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特表2024-539524プレチャンバー燃焼システムおよびプレチャンバー燃焼方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】プレチャンバー燃焼システムおよびプレチャンバー燃焼方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 19/12 20060101AFI20241018BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20241018BHJP
   F02B 43/10 20060101ALI20241018BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20241018BHJP
   F02M 25/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F02B19/12 A
F02D19/02 C
F02D19/02 A
F02B43/10 Z
F02M21/02 K
F02M21/02 M
F02B19/12 D
F02M25/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024549591
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-08
(86)【国際出願番号】 US2022049446
(87)【国際公開番号】W WO2023086413
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/277,522
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524173176
【氏名又は名称】エムトゥーエックス エナジー インク
【氏名又は名称原語表記】M2X ENERGY INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】メリカル, カイル, アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ランドルフ, アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ディーン, ジョン, アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】イェルヴィントン, ポール, イー.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, ジョシュア, ビー.
【テーマコード(参考)】
3G023
3G092
【Fターム(参考)】
3G023AA02
3G023AB01
3G023AC03
3G023AD25
3G023AD28
3G092AA01
3G092AA07
3G092AA09
3G092AB06
3G092AB08
3G092AB10
3G092AB15
3G092BA06
3G092DE02S
3G092DE03S
3G092HB05Z
(57)【要約】
リッチ限界拡張器、特にプレチャンバーアセンブリを使用し、火花点火エンジンの燃料リッチ条件下での運転能力を向上させるシステムおよび方法が提供される。実施形態では、プレチャンバーアセンブリは、可燃性燃料源を合成ガスに変換するためのガス-液体システムにおける改質器として、火花点火エンジンと組み合わされる。プレチャンバーを有する改質器の実施形態では、H濃度が増加したH/CO比を有する合成ガス生成物が得られる。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料リッチ条件下で動作するように構成されたレシプロエンジンであって,
a.メインチャンバーと、
b.リッチ限界拡張手段と、
を備え、
c.前記リッチ限界拡張手段は前記メインチャンバーと流体連通し、それにより、部分的に燃焼した燃料・空気混合気が前記リッチ限界拡張手段から前記メインチャンバーに流れるようにされ、
少なくとも1.5の当量比のリッチ動作限界を有するようにした、レシプロエンジン。
【請求項2】
前記リッチ動作限界が約1.8から3.5である、請求項1に記載のレシプロエンジン。
【請求項3】
前記部分的に燃焼した燃料・空気混合気を形成する燃料源を含む,請求項1または2に記載のレシプロエンジン。
【請求項4】
前記部分的に燃焼した燃料・空気混合気を形成する燃料源を含み、前記燃料源が可燃性燃料を含む、請求項1または2に記載のレシプロエンジン。
【請求項5】
前記部分的に燃焼した燃料・空気混合気を形成する燃料源を含む、前記燃料源がフレアガスを含む、請求項1または2に記載のレシプロエンジン。
【請求項6】
前記部分的に燃焼した燃料・空気混合気を形成する燃料源を含み、前記燃料源がパイプライン品質の天然ガスを含む、請求項1または2に記載のレシプロエンジン。
【請求項7】
前記部分的に燃焼した燃料・空気混合気を形成する燃料源を含み、前記燃料源が実質的にフレアガスからなる、請求項1または2に記載のレシプロエンジン。
【請求項8】
前記リッチ限界拡張手段は、前記メインチャンバーの当量比以下の当量比で動作するように構成されている、請求項1または2に記載のレシプロエンジン。
【請求項9】
前記リッチ限界拡張手段は、前記メインチャンバーの当量比以下の当量比で動作するように構成され、前記燃料源はフレアガスを含む、請求項1または2に記載のレシプロエンジン。
【請求項10】
前記リッチ限界拡張手段は、前記メインチャンバーの当量比よりも少なくとも10%低い当量比で動作するように構成されている、請求項1または2に記載のレシプロエンジン。
【請求項11】
前記リッチ限界拡張手段は、前記メインチャンバーの当量比よりも少なくとも30%低い当量比で動作するように構成されている、請求項1または2に記載のレシプロエンジン。
【請求項12】
前記リッチ限界拡張手段は、前記メインチャンバーの当量比よりも少なくとも80%低い当量比で動作するように構成されている、請求項1または2に記載のレシプロエンジン。
【請求項13】
前記リッチ限界拡張手段は、前記メインチャンバーの当量比よりも少なくとも10%低い当量比で動作するように構成され、前記燃料源が実質的にフレアガスからなる、請求項1または2に記載のレシプロエンジン。
【請求項14】
前記リッチ限界拡張手段は、前記メインチャンバーの当量比よりも少なくとも30%低い当量比で動作するように構成され、前記燃料源が実質的にフレアガスからなる、請求項1または2に記載のレシプロエンジン。
【請求項15】
前記リッチ限界拡張手段は、前記メインチャンバーの当量比よりも少なくとも80%低い当量比で動作するように構成され、前記燃料源がフレアガスを含む、請求項1または2に記載のレシプロエンジン。
【請求項16】
燃料リッチ条件下で動作するように構成されたレシプロエンジンであって、
a.メインチャンバー当量比で動作するように構成されたメインチャンバーと、
b.複数のオリフィスを有するリッチ限界拡張手段と、
を備え、
c.前記リッチ限界拡張手段が前記メインチャンバーと流体連通し、これによって前記オリフィスが、前記メインチャンバーから前記リッチ限界拡張手段への燃料の流れ、および前記リッチ限界拡張手段から前記メインチャンバーへの部分的に燃焼した燃料・空気混合気の流れを制御するようにされ、
d.それによって、前記リッチ限界拡張手段が、前記メインチャンバーの当量比よりも少なくとも10%低い当量比で動作するようにされており、
e.少なくとも1.5のリッチ動作限界を有する、レシプロエンジン。
【請求項17】
前記リッチ動作限界が約1.8から3.5である、請求項13に記載のレシプロエンジン。
【請求項18】
前記リッチ限界拡張手段は、プレチャンバーを画定するプレチャンバー本体を備える、請求項16または17に記載のレシプロエンジン。
【請求項19】
前記リッチ限界拡張手段は、プレチャンバーを画定するプレチャンバー本体と、酸化源ガスの流れを受け入れるための通路とを備える、請求項16または17に記載のレシプロエンジン。
【請求項20】
前記リッチ限界拡張手段が、プレチャンバーを画定するプレチャンバー本体と、酸化源ガスの流れを受け入れるための通路と、ノズルと、を備え、前記オリフィスが前記ノズルに配置されている、請求項16または17に記載のレシプロエンジン。
【請求項21】
前記ノズルが16個から20個のオリフィスを有し、前記オリフィスのうちの1つ又は複数のオリフィスが30゜から80゜の噴射円錐角を有する、請求項20に記載のレシプロエンジン。
【請求項22】
前記ノズルが4個から10個のオリフィスを有し、前記オリフィスの1つ又は複数が40゜から60゜の噴射円錐角を有する、請求項20に記載のレシプロエンジン。
【請求項23】
前記プレチャンバーが1未満の当量比を有する、請求項18から22の何れか一項に記載のレシプロエンジン。
【請求項24】
前記燃料の流れがフレアガスを含む、請求項17から23の何れか一項に記載のレシプロエンジン。
【請求項25】
エンジンのリッチ動作燃料限界を拡張するための装置であって、
a.プレチャンバー空洞部を画定する本体と、
b.前記プレチャンバー空洞部と連通する点火源と、
c.酸化源ガスを受け入れるようにされた第1の端部と、前記酸化源ガスを前記プレチャンバー空洞部に供給するようにされた第2の端部と、を有する入口導管と、
を備え、
d.前記プレチャンバー空洞部が第1の端部と第2の端部とを有し、前記第2の端部が複数の穴を有するノズルを有しており、
e.前記本体がエンジンに取り付けられるようにされた、装置。
【請求項26】
前記入口導管が、前記第1の端部と前記第2の端部との間に位置するチェックバルブを有する、請求項22に記載の装置。
【請求項27】
前記入口導管が、前記第1の端部と前記第2の端部との間に位置するインジェクターを有する、請求項22に記載の装置。
【請求項28】
前記ノズルが4個から10個の穴を有する、請求項25、26又は27に記載の装置。
【請求項29】
前記ノズルが4個から10個の穴を有し、前記穴の1つ又は複数が30゜から80゜の噴射円錐角を有する、請求項25、26又は27に記載の装置。
【請求項30】
前記ノズルが4個から10個の穴を有し、前記穴の1つ又は複数が1.2mmから3mmの直径を有する、請求項25、26又は27に記載の装置。
【請求項31】
前記ノズルが4個から10個の穴を有し、前記穴の1つ又は複数が1.2mmから3mmの直径を有し、前記穴の1つ又は複数が40゜から60゜の噴射円錐角を有する、請求項25、26又は27に記載の装置。
【請求項32】
前記穴の合計面積が、前記ノズルの面積の約5%から約60%である、請求項25、26又は27のいずれかに記載の装置。
【請求項33】
メインチャンバーとプレチャンバーとを有するエンジンを用いてフレアガスを合成ガスに変換する方法であって、
a.エンジンのメインチャンバーに、フレアガスを含む燃料の流れを供給することと、
b.プレチャンバーに酸化源ガスの流れを供給することと、
c.前記メインチャンバーと前記プレチャンバーとを接続している複数の穴を通して、前記フレアガスを前記プレチャンバーに流すことと、
d.前記プレチャンバー内の前記フレアガスを前記プレチャンバー内の前記酸化源ガスと混合して、前記メインチャンバーの当量比よりも低い当量比を有する混合気を提供することと、
