(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】溶融金属を処理するための回転デバイス
(51)【国際特許分類】
B22D 1/00 20060101AFI20241022BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20241022BHJP
B22D 43/00 20060101ALI20241022BHJP
F27D 27/00 20100101ALI20241022BHJP
C22B 9/05 20060101ALI20241022BHJP
C22B 21/06 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B22D1/00 K
F27D7/02 Z
B22D43/00 Z
F27D27/00
C22B9/05
C22B21/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517389
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2022076133
(87)【国際公開番号】W WO2023046701
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511239074
【氏名又は名称】フォセコ インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Foseco International Limited
【住所又は居所原語表記】1 Midland Way,Central Park,Barlborough Links,Derbyshire S43 4XA,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナグ,ナゲンドラ
(72)【発明者】
【氏名】シ,ウェンウ
【テーマコード(参考)】
4K001
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001BA23
4K001EA03
4K056EA12
4K056EA14
4K063AA03
4K063BA03
4K063CA06
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、溶融金属を処理するための回転デバイスと、回転デバイスと共に使用するロータとに関する。その回転デバイスは、中空シャフトと、中空シャフトの一端にあるロータとを備えており、ロータは、離間しているルーフ部及びベース部であって、複数の仕切り部によって繋がっているルーフ部及びベース部と、ルーフ部とベース部の間に画定されている中央チャンバであって、複数の仕切り部が中央チャンバの周囲から径方向に延びている、中央チャンバと、隣接する各対の仕切り部の間に画定された通路であって、各通路は、中央チャンバの径方向外側に位置する入口と、ロータの外周面にある出口とを有する、通路と、中空シャフトを通って中央チャンバに入り、複数の通路の入口を通って複数の通路の出口から出るように画定された流路とを備えている。ベース部は、中央チャンバに流体連通している複数のアパーチャと、隣接する各対のアパーチャの間に画定された径方向ブレードと、中央アパーチャと、ベース部から外向きに突出する複数の径方向ベーンとを備えており、複数の径方向ベーンは、中央アパーチャの周囲に配置されており、複数の径方向ベーンは、ベース部の中心に向かって、中央アパーチャの少なくとも一部にわたって延びている。或いは、ベース部は、中央アパーチャと、ベース部から外向きに突出し、中央アパーチャの周囲に配置された複数の径方向ベーンとを備えており、ベース部は、複数の径方向ベーンの間に配置された複数の切欠きを更に備えており、ベース部の複数の切欠きは、ロータの外周から内向きに延びている。
【選択図】
図2c
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を処理するための回転デバイスであって、中空シャフトと、前記中空シャフトの一端にあるロータとを備えており、
前記ロータは、
ルーフ部及びベース部であって、前記ルーフ部及び前記ベース部は離間しており、複数の仕切り部によって繋がっている、ルーフ部及びベース部と、
前記ルーフ部と前記ベース部の間に画定されている中央チャンバであって、前記複数の仕切り部は前記中央チャンバの周囲から径方向に延びている、中央チャンバと、
隣接する各対の仕切り部の間に画定された通路であって、各通路は、前記中央チャンバの径方向外側に位置する入口と、前記ロータの外周面にある出口とを有する、通路と、
前記中空シャフトを通って前記中央チャンバに入り、前記複数の通路の入口を通って前記複数の通路の出口から出るように画定された流路と、
を備えており、
前記ベース部は、前記中央チャンバに流体連通している複数のアパーチャと、隣接する各対のアパーチャの間に画定された径方向ブレードとを備えている、回転デバイス。
【請求項2】
前記ベース部は、少なくとも3つのアパーチャと、少なくとも3つの径方向ブレードとを備えている、請求項1に記載の回転デバイス。
【請求項3】
前記径方向ブレードは、前記ベース部の平面から外向きに突出している、請求項1又は請求項2に記載の回転デバイス。
【請求項4】
前記径方向ブレードは、回転軸に垂直な平面に対して斜めに傾いており、前記径方向ブレードは、前記ベース部を通って前記中央チャンバに入る流体を減速させるように構成されている、請求項1乃至3の何れかに記載の回転デバイス。
【請求項5】
溶融金属を処理するための回転デバイスであって、中空シャフトと、前記中空シャフトの一端にあるロータとを備えており、前記ロータは、
ルーフ部及びベース部であって、前記ルーフ部及び前記ベース部は離間しており、複数の仕切り部によって繋がっている、ルーフ部及びベース部と、
前記ルーフ部と前記ベース部の間に画定された中央チャンバと、
隣接する各対の仕切り部の間に画定された通路であって、各通路は、前記中央チャンバの径方向外側に位置する入口と、前記ロータの外周面にある出口とを有する、通路と、
前記中空シャフトを通って前記中央チャンバに入り、前記複数の通路の入口を通って前記複数の通路の出口から出るように画定された流路と、
を備えており、
前記ベース部は、中央アパーチャと、前記ベース部から外側に突出する複数の径方向ベーンとを備えており、前記複数の径方向ベーンは前記中央アパーチャの周囲に配置されており、
前記複数の径方向ベーンは、前記ベース部の中心に向かって前記中央アパーチャの少なくとも一部にわたって延びている、回転デバイス。
【請求項6】
溶融金属を処理するための回転デバイスであって、中空シャフトと、前記中空シャフトの一端にあるロータとを備えており、前記ロータは、
ルーフ部及びベース部であって、前記ルーフ部及び前記ベース部は離間しており、複数の仕切り部によって繋がっている、ルーフ部及びベース部と、
前記ルーフ部と前記ベース部の間に画定された中央チャンバと、
隣接する各対の仕切り部の間に画定された通路であって、各通路は、前記中央チャンバの径方向外側に位置する入口と、前記ロータの外周面にある出口とを有する、通路と、
前記中空シャフトを通って前記中央チャンバに入り、前記複数の通路の入口を通って前記複数の通路の出口から出るように画定された流路と、
を備えており、
