(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】変性ビスマレイミドプレポリマー、樹脂組成物及び樹脂組成物の使用
(51)【国際特許分類】
C08G 73/06 20060101AFI20241022BHJP
C08L 79/04 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C08G73/06
C08L79/04 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542749
(86)(22)【出願日】2023-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 CN2023085349
(87)【国際公開番号】W WO2024077887
(87)【国際公開日】2024-04-18
(31)【優先権主張番号】202211240716.X
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211241857.3
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211241822.X
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523263175
【氏名又は名称】ションイー テクノロジー (スウジョウ) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENGYI TECHNOLOGY (SUZHOU) CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.288 XingLong St., Suzhou Industrial Park, Suzhou, Jiangsu 215000 CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】523263186
【氏名又は名称】ションイー テクノロジー (チャンシュウ) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENGYI TECHNOLOGY (CHANGSHU) CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.99 Xiangyuan Road, Changshu High Tech Industrial, Development Zone, Suzhou, Jiangsu 215000 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ツイ チュンメイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ フォン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ホイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン シァンシゥ
(72)【発明者】
【氏名】ディン ティエクァン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4J002AA013
4J002BH021
4J002CM002
4J002GQ00
4J043PA05
4J043QC01
4J043RA02
4J043SA05
4J043SB03
4J043TA73
4J043TB01
4J043XA03
4J043XA13
4J043ZB47
4J043ZB59
(57)【要約】
本発明は、変性ビスマレイミドプレポリマー、樹脂組成物及びその使用を提供し、変性ビスマレイミドは、プレポリマービスマレイミド化合物と、アミノ有機シリコーン樹脂Aと、アミノ有機シリコーン樹脂Bとを反応させて得られ、ここで、前記アミノ有機シリコーン樹脂Aのアミノ当量EaAが前記アミノ有機シリコーン樹脂Bのアミノ当量EaBと異なり、前記アミノ有機シリコーン樹脂A及び前記アミノ有機シリコーン樹脂Bの質量の和と前記ビスマレイミド化合物の質量との比が(5~80):100である。本発明はビスマレイミド化合物の反応性が改善され、変性ビスマレイミドプレポリマーをパッケージ基板等の基板材料分野に使用される時の、高温積層におけるレオロジー特性が制御される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマレイミド化合物と、アミノ有機シリコーン樹脂Aと、アミノ有機シリコーン樹脂Bとを反応させて得られ、前記アミノ有機シリコーン樹脂Aのアミノ当量Ea
