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特表2024-539519非ヒト霊長類の個別化されたゲノムアセンブリ及び人工多能性幹細胞株を前臨床評価に使用するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】非ヒト霊長類の個別化されたゲノムアセンブリ及び人工多能性幹細胞株を前臨床評価に使用するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20241018BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241018BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20241018BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241018BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20241018BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241018BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C12N5/10
C12Q1/02
C12Q1/68
C12N15/09 100
C12Q1/6869 Z
C12N15/867 Z
C12N15/12
C40B40/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024548680
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 US2022078407
(87)【国際公開番号】W WO2023070016
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/257,997
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524152182
【氏名又は名称】エクシール, インク.
【氏名又は名称原語表記】EXIR, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ルードガー,モルテザー
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR79
4B063QS40
4B065AA90
4B065AA90X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065BD50
4B065CA44
(57)【要約】
本明細書では、被験者の個別化されたゲノムアセンブリと、被験者から生成された人工多能性幹細胞(iPSC)と、を使用することを含む、前臨床薬剤評価の方法について述べている。更に、ヒト治療法の前臨床試験の方法が、単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から組織又は血液を取得するステップと、その少なくとも1つの個体からPBMCを分離するステップと、その少なくとも1つの個体からのPBMCからiPSCを生成するステップと、その少なくとも1つの個体に対するインビトロ試験、インビボ試験、又は遺伝的試験のうちの1つ以上を実施するステップと、を含む。非ヒト霊長類からiPSCを生成するための組成物についても本明細書で述べている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ヒト霊長類(NHP)の個体群内の個体から人工多能性幹細胞(iPSC)を生成する方法であって、
単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から末梢血単核細胞(PBMC)を取得するステップと、
所定期間にわたって造血幹細胞(HSC)拡大培地で前記PBMCを培養して血液前駆細胞を拡大するステップと、
前記培養されたPBMCに転写因子の組み合わせをトランスフェクトして、前記細胞が前記転写因子を過剰に発現させるよう誘導されるようにするステップであって、前記トランスフェクトされた培養済みPBMCはiPSCにリプログラミングされる、前記トランスフェクトするステップと、
前記トランスフェクトするステップのわずか1日後に、前記トランスフェクトされた細胞を、複数のフィーダ細胞を含む容器に移すステップと、
前記移すステップのわずか1日後に、前記細胞を第2の容器に移すステップと、
前記第2の容器に移す前記ステップの選択された日数後に、
前記細胞に培地を追加すること、
前記細胞内の前記培地を交換すること、及び
前記細胞に1つ以上の細胞増殖因子を追加すること
のうちの少なくとも1つを実施するステップと、
第1の細胞コロニーが出現するまで、
細胞外マトリックスでコーティングされた第3の容器に各コロニーを配置することによって前記細胞を継代するステップ、及び
インビトロ試験、インビボ試験、又はゲノムライブラリの作成のうちの1つ以上において使用するために前記第1の細胞コロニーを拡大するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記拡大するステップは、前記iPSCをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、前記iPSCを細胞分離溶液でインキュベートするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インキュベートするステップは、約37℃で所定時間にわたって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記拡大するステップは、前記iPSCを吸引して単個細胞浮遊液中に解離させるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記iPSCを主要系統に分化させるステップであって、前記主要系統は、外胚葉、中胚葉、及び内胚葉のうちの少なくとも1つを含む、前記分化させるステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記主要系統を最終組織に分化させるステップを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの個体の個別化されたゲノムアセンブリを生成するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
アーカイブ品質のDNAを精製するプロセスによって、前記取得されたPBMCから多量の高分子量(HMW)DNAを抽出するステップを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出されたHMW DNAからゲノムライブラリを調製するステップと、HMW DNAのロングリード断片を配列決定するステップと、前記ロングリード断片のアセンブル及びアノテーションを行って、前記PBMCが取得された前記少なくとも1つの個体のゲノムを再作成するステップと、を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記転写因子は、c-myc、Klf4、Sox2、Oct3/4、Klf2、Nanog、Tfcp2L1、及びStat3からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のフィーダ細胞は、マウス胚性線維芽細胞(MEF)又はSNLフィーダ細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記トランスフェクトされた細胞を、前記複数のフィーダ細胞を含む容器に移す前記ステップは、約1μM~約3μMの範囲のタンキラーゼ1/2阻害剤を追加するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
トランスフェクトされた細胞と前記複数のフィーダ細胞との比は約1:3~約1:7である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記トランスフェクトするステップではセンダイウイルスベクターを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上の細胞増殖因子は塩基性線維芽細胞増殖因子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞外マトリックスでコーティングされた前記第3の容器に各コロニーを配置することによって前記細胞を継代する前記ステップは、前記第3の容器内の培地にセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤を追加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
被験者の個別化されたゲノムアセンブリと、前記被験者から生成された人工多能性幹細胞(iPSC)と、を含む、前臨床薬剤評価の方法。
【請求項18】
前記被験者からのiPSCから生成された細胞又は組織を前記被験者に移植して、前記被験者の前記移植された細胞又は組織の機能性を評価するステップを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1つ以上のパネルを生成するステップと、特定の集団の動物が薬剤実験に適するかどうかを前記1つ以上のパネルに基づいて予測するステップと、を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記被験者から生成された前記iPSCを使用して、ガイドRNA又は遺伝子編集ツールを生成するステップと、前記被験者において前記ガイドRNA又は遺伝子編集ツールのインビボ試験を実施するステップと、を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
ヒト治療法の前臨床試験の方法であって、
単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から組織又は血液を取得するステップと、
前記少なくとも1つの個体からPBMCを分離するステップと、
前記少なくとも1つの個体からの前記PBMCからiPSCを生成するステップと、
前記少なくとも1つの個体からの前記PBMCからDNAを抽出するステップと、
前記抽出されたDNAを少なくともある程度使用してDNAライブラリを調製するステップと、
前記少なくとも1つの個体の全ゲノムアセンブリを調製するステップと、
前記全ゲノムアセンブリのコンピュータ分析を実施するステップと、
を含む方法。
【請求項22】
前記コンピュータ分析は、主要組織適合性複合体関連遺伝子又は副組織適合性複合体関連遺伝子の一方又は両方を識別することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記コンピュータ分析は、免疫系関連遺伝子を識別することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記コンピュータ分析は、抗薬剤抗体(ADA)反応関連遺伝子を識別することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記コンピュータ分析は、前臨床遺伝子型決定を実施することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記コンピュータ分析は、肝臓毒性関連遺伝子を識別することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記DNAは高分子量DNAである、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記DNAはアーカイブ品質のDNAである、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記DNAライブラリを調製する前記ステップは、前記抽出されたDNAに対してロングリード配列決定を実施するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記全ゲノムアセンブリを調製する前記ステップは、前記調製されたDNAライブラリに基づいて前記少なくとも1つの個体のゲノムを再作成するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
ヒト治療法の前臨床試験の方法であって、
単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から組織又は血液を取得するステップと、
前記少なくとも1つの個体からPBMCを分離するステップと、
前記少なくとも1つの個体からの前記PBMCからiPSCを生成するステップと、
前記少なくとも1つの個体から前記生成されたiPSCに対してインビトロ試験を実施するステップと、
前記インビトロ試験からインビトロ試験結果を引き出すステップと、
前記インビトロ試験結果と、前記少なくとも1つの個体の遺伝子型とを相関させるステップと、
を含む方法。
【請求項32】
インビトロ試験を実施する前記ステップは、ガイドRNAを設計し、インビトロで前記iPSCに前記ガイドRNAをトランスフェクトするステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
インビトロ試験結果を引き出す前記ステップは、前記iPSCにおいてインビトロで前記ガイドRNAの遺伝子編集効率を検出するパネルを実行するステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ヒト治療法の前臨床試験の方法であって、
単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から組織又は血液を取得するステップと、
前記少なくとも1つの個体からPBMCを分離するステップと、
前記少なくとも1つの個体からの前記PBMCからiPSCを生成するステップと、
前記少なくとも1つの個体においてインビボ試験を実施するステップと、
前記インビボ試験からインビボ試験結果を引き出すステップと、
前記インビボ試験のインビボ試験結果と少なくとも1つの個体の遺伝子型とを相関させるステップと、
を含む方法。
【請求項35】
前記iPSCを生成する前記ステップは、
所定期間にわたって造血幹細胞(HSC)拡大培地で前記PBMCを培養して血液前駆細胞を拡大するステップと、
前記培養されたPBMCに転写因子の組み合わせをトランスフェクトして、前記細胞が前記転写因子を過剰に発現させるよう誘導されるようにするステップであって、前記トランスフェクトされた培養済み細胞はiPSCにリプログラミングされる、前記トランスフェクトするステップと、
前記トランスフェクトするステップのわずか1日後に、前記トランスフェクトされた細胞を、複数のフィーダ細胞を含む容器に移すステップと、
前記移すステップのわずか1日後に、前記細胞を第2の容器に移すステップと、
前記第2の容器に移す前記ステップの選択された日数後に、
前記細胞に培地を追加すること、
前記細胞内の前記培地を交換すること、
前記細胞に1つ以上の細胞増殖因子を追加すること
のうちの少なくとも1つを実施するステップと、
第1の細胞コロニーが出現するまで、
細胞外マトリックスでコーティングされた第3の容器に各コロニーを配置することによって前記細胞を継代するステップ、及び
インビトロ試験、インビボ試験、又はゲノムライブラリの作成のうちの1つ以上において使用するために前記第1の細胞コロニーを拡大するステップと、
を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
