IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フォトニス フランスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ディスプレイ一体型暗視装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 31/50 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H01J31/50 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513096
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 FR2022052052
(87)【国際公開番号】W WO2023073329
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】2111564
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510165507
【氏名又は名称】フォトニス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピエール-イヴ・ボニー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ジョフロワ・デルテル
(72)【発明者】
【氏名】アーレント・ヒデマ
(57)【要約】
本願発明は暗視装置に関連し、暗視装置は、双眼鏡ボディ(100)と、双眼鏡ボディ内において、光軸に沿って取り付けられた対物レンズ(110)と、双眼鏡ボディ内において、光軸に沿って取り付けられた光増幅管(190)と、双眼鏡ボディ内において、光軸に沿って取り付けられたライトガイド(130)と、双眼鏡ボディ内において、光軸に沿って取り付けられた接眼レンズ(140)と、を備え、光増幅管(190)は、フォトカソード(121)と、マイクロチャネルウエハ(122)と、暗視イメージを提供する蛍光面(120)と、蛍光面に隣接する入口側および接眼レンズの焦点面にイメージを形成する出力側を有するライトガイド(130)と、を備える。光増幅管は、更に、発光素子を備えたガラスの薄板または薄膜の形態であるディスプレイ(260)と、ライトガイドの出力側上に直接位置する薄板または薄膜と、を備える。電源兼制御モジュール(250)は、ライトガイドの周辺部において光増幅管の内部に収容されており、光増幅管の様々なエレメントの各バイアス電圧を供給し、ディスプレイの発光素子のルミネセンスを制御している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗視装置であって、
前記暗視装置は、
双眼鏡ボディ(100)と、
前記双眼鏡ボディ内において、光軸に沿って取り付けられた対物レンズ(110)と、
前記双眼鏡ボディ内において、前記光軸に沿って取り付けられた光増幅管(190)と、
前記双眼鏡ボディ内において、前記光軸に沿って取り付けられた接眼レンズ(140)と、を備え、
前記光増幅管(190)は、
前記対物レンズを横切った光を受光し、受光した光子を光電子に変換するフォトカソード(121)と、
二次電子を生成することにより、前記フォトカソードから受け取った前記光電子を増幅するマイクロチャネルウエハ(122)と、
蛍光面に衝突する前記二次電子に基づいて暗視イメージを提供する蛍光面(123)と、
前記蛍光面に隣接する入口側および前記接眼レンズの焦点面にイメージを形成する出力側を有するライトガイド(130)と、を備え、
前記光増幅管は、更に、発光素子を備えたガラスの薄板または薄膜の形態であるディスプレイ(260)、を備え、前記薄板または薄膜は、前記ライトガイドの前記出力側上に直接位置し、
前記光増幅管は、更に、前記フォトカソード、前記光増幅管、前記蛍光面の各バイアス電圧を供給し、前記ディスプレイの前記発光素子を制御するため、前記ライトガイドの周辺部において前記光増幅管の内部に位置している電源兼制御モジュール(250)を備える、暗視装置。
【請求項2】
前記ライトガイドは、ガラスブロックまたはお互い接合されている光ファイバの束によって形成されている、請求項1に記載の暗視装置。
【請求項3】
前記ディスプレイは、前記出力側の少なくとも一部上に平面状または平面化された膜の堆積によって形成されており、
前記堆積は原子層堆積技術によって行われている、請求項1または2に記載の暗視装置。