Aが前記アミノ有機シリコーン樹脂Bのアミノ当量Ea
Bと異なり、前記アミノ有機シリコーン樹脂A及び前記アミノ有機シリコーン樹脂Bの質量の和と前記ビスマレイミド化合物の質量との比が(5~80):100であることを特徴とする、変性ビスマレイミドプレポリマー。
【請求項2】
前記アミノ有機シリコーン樹脂A及び前記アミノ有機シリコーン樹脂Bの質量の和と前記ビスマレイミド化合物の質量との比が(20~50):100であることを特徴とする、請求項1に記載の変性ビスマレイミドプレポリマー。
【請求項3】
前記アミノ有機シリコーン樹脂Aと前記アミノ有機シリコーン樹脂Bの質量比が1:(2~30)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の変性ビスマレイミドプレポリマー。
【請求項4】
前記アミノ有機シリコーン樹脂A及び前記アミノ有機シリコーン樹脂Bの両方にも以下の構造が含まれ、
【化1】
ただし、R及びR’はC1~C5のアルキル基であり、mは1~30の整数であることを特徴とする、請求項1に記載の変性ビスマレイミドプレポリマー。
【請求項5】
前記アミノ有機シリコーン樹脂A及び/又は前記アミノ有機シリコーン樹脂B中の側鎖が少なくとも1つのアミノ基を含有することを特徴とする、請求項1に記載の変性ビスマレイミドプレポリマー。
【請求項6】
前記アミノ有機シリコーン樹脂A及び/又は前記アミノ有機シリコーン樹脂B中の末端が少なくとも1つのアミノ基を含有することを特徴とする、請求項1に記載の変性ビスマレイミドプレポリマー。
【請求項7】
重量で、
(a)変性ビスマレイミドプレポリマー30~100部と、
(b)シアネート樹脂3~50部と、
(c)エラストマー5~60部と、
の組成成分を含み、前記変性ビスマレイミドプレポリマーは請求項1に記載の変性ビスマレイミドプレポリマーであることを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項8】
前記シアネート樹脂は、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールF型シアネート樹脂、ビスフェノールS型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、ビスフェノールM型シアネート樹脂、二重結合含有シアネート樹脂、リン含有シアネート樹脂、フェノール型シアネート樹脂、ビフェニル型シアネート樹脂、ナフタレン環型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂のうちの1つ又は複数から選ばれることを特徴とする、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記シアネート樹脂は以下の構造で示されるナフタレン型シアネート樹脂又は/及びフェノール型シアネート樹脂であり、
【化2】
ただし、R6は水素、メチル基又はエチル基であり、n
2は1~10の整数であり、
【化3】
ただし、Nは1~10の整数であることを特徴とする、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記エラストマーはスチレン系エラストマー、メタクリレート系エラストマー、有機シリコーン系エラストマーのうちの少なくとも1つから選ばれることを特徴とする、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
シランカップリング剤及び分散剤をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記シランカップリング剤はエポキシシランカップリング剤であり、前記分散剤はリン酸エステル系分散剤及び/又は変性ポリウレタン系分散剤であり、前記シランカップリング剤と分散剤の重量比が2:1~10:1であることを特徴とする、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
プリプレグ、積層板、絶縁薄膜、絶縁板、銅張板、回路基板及び電子デバイスのための、請求項7に記載の樹脂組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料の技術分野に関し、特に変性ビスマレイミドプレポリマー、変性ビスマレイミドプレポリマー含有の樹脂組成物及び樹脂組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器が小型化、高性能化の方向に発展し、プリント回路基板において配線密度の高度化、高集積化が進化し続けていることにより、銅張板の耐熱性及び信頼性に対してより高い要求が求められる。特に、半導体パッケージ基板において、パッケージ組立時にチップと有機基板との熱膨張率差により、反りの問題が発生する。
