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特表2024-539497共鳴エネルギー転移に基づく全遺伝子コードNAD+タンパク質プローブ、ならびにその調製方法及び応用
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  • 特表-共鳴エネルギー転移に基づく全遺伝子コードNAD+タンパク質プローブ、ならびにその調製方法及び応用 図1A
  • 特表-共鳴エネルギー転移に基づく全遺伝子コードNAD+タンパク質プローブ、ならびにその調製方法及び応用 図1B
  • 特表-共鳴エネルギー転移に基づく全遺伝子コードNAD+タンパク質プローブ、ならびにその調製方法及び応用 図1C
  • 特表-共鳴エネルギー転移に基づく全遺伝子コードNAD+タンパク質プローブ、ならびにその調製方法及び応用 図2
  • 特表-共鳴エネルギー転移に基づく全遺伝子コードNAD+タンパク質プローブ、ならびにその調製方法及び応用 図3
  • 特表-共鳴エネルギー転移に基づく全遺伝子コードNAD+タンパク質プローブ、ならびにその調製方法及び応用 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】共鳴エネルギー転移に基づく全遺伝子コードNAD+タンパク質プローブ、ならびにその調製方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241018BHJP
   C12N 9/88 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 9/02 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/53 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/60 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241018BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241018BHJP
   C12Q 1/66 20060101ALI20241018BHJP
   C12Q 1/527 20060101ALI20241018BHJP
   G01N 33/542 20060101ALI20241018BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N9/88
C12N9/02
C12N15/62 Z
C12N15/53
C12N15/60
C12N15/867 Z
C12N5/10
C12Q1/02
C12Q1/66
C12Q1/527
G01N33/542 A
C12P21/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547803
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 CN2021138560
(87)【国際公開番号】W WO2023070887
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111273571.9
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524156249
【氏名又は名称】中科▲輔▼▲めい▼医科技(深▲せん▼)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130993
【弁理士】
【氏名又は名称】小原 弘揮
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼柳青
(72)【発明者】
【氏名】於邱黎▲陽▼
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ02
4B063QQ13
4B063QQ64
4B063QR02
4B063QR20
4B063QR65
4B063QR66
4B063QS32
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
4B064AG01
4B064BH20
4B064CA19
4B064CB30
4B064CC24
4B064DA13
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD50
4B065CA24
4B065CA46
4B065CA52
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045DA89
4H045EA50
4H045EA61
4H045FA74
(57)【要約】
本発明に係る共鳴エネルギー転移に基づく全遺伝子コードNADタンパク質プローブ、ならびにその調製方法及び応用は、具体的に、共鳴エネルギー転移ドナー、NAD応答タンパク質及び共鳴エネルギー転移アクセプターから直列接続されてなる全遺伝子コードNADタンパク質プローブであって、NAD応答タンパク質は、DNAリガーゼの突然変異体であり、前記DNAリガーゼの突然変異体の配列は、SEQ ID NO.3、又はSEQ ID NO.6に示される通りであり、前記共鳴エネルギー転移ドナーは、ルシフェラーゼ又は蛍光タンパク質から選ばれ、前記共鳴エネルギー転移アクセプターは、蛍光タンパク質ら選ばれ、かつ共鳴エネルギー転移アクセプターの蛍光タンパク質として、共鳴エネルギー転移ドナーの蛍光タンパク質と異なる、全遺伝子コードNADタンパク質プローブを提供する。前記タンパク質プローブは、生細胞において合成し、生細胞中のNAD濃度を検出することに用いられ得る。
【選択図】図1A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共鳴エネルギー転移ドナー、NAD応答タンパク質及び共鳴エネルギー転移アクセプターから直列接続されてなる全遺伝子コードNADタンパク質プローブであって、
NAD応答タンパク質は、DNAリガーゼの突然変異体であり、前記DNAリガーゼの突然変異体の配列は、SEQ ID NO.3、又はSEQ ID NO.6に示される通りであり、
前記共鳴エネルギー転移ドナーは、ルシフェラーゼ又は蛍光タンパク質から選ばれ、前記共鳴エネルギー転移アクセプターは、蛍光タンパク質ら選ばれ、かつ共鳴エネルギー転移アクセプターの蛍光タンパク質として、共鳴エネルギー転移ドナーの蛍光タンパク質と異なることを特徴とする、全遺伝子コードNADタンパク質プローブ。
【請求項2】
前記共鳴エネルギー転移ドナーは、環状に配列される生物発光タンパク質cpNLuc又は緑色蛍光タンパク質mNeoGreenから選ばれ、
好ましくは、環状に配列される生物発光タンパク質cpNLucは、G4V突然変異が組み込まれた生物発光タンパク質cpNLucであり、
より好ましくは、cpNLucの突然変異体配列は、SEQ ID NO.4又はSEQ ID NO.8であり、緑色蛍光タンパク質mNeoGreenの配列は、SEQ ID NO.10又はSEQ ID NO.13であることを特徴とする、請求項1に記載の全遺伝子コードNADタンパク質プローブ。
【請求項3】
前記共鳴エネルギー転移アクセプターは、緑色蛍光タンパク質mNeoGreen又は赤色蛍光タンパク質mScarletから選ばれ、
好ましくは、赤色蛍光タンパク質mScarletはその中の残基G225を欠失させた赤色蛍光タンパク質mScarletであり、
より好ましくは、mScarletの突然変異体配列は、SEQ ID NO.2又はSEQ ID NO.12であり、緑色蛍光タンパク質mNeoGreenの配列は、SEQ ID NO.10又はSEQ ID NO.13であることを特徴とする、請求項1に記載の全遺伝子コードNADタンパク質プローブ。
【請求項4】
