(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】水素アプリケーション用バルク金属ガラス構造体
(51)【国際特許分類】
F17C 11/00 20060101AFI20241022BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20241022BHJP
C22C 45/10 20060101ALI20241022BHJP
C22C 45/00 20230101ALI20241022BHJP
C22C 45/04 20060101ALI20241022BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20241022BHJP
H01M 8/0215 20160101ALI20241022BHJP
【FI】
F17C11/00 C
F17C5/06
C22C45/10
C22C45/00
C22C45/04 Z
H01M8/0206
H01M8/0215
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515335
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 US2022048908
(87)【国際公開番号】W WO2023081326
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524086946
【氏名又は名称】スーパークール メタルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】SUPERCOOL METALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】ジティサ ケトケオ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン チェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン シュロアーズ
(72)【発明者】
【氏名】エフゲニア ペカルスカヤ
【テーマコード(参考)】
3E172
5H126
【Fターム(参考)】
3E172EA35
5H126AA12
5H126BB02
5H126DD05
5H126GG08
5H126HH02
5H126JJ03
5H126JJ05
(57)【要約】
本発明は、水素インフラ及び車両用途などの水素アプリケーションに使用されるバルク金属ガラス(BMG)構造体に関する。BMG構造体は、BMG材料から作られ、少なくとも1つの開口部を有する本体を含んでよい。BMG構造体は、気体、液体、圧縮気体又は液体、極低温圧縮水素、及びそれらの組合せのうちの1つを含む流体の形態の水素燃料を受容、貯蔵、輸送、及び/又は分注するように構成され得る。BMG構造体は、水素に直接さらされるように構成されていてもよく、水素は作動中、構造体の内部表面に存在し、構造体の外部には存在しない。
【選択図】
図1(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク金属ガラス(BMG)構造体であって、
少なくとも1つの開口部を有する本体、
を備え、
前記本体はBMG材料から作られ、
前記BMG構造体は、気体、液体、圧縮気体又は液体、極低温圧縮水素、及びそれらの組合せのうちの1つを含む流体の形態の水素燃料を受容、貯蔵、輸送、及び/又は分注するように構成されており、そして、
水素は作動中、構造体の内部表面に存在し、前記構造体の外部には存在しない、
構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の構造体において、前記BMG構造体は、管状又は中空円筒構造を有し、直径は1mm~500mm、直径と長さの全体的な比率は0.1~40である、構造体。
【請求項3】
請求項1に記載の構造体において、前記BMG構造体は、管状又は中空円筒構造を有し、0.025mm~25mmの壁厚を有する、構造体。
【請求項4】
請求項1に記載の構造体において、前記BMG構造体はさらに、前記本体の一部として、又は本体に取り付けられているコネクタを含み、前記コネクタは、前記本体と別の部品とを接続するように構成されている、構造体。
