICモジュールの第2の反対側の面に位置する、請求項1~12のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項15】
キャビティを含んでいるスマートカード本体と、前記スマートカード本体に埋め込まれたアンテナと、前記スマートカード本体の前記キャビティ内に埋め込まれ、前記アンテナに電気的に通信した請求項1~14のいずれか一項に記載のICモジュールとを備える、生体認証可能なスマートカード。
【請求項16】
スマートカードを製造する方法であって、積層プロセスによって、アンテナが埋め込まれたスマートカード本体を形成することと、前記スマートカード本体にキャビティを形成することと、請求項1~14のいずれか一項に記載のICモジュールを前記キャビティに埋め込むこととを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体認証可能なスマートカードのための集積回路(IC)モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートカードは、広く使用されており、例えば、アクセスカード、クレジットカード、デビットカード、プリペイドカード、ポイントカード、身分証明カード、などを含む。スマートカードは、データを格納し、カードのベアラおよび/または外部デバイスと、例えば近距離無線通信(NFC)などの非接触技術を介して対話する能力を備えた電子カードである。これらのスマートカードは、アクセスを可能にしたり、トランザクションを許可したりするために、リーダと対話して情報を通信することができる。
【0003】
指紋認証などの生体認証は、スマートカードにおいてますます一般的に使用されるようになってきている。生体認証を完全に搭載したスマートカードは、バイオメトリック・システム・オン・カード(ISO/IEC 17839-1で定義されているBSoC)デバイスと呼ばれ、例えば金融取引を許可するために、スマートカードのセキュア機能へのアクセスを可能にするために、組み込まれたバイオメトリック取り込みデバイス(指紋センサなど)を介してユーザと対話することができる。
【0004】
図1が、今日使用されている生体認証可能なスマートカード100の一般的なアーキテクチャを概略的に示している。スマートカード100は、指紋モジュール101およびICモジュール102を含み、どちらもスマートカード本体103に積層後に埋め込まれる。どちらのモジュール101,102も、積層プロセスの最中にスマートカード本体103に埋め込まれた配線にはんだ付けされる。配線は、モジュール101、102間でデータおよび電力を伝送するための相互接続ワイヤ104と、インターフェースデバイス(例えば、販売時点情報管理端末)からの電力の収受および非接触通信のためにICモジュール102に接続されたアンテナ105とを備える。
【0005】
このアーキテクチャは効果的であるが、既存の生体認証可能でないスマートカードよりも製造に関してコストが高く複雑である。結果として、このようなデバイスによって提供されるセキュリティおよび利便性の向上について顧客からの需要が高まっているにもかかわらず、生体認証可能なスマートカードが、スマートカードの製造業者にとって望ましくないものになる。
【発明の概要】
【0006】
したがって、簡単かつ費用効率の高いやり方で製造することができる生体認証可能なスマートカードが必要とされている。
【0007】
本発明は、スマートカード本体に積層後に埋め込まれる集積回路(IC)モジュールを提供し、このモジュールは、少なくとも1つのスマートカード機能を実行するように構成され、非接触インターフェースロジックおよび接触インターフェースロジックを備えているセキュア要素と、モジュールがスマートカード本体に埋め込まれたときに露出するように構成された複数の外部接点パッドを定めており、セキュア要素に通信した接点プレートと、モジュールがスマートカード本体に埋め込まれたときに露出するように構成されたセンサ表面を備えており、セキュア要素に通信した生体センサとを備える。
【0008】
指紋センサとセキュア要素とを統合することにより、スマートカードを組み立てる際に、単一のモジュールのみをスマートカード本体に埋め込めばよい。これにより、製造プロセスの複雑さが軽減され、積層後に必要となる処理(例えば、切削、埋め込み、および例えば熱で活性化される導電性接着フィルムによる接続の活性化)の量が実質的に半減する。さらに、モジュールとスマートカードとの間の相互接続部が製造上の欠陥または使用中の故障の一般的な部位であるため、製造不良率が低下し、平均製品寿命が長くなる。
