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特表2024-539507ポリケトン中空糸分離膜の製造方法及びこれを利用して製造されたポリケトン中空糸分離膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ポリケトン中空糸分離膜の製造方法及びこれを利用して製造されたポリケトン中空糸分離膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/76 20060101AFI20241018BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20241018BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20241018BHJP
   D01F 6/76 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B01D71/76
B01D69/08
B01D69/02
D01F6/76 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024548334
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 KR2022000246
(87)【国際公開番号】W WO2023068450
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0140412
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524153455
【氏名又は名称】メンブレア カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】524153466
【氏名又は名称】メンブレア (チンタオ) ニュー マテリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ジョン スン イル
(72)【発明者】
【氏名】パク イェ ジ
(72)【発明者】
【氏名】ウ ユン ハ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン ニョン
(72)【発明者】
【氏名】パク スン ジン
(72)【発明者】
【氏名】パク ソ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ビュン ホン シク
(72)【発明者】
【氏名】ホウ ジアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン イン シュエ
【テーマコード(参考)】
4D006
4L035
【Fターム(参考)】
4D006KA16
4D006KE05R
4D006MA01
4D006MA21
4D006MB11
4D006MB15
4D006MB16
4D006MB20
4D006MC44
4D006MC88
4D006NA23
4D006NA28
4D006NA40
4D006NA74
4D006NA75
4L035AA04
4L035BB04
4L035BB11
4L035DD03
4L035FF01
(57)【要約】
本発明によるポリケトン中空糸分離膜の製造方法は、ポリケトンと希釈剤の混合物を加熱して前記ポリケトンを溶融させることでドープ(dope)溶液を製造する段階;前記ドープ溶液内に存在する気泡を除去する段階;気泡が除去された前記ドープ溶液を中空糸ノズルで放射してポリケトン中空糸を得る段階;前記ポリケトン中空糸から前記希釈剤を抽出するために冷却水槽に浸漬する段階;及び前記冷却水槽に浸漬された前記ポリケトン中空糸を巻取してポリケトン中空糸分離膜を得る段階;を含むことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリケトンと希釈剤の混合物を加熱して前記ポリケトンを溶融させることでドープ(dope)溶液を製造する段階;
前記ドープ溶液内に存在する気泡を除去する段階;
気泡が除去された前記ドープ溶液を中空糸ノズルで放射してポリケトン中空糸を得る段階;
前記ポリケトン中空糸から前記希釈剤を抽出するために冷却水槽に浸漬する段階;及び
前記冷却水槽に浸漬された前記ポリケトン中空糸を巻取してポリケトン中空糸分離膜を得る段階;を含むことを特徴とする、ポリケトン中空糸分離膜の製造方法。
【請求項2】
前記ドープ溶液の全体100重量%に対して、
前記ポリケトン10~50重量%;及び
前記希釈剤50~90重量%;
で含まれることを特徴とする、請求項1に記載のポリケトン中空糸分離膜の製造方法。
【請求項3】
前記ポリケトンと希釈剤の混合物を加熱する温度は、前記ポリケトンの融点以上、前記ポリケトンの沸点以下の温度であることを特徴とする、請求項1に記載のポリケトン中空糸分離膜の製造方法。
【請求項4】
前記ポリケトンと希釈剤の混合物を加熱する温度は、190~270℃であることを特徴とする、請求項3に記載のポリケトン中空糸分離膜の製造方法。
【請求項5】
前記希釈剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、ジメチルスルホン(DMSO)、スルホラン(Sulfolane)、ジメチルスルホン酸(DMSO)、ペンタンジオール(Pentanediol)、ヘキサンジオール(Hexanediol)、ジエチルフタレート(Diethyl phthalate)、ジメチルフタレート(Dimethyl phthalate)及びグリセリンからなる群より選択される1以上を含むものであることを特徴とする、請求項1に記載のポリケトン中空糸分離膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載のポリケトン中空糸分離膜の製造方法で製造されることを特徴とする、ポリケトン中空糸分離膜。
