(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを含むポリエステル樹脂及びフィルム
(51)【国際特許分類】
C08G 63/183 20060101AFI20241022BHJP
C08G 63/00 20060101ALI20241022BHJP
C08G 63/78 20060101ALI20241022BHJP
C08J 11/10 20060101ALI20241022BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C08G63/183
C08G63/00
C08G63/78
C08J11/10 CFD
C08J5/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516685
(86)(22)【出願日】2023-04-18
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 KR2023005206
(87)【国際公開番号】W WO2023204561
(87)【国際公開日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】10-2022-0049113
(32)【優先日】2022-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ダ‐ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, サンウ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ハ‐ヌル
(72)【発明者】
【氏名】リー, ブ‐ヨン
【テーマコード(参考)】
4F071
4F401
4J029
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
一実施形態による再生BHETを含むポリエステル樹脂は、再生BHETから生成して、ポリエステル樹脂中に残留するジエチレングリコールを所定のレベル以下に調整しているため、優れた耐熱特性を有し、これによりポリエステル樹脂から熱収縮性フィルムを製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃ポリエステルの解重合によって得られる再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを含むポリエステル樹脂であって、下記式(A):
【数1】
(式(A)中、HS1は、ガラス転移温度(Tg)での熱収縮率(%)であり、HS2は、ガラス転移温度(Tg)-5℃の温度での熱収縮率(%)であり、熱収縮率は、ポリエステル樹脂をフィルム状に押出成形してから横方向(TD)に5倍延伸した後に、各温度でフィルムの横方向(TD)で測定する)
により計算される熱収縮率の傾きが、600%/℃以下である、ポリエステル樹脂。
【請求項2】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した場合に、前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの、ジエチレングリコールエステルのピーク面積分率が合計2%未満である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂において、下記式(B):
形成されたDEGの量=残留DEGの量-添加されたDEGの量...(B)
(式(B)中、残留DEGの量は、
1H-NMRで測定したポリエステル樹脂中の全グリコール残基中のジエチレングリコール残基の含有量(モル%)であり、添加されたDEGの量は、ポリエステル樹脂の製造に添加された全グリコール成分中のジエチレングリコールモノマーの含有量(モル%)である)
により計算された形成されたDEGの量が、5モル%以下である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項4】
下記式(1):
【数2】
(式(1)中、DEG
1、DEG
2、及びBHET
0は、それぞれ、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した場合の、2-ヒドロキシエチル[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート、ビス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]ベンゼン-1,4-ジカルボキシレート及びビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートのピーク面積分率(%)であり、rBHETは、ポリエステル樹脂中の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの重量分率(%)である)
によって計算される第1の耐熱性指数が、1.0以下である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項5】
下記式(2):
第2の耐熱性指数=(G/A)×0.32+0.83...(2)
(式(2)中、G及びAは、それぞれ、ポリエステル樹脂を構成するモノマー中のグリコールのモル数及び二酸のモル数であり、G/Aはグリコールと二酸とのモル比である)
によって計算される第2の耐熱性指数が、1.6以下である、請求項4に記載のポリエステル樹脂。
【請求項6】
下記式(3):
第3の耐熱性指数=第1の耐熱性指数+第2の耐熱性指数...(3)
によって計算される第3の耐熱性指数が、2.0以下である、請求項5に記載のポリエステル樹脂。
【請求項7】
前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートが、ポリエステル樹脂の重量に基づいて10重量%~99重量%の量で用いられる、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項8】
前記ポリエステル樹脂が二酸成分及びグリコール成分を含み、
前記二酸成分が、テレフタル酸、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、フタル酸、フタル酸ジメチル、無水フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジメチル2,6-ナフタレンジカルボキシレート、ジフェニルジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、ジメチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、ジメチル1,3-シクロヘキサンジカルボキシレート、セバシン酸、コハク酸、イソデシルコハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、グルタル酸、及びアゼライン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記グリコール成分が、イソソルビド、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチレン-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル-4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレート、及び4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、
請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項9】
35℃における固有粘度(IV)が、0.5dl/g~0.9dl/gである、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項10】
ポリエステル樹脂を調製するための方法であって、廃ポリエステルの解重合によって得られる再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを使用してポリエステル樹脂を重合するステップを含み、
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した場合に、前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの、ジエチレングリコールエステルのピーク面積分率が合計2%未満であり、前記ポリエステル樹脂における下記式(A):
【数3】
(式(A)中、HS1は、ガラス転移温度(Tg)での熱収縮率(%)であり、HS2は、ガラス転移温度(Tg)-5℃の温度での熱収縮率(%)であり、熱収縮率は、ポリエステル樹脂をフィルム状に押出成形してから横方向(TD)に5倍延伸した後に、各温度でフィルムの横方向(TD)で測定する)
により計算される熱収縮率の傾きが、600%/℃以下である、方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂を含む、物品。
【請求項12】
フィルム、シート、又は異形材である、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂を含む熱収縮性ポリエステルフィルムであって、下記式(A):
【数4】
(式(A)中、HS1は、ガラス転移温度(Tg)での熱収縮率(%)であり、HS2は、ガラス転移温度(Tg)-5℃の温度での熱収縮率(%)であり、熱収縮率は、各温度でフィルムの横方向(TD)で測定する)
により計算される熱収縮率の傾きが、600%/℃以下である、熱収縮性ポリエステルフィルム。
【請求項14】
70℃での横方向(TD)における熱収縮率及び縦方向(MD)における熱膨張率(%)の合計が、65%以下である、請求項13に記載の熱収縮性ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを含むポリエステル樹脂及びそれを使用して調製されたフィルムに関する。
【0002】
[背景技術]
ポリエステルは、その優れた機械的強度、耐熱性、透明度、及びガスバリヤ性から、飲料充填容器、包装フィルム、オーディオ及びビデオフィルム等の材料として広く使用されている。さらに、ポリエステルは、医療用繊維及びタイヤコード等の工業材料として世界中で広く製造されている。特に、ポリエステルシート又はポリエステルプレートは、良好な透明度及び優れた機械的強度を有し、したがってケース、箱、間仕切り、棚、パネル、包装材、建材、内外装材等の原料として広く使用されている。
【0003】
その結果、ポリエステル等のプラスチックの廃棄物が毎年世界的に収拾不可能なレベルで生じている。近年、世界各国で廃ポリエステルを含む廃プラスチック資源のリサイクルに関する規制及び計画が立案されている。例えば、様々な分野で使用される包装材に再生樹脂を一定の割合以上で使用しようとする試みがある。廃ポリエステルのリサイクルの方法としては、物理的又は化学的方法が使用されているが、物理的リサイクル方法では純度を保証できず、広く使用されてはいない。
【0004】
ケミカルリサイクル法では、廃ポリエステルのエステル結合を切断してそれを解重合する。解糖、加水分解、メタノリシス、及びアミノリシス等の反応が使用されている。これらの中で解糖とは、エチレングリコール又はジエチレングリコール等のグリコールを高温で添加して廃ポリエステルを分解することである。主としてビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含有する反応生成物が得られる。ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートは、結晶化又は精製した後、不飽和ポリエステル又はエステルポリオールを調製するための原料として使用することができる。
【0005】
[先行技術文献]
[特許文献1]韓国特許第1386683号
[特許文献2]米国特許第7211193号
[非特許文献1]Park,SH.、Kim,SH.、Poly(ethylene terephthalate)recycling for high value added textiles、Fashion and Textiles 1、1(2014)
【0006】
[発明の開示]
[技術的課題]
廃ポリエステルの解重合により得られるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を使用してポリエステル樹脂を調製する場合、BHET中の不純物により最終ポリエステル製品の品質が低下するという問題がある。
【0007】
この問題を解決するために本発明者らが行った研究の結果、ポリエステル樹脂の重合に使用される再生BHET中に不純物として存在しているジエチレングリコール誘導体が、最終重合樹脂中に残留し、それによって品質に影響を及ぼすことを発見した。また、再生BHETから製造されたフィルムの熱収縮率等の特性も損なわれる。
