IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダの特許一覧

特表2024-539550ヒト化抗EGFRVIII抗体及びその抗原結合断片
<>
  • 特表-ヒト化抗EGFRVIII抗体及びその抗原結合断片 図1
  • 特表-ヒト化抗EGFRVIII抗体及びその抗原結合断片 図2
  • 特表-ヒト化抗EGFRVIII抗体及びその抗原結合断片 図3A
  • 特表-ヒト化抗EGFRVIII抗体及びその抗原結合断片 図3B
  • 特表-ヒト化抗EGFRVIII抗体及びその抗原結合断片 図4
  • 特表-ヒト化抗EGFRVIII抗体及びその抗原結合断片 図5
  • 特表-ヒト化抗EGFRVIII抗体及びその抗原結合断片 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ヒト化抗EGFRVIII抗体及びその抗原結合断片
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20241022BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241022BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241022BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241022BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241022BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241022BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241022BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241022BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241022BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241022BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20241022BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20241022BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241022BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 15/14 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20241022BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241022BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12P21/02 C
C12N5/0783
A61K47/68
A61K45/00
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P15/14
A61K39/395 T
A61K35/17
G01N33/53 D
G01N33/531 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518348
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 IB2021058954
(87)【国際公開番号】W WO2023052816
(87)【国際公開日】2023-04-06
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】595006223
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】マルシル, アン
(72)【発明者】
【氏名】ジャラミロ, マリア
(72)【発明者】
【氏名】スレア, トライアン
(72)【発明者】
【氏名】モレーノ, マリア
(72)【発明者】
【氏名】ウー, カンル
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC17
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA17
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA81
4C084ZB26
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB44
4C085EE01
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA81
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)に特異的に結合するヒト化抗体又はその抗原結合断片等の抗原結合物質が提供される。EGFRvIII特異的ヒト化抗体又はその抗原結合断片は、癌の治療のために使用され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)に特異的に結合する抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又はその抗原結合断片であって、
a.アミノ酸配列QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGYSITSDYAWNWIRQPPGKGLEWXGYIGYNGRTSYNPSLKSRXTISXDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARLGRGFAYWGQGTLVTVSS(配列番号3)を含む重鎖可変領域であって、X1=I又はM、X2=V又はI、及びX3=V又はRである、重鎖可変領域、並びに