【請求項7】
前記ポリケトン中空糸は、純水透過度が10~270LMH/barであることを特徴とする、請求項6に記載のポリケトン中空糸分離膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリケトン中空糸分離膜の製造方法及びこれを利用して製造されたポリケトン中空糸分離膜に関する。
【背景技術】
【0002】
精密化学産業において分離及び/又は精製・濃縮工程は、全体運転費用の10~70%を占めるほど非常に重要な部分を占めている。このような分離技術として広く知られている蒸溜、吸着、抽出などの方式は、多くのエネルギーが消費され、価格対比工程効率が良くないという短所を有している。
【0003】
一方、分離膜を利用した技術は、分離膜に加えられる圧力により分離される工程であって、消費するエネルギーが他の分離工程に比べて少ないため安いという利点がある。また、簡単な工程構成によってエネルギー節減が可能であるという利点がある。
【0004】
しかし、多様な有機溶媒を用いる精密化学産業で高分子分離膜は、有機溶媒により溶けるか膨潤する短所を有しているので、代表的精密化学産業分野である半導体、製薬産業などの分離工程に適用しにくいという問題がある。
【0005】
具体的に、現在有機溶媒は、バイオ、精油、触媒、半導体、製薬産業のように多様な高付加価値産業分野で物質を合成するか工程上の分離、精製、濃縮などに幅広く用いられている。このような有機溶媒を主に用いる精密化学産業分野で、従来の水処理高分子分離膜を適用すると、有機溶媒により発生する膜の膨潤あるいは硬化現象のため膜性能が顕著に低くなる。
【0006】
最近、このような問題点を解決し、多様な精密化学産業に適用可能な有機溶媒抵抗性分離膜(Organic Solvent Nanofiltration、OSN)が学界及び産業界の関心を得ているのが実情である。OSNは、分離及び精製工程の新しい技術であって、溶媒に対する抵抗性が高い高分子を用い、200~1000g/molである溶質や化合物を有機溶媒から分離する技術である。有機溶媒抵抗性分離膜を多様な精密化学産業に適用する場合、高価の有機溶媒を再活用し得、有機溶媒から多様な原料の分離及び粒子の回収などが可能であると判断される。
【0007】
高分子分離膜を製造する方法には、大きく非溶媒誘導相分離法(Non-solvent Induced Phase Separation、NIPS)と熱誘導相分離法(Thermally Induced Phase Separation、TIPS)が知られている。TIPS方法で製造された膜は、主に精密濾過膜(Microfiltration、MF)と限外濾過膜(Ultrafiltration、UF)であって、NIPS方法により製造された膜に比べて巨大気孔が形成され、高分子の濃度と冷却温度により容易に分離膜構造形成の挙動を説明し得るという利点を有している。TIPS方法に適用できる高分子は、PP(polypropylene)、PE(polyethylene)、PVDF(polyvinylidene fluoride)、CA(cellulose acetate)、ECTFE(poly(ethylene-chlorotrifluoroethylene))、PK(polyketone)などがある。このような方法では、主にPEG、PC、GTA、TEP、GlycerineなどのGreen solvent系列やphthalate系列であるDMP(dimethyl phthalate)、DEP(diethyl phthalate)、DBP(dibuthyl phthalate)、DOP(diocthyl phthalate)などを希釈剤として用いている。
【0008】
OSN分野で主に用いられる高分子は、基本的に有機溶媒に対する抵抗性が高い特性を有しなければならないが、大部分の高分子は、有機溶媒に溶けるのでコーティングをするか、界面重合反応あるいは架橋反応を通じて高分子の耐化学性を高める必要がある。改質に用いられる物質は、大部分高価の添加剤が用いられ、改質反応時間が長いため分離膜を製造する工程の費用上昇及び品質管理が非常に難しい。
【0009】
一方、ポリケトンは、最近、優れた機械的強度、耐化学性、耐熱性が非常に優れたポリオレフィン系高分子のうち一つであって、エンジニアリング素材部品だけでなく有機溶媒を原液とする特殊な分離工程に適用可能な分離膜の素材として注目を受けている高分子物質であるが、強い溶媒でも溶解が多少難しいためその活用が制限されている。
【0010】
大韓民国公開特許第2017-0087240号、大韓民国公開特許第2015-0033424号及び大韓民国登録特許第1734894号では、ポリケトン高分子を利用した平膜型又は中空糸膜の製造方法及び前記方法により製造されたポリケトン分離膜に対して記述している。前記製造方法で製造されたポリケトン分離膜は、従来の伝統的な非溶媒誘導相分離法を利用しているが、ポリケトン高分子を溶かすことができる有機溶媒がほとんどないので、ヘキサフルオロイソプロパノールに、あるいは塩化亜鉛(ZnCl)、塩化カルシウム(CaCl)、塩化リチウム(LiCl)の三種類の金属塩の金属塩水溶液にポリケトンを添加して分離膜を製造する。しかし、有機溶媒ではない金属塩水溶液には、ポリケトン高分子の溶解度が非常に制限的であるので、水溶液内のポリケトン高分子の重量%は、2~10重量%を超えず、これは分離膜の機械的強度を弱くする主要原因となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】大韓民国公開特許第2017-0087240号(2017.07.28)
【特許文献2】大韓民国公開特許第2015-0033424号(2015.04.01)
【特許文献3】大韓民国登録特許第1734894号(2017.05.04)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来のポリケトン平膜型又は中空糸膜が有している短所を解決するためのものであって、強い有機溶媒を原液とする分離膜工程において、耐化学性に優れ、機械的特性に優れたポリケトン中空糸分離膜を製造し得るポリケトン中空糸分離膜の製造方法を提供しようとする。
