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特表2024-539547マイクロフィブリル化セルロースを含むフィルムを製造する方法、及びマイクロフィブリル化セルロースを含むフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】マイクロフィブリル化セルロースを含むフィルムを製造する方法、及びマイクロフィブリル化セルロースを含むフィルム
(51)【国際特許分類】
   B29C 41/24 20060101AFI20241022BHJP
   D21H 11/18 20060101ALI20241022BHJP
   D21H 19/34 20060101ALI20241022BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20241022BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241022BHJP
   B29C 41/28 20060101ALI20241022BHJP
   B29C 41/36 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B29C41/24
D21H11/18
D21H19/34
D21H27/30 C
C08J5/18 CEP
B29C41/28
B29C41/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517407
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 IB2022058163
(87)【国際公開番号】W WO2023047216
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】2151162-1
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ニーレン, オットー
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン, イスト
(72)【発明者】
【氏名】カンクネン, ユッカ
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク, カイ
【テーマコード(参考)】
4F071
4F205
4L055
【Fターム(参考)】
4F071AA09
4F071AC05
4F071AE04
4F071AF08
4F071AG22
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH04
4F071BA03
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC16
4F205AA01
4F205AB25
4F205AC05
4F205AG01
4F205GA07
4F205GB02
4F205GC07
4F205GE24
4F205GF24
4F205GN21
4L055AC06
4L055AF09
4L055AF46
4L055AH37
4L055AH38
4L055AJ02
4L055BE08
4L055BE09
4L055BE20
4L055CH02
4L055EA03
4L055EA04
4L055EA08
4L055EA12
4L055EA13
4L055EA16
4L055EA20
4L055EA23
4L055EA25
4L055EA32
4L055FA14
(57)【要約】
本発明は、マイクロフィブリル化セルロースを含むフィルムを製造する方法に関する。該方法は、総乾燥重量に基づいて30~100重量%のマイクロフィブリル化セルロースを含む懸濁液を提供すること;非多孔質支持体、紙、又は板紙である支持体上にキャストすることによって前記懸濁液の湿ったウェブを形成すること;プレスファブリックを前記湿ったウェブと直接接触するように適用することと、前記プレスファブリックと前記非多孔質支持体との間に配置された前記湿ったウェブをプレス装置に通すことを含む、前記湿ったウェブを湿式プレスして脱水ウェブを形成すること;平滑化されたウェブを形成するために、前記非多孔質支持体上に配置された前記脱水ウェブに少なくとも1つの平滑化プレスを適用することによって前記脱水ウェブを平滑化することであって、0.1~25MPaの圧力が各平滑化プレスに印加され、前記(一又は複数の)平滑化プレスを適用するときに、前記脱水ウェブが20~60重量%の乾燥含量を有する、適用すること、並びに前記平滑化されたウェブを乾燥して前記フィルムを形成することを含む。本発明はさらに、フィルムにも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロフィブリル化セルロースを含むフィルムを製造する方法であって、
- 総乾燥重量に基づいて、30重量%から100重量%の間のマイクロフィブリル化セルロースを含む懸濁液を提供すること、
- 支持体上にキャストすることによって前記懸濁液の湿ったウェブを形成することであって、前記支持体が、非多孔質支持体、紙基材、又は板紙基材であり、前記形成された湿ったウェブが1~25重量%の乾燥含量を有する、形成すること、
- 15~80重量%の乾燥含量を有する脱水ウェブを形成するように前記湿ったウェブを湿式プレスすることであって、前記湿式プレスが、プレスファブリックを前記湿ったウェブと直接接触するように適用すること、及び前記プレスファブリックと前記支持体との間に配置された前記湿ったウェブをプレス装置に通すことを含む、湿式プレスすること、
- 平滑化されたウェブを形成するために前記支持体上に配置された前記脱水ウェブに少なくとも1つの平滑化プレスを適用することによって前記脱水ウェブを平滑化することであって、0.1~25MPa、好ましくは0.1~15MPa、最も好ましくは0.2~10MPaの圧力が各平滑化プレスに適用され、前記少なくとも1つの平滑化プレスが適用されるときに、前記脱水ウェブが、20~60重量%、好ましくは25~60重量%、最も好ましくは30~60重量%の乾燥含量を有する、適用すること、及び
- 前記フィルムを形成するように前記平滑化されたウェブを乾燥すること
の各ステップを含む、方法。
【請求項2】
前記平滑化が、前記脱水ウェブに2つ以上の連続した平滑化プレスを適用することによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各平滑化プレスが、平滑化ロール又は平滑化ベルトを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの平滑化プレスが、軟質ロールである平滑化ロールを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの平滑化プレスが拡張ニップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの平滑化プレスが、平滑化ロールと、前記支持体の反対側に配置されたカウンターロールとを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
各平滑化プレスが、40~200℃、好ましくは40~150℃、最も好ましくは60~150℃の温度を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
各平滑化プレスが、前記平滑化中に、前記脱水ウェブより少なくとも1℃、好ましくは少なくとも5℃、最も好ましくは少なくとも10℃高い温度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非多孔質支持体が金属ベルトである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記支持体が前記紙基材又は前記板紙基材であり、前記紙基材又は板紙基材が、前記湿式プレスステップにおいて非多孔質湿式プレス支持体上に提供され、前記紙基材又は前記板紙基材が、前記平滑化ステップにおいて前記非多孔質湿式プレス支持体又は非多孔質平滑化支持体上に提供される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記懸濁液が、総乾燥重量に基づいて、50重量%から100重量%の間のマイクロフィブリル化セルロースを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記懸濁液が、総乾燥重量に基づいて、0.5~20重量%の可塑剤を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記懸濁液が、>10μmの直径及び>1.5mmの長さを有する、1~30重量%の強化繊維を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記形成された湿ったウェブが、単一のウェブ層、又は互いの上に形成された2つ以上のウェブ層を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの平滑化プレスが、洗浄用のワッシャー及び/又はドクターブレードを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの平滑化プレスが、離型剤若しくは接着剤を施すための加熱アプリケータ及び/又は蒸気アプリケータ及び/又は噴霧アプリケータ、及び/又は離型剤若しくは接着剤を施すための塗布ロールを備えている、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記脱水ウェブが、前記平滑化ステップの前に、少なくとも1つの予湿潤ステップに供される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記乾燥が、非接触乾燥及び/又は接触乾燥によって行われる、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記フィルムが、前記乾燥ステップの後にカレンダ加工される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、前記湿式プレスのステップの前に、前記形成された湿ったウェブを予乾燥するステップを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、前記平滑化ステップの前に、前記脱水ウェブを中間乾燥するステップを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の方法によって取得可能なマイクロフィブリル化セルロースを含むフィルム。
【請求項23】
前記フィルムの第1の面と反対側の第2の面の両方が、300ml/分以下のBendtsen粗さを有する、請求項22に記載のフィルム。
【請求項24】
総乾燥重量に基づいて30重量%から100重量%の間のマイクロフィブリル化セルロースを含むフィルムであって、前記フィルムの第1の面と反対側の第2の面の両方が、300ml/分以下のBendtsen粗さを有する、フィルム。
【請求項25】
前記フィルムの前記第1の面が前記フィルムの前記第2の面より大きい粗さを有し、前記第1の面のBendtsen粗さと前記第2の面のBendtsen粗さとの比が、6未満、好ましくは4未満、最も好ましくは3未満である、請求項23又は24に記載のフィルム。
【請求項26】
前記フィルムが、23℃、50%の相対湿度で、ASTM D-3985に準拠して、15cm/m/24時間未満、好ましくは10cm/m/24時間未満、最も好ましくは5cm/m/24時間未満の酸素透過率(OTR)値を有する、請求項22から25のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項27】
前記フィルムが、乾燥時に、10~100g/mの坪量を有する、請求項22から26のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項28】
前記フィルムが、乾燥時に、8~500μm、好ましくは10~200μm、最も好ましくは15~100μmの厚さを有する、請求項22から27のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項29】
前記フィルムが、乾燥時に、700~1500kg/m、好ましくは800~1500kg/m、最も好ましくは900~1500kg/mの密度を有する、請求項22から28のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項30】
請求項1から21のいずれか一項に記載の方法によって取得可能な紙又は板紙材料へと積層された、マイクロフィブリル化セルロースを含むフィルムを備えた積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロフィブリル化セルロースを含むフィルムを製造する方法に関する。加えて、本発明は、該方法によって取得可能なマイクロフィブリル化セルロースを含むフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロフィブリル化セルロース(MFC)を多量に含むフィルムは、優れた強度と酸素バリア特性を有することが知られている。これは、例えば、15~30g/mの間の坪量を有するMFCフィルムを製造し、強度とバリア特性について調査した、Syverud, “Strength and barrier properties of MFC films”, Cellulose 2009 16:75-85に記載されている。
【0003】
多量のMFCを含むバリア紙及びフィルムを製造するためのさまざまな技法が存在する。例えば、バリア紙又はフィルムを製造する方法は、ワイヤ上で脱水すること、又は非多孔質キャリア基材上でキャストコーティングすることを含みうる。どちらの場合も、成形セクションの概念に関係なく、湿ったウェブはさらにプレスセクションへと搬送される。プレスセクションでは、湿ったウェブを1つ以上のプレスニップに通すこと、及び/又は少なくとも片面をプレスファブリックと接触させることによって、湿ったウェブからさらに多くの水が絞り出される。通常、プレスセクションに入る時点では固形分含有量がかなり少ないため、材料又はフィルムは十分に固定化されていない。これは、圧力又は吸引を加えると材料がさらに成形されることを意味する。湿ったウェブをプレスファブリックに当てて脱水すると、プレスファブリックの特徴的なテクスチャがウェブ表面に転写されるであろう。したがって、多孔質又はテクスチャ加工されたプレスファブリックは、湿ったウェブ上にマークを残すであろう。
【0004】
用途によっては、フィルムに特別なテクスチャを与えるため、湿ったウェブに残るマークが好まれる場合がある。しかしながら、多くの用途では、このマークは好ましくないか、又は望ましくない。例えば、これは、プレス脱水中に湿ったウェブ上に形成されるマークが両面性を与え、光学的に検出されうる小規模な厚さの違いにつながり、バリア特性を失うリスクが高まるという事実によるものである。後者は、薄いシート(坪量がより低い)を製造する場合にさらに明白となる。
【0005】
紙及び板紙の光沢及び平滑性は、乾燥状態で、すなわち乾燥後に、材料をカレンダ加工することによって改善することができる。ニップの数、ニップ圧力、ロールの材料、ロールの硬度、温度、速度、含水率、及び紙の組成などは、カレンダ加工の結果に影響を与える主な変数の一部である。カレンダ加工の重要な効果の1つは、繊維と構造が崩壊し、表面が可塑化されることである。しかしながら、高密度若しくは高含有量のMFCを含む紙状の基材、又は透明若しくは半透明の材料/フィルムの場合、カレンダ加工の効果はあまり明らかではない。この理由の1つは、例えば、硬質ニップカレンダ加工が主に密度プロファイルに影響を及ぼし、材料の横方向の動き及び分布に大きな影響を与えないことであり、これはワイヤ及びプレスファブリックのマークの影響を軽減するためにより重要であると考えられている。このもう1つの理由は、高密度又はMFC含有量が高い基材では繊維ネットワークが異なること、特に通常の繊維の内腔及び他の自然な細孔が欠如しているため、3D構造が大きく異なることである。
【0006】
多量のMFCを含むフィルムの平滑性を改善するための1つの可能な解決策は、複数の硬質ニップカレンダ加工におけるライン荷重を増加させることである。しかしながら、この解決策の欠点は、とりわけフィルムにより多量の繊維が含まれている場合、黒ずみ、ひび割れ、及びしわのリスクが高まることである。
【0007】
したがって、平滑性が改善されたMFCフィルムの製造方法には、依然として改善の余地がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、従来技術の方法の欠点の少なくとも一部を排除又は軽減する、平滑性が改善されマイクロフィブリル化セルロースを含むフィルムを製造するための改善された方法を提供することである。
【0009】
上述の目的、並びに本開示を考慮して当業者によって実現されるであろう他の目的は、本開示のさまざまな態様によって達成される。
【0010】
本発明は、添付の独立請求項によって定義される。実施形態は、添付の従属請求項及び以下の説明に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に例示される第1の態様によれば、マイクロフィブリル化セルロースを含むフィルムを製造する方法が提供され、該方法は、
- 総乾燥重量に基づいて30重量%から100重量%の間のマイクロフィブリル化セルロースを含む懸濁液を提供すること、
- 支持体上にキャストすることによって前記懸濁液の湿ったウェブを形成することであって、前記支持体が、非多孔質支持体、紙基材、又は板紙基材であり、前記形成された湿ったウェブが1~25重量%の乾燥含量を有する、形成すること、
- 15~80重量%の乾燥含量を有する脱水ウェブを形成するように前記湿ったウェブを湿式プレスすることであって、前記湿式プレスが、プレスファブリックを前記湿ったウェブと直接接触するように適用すること、及び前記プレスファブリックと前記支持体との間に配置された前記湿ったウェブをプレス装置に通すことを含む、湿式プレスすること、