インビボ試験を実施する前記ステップは、前記iPSCのサブセットを前記少なくとも1つの個体に自家移植又は自家注入するステップを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
自家移植又は自家注入の前に前記iPSCを標識化するステップを更に含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記標識化は蛍光標識化を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記インビボ試験結果を引き出す前記ステップは、抗薬剤抗体を検出するパネルを実行するステップを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記インビボ試験結果を引き出す前記ステップは、肝臓毒性を検出するパネルを実行するステップを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
ヒト治療法の前臨床試験の方法であって、
単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から組織又は血液を取得するステップと、
前記少なくとも1つの個体からPBMCを分離するステップと、
前記少なくとも1つの個体からの前記PBMCからiPSCを生成するステップと、
前記少なくとも1つの個体から前記生成されたiPSCのサブセットに対してインビトロ試験を実施するステップと、
前記インビトロ試験からインビトロ試験結果を引き出すステップと、
前記少なくとも1つの個体から前記生成されたiPSCの第2のサブセットを前記少なくとも1つの個体に自家注入又は自家移植するステップと、
前記少なくとも1つの個体においてインビボ試験を実施するステップと、
前記インビボ試験からインビボ試験結果を引き出すステップと、
前記インビボ試験結果と前記インビトロ試験結果とを相関させるステップと、
を含む方法。
【請求項42】
iPSCを生成する前記ステップは、
所定期間にわたって造血幹細胞(HSC)拡大培地で前記PBMCを培養して血液前駆細胞を拡大するステップと、
前記培養されたPBMCに転写因子の組み合わせをトランスフェクトして、前記細胞が前記転写因子を過剰に発現させるよう誘導されるようにするステップであって、前記トランスフェクトされた培養済み細胞はiPSCにリプログラミングされる、前記トランスフェクトするステップと、
前記トランスフェクトするステップのわずか1日後に、前記トランスフェクトされた細胞を、複数のフィーダ細胞を含む容器に移すステップと、
前記移すステップのわずか1日後に、前記細胞を第2の容器に移すステップと、
前記第2の容器に移す前記ステップの選択された日数後に、
前記細胞に培地を追加すること、
前記細胞内の前記培地を交換すること、
前記細胞に1つ以上の細胞増殖因子を追加すること
のうちの少なくとも1つを実施するステップと、
第1の細胞コロニーが出現するまで、
細胞外マトリックスでコーティングされた第3の容器に各コロニーを配置することによって前記細胞を継代するステップ、及び
インビトロ試験、インビボ試験、又はゲノムライブラリの作成のうちの1つ以上において使用するために前記第1の細胞コロニーを拡大するステップと、
を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
インビトロ試験を実施する前記ステップは、ガイドRNAを設計し、インビトロでiPSCの前記サブセットに前記ガイドRNAをトランスフェクトするステップを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
インビトロ試験結果を引き出す前記ステップは、iPSCの前記サブセットにおいて前記ガイドRNAのインビトロ遺伝子編集効率を検出するパネルを実行するステップを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記自家移植又は自家注入のためにiPSCに前記ガイドRNAをトランスフェクトするステップを更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記インビボ試験結果を引き出す前記ステップは、肝臓毒性を検出するパネルを実行するステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記インビボ試験結果を引き出す前記ステップは、iPSCの前記第2のサブセットにおいて前記ガイドRNAのインビボ遺伝子編集効率を検出するパネルを実行するステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記相関させるステップは、前記インビトロ遺伝子編集効率を前記インビボ遺伝子編集効率と比較するステップを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
インビトロ試験を実施する前記ステップは、一治療法により前記iPSCをインビトロで処置するステップを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
前記インビトロ試験結果を引き出す前記ステップは、前記治療法のインビトロ毒性を検出するパネルを実行するステップを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記インビボ試験結果を実施する前記ステップは、前記少なくとも1つの個体を前記治療法で処置するステップを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記インビボ試験結果を引き出す前記ステップは、前記治療法のインビボ毒性を検出するパネルを実行するステップを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記相関させるステップは、前記インビトロ毒性を前記治療法の前記インビボ毒性と比較するステップを含む、請求項52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月20日に出願された米国特許仮出願第63/257,997号の優先権利益を主張するものであり、この米国特許仮出願の内容は参照によって完全な形で本明細書に組み込まれている。
文献の引用
【0002】
本明細書中において言及される全ての公表文献及び特許出願は、それぞれ個々の公表文献又は特許出願が参照により完全な形で具体的且つ個別に示されて組み込まれる場合と同程度に、参照により完全な形で本明細書に組み込まれている。
【0003】
本開示は、前臨床試験のための薬剤及び関連する化学物質のバイオインフォマティクス、効能、機能性、及び毒性に関する。更に本開示は、非ヒト霊長類の個別化されたゲノムアセンブリ及び人工多能性幹細胞株を前臨床評価に使用するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
製薬業界では、ある薬剤候補の対ヒト試験が安全に行えるかどうかをメーカーが判断することに前臨床研究が役立つ。従来の前臨床試験は動物実験に大きく依存している。典型的には、FDAの方針では、薬剤候補の試験は、げっ歯類及び非げっ歯類において行うことが必要とされている。非げっ歯類は霊長類であるべしという要件はないが、解剖学的且つ生理学的にヒトに似ていることから、前臨床検査には非ヒト霊長類(NHP)が使用されることが多い。この霊長類被験者が薬剤候補に曝されることが、その候補の対ヒト安全性を判定することに役立つ。非ヒト霊長類の使用は極めて高コストである。場合によっては、実験で犠牲にするためだけの動物1匹に数万ドルかかる可能性がある。更に、一般的な動物実験や特にNHP実験に対して嫌悪感が高まっている。
【0005】
そこで、前臨床試験において犠牲にしなければならない動物の数を最小限に抑える試験方法が大いに必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の技術における課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術は、非ヒト霊長類(NHP)の個体群内の個体から人工多能性幹細胞(iPSC)を生成する方法に関し、本方法は、単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から末梢血単核細胞(PBMC)を取得するステップと、所定期間にわたって造血幹細胞(HSC)拡大培地でPBMCを培養して血液前駆細胞を拡大するステップと、培養されたPBMCに転写因子の組み合わせをトランスフェクトして、細胞が転写因子を過剰に発現させるよう誘導されるようにするステップであって、トランスフェクトされた培養済みPBMCはiPSCにリプログラミングされる、トランスフェクトするステップと、トランスフェクトするステップのわずか1日後に、トランスフェクトされた細胞を、複数のフィーダ細胞を含む容器に移すステップと、前記移すステップのわずか1日後に、細胞を第2の容器に移すステップと、第2の容器に移すステップの選択された日数後に、細胞に培地を追加すること、細胞内の培地を交換すること、及び細胞に1つ以上の細胞増殖因子を追加することのうちの少なくとも1つを実施するステップと、第1の細胞コロニーが出現するまで、細胞外マトリックスでコーティングされた第3の容器に各コロニーを配置することによって細胞を継代するステップ、及び、インビトロ試験、インビボ試験、又はゲノムライブラリの作成のうちの1つ以上において使用するために第1の細胞コロニーを拡大するステップと、を含む。
【0008】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、拡大するステップは、iPSCをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、iPSCを細胞分離溶液でインキュベートするステップを含む。
【0009】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、インキュベートは、約37℃で所定時間にわたって行われる。
【0010】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、拡大するステップは、iPSCを吸引して単個細胞浮遊液中に解離させるステップを含む。
【0011】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法が、iPSCを主要系統に分化させるステップであって、主要系統は、外胚葉、中胚葉、及び内胚葉のうちの少なくとも1つを含む、分化させるステップを更に含む。
【0012】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法が、主要系統を最終組織に分化させるステップを更に含む。
【0013】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法が、その少なくとも1つの個体の個別化されたゲノムアセンブリを生成するステップを更に含む、
【0014】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法が、アーカイブ品質のDNAを精製するプロセスによって、取得されたPBMCから多量の高分子量(HMW)DNAを抽出するステップを更に含む。
【0015】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法が、抽出されたHMW DNAからゲノムライブラリを調製するステップと、HMW DNAのロングリード断片を配列決定するステップと、ロングリード断片のアセンブル及びアノテーションを行って、PBMCが取得された少なくとも1つの個体のゲノムを再作成するステップと、を更に含む。
【0016】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、転写因子は、c-myc、Klf4、Sox2、Oct3/4、Klf2、Nanog、Tfcp2L1、及びStat3からなる群から選択される。
【0017】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、複数のフィーダ細胞は、マウス胚性線維芽細胞(MEF)又はSNLフィーダ細胞である。
【0018】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、トランスフェクトされた細胞を、複数のフィーダ細胞を含む容器に移すステップは、約1μM~約3μMの範囲のタンキラーゼ1/2阻害剤を追加するステップを更に含む。
【0019】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、トランスフェクトされた細胞と複数のフィーダ細胞との比は約1:3~約1:7である。
【0020】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、トランスフェクトするステップではセンダイウイルスベクターを使用する
【0021】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、1つ以上の細胞増殖因子は塩基性線維芽細胞増殖因子を含む。
【0022】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、細胞外マトリックスでコーティングされた第3の容器に各コロニーを配置することによって細胞を継代するステップは、第3の容器内の培地にセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤を追加するステップを含む。
【0023】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術は、前臨床薬剤評価の方法に関し、本方法は、被験者の個別化されたゲノムアセンブリと、被験者から生成された人工多能性幹細胞(iPSC)と、を含む。
【0024】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法が、その被験者からのiPSCから生成された細胞又は組織をその被験者に移植して、その被験者の移植された細胞又は組織の機能性を評価するステップを更に含む。
【0025】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法が、1つ以上のパネルを生成するステップと、特定の集団の動物が薬剤実験に適するかどうかをその1つ以上のパネルに基づいて予測するステップと、を更に含む。
【0026】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法が、被験者から生成されたiPSCを使用して、ガイドRNA又は遺伝子編集ツールを生成するステップと、被験者においてガイドRNA又は遺伝子編集ツールのインビボ試験を実施するステップと、を更に含む。
【0027】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術は、ヒト治療法の前臨床試験の方法であって、本方法は、単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から組織又は血液を取得するステップと、その少なくとも1つの個体からPBMCを分離するステップと、その少なくとも1つの個体からのPBMCからiPSCを生成するステップと、その少なくとも1つの個体からのPBMCからDNAを抽出するステップと、抽出されたDNAを少なくともある程度使用してDNAライブラリを調製するステップと、その少なくとも1つの個体の全ゲノムアセンブリを調製するステップと、全ゲノムアセンブリのコンピュータ分析を実施するステップと、を含む。
【0028】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、コンピュータ分析は、主要組織適合性複合体関連遺伝子又は副組織適合性複合体関連遺伝子の一方又は両方を識別することを含む。