【0003】
ビスマレイミド樹脂硬化物は、耐高温、耐湿熱、高弾性率、低CTE、高強度等の優れた性能を有し、特にICパッケージ基板及び基板様PCBのマトリックス樹脂としての利用に適するが、脆性が高く、加工性能が低い等の欠点も存在することで、その大規模の使用が制限される。
【0004】
従来技術では、ビスマレイミド樹脂の硬化物に存在する上記問題を改善するために、ビスマレイミド樹脂にシリコーンゴム粉末を導入し、シリコーンゴム粉末の導入により、ビスマレイミド樹脂の硬化物の吸水率、靭性が一定改善されるが、シリコーンゴム粉末は密度が小さく、凝集しやすく、分散性が低く、ビスマレイミド樹脂接着剤液の上層に浮き、相分離を起こし、ビスマレイミド樹脂の硬化物に層間剥離等の問題をもたらす。それに加えて、ビスマレイミド樹脂に直接シリコーンオイルを加える従来技術もあるが、硬化物の積層において、シリコーンオイルが完全に反応しないと体系から非常に滲出しやすく、生産加工性に影響を及ぼし、しかも最終硬化物の総合的性能にひどく影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、変性ビスマレイミドプレポリマー、変性ビスマレイミドプレポリマー含有の樹脂組成物及び樹脂組成物の使用を提供することにあり、変性ビスマレイミドプレポリマーは、ビスマレイミド化合物と異なるアミノ当量のアミノ有機シリコーン樹脂との反応によって変性し、アミノ有機シリコーン樹脂とビスマレイミド化合物の質量を制御することで、ビスマレイミド樹脂の脆性が高いという問題が改善され、ビスマレイミド樹脂の反応性及び高温積層時の樹脂のレオロジー特性が効果的に制御され、さらに樹脂組成物の加工性能が改善される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記発明目的の1つを実現するために、本発明の一実施形態は、ビスマレイミド化合物と、アミノ有機シリコーン樹脂Aと、アミノ有機シリコーン樹脂Bとを反応させて得られ、前記アミノ有機シリコーン樹脂Aのアミノ当量EaAが前記アミノ有機シリコーン樹脂Bのアミノ当量EaBと異なり、前記アミノ有機シリコーン樹脂A及び前記アミノ有機シリコーン樹脂Bの質量の和と前記ビスマレイミド化合物の質量との比が(5~80):100である、変性ビスマレイミドプレポリマーを提供する。
【0007】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、前記アミノ有機シリコーン樹脂A及び前記アミノ有機シリコーン樹脂Bの質量の和と前記ビスマレイミド化合物の質量との比が(20~50):100である。
【0008】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、前記アミノ有機シリコーン樹脂Aと前記アミノ有機シリコーン樹脂Bの質量比が1:(2~30)である。
【0009】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、前記アミノ有機シリコーン樹脂A及び前記アミノ有機シリコーン樹脂Bの両方にも以下の構造が含まれる。
【0010】
【0011】
式中、R及びR’はC1~C5のアルキル基であり、mは1~30の整数である。
【0012】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、前記アミノ有機シリコーン樹脂A及び/又は前記アミノ有機シリコーン樹脂B中の側鎖が少なくとも1つのアミノ基を含有する。
【0013】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、前記アミノ有機シリコーン樹脂A及び/又は前記アミノ有機シリコーン樹脂B中の末端が少なくとも1つのアミノ基を含有する。
【0014】
本発明の一実施形態は、重量で、
(a)変性ビスマレイミドプレポリマー30~100部と、
(b)シアネート樹脂3~50部と、
(c)エラストマー5~60部と、
の組成成分を含み、前記変性ビスマレイミドプレポリマーは前述した変性ビスマレイミドプレポリマーである、樹脂組成物をさらに提供する。