b.アミノ酸配列DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQGINSNIGWXQQKPGKAXKXLIYHGTNLEDGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCVQYAQFPYTFGQGTKLEIK(配列番号4)を含む軽鎖可変領域であって、X=Y又はL、X=P又はF、及びX=L又はGである、軽鎖可変領域
を含む、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
a.前記重鎖可変配列が、配列番号5、配列番号6及び配列番号7のいずれか1つから選択され、
b.前記軽鎖可変配列が、配列番号8、配列番号9及び配列番号10のいずれか1つから選択される、
請求項1に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項3】
キメラ抗原受容体、二重特異性T細胞エンゲージャー、二重特異性キラー細胞エンゲージャー、三重特異性キラー細胞エンゲージャー、又は任意の免疫療法化合物である、請求項1又は2に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、一本鎖抗体、又は多重特異性抗体である、請求項3に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体又はその抗原結合断片が、ヒトIgG定常領域を含む、請求項4に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗体又はその抗原結合断片が、ヒトIgG4定常領域を含む、請求項5に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体又はその抗原結合断片が、S228P変異を保持するヒトIgG4定常領域を含む、請求項4に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片が、EGFRvIIIに特異的に結合し、前記抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片が、重鎖配列及び軽鎖配列を含み、
a.前記重鎖配列が、配列番号13、配列番号14又は配列番号15であり、
b.前記軽鎖配列が、配列番号16、配列番号17又は配列番号18である、
請求項7に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項9】
scFv、Fab、Fab’又は(Fab’)を含む、請求項3~8のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項10】
カーゴ分子に連結されている、請求項3~9のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項11】
前記カーゴ分子が治療部分を含む、請求項10に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項12】
前記治療部分が、細胞毒性剤、細胞分裂阻害剤、抗癌剤、又は放射線療法剤を含む、請求項11に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項13】
検出可能部分とコンジュゲートされている、請求項11に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片と、薬学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域をコードする、核酸分子。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片のうちの少なくとも1つを含む、キット。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体若しくは抗原結合断片の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む、ベクター又はベクターのセット。
【請求項18】
請求項17に記載のベクター又はベクターのセットを含む、単離された細胞。
【請求項19】
抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又はその抗原結合断片を発現、アセンブル、及び/又は分泌することができる、請求項18に記載の単離された細胞。
【請求項20】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体若しくは抗原結合断片の軽鎖をコードするヌクレオチド又はベクターを含む第1のバイアルと、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片の重鎖をコードするヌクレオチド又はベクターを含む第2のバイアルと、を含むキット。
【請求項21】
EGFRvIIIを発現する細胞を含む癌を治療する方法であって、必要とする対象に、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片を投与するステップを含む、方法。
【請求項22】
前記抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片が、化学療法剤と組み合わせて使用される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記必要とする対象が、多形性膠芽腫を有するか又は有する疑いがある、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記必要とする対象が、癌腫を有するか又は有する疑いがある、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項25】
前記癌腫が、乳癌腫又はHNSCCを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
EGFRvIIIを検出する方法であって、EGFRvIIIを含むか又は含む疑いがある試料を、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片と接触させるステップを含む、方法。