【0008】
したがって、本発明者らは、再生BHETに由来し、ポリエステル樹脂中に不純物として残留するジエチレングリコール誘導体を一定レベル以下に調整し、それにより樹脂の耐熱性を高め、再生BHETから製造されたフィルムの熱収縮特性の低下を防止することができる。
【0009】
したがって、本発明の目的は、ケミカルリサイクルにより調製されているにもかかわらず、未使用の樹脂の品質と同等の品質を有する再生ポリエステル樹脂及びそれを含む物品、特に熱収縮性フィルムを提供することである。
【0010】
[課題の解決手段]
本発明によれば、廃ポリエステルの解重合によって得られる再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを含むポリエステル樹脂であって、下記式(A)により計算される熱収縮率の傾きは600%/℃以下である、ポリエステル樹脂が提供される。
【数1】
【0011】
式(A)中、HS1は、ガラス転移温度(Tg)での熱収縮率(%)であり、HS2は、ガラス転移温度(Tg)-5℃の温度での熱収縮率(%)であり、熱収縮率は、ポリエステル樹脂をフィルム状に押出成形してから横方向(TD)に5倍延伸した後に、各温度でフィルムの横方向(TD)で測定する。
【0012】
さらに、本発明によれば、ポリエステル樹脂を調製するための方法であって、廃ポリエステルの解重合によって得られる再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを使用するポリエステル樹脂を重合するステップを含み、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した場合に、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの、ジエチレングリコールエステルのピーク面積分率が合計2%未満であり、ポリエステル樹脂の上記式(A)により計算される熱収縮率の傾きが、600%/℃以下である、方法が提供される。
【0013】
さらに、本発明によれば、このポリエステル樹脂を含む物品が提供される。さらに、本発明によれば、このポリエステル樹脂を含む熱収縮性ポリエステルフィルムが提供される。
【0014】
[発明の有利な効果]
本発明によるポリエステル樹脂では、再生BHETに由来し、ポリエステル樹脂中に残留するジエチレングリコール誘導体は、一定レベル以下に調整される。したがって、ケミカルリサイクルにより再生されたポリエステル樹脂であるにもかかわらず、未使用の樹脂と比較して耐熱性等の品質がほとんど低下しない。
【0015】
したがって、本発明によるポリエステル樹脂を使用して製造された物品は、環境にやさしい製品であり、優れた品質を有する。特に、ポリエステルフィルムは優れた耐熱性を有して均一な熱収縮特性を示し、温度に対して適切な熱収縮率の傾きを有するため、様々な分野で熱収縮性フィルム等の包装材として使用することができる。
【0016】
[発明を実施するための最良の形態]
以下で、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本明細書では、各構成要素を指す用語は、それらを互いに区別するために使用されるものであり、実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。さらに、本明細書では、文脈上別段に指定のない限り、単数表現は複数も同様に包含するものとして解釈される。
【0018】
本明細書では、第1の、第2の等の用語は、様々な構成要素を説明するために使用される。しかし、構成要素は用語によって限定されるべきではない。この用語は、ある要素を別の要素から区別する目的で使用される。
【0019】
本明細書では、「含む」という用語は、特定の特性、領域、ステップ、方法、要素、及び/又は構成要素を指定することを意図している。特に反対の記載がない限り、他の任意の特性、領域、ステップ、方法、要素、及び/又は構成要素の存在又は追加を排除するものではない。
【0020】
ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート
本発明によるポリエステル樹脂は、廃ポリエステルの解重合によって得られるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを含む。
【0021】
ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートは、2つのエチレングリコール及び1つのテレフタル酸のエステルである。例えば、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートは、エチレングリコールとテレフタル酸又はそのエステルとの重合を介して、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルを調製する過程で中間体として形成される化合物である。
【0022】
本発明によるポリエステル樹脂の重合原料として使用されるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)のように、エチレングリコール及びテレフタル酸の繰り返し単位を有する廃ポリエステルから得られる。例えば、解糖、加水分解、及びメタノリシス等の周知の解重合法により得ることができる。
【0023】
本明細書では、上記のように廃ポリエステルの解重合によって得られるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を「再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(再生BHET)」と称するか、又はr-BHET若しくはrBHETと略記するが、純粋なBHET化合物とは異なるものとして理解する必要がある。
【0024】
具体的には、再生BHETには、廃ポリエステルの解重合中の様々な化学ステップで使用される試薬若しくは溶媒、又はそれらとの副反応によって形成された副生成物が含有される可能性がある。これらの不純物は、数回の精製後でも微量に残留する場合がある。したがって、再生BHETには、一般的に主成分であるBHETに加えて、微量の有機及び無機不純物が含有されている。このため、再生BHETは、2つ以上の成分を含む一種の組成物、すなわちBHET組成物と考えることもできる。再生BHETは、ポリエステル樹脂を製造するための重合原料として使用してもよい。
【0025】
具体的には、再生BHETには、主成分であるBHETに加えて、微量の不均一有機成分、例えばBHET類似体、例えばモノヒドロキシエチルテレフタル酸(MHET)、BHET二量体、BHET三量体、副生成物、例えばジエチレングリコールエステル、無機成分である金属イオン、及び残留溶媒成分が含まれている場合がある。
【0026】
本発明では、このような不均一有機成分の含有量を一定範囲に調整した再生BHETを使用する。再生BHET中の各成分の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して得られるスペクトルにおける全ピーク面積に対するピーク面積分率(%)を測定することにより導くことができる。
【0027】
具体的には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した場合に、本発明における原料である再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)は、BHETのピーク面積分率が96%以上である。より具体的には、HPLCにより測定されるBHETのピーク面積分率は、96.5%以上、97%以上、97.5%以上、又は98%以上であってもよい。
【0028】
さらに、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートは、HPLCにより測定される有機不純物のピーク面積分率が、合計5%未満、具体的には4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、又は0.7%未満であってもよい。
【0029】
特に、本発明によるポリエステル樹脂は、ジエチレングリコールエステル(DEGエステル)の含有量を一定レベル以下に調整した再生BHETを含む。例えば、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートは、HPLCで測定した場合に、ジエチレングリコールエステル化合物のピーク面積分率が合計2%未満であり得る。具体的には、ジエチレングリコールエステル化合物のピーク面積分率は、合計で1.5%未満、1%未満、0.8%未満、又は0.7%未満であり得る。
【0030】
一例として、ジエチレングリコールエステル化合物は、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸とジエチレングリコールとの間の縮合物であり得る。別の例として、ジエチレングリコールエステル化合物は、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸と、ジエチレングリコールに加えてグリコール(例えばエチレングリコール)との間の縮合物であり得る。
【0031】
一実施形態によれば、再生BHETは、第1のジエチレングリコールエステルとして、下記式1の2-ヒドロキシエチル[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート(CAS番号65133-69-9)を含んでもよい。別の実施形態によれば、再生BHETは、第2のジエチレングリコールエステルとして、下記式2のビス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]ベンゼン-1,4-ジカルボキシレート(CAS番号26850-76-0)を含んでもよい。ポリエステル樹脂が、第1のジエチレングリコールエステル及び第2のジエチレングリコールエステルの含有量を一定レベル以下に調整した再生BHETから調製されると、ケミカルリサイクルにより再生ポリエステル樹脂であるにもかかわらず、未使用の樹脂と比較して品質がほとんど低下しない。
【化1】
【0032】
一実施形態によれば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した場合に、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)の、2-ヒドロキシエチル[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート(第1のジエチレングリコールエステル)のピーク面積分率は2.5%以下である。具体的には、HPLCにより測定される2-ヒドロキシエチル[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレートのピーク面積分率は、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下、又は0.5%以下であり得る。
【0033】
別の実施形態によれば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した場合に、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)の、ビス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]ベンゼン-1,4-ジカルボキシレート(第2のジエチレングリコールエステル)のピーク面積分率は0.5%以下である。具体的には、HPLCにより測定されるビス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]ベンゼン-1,4-ジカルボキシレートのピーク面積分率は、0.2%以下、より具体的には、1.5%以下、1.0%以下、又は0.5%以下であり得る。
【0034】
さらに、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートは、HPLCで測定した場合に、オリゴマーのピーク面積分率が合計3%以下であり得る。
【0035】
具体的には、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートは、HPLCで測定した場合に、BHET二量体のピーク面積分率が3%未満、2%未満、1%未満、又は0.7%未満であり得る。さらに、上記方法で製造された再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートは、HPLCで測定したBHET三量体のピーク面積分率が1%未満、0.5%未満、0.3%未満、0.1%未満、又は0%であり得る。
【0036】