前記NADタンパク質プローブは、mScarlet突然変異体、LigA突然変異体及びcpNLuc突然変異体から直列接続されて構成され、もしくは、
前記NADタンパク質プローブは、mNeoGreen突然変異体、LigA突然変異体及びcpNLuc突然変異体から直列接続されて構成され、もしくは、
前記NADタンパク質プローブは、mScarlet突然変異体、LigA突然変異体及びmNeoGreen突然変異体タンパク質から構成され、
好ましくは、そのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.5、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.9又はSEQ ID NO.11であることを特徴とする、請求項1に記載の全遺伝子コードNADタンパク質プローブ。
【請求項5】
NAD濃度を検出する薬剤の調製における請求項1~4の何れか1項に記載のNADタンパク質プローブの使用。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載のNADタンパク質プローブを含むNAD濃度を検出する組成物であって、
好ましくは、前記組成物に生物発光基質をさらに含むことを特徴とする、NAD濃度を検出する組成物。
【請求項7】
請求項1~4の何れか1項に記載のNADタンパク質プローブをコードするヌクレオチド配列。
【請求項8】
請求項7に記載のヌクレオチド配列を含むベクターであって、好ましくは、前記ベクターは、レンチウイルス発現ベクターであることを特徴とする、ベクター。
【請求項9】
請求項1~4の何れか1項に記載のNADタンパク質プローブを発現できる細胞であって、
好ましくは、前記細胞は、生細胞に請求項8に記載のベクターを形質転換することで得られ、前記ベクターは細胞において請求項1~4の何れか1項に記載のNADタンパク質プローブを翻訳して得ることができることを特徴とする、細胞。
【請求項10】
NADを調製研究する実験モデルにおける請求項9に記載の細胞の使用であって、
好ましくは、前記実験モデルは、NADの合成及び代謝過程におけるアゴニスト又は阻害剤の研究に用いられることを特徴とする、NADを調製研究する実験モデルにおける請求項9に記載の細胞の使用。
【請求項11】
S11)請求項1~4の何れか1項に記載のタンパク質プローブを用いて、NAD濃度が検出される薬剤と混合させるステップと、
S12)それぞれ、プローブにおける共鳴エネルギー転移ドナー及び共鳴エネルギー転移アクセプターの最大発光波長で発光強度を検出し、両者の発光強度比を計算するステップと、
S13)標準曲線に回帰して対応するNAD濃度を得るステップ、もしくは、
S13)異なる時点での発光強度比を検出して、異なる時点でのNAD濃度変化のトレンドを得るステップ、もしくは、
S13)異なる活性成分を添加した後、発光強度比の変化を検出し、異なる活性成分のNAD濃度変化に対する影響を得るステップと、を含むNAD濃度を検出する方法であって、
好ましくは、ステップS11)では、前記タンパク質プローブにおける共鳴エネルギー転移ドナーがルシフェラーゼである場合、発光強度を検出する前に、さらに生物発光基質を添加する必要があり、
好ましくは、ステップS13)では、標準曲線の調製方法として、異なる標準濃度のNADを用い、それぞれステップS11~S12により、異なる濃度に対応するNADが対応する発光強度比を検出し、NAD濃度の対数値を横軸とし、発光強度比を縦軸として標準曲線を作成することを特徴とする、NAD濃度を検出する方法。
【請求項12】
S21)請求項8に記載のベクターをレンチウイルス感染法により供試細胞に形質転換し、蛍光タンパク質の蛍光シグナルをマーカーとして選別することにより、供試安定細胞株を得るステップと、
S22)それぞれ、ベクター中のヌクレオチドがコードするNADタンパク質プローブにおける共鳴エネルギー転移ドナー及び共鳴エネルギー転移アクセプターの最大発光波長で発光強度を検出し、両者の発光強度比を計算するステップと、
S23)標準曲線に回帰して対応する細胞におけるNAD濃度を得るステップ、もしくは、
S23)異なる時点での発光強度比を検出し、異なる時点での細胞におけるNAD濃度変化のトレンドを得るステップ、もしくは、
S23)異なる活性成分を添加した後、発光強度比の変化を検出し、異なる活性成分の細胞におけるNAD濃度変化に対する影響を得るステップと、を含むことを特徴とする、生細胞におけるNAD濃度を検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の特許は、バイオプローブの分野に属し、具体的には、共鳴エネルギー転移に基づく全遺伝子コードNADタンパク質プローブ、ならびにその調製方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、生物試料中のNADの含有量は下記のような方法で検出され得る。
【0003】
1)NAD比色キット:
【0004】
NAD比色キットは、まず、酵素反応によりNADを全てNADHに転換した後、生成されたNADHにより染料分子を還元してその吸光度を変え、最後に分光光度計により染料分子の濃度を決定して試料中のNAD濃度を推定する。
【0005】
2)高速液体クロマトグラフィー-質量分析法:
【0006】
高速液体クロマトグラフィー-質量分析法において、高速液体クロマトグラフィーにより供試試料中の異なる画分を単離するとともに、異なる画分の吸光強度を検出する。高速液体クロマトグラフィーと同時に、異なる画分はイオン化により質量分析計に入り、核細胞質比で異なる画分を定性し、イオン強度で異なる画分を定量する。
【0007】
3)蛍光強度変化に基づく蛍光タンパク質プローブ:
【0008】
タンパク質工学によりNADを感知する蛍光タンパク質プローブを設計する。該方法は、通常NAD感知タンパク質と蛍光タンパク質とを融合させ、NAD感知タンパク質がNADと特異的に結合した後で生成した立体配座の変化により、蛍光タンパク質の立体配座を調整し、さらに、蛍光タンパク質の量子収率等の光学的特徴に影響を与え、プローブ中の蛍光タンパク質によって発される蛍光シグナルの強さは、系中のNAD濃度によって変化する。
【0009】
4)共鳴エネルギー転移に基づく半合成NADタンパク質プローブ:
【0010】
該方法は、蛍光又は生物発光共鳴エネルギー転移原理によりNAD濃度を検出し、組み換えタンパク質(タンパク質部分)及び合成蛍光リガンド分子(合成部分)により共同で半合成タンパク質プローブを構築してNADの検出を実現する。このようなプローブは、ルシフェラーゼ(又は蛍光タンパク質)、NAD結合タンパク質及び自己マーカータンパク質によって融合されてなり、なかでも、自己マーカータンパク質には、共有結合を介して、1つの赤い発蛍光団と1つのNAD結合タンパク質のリガンドとを含む1つの合成分子が連結されている。NAD結合タンパク質及びリガンドの親和力は、系中のNAD濃度によって調節されるので、自然状態で、センサータンパク質中のNAD結合タンパク質はリガンドと結合せず、プローブが開状態となり、発蛍光団とルシフェラーゼ(又は蛍光タンパク質)とが離間され、共鳴エネルギー移転が発生せず、プローブ全体はルシフェラーゼ(又は蛍光タンパク質)に固有の放出光を発する。系中のNAD濃度が上がる場合、NAD結合タンパク質はリガンドと結合することで、発蛍光団はルシフェラーゼ(又は蛍光タンパク質)に近づき、共鳴エネルギー移転が発生して、プローブ全体は発蛍光団の赤色光を発する。該プローブの発光色は試料中のNAD濃度によって変化するので、ルシフェラーゼ(又は蛍光タンパク質)及び赤色発蛍光団の発光強度比を測定すれば、系中のNAD濃度を定量することができる。
【0011】
NAD比色キット及び高速液体クロマトグラフィー-質量分析法では、何れも生細胞におけるNAD濃度を測定することができない。このような方法に基づく単回の検出に、多くの細胞(約100万個)を分解させることが必要であり、この分解過程で細胞NAD濃度の時間及び空間情報を失うと同時に、試料分解過程は細胞におけるNAD濃度を変化させて、正しくない結果を引き起こす。また、単一の試料の検出に10~30分間がかかり、大型計器に依存し、大量の試料の検出が大きく制限されているので、NADの代謝研究及び薬物開発の律速段階の一つである。