【0013】
また、本発明は、気孔サイズが均一であり、膜の膨潤を抑制し得るポリケトン中空糸分離膜の製造方法を提供しようとする。
【0014】
また、本発明は、耐化学性に優れ、機械的特性に優れたポリケトン中空糸分離膜を提供しようとする。
【0015】
また、本発明は、気孔サイズが均一であり、膜の膨潤を抑制し得るポリケトン中空糸分離膜を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ポリケトンと希釈剤の混合物を加熱して前記ポリケトンを溶融させることでドープ(dope)溶液を製造する段階;前記ドープ溶液内に存在する気泡を除去する段階;気泡が除去された前記ドープ溶液を中空糸ノズルで放射してポリケトン中空糸を得る段階;前記ポリケトン中空糸から前記希釈剤を抽出するために冷却水槽に浸漬する段階;及び前記冷却水槽に浸漬された前記ポリケトン中空糸を巻取してポリケトン中空糸分離膜を得る段階;を含むポリケトン中空糸分離膜の製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、上述したポリケトン中空糸分離膜の製造方法で製造されたポリケトン中空糸分離膜を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるポリケトン中空糸分離膜の製造方法は、耐化学性に優れ、機械的特性に優れたポリケトン中空糸分離膜を製造し得るという利点がある。具体的に、本発明によるポリケトン中空糸分離膜の製造方法は、熱誘導相分離法を利用して耐化学性及び機械的特性に優れたポリケトン中空糸分離膜を製造し得るという利点がある。
【0019】
また、本発明によるポリケトン中空糸分離膜の製造方法は、気孔サイズが均一であり、膜の膨潤を抑制できるポリケトン中空糸分離膜を製造し得るという利点がある。
【0020】
また、本発明によるポリケトン中空糸分離膜は、耐化学性に優れ、機械的特性に優れ、気孔サイズが均一であり、膜の膨潤が抑制される利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態によるポリケトン中空糸分離膜の製造方法を例示した図である。
図2】熱誘導相分離法工程でドープ溶液とそれ以外の溶液の間の界面での高分子膜の形成挙動を示した概路図である。
図3】本発明の実施形態により製造されたポリケトン中空糸分離膜の走査電子顕微鏡(SEM)イメージである。
図4】本発明の実施形態により製造されたポリケトン中空糸分離膜の純水透過度を示した図である。
図5】本発明の実施形態により製造されたポリケトン中空糸分離膜の破断強度及び伸び率を示した図である。
図6】本発明の実施形態により製造されたポリケトン中空糸分離膜の有毒性有機溶媒の耐化学性試験結果を示した図である。
図7】本発明の実施形態により製造されたポリケトン中空糸分離膜の長期耐化学性の評価後の機械的強度変化を示した図である。
図8】本発明の実施形態により製造されたポリケトン中空糸分離膜を4ヶ月の間有機溶媒に露出させた後の水透過度分析結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明についてより詳しく説明する。
【0023】
本発明で、ある部材が他の部材「上に」に位置していると記載するとき、これはある部材が他の部材に直接接している場合だけでなく、二つの部材の間にまた他の部材が介在する場合も含む。
【0024】
本発明である部分がある構成要素を「含む」と記載するとき、これは特に反対する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0025】
<ポリケトン中空糸分離膜の製造方法>
本発明の一様態は、ポリケトンと希釈剤の混合物を加熱して前記ポリケトンを溶融させることでドープ(dope)溶液を製造する段階;前記ドープ溶液内に存在する気泡を除去する段階;気泡が除去された前記ドープ溶液を中空糸ノズルで放射してポリケトン中空糸を得る段階;前記ポリケトン中空糸から前記希釈剤を抽出するために冷却水槽に浸漬する段階;及び前記冷却水槽に浸漬された前記ポリケトン中空糸を巻取してポリケトン中空糸分離膜を得る段階;を含むポリケトン中空糸分離膜の製造方法に関する。
【0026】
本発明において前記ポリケトン中空糸分離膜は、多孔性中空糸分離膜であってもよい。
【0027】
本発明において「多孔性」とは、ポリケトン中空糸分離膜の内部又は表面が気孔を含むことを意味するものであって、本出願が属する技術分野において通常の知識を有した者が共通的に理解できる意味として用いられ得る。
【0028】
前記気孔の直径は、数nm~数十μmであってもよく、前記多孔性構造の気孔度は、60~90%であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0029】
前記ポリケトン(PK)は、一般的に、CHCHC=Oの繰り返し単位のエチレンと一酸化炭素で構成された半結晶性熱可塑性樹脂である。このような結晶構造は、強い分子内の分子間相互作用を促進して有機溶媒に対する耐性に優れるという強点を有している。これは有機溶媒抵抗性分離膜の製造において最も重要な部分である溶媒による膜の膨潤を抑制するのに役に立つ。
【0030】
また、ポリケトンは、既存のエンジニアリングプラスチック素材で用いられるポリアミド(polyamide)、ポリエステル(polyester)などに比べて化学的、機械的特性に優れた高分子であって、有機溶媒抵抗性分離膜を製造するために適合する。
【0031】
したがって、ポリケトンを利用して製造した本発明によるポリケトン中空糸分離膜は、耐化学性に優れ、機械的特性に優れ、膨潤が抑制される利点がある。
【0032】