【請求項4】
前記薄膜は、
第1誘電体層と、
発光膜と、
第2誘電体層と、を備え、
前記第1誘電体層と、前記発光膜と、前記第2誘電体層と、によって形成されているアセンブリは、列に位置している電極の第1アレイと、前記第1アレイに直交し行に構成されている透明電極の第2アレイと、の間に挟まれている、請求項3に記載の暗視装置。
【請求項5】
前記発光素子はセグメントの形態で存在している、請求項2に記載の暗視装置。
【請求項6】
前記ディスプレイは、前記出力側の少なくとも一部上に、ガラス板を接合することによって形成されており、
蛍光セグメントは、前記薄板上に堆積されており、導電性トラックによって個別にアドレス可能である、請求項5に記載の暗視装置。
【請求項7】
前記電源兼制御モジュールは2つの異なるユニット(351、352)の形態で存在しており、
第1ユニット(351)は、前記フォトカソードと、前記マイクロチャネルウエハと、前記蛍光面と、のそれぞれの高バイアス電圧を供給する機能を有し、
第2ユニット(352)は、前記ディスプレイを制御する機能を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の暗視装置。
【請求項8】
バスによって前記第2ユニット(352)に結合されているコミュニケーションモジュール(370)を更に備え、
前記コミュニケーションモジュールは無線通信インターフェースを備え、前記バスを介して前記第2ユニットへ、表示されるべき情報を伝達しており、
前記第1ユニットは、表示されるべき前記発光素子の輝度を制御するための信号(D)を、前記第2ユニットへと伝達している、請求項7に記載の暗視装置。
【請求項9】
前記第1ユニットおよび前記第2ユニットに対して低電圧を供給している電源モジュール(350)を更に備え、
前記第1ユニットは、前記低電圧に基づいて前記高バイアス電圧を生成するための電圧増幅装置を備える、請求項8に記載の暗視装置。
【請求項10】
前記第1ユニットは前記蛍光面のアノード電流を測定し、前記第2ユニットに対してこの測定値を供給しており、
前記第2ユニットは、前記発光素子にバイアスをかけるための前記信号の電圧および/またはデューティサイクルを制御しており、
前記第2ユニットは、暗視イメージの輝度に対する表示されたエレメントの輝度の割合を、所定の値の範囲内のレベルに制限している、請求項9に記載の暗視装置。
【請求項11】
前記第2ユニットは、前記発光素子にバイアスをかけるための前記信号の電圧および/またはデューティサイクルを制御しており、発光素子の輝度が連続したステージにおいて変化するようにし、
前記発光素子の輝度の変化は、夜間イメージの輝度が増加または減少する際に、夜間イメージの輝度の変化に遅れて追従している、請求項10に記載の暗視装置。
【請求項12】
前記第2ユニットは、前記発光素子にバイアスをかけるための前記信号の電圧および/またはデューティサイクルを制御しており、発光素子の輝度が再帰型ローパスフィルタによってフィルタリングされた前記アノード電流に比例している、請求項10に記載の暗視装置。
【請求項13】
前記電源兼制御モジュールは一体型ユニット(351、352)の形態で存在しており、
前記電源兼制御モジュールは、
一方では、前記フォトカソードと、前記マイクロチャネルウエハと、前記蛍光面と、のそれぞれの高電圧を供給しており、
他方では、前記ディスプレイを制御している、請求項1から6のいずれか一項に記載の暗視装置。
【請求項14】
前記一体型ユニットは、前記発光素子にバイアスをかけるための信号の電圧および/またはデューティサイクルを制御するように適用されており、
発光素子の輝度は、再帰型ローパスフィルタによってフィルタリングされたアノード電流に比例している、請求項13に記載の暗視装置。
【請求項15】
暗視装置を改造するための交換用光増幅管であって、
前記暗視装置は、
双眼鏡ボディ(100)と、
前記双眼鏡ボディ内において、光軸に沿って取り付けられた対物レンズ(110)と、
前記双眼鏡ボディ内において、前記光軸に沿って取り付けられた光増幅管(190)と、
前記双眼鏡ボディ内において、前記光軸に沿って取り付けられた接眼レンズ(140)と、を備え、
前記交換用光増幅管は、前記光増幅管の交換用であり、
前記交換用光増幅管は、
前記対物レンズを横切った光を受光し、受光した光子を光電子に変換するフォトカソード(121)と、
二次電子を生成することにより、前記フォトカソードから受け取った前記光電子を増幅するマイクロチャネルウエハ(122)と、
蛍光面に衝突する前記二次電子に基づいて暗視イメージを提供する蛍光面(123)と、