【0029】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、コンピュータ分析は、免疫系関連遺伝子を識別することを含む。
【0030】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、コンピュータ分析は、抗薬剤抗体(ADA)反応関連遺伝子を識別することを含む。
【0031】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、コンピュータ分析は、前臨床遺伝子型決定を実施することを含む。
【0032】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、コンピュータ分析は、肝臓毒性関連遺伝子を識別することを含む。
【0033】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、DNAは高分子量DNAである。
【0034】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、DNAはアーカイブ品質のDNAである。
【0035】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、DNAライブラリを調製するステップは、抽出されたDNAに対してロングリード配列決定を実施するステップを含む。
【0036】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、全ゲノムアセンブリを調製するステップは、調製されたDNAライブラリに基づいてその少なくとも1つの個体のゲノムを再作成するステップを含む。
【0037】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術は、ヒト治療法の前臨床試験の方法に関し、本方法は、単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から組織又は血液を取得するステップと、その少なくとも1つの個体からPBMCを分離するステップと、その少なくとも1つの個体からのPBMCからiPSCを生成するステップと、その少なくとも1つの個体から生成されたiPSCに対してインビトロ試験を実施するステップと、インビトロ試験からインビトロ試験結果を引き出すステップと、インビトロ試験結果と、その少なくとも1つの個体の遺伝子型とを相関させるステップと、を含む。
【0038】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、インビトロ試験を実施するステップは、ガイドRNAを設計し、インビトロでiPSCにガイドRNAをトランスフェクトするステップを含む。
【0039】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、インビトロ試験結果を引き出すステップは、iPSCにおいてインビトロでガイドRNAの遺伝子編集効率を検出するパネルを実行するステップを含む。
【0040】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術は、ヒト治療法の前臨床試験の方法に関し、本方法は、単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から組織又は血液を取得するステップと、その少なくとも1つの個体からPBMCを分離するステップと、その少なくとも1つの個体からのPBMCからiPSCを生成するステップと、その少なくとも1つの個体においてインビボ試験を実施するステップと、そのインビボ試験からインビボ試験結果を引き出すステップと、インビボ試験のインビボ試験結果と少なくとも1つの個体の遺伝子型とを相関させるステップと、を含む
【0041】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、iPSCを生成するステップは、所定期間にわたって造血幹細胞(HSC)拡大培地でPBMCを培養して血液前駆細胞を拡大するステップと、培養されたPBMCに転写因子の組み合わせをトランスフェクトして、細胞が転写因子を過剰に発現させるよう誘導されるようにするステップであって、トランスフェクトされた培養済み細胞はiPSCにリプログラミングされる、トランスフェクトするステップと、トランスフェクトするステップのわずか1日後に、トランスフェクトされた細胞を、複数のフィーダ細胞を含む容器に移すステップと、前記移すステップのわずか1日後に、細胞を第2の容器に移すステップと、第2の容器に移すステップの選択された日数後に、細胞に培地を追加すること、細胞内の培地を交換すること、細胞に1つ以上の細胞増殖因子を追加することのうちの少なくとも1つを実施するステップと、第1の細胞コロニーが出現するまで、細胞外マトリックスでコーティングされた第3の容器に各コロニーを配置することによって細胞を継代するステップ、及び、インビトロ試験、インビボ試験、又はゲノムライブラリの作成のうちの1つ以上において使用するために第1の細胞コロニーを拡大するステップと、を含む。
【0042】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、インビボ試験を実施するステップは、iPSCのサブセットをその少なくとも1つの個体に自家移植又は自家注入するステップを含む。
【0043】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法が、自家移植又は自家注入の前にiPSCを標識化するステップを更に含む。
【0044】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、標識化は蛍光標識化を含む。
【0045】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、インビボ試験結果を引き出すステップは、抗薬剤抗体を検出するパネルを実行するステップを含む。
【0046】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、インビボ試験結果を引き出すステップは、肝臓毒性を検出するパネルを実行するステップを含む。
【0047】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術は、ヒト治療法の前臨床試験の方法に関し、本方法は、単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から組織又は血液を取得するステップと、その少なくとも1つの個体からPBMCを分離するステップと、その少なくとも1つの個体からのPBMCからiPSCを生成するステップと、その少なくとも1つの個体から生成されたiPSCのサブセットに対してインビトロ試験を実施するステップと、インビトロ試験からインビトロ試験結果を引き出すステップと、その少なくとも1つの個体から生成されたiPSCの第2のサブセットをその少なくとも1つの個体に自家注入又は自家移植するステップと、その少なくとも1つの個体においてインビボ試験を実施するステップと、インビボ試験からインビボ試験結果を引き出すステップと、インビボ試験結果とインビトロ試験結果とを相関させるステップと、を含む。
【0048】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、iPSCを生成するステップは、所定期間にわたって造血幹細胞(HSC)拡大培地でPBMCを培養して血液前駆細胞を拡大するステップと、培養されたPBMCに転写因子の組み合わせをトランスフェクトして、細胞が転写因子を過剰に発現させるよう誘導されるようにするステップであって、トランスフェクトされた培養済み細胞はiPSCにリプログラミングされる、トランスフェクトするステップと、トランスフェクトするステップのわずか1日後に、トランスフェクトされた細胞を、複数のフィーダ細胞を含む容器に移すステップと、前記移すステップのわずか1日後に、細胞を第2の容器に移すステップと、第2の容器に移すステップの選択された日数後に、細胞に培地を追加すること、細胞内の培地を交換すること、細胞に1つ以上の細胞増殖因子を追加することのうちの少なくとも1つを実施するステップと、第1の細胞コロニーが出現するまで、細胞外マトリックスでコーティングされた第3の容器に各コロニーを配置することによって細胞を継代するステップ、及び、インビトロ試験、インビボ試験、又はゲノムライブラリの作成のうちの1つ以上において使用するために第1の細胞コロニーを拡大するステップと、を含む。
【0049】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、インビトロ試験を実施するステップは、ガイドRNAを設計し、インビトロでiPSCのサブセットにガイドRNAをトランスフェクトするステップを含む。
【0050】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、インビトロ試験結果を引き出すステップは、iPSCのサブセットにおいてガイドRNAのインビトロ遺伝子編集効率を検出するパネルを実行するステップを含む。
【0051】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法が、自家移植又は自家注入のためにiPSCにガイドRNAをトランスフェクトするステップを更に含む。
【0052】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、インビボ試験結果を引き出すステップは、肝臓毒性を検出するパネルを実行するステップを含む。
【0053】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、インビボ試験結果を引き出すステップは、iPSCの第2のサブセットにおいてガイドRNAのインビボ遺伝子編集効率を検出するパネルを実行するステップを含む。
【0054】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、相関させるステップは、インビトロ遺伝子編集効率をインビボ遺伝子編集効率と比較するステップを含む。
【0055】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、インビトロ試験を実施するステップは、一治療法によりiPSCをインビトロで処置するステップを含む。
【0056】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、インビトロ試験結果を引き出すステップは、その治療法のインビトロ毒性を検出するパネルを実行するステップを含む。
【0057】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、インビボ試験結果を実施するステップは、その少なくとも1つの個体をその治療法で処置するステップを含む。
【0058】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、インビボ試験結果を引き出すステップは、その治療法のインビボ毒性を検出するパネルを実行するステップを含む。
【0059】
幾つかの態様では、本明細書に記載の技術が関連する方法において、相関させるステップは、インビトロ毒性をその治療法のインビボ毒性と比較するステップを含む。
【0060】
ここまでは概要であるため、当然のことながら、詳細については限られている。以下では、上述の態様、並びに本技術の他の態様、特徴、及び利点を、添付図面を参照しながら、様々な実施形態に関して説明する。
【0061】
図示された実施形態は例に過ぎず、本開示を限定するものではない。これらの図面は、特徴及び概念を説明するために描かれており、必ずしも正しい縮尺では描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】非ヒト霊長類からの人工多能性幹細胞(iPSC)、ゲノムアセンブリ、及び関連するゲノム計算を使用する、ヒトの治療法の前臨床試験の方法の一実施形態を示す概略図である。
図2】霊長類iPSCを様々な組織及び細胞に分化させることを示す概略図であり、これは、候補治療法の効能、機能性、及び/又は毒性をインビトロで評価し、その後にそのiPSCが生成された同じ非ヒト霊長類においてその治療法を評価するためのものである。
図3A】非ヒト霊長類の末梢血単核細胞(PBMC)をiPSCにリプログラミングする方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図3B】非ヒト霊長類の末梢血単核細胞(PBMC)をiPSCにリプログラミングする方法の一実施形態の概略図である。
図4】非ヒト霊長類iPSCから生成された組織及び/又は細胞に対する薬剤のインビトロ試験の方法の一実施形態を示す概略図であり、これは、そのiPSC細胞及び/又は組織が生成された同じ非ヒト霊長類において治療法の効能、機能性、又は安全性の評価をインビボで行うことに先立つものである。
図5】iPSC又はiPSCから生成された細胞に対する遺伝子治療製品のインビトロ試験の方法の一実施形態の概略図であり、これは、そのiPSC細胞及び/又は組織が生成された同じ非ヒト霊長類においてインビボ試験を行う前に効能、機能性、及び/又は毒性を評価するためのものである。
図6A】ヒトにおける細胞及び/又は遺伝子治療法の前臨床試験のモデルとして、iPSC又はiPSCから生成された細胞及び/又は組織を、そのiPSCが生成された同じ非ヒト霊長類に自家移植する方法の一実施形態を示す概略図である。
図6B】更なる研究のためのiPSCの標識化を示す。
図6C】iPSC細胞又は組織における遺伝子編集を示す。
図7A】ヒトiPSC用として開発された従来式の組成物及び方法を用いて生成されたマカクiPSCの4倍拡大画像である。
図7B】ヒトiPSC用として開発された従来式の組成物及び方法を用いて生成されたマカクiPSCの10倍拡大画像である。
図7C】本明細書に記載の非ヒト霊長類iPSC用の組成物及び方法を用いて生成されたマカクiPSCの4倍拡大画像である。
図7D】本明細書に記載の非ヒト霊長類iPSC用の組成物及び方法を用いて生成されたマカクiPSCの10倍拡大画像である。
図7E】ヒトiPSC用として開発された従来式の組成物及び方法を使用する場合と、本明細書に記載の非ヒト霊長類iPSC用の組成物及び方法を使用する場合との、iPSC生成の効率の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
ここまでは概要であるため、当然のことながら、詳細については限られている。ここからは、上述の態様、並びに本技術の他の態様、特徴、及び利点を、様々な実施形態に関して説明していく。後述の実施形態を本明細書に含めることは、本開示をそれらの実施形態に限定することを意図するものではなく、むしろ、当業者であれば、企図される実施形態の作成及び使用が可能であるようにすることを意図するものである。他の実施形態が利用されてもよく、本発明対象の趣旨又は範囲から逸脱しない限り、修正が行われてもよい。本明細書に記載及び図示されている本開示の各態様は、多様な形式でアレンジ、組み合わせ、修正、及び設計が行われてよく、それらの全てが明示的に企図されて本開示の一部を成す。
【0064】
従来は、ヒト細胞株に対するインビトロ試験が実施されてから、マウスやラット等のげっ歯類の基本的なインビボ試験が遂行される。マウスの結果とヒトの結果との相関は困難であり、予測不能である。これは、少なくとも、マウスとヒトとにおいて同じタンパク質遺伝子配列の約70%が共通であって、これらの遺伝子がそれぞれのゲノムの約1.5%を構成していることによる。げっ歯類の試験は、人体がどのように反応するかを表しているかもしれないし、表していないかもしれないが、げっ歯類の試験の後、試験は非ヒト霊長類に移行する。しかしながら、ヒト細胞株試験とげっ歯類のインビボ試験との間には潜在的な不一致があるため、典型的には、多数の非ヒト霊長類が使用される。FDAの規制によれば、げっ歯類のインビボ試験からヒトのインビボ試験に一足飛びに移行することは、ほとんどの場合、不可能である。