前記ベース部は、中央アパーチャと、前記ベース部から外向きに突出する複数の径方向ベーンとを備えており、前記複数の径方向ベーンは、前記中央アパーチャの周囲に配置されており、
前記ベース部は、前記複数の径方向ベーンの間に配置された複数の切欠きを更に備えており、前記ベース部の前記複数の切欠きは前記ロータの外周から内向きに延びている、回転デバイス。
【請求項7】
前記ベース部の前記複数の切欠きは、断面が部分円形又は半円形である、請求項6に記載の回転デバイス。
【請求項8】
前記ベース部は少なくとも4つの切欠きを備える、請求項6又は請求項7に記載の回転デバイス。
【請求項9】
前記ロータは、少なくとも4つの仕切り部と、それらの間に画定された少なくとも4つの通路とを備えている、又は、前記ロータは、少なくとも6つの仕切り部と、それらの間に画定された少なくとも6つの通路とを備えている、請求項1乃至8の何れかに記載の回転デバイス。
【請求項10】
各通路は、前記ロータの前記ルーフ部に第2の出口を備える、請求項1乃至9の何れかに記載の回転デバイス。
【請求項11】
各第2の出口は、前記ルーフ部の外周から内向きに延びる切欠きであって、任意選択的に、その切欠きの断面は部分円形又は半円形である、請求項10に記載の回転デバイス。
【請求項12】
前記ルーフ部の内面は、前記中央チャンバと少なくとも1つの第2の出口との間に延びる溝を備えている、請求項10又は請求項11に記載の回転デバイス。
【請求項13】
前記ルーフ部の内面は、前記ルーフ部の気泡を前記中央チャンバへと下向きに、前記ロータの前記ベース部に向かって導くための流れ誘導部材を備えている、請求項1乃至12の何れかに記載の回転デバイス。
【請求項14】
前記ロータは、アイソスタティック成形された耐熱材料から作られる、請求項1乃至13の何れかに記載の回転デバイス。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れかに記載の回転デバイスで使用するためのロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属を処理するための回転デバイスに関する。特に、本発明は、溶存ガスや固体含有物などの望ましくない不純物を溶融金属から除去するための回転デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造用途(特に、アルミニウム又はアルミニウム合金などの非鉄金属の鋳造)の場合、溶融金属は、鋳造前に、典型的には以下のプロセスのうちの1つ又は複数によって処理される必要がある。
【0003】
i)脱ガス-溶融金属中の溶存ガスの存在は、凝固した製品に欠陥をもたらして、その機械的特性に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、水素は、液体アルミニウム中で高い溶解度を有しており、当該溶解度は溶融温度と共に増加するが、固体アルミニウム中でのその溶解度は非常に低い。その結果、アルミニウムが冷却すると水素ガスが放出されて、これによって凝固した鋳造物中にブローホールが生じる。凝固速度は、気泡の量及びサイズに影響を及ぼす。幾つかの用途では、ピンホール多孔性は、金属鋳造物の機械的強度及び耐圧性に深刻な影響を及ぼすことがある。ガスはまた、空隙及び不連続部(例えば、酸化介在物)へと拡散することがあり、これによって、アルミニウム又はアルミニウム合金から作製されるプレート、シートやストリップの製造中にブリスター形成が起こることがある。
【0004】
ii)結晶粒微細化-凝固金属の結晶粒径を制御することによって、鋳造物の機械的特性を改善させることができる。鋳造金属の粒径は、凝固し始める際に液体金属中に存在する核の数と冷却速度とに依存する。冷却速度をより速くすると一般的に粒径はより小さくなり、溶融物に特定の元素を添加することで、粒子成長のために更なる核を提供することができる。
【0005】
iii)改質-金属合金の微細構造及び特性を、ナトリウム又はストロンチウムなどの特定の「改質」元素を少量添加することによって改善させることができる。改質は、高温引裂抵抗(hot tear resistance)を増加させ、合金供給特性を改善し、収縮鋳巣(shrinkage porosity)を減少させる。
【0006】
iv)浄化及びアルカリ除去-高濃度のアルカリ元素は、合金特性に悪影響を及ぼす可能性があり、故に、これらのアルカリ元素を、除去又は低減する必要がある。例えば、鋳造合金中におけるカルシウムの存在は、改質などの他の処理プロセスを妨害する可能性がある一方で、ナトリウムの過剰濃度は、鍛造アルミニウム合金の延性特性に有害な影響を及ぼす可能性がある。凝固した金属に混入した酸化物、炭化物、ホウ化物などの非金属介在物の存在も、金属の物理的及び機械的特性に悪影響を及ぼす可能性があることから、これらも除去する必要がある。
【0007】
上記の処理プロセスは、様々な方法及び装置によって、個々に又は同時に実施され得る。
【0008】
溶融金属の脱ガスは通常、回転式脱ガスユニット(「RDU」)を使用して行われており、当該回転式脱ガスユニットは、塩素、アルゴン、窒素、又はそれらの混合物等の乾燥不活性ガスの微細気泡で溶融金属をフラッシュする。RDUは典型的には、ロータが取り付けられる中空シャフトを備えている。使用時には、シャフト及びロータが回転し、ガスは、下方へとシャフトを通過してロータを介して溶融金属中に分散する。ロータを通してガスを導入することにより、非常に微細な気泡が多数発生し、これらの気泡は、溶融物の底部まで分散する。これらの気泡が溶融物を通って上昇することで、水素は気泡中に拡散し、気泡が表面に到達すると大気中に放出される。そして、上昇する気泡は、固体含有物を集めてそれらを溶融物の最上部に運ぶので、そこでそれらをすくい取ることができる。水素(及び酸化介在物)を除去するためにガスを導入することに加えて、回転式脱ガスユニットは、不活性ガスと共にシャフトを通して又はシャフトに隣接する管を通して金属処理剤を溶融物に注入するために使用されてよい。
【0009】
回転式脱ガスユニットで使用する回転デバイスの一例は、国際公開第2004/057045号に記載されており、本願の
図1に示されている「XSRロータ」(従来技術のロータ1)である。回転デバイス2は、貫通するボア4aを有する中空シャフト4を備えており、この中空シャフト4は、一端でロータ6に接続される。ロータ6は概ね円盤状であり、環状ベース部10から離間している環状上側ルーフ部8を備える。開放チャンバ12がベース部10の中央に設けられており、ルーフ部8まで上方に延びている。ルーフ部8とベース部10とは4つの仕切り部14によって接続されており、それら仕切り部14は、チャンバ12の周囲からロータ6の周囲まで外側に延びている。区画16は、隣接する仕切り部14の各対と、ルーフ部8と、ベース部10との間で画定されている。ルーフ部8の周縁8aには、複数(本実施形態では8個)の半円状の切欠き18が設けられている。各切欠き18は、その個々の区画16のための第2の出口として働く。
【0010】
アルミニウムのような溶融金属を処理するためのロータは、従来、黒鉛の中実ブロックを所望の形状に機械加工することによって製造されてきた。しかしながら、機械加工は、困難で費用のかかるプロセスであることがあり、穿孔工具には視線アクセス(line-of-sight access)が必要とされるので、特にロータの内面に複雑な形状を生成するにはあまり適していない。機械加工はまた、ロータを作製することができる材料の選択を制限する。これは、穿孔工具は、より耐久性の高い又はより研磨性の高いセラミック材料に穴を開けることができない場合があるからである。さらに、機械加工の不具合は、製造材料の強度に、ひいては、ロータの寿命に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0011】