【0015】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、前記シアネート樹脂は、ビスフェノールAシアネート樹脂、ビスフェノールFシアネート樹脂、ビスフェノールS型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、ビスフェノールM型シアネート樹脂、二重結合含有シアネート樹脂、リン含有シアネート樹脂、フェノール型シアネート樹脂、ビフェニル型シアネート樹脂、ナフタレン環型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂のうちの1つ又は複数から選択される。
【0016】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、前記シアネート樹脂は以下の構造で示されるナフタレン型シアネート樹脂又は/及びフェノール型シアネート樹脂である。
【0017】
【0018】
ただし、R6は水素、メチル基又はエチル基であり、n2は1~10の整数である。
【0019】
【0020】
ただし、nは1~10の整数である。
【0021】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、前記エラストマーはスチレン系エラストマー、メタクリレート系エラストマー、有機シリコーン系エラストマーのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0022】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、シランカップリング剤及び分散剤をさらに含む。
【0023】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、前記シランカップリング剤はエポキシシランカップリング剤であり、前記分散剤はリン酸エステル系分散剤及び/又は変性ポリウレタン系分散剤であり、前記シランカップリング剤と分散剤の重量比が2:1~10:1である。
【0024】
本発明の一実施形態は、プリプレグ、積層板、絶縁薄膜、絶縁板、銅張板、回路基板及び電子デバイスのための、上記に記載の樹脂組成物の使用をさらに提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明で提供される1つ又は複数の技術的解決手段は、少なくとも以下の技術効果又は利点を有する。
本発明で提供される変性ビスマレイミドプレポリマーは、ビスマレイミド化合物と異なるアミノ当量のアミノ有機シリコーン樹脂との反応によって、ビスマレイミド化合物の反応性及び脆性が改善され、また、アミノ有機シリコーン樹脂とビスマレイミド化合物の質量を制御することで、樹脂組成物のレオロジー反応ウィンドウが効果的に調節され、樹脂組成物の圧着において反応が速すぎるため基材にシワ又は白い模様という欠陥が発生するリスクが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例2及び比較例2のレオロジー曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下において具体的な実施形態と関連付けて本発明を詳細に説明するが、これらの実施形態は本発明を限定するものではなく、当業者がこれらの実施形態に基づいて行った反応条件、反応物又は原料使用量への変更はいずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
【0028】
本発明の実施例は、ビスマレイミド化合物と、アミノ有機シリコーン樹脂Aと、アミノ有機シリコーン樹脂Bとを反応させて得られ、アミノ有機シリコーン樹脂Aのアミノ当量EaAがアミノ有機シリコーン樹脂Bのアミノ当量EaBと異なり、アミノ有機シリコーン樹脂A及びアミノ有機シリコーン樹脂Bの質量の和とビスマレイミド化合物の質量との比が(5~80):100である、変性ビスマレイミドプレポリマーを提供する。
【0029】
好ましくは、アミノ有機シリコーン樹脂A及びアミノ有機シリコーン樹脂Bの質量の和とビスマレイミド化合物の質量との比が(20~50):100である。
【0030】
さらに、アミノ有機シリコーン樹脂Aとアミノ有機シリコーン樹脂Bの質量比が1:(2~30)である。
【0031】
ビスマレイミド化合物と、アミノ有機シリコーン樹脂Aと、アミノ有機シリコーン樹脂Bとの具体的な反応は以下のとおりである。
まずビスマレイミド化合物をアミノ有機シリコーン樹脂Aと60~90℃下で0.5~1.5時間反応させた後、温度を90~130℃に上昇させてからアミノ有機シリコーン樹脂Bを加えて反応を0.5~2時間続ける。
【0032】
好ましくは、反応中にアミノフェノール、カルボン酸又はカルボン酸無水物のうちの少なくとも1つを、0.1~10重量部の含有量で添加し、アミノフェノール、カルボン酸又はカルボン酸無水物中のフェノール性水酸基、カルボキシル基及び酸無水物基のいずれもビスマレイミド化合物と反応して、反応性を向上させることができる。