【請求項27】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片を作製する方法であって、前記抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片が産生されるように、前記抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片をコードする核酸を含む細胞を培養するステップを含む、方法。
【請求項28】
前記抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又はその抗原結合断片を、カーゴ分子とコンジュゲートするステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記カーゴ分子が治療部分を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記カーゴ分子が検出可能部分を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片を発現する細胞を投与するステップを含む、EGFRvIII発現に関連する癌を有する対象を治療する方法であって、前記抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片が、キメラ抗原受容体、二重特異性T細胞エンゲージャー、二重特異性キラー細胞エンゲージャー、又は三重特異性キラー細胞エンゲージャー又は抗体薬物コンジュゲートである、方法。
【請求項32】
前記対象が、神経膠腫を有するか又は有する疑いがある、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記神経膠腫が、多形性膠芽腫である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、癌腫を有するか又は有する疑いがある、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記癌腫が、乳癌腫、口腔癌腫、又はHNSCCを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞がT細胞である、請求項31~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞がNK細胞である、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞が、前記対象にとって自家の免疫細胞である、請求項31~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片を発現するように操作された、単離された細胞集団。
【請求項40】
ヒト由来である、請求項39に記載の単離された細胞集団。
【請求項41】
T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞毒性T細胞、制御性T細胞、及びそれらの組合せを含む、請求項39又は40に記載の単離された細胞集団。
【請求項42】
T細胞を含む、請求項41に記載の単離された細胞集団。
【請求項43】
前記T細胞が、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、又はそれらの組合せを含む、請求項42に記載の単離された細胞集団。
【請求項44】
NK細胞を含む、請求項41に記載の単離された細胞集団。
【請求項45】
同じ標的又は異なる標的の別の抗原に対する親和性を有する別のキメラ抗原受容体を発現するように操作されている、請求項39~44のいずれか一項に記載の単離された細胞集団。
【請求項46】
宿主の免疫細胞を含む、請求項39~44のいずれか一項に記載の単離された細胞集団。
【請求項47】
請求項39~46のいずれか一項に記載の単離された細胞集団と、薬学的に許容できるバッファー又は賦形剤と、を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片等のヒト化抗原結合物質を提供する。本開示のEGFRvIII特異的抗体又はその抗原結合断片は、例えば、癌の治療のために、EGFRvIII発現細胞を標的とする抗体-薬物コンジュゲート、放射免疫コンジュゲート、キメラ抗原受容体(CAR)及び二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)として使用され得る。
【背景技術】
【0002】
上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)は、多形性膠芽腫(GBM)の25~64%において増幅され、高度に発現され存在する。留意すべきことに、異なる検出方法が一貫性のない結果をもたらしたものの、EGFRvIII mRNA及びタンパク質発現は、乳房の癌腫のサブセット並びに頭頸部扁平上皮癌腫(HNSCC)において、複数の相補的技術を使用して検出されている(Ganら、2013に概説)。上皮、間葉及びニューロン由来の組織において発現され、増殖、分化及び発達等の正常な細胞プロセスにおいて主要な役割を果たす野生型(wt)の上皮成長因子受容体(EGFR)とは異なって、EGFRvIIIは、正常な組織において発現しない。
【0003】
EGFRvIIIバリアントは、EGFR遺伝子のエクソン2~7のインフレーム欠失に由来し、細胞外ドメインの267個のアミノ酸残基をコードする配列の除去をもたらす。新たに形成されたスプライスジャンクションは、野生型ヒトEGFRにおいて対応する残基を有しないグリシン残基をコードし、したがって、ネオエピトープを形成する。さらに、多数の研究が、正常な組織がEGFRvIIIを有しないことを示している。したがって、EGFRvIIIは、抗体標的療法のために利用し得る新たな腫瘍特異的細胞表面エピトープを含む。しかしながら、EGFRvIIIネオエピトープは、ヒト配列の残りの部分と比較して、あまり免疫原性がなく、これまでに生成された抗体の多くは、EGFRvIIIを特異的に認識すると示されてはいない(Ganら、2013に概説)。
【0004】