具体的に、前記ポリケトンは、線状の交互構造体であって、不飽和炭化水素1分子ごとに実質的に一酸化炭素を含んでいる。ポリケトンの前球体として用いるのに適したエチレン系不飽和炭化水素は、20個まで、好ましくは、10個までの炭素原子を有する。また、エチレン系不飽和炭化水素は、エテン及びα-オレフィン、例えば、プロペン(propene)、1-ブテン(butene)、イソブテン(iso-butene)、1-ヘキセン(hexene)、1-オクテン(octene)のような脂肪族であるか、または他の脂肪族分子上にアリール(aryl)置換基を含み、特にエチレン系不飽和炭素原子上にアリール置換基を含んでいるアリール脂肪族である。エチレン系不飽和炭化水素のうちアリール脂肪族炭化水素の例としては、スチレン(styrene)、p-メチルスチレン(methyl styrene)、p-エチルスチレン(ethyl styrene)及びm-イソプロピルスチレン(isopropyl styrene)を挙げることができる。
【0033】
本発明で好ましく用いられるポリケトンは、一酸化炭素とエテン(ethene)とのコポリマー又は一酸化炭素とエテンと少なくとも3個の炭素原子を有する第2のエチレン系不飽和炭化水素とのターポリマー(terpolymer)、特に、一酸化炭素とエテンとプロペン(propene)のようなα-オレフィンとのターポリマーである。
【0034】
本発明で用いるポリケトンは、数平均分子量(M)が100~200,000、好ましくは、10,000~200,000、より好ましくは、50,000~200,000、特に好ましくは、90,000~200,000であるものを用いることができ、この場合、製造されるポリケトン中空糸分離膜の機械的強度が優秀であるという利点があって好ましい。
【0035】
本発明によるポリケトン中空糸分離膜の製造方法は、ポリケトンと希釈剤の混合物を加熱して前記ポリケトンを溶融させることでドープ(dope)溶液を製造する段階を含む。具体的に、本発明によるポリケトン中空糸分離膜の製造方法は、ポリケトンと希釈剤の混合物を前記ポリケトンの融点以上に加熱して前記ポリケトンを溶融させることでドープ(dope)溶液を製造することができる。
【0036】
前記ポリケトンと希釈剤の混合物を加熱する温度は、冷却水槽(急冷槽(quenching bath))内の水性冷媒の沸点以上の温度であってもよい。
【0037】
本発明の一実施形態において、前記ポリケトンと希釈剤の混合物を加熱する温度は、前記ポリケトンの融点以上、前記ポリケトンの沸点以下の温度であってもよい。
【0038】
本発明で用いるポリケトンの融点は、175~300℃、好ましくは、190~270℃、より好ましくは、200~220℃の範囲であってもよく、ポリケトンの融点内の温度、好ましくは、190~270℃、好ましくは、200~220℃の高温でポリケトンと希釈剤が均一に混合されたドープ溶液の製造及び分離膜を製造する。
【0039】
具体的に、前記200~220℃の温度は、ポリケトン高分子の融点(melting point)以上、具体的に、希釈剤により融点が多少低くなったポリケトン高分子の融点以上、ポリケトン高分子の水性冷媒沸点(boiling point)以下の温度であってもよく、本発明によるポリケトン中空糸分離膜の製造方法は、前記範囲の温度でポリケトンと希釈剤を均一に交ぜた後に温度を低めてポリケトンを凝固させることで行われる。
【0040】
ポリケトンの製造には、これに限定されないが、アメリカ特許第4,843,144号に開示されているポリケトンの製造方法を用いることができ、例えば、パラジウム化合物とpKa 6未満又は、好ましくは、pKa 2未満のジヒドロハロゲン酸の陰イオン(18℃の水中で測定)とリンの2座配位子から適切に生成される触媒組成物の存在下で、一酸化炭素と炭化水素モノマーを重合条件下で接触させてポリケトンを製造することができる。
【0041】
本発明のまた他の実施形態において、前記ドープ溶液全体100重量%に対して、前記ポリケトン10~50重量%;及び前記希釈剤50~90重量%;で含まれ得る。好ましくは、前記ポリケトンは、前記ドープ溶液の全体100重量%に対して15~45重量%、より好ましくは、20~40重量%で含まれ得、前記希釈剤は、前記ドープ溶液の全体100重量%に対して55~85重量%、より好ましくは、60~80重量%で含まれ得る。
【0042】
前記ポリケトン及び前記希釈剤が前記範囲内で含まれる場合、耐久性に優れたポリケトン中空糸分離膜の製造が可能であるという利点があって好ましい。
【0043】
本発明によるポリケトン中空糸分離膜を製造するために、まず、ポリケトン10~50重量%と希釈剤50~90重量%を、好ましくは、190~270℃、より好ましくは、200~220℃の温度で3~5時間の間混合してドープ溶液を製造する。
【0044】
前記希釈剤は、前記ポリケトンの融点を低めることができて高温で前記ポリケトン高分子を微細で均一に分散させ得る希釈剤であれば、限定せず用いることができる。
【0045】
本発明のまた他の実施形態において、前記希釈剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、ジメチルスルホン(DMSO)、スルホラン(Sulfolane)、ジメチルスルホン酸(DMSO)、ペンタンジオール(Pentanediol)、ヘキサンジオール(Hexanediol)、ジエチルフタレート(Diethyl phthalate)、ジメチルフタレート(Dimethyl phthalate)及びグリセリンからなる群より選択される1以上を含むことができる。
【0046】
前記ポリケトン高分子の分散性面で、好ましくは、前記希釈剤は、ポリエチレングリコール、ジメチルスルホン又はグリセリンであってもよい。
【0047】
前記ドープ溶液の製造は、高温混合機を通じて行われ得、このとき、ポリケトンドープ溶液は、温度の微細な差により相分離が非常に速く起きる特性があるので、前記ドープ溶液を混合するための高温混合機を200~220℃の範囲の温度が維持されるようにしなければならない。
【0048】
前記高温混合機を通じてドープ溶液を製造するとき、必要に応じて、反応性がない窒素のような不活性気体で前記高温混合機の内部を置換することができるが、これに限定されない。