【0033】
さらに、アミノ有機シリコーン樹脂Aのアミノ当量EaAは100g/mol≦EaA≦500g/molであり、アミノ有機シリコーン樹脂Bのアミノ当量EaBのアミノ当量は500g/mol<EaB≦1600g/molである。
【0034】
好ましくは、有機シリコーン樹脂Aと有機シリコーン樹脂Bのアミノ当量の差の絶対値が100g/mol~600g/molである。
【0035】
アミノ有機シリコーン樹脂A及びアミノ有機シリコーン樹脂Bの両方にも以下の構造が含まれる。
【0036】
【0037】
式中、R及びR’はC1~C5のアルキル基であり、mは1~30の整数である。
【0038】
さらに、アミノ有機シリコーン樹脂A及び/又はアミノ有機シリコーン樹脂B中の側鎖において少なくとも1つのアミノ基が含有される。
【0039】
さらに、アミノ有機シリコーン樹脂A及び/又はアミノ有機シリコーン樹脂B中の末端が少なくとも1つのアミノ基を含有する。
【0040】
さらに、前述のビスマレイミド化合物は以下の構造のうちの少なくとも1つから選ばれてもよい。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
ただし、R2は水素、メチル基又はエチル基であり、R1はメチレン基、又はエチレン基であり、nは1~10の整数である。
【0046】
【0047】
【0048】
ただし、nは1~10の整数である。
【0049】
【0050】
ただし、nは1~10の整数である。
【0051】
【0052】
ただし、nは1~10の整数である。
【0053】
【0054】
【0055】
ただし、Rは水素、メチル基又はエチル基であり、nは1~10の整数である。
【0056】
本発明は、重量で、
(a)変性ビスマレイミドプレポリマー30~100部と、
(b)シアネート樹脂3~50部と、
(c)エラストマー5~60部と、
の組成成分を含み、変性ビスマレイミドプレポリマーは前述した変性ビスマレイミドプレポリマーである、樹脂組成物をさらに提供する。
【0057】
さらに、シアネート樹脂は、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールF型シアネート樹脂、ビスフェノールS型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、ビスフェノールM型シアネート樹脂、二重結合含有シアネート樹脂、リン含有シアネート樹脂、フェノール型シアネート樹脂、ビフェニル型シアネート樹脂、ナフタレン環型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂のうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0058】
好ましくは、シアネート樹脂は以下の構造で示されるナフタレン環型シアネート樹脂又は/及びフェノール型シアネート樹脂である。
【0059】
【0060】
ただし、R6は水素、メチル基又はエチル基であり、n2は1~10の整数である。
【0061】
【0062】
ただし、nは1~10の整数である。
【0063】
さらに、エラストマーは、スチレン系エラストマー、メタクリレート系エラストマー、有機シリコーン系エラストマーのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0064】
そのうち、スチレン系エラストマーは、日本旭化成社のH1041、H1043、H1051、H1052、H1053、H1221、P1500、P2000、M1911又はM1913、クラレ社の8004、8006、8076、8104、V9827、2002、2005、2006、2007、2104、7125、4033、4044、4055、4077又は4099から選ばれる。
【0065】
メタクリレート類は、アルケマ社のM51、M52、M22又はD51N、クラレ社のLA-2330、長瀬社のSG-P3シリーズ又はSG-80シリーズから選ばれる。
【0066】
有機シリコーン系エラストマーは、信越化学社のX-40-2670、R-170S、X-40-2705、X-40-2701、KMP-600、KMP-605、X-52-7030、DOW社のAY-42-119、EP-2600、EP-2601、EP-2720、TMS-2670、EXL-2315、EXL-2655等から選ばれる。
【0067】