【請求項5】
請求項1に記載の構造体において、前記BMG構造体は、熱可塑性プラスチック成形(TPF)法により製造され、前記TPF法は、圧縮成形、押出成形、ブロー成形、延伸ブロー成形、圧延及びハイドロフォーミングの1つまたは組み合わせである、構造体。
【請求項6】
請求項1に記載の構造体において、前記BMG構造体は、鋳造又は射出成形によって作られる、構造体。
【請求項7】
請求項1に記載の構造体において、前記BMG材料は、質量%が50wt%以上であるZr、Ti、Ni、又はCuを含む、構造体。
【請求項8】
請求項1に記載の構造体において、前記BMGは、ZrTiCuNiBe、ZrTiCuBe、ZrCuBe、ZrNbCuNiAl、ZrAlNiCu、ZrCuAlNi、ZrCuBe、TiZrBeFe、TiZrBe、TiZrBeFeNb、TiZrCuPdSn、NiSiB、NiCrP、NiCrNbPB、NiCrSiB、NiCrMoSiBP、NiTiZrAl、NiPdPB、NiPdSiP、CuZrAlBe、CuZrHfAの合金ファミリーのいずれかである、構造体。
【請求項9】
請求項1に記載の構造体において、前記BMG構造体は、水素燃料ディスペンサーノズルである、構造体。
【請求項10】
請求項1に記載の構造体において、前記BMG構造体は、ブレークアウェイ・カップリングである、構造体。
【請求項11】
請求項1に記載の構造体において、前記BMG構造体は、水素補給用車両の容器である、構造体。
【請求項12】
請求項1に記載の構造体において、前記BMG構造体はバルブであり、前記バルブはリリーフバルブ、チェックバルブ、及び安全バルブのいずれかである、構造体。
【請求項13】
請求項1に記載の構造体において、前記BMG構造体はフィッティングであり、前記フィッティングはチューブフィッティング、パイプフィッティング、チューブアダプタ、グランド、スリーブ、プラグ、エルボー、ティー、及びクロスのいずれかである、構造体。
【請求項14】
請求項1に記載の構造体において、前記BMG構造体は、水素媒体の貯蔵及び輸送を容易にするシステム又はサブシステム間のコネクタまたはファスナーとして使用され、前記水素媒体は液体、気体、圧縮液体、又は圧縮気体、若しくはそれらの組み合わせである、構造体。
【請求項15】
請求項1に記載の構造体において、前記構造体は、燃料電池用のバイポーラプレートである、構造体。
【請求項16】
請求項1に記載の前記BMG構造体を作製する、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記方法は、熱可塑性プラスチック成形ステップを備え、前記ステップは、圧縮成形、押出成形、ブロー成形、延伸ブロー成形、圧延、およびハイドロフォーミングのうちの1つ以上を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2021年11月4日に出願された米国仮特許出願第63/275,474号の利益を主張するものであり、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
水素は汎用性の高いエネルギーキャリアであり、資源が豊富で二酸化炭素排出量が少ないことから、将来のエネルギー転換において重要な役割を果たす。しかし、水素はほとんどの金属に脆化を引き起こす可能性がある。そのため、水素燃料を気体又は液体の形で、特に高圧下で効率的に製造、貯蔵、輸送及び使用することは一般的に困難である。
【0003】
ハードウェアに使用される材料の信頼性及び耐久性は、水素インフラ及び水素自動車のような水素アプリケーションにとって、依然として最大の課題のひとつである。水素を輸送用燃料として広く採用するための大きな技術的課題のひとつである。本発明で説明する水素インフラ及び自動車アプリケーションは、水素の製造、圧縮、貯蔵、封じ込め、分配、移送、分注、計量、検知、監視、精製に使用されるコンポーネント、並びにコンポーネントが水素燃料と直接接触する燃料電池を含む、パイプライン及び発電システムで使用される部品に関連する。
【0004】