【0049】
本発明によるポリケトン中空糸分離膜は、前記ドープ溶液内に存在する気泡を除去する段階を含む。前記気泡を除去する場合、製造されたポリケトン中空糸分離膜の機械的強度が一層良くなる利点があって好ましい。
【0050】
前記ドープ溶液内に存在する気泡を除去する方法は、これに限定されないが、例えば、前記ドープ溶液を撹拌することで行うことができる。
【0051】
前記ドープ溶液を撹拌する段階は、10~800rpmの速度で1~12時間の間撹拌することであってもよい。好ましくは、10~500rpmの速度、より好ましくは、10~100rpmの速度であってもよく、これは、好ましくは、1~9時間、より好ましくは、1~3時間の間低速撹拌を維持することが残存気泡を除去する面で好ましい。
【0052】
本発明によるポリケトン中空糸分離膜の製造方法は、気泡が除去された前記ドープ溶液を中空糸ノズルで放射してポリケトン中空糸を得る段階を含む。具体的に、本発明によるポリケトン中空糸分離膜の製造方法は、気泡が除去された前記ドープ溶液をギアポンプを通じて中空糸ノズルに移動させた後に放射することでポリケトン中空糸を得ることができる(図1)。
【0053】
具体的に、図1を参照すると、本発明によるポリケトン中空糸分離膜の製造方法は、製造された前記ドープ溶液を中空糸ノズルで放射してポリケトン中空糸を得た後、これを後述する冷却水槽に浸漬して急速固形化して熱誘導相分離法でポリケトン中空糸分離膜を製造する段階を含むことができる。
【0054】
前記ドープ溶液をノズルで放射してポリケトン中空糸を得る方法は、本発明で制限しない。例えば、前記ノズルの内側に吐出されるボア溶液は、ポリエチレングリコール(PEG)、ジメチルスルホン(DMSO)、スルホラン(Sulfolane)、ジメチルスルホン酸(DMSO)、ペンタンジオール(Pentanediol)、ヘキサンジオール(Hexanediol)、ジエチルフタレート(Diethyl phthalate)、ジメチルフタレート(Dimethyl phthalate)及びグリセリンからなる群より選択される1以上を用いることができるが、これに限定されず、当業界で通常的に用いる方法を利用して用いることができる。また、このとき、前記ドープ溶液と前記ボア溶液の吐出量比は、2:8~4:6であってもよいが、これも限定されない。
【0055】
前記ドープ溶液と前記ボア溶液の吐出速度などは、本発明で限定しない。
【0056】
前記ノズルは、ホール(hole)の内径(inner diameter、ID)が0.1~1mmであり、外径(outer diameter、OD)が0.9~2mmであるノズルを用いることができるが、これに限定されず、その目的によって当業界で通常的に用いる放射ノズルを適用することができる。
【0057】
前記ノズルと前記冷却水槽の冷媒表面までの距離であるエアギャップ(air gap)などは、本発明で限定しない。例えば、前記エアギャップは、目的とする前記ポリケトン中空糸分離膜の形態によって適切な張力を付与するように調節して使用可能である。
【0058】
一方、相分離度は、高分子と希釈剤の間で現われる冷却による相分離挙動を理解するのに非常に重要な研究であり、このような相分離挙動は、分離膜構造を決定する重要な役目をする。
【0059】
本発明で利用する熱誘導相分離法では、ポリケトンの濃度とポリケトンと希釈剤間の親和力によって固-液相分離と液-液相分離挙動が行われる。
【0060】
理論により限定される必要はないが、高分子、すなわち、ポリケトンと希釈剤が高温で一つの相として存在しているときに準不安定領域を経て冷却することになると、核が生成され、相分離が行われる間生成された核が成長して分離膜の構造が球体形を有することなる。この場合、固-液相分離挙動が行われることになり、分離膜構造の予測が容易であるという長所があるが、冷却速度、高分子濃度、高分子と希釈剤間の相互作用が変わることで制御されるので十分な最適化が必要となる。
【0061】
それと反対に、不安定領域を経て冷却することになると、スピノーダル分解機構により核が生成されず、高分子と希釈剤とが互いに連結された構造を有したまま相分離が行われることになり、時間の経過により継続的に構造成長が進行されて互いに連結された分離膜の構造を有することになる。この場合、液-液相分離挙動が起き、多孔性の二重連続性(bicontinuous)又はセルラー(cellular)構造が形成され得る。
【0062】
熱誘導相分離工程で高分子ドープ溶液(高分子A/希釈剤B)が溶液C(ボア溶液又は冷却水槽内の冷媒)と接触するとき、高分子Aと溶液C又は希釈剤Bと溶液Cの間の互換性(compatibility)が非常に重要である。これに対する互換性比較を図2に図式化した。
【0063】
図2を参照すると、高分子Aと溶液Cとの相溶性のほうが希釈剤Bと溶液Cとの相溶性より高いと、界面で高分子と溶液Cがさらによく接触してこの部分に緻密な(dense)高分子層が形成される。
【0064】
一方、希釈剤Bと溶液Cとの相溶性のほうが高分子Aと溶液Cとの相溶性より高いと、希釈剤Bが溶液Cとさらに多く接触し、界面の高分子濃度が減少して多孔性構造が形成されることになる。
【0065】
一方、外表面の場合には、高分子Aと溶液C(quenching bath)の間の相溶性がさらに高いため、外部界面に高分子Aが集まる緻密な(dense)表面構造が現われる。
【0066】
本発明によるポリケトン中空糸分離膜の製造方法は、前記ポリケトン中空糸から前記希釈剤を抽出するために冷却水槽に浸漬する段階を含む。
【0067】
前記ポリケトン中空糸を前記冷却水槽に浸漬して急速固形化して熱誘導相分離法でポリケトン中空糸分離膜を得ることができる。
【0068】
前記冷媒は、水性冷媒であってもよい。具体的に、前記冷媒は、水及び有機溶媒からなる群より選択される1以上を含むことができる。
【0069】
前記有機溶媒は、前記水性冷媒100重量%に対して5~50重量%、好ましくは、10~50重量%、より好ましくは、30~50重量%で含まれ得る。