稀な例で、EGFRvIIIネオエピトープに対するモノクローナル抗体(mAb)が記載されてきた。その中には、抗体13.1.2(米国特許第7,736,644号を参照)が含まれ、この抗体は、Amgenによって、抗体薬物コンジュゲート(ADC)としても開発されている(AMG595:Hamblett K.Jら、Molecular Cancer Therapeutics、第14巻(7)、第1614~24頁、2015)。また米国特許第9,562,102号は、EGFRvIII、並びにEGFR過剰発現腫瘍細胞上の増幅EGFRのサブセットに結合する、Abbvieによって開発された806抗体(ABT-806、ABT-414)を記載している(Cleary,JMら、Invest New Drugs、33(3)、第671~8頁、2015;Reilly、EB.、Molecular Cancer Therapeutics、第14巻(5)、第1141~51頁、2015)。この抗体は、前臨床モデルにおいて腫瘍EGFRに優先的に結合することが示されているが、ヒト皮膚に存在するwt EGFRにこの抗体が結合することが、一部の患者においてABT-806が示す皮膚毒性の主要因であることが示されている(Clearyら、2015)。
【0005】
EGFR発現細胞において存在しないか又はEGFR発現細胞においてアクセス可能でないEGFRvIIIのエピトープを特異的に標的とするヒト化抗体又はその抗原結合断片は、改善された治療(つまり、癌治療)に有益であろう。
【発明の概要】
【0006】
上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)に特異的に結合するヒト化抗体又はそのヒト化抗原結合断片等の抗原結合物質が提供される。
【0007】
以下により詳細に記載されるように、いくつかの抗EGFRvIIIヒト化抗体又はその抗原結合断片は、癌細胞(例えば、膠芽腫細胞)の表面でEGFRvIIIに結合し得る。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体又はその抗原結合断片は、癌細胞上に発現されるEGFRに有意に結合しない(例えば、U87MG-EGFR WT)。
【0008】
本開示のヒト化抗体又はその抗原結合断片は、癌細胞によって内在化されてもよく、したがって、その一態様において、カーゴ分子の送達のために使用されてもよい。治療部分とコンジュゲートされている抗EGFRvIIIヒト化抗体又はその抗原結合断片が特に企図されている。本明細書に記載される抗EGFRvIIIヒト化抗体は、EGFRvIII発現腫瘍細胞の増殖を阻害するために使用され得る。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態において、抗EGFRvIIIヒト化抗体又はその抗原結合断片は、天然EGFRvIII(例えば、天然組換えEGFRvIII)及び変性EGFRvIII(例えば、変性組換えEGFRvIII)の両方に存在するエピトープに結合可能であり得る。
【0010】
本開示の実施形態は、特に、抗EGFRvIII 4E11抗体の相補性決定領域(CDR)を含む抗EGFRvIIIヒト化抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)に特異的に結合する抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又はその抗原結合断片であって、
アミノ酸配列QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGYSITSDYAWNWIRQPPGKGLEWXGYIGYNGRTSYNPSLKSRXTISXDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARLGRGFAYWGQGTLVTVSS(配列番号3)を含む重鎖可変領域であって、X1=I又はM、X2=V又はI、及びX3=V又はRである、重鎖可変領域、並びに
アミノ酸配列DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQGINSNIGWXQQKPGKAXKXLIYHGTNLEDGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCVQYAQFPYTFGQGTKLEIK(配列番号4)を含む軽鎖可変領域であって、X=Y又はL、X=P又はF、及びX=L又はGである、軽鎖可変領域
を含む、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又はその抗原結合断片。
【0012】
いくつかの実施形態において、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片は、
配列番号5、配列番号6及び配列番号7のいずれか1つから選択される重鎖可変配列、並びに
配列番号8、配列番号9及び配列番号10のいずれか1つから選択される軽鎖可変配列
を含む。
【0013】
一実施形態において、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片は、キメラ抗原受容体、二重特異性T細胞エンゲージャー、二重特異性キラー細胞エンゲージャー、三重特異性キラー細胞エンゲージャー、又は任意の免疫療法化合物、例えば抗体薬物コンジュゲート(ADC)、又は検出のために使用される化合物、例えば放射免疫コンジュゲートである。
【0014】
一実施形態において、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、一本鎖抗体、又は多重特異性抗体である。一実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、ヒトIgG定常領域を含む。一実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、ヒトIgG4定常領域を含む。
【0015】
一実施形態において、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片は、S228P変異を保持するヒトIgG4定常領域を含む。
【0016】
一実施形態において、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片は、EGFRvIIIに特異的に結合し、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片は、重鎖配列及び軽鎖配列を含み、
重鎖配列は、配列番号13、配列番号14又は配列番号15であり、
軽鎖配列は、配列番号16、配列番号17又は配列番号18である。