e.前記混合気に点火して部分的に燃焼した混合気を提供し、前記部分的に燃焼した混合気を前記メインシリンダに流し、そこで前記メインチャンバー内の前記フレアガスに点火して合成ガスを生成することと、
f.前記メインチャンバーから前記合成ガスを排出することと、
を含み、
g.前記エンジンが少なくとも1.5の全体当量比で動作するようにした、方法。
【請求項34】
前記酸化源ガスが空気を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記酸化源ガスが酸素を豊富に含む空気を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記全体当量比が約1.5から3.5である、請求項33または34に記載の方法。
【請求項37】
前記合成ガスが、少なくとも1.0のH/CO比を有する、請求項33、34、または35に記載の方法。
【請求項38】
前記リッチ限界拡張手段が点火源を備える、請求項1乃至24の何れか一項に記載のエンジン。
【請求項39】
前記点火源がスパークプラグを有する、請求項38に記載のエンジン。
【請求項40】
前記点火源がプラズマ点火器を含む、請求項38に記載のエンジン。
【請求項41】
前記点火源がレーザーを含む,請求項38に記載のエンジン。
【請求項42】
前記点火源が発火性化学物質を含む、請求項38に記載のエンジン。
【請求項43】
前記点火源が化学物質を含む、請求項38に記載のエンジン。
【請求項44】
前記点火源は、スパークプラグ、プラズマ点火器、およびレーザーからなる群から選択される、請求項25に記載の装置。
【請求項45】
前記プレチャンバーが点火源を含む、請求項33から37の何れか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記点火源が、スパークプラグ、プラズマ点火器、およびレーザーからなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
燃料リッチ条件下での動作するように構成されたレシプロエンジンであって、
a.メインチャンバーと、
b.リッチ限界拡張手段としてのプレチャンバーと、
を備え、
c.前記リッチ限界拡張手段は前記メインチャンバーと流体連通し、それによって、部分的に燃焼した燃料・空気混合気が前記リッチ限界拡張手段から前記メインチャンバーに流れるようにされ、
d.少なくとも1.5の当量比のリッチ動作限界を有する、レシプロエンジン。
【請求項48】
前記エンジンが約1.8から2.5の当量比のリッチ動作限界を有する,請求項1から47の何れか一項に記載のエンジンまたは方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35U.S.C.§119(e)(1)に基づき、2021年11月9日に出願された米国仮特許出願第63/277,522号の出願日の利益を主張し、その優先権の利益を主張する。であり、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、フレアガスのような排ガスを回収し、有用かつ経済的に利用可能な材料に変換するための新規かつ改良された方法、装置およびシステムに関する。特に、本発明の実施形態は、反応生成物中の所定のH/CO比を達成するための、部分酸化のための排ガスおよび合成ガスのリッチ燃料/空気の点火のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
「フレアガス」という用語および同様の用語は、可能な限り広義に解釈されるべきであり、石油・ガス生産、炭化水素坑井(在来型および非在来型坑井を含む)、石油化学処理、精製、埋立地、廃水処理、酪農、畜産、およびその他の自治体の、化学の、および工業のプロセスによって、またはそれらから発生、生成、関連付け、または生産されるガスを含む。とする。したがって、例えばフレアガスには、ストランデッドガス(stranded gas)、随伴ガス、埋立地ガス、ベントガス、バイオガス、消化ガス、スモールポケットガス、遠隔地ガスが含まれる。
【0004】
通常、フレアガスの組成は異なるガスの混合である。その組成はフレアガスの発生源によって異なる。例えば、石油・ガス生産時に放出されるガスは主に天然ガスを含む。天然ガスは90%以上がメタン(CH)で、エタンや少量の他の炭化水素、水、N、COが含まれることもある。精製所やその他の化学・製造施設から排出されるフレアガスは、通常、炭化水素と水素の混合ガスである。埋立地ガス、バイオガス、または消化ガスは、通常、CHとCOの混合ガスであり、少量の不活性ガスも含む。一般的にフレアガスには、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、エチレン、プロピレン、1-ブテン、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、水素、酸素、窒素、水などのうちの1つ又は複数のガスが含まれている。
【0005】
フレアガスの大半は、油田内の多数の石油またはガス井戸、埋立地、化学工場など、小規模な個別の発生源から生成される。本発明以前は、フレアガス、特に炭化水素を生成する井戸やその他の小規模な発生源から生成されるフレアガスは、場合によっては大気中に直接放出されることもあり、燃焼して処理されていた。このフレアガスは経済的に回収して利用することができなかった。炭化水素の生産やその他の取り組みから生じるフレアガスの燃焼や放出は、汚染や温室効果ガスの生成について深刻な懸念を引き起こす。
【0006】
特段の指定がない限り、ここで使用される「シンガス」や「合成ガス」などの用語は、最も広義の意味で使用され、HとCOの混合物を主成分とするガスを含む。また、CO、N、水、および少量の他の物質を含む場合もある。
【0007】
特段の指定がない限り、ここで使用される「生成ガス」および類似の用語は、可能な限り広義に解釈されるべきであり、H、CO、その他の炭化水素を含むガス、および通常、メタンなどのその他の炭化水素を多量に含むガスを含む。とする。
【0008】
特段の指定がない限り、ここで使用される「再処理ガス」という用語には、「シンガス」、「合成ガス」、「生成ガス」が含まれる。
【0009】
別段の指定がない限り、ここで使用される「部分酸化(部分的に酸化)」、「部分酸化性」などの用語は、化学反応において、燃料と空気の化学量論的組成よりも少ない混合気(すなわち、燃料リッチ混合気)が部分的に反応(例えば燃焼)し、合成ガスを生成することを意味する。部分酸化という用語には、一般的に非触媒式改質器で発生する熱部分酸化(TPOX)と触媒部分酸化(CPOX)の両方が含まれる。部分酸化反応の一般式は以下の通りである。
【0010】
【0011】
本明細書において、特に指定のない限り、数値の範囲の記載は、その範囲に含まれる個別の数値に個別に言及するための簡略化された方法としてのみ意図されている。本明細書において別段の記載がない限り、範囲に含まれる個別の数値は、個別に本明細書に記載されているかのように本明細書に組み込まれている。
【0012】
一般に、本明細書で使用される「約」という用語は、特に断りのない限り、±10%の分散または範囲、あるいは記載された値を得ることに関連する実験誤差または機器誤差のうち大きい方を包含することを意味する。
【0013】
本明細書では、特に指定がない限り、「COe」という用語は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)の方法論に基づき、20年又は100年の地球温暖化係数ベースで、二酸化炭素に対する他の複数の温室効果ガス(例えば、メタンや亜酸化窒素)の二酸化炭素当量を定義するために使用される。「炭素集約度」とは、製品の単位質量当たりに発生するライフサイクルCO排出量を意味する。
【0014】
本明細書では、特に断りのない限り、「粗メタノール」という用語は、水、溶存ガス、その他の汚染物質を除去する前のメタノール合成ループ(synthesis loop)で生成されたメタノールと定義する。粗メタノールには、5~20wt%の水、溶存ガス(例えば、1~2wt%のCO)および微量汚染物質(例えば、エタノール)が含まれることが多い。本明細書では、特に指定がない限り、「安定化メタノール」という用語は、溶存ガスおよびその他の軽質成分の濃度を低減するためのフラッシュ操作(flash operation)(例えば、1段フラッシュドラム)を経た粗メタノールとして定義される。多くの場合、安定化メタノールのCO濃度は1%未満であり、最も一般的には約0.5wt%である。本明細書では、「原料メタノール」、「初期メタノール」などの用語は、「粗メタノール」、「安定化メタノール」またはその両方を指す。本明細書では、「グレードメタノール」という用語は、ASTM AA規格(D1152)またはIMPCAメタノール参照規格などの純度規格を満たすメタノールとして定義される。
【0015】
本明細書では、特に指定のない限り、用語「%」と「mol%」は互換的に使用され、例えば、配合、混合物、材料、製品などの全モル数に対する第1成分のモル数を表す。
【0016】
本明細書では、特に断りのない限り、室温は25℃、標準温度および圧力は15℃および1気圧(1.01325バール)とする。特に断りのない限り、温度依存性、圧力依存性、またはその両方の特性値、試験結果、物理的特性は、すべて標準温度および標準圧力で提供される。
【0017】
本規約において、特に断りのない限り、「燃料対空気当量比」、「当量比」、「燃料/空気当量比」、「Φ」、または「ER」、および類似の用語は、同じ意味を持ち、最も広い意味で解釈される。とする。化学量論的空気/燃料比とは、理想的な化学量論的燃焼が起こるために必要な。で、燃料と酸素がすべて反応で消費され、生成物が二酸化炭素と水となる状態である。

地球温暖化と環境問題
【0018】
すでに深刻な問題となっている二酸化炭素と比較したときの、廃棄ガスの放出による環境への相対的な影響が図17に示されている。
【0019】
フレアガスやベントからメタンが漏れることによる地球温暖化への影響は、決して過小評価できるものではない。国際エネルギー機関(IEA)の2019年の報告書によると、2018年には約2000億立方メートルの廃ガスやフレアガスが大気中で燃焼または大気中に放出された。約500億立方メートルのガスが放出され、約1500億立方メートルのガスがフレアで燃焼された。燃焼は炭化水素を二酸化炭素に変換することを目的としているが、そのピーク効率は98%であり、風があると効率は低下する。燃焼効率の低さとガス放出とが相まって、COe換算で合計約14億トンのCOeが排出された。これは、年間の人為的COe排出源全体の約2.7%に相当する。
【0020】
この発明の背景技術の欄は、本発明の実施形態に関連する可能性がある技術のさまざまな側面を紹介することを目的としている。したがって、この欄の前述の議論は、本発明の理解を深めるための枠組みを提供する。であり、先行技術の承認とみなされるべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
非経済的な炭化水素系燃料(例えば、随伴ガス、非随伴ガス、埋立地ガス、フレアガス、小規模ガス田ガス、遠隔地ガス、廃水処理ガス)を、付加価値の高い輸送が容易な生成物(例えば、メタノール、エタノール、混合アルコール、アンモニア、ジメチルエーテル、F-T液体、その他の燃料または化学物質)に変換するシステム、装置、方法に対する、長年にわたる、拡大しつつも満たされていないニーズが存在している。特に、本明細書で教示および開示されている製造品、装置、およびプロセスを提供することにより、これらのニーズを解決する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