- 平滑化されたウェブを形成するために、前記支持体上に配置された前記脱水ウェブに少なくとも1つの平滑化プレスを適用することによって、前記脱水ウェブを平滑化することであって、0.1~25MPa、好ましくは0.1~15MPa、最も好ましくは0.2~10MPaの圧力が各平滑化プレスに適用され、前記少なくとも1つの平滑化プレスが適用されるとき、前記脱水ウェブが、20~60重量%、好ましくは25~60重量%、最も好ましくは30~60重量%の乾燥含量を有する、平滑化すること、並びに
- 前記フィルムを形成するように前記平滑化されたウェブを乾燥すること
を含む。
【0012】
驚くべきことに、脱水中に湿ったウェブに転写された(すなわち、プレスファブリックと接触している湿ったウェブの側に転写された)プレスファブリックからのマーク又はテクスチャなどの欠陥を滑らかにするため、及び平滑性を向上させたフィルムを得るために、プレスファブリックと接触して脱水され、その上に20~60重量%、好ましくは25~60重量%、最も好ましくは30~60重量%の乾燥含有量でキャストされた支持体上に存在する、多量のMFCなどのMFCを含む半湿潤状態の脱水ウェブに、0.1~25MPa、好ましくは0.1~15MPa、最も好ましくは0.2~10MPaの圧力で平滑化プレスを適用することが可能であることが見出された。特に、驚くべきことに、上述したように、かなり低い圧力で平滑化プレスを適用することによって、半湿潤状態のMFCウェブのかなり強いプレスファブリックのマーク/跡を除去できる可能性があることが判明した。本開示による平滑化は、脱水ウェブ(すなわち、プレスファブリックと接触している湿ったウェブの側)の小規模の厚さの変動を平準化するものであり、湿気/水を除去すべきではない、又は本質的に除去すべきではない。本開示による平滑化は、振動又は脈動の影響によって引き起こされる厚さ/坪量又は品質の変動を除去/低減することもできる。加えて、本開示による平滑化は、横方向(CD)及び機械方向(MD)の張力又は収縮の制御にとって重要でありうる。
【0013】
したがって、本開示による平滑化の適用により、比較的低い圧力で湿式プレスされたウェブの粗さを大幅に低減する(平滑性を高める)ことが可能である。加えて、平滑性の変化を制御することも可能である。平滑性の改善又は平滑度変動の制御は、例えば一又は複数のさらなるコーティングを施した後に、より高いレベルの平滑性を確保するために非常に重要であり、すなわち、コーティングの品質を改善することができる。フィルムがより滑らかであるということは、それに続くコーティングの後にピンホールの数が減少していることを意味しうる。いかなる理論にも束縛されるものではないが、平滑化プレスは、例えばウェブの乾燥収縮、ひいてはプロファイル及びシート特性に影響を与えるとも考えられる。また、平滑化プレスにより、シートがより高密度になり、密度がより均一になり、したがって、熱伝導率が向上し、フィルムの乾燥を改善する。
【0014】
加えて、平滑性の改善及び平滑性の変動の制御も、バリア特性を失うリスクを軽減し、両面性を軽減するために非常に重要でありうる。
【0015】
従来技術に従ってフィルムの欠陥を均一にするためにカレンダ加工を使用する場合、カレンダ加工は、ドライフィルムに対して、すなわち脱水ウェブの乾燥後に、約10~30MPaなどの高圧で行われる。カレンダ加工の重要な効果の1つは、繊維と構造が崩壊し、表面が可塑化されることである。しかしながら、高密度若しくは高含有量のMFCを含む紙状の基材、又は透明若しくは半透明の材料/フィルムの場合、カレンダ加工の効果はあまり明らかではない。この理由の1つは、例えば、硬質ニップカレンダ加工が主に密度プロファイルに影響を及ぼし、材料の横方向の動き及び分布に大きな影響を与えないことであり、これはワイヤ及びプレスファブリックのマークの影響を軽減するためにより重要であると考えられている。このもう1つの理由は、高密度又はMFC含有量が高い基材では繊維ネットワークが異なること、特に通常の繊維の内腔及び他の自然な細孔が欠如しているため、3D構造が大きく異なることである。したがって、カレンダ加工は、プレスファブリックを用いたプレス脱水によって得られるテクスチャ及びマークなどの欠陥を除去するために利用することができない、又は少なくとも効率的かつ容易に利用することができない。
【0016】
平滑化には、小規模の厚さの変動を均一にする効果を得るために、ある程度の残留水分が必要である。加えて、フィルムの損傷を回避し、平滑化プレスへのフィルム表面の付着を避けるためには、水分含有量は十分に高くなければならない。
【0017】
本明細書で用いられるフィルムという用語は、概して、良好なガス、芳香又はグリース又はオイルバリア特性、例えば酸素バリア特性を有する薄い基材など、薄い連続シート形成材料を指す。懸濁液の組成に応じて、フィルムは、薄い紙(例えば、ナノペーパー又はマイクロペーパー)、あるいは膜とみなすこともできる。フィルムは、好ましくは、100g/m未満、好ましくは10~100g/m、又は10~60g/mの範囲の坪量を有する。幾つかの実施形態では、フィルムは、乾燥時に、8~500μm、好ましくは10~200μm、最も好ましくは15~100μmの厚さを有する。フィルムは、通常、比較的高密度である。幾つかの実施形態では、フィルムは、乾燥時に、700~1500kg/m、好ましくは800~1500kg/m、最も好ましくは900~1500kg/mの密度を有する。フィルムは、23℃、50%の相対湿度で、ASTM D-3985に準拠して、好ましくは、15cm/m/24時間未満、好ましくは10cm/m/24時間未満、最も好ましくは5cm/m/24時間未満の酸素透過率(OTR)値を有する。
【0018】
フィルムはそのまま使用することもでき、あるいは1つ以上の他の層と組み合わせて使用することもできる。このフィルムは、例えば、紙又は板紙ベースの包装材料におけるバリアフィルム/層として有用である。フィルムはまた、グラシン、耐油紙、バリア紙、又はバイオプラスチックフィルムなどのベースを含む多層製品のバリア層であってもよく、あるいはバリア層を構成してもよい。代替的に、フィルムは、液体包装用ボードなどの多重シート内の少なくとも1つの層に含めることができる。
【0019】
紙とは概して、木材のパルプ、又はセルロース繊維を含む他の繊維状物質から薄いシート状に製造されて、筆記、描画、若しくは印刷に用いられるか、又は包装材料として用いられる材料を指す。
【0020】
板紙とは概して、箱及び他の種類の包装に用いられるセルロース繊維を含む強くて厚い紙又はボール紙を指す。板紙は、最終用途の要件に応じて、漂白又は未漂白、コーティング又は未コーティングのいずれかで、さまざまな厚さで製造することができる。
【0021】
紙又は板紙ベースの包装材料は、主に又は全体的に、紙又は板紙から形成された、単一のプライ又はマルチプライの包装材料である。紙又は板紙に加えて、紙又は板紙ベースの包装材料は、該包装材料の性能及び/又は外観を改善するために設計された追加の層又はコーティングを含みうる。
【0022】
上記のように、本開示の第1の態様による方法は、総乾燥重量に基づいて、30重量%から100重量%の間のマイクロフィブリル化セルロースを含む懸濁液を提供するステップを含む。懸濁液は、セルロース系繊維材料と任意選択的に非繊維添加剤との水懸濁混合物を含む、水性懸濁液である。
【0023】
マイクロフィブリル化セルロース(MFC)とは、特許出願の文脈において、20nmから1000nmの幅又は直径を有するセルロース粒子、繊維、又はフィブリルを意味するものとする。
【0024】
MFCの製造には、シングルパス若しくはマルチパス精製、予備加水分解とその後の精製、又はせん断分散若しくはフィブリルの解放など、さまざまな方法が存在する。MFCの製造をエネルギー効率及び持続可能性の両方で実現するためには、通常、1つ又は幾つかの前処理ステップが必要とされる。MFCの製造時に用いられるパルプのセルロース繊維は、天然のものであってもよいし、あるいは、例えばヘミセルロース又はリグニンの量を減らすために酵素的又は化学的に前処理されていてもよい。セルロース繊維は、フィブリル化前に化学的に修飾されてもよく、セルロース分子は、元のセルロースに見られるもの以外の(又はそれ以上の)官能基を含む。このような基には、とりわけ、カルボキシメチル(CM)、アルデヒド及び/又はカルボキシル基(N-オキシル媒介酸化によって得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、又は第四級アンモニウム(カチオン性セルロース)が含まれる。上記の方法のいずれかで修飾又は酸化した後、MFCへの繊維の分解がより容易になる。
【0025】
MFCは、広葉樹繊維又は針葉樹繊維の両方からの木材セルロース繊維から製造することができる。また、微生物源や、小麦わらパルプ、竹、バガスなどの農業用繊維、又は他の非木材繊維源から製造することもできる。それは、未使用繊維からのパルプ、例えば機械パルプ、化学パルプ、及び/又は熱機械パルプを含むパルプから製造することができる。破れた紙又は再生紙から製造することもできる。
【0026】