さらに、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートには、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの構造と類似の構造を有する不純物がさらに含まれる場合がある。例えば、モノヒドロキシエチルテレフタル酸(MHET)、ビス(2-ヒドロキシプロピル)テレフタレート、及びモノヒドロキシエチルエトキシテレフタル酸からなる群から選択される少なくとも1種が含まれる場合がある。HPLCで測定した場合に、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの構造と類似の構造を有する不純物のピーク面積分率は、3%未満、2%未満、1%未満、又は0.5%未満であり得る。
【0037】
さらに、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート中の残留溶媒(例えば、エチレングリコール)の総含有量は、ガスクロマトグラフィー分析により検出される重量比に基づいて1重量%未満であり得る。具体的には、残留溶媒の総含有量は、0.5重量%未満、0.3重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、又は0.9重量%未満であり得る。
【0038】
さらに、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートは、25重量%溶液中の分光光度計で測定した黄色指数(YID)が3.0以下であり得る。具体的には、黄色指数は、2.5以下、2.0以下、1.5以下、又は1.0以下であり得る。
【0039】
さらに、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートは、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定した無機物質の総含有量が5ppm未満であり得る。具体的には、無機物質の総含有量は、3ppm未満、1ppm未満、又はほぼ0ppmであり得る。
【0040】
ポリエステル樹脂の組成
本発明のポリエステル樹脂は、廃ポリエステルのケミカルリサイクルによって再生したポリエステル樹脂である。
【0041】
具体的には、本発明のポリエステル樹脂は、再生BHETを使用して重合されているため、ポリマー鎖中に再生BHETに由来する繰り返し単位を含んでいる。
【0042】
本発明のポリエステル樹脂における再生BHETの含有量は、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、30重量%以上、50重量%以上、70重量%以上、又は90重量%以上であってもよい。さらに、再生BHETの含有量は、100重量%以下、99重量%以下、80重量%以下、60重量%以下、40重量%以下、又は20重量%以下であってもよい。
【0043】
一例として、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートは、ポリエステル樹脂の重量に基づいて10重量%~99重量%の量で用いられてもよい。
【0044】
一方、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートは、2つのエチレングリコール及び1つのテレフタル酸が結合した構造を有するため、本発明のポリエステル樹脂は、エチレングリコール及びテレフタル酸に由来する繰り返し単位を本質的に含み得る。
【0045】
上述したように、本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂を構成するモノマーとして二酸成分及びグリコール成分を含む。さらに、本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステルの重合のために追加の二酸成分及び追加のグリコール成分をさらに含んでもよい。
【0046】
本発明のポリエステル樹脂では、二酸成分はジカルボン酸でもその誘導体でもよく、グリコール成分はジオールでもよい。
【0047】
特に、ジカルボン酸にはテレフタル酸が含まれ、テレフタル酸によりポリエステル樹脂の耐熱性、耐薬品性、及び耐候性等の物理的性質を向上させることができる。例えば、テレフタル酸は、全ジカルボン酸のモル数に基づいて、5モル%~100モル%の量で用いられてもよい。さらに、テレフタル酸成分は、ジメチルテレフタル酸等のテレフタル酸アルキルエステルから形成されてもよい。
【0048】
さらに、ジオールにはエチレングリコールが含まれ、エチレングリコールは、ポリエステル樹脂の透明度及び耐衝撃性の向上に寄与することができる。例えば、エチレングリコールは、全ジオールのモル数に基づいて、5モル%~100モル%の量で用いられてもよい。
【0049】
一実施形態によれば、本発明のポリエステル樹脂は、2種以上のジカルボン酸成分及び/又は2種以上のジオール成分を含む共重合樹脂であってもよい。
【0050】
具体的には、ジカルボン酸成分には、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分、又はこれらの混合物がさらに含まれてもよい。テレフタル酸以外のジカルボン酸は、全ジカルボン酸成分の重量に基づいて、1モル%~30モル%の量で用いられてもよい。
【0051】
芳香族ジカルボン酸成分は、8~20個の炭素原子、好ましくは8~14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸、又はそれらの混合物であってもよい。芳香族ジカルボン酸の例としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、例えば2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、4,4’-スチルベンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、2,5-チオフェンジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
脂肪族ジカルボン酸成分は、4~20個の炭素原子、好ましくは4~12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、又はそれらの混合物であってもよい。脂肪族ジカルボン酸の例としては、直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族ジカルボン酸成分、例えばシクロヘキサンジカルボン酸、例えば1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、セバシン酸、コハク酸、イソデシルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
さらに、ジオール成分は、エチレングリコール以外のコモノマーをさらに含んでもよい。コモノマーには、例えば、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール誘導体、イソソルビド、及びジエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種が含まれてもよい。
【0054】
シクロヘキサンジメタノール(例えば、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール)は、製造されるポリエステル樹脂の透明度及び耐衝撃性の向上に寄与ことができる。例えば、シクロヘキサンジメタノールは、全ジオールのモル数に基づいて、5モル%~90モル%の量で用いられてもよい。シクロヘキサンジメタノール誘導体は、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル-4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレート又は4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノールであってよい。シクロヘキサンジメタノール誘導体は、全ジオールのモル数に基づいて、0.1モル%~25モル%の量で用いられてもよい。
【0055】
イソソルビドは、最終ポリエステル樹脂の加工性を向上させることができる。ポリエステル樹脂の透明度及び耐衝撃性は、シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールのジオール成分によって向上するが、加工性のためには、せん断流動特性が改善すべきであり、結晶化速度が遅延するべきである。しかしながら、シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールだけでこの効果を達成することは困難である。したがって、ジオール成分としてイソソルビドを用いると、透明度及び耐衝撃性を維持しつつせん断流動特性が改善して結晶化速度が遅延し、それによって製造されるポリエステル樹脂の加工性を改善させることができる。好ましくは、イソソルビドは、全ジオールのモル数に基づいて、0.1モル%~50モル%の量で用いられてもよい。
【0056】
具体例として、ポリエステル樹脂には二酸成分及びグリコール成分が含まれ、二酸成分にはテレフタル酸、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、フタル酸、フタル酸ジメチル、無水フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジメチル2,6-ナフタレンジカルボキシレート、ジフェニルジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、ジメチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、ジメチル1,3-シクロヘキサンジカルボキシレート、セバシン酸、コハク酸、イソデシルコハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、グルタル酸、及びアゼライン酸からなる群から選択される少なくとも1種が含まれてもよく、グリコール成分には、イソソルビド、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチレン-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル-4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレート、及び4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノールからなる群から選択される少なくとも1種が含まれてもよい。
【0057】
ポリエステル樹脂の特徴
本発明によれば、再生BHETに由来し、ポリエステル樹脂中に不純物として残留するジエチレングリコール誘導体が一定レベル以下に調整されるので、樹脂の耐熱性を高め、再生BHETから製造されたフィルムの熱収縮特性の低下を防止することができる。
【0058】
一実施形態によれば、本発明によるポリエステル樹脂において、下記式(A)により計算される熱収縮率の傾きは、600%/℃以下である。
【数2】
【0059】
式(A)中、HS1は、ガラス転移温度(Tg)での熱収縮率(%)であり、HS2は、ガラス転移温度(Tg)-5℃の温度での熱収縮率(%)であり、熱収縮率は、ポリエステル樹脂をフィルム状に押出成形してから横方向(TD)に5倍延伸した後に、各温度でフィルムの横方向(TD)で測定する。
【0060】
本発明によるポリエステル樹脂では、再生BHETに由来し、ポリエステル樹脂中に残留するジエチレングリコール誘導体は、一定レベル以下に調整される。したがって、ケミカルリサイクルにより再生されたポリエステル樹脂であるにもかかわらず、未使用の樹脂と比較して耐熱性等の品質がほとんど低下しない。したがって、本発明によるポリエステル樹脂を使用して製造された物品は、環境にやさしい製品であり、優れた品質を有する。特に、ポリエステルフィルムは優れた耐熱性を有して均一な熱収縮特性を示し、温度に対して適切な熱収縮率の傾きを有するため、様々な分野で熱収縮性フィルム等の包装材として使用することができる。
【0061】
例えば、式(A)による熱収縮率の傾きは、600%/℃以下、550%/℃以下、500%/℃以下、450%/℃以下、400%/℃以下、又は350%/℃以下であり得る。さらに、熱収縮率の傾きは、例えば、0%/℃以上、100%/℃以上、200%/℃以上、又は300%/℃以上であり得る。具体例として、熱収縮率の傾きは、0%/℃~600%/℃、又は200%/℃~600%/℃であり得る。
【0062】
別の実施形態によれば、本発明のポリエステル樹脂において、下記式(B):により計算される形成されたDEGの量は、5モル%以下である。
形成されたDEGの量=残留DEGの量-添加されたDEGの量...(B)
【0063】
式(B)中、残留DEGの量は、1H-NMRで測定したポリエステル樹脂中の全グリコール残基中のジエチレングリコール残基の含有量(モル%)であり、添加されたDEGの量は、ポリエステル樹脂の製造に添加された全グリコール成分中のジエチレングリコールモノマーの含有量(モル%)である。
【0064】