前記蛍光面に隣接する入口側および前記接眼レンズの焦点面にイメージを形成する出力側を有するライトガイド(130)と、
発光素子を備えたガラスの薄板または薄膜の形態であるディスプレイ(260)と、を備え、
前記薄板または薄膜は、交換用ライトガイドの出力側上に直接位置し、
前記交換用光増幅管は、更に、前記ライトガイドの周辺部において前記光増幅管の内部に収容されている電源兼制御モジュール(250)を備え、
前記電源兼制御モジュールは、前記フォトカソード、前記光増幅管、前記蛍光面の各バイアス電圧を供給し、前記ディスプレイの前記発光素子を制御している、交換用光増幅管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、概して、光増幅管(light intensifier tube)(イメージインテンシファイア(image intensifier)とも呼ばれる)を用いた暗視装置(night vision device)の分野に関する。これは、特に暗視双眼鏡(night vision binoculars、NVB)に適用される。
【背景技術】
【0002】
暗視装置は、一般的に、敵性市民または軍事環境における低輝度、さらに言えば暗闇の作戦地域において使用される。これらの暗視装置は可視および近赤外スペクトル領域において作動する。
【0003】
図1は従来の暗視装置の模式図である。
【0004】
この暗視装置は双眼鏡ボディ100から構成されている。双眼鏡ボディ内には、光軸に沿って、対物レンズ110、光増幅管190、接眼レンズ140が取り付けられている。光増幅管190は、対物レンズを横切った光を受光し、受光した光子を光電子に変換するフォトカソード(photocathode)121と、光電子から二次電子を生成することにより電子増倍管としての役割を果たすマイクロチャネルウエハまたはMCP(Microchannel Plate)122と、アノードに結合され、二次電子の束(flux)を光束に変換する蛍光面123と、を備える。
【0005】
出力ライトガイド130は、一般的にガラスブロックまたは蛍光面に隣接(contiguous)する光ファイバの束によって形成されており、接眼レンズ140の焦点面においてイメージを形成することを目的としている。最終的に、電源モジュール150が、光増幅管を形成する様々なエレメント(element)にバイアス(bias)をかけるための電源電圧を供給している。この電源モジュールは、当該管(tube)の外部に配置されているバッテリに結合されている。
【0006】
一般的に、ユーザは増幅されたイメージの観察に完全に集中しているため、複数の端末に注意を分散させ、ミッションのガイドや補助になりそうな追加情報(GPSデータ、行程ガイド、コンパス、アラートなど)を利用することは困難である。
【0007】
この状況に対処するため、米国特許第11054629号明細書において、従来の暗視装置にマイクロディスプレイを組み込むことが開示されている。このマイクロディスプレイは、光増幅管の下流側および接眼レンズの上流側において、管の光軸に直交するように配置されている。データ表示のイメージは、管の光軸上において45°傾いたガラス板(またはプリズム)上に投影されている。投影されたイメージは光増幅管から受け取ったイメージと合成され、装置のユーザは接眼レンズを通じて2つの画像の組み合わせを認識する。
【0008】
このアセンブリは、データ表示のイメージと光増幅管のイメージとを同一の装置内で効率的に結合することができる一方、単に既存の暗視装置に後付けするだけでは得ることができない。更に、管の出口におけるディスプレイの配置は機械的に安定していない。最終的に、装置内で管の軸に直交して配置されているマイクロディスプレイの存在は、そのバルク(bulk)により射出瞳の表面積を減少させ、したがって、接眼レンズを通じたイメージスクリーンのサイズを減少させている。
【0009】
更に、光増幅管の出口における輝度が低い場合、暗視装置のユーザはデータスクリーン上のディスプレイによって目がくらむかもしれない。したがって、ディスプレイの輝度と増幅管の輝度とのバランスをとる必要がある。
【0010】