水素アプリケーションの材料選択の課題は、高圧かつ低温で水素を貯蔵及び供給する間、過酷な使用条件下で水素に直接さらされることにある。水素は多くの材料、特に金属に脆化を引き起こすことはよく知られており、幅広い合金において延性、強度、及び靭性の劣化につながる。水素適合材料には厳しい特性が要求され、特に高圧、低温で水素に直接さらされる環境下で使用され、長寿命であることが求められる。一般に、水素環境で使用できる材料には、オーステナイト鋼、一部のステンレス鋼、アルミニウム合金、及び銅合金などが含まれる。一方、マルテンサイト鋼、ニッケル及びニッケル合金、チタン及びチタン合金、鋳鉄、並びに、これらの材料で作られた電解研磨又は溶接部品などを含む、一般的な構造用金属合金の長いリストは、ほとんどのアプリケーションで水素と相容れないと考えられている。水素に適合する金属はすべて、低強度かつ低硬度の合金、特に降伏強度が500MPa未満、ビッカース硬度が250未満の合金であることに注意することが重要である。高強度かつ高硬度材料の多くは、その微細構造が水素の吸収及び拡散を促進し、水素アシスト割れを引き起こすため、水素脆化に敏感であることが知られている。さらに、ほとんどの金属構造物は、溶接を使ってサブシステム又はシステムレベルに接合又は構築されることが多い。溶接は応力集中の原因となり、水素が金属構造に侵入する場所を作り、水素脆化につながる。現在までのところ、水素アプリケーションのための理想的かつ実用的な構造材料の候補はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バルク金属ガラス(BMG:Bulk metallic glasses)は、結晶性の原子構造を持つ従来の金属とは異なり、無秩序かつ均質な原子構造を持つ材料の一種である。そのユニークな構造により、高強度、高弾性、耐食性、及び優れた極低温性能など、さまざまな望ましい特性を示す。比強度が高いため、BMGコンポーネントは軽量である可能性もある。しかし、様々な努力にもかかわらず、BMGの水素アプリケーションへの適合性はまだ結論が出ていない。
【0006】
本発明は、水素インフラ及び水素自動車などの水素アプリケーションに使用されるバルク金属ガラス(BMG)構造体に関する。
【0007】
BMG構造体は、少なくとも1つの開口部を有する本体を含んでもよく、本体はBMG材料から作られる。BMG構造体は、気体、液体、圧縮気体又は液体、極低温圧縮水素、及びそれらの組合せのうちの1つを含む流体の形態の水素燃料を受容、貯蔵、輸送、及び/又は分注するように構成され得る。BMG構造体は、水素に直接さらされるように構成されていてもよく、水素は作動中、構造体の内部表面に存在し、構造体の外部には存在しない。
【0008】
BMG構造体は、管状又は中空円筒構造を有し、直径は1mm~500mm、直径と長さの全体的な比率は0.1~40、好ましくは0.2~40である。
【0009】
BMG構造体は、管状又は中空円筒構造を有してもよく、0.025mm~25mmの間の壁厚を有する。
【0010】
BMG構造体は、さらに、本体の一部として、又は本体に取り付けられたコネクタを含んでもよく、該コネクタは、本体と別のコンポーネントとを接続するように構成される。
【0011】
BMG構造体は、熱可塑性プラスチック成形(TPF:thermoplastic forming)法により製造することができ、TPF法は、圧縮成形、押出成形、ブロー成形、延伸ブロー成形、圧延及びハイドロフォーミングの1つ又は組み合わせである。
【0012】
BMG構造体は、鋳造又は射出成形によって製造してもよい。
【0013】
BMG材料は、50wt%以上のZr、Ti、Ni、又はCuを含んでもよい。
【0014】
BMGは以下、ZrTiCuNiBe、ZrTiCuBe、ZrCuBe、ZrNbCuNiAl、ZrAlNiCu、ZrCuAlNi、ZrCuBe、TiZrBeFe、TiZrBe、TiZrBeFeNb、TiZrCuPdSn、NiSiB、NiCrP、NiCrNbPB、NiCrSiB、NiCrMoSiBP、NiTiZrAl、NiPdPB、NiPdSiP、CuZrAlBe、CuZrHfAの合金ファミリーのいずれかであってもよい。
【0015】
BMG構造体は、水素燃料ディスペンサーノズルであってもよい。
【0016】
BMG構造体は、ブレークアウェイ・カップリングであってもよい。
【0017】
BMG構造体は、水素補給用車両の容器であってもよい。
【0018】