残留DEGの量は、ポリエステル樹脂(重合完了時の樹脂)中に最終的に残留しているジエチレングリコール残基の含有量を測定することにより求める。ジエチレングリコール残基の含有量は、全グリコール(例えば、DEG、CHDM、EG等)残基に対するモル比(モル%)として計算することができる。残留DEGの量は、重合反応に関与しなかったか、又は副生成物として生成されたジエチレングリコールに起因する可能性がある。さらに、残留DEGの量は、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートに不純物として含有しているか、又は重合中に副生成物として生成されたジエチレングリコール誘導体に起因する可能性がある。
【0065】
添加されたDEGの量は、ポリエステル樹脂の重合のための反応(例えば、エステル化反応)に使用されるジエチレングリコールモノマーの含有量から計算される。ジエチレングリコールモノマーの含有量は、全グリコール(例えば、DEG、CHDM、EG等の)成分に対するモル比(モル%)として計算することができる。添加されたDEGの量は、重合反応に付加的に添加されたジエチレングリコールモノマーに起因する可能性がある。さらに、添加されたDEGの量は、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート中に残留しているジエチレングリコールモノマーに起因する可能性がある。
【0066】
式(B)の形成されたDEGの量は、残留DEGの量から添加されたDEGの量を減じて計算される。すなわち、形成されたDEGの量は、最終的にポリエステル樹脂中に残留しているジエチレングリコール及びその誘導体(例えば、エステル)の量と、ポリエステル樹脂の重合に最初に添加されたジエチレングリコールモノマーの量の間の差に対応し得る。したがって、形成されたDEGの量は、ポリエステル樹脂の重合に添加されたジエチレングリコールモノマーに加えて、ジエチレングリコール誘導体の量に起因する可能性がある。具体的には、形成されたDEGの量は、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート中に残留しているジエチレングリコールエステルの量に起因する可能性がある。
【0067】
例えば、形成されたDEGの量は、5モル%以下、4.5モル%以下、4.0モル%以下、3.5モル%以下、3.0モル%以下、又は2.5モル%以下であり得る。一方、形成されたDEGの量の下限は、特に限定されないが、例えば、0モル%以上、0モル%超、0.5モル%以上、1モル%以上、1.5モル%以上、又は2.0モル%以上であり得る。一方、形成されたDEGの量は、いくつかの要因によって添加されたDEGの量に対して残留量が減少することにより、負の値を有する場合がある。例えば、このような場合に形成されたDEGの量の下限は、-5モル%以上、-3モル%以上、又は-1モル%以上であり得る。
【0068】
ポリエステル樹脂の重合に使用される再生BHET中に不純物として存在し、最終重合樹脂中に残留するジエチレングリコール誘導体が、最終重合樹脂の品質に及ぼす影響を抑制することにより、形成されたDEGの量の好ましい範囲内で、ポリエチレン樹脂から製造されるフィルムの熱収縮等の特性を高めることができる。
【0069】
さらに、本発明によれば、ポリエステル樹脂中の再生BHETの含有量及びグリコール/酸比を調整することにより、耐熱性等の品質がより向上したポリエステル樹脂を提供することができる。
【0070】
特に、ポリエステルの重合に使用されるBHETの量と共に再生BHET中のジエチレングリコールエステル等の不純物の含有量から計算される最終ポリエステル樹脂の耐熱性指数は、特定の範囲に調整され得る。
【0071】
一実施形態によれば、第1の耐熱性指数は、再生BHETの組成(BHET及びDEGエステルの含有量)と、ポリエステル樹脂中の再生BHETの含有量とをパラメータとして使用して計算される。第1の耐熱性指数は、特定の範囲内で調整することができる。第1の耐熱性指数は、ポリエステル樹脂の重合に供される再生BHETに由来する耐熱性指数であり、再生BHET中のDEG不純物によって引き起こされる耐熱性の低下の数値である。第1の耐熱性指数を一定レベル以下に調整すれば、酸及びグリコールから重合した未使用のポリエステル樹脂のレベルと同様のレベルの耐熱性を有するように制御することができる。
【0072】
具体的には、ポリエステル樹脂は、下記式(1)によって計算される第1の耐熱性指数が1.0以下である。
【数3】
【0073】
式(1)中、DEG1、DEG2、及びBHET0は、それぞれ、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した場合の、2-ヒドロキシエチル[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート、ビス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]ベンゼン-1,4-ジカルボキシレート及びビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートのピーク面積分率(%)であり、rBHETは、ポリエステル樹脂中の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの重量分率(%)である。これらのパラメータ(DEG1、DEG2、BHET0、rBHET)の単位を除く数値のみを式(1)に入れて、第1の耐熱性指数(単位なし)を計算する。
【0074】
例えば、第1の耐熱性指数は、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、又は0.1以下であってもよい。さらに、第1の耐熱性指数は、0以上、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、又は0.5以上であってもよい。具体例として、第1の耐熱性指数は、0~1.0、又は0.1~1.0であってもよい。
【0075】
別の実施形態によれば、第2の耐熱性指数は、ポリエステル樹脂を構成するモノマーにおけるグリコールと二酸のモル比をパラメータとして使用して計算される。第2の耐熱性指数は、特定の範囲内で調整することができる。第2の耐熱性指数は、ポリエステル樹脂を構成するグリコール及び酸の含有量に関する数値である。第2の耐熱性指数を調整すれば、再生BHETを多量に使用しても耐熱性を低下させることなくポリエステル樹脂を重合することができる。
【0076】
具体的には、ポリエステル樹脂は、下記式(2)によって計算される第2の耐熱性指数が1.6以下である。
第2の耐熱性指数=(G/A)×0.32+0.83...(2)
【0077】
式(2)中、G及びAは、それぞれ、ポリエステル樹脂を構成するモノマー中のグリコールのモル数及び二酸のモル数であり、G/Aはグリコールと二酸のモル比である。
【0078】
例えば、第2の耐熱性指数は、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、又は1.2以下であってもよい。さらに、第2の耐熱性指数は、0以上、0.5以上、1.0以上、1.1以上、1.2以上、又は1.3以上であってもよい。具体例として、第2の耐熱性指数は、0~1.6、又は1.0~1.6であってもよい。
【0079】
別の実施形態によれば、第3の耐熱性指数は、第1の耐熱性指数及び第2の耐熱性指数をパラメータとして使用して計算される。第3の耐熱性指数は、特定の範囲内で調整することができる。第3の耐熱性指数は、再生BHETの品質及び量、並びにポリエステル樹脂のグリコール/酸含有量を包括的に考慮に入れるため、第3の耐熱性指数を調整することにより、最終ポリエステル樹脂の耐熱性をより効果的に制御することができる。
【0080】
具体的には、ポリエステル樹脂は、下記式(3)によって計算される第3の耐熱性指数が2.6以下であり、より具体的には2.0以下である。
第3の耐熱性指数=第1の耐熱性指数+第2の耐熱性指数...(3)
【0081】
例えば、第3の耐熱性指数は、2.0以下、1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、又は1.3以下であってもよい。さらに、第3の耐熱性指数は、0以上、0.5以上、1.0以上、又は1.5以上であってもよい。具体例として、第3の耐熱性指数は、0~2.0、又は1.0~2.0であってもよい。
【0082】
耐熱性指数が調整されたポリエステル樹脂は、未使用のポリエステル樹脂と比較して耐熱性がほとんど低下しない可能性がある。
【0083】
一実施形態によれば、本発明によるポリエステル樹脂は、下記式で計算されるΔTgが3.0以下であってもよい。具体的には、下記式によるΔTgは、2.5以下であってもよい。具体的には、下記式によるΔTgは、2.0以下、又は1.5以下であってもよい。
ΔTg(℃)=Tg1-Tg2
【0084】
ここで、Tg2は、再生BHETを使用して重合したポリエステル樹脂のガラス転移温度(℃)であり、Tg1は再生BHETのモル当量のエチレングリコール及びテレフタル酸を使用して重合したポリエステル樹脂のガラス転移温度(℃)である。
【0085】
本発明によるポリエステル樹脂の35℃における固有粘度は、0.5dl/g以上、0.6dl/g以上、又は0.7dl/g以上であってもよく、1.2dl/g以下、1.1dl/g以下、1.0dl/g以下、又は0.9dl/g以下であってもよい。例えば、ポリエステル樹脂の35℃における固有粘度は、0.5dl/g~1.2dl/gであってもよい。具体的には、ポリエステル樹脂の35℃における固有粘度は、0.5dl/g~0.9dl/gであってもよい。
【0086】
ポリエステル樹脂を調製するための方法
本発明によるポリエステル樹脂を調製するための方法は、廃ポリエステルの解重合により得られる再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を使用してポリエステル樹脂を重合するステップを含む。
【0087】
本発明によるポリエステル樹脂は、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートに加えて、テレフタル酸若しくはその誘導体及び/又はエチレングリコールをさらに添加することによって調製することができる。さらに、ポリエステル樹脂は、他の二酸及び/又はグリコールのコモノマーをさらに添加することによってコポリマーとして調製することができる。
【0088】
重合では、エステル化反応(ステップ1)及び重縮合反応(ステップ2)を順次行ってもよい。
【0089】
エステル化反応は、エステル化反応触媒の存在下で行われてもよい。例えば、亜鉛系化合物を使用してもよい。亜鉛系触媒の具体例としては、酢酸亜鉛、酢酸亜鉛水和物、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0090】
エステル化反応は、例えば、0kgf/cm2~10.0kgf/cm2の圧力、及び150℃~300℃の温度で行うことができる。エステル化反応の条件は、製造するポリエステルの固有の特性、各成分の割合、又は加工条件に応じて適切に調整してもよい。具体的には、エステル化反応の圧力は、0kg/cm2~5.0kg/cm2、より具体的には0.1kg/cm2~3.0kg/cm2であってもよい。さらに、エステル化反応の温度は200℃~270℃、より具体的には240℃~260℃であってもよい。
【0091】
エステル化反応は、バッチ式で行っても連続式で行ってもよい。各原料は別々に供給してもよいが、ジオール成分、ジカルボン酸成分、及び再生BHETを混合したスラリーの形態で供給することが好ましい。さらに、室温で固体であるイソソルビド等のジオール成分を水又はエチレングリコールに溶解し、次いでテレフタル酸等のジカルボン酸成分と混合してスラリーを調製してもよい。代替的には、イソソルビドを60℃以上で溶融し、次いでテレフタル酸等のジカルボン酸成分及び他のジオール成分と混合してスラリーを調製してもよい。さらに、スラリーの流動性の増加を促進させるために、混合スラリーに水を追加的に添加してもよい。
【0092】
重縮合反応は、例えば、エステル化反応生成物を150℃~300℃の温度、及び0.01mmHg~600mmHgの減圧条件下で1時間~24時間反応させることにより行ってもよい。重縮合反応は、溶融重合により比較的低分子量のポリエステル樹脂を生成することができる。さらに、溶融重合後、固相重合により、比較的高分子量のポリエステル樹脂を生成することができる。
【0093】
重縮合反応における温度は、150℃~300℃、具体的には200℃~290℃、より具体的には260℃~280℃であってもよい。さらに、重縮合反応における圧力は、0.01mmHg~600mmHg、具体的には0.05mmHg~200mmHg、より具体的には0.1mmHg~100mmHgであってもよい。重縮合反応で減圧条件を採用することにより、重縮合反応の副生成物であるグリコールを系から除去することができる。重縮合反応の圧力が0.01mmHg~400mmHgの範囲を超えると、副生成物の除去が不十分となる場合がある。さらに、重縮合反応の温度が150℃未満であると、反応の副生成物であるグリコールを系から効果的に除去することができず、したがって、最終反応生成物の固有粘度が低くなり、最終ポリエステル樹脂の物理的性質が低下することになる。重縮合反応の温度が300℃を超えると、最終ポリエステル樹脂の黄変の可能性が増大する。さらに、重縮合反応は、最終反応生成物の固有粘度が適切なレベルに達するまでの必要な時間、例えば1時間~24時間の平均滞留時間で行ってもよい。