したがって、本願発明の1つの目的は、特に、接眼レンズと対物レンズとの焦点距離を変更することなく、その性能を変更することなく、特に増幅されたイメージのサイズを減少させることなく、単純に後付けのディスプレイを備えることによって、先行技術のような制約のない暗視装置を提供することである。本願発明の2つ目の目的は、暗視イメージとディスプレイによって提供されるイメージとの間のコントラスト水準を良好に保つ、このようなディスプレイ一体型暗視装置を提供することである。最後に、本願発明の他の目的は、従来の暗視装置をディスプレイ一体型暗視装置に改造することができるように、従来の暗視装置に後付けすることが可能な交換用光増幅管を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第11054629号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0223268号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、暗視装置であって、
暗視装置は双眼鏡ボディを備え、
双眼鏡ボディ内には、光軸に沿って、
対物レンズと、
光増幅管と、
接眼レンズと、が取り付けられ、
光増幅管は、
対物レンズを横切った光を受光し、受光した光子を光電子に変換するフォトカソードと、
二次電子を生成することにより、フォトカソードから受け取った光電子を増幅するマイクロチャネルウエハと、
蛍光面に衝突する二次電子に基づいて暗視イメージを提供する蛍光面と、
蛍光面に隣接する入口側および接眼レンズの焦点面にイメージを形成する出力側を有するライトガイドと、を備える、暗視装置によって定められ、
暗視装置は、
光増幅管が更に、
発光素子を備えたガラスの薄板または薄膜の形態であるディスプレイ(薄板または薄膜は、ライトガイドの出力側上に直接位置している)と、
フォトカソード、光増幅管、蛍光面の各バイアス電圧を供給し、ディスプレイの発光素子を制御するため、ライトガイドの周辺部において光増幅管の内部に収容されている電源兼制御モジュールと、を備えることを特徴とする。
【0013】
ライトガイドはガラスブロックまたはお互い接合されている光ファイバの束によって形成されてもよい。
【0014】
第1実施形態によると、ディスプレイは出力側の少なくとも一部上に、平面状または平面化された膜の堆積によって形成されており、堆積は原子層堆積(atomic layer deposition、ALD)技術によって行われている。
【0015】
薄膜は、有利には、
第1誘電体層と、
発光膜と、
第2誘電体層と、を備え、
第1誘電体層と、発光膜と、第2誘電体層と、によって形成されているアセンブリは、列に位置している電極の第1アレイと、第1アレイに直交し行に構成されている透明電極の第2アレイと、の間に挟まれている。
【0016】
発光素子は典型的にはセグメントの形態で存在していてもよい。
【0017】
第2実施形態によると、ディスプレイは、出力側の少なくとも一部上に、ガラス板を接合することによって形成されており、
蛍光セグメントは、薄板上に堆積されており、導電性トラックによって個別にアドレス可能である。
【0018】
いずれの実施形態であっても、第1変形形態によると、
電源兼制御モジュールは2つの異なるユニットの形態で存在しており、
第1ユニットは、フォトカソードと、マイクロチャネルウエハと、蛍光面と、のそれぞれの高バイアス電圧を供給する機能を有し、
第2ユニットは、ディスプレイを制御する機能を有する。
【0019】
暗視装置は、更に、バスによって第2ユニットに結合されているコミュニケーションモジュールを備え、
コミュニケーションモジュールは無線通信インターフェースを備え、バスを介して第2ユニットへ、表示されるべき情報を伝達しており、
第1ユニットは、表示されるべき発光素子の輝度を制御するための信号(D)を、第2ユニットへと伝達している。
【0020】
第1変形形態において、暗視装置は、更に、第1ユニットおよび第2ユニットに対して低電圧を供給している電源モジュールを備えてもよく、
第1ユニットは、低電圧に基づいて高バイアス電圧を生成するための電圧増幅装置を備えてもよい。
【0021】
この場合、第1ユニットは蛍光面のアノード電流を測定し、第2ユニットに対してこの測定値を供給しており、
第2ユニットは、発光素子にバイアスをかけるための信号の電圧および/またはデューティサイクルを制御しており、
第2ユニットは、暗視イメージの輝度に対する表示されたエレメントの輝度の割合を、所定の値の範囲内のレベルに制限している。
【0022】
第2ユニットは、有利には、発光素子にバイアスをかけるための信号の電圧および/またはデューティサイクルを制御しており、その輝度が連続したステージにおいて変化するようにし、
発光素子の輝度の変化は、夜間イメージの輝度が増加または減少する際に、夜間イメージの輝度の変化に遅れて追従している。
【0023】