【0070】
要するに、前記水性冷媒は、水と有機溶媒の混合物であることが好ましく、このとき、有機溶媒は、上述した範囲、水は、残部で含まれることが好ましい。
【0071】
前記範囲を満足する場合、形成される分離膜気孔のサイズを適切に大きくする面で好ましい。
【0072】
前記有機溶媒は、水溶性溶媒を含むことが希釈剤の抽出、冷媒分離及び洗浄に容易であるので好ましい。具体的に、前記有機溶媒は、水溶性溶媒であってもよい。
【0073】
前記有機溶媒は、フタル酸ジブチル(Dibutyl phthalate)、フタル酸ジオクチル(Dioctyl phthalate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、フタル酸ジエチル(Diethyl phthalate)、プロピレングリコール(Propylene glycol)、エチレングリコール(Ethylene glycol)、グリセロール三酢酸(Glycerol triacetate)、ポリエチレングリコール(Polyethylene glycol)、グリセロール(Glycerol)のうち一つ又は二つ以上を選択混合することが好ましい。
【0074】
前記冷媒は、温度が4~70℃、好ましくは、10~40℃、より好ましくは、20~30℃、最も好ましくは、常温であってもよい。前記冷媒の温度が前記範囲内である場合、ポリケトン中空糸分離膜が均一な気孔を有し得るので好ましい。
【0075】
本発明によるポリケトン中空糸分離膜の製造方法は、前記冷却水槽に浸漬された前記ポリケトン中空糸を巻取してポリケトン中空糸分離膜を得る段階を含む。
【0076】
前記巻取は、巻取機を通じて行われ得、過多な張力がかかることになると、前記ポリケトン中空糸が切れることがあるので、張力調節手段を付設してもよいが、これに限定されない。
【0077】
前記巻取速度は、55~120rpm、好ましくは、60~100rpm、より好ましくは、70~80rpmであってもよいが、これに限定されない。ただし、前記巻取速度が前記範囲内である場合、過多な張力がかかって前記ポリケトン中空糸が切れる現象を抑制し得るので好ましい。
【0078】
また、前記巻取機を利用して得られたポリケトン中空糸分離膜は、必要に応じて、洗浄及び乾燥過程をさらに経ることができるが、これに限定されない。
【0079】
例えば、エタノールなどを利用してポリケトン中空糸分離膜を1次洗浄、2次洗浄した後、20~60℃で乾燥する過程などを経ることができる。
【0080】
本発明によるポリケトン中空糸分離膜の製造方法は、耐化学性及び耐熱性に優れたポリケトンと前記ポリケトンを均一に分散させ得る希釈剤を、熱誘導相分離法を通じて急速固形化後に機械的強度が低下する現象を抑制し、希釈剤とポリケトン、ボア溶液又は冷却水槽内の冷媒のような溶液間の相互溶媒反応を通じて精密濾過又は限外濾過分離膜の気孔を自由に調節することができるので、従来の金属塩を利用する製造方法と比較して非常に優れた性能を有する分離膜を製造し得るという利点がある。
【0081】
<ポリケトン中空糸分離膜>
本発明の他の様態は、上述したポリケトン中空糸分離膜の製造方法で製造されたポリケトン中空糸分離膜に関する。
【0082】
すなわち、本発明の他の様態は、ポリケトンと希釈剤の混合物を加熱して前記ポリケトンを溶融させることでドープ(dope)溶液を製造する段階;前記ドープ溶液内に存在する気泡を除去する段階;気泡が除去された前記ドープ溶液を中空糸ノズルで放射してポリケトン中空糸を得る段階;前記ポリケトン中空糸から前記希釈剤を抽出するために冷却水槽に浸漬する段階;及び前記冷却水槽に浸漬された前記ポリケトン中空糸を巻取してポリケトン中空糸分離膜を得る段階;を含むポリケトン中空糸分離膜の製造方法で製造されたポリケトン中空糸分離膜に関する。
【0083】
本発明によるポリケトン中空糸分離膜は、精密濾過適用分野に応用可能であるという利点がある。
【0084】
本発明によるポリケトン中空糸分離膜は、従来の金属塩を利用した方法ではなく、熱誘導相分離法を利用して製造されるので、従来の方法で製造された分離膜に比べてポリケトン含量が高いため機械的強度が優秀であり、伸び率が高いという利点がある。
【0085】
また、本発明によるポリケトン中空糸分離膜は、均一な気孔サイズを有し、機械的強度が優秀であるという利点があり、有機溶媒抵抗性に優れているという利点がある。
【0086】
本発明のまた他の実施形態において、前記ポリケトン中空糸分離膜は、純水透過度が10~270LMH/bar、具体的に、30~250LMH/bar、より具体的に、80~100LMH/barであってもよい。本発明によるポリケトン中空糸は、純水透過度に優れており、有機溶媒を使用する分離工程で精密濾過膜に適用し得る。
【0087】
前記ポリケトン中空糸分離膜は、引張強度が5~15MPa、具体的に、5~10MPa、より具体的に、5~8MPaであってもよい。
【0088】
また、前記ポリケトン中空糸分離膜は、伸び率が15~50%、具体的に、20~40%、より具体的に、20~35%であってもよい。
【0089】
前記引張強度は、万能引張強度試験機を利用して測定したものであってもよい。具体的に、前記引張強度は、50mmの一定サイズのポリケトン中空糸分離膜を50mm/minの速度で引いて破断する瞬間の引張強度と伸び率を測定することで得ることができる。
【0090】
本発明によるポリケトン中空糸分離膜は、優れた引張強度と伸び率を示すので、長期運転及び高い機械的性能を要求する多様な産業に適用し得る。
【0091】
本発明によるポリケトン中空糸分離膜は、耐化学性に優れ、機械的特性に優れた利点がある。また、気孔サイズが均一であり、膜の膨潤が抑制される優れた効果を示す。
【0092】
具体的に、本発明によるポリケトン中空糸分離膜は、ポリケトンが有する優れた耐化学性と耐熱的特性により、浄水及び水処理分野だけでなく有機溶媒内で分離を必要とする精油、医薬、触媒分野など多様な分野に適用が可能であり、効率で価格経済性の効果をもたらすことができる。