本発明の発明者は、アイソスタティック成形を使用して犠牲コアの周りに製造材料をプレスして、その後コアを除去することによって、視線アクセスが必要とされないことから特にロータの内部で、非常に複雑なロータ設計を実現することができることを見出した。さらに、この新しい製造方法は、機械加工によって成形することが困難なアルミナ、炭素結合アルミナ、或いは、他の耐熱性金属酸化物、炭化物、又は窒化物のような、より耐久性の高い材料をロータに使用することを可能にする。犠牲コアの周りにロータをアイソスタティック成形することによって、ロータの表面仕上げもまた大幅に改善され、表面が非常に滑らかになり、ガウス表面曲率と非ガウス表面曲率との間で継ぎ目なく結合する。
【0012】
したがって、本発明は、機械加工などの従来方法によって製造することが以前には不可能であって、より耐久性のある材料から製造することができるような、完全に新規で改良されたロータ設計を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、溶融金属を処理するための回転デバイスが提供され、このデバイスは、中空シャフトと、中空シャフトの一端にあるロータとを備えている。そのロータは、離間しているルーフ部及びベース部であって、複数の仕切り部によって繋がっているルーフ部及びベース部と、ルーフ部とベース部の間に画定されている中央チャンバであって、複数の仕切り部が中央チャンバの周囲から径方向に延びている、中央チャンバと、隣接する各対の仕切り部の間に画定された通路であって、各通路は、中央チャンバの径方向外側に位置する入口と、ロータの外周面にある出口とを有する、通路と、中空シャフトを通って中央チャンバに入り、複数の通路の入口を通って複数の通路の出口から出るように画定された流路とを備えている。ベース部は、中央チャンバと流体連通している複数のアパーチャと、隣接する各対のアパーチャの間に画定された径方向ブレードとを備えている。
【0014】
デバイスは、中空シャフトの長さに沿って延びる長手方向軸を有しており、本明細書で使用される用語「径方向の」及び用語「径方向に」は、ロータの中心とロータの外周との間で長手方向軸に垂直な方向に延びることを意味することは理解されるであろう。ロータの断面は略円形であって、ロータの中心とロータの外周の間に半径が延びてよい。通常、ロータのルーフ部とベース部は、長手方向軸に垂直で互いに平行な平面内にある。
【0015】
ロータは、中空シャフトと一体的に形成されてよい。あるいは、ロータは、中空シャフトに取り付けられた、例えば、ねじ留めされた、押し嵌めされた、又はロック機構若しくは接着剤によって固定された別個の構成要素であってよい。
【0016】
使用時において、径方向ブレードは、中空シャフトを通して注入されたガスの気泡を細かく切り刻んで、より小さくより多数の気泡を生成するのを助ける。気泡のサイズを減少させてその数を増加させることは、溶融物全体にわたって気泡の分散を改善し、所与の回転速度での脱ガス及び浄化効率を有意に増加させ、それによって処理時間を短縮し、或いは、より低い回転速度で同一の脱ガス及び浄化効率を維持して、それによってシャフト及びロータの寿命を延長させる。さらに、気泡が小さくなるほど、溶融物を通る上昇速度が遅くなり、ひいては、水素が気泡内に拡散するまでの溶融物内での残留時間が長くなり得る。
【0017】
複数のアパーチャは、ベース部の中央に位置してよい。ベース部は環状であってよい。複数のアパーチャは、中空シャフト及び/又は中央チャンバの軸方向に位置してよい。幾つかの実施形態では、ロータのベース部は、少なくとも3つのアパーチャと、少なくとも3つの径方向ブレードとを備えている。幾つかの実施形態では、ロータのベース部は、3つ、4つ、5つ、又は6つのアパーチャ及び径方向ブレードを備えている。幾つかの実施形態では、径方向ブレードは等しく離間しており、タービン状構成をなしている。
【0018】
幾つかの実施形態では、径方向ブレードは、ベース部の平面内に位置しており、ベース部の平面から外向きに突出しない。代替的な実施形態では、径方向ブレードは、ベース部の平面から外向きに突出する。径方向ブレードは、長手方向軸方向に測定されると、ベース部の高さ以下である高さまで突出してよい。径方向ブレードは、中央チャンバから離れるようにベース部から延びてよい。幾つかの実施形態では、径方向ブレードは、ベース部とルーフ部の間の領域へと延びていない。
【0019】
幾つかの実施形態では、径方向ブレードは、ベース部の中央に位置する中央ハブによって互いに接続される。中央ハブの形状は、円形であってよい。中央ハブは、径方向ブレードに構造的支持を提供してよい。
【0020】
幾つかの実施形態では、径方向ブレードは、ベース部の平面及び/又はロータの回転軸に垂直な平面に対して角度を付けられており、例えば、傾斜している。例えば、径方向ブレードは、インペラを形成してよい。径方向ブレードは、30°乃至90°、40°乃至80°、50°乃至70°、又は約60°のブレード角αを有してよい。
【0021】
使用時に、回転デバイスは、ロータを通る流体流路(例えば、溶融金属のための液体流路)を生成するように構成されてよい。流体流路は、複数のアパーチャを通って中央チャンバまで軸方向に画定されてよく、続いて、中央チャンバから隣接する各対の仕切り部の間の通路を通って径方向に画定されてよい。例えば、ロータは、ベース部を通して液体を引き込み、それを径方向外側に押し出すように構成されてよい。径方向ブレードは、流体流路に対して斜めに傾いていてよい。
【0022】
一連の実施形態において、径方向ブレードは、流体流路に対してポジティブな角度をなしており、即ち、ロータの回転が流体流路の流体流れを増加させるように角度をなしている。これは、ロータを通る流体の流量、速度、又は体積を増加させるために望ましいことがある。このような実施形態では、中央チャンバに最も近い径方向ブレードの部分が後縁を形成する。言い換えると、ブレードは上向きに傾いている。
【0023】
更なる一連の実施形態では、径方向ブレードは、ベース部を通過する流体を減速させるように、例えば、ベース部を通って中央チャンバに進入する流体を減速させるように構成されている。径方向ブレードは、流体流路に対してネガティブな角度をなしてよく、即ち、ロータの回転が流体流路の流体流れを減少させるように角度をなしてよい。これは、ロータ内の流体の滞留時間を増加させて、及び/又は、ロータが気泡を細断する若しくは分散させるための時間を増加させて、流体(例えば、液体金属又はその中のガスの何れか)に及ぼされる剪断力を長引かせるために望ましいことがある。このような実施形態では、中央チャンバに最も近い径方向ブレードの部分が前縁を形成する。換言すれば、ブレードは、下向きに傾いている。
【0024】