第2ユニットは、発光素子にバイアスをかけるための信号の電圧および/またはデューティサイクルを制御してもよく、その輝度が再帰型ローパスフィルタによってフィルタリングされたアノード電流に比例してもよい。
【0024】
前述のいずれの実施形態であっても、第2変形形態において、電源兼制御モジュールは一体型ユニットの形態で存在しており、
電源兼制御モジュールは、
一方では、フォトカソードと、マイクロチャネルウエハと、蛍光面と、のそれぞれの高電圧を供給しており、
他方では、ディスプレイを制御している。
【0025】
この場合、一体型ユニットは、発光素子にバイアスをかけるための信号の電圧および/またはデューティサイクルを制御するように適用されており、
その輝度は、再帰型ローパスフィルタによってフィルタリングされたアノード電流に比例している。
【0026】
本願発明は、更に、交換用光増幅管に関連しており、交換用光増幅管は暗視装置を改造することを目的としており、
暗視装置は、
双眼鏡ボディと、
双眼鏡ボディ内において、光軸に沿って取り付けられた対物レンズと、
双眼鏡ボディ内において、光軸に沿って取り付けられた光増幅管と、
双眼鏡ボディ内において、光軸に沿って取り付けられた接眼レンズと、を備え、
交換用光増幅管は、光増幅管の交換用であり、
交換用光増幅管は、
対物レンズを横切った光を受光し、受光した光子を光電子に変換するフォトカソードと、
二次電子を生成することにより、フォトカソードから受け取った光電子を増幅するマイクロチャネルウエハと、
蛍光面に衝突する二次電子に基づいて暗視イメージを提供する蛍光面と、
蛍光面に隣接する入口側および接眼レンズの焦点面にイメージを形成する出力側を有するライトガイドと、
発光素子を備えたガラスの薄板または薄膜の形態であるディスプレイと、
交換用ライトガイドの出力側上に直接位置されている薄板または薄膜と、を備え、
交換用光増幅管は、更に、ライトガイドの周辺部において管ボディの内部に収容されている電源兼制御モジュールを備え、
電源兼制御モジュールは、フォトカソード、光増幅管、蛍光面の各バイアス電圧を供給し、ディスプレイの発光素子を制御している。
【0027】
本願発明の他の特徴および利点は、添付図面との関連において、本願発明の好ましい実施形態を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】先行技術の既知である暗視装置の模式図である。
図2A】本願発明の実施形態に係る暗視装置の構造的な変形形態の模式図である。
図2B】本願発明の実施形態に係る暗視装置の構造的な変形形態の模式図である。
図2C】本願発明の実施形態に係る暗視装置の構造的な変形形態の模式図である。
図2D】本願発明の実施形態に係る暗視装置の構造的な変形形態の模式図である。
図3A】本願発明の第1実施形態に係る暗視装置の変形形態の模式図である。
図3B】本願発明の第1実施形態に係る暗視装置の変形形態の模式図である。
図3C】本願発明の第2実施形態に係る暗視装置の変形形態の模式図である。
図3D】本願発明の第2実施形態に係る暗視装置の変形形態の模式図である。
図3E】本願発明の第1実施形態に係る暗視装置におけるコントラスト調整の原理の模式図である。
図3F】本願発明の第2実施形態に係る暗視装置におけるコントラスト調整の原理の模式図である。
図4】入力照度に応じた光増幅の様々なゲインモードの模式図である。
図5】本願発明の特定の実施形態に係る、暗視装置のアノード電流に応じた、ディスプレイセグメントの電流制御の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、先行技術において開示されている一般的な構造を有する暗視装置について検討する。
【0030】
このような装置において、ライトガイドの入力側は光増幅管の中で蛍光面と隣接しており、出力側は接眼レンズの焦点面においてイメージを形成している。
【0031】
本願発明の根底にある考え方は、ライトガイドの出力側上に、発光薄板/薄膜の形態のディスプレイを供給することである。
【0032】
このディスプレイは、例えば位置情報、方向情報、シンボロジー(symbology)、または戦術情報、例えばIFFタイプ(Identification Friend or Foe)の表示などの情報を、暗視イメージ上に重ねることができる。
【0033】
図2Aから図2Dは本願発明の実施形態に係る暗視装置の様々な構造的な変形形態の模式図を示す。
【0034】