【0094】
さらに、重縮合反応は、重縮合触媒の存在下で行ってもよい。重縮合触媒は、例えば、チタン系化合物、ゲルマニウム系化合物、アンチモン系化合物、アルミニウム系化合物、スズ系化合物、又はこれらの混合物であってもよい。チタン化合物の例としては、テトラエチルチタネート、アセチルトリプロピルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、2-エチルヘキシルチタネート、オクチレングリコールチタネート、乳酸チタネート、トリエタノールアミンチタネート、アセチルアセトネートチタネート、エチルアセト酢酸エステルチタネート、イソステアリルチタネート、二酸化チタン等が挙げられる。ゲルマニウム系化合物の例としては、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムエチレングリコールオキシド、酢酸ゲルマニウム、又はそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、二酸化ゲルマニウムを使用することができる。結晶質及び非晶質の二酸化ゲルマニウムの両方を使用してもよく、グリコール可溶性のものを使用してもよい。使用される重縮合触媒の量は、ポリエステル樹脂の重量に対するチタン元素の量が約1~100ppmとなるようにしてもよく、より好ましくは、約1~50ppmである。
【0095】
重縮合触媒に加えて、安定剤、着色剤、結晶化剤、酸化防止剤、分岐剤等をさらに使用してもよい。これらの添加剤を添加するタイミングは特に限定されず、ポリエステル樹脂の調製ステップの間に随時添加してもよい。
【0096】
安定剤としては、リン系化合物、例えば、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、及びホスホノ酢酸トリエチルが一般的に使用され得る。添加される安定剤の量は、リン元素の量に基づき、ポリエステル樹脂の重量に対して10~200ppmとなるようにしてもよい。さらに、酢酸コバルト及びプロピオン酸コバルト等の一般的な着色剤を、ポリエステル樹脂の色を向上させるために添加する着色剤として例示することができる。添加される着色剤の量は、コバルト元素の量に基づき、ポリエステル樹脂の重量に対して10~200ppmとなるようにしてもよい。必要に応じて、アントラキノン系化合物、ペリノン系化合物、アゾ系化合物、メチン系化合物等を有機着色剤として使用してもよい。Clarient製のPolysynthren Blue RLS、又はClarient製のSolvaperm Red BB等の市販のトナーを使用してもよい。添加される有機化合物着色剤の量は、ポリエステル樹脂の重量に基づいて0~50ppmに調整してもよい。結晶核剤、紫外線吸収剤、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂等を、結晶化剤として例示することができる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤、亜リン酸系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、又はこれらの混合物を、酸化防止剤として例示することができる。3つ以上の官能基を有する通常の分岐剤、例えば、トリメリット酸無水物、トリメチロールプロパン、トリメリット酸、又はこれらの混合物を、分岐剤として例示することができる。
【0097】
再生BHETの調製のための方法
本発明によるポリエステル樹脂の調製に使用されるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートは、廃ポリエステルの解重合によって得られる再生モノマーであるにもかかわらず、純度が高く、ジエチレングリコールエステル等の不純物の含有量が少ない。
【0098】
このようなビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートは、後半の段階の温度を大幅に低下させながら解重合反応を多段階に行い、続いて解重合反応後にイオン交換、及び未反応グリコールの蒸留を行うことにより得ることができる。
【0099】
一実施形態による再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製するための方法は、(1)廃ポリエステルを、180℃~200℃の温度での第1の解糖反応による解重合に供して第1の反応物を得るステップと、(2)第1の反応物を、150℃~170℃の温度での第2の解糖反応による解重合に供して第2の反応物を得るステップと、(3)第2の反応物を、イオン交換樹脂によるイオン交換に供して第3の反応物を得るステップと、(4)150℃以下の温度での蒸留により、第3の反応物から未反応グリコールを除去して第4の反応物を得るステップと、(5)第4の反応物を蒸留に供して、粗ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを得るステップとを含む。
【0100】
上記方法によれば、後半の段階の温度を大幅に低下させながら解重合反応を多段階に行い、それによってジエチレングリコール及びジエチレングリコールに由来する不純物の形成を低減することにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を高純度で製造することができる。さらに、上記方法によれば、解重合反応後、イオン交換及び未反応グリコールの蒸留をさらに行い、それによってオリゴマーの形成を低減する、及び発色団を除去することにより、色に関する品質が向上したビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を調製することができる。
【0101】
別の実施形態によれば、ステップ(1)の前に、廃ポリエステルを一定レベル以下の大きさに粉砕するステップをさらに行ってもよい。廃ポリエステルは、粒径4mm以下の粒子状形態又は繊維状形態を有してもよい。廃ポリエステルの粒径又は直径を特定の範囲内に調整して解重合を行うと、比較的低温、及び短い反応時間の条件下でも溶媒和を促進することができる。
【0102】
別の実施形態によれば、ステップ(1)の第1の解糖反応は、触媒の存在下で行われる。触媒には、金属酢酸塩又はその無水物若しくは水素化物が含まれる。より具体的には、酢酸亜鉛、酢酸ナトリウム、酢酸コバルト、酢酸マンガン又はそれらの水和物若しくは無水物からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。さらに、触媒は、廃ポリエステル100重量部に対して0.2重量部~0.4重量部の量で使用してもよい。
【0103】
別の実施形態によれば、ステップ(2)で得られた第2の反応物を一定温度以下に冷却するステップをさらに行ってもよい。
【0104】
別の実施形態によれば、ステップ(3)のイオン交換の前に、第2の反応物からろ過により不溶性夾雑物を除去するステップをさらに行ってもよい。具体的には、第2の反応物を120℃以下に冷却し、ろ過助剤を添加してろ過するステップをさらに行ってもよい。
【0105】
別の実施形態によれば、ステップ(3)のイオン交換の前に、第2の反応物からろ過により不溶性夾雑物を除去するステップをさらに行ってもよい。
【0106】
別の実施形態によれば、ステップ(3)のイオン交換樹脂は、廃ポリエステル100重量部に対して1重量部~20重量部の量で使用され、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂、及びキレート樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0107】
別の実施形態によれば、ステップ(4)の未反応グリコールを除去するための蒸留は、100℃~130℃の温度で行ってもよい。
【0108】
別の実施形態によれば、ステップ(5)の粗ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを得るための蒸留は、0.05Torr~0.4Torrの圧力下での薄膜蒸発によって行ってもよい。
【0109】
別の実施形態によれば、本方法は、ステップ(5)の蒸留の後に、粗ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを吸着-結晶化するステップをさらに含んでもよい。吸着-結晶化は、水を溶媒として使用する吸着剤を添加し、ろ過し、結晶化させることによって行ってもよい。
【0110】
具体的な実施形態によれば、まず、廃ポリエステルを4mm以下の大きさに粉砕して調製し、これにエチレングリコールを添加し、次いで180℃~200℃の温度で、酢酸亜鉛触媒の存在下で約2時間第1の解糖反応の供し、これにエチレングリコールをさらに添加し、次いで150℃~170℃の温度で約2時間第2の解糖反応を行う。その後、減圧フラッシュを使用して120℃以下に冷却し、少量のろ過助剤を添加し、次いで不溶性夾雑物を固液分離によってろ過分離し、イオン交換樹脂を充填したカラムに通してイオン交換を行う。次いで、100℃~130℃の温度で未反応グリコールを回収し、190℃~250℃で薄膜蒸留により精製を行い、最後に吸着-結晶化ステップを行って高純度で高品質のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを得る。
【0111】
上記方法により、2段階の解糖反応(すなわち、第1の解糖反応及び第2の解糖反応)を行う。第1の解糖反応で溶媒和が促進されると、第2の解糖反応で、より低温、及び短い反応時間の条件下で廃ポリエステルのエステル交換反応を実施することができる。したがって、一般的な解糖反応温度で自然に形成されるジエチレングリコール(DEG)の濃度を大幅に低減することができ、最終的に調製されるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート中のジエチレングリコールエステルの含有量を大幅に低減することができる。
【0112】
ポリエステル樹脂を使用した物品
本発明によるポリエステル樹脂は、その優れた機械的強度、耐熱性、透明度、及びガスバリヤ性から、飲料充填容器、包装フィルム、オーディオ及びビデオフィルム等の材料として使用することができる。
【0113】
さらに、本発明によるポリエステル樹脂から調製されたポリエステルシート又はポリエステルプレートは、良好な透明度及び優れた機械的強度を有し、したがってケース、箱、間仕切り、棚、パネル、包装材、建材、内外装材等の原料として使用することができる。
【0114】
さらに、本発明によるポリエステル樹脂は、医療用繊維及びタイヤコード等の工業材料としても使用できる。
【0115】
したがって、本発明はまた、ポリエステル樹脂を含む物品を提供する。例えば、物品は、フィルム、シート、又は異形材であってもよい。フィルムの具体例としては、熱収縮性フィルム、及びインフレーションフィルムが挙げられる。異形材とは、シート及びフィルムを除いたプラスチックの連続押出成形物品を指す。一般的な押出成形法で製造することができ、例えば、管状又は溝状を有する場合がある。
【0116】
具体的には、本発明のポリエステル樹脂から調製されたポリエステルフィルムは、ASTM D1003-97に従って測定し、フィルム厚さ50μmに基づき、ヘーズが5%以下、4%以下、3%以下、2.5%以下、2%以下、又は1%以下であり得、それにより、高い透明度を示す。ヘーズは、最も好ましくは0%であり、理論的には、下限は0%以上であり得る。
【0117】
特に、本発明によるポリエステルフィルムは、r-BHETから形成されるジエチレングリコール誘導体の含有量が制御されたポリエステル樹脂から調製されるため、優れた耐熱性を有し、これにより均一な熱収縮特性を示し、光学的にも透明であるため、PET容器の熱収縮性ラベルとして有用となる。したがって、本発明は、ポリエステル樹脂を含む熱収縮性ポリエステルフィルムを提供する。
【0118】
本発明のポリエステルフィルムは、熱収縮過程において高温で高い熱収縮率を示しながら、低温では低い熱収縮率を示すため、熱収縮性ラベルとして好適である。
【0119】
例えば、ポリエステルフィルムは、70℃での横方向(TD)における熱収縮率及び縦方向(MD)における熱膨張率(%)の合計が65%以下であり得る。具体的には、熱収縮率は、70℃の熱水に10秒間浸漬することにより測定することができる。TD熱収縮率及びMD熱膨張率の合計は、試験条件下で、65%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、又は20%以下であり得る。一方、70℃におけるTD熱収縮率及びMD熱膨張率の合計の下限は特に限定されないが、例えば、0%以上、10%以上、又は15%以上であり得る。