【0009】
さらに、単一の複合型のICモジュールを製造することは、ただ1つの製造プロセスしか必要とせず、セキュア要素および指紋センサの要素を統合するために、単一のダイ上で製造するなどによる費用効果の高いやり方が存在し得るため、別個のモジュールを製造するよりも安価になり得る。
【0010】
モジュールは、スマートカード本体に埋め込まれたアンテナに導電可能に接続されるアンテナ接点パッドを備えることができる。これに代え、あるいは加えて、モジュールは、スマートカード本体に埋め込まれたアンテナに誘導によって電気的に接続されるモジュールアンテナを備えることができる。
【0011】
モジュールアンテナが使用される場合、ICモジュールは、モジュールアンテナとスマートカード本体に埋め込まれたアンテナとの間の結合を強化するために、フェライトコアを備えてもよい。
【0012】
モジュールは、セキュア要素のための電力をアンテナを介して受け取るように構成されてよい。モジュールは、セキュア要素のための電力を接点プレートの接点パッドを介して受け取るように構成されてよい。
【0013】
セキュア要素は、アンテナを介して非接触で通信するように構成されてよい。モジュールは、接点プレートの接点パッドを介し通信するように構成されてよい。
【0014】
各々の接点パッドが、セキュア要素と通信することができる。随意により、接点プレートは、1つ以上の非接続領域をさらに備えてもよい。例えば、いくつかの実装形態において、接点プレートのC4およびC8接点パッドは、セキュア要素によって使用されなくてもよく、したがってセキュア要素に接続されなくてもよい。
【0015】
非接触通信ロジックは、ISO/IEC 14443-3による通信を可能にできる。接触通信ロジックは、ISO/IEC 7816-3による通信を可能にできる。
【0016】
少なくとも1つのスマートカード機能は、金融取引を含んでよいアクションの承認のための検証を含み得る。
【0017】
少なくとも1つのスマートカード機能は、接点パッドまたはアンテナを介して受信されてよい非生体認証識別コードの検証を含み得る。
【0018】
少なくとも1つのスマートカード機能は、生体センサへと提示された生体識別子の検証を含み得る。検証は、生体センサによって取得された生体データを、セキュア要素内に事前に格納されてよい基準生体データと比較することを含み得る。
【0019】
少なくとも1つのスマートカード機能は、生体センサへと提示された生体識別子に基づくユーザの生体認証登録を含み得る。生体認証登録は、基準生体データを生成することを含み得る。基準データは、生体センサを使用して取得された複数の生体データセットに基づいて生成されてよく、各々のデータセットは、生体センサへの同じ生体データの提示に対応する。
【0020】
ICモジュールは、モジュールがスマートカード本体に埋め込まれたときに露出するように構成された保護コーティングを備えてよい。保護コーティングは、生体センサのセンサ表面を覆ってよい。保護コーティングは、接触スマートカード読取装置への挿入、好ましくは接触スマートカード読取装置への繰り返しの挿入に耐えるように構成されてよい。例えば、保護コーティングは、スマートカード読取装置への少なくとも1000回の挿入に耐えるように構成されてよい。
【0021】
センサを覆う保護コーティングは、電気絶縁性保護コーティングであってよい。
【0022】
保護コーティングは、接点パッドを覆ってもよい。接点パッドを覆う保護コーティングは、導電性であってよい。
【0023】
生体センサは、指紋センサ、好ましくは容量式指紋センサであってよい。
【0024】
生体センサのセンサ表面は、ICモジュールのうちの外部接点パッドと同じ面に配置されてよい。生体センサのセンサ表面は、外部接点パッドの間に配置されてよい。センサ表面は、10mm未満の高さおよび6mm未満の幅、より具体的には9.32mm未満の高さおよび5.62mm未満の幅を有することができる。したがって、センサ表面は、ISO/IEC 7816-2に定められた接点パッド位置の間の空間に収まることができる。
【0025】