【0065】
更に、米農務省のレポートによれば、2016年の米国での研究に820,812匹の動物が使用されており、これらの動物のうちの71,000匹超が非ヒト霊長類であった。更に、2020年のコロナウイルス感染症の大流行の間にワクチン開発のための非ヒト霊長類の使用が大幅に増加し、結果として世界中で動物が不足した。この不足の主な原因は、米国及び他の国々の製薬業界への非ヒト霊長類の主要供給元である中国が2020年に米国へのNHPの輸出を停止したという事実である。更に、生物医学研究にNHPを使用することへの懸念が高まっている。
【0066】
そこで、インビトロ結果とインビボ結果との相関性を高めること、前臨床試験とヒト臨床試験との相関の尤度を高めること、並びに、非ヒト霊長類の使用を減らすことのための新しい方法が必要とされている。
【0067】
幾つかのグループが、創薬のために、ヒトインビトロiPSCモデルを使用して、インビトロデータ及びインシリコデータを生成して、それらを組み合わせることを試行してきた。しかしながら、ヒトiPSCインビトロシステムに基づく方法は、インビトロ試験結果の正確さを検証するための、ヒトからのインビボデータが欠落している。各動物に適合するNHPからの個人化されたiPSCを使用することにより、現時点ではヒトiPSCを使用しても不可能な、インビトロとインビボとを個人別に結合するアプローチに対応することが可能になる。非ヒト霊長類は約95%のゲノム相同性をヒトと有するが、それはヒトにとって完璧なモデルではない。しかしながら、NHPのiPSC及び組織からのインビトロデータと、(ヒトと異なり、インビボ実験に使用可能な)NHPからのインビボデータとの両方を組み合わせることは可能であるため、この結合するアプローチは、創薬には有用である。
【0068】
更に、幾つかの研究グループが、リプログラミング及びiPSC生成のプロセスを研究して、ヒト細胞及びマウスを使用して若返り及び加齢のプロセスを理解しようとしている。NHPにおけるiPSC生成のプロセスは興味をかき立てるものであり、ヒトやマウスほど単純ではない。更に、非ヒト霊長類の種が異なれば寿命も異なる。例えば、チンパンジーは最長で約55年生き、マカクは最長で約30年生きる。チンパンジー、ヒト、マカク、及び他のNHPの間でiPSCの比較研究を行うことは、加齢及び若返りのプロセスを理解するのに役立つであろう。
【0069】
全般的には、本明細書に記載の方法は、FDA承認の前に非ヒト霊長類モデルで薬剤及び治療法の前臨床評価を行うことに関して従来の方法を改善する。例えば、記載の方法は、非ヒト霊長類の人工多能性幹細胞(iPSC)を使用することと、そのiPSCが生成された同じ動物からの個別化されたゲノムアセンブリを使用することと、そのiPSC及び個別化されたゲノムアセンブリが生成された同じ動物に対する、前臨床評価のためのインビボ試験を行うことと、を含み、それによって、インビトロ試験とインビボ試験との間の結果の相関を高め、安全性及び治療反応の遺伝子マッピングを改善し、これは、非ヒト霊長類モデルで薬剤及び治療法の前臨床評価を行うことに関して、従来の方法に比べて、より選択的な(より高い相関を有するものにフォーカスした)薬剤研究と、非ヒト霊長類の使用を徐々に減らすことと、につながる。
【0070】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、免疫拒絶の問題を回避するという技術的効果及び/又は利点を提供しうる。これは、実験の設計が、特定且つ個別の非ヒト霊長類(NHP)において、iPSC、個別化されたゲノム、並びに組織及び細胞の自家移植を利用するように行われうるためである。例えば、試験の様々な段階において特定の動物自身の細胞から細胞及び組織が抽出されるため、ヒト試験及び予想されるヒトの反応に関してよりよい情報を与えうる、妥当な結論が引き出される、且つ/又は妥当な比較がなされる可能性がある。
【0071】
本明細書では、薬剤、治療法、製薬、遺伝子治療、ゲノム編集ツール、処置等の用語は、本明細書に記載の方法がこれら及びその他のいずれかについての前臨床評価に使用されうるという点においては区別なく使用されてよい。
【0072】
実際的な適用例
本明細書に記載の方法の実際的な適用例として、優良試験所基準(GLP)と、効能、機能性、及び薬剤安全性と、抗薬剤抗体(ADA)反応及び関連する遺伝的性質と、効能及び機能性を含むゲノム編集方法と、iPSC及び/又はiPSCから生成された細胞又は組織を使用する遺伝子治療の毒性試験と、がん治療のための、免疫療法及びキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を含む細胞療法と、がん及び他の非感染性又は感染性の疾患のためのモノクローナル抗体(これは、遺伝的に検証された標的の状態を照会する、高速且つ非終端的な方法を提供する)と、画像化のためのiPSC標識化と、の前臨床評価のための改善された方法がある。本明細書の別の場所で、組成物及び方法の様々な実際的な適用例を更に記載している場合がある。
【0073】
本明細書に記載の方法は、ヒト向けの薬剤、治療法、医薬品等の前臨床評価に特に適用可能であると考えられ、それは、ヒトのDNAが、平均で、我々から最も遠い霊長類近縁のDNAと96%同じであり、我々に最も近い近縁であるチンパンジー及びボノボとほぼ99%同じであるためである。
【0074】
薬剤開発の途中の、前臨床段階から市販後段階にかけて、薬剤の安全性レベルの評価が行われる。安全性の尺度は、通常、製品の使用に関連する有害事象のタイプ及び量と、期待されるレートとの比較を指す。優良試験所基準(GLP)は、品質試験データの開発を促進するように設計されている。GLPは、薬剤開発の前臨床段階の間に実験室検査を管理することへの正しいアプローチを保証するツール及び方法論を提供する。
【0075】
GLPの安全性尺度に関する問題に取り組むために、非ヒト霊長類ゲノムを使用して、同じ非ヒト霊長類での試験中に、薬剤の遺伝子型と安全性との可能な相関が確立されてよい。アセンブルされたゲノム情報は、非ヒト霊長類の特定の遺伝子型が、同じNHPにおける薬剤耐性、薬剤毒性、及び抗薬剤抗体(ADA)の発生に関連付けられているかどうか、並びに、同じNHPにおける薬剤及び/又は治療法の潜在的問題を解決しうる。アセンブルされたゲノム情報は、遺伝子パネル(例えば、1つ以上の遺伝子突然変異又は遺伝子マーカを検出するための遺伝子アッセイ)の作成を可能にでき、遺伝子パネルを使用すると、動物の新しいコロニーが特定の薬剤及び/又は治療法の実験に適するかどうかを予測することが可能である。一例として、薬剤の前臨床試験時に動物にADAができる問題がある。関心対象の薬剤に対する既存の抗体に関して動物のスクリーニングを行っても、やはり、前臨床試験中に、ある個体数の動物にADAができる。免疫グロブリン受容体領域、主要組織適合性複合体(MHC)、副組織適合性複合体(MiHC)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、及び他の免疫遺伝子に関しては、動物の全ゲノムに基づく遺伝子パネルは、前臨床試験時にADAができる動物を排除することに有用であろう。更に、コロニー内のNHPごとに個人化されたiPSC株は、薬剤及び/又は治療法の安全性の評価を、インビトロのプレGLPにおいて、且つ/又は、その薬剤及び/又は治療法をインビボで使用する前に行い、その結果として、使用されるNHPを減らすための適切なツールである。
【0076】
図2に示すように、NHP210からのiPSC200は、本明細書に記載の方法により、主要系統、即ち、外胚葉240、中胚葉230、及び内胚葉220に分化することが可能であり、その後、最終組織、即ち、肝臓250、膵臓260、神経細胞270、心筋細胞280、造血系、免疫細胞等に分化することが可能である。従って、薬剤の安全性は、まず、個別化された動物iPSCから生成された組織に対するインビトロアッセイを通して評価され、その後、同じ動物に対してインビボで評価されてよい。本明細書に記載の方法は、ヒトとの相同性が高い、安全性評価中の個体動物に直接関連しているiPSC由来の細胞及び組織に対する事前分析ステップ(例えば、試験)を実施するために用いられてよい。即ち、個体動物のそのように抽出された態様の試験及び/又は事前分析を実施し、その後、同じ動物を使用して実験を行うことは、第1の種のインビトロ試験を行って安全性等を評価し、第2の種のインビボ試験を行って安全性等を評価し、更に、第1及び第2の種と異なる標的種(例えば、ヒト)の臨床研究を行う従来のシステムより有利である。本明細書に記載の方法の利点の一例として、事前分析されているiPSCと、実験されている動物と、同じ動物の遺伝的特徴との間の直接相関をもたらすデータが生成されることが挙げられる。これは、全く同じ個体動物及びそのそれぞれのゲノムが両ステップに使用されるためである。言い換えれば、インビトロ評価及びインビボ評価並びに遺伝的関係に全く同じ個体動物を使用することにより、事前分析データと実験結果データとの直接相関が得られ、これは、ヒトとNHPとの間に高い相同性がある場合には、ヒトに直接関連付けられることが可能である。抽出された態様の例として、個人化されたiPSCから生成されたiPSC由来の細胞及び組織に関連付けられた効能、機能性、及び安全性尺度が挙げられる。特に、そのような態様は、同じ動物に関して確定される効能、機能性、及び安全性尺度を、その同じ動物のインビボ実験の前に予測するものである。
【0077】
図6Bに示すように、各個体動物のiPSC株650(例えば、細胞又は組織)から生成された細胞及び組織は、蛍光タンパク質又は他の細胞標識化方法で標識化されて、自家移植中に動物の体内で追跡されてよい。iPSCから生成された細胞及び組織は、図2に示したように、標識化されてよく、同じ動物への自家移植又は自家注入を実施して、図6Aに示すように、細胞の機能性を評価するための現実的なツールである。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法及び組成物を使用する前臨床試験方法は、第1のNHPからのiPSCから生成された、標識化された細胞及び組織を第1のNHPの中に自家移植することを含む。前臨床試験方法は更に、細胞を画像化することを含んでよい。画像化は、トラフィッキングパターン、局在化、有効性、細胞又は組織の生存度、及び他のパラメータを特定するために行われてよい。NHPに対して試験されている処置の効果を分析するために、同じ動物に移植されるiPSC由来の細胞及び組織の標識化及び画像化が行われてよい。例えば、標識化及び画像化は、移植された細胞が所定時間経過後に隔離されることを可能にし、例えば、蛍光活性化細胞分類を用いて、幾つかある評価の中で特に、細胞をインビボで追跡すること、細胞生存度を評価することを可能にする。前臨床処置試験の様々なステップの間に同じ非ヒト霊長類を使用することにより、安全性、有効性等に関する1:1の評価及び/又は相関を保証することが可能である。更に、前臨床処置試験の様々なステップにおいて同じ非ヒト霊長類を使用することにより、結果として、使用されるNHPを減らすことが可能である。
【0078】
方法及び組成物
概要
全般的には、本明細書では、非ヒト霊長類から人工多能性幹細胞(iPSC)を生成する方法について述べる。例えば、非ヒト霊長類には、カニクイザル、ブタオザル(例えば、ミナミブタオザル(Macaca nemestrina)、キタブタオザル(Macaca leonine)、バーバリーマカク(Macaca sylvanusi))、ヒヒ、アフリカミドリザル、アカゲザル、チンパンジー等が含まれる。
【0079】
全般的には、本明細書では、個別化された非ヒト霊長類のゲノムDNAの配列決定、並びに、配列決定された非ヒト霊長類のゲノム断片のデノボアセンブリを行って、個体非ヒト霊長類の個別リファレンスゲノムを得る方法について述べる。例えば、ゲノム断片のアセンブリは、ロングリード技術を用いることを含んでよいが、本明細書の別の場所に記載のように、ショートリード技術も含んでよい。
【0080】
本明細書で用いるように、培地は、DMEM培地、RPMI(商標)培地、F12(商標)培地等があってよく、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、以下で、又は本明細書の別の場所で特殊培地について詳述する。
【0081】
前臨床評価の方法の一実施形態は、単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から人工多能性幹細胞(iPSC)を生成するステップと、その少なくとも1つの個体の個別リファレンスゲノムを生成するステップと、を含む。そのような実施形態では、その同じ少なくとも1つの個体(即ち、非ヒト霊長類)が、その後の前臨床試験に使用され、その同じ非ヒト霊長類からのインビボ結果が、その同じ非ヒト霊長類からのiPSCのインビトロ結果と比較される。この方法によって得られた答えは、同じ非ヒト霊長類からのiPSC及びリファレンスゲノムを使用することにより、インビボ試験のリスクレベルを下げる、前臨床試験の強固な基盤が得られるということである。
【0082】
図1は、非ヒト霊長類(NHP)のiPSC、ゲノムアセンブリ、及び関連するゲノム分析及び/又はゲノム計算を使用する、ヒトの治療法の前臨床試験の方法の一実施形態を示す概略図である。例えば、方法100は、第1の非ヒト霊長類から組織又は血液を取得するステップ(110)と、第1の非ヒト霊長類からPBMCを分離するステップ(120)と、第1の非ヒト霊長類からのPBMCからiPSCを生成するステップ(130)と、第1の非ヒト霊長類からのPBMCからDNAを抽出するステップ(140)と、DNA配列決定方法を少なくともある程度用いてDNAライブラリ150を調製するステップ(160)と、第1の非ヒト霊長類の全ゲノムアセンブリを調製するステップ(170)と、(破線で示した)任意選択で、コンピュータ分析を実施するステップ(180)と、を含んでよい。遺伝子治療前臨床試験の分野にゲノム分析の一例がある。遺伝子治療法のプロセスでは、的外れ効果を防ぐガイドRNA(gRNA)を設計することと、AAVベクター内の相同性アームの正確な設計により、AAVベクターを使用して標的遺伝子座に標的遺伝子を正確に挿入することと、のために個別化されたゲノムが望ましい。同じ動物からのiPSCに適合するNHPの個人ゲノムであれば、遺伝子治療の前臨床試験及び他の細胞療法(例えば、T細胞受容体情報のような個人化されたゲノム情報を必要とするCAR-T細胞)にとって理想的なツールとなる。コンピュータ分析には、主要組織適合性複合体遺伝子及び/又は副組織適合性複合体遺伝子、及び/又は免疫系関連遺伝子の識別が含まれうる。又、コンピュータ分析には、抗薬剤抗体(ADA)反応遺伝子型決定も含まれうる。分析には、前臨床遺伝子型決定を実施することも含まれうる。一例示的実施形態では、本方法は更に、第1の非ヒト霊長類から生成されたiPSCに対してインビトロ試験を実施するステップと、インビトロ試験の結果と、第1の非ヒト霊長類の遺伝子型とを相関させるステップと、を含んでよい。一例として、AAVベクター又は他の細胞遺伝子及び治療方法による、動物及びヒトの肝臓毒性がある。iPSCから生成された肝細胞又は免疫細胞(例えば、PBMC)に対する、AAVベクターの免疫原性のレベルをインビトロで予測するための初期試験が、インビボでのNHPの肝臓毒性の予測因子として用いられてよい。インビボの肝臓毒性は、インビトロの結果と同じNHPの遺伝子型とを相関させることに基づいて予測されてよい。一実施形態では、本方法は、第1の非ヒト霊長類のインビボ試験を実施するステップと、このインビボ試験の結果とインビトロ試験の結果及び/又は第1の非ヒト霊長類の遺伝子型とを相関させるステップと、を含んでよい。
【0083】
非ヒト霊長類iPSCの生成