リッチ部分酸化による合成ガスの生成には、化学量論比Sを達成するための望ましい空気/燃料比があり、ここで、S=(H-CO)/(CO+CO)であり、H、CO、COはそれぞれの分子量を表す。合成ガスにCOが含まれていないという制限的なケースでは、SはH/CO比に単純化される。従来の点火システムや点火方法には、火炎伝播速度が遅いという重大な問題が長年存在していた。そのため、内燃機関では望ましくないリッチ動作限界が課せられ、あらかじめ決められた最適な化学量論比Sの合成ガスを生成するための望ましい燃料/空気比の経済的な達成が制限され、妨げられていた。本発明は、着火点における燃料・空気混合気を希薄にする空気噴射付き燃焼プレチャンバーを追加することでリッチ燃焼限界を拡張することにより、これらの長年の問題を解決する。空気は、チェックバルブまたは空気噴射器を使用してこのチャンバーに流入する。プレチャンバーは、1つ又は複数の小口径オリフィスを介してメイン燃焼チャンバーと連通する。プレチャンバーでの燃焼が進むと、これらの小さなオリフィスから高温ガスの乱流ジェットが噴出し、メインチャンバーでの燃焼を促進する。メインチャンバーでは空気と燃料の比率がより高く、排気生成物のSが高いため、さまざまな製品の合成に合成ガスを使用する前にSを調整する必要性が最小限に抑えられる。
【0023】
したがって、燃料リッチ条件下で動作するように構成されたレシプロエンジンが提供される。このエンジンは、メインチャンバー、リッチ限界拡張手段、メインチャンバーと流体連通するリッチ限界拡張手段を備え、これにより部分的に燃焼した燃料・空気混合気がリッチ限界拡張手段からメインチャンバーに流れる。また、このエンジンは、当量比が少なくとも1.5のリッチ動作限界を有する。
【0024】
さらに、メインチャンバーとプレチャンバーを備えたエンジンを用いてフレアガスを合成ガスに変換する方法が提供される。この方法は、エンジンメインチャンバーに燃料を供給し、その燃料にフレアガスを含ませること、プレチャンバーに酸化源ガスの流れを供給すること、メインチャンバーとプレチャンバーを接続する複数の穴を通してフレアガスをプレチャンバーに流すこと、プレチャンバー内のフレアガスをプレチャンバー内の酸化源ガスと混合して、メインチャンバーよりも低い当量比を有する混合物を生成すること、その混合物に点火して部分的に燃焼した混合物を生成し、その混合物をメインチャンバーに流し、メインチャンバー内のフレアガスに点火して合成ガスを生成すること、メインチャンバーから合成ガスを排出すること、を含み、エンジンは少なくとも1.5の全体当量比(global equivalence ratio:GER)で動作する。
【0025】
さらに、燃料リッチ条件下で動作するように構成されたレシプロエンジンが提供される。このエンジンは、メインチャンバー当量比で動作するように構成されたメインチャンバーと、複数のオリフィスを有するリッチ限界拡張手段と、を備え、リッチ限界拡張手段がメインチャンバーと流体連通しており、それによってオリフィスは、メインチャンバーからリッチ限界拡張手段への燃料の流れ、およびリッチ限界拡張手段からメインチャンバーへの部分的に燃焼した燃料空気混合気の流れを制御するように構成され、それによって、リッチ限界拡張手段が、メインチャンバー当量比よりも少なくとも10%低い当量比で動作するように構成されており、エンジンは少なくとも1.5のリッチ動作限界を有する。
【0026】
以下に示す特徴の1つ又は複数を備えた、上述の装置、エンジン、方法をさらに提供する。リッチ限界が約1.8~3.5である。部分的に燃焼した燃料・空気混合気を形成する燃料源を有する。部分的に燃焼した燃料・空気混合気を形成する燃料源を含み、その燃料源が可燃性燃料を含む。部分的に燃焼した燃料・空気混合気を形成する燃料源を有し、その燃料源がフレアガスを含む。部分的に燃焼した燃料・空気混合気を形成する燃料源を有し、その燃料源がパイプライン品質の天然ガスを含む。部分的に燃焼した燃料・空気混合気を形成する燃料源を有し、その燃料源が実質的にフレアガスからなる。リッチ限界拡張手段が、メインチャンバーの当量比以下の当量比で動作するように構成されている。リッチ限界拡張手段は、メインチャンバーの当量比以下の当量比で動作するように構成され、燃料源はフレアガスを含む。リッチ限界拡張手段は、メインチャンバーの当量比よりも少なくとも10%低い当量比で動作するように構成されている。リッチ限界拡張手段は、メインチャンバーの当量比よりも少なくとも30%低い当量比で動作するように構成されている。リッチ限界拡張手段は、メインチャンバーの当量比よりも少なくとも80%低い当量比で動作するように構成されている。リッチ限界拡張手段は、メインチャンバーの当量比よりも少なくとも10%低い当量比で動作するように構成され、燃料源が実質的にフレアガスからなる。リッチ限界拡張手段は、メインチャンバーの当量比よりも少なくとも30%低い当量比で動作するように構成され、燃料源が実質的にフレアガスからなる。リッチ限界拡張手段は、メインチャンバーの当量比よりも少なくとも80%低い当量比で動作するように構成され、燃料源がフレアガスを含む。
【0027】
さらに、燃料リッチ条件下で動作するように構成されたレシプロエンジンが提供される。このエンジンは、メインチャンバーと、リッチ限界拡張手段としてのプレチャンバーを備え、リッチ限界拡張手段はメインチャンバーと流体連通し、これにより部分的に燃焼した燃料・空気混合気がリッチ限界拡張手段からメインチャンバーに流れるようにされ、このエンジンは、少なくとも1.5の当量比のリッチ動作限界を有する。
【0028】
以下に示す特徴を1つ又は複数備えた、上述の装置、エンジン、方法をさらに提供する。リッチ動作限界が約1.8~3.5である。リッチ限界拡張手段がプレチャンバーを画定するプレチャンバー本体を含む。リッチ限界拡張手段がプレチャンバーを画定するプレチャンバー本体と、酸化源ガスの流れを受け入れるための通路とを含む。リッチ限界拡張手段は、プレチャンバーを確定するプレチャンバー本体と、酸化源ガスの流れを受け入れるための通路と、ノズルとを備え、オリフィスがノズル内に配置されている。ノズルが16個から20個のオリフィスを有し、1つ又は複数のオリフィスが30度から80度の噴射円錐角を有する。ノズルが4個から10個のオリフィスを有し、1つ又は複数のオリフィスが40度から60度の噴射円錐角を有する。プレチャンバーが1未満の当量比を有する。エンジンが、約1.8から2.5の当量比のリッチ作動限界を有する。燃料の流れがフレアガスを含む。
【0029】
さらに、エンジンのリッチ動作燃料限界を拡張するための装置が提供される。この装置は、プレチャンバー空洞部を画定する本体と、プレチャンバー空洞部と連通する点火源と、酸化源ガスを受け入れるようにされた第1の端部、及び酸化源ガスをプレチャンバー空洞部に供給するようにされた第2の端部とを有する入口導管と、を備え、プレチャンバー空洞部が第1の端部と第2の端部とを有し、第2の端部が複数の穴を有するノズルを有し、本体がエンジンに取り付けるように構成されている。
【0030】
さらに、燃料リッチ条件下で動作するように構成されたレシプロエンジンが提供される。このレシプロエンジンは、メインチャンバーと、リッチ限界拡張手段としてのプレチャンバーを備え、リッチ限界拡張手段は、メインチャンバーと流体連通し、これによって部分的に燃焼した燃料・空気混合気がリッチ限界拡張手段からメインチャンバーに流れるようにされ、このエンジンは、少なくとも1.5の当量比のリッチ動作限界を有する。
【0031】
さらに、以下の特徴の1つ又は複数を有する上述の装置、方法、エンジンがさらに提供される。入口導管は、第1の端と第2の端の間に位置するチェックバルブを有する。入口導管は、第1の端と第2の端の間に位置するインジェクターを有する。ノズルは4個から10個の穴を有する。ノズルは4個から10個の穴を有し、1つ又は複数の穴は30°から80°の噴射円錐角を有する。ノズルが4個から10個の穴を有し、1つ又は複数の穴が1.2mmから3mmの直径を有する。ノズルが4個から10個の穴を有し、1つ又は複数の穴が1.2mmから3mmの直径を有し、1つ又は複数の穴が40度から60度の噴射円錐角を有する。穴の合計面積がノズルの面積の約5%から60%である。酸化源ガスは空気を含む。酸化源ガスは酸素を豊富に含む空気を含む。全体当量比が約1.5から3.5である。合成ガスは少なくとも1.0のH/CO比を有する。リッチ限界拡張手段が点火源を備える。点火源がスパークプラグである。点火源がプラズマ点火器である。点火源がレーザーである。点火源が発火性化学物質を含む。点火源が化学物質を含む。点火源が、スパークプラグ、プラズマ点火器、レーザーからなる群から選択される。プレチャンバーが点火源を含む。点火源が、スパークプラグ、プラズマ点火器、およびレーザーからなる群から選択される。
【0032】
さらに、経済性が低い炭化水素系燃料(例えば、流出ガス、随伴ガス、埋め立てガス、フレアガス、小規模ガス田ガス、遠隔地ガス)を、プレチャンバーを有する燃焼システムを使用して、プレチャンバーに酸素を追加することで燃料/空気比を希薄化または低濃度にし、さらにリッチな燃料/空気比の点火チャンバーと組み合わせることで、付加価値が高く輸送が容易な製品(例えば、メタノール、エタノール、混合アルコール、アンモニア、ジメチルエーテル、F-T液体、その他の燃料または化学物質)に変換する方法およびシステムが提供される。
【0033】
定常リッチ運転におけるメインチャンバーの燃料対空気当量比は1.4~2.4(目標2.0)、燃焼プレチャンバーでは0.8~1.5(目標1.2)であるべきである。これらの当量比の値により、エンジン出力のS値が1.2以上になることが示されている。Sの値は、メタノール合成に理想的である2以上になるように、エンジンの下流側でさらに調整することができる。他の下流工程、例えば混合アルコールの製造では、より低いS値が求められ、合成ガス比の調整は必要ない場合がある。
【0034】
さらに、エンジンを改質器として使用して合成ガス(一酸化炭素と水素)を生成する際に、所望の合成ガス組成を得るために内燃機関の燃料リッチ動作エンベロープ(fuel-rich operating envelope)を拡張する装置および方法が提供される。
【0035】
さらに、以下の特徴の1つ又は複数の特徴を有する上述の方法、装置、及びエンジンが提供される。(1)レシプロエンジンへの入口空気流のO2リッチ化、または膜分離もしくは部分空気分離ユニットを介した合成ガス流からのN除去、(2)下流の合成反応器からの高圧排気ガスからエネルギーを回収するためのレキュペレーター熱交換器およびターボエキスパンダー、(3)下流の合成反応器用の合成ガスを準備するための、統合された熱交換器、圧縮システムコンポーネント、および汚染物質除去の組み合わせに関連するレキュペレーター熱交換器、(4)合成ガスユニットと合成ユニットの運転を調整するための、カスタム計装によるクローズドループ制御システムの統合、(5)動的な予防保全と運転制御のための、人工知能/機械学習(「AI/ML」)学習済み異常検知を含む、クラウドベースの遠隔監視システム、(6)窒素、水、COなどの副産物を再圧入、坑井の再圧入、その他の目的に利用するためのオフテイク経路。
【0036】
さらに、メインチャンバーと連通するプレチャンバーを有するエンジンが提供され、そのメインチャンバーは、1より大きい、1.5より大きい、2より大きい、3より大きい、約1.5~約4.0、約1.1~約3.5、約2~約4.5、および約1.1~約3、並びにより大きい値の全体的な燃料対空気当量比(ΦまたはER)を有する。プレチャンバーは、メインチャンバーよりもリーンである燃料対空気当量比、すなわちリッチでない燃料対空気当量比を有する。