幾つかの実施形態では、第1の態様の方法に用いられる懸濁液は、総乾燥重量に基づいて、40重量%から100重量%の間、好ましくは50重量%から100重量%の間、より好ましくは60重量%から100重量%の間、さらにより好ましくは70重量%から100重量%の間、最も好ましくは80重量%から100重量%の間のマイクロフィブリル化セルロースを含む。したがって、これらの実施形態において脱水され、平滑化されたウェブから製造されるフィルムは、40~100重量%のマイクロフィブリル化セルロース、又は50重量%から100重量%の間などの多量のMFCを含み、これは、最終的なコーティング層が追加される前のフィルム自体のマイクロフィブリル化セルロースの量に関係する。
【0027】
懸濁液のマイクロフィブリル化セルロースは、マイクロフィブリル化セルロースの1つ以上の画分を含みうる。幾つかの実施形態では、懸濁液のマイクロフィブリル化セルロースは、細粒度のマイクロフィブリル化セルロースの1つの画分を含む。幾つかの実施形態では、懸濁液のマイクロフィブリル化セルロースは、異なる細粒度のマイクロフィブリル化セルロースの2つ以上の画分を含む。幾つかの実施形態では、懸濁液のマイクロフィブリル化セルロースは、細粒度の1つの画分と粗粒度の1つの画分とを含み、例えば粗粒度は添加剤でありうる。この場合の粗いMFCは、通常、80~100SR°、例えば、80~99SR°、又は90~99SR°、又は95~99SR°のショッパーリグラー値を有し、一方、微細なMFCはフィブリル化されており、したがって、ISO規格5267-1で決定して、ショッパーリグラー値の測定は不可能である(理論値は約100SR°以上)。
【0028】
幾つかの実施形態では、懸濁液は、マイクロフィブリル化セルロースに加えて、例えば、ISO規格5267-1で決定して、≦70SR°、例えば15~70SR°、又は25~60SR°のショッパーリグラー値を有するセルロースパルプ画分などの1つ以上のさらなるセルロースパルプ画分、及び/又は通常の繊維のさらなる画分を含む。水性懸濁液は、例えば、マイクロフィブリル化セルロースの総乾燥重量に基づいて、1~30重量%、より好ましくは2~30重量%、最も好ましくは5~30重量%のさらなるセルロースパルプ画分、及び(すなわち、水性懸濁液中の繊維の総量の総乾燥重量に基づいた)(一又は複数の)さらなるセルロースパルプ画分を含みうる。
【0029】
通常の繊維とは、従来の長さ及び製紙用のフィブリル化の通常のパルプ繊維を意味する。通常の繊維には、機械パルプ、熱化学パルプ、硫酸塩(クラフト)若しくは亜硫酸塩パルプなどの化学パルプ、溶解パルプ、再生繊維、オルガノソルブパルプ若しくはケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、又はそれらの組合せが含まれうる。パルプは漂白されていても、又は未漂白であってもよい。通常の繊維は、木材由来(例えば、広葉樹若しくは針葉樹)などの植物繊維、又はわら、竹などを含む農業資源でありうる。
【0030】
通常の繊維は、ISO規格5267-1で決定して、15から50SR°の範囲、又はより好ましくは18から40SR°の範囲の叩解度、すなわちショッパーリグラー値を有しうる。通常の繊維としては、クラフトパルプ等の化学パルプが好ましいであろう。
【0031】
通常の繊維は、懸濁液中で、1mmから5mm、より好ましくは2から4mmの範囲の平均長さを有しうる。
【0032】
幾つかの実施形態では、懸濁液は、マイクロフィブリル化セルロース及び(一又は複数の)さらなるセルロースパルプ画分の総乾燥重量に基づいて(すなわち、水性懸濁液中の繊維の総量の総乾燥重量に基づいて)、1~30重量%、好ましくは2~30重量%、最も好ましくは5~30重量%の強化繊維を含み、該強化繊維は、>10μmの直径及び>1.5mmの長さを有する。
【0033】
したがって、MFCの他に、懸濁液は、より長い繊維、広葉樹繊維又は針葉樹繊維のいずれか、好ましくはクラフトパルプ針葉樹繊維も含みうる。
【0034】
懸濁液は、MFC及び任意選択的な(一又は複数の)さらなるパルプ画分に加えて、充填剤、顔料、湿潤紙力増強剤、歩留り向上剤、架橋剤、軟化剤若しくは可塑剤、接着プライマー、湿潤剤、殺生物剤、光学染料、着色剤、蛍光増白剤、消泡剤、AKDやASAなどの疎水化剤、ワックス、樹脂、ベントナイト、ステアリン酸塩、ウェットエンド用デンプン、シリカ、沈降炭酸カルシウム、カチオン性多糖類など、任意の従来の製紙添加剤又は化学薬品を含みうる。これらの添加剤又は化学薬品は、最終製品のフィルムに特定の特性を与えるため、及び/又はフィルムの製造を容易にするために添加されるプロセス化学薬品又はフィルム性能化学薬品でありうる。
【0035】
好ましくは、懸濁液は、懸濁液の総乾燥重量に基づいて、35重量%以下、より好ましくは30重量%以下、最も好ましくは25重量%以下の添加剤を含む。例えば、懸濁液は、懸濁液の総乾燥重量に基づいて、1~35重量%、又は1~30重量%、又は1~25重量%の添加剤を含みうる。
【0036】
幾つかの実施形態では、懸濁液は、フィルムを形成することができる、及び/又はセルロ-ス原繊維間の結合を改善することができる水溶性ポリマーを含む。このようなポリマーの典型的な例は、天然ゴム若しくは多糖類、又はそれらの誘導体、例えばCMC、デンプン、若しくはPVOH、又はそれらの類似体である。
【0037】
幾つかの実施形態では、懸濁液は、総乾燥重量に基づいて、ソルビトール、グリコール、又は他のポリオールなど、0.5~20重量%の可塑剤を含む。
【0038】
幾つかの実施形態では、懸濁液は、ベントナイト、カオリン、タルカム、又はモンモリロナイトなど、最大で20%の鉱物充填剤を含む。
【0039】
上記のように、湿ったウェブは、支持体上の懸濁液から形成され、湿ったウェブは支持体上でプレス装置を通過し、脱水されたウェブは支持体上で(一又は複数の)平滑化プレスを通過する。湿ったウェブは、懸濁液を支持体上にキャストコーティングなどによってキャストすることによって、支持体上に形成される。
【0040】
「キャスト」という用語は、フィルム形成に用いられる場合、接触又は非接触の堆積及びレベリング法によって懸濁液を支持体上に堆積させて湿ったウェブを形成する方法を指す既知の用語である。このような堆積及びレベリング方法の例は、スプレー堆積、カーテンコーティング/塗布、又はスロットダイキャストである。湿ったウェブは、キャスト後に脱水され、乾燥されてフィルムを形成する。
【0041】
均一な湿ったウェブが形成されるような方法で懸濁液を支持体に塗布することが重要であり、これは、湿ったウェブができるだけ均一であり、できるだけ均一な厚さを有していなければならないことを意味する。塗布された湿ったウェブの厚さは、塗布時に、例えば、40~6000μm、又は60~3000μm、又は70~2000μm、又は100~2000μmでありうる。形成された湿ったウェブは、形成時(すなわち、支持体に適用中、又は支持体に適用した直後に)、1~25重量%、好ましくは2~20重量%、最も好ましくは3~15重量%又は3~8重量%の乾燥含量を有する。
【0042】
上記のように、その上に湿ったウェブが形成される支持体は、非多孔質支持体、紙基材、又は板紙基材である。
【0043】
その上に湿ったウェブが形成されうる非多孔質支持体(基材)は、滑らかな表面を有することが好ましく、ポリマー/プラスチック支持体又は金属支持体でありうる。幾つかの実施形態では、支持体は、金属支持体である、すなわち、支持体は、金属、例えば、鋼から作られる。好ましくは、非多孔質支持体は金属ベルトである。金属支持体は、ウェブが支持体に適用される前又は直後に、30℃を超える温度、好ましくは30~150℃の間、より好ましくは45~150℃の間、さらに好ましくは60~100℃の間の温度に加熱されることが好ましい。支持体の温度、ひいては適用されたウェブの温度を上昇させることにより、プレス装置におけるウェブの脱水効率をさらに高めることが可能であることが判明した。
【0044】
湿ったウェブがその上に形成される支持体が紙基材又は板紙基材である実施形態では、MFCフィルムが紙又は板紙基材上に形成される、すなわち、コーティングされた紙若しくは板紙製品、又は紙若しくは板紙積層体が形成される。
【0045】
形成された湿ったウェブは、1つ又は幾つかのキャスティングユニットで製造された、単層若しくは多層のウェブ、又は単一のプライ又はマルチプライウェブでありうる。したがって、幾つかの実施形態では、湿ったウェブは、単一のウェブ層、又は互いの上に形成された2つ以上のウェブ層を含む。
【0046】
上記のように、第1の態様の方法は、15~80重量%の乾燥含量を有する脱水ウェブを形成するように湿ったウェブを湿式プレスするステップを含む。例えば、湿ったウェブを湿式プレスするステップは、20~60重量%、又は25~60重量%、又は30~60重量%の乾燥含量を有する脱水ウェブを形成するように実施することができる。湿式プレスは、プレスファブリックを湿ったウェブと直接接触するように適用すること、及び湿ったウェブをプレスファブリックと支持体との間に配置されたプレス装置に通すことを含む。したがって、支持体が非多孔質支持体である実施形態では、非多孔質支持体上でのキャスト中に形成された湿ったウェブは、湿式プレスステップにおいて非多孔質支持体上に残る。支持体が紙基材又は板紙基材である実施形態では、キャストされた湿ったウェブを有する紙基材又は板紙基材は、湿式プレスするステップにおいて、非多孔質湿式プレス支持体上に提供される。
【0047】