さらに、樹脂組成物は0.01~5重量部の触媒をさらに含み、該触媒はイミダゾール系触媒、ピリジン系触媒、有機金属塩系触媒のうちの少なくとも1つである。好ましくは、触媒は4-ジメチルアミノピリジン、2-メチルイミダゾール、2-メチル4-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、変性イミダゾール及びカプリル酸亜鉛のうちの少なくとも1つである。
【0068】
前記変性イミダゾールは以下の構造で示されるとおりである。
【0069】
【0070】
式中、R3、R4、R5及びR6は同じ又は異なり、それぞれメチル基、エチル基又はtert-ブチル基であり、Bはメチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基、スルフィド基又はスルホニル基であり、JER製のP200F50を用いることができる。
【0071】
【0072】
式中、R3、R4、R5及びR6は同じ又は異なり、それぞれメチル基、エチル基又はtert-ブチル基であり、Aはメチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基、スルフィド基、スルホニル基又は芳香族炭素水素基であり、第一工業製のG8009Lを用いることができる。
【0073】
さらに、樹脂組成物には20~200重量部のフィラーがさらに含まれる。フィラーは、無機フィラー、有機フィラー、複合フィラーを含む。そのうち、無機フィラーは、溶融シリカ、結晶質シリカ、球状シリカ、中空シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、滑石粉、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、雲母、ガラス繊維粉末のうちの少なくとも1つから選ばれる。有機フィラーは、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリフェニレンサルファイド粉末、ポリエーテルスルホン粉末のうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0074】
好ましくは、フィラーは、球状シリカ、酸化アルミニウム又は水酸化アルミニウムであり、より好ましくは球状シリカである。
【0075】
好ましくは、フィラーの含有量が30~150重量部である。
【0076】
さらに、フィラーはシランカップリング剤で表面処理され、シランカップリング剤は、アミノシランカップリング剤、炭素-炭素二重結合含有シランカップリング剤又はエポキシシランカップリング剤のうちの少なくとも1つである。好ましくは、シランカップリング剤は、信越化学社製の品番KBM-573、ダウコーニング社製のZ-6883、信越化学社製の品番KBM-1003、信越化学社製の品番KBM-1403のうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0077】
さらに、樹脂組成物にはシランカップリング剤及び分散剤がさらに含まれ、シランカップリング剤はエポキシシランカップリング剤であり、分散剤はリン酸エステル類又は/及び変性ポリウレタン類であり、且つシランカップリング剤と分散剤の重量比が2:1~10:1である。
【0078】
さらに、樹脂組成物には、樹脂組成物を100重量部として、5~50重量部の難燃剤がさらに含まれ、難燃剤は、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、有機シリコーン難燃剤、有機金属塩難燃剤等から選ばれる。
【0079】
好ましくは、難燃剤は、日本大塚化学社製の品番SPB-100のホスファゼン、品番BP-PZ、PP-PZ、SPCN-100、SPV-100及びSPB-100Lの変性ホスファゼンから選ばれる。
【0080】
さらに、樹脂組成物には染料がさらに添加されてもよく、蛍光染料又は黒色染料を選択してもよく、蛍光染料は具体的にピラゾリン系化合物を選択してもよく、黒色染料は具体的に液体又は粉末状のカーボンブラック、ピリジン錯体、アゾ錯体、キノン系化合物、窒化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタン、黒色の滑石粉、コバルトクロムクロム金属酸化物、アジン又はフタロシアニン等を選択してもよい。
【0081】
本発明は、プリプレグ、積層板、絶縁薄膜、絶縁板、回路基板及び電子デバイスのための、上記樹脂組成物の使用をさらに提供し、具体的な説明は以下のとおりである。
【0082】
本発明は、補強材及び前述の樹脂組成物を含むプリプレグをさらに提供し、プリプレグの製造方法は、樹脂組成物を溶媒で接着剤液として溶解させ、続いて補強材を上記接着剤液中に浸漬し、浸漬後の補強材を取り出して100~180℃の環境下で1~15minベーキングし、乾燥させるとプリプレグが得られる。