径方向ブレードがポジティブに角度を付けられる(例えば、上向き)か、又はネガティブに角度を付けられる(例えば、下向き)かは、ロータの回転方向に依存することは理解されるであろう。この文脈においては、ポジティブな角度及びネガティブな角度は、ロータの残りの部分とロータの意図された回転方向とに対して見られることが意図されている。例えば、径方向ブレードがネガティブに角度付けされている実施形態では、これは、ロータの構成によって決定される回転方向に対して、例えば、径方向ブレードが、仕切り部及び/又はアパーチャなどのロータの他の構成要素に対して反対方向に角度付けされ得ることを意味することが意図されている。幾つかの実施形態では、ロータが何れかの方向に回転可能であることが意図され得る。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、溶融金属を処理するための回転デバイスが提供され、このデバイスは、中空シャフトと、中空シャフトの一端にあるロータとを備えている。ロータは、離間しているルーフ部及びベース部であって、複数の仕切り部によって繋がっているルーフ部及びベース部と、ルーフ部とベース部の間に画定された中央チャンバと、隣接する各対の仕切り部の間に画定された通路であって、各通路は、中央チャンバの径方向外側に位置する入口と、ロータの外周面にある出口とを有する、通路と、中空シャフトを通って中央チャンバに入り、複数の通路の入口を通って複数の通路の出口から出るように画定された流路とを備えている。ロータのベース部は、中央アパーチャと、ベース部から外向きに突出する複数の径方向ベーンとを備えており、複数の径方向ベーンは、中央アパーチャの周囲に配置されている。径方向ベーンは、ベース部の中心に向かって、少なくとも部分的に中央アパーチャにわたって延びている。
【0026】
「ベース部の中心」は、デバイスの長手方向軸に沿ってではなく、ロータの外周からベース部の平面に沿って測定された中心点を意味することが意図されていることが理解されるであろう。外向きに延びるベーンは、軸方向に、及び/又はベース部から中央チャンバと反対方向に延びてよい。
【0027】
使用時に、中央アパーチャにわたって少なくとも部分的に延びる径方向ベーンは、第1の態様のロータの径方向ブレードと同様の効果を、即ち、中空シャフトを通して注入された気泡を細断する効果を達成する。加えて、突出したベーンは、ロータによって達成されるトルクと気泡の方向性のある流れとを増大させ得る。
【0028】
幾つかの実施形態では、ロータのベース部は、少なくとも3つのアパーチャと、少なくとも3つの径方向ベーンとを備える。幾つかの実施形態では、ロータのベース部は、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つの径方向ベーンを備える。ベーンの数を増加させると、製造の複雑さが増して各ベーンの断面積が減少するので、これらの因子とロータ性能とのバランスを取る必要があることは理解されるであろう。
【0029】
本発明の第3の態様によれば、溶融金属を処理するための回転デバイスが提供され、このデバイスは、中空シャフトと、中空シャフトの一端にあるロータとを備えている。ロータは、離間しているルーフ部及びベース部であって、複数の仕切り部によって繋がっているルーフ部及びベース部と、ルーフ部とベース部の間に画定された中央チャンバと、隣接する各対の仕切り部の間に画定された通路であって、各通路は、中央チャンバの径方向外側に位置する入口と、ロータの外周面にある出口とを有する、通路と、中空シャフトを通って中央チャンバに入り、複数の通路の入口を通って複数の通路の出口から出るように画定された流路とを備えている。ロータのベース部は、中央アパーチャと、ベース部から外向きに突出する複数の径方向ベーンとを備えており、複数の径方向ベーンは、中央アパーチャの周囲に配置されている。ベース部は、複数の径方向ベーンの間に配置された複数の切欠きを更に備えており、それらの切欠きは、ロータの外周からベースの中央へと内向きに延びている。
【0030】
使用時において、ベースの切欠きは、第1の態様のロータの径方向ブレードと同様の効果を、即ち、中空シャフトを通して注入された気泡を細断する効果を達成する。径方向ベーンは、ロータによって達成されるトルク及び気泡の方向性のある流れを増大させ得る。加えて、ベースの切欠きは、ロータによって達成されるトルク及び気泡の方向性のある流れを増大させ得る。
【0031】
幾つかの実施形態では、ベース部は、少なくとも3つの切欠きを備える。幾つかの実施形態では、ベース部は、3つ、4つ、5つ、又は6つの切欠きを備える。
【0032】
幾つかの実施形態では、ベース部の各切欠きの縁部は、ベース部の平面及び/又は回転軸に垂直な平面に対して傾いている。幾つかの実施形態では、ベース部の各切欠きの縁部は、ベース部の平面に対して20°乃至70°の角度で傾いている。意図した回転方向に対して各切欠きの縁部を傾斜させることは、ロータが溶融物内で回転する際の抗力係数を低減して、所与の回転速度に必要な撹拌動力の量を低減することに役立つ。各切欠きの縁部を傾けることは、等方圧プレス(iso-pressing)による製造の容易さを改善し得る。
【0033】
幾つかの実施形態では、ベース部の切欠きの断面(即ち、切欠きを通る軸方向断面)は、部分円形又は半円形である。断面は、回転軸に対して垂直であってよい。幾つかのそのような実施形態では、各切欠きの縁部は、ベース部の平面に対してある角度で傾いており、そのピッチ角度は縁部の長さに沿って変ってよい。幾つかの実施形態では、縁部の一端は20°乃至70°の角度で傾いており、縁部の他端は110°乃至160°の角度で傾いている。
【0034】
ベース部の切欠きは、ロータの外周からベース部の中心に向かって内向きに延びる。幾つかの実施形態では、切欠きは、ロータの半径の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも40%だけ内向きに延びる。幾つかの実施形態では、切欠きは、ロータの半径の50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は10%以下だけ内向きに延びる。幾つかの実施形態では、切欠きは、ロータの半径の5乃至50%まで内向きに延びる。
【0035】
幾つかの実施形態では、径方向ベーンは、ベース部を通る仕切り部の延長である。
【0036】
幾つかの実施形態では、径方向ベーンはテーパ状になっており、各ベーンの幅は、ロータの外周から中央アパーチャまで減少する。
【0037】
以下の任意選択的な特徴は、上述した本発明の第1、第2又は第3の態様の任意の実施形態に等しく適用され得る。
【0038】
幾つかの実施形態では、径方向ブレード又はベーンは、対称的に配置される。幾つかの実施形態では、径方向ブレード又はベーンは、互いから等しく離間している。
【0039】
幾つかの実施形態では、径方向ブレード又はベーンは、ベース部の平面に対してある角度で傾いている。幾つかの実施形態では、径方向ブレード又はベーンは、ベース部の平面に対して20°乃至70°の角度で傾いている。幾つかの実施形態では、径方向ブレード又はベーンは湾曲している。幾つかの実施形態では、径方向ブレード又はベーンは、湾曲しており、且つベース部の平面に対してある角度で傾いている。ブレード/ベーンをある角度で傾けること、又は、ブレード/ベーンを意図した回転方向へと湾曲させることは、ロータが溶融物内で回転するときの抗力係数を低減して、所与の回転速度に必要な撹拌動力の量を低減することに役立つ。
【0040】
幾つかの実施形態では、ロータは、少なくとも4つの仕切り部と、それらの間に画定される少なくとも4つの通路とを備えているか、又は、少なくとも6つの仕切り部と、それらの間に画定される少なくとも6つの通路とを備えている。幾つかの実施形態では、ロータは、4つの仕切り部及び4つの通路、5つの仕切り部及び5つの通路、6つの仕切り部及び6つの通路、7つの仕切り部及び7つの通路、又は、8つの仕切り部及び8つの通路を備えている。