【0017】
一実施形態において、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片は、scFv、Fab、Fab’又は(Fab’)を含む。
【0018】
一実施形態において、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片は、カーゴ分子に連結されている。いくつかの実施形態において、カーゴ分子は治療部分を含む。いくつかの実施形態において、治療部分は、細胞毒性剤、細胞分裂阻害剤、抗癌剤、又は放射線療法剤を含む。いくつかの実施形態において、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片は、検出可能部分とコンジュゲートされている。
【0019】
一実施形態において、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片と、薬学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む医薬組成物が提供される。
【0020】
一実施形態において、本発明の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域をコードする、核酸分子が提供される。
【0021】
一実施形態において、本発明の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片のうちの少なくとも1つを含む、キットが提供される。
【0022】
一実施形態において、本発明の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む、ベクター又はベクターのセットが提供される。一実施形態において、ベクター又はベクターのセットを含む、単離された細胞が提供される。いくつかの実施形態において、単離された細胞は、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又はその抗原結合断片を発現、アセンブル、及び/又は分泌することができる。
【0023】
本発明の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片の軽鎖をコードするヌクレオチド又はベクターを含む第1のバイアルと、本発明の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片の重鎖をコードするヌクレオチド又はベクターを含む第2のバイアルと、を含むキットも提供される。
【0024】
EGFRvIIIを発現する細胞を含む癌を治療する方法であって、必要とする対象に、本発明の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片を投与するステップを含む方法も提供される。一実施形態において、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片は、化学療法剤と組み合わせて使用される。一実施形態において、必要とする対象は、多形性膠芽腫を有するか又は有する疑いがあり、癌腫、乳癌又はHNSCCを有するか又は有する疑いがある。
【0025】
EGFRvIIIを検出する方法であって、EGFRvIIIを含むか又は含む疑いがある試料を、本発明のいずれか1つの抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片と接触させるステップを含む方法も提供される。
【0026】
一実施形態において、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片を作製する方法は、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片が産生されるように、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片をコードする核酸を含む細胞を培養するステップを含む。一実施形態において、提供される方法は、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又はその抗原結合断片を、カーゴ分子とコンジュゲートするステップをさらに含む。一実施形態において、カーゴ分子は治療部分又は検出可能部分を含む。
【0027】
本発明の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片を発現する細胞を投与するステップを含む、EGFRvIII発現に関連する癌を有する対象を治療する方法であって、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片が、キメラ抗原受容体、二重特異性T細胞エンゲージャー、二重特異性キラー細胞エンゲージャー、又は三重特異性キラー細胞エンゲージャー、又は抗体薬物コンジュゲートである方法も提供される。一実施形態において、必要とする対象は、神経膠腫、多形性膠芽腫、癌腫、乳癌腫、口腔癌腫、又はHNSCCを有するか又は有する疑いがある。一実施形態において、提供される方法は、T細胞、NK細胞、又は対象にとって自家の免疫細胞である細胞を含む。一実施形態において、単離された細胞集団は、本発明の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片を発現するように操作されている。一実施形態において、単離された細胞集団は、ヒト由来である。一実施形態において、単離された細胞集団は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞毒性T細胞、制御性T細胞、及びそれらの組合せを含む。一実施形態において、T細胞は、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、又はそれらの組合せを含む。
【0028】
一実施形態において、単離された細胞集団は、同じ標的又は異なる標的の別の抗原に対する親和性を有する別のキメラ抗原受容体を発現するように操作されている。一実施形態において、単離された細胞集団は、宿主の免疫細胞を含む。
【0029】
単離された細胞集団と、薬学的に許容できるバッファー又は賦形剤と、を含む医薬組成物が提供される。
【0030】