単純化のため、これらの図においては、フォトカソードと、マイクロチャネルウエハと、蛍光面220と、ライトガイド230と、ディスプレイ260と、ディスプレイおよび光増幅管の様々なエレメントに電源を供給および制御することのできる電源兼制御ユニット250と、によって形成されるモジュールのみが示されている。
【0035】
示された全ての変形形態において、ライトガイドの入力側は光増幅管の蛍光面と隣接している。ライトガイドは出力側を有するが、この出力側は必ずしもガイドの出力における表面全体に延在している必要はない。出力側は、構造が平面状であってもよく(例えばガラス板)、機械的平面化処理またはその他の結果であってもよい(例えば互いに接合された光ファイバのブロック)。
【0036】
代替的な第1実施形態によると、図2A、2Bに示されるように、ディスプレイはガラスの薄板によって形成され、ライトガイドの出力側と隣接している。蛍光セグメント(phosphor segment)は薄板上に堆積され、導電性トラック(conductive truck)によって個別にアドレス可能(addressable)である。
【0037】
この薄板は、ガイドの出力側が平面状である場合にはガイドの出力側全面に延在してもよく(図2A)、その一部、もしくはその平面部全体に延在していてもよい。例えば、第2変形形態において、出力側はその中央部分にメニスカス(meniscus)を有し、その周辺部分に平面部を有してもよい。そして、薄板はその平面部に接合されている(図2B)。
【0038】
代替的な第2実施形態によると、図2C図2Dに示されるように、ディスプレイはガイドの出力側上に直接堆積された薄い発光膜によって形成される。出力側が平面状であればその表面全体に形成され(図2C)、または、その平面部に形成される(図2D)。
【0039】
有利には、この膜は、米国特許出願公開第2019/0223268号明細書において開示されている方法に係る原子層堆積(ALD)によって堆積されてもよく、参照として組み込まれている。この方法は、特に、第1誘電体(dielectric)層を堆積するステップと、第1誘電体層上へマンガン添加硫化亜鉛(ZnS:Mn)からなる発光層を堆積するステップと、最終的に発光層上へ第2誘電体層を堆積するステップと、を備える。第1誘電体層および第2誘電体層は透明であり、例えば、アルミナ(Al)のサブ層と酸化ジルコニウム(ZrO)のサブ層と、を交互に積層することによって得られている。発光層および誘電体層によって形成されたアセンブリは、列(column)に位置する透明電極の第1アレイ(array)と、第1アレイに直交するように行(row)に構成された透明電極の第2アレイと、の間に挟まれている。列電極と行電極との間に電位差が印加されると、列電極と行電極との交点にあるピクセル(pixel)またはセグメント(segment)が点灯する。
【0040】
ディスプレイは、それ自体知られているように、アレイタイプでもセグメントタイプでもよい。一般性を損なうことなく、以下では単純化のため、ディスプレイはセグメントであるものとする。
【0041】
ライトガイドの出力側上で形成された暗視イメージとディスプレイによって生成されたイメージとが、接眼レンズを通じて見ているかのように鮮明な(または同程度の高い鮮明度を有する)重ね合わせとなるように、薄板または薄膜の厚さは、接眼レンズの被写界深度(depth of field)よりも実質的に小さくなるように選択されている。したがって、接眼レンズの設定1つで、暗視イメージおよびディスプレイ情報を鮮明に観察することができる。
【0042】
現在暗視双眼鏡に使用されている接眼レンズ用として、板/膜の厚さは数百μmオーダー、好ましくは100から500μm、典型的には300μmが選択されてもよい。
【0043】
いずれの変形形態を想定する場合であっても、電源兼制御モジュールは、特に、表示される情報の性質および所望の輝度特性に応じて、発光膜のセグメントにバイアスをかけることを可能にする。
【0044】
図3A図3Bは本願発明の第1実施形態に対応し、電源兼制御モジュールは2つの異なるユニット351、352に分離されており、それぞれ光増幅の異なるエレメントへの高電圧電源供給およびディスプレイ制御信号の生成を行っている。
【0045】
高電圧電源ユニット(HT PSU)351は、電圧HT1、HT2、HT3をそれぞれ光増幅管のフォトカソード321、マイクロチャネルウエハ322、蛍光面323へと供給している。これらの高電圧は、単なるバッテリ350によって供給されている低電圧BTから、電圧増幅装置を用いて生成されている。
【0046】