【0041】
幾つかの実施形態では、仕切り部は、ベース部の平面に対して垂直に向けられる。あるいは、仕切り部は、ベース部の平面に対してある角度で方向付けられてよい。幾つかの実施形態では、仕切りは、ベース部の平面に対して20°乃至70°の角度に向けられる。
【0042】
仕切り部は、ベース部とルーフ部との間で軸方向に延びてよい。任意選択的に、仕切り部はベース部を越えて延びない。仕切り部は、ベース部の複数のアパーチャ及び/又は径方向ブレードから離間してよい。ベース部から延びるベーンを備える実施形態では、仕切り部は、ベース部からベーンとは反対方向に延びてよい。
【0043】
幾つかの実施形態では、各通路は、ロータのルーフ部に第2の出口を備えている。第2の出口は、使用時にロータから上方にガスを分散させてよい。横方向に向けられた出口と上方に向けられた出口とを組み合わせることにより、より小さい、より多数の気泡を生成することが可能になり、本出願人の以前の特許EP1573077に記載されているように、脱ガス効率及び浄化効率が向上することが分かっている。
【0044】
幾つかの実施形態では、各第2の出口は、ルーフ部の外周から内向きに延びる切欠きである。切欠きは、断面が部分円形又は半円形であってよい。幾つかの実施形態では、切欠きは、ロータの半径の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも40%だけ内向きに延びる。幾つかの実施形態では、切欠きは、ロータの半径の50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は10%以下だけ内向きに延びる。幾つかの実施形態では、切欠きは、ロータの半径の5乃至50%だけ内向きに延びる。
【0045】
幾つかの実施形態では、ルーフ部の切欠きは、ルーフ部の平面に対して垂直にルーフ部を貫通して延びる。幾つかの実施形態では、ルーフ部の切欠きは、ルーフ部の平面に対してある角度でルーフ部を通って延びている。幾つかの実施形態では、ルーフ部の切欠きは、ルーフ部の平面に対して20°乃至70°の角度でルーフ部を通って延びている。幾つかの実施形態では、ルーフ部の切欠きは、ルーフ部の平面に対して110°乃至160°の角度でルーフ部を通って延びている。仕切り部及び/又は径方向のベーン/ブレードがベース部の平面に対してある角度で向き付けられている実施形態では、切欠きは、仕切り部の角度及び/又は径方向のベーン/ブレードの角度の何れかと同じ角度又は反対の角度でルーフ部を通って延びてよい。
【0046】
幾つかの実施形態では、ルーフ部の内面は、中央チャンバと少なくとも1つの第2の出口との間に延びる溝とを備えている。溝は、シャフトを通して注入されたガスの一部が、第2の出口により効率的に導かれることを可能にし得る。
【0047】
幾つかの実施形態では、ロータのルーフ部には、ロータを貫通する中央ボアが設けられており、ガスが中空シャフトからロータの中央チャンバに注入できるようになっている。
【0048】
幾つかの実施形態では、ルーフ部の内面は、ルーフ部内の気泡を中央チャンバへと下方に且つロータのベース部に向かって導くための内部流れ誘導部材を備えている。幾つかの実施形態では、流れ誘導部材は環状壁を備える。幾つかの実施形態では、環状壁は、ルーフ部の中央ボアの円周の周囲に延びている。環状壁は、ルーフ部で最も広く、ロータのベース部に向かって延びるにつれて狭くなるようにテーパ状にされてよい。幾つかの実施形態では、環状壁は、概ねルーフ部とベース部の間の方向に延びる複数の開放チャネルを備えている。チャネルは、ルーフ部からの気泡に下向きの螺旋流パターンを与えるように湾曲してよい。
【0049】
幾つかの実施形態では、ロータのルーフ部及びベース部は、略円盤状である。
【0050】
幾つかの実施形態では、ロータは、アイソスタティック成形された耐熱材料から作られる。金属酸化物、炭化物、又は窒化物を含む耐熱性混合物のような等方圧プレスに適した任意の耐熱材料を使用することができる。幾つかの実施形態では、ロータは、黒鉛、アルミナ、ケイ酸アルミナ、炭素結合アルミナ、炭素結合セラミックス、粘土結合黒鉛、窒化ケイ素アルミナ、溶融シリカ、炭化ケイ素、ジルコニア、又は、それらの任意の混合物から作られる。
【0051】
本発明の第4の態様によれば、第1、第2、又は第3の態様の何れかの実施形態の回転デバイスで使用するためのロータが提供される。第1、第2、又は第3の態様に関連して上述した任意選択的な特徴の何れも、適用可能な場合、第4の態様のロータと自由に組み合わせることができる。
【0052】
幾つかの実施形態では、ロータのルーフ部は、回転デバイスの中空シャフトに取り付けるための係合手段を備えている。係合手段は、ロータを中空シャフトの一端の相補的なねじ山にねじ込むことを可能にするねじ山付き壁を備えてよい。あるいは、係合手段はロータのルーフ部内のキャビティを含んでよい。当該キャビティは、中空シャフトの一端に対して相補的なサイズ及び形状を有するように構成されており、その結果、ロータは、押込み嵌め機構によって、又は、膨張耐熱性発泡接着剤(例えば、ZYP Coatings,Incによって製造されているCera Foam)などの適切な耐熱性接着剤を使用して、中空シャフトに取り付けられてよい。あるいは、係合手段は、ロック機構を備えてもよい。
【0053】
本明細書に開示されるロータは、特定の製造方法に限定されず、任意の適切な方法によって、例えば、犠牲コアの周りに等方圧プレスして次にコアを除去する工程や、付加製造法などによって形成できることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1は、WO2004/057045に記載された従来技術のロータを示す。
【
図2a】
図2aは、本発明の第1の態様で使用するロータの実施形態を示す。
【
図2b】
図2bは、本発明の第1の態様で使用するロータの実施形態を示す。
【
図2c】
図2cは、本発明の第1の態様で使用するロータの実施形態を示す。
【
図3】
図3は、本発明の第1の態様で使用するロータの別の実施形態を示す。
【
図4】
図4は、本発明の第2の態様で使用するロータの実施形態を示す。
【
図5】
図5は、本発明の第3の態様で使用するロータの実施形態を示す。
【
図6】
図6は、3つの異なるロータ設計のトルクを比較するグラフである。
【
図7】
図7は、水面レベルの変化を比較するチャートである。
【
図8】
図8は、3つの異なるロータ設計の混合効率を比較する3つのグラフを示す。
【
図9】
図9は、脱ガス効率を比較するグラフである。
【
図10a】
図10aは、脱ガス効率に対する様々な異なる特徴の効果を比較するためのグラフである。
【
図10b】
図10bは、脱ガス効率に対する様々な異なる特徴の効果を比較するためのグラフである。
【
図10c】
図10cは、脱ガス効率に対する様々な異なる特徴の効果を比較するためのグラフである。
【
図11】
図11は、5つの異なるロータ設計の気泡物質移動(bubble mass transfer)を比較するグラフである。
【
図12】
図12は、5つの異なるロータ設計の表面物質移動動(surface mass transfer)を比較するグラフである。
【
図13a】
図13aは、5つの異なるロータ設計の脱ガス効率を比較するグラフを示す。