BMG構造体はバルブであってもよく、該バルブはリリーフバルブ、チェックバルブ、及び安全バルブのいずれかであってもよい。
【0019】
BMG構造体はフィッティング(接続具)であってもよく、該フィッティングはチューブフィッティング、パイプフィッティング、チューブアダプタ、グランド、スリーブ、プラグ、エルボー、ティー、及びクロスのいずれかであってもよい。
【0020】
BMG構造体は、水素媒体の貯蔵及び輸送を容易にするシステム又はサブシステム間のコネクタまたはファスナーとして使用してもよく、該水素媒体は液体、気体、圧縮液体、又は圧縮気体、若しくはそれらの組み合わせである。
【0021】
BMG構造体は、燃料電池用のバイポーラプレートであってもよい。
【0022】
BMG構造体は、20MPa~400MPa、好ましくは0.1MPa~400MPaの間の圧力、及び/又は最大800g/秒、好ましくは1,000g/秒の流速の下で、その機能に必要な構造的完全性を失うことなく、300℃~-260℃の間の動作温度で動作することを可能にする実用的な形状を有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1(a)】本発明のBMG構造体の一例の見取図を示し、該構造体は、車両に燃料を補給するためのディスペンサーシステム内の水素ノズルである。
【
図2(a)】本発明の水素フィッティング用BMG構造体の一例を示す見取図を示す。
【
図3】本発明のBMG構造体の断面図を示し、該構造体は燃料電池車用の水素レセプタクルである。
【
図4】本発明のBMG構造体の見取図を示し、該構造体はバイポーラプレートである。
【
図5】
図4のBMG構造体の断面の側面図を示し、構造体内の流路を強調している。
【
図6】本発明のBMG構造体の成形工程の一例である熱可塑性成形(TPF)のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、圧縮水素ガス又は液体の貯蔵及び/又は輸送に必要な高圧力に耐えることができる、水素インフラ及び車両などの水素アプリケーションに使用されるバルク金属ガラス(BMG)構造体に関する。本構造体は、20MPa~400MPa、好ましくは0.1MPa~400MPaの動作圧力、及び/又は最大800g/s、好ましくは1,000g/sの流速を維持することができる。本構造体は、300℃と、水素が液体状態である-260℃(例えば-255℃)との間における動作温度の水素ガス又は液体に直接曝され得る。
【0025】
驚くべきことに、我々は、Zr、Ti、Cu、Niを支配種として含有するBMG合金の中には、水素脆化を起こす高強度及び高硬度の金属とは異なり、水素アプリケーションに適合するものがあることを見出した。その結果、本発明で使用する高降伏強度及び高破壊靭性を示すこれらのBMG合金は、水素脆化しにくく、水素環境に適合することを見出した。これらの水素適合性BMGの具体例としては、ZrTiCuNiBe、ZrTiCuBe、ZrCuBe、ZrNbCuNiAl、ZrAlNiCu、ZrCuAlNi、ZrCuBe、TiZrBeFe、TiZrBe、TiZrBeFeNb、TiZrCuPdSn、NiTiZrAl、NiPdPB、NiPdSiP、NiSiB、NiCrP、NiCrNbPB、NiCrSiB、NiCrMoSiBP、CuZrAlBe、CuZrHfAlが挙げられる。これらのBMG合金は、顕微鏡(微視)的レベルで強い短距離秩序を形成し、金属の水素脆化の顕著な原因の1つである金属水素化物の形成を防ぐ。さらに、これらのBMG合金が熱可塑性成形(TPF)技術でBMG製品を作製するのに使用されると、TPFプロセスで加工されたBMGは常に短距離秩序が支配的な、より安定した平衡状態に達するため、水素環境下でBMG製品は優れた性能を発揮し、水素脆化に対して特に強くなる。
【0026】
水素アプリケーションのためのBMG構造体は、少なくとも1つの開口部を有する本体を備えてもよく、該本体はBMG材料から作製され、該構造体は、流体又は気体の形態で水素燃料を受容、貯蔵、輸送、及び分注するように機能し、水素ガス、液体、又は圧縮されたガス若しくは液体に直接曝される下にあり、水素は構造体の内表面に存在し、動作中は構造体の外面に存在しない。本発明のBMG構造は、単体のコンポーネントとして動作可能であるが、サブシステム又はシステムを構成する複数の部品に組み合わせることもできる。BMG構造体の複数の部品は、溶接、接着剤、又はねじ若しくは焼きばめなどの機械的な把持またはロック機構によって接続してもよい。