制御ユニット352は、ライトガイド330の出力側上に直接位置しているディスプレイ360を制御している。この制御ユニットはバッテリ350によって電力を供給され、電源ユニット351から表示されるべき情報を受け取ってもよい。
【0047】
図3Bの変形形態は、表示されるべき情報が外部コミュニケーションモジュール370によって受け取られており、解読された後、例えばバス12Cを介して、この情報を制御ユニット352へと伝達し、制御ユニットは制御信号へと変換している、という点において図3Aとは異なっている。このような制御信号は、ライトガイドの出力側上にイメージを形成するために、発光板/膜のディスプレイセグメントを制御している。
【0048】
図3C図3Dは本願発明の第2実施形態に対応し、電源および制御モジュールが同一の物理的実体を形成している。
【0049】
言い換えると、図3A図3Bのユニット351、352は1つのユニット355内で一体となっており、ライトガイドの周辺部に位置しており、図2Aから図2Dにおいて250として示されている。
【0050】
第2実施形態の第1変形形態において、ユニット355は単独(standalone)のユニットである。これは、バッテリ350によって供給される低電圧から、光増幅管の様々なエレメントに対する高電圧HT1、HT2、HT3を管理している。この目的のため、一体型ユニット355は、それ自体既知である電圧増幅装置を備えてもよい。一体型ユニット355は更に制御信号を生成し、ディスプレイ360の様々なセグメントを制御している。
【0051】
第2変形形態において、ユニット355は、バス12Cを介して、外部コミュニケーションモジュール370から、表示されるべき情報を受け取っている。第1実施形態と同様に、外部コミュニケーションモジュールは、無線通信インターフェースによって、暗号化された形態で表示されるべき情報を受信してもよい。
【0052】
想定される実施形態および考慮される変形形態が何であれ、ディスプレイの輝度は、ディスプレイのイメージと暗視イメージとの間のコントラストを維持するように有利に制御されている。より正確には、暗視イメージの輝度に対して、表示されたセグメントの輝度(または明るさ)が、所定の最大値未満となるように維持されている。必要に応じて、この同じ輝度比率は所定の閾値よりも高く保たれてもよい。
【0053】
一般的に、フォトカソードの照度が一定である場合、暗視画像の輝度はアノード電流Iの増加関数であり、アノード電流は主にマイクロチャネルウエハ全体の電圧VMCP、言い換えれば、本願の場合はHT1、HT2と、フォトカソードの電源のデューティサイクルと、に依存している。
【0054】
セグメントの輝度は、2つの電極アレイ間のバイアス電圧に基づいており、数十から数百Vである。このバイアス信号は一般的にパルス状である(繰り返し周波数は数十から数百Hz)。これらの2つのパラメータ(バイアス信号のデューティサイクルおよび電圧レベル)またはどちらか1方のみのパラメータを変更することにより、ディスプレイスクリーンの輝度を調整することができる。
【0055】
コントラストのサーボ制御原理(servocontrol principle)は、それぞれ第1実施形態、第2実施形態について、図3E図3Fに示されている。
【0056】
第1実施形態の場合、アノード電流Iは高電圧電源ユニット351によって読み取られている。したがって、高電圧電源ユニット351は、所望のコントラストのサーボ制御を実現するために、様々なセグメントの制御信号に加え、電極アレイのバイアス電圧を制御する制御信号も伝達している。
【0057】
第2実施形態の場合、アノード電流Iは一体型ユニット355によって読み取られており、一体型ユニット355はその後、電極アレイのバイアス電圧を自分自身に伝達している。
【0058】
上述したように、表示されるセグメントの輝度は、バイアス電圧のレベルおよび/またはそのデューティサイクルに働きかけることによって制御されてもよい。
【0059】
図4は、フォトカソードの照度に対するアノード電流Iの強度変化を模式的に示している。
【0060】
この図は、光増幅管の入口における照度(ナイトレベル(night level)とも呼ばれる)に対する様々なゲイン状態を示している。
【0061】
低ナイトレベル(すなわち、低照度レベル)で見られる、リニア状態(linear state)と呼ばれる第1状態410において、マイクロチャネルウエハおよびフォトカソードに印加される高電圧は固定されている。フォトカソードに印加される電圧のデューティサイクルも固定されており、100%のオーダーである。この第1モードにおいて、アノード電流はフォトカソードの照度レベルに比例している。