本開示によれば、ヒト化抗体又はその抗原結合断片は、例えば、100nM未満の親和性、例えば、50nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下等の親和性を有し得る。
【0031】
本開示の実施形態としては、ヒトIgG定常領域を含み得るヒト化抗体又はその抗原結合断片が挙げられる。本開示のヒト化抗体又は抗原結合断片は、例えば、限定されないが、ヒトIgG1定常領域、ヒトIgG2定常領域又はヒトIgG4定常領域を含み得る。
【0032】
本開示によれば、ヒト化抗体又はその抗原結合断片は、完全サイズIgG抗体、一本鎖抗体、又は多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)であり得る。
【0033】
本開示の二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、第1のヒトEGFRvIIIエピトープに特異的に結合する第1のアームと、第2の(重複しない)ヒトEGFRvIIIエピトープに特異的に結合する第2のアームとを含み得る、二重特異性抗体又はその抗原結合断片(例えば、バイパラトピック抗体)を含む。
【0034】
本開示の二重特異性抗体又はその抗原結合断片のさらなる実施形態は、第1のヒトEGFRvIIIエピトープに特異的に結合する第1のアームと、別の抗原に特異的に結合する第2のアームとを含み得る、二重特異性抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0035】
本開示の二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、ヒトEGFRvIIIに特異的に結合する第1のアームと、CD3に特異的に結合する第2のアームとを含むもの等の、二重特異性免疫細胞エンゲージャーを含む。
【0036】
本開示によれば、抗原結合断片は、例えば、scFv、Fab、Fab’又は(Fab’)を含む。
【0037】
さらなる態様において、本開示は、カーゴ分子に連結していてもよい抗EGFRvIIIヒト化抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0038】
本開示によれば、カーゴ分子は、例えば、細胞毒性剤、細胞分裂阻害剤、抗癌剤又は放射線療法剤等の治療部分を含み得る。本開示の特定の実施形態において、抗体薬物コンジュゲートは、細胞毒性剤を含み得る。本開示の別の特定の実施形態は、放射線療法剤を含む抗体薬物コンジュゲートに関する。
【0039】
本開示によれば、カーゴ分子は、検出可能部分を含み得る。
【0040】
本開示のヒト化抗体又はその抗原結合断片は、医薬組成物の形態で提供され得る。医薬組成物は、例えば、薬学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤を含み得る。
【0041】
本開示はさらに、本明細書に開示されるヒト化抗体又はその抗原結合断片の軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域をコードする、核酸分子を提供する。
【0042】
さらなる態様において、本開示は、本明細書に開示されるヒト化抗体又はその抗原結合断片のうちの少なくとも1つを含む、キットを提供する。
【0043】
本開示のさらなる態様は、本明細書に開示されるヒト化抗体又は抗原結合断片の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をコードする核酸を含み得るベクター又はベクターのセットに関する。軽鎖可変領域又は軽鎖及び重鎖可変領域又は重鎖をコードする核酸は、同じベクターで提供されてもよく、又は別個のベクターで提供されてもよい。
【0044】
本開示のさらなる態様は、本明細書に記載のベクター又はベクターのセットを含む、単離された細胞に関する。単離された細胞は、ヒト化抗体又はその抗原結合断片を発現、アセンブル、及び/又は分泌することができる。
【0045】
本開示の他の態様は、本開示のヒト化抗体若しくはその抗原結合断片の軽鎖をコードする核酸又はベクターを含む第1のバイアルと、ヒト化抗体又はその抗原結合断片の重鎖をコードする核酸又はベクターを含む第2のバイアルと、を含むキットに関する。
【0046】
本開示のさらなる態様は、EGFRvIIIを発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)を含む癌を治療する方法に関する。本方法は、本明細書に記載のヒト化抗体又はその抗原結合断片を、必要とする対象に投与するステップを含み得る。治療部分とコンジュゲートされている抗体又は抗原結合断片(ADC)が、治療方法において特に企図されている。
【0047】
本開示はさらに、癌の治療における本明細書に記載のヒト化抗体又はその抗原結合断片の使用に関する。
【0048】
本開示はさらに、癌の治療のための医薬の製造における、本明細書に記載のヒト化抗体又はその抗原結合断片の使用に関する。
【0049】
本開示によれば、ヒト化抗体又はその抗原結合断片は、化学療法剤と組み合わせて使用されてもよい。
【0050】
本開示によれば、必要とする対象は、多形性膠芽腫を有するか又は有する疑いがある。
【0051】
さらに、本開示によれば、必要とする対象は、癌腫を有するか又は有する疑いがある。
【0052】
本開示のさらなる態様は、EGFRvIIIを検出する方法に関する。本方法は、EGFRvIIIを含むか又は含む疑いがある試料を、本明細書に記載のヒト化抗体又は抗原結合断片と接触させるステップを含み得る。
【0053】
本開示のさらなる態様は、本開示のヒト化抗体又はその抗原結合断片が産生されるように、ヒト化抗体又は抗原結合断片をコードする核酸又はベクターを含む細胞を培養するステップによる、本開示のヒト化抗体又はその抗原結合断片を作製する方法に関する。したがって、ヒト化抗体又はその抗原結合断片は、単離及び/又は精製されてもよい。
【0054】
本方法は、ヒト化抗体又はその抗原結合断片を、例えば、治療部分等のカーゴ分子とコンジュゲートするステップをさらに含んでもよい。
【0055】