【0120】
さらに、ポリエステルフィルムは、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、又は75%以上の95℃における最大収縮率を示し、これにより、優れた品質の熱収縮性フィルムを提供することができる。最大収縮率の上限は特に限定されず、例えば85%以下であり得る。
【0121】
ポリエステルフィルムは、単層フィルムでも2つ以上の層を含む多層フィルムであってもよい。
【0122】
ポリエステルフィルムを調製するための方法は、ポリエステル樹脂組成物を成形して未延伸フィルムを調製するステップと、未延伸フィルムを延伸するステップとを含む。
【0123】
ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂が使用に好適な添加剤と混合されるようにチップ又はペレットの形態で提供してもよい。具体的には、ポリエステル樹脂組成物は、二軸押出機を介してチップ又はペレットの形態で成形してもよい。
【0124】
その後、このように調製したポリエステル樹脂組成物を成形し、未延伸フィルムを調製する。ポリエステル樹脂組成物は、ポリマーの熱分解を最小限にしてポリマーの長鎖構造を維持し、延伸ステップ等の後続プロセスにおけるフィルムの損傷又は破損の問題を最小限にするために、約180℃~310℃、約200℃~310℃、約230℃~310℃、約240℃~300℃、又は約250℃~290℃の温度で成形してもよい。
【0125】
具体的には、チップ又はペレットの形態のポリエステル樹脂組成物を押出機に供給し、シリンダーの温度を上記範囲に調整して、未延伸フィルムを得る。
【0126】
ポリエステルフィルムが多層構造を有する場合、2つ以上の層を順次又は同時に形成してもよい。すなわち、各層は、1つの層が形成され、次いでその層上に別の層が形成されるような方法で、順次形成されてもよい。或いは、同時押出等の方法により、2つ以上の層を一度に形成してもよい。
【0127】
上記方法により得られた未延伸フィルムは、適切な温度まで冷却してもよい。特に限定されないが、調製した未延伸フィルムをロール上に約10℃~70℃又は20℃~70℃でキャストし、次いで次のステップに供給してもよい。
【0128】
未延伸フィルムを延伸するステップでは、未延伸フィルムを縦方向及び/又は横方向に延伸して、一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムを提供する。
【0129】
未延伸フィルムの延伸温度は、ポリエステル樹脂のガラス転移温度と同等の温度、又はそれより高い温度であってもよい。具体的には、未延伸フィルムは、55℃~180℃又は60℃~170℃の温度で延伸されてもよい。
【0130】
未延伸フィルムは、高延伸倍率で延伸されてもよい。一例として、未延伸フィルムは、横方向に1.5~6倍の延伸倍率、又は縦方向に1.1~5倍の延伸倍率で一軸延伸されてもよい。さらに別の例として、未延伸フィルムは、横方向に1.5~6倍の延伸倍率、及び縦方向に1.1~5倍の延伸倍率で二軸延伸されてもよい。
【0131】
ポリエステルフィルムは、厚さが3μm以上、5μm以上、10μm以上、30μm以上、50μm以上、又は100μm以上であってもよく、500μm以下、350μm以下、200μm以下、又は150μm以下であってもよい。具体例としては、ポリエステルフィルムは、厚さが3μm~350μmであってもよい。
【0132】
[発明の態様]
以下、実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。しかしながら、これらの例は例示のみを目的として提供され、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0133】
調製例:r-BHET_A1(再生BHET)
ステンレス鋼(SUS)製の第1の反応器に、粒径4mm以下に粉砕した廃ポリエステル樹脂1,000g、エチレングリコール2,000g、及び無水酢酸亜鉛3.5gを投入した。反応器内の温度を180℃に上げて、2時間かけて解重合(第1の解糖反応)を行った。得られた反応物(第1の反応物)を第2の反応器に移し、150℃に冷却した。そこへエチレングリコール2,000gをさらに添加し、反応器温度を150℃に保持しながら解重合(第2の解糖反応)を2時間行った。得られた反応物(第2の反応物)を減圧フラッシュにより120℃に冷却し、そこへろ過助剤16gを添加し、続いて加圧ろ過して固液分離を行った。分離した液体反応物をイオン交換樹脂(Bonlite製BC107(H))を充填したカラムに通してイオン性不純物を除去し、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート及びエチレングリコールを含有する混合物(第3の反応物)を得た。この混合物(第3の反応物)を10リットルの蒸留装置に移し、130℃で真空蒸留を行い、未反応エチレングリコールを回収した。エチレングリコールを除去した反応物(第4の反応物)を薄膜蒸発器(VTA製VKL70-4S)中で220℃及び0.08Torrにて薄膜蒸発させ、二量体以上のオリゴマーが除去された生成物1,040gを得た。その後、吸着-結晶化のために、20リットルのガラス製反応器に上記生成物1,040g及び蒸留水3,120gを投入し、70℃の温度で溶解し、次いでそこへ活性炭5.2gを添加して、その後30分間撹拌し、ろ過した。ろ液を結晶化させるために室温に冷却し、ろ過し、真空オーブンで乾燥させた。結果として、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを含有する最終生成物990gを得た。
【0134】
調製例:r-BHET_A2(再生BHET)
第1の解糖反応を180℃で1時間行ったこと以外は、r-BHET_A1の調製例と同様の手順を介してビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを含有する最終生成物(r-BHET_A2と称する)980gを得た。
【0135】
調製例:r-BHET_A3(再生BHET)
廃ポリエステルの原料として廃繊維1,000gを使用した以外は、r-BHET_A1の調製例と同様の手順を介してビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを含有する最終生成物(r-BHET_A3と称する)985gを得た。
【0136】
調製例:r-BHET_A4(再生BHET)
廃ポリエステルの原料として廃棄された垂れ幕1,000gを使用した以外は、r-BHET_A1の調製例と同様の手順を介してビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを含有する最終生成物(r-BHET_A4と称する)992gを得た。
【0137】
調製例:r-BHET_A5(再生BHET)
薄膜蒸発の後に吸着-結晶化ステップを行わなかったこと以外は、r-BHET_A1の調製例と同様の手順を介してビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを含有する最終生成物(r-BHET_A5と称する)1,050gを得た。
【0138】
調製例:r-BHET_B1(再生BHET)
ステンレス鋼(SUS)製の反応器に、粒径4mm以下の廃ポリエステル樹脂1,000g、エチレングリコール4,000g、及び無水酢酸亜鉛3.5gを投入した。反応器内の温度を196℃に上げて、4時間かけて解重合(解糖反応)を行った。得られた反応物を30℃に冷却し、2時間かけてビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの結晶化を行った。得られたビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート及びエチレングリコールのスラリーを遠心分離機で固液分離に供した。遠心分離により得られたビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを十分な量の蒸留水で2回洗浄し、残留溶媒をオーブンで除去して、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを含有する最終生成物(r-BHET_B1と称する)約1,010gを得た。
【0139】
調製例:r-BHET_B2(再生BHET)
解糖反応を210℃で行ったこと以外は、r-BHET_B1の調製例と同様の手順を介してビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを含有する最終生成物(r-BHET_B2と称する)約1,000gを得た。
【0140】
調製例:r-BHET_B3(再生BHET)
第1の解糖反応を196℃で4時間行い、第2の解糖反応も吸着-結晶化も行わなかったこと以外は、r-BHET_A1の調製例と同様の手順を介してビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを含有する最終生成物(r-BHET_B3と称する)約1,020gを得た。
【0141】
再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの評価
再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートをそれぞれ含有する上記で調製した結果物を、以下のように試験した。結果を以下の表1に要約する。
【0142】
(1)組成-高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
試料約0.01gをメタノール約20mlに希釈し、次いでHPLCで測定した。
モデル:Waters e2695
カラム:C18(4.6×250mm)、5μm
UV検出器:242nm
注入量:10μl
溶離液(勾配)A:H2O+H3PO4、B:アセトニトリル
【0143】
(2)残留溶媒-ガスクロマトグラフィー(GC)
試料約0.1gをCHCl3約10mlに希釈し、0.45μmのフィルターで処理し、次いでGCで測定した。
モデル:Agilent 7890B
カラム:DB-624(30m×0.25mm×1.4μm)
オーブン温度:60℃(2min)-10℃/min-200℃(0min)-20℃/min-260℃(5min)
注入温度:250℃
検出器温度:250℃
流量:1.5ml/min(N2)、分割比:1/50
【0144】
【0145】
上表から分かるように、r-BHET_A1~r-BHET_A5では、BHETの割合が高く、無機不純物は観察されず、DEG由来のエステルの含有量が非常に低かった。これに対し、r-BHET_B1~r-BHET_B3は、二量体又はDEG由来のエステルを多量に含有するか、又は残留溶媒(EG)がいくらか存在するという問題をそれぞれ有していた。
【0146】
実施例1:ポリエステル樹脂の調製
カラムと、水で冷却できる冷却器とを備えた10リットル反応器に、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(r-BHET_A1、2,863.5g)、テレフタル酸(TPA、1,871.4g)、エチレングリコール(EG、97.9g)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM、1,039.0g)、及びジエチレングリコール(DEG、32.9g)を投入し、続いてTi触媒(0.2g)、リン酸(10.0g)、青色トナー(0.005g)、及び赤色トナー(0.003g)をそこへ添加した。
【0147】
続いて、反応器内に窒素を注入し、反応器を標準圧(絶対圧:1,495.6mmHg)より1.0kgf/cm2高く加圧した。次いで、反応器の温度を90分かけて220℃まで上げて、220℃で2時間保持し、次いで温度を2時間かけて260℃まで再度上げた。その後、260℃の温度でエステル化反応を行い、反応器内の混合物が透明になるまで混合物を目視観察した。この手順では、副生成物はカラム及び冷却器を通して排出した。エステル化反応終了後、加圧反応器内の窒素を外部に放出して反応器の圧力を標準圧に下げ、次いで反応器内の混合物を真空下で反応可能な7リットル反応器に移した。
【0148】
次いで、反応器の圧力を30分かけて標準圧から5Torr(絶対圧:5mmHg)まで下げた。同時に、反応器の温度を1時間かけて270℃まで上げて、反応器の圧力を1Torr(絶対圧:1mmHg)以下に保持しながら重縮合反応を行った。重縮合反応の開始時は、撹拌速度を高く設定してもよい。重縮合反応の進行に伴い、反応物の粘度が増大して撹拌力が弱くなるか、又は反応物の温度が設定温度を上回った場合には、それに応じて撹拌速度を適切に調整してもよい。重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.80dl/gに達するまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望のレベルに達した場合、混合物を反応器の外に排出してストランドを形成し、冷却液で固化し、次いで平均重量が約12~14mgとなるように粒状化してポリエステル樹脂(コポリマー)約5kgを調製した。