プレスファブリックとは、浸透性があり、水を吸収することによって、又は生地に通して水を除去することによって、ウェブから水を除去することができる生地を意味する。プレスファブリックはプレスフェルト(脱水フェルト)でありうる。プレスファブリック及びプレスフェルトは、現在、紙及び板紙のウェブの脱水によく用いられている。任意の既知のプレスファブリック又はプレスフェルトを利用することができる。
【0048】
複数のプレスファブリック、すなわち、機械方向に互いに連続する2つ以上のプレスファブリックを使用することが好ましい場合がある。2つ以上のプレスファブリックが利用される場合、プレスファブリックは同じ若しくは異なる構造及び/又特性を有しうる。例えば、微粉がプレスファブリックを通過するのを防ぐであろう、低い坪量及び低い透水性を有する第1のプレスファブリックと、高い吸水特性を有する第2のプレスファブリックとを利用することができる。異なる粗さの異なるファブリックを使用することにより、脱水速度を向上させることができるであろう。
【0049】
各プレスファブリックは、1つのファブリック層又は2つ以上のファブリック層を含みうる。ファブリック層は、同じ特性を有していても、異なる特性を有していてもよい。加えて、各プレスファブリックは、1つ以上のバット材料層を含みうる。複数の層を有するプレスファブリックの層は、積層構造又は複合構造に織り込まれうる、又は配置されうる。
【0050】
さらには、湿ったウェブと接触するように配置されたプレスファブリックの第1の表面の反対側の各プレスファブリックの第2の表面上に、支持構成を配置することができる。支持構成は、湿ったウェブと接触するプレスファブリックの適用前、適用後、又は適用時に、プレスファブリックの第2の表面上に配置されうる。幾つかの実施形態では、支持構成は、積層構造又は複合構造などで、プレスファブリックの第2の表面に取り付けられる。支持構成は、1つ以上のバット材料層、及び/又は支持ファブリック、及び/又は1つ以上のプレスフェルトを含みうる。(一又は複数の)支持ファブリックは、任意の適切なファブリックで構成することができる。複数の支持ファブリックが存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
【0051】
一実施形態では、支持構成はプレスフェルトからなる、すなわち、プレスフェルトはプレスファブリックの第2の表面上に配置されるか、又はそれに取り付けられる。一実施形態では、支持構成は、支持ファブリックとプレスフェルトからなり、プレスフェルトは好ましくは最外層として配置される。
【0052】
幾つかの実施形態では、少なくとも、織物である第1のファブリック層を含むプレスファブリック、すなわち、織られた第1のファブリック層を含むプレスファブリックが利用される。第1のファブリック層は、脱水される湿ったウェブと接触するように意図されている。織られた第1のファブリック層は、バット(すなわち、中綿材料)又は他の充填材料を含まない。したがって、第1のファブリック層の織られた構造は、中綿材料又は他の充填材料を含まない、織られた構造である。したがって、織られた第1のファブリック層は、ウェブ側表面構造を提供するプレスファブリックの層を構成する、すなわち、その表面の1つが、湿ったウェブと接触するように配置されたプレスファブリックの外面であるウェブ側の第1の表面を構成するように配置されている。しかしながら、1つ以上のバット表面層(又は他の表面層)を、ウェブ側の第1の表面の反対側の第1のファブリック層の表面上に配置してもよい。少なくとも第1のファブリック層を含むプレスファブリックは、第1のファブリック層と同じ又は異なる特性を有する1つ以上のさらなるファブリック層を含みうる。1つ以上のさらなるファブリック層は織物層であってもよいが、代わりに、合成中綿材料のバットを備えた織物又は不織布のベースを有してもよい。1つ以上のさらなるファブリック層が織物の場合、それらは、織られた第1のファブリック層とは異なる特性、例えば、異なる織りパターン及び/又は異なる材料のものを有しうる。幾つかの実施形態では、プレスファブリックは、織られた第1のファブリック層からなる。
【0053】
織られた第1のファブリック層は、ポリマー糸を含むか、又はポリマー糸から構成されうる複数の糸の織物である。したがって、それは、複数のポリマー糸で織られてもよく、すなわち、複数のポリマー糸で織られた織物構造を含んでもよく、又はそれから構成されてもよい。さらには、ポリマー糸は、1つ以上の合成ポリマーの糸でありうる。(一又は複数の)合成ポリマーは、抄紙機ファブリックの糸に用いられる任意の既知の適切な合成ポリマーでありうる。代替的に、綿又はレーヨンを糸の材料として使用することもできる。織られた第1のファブリック層の厚さは、例えば、0.05~2mm又は好ましくは0.1~1mmでありうる。例えば、織られた第1のファブリック層の坪量は、30~1900g/m又は60~1400g/mでありうる。
【0054】
プレスファブリックは、プレス装置に通される少なくとも20cm前に、湿ったウェブに適用、すなわち湿ったウェブに直接接触して適用されることが好ましい。湿ったウェブがプレス装置に通される前に、プレスファブリックを湿ったウェブに、20cmから5メートルの間の距離で適用することが好ましく、50cmから3メートルの間の距離で適用することがさらに好ましい。プレス装置に通す前に湿ったウェブに印加される場合には、プレスファブリックに外部圧力が用いられないことが好ましい。支持体、湿ったウェブ、及びプレスファブリックをロールに巻き付け、このようにして小さい脱水圧力を作り出すことも可能でありうるが、高すぎる圧力を使用しないことが重要であり、(一又は複数の)ニップロールの使用による圧力は使用することができない。プレス装置における脱水を強める前に、離れた位置でのプレスファブリックの使用を組み合わせることにより、ウェブの脱水が改善され、マイクロフィブリル化セルロースのフィブリルがプレスファブリック内に移動することによるプレスファブリックの詰まりをさらに防止することができる。加えて、プレス装置で用いられる圧力を高め、脱水プロセスの速度を上げることも可能になりうる。
【0055】
各プレスファブリックは、プレス装置を通した後、洗浄され、脱水されることが好ましい。
【0056】
プレス装置とは、湿ったウェブが通過した後、プレスされ、脱水されるニップを形成する装置を意味する。本開示によれば、湿ったウェブは、プレスファブリックと支持体との間に配置されたプレス装置を通過する。プレス装置は、例えば硬質ローラでありうる、金属の裏面を有していてもよい。非多孔質支持体と裏面を互いに押し付けて圧力を生じさせるために、外部荷重要素を利用することができる。プレス装置は拡張ニップを備えることが好ましく、プレス装置はベルトプレスであることが好ましい。ベルトプレスは、金属ベルト(すなわち、湿ったウェブがその上にキャストされた非多孔質支持体、又は非多孔質湿式プレス支持体)とロールを含み、ウェブの脱水は、金属ベルトとロールとの間にウェブとプレスファブリックを当てることによって行われる。ベルトプレス内で湿ったウェブをベルトプレスのロールの直径の少なくとも20%の距離で処理することによって、ニップの長さを長くすることが好ましい場合がある。プレス装置は、複数のニップを備えていてもよい。幾つかの実施形態では、プレス装置は、低圧プレスニップを備えており、その後に少なくとも1つの高圧プレスニップを備える。
【0057】
プレス装置で用いられる圧力は、好ましくは0.01~15MPaの間、好ましくは0.05~10MPaの間、さらに好ましくは0.1~6MPaの間、さらになお好ましくは0.1~5MPaの間である。プレス装置内の圧力を徐々に増加させることが好ましい場合がある。プレス装置の初期圧力は0.05~1MPaであり、圧力を0.5~2MPaに徐々に増加させることが好ましく、その後、任意選択的に圧力をさらに1~2MPaに上げ、続いて任意選択的に圧力を2~5MPaの間に上げることが好ましい。圧力の増加は、同じ圧力ニップ内、例えば拡張ニップ内で行われてもよいし、プレス装置が複数のニップを備えていてもよい。
【0058】
ウェブは、湿式プレスでは、少なくとも20m/分の速度、好ましくは100m/分を超える速度、より好ましくは200m/分を超える速度でプレス装置に通されることが好ましい。
【0059】
プレス装置を備えた1つ以上のプレスセクションを利用することができる。したがって、異なるプレスセクションにおける2つのプレスファブリックなど、上述のような複数のプレスファブリックを利用してもよい。複数のプレスファブリックが利用される場合、異なるプレスファブリックは同じであっても異なっていてもよい。例えば、第1のプレスファブリックは低い透水性を有しうるが、第2のプレスファブリックは高い吸水特性を有しうる。
【0060】
湿ったウェブは、プレスファブリックを接触させる前に加熱することが好ましい。このようにして、ウェブの温度及び固形分含有量が上昇し、その後のウェブの脱水がさらに改善される。湿ったウェブは好ましくは、湿式プレスに入るときに、10~99℃、好ましくは50~95℃の間の温度を有する。湿ったウェブの温度を上げると、水の粘度が下がり、脱水作用が促進されうる。増加した熱は、任意の既知の方法を使用して印加することができる。湿式プレスセクションの前に湿式ウェブの固形分含有量を増加させることにより、プレスファブリックのウェブ側表面と接触する湿ったウェブの表面、又は湿ったウェブ全体が、より粘性になり、プレスファブリックの細孔への浸透(すなわち、微細材料の浸透)を減少させるか、又は回避することができる。しかしながら、固形分含有量が高いということは、通常、より多くの圧力が印加されることを意味し、これは、プレスファブリックにマーキングが生じるリスクが明白であることを意味する。