【0012】
蛍光プローブに基づく生細胞のNAD測定方法では、生細胞及び細胞下構造におけるNADのダイナミック変化を長期間にわたって測定することは困難であり、主な原因は、現在蛍光プローブは蛍光マイクロイメージングのカウントに依存する必要があることで、蛍光の光毒性を誘発して生細胞を長期間にわたって測定しにくいことである。同時に、このようなプローブの使用は、蛍光顕微鏡等の大型精密計器に依存するので、大量の試料の検出が制限されている。また、このようなプローブは、単一波長の蛍光強度シグナルでNAD濃度を定量することにより、プローブ分子の発現量の動的差異はNADの定量に著しく干渉している。従って、このようなプローブの使用過程で、校正治具として他の色の内部標準蛍光タンパク質に依存するので、このようなプローブの使用過程は複雑となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
共鳴エネルギー転移に基づく半合成NADタンパク質プローブは、共鳴エネルギー転移の原理によりNAD濃度を定量して、自己校正を実現し、単一波長に依存せず、二重波長光強度比で供試物の濃度を定量する。しかし、このタイプのプローブは組み換えタンパク質及び合成蛍光リガンド分子で共同で構成されるため、生細胞のNAD検出を行う場合、細胞はプローブの融合タンパク質部分のみを自律的に発現することができ、合成分子部分は細胞外で提供される必要がある。細胞外合成分子に対する依存により、多くの生細胞試料の長期間観察等の条件におけるこのようなプローブの応用は制限されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
プローブの機能上では、本発明は、1)プローブ構造の全遺伝子コードを実現し、合成蛍光リガンド分子の共鳴エネルギー転移に依存しないNADの定量を完成させる。2)プローブシグナルの自己校正、即ち、二重波長光強度比に基づくNADの定量を実現させる。
【0015】
本発明は、幾つかの共鳴エネルギー転移に基づく全遺伝子コードNAD分子プローブを提供する。該シリーズの分子プローブは、インビトロ及び細胞内でNAD分子に応答することができ、高特異性、適切なC50値(50%のプローブの立体配座変化を招く場合の供試物の濃度)及び高ダイナミックレンジ等のメリットを有する。
【0016】
本発明の一態様では、共鳴エネルギー転移ドナー、NAD応答タンパク質及び共鳴エネルギー転移アクセプターから直列接続されてなる全遺伝子コードNADタンパク質プローブであって、NAD応答タンパク質は、DNAリガーゼの突然変異体であり、前記DNAリガーゼの突然変異体の配列は、SEQ ID NO.3、又はSEQ ID NO.6に示される通りであり、前記共鳴エネルギー転移ドナーは、ルシフェラーゼ又は蛍光タンパク質から選ばれ、前記共鳴エネルギー転移アクセプターは、蛍光タンパク質ら選ばれ、かつ共鳴エネルギー転移アクセプターの蛍光タンパク質として、共鳴エネルギー転移ドナーの蛍光タンパク質と異なる全遺伝子コードNADタンパク質プローブを提供する。
【0017】
さらに、共鳴エネルギー転移ドナーは、環状に配列される生物発光タンパク質cpNLuc(circularly permuted Nano Luciferase)又は緑色蛍光タンパク質mNeoGreenから選ばれる。よりさらに、環状に配列される生物発光タンパク質cpNLucは、G4V突然変異が組み込まれた生物発光タンパク質cpNLucである。より好ましくは、cpNLucの突然変異体配列は、SEQ ID NO.4又はSEQ ID NO.8である。緑色蛍光タンパク質mNeoGreenの配列は、SEQ ID NO.10又はSEQ ID NO.13である。
【0018】
さらに、共鳴エネルギー転移アクセプターは、緑色蛍光タンパク質mNeoGreen又は赤色蛍光タンパク質mScarletから選ばれる。よりさらに、赤色蛍光タンパク質mScarletはその中の残基G225を欠失させた赤色蛍光タンパク質mScarletである。より好ましくは、mScarletの突然変異体配列は、SEQ ID NO.2又はSEQ ID NO.12である。緑色蛍光タンパク質mNeoGreenの配列は、SEQ ID NO.10又はSEQ ID NO.13である。
【0019】
さらに、前記NADタンパク質プローブは、mScarlet突然変異体、LigA突然変異体及びcpNLuc突然変異体から直列接続されて構成され、好ましくは、そのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.1、 SEQ ID NO.5又はSEQ ID NO.7である。
【0020】
さらに、前記NADタンパク質プローブは、mNeoGreen突然変異体、LigA突然変異体及びcpNLuc突然変異体から直列接続されて構成され、好ましくは、そのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.9である。
【0021】
さらに、前記NADタンパク質プローブは、mScarlet突然変異体、LigA突然変異体及びmNeoGreen突然変異体タンパク質から構成され、好ましくは、そのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.11である。
【0022】
プローブの構造では、本発明は、1)立体配座がNADによって激しく調節される1つのタンパク質ドメイン、即ち、NAD応答タンパク質を設計し、2)NAD応答タンパク質のN末端及びC末端を、それぞれ、共鳴エネルギー転移現象を形成できるドナー及びアクセプターと融合させる。該共鳴エネルギー転移ドナー及びアクセプターは、それぞれ、1つのルシフェラーゼと1つの蛍光タンパク質、又は2つの異なる色の蛍光タンパク質である。3)NAD応答タンパク質と、共鳴エネルギー転移ドナーと、アクセプターとの間の連結方法を最適化して、プローブのダイナミックレンジを最大化する。4)NAD応答タンパク質とNADの結合サイトを最適化して、プローブがNADを検出する濃度範囲を調整する。
【0023】
本発明の別の態様では、NAD濃度を検出する薬剤の調製における上記NADタンパク質プローブの使用を提供する。
【0024】
本発明のまた別の態様では、上記NAD分子プローブを含むNAD濃度を検出する組成物を提供する。
【0025】
さらに、前記組成物に緩衝液をさらに含む。
【0026】
さらに、前記組成物に生物発光基質、例えばFurimazineをさらに含む。
【0027】
本発明のさらに別の態様では、上記NADタンパク質プローブをコードするヌクレオチド配列を提供する。
【0028】
本発明のさらに別の態様では、上記ヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0029】
好ましくは、前記ベクターは、レンチウイルス発現ベクター、例えばpCDH-CMV-MCS-EF1-Neoベクター又はpcDNA3.1ベクターである。
【0030】
本発明のさらに別の態様では、上記NADタンパク質プローブを発現できる細胞を提供する。
【0031】
好ましくは、前記細胞は、生細胞に上記ベクターを形質転換することで得られ、前記ベクターは細胞において上記NADタンパク質プローブを翻訳して得ることができる。
【0032】
好ましくは、前記生細胞は、ヒト又は動物の任意の細胞を選択することができ、例えばHEK293、CHO、及びHep G2等から選ばれる。
【0033】
本発明のさらに別の態様では、NADを調製研究する実験モデルにおける上記細胞の使用を提供する。
【0034】
好ましくは、前記実験モデルは、NADアゴニスト又は阻害剤の研究に用いられる。
【0035】
本発明のさらに別の態様では、
【0036】