【0062】
より高い照度レベルにおいて発生する、飽和状態(saturation state)と呼ばれる第2状態420において、暗視イメージの輝度は、所定の最大輝度レベルまたは最大出力明るさ(Maximum Output Brightness、MOB)において飽和している。光増幅管の輝度は、マイクロチャネルウエハに印加されている高電圧と、フォトカソードに印加されているパルス状の電圧デューティサイクルと、の両方を変更することにより、上述の最大レベルに保持されている。
【0063】
前述のリニア状態であろうと、前述の飽和状態であろうと、セグメントをバイアスするための信号の電圧(および/またはデューティサイクル)レベルは、表示されたイメージ(より正確には表示されたセグメント)と暗視イメージとのコントラストが最大値未満、および、有利には所定の値の範囲内に維持されるように、制御されている。変形形態によると、この制御は、コントラストレベルが、下限値と上限値によって定められる平均値を中心とする区間内で変化するように行われている。
【0064】
図5は本願発明の実施形態に係る暗視装置のアノード電流に応じたディスプレイの電流の変形形態の模式図である。
【0065】
ディスプレイをバイアスするための信号の電圧レベルは、表示されたイメージと暗視イメージとのコントラストレベルが平均値を中心とする区間内に維持されるように、制御されている。
【0066】
光増幅管の2つの動作状態は再び区別することができる。
【0067】
飽和状態520において、バイアス電圧の増幅(および/またはバイアス信号がパルス化されている場合、バイアス信号のデューティサイクル)は、コントラストレベル設定点Sを考慮して実質的に一定に保たれている。この設定点レベルは、製造者によって所定の値に設定されてもよく、または、ユーザが視覚的な快適さに応じて設定してもよい。ディスプレイのセグメントをバイアスするための電圧レベル(パルス状信号の場合にはデューティサイクルでもあり得る)は、コントラストレベル設定点を取得するように設定されている。この場合、セグメントをバイアスしている2つの電極間の電流はIseg=S・Iである。バイアス信号がパルス状の場合、瞬時電流(instantaneous current)の代わりにセグメントの平均電流が考慮される。
【0068】
リニア状態510において、バイアス電圧レベル(および/またはこれのデューティサイクル)がIseg=S・Iの関係を有するように制御することも可能である。しかし、夜間イメージの輝度が変化する場合(動的なイメージ、動いているユーザまたはターゲット)において、Isegがあまりにも早く変動することを回避するために、強度Isegを連続したステージにおいてのみ変化させることに関連していてもよい。言い換えると、強度Isegの変動は、アノード電流に遅れて追従するだけでよく、その後、連続したステージは、夜間イメージの輝度が上がるか下がるかによって異なっている。異なるステージに対応するヒステリシスサイクルを図5に示す。
【0069】
変形形態によると、バイアス信号の電圧レベルおよび/またはデューティサイクルはIseg=S・LP(I)となるように調整されている。ここで、LP(I)はローパスフィルタ、有利には1次の再帰型ローパスフィルタ(recursive low-pass of first order)によってフィルタリングされたアノード電流である。再帰型フィルタの忘却係数(forgetting coefficient)は、ここで再度、製造者によって所定の値に設定されてもよく、または、ユーザによって設定されてもよい。
【0070】
当業者は、最終的に本願発明が、図1に示されているような従来の暗視装置を、図2Aから図2Dに示されているような暗視装置に容易に改造することを可能とする、ディスプレイ一体型の交換用管にも関連していることを理解できるであろう。
【0071】
より正確には、このディスプレイ一体型の管は、暗視装置において標準的な管の代わりとなる。ディスプレイ一体型の管は、フォトカソードと、マイクロチャネルウエハと、蛍光面と、これの出力側に位置するライトガイドであって、接眼レンズの焦点面においてイメージを形成するためのライトガイドと、を備える。これは更に、フォトカソード、光増幅、蛍光面の各バイアス電圧を供給し、ディスプレイの発光素子を制御するため、ライトガイドの周辺部において管ボディ内部に収容されることを意図した電源兼制御モジュールを備える。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
【国際調査報告】