図3Aは、非ヒト霊長類のPBMCからiPSCを生成することの一実施形態を示す。方法700は、単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から末梢血単核細胞(PBMC)を取得するステップ(S710)と、所定時間にわたって造血幹細胞(HSC)拡大培地でPBMCを培養して(例えば、CD34+細胞を含む)血液前駆細胞を拡大するステップ(S720)と、培養されたPBMCをトランスフェクトして、培養された細胞をiPSCにリプログラミングするステップ(S730)と、トランスフェクトされた細胞を、複数のフィーダ細胞を含む容器に移すステップ(S740)と、その細胞を第2の容器に移すステップ(S750)と、第2の容器に移してから、選択された日数が経過したら、その細胞に培地を追加すること、その細胞内の培地を交換すること、又はその細胞に1つ以上の細胞増殖因子を追加することのうちの少なくとも1つを実施するステップ(S760)と、第1の細胞コロニーが出現したら、細胞外マトリックスでコーティングされた第3の容器に各コロニーを配置することによって、それらの細胞を継代するステップ(S770)と、を含む。
【0084】
方法700は更に、インビトロ試験、インビボ試験、又は個体霊長類用のゲノムライブラリの作成のうちの1つ以上において使用するために第1のコロニーを拡大するステップを含んでよい。
【0085】
幾つかの実施形態では、トランスフェクトするステップは、細胞が転写因子を過剰に発現させるよう誘導されるように転写因子の組み合わせをトランスフェクトするステップを含む。例えば、転写因子は、c-myc、KLf4、Sox2、又はOct3/4を含んでよい。追加又は代替の転写因子が使用されてよく、それらは本開示の範囲内にある。例えば、追加又は代替として、Klf2、Nanog、Tfcp2L1、及びStat3等の転写因子が使用されてよい。
【0086】
幾つかの実施形態では、拡大するステップは、iPSCを緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄し、iPSCを細胞分離溶液(例えば、トリプシン、キレート剤、コラゲナーゼ等)でインキュベートするステップを含んでよい。幾つかの実施形態では、インキュベートは、約37℃で所定時間にわたって行われる。所定時間は、約30秒~約10分、約1分~約60分、約1分~約5分等であってよい。
【0087】
方法700の幾つかの実施形態では、トランスフェクトされた細胞を、フィーダ細胞を有する容器に移すステップは、トランスフェクトされてからわずか約1日後に行われる。フィーダ細胞は、マウス胚性線維芽細胞(MEF)、SNLフィーダ細胞等を含んでよい。
【0088】
幾つかの実施形態では、細胞を第2の容器に移すステップは、フィーダ細胞を有する容器に移してからわずか約1日後に行われる。
【0089】
幾つかの実施形態では、拡大するステップは、iPSCを吸引して単個細胞浮遊液中に解離させるステップを含む。
【0090】
方法700の一適用例では、図2に示すように、iPSCは、主要系統に分化することが可能である。主要系統は、外胚葉240、中胚葉230、及び内胚葉220のうちの少なくとも1つを含んでよい。追加として、又は任意選択で、主要系統は更に、最終組織に分化することが可能である。最終組織は、インビトロ試験に使用されてよく、インビボ試験のために第1の非ヒト霊長類に自家移植されてよく、且つ/又は、ゲノムライブラリ生成に使用されてよい。
【0091】
方法700は更に、PBMCが収穫又は取得された個体と同じ個体である少なくとも1つの個体の個別化されたゲノムアセンブリを生成するステップを含んでよい。ゲノムアセンブリを生成するステップは、本明細書の別の場所で述べるように、アーカイブ品質のDNAを精製するプロセスによって、取得されたPBMCから多量の高分子量(HMW)DNAを抽出するステップと、HMW DNAのロングリード断片を配列決定するステップと、ロングリード断片のアセンブル及びアノテーションを行って、PBMCが取得された少なくとも1つの個体のゲノムを再作成するステップと、を含んでよい。
【0092】
一実施形態では、前臨床薬剤評価の方法は、被験者の個別化されたゲノムアセンブリと、被験者から生成された人工多能性幹細胞(iPSC)と、を含んでよい。被験者の細胞の機能性を評価するために、被験者からのiPSCから生成された細胞及び/又は組織が被験者に移植されてよい。
【0093】
一実施形態では、特定の動物又は特定の集団の動物が特定の薬剤実験に適するかどうかを、1つ以上のパネルに基づいて予測するための、その1つ以上のパネルが生成されてよい。例えば、これらのパネルは、iPSCから生成された組織(例えば、肝細胞)及び/又は初代細胞(例えば、PBMC)に対して試験を行う小分子又は遺伝子治療AAVベクターを含む。
【0094】
一実施形態では、被験者からのiPSCから生成された細胞及び/又は組織は、ガイドRNA又は遺伝子編集ツールを生成するために使用されてよい。ガイドRNA又は遺伝子編集ツールを使用して、被験者においてガイドRNA又は遺伝子編集ツールのインビボ試験が実施されてよい。
【0095】
図3Bは、非ヒト霊長類のPBMCからiPSCを生成する方法300の一実施形態を示す。例えば、ある種の非ヒト霊長類の個体から末梢血単核細胞(PBMC)が取得され、このPBMCがその動物の全血から分離される。PBMCを動物の全血から分離することは、密度勾配遠心分離法(DGC)、蛍光活性細胞選別、磁気ビーズベース分離、浮力活性化細胞選別(BACS)等を用いて行われてよい。一実施形態では、PBMCはDGCにより分離される。一実施形態では、PBMCはBACSにより分離される。
【0096】
幾つかの実施形態では、NHPのPBMCをiPSCにリプログラミングする方法300は、StemSpan(商標)(ステムセル・テクノロジーズ・インコーポレイテッド(Stemcell Technologies Inc.)、カナダ、ブリティッシュコロンビア州バンクーバー)等の造血幹細胞(HSC)拡大培地において、約3日~約10日、約5日~約10日、約6日~約10日、約7日~約10日、約8日~約10日、又は約9日間の期間にわたって、PBMCを培養して血液前駆細胞(例えば、CD34+細胞)を拡大するステップ(310)を含む。幾つかの実施形態では、StemSpan(商標)の代替品が使用されてよい。例えば、(例えば、リプログラミング転写因子のトランスフェクトに先行する)非ヒト霊長類の造血幹及び/又は前駆細胞(HSPC)の拡大のための組成物として、IL3、IL6、FLT-3、TPO、及びSCFが挙げられる。幾つかの実施形態では、非ヒト霊長類からのHSPCの拡大の効率を高めるために、拡大培地内の動物血清(例えば、ウシ胎仔血清)がポリビニルアルコール(PVA)に置き換えられてよく、またはこれと組み合わされてよい。CD34は、HSCによって発現するだけでなく、他の多数の非造血細胞タイプによっても発現し、そのようなものとして、筋衛星細胞、角膜実質細胞、間質細胞、上皮前駆細胞、及び血管内皮前駆細胞がある。従って、異なる複数の細胞タイプが前駆細胞活性を潜在的に発現することが可能であり、拡大可能である。
【0097】
更に、PBMCをiPSCにリプログラミングする方法300は、血液前駆細胞に転写因子をトランスフェクトするステップ(320)を含んでよい。NHPのPBMCは、NHPの人工多能性幹細胞(iPSC)にリプログラミングされる。PBMCをiPSCにリプログラミングする方法は、細胞が転写因子を過剰に発現させるよう誘導されるように、PBMCに1つ以上の転写因子をトランスフェクトするステップを含んでよい。転写因子は、DNAを読んで解釈するタンパク質群の1つである。それらは、DNAに結合して、遺伝子転写の増減のプログラムの開始を支援する。幹細胞誘導プロトコルは、非ヒト霊長類に特に最適化されており、これは、非ヒト霊長類に最適化された幹細胞を生成するために様々なアプローチが取られるためである。幾つかの実施形態では、これらの転写因子の転写結合部位は、NHPにおけるリプログラミングプロセスの効率を高めるために、個別化された霊長類ゲノム上にマッピングされてよく、これは特に、ヒトゲノム内の転写結合部位がNHP種において完全に保存されているとは限らないためである。従って、ヒトiPSCリプログラミングキットの使用は、NHP種におけるiPSC生成にとって効率的ではない。このことは、NHPゲノムが非常に多様であり、NHPゲノム内の既存の突然変異が非ヒト霊長類細胞において(ヒトiPSC生成キットからの)転写因子の非効率的な結合を引き起こすという事実を考えても重要である。
【0098】
様々なトランスフェクト方法が用いられてよく、そのような方法として、電気穿孔法、リン酸カルシウム曝露、リポソームベースのトランスフェクト、(トランスダクションとも呼ばれる)ウイルス媒介トランスフェクト等があり、これらに限定されない。一実施形態では、PBMCをトランスフェクトする方法はトランスダクションを含む。トランスダクションは、例えば、センダイウイルスベクター、アデノウイルスベクター、オンコレトロウイルスベクター、又はレンチウイルスベクターを使用して達成可能である。幾つかの変形形態では、トランスフェクトは、センダイウイルスベクターの使用を含む。場合によっては、PBMCをトランスフェクトすることは、リポソーム媒介トランスフェクトを含む。例えば、転写因子は、c-myc、KLf4、Sox2、又はOct3/4を含んでよい。追加又は代替の転写因子が使用されてよく、それらは本開示の範囲内にある。
【0099】
更に、PBMCをiPSCにリプログラミングする方法は、細胞(例えば、トランスフェクトされた細胞及びトランスフェクトされていない細胞)をフィーダ細胞とともに共培養するステップ(330)を含んでよい。フィーダ細胞は、マウス胚性線維芽細胞(MEF)、SNLフィーダ細胞等を含んでよい。トランスフェクトされた細胞とフィーダ細胞との比は、約1:2~約1:8、約1:3~約1:7、約1:4~約1:6、例えば、約1:5であってよい。共培養は、トランスフェクト後の後日に行われてよく、例えば、トランスフェクトの約20時間~約36時間後、約18時間~約30時間後、約18時間~約36時間後、約22時間~約26時間後等に行われてよい。
【0100】
共培養は、Essential-8TM培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermofisher Scientific))で行われてよい。一実施形態では、Essential-8TM培地は、タンキラーゼ1/2阻害剤を含んでよい。タンキラーゼ1/2阻害剤は、濃度が約1μM~約3μM、約1.5μM~約2.5μM、約1μM~約2.5μM、約1.5μM~約3μM、約1.75μM~約2.25μM等で培地内に存在してよい。幾つかの実施形態では、タンキラーゼ1/2阻害剤は、NHPのiPSCを多能性状態で保持して、NHPのiPSCの自然分化を大幅に低減することが可能である。
【0101】
更に、PBMCをiPSCにリプログラミングする方法300は、非接着細胞を新しい培地に移すステップを含んでよい。例えば、この移すステップは、共培養の約24時間~約72時間後、約18時間~約78時間後、約18時間~約30時間後、約30時間~約42時間後、約42時間~約52時間後、約52時間~約66時間後、約66時間~約78時間後等に行われてよい。非接着細胞は、基礎培地で培養されてよく、例えば、MEM培地、DMEM培地、RPMI培地、F12(商標)培地等で培養されてよい。更に、PBMCをiPSCにリプログラミングする方法300は、任意選択で、接着細胞に培地を追加するステップ(340)を含んでよい。追加する培地は、体細胞のリプログラミング、並びに、多能性幹細胞(PSC)の自然分化又は誘導分化をサポートする、フィーダフリー且つゼノフリーの培地を含んでよい。例えば、追加する培地は、Essential-6(登録商標)培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック)であってよい。一実施形態では、培地の追加は、トランスフェクトの約48時間~約96時間後、約42時間~約102時間後等に行われてよい。
【0102】
更に、PBMCをiPSCにリプログラミングする方法300は、任意選択で、接着細胞上の培地を交換するステップを含んでよい。培地交換は、トランスフェクトの約90時間~約144時間後、約96時間~約144時間後、約90時間~約126時間後、約114時間~約126時間後等に行われてよい。交換する培地は、体細胞のリプログラミング、並びに、多能性幹細胞(PSC)の自然分化又は誘導分化をサポートする、フィーダフリー且つゼノフリーの培地であってよい。例えば、追加する培地は、Essential-6(登録商標)培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック)であってよい。
【0103】
更に、PBMCをiPSCにリプログラミングする方法300は、任意選択で、培地を、1つ以上の増殖因子を含む培地に交換するステップ(350)を含んでよい。例えば、培地は、体細胞のリプログラミング、並びに、多能性幹細胞(PSC)の自然分化又は誘導分化をサポートする、フィーダフリー且つゼノフリーの培地を含んでよい。例えば、追加する培地は、Essential-6(登録商標)培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック)であってよい。増殖因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子、DJ-1、上皮増殖因子等であってよい。一実施形態では、増殖因子は塩基性線維芽細胞増殖因子を含む。増殖因子(即ち、bFGF)の濃度は、約100ng/μL~約200ng/μLであってよい。幾つかの実施形態では、この特定の増殖因子及び/又は濃度は、NHPのiPSC生成プロセスの場合に有利であり、それは、市販のヒトbFGFがNHP細胞との交差反応性においてそれほど効率的ではないためである。培地交換は、トランスフェクトの約144時間~約192時間後、約160時間~約250時間後、約162時間~約174時間後、約188時間~約198時間後、約210時間~約222時間後、約232時間~約246時間後等に行われてよい。培地交換は、1日以上又は複数日にわたって毎日繰り返されてよく、例えば、1回、2回、3回、又はそれ以上繰り返されてよい。
【0104】
更に、PBMCをiPSCにリプログラミングする方法300は、任意選択で、培地交換を1日以上又は複数日にわたって毎日行うステップ(380)を含んでよい。例えば、培地交換は、トランスフェクトの約240時間後からトランスフェクトの約440時間後の間に行われてよい。培地は、基礎培地、Essential-6(登録商標)、Essential-8(登録商標)、腫瘍増殖因子-b(TGF-b)及び/又はb-FGFを含む培地、又は同様の培地に交換されてよい。幾つかの実施形態では、培地は、iPSCの第1のコロニーが視覚的に識別されるまで毎日交換されてよい。
【0105】
更に、PBMCをiPSCにリプログラミングする方法300は、iPSCの第1のコロニーをマトリックス(例えば、細胞外マトリックス、Matrigel(登録商標)、Cultrex(登録商標)、Geltrex(登録商標)等)上で培養するステップ(370)を含んでよい。第1のコロニーは、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤を含む培地で培養されてよい。例えば、培地はEssential-8(登録商標)を含んでよい。セリン/スレオニンキナーゼは、Rho阻害剤又はRho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ(ROCK)阻害剤(例えば、チアゾビビン(TZV)又は同様の製品)を含んでよい。阻害剤の濃度は、約1μM~約3μMであってよい。
【0106】