【0093】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を通じて詳しく説明する。しかし、本明細書による実施例は、様々な他の形態に変形され得、本明細書の範囲が下で詳述する実施例によって限定されるものと解釈されない。本明細書の実施例は、当業界において平均的な知識を有した者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。また、以下で含有量を示す「%」及び「部」は、特に言及しない限り、重量基準である。
【0094】
(1)ポリケトン中空糸分離膜の製造
中空糸分離膜を製造するために用いられた高分子であるPKは、Hyosung Polyketoneの製品のうちM330Aを用いた。また、希釈剤及び内部溶液としては、polyethylene glycol 300(PEG300)(100%、SAMCHUN)とdimethyl sulfone(DMSO)(>99.0%、Tokyo Chemical Industry Co.、LTD.)、Glycerine(>99.0%、DAEJUNG)を用いた。実験に用いられた水は、超純水製造装置を通じて自主的に使用した。
【0095】
図1は、中空糸膜製造装置の模式図を示す。製造装置の反応器内に高分子と各希釈剤を濃度に合わせて入れた後に6時間の間210℃で撹拌し、窒素雰囲気下でdope solutionを製造した。製造されたdope solutionは、放射する1時間の前に撹拌速度を最小化して溶液内に存在する気泡を除去した後に用い、製造されたdope solutionは、ギアポンプを通じて中空糸ノズルに移動して放射された。中空糸を製造するのに必要な内部溶液は、全ての条件で同一にPEG300を用い、dope solutionと一緒にギアポンプを通じて中空糸ノズルに移動して放射された。ノズルから放射された中空糸分離膜は、固形化と分離膜内部の希釈剤抽出を誘導する冷却水槽を経て巻取機に巻取され、その後、超純水に担持して保管することで、希釈剤の種類によるポリケトン中空糸分離膜を製造した。製造された中空糸分離膜の詳しい放射条件は、下記表1に示した。
【0096】
【表1】
【0097】
(2)実験例
ポリケトン中空糸分離膜の表面特性の分析
製造例によって製造されたポリケトン中空糸分離膜の内外部表面と断面の構造を観察するためにscanning electron microscope(S5410、JEOL)を用いた。正確な断面の分析のために液化窒素に分離膜を入れて破断し、準備された試料を40秒間gold coatingしてサンプルに前処理をした後に分析し、その結果を下記図3に示した。
【0098】
具体的に、図3にポリケトン中空糸分離膜の製造に用いられる希釈剤の種類によるcross-section(a)と内表面(b)及び外表面(c)構造を示した。図3の(a)を参照すると、希釈剤のうちPEG300とglycerineを用いたとき、断面の気孔が互いに連結されているスポンジ形状の構造を有しており、液-液相分離挙動が起きることを確認した。そして、DMSOの場合には、断面の構造から確実に球体形構造が現われることが分かり、他の二つの希釈剤を通じて製造された分離膜とは異なり、固-液相分離挙動によって膜が形成されたことを確認した。図3の(b)、(c)は、希釈剤による中空糸の内表面と外表面の表面分析結果を示す。
【0099】
PEG300とglycerineの内表面の場合、diluentと内部boresolutionの相溶性がさらに高いため均一な気孔が形成されたことが分かる。また、glycerineを用いて製造した中空糸分離膜よりPEG300で製造した中空糸分離膜の内表面の気孔がより多く開かれたことが示され、これは水透過度結果を通じて確認可能であると判断される。
【0100】
DMSOを通じて製造された中空糸分離膜は、上述した二つの分離膜とは異なり、固-液相分離挙動により球体形の構造を示すことが確認された。内表面の場合、ゆっくり冷却するので相分離時間が十分であったため多孔質の形態が観察され、急速冷却する外部は、内部に比べて多少稠密な形態の表面が観察された。
【0101】
純水透過度の分析
製造例によって製造されたポリケトン中空糸分離膜の純水透過度結果を図4に示した。
【0102】
中空糸分離膜の純水透過度の分析は、cross-flow filtration方式を利用して測定した。実験は、超純水に保管されていた分離膜を14-16cmの間の長さに準備し、約2.4cmの有効面積となるように切断して行った。透過実験装置に連結するのに適当なサイズに分離膜を設定した後、同じ条件で三回以上実施してその平均値を用いた。このとき、水透過度
【数1】
(Lm-2-1bar-1)値は、結果を次の式に代入して計算した。
【0103】
【数2】
【0104】
V:分離膜で透過された透過水の総量(L)
A:測定に用いられた分離膜の有効面積(m
Δt:水が透過するのにかかる時間(h)
ΔP:測定圧力(bar)
【0105】
図4から分かるように、PEG300で製造された膜は、約130LMHであり、DMSOの場合、最も高い約250LMH、glycerineは、最も低い約15LMHの透過度結果を示した。図3を参照すると、最も高い透過度が出たDMSOを除外してPEG300とglycerineで製造されたポリケトン中空糸分離膜の構造を示した結果は、気孔が互いに連結されているスポンジ構造を示す同一の状態を示し、断面、外表面、内表面全て類似する傾向を示すことが分かる。しかし、図3(b)の内表面を比較したとき、glycerineよりもPEG300のほうがbore solutionと相溶性が良いため、より多く均一な気孔が形成されたことが分かり、これを通じて、PEG300を通じて製造されたポリケトン中空糸分離膜の透過度値がより高いと判断される。
【0106】
機械的特性の分析
製造例によって製造されたポリケトン中空糸分離膜の破断強度及び伸び率を図5に示した。
【0107】