本開示のさらなる範囲、適用性、及び利点は、以下に示す非限定的な詳細な説明から明らかになるであろう。ただし、この詳細な説明は、添付の図面を参照して、本開示の例示的な実施形態を示す一方で、例としてのみ与えられていることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1図1は、マウス4E11重鎖可変領域(mVH)配列(配列番号1)及びマウス4E11軽鎖可変領域(mVL)配列(配列番号2)のヒト化に使用される、VBASE2データベース(Retterら、2005)からの選択されたヒト生殖細胞系V領域配列及びJ領域配列の配列アラインメントを示す。
図2図2は、マウス4E11抗体の可変領域の3Dモデルを示す。重鎖は黒色が付され、軽鎖は灰色が付されている。CDRは、分子表面の網掛けによって強調表示され、CDRループは標識されている。矢印は、いくつかのヒト化バリアントにおける逆突然変異(つまり、標識されているように、マウス配列のとおりに保持されているアミノ酸型)について選択されたフレームワーク領域内の6つの位置を強調表示する球棒モデルを指す。
図3A図3Aは、4E11抗体のヒト化重鎖可変領域(配列番号5、6及び7)間の配列アラインメントを示す。ヒト化重鎖可変領域は、図3Aに示され、本明細書でhVH1、hVH2及びhVH3と称される。CDRループは、カバット及びチョシアの定義を組み合わせることによって描写されたCDR-H1を除き、カバットの定義に従って描写されている。いくつかのヒト化配列について、マウス4E11抗体内のこれらの位置に見出される親アミノ酸残基への逆突然変異は、黒地に白い文字として強調表示されている。逆突然変異の位置は、標識され、配列アラインメント上の矢印によって特定されている。
図3B図3Bは、4E11抗体のヒト化軽鎖可変領域(配列番号8、9及び10)間の配列アラインメントを示す。CDRループは、カバット及びチョシアの定義を組み合わせることによって描写されたCDR-H1を除き、カバットの定義に従って描写されている。ヒト化軽鎖可変領域は、図3Bに示され、本明細書でhVL1、hVL2及びhVL3と称される。いくつかのヒト化配列について、マウス4E11抗体内のこれらの位置に見出される親アミノ酸残基への逆突然変異は、黒地に白い文字として強調表示されている。逆突然変異の位置は、標識され、配列アラインメント上の矢印によって特定されている。
図4図4は、示差走査熱量測定によって決定された、本開示のキメラ4E11抗体(cH-cL)バリアント及び9つのヒト化バリアントについての重ね合わせたサーモグラムを示す。各バリアントの個々のサーモグラムの積分に由来する関連する融解温度(T)については表1を参照。ヒト化軽鎖バリアントは、本明細書でhL1、hL2及びhL3と称される。ヒト化重鎖バリアントは、本明細書でhH1、hH2及びhH3と称される。明確にするために、hVH1、hVH2、hVH3は、重鎖の可変領域を指し、hVL1、hVL2、hVL3は、軽鎖の可変領域を指す。一方で、hH1、hH2及びhH3は、それぞれの重鎖可変領域を含む重鎖を指す。例えば、hH1は、hVH1及び重鎖の定常領域を含み、例えば、hH1=hVH1+CH1+CH2+CH3である。同様に、hVL1、hVL2、hVL3は、軽鎖の可変領域を指し、一方で、hL1、hL2及びhL3は、それぞれの軽鎖可変領域を含む軽鎖を指す。例えば、hL1は、hVL1及び軽鎖の定常領域を含み、例えば、hL1=hVL1+軽鎖定常領域である。
図5図5は、EGFR vIII(U87MG EGFR vIII)を過剰発現するU87MG膠芽腫細胞株の精製されたヒト化及びキメラ4E11抗体のフローサイトメトリーデータから得られた用量応答結合曲線を示す。
図6図6は、野生型EGFR(U87MG EGFR wt)を過剰発現するU87MG膠芽腫細胞株の選択精製されたヒト化及びキメラ4E11抗体のフローサイトメトリーデータから得られた用量応答結合曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本明細書で使用されるとき、用語「EGFRvIII」は、上皮成長因子受容体バリアントIIIを指す。用語「EGFRvIII」及び「vIII」は、互換的に使用される。
【0058】
本明細書で使用されるとき、用語「EGFR」は、ヒトの上皮成長因子受容体を指す。用語「wt EGFR」、「WT EGFR」、「EGFR WT」又は「EGFR wt」は互換的に使用され、野生型EGFRを指す。
【0059】
用語「1つ(種)の(a)」及び「1つ(種)の(an)」及び「その(the)」並びに本開示を記載する文脈(特に特許請求の範囲の文脈)で使用される同様の参照は、本明細書で他に言及されない限り又は内容に明確に矛盾が生じない限り、単数形及び複数形のいずれも包含すると解釈される。
【0060】
本明細書で使用されるとき、具体的に示されていない限り又は文脈から明らかでない限り、用語「又は」は包括的であると理解され、「又は」と「及び」の両方を包含する。
【0061】
用語「及び/又は」は、本明細書で使用される場合、他方を伴う又は伴わない特定の特徴又は構成要素のそれぞれの具体的な開示として理解されるべきである。
【0062】
用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」は、別途注記されていない限り、オープンエンドの用語として解釈されるべきである(つまり、「含むが、それらに限定されない」を意味する)。用語「からなる」は、クローズドエンドと解釈されるべきである。
【0063】
本明細書で使用されるとき、EGFRvIII又はEGFRなどのタンパク質に関して「天然の」という用語は、タンパク質の天然の立体構造を指し、適切に折り畳まれた及び/又は機能的であるタンパク質を含む。
【0064】
本明細書で使用されるとき、EGFRvIII又はEGFRなどのタンパク質に関して「変性した」という用語は、その天然の立体構造を失い、例えば、三次構造及び二次構造の消失を伴い得るタンパク質を指す。
【0065】
本明細書で使用されるとき、「EGFRvIII断片を含むか又はそれからなるペプチド」という表現は、ペプチドがEGFRvIII断片以外の部分を含んでもよいか、又はペプチドがEGFRvIII断片からなることを意味する。
【0066】
本明細書で使用されるとき、標的化部分の「結合する」又は「結合」という用語は、例えば、本明細書に記載されるような、標的分子、例えば、ヒトEGFRvIII及び/又はEGFRvIIIの変異バリアントとの、又はそれへの、少なくとも一時的な相互作用又は会合を意味する。
【0067】
本明細書で使用されるとき、用語「アミノ酸残基を含むエピトープに結合する」は、アミノ酸残基がエピトープの一部であるか、又は抗体の結合に必要であることを意味する。