更に、PBMCをiPSCにリプログラミングする方法300は、約12時間~約48時間後に細胞を継代するステップを含んでよい。継代するステップ(360)は、培地をリフレッシュして、Wnt経路阻害剤、タンキラーゼ1/2阻害剤等を追加するステップを含んでよい。阻害剤は、濃度が約1μM~約3μM、約1.5μM~約2.5μM、約1μM~約2.5μM、約1.5μM~約3μM、約1.75μM~約2.25μM等であってよい。
【0107】
任意選択で、iPSCの継代及び/又は拡大は、緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄し、細胞分離溶液で細胞をインキュベートすることによって行われてよい。細胞分離溶液は、コラゲナーゼ(又はその組み換え酵素)、トリプシン(又はその組み換え酵素)、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)等を含んでよい。
【0108】
任意選択で、iPSCの拡大又は維持は、本明細書の別の場所で述べるように、フィーダ細胞上又は細胞外マトリックス上の培地で培養することによって行われてよい。培地はセリン/スレオニンキナーゼを含んでよく、セリン/スレオニンキナーゼは、Rho阻害剤又はRho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ(ROCK)阻害剤を含んでよい。阻害剤は、濃度が約1nM~約3nM、約1.5μM~約2.5μM、約1μM~約2.5μM、約1.5μM~約3μM、約1.75μM~約2.25μM等であってよい。
【0109】
後で継代を行う実施形態では、iPSCは、フィーダ細胞のない、基材がコーティングされた容器でインキュベートされてよい。基材は、細胞の多能性、細胞の安定的な核型、及び/又は細胞による多能性マーカの発現を保持するように構成されてよい。例えば、基材は、ラミニン、組み換えラミニン断片(例えば、511 e8断片)、ビトロネクチン、組み換えビトロネクチン、又はこれらの組み合わせを含んでよい。培地は、Essential-8(登録商標)、E8専用補助物(例えば、TGF-b, bFGF等)、並びにWnt経路阻害剤、タンキラーゼ1/2阻害剤等を含んでよい。阻害剤は、濃度が約1nM~約3nM、約1.5μM~約2.5μM、約1μM~約2.5μM、約1.5μM~約3μM、約1.75μM~約2.25μM等であってよい。その後の継代により、分化がほとんどない又は全くないコロニーが得られる。
【0110】
霊長類高分子量(HMW)DNA及びロングリード配列決定を使用するゲノムアセンブリ
図1に戻ると、図1は、第1の非ヒト霊長類からのPBMCからDNAを抽出するステップ(140)と、DNA配列決定方法を少なくともある程度用いてDNAライブラリ150を調製するステップ(160)と、第1の非ヒト霊長類の全ゲノムアセンブリを調製するステップ(170)と、を含む。図1ではPBMCが図示及び説明されているが、他の細胞又は組織、例えば、ニューロン前駆細胞、ケラチノサイト、肝細胞、B細胞、又は線維芽細胞等も使用されてよい。多数の塩基対を有するゲノムDNAは、高分子量DNAと呼ばれる。これは、ロングリードにおける多数の塩基対によってもたらされるDNA断片が高分子量を有していて、対照的に、ショートリードが有する塩基対がはるかに少なく、従って、低分子量であるためである。典型的には、ロングリードは、少なくとも約10,000個の塩基対を含むことがあるが、約5,000個から約50,000個の塩基対を含むこともある。本明細書ではロングリードについて述べているが、ショートリードも想定されている。
【0111】
(上述の)個別化されたiPSC株と適合する非ヒト霊長類の動物コロニーに対して個人化されたゲノムアセンブリを実施するために、ブロック140に示すように、アーカイブ品質のDNAを精製するプロセスを用いてDNAが抽出される。DNAの抽出は、細胞及び/又はDNAの機械的破損を避けるために、酵素ベースの抽出又はクロロホルムベースの抽出により行われてよい。一実施形態では、DNA、例えば、高分子量DNAを抽出するために、Gentra(登録商標)Puregene(登録商標)細胞キット(キアゲンインコーポレイテッド(QIAGEN, INC.)、米国メリーランド州ジャーマンタウン)において実施されるプロトコルが用いられてよい。当業者であれば理解されるように、DNAを抽出するための他のプロトコルも適用可能であってよく、例えば、QuiAmp(登録商標)ゲノムDNAキット(キアゲンインコーポレイテッド)において実施されるプロトコルも適用可能であってよい。
【0112】
図1に示すように、方法100は、DNA配列決定方法を少なくともある程度用いてDNAライブラリを調製するステップ(160)を含む。DNA配列決定は、ロングリード配列決定技術を用いることを含んでよく、例えば、単分子のDNAをリアルタイムで直接配列決定する技術(増幅の有無は任意選択)(例えば、Illumina(登録商標)、PacBio(登録商標)、Nanopore(登録商標)により利用可能な技術)等を用いることを含んでよい。ゲノムアセンブリがロングリード方法を活用することのために、他のロングリード配列決定方法も用いられてよい。
【0113】
幾つかの実施形態では、ライブラリ調製及び配列決定は、主要組織適合性複合体(MHC)遺伝子座の領域内などの、ゲノムのより多くの可変領域を解決することが可能である。更に、一実施形態では、所定の塩基対閾値を上回るゲノムDNAがサイズに応じて精製されてよく、これは、例えば、ビード、電気泳動精製等を用いて行われてよい。精製されたDNAは、図1のブロック170において、ゲノムアセンブリパイプラインに使用されてよく、これには単分子配列決定ツール用のソフトウェアベースのアセンブラが使用される。例えば、精製されたDNA配列からゲノムアセンブリのドラフトを作成することには、様々なアセンブリツール(例えば、Flye、Redbean、Canu等)のいずれが使用されてもよい。
【0114】
幾つかの実施形態では、アセンブルされたゲノムを(対応する動物からの)対応するiPSC株と組み合わせて使用することにより、(個体動物の対応する単一ヌクレオチド多型(SNP)に基づいて、その動物に適合する)ガイドRNAを設計することが可能である。ガイドRNAは、クラスタ化され規則的に間隔を置いた短鎖パリンドローム反復(CRISPR:Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベースの遺伝子編集方法のような遺伝子編集方法との組み合わせで使用されてよい。
【0115】
全ゲノムロングリード配列決定を用いてのADA(抗薬剤抗体)反応の形成(又は大きさ)の予測
幾つかの実施形態では、抗薬剤抗体(ADA)ができるNHPの識別のために、全ゲノムベースの調査が行われてよい。幾つかの動物には、薬剤の安全性を評価するプロセスの間に抗薬剤抗体ができる。ADAは、薬剤に結合して、薬剤の潜在的効果を隠す。ELISA又は他の同様の抗体検出方法を用いて薬剤に対する抗体を検出することが、薬剤を注入された非ヒト霊長類において実施されてよい。幾つかの動物は、遺伝的に、ADAがよりできやすい。そのような遺伝領域の識別は、ADAができない動物と比較してADAができる動物の全ゲノム配列決定を実施することによって行われてよい。非ヒト霊長類の遺伝的変異性を考慮すると、このような識別された遺伝領域は、NHPのADA反応に寄与しうるものであり、ヒトにおける同様の遺伝領域と相関されてよい。
【0116】
動物の起こりうる抗薬剤抗体(ADA)反応を予測するために、個体動物の全ゲノム配列決定アセンブリが用いられてよい。一実施形態では、ADAができる動物から収集された表現型データと、それぞれの動物の対応する全ゲノムデータとを相関させて、ADAとの相関がある候補遺伝子座のスクリーニングを行うことが可能である。具体的には、B細胞受容体(BCR)ゲノム遺伝子座及び免疫グロブリンコーディング領域、主要組織適合性(MHC)領域、並びに、T細胞受容体領域に関して可能性のあるゲノム遺伝子座を含み、これらに限定されない可変免疫領域の再構築により、全ゲノム情報データによって解決可能な、幾つかの動物におけるADAの基本的な遺伝要素を識別することが可能である。そのようなアプローチの1つの制限が、ショートリード配列決定を用いることであった。それは、NHPのゲノムにおけるこれらの長い可変領域の再構築又はアセンブルを困難にしていた。ロングリード配列決定アプローチを用いれば、(BCR、MHC、KIRを含む)先天免疫系及び適応免疫系のこれらの可変領域をアセンブルして、ADAと動物の遺伝子型との相関を見つけることが可能である。その後、これらの個人ゲノムを使用して、単細胞RNA配列決定を行って各動物のB細胞受容体レパートリー及びT細胞受容体レパートリーのプロファイリングを行い、これらの領域を個人ゲノムに対してアライメントして、動物ごとのADAの予測を支援することが可能である。
【0117】
幾つかの実施形態では、B細胞受容体(BCR)のゲノム領域における遺伝的変異及び他の候補領域(遺伝子座)に基づいて1つ以上の遺伝アッセイが開発されてよく、それには、関心対象の標的遺伝子座にフォーカスしたゲノムワイド関連解析(GWAS)が用いられる。
【0118】
コロニー動物のADA反応の回顧的データがある場合は、そのような情報を使用して、コロニーの全ゲノムアセンブリによって識別された遺伝子型と相関させることが可能である。
【0119】
或いは、動物コロニーのADA反応の記録がない場合には、ゲノム情報を使用して、将来の研究のために動物を経時追跡して、その動物にADAができるかどうかを調べることが可能である。そのような実施形態では、表現型情報と、各動物のアセンブルされた遺伝子型との間に相関がありうる。
【0120】
非ヒト霊長類における個別化された治療薬及び薬剤の安全性試験を後で適用するためのコロニー内の個体動物の全ゲノムアセンブリ及びアノテーション
幾つかの実施形態では、図1のブロック130で分離されたPBMCは、ブロック170で、コロニー内のNHPごとに個別ゲノムをアセンブルすることに使用されてよく、これは、iPSCが生成された対応するNHPと適合しうる。NHPに対して個人化されたゲノムを有することの技術的な効果及び/又は利点は、その動物において組織及び細胞の自家移植を免疫拒絶なく実施できることである。それらの細胞及び組織は、その特定の動物自身の細胞から生成されるため、主要組織適合性複合体(MHC)及び他の任意の、移植免疫拒絶に関係する免疫成分は、注入される細胞に適合する。更に、各動物からの個別化されたゲノムは、将来の遺伝子治療又は遺伝子編集又は細胞標識化のための、的外れ効果を最小限に抑える個別ガイドRNAを設計することを可能にしうる。iPSCは、多数回の継代にわたる自己再生を有するため、多数回の細胞培養継代に使用されて、ガイドRNAを最適化し、遺伝子治療ベクター(例えば、AAVベクター)の効能及び機能性を評価して、個別化されたゲノムを活用することが可能である。
【0121】
インビトロモデルでの複雑な非ヒト霊長類の薬剤安全性の評価
GLPに関して薬剤及び/又は治療法の安全性の尺度を評価する場合、動物のゲノムは、遺伝子型と薬剤及び/又は治療法の安全性とを相関させることに有用である。生成されたゲノム情報は、そのような問題を解決することが可能であり、動物の新しいコロニーが特定の薬剤及び/又は治療法の実験に適するかどうかを予測することを可能にするパネルを作成することが可能である。
【0122】
更に、図4~5に示すように、動物ごとに個人化されたiPSC株は、インビトロのプレGLPにおいて、且つ/又は、その薬剤をインビボで使用する前に、薬剤の安全性を評価するための適切なツールである。
【0123】
図2に示すように、iPSCは、複数の系統(外胚葉240、中胚葉230、及び内胚葉220)並びに最終組織(肝臓250、神経細胞270、造血系及び免疫細胞、膵臓細胞260等)に分化することが可能であるため、薬剤及び/又は治療法の安全性の評価を、そのような、個別化された動物iPSCから生成された組織に対して、インビボで動物に対して使用される前の、iPSCから生成された組織に対するインビトロアッセイにより、行うことが可能である。個人化されたiPSCから生成された組織に対する安全性尺度は、図4~5に示すように、動物における安全性をインビボ実験前に予測するものである。
【0124】
例えば、図4に、薬剤の安全性を評価する方法400を示す。この方法は、治療法の効能、機能性、安全性、及び/又は毒性をインビトロで評価する方法であり、その治療法を生きた動物に用いる前に、個別リファレンスゲノムと結合された個別iPSCを使用する。方法400は、第1のNHPから生成されたiPSCに対してインビトロ毒性アッセイを実施するステップ(410)と、そのインビトロ毒性アッセイの結果を分析するステップ(420)と、その結果が毒性を示唆する場合(例えば、結果が所定閾値以上である場合)には、そのインビトロ毒性アッセイを中止する、又はそのインビトロ毒性アッセイの1つ以上のパラメータを変更するステップ(430)と、その結果が示唆する毒性が限定的である場合(例えば、結果が所定閾値未満である場合)には、そのiPSCが生成された第1のNHPにおいてインビボ毒性アッセイを実施するステップ(440)と、を含む。インビトロ毒性アッセイは、細胞毒性アッセイ(例えば、ATPベース)、細胞生存度アッセイ(例えば、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-yl)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(又はMTT)、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-yl)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2Hテトラゾリウム(又はMTS)、ニュートラルレッド等を使用)、炎症反応アッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用)、細胞相互作用アッセイ(例えば、多区画灌流システム等を使用)等を含んでよく、これらに限定されない。インビボ毒性試験は、薬剤の致死性(例えば、急性致死性、亜急性致死性、亜慢性致死性、慢性致死性等)の評価、プロテオミック、メタボロミック、且つ/又はトキシコゲノミックな研究及びアッセイの実行等を含んでよく、これらに限定されない。
【0125】
更に、例えば、図5に示すように、遺伝子編集ツールの効能を評価する方法500は、第1のNHPから生成されたiPSCに対してインビトロ効能アッセイを実施するステップ(510)と、そのインビトロ効能アッセイの結果を分析するステップ(520)と、その結果が示唆する効能が所定閾値未満である場合には、そのインビトロ効能アッセイを中止する、又はそのインビトロ効能アッセイの1つ以上のパラメータを変更するステップ(530)と、その結果が示唆する効能が所定閾値以上である場合には、そのiPSCが生成された第1のNHPにおいてインビボ効能アッセイを実施するステップ(540)と、を含む。
【0126】
別の実施形態では、遺伝子編集ツールの毒性を評価する方法500は、第1のNHPから生成されたiPSCに対してインビトロ毒性アッセイを実施するステップ(510)と、そのインビトロ毒性アッセイの結果を分析するステップ(520)と、その結果が毒性を示唆する場合(例えば、毒性が所定閾値以上である場合)には、そのインビトロ毒性アッセイを中止する、又はそのインビトロ毒性アッセイの1つ以上のパラメータを変更するステップ(530)と、その結果が毒性を示唆する場合(例えば、毒性が所定閾値未満である場合)には、そのiPSCが生成された第1のNHPにおいてインビボ毒性アッセイを実施するステップ(540)と、を含む。
【0127】
別の実施形態では、遺伝子編集ツールは、アデノ随伴ベクター(AAV)を含む。別の実施形態では、遺伝子編集ツールは、CRISPRベースのツールを含む。
【0128】