【0061】
幾つかの実施形態では、該方法は、湿式プレスの前に、形成された湿ったウェブを支持体上で予乾燥するさらなるステップを含む。幾つかの実施形態では、湿ったウェブを予乾燥するステップは、プレスファブリックを湿ったウェブに直接接触させるステップの前に、湿ったウェブの乾燥含量がエバポレーションにより少なくとも1重量%増加するように、加熱によって湿ったウェブを乾燥させるステップを含む。例えば、加熱は、支持体を加熱することによって実施することができる、すなわち、加熱された支持体を予乾燥ステップで利用することができる。したがって、これらの実施形態では、湿ったウェブは、支持体上に湿ったウェブを形成した後、かつプレスファブリックを適用する前に、予乾燥される。例えば、乾燥含量が1~25重量%、又は3~15重量%、又は3~10重量%の場合、予乾燥ステップは実行する必要がありうる。例えば、予乾燥は、エバポレーション、熱風による衝突乾燥、IR、マイクロ波、熱加熱又は当技術分野でよく知られている他の任意の方法によって行うことができる。
【0062】
湿式プレスに入るときの湿ったウェブの乾燥含量は、好ましくは3~25重量%、より好ましくは4~20重量%、最も好ましくは5~15重量%である。プレス装置で脱水した後の湿ったウェブの乾燥含量は、好ましくは15~80重量%、又は20~60重量%、又は25~60重量%、又は30~60重量%、又は30~55重量%、又は30~50重量%である。
【0063】
幾つかの実施形態では、該方法は、前記平滑化ステップの前に、脱水ウェブを少なくとも1つの予湿潤ステップに供するさらなるステップを含む。脱水ウェブは、予湿潤ステップ中も支持体上に配置されたままである。予湿潤ステップは、スチーム処理又は蒸発処理を含みうる。予湿潤は、化学薬品を使用して、又は使用せずに、蒸気又は水を使用して実施することができる。幾つかの実施形態では、1~15g/m、好ましくは2~10g/m、最も好ましくは2.5~8g/mの蒸気又は水が適用される。幾つかの実施形態では、蒸気又は水よる予湿潤中に、脱水ウェブの温度は、少なくとも10℃、又は少なくとも20℃上昇する可能性がある。それによって、材料は平滑化中に可塑化及び再構築されやすくなる。
【0064】
幾つかの実施形態では、該方法は、平滑化ステップの前に、脱水ウェブを中間乾燥するさらなるステップを含む。したがって、これらの実施形態では、脱水ウェブは、脱水ステップの後かつ平滑化ステップの前に、支持体上で乾燥される。例えば、中間乾燥は、エバポレーション、熱風による衝突乾燥、IR、マイクロ波、熱加熱、蒸気若しくは電気による支持体の加熱、又は当技術分野でよく知られている他の任意の方法で実施することができる。異なる乾燥技法を組み合わせて利用することもできる。
【0065】
上記のように、本開示の第1の態様の方法は、平滑化されたウェブを形成するために、支持体上に配置された脱水ウェブに少なくとも1つの平滑化プレスを適用することによって、脱水ウェブを平滑化するステップを含む。したがって、脱水ウェブは、脱水、並びに任意選択的な中間乾燥、及び任意選択的な予湿潤ステップの後、支持体上に残った場合には、1つ以上の平滑化プレスで平滑化される。したがって、脱水ウェブは、それがキャストされた支持体上に配置された脱水ウェブを少なくとも1つの平滑化プレスに通した/通過させたことによって、少なくとも1つの平滑化プレスで平滑化される。したがって、支持体が非多孔質支持体である実施形態では、非多孔質支持体上でのキャスト中に形成された湿ったウェブは、湿式プレスステップ及び平滑化ステップにおいて非多孔質支持体上に残る。支持体が紙基材又は板紙基材である実施形態では、キャストされた湿ったウェブを有する紙基材又は板紙基材は、湿式プレスするステップにおいて、非多孔質湿式プレス支持体上に提供され、平滑化ステップにおいて、非多孔質湿式プレス支持体又は非多孔質平滑化支持体上に提供される。非多孔質湿式プレス支持体及び非多孔質平滑化支持体は、ポリマー/プラスチック支持体、又は金属ベルトなどの金属支持体でありうる。
【0066】
0.1~25MPa、好ましくは0.1~15MPa、より好ましくは0.2~10MPaの圧力が各平滑化プレスに適用される(用いられる)、すなわち、脱水ウェブは、0.1~25MPa、好ましくは0.1~15MPa、より好ましくは0.2~10MPaの圧力で平滑化される。幾つかの実施形態では、各平滑化プレスでは、0.1~20MPa、又は0.5~15MPa、又は0.5~10MPa、又は1~10MPaの圧力が印加される。
【0067】
少なくとも1つの平滑化プレスが脱水ウェブに適用される場合、脱水ウェブは、20~60重量%、好ましくは25~60重量%、最も好ましくは30~60重量%の乾燥含量を有する、すなわち、少なくとも1つの平滑化プレスの各々のニップに入るときに、脱水ウェブは、20~60重量%、好ましくは25~60重量%、最も好ましくは30~60重量%の乾燥含量を有する。平滑化プレスを適用する場合には、ある特定の湿ったウェブの強度が必要とされる、すなわち、乾燥含有量が低すぎる湿ったウェブは平滑化に耐えられないであろう。加えて、ウェブを再形成可能及び再形状化可能にするために、幾らかの水/液体が必要とされる。
【0068】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの平滑化プレスが脱水ウェブに適用される場合、脱水ウェブは、30~55重量%又は30~50重量%の乾燥含量を有する。
【0069】
少なくとも1つの平滑化プレスが適用されるときの脱水ウェブの上述の乾燥含量は、脱水ステップにおいて提供されうるか、又は本質的に提供されうる(すなわち、それは脱水するステップの後に生じうる)。代替的に、脱水ステップ及び任意選択的な中間乾燥ステップの結果として(すなわち、これらのステップの後に)、上述の乾燥含量が提供されうる、又は本質的に提供されうる。さらに代替的に、脱水ステップ及び任意選択的な予湿潤ステップの結果として(すなわち、これらのステップの後に)、上述の乾燥含量が提供されうる、又は本質的に提供されうる。別の代替例では、脱水ステップ、任意選択的な中間乾燥ステップ、及び任意選択的な予湿潤ステップの結果として(すなわち、これらのステップの後に)、上述の乾燥含量が提供されうる、又は本質的に提供されうる。
【0070】
幾つかの実施形態では、平滑化は、脱水ウェブに1つの平滑化プレスを適用することによって行われる。幾つかの実施形態では、平滑化は、脱水ウェブに2つ以上の連続した平滑化プレスを適用することによって行われる。
【0071】
プレスファブリックと接触して脱水され、その上に20~60重量%、好ましくは25~60重量%、最も好ましくは30~60重量%の乾燥含有量でキャストされた支持体上に存在する、多量のMFCなどのMFCを含む脱水ウェブに、少なくとも1つの平滑化プレスを0.1~25MPa、好ましくは0.1~15MPa、より好ましくは0.2~10MPaの圧力で適用することにより、脱水中に湿ったウェブに転写されたプレスファブリックからのマーク又はテクスチャなどの欠陥を平滑化することができる。それによって、平滑性が向上したMFCフィルムを得ることができる。平滑性の変化を制御することも可能である。本開示による平滑化は、脱水ウェブの小規模の厚さの変動を平準化するものであり、湿気/水を除去すべきではない、又は本質的に除去すべきではない。
【0072】
したがって、本開示による少なくとも1つの平滑化プレスを適用することによって、比較的低い圧力で湿式プレスされたウェブの粗さレベル(平滑性)を大幅に改善することが可能である。平滑性の改善は、例えば(一又は複数の)さらなるコーティングを適用した後、より高いレベルの平滑性を確実にするために非常に重要でありうる。また、平滑化プレスにより、シートがより高密度になり、したがって、熱伝導率が向上し、フィルムの乾燥を改善する。
【0073】
加えて、平滑性の改善及び平滑性の変動の制御も、バリア特性を失うリスクを軽減し、両面性を軽減するために非常に重要でありうる。湿式プレス中はウェブが支持体上に存在するため、支持体に隣接して位置決めされたウェブの表面には、プレスファブリックによってもたらされるマーク及びテクスチャなどの欠陥がない(すなわち、湿式プレス後の表面は、プレスファブリックと直接接触して提供されるウェブの表面よりもはるかに滑らかになるであろう)。本開示による平滑化により、ウェブの2つの表面間の平滑度の差が減少しうる、すなわち、両面性が減少する可能性がある。
【0074】
各平滑化プレスは、脱水ウェブと接触し、平滑化要素と支持体との間で脱水ウェブを圧縮するように配置された平滑化要素を含む。平滑化要素は、脱水ウェブと接触するように配置された、研磨又は非研磨の金属表面を含みうる。平滑化要素は、平滑化ロール又は平滑化ベルトでありうる。平滑化ロール又は平滑化ベルトは、上述のような圧力で支持体上に存在する、上述のような乾燥含量を有する脱水ウェブに接触して適用される。したがって、平滑化ロール又は平滑化ベルトは、脱水ウェブの脱水中にプレスファブリックと接触していた側(第1の面)に接触して適用される、すなわち、平滑化ロール又は平滑化ベルトは、支持体と接触している側(第2の面)とは反対側の脱水ウェブの側と接触して適用される。