【
図13b】
図13bは、5つの異なるロータ設計の脱ガス効率を比較するグラフを示す。
【
図14】
図14は、2つのロータ設計の脱ガス効率を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図2a~cは、本発明の第1の態様で使用するロータ100の3つの異なる斜視図を示す。ロータ100は、複数の仕切り部24(図示の実施形態では6つの仕切り部)によって離間されたルーフ部20及びベース部22を備える。仕切り部24は、ルーフ部20とベース部22との間に画定された中央チャンバ26の周囲から径方向に延びている。ルーフ部20及びベース部22は、略円盤状である。
【0056】
隣接する各対の仕切り部24の間に通路が画定され、各通路は、中央チャンバ26の径方向外側に位置する入口28と、ロータ100の外周面にある第1の出口30とを有する。第1の出口は、ロータから横方向に流れを導く。各通路はまた、ルーフ部20に第2の出口32を有する。第2の出口32は、ロータから上方へと流れを導く。第2の出口32の各々は、ルーフ部20の部分円形の切欠きであって、ロータ100の外周から内側に延びている。第2の出口32は、第1の出口30よりも幅が小さい。
【0057】
ベース部22は、中央チャンバ26に流体連通している3つのアパーチャ34を備えている。隣接する各対のアパーチャ34は、それらの間に径方向ブレード36を画定している。図示されている実施形態では、ベース部22は、タービン構成で等間隔に離間した3つの径方向ブレード36を備えており、径方向ブレード36は、ベース部の平面A内に位置している。
【0058】
各径方向ブレード36の縁部37は、ベース部の平面に対して角度αで傾いている。図示されている実施形態では、角度αは60°である。仕切り部24及び第2の出口32もまた、ベース部の平面Aに対して同じ角度αに向けられている。
【0059】
ロータ100のルーフ部20は、中央ボア39と、中空シャフトに取り付けるための係合手段とを備えている。図示の実施形態では、係合手段は、中空シャフトの雄ねじ付き端部にねじ込むための雌ねじ付き壁部38を備えている。ルーフ部20の内面は、ルーフ部20内の気泡を中央チャンバ26へと下方に導くための流れ誘導部材を備えている。図示されている実施形態では、流れ誘導部材は、中央ボア35の周囲に広がる環状壁41を備えている。環状壁41はテーパ状になっており、ルーフ部20で最も広く、ベース部22に向かって延びるにつれて狭くなっている。環状壁41は、複数の開放チャネル43を備えている。これらの開放チャネル43は、ルーフ部20とベース部22の間の方向に概ね延びており、ルーフ部20内の気泡に下向きの螺旋流パターンを与えるように湾曲している。
【0060】
図3は、本発明の第1の態様で使用するロータ200の別の実施形態を示す。ロータ200は、
図2a~
図2cに示されたロータ100とほぼ同じであるが、幾つかの違いがある。
【0061】
図3の実施形態では、径方向ブレード36は、ベース部の平面Aから外向きに突出し、僅かに湾曲している。径方向ブレード36は、ベース部22の中心にある中央ハブ42によって互いに接続されており、中央ハブ42は、それらブレード36に構造的支持を提供する。
【0062】
第2の出口32は、ベース部の平面Aに対して60°の角度αで傾いている一方で、仕切り部24及び径方向ブレード36は、ベース部の平面Aに対して150°の角度βで傾いている。
【0063】
図4は、本発明の第2の態様で使用するロータ300の実施形態を示す。
図2~
図3のロータ100、200と共有されているロータ300の特徴は、同じ符号で参照される。
【0064】
ロータ300は、複数の仕切り部24(図示された実施形態では、4つの仕切り部)によって離間されているルーフ部20及びベース部22を備える。仕切り部24は、ルーフ部20とベース部22との間に画定された中央チャンバ26の周囲から径方向に延びている。ルーフ部20及びベース部22は、略円盤状である。
【0065】
通路が、隣接する各対の仕切り部24の間に画定されており、各通路は、中央チャンバ26の径方向外側に位置する入口28と、ロータ100の外周面にある第1の出口30とを有する。第1の出口は、ロータから横方向に流れを導く。各通路はまた、ルーフ部20に2つの第2の出口32を有する。第2の出口32は、ロータから上方に流れを導く。したがって、図示されている実施形態では、ロータ300は、4つの仕切り部24と、4つの通路と、4つの第1の出口30と、8つの第2の出口32とを備えている。第2の出口32の各々は、ルーフ部20の部分円形の切欠きであって、ロータ100の外周から内側に延びている。仕切り部24及び第2の出口32は、(ベース部の平面Aに平行な)ルーフ部の平面に垂直に向けられる。
【0066】
ベース部22は、中央チャンバ26に流体連通している中央アパーチャ46を備えている。ベース部22は、ベース部の平面Aから外側に突出し、中央アパーチャ46の周囲に配置された複数の径方向ベーン48を更に備えている。径方向ベーン48は、ベース部22の中心に向かって延びており、中央アパーチャ46を部分的に越えて突出している。図示されている実施形態では、ベース部22は、中央アパーチャ46の周囲に等間隔で配置された5つの径方向ブレード46を備えている。径方向ベーン48は湾曲しているが、ベース部の平面Aに対して角度をなして傾いてはいない。
【0067】
ルーフ部20は、中央チャンバ26と4つの第2の出口32との間に交互に配置されて延びる4つの溝44を備えている。ルーフ部20はまた、中央ボア39と、六角状のキャビティ40の形態の係合手段とを備えており、当該キャビティは、対応するサイズ及び形状を有する中空シャフトの端部に嵌まるように構成されている。
【0068】
図5は、本発明の第3の態様で使用するロータ400の実施形態を示す。
図2~
図4のロータと共有されているロータ400の特徴は、同じ符号で参照される。
【0069】
ロータ400は、複数の仕切り部24(図示された実施形態では、4つの仕切り部)によって離間されているルーフ部20及びベース部22を備えている。仕切り部24は、湾曲しており、ルーフ部20とベース部22との間に画定された中央チャンバ26の周囲から径方向に延びている。ルーフ部20及びベース部22は、略円盤状である。
【0070】
通路が、隣接する各対の仕切り部24の間に画定されており、各通路は、中央チャンバ26の径方向外側に位置する入口28と、ロータ100の外周面にある第1の出口30とを有する。第1の出口30は、ロータから横方向に流れを導く。各通路はまた、ルーフ部20に2つの第2の出口32を有する。第2の出口32は、ロータから上方に流れを導く。図示されている実施形態では、ロータ300は、4つの仕切り部24と、4つの通路と、4つの第1の出口30と、8つの第2の出口32とを備えている。第2の出口32の各々は、ルーフ部20の部分円形の切欠きであって、ロータ400の外周から内側に延びている。
【0071】
ベース部22は、中央チャンバ26に流体連通している中央アパーチャ46を備えている。ベース部22は、ベース部の平面Aから外側に突出し、中央アパーチャ46の周囲に配置された複数の径方向ベーン48を更に備えている。径方向ベーン48は湾曲してテーパ状になっており、各ベーンの幅はロータ400の外周から中央アパーチャ46に向けて減少している。径方向ベーン48は、ベース部22を貫通する仕切り部24の延長であって、仕切り部24及び径方向ベーン48は、ベース部22を貫通する連続平面を形成している。