動物コロニーの個別化されたゲノムは、CRISPRベースの遺伝子編集のための正確なゲノム情報を提供し、それには、ガイドRNA及び/又はAAV設計が含まれ、これらに限定されない。ヒトゲノムとは対照的に、ほとんどのNHP種(例えば、カニクイザル)の公開されているリファレンスゲノムは、アノテーションが貧弱である。更に、ほとんどのNHP(例えば、カニクイザル)において種内遺伝子変異が高いため、単一のリファレンスゲノムでは、ゲノム編集のためのガイドRNAの設計のための最も正確な情報が得られない。1つのNHP種(例えば、カニクイザル)の中に多様な個体があると、ゲノム編集の的外れ効果が引き起こされうる。動物コロニーの個人化されたゲノム及びiPSCは、ガイドRNAの正確な設計及び的外れ効果の回避のための相補的な実行可能ツールを提供しうる。ガイドRNA設計は、インビトロで(動物の個人化されたゲノムを使用して)iPSC、iPSCから生成された細胞、又は初代細胞(例えば、PBMC)のいずれかに対して実施されてよい。このアプローチの結果として、ゲノム編集ツールの正確な/個人化された設計(例えば、インビボ研究でのGLP並びにAAVの効能及び機能性の向上を促進するガイドRNA及びAAV相同性アーム)が得られ、同時に、試験のコストが下がり、試験での生きた動物の使用が最小限に抑えられ、且つ/又は、動物の命が救われ、治療開発のコストが節約される。
【0129】
一実施形態では、薬剤又は遺伝子治療ツールの安全性及び/又は毒性を評価する方法は、インビトロでの末梢血単核細胞(PBMC)における免疫反応(例えば、遺伝子治療に使用されるAAVベクターに対する免疫反応)のレベルを測定するステップを含む。(例えば、AAVベクターに対する反応として)PBMCに発生する免疫反応の測定は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、ビードベースのアッセイ(例えば、Luminex(登録商標))、及び/又はELISAにより行われてよい。この方法は更に、インビトロでのPBMCにおける免疫反応のレベルを測定するステップを含んでよい。幾つかの先天的免疫遺伝子(例えば、トール様受容体(TLR)及びインターロイキン)の発現は、生きた動物におけるAAVベクターの毒性のレベルの予測になりうる。
【0130】
iPSC及び個人化されたゲノムを使用する、同じ動物に対する薬剤又は治療法(自家治療法)の前臨床試験
一実施形態では、各個体動物のiPSC株から生成された細胞及び組織が、インビボ画像化方法によって追跡されてよい。例えば、図6Bに示すように、iPSCから生成された細胞及び組織650が(例えば、蛍光タンパク質又は他のマーカにより)標識化されてよい。図6Aに示すように、標識化されたiPSC由来の細胞又は組織は、細胞の機能性を評価するために、同じ動物に自家移植又は注入されてよい。
【0131】
コロニー内の動物ごとの個別化されたiPSCは、安全性、又は治療の有効性のレベルを示すこと、或いは、任意の目的に合わせて遺伝子編集を最適化することのためにiPSCを標識化/編集するツールを提供する。インビトロアッセイからのデータは、動物のインビボ試験の前の予備アッセイとして使用されてよい。そのようなアッセイは、本明細書の別の場所で述べるように、刺激(例えば、AAV)に対するPBMC又は他の細胞/組織の免疫反応を評価することを含む。正常に遺伝子編集されたiPSC株は(標的細胞/組織に対して安全であるという毒性評価結果とともに)、図4~6Cに示すように、その後のインビボ試験、及び/又は、後での、画像化及び機能アッセイのための動物の細胞の自家移植に使用されてよい。
【0132】
例えば、NHPのiPSCから生成された細胞又は組織を自家移植する方法600は、単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から組織又は血液を取得するステップ(610)と、その組織又は血液からiPSCを生成するステップ(620)と、そのiPSCを関心対象の組織又は細胞型に分化させるステップ(630)と、その関心対象の組織又は細胞型をその少なくとも1つの個体に自家移植するステップ(640)と、を含む。
【0133】
幾つかの実施形態では、方法600は更に、その少なくとも1つの個体から生成されたiPSCのサブセットに対してインビトロ試験を実施するステップを含む。インビトロ試験は、細胞生存度の評価、処置の有効性の評価(例えば、標的タンパク質の阻害又は活性化、標的経路の阻害又は活性化、細胞周期の阻害又は活性化等)、細胞の毒性評価等を含んでよい。
【0134】
幾つかの実施形態では、自家注入又は自家移植することは、その少なくとも1つの個体から生成されたiPSCの第2のサブセットをその少なくとも1つの個体に自家注入又は自家移植することを含み、これは、その少なくとも1つの個体においてインビボ試験を実施するステップと、そのインビボ試験からインビボ試験結果を引き出すステップと、そのインビボ試験結果とインビトロ試験結果とを相関させるステップと、を含む。一例として、AAVベクター又は他の細胞及び遺伝子治療方法による、動物及びヒトの肝臓毒性がある。iPSCから生成された肝細胞又は免疫細胞(例えば、PBMC)に対する、AAVベクターの免疫原性のレベルをインビトロで予測するための初期試験が、インビボでのNHPの肝臓毒性の予測因子として用いられてよい。
【0135】
生成されたiPSCの第1のサブセットは、インビトロでのiPSCの拡大の第1の期間の間であってよく、生成されたiPSCの第2のサブセットは、インビトロでのiPSCの拡大の第2の期間の間であってよい。
【0136】
一実施形態では、方法600は、図6Cに示し、本明細書の別の場所で述べるように、生成されたiPSC、又は関心対象の分化した組織又は細胞型に対して遺伝子編集を実施するステップを含んでよい。
【0137】
個別化されたiPSCは、NHPの遺伝的に検証された標的を照会する、高速且つ非終端的な方法を提供する。NHPのiPSCには2つの重要な機能がある。自己再生と多能性である。
【0138】
自己再生に関しては、iPSCは、継代及び拡大をインビトロで何度も繰り返すことが可能である。
【0139】
多能性に関しては、iPSCは、様々な組織及び細胞に分化することが可能である。例えば、iPSCは、図5に示すように、ガイドRNA(gRNA)を設計し、AAVを含む様々なツールを使用して遺伝子編集研究を実施することに使用されてよく、これは特に、非常に多様な種内個体群を有するNHP種(例えば、カニクイザルやアカゲザル)に関係しうる。動物の個別化されたアセンブル済みゲノムと結合された、個別化されたiPSC株は、NHPの遺伝的に検証された標的を照会する、高速且つ非終端的な方法のための実行可能なツールを提供する。そのようなアッセイは、インビボ実験を実施する前に有用である。
【0140】
iPSCの自己再生能力(多数回のインビトロ継代のための不死性)及びiPSCの多能性機能により、iPSCは、ガイドRNAを設計し、AAV(アデノ随伴ウイルス)を含む様々なツールを使用して遺伝子編集研究を実施するための実行可能ツールである。このことは特に、例えば、非常に多様な個体群を有するNHP種(カニクイザルやアカゲザル)に当てはまりうる。
【0141】
最後に、a)個別化されたiPSC株、及びb)個別化されたゲノムアセンブリを含む、ロバストなiPSC及びゲノムツールは、的外れ効果の発生を防ぎうる遺伝子編集ツールの設計、並びに多種多様の研究及び画像化に備える、自家細胞及び自家組織の安全な送達のための、薬剤安全性レベルを測定するインビトロシステムを提供しうる。この個別化されたiPSCゲノムプラットフォームは、インビトロで薬剤安全性を評価するために、インビボ評価のリスクを低減する強力な基盤を提供し、これは、長期的にはコスト削減になり、且つ、動物の命を救うことになる。
【0142】
実験結果
図7A~7Bは、参照によって完全な形で本明細書に組み込まれている、タカハシ等(Takahashi et al.)著「定義済み因子による成人線維芽細胞からの多能性幹細胞の誘導(Induction of Pluripotent Stem Cells from Adult Human Fibroblasts by Defined Factors)」(セル 131、861~782頁、2007年11月30日)にあるプロトコルに従って従来式の霊長類iPSC培養条件により生成されたマカクiPSCの明視野顕微鏡画像(それぞれ4倍及び10倍)である。
【0143】
手短に言うと、この従来式の方法及び含有組成物においては、4ng/mlの組み換え型ヒト塩基線維芽細胞増殖因子(bFGF、和光(WAKO)、日本)を追加されたPrimate ES培地(リプロセル(ReproCELL)、日本)でiPSCを生成及び維持した。継代のために、ヒトiPSCをPBSで一度洗浄し、その後、1mg/mlのコラゲナーゼIV(collagenase IV)(インビトロジェン(Invitrogen))を含有するDMEM/F12で、37℃でインキュベートした。皿の端にあるコロニーが底から分離し始めたら、DMEF/F12/コラゲナーゼを除去し、Primate ES細胞培養で洗浄した。細胞をこそげ取り、適量の培地を追加し、内容物を新しい皿のSNLフィーダ細胞の上に移した。分割比は、規定どおりの1:3であった。それらの細胞を、pMXsベクター及びFugene 6トランスフェクト試薬(ロシュ(Roche))でトランスフェクトした。トランスフェクトの24時間後、培地を第1のウイルス含有上清として収集し、新しい培地と交換した。この新しい培地を24時間後に第2のウイルス含有上清として収集した。マウスSlc7a1遺伝子を発現しているヒト線維芽細胞を、トランスダクションの前日にシードした。ウイルス含有上清を濾過し、4mg/mlのポリブレンを追加した。4つのレトロウイルスをそれぞれ含有する等量の上清同士を混合し、線維芽細胞皿に移し、一晩中インキュベートした。トランスダクションの24時間後、ウイルス含有培地を第2の上清と交換した。トランスダクションの6日後、線維芽細胞をトリプシン処理により収穫し、SNLフィーダ層上で再度平板培養した。翌日、培地を、4ng/mlのbFGFを追加されたPrimate ES細胞培地に交換した。培地は1日おきに交換した。トランスダクションの30日後、コロニーを採取し、0.2mlのPrimate ES細胞培地に移した。コロニーをピペットで吸引及び吐出することにより、小さなクランプに機械的に分けた。細胞懸濁液を24ウェルプレート内のSNLフィーダ上に移した。図7A~7Bに示すように、従来式の培養条件では、顕微鏡画像で観察すると、マカクiPSCの大部分が自然に分化している。
【0144】
一方、図7C~7Dは、方法及び組成物のセクションで説明し、図3A~3Bに示した組成物及び方法を用いて生成されたマカクiPSCの明視野顕微鏡画像(それぞれ4倍及び10倍)を示す。図7C~7Dに示すように、本明細書に記載の改良された組成物及び方法を使用したiPSC培養は、エッジに丸みのあるiPSCを示しており、その改良された培養条件においてそれらの多能性機能を保持している。
【0145】
実施例
実施例1。非ヒト霊長類(NHP)の個体群内の個体から人工多能性幹細胞(iPSC)を生成する方法であって、単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から末梢血単核細胞(PBMC)を取得するステップと、所定期間にわたって造血幹細胞(HSC)拡大培地でPBMCを培養して血液前駆細胞を拡大するステップと、培養されたPBMCに転写因子の組み合わせをトランスフェクトして、細胞が転写因子を過剰に発現させるよう誘導されるようにするステップであって、トランスフェクトされた培養済みPBMCはiPSCにリプログラミングされる、トランスフェクトするステップと、トランスフェクトするステップのわずか1日後に、トランスフェクトされた細胞を、複数のフィーダ細胞を含む容器に移すステップと、前記移すステップのわずか1日後に、細胞を第2の容器に移すステップと、第2の容器に移すステップの選択された日数後に、細胞に培地を追加すること、細胞内の培地を交換すること、及び細胞に1つ以上の細胞増殖因子を追加することのうちの少なくとも1つを実施するステップと、第1の細胞コロニーが出現するまで、細胞外マトリックスでコーティングされた第3の容器に各コロニーを配置することによって細胞を継代するステップ、及び、インビトロ試験、インビボ試験、又はゲノムライブラリの作成のうちの1つ以上において使用するために第1の細胞コロニーを拡大するステップと、を含む方法。
【0146】
実施例2。拡大するステップは、iPSCをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、iPSCを細胞分離溶液でインキュベートするステップを含む、先行する実施例のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
実施例3。インキュベートするステップは、約37℃で所定時間にわたって行われる、先行する実施例のいずれか1つに記載の方法。
【0148】
実施例4。拡大するステップは、iPSCを吸引して単個細胞浮遊液中に解離させるステップを含む、先行する実施例のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
実施例5。iPSCを主要系統に分化させるステップであって、主要系統は、外胚葉、中胚葉、及び内胚葉のうちの少なくとも1つを含む、分化させるステップを更に含む、先行する実施例のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
実施例6。主要系統を最終組織に分化させるステップを更に含む、先行する実施例のいずれか1つに記載の方法。
【0151】
実施例7。その少なくとも1つの個体の個別化されたゲノムアセンブリを生成するステップを更に含む、先行する実施例のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
実施例8。アーカイブ品質のDNAを精製するプロセスによって、取得されたPBMCから多量の高分子量(HMW)DNAを抽出するステップを更に含む、先行する実施例のいずれか1つに記載の方法。
【0153】
実施例9。抽出されたHMW DNAからゲノムライブラリを調製するステップと、HMW DNAのロングリード断片を配列決定するステップと、ロングリード断片のアセンブル及びアノテーションを行って、PBMCが取得された少なくとも1つの個体のゲノムを再作成するステップと、を更に含む、先行する実施例のいずれか1つに記載の方法。
【0154】
実施例10。転写因子は、c-myc、Klf4、Sox2、Oct3/4、Klf2、Nanog、Tfcp2L1、及びStat3からなる群から選択される、先行する実施例のいずれか1つに記載の方法。
【0155】
実施例11。複数のフィーダ細胞は、マウス胚性線維芽細胞(MEF)又はSNLフィーダ細胞である、先行する実施例のいずれか1つに記載の方法。
【0156】
実施例12。トランスフェクトされた細胞を、複数のフィーダ細胞を含む容器に移すステップは、約1μM~約3μMの範囲のタンキラーゼ1/2阻害剤を追加するステップを更に含む、先行する実施例のいずれか1つに記載の方法。
【0157】
実施例13。トランスフェクトされた細胞と複数のフィーダ細胞との比は約1:3~約1:7である、先行する実施例のいずれか1つに記載の方法。
【0158】
実施例14。トランスフェクトするステップではセンダイウイルスベクターを使用する、先行する実施例のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
実施例15。1つ以上の細胞増殖因子は塩基性線維芽細胞増殖因子を含む、先行する実施例のいずれか1つに記載の方法。
【0160】
実施例16。細胞外マトリックスでコーティングされた第3の容器に各コロニーを配置することによって細胞を継代するステップは、第3の容器内の培地にセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤を追加するステップを含む、先行する実施例のいずれか1つに記載の方法。
【0161】
実施例17。被験者の個別化されたゲノムアセンブリと、被験者から生成された人工多能性幹細胞(iPSC)と、を含む、前臨床薬剤評価の方法。