S11)本発明の上記タンパク質プローブを用いて、NAD濃度が検出される薬剤と混合させるステップと、
【0037】
S12)それぞれ、プローブにおける共鳴エネルギー転移ドナー及び共鳴エネルギー転移アクセプターの最大発光波長で発光強度を検出し、両者の発光強度比を計算するステップと、
【0038】
S13)標準曲線に回帰して対応するNAD濃度を得るステップ、もしくは、
【0039】
S13)異なる時点での発光強度比を検出して、異なる時点でのNAD濃度変化のトレンドを得るステップ、もしくは、
【0040】
S13)異なる活性成分を添加した後、発光強度比の変化を検出し、異なる活性成分のNAD濃度変化に対する影響を得るステップと、を含むNAD濃度を検出する方法を提供する。
【0041】
好ましくは、ステップS11)では、前記タンパク質プローブにおける共鳴エネルギー転移ドナーがルシフェラーゼである場合、発光強度を検出する前に、さらに生物発光基質を添加する必要がある。
【0042】
好ましくは、ステップS13)では、標準曲線の調製方法として、異なる標準濃度のNADを用い、それぞれステップS11~S12により、異なる濃度に対応するNADが対応する発光強度比を検出し、NAD濃度の対数値を横軸とし、発光強度比を縦軸として標準曲線を作成する。
【0043】
本発明のさらに別の態様では、
【0044】
S21)上記ベクターをレンチウイルス感染法により供試細胞に形質転換し、蛍光タンパク質の蛍光シグナルをマーカーとして選別することにより、供試安定細胞株を得るステップと、
【0045】
S22)それぞれ、ベクター中のヌクレオチドがコードするNADタンパク質プローブにおける共鳴エネルギー転移ドナー及び共鳴エネルギー転移アクセプターの最大発光波長で発光強度を検出し、両者の発光強度比を計算するステップと、
【0046】
S23)標準曲線に回帰して対応する細胞におけるNAD濃度を得るステップ、もしくは、
【0047】
S23)異なる時点での発光強度比を検出し、異なる時点での細胞におけるNAD濃度変化のトレンドを得るステップ、もしくは、
【0048】
S23)異なる活性成分を添加した後、発光強度比の変化を検出し、異なる活性成分の細胞におけるNAD濃度変化に対する影響を得るステップと、を含む生細胞におけるNAD濃度を検出する方法を提供する。
【0049】
プローブの応用において、本発明は、NAD共鳴エネルギー転移タンパク質プローブを安定発現した細胞株を構築して、生細胞におけるNAD濃度が特徴付けられている。
【発明の効果】
【0050】
本発明は、共鳴エネルギー転移に基づく全遺伝子コードNADタンパク質プローブを新しく実現した。背景技術において、全遺伝子がコードするNADタンパク質プローブは、共鳴エネルギー転移原理に基づくものではなく、蛍光タンパク質の放出光強度のみにより、NAD定量を実現することができ、プローブ分子発現量の動的差異がNAD定量に与える著しい干渉を取り除きにくい。別の背景技術では、半合成設計を使用し、共鳴エネルギー転移に基づくNAD定量を実現し、プローブ分子の発現量による干渉を解決したが、非遺伝子コード合成分子に対する依存性により、生細胞における半合成プローブの使用が制限されている。半合成されたプローブ(そのうちの一部はアミノ酸配列ではなく、細胞においてコードすることができない)に対して、全遺伝子コード型プローブの難しい課題は、半合成プローブに匹敵する大きな立体配座変化を実現するための適切なタンパク質の断片及び設計方法を見つけにくいことである。しかし、本発明は、この課題を突破した。そして、本発明によって提供されるNADタンパク質プローブは、共鳴エネルギー転移に基づくNAD定量及びプローブの全遺伝子コードを実現し、即ち、二重波長光強度比に基づくNAD定量などのプローブシグナルの自己校正を実現するだけでなく、合成蛍光リガンド分子に依存しない生細胞のNAD監視も実現する。
【0051】
同時に、本発明は、全く新しく、より良い機能を有するNADタンパク質プローブのアミノ酸配列を明らかにしている。背景技術と比較して、本発明によって提供される全遺伝子コードNADタンパク質プローブは、完全に異なるアミノ酸配列を有する。なかでも、本プローブによって使用されるNAD応答タンパク質は、全く新しく、ドメイン界面残基の突然変異(R68N/R163D又はR68N/R163P)を含有するDNAリガーゼLigA突然変異体である。同時に、本プローブは、全く新しい連結方法を使用して、NAD応答タンパク質と、共鳴エネルギー転移ドナーと、アクセプターとを直列接続させ、具体的には、mScarletの残基G225、LigAの残基P5、cpNlucの残基G1、L2及びS3を欠失させ、cpNluc画分にG4V突然変異を組み込むと表現される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1A図1Aは、本発明が共鳴エネルギー転移に基づくNAD分子プローブにより、NAD分子濃度を検出する原理図である。本発明では、図1Aに示すように、NADがタンパク質非結合NAD分子に応答する場合、プローブ構造は「開」状態にあることで、共鳴エネルギー転移ドナーとアクセプターとの間の距離が遠く、共鳴エネルギー転移効率が低く、プローブ全体は共鳴エネルギー転移ドナーの光を発する。NADがタンパク質結合NAD分子に応答した後、その立体配座は「開」状態から「閉」状態に移行することで、共鳴エネルギー転移ドナーとアクセプターとを近づけ、高い共鳴エネルギー転移効率となり、プローブは共鳴エネルギー転移アクセプターの光を発する。NAD分子による共鳴エネルギー転移効率の変化は、最終的に、プローブにおける共鳴エネルギー転移ドナー及びアクセプターの放出波長強度の変化と表現される。該放出光強度比は、さらに系中のNAD分子の濃度を示すことができる。
図1B図1Bは、精製されたNAD分子プローブNADS1.0、NADS1.1及びNADS1.2が異なる濃度のNADに応答する場合、590nm及び440nmにおけるピーク比の変化を示す。横軸は、NAD濃度の対数値であり、縦軸は、正規化された590nm及び440nmにおける光強度比である。
図1C図1Cは、精製されたNAD分子プローブNADS1.0、NADS1.1及びNADS1.2が異なる濃度のNADに応答する(NADS1.2をはじめとする)場合、生物発光スペクトログラムであり、横軸は、波長(nm)であり、縦軸は、正規化された生物発光強度である。
【0053】
図2図2は、精製されたNAD分子プローブNADS2.0が異なる濃度のNADに応答する場合、515nm及び440nmにおけるピーク比の変化を示す。横軸は、NAD濃度の対数値であり、縦軸は、515nm及び440nmにおける光強度比である。図2Bは、精製されたNAD分子プローブNADS2.0が異なる濃度のNADに応答する場合、生物発光スペクトログラムであり、横軸は、波長(nm)であり、縦軸は、正規化された生物発光強度である。
【0054】
図3図3で精製されたNAD分子プローブNADS3.0が異なる濃度のNADに応答する場合、585nm及び515nmにおけるピーク比の変化を示す。横軸は、NAD濃度の対数値であり、縦軸は、585nm及び515nmにおける光強度比である。図3Bは、精製されたNAD分子プローブNADS3.0が異なる濃度のNADに応答する場合、蛍光スペクトログラムであり、横軸は、波長(nm)であり、縦軸は、正規化されたバイオルミネセンス強度である。
【0055】
図4図4は、精製されたNAD分子プローブNADS1.2が異なるNAD類似体に応答する場合、590nm及び440nmにおけるピーク比の変化を示す。横軸は、NAD濃度の対数値であり、縦軸は、正規化された590nm及び440nmにおける光強度比である。
【0056】