【0075】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの平滑化プレスのうちの少なくとも1つは、軟質ロールである平滑化ロールを含む。幾つかの実施形態では、平滑化は、軟質ロールを含む1つの平滑化プレスによって行われる。幾つかの実施形態では、平滑化は2つ以上の平滑化プレスによって行われ、各平滑化プレスは軟質ロールを含む。代替的に、又は追加的に、少なくとも1つの平滑化プレスは、硬質ロールである平滑化ロールを含む。
【0076】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの平滑化プレスのうちの少なくとも1つは、拡張ニップを含む。例えば、拡張ニップにおける滞留時間は、5ミリ秒を超える場合がある。
【0077】
少なくとも1つの平滑化プレスの各々に出入りする脱水ウェブの任意の適切な傾斜角を利用することができる。
【0078】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの平滑化プレスのうちの少なくとも1つは、脱水ウェブと比較して支持体の反対側に配置されたカウンター要素(荷重要素)を含む。幾つかの実施形態では、各平滑化プレスはカウンター要素を含む。
【0079】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの平滑化プレスのうちの少なくとも1つは、平滑化ロール及びカウンターロールを含み、カウンターロールは、平滑化ロールと比較して(かつ脱水ウェブと比較して)支持体の反対側に配置される。幾つかの実施形態では、平滑化は、2つ以上の平滑化プレスによって行われ、各平滑化プレスは、平滑化ロール及びカウンターロールを含む。
【0080】
幾つかの実施形態では、各平滑化プレスは、40~200℃、好ましくは40~150℃、より好ましくは60~150℃、最も好ましくは70~150℃の温度を有する。幾つかの実施形態では、各平滑化プレスは40~99℃の温度を有する。温度が上昇すると、ウェブ内のMFCの粘度が低下し、成形しやすくなる。
【0081】
幾つかの実施形態では、各平滑化プレスは、平滑化中の脱水ウェブより少なくとも1℃、好ましくは少なくとも5℃、最も好ましくは少なくとも10℃高い温度を有する。
【0082】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの平滑化プレスのうちの少なくとも1つは、洗浄用のワッシャー及び/又はドクターブレードを含む。
【0083】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの平滑化プレスのうちの少なくとも1つは、離型剤若しくは接着剤を施すための加熱アプリケータ及び/又は蒸気アプリケータ及び/又は噴霧アプリケータ、及び/又は離型剤若しくは接着剤を施すための塗布ロールを備えている。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの平滑化要素/ロールは、PTFEコーティングなどの平滑化要素/ロール表面からの平滑化されたウェブの剥離を促進する物質で永久的にコーティングすることができる。
【0084】
少なくとも1つの平滑化プレスで平滑化した後、平滑化されたウェブは、フィルムを形成するように乾燥される。乾燥は、非接触乾燥及び/又は接触乾燥で行うことができる。平滑化されたウェブの乾燥は、適切な乾燥含有量を得るために、任意の従来の方法、例えばウェブをさらに加圧するか、又はウェブを熱い若しくは温かいシリンダ若しくは金属ベルトに接触させることによって、真空の使用によって、照射乾燥によって、及び/又は熱風の使用(衝突乾燥の使用など)によって、及び/又は蒸気又は他の任意の媒体を用いて支持体を下から加熱することによって、乾燥することを含みうる。ドライフィルムの水分含量は、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは1~12重量%、最も好ましくは1.5~10重量%である。
【0085】
幾つかの実施形態では、該方法は、乾燥ステップの後に、フィルムをカレンダ加工するさらなるステップを含む。これらの実施形態では、例えば軟質のニップカレンダなどの任意の適切なカレンダを利用することができる。
【0086】
本開示の方法は、乾燥ステップの後、好ましくは<20重量%の乾燥度で、形成されたフィルムを非多孔質支持体から剥離するステップをさらに含みうる。これにより、自立フィルムが形成される。したがって、本開示の方法は、自立型のMFCフィルムを製造する方法でありうる。
【0087】
幾つかの実施形態では、製造されたMFCフィルムの第1の面、すなわち、プレスファブリックと接触し、少なくとも1つの平滑化プレスで平滑化されている、MFCフィルムの側は、ISO 8791-2:2013で測定して、300ml/分以下、好ましくは250ml/分以下、又は150ml/分以下のBendtsen粗さを有する。製造されたMFCフィルムの第2の反対側、すなわち、支持体と接触しているMFCフィルムの側も、用いられる支持体に応じて、300ml/分以下、好ましくははるかに低い(0~100ml/分などの)Bendtsen粗さを有しうるが、代替的に、300ml/分を上回るBendtsen粗さを有していてもよい。幾つかの実施形態では、製造されたフィルムの第1の面は、フィルムの第2の面より大きい粗さを有する。幾つかの実施形態では、第1の面のBendtsen粗さと第2の面のBendtsen粗さとの比は、6未満、好ましくは4未満、最も好ましくは3未満である。幾つかの実施形態では、製造されたフィルムの第2の面は、製造されたフィルムの第1の面より大きい粗さを有する。
【0088】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様の方法によって取得可能なMFCフィルムが提供される。好ましくは、フィルムの第1の面と反対側の第2の面の両方が、ISO 8791-2:2013で測定して、300ml/分以下、好ましくは250ml/分以下、又は150ml/分以下のBendtsen粗さを有する。フィルムの第1の面は、フィルムの第2の面より大きい粗さを有しうる。幾つかの実施形態では 第1の面のBendtsen粗さと第2の面のBendtsen粗さとの比は、6未満、好ましくは4未満、最も好ましくは3未満である。代替的に、フィルムの第2の面は、フィルムの第1の面より大きい粗さを有していてもよい。MFCフィルムは、乾燥時に、好ましくは10~100g/mの坪量を有する。MFCフィルムの厚さは、乾燥時に、好ましくは8~500μm、好ましくは10~200μm、最も好ましくは15~100μmである。MFCフィルムの密度は、乾燥時に、好ましくは700~1500kg/m、好ましくは800~1500kg/m、最も好ましくは900~1500kg/mである。フィルムは、DIN 53147に準拠して、80%を超える透明度を有しうる。フィルムは、コーティングされていない場合には、EN13676:2001に準拠して、1mあたり1個以下のピンホールを有することが好ましい。
【0089】
本開示の第3の態様によれば、総乾燥重量に基づいて30重量%から100重量%の間のマイクロフィブリル化セルロースを含むフィルムが提供され、ここで、フィルムの第1の面と反対側の第2の面の両方が、ISO 8791-2:2013で測定して、300ml/分以下、好ましくは250ml/分以下、又は150ml/分以下のBendtsen粗さを有する。フィルムの第1の面は、フィルムの第2の面より大きい粗さを有しうる。幾つかの実施形態では、第1の面のBendtsen粗さと第2の面のBendtsen粗さとの比は、6未満、好ましくは4未満、最も好ましくは3未満である。代替的に、フィルムの第2の面は、フィルムの第1の面より大きい粗さを有していてもよい。MFCフィルムは、乾燥時に、好ましくは10~100g/mの坪量を有する。MFCフィルムの厚さは、乾燥時に、好ましくは8~500μm、好ましくは10~200μm、最も好ましくは15~100μmである。MFCフィルムの密度は、乾燥時に、好ましくは700~1500kg/m、好ましくは800~1500kg/m、最も好ましくは900~1500kg/mである。フィルムは、DIN 53147に準拠して、80%を超える透明度を有しうる。好ましくは、フィルムは、コーティングされていない場合には、EN13676:2001に準拠して、1mあたり1個以下のピンホールを有する。
【0090】
第3の態様によるフィルムは、第1の態様の方法を参照して上で説明したようにさらに定義することができる。
【0091】
本開示による自立型のMFCフィルムは、紙又は紙ベースの包装材料積層体などの積層体を形成するために、紙製品及び板紙製品のいずれか一方の表面に適用することができる。
【0092】