【0027】
本発明のBMG構造体は、管状または中空円筒状の構造を有しもよく、直径と長さの全体的な比率は0.1~40であってよい。壁厚は0.025mm~25mmを取り得る。
【0028】
BMG構造体は、本体の一部として、または本体をオペレーティング(運用)システムの別のコンポーネントに接続する目的で本体に取り付けられた、コネクタを含んでもよい。BMG構造体の本体は、他のBMGコンポーネント又は金属、ポリマー、及びセラミックを含む他の材料を含む他のコンポーネントへの構造体の統合のために設計された特徴を有することができる。
【0029】
BMG構造体は、10GPaを超えるヤング率及び1200MPaを超える降伏強度を持ち得る。
【0030】
BMG構造体は、鋳造、射出成形、ダイカスト、又はTPFプロセスによって製造することができる。TPFは800℃以下で行ってもよい。本発明のBMG構造体を製造するために使用されるTPF技術には、ブロー成形、押出成形、圧縮成形、延伸ブロー成形、圧延、せん断、はんだ付け、及びオーバーキャスト並びにオーバーモールディング、又はこれらの方法の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。本発明のBMGコンポーネントは、BMGの過冷却液体状態でTPFプロセスを通じて形成してもよく、その結果、高圧軸受BMGコンポーネントは、10%未満の結晶化度を有することができる。当技術分野では、結晶化度が10%を超えるBMG材料は特性劣化、特に機械的特性の劣化に悩まされることが知られている。本発明が提供する重要な能力は、高圧軸受BMG構造体が、特にTPFプロセスで製造されたとき、均一かつ一貫した特性を有し、ピース全体を通して均質なガラス状態を有することである。
【0031】
高圧軸受BMGコンポーネントの具体例としては、水素ディスペンサーノズル、ブレークアウェイ・カップリング、車両用レセプタクル、リリーフバルブ、チェックバルブ、安全バルブ、アダプタフィッティング、チューブ、チューブフィッティング、パイプ、チューブアダプタ、グランド、スリーブ、プラグ、エルボー、ティー、クロス、及びファスナーなどが挙げられる。
【0032】
本発明のBMG構造のもう一つの例は、自動車の動力源又は水素製造用の電解槽に使用されるようなプロトン交換膜燃料電池に使用されるバイポーラプレートである。
【0033】
図1(a)は、水素燃料補給ノズルである本発明のBMG構造体の一例の見取図である。
図1(b)は、
図1(a)のBMG構造体の断面図を示す。BMG水素ディスペンサーノズルは、水素燃料、気体又は液体、及びそれらの圧縮形態がノズル内を流れることを可能にする入口及び出口の2つの開口部を含む。BMG水素ディスペンサーノズルは、車両に対するコネクタ領域及び、水素燃料源に対するコネクタ領域を有してもよい。BMG燃料供給ノズルは、一体構造であってもよいし、複数の部品の組立体であってもよい。一実施形態では、BMGコンポーネントは、直径dよりも大きい全長lと、壁厚tとを有する円筒管の全体形状を有する。本発明のBMG構造体は、高強度及び高硬度を示しつつ、薄壁及び軽量であり得る。
【0034】
BMGディスペンサーコンポーネントは、最小壁厚0.025mm、及び最大壁厚25mm以下であってよい。直径は1mm~500mmであってよい。直径と長さの全体の比率は0.1、好ましくは0.2~40であってよい。水素燃料供給ノズルは、ガス又は液体水素を、ステーション又は貯蔵システムから、乗用車、中型及び大型トラック、フォークリフト、バス、列車、船舶、ドローン、飛行機、及び各種オフロード車などの車両に移送するために使用してもよい。
【0035】
従来の結晶性金属、特に高強度鋼のような構造用途に使用されるものは、高い強度と硬度とを有するが、水素脆性に悩まされ、低温(0℃から極低温の間)で延性から脆性への転移を示し、高圧水素アプリケーションには不適格である。水素アプリケーション用の現在の最先端材料は、ステンレス鋼316Lなどのオーステナイト系ステンレス鋼である。しかし、降伏強度が低く、硬度も低いため、水素インフラ用のステンレス鋼316L構造物は、水素燃料の貯蔵及び輸送のための十分な圧力及び必要とされる流速に耐えられる壁厚が必要なため、大きく、重く、壁厚が厚い。