【0162】
実施例18。被験者からのiPSCから生成された細胞及び組織を被験者に移植して、被験者の移植された細胞及び組織の機能性を評価するステップを更に含む、実施例17に記載の方法。
【0163】
実施例19。1つ以上のパネルを生成するステップと、特定の集団の動物が薬剤実験に適するかどうかをその1つ以上のパネルに基づいて予測するステップと、を更に含む、実施例17~18のいずれか1つに記載の方法。
【0164】
実施例20。被験者から生成されたiPSCを使用して、ガイドRNA又は遺伝子編集ツールを生成するステップと、被験者においてガイドRNA又は遺伝子編集ツールのインビボ試験を実施するステップと、を更に含む、実施例17~19のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
実施例21。ヒト治療法の前臨床試験の方法であって、単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から組織又は血液を取得するステップと、その少なくとも1つの個体からPBMCを分離するステップと、その少なくとも1つの個体からのPBMCからiPSCを生成するステップと、その少なくとも1つの個体からのPBMCからDNAを抽出するステップと、抽出されたDNAを少なくともある程度使用してDNAライブラリを調製するステップと、その少なくとも1つの個体の全ゲノムアセンブリを調製するステップと、全ゲノムアセンブリのコンピュータ分析を実施するステップと、を含む方法。
【0166】
実施例22。コンピュータ分析は、主要組織適合性複合体関連遺伝子又は副組織適合性複合体関連遺伝子の一方又は両方を識別することを含む、実施例21に記載の方法。
【0167】
実施例23。コンピュータ分析は、免疫系関連遺伝子を識別することを含む、実施例21~22のいずれか1つに記載の方法。
【0168】
実施例24。コンピュータ分析は、抗薬剤抗体(ADA)反応関連遺伝子を識別することを含む、実施例21~23のいずれか1つに記載の方法。
【0169】
実施例25。コンピュータ分析は、前臨床遺伝子型決定を実施することを含む、実施例21~24のいずれか1つに記載の方法。
【0170】
実施例26。コンピュータ分析は、肝臓毒性関連遺伝子を識別することを含む、実施例21~25のいずれか1つに記載の方法。
【0171】
実施例27。DNAは高分子量DNAである、実施例21~26のいずれか1つに記載の方法。
【0172】
実施例28。DNAはアーカイブ品質のDNAである、実施例21~27のいずれか1つに記載の方法。
【0173】
実施例29。DNAライブラリを調製するステップは、抽出されたDNAに対してロングリード配列決定を実施するステップを含む、実施例21~28のいずれか1つに記載の方法。
【0174】
実施例30。全ゲノムアセンブリを調製するステップは、調製されたDNAライブラリに基づいてその少なくとも1つの個体のゲノムを再作成するステップを含む、実施例21~29のいずれか1つに記載の方法。
【0175】
実施例31。ヒト治療法の前臨床試験の方法であって、単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から組織又は血液を取得するステップと、その少なくとも1つの個体からPBMCを分離するステップと、その少なくとも1つの個体からのPBMCからiPSCを生成するステップと、その少なくとも1つの個体から生成されたiPSCに対してインビトロ試験を実施するステップと、インビトロ試験からインビトロ試験結果を引き出すステップと、インビトロ試験結果と、その少なくとも1つの個体の遺伝子型とを相関させるステップと、を含む方法。
【0176】
実施例32。インビトロ試験を実施するステップは、ガイドRNAを設計し、インビトロでiPSCにガイドRNAをトランスフェクトするステップを含む、実施例31に記載の方法。
【0177】
実施例33。インビトロ試験結果を引き出すステップは、iPSCにおいてインビトロでガイドRNAの遺伝子編集効率を検出するパネルを実行するステップを含む、実施例31~32のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
実施例34。ヒト治療法の前臨床試験の方法であって、単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から組織又は血液を取得するステップと、その少なくとも1つの個体からPBMCを分離するステップと、その少なくとも1つの個体からのPBMCからiPSCを生成するステップと、その少なくとも1つの個体においてインビボ試験を実施するステップと、そのインビボ試験からインビボ試験結果を引き出すステップと、インビボ試験のインビボ試験結果と少なくとも1つの個体の遺伝子型とを相関させるステップと、を含む方法。
【0179】
実施例35。iPSCを生成するステップは、所定期間にわたって造血幹細胞(HSC)拡大培地でPBMCを培養して血液前駆細胞を拡大するステップと、培養されたPBMCに転写因子の組み合わせをトランスフェクトして、細胞が転写因子を過剰に発現させるよう誘導されるようにするステップであって、トランスフェクトされた培養済み細胞はiPSCにリプログラミングされる、トランスフェクトするステップと、トランスフェクトするステップのわずか1日後に、トランスフェクトされた細胞を、複数のフィーダ細胞を含む容器に移すステップと、前記移すステップのわずか1日後に、細胞を第2の容器に移すステップと、第2の容器に移すステップの選択された日数後に、細胞に培地を追加すること、細胞内の培地を交換すること、細胞に1つ以上の細胞増殖因子を追加することのうちの少なくとも1つを実施するステップと、第1の細胞コロニーが出現するまで、細胞外マトリックスでコーティングされた第3の容器に各コロニーを配置することによって細胞を継代するステップ、及び、インビトロ試験、インビボ試験、又はゲノムライブラリの作成のうちの1つ以上において使用するために第1の細胞コロニーを拡大するステップと、を含む、実施例34に記載の方法。
【0180】
実施例36。インビボ試験を実施するステップは、iPSCのサブセットをその少なくとも1つの個体に自家移植又は自家注入するステップを含む、実施例34~35のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
実施例37。自家移植又は自家注入の前にiPSCを標識化するステップを更に含む、実施例34~36のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
実施例38。標識化は蛍光標識化を含む、実施例34~37のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
実施例39。インビボ試験結果を引き出すステップは、抗薬剤抗体を検出するパネルを実行するステップを含む、実施例34~38のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
実施例40。インビボ試験結果を引き出すステップは、肝臓毒性を検出するパネルを実行するステップを含む、実施例34~39のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
実施例41。ヒト治療法の前臨床試験の方法であって、単一種の非ヒト霊長類を含む個体群の少なくとも1つの個体から組織又は血液を取得するステップと、その少なくとも1つの個体からPBMCを分離するステップと、その少なくとも1つの個体からのPBMCからiPSCを生成するステップと、その少なくとも1つの個体から生成されたiPSCのサブセットに対してインビトロ試験を実施するステップと、インビトロ試験からインビトロ試験結果を引き出すステップと、その少なくとも1つの個体から生成されたiPSCの第2のサブセットをその少なくとも1つの個体に自家注入又は自家移植するステップと、その少なくとも1つの個体においてインビボ試験を実施するステップと、インビボ試験からインビボ試験結果を引き出すステップと、インビボ試験結果とインビトロ試験結果とを相関させるステップと、を含む方法。
【0186】
実施例42。iPSCを生成するステップは、所定期間にわたって造血幹細胞(HSC)拡大培地でPBMCを培養して血液前駆細胞を拡大するステップと、培養されたPBMCに転写因子の組み合わせをトランスフェクトして、細胞が転写因子を過剰に発現させるよう誘導されるようにするステップであって、トランスフェクトされた培養済み細胞はiPSCにリプログラミングされる、トランスフェクトするステップと、トランスフェクトするステップのわずか1日後に、トランスフェクトされた細胞を、複数のフィーダ細胞を含む容器に移すステップと、前記移すステップのわずか1日後に、細胞を第2の容器に移すステップと、第2の容器に移すステップの選択された日数後に、細胞に培地を追加すること、細胞内の培地を交換すること、細胞に1つ以上の細胞増殖因子を追加することのうちの少なくとも1つを実施するステップと、第1の細胞コロニーが出現するまで、細胞外マトリックスでコーティングされた第3の容器に各コロニーを配置することによって細胞を継代するステップ、及び、インビトロ試験、インビボ試験、又はゲノムライブラリの作成のうちの1つ以上において使用するために第1の細胞コロニーを拡大するステップと、を含む、実施例41に記載の方法。
【0187】
実施例43。インビトロ試験を実施するステップは、ガイドRNAを設計し、インビトロでiPSCのサブセットにガイドRNAをトランスフェクトするステップを含む、実施例41~42のいずれか1つに記載の方法。
【0188】
実施例44。インビトロ試験結果を引き出すステップは、iPSCのサブセットにおいてガイドRNAのインビトロ遺伝子編集効率を検出するパネルを実行するステップを含む、実施例41~43のいずれか1つに記載の方法。
【0189】
実施例45。自家移植又は自家注入のためにiPSCにガイドRNAをトランスフェクトするステップを更に含む、実施例41~44のいずれか1つに記載の方法。
【0190】
実施例46。インビボ試験結果を引き出すステップは、肝臓毒性を検出するパネルを実行するステップを含む、実施例41~45のいずれか1つに記載の方法。
【0191】
実施例47。インビボ試験結果を引き出すステップは、iPSCの第2のサブセットにおいてガイドRNAのインビボ遺伝子編集効率を検出するパネルを実行するステップを含む、実施例41~46のいずれか1つに記載の方法。
【0192】
実施例48。相関させるステップは、インビトロ遺伝子編集効率をインビボ遺伝子編集効率と比較するステップを含む、実施例41~47のいずれか1つに記載の方法。
【0193】
実施例49。インビトロ試験を実施するステップは、一治療法によりiPSCをインビトロで処置するステップを含む、実施例41~48のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
実施例50。インビトロ試験結果を引き出すステップは、その治療法のインビトロ毒性を検出するパネルを実行するステップを含む、実施例41~49のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
実施例51。インビボ試験結果を実施するステップは、その少なくとも1つの個体をその治療法で処置するステップを含む、実施例41~50のいずれか1つに記載の方法。
【0196】
実施例52。インビボ試験結果を引き出すステップは、その治療法のインビボ毒性を検出するパネルを実行するステップを含む、実施例41~51のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
実施例53。相関させるステップは、インビトロ毒性をその治療法のインビボ毒性と比較するステップを含む、実施例41~52のいずれか1つに記載の方法。
【0198】
ここまで書かれた実施形態の説明は、当業者であれば記載の方法が利用可能であるようにするものだが、当業者であれば、本明細書に記載の特定の実施形態、方法、及び実施例の変形形態、組み合わせ、及び均等物が存在することを理解され、高く評価されるであろう。従って、本明細書は、上述の実施形態、方法、及び実施例によって限定されるべきではなく、添付の特許請求項の範囲及び趣旨に含まれる全ての実施形態及び方法によって限定されるべきである。
【0199】
本明細書及び特許請求項で使用しているように、「1日(a day or one day)」が使用されてよい。「1日(a day or one day)」は、例えば、約24時間±約6時間を含んでよい。
【0200】
本明細書及び請求項では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに矛盾する場合を除き、単数形の参照及び複数形の参照の両方を包含する。例えば、「非ヒト霊長類(nonhuman primate)」という用語は、複数の非ヒト霊長類を包含してよく、包含するように企図されている。時には、請求項及び開示は、「複数の(a plurality)」、「1つ以上の(one or more)」、又は「少なくとも1つの(at least one)」という語句を含んでよいが、そのような語の欠落は、複数が想定されていないことを意味するものではなく、そのように意味すると解釈されるべきではない。
【0201】
「約(about)」又は「約(approximately)」という語は、(例えば、長さや圧力を規定する)数値指定又は数値範囲の前に使用される場合には、±5%、±1%、又は±0.1%だけばらつきうる近似を示す。本明細書で示す数値範囲は全て、記載した開始値及び終了値を含む。「ほぼ(substantially)」という語は、装置、物質、又は組成のうちのほとんど全て(即ち、50%超)又は実質的に全てを示す。
【0202】
本明細書では「含む(comprising)」又は「含む(comprises)」という語は、装置、システム、及び方法が記載の要素を含んでいて、更に他の任意の要素を含んでよいことを意味するものとする。「本質的に~からなる(consisting essentially of)」は、装置、システム、及び方法が記載の要素を含んでいて、記載の目的のための組み合わせに対して本質的な意義を有する他の要素を排除することを意味するものとする。従って、本明細書で定義された要素から本質的になるシステム又は方法は、特許請求される開示の基本的且つ新規な特徴に実質的に影響しない他の材料、特徴、又はステップを排除しないことになる。「からなる(consisting of)」は、装置、システム、及び方法が記載の要素を含み、取るに足らない又は重要でない要素又はステップ以上のものを全て排除することを意味するものとする。これらの移行用語のそれぞれによって定義される実施形態は、本開示の範囲内にある。
【0203】
本明細書に含まれる実施例及び具体例は、本発明対象が実施されうる具体的な実施形態を、限定ではなく例示として示す。他の実施形態は、それらから利用されてよく、又それらから由来してよく、従って、本開示の範囲から逸脱しない限り、構造的又は論理的な置換又は変更が行われてよい。本発明対象のそのような実施形態は、本明細書においては、個別に参照されてよく、或いは、「本発明」という言い方でまとめて参照されてよく、「本発明」という言い方で参照することは、あくまで便宜上であって、本出願の範囲を、実際には2つ以上が開示されていても、いずれか1つの発明又は発明概念に自発的に限定することを意図するものではない。従って、本明細書では特定の実施形態を図示及び説明してきたが、この、示された特定の実施形態を、同じ目的を達成するように作られた任意の構成で置き換えてよい。本開示は、様々な実施形態のあらゆる翻案又は変形を包含するものである。当業者であれば、上述の説明を精査することにより、上述の複数の実施形態の組み合わせ、及び本明細書に具体的な記載がない他の実施形態が明らかになるであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
【国際調査報告】