あるいは、外部接点パッドが、ICモジュールの第1の面に位置してよく、生体センサのセンサ表面が、ICモジュールの第2の反対側の面に位置してよい。したがって、ICモジュールの第1の面および第2の面の両方が、ICモジュールがスマートカード本体に埋め込まれたときにスマートカード本体から露出するように構成されてよい。随意により、ICモジュールは、ICモジュールの第1の面がスマートカード本体のキャビティへと埋め込まれるように構成されてよい。
【0026】
モジュールは、1mm未満、随意により0.84mm未満の厚さを有してよく、これはID-1フォームファクタを有するISO/IEC 7810スマートカードの最大厚さである。いくつかの実施形態において、厚さは0.6mm未満であってよい。
【0027】
モジュールは、20mm未満、随意により15mm未満の幅を有してよい。
【0028】
モジュールは、20mm未満、随意により15mm未満、さらに随意により10mm未満の高さを有してよい。
【0029】
モジュールは、単一の構成要素としてパッケージ化されてよく、すなわち、単一の構成要素としてスマートカードに埋め込まれるように構成されてよい。
【0030】
さらに、本発明は、キャビティを含んでいるスマートカード本体と、スマートカード本体に埋め込まれたアンテナと、スマートカード本体のキャビティ内に埋め込まれ、アンテナに電気的に通信した上述のようなICモジュールとを備える生体認証可能なスマートカードを提供する。
【0031】
スマートカードは、50mm~100mm、例えば85.47mm~85.72mmの幅、および30mm~70mm、例えば53.92mm~54.03mmの高さを有することができる。スマートカードは、1mm未満、随意により0.84mm未満、例えば約0.76mm(例えば、±0.08mm)の厚さを有することができる。
【0032】
スマートカードは、ISO/IEC 7810による識別カード、随意によりISO/IEC 7810によるID-1の識別カードであってよい。
【0033】
スマートカードは、クレジットカード、デビットカード、プリペイドカード、または他の決済カードなどの決済カードであってもよい。他の実施形態において、スマートカードは、アクセスカード、ポイントカード、および身分証明カードのうちの1つであってもよい。
【0034】
スマートカード本体は、例えば100℃を超える温度または150℃を超える温度を含むホットラミネーションプロセスによって形成された積層スマートカード本体を備えることができる。スマートカード本体は、PVCまたはポリカーボネートなどのプラスチック材料から形成されてよい。
【0035】
ICモジュールは、エポキシ接着剤であってよい接着剤によってキャビティ内に固定されてよい。
【0036】
またさらに、本発明は、スマートカードを製造する方法であって、積層プロセスによって、アンテナが埋め込まれたスマートカード本体を形成することと、スマートカード本体にキャビティを形成することと、上述のようなICモジュールをキャビティに埋め込むこととを含む方法を提供する。
【0037】
積層プロセスは、100℃を超え、135℃を超え、あるいは150℃を超える温度へとスマートカード本体を加熱することを含んでよいホットラミネーションプロセスを含んでよい。典型的には、ホットラミネーションは、250℃未満の温度で行われる。
【0038】
積層プロセスは、随意により、これらの温度に加熱しながらスマートカード本体に圧力を加えることを含んでもよい。圧力は、少なくとも3MPa、随意により少なくとも5MPaであってよい。
【0039】
キャビティは、例えば切削によって材料を除去することによって形成されてよい。切削は、レーザミリングを含んでよい。
【0040】
キャビティは、例えば、キャビティの縁部よりもキャビティの中央において深くなる階段状のキャビティを備えてよい。
【0041】
キャビティは、スマートカード本体を完全に貫き、すなわち貫通孔を形成し、ICモジュールが埋め込み後にスマートカード本体の両面に露出するように延びてよい。あるいは、キャビティは、スマートカード本体を途中までしか貫かず、すなわち埋め込み後にICモジュールの片面のみがスマートカード本体から露出するように延びてもよい。
【0042】
本方法は、ICモジュールを埋め込む前にキャビティおよび/またはICモジュールに接着剤を塗布することを含んでよい。接着剤は、熱で活性化される導電性接着フィルムであってよい。
【0043】
本方法は、例えばはんだ付け、または異方性エポキシ接着剤などの導電性接着剤によって、ICモジュールをスマートカード本体に埋め込まれたアンテナに導電可能に接続することを含んでよい。