【0037】
さらに、メインチャンバーを画定する少なくとも1つのシリンダと連通するプレチャンバーを有するレシプロエンジンが提供され、このメインチャンバーは、1より大きい、1.5より大きい、2より大きい、3より大きい、約1.5~約4.0、約1.1~約3.5、約2~約4.5、約1.1~約3、およびそれより大きい値の全体的な燃料対空気当量比(ΦまたはER)を有する。プレチャンバーは、メインチャンバーよりもリーンである燃料対空気当量比、すなわちリッチでない燃料対空気当量比を有する。
【0038】
さらに、エンジンが、メインチャンバーを画定している1、2、3、4、5、6、7、8又はさらに多くのシリンダを有し、メインチャンバーの1つ、複数、又は全てが、それに関連する点火プレチャンバーを有する、エンジン及び方法が提供される。
【0039】
さらに、エンジンが、メインチャンバーを画定している1、2、3、4、5、6、7、8又はより多くのシリンダを有し、点火プレチャンバーがメインチャンバーの2つ以上と共有されている、のエンジン及びシステムが提供される。
【0040】
さらに、燃料特性のばらつきに対応するために、エンジン回転数、点火タイミング、ノック検出を含むクローズドループエンジン制御戦略アルゴリズムと、そのようなアルゴリズムを使用する方法とを有する、コントローラ、メモリ、およびプロセッサからなる制御システムをさらに含むエンジンが提供され、そのアルゴリズムと方法は、以下を有する。外部制御ループは、定常運転と所望の合成ガス生産を達成するためのパラメータを設定し、エンジン回転数と全開スロットルを含むいくつかのパラメータは固定される。燃料組成や周囲温度などの外的要因の変化に応じて、自己調整較正係数を変化させ、エンジン出力(したがってエンジン速度)を一定に維持しながら、燃料空気比を所望のH/CO比と合成ガスへの全体的変換を達成するレベルに維持する。バルブタイミング、吸気圧(ブースト)、および/またはシリンダ休止によって組成や密度などの吸気パラメータが変化する一方で、エンジン回転数は一定に保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明に係るエンジン運転特性の実施形態によって得られる利点の例を示すベン図である。
【0042】
図2】様々な炭化水素の周囲条件下における当量比に対する最小点火エネルギーの実施形態を示すグラフである。
【0043】
図2A】本発明に係るプレチャンバーおよびメインチャンバーの点火での使用における、周囲条件下における各種炭化水素の当量比に対する点火エネルギーの例を示すグラフである。
【0044】
図3】当量比に対するフレアガス成分の燃焼速度の実施形態を示すグラフである。
【0045】
図4】本発明に係るプレチャンバーアセンブリを備えたエンジンの一実施形態を示す断面図である。
【0046】
図5】本発明に係るエンジンで使用するためのプレチャンバーアセンブリの一実施形態の断面図である。
【0047】
図6】本発明に係るエンジンで使用するためのプレチャンバーアセンブリの一実施形態の断面図である。
【0048】
図7】本発明に係るエンジンで使用するためのプレチャンバーアセンブリの一実施形態の断面図である。
【0049】
図8】本発明に係るエンジンで使用するためのプレチャンバーアセンブリの一実施形態の断面図である。
【0050】
図9】本発明に係るプレチャンバーアセンブリの実施形態で使用するノズルの実施形態の斜視図である。
【0051】
図9A図9のノズルの断面図である。
【0052】
図10】本発明に係るプレチャンバーアセンブリの実施形態で使用するノズルの実施形態の斜視図である。
【0053】
図10A図10のノズルの断面図である。
【0054】
図11】本発明に係るエンジンで使用するためのプレチャンバーアセンブリの一実施形態の断面図である。
【0055】
図12】本発明に係るエンジンで使用するためのプレチャンバーアセンブリの一実施形態の断面図である。
【0056】
図13】燃料対空気当量比の掃引中の、従来のおよび本発明によるプレチャンバー点火システムの実施形態のIMEPのCOVを示すグラフである。
【0057】
図14】燃料対空気当量比の掃引中における、従来のベースライン点火システムと、本発明によるプレチャンバー点火システムの実施形態のプレチャンバーの、0~10%燃焼持続時間を示すグラフである。
【0058】
図15】燃料対空気当量比の掃引中における、従来のベースライン点火システムと、本発明によるプレチャンバー点火システムの実施形態のプレチャンバーの、10~90%燃焼持続時間を示すグラフである。
【0059】
図16】燃料対空気当量比の掃引中における、従来のベースライン点火システムと、本発明によるプレチャンバー点火システムの実施形態の、プレチャンバー付き排気のH/CO比を示すグラフである。
【0060】
図17】地球温暖化係数の値を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明は、概して、フレアガスから使用可能な燃料および化学物質を経済的な方法で回収するためのシステム、装置、および方法に関し、特に、一実施形態では、フレアガスのためのより小さい、隔離された、または遠隔の場所または点源においてそのような回収を達成するためのシステム、装置、および方法に関する。特に、本発明は、燃焼プレチャンバーおよびインジェクターを含むエンジンのリッチ動作限界を拡張するための方法、装置、およびシステムに関する。
【0062】
本発明の一実施形態では、概して、天然ガスまたはフレアガスのような低価格なガスを使用して、全体として2±0.5以上のリッチ当量比でレシプロエンジンを運転することに関する実施形態が提供される。
【0063】
図1において、火花点火内燃エンジンの従来の運転条件に勝る、フレアガス回収用途における本発明の改善のいくつかの例を示すベン図100が示されている。つまり、本発明の実施形態による、合成ガスを生成するためにリッチに運転される火花点火内燃エンジンの典型的な運転特性(例えば、102)は、従来の火花点火エンジンの特性(例えば、101)と大きく異なることが分かる。ほぼ完全な酸化、CO排出の最小化、および出力のような従来の特性は、部分的な燃料酸化、HとH/COの排出の最大化、およびガススループットによって置き換えられる。ベン図は、操作性および商業的実施形態に関する本発明の実施形態の追加的な特徴および利点(例えば、103)をさらに示している。
【0064】
概して、本発明の実施形態は、主にガス状炭化水素である坑口や遠隔地にある非経済的な炭化水素系燃料を利用し、それらをメタノールのようなより価値があり、容易に凝縮可能な又は液体の化合物に変換する。燃料源(すなわち廃ガス)の1つの供給源としては、油田で副産物として発生する随伴ガスやフレアガスが考えられる。別の供給源としては、埋立地や嫌気性消化槽からのバイオガスが考えられる。
【0065】
本発明の実施形態は、概して、典型的には燃料対空気当量比が1.0付近で運転され、場合によっては、0.5付近の低い当量比で運転されていた従来の火花点火エンジンの改良に適用される。当量比1.0以下での炭化水素燃料の完全燃焼生成物は、主に二酸化炭素と水である。本発明の実施形態では、プレチャンバー燃焼装置、点火器、およびこれらの組み合わせや変形例などのリッチ限界拡張の方法および装置を、メイン燃焼チャンバーを有する従来のエンジンと組み合わせて使用し、燃料対空気当量比を高めて(例えば、1より大きい、約1.5より大きい、約2より大きい)運転し、酸素不足を生じさせて一酸化炭素および水素(例えば、合成ガス(「シンガス」))などの部分酸化排気成分をもたらす。正確で最適な燃料対空気当量比は、燃料の水素対炭素比や他の要因の関数である。
【0066】
燃料・空気混合気の反応性は、リッチ条件下で低下し、着火の問題と火炎伝播速度の低下をもたらす。図2は、周囲条件下での様々な炭化水素について、当量比が1から離れるにつれて最小着火エネルギーが急速に増加することを示している。同様に、燃焼速度、すなわち火炎伝播速度も、図3に示すように、周囲条件における様々な炭化水素について、当量比が1から離れるにつれて急速に低下する。従って、本発明のエンジンおよび方法の実施形態は、特に、最適なリッチな燃料対空気当量比に達するかなり前に許容できない燃焼劣化に悩まされる、商用の火花点火エンジンの問題に対処する。
【0067】
図2Aには、本発明のエンジン構成のプレ点火チャンバーの実施形態とメインチャンバーの実施形態の動作のための好ましい範囲の実施形態が示されている。
【0068】
世界の16,000以上の油井でフレア化された天然ガスは、年間1.4ギガトン以上のCOを発生させる。本発明の一実施形態は、その滞留した、さもなければフレア化されたガスを利用して、メタノール、水素、アンモニアなどの経済的に実行可能な低炭素化学物質および燃料を生産し、それによってCO排出を緩和する。例えば、本発明のシステムの一実施形態は、多数の坑口を有する油田の坑口の1つ又は複数の坑口で、フレアガスをメタノールに変換するために利用される。
【0069】
最もシンプルな酸素化炭化水素であるメタノールは、多種多様な下流化学製品、ひいては消費者製品に使用できる基礎分子である。概して、本実施形態のプレチャンバー-メインチャンバーエンジン構成は、天然ガス液化(Gas-To-Liquids:GTL)システムの改質器として使用することができる。したがって、プレチャンバー-メインチャンバーエンジン構成は、合成ガスを供給するために使用され、合成ガスはメタノールに変換される。坑口天然ガス液化(「GTL」)システムの一実施形態、例えばGTL転換プラットフォームは、粗メタノール(例えば、公称10~15wt%の水)を生成し、坑口での単段フラッシュ操作から、溶存ガス/軽質炭化水素(軽質炭化水素)を低減した安定化メタノールを生成することができる。したがって、例えば、本発明のプレチャンバー-メインチャンバーエンジン構成を利用したGTLシステムは、PCT特許出願番号PCT/US2022/029708およびPCT/US2022/029707ならびに米国特許出願第17/746,942、17/746,937、17/746,927および17/466,921に概して教示および開示されているタイプのものとすることができ、これらの各開示の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
火花点火エンジンのリッチ動作限界は,本明細書では,着火しないことがなく安定した燃焼(図示平均有効圧力(IMEP)の変動係数(COV)<5%)が得られる所与の運転状態における燃料対空気当量比の最大値として定義する。
【0071】
リッチ動作限界は,吸気条件(燃料組成,スロットル開度,エンジン回転数,環境特性など),エンジン設計(圧縮比,バルブタイミング,ボア/ストローク比,熱特性など),点火システム設計(エネルギー供給,チャージ成層,吸気処理など)の相互作用によって決まる。
【0072】