図5図5はプローブNADS1.0がHEK293細胞に形質転換された明視野及びRFP蛍光画像である。図5Bは、安定HEK293対照群と、異なる化合物処理群との590nm及び440nmにおける発光強度比が時間とともに変化することを示すグラフである。図5Cは、安定HEK293対照群と、異なる化合物処理群との590nm及び440nmにおける平均光強度比を示すグラフであり、全てのP値は対応のない両側検定のStudent’s t testsを使用して計算されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の上記目的、特徴及びメリットをより明確で分かりやすくするために、以下、本発明の具体的実施の態様を詳しく説明するが、本発明の実施可能な範囲を限定するものと理解され得ない。
【0058】
実施例1 NAD分子プローブの調製
【0059】
NAD分子プローブを調製し、プローブ配列は以下のように示される。
【0060】
NADS1.0の配列は、SEQ ID NO.1に示される通りである。
【0061】
mScarlet突然変異体-LigA突然変異体-cpNluc突然変異体。
【0062】
MVSKGEAVIKEFMRFKVHMEGSMNGHEFEIEGEGEGRPYEGTQTAKLKVTKGGPLPFSWDILSPQFMYGSRAFTKHPADIPDYYKQSFPEGFKWERVMINFEDGGAVTVTQDTSLEDGTLIYKVKLRGTNFPPDGPVMQKKTMGWEASTERLYPEDGVLKGDIKMALRLKDGGRYLADFKTTYKAKKPVQMPGAYNVDRKLDITSHNEDYTVVEQYERSEGRHSTLTLTAATTRAQELRKQLNQYSHEYYVKDQPSVEDYVYDRLYKELVDIETEFPDLITPDSPTQNVGGKVLSGFEKAPHDIPMYSLNDGFSKEDIFAFDERVRKAIGKPVAYCCELLIDGLAISLRYENGVFVRGATRGDGTVGENITENLRTVRSVPMDLTEPISVEVRGECYMPKQSFVALNEEREENGQDIFANPRNAAAGSLRQLDTKIVAKRNLNTFLYTVADFGPMKAKTQFEALEELSAIGFRTNPERQLCQSIDEVWAYIEEYHEKRSTLPYEINGIVIKVNEFALQDELGFTVKAPRWAIAYKFPGDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAGGTGGSGGTGGSMVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYE SEQ ID NO.1
【0063】
なかでも、mScarlet突然変異体1の配列は、SEQ ID NO.2に示される通りである。MVSKGEAVIKEFMRFKVHMEGSMNGHEFEIEGEGEGRPYEGTQTAKLKVTKGGPLPFSWDILSPQFMYGSRAFTKHPADIPDYYKQSFPEGFKWERVMNFEDGGAVTVTQDTSLEDGTLIYKVKLRGTNFPPDGPVMQKKTMGWEASTERLYPEDGVLKGDIKMALRLKDGGRYLADFKTTYKAKKPVQMPGAYNVDRKLDITSHNEDYTVVEQYERSEGRHST SEQ ID NO.2
【0064】
LigA突然変異体1の配列は、SEQ ID NO.3に示される通りである。
【0065】
LTLTAATTRAQELRKQLNQYSHEYYVKDQPSVEDYVYDRLYKELVDIETEFPDLITPDSPTQNVGGKVLSGFEKAPHDIPMYSLNDGFSKEDIFAFDERVRKAIGKPVAYCCELLIDGLAISLRYENGVFVRGATRGDGTVGENITENLRTVRSVPMDLTEPISVEVRGECYMPKQSFVALNEEREENGQDIFANPRNAAAGSLRQLDTKIVAKRNLNTFLYTVADFGPMKAKTQFEALEELSAIGFRTNPERQLCQSIDEVWAYIEEYHEKRSTLPYEINGIVIKVNEFALQDELGFTVKAPRWAIAYKFP SEQ ID NO.3
【0066】
cpNluc突然変異体1の配列は、SEQ ID NO.4に示される通りである。
【0067】
GDQMGQIEKIFKVVYPVDDHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAGGTGGSGGTGGSMVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYE SEQ ID NO.4
【0068】
NADS1.1の配列は、SEQ ID NO.5に示される通りである。
【0069】
mScarlet突然変異体-LigA突然変異体-cpNluc突然変異体
【0070】
MVSKGEAVIKEFMRFKVHMEGSMNGHEFEIEGEGEGRPYEGTQTAKLKVTKGGPLPFSWDILSPQFMYGSRAFTKHPADIPDYYKQSFPEGFKWERVMNFEDGGAVTVTQDTSLEDGTLIYKVKLRGTNFPPDGPVMQKKTMGWEASTERLYPEDGVLKGDIKMALRLKDGGRYLADFKTTYKAKKPVQMPGAYNVDRKLDITSHNEDYTVVEQYERSEGRHSTLTLTAATTRAQELRKQLNQYSHEYYVKDQPSVEDYVYDRLYKELVDIETEFPDLITPDSPTQNVGGKVLSGFEKAPHDIPMYSLNDGFSKEDIFAFDERVRKAIGKPVAYCCELLIDGLAISLRYENGVFVRGATRGDGTVGENITENLRTVRSVPMPLTEPISVEVRGECYMPKQSFVALNEEREENGQDIFANPRNAAAGSLRQLDTKIVAKRNLNTFLYTVADFGPMKAKTQFEALEELSAIGFRTNPERQLCQSIDEVWAYIEEYHEKRSTLPYEINGIVIKVNEFALQDELGFTVKAPRWAIAYKFPGDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAGGTGGSGGTGGSMVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYE SEQ ID NO.5
【0071】
mScarlet突然変異体1の配列は、SEQ ID NO.2に示される通りである。
【0072】
MVSKGEAVIKEFMRFKVHMEGSMNGHEFEIEGEGEGRPYEGTQTAKLKVTKGGPLPFSWDILSPQFMYGSRAFTKHPADIPDYYKQSFPEGFKWERVMNFEDGGAVTVTQDTSLEDGTLIYKVKLRGTNFPPDGPVMQKKTMGWEASTERLYPEDGVLKGDIKMALRLKDGGRYLADFKTTYKAKKPVQMPGAYNVDRKLDITSHNEDYTVVEQYERSEGRHST SEQ ID NO.2
【0073】
LigA突然変異体2の配列は、SEQ ID NO.6に示される通りである。
【0074】
LNQYSHEYYVKDQPSVEDYVYDRLYKELVDIETEFPDLITPDSPTQNVGGKVLSGFEKAPHDIPMYSLNDGFSKEDIFAFDERVRKAIGKPVAYCCELLIDGLAISLRYENGVFVRGATRGDGTVGENITENLRTVRSVPMPLTEPISVEVRGECYMPKQSFVALNEEREENGQDIFANPRNAAAGSLRQLDTKIVAKRNLNTFLYTVADFGPMKAKTQFEALEELSAIGFRTNPERQLCQSIDEVWAYIEEYHEKRSTLPYEINGIVIKVNEFALQDELGFTVKAPRWAIAYKFP SEQ ID NO.6
【0075】
cpNluc突然変異体1の配列は、SEQ ID NO.4に示される通りである。
【0076】
GDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAGGTGGSGGTGGSMVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYE SEQ ID NO.4.