【0044】
ここで、特定の好ましい実施形態を、添付の図面を参照して、あくまでも例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】生体認証可能なスマートカードの先行技術のアーキテクチャを示している。
【
図2】本開示による生体認証可能なスマートカードのアーキテクチャを示している。
【
図3】
図2のスマートカードのための第1のICモジュールの外面を示している。
【
図4】
図3のスマートカードのための第2のICモジュールの外面を示している。
【
図5】
図2のスマートカードのICモジュールおよびスマートカード本体の断面図を示している。
【
図6】
図2のモジュールとアーキテクチャとの間のインターフェースの詳細を示している。
【
図7】別のICモジュールおよびスマートカード本体の断面図を示している。
【
図8】
図7のICモジュールの後面図を示している。
【
図9】
図7のICモジュールの前面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図2が、生体認証可能なスマートカード1のアーキテクチャを概略的に示している。
【0047】
図示のスマートカード1は、約86mmの幅と、約54mmの高さと、約0.76mmの厚さとを有するISO/IEC 7810によるID-1の識別カードである。
【0048】
スマートカード1は、スマートカード本体3に埋め込まれたアンテナ2を備える。スマートカード本体3は、アンテナ2を包むように、例えばPVCからのホットラミネーション処理によって形成されている。
【0049】
スマートカード本体3は、ICモジュール4が埋め込まれるキャビティ12をさらに備える。ICモジュール4は、複数の接点パッド5aを定める接点プレート5と、指紋センサ6と、セキュア要素7とを備える。
【0050】
ICモジュール4は、無線周波数(RF)励起場からアンテナ2を使用して電力を受け取るために、アンテナ2と電気的に通信する。ICモジュール4は、例えばISO/IEC 14443-3によるアンテナ2を介した通信を可能にするための非接触通信ロジックと、例えばISO/IEC 7816-2および/またはISO/IEC 7816-3によるICモジュール4の接点プレート5を介した通信を可能にするための接触通信ロジックとを含む。通信ロジックは、ICモジュール4による適切なスマートカードリーダ(それぞれ、非接触または接触スマートカードリーダのいずれか)とのセキュアな通信の確立を可能にする。
【0051】
図3および
図4が、ICモジュール4の接点プレート5の2つの選択肢としての構成を示している。第1の構成において、ICモジュール4は8個の接点パッド5aを含み、第2の構成において、ICモジュール4は6個の接点パッド5aを含む。両方の構成における接点パッド5aは、ISO/IEC 7816-2に従って配置されている。
【0052】
ICモジュール4の指紋センサ6のセンサ領域6aが、接点パッド5aの間に設けられている。ISO/IEC 7816-2によって指定される接点パッド5aの位置は、おおむね5.62mm×9.32mmのスペースを残す。伝統的に、この領域は、接点プレート5へのセキュア要素7の取り付けを容易にするために使用されてきた。しかしながら、この領域は、指紋センサ6が確実に機能し、決済スマートカードのスキーム認証要件を満たすために充分である。
【0053】
ICモジュール4のセキュア要素7は、指紋センサ6の背後に取り付けられるが、選択された特定のパッケージング設計に応じて、他の位置も可能であってよいセキュア要素7は、セキュアメモリおよびセキュアプロセッサを備えるセキュアな処理環境を提供する。
【0054】
通信ロジックに加えて、セキュア要素7は、スマートカード1のさまざまなスマートカード機能を実行するように構成される。
【0055】
典型的には、決済スマートカード1において、セキュア要素7の最も重要なスマートカード機能は、金融取引の承認のための検証である。他のスマートカードにおいて、スマートカード機能は、例えば制限された領域へのアクセスを許可するなどのための別のアクションの承認のための検証を含むことができる。
【0056】
他のスマートカード機能として、生体認証、非生体認証、または組み合わせのいずれかを含んでよいスマートカード1のベアラの検証が挙げられる。