概して、本発明の実施形態は、本発明のプレチャンバー点火器の実施形態のような、リッチ限界拡張によってリッチ動作限界を拡張する。これらのプレチャンバー点火器は、エンジンのメインチャンバーよりも少ないリッチ当量比で動作し、それにより点火性を向上させる。これらのプレチャンバー装置におけるプレチャンバー当量比は、エンジンのメインチャンバーに存在する当量比よりも、少なくとも20%低い当量比、少なくとも30%低い当量比、少なくとも60%低い当量比、約25%~約60%低い当量比、より大きい値およびより小さい値の当量比とすることができる。実施形態では、プレチャンバーは、少なくとも0.8、少なくとも0.9、および最大1.2、最大1.6、好ましくは1.6を超えない当量比で運転することができるが、より大きな値およびより小さな値を使用することができる。定常運転では、プレチャンバー点火器を有するエンジンのメインチャンバーは、少なくとも1.4、少なくとも1.8、2.1未満、2.4未満、1.3から2.1、1.4から2.2、好ましくは2.5を超えない当量比で運転することができるが、より大きな値およびより小さな値を使用することができる。
【0073】
概して、実施形態において、プレチャンバーは、好ましくは、それが関連するエンジンの隙間容積の25%未満を占める。同様に、好ましい実施形態では、パッケージングは、メイン燃焼チャンバーに供給される点火エネルギーを増加させると同時に、最小の設置面積で既存または将来のエンジン設計に適合し、また、相対的にリーンなプレチャンバーがエンジンのシリンダの「全体」燃料空気比に与える影響を最小にするように最適化される。エンジン構成,特にプレチャンバー・メインチャンバー構成の文脈で使用される場合,「全体」および「全体的に」という用語は,プレ燃焼室およびメイン燃焼室を含むエンジン全体の燃料対空気当量比を意味する。プレチャンバーは、シリンダヘッドと一体とすることも、シリンダヘッドに取り付けられる別体を有することもできる。プレチャンバーは、部分的に燃焼した空気・燃料混合気がメインチャンバーに流入する前に、プレチャンバーのチャンバー壁へのクエンチを最小限に抑えながら火花を発生させる設計となっている。プレチャンバーの積極的な冷却は任意のものであり、シリンダヘッドの冷却空洞部をプレチャンバー本体に直接接続するか、外部冷却ホース/パイプをプレチャンバー本体に通すことで実現できる。
【0074】
実施形態において、プレチャンバーは、インジェクション装置(例えば、チェックバルブ、インジェクター、ポート、バルブ)を介して酸化剤(例えば、空気)の補助的な供給源を有することができる。したがって、これらの実施形態は、追加の空気インジェクションシステムを有する。これらの空気インジェクションシステムで使用するために、酸素または空気以外の、あるいは空気と一緒に酸素を含むガスを、酸化剤のこの補助的な供給源として使用できることに留意されたい。さらに、プレチャンバー内の当量比は、チャンバーへの酸素の追加供給源の追加と一緒に、またはその代わりに、燃料の量を減らすことによって、リッチでなくすることができる。
【0075】
プレチャンバー用の空気インジェクションシステムの実施形態は、受動バルブ、空気インジェクター、およびこれらの組み合わせを使用することができ、ピストンが圧縮ストローク中にメインチャンバーからプレチャンバーにリッチ混合気の一部を押し込む前に、酸化剤がプレチャンバーに入り、排気残留物をパージして、スパークプラグ領域を空気で満たすことを可能にする。空気インジェクターから供給される空気もピストンによって圧縮され、スパークプラグの近くに留まるため、スパークカーネル(spark kernel)発生に好ましい条件が整う。
【0076】
チェックバルブを使用する空気インジェクションの実施形態は、通常、プレチャンバー全体の差圧が許容する場合にのみ開いてプレチャンバーに空気を流入させる。空気供給圧力とともにバルブを閉じた状態に保つバネは、プレチャンバーに空気が必要なときだけチェックバルブが開くように調整されている。
【0077】
電子制御の空気インジェクターで構成されるエアインジェクションシステムは、プレチャンバーに一定量の新鮮な空気を送り込むために、正確なタイミングでのみ開くよう指令される。
【0078】
プレチャンバーは、1つ又は複数のオリフィスを介してメインチャンバーと連通し、プレチャンバーをメインチャンバーと流体連通させることができる。オリフィスの数は、1以上、4以上、6以上、8以上、1から10、3から8、6から12とすることができる。オリフィスは、円形、楕円形、その他の形状とすることができる。オリフィスは、円筒形(すなわち、平行な側壁)、プレチャンバーに向かってテーパー状、メインチャンバーに向かってテーパー状、二重テーパー(例えば、両端に向かってテーパー状)、および他の構成のスロートを有することができる。プレチャンバーとメインチャンバーとを接続するオリフィスは、全て同じであってもよいし、例えば直径、絞り、形状などの異なる特徴を有するものであってもよい。概して、オリフィスは、プレチャンバーでの点火のためにメインチャンバーからプレチャンバーへの燃料の流れ、およびプレチャンバーからメインチャンバーへの部分的に燃焼した空気・燃料混合気の流れを促進、調節、制御、およびこれらの組み合わせや変形を行う。好ましい実施形態では、オリフィスは、好ましくはスパークプラグから離れたプレチャンバーの端部に位置するノズルの穴である。
【0079】
実施形態では、プレチャンバー内の一連のオリフィスにより、部分的に燃焼した空気・燃料混合気の乱流ジェットがプレチャンバーからメインチャンバーに移動する。乱流ジェットは、分散してメインチャンバーの内容物と相互作用するため、点火遅延時間を短縮し、メインチャンバー内での全体的な火炎伝播速度を増加させる。内容物がメイン燃焼チャンバーに移動する前にプレチャンバー内に蓄積された圧力のバランスをとるためには、オリフィスの合計の有効面積は、シリンダヘッドの燃焼面(firing face)を通過するプレチャンバー本体の面積(例えば、メインチャンバーに延びるノズルの面積)の1%から60%の間であるべきである。従って、例えば、オリフィスの合計有効面積は、シリンダヘッドの燃焼面(firing face)を通過するプレチャンバー本体の面積の約5%、約10%、約20%、約30%、約45%とすることができる。
【0080】
受動的なプレチャンバーの一実施形態は、プレチャンバー内にスパークプラグのみを含む。このタイプのプレチャンバーは、メイン燃焼チャンバーと同じ燃料・空気混合気で満たされる。このシステムは、プレチャンバー内の燃料に含まれる化学エネルギーを乱流ジェットに変換することにより、メインチャンバーに送られる点火性エネルギーを増幅する役割のみを果たす。乱流ジェットによってメインチャンバーに送られるエネルギーは、従来のスパークプラグによってメインチャンバーに送られるエネルギーの何倍も大きく、また従来のスパークプラグからの単一の点火イベントよりも分散される。受動的なプレチャンバーシステムはメインチャンバー内の火炎伝播速度を大幅に向上させ、これはシリンダ内温度の低下とノックの可能性の低減につながる。
【0081】
能動的なプレチャンバー構成の一実施形態は、スパークプラグと、プレチャンバーの燃料空気比に影響を与えるために使用される空気インジェクター装置とを含む。能動的プレチャンバーは、メインチャンバー内の非常に燃料リッチな混合気が点火しにくくて火炎伝播速度が低いときに、フレアガスを合成ガスへ変換するのに最も有益である。プレチャンバー内の空気インジェクターは、噴射された空気がプレチャンバー混合気をリーンアウトさせ、化学量論に近づけるために、メインチャンバー内よりもスパークプラグでの点火性をより有利にすることができる。さらに、実施形態では、能動的プレチャンバーシステムは、受動的プレチャンバーの利点を維持しつつ、スパークプラグの近傍で点火にとってより有利な混合気を供給するという付加的な利点も有する。これは、メインチャンバー内で非常にリーンな状態で運転される多くの内燃機関において有益であり、ポンピング作業を減らして熱効率を高めることができる。
【0082】
本発明のプレチャンバー、メインチャンバーエンジン構成の実施形態は、空気インジェクション装置を使用して、プレチャンバーを清浄化し(すなわち、燃料・空気比をよりリーンに、すなわちリッチでないようにし)、燃焼時に合成ガスを生成する全体的な燃料・空気混合気の点火を補助する。幾つかの先行技術のプレチャンバーの変形が現在使用されているが、それらの全ては、受動的(空気燃料混合気がプレチャンバーで圧縮され、続けて点火される)か、又は燃料インジェクター若しくは燃料と空気のインジェクションの組み合わせのいずれかで能動的に作動する。従って,現在の構成と運転方法は,極端に燃料リッチな条件下(当量比が少なくとも1.8)でエンジンを運転する方策の一環として,プレチャンバー内の混合気をリッチ化するものである。
【0083】
本発明の実施形態では、エンジンは、例えば、スキッド搭載、トレーラー搭載、トラック搭載などのモジュールの一部であり、レシプロエンジンは、フレアガスを合成ガスに処理するために使用され、その合成ガスは、その後、メタノールまたは他の高価値最終製品にさらに処理することができる。レシプロエンジンは、フレアガスを合成ガスに処理するように構成された制御システムを有する。
【0084】
概して、従来のエンジン制御および操作性は、好ましいH/CO比を有する合成ガスを生成するために好ましくは使用されるリッチな燃料・空気混合気によって困難になる。合成ガス製造のための本発明のシステムおよび方法の実施形態では、メインチャンバー内の燃料・空気混合気はリッチであり、好ましくは、全体の燃料対空気の当量比(ΦまたはER)が、1より大きく、1.5より大きく、2より大きく、3より大きく、約1.5~約4.0、約1.1~約3.5、約2~約4.5、約1.1~約3、およびそれ以上の値を有する。
【0085】
本発明のエンジン構成の実施形態では、エンジンは、フィードフォワードアプローチおよびフィードバックアプローチ、物理学ベースのエンジンモデル、ラムダセンサー(Oベースのセンサー)、フレアガス、合成ガス、またはその両方の流れと断続的に接触するセンサー、およびこれらの組み合わせやバリエーションを含むことができる制御システムを利用する。PCT特許出願番号PCT/US2022/029708および米国特許出願第17/746,927号は、現在のプレチャンバー、メインチャンバーエンジン構成で使用できる制御システムの実施形態を開示し、教示しており、これらの各開示の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
実施例
【0087】
以下の実施例は、本発明の廃ガス変換プロセスおよびシステムの様々な実施形態を説明するために提供される。これらの実施例は、リッチなおよび極度にリッチな当量比で拡張動作するための、本発明のリッチ限界拡張器およびこれらのリッチ限界拡張器を有する従来のエンジンの様々な実施形態を説明するために提供される。以下の実施例の好ましい用途および実施形態は、フレアガスを合成ガスに変換するGTLシステムにおける改質器としての用途である。これらの例は、例示を目的としたものであり、予言的なものであってもよく、本発明の範囲を限定するものではない。また、一実施例のリッチ限界拡張器、例えば、プレチャンバー点火器、インジェクターなどは、特定の実施例で示した火花点火エンジンに加えて、任意のタイプの火花点火エンジンと共に使用できることを理解すべきである。さらに、任意の一実施例の特定の構成要素の構成は、別の実施例の構成に使用することができる。
【0088】
実施例1
【0089】
図4図5には、プレチャンバー403とメインチャンバー407を有するエンジン構成400の断面図が示されている。図5は、プレチャンバー点火器本体402の拡大図である。プレチャンバー点火器403は、プレチャンバー本体402に形成され、スパークプラグ401を有する。ノズルオリフィス404はプレチャンバー403とメインチャンバー407とを連通している。通路405は、チャンバー本体402を通って延びて、プレチャンバー403を導管408上にあるチェックバルブ406と接続する。通路405、チェックバルブ406、および導管408のアセンブリは、例えば空気、酸素、これらの組み合わせなどの酸化源ガスをプレチャンバー403に添加するシステムを提供する。プレチャンバー本体402は、エンジン構成400のシリンダヘッド410の一部である。スパークプラグ配線409は、スパークプラグ401および図示しない電源に接続される。この構成は、リッチ動作限界を最適なリッチ燃料対空気当量比に向かって拡張し、それによって火花点火エンジンを使用して合成ガスを製造する方法を提供する。