【0077】
NADS1.2の配列は、SEQ ID NO.7に示される通りである。
【0078】
mScarlet突然変異体-LigA突然変異体-cpNluc突然変異体
【0079】
MVSKGEAVIKEFMRFKVHMEGSMNGHEFEIEGEGEGRPYEGTQTAKLKVTKGGPLPFSWDILSPQFMYGSRAFTKHPADIPDYYKQSFPEGFKWERVMNFEDGGAVTVTQDTSLEDGTLIYKVKLRGTNFPPDGPVMQKKTMGWEASTERLYPEDGVLKGDIKMALRLKDGGRYLADFKTTYKAKKPVQMPGAYNVDRKLDITSHNEDYTVVEQYERSEGRHSTLTLTAATTRAQELRKQLNQYSHEYYVKDQPSVEDYVYDRLYKELVDIETEFPDLITPDSPTQNVGGKVLSGFEKAPHDIPMYSLNDGFSKEDIFAFDERVRKAIGKPVAYCCELLIDGLAISLRYENGVFVRGATRGDGTVGENITENLRTVRSVPMDLTEPISVEVRGECYMPKQSFVALNEEREENGQDIFANPRNAAGSLRQLDTKIVAKRNLNTFLYTVADFGPMKAKTQFEALEELSAIGFRTNPERQLCQSIDEVWAYIEEYHEKRSTLPYEINGIVIKVNEFALQDELGFTVKAPRWAIAYKFPVDQMGQIEKIFKVVYPVDDHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAGGTGGSGGTGGSMVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYE SEQ ID NO.7
【0080】
mScarlet突然変異体1の配列は、SEQ ID NO.2に示される通りである。
【0081】
MVSKGEAVIKEFMRFKVHMEGSMNGHEFEIEGEGEGRPYEGTQTAKLKVTKGGPLPFSWDILSPQFMYGSRAFTKHPADIPDYYKQSFPEGFKWERVMNFEDGGAVTVTQDTSLEDGTLIYKVKLRGTNFPPDGPVMQKKTMGWEASTERLYPEDGVLKGDIKMALRLKDGGRYLADFKTTYKAKKPVQMPGAYNVDRKLDITSHNEDYTVVEQYERSEGRHST SEQ ID NO.2
【0082】
LigA突然変異体1の配列は、SEQ ID NO.3に示される通りである。
【0083】
LTLTAATTRAQELRKQLNQYSHEYYVKDQPSVEDYVYDRLYKELVDIETEFPDLITPDSPTQNVGGKVLSGFEKAPHDIPMYSLNDGFSKEDIFAFDERVRKAIGKPVAYCCELLIDGLAISLRYENGVFVRGATRGDGTVGENITENLRTVRSVPMDLTEPISVEVRGECYMPKQSFVALNEEREENGQDIFANPRNAAAGSLRQLDTKIVAKRNLNTFLYTVADFGPMKAKTQFEALEELSAIGFRTNPERQLCQSIDEVWAYIEEYHEKRSTLPYEINGIVIKVNEFALQDELGFTVKAPRWAIAYKFP SEQ ID NO.3
【0084】
cpNluc突然変異体2の配列は、SEQ ID NO.8に示される通りである。
【0085】
VDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLFRVTINGVTGWRLCERILAGGTGGSGGTGGSMVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYE SEQ ID NO.8
【0086】
NADS2.0の配列は、SEQ ID NO.9に示される通りである。
【0087】
mNeoGreen突然変異体-LigA突然変異体-cpNluc突然変異体
【0088】
MASLPATHELHIFGSINGVDFDMVGQGTGNPNDGYEELNLKSTKGDLQFSPWILVPHIGYGFHQYLPYPDGMSPFQAAMVDGSGYQVHRTMQFEDGASLTVNYRYTYEGSHIKGEAQVKGTGFPADGPVMTNSLTAADWCRSKKTYPNDKTIISTFKWSYTTGNGKRYRSTARTTYTFAKPMAANYLKNQPMYVFRKTELKHSKTELNFKEWQKAFTDKLTLTAATTRAQELRKQLNQYSHEYYVKDQPSVEDYVYDRLYKELVDIETEFPDLITPDSPTQNVGGKVLSGFEKAPHDIPMYSLNDGFSKEDIFAFDERVRKAIGKPVAYCCELLIDGLAISLRYENGVFVRGATRGDGTVGENITENLRTVRSVPMDLTEPISVEVRGECYMPKQSFVALNEEREENGQDIFANPRNAAAGSLRQLDTKIVAKRNLNTFLYTVADFGPMKAKTQFEALEELSAIGFRTNPERQLCQSIDEVWAYIEEYHEKRSTLPYEINGIVIKVNEFALQDELGFTVKAPRWAIAYKFPVDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAGGTGGSGGTGGSMVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYE SEQ ID NO.9
【0089】
mNeoGreen突然変異体1の配列は、SEQ ID NO.10に示される通りである。
【0090】
MASLPATHELHIFGSINGVDFDMVGQGTGNPNDGYEELNLKSTKGDLQFSPWILVPHIGYGFHQYLPYPDGMSPFQAAMVDGSGYQVHRTMQFEDGASLTVNYRYTYEGSHIKGEAQVKGTGFPADGPVMTNSLTAADWCRSKKTYPNDKTIISTFKWSYTTGNGKRYRSTARTTYTFAKPMAANYLKNQPMYVFRKTELKHSKTELNFKEWQKAFTDK SEQ ID NO.10
【0091】
LigA突然変異体1の配列は、SEQ ID NO.3に示される通りである。
【0092】
LTLTAATTRAQELRKQLNQYSHEYYVKDQPSVEDYVYDRLYKELVDIETEFPDLITPDSPTQNVGGKVLSGFEKAPHDIPMYSLNDGFSKEDIFAFDERVRKAIGKPVAYCCELLIDGLAISLRYENGVFVRGATRGDGTVGENITENLRTVRSVPMDLTEPISVEVRGECYMPKQSFVALNEEREENGQDIFANPRNAAAGSLRQLDTKIVAKRNLNTFLYTVADFGPMKAKTQFEALEELSAIGFRTNPERQLCQSIDEVWAYIEEYHEKRSTLPYEINGIVIKVNEFALQDELGFTVKAPRWAIAYKFP SEQ ID NO.3
【0093】
cpNluc突然変異体2の配列は、SEQ ID NO.8に示される通りである。
【0094】
VDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAGGTGGSGGTGGSMVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYE SEQ ID NO.8