【0072】
ロータ400のルーフ部20は、中央ボア39と、中空シャフトに取り付けるための係合手段とを備えている。図示の実施形態では、係合手段は、中空シャフトの端部にねじ込むためのねじ付き壁部38を備えている。ルーフ部20の内面は、ルーフ部20内の気泡を中央チャンバ26へと下方に導くための流れ誘導部材を備えている。図示されている実施形態では、流れ誘導部材は、中央ボア35の周囲に広がる環状壁41を備えている。環状壁41はテーパ状になっており、ルーフ部20で最も広く、ベース部22に向かって延びるにつれて狭くなっている。環状壁41は、複数の開放チャネル43を備えている。これらの開放チャネル43は、ルーフ部20とベース部22の間の方向に概ね延びており、ルーフ部20内の気泡に下向きの螺旋流パターンを与えるように湾曲している。
【0073】
仕切り部24、径方向ベーン48、及び第2の出口32は、ベース部の平面A(又は、ベース部の平面Aに平行なルーフ部の平面)に対して60°の角度αに向けられている。
【0074】
ベース部22は、径方向ベーン48の間に配置された複数の切欠き50を備えており、それら切欠き50は。ロータ400の外周から内側に延びている。図示されている実施形態では、ベース部22は、4つの径方向ベーン48と4つの切欠き50とを備えている。切欠き50は、半円状に形成されている。切欠き50は、ロータ400の外周から、ロータ400の半径R1の約30%である深さR2まで内向きに延びている。
【0075】
各切欠きの縁部52は、ベース部の平面Aに対して角度をなして傾いている。縁部52の角度は、一端では縁部52が60°の角度で傾いており、他端では縁部52が150°の角度で傾いているように変化している。
【0076】
<フルスケール水モデリングの結果>
種々のロータ設計の性能を、バッフルプレートを取り付けたフルサイズのるつぼ内で、水モデリングによって試験した。250リットルの室温水を700mmの深さまでるつぼに充填した。水は、溶融アルミニウムと同様の粘度特性を有しており、それ故に、溶融金属中のロータの性能を示すための有用な代用物である。
【0077】
次の3つのロータ設計を比較した。(A)
図1に示す従来技術のロータ設計、(B)
図4に示す本発明による設計、及び(C)
図2a~cに示す本発明による設計。
【0078】
[撹拌力及び渦高さ]
トルク測定を異なる回転速度で実行して、各ロータ設計の相対的な攪拌力を比較した。700mmのベースラインからのるつぼ内の水の高さも測定した。通常、高い水面レベルは、より強力な渦の生成を示す。渦の強度は、バランスを取る必要がある。より高い渦はより速い脱ガスとより良好な混合効率とをもたらし得るが、溶融物への空気混入も増加させるからである。
【0079】
図7にトルク測定結果を示す。
図7は、トルク(N・m)対回転速度(rpm)のグラフである。全ての回転速度において、ロータ設計B及びロータ設計Cの両方は比較設計Aよりも高いトルクを示し、ロータ設計Bが最も高いトルクを示した。
【0080】
図8に示すように、設計Bのトルクの増加は、設計A又は設計Cの何れかよりも著しく高い水面レベルをもたらし、より強力な渦を示した。設計Cは、比較設計Aよりも若干高い水面レベルを見せて、若干強力な渦を示した。
【0081】
[混合効率]
るつぼ内における種々の位置とバッフルプレート上とに一連の熱電対を配置して、これらの位置での水の温度を測定した。水中にロータを沈めて、600rpmの回転速度で平衡化させた。次に、7リットルの体積の熱水(80℃)をるつぼに注いて、全ての熱電対にわたって温度が再安定するのに要した時間(「混合時間」と称する)を測定した。
【0082】
結果を
図8にグラフで示す。
図8は、温度(℃)対時間(秒)のグラフである。グラフの各線は、るつぼ内の異なる熱電対の温度測定値に対応している。
【0083】
ロータ設計Aの混合時間は、109秒-88秒=21秒であった。
ロータ設計Bの混合時間は、280秒-272秒=8秒であった。
ロータ設計Cの混合時間は、280秒-272秒=8秒であった。
【0084】
ロータ設計B及びロータ設計Cは両方とも、比較設計Aの混合効率の2倍を超える混合効率を示した。
【0085】
[脱ガス効率]
実施例1:
酸素計をるつぼの上部に向けて水中に沈めた。ロータを600rpmで回転させて、酸素レベルが最低状態に達するのに要する時間を測定した。水に溶解した酸素は、溶融アルミニウムに溶解した水素と同様の挙動を示し、それ故に、この試験は、溶融金属の脱ガス効率の有用な尺度を与える。
【0086】
脱ガスの結果を
図9に示す。
図9は、酸素レベル(mg/L)対時間(秒)のグラフである。まず、ロータB及びロータCの両方は、比較設計Aよりも有意に速い酸素除去を示した。ロータBで達成された最大酸素除去は、ロータAで達成されたものよりも少なく、これは恐らく、ロータBによって生成されたより高い渦が空気の巻き込みをもたらしたためであると考えられる。しかしながら、この悪影響を打ち消すために、バッフル深さ又はバッフルプレートの数を調整することによって渦レベルを減少させることができることに留意のこと。
【0087】
ロータCは、最も良好に機能して、最も速い酸素除去と最も高い最大酸素除去(酸素の最低最終レベル)の両方を示した。
【0088】
異なる個々の特徴の効果を比較するために、他の幾つかのロータ設計の脱ガス効率も測定した。
【0089】
実施例2:
まず、ロータ設計Aを新しいロータ設計Dと比較して、ベース部から外向きに突出する径方向ベーンの効果を比較した。ロータDは、ロータDでは省略されたルーフ部の溝を除いてロータBと全く同じ特徴を有していた。
【0090】
次に、ロータ設計Aを新しいロータ設計Eと比較して、ルーフ部の溝の効果を比較した。ロータEは、ロータAと全く同じ特徴を有していたが、中央チャンバと4つの第2の出口との間に延びるルーフ部の溝が追加されていた。
【0091】
最後に、ロータ設計Bをロータ設計Dと比較して、径方向ベーンと溝の相乗効果を実証した。
【0092】
結果を
図10a~cに示す。
図10a~cは、酸素レベル(mg/L)対時間(秒)のグラフである。
図10aに示すように、径方向のベーンは脱ガス効率の著しい増加を生じさせ、
図10bは、ルーフ部の溝が脱ガス効率の適度な増加を生じさせることを示している。
図10cは、径方向のベーンと溝の両方を備えるロータが最良の脱ガス効率を達成したことを示す。
【0093】
<スモールスケール水モデリングの結果>
様々なロータ設計を用いた更なる実験を、20℃の水を230mm(6.73リットル)の深さまで充填した193×300mmの円筒形タンクを用いて、小型の設定で行った。ロータを65mmの共通の直径に合わせた。400×20mmのアルミニウム製ストリップの形態のバッフルを、タンク壁に隣接して固定した。タンクの底部の上70mmの深さにて、中央に位置する実験室用オーバーヘッドスターラーにロータを取り付けた。1.8L/分(空気)又は2L/分(アルゴン)の何れかでロータの近傍にガスを供給した。水中に沈めたYSI光学溶存酸素プローブによって水中の酸素濃度を測定した。
【0094】
[物質移動分析]
各実験を、タンク内の水を平衡化させることによって開始した。これは、約10mg/Lの安定した酸素濃度が達成されるまで、高速(600rpm)で撹拌しながら、空気でタンクをパージすることを伴った。各ロータ設計について、2L/分の一定のアルゴン流で、400、600及び800rpmにて脱ガス速度を測定した。