【0090】
動作時に、空気は、ホースまたはパイプ408を通ってシステム400に入り、チェックバルブ406を通過する。空気は、チェックバルブ406を出て通路405を流れ、プレチャンバー403に入る。プレチャンバー403での点火の後に、部分的に燃焼したプレチャンバー内容物は、ノズルオリフィス404(例えば、ノズル孔)を介して、メインチャンバー407に流入する。
【0091】
図4に示すように、プレチャンバー本体は、シリンダヘッド410に取り付けられるか、又はシリンダヘッド410の一部である。本実施形態において、プレチャンバー本体は、例えば、シリンダヘッドにねじ込まれるか、シリンダヘッドと一体として形成されるか、シリンダヘッドに溶接されるか、シリンダヘッドに圧入されるか、等とすることができる。プレチャンバーはまた、シリンダヘッド410とは別個の本体とすることもでき、またはシリンダヘッド410とは別個の本体に取り付けることもでき、この別個の本体は、好ましくは、シリンダヘッド410に取り付けられるか、またはシリンダヘッド410と接合されたものとなるであろう。プレチャンバーアセンブリは、シリンダヘッドに対して任意の角度で取り付けることができる。
【0092】
実施例2
【0093】
従来のエンジンを改良して拡張されたリッチ動作限界を達成する方法は、以下を含む:
・スパークプラグと空気インジェクション装置を含むプレチャンバーを設置すること;
・チェックバルブまたは能動的空気インジェクターのいずれかを介して噴射される空気量を制御すること、
・プレチャンバーをメインチャンバーに接続する1つ又は複数のオリフィスを採用すること。
【0094】
実施例3
【0095】
図6には、プレチャンバー603とプレチャンバー本体602を有するプレアセンブリー600の断面が示されている。プレチャンバー603は、プレチャンバー本体602に形成されており、スパークプラグ601を有する。ノズルオリフィス604(例えば、ノズル孔)は、プレチャンバー603を火花点火エンジンのメインチャンバー(図示せず)と連通させる。
【0096】
プレチャンバーアセンブリ600は、シリンダヘッドに取り付けることができ、又はシリンダヘッドの一部とすることができる。この実施形態において、例えば、プレチャンバーアセンブリ600、より好ましくはプレチャンバー本体602は、シリンダヘッドにねじ込まれるか、シリンダヘッドと一体として形成されるか、シリンダヘッドに溶接されるか、シリンダヘッドに圧入されるか、等とすることができる。プレチャンバーアセンブリ600はまた、シリンダヘッドとは別個の本体とするか、またはシリンダヘッドとは別個の本体に設置することができ、この別個の本体は、好ましくは、シリンダヘッドに取り付けられるか、またはシリンダヘッドに接合されたものとなるであろう。プレチャンバーアセンブリは、シリンダヘッドに対して任意の角度で設置することができる。
【0097】
通路605は、プレチャンバー本体602を通って延びており、プレチャンバー603を導管608に取り付けられたインジェクター611と接続する。通路605、インジェクター611、および導管608のアセンブリは、例えば空気、酸素、これらの組合せなどの、付加的な酸化源ガスをプレイグニッションチャンバー603に加える、例えば注入するための、システムを提供する。スパークプラグ配線609は、スパークプラグ601および図示しない電源に接続される。このアセンブリ600は、最適にリッチな燃料対空気当量比に向かってエンジンのリッチ動作限界を拡張し、それによって火花点火エンジンを使用して合成ガスを製造する方法を提供する。
【0098】
動作において、アセンブリ600がエンジンの一部として使用されるとき、空気は、ホースまたはパイプ608を通ってシステム600に入り、インジェクター611を通過する。空気はインジェクター611を出て通路605を流れ、プレチャンバー603に入る。点火後、プレチャンバー603において、部分的に燃焼したプレチャンバーの内容物は、ノズルオリフィス604を介して、エンジンのメインチャンバー(図示せず)に流入する。
【0099】
実施例4
【0100】
本発明の一実施形態は、リッチ燃焼(rich-burn)レシプロエンジンと合成反応器を中心に展開される。リッチ燃焼レシプロエンジンは、レシプロエンジンシリンダヘッドに含まれるメインチャンバーと流体連通するプレチャンバーを有する。従来のレシプロエンジンとは異なり、プレチャンバーは、酸素源、例えば空気のために酸素を添加した燃料リーン状態で運転され、点火された燃料がプレチャンバーからメインチャンバーに入り、メインチャンバー内の燃料の点火を補助又は生じさせるか、あるいはその両方となる。このようにして,エンジンは燃料リッチ状態,例えば当量比2.5までで運転され,燃料はメインチャンバー内でリッチな部分酸化(POX)を生じる。追加コンポーネントには、燃料調整システム、熱交換器、コンプレッサー、合成反応器などがある。燃料調整システムは、供給流中のガスから液体を分離し、レシプロエンジンや合成反応器に損傷を与える化合物を取り除く。熱交換器とコンプレッサーは、レシプロエンジンの出口で合成ガス混合気を受け取り、温度と圧力を調整して合成反応器の目標条件を提供する。合成サブシステム内には、合成ガス比率調整用のH再利用ループまたはCOスクラバーがある。任意で、合成プロセスの出口でのガスは、レキュペレーター(例えば、向流)熱交換器で高温まで加熱され、その後、周囲圧力まで膨張され、合成ガスの圧縮のためのシャフトワークを提供する。
【0101】
実施例5
【0102】
エンジンを始動し、続いて全負荷、フルリッチ運転に移行するための制御方策を有するプレチャンバーおよびメインチャンバーを有するエンジンの実施形態が提供される。このプロセスおよび方策は、制御装置(例えば、入出力(「I/O」)、プロセッサ、およびメモリ)を有する制御システムにおいて、制御プログラム(例えば、アルゴリズム)によって実施することができる。
【0103】
エンジン始動は、ほとんどの火花点火エンジンで標準的であるとおり、ほぼ閉じたスロットル状態で、化学量論的な空燃比で行われる。化学量論はキャリブレーション(オープンループ制御)で確立され、ラムダセンサーからのフィードバックを使用して当量比1.0に微調整される。化学量論的運転中にプレチャンバーに空気が注入されることはない。プレチャンバーへの空気注入にチェックバルブが使用されている場合、化学量論的条件でのエンジン運転時には、チェックバルブと空気源との間に設置されたソレノイドが閉じられ、プレチャンバーのリーン化が防止される。点火タイミングは,この運転モードでは通常,MBT(Minimum spark advance for Best Torque:最適トルクのための最小点火進角)から大幅に遅角され,MBTから遅角されたままとなって過渡的なエンジン回転数/負荷制御(上述)の高速可変手段を提供する。
【0104】
アイドリングの回転数と負荷でおよそ3分間運転した後、スロットルは所望の運転エンジン回転数に達するまで開かれる。
【0105】
負荷が(ジェネレーターやロードバンクを通して)ゆっくりかかったら、スロットルをさらに開けることで速度が維持される。この間、燃料対空気当量比もゆっくりとリッチ化される。
【0106】
スロットルが全開になると、吸気ブーストを上げる(吸気圧を上げる)ことで負荷をさらに高めながら速度を維持する。この間、燃料・空気混合気はさらにリッチ化される。エンジンの燃料対空気当量比が上がると、プレチャンバーのチェックバルブへの空気供給を制御するソレノイドが開く。
【0107】
フルブーストとリッチ化の目標が達成されると、エンジンは安定する。最初にジェネレーター負荷(粗調整),次に点火タイミング(微調整)でエンジン回転数を一定に保つ。この定常回転数制御モードでは,定常点火タイミングと点火タイミング制限値との間に残るマージンが外乱排除に使用される。プレチャンバー給気チェックバルブは,このフルリッチ化モードで作動するときには,開いたままである。
【0108】
実施例6
【0109】
図7には、プレチャンバー703とプレチャンバー本体702とを有するプレチャンバーアセンブリ700の断面が示されている。プレチャンバー703はプレチャンバー本体702内に形成され、スパークプラグ701を有する。プレチャンバー本体702は、シリンダヘッド710内に配置されている。ノズルオリフィス704(例えば、ノズル孔)は、プレチャンバー703と火花点火エンジンのメインチャンバー(図示せず)とを連通させる。
【0110】
プレチャンバーアセンブリ700は、シリンダヘッドに取り付けることができ、又はシリンダヘッドの一部である。この実施形態では、例えば、プレチャンバーアセンブリ、より好ましくは、プレチャンバー本体702は、シリンダヘッドにねじ込まれるか、シリンダヘッドと一体として形成されるか、シリンダヘッドに溶接されるか、シリンダヘッドに圧入されるか、等とすることができる。プレチャンバーアセンブリは、シリンダヘッドとは別個の本体とすることもでき、またはシリンダヘッドとは別個の本体に設置することもでき、この別個の本体は、好ましくは、シリンダヘッドに取り付けられるか、またはシリンダヘッドと接合されたものになるであろう。プレチャンバーアセンブリは、シリンダヘッドに対して任意の角度で取り付けることができる。
【0111】
プレチャンバー703の形状は、スパークプラグが配置される上部円錐形セクション、中央円形セクション、そしてノズルに接続する下部円錐形セクションを有する。この実施形態では、スパークプラグは、プレチャンバー軸から中心を外れて(off axis)配置される。スパークプラグは軸上に配置することもできる。
【0112】
このアセンブリ700では、スパークプラグシェル701bの側面に穴701aが穿孔またはその他の方法で形成され、これにより、噴射された空気が通路705を通って移動し、次いでスパークプラグシェル701bを通過する。これにより、スパークプラグの周囲から残留排気ガスをより完全に掃気することができると共に、スパークプラグの近傍でより燃料リーンな混合気を得ることができ、これらの両方が燃焼に有益となる。スパークプラグ701をプレチャンバー本体702に収容することで、スパークプラグでの点火に有利な条件が得られ、スパークプラグに供給される電気エネルギーが少なくても混合気を点火させることができる。これによりスパークプラグの寿命が延びる。
【0113】
通路705は、チャンバー本体702を通って延び、プレチャンバー703を、導管に取り付けられたバルブ706、例えばチェックバルブと接続されている。通路705、バルブ706、および導管のアセンブリは、例えば空気、酸素、これらの組合せなどの追加の酸化源ガスをプレチャンバー703に添加するシステムを提供する。スパークプラグ配線は、スパークプラグ701および図示しない電源に接続される。このアセンブリ700は、最適にリッチな燃料対空気当量比に向かってエンジンのリッチ動作限界を拡張し、それによって火花点火エンジンを使用して合成ガスを製造する方法を提供する。
【0114】