【0095】
NADS3.0の配列は、SEQ ID NO.11に示される通りである。
【0096】
mScarlet突然変異体-LigA突然変異体-mNeoGreen突然変異体
【0097】
MVSKGEAVIKEFMRFKVHMEGSMNGHEFEIEGEGEGRPYEGTQTAKLKVTKGGPLPFSWDILSPQFMYGSRAFTKHPADIPDYYKQSFPEGFKWERVMNFEDGGAVTVTQDTSLEDGTLIYKVKLRGTNFPPDGPVMQKKTMGWEASTERLYPEDGVLKGDIKMALRLKDGGRYLADFKTTYKAKKPVQMPGAYNVDRKLDITSHNEDYTVVEQYERSEGRHLTLTLTAATTRAQELRKQLNQYSHEYYVKDQPSVEDYVYDRLYKELVDIETEFPDLITPDSPTQNVGGKVLSGFEKAPHDIPMYSLNDGFSKEDIFAFDERVRKAIGKPVAYCCELLIDGLAISLRYENGVFVRGATRGDGTVGENITENLRTVRSVPMDLTEPISVEVRGECYMPKQSFVALNEEREENGQDIFANPRNAAAGSLRQLDTKIVAKRNLNTFLYTVADFGPMKAKTQFEALEELSAIGFRTNPERQLCQSIDEVWAYIEEYHEKRSTLPYEINGIVIKVNEFALQDELGFTVKAPRWAIAYKFPPPATHELHIFGSINGVDFDMVGQGTGNPNDGYEELNLKSTKGDLQFSPWILVPHIGYGFHQYLPYPDGMSPFQAAMVDGSGYQVHRTMQFEDGASLTVNYRYTYEGSHIKGEAQVKGTGFPADGPVMTNSLTAADWCRSKKTYPNDKTIISTFKWSYTTGNGKRYRSTARTTYTFAKPMAANYLKNQPMYVFRKTELKHSKTELNFKEWQKAFTDVMGMDELYK SEQ ID NO.11
【0098】
mScarlet突然変異体2の配列は、SEQ ID NO.12に示される通りである。
【0099】
MVSKGEAVIKEFMRFKVHMEGSMNGHEFEIEGEGEGRPYEGTQTAKLKVTKGGPLPFSWDILSPQFMYGSRAFTKHPADIPDYYKQSFPEGFKWERVMNFEDGGAVTVTQDTSLEDGTLIYKVKLRGTNFPPDGPVMQKKTMGWEASTERLYPEDGVLKGDIKMALRLKDGGRYLADFKTTYKAKKPVQMPGAYNVDRKLDITSHNEDYTVVEQYERSEGRHLT SEQ ID NO.12
【0100】
LigA突然変異体1の配列は、SEQ ID NO.3に示される通りである。
【0101】
LTLTAATTRAQELRKQLNQYSHEYYVKDQPSVEDYVYDRLYKELVDIETEFPDLITPDSPTQNVGGKVLSGFEKAPHDIPMYSLNDGFSKEDIFAFDERVRKAIGKPVAYCCELLIDGLAISLRYENGVFVRGATRGDGTVGENITENLRTVRSVPMDLTEPISVEVRGECYMPKQSFVALNEEREENGQDIFANPRNAAAGSLRQLDTKIVAKRNLNTFLYTVADFGPMKAKTQFEALEELSAIGFRTNPERQLCQSIDEVWAYIEEYHEKRSTLPYEINGIVIKVNEFALQDELGFTVKAPRWAIAYKFP SEQ ID NO.3.
【0102】
mNeoGreen突然変異体2の配列は、SEQ ID NO.13に示される通りである。
【0103】
PPATHELHIFGSINGVDFDMVGQGTGNPNDGYEELNLKSTKGDLQFSPWILVPHIGYGFHQYLPYPDGMSPFQAAMVDGSGYQVHRTMQFEDGASLTVNYRYTYEGSHIKGEAQVKGTGFPADGPVMTNSLTAADWCRSKKTYPNDKTIISTFKWSYTTGNGKRYRSTARTTYTFAKPMAANYLKNQPMYVFRKTELKHSKTELNFKEWQKAFTDVMGMDELYK SEQ ID NO.13
【0104】
実施例2 生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)に基づく全遺伝子コードNAD分子プローブは、試料中のNAD含有量の測定に用いられた。
【0105】
本発明によって提供されるNAD分子プローブNADS1.0、NADS1.1、NADS1.2、及びNADS2.0は、試料中のNAD含有量の測定に用いられ得ることを検証するために、以下のステップに示される滴定実験を行った。
【0106】
(1)以下の試料を調製した。
【0107】
プローブ溶液:HEPES緩衝液(50mM NaCl、50mM HEPES、pH7.2)で、精製されたNAD分子プローブを4nMまで希釈し、一時的にアイスボックスに置いて使用に備えた。
【0108】
NAD溶液:3倍連続段階希釈法により、異なる濃度(50mM、16.7mM、5.56mM、1.85mM、617μM、206μM、68.6μM及び22.9μM)のNAD溶液を調製し、用いられる緩衝液は、アイスボックスに保管されるHEPES緩衝液であった。
【0109】
生物発光基質溶液:水で生物発光基質溶液を100倍希釈し、遮光でアイスボックスに保存された。
【0110】
(2)白い96ウェルELISA用プレートに、それぞれ80μLのプローブ溶液、10μL NAD溶液及び10μLの生物発光基質溶液を添加し、すぐにマルチチャンネルピペットで軽く複数回(少なくとも8回)吹き出し吸い込み、均一に混合した。Flex Station3多機能マイクロプレートリーダにより、発光モードで波長440nm及び波長590nm(NADS1.0、NADS1.1、及びNADS1.2)又は波長515nm(NADS2.0)における光強度値を読み取り、5min連続して監視し、該時間帯におけるアクセプター及びドナーの平均発光比を計算した。プローブの異なるNAD濃度における発光スペクトルは、波長範囲360~650nmにおける光強度値を監視することにより得られた。
【0111】
図1Bから、異なるNAD濃度で、プローブNADS1.0、NADS1.1、及びNADS1.2の590/440光強度比は異なり、一定のNAD濃度範囲(10μM~1mM)において、濃度が高くなるに伴い大きくなることが判明した。図1Cは、異なる波長におけるスキャンスペクトルの結果を示し、590nm及び440nmに、それぞれ、ドナー及びアクセプターの吸収ピークである2つの顕著な吸収ピークがあることが分かった。図lの結果から、本発明に係るプローブは、生理学的濃度範囲を定量測定することができるNAD分子であることも示されており、LigA突然変異体に異なる突然変異を取り入れることにより、異なる親和力を生じるプローブのバージョンNADS1.0、NADS1.1、及びNADS1.2を設計し、それらのC50値(50%プローブの立体配座変化をもたらす場合の供試物の濃度)は、それぞれ、235μM、388μM、及び126μMであり、異なる濃度範囲のNADを検出する場合に用いられ得た。
【0112】