【0149】
実施例2:ポリエステル樹脂の調製
カラムと、水で冷却できる冷却器とを備えた10リットル反応器に、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(r-BHET_A2、5,968.0g)、CHDM(676.7g)、及びDEG(68.6g)を投入し、続いてGe触媒(3.2g)、青色トナー(0.015g)、及び赤色トナー(0.008g)をそこへ添加した。
【0150】
続いて、反応器内に窒素を注入し、反応器を標準圧(絶対圧:2,231.1mmHg)より2.0kgf/cm2高く加圧した。次いで、反応器の温度を90分かけて220℃まで上げて、220℃で2時間保持し、次いで温度を2時間かけて260℃まで再度上げた。その後、260℃の温度でエステル化反応を行い、反応器内の混合物が透明になるまで混合物を目視観察した。この手順では、副生成物はカラム及び冷却器を通して排出した。エステル化反応終了後、加圧反応器内の窒素を外部に放出して反応器の圧力を標準圧に下げ、次いで反応器内の混合物を真空下で反応可能な7リットル反応器に移した。
【0151】
次いで、反応器の圧力を30分かけて標準圧から5Torr(絶対圧:5mmHg)まで下げた。同時に、反応器の温度を1時間かけて275℃まで上げて、反応器の圧力を1Torr(絶対圧:1mmHg)以下に保持しながら重縮合反応を行った。重縮合反応の開始時は、撹拌速度を高く設定してもよい。重縮合反応の進行に伴い、反応物の粘度が増大して撹拌力が弱くなるか、又は反応物の温度が設定温度を上回った場合には、それに応じて撹拌速度を適切に調整してもよい。重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.65dl/gに達するまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望のレベルに達した場合、混合物を反応器の外に排出してストランドを形成し、冷却液で固化し、次いで平均重量が約12~14mgとなるように粒状化してポリエステル樹脂(コポリマー)約5kgを調製した。
【0152】
実施例3:ポリエステル樹脂の調製
カラムと、水で冷却できる冷却器とを備えた10リットル反応器に、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(r-BHET_A3、4,236.4g)、TPA(1,186.6g)、EG(88.6g)、CHDM(480.3g)、DEG(173.9g)、及びCHDM誘導体(173.9g、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル-4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレート及び4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノールを、モル比1:3で含む)を投入し、続いてGe触媒(3.2g)、Ti触媒(0.3g)、青色トナー(0.020g)、及び赤色トナー(0.005g)をそこへ添加した。
【0153】
続いて、反応器内に窒素を注入し、反応器を標準圧(絶対圧:1,127.8mmHg)より0.5kgf/cm2高く加圧した。次いで、反応器の温度を90分かけて220℃まで上げて、220℃で2時間保持し、次いで温度を2時間かけて260℃まで再度上げた。その後、260℃の温度でエステル化反応を行い、反応器内の混合物が透明になるまで混合物を目視観察した。この手順では、副生成物はカラム及び冷却器を通して排出した。エステル化反応終了後、加圧反応器内の窒素を外部に放出して反応器の圧力を標準圧に下げ、次いで反応器内の混合物を真空下で反応可能な7リットル反応器に移した。
【0154】
次いで、反応器の圧力を30分かけて標準圧から5Torr(絶対圧:5mmHg)まで下げた。同時に、反応器の温度を1時間かけて275℃まで上げて、反応器の圧力を1Torr(絶対圧:1mmHg)以下に保持しながら重縮合反応を行った。重縮合反応の開始時は、撹拌速度を高く設定してもよい。重縮合反応の進行に伴い、反応物の粘度が増大して撹拌力が弱くなるか、又は反応物の温度が設定温度を上回った場合には、それに応じて撹拌速度を適切に調整してもよい。重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.75dl/gに達するまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望のレベルに達した場合、混合物を反応器の外に排出してストランドを形成し、冷却液で固化し、次いで平均重量が約12~14mgとなるように粒状化してポリエステル樹脂(コポリマー)約5kgを調製した。
【0155】
実施例4:ポリエステル樹脂の調製
カラムと、水で冷却できる冷却器とを備えた10リットル反応器に、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(r-BHET_A4、1,182.1g)、TPA(3,090.1g)、EG(692.5g)、CHDM(737.2g)、及びDEG(169.9g)を投入し、続いてTi触媒(0.2g)、青色トナー(0.008g)、及び赤色トナー(0.003g)をそこへ添加した。
【0156】
続いて、反応器内に窒素を注入し、反応器を標準圧(絶対圧:1,495.6mmHg)より1.0kgf/cm2高く加圧した。次いで、反応器の温度を90分かけて220℃まで上げて、220℃で2時間保持し、次いで温度を2時間かけて250℃まで再度上げた。その後、250℃の温度でエステル化反応を行い、反応器内の混合物が透明になるまで混合物を目視観察した。この手順では、副生成物はカラム及び冷却器を通して排出した。エステル化反応終了後、加圧反応器内の窒素を外部に放出して反応器の圧力を標準圧に下げ、次いで反応器内の混合物を真空下で反応可能な7リットル反応器に移した。
【0157】
次いで、反応器の圧力を30分かけて標準圧から5Torr(絶対圧:5mmHg)まで下げた。同時に、反応器の温度を1時間かけて280℃まで上げて、反応器の圧力を1Torr(絶対圧:1mmHg)以下に保持しながら重縮合反応を行った。重縮合反応の開始時は、撹拌速度を高く設定してもよい。重縮合反応の進行に伴い、反応物の粘度が増大して撹拌力が弱くなるか、又は反応物の温度が設定温度を上回った場合には、それに応じて撹拌速度を適切に調整してもよい。重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.82dl/gに達するまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望のレベルに達した場合、混合物を反応器の外に排出してストランドを形成し、冷却液で固化し、次いで平均重量が約12~14mgとなるように粒状化してポリエステル樹脂(コポリマー)約5kgを調製した。
【0158】
実施例5:ポリエステル樹脂の調製
カラムと、水で冷却できる冷却器とを備えた10リットル反応器に、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(r-BHET_A5、2,426.2g)、TPA(2,378.4g)、EG(992.0g)、CHDM(687.7g)、及びCHDM誘導体(173.9g、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル-4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンカルボキシレート及び4-(4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメトキシメチル)シクロヘキシルメタノールを、モル比1:3で含む)を投入し、続いてGe触媒(6.4g)、Ti触媒(0.4g)、青色トナー(0.003g)、及び赤色トナー(0.001g)をそこへ添加した。
【0159】
続いて、反応器内に窒素を注入し、反応器を標準圧(絶対圧:2,231.1mmHg)より2.0kgf/cm2高く加圧した。次いで、反応器の温度を90分かけて220℃まで上げて、220℃で2時間保持し、次いで温度を2時間かけて255℃まで再度上げた。その後、255℃の温度でエステル化反応を行い、反応器内の混合物が透明になるまで混合物を目視観察した。この手順では、副生成物はカラム及び冷却器を通して排出した。エステル化反応終了後、加圧反応器内の窒素を外部に放出して反応器の圧力を標準圧に下げ、次いで反応器内の混合物を真空下で反応可能な7リットル反応器に移した。
【0160】
次いで、反応器の圧力を30分かけて標準圧から5Torr(絶対圧:5mmHg)まで下げた。同時に、反応器の温度を1時間かけて285℃まで上げて、反応器の圧力を1Torr(絶対圧:1mmHg)以下に保持しながら重縮合反応を行った。重縮合反応の開始時は、撹拌速度を高く設定してもよい。重縮合反応の進行に伴い、反応物の粘度が増大して撹拌力が弱くなるか、又は反応物の温度が設定温度を上回った場合には、それに応じて撹拌速度を適切に調整してもよい。重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.78dl/gに達するまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望のレベルに達した場合、混合物を反応器の外に排出してストランドを形成し、冷却液で固化し、次いで平均重量が約12~14mgとなるように粒状化してポリエステル樹脂(コポリマー)約5kgを調製した。
【0161】
実施例6:ポリエステル樹脂の調製
カラムと、水で冷却できる冷却器とを備えた10リットル反応器に、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(r-BHET_A2、4,186.3g)、テレフタル酸(TPA、1,172.5g)、イソフタル酸(IPA、2,735.9g)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM、678.1g)、及びジエチレングリコール(DEG、171.9g)を投入し、続いてTi触媒(0.4g)、リン酸(1.0g)、青色トナー(0.010g)、及び赤色トナー(0.005g)をそこへ添加した。
【0162】
続いて、反応器内に窒素を注入し、反応器を標準圧(絶対圧:2,966.7mmHg)より3.0kgf/cm2高く加圧した。次いで、反応器の温度を90分かけて220℃まで上げて、220℃で2時間保持し、次いで温度を2時間かけて260℃まで再度上げた。その後、260℃の温度でエステル化反応を行い、反応器内の混合物が透明になるまで混合物を目視観察した。この手順では、副生成物はカラム及び冷却器を通して排出した。エステル化反応終了後、加圧反応器内の窒素を外部に放出して反応器の圧力を標準圧に下げ、次いで反応器内の混合物を真空下で反応可能な7リットル反応器に移した。
【0163】
次いで、反応器の圧力を30分かけて標準圧から5Torr(絶対圧:5mmHg)まで下げた。同時に、反応器の温度を1時間かけて275℃まで上げて、反応器の圧力を1Torr(絶対圧:1mmHg)以下に保持しながら重縮合反応を行った。重縮合反応の開始時は、撹拌速度を高く設定してもよい。重縮合反応の進行に伴い、反応物の粘度が増大して撹拌力が弱くなるか、又は反応物の温度が設定温度を上回った場合には、それに応じて撹拌速度を適切に調整してもよい。重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.65dl/gに達するまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望のレベルに達した場合、混合物を反応器の外に排出してストランドを形成し、冷却液で固化し、次いで平均重量が約12~14mgとなるように粒状化してポリエステル樹脂(コポリマー)約5kgを調製した。
【0164】
比較例1:ポリエステル樹脂の調製
カラムと、水で冷却できる冷却器とを備えた10リットル反応器に、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(r-BHET_B1、2,863.5g)、TPA(1,871.4g)、EG(251.6g)、及びCHDM(1,039.0g)を投入し、続いてGe触媒(6.4g)、青色トナー(0.010g)、及び赤色トナー(0.005g)をそこへ添加した。
【0165】
続いて、反応器内に窒素を注入し、反応器を標準圧(絶対圧:1,127.8mmHg)より0.5kgf/cm2高く加圧した。次いで、反応器の温度を90分かけて220℃まで上げて、220℃で2時間保持し、次いで温度を2時間かけて260℃まで再度上げた。その後、260℃の温度でエステル化反応を行い、反応器内の混合物が透明になるまで混合物を目視観察した。この手順では、副生成物はカラム及び冷却器を通して排出した。エステル化反応終了後、加圧反応器内の窒素を外部に放出して反応器の圧力を標準圧に下げ、次いで反応器内の混合物を真空下で反応可能な7リットル反応器に移した。