動作時、アセンブリ700がエンジンの一部として使用されるとき、空気は、ホースまたはパイプを通ってシステム700に入り、バルブ706を通過する。空気は、バルブから出て通路705を流れ、プレチャンバー703に入る。点火後、プレチャンバー703において、部分的に燃焼したプレチャンバーの内容物は、ノズルオリフィス704を介して、エンジンのメインチャンバー(図示せず)に流入する。
【0115】
実施例7
【0116】
図8には、火花点火エンジンのシリンダヘッド810に取り付けられたプレチャンバー803とプレチャンバー本体802とを有するプレチャンバーアセンブリ800の断面が示されている。プレチャンバー803は、プレチャンバー本体802内に形成され、スパークプラグ801を有する。ノズルオリフィス804(例えば、ノズル孔)は、プレチャンバー803と火花点火エンジンのメインチャンバーとを連通させる。
【0117】
プレチャンバーアセンブリ800は、シリンダヘッド810に取り付けることができ、又はシリンダヘッド810の一部である。この実施形態では、例えば、プレチャンバーアセンブリ800、より好ましくはプレチャンバー本体802は、シリンダヘッドにねじ込まれるか、シリンダヘッドと一体として形成されるか、シリンダヘッドに溶接されるか、シリンダヘッドに圧入されるか、等とすることができる。プレチャンバーアセンブリ800はまた、シリンダヘッドとは別個の本体とすることもでき、またはシリンダヘッドとは別個の本体に設置することもでき、この別個の本体は、好ましくは、シリンダヘッドに取り付けられるか、またはシリンダヘッドと接合されたものになるであろう。プレチャンバーアセンブリは、シリンダヘッドに対して任意の角度で取り付けることができる。
【0118】
図8の実施形態は、プレチャンバー803を積極的に冷却するために、内部冷却剤通路813を有する。この冷却剤は、外部チューブ814で出し入れされるが、シリンダヘッドの開口部からプレチャンバー本体802の内部通路または外部通路を流れる冷却剤を使用することもできる。プレチャンバー冷却剤は、エンジンの他の部分と共有することも、独自のシステムに収容することもできる。プレチャンバー冷却剤は、プレチャンバー自体、およびスパークプラグ801のようなプレチャンバー内およびその近傍に設置されたコンポーネントの温度を制御することによって、それらの寿命を延ばす役割を果たす。
【0119】
このアセンブリ800は、スパークプラグシェル8の側面に穿孔した穴を有することができ、これにより、噴射された空気は、通路を通り、次いでスパークプラグシェルを通ることができる。スパークプラグシェルの穴が使用されない場合、実施例1に示されるように、通路が空気をプレチャンバーに流す。
【0120】
プレチャンバー803の形状は、スパークプラグが配置される上部円形セクションと、ノズルに接続する下部円錐セクションとを有する。この実施形態では、スパークプラグはチャンバーの軸上に配置されている。スパークプラグは軸から外れて配置することもできる。
【0121】
図8には示されていないが、このアセンブリ800では、チャンバー本体802を通って延び、流量制御装置、例えばバルブ、チェックバルブ、またはインジェクターを介してプレチャンバー803に繋がる通路がある。通路、流量制御装置、および導管のアセンブリは、例えば空気、酸素、これらの組合せなどの付加的な酸化源ガスをプレチャンバー803に添加するシステムを提供する。スパークプラグ配線809は、スパークプラグ801および図示しない電源に接続される。このアセンブリ800は、最適にリッチな燃料対空気当量比に向かってエンジンのリッチ動作限界を拡張し、それによって火花点火エンジンを使用して合成ガスを製造する方法を提供する。
【0122】
動作時、アセンブリ800がエンジンの一部として使用されるとき、空気は、ホースまたはパイプを通してシステム800に入り、システムを通過して追加の酸化源ガスを加えて、プレチャンバー803に入る。点火後、プレチャンバー803において、部分的に燃焼したプレチャンバーの内容物は、ノズルオリフィス804を介して、エンジンのメインチャンバー(図示せず)に流入する。
【0123】
実施例8
【0124】
様々なノズル構成およびノズル開口部の実施形態の斜視図および断面図が、それぞれ、図9、9A、および図10、10Aに示されている。これらのノズル構成及び開口部構成、並びにより多い又はより少ない数の開口部、より大きな開口部、及びより小さな開口部を有する構成を、実施例を含むプレチャンバーの実施形態のいずれでも使用することができる。
【0125】
図9および図9Aには、ノズル900の斜視図および断面図がそれぞれ示されており、ノズルは、ノズルの端部または先端部902の周囲に配置された8個のノズル孔、例えば901からなるオリフィスを有する。穴の直径は2mmである。穴の直径は、約2mm、約2.2mm、約2.3mm、約2.7mmとすることができ、また直径2mmから2.8mmとすることができる。ノズルのサイズや形状、ノズルの穴の数によっては、より大きな直径の穴を使用することもできる。また、より直径の小さい穴を使用することもできる。穴は、すべてが同じ直径でもよいし、異なる直径でもよい。
【0126】
図10および図10Aには、ノズル1000の斜視図と断面図がそれぞれ示されており、ノズルは、ノズルの端部または先端部1002の周囲に配置された6つの穴、例えば1001からなるオリフィスを有する。穴の直径は3mmである。穴の直径は、約2.3mm、約2.7mm、約3mm、約3.3mmとすることができ、直径2.5mmから3.1mmとすることができる。ノズルのサイズや形状、ノズルの穴の数によっては、より大きな直径の穴を使用することもできる。また、より直径の小さい穴を使用することもできる。穴は、すべてが同じ直径でもよいし、異なる直径でもよい。
【0127】
これらのノズルには中心軸があり、穴にも中心軸がある。ノズルの軸と穴の軸の間に形成される角度は、ノズルを出てエンジンのメインチャンバーに流入する高温ガスのジェット(噴射)の方向を部分的に規定するため、「噴射円錐角」と呼ぶ。噴射円錐角は、40°より大きく、55°より小さく、約35°、約40°、約45°、約50°、約55°、約60°、35°から60°、40°から50°、また、より大きな角度、小さな角度にすることができる。概して、ノズルの各穴の噴射円錐角は同じであるが、角度は穴ごとに異なるか、あるいは穴ごとに交互に変わっている(例えば、穴1は40°、穴2は50°、穴3は40°、穴4は50°など)ようにすることができる。
【0128】
したがって、例として、図10Aには、ノズル1010の軸と穴1011の軸が示されている。噴射円錐角は矢印1012で示されている。
【0129】
さらに、ノズルの先端の形状を変えることができる。図9および図10の実施形態では、ノズルの先端は半球状である。この形状は、穴の数、穴の直径、および噴射角度に応じて変えることができ、特定のメイン燃焼チャンバーに最適な構成を決定することができる。
【0130】
ノズルの先端はまた、例えば矢印1013で示す厚さを有する。従って、ノズルの厚さは穴の長さを規定する。ノズルの厚さ及び従って穴の長さは、ジェットの特性を規定するのに役立ち得る。典型的には、ノズルの厚さおよび穴の長さは、約1mm、約1.5mm、約2mm、および約3mm、1.2mmから3.2mm、ならびに、より大きい値、より小さい値とすることができる。穴の外縁1014は、縁の形状(例えば、90゜)を有するものとして示されている。円錐形の開口部、テーパー状の開口部、および穴の外縁のための他のタイプの開口部もまた企図される。
【0131】
ノズル先端は、セラミックだけでなく、様々なコーティングされた又はコーティングされていない金属で作ることができる。
【0132】
穴の数と直径を決める際には、ノズルの耐久性を保つために穴と穴の間に十分な材料が保たれる必要がある。通常、ノズルは液冷されない。実施形態では冷却することもできる。したがって、ノズルの厚みと組成、特にノズルのタイプは、ノズルの溶融を防止し、ノズルを冷却する必要性をなくすのに十分でなければならない。
【0133】
したがって、上記実施例を含むプレチャンバーのいずれの実施形態においても、ノズル設計のこれらの様々なパラメータを使用することができる。
【0134】
実施例9
【0135】
図11には、プレチャンバー1103とプレチャンバー本体1102とを有するプレチャンバーアセンブリ1100の断面が示されている。プレチャンバー1103は、プレチャンバー本体1102内に形成され、スパークプラグ配線1109を有するスパークプラグ1101を有する。ノズルオリフィス1104(例えば、ノズル孔)は、プレチャンバー1103を火花点火エンジンのメインチャンバー(図示せず)と接続する。
【0136】
プレチャンバーアセンブリ1100は、シリンダヘッドに取り付けることができ、又はシリンダヘッドの一部である。この実施形態では、例えば、プレチャンバーアセンブリ1100、より好ましくは、プレチャンバー本体1102は、例えば、シリンダヘッドにねじ込まれるか、シリンダヘッドと一体として形成されるか、シリンダヘッドに溶接されるか、シリンダヘッドに圧入されるか、等とすることができる。プレチャンバー本体1100はまた、シリンダヘッドとは別個の本体とすることもでき、またはシリンダヘッドとは別個の本体に取り付けることもでき、この別個の本体は、好ましくは、シリンダヘッドに取り付けられるか、またはシリンダヘッドと接合されたものになるであろう。プレチャンバーアセンブリは、シリンダヘッドに対して任意の角度で取り付けることができる。
【0137】
アセンブリ1100は、バルブ1115を有する空気供給ライン1116を有し、この空気供給ライン1116は導管1108に接続されている。アセンブリ1100は、バルブ1117を有する燃料供給ライン1018を有し、これも導管1108に接続され、こうして添加された空気と燃料の混合気を提供する。導管1108は、バルブ1106、例えばチェックバルブを有する。導管1108は、チャンバー1103に通じる通路1105に接続されている。
【0138】
このようにして、燃料、特に燃料空気混合気がプレチャンバーに直接噴射される。バルブ1106の代わりに、インジェクターまたはチャンバーに材料を添加する他のタイプの装置を使用することも可能である。
【0139】
図11の実施形態では、燃料と空気はバルブまたはインジェクターの前で混合される。燃料をチャンバーに直接注入するために、全く別のラインとバルブ/インジェクターを使用することができることを理解されたい。したがって、そのような実施形態では、チャンバーのための2つの付加的なシステム、例えば空気、酸素、これらの組合せなどの付加的な酸化源ガスをプレチャンバー1103に添加するための1つのシステムと、燃料をプレチャンバー1103に加えるための1つのシステムが存在することになる。
【0140】
この実施形態では、これらの同じプレチャンバーを多気筒エンジンの複数のシリンダに設置し、異なる燃料対空気当量比と異なる負荷で動作させるように制御することができる。さらにエンジンのハードウェアとソフトウェアを変更することで、一部のシリンダは理論空燃比に近い状態またはリーンで運転して軸動力を発生させ、他のシリンダは燃料リッチで運転して合成ガスを発生させることができる。合成ガスを生成するシリンダの排気は、他のシリンダから分離して排気ガスの採取をより容易にすることができる。
【0141】
実施例10
【0142】
図12には、プレチャンバー1203とプレチャンバー本体1202とを有するプレチャンバーアセンブリ1200の断面が示されている。プレチャンバー1203は、プレチャンバー本体1202内に形成され、スパークプラグ配線1209を有するスパークプラグ1201を有する。ノズルオリフィス1204(例えば、ノズル孔)は、プレチャンバー1203を火花点火エンジンのメインチャンバー(図示せず)と接続する。