【0083】
ここで、溶媒は、アセトン、ブタノン、トルエン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0084】
補強材は、天然繊維、有機合成繊維、有機織物、無機織物のうちの少なくとも1つから選ばれる。好ましくは、補強材にガラス繊維布を用いる。ガラス繊維布のうち、オープンフィラメント繊維布又は平織り繊維布を用いることが好ましい。ガラス繊維布はEガラス繊維布、Sガラス繊維布又はQガラス繊維布が好ましい。
【0085】
また、補強材にガラス繊維布を用いる場合、ガラス繊維布は、樹脂組成物とガラス繊維布の界面結合を改善するために、カップリング剤で化学処理される。カップリング剤は、高い耐水性及び耐熱性を提供するために、エポキシシランカップリング剤又はアミノシランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0086】
本発明の実施例は、1つの前述のプリプレグと、プリプレグの少なくとも一側の表面に設けられた金属箔とを含むか、又は複数の前述のプリプレグを互いに重ねてなる組み合わせシートと、組み合わせシートの少なくとも一側の表面に設けられた金属箔とを含む積層板をさらに提供する。
【0087】
積層板は以下の方法で製造される。1つのプリプレグの一側又は両側の表面に金属箔を被覆するか、又は少なくとも2つのプリプレグを組み合わせシートとして積み重ね、組み合わせシートの一側又は両側の表面に金属箔を被覆し、熱圧成形によって金属箔積層板を得る。熱圧の加圧条件は、0.2~2MPa、150~250℃下で2~4時間加圧する。
【0088】
好ましくは、金属箔が銅箔又はアルミニウム箔から選ばれる。金属箔の厚さは5ミクロン、8ミクロン、12ミクロン、18ミクロン、35ミクロン又は70ミクロンである。
【0089】
本発明の実施例は、少なくとも1つの前述のプリプレグを含む絶縁板をさらに提供する。
【0090】
本発明の実施例は、キャリアフィルムとその上に塗布された前述の樹脂組成物とを含み、熱指数が著しく向上した絶縁薄膜をさらに提供する。
【0091】
絶縁薄膜は以下の方法で製造される。前述の樹脂組成物を溶媒で接着剤液として溶解させ、続いてキャリアフィルム上に該接着剤液を塗布し、接着剤液を塗布したキャリアフィルムを加熱して乾燥させると、絶縁薄膜が得られる。
【0092】
前述した溶媒は、アセトン、ブタノン、トルエン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0093】
キャリアフィルムは、PETフィルム、PPフィルム、PEフィルム、PVCフィルムのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0094】
本発明の実施例は、前述したプリプレグ、積層板、絶縁板、絶縁薄膜のうちの1つ又は複数を含む回路基板をさらに提供する。
【0095】
本発明の実施例は、前述の回路基板を含む電子デバイスをさらに提供し、回路基板の耐熱性が大幅に向上したため、電子デバイスの安全性が著しく向上する。
【0096】
以下において幾つかの具体的な合成例及び比較例と関連付けて、本出願の技術的解決手段をさらに説明する。
【0097】
合成例1 変性ビスマレイミドプレポリマーY1
ビーカーに100gのビスマレイミド樹脂(大和化学社製、BMI-2300)、10gのアミノ有機シリコーン樹脂A(アミノ当量450g/mol、DOWSILTM BY 16-853)及び適量の有機溶媒を加え、80℃下で60min反応させ、100℃まで昇温させてさらに25gのアミノ有機シリコーン樹脂B(アミノ当量800g/mol、信越化学社製X-22-161A)を加え、反応を90min続け、排出して変性ビスマレイミドプレポリマーY1を得る。
【0098】
合成例2 変性ビスマレイミドプレポリマーY2
ビーカーに100gのビスマレイミド樹脂(日本化薬社製、MIR-3000)、5gのアミノ有機シリコーン樹脂A(アミノ当量430g/mol、信越化学社製KF-8010)及び適量の有機溶媒を加え、80℃下で60min反応させ、100℃まで昇温させてさらに30gのアミノ有機シリコーン樹脂B(アミノ当量800g/mol、信越化学社製X-22-161A)を加え、反応を90min続け、排出して変性ビスマレイミドプレポリマーY2を得る。
【0099】
合成例3 変性ビスマレイミドプレポリマーY3
ビーカーに100gのビスマレイミド樹脂(大和化学社製、BMI-2300)、10gのアミノ有機シリコーン樹脂A(アミノ当量450g/mol、DOWSILTM BY 16-853)、1gのアミノフェノール及び適量の有機溶媒を加え、80℃下で60min反応させ、100℃まで昇温させてさらに25gのアミノ有機シリコーン樹脂B(アミノ当量800g/mol、信越化学社製X-22-161A)を加え、反応を90min続け、排出して変性ビスマレイミドプレポリマーY3を得る。