本開示による自立型のMFCフィルムは、熱可塑性ポリマー層などの1つ以上のポリマー層と一緒に積層体で利用することもできる。例えば、1つ以上の追加のポリマー層は、任意の適切なポリオレフィン又はポリエステルによって構成することができる。(一又は複数の)追加のポリマー層は、例えば、押出コーティング、フィルムコーティング、又は積層若しくは分散コーティングによって設けることができる。押出コーティングに用いられる一般的なプラスチック樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカノエート類(PHA)、及びポリブチレンサクシネート(PBS)が挙げられる。
【0093】
MFCフィルムは、透明又は半透明の自立型パウチ又はバッグなどの柔軟な包装材料の一部とすることもできる。したがって、本開示によるMFCフィルムは、シリアルなどの乾燥食品を包装する際の箱の袋材として使用することができる。さらには、本開示によるMFCフィルムは、包装基材として、紙、板紙、又はプラスチックの積層材料として、及び/又は使い捨て電子機器用の基材として使用することができる。MFCフィルムはまた、例えば、クロージャ、リッド、又はラベルに含まれていてもよい。MFCフィルムは、箱、袋、包装フィルム、カップ、容器、トレイ、ボトルなど、あらゆるタイプのパッケージに組み込むことができる。
【0094】
本開示の第4の態様によれば、本開示による方法によって取得可能な紙又は板紙材料へと積層された、マイクロフィブリル化セルロースを含むフィルムを含む積層体が提供される。
【0095】
本開示の第5の態様によれば、紙又は板紙材料で積層された、総乾燥重量に基づいて、30重量%から100重量%の間のマイクロフィブリル化セルロースを含むフィルムを含む積層体が提供され、ここで、第1の面(紙又は板紙材料で積層されたフィルムの第2の面とは反対側にある)は、ISO 8791-2:2013で測定して、300ml/分以下、好ましくは250ml/分以下、又は150ml/分以下のBendtsen粗さを有する。
【0096】
第5の態様による積層体は、第1の態様の方法を参照して上で説明したようにさらに定義することができる。
【0097】
本発明の上記の詳細な説明を考慮すると、当業者には他の修正及び変形が明らかとなるであろう。しかしながら、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、そのような他の修正及び変形が可能であることは明らかであろう。
【実施例
【0098】
本開示による平滑化の効果を示すために、多くの実施例を実施した。実施例のデータ及び結果が以下の表1a-bに示されている。
【0099】
実施例1 -(比較例)- プレス後に低い固形分含有量、平滑化なし
実施例1では、総乾燥重量に基づいて、13重量%のソルビトール及び87重量%のMFC(流動化及びマイクロフィブリル化された酵素処理クラフトパルプ)を含むMFCフィルムを、キャストコーティング法を使用して調製した。完成紙料を金属ベルト上にキャストコーティングし、この金属ベルトは、最初は成形セクションとして機能し、次にプレスセクションのウェブキャリアとして機能した。プレスセクションを、金属ベルト(キャスト基材)、プレスファブリック、及び該プレスファブリックと接触する金属表面の間に配置した。プレスセクションの対向面として金属ベルトキャスト基材の下に荷重要素が存在していた。プレスセクションは、同じプレス配置で、最初の低圧プレスニップと高圧プレスニップとを有していた。低圧プレスニップでは、0.2MPaの圧力を使用し、滞留時間は1000msであった。高圧プレスニップでは、6.2MPaの圧力を使用し、滞留時間は1000msであった。プレスファブリックは二層プレスファブリックであり、フィルム表面に接触する第1の層は滑らかな織物層であり、金属表面に接触する第2の層はニードルプレスフェルトであった。金属ベルト上でキャストした後、プレスする前に、フィルムを予乾燥し、固形分含有量を3%から5.6%に増加させた。高温空気衝突を用いて予乾燥ステップを行った。プレス後の固形分含有量(乾燥含量)は31%であった。プレス後の最終乾燥を、固形分含有量が95%に達するまで、高温空気衝突によって実施した。平滑化プレスは使用せず、乾燥後のフィルムのプレスファブリック側のBendtsen粗さ(ISO 8791-2:2013)は1350ml/分であった。湿式プレス後の固形分含有量は低く、すなわち31%であった。乾燥後のフィルムのベルト側のBendtsen粗さは、20ml/分であった。ASTM D-3985に準拠して、23℃、50%の相対湿度で、酸素透過率(OTR)値を測定した。
【0100】
実施例2 -(比較例)- プレス後に中程度の固形分含有量、平滑化なし
実施例2は、実施例1と同様の方法で実施したが、湿式プレス後の固形分含有量が改善された(増加した)。粗さはわずかに改善され、乾燥後のフィルムのプレスファブリック側の値は810ml/分に達した。
【0101】
実施例3 -(比較例) - プレス後に高い固形分含有量、平滑化なし
実施例3は、実施例1と同様の方法で実施したが、湿式プレス後の固形分含有量が52%に改善された(増加した)。粗さはわずかに改善され、乾燥後のフィルムのプレスファブリック側の値は680ml/分に達した。
【0102】
実施例4 - 平滑化プレス:高い開始時固形分含有量、高い圧力
実施例4では、実施例1と同じレシピ並びに成形及びプレスセクションを利用したが、ここではプレスセクションの後に平滑化プレスを適用した。平滑化プレスは、金属ベルトキャスト基材と平滑化プレスの上部である研磨された滑らかな金属表面との間でウェブが圧縮されるように配置した。金属ベルト及び平滑化プレスの上部の温度は50℃であった。プレスの対向面として金属ベルトキャスト基材の下に荷重要素が存在していた。プレスセクション後の固形分含有量(したがって、平滑化プレス適用時の固形分含有量)は43%であり、乾燥は高温空気衝突によって行った。印加した平滑化圧力は5.3MPaであった。乾燥後のフィルムのプレスファブリック側のBentdsen粗さ(ISO 8791-2:2013)の大幅な減少(60ml/分)が得られ、平滑化が成功したことが示唆された。乾燥後のフィルムのベルト側のBendtsen粗さは、20ml/分であった。
【0103】
実施例5 - 平滑化プレス:高い開始時固形分含有量、中程度の圧力
実施例5は、実施例4と同様の方法で実施したが、ここではより低い平滑化プレス圧力、すなわち3.5MPaを使用した。これにより、乾燥後のフィルムのプレスファブリック側のBendtsen粗さ(40ml/分)に関して実施例4と同様に良好な結果が得られた。
【0104】
実施例6 - 平滑化プレス:高い開始時固形分含有量、低い圧力
実施例6は、実施例4と同様の方法で実施したが、ここでは、さらに低い平滑化プレス圧力、すなわち1.5MPaを使用した。乾燥後のフィルムのプレスファブリック側の平滑性は、対応する基準(90ml/分)よりも大幅に優れている。
【0105】
実施例7 - 平滑化プレス:非常に高い開始時固形分含有量、高い圧力
実施例7は、実施例4と同様の方法で実施したが、プレスセクション後のより高い固形分含有量、すなわち>66%を使用した。平滑化プレス圧力は6.7MPaであった。これは失敗例であり、乾燥しすぎたフィルムでは平滑化プレスによる平滑化が機能しないことが示された。これらの条件を有する試料は、フィルムのプレスファブリック側に高い表面粗さを有する。
【0106】
実施例8 - 平滑化プレス:高い開始時固形分含有量、非常に高い圧力
実施例8は、実施例4と同様の方法で実施したが、より高い平滑化プレス圧力、すなわち11.4MPaを使用した。これは失敗例であり、圧力が高すぎる平滑化プレスで平滑化するとフィルムが破壊されることが示された。これらの条件を有する試料はすべて、ピンホール/孔を有する。
【0107】
実施例9 - 平滑化プレス:高い開始時固形分含有量、非常に低い圧力
実施例9は、実施例4と同様の方法で実施したが、より低い平滑化プレス圧力、すなわち0.5MPaを使用した。粗さは、前の試料と同じレベルであった。
【0108】
実施例10 - 平滑化プレス:低い開始時固形分含有量、高い圧力
実施例10は、実施例4と同様の方法で実施したが、プレスセクション後のより低い固形分含有量、すなわち29%を使用した。平滑化プレス圧力は5MPaであった。平滑化効果は実施例4と多少似ている。
【0109】
実施例11 - 平滑化プレス:非常に低い開始時固形分含有量、低い圧力
実施例11は、実施例4と同様の方法で実施したが、プレスセクション後のより低い固形分含有量、すなわち26パーセントを使用した。平滑化プレス圧力は1.8MPaであった。平滑化効果は実施例4と多少似ている。
【0110】
実施例12 - 異なる平滑化プレス表面:高い開始時固形分含有量、高い圧力
実施例12は、実施例4と同様の方法で実施したが、平滑化プレスの上部の表面として、研磨されていない研削金属プレートを使用した。平滑化プレス圧力は5.3MPaであった。平滑化効果は実施例4と多少似ている。
【0111】
実施例13 - 平滑化プレス:高い開始時固形分含有量(中間乾燥)、高い圧力
実施例13は、実施例4と同様の方法で実施したが、平滑化プレスの前に中間乾燥を行った。平滑化プレス圧力は5.1MPaであった。粗さは、前の試料と同じレベルであった。
【国際調査報告】