【0143】
プレチャンバーアセンブリ1200は、シリンダヘッドに取り付けることができ、又はシリンダヘッドの一部である。この実施形態では、例えば、プレチャンバーアセンブリ1200、より好ましくは、プレチャンバー本体1202は、シリンダヘッドにねじ込まれ、シリンダヘッドにねじ込まれるか、シリンダヘッドと一体として形成されるか、シリンダヘッドに溶接されるか、シリンダヘッドに圧入されるか、等とすることができる。プレチャンバー本体1200はまた、シリンダヘッドとは別個の本体とすることもでき、あるいはシリンダヘッドとは別個の本体に取り付けることもでき、この別個の本体は、好ましくはシリンダヘッドに取り付けられるか、あるいはシリンダヘッドと接合されたものになるであろう。プレチャンバーアセンブリは、シリンダヘッドに対して任意の角度で取り付けることができる。
【0144】
アセンブリ1200は、追加の酸化源ガス、例えば空気、酸素、これらの組み合わせをプレチャンバー1203に添加するシステムを有し、供給導管1208とバルブ1206、例えばチェックバルブを有する。導管1208は通路1205に接続され、通路1205はチャンバー1203に接続される。バルブは、チャンバーに追加の材料を加えるためのインジェクターまたは他のタイプの装置とすることができる。
【0145】
スパークプラググランドストラップ1219は、スパークプラグ1201自体の一部とする代わりに、プレチャンバー1203の一部として製造されている。1つ又は複数の、好ましくは複数のストラップが、プレチャンバーと一体的に製造することができ、グランドストラップは侵食されるか又はそうでなければ故障するので、スパークプラグの耐用年数を延長することができる。プレチャンバーのノズル穴はまた、破損したグランドトラップがプレチャンバーから抜け出してメインシリンダおよび他のエンジン構成要素を損傷させるのを防止するのに十分小さいサイズにすることができる。プレチャンバー本体の液冷も、金属温度を下げることでグランドストラップの耐久性を向上させる。グランドストラップをプレチャンバー本体と一体で製造することで、プレチャンバーに別個のグランドストラップを溶接することによって耐久性の問題をなくすこともできるし、又は従来のスパークプラグの製造のようにグランドストラップを溶接することもできる。
【0146】
実施例11
【0147】
本実施形態のリッチ限界拡張器(プレチャンバーを含む)、およびリッチ限界拡張器と火花点火エンジンの組み合わせでは、プレチャンバーに積極的に噴射される空気(または空気と酸素の混合気、または酸素)の圧力は、メインチャンバーのピストンがTDC(上死点)付近にあるときに空気を噴射できるように高くされる。空気を主に吸気行程で低圧で噴射すると、圧縮行程でメインチャンバー内の燃料・空気混合気がプレチャンバー内に押し込まれるため、プレチャンバー内の最終的な燃料対空気当量比における空気噴射の影響が小さくなり、リッチ動作限界が低下する。この実施形態では、圧縮行程の終端又はその近傍で空気を噴射することにより、この課題を克服している。これにより、プレチャンバー内のリッチ混合気が空気で置換され、点火直前の燃料対空気当量比が低下し、スパークカーネルの発達及び火炎伝播にとってより理想的な環境が形成される。これにより、プレチャンバーがより高いメインチャンバー燃料対空気当量比で燃焼するだけでなく、メインチャンバーに伝達される噴射がより多くのエネルギーを含み、よりリッチなメインチャンバー混合気も点火するため、エンジンのリッチ作動限界が拡張される。
【0148】
実施例12
【0149】
プレチャンバーのノズルの形状、点火タイミングと点火エネルギー、空気噴射圧力、空気噴射チェックバルブの設計の関数として、エンジンのリッチ限界への影響を調べるために、さまざまな形状と構成のプレチャンバーを製作し、エンジンで試験した。
【0150】
一般に,燃料リッチ混合気中に少量の空気を噴射してチャンバー内の燃料対空気当量比に影響を与えることは,燃料リーン混合気中に少量の燃料を噴射して空燃比に影響を与えるよりも困難である。これは、リッチエンジンであっても空燃比(AFR)がほぼ10であるため、リーン混合気中に一定量の燃料を噴射した場合と同じ燃料対空気当量比の変化を得るには、リッチ混合気中に約10倍の質量の空気を噴射しなければならないからだと理論づけられている。
【0151】
プレチャンバーの実施形態が試験されて、ベースラインの火花点火システムに比べて驚くほど大きなリッチ限界の拡張が得られた。試験は、各構成について同じ吸排気条件で実施され、燃料対空気当量比(Φ)の掃引が行われた。掃引中に定常状態データを取得し、エンジン平均での図示平均有効圧力の変動係数(IMEPのCOV)を用いて燃焼安定性と失火をモニターした。IMEPのCOVが最大許容値である5%を超えた後はデータを収集しなかったため,表示された最もリッチなデータポイントはエンジンのリッチ動作限界を表している。
【0152】
図13には、1.65から2.27の範囲にわたって、従来の火花点火エンジン(線1301)と、プレチャンバーアセンブリを有する同じタイプのエンジン(線1302)とを比較したIMEPのCOV対(Φ)のグラフが示されている。この試験で使用されたプレチャンバーアセンブリは、図4に示された通常タイプの構成を有し、この実施形態では、プレチャンバーは、シリンダヘッドの既存のスパークプラグ取り付けねじにねじ込まれ、ノズルに8つの穴を有し、それらは直径が2.0mmであり、噴射角が55°に配置されていた。
【0153】
この試験と図13のデータから、プレチャンバーアセンブリを使用した場合のエンジンのリッチ限界は、燃料対空気当量比2.27まで拡張され、ベースラインの火花点火システムよりも0.27改善されたことがわかる。
【0154】
プレチャンバーアセンブリは、図14および図15に示すように、特に燃焼の初期段階において、メインチャンバーの燃焼速度に有益な影響を与える。図14及び図15の試験及びデータは,図13で使用したのと同じエンジン及びプレチャンバーアセンブリ付きエンジンを使用して得られた。プレチャンバーの使用によるメインチャンバー燃焼速度へのこの影響は、プレチャンバー内の混合気が点火した後、燃焼ガスと火炎の高温ジェットがメインチャンバー内に分散され、ベースラインの火花点火カーネル発達プロセス(spark ignition kernel development process)よりもはるかに速い燃焼をもたらすためであると理論化されている。
【0155】
実施例13
【0156】
プレチャンバーアセンブリの実施形態を含む、本発明のリッチ限界拡張器の実施形態のいずれかのシステムは、例示のいずれかを含む火花点火エンジンと組み合わされ、米国特許出願第17/746,942および17/953,056ならびにPCT出願第PCT/US2022/029708およびPCT/US2022/044724に開示され、教示されているGTLシステムおよび方法における改質器として、したがってその一部として使用されるが、これらの各開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0157】
実施例14
【0158】
実施例13および本明細書の他の箇所に記載されているように、リッチ限界拡張器、例えばプレチャンバーアセンブリを有する火花点火エンジンは、特にフレアガスからメタノールなどの有用な生成物への変換に使用するために、合成ガスの製造に適用される。これらのシステム(例えば、GTLシステム)の改質器によって生成された合成ガスの品質は、一般に、合成ガスのH/CO比を分析することによって定量化され、比が高い(水素が多い)方が好ましいとされる。図16は、図13で使用したものと同じエンジンおよびプレチャンバーアセンブリ付きエンジンの使用により、概して合成ガス中に水素がより多く存在するようになるため、リッチ動作限界を拡張するだけで合成ガスの品質が向上することを示している。
【0159】
実施例15
【0160】
コンポーネントが構成され、システムが正味カーボンニュートラルで運転される実施形態のいずれかのシステム。
【0161】
実施例16
【0162】
構成要素が構成され、システムが、廃ガス源からの総炭素出力を削減するように運転される実施形態のいずれかに記載のシステム。
【0163】
本発明の実施形態の主題である、または関連する、新規かつ画期的な生成速度、性能、または他の有益な特徴および特性の基礎となる理論を提供または対処する必要はないことに留意されたい。それにもかかわらず、本明細書では、この重要な分野、特に炭化水素の探究、生産および下流転換の重要な分野における技術をさらに前進させるために、様々な理論が提供される。本明細書に記載されたこれらの理論は、明示的に別段の記載がない限り、請求項に係る発明に与えられる保護の範囲を決して限定、制限、狭めるものではない。これらの理論は、本発明を利用するために必要とされるものでも、実施されるものでもない。さらに、本発明は、本発明に係る方法、物品、材料、装置およびシステムの実施形態の導電性、破砕、排水、資源生産、化学的性質、および機能的特徴を説明するための新たな、これまで知られていなかった理論を導く可能性があり、そのような後に開発された理論は、本発明に与えられる保護の範囲を制限するものではないことが理解される。
【0164】
本明細書に記載される装置、システム、工程、方法、および操作の様々な実施形態は、図の実施形態および本明細書に開示される実施形態に加えて、様々な工程、産業、および操作と共に、それらにおいて、またはそれらによって使用され得る。本明細書に記載の装置、システム、方法、工程、および動作の様々な実施形態は、将来開発される可能性のある他のプロセス産業および動作、本明細書の教示に基づいて部分的に変更される可能性のある既存のプロセス産業および動作、ならびに他のタイプのガス回収および価値化システムおよび方法と共に使用される可能性がある。さらに、本明細書に記載された装置、システム、工程、方法および操作の様々な実施形態は、異なる様々な組み合わせで互いに使用することができる。したがって、例えば、本明細書の様々な実施形態で提供される構成は、互いに使用することができる。例えば、A、A’およびBを有する実施形態の構成要素と、A’’、CおよびDを有する実施形態の構成要素とは、本明細書の教示に従って、例えば、A、C、D、およびA、A’’、C、D、およびA’、Bなど、様々な組み合わせで互いに使用することができる。したがって、本発明に与えられる保護範囲は、特定の実施形態、実施例、または特定の図の実施形態に規定される特定の実施形態、構成、または配置に限定されるべきではない。
【0165】
本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく、本明細書に具体的に開示した以外の形態で具体化することができる。記載された実施形態は、すべての点で例示としてのみ考慮され、制限的なものではない。
図1
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図2A
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図4
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図9A
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図10A
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【国際調査報告】