図2にNADS2.0の結果が示されており、図2から、異なるNAD濃度で、プローブNADS2.0の515/440光強度値が異なり、一定のNAD濃度範囲(10μM~1mM)において、濃度が高くなるに伴い大きくなることが判明した。図2Bは、異なる波長におけるスキャンスペクトルの結果を示し、515nm及び440nmに2つの顕著な吸収ピークがあることが分かった。実施例の結果と同様に、本実施例に係るプローブは、同様に高ダイナミックレンジ(1.8倍)を有し、そのC50値は364μMであった。
【0113】
本発明のNAD分子プローブNADS1.0、NADS1.1、NADS1.2、及びNADS2.0は異なる波長において光強度比が異なることが示されており、異なる光強度比により回帰演算してNAD濃度を得ることができた。NAD含有量の測定に用いられ得、測定できる濃度範囲は広かった。
【0114】
実施例3 蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)に基づく全遺伝子コードNAD分子プローブは、試料中のNAD含有量の測定に用いられた。
【0115】
本発明によって提供されるNAD分子プローブNADS3.0は、試料中のNAD含有量の測定に用いられ得ることを検証するために、以下のステップに示される滴定実験を行った。
【0116】
(1)以下の試料を調製した。
【0117】
プローブ溶液:HEPES緩衝液(50mM NaCl、50mM HEPES、pH7.2)で、精製されたNAD分子プローブを2μMまで希釈し、一時的にアイスボックスに置いて使用に備えた。
【0118】
NAD溶液:3倍連続段階希釈法により、異なる濃度(50mM、16.7mM、5.56mM、1.85mM、617μM、206μM、68.6μM及び22.9μM)のNAD溶液を調製し、用いられる緩衝液は、アイスボックスに保管されるHEPES緩衝液であった。
【0119】
(2)黒い96ウェルELISA用プレートに、それぞれ90μLのプローブ溶液及び10μL NAD溶液を添加し、すぐにマルチチャンネルピペットで軽く複数回(少なくとも8回)吹き出し吸い込み、均一に混合した。Flex Station3多機能マイクロプレートリーダにより、蛍光モードで、励起波長を470nmとし、515nm及び585nmにおける放出波長を測定し、5min連続して監視し、該時間帯における585nm対515nmの平均発光比を計算した。プローブの異なるNAD濃度における発光スペクトルは、波長範囲500~600nmにおける放出光強度値を監視することにより得られた。
【0120】
図3から、異なるNAD濃度で、プローブNADS3.0の585/515の光強度比は異なり、一定のNAD濃度範囲(10μM~1mM)において、濃度が高くなるに伴い大きくなることが判明した。本発明のNAD分子プローブNADS3.0は、NAD含有量の測定に用いられ得ることが分かった。プローブNADS3.0は蛍光共鳴エネルギー転移に基づくNAD分子プローブであり、そのダイナミックレンジは1.21倍であり、C50値は162μMであった。
【0121】
実施例4 NAD分子プローブの異なるNAD類似体に対する応答。
【0122】
本発明によって提供されるNAD分子プローブが高選択性を有することを検証するために、NADS1.2を例に以下のステップに示される滴定実験を行った。
【0123】
(1)以下の試料を調製した。
【0124】
プローブ溶液:HEPES緩衝液(50mM NaCl、50mM HEPES、pH7.2)で、精製されたNAD分子プローブを4nMまで希釈し、一時的にアイスボックスに置いて使用に備えた。
【0125】
NAD及び類似体溶液:3倍連続段階希釈法により、異なる濃度(50mM、16.7mM、5.56mM、1.85mM、617μM、206μM、68.6μM及び22.9μM)のNAD、NADP、及びNADPH溶液、異なる濃度(100mM、33.3mM、11.1mM、3.7mM、1.23mM、412μM、137μM及び45.7μM)のNADH、NMN及びNRH溶液、異なる濃度(40mM、13.3mM、4.4mM、1.4mM、494μM、165μM、54.9μM及び18.3μM)のNAM溶液を調製し、用いられる緩衝液は、アイスボックスに保管されるHEPES緩衝液であった。
【0126】
生物発光基質溶液:水で生物発光基質溶液を100倍希釈し、遮光でアイスボックスに保存された。
【0127】
(2)白い96ウェルELISA用プレートに、それぞれ80μLのプローブ溶液、10μL NAD又はNAD類似体溶液及び10μLの生物発光基質溶液を添加し、すぐにマルチチャンネルピペットで軽く複数回(少なくとも8回)吹き出し吸い込み、均一に混合した。Flex Station3多機能マイクロプレートリーダにより、発光モードで波長440nm及び波長590nmにおける光強度値を読み取り、5min連続して監視し、該時間帯におけるアクセプター及びドナーの平均発光比を計算した。
【0128】
実験の結果を図4に示し、実験の結果から、本発明のプローブのNAD分子に対して高選択性を有することが示されている。プローブはNAM及びNADPHに応答しなかった。プローブはNADH及びNRHに応答したが、C50値が高かった(>1mM)。プローブのNADP及びNMN分子に対する応答のダイナミックレンジが小さかった。
【0129】
実施例5 NAD分子プローブを安定発現した哺乳動物細胞株は、生細胞におけるNAD濃度のダイナミック変化の測定に用いられた。
【0130】
本発明によって提供されるNAD分子プローブは、細胞におけるNAD分子濃度の変化を検出することができる。該プローブ(NADS1.0)のコード遺伝子をpCDH-CMV-MCS-EF1-Neoベクターにクローンし、レンチウイルス法により、HEK293安定細胞株を作製した。10000細胞/ウェルの播種数でHEK293細胞を96ウェル白い細胞培養プレートに蒔き、DMEM培地(高グルコース、フェノールレッドなし)の使用量は100μLであった。37℃、5%CO条件で24h培養した後、FK866(細胞におけるNADレベルを効果的に低減できるNAMPT阻害剤)及びNRH(細胞におけるNADレベルを効果的に向上できるNAD前駆体)で安定細胞株を処理し、最終濃度は、それぞれ、10nm及び50μMであった。化合物で細胞を24h処理した後、DMEM培地(高グルコース、フェノールレッドなし)を新鮮な生物発光基質含有DMEM培地(高グルコース、フェノールレッドなし、生物発光基質を1000倍希釈した)に切り替えた。Flex Station3多機能マイクロプレートリーダで590nm及び440nm波長の放出光強度を検出した。該プローブの検出原理に従い、590nm及び440nm波長の放出光強度比は生細胞中のNAD濃度を示した。検出した結果、FK866で処理された細胞の該比の低下は、細胞におけるNAD濃度の低下を示し、NRHで処理された細胞の該比の向上は、細胞におけるNAD濃度の向上を示すことが発見された。該変化は予想と一致しており、該NADプローブは細胞におけるNAD濃度の変化に応答できることが示されている(図5)。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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【国際調査報告】