【0095】
時間変化するタンク内の酸素濃度C(t)は、以下の式(1)に従うと考えられる。
【数1】
ここで、C
0は初期酸素濃度であり、C
∞はt=∞で達成される漸近的な平坦線の酸素濃度であり、kは減衰定数である。既知の初期濃度C
0が与えられると、非線形最小二乗反復フィッティング解を使用して、ロータの脱ガス曲線にフィッティング解を適用することにより、C
∞とkの両方を決定する。
【0096】
水の自由表面における境界層は、その上にある空気との局所的平衡を維持し、平衡濃度C
Eを維持すると仮定する。表面における平衡濃度C
Eとバルク組成C(t)との間の差は、表面からバルクへの溶存酸素の流れを駆動する。これはまた、自由表面の面積A
S及び表面物質移動係数k
Sに依存する。水中に存在する気泡の集団は、それらの表面で局所的平衡濃度C
Bも確立し、バルク組成C(t)とC
Bとの間の差は気泡への溶存酸素の流れを駆動する。これはまた、気泡の表面積A
B及び気泡物質移動係数k
Bにも依存する。表面からバルクへの、また、バルクから気泡への溶存酸素の流れの分析により、バルク酸素濃度の予想される時間依存性を表す以下の式(2)がもたらされる。
【数2】
グループ化された2つの速度定数は、k
1=k
BA
B及びk
2=k
SA
Sである。平坦線の濃度C
∞は、以下の式(3)によって、有効速度定数及び平衡酸素濃度C
Eと関係している。
【数3】
適合する速度定数は、(k
1+k
2)/Vを使用して同定される。故に、タンク容積V及び平衡酸素濃度C
Eを知って、バルク酸素濃度C(t)を測定することによって、上記の関係により、気泡及び表面のグループ化速度定数k
1及びk
2を個々に決定することが可能である。
【0097】
上述のように、気泡物質移動に関するパラメータk1は、小さな気泡の集団を発生させるロータの能力に依存しており、小さな気泡ほど、物質移動が大きくなり、水との界面の総面積が大きくなる。故に、k1が大きいほど、脱ガス速度へのロータの寄与が大きくなり得る。表面物質移動に関するパラメータk2は、ロータが表面近傍の流れを発生させて自由表面でのガスの発生/ガスの放出を発生させる程度を表すが、自由表面からの空気の再吸収も表す。
【0098】
次の5つのロータ設計を比較した。(A)
図1に示す従来技術のロータ設計、(B)
図4に示す本発明による設計、(C)
図2a~cに示す本発明による設計、(F)
図3に示す本発明による設計、及び(G)
図5に示す本発明による設計。
【0099】
気泡物質移動パラメータk
1:
各ロータの脱ガス曲線について、上述の分析を適用した。各ロータについて計算されたk
1値を、以下の表1及び
図11に示す。
【0100】
【0101】
本発明によるロータ設計(B、C、F、及びG)の各々は、アルミニウムを撹拌するための速度の標準範囲内である400rpm及び600rpmの撹拌速度で、従来技術の実施例Aよりも高いk1値を示した。ロータ設計F及びロータ設計Gは、全ての撹拌速度で最も高いk1値を示し、これらの設計が微小気泡の集団をより増やすことができることを示している。
【0102】
表面物質移動パラメータk
2:
各ロータについて計算されたk
2値を、以下の表2及び
図12に示す。
【0103】
【0104】
計算されたk2値の一般的な傾向は、k1値の傾向をほぼ反映しており、より大きな表面物質移動がより大きな気泡物質移動と概ね相関していることを示している。しかしながら、400rpmでは、本発明によるロータ設計(B、C、F、及びG)の各々は、従来技術の実施例Aよりも低いk2値を示しており、この撹拌速度では、ガスの上昇は少なく、自由表面からの空気の再吸収は低かった。
【0105】
[脱ガス効率]
上述の小型化構成を用いて、5つのロータ設計A、B、C、F、及びGを400rpm(
図13a)及び600rpm(
図13b)で回転させた。酸素レベルが最低状態に達するのに要する時間を測定した。
【0106】
本発明による4つの設計(B、C、F及びG)はすべて、400及び600rpmの両方で、従来技術の設計Aよりも高い脱ガス効率を示した。設計F及び設計Gは、400rpm及び600rpmの両方で最良の脱ガス性能を示しており、600rpmでは酸素除去が著しく速かった(従来技術の設計Aよりも約30~50%速い)。
【0107】
本発明によるロータ設計の脱ガス性能の改善は、設定された脱ガス時間に対してより低い回転速度を使用して従来技術の設計Aと同じレベルの酸素除去を達成することができ、回転デバイスによって必要とされる電力量を低減できることを意味する。
【0108】
<アルミニウム溶融試験結果>
(
図2a~cによる)ロータ設計Cの性能を、溶融アルミニウムを使用してフルサイズのるつぼ内で試験し、(
図1に示す)従来技術のロータ設計Aと比較した。
【0109】
[介在物除去]
ロータCを溶融アルミニウムに沈めて、35rpmで4分間の処理時間回転させた。走査電子顕微鏡と、予め定義された選択規則と、画像処理アルゴリズムとを用いて、Vmet分析(Vesuvius金属品質分析)を行った。試験を1回繰り返し、まとめた結果を以下の表3aに記録した。次に、500rpmのより高い速度でロータ設計A(
図1)を用いて試験を更に2回繰り返し、Vmet分析を実施し、まとめた結果を表3bに記録した。
【0110】
【0111】
【0112】
本発明者らは、本発明によるロータが、溶融アルミニウムから介在物を除去するのに驚くほど有効であることを見出した。例1及び例2において、ロータCは、介在物指数(存在する欠陥の面積率から導かれる)とアルミニウム中の介在物の総数の両方の劇的な減少をもたらすことが分かった。例3及び例4が示すように、総介在物の低減は達成可能であるが、これは介在物指数の同等の低減によっては裏付けられない。特に注目すべきは、ロータCによるより大きな介在物のほぼ完全な除去である。表3aは、酸化アルミニウムであろうとなかろうと、15ミクロンよりも大きなサイズを有する介在物は、処理後にほとんど残っていなかったことを示す。対照的に、例3及び例4では、大きな介在物(>15ミクロン)の数が増加した。この試験は、ロータ設計Cが従来技術のロータ設計Aと同じかそれよりも効果的であること、そして、このことがより低い回転速度で達成されることを示している。
【0113】
回転速度をより低くすることは、ロータ及び機械の摩耗を減少させ、表面に形成される渦の大きさを減少させ、ひいては溶融金属中のガスの巻き込みを減少させることから望ましい。しかしながら、より高速になるほどより多く混合されて、脱ガス及び含有物除去においてより効果的であることが通常である。したがって、処理動作において選択される速度は、これら2つの因子のバランスである。
【0114】
[脱ガス効率]
ロータCをアルミニウムに沈めて350rpmで回転させ、その間、溶融アルミニウム中の水素含有量を監視した。窒素ガスをロータに通して溶融物から水素を除去した。次に、350及び500rpmでロータAを使用して試験を繰り返した。結果を
図14のグラフにプロットした。
【0115】
水素濃度が50%減少する平均時間は、以下の通りであった。
- ロータC-350rpm 160秒
- ロータA-350rpm 350秒
- ロータA-500rpm 185秒
グラフは、ロータCが、同じ回転速度でアルミニウム溶融物から水素を除去することにおいてロータAよりも効果的であり、500rpmのより大きい回転速度でもロータAと比較して依然として改善されていることを示す。
【国際調査報告】