【0166】
次いで、反応器の圧力を30分かけて標準圧から5Torr(絶対圧:5mmHg)まで下げた。同時に、反応器の温度を1時間かけて280℃まで上げて、反応器の圧力を1Torr(絶対圧:1mmHg)以下に保持しながら重縮合反応を行った。重縮合反応の開始時は、撹拌速度を高く設定してもよい。重縮合反応の進行に伴い、反応物の粘度が増大して撹拌力が弱くなるか、又は反応物の温度が設定温度を上回った場合には、それに応じて撹拌速度を適切に調整してもよい。重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.50dl/gに達するまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望のレベルに達した場合、次いで、混合物を反応器の外に排出してストランドを形成し、冷却液で固化し、次いで平均重量が約12~14mgとなるように粒状化してポリエステル樹脂(コポリマー)約5kgを調製した。
【0167】
比較例2:ポリエステル樹脂の調製
カラムと、水で冷却できる冷却器とを備えた10リットル反応器に、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(r-BHET_B3、4,737.9g)、TPA(774.1g)、EG(968.6g)、CHDM(738.7g)、及びDEG(34.0g)を投入し、続いてTi触媒(0.2g)、青色トナー(0.008g)、及び赤色トナー(0.003g)をそこへ添加した。
【0168】
続いて、反応器内に窒素を注入し、反応器を標準圧(絶対圧:1,495.6mmHg)より1.0kgf/cm2高く加圧した。次いで、反応器の温度を90分かけて220℃まで上げて、220℃で2時間保持し、次いで温度を2時間かけて265℃まで再度上げた。その後、265℃の温度でエステル化反応を行い、反応器内の混合物が透明になるまで混合物を目視観察した。この手順では、副生成物はカラム及び冷却器を通して排出した。エステル化反応終了後、加圧反応器内の窒素を外部に放出して反応器の圧力を標準圧に下げ、次いで反応器内の混合物を真空下で反応可能な7リットル反応器に移した。
【0169】
次いで、反応器の圧力を30分かけて標準圧から5Torr(絶対圧:5mmHg)まで下げた。同時に、反応器の温度を1時間かけて270℃まで上げて、反応器の圧力を1Torr(絶対圧:1mmHg)以下に保持しながら重縮合反応を行った。重縮合反応の開始時は、撹拌速度を高く設定してもよい。重縮合反応の進行に伴い、反応物の粘度が増大して撹拌力が弱くなるか、又は反応物の温度が設定温度を上回った場合には、それに応じて撹拌速度を適切に調整してもよい。重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.70dl/gに達するまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望のレベルに達した場合、次いで、混合物を反応器の外に排出してストランドを形成し、冷却液で固化し、次いで平均重量が約12~14mgとなるように粒状化してポリエステル樹脂(コポリマー)約5kgを調製した。
【0170】
比較例3:ポリエステル樹脂の調製
カラムと、水で冷却できる冷却器とを備えた10リットル反応器に、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(r-BHET_B2、3,036.2g)、TPA(1,984.3g)、EG(652.2g)、CHDM(516.4g)、及びDEG(34.9g)を投入し、続いてGe触媒(3.2g)、Ti触媒(0.4g)リン酸(1.0g)、青色トナー(0.015g)、及び赤色トナー(0.005g)をそこへ添加した。
【0171】
続いて、反応器内に窒素を注入し、反応器を標準圧(絶対圧:1,127.8mmHg)より0.5kgf/cm2高く加圧した。次いで、反応器の温度を90分かけて220℃まで上げて、220℃で2時間保持し、次いで温度を2時間かけて255℃まで再度上げた。その後、255℃の温度でエステル化反応を行い、反応器内の混合物が透明になるまで混合物を目視観察した。この手順では、副生成物はカラム及び冷却器を通して排出した。エステル化反応終了後、加圧反応器内の窒素を外部に放出して反応器の圧力を標準圧に下げ、次いで反応器内の混合物を真空下で反応可能な7リットル反応器に移した。
【0172】
次いで、反応器の圧力を30分かけて標準圧から5Torr(絶対圧:5mmHg)まで下げた。同時に、反応器の温度を1時間かけて270℃まで上げて、反応器の圧力を1Torr(絶対圧:1mmHg)以下に保持しながら重縮合反応を行った。重縮合反応の開始時は、撹拌速度を高く設定してもよい。重縮合反応の進行に伴い、反応物の粘度が増大して撹拌力が弱くなるか、又は反応物の温度が設定温度を上回った場合には、それに応じて撹拌速度を適切に調整してもよい。重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.60dl/gに達するまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望のレベルに達した場合、混合物を反応器の外に排出してストランドを形成し、冷却液で固化し、次いで平均重量が約12~14mgとなるように粒状化してポリエステル樹脂(コポリマー)約5kgを調製した。
【0173】
さらに、実施例及び比較例のそれぞれで調製したポリエステル樹脂のグリコール/二酸のモル比を計算した。さらに、ポリエステル樹脂中のr-BHETの含有量(重量%)を計算した。結果を表2及び3に示す。
【表2】
【表3】
【0174】
試験例1:第1の耐熱性指数
下記式(1)の第1の耐熱性指数を、ポリエステル樹脂について計算した。
【数4】
【0175】
式(1)中、DEG1、DEG2、及びBHET0は、それぞれ、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した場合の、2-ヒドロキシエチル[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]テレフタレート、ビス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]ベンゼン-1,4-ジカルボキシレート及びビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートのピーク面積分率(%)であり、rBHETは、ポリエステル樹脂中の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの重量分率(%)である。これらのパラメータ(DEG1、DEG2、BHET0、rBHET)の単位を除く数値のみを式(1)に入れて、第1の耐熱性指数(単位なし)を計算した。
【0176】
試験例2:第2の耐熱性指数
下記式(2)の第2の耐熱性指数を、ポリエステル樹脂について計算した。
第2の耐熱性指数=(G/A)×0.32+0.83...(2)
【0177】
式(2)中、G及びAは、それぞれ、ポリエステル樹脂を構成するモノマー中のグリコールのモル数及び二酸のモル数であり、G/Aはグリコールと二酸のモル比である。
【0178】
試験例3:第3の耐熱性指数
上記で得られた第1の耐熱性指数及び第2の耐熱性指数を使用して、下記式(3)の第3の耐熱性指数を計算した。
第3の耐熱性指数=第1の耐熱性指数+第2の耐熱性指数...(3)
【0179】
試験例4:形成されたDEGの量
ポリエステル樹脂の重合のために供給されたモノマー混合物に含有されている全グリコール成分のうち、ジエチレングリコールモノマーの含有量(モル%)を計算し、これを「添加されたDEGの量」と称した。さらに、重合時の最終ポリエステル樹脂に含有されている全グリコール残基に対するジエチレングリコール残基の含有量(モル%)を計算し、これを「残留DEGの量」と称した。ジエチレングリコール残基の含有量は、核磁気共鳴装置(JEOL、600MHz FT-NMR)を使用して、各ポリエステル樹脂をCDCl3溶媒に3mg/mlの濃度で溶解することによって25℃で得た1H-NMRスペクトルから決定しされた。
【0180】
これらを使用して、形成されたDEGの量を下記式(B)に従って計算した。
形成されたDEGの量=残留DEGの量-添加されたDEGの量...(B)
【0181】
試験例5:固有粘度(IV)
ポリエステル樹脂を150℃でオルトクロロフェノール(OCP)に0.12%の濃度で溶解させて溶液を得て、35℃の恒温浴中でウベローデ粘度計を使用して固有粘度を測定した。具体的には、粘度管の温度を35℃に保持し、溶媒が粘度管の内部の特定の部分を通過するのに要する時間(流下時間)、及び溶液が通過して特定の粘度が得られるのに要する時間を、固有粘度を計算するために使用した。
【0182】
試験例6:ガラス転移温度(Tg)
各ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定法(DSC)により測定した。Mettler ToledoのDSC1モデルを測定デバイスとして使用した。具体的には、分析するポリエステル樹脂試料を、除湿乾燥機(Moretoのモデル名D2T)を使用して、窒素雰囲気中、60℃で5~10時間乾燥させた。このように、試料中の残留水分含有量が500ppm未満となる条件下で、Tgを測定した。乾燥試料約6~10mgを採取し、アルミニウムパンに充填し、室温から280℃に10℃/分の速度で加熱し(第1の走査)、280℃で3分間アニーリングした。その後、試料を室温までクエンチし、再び室温から280℃に10℃/分の速度で加熱し(第2の走査)、DSC曲線を得た。さらに、Tg値はMettler Toledoが提供するプログラム(STAReソフトウェア)のDSCメニューにあるガラス転移ファンクションにより、DSC第2の走査で分析した。ここで、Tgは、加熱手順中に、第2の走査で得られたDSC曲線が、最初に段階的に変化する点において、曲線の最大傾きが現れる温度として定義される。走査の温度範囲は、プログラムによって計算された中間点の-20℃~15℃から、15℃~20℃に設定した。
【0183】
試験例7:熱収縮率
(1)ポリエステルフィルムの調製
各ポリエステル樹脂は、250~290℃の温度でダイから押し出し、20~50℃の温度でキャストした。キャストフィルムを75~90℃で再加熱しながら、横方向(TD)のみに5倍延伸した(すなわち、MD延伸倍率:TD延伸倍率=1:5)。その結果、50μmの厚さを有するポリエステルフィルムを得た。
【0184】
(2)熱収縮率の測定
ポリエステルフィルムについて、以下のように熱収縮率を測定した。
各フィルムを長さ5cm×幅5cmに切断し、室温(20℃)で保存した。
熱処理条件:フィルム試料を70℃の熱水に10秒間浸漬し、次いで取り出した。
熱処理前の寸法(すなわち、室温寸法)及び熱処理後の寸法をフィルム試料の横方向(TD)で測定し、下記式に従って熱収縮率を計算した。
熱収縮率(%)=[(熱処理前の寸法-熱処理後の寸法)/熱処理前の寸法]×100
【0185】
さらに、熱処理前後の寸法を縦方向(MD)で測定し、上記式に従って熱収縮率を計算した。次いで、上記に-1を乗じて熱膨張率(%)を計算した。その後、横方向(TD)における熱収縮率及び縦方向(MD)における熱膨張率(%)の合計を求めた。
【0186】
試験例8:熱収縮率の傾き
下記式(A)による熱収縮率の傾きを、試験例6~8の方法を介して求めた。
【数5】
【0187】
式(A)中、HS1は、ガラス転移温度(Tg)での熱収縮率(%)であり、HS2は、ガラス転移温度(Tg)-5℃の温度での熱収縮率(%)であり、熱収縮率は、各温度でフィルムの横方向(TD)で測定する。
【0188】
【0189】
上記表から分かるように、実施例1~6のポリエステル樹脂は、第1の耐熱性指数が1.0以下、第2の耐熱性指数が1.6以下、及び第3の耐熱性指数が2.0以下であった。いずれも固有粘度に優れていた。これに対し、比較例1~3のポリエステル樹脂は、耐熱性指数が好ましい範囲を外れており、溶融固有粘度が比較的劣っていた。
【0190】
特に、実施例1~6のポリエステル樹脂は、形成されたDEGの量が5モル%以下であり、ガラス転移温度(Tg)が高いため、耐熱性に優れていた。これらのポリエステル樹脂から調製した各フィルムの熱収縮率の傾きは600%/℃以下であり、良好な収縮特性を示し、低温(70℃)でのTD熱収縮率+MD熱膨張率は65%以下で良好であった。これに対し、比較例1~3のポリエステル樹脂は、形成されたDEGの量が5モル%より大きく、ガラス転移温度(Tg)が比較的低いため、耐熱性が劣っていた。これらのポリエステル樹脂から調製したフィルムの熱収縮率の傾きは600%/℃より大きく、収縮特性が劣ることを示し、低温(70℃)でのTD熱収縮率+MD熱膨張率は65%より大きいか不均一であり、市販されている熱収縮性フィルムプロセスにはほとんど適用できない。
【国際調査報告】