【0036】
本発明のBMG構造体は、その機能に必要な構造的完全性を失うことなく、300℃~-260℃の動作温度で、20MPa~400MPa、好ましくは0.1MPa~400MPaの圧力、及び/又は最大800g/秒、好ましくは1,000g/秒の流速下で動作することを可能にする実用的な形状を有してもよい。
【0037】
図2(a)は、高圧チューブフィッティングである本発明のBMG構造体の一例の見取図である。
図2(b)は、
図2(a)のBMG構造体の断面図を示す。この構造体は2つの開口部を有する。BMGチューブフィッティングは、高圧水素燃料システムの部品を接合し、2つ以上のシステム間の漏れを防止しながら、水素燃料がシステム間を流れるようにすることで機能する。BMGチューブフィッティングは、溶接、接着剤、又はねじ若しくは焼きばめなどの機械的な把持又はロック機構によってシステムを接続することができる。
【0038】
図3は、本発明のBMG構造体の断面図を示し、該構造体は、燃料補給ステーションから水素燃料を受け取るために燃料電池車両で使用される水素レセプタクル(受容器)である。水素レセプタクルは、嵌合機能を通じて水素ディスペンスノズルに係合することができる。
【0039】
図4は、本発明のBMG構造体の一例の見取図であり、該構造体はバイポーラプレートである。
図5は、
図4の本発明のBMG構造体の断面の側面図であり、構造体内の流路を強調している。
【0040】
図6を参照して、本発明のBMG構造を製造するためのTPF法の一例をフローチャートで説明する。
【0041】
ステップS1では、所望のBMG構造の逆型の特徴を有するキャビティを有する金型とBMG原料とを準備する。キャビティの形状は、形成が必要なBMG構造の形状に応じて設計される。金型は、黄銅、鋼、ステンレス鋼、アルミナなどの非金属、ポリマー、及びそれらの組み合わせなど、さまざまな材料の1つまたは複数で作製ことができる。BMG原料は、BMG製品の製造のために特別に設計され、作られている。
【0042】
ステップS2では、金型を、BMGのガラス転移温度と結晶化温度との間の過冷却液体領域にある処理温度まで加熱する。
【0043】
ステップS3では、製造すべき構造用に特別に設計されたBMG原料が金型キャビティに流し込まれ、また所定の処理温度まで加熱される。金型温度が処理温度に達する前又は達した後に、金型とは別個に準備されるBMG原料が金型キャビティの開口部を覆うように金型キャビティ内に流し込まれる。
【0044】
ステップS4では、BMG原料の温度が、BMG原料を粘稠かつ成形可能にする処理温度に達した後、BMG原料が金型キャビティの表面に向かって変形するように、気体若しくは液体の圧力、又は機械的プレスによる圧力などの圧力がBMG原料に加えられる。BMG原料は、キャビティの表面に達し、キャビティの形状を再現するまで変形する。圧力は、BMG最終部品の完全な成形を可能にするように選択される。BMG原料を変形させる時間、処理温度及び印加する圧力は、形成されるBMG可撓性要素の厚さ、結晶化度、及びその他の特性を制御するために事前に決定される。変形時間は、形成されるBMG可撓性要素の結晶化度が10%未満に最小化されるように、実質的な結晶化を引き起こす時間よりも短くなるように選択される。
【0045】
ステップS5では、BMG原料が完全に変形して金型の形状になると、BMG製品はガラス転移温度以下に冷却され、固化したBMG構造体が形成される。
【0046】
ステップS6では、BMG構造体は金型キャビティから取り出される。BMGが処理温度まで加熱される合計時間は、BMGが結晶化に達するまでの利用可能な時間窓以下である。印加圧力は、BMG原料の流動応力よりも大きくなるように選択される。
【0047】
以上、本発明の特定の実施形態のみを詳細に説明したが、当業者であれば、本発明の新規な教示及び利点から実質的に逸脱することなく、実施形態においてサイズ及び形状などの多くの変更が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、そのような改変はすべて本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【国際調査報告】