ポリケトン中空糸分離膜の機械的特性は、万能引張強度試験機(tensometer 2020)を利用して分析した。具体的に、50mmの一定サイズの中空糸分離膜を用いて50mm/minの速度で引いて破断する瞬間の引張強度と伸び率(引張応力)を測定した。このとき、分析された結果は、三回以上繰り返し実験を通じて再現性を確認した。
【0108】
図5から分かるように、それぞれの希釈剤に該当する引張強度は、8MPa、6MPa、8MPaであり、伸び率は、約35、20、35%の結果を得た。これは、図3のSEM特性分析及びTIPS工程による相分離挙動から分かるように、気孔が互いに均一に連結されているPEG300、glycerineサンプルがより高い破断強度と伸び率を有すると判断される。
【0109】
分離膜工程を適用する多様な産業で長期運転及び性能に影響を与える重要な要素のうち一つが機械的特性であり、このような機械的特性は、材料の種類、濃度、分離膜の構造、気孔などにより決定される。本発明によるポリケトン中空糸分離膜は、機械的特性に優れているので、長期運転及び優れた性能を要求する多様な産業分野に適用可能であると判断される。
【0110】
耐化学性の分析
図6図8に製造例によって製造されたポリケトン中空糸分離膜に有機溶媒を適用したときに現われる多様な特性分析結果を示した。上の結果に基づき、スポンジ構造を有する分離膜のうち純水透過度性能がより良いPEG300で製造された膜を用いた。
【0111】
具体的に、有機溶媒抵抗性分離膜の最も重要な要素である溶媒に対する耐化学性実験を行った。全ての中空糸分離膜は、乾燥器に入れて十分に乾燥した後に同じ重さでサンプル化し、強い有機溶媒であることが知られているDMAc、DMF、DMSO、NMP内に保管した。溶媒内に保管されたサンプルは、1週間の単位で取り出して残存する有機物を超純水で洗浄して除去した後、24時間以上十分に乾燥して重さ変化を確認した。
【0112】
まず、図6は、製造されたポリケトン中空糸分離膜が有する有機溶媒に対する耐化学性分析結果に対するグラフである。有機溶媒抵抗性分離膜として活用するのに適合するか否かを調べるために6ヶ月の間長期的に評価した。
【0113】
本実験に用いられた有機溶媒は、DMAc、DMF、DMSO、NMPであって、分離膜産業だけでなく精密化学産業で主に用いられる毒性溶媒である。結果的に、製造されたポリケトン中空糸分離膜の有機溶媒に対する耐化学性を評価したとき、4種類の溶媒が全て2.5%以内の重さ減少率を示した。
【0114】
次に、図7は、上の長期耐化学性の評価を行った膜の機械的強度を測定した結果である。4種類の有機溶媒に入っていた分離膜を洗浄した後に十分に乾燥して評価し、6ヶ月の間の変化を観察した。結果的に、破断強度の場合、長期間溶媒に露出されたにもかかわらず、6ヶ月の評価期間の間初期試料である約8MPaの強度を着実に維持することが確認できる。伸び率は、一ヶ月の間有機溶媒に露出される場合、初期試料の半分程度の伸び率値を示しているものの、その後には、徐々に減少せず落ちた伸び率の値をそのまま維持することを確認した。高分子分離膜が有機溶媒に露出される場合、時間が経つほど有機溶媒により硬化するので、分離膜が容易に破断する結果が現われたと判断される。このような結果を通じて、有機溶媒抵抗性分離膜に適用するのに適切な性能が確認され、特に、破断強度の場合、長期間の有機溶媒内でも特段の影響を受けず初期試料と同一の結果を維持したので優れた評価結果を示すと判断される。
【0115】
最後に、図8は、4ヶ月の間有機溶媒に露出したポリケトン中空糸分離膜の水透過度の分析結果である。初期透過度の場合、約106LMHの値が測定され、同一条件のサンプルを自然乾燥した後更に測定して約96LMHの結果を得た。これは、製造されたポリケトン中空糸分離膜に形成された気孔が分離膜の乾燥によって収縮したためであると判断され、超純水に浸されていた分離膜の初期透過度と大きい差はないことが確認できる。比較のため、サンプルは、4ヶ月の間それぞれの4種の有機溶媒に担持した状態で維持し、測定のためにサンプルを取り出した後に超純水で洗浄して乾燥して評価と分析を行った。用いられた有機溶媒であるDMAc、DMF、DMSO、NMPの順に約98、80、99、85LMHの純水透過度結果が測定された。DMAcとDMSOは、既存サンプルの透過度値より約2~3%落ちた誤差範囲内の値を示し、DMFとNMPの場合、既存値より約15~20%落ちた数値の透過度結果を示した。
【0116】
前記製造例及び実験例を通じてポリケトン中空糸分離膜を熱誘導相分離法(TIPS)により製造し、様々な希釈剤を適用した場合によって分離膜の構造、純水透過度、機械的特性、耐化学特性などに対して調査した。ポリケトン中空糸分離膜を製造するにおいて、PEG300又はglycerineを希釈剤として用いたとき、液-液相分離が起きて分離膜の全体に気孔間に連結されているスポンジ構造を有することが確認された。一方、DMSOを希釈剤として用いた場合には、固-液相分離が起きて分離膜構造が球体形を有することを確認した。このような球体形の分離膜構造によりDMSOで製造された膜の純水透過度が最も高く測定された。また、気孔と気孔が連結されたスポンジ構造の分離膜形態を示すPEG300、glycerineを利用して製造された分離膜が相対的に優れた機械的特性値を示した。有機溶媒抵抗性分離膜の役目を有するために最も重要な部分である耐化学性の評価結果では、製造されたポリケトン中空糸分離膜が毒性有機溶媒内で6ヶ月の間約2%の重さ減少率が測定され、耐化学性の評価から得られた分離膜を通じた追加的な透過度及び機械的特性の分析も有機溶媒抵抗性分離膜として用いるのに十分に優れた結果を有することが示された。
【0117】
分離膜を適用する多くの精密化学産業の工程では、透過度、機械的強度、耐化学性など長期運転に必要な多様な部分を満たす分離膜が必要である。本研究に用いられたPKは、素材自体の物理的、化学的特性も優れ、上の多様な評価特性を満足させるほど十分な性能を有するので、有機溶媒を用いる多様な産業への適用に適合すると判断される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】