【0057】
生体認証は、指紋センサ6に提示されたカードベアラの指から、微小データなどの指紋データを取り込むことと、取り込んだ指紋データを予め記憶された基準指紋データと比較することとを含む。
【0058】
非生体認証は、カードベアラによってもたらされるPINまたはパスワードなどの非生体認証識別コードの認証を含むことができる。非生体認証識別コードは、典型的には、例えばスマートカード端末から、接点パッド5aを介して受信される。しかしながら、他の実施形態においては、非生体認証識別コードをアンテナ2を介して非接触で受信してもよい。
【0059】
さらなるスマートカード機能は、カードのベアラの生体認証登録を含む。生体認証登録において、カードのベアラは、指紋センサ6に指を繰り返し提示し、指紋センサ6は、微小データなどの複数組の指紋データを取り込む。取り込んだ指紋データに基づいて、セキュア要素7は、将来の生体認証で使用するための生体基準データを生成する。
【0060】
ICモジュール4は、システム・オン・カード(BSoC)スマートカード1で使用されるように意図される。したがって、ICモジュール4は、生体基準データをスマートカード1から送信することがないように構成され、好ましくは、生体基準データは、セキュア要素7のセキュアな処理環境から出ることがない。
【0061】
図5が、ICモジュール4およびICモジュール4を受け入れるためのキャビティ12を含むスマートカード本体3の一部分の断面図を示している。
【0062】
キャビティ12は、任意の適切な方法によって形成されてよい。例えば、ラミネーションによってスマートカード本体3を形成した後に、切削などによってカード本体から材料を除去することによって、キャビティ12を形成することができる。レーザミリングが、そのようなキャビティを形成するためにスマートカード業界で一般的に使用されている。
【0063】
キャビティ12は、ICモジュール4の形状にぴったりと一致するような大きさである。図示の実施形態において、キャビティ12は、セキュア要素7および指紋センサ6を受け入れるように中央において最も低い階段状のキャビティである。しかしながら、必要に応じて他の形状も使用可能である。
【0064】
接点プレート5は、その中央に、指紋センサ6を受け入れる穴を含む。指紋センサの下方にセキュア要素7が取り付けられる。これを、セキュア要素のダイおよび指紋センサのダイを、例えばフリップチップ法またはバンピング法で接続することによって実現することができる。ダイを、充分に薄いICモジュール4を達成するために、ダイレベルにおいて事前に薄くすることができる。セキュア要素7および指紋センサ6は、別個のシリコンダイまたは単一のシリコンダイとして形成されてよい。
【0065】
保護コーティング8が、ICモジュール4の指紋センサ6の外面を覆って適用される。保護コーティング8は、耐スクラッチ性が高く、指紋センサ6のセンサ領域6aを覆う場所において絶縁体である保護コーティング8は、スマートカード1が接触読取装置に挿入されるときに指紋センサ6を保護するように作用し、そうでなければ、接触読取装置の接点が指紋センサ6のセンサ領域6aを擦り、損傷を引き起こす可能性がある。
【0066】
保護コーティング8は、例えばICモジュールに通常使用される金属ほど耐摩耗性でなくてもよいが、それでもなお、生体認証可能なスマートカード1を使用して実行されるトランザクションの大部分は非接触で実行されるため、指紋センサ6を保護するために充分である。接触でのトランザクションは、通常は、バックアップの動作モードとしてのみ使用され、これらの場合、指紋検証は必要とされない。
【0067】
図示の実施形態において、保護コーティング8は、ICモジュール4の外面の全体にわたって均一な仕上げを提供するために、接点プレート5も覆って適用される。接点パッド5aを覆う場所で、保護コーティング8は導電性にされる。
【0068】
図示のICモジュール4は、コイル・オン・モジュール(CoM)ICモジュール4として構成され、したがって、一体型モジュールアンテナ9を備える。モジュールアンテナ9は、スマートカード1のアンテナ2のモジュール結合部2aと誘導結合するように構成される。アンテナ2のモジュール結合部2aは、モジュールアンテナ9と誘導結合するようなサイズである。
【0069】
ICモジュール4は、モジュールアンテナ9とスマートカードアンテナ2との間の結合を強化するために、モジュールアンテナ9に隣接するフェライトコア10を備えてもよい。