【0100】
合成例4 変性ビスマレイミドプレポリマーY4
ビーカーに100gのビスマレイミド樹脂(日本化薬社製、BMI-2300)、10gのアミノ有機シリコーン樹脂A(アミノ当量430g/mol、信越化学社製KF-8010)、1gのアミノフェノール及び適量の有機溶媒を加え、80℃下で60min反応させ、100℃まで昇温させてさらに25gのアミノ有機シリコーン樹脂B(アミノ当量1500g/mol、信越化学社製X-22-161B)を加え、反応を100min続け、排出して変性ビスマレイミドプレポリマーY4を得る。
【0101】
合成比較例1 変性ビスマレイミドプレポリマーY5
ビーカーに100gのビスマレイミド樹脂(大和化成社製、BMI-2300)、35gのアミノ有機シリコーン樹脂A(アミノ当量450g/mol、DOWSILTM BY 16-853)及び適量の有機溶媒を加え、100℃下で120min反応させ、排出して変性ビスマレイミドプレポリマーY5を得る。
【0102】
合成比較例2 変性ビスマレイミドプレポリマーY6
ビーカーに100gのビスマレイミド樹脂(日本化薬社製、MIR-3000)、35gのアミノ有機シリコーン樹脂B(アミノ当量800g/mol、信越化学社製X-22-161A)、1gのアミノフェノール及び適量の有機溶媒を加え、100℃下で120min反応させ、排出して変性ビスマレイミドプレポリマーY6を得る。
【0103】
表1中のデータに従って対応する固形物を秤量し、秤量した各固形物を、接着剤液の固形物含有量が60%になるように溶媒で調整し、接着剤液をEガラス繊維布上に塗布し、浸潤した後に160℃の送風乾燥オーブン内に放置し、3~6minベーキングし、プリプレグに製造する。
【0104】
プリプレグを300×300mmにカットし、プリプレグの両側にそれぞれ1つの電解銅箔を配置し、一定の積み重ね構造として積み重ね、真空プレスに送入して圧着させて金属箔積層板(又は銅張積層板)を得る。具体的な性能検出は表2に示すとおりである。
【0105】
【0106】
【0107】
上記全ての実施例1~5及び比較例1~2で製造されたプリプレグ及び銅張積層板に対して性能試験を行う。
【0108】
1)ガラス転移温度はDMA(熱機械分析)を採用し、升温速度は10℃/minとする。
2)PCT 2HR吸水率測定は、10cm×10cmで、厚さ0.40mmで、両面の金属箔を除去したサンプルを3つ採取し、100℃で2時間乾燥させ、重量を量り、W1とし、続いてプレッシャークッカー試験(Pressure Cooker test)機内で、121℃、2気圧にて2時間処理し、重量を量り、W2とし、吸水率を(W2-W1)/W1×100%として測定する。
3)X/Y熱膨張係数(CTE)測定は、TMA(熱機械分析)を採用し、昇温速度は10℃/minとし、試験温度範囲は30~100℃とする。
4)外観上の二次的な欠陥は、IPC-TM-650に規定される標準方法で試験し、目視又はスライス方法で基材におけるシワ、白い模様等の欠陥の有無を判断する。
【0109】
上記実験データから分かるように、実施例1~3は、高Tg、低吸水率、低CTE値及び高い外観品質という優れた性能を有し、そのうち、実施例1は比較例1に比べ、より高いTg値及び低いCTEを有し、実施例2は比較例2に比べ、より高いTg値、より低いCTEを有する。
【0110】
また、
図1における比較例2及び実施例2のレオロジー曲線から、実施例2のレオロジーウィンドウがより広く、最低溶融粘度がより低いことが分かり、これは、樹脂の反応が遅く、プロセス性の制御に寄与することを示している。
【0111】
なお、本明細書は実施形態で説明をしたが、各実施形態は1つのみの独立した技術的解決手段を含むわけではなく、明細書のこのような記述方式は単なる明確化のためのものに過ぎず、当業者であれば明細書を1つの全体と見なすべきであり、各実施形態における技術的解決手段も適宜組み合わせて、当業者が理解し得る他の実施形態を形成することができることを、理解すべきである。
【0112】
上記した一連の詳細な説明は単に本発明の実現可能な実施形態についての具体的な説明に過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではなく、本発明の技術精神から逸脱しない同等の実施形態又は変更は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【国際調査報告】