【0070】
ICモジュール4をスマートカードアンテナ2に電気的に接続するためのモジュールアンテナ9の使用は、スマートカード1の製造を好都合に単純化する。キャビティ12を切削するときの精度が低くてすみ、さらには、ICモジュール4をアンテナ2にはんだ付けまたは他の様態で物理的に接続する必要性が回避される。代わりに、ICモジュール4は、任意の適切な接着剤を使用してキャビティ12内に固定されてよい。
【0071】
さらに、スマートカード1の寿命におけるそのような物理的接続の不具合は、スマートカードの一般的な故障モードを代表するため、この物理的接続をなくすことにより、スマートカード1の寿命を延ばすことができる。
【0072】
当然ながら、ICモジュール4は、物理的な接続で使用されてもよい。したがって、ICモジュール4は、モジュールアンテナ9を省略してもよく、代わりに、アンテナ2への導電性電気接続のための1対のアンテナ接点パッドを備えてもよい。そのような実施形態において、アンテナ接点パッドは、ICモジュールの下面に、すなわちスマートカード本体2に面して配置される。
【0073】
本開示に記載の単一のバイオメトリックICモジュール4は、
図1に示した先行技術の解決策と比較して取り付けがさらに容易であり、なぜならば、接続の総数が、例えばISOプレートモジュール102における6から、単一のバイオメトリックモジュール4についてはわずか2へと、大幅に減少するからである。
【0074】
図7~
図9が、キャビティ32を含むスマートカード本体23、ならびに接点プレート25、指紋センサ26、およびセキュア要素27を備えるICモジュール24の別の設計を示している。
【0075】
これらの図に示されるICモジュール24は、上述したICモジュール4と同様に機能するため、相違点についてのみ説明する。対応する要素は、20だけ増やした同じ参照番号で示されており、上記の説明が、とくに明示されない限りは、このICモジュール24の対応する要素にも当てはまる。
【0076】
この実施形態において、ICモジュール24は、スマートカード本体23を貫いて埋め込まれるように設計される。したがって、キャビティ32は、その中央においてスマートカード本体23を完全に貫通して延び、接点プレート25は、キャビティ32へと挿入されるICモジュール24の面に形成される。
【0077】
この実施形態において、指紋センサ26は、ICモジュール24の反対側の面に形成され、ICモジュール24が埋め込まれたときにキャビティ32から露出する。好都合には、これは、指紋センサ26とセキュア要素27との両方を含むICモジュール24の利点を可能にする一方で、依然として比較的大きな指紋センサ26を可能にする。さらに、指紋センサ26が使用時に接触カード読取装置の接点によってこすられることがないため、指紋センサ26上の保護コーティング8の必要性がなくなる。しかしながら、必要に応じて、保護コーティング(図示せず)が接触プレート25または指紋センサ26に適用されてもよい。
【0078】
ICモジュール24は、その厚さがスマートカード本体23の厚さに対応するように寸法付けられる。典型的には、約0.76mm(例えば、±0.08mm)である。したがって、接点プレート25および指紋センサ26のセンサ表面の両方が、スマートカード本体23のそれぞれの表面と同一平面にある。これを達成するために、接点プレート25と指紋センサ26との間に充てん材料33を使用することができる。
【0079】
ICモジュール24は、指紋センサ26が接点プレート25の縁部を過ぎて広がる階段状の構成を有する。同様に、キャビティ32は、キャビティ32のリップが指紋センサ26の縁部を保持するように、対応する階段状の形状を有する。
【0080】
図示の実施形態において、ICモジュール24は、スマートカード本体23のモジュール接点35に電気的につながるように構成されたアンテナ接点34を備える。次いで、モジュール接点35は、埋め込みアンテナ(図示せず)に電気的につながる。アンテナ接点34およびモジュール接点35は、はんだ付けや、異方性導電エポキシなどの導電性接着剤の使用など、任意の適切な技術によって電気的に接続されてよい。
【0081】
他の実施形態において、ICモジュール24は、先行の図に示されたICモジュール4と同様に、スマートカード本体内のアンテナに誘導接続されてもよい。
【国際調査報告】