【0068】
本明細書で使用されるとき、ペプチド又はタンパク質に「結合することができない」という用語は、抗体又は抗原結合断片が、a)組換え的に又は細胞内で発現したときに、ペプチド又はタンパク質に有意に結合せず、b)検出可能な結合が観察されず、c)陰性対照抗体と同様の結合特性を有し、d)特異的に結合せず、又はe)フローサイトメトリー実験によって決定される0%~15%の値で結合することを意味する。
【0069】
本明細書で使用されるとき、用語「自家」は、同一個体由来の材料を指す。
【0070】
本明細書で使用されるとき、用語「抗原結合ドメイン」は、抗原への特異的結合を可能にする、抗体又は抗原結合断片のドメインを指す。
【0071】
本明細書で使用されるとき、「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH、VH、VL、ナノボディ、又は任意のラクダ若しくはラマ単一ドメイン抗体)、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)等を包含する。「抗体」という用語は、天然に存在するもの(例えば、ヒトIgG等)と同様の形式を有する分子を包含する。「抗体」という用語は、当該技術分野において「免疫グロブリン」(Ig)とも称され、本明細書で使用されるとき、対の重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドから構築されるタンパク質を指し、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMを含む様々なIgアイソタイプが存在する。抗体が正しく折り畳まれると、各鎖は、比較的に直線的なポリペプチド配列によって結合された、いくつかの異なる球状ドメインに折り畳まれる。例えば、免疫グロブリンの軽鎖は、可変(VL)ドメイン及び定常(CL)ドメインに折り畳まれ、一方、重鎖は、可変(VH)ドメイン及び3つの定常(CH1、CH2、CH3)ドメインに折り畳まれる。重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメイン(VH及びVL)の相互作用により、抗原結合領域(Fv)が形成される。各ドメインは、当業者によく知られている確立された構造を有する。
【0072】
典型的には、抗体は、2本の軽鎖と2本の重鎖との対合から構成される。IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMを含む、異なる抗体アイソタイプが存在する。ヒトIgGは、さらに4つの異なるサブグループ、つまり、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4に分割される。治療抗体は、一般に、IgG1、IgG2又はIgG4として開発されている。
【0073】
本開示の抗体又は抗原結合断片は、例えば、ヒトIgG4定常領域又はその断片を含み得る。例示的な実施形態では、本開示の抗体又は抗原結合断片は、例えば、S228Pを保有するヒトIgG4定常領域又はその断片を含み得る。ヒトIgG1及びヒトIgG2並びに他のアイソタイプを含む他の抗体サブタイプの定常領域も企図されている。
【0074】
ヒト抗体IgGアイソタイプの軽鎖及び重鎖は、それぞれ、相補性決定領域(CDR)と名付けられた3つの超可変領域を有する可変領域を含む。軽鎖CDRは、本明細書において、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3として特定される。重鎖CDRは、本明細書において、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3として特定される。相補性決定領域は、以下の順序でフレームワーク領域(FR)に隣接している:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、標的抗原の結合に関与し、したがって、抗体間の顕著な配列多様性を示すことができる。定常領域は、より少ない配列多様性を示し、いくつかの天然タンパク質に結合して重要な生化学的事象を誘発する役割を担う。抗体の可変領域は、分子の抗原結合決定基を含み、したがって、抗体の標的抗原に対する特異性を決定する。大部分の配列可変性は、CDRで生じ、これが組み合わさって抗原結合部位を形成し、抗原決定基の結合及び認識に寄与する。フレームワーク領域は、最適な抗原結合のためにCDRの3次元での適切な位置決め及びアラインメントにおいて役割を果たし得る。抗体の抗原に対する特異性及び親和性は、超可変領域の構造、並びにそれらが抗原に提示する表面の大きさ、形状、及び化学的性質によって決定される。超可変性の領域を特定するための様々なスキームが存在し、2つの最も一般的なものは、カバット(Kabat)、並びにチョシア(Chothia)及びレスク(Lesk)のものである。カバットら(1991)は、VH及びVLドメインの抗原結合領域における配列可変性に基づいて「相補性決定領域」(CDR)を定義する。チョシア及びレスク(1987)は、VHドメイン及びVLドメイン内の構造ループ領域の位置に基づき、「超可変ループ」(H又はL)を定義する。これらの個々のスキームは、隣接又は重複するCDR及び超可変ループ領域を定義し、抗体分野における当業者は、しばしば「CDR」及び「超可変ループ」という用語を互換的に利用し、それらは本明細書でも同様に使用され得る。CDR/ループは、カバット及びチョシアの定義を組み合わせることによって描写されているCDRH1ループを除き、カバットスキームに従って本明細書で同定されている。
【0075】
本明細書で使用されるとき、「実質的同一性」又は「実質的に同一」は、それぞれ、参照配列と同じポリペプチド配列を有するか、又はそれぞれ、2つの配列を最適にアラインメントしたときに、参照配列内の対応する位置で特定のパーセンテージのアミノ酸残基が同じであるポリペプチド配列を意味する。例えば、参照配列と「実質的に同一」であるアミノ酸配列は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する。ポリペプチドについて、比較配列の長さは、一般的に、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、50、75、90、100、150、200、250、300又は350個の連続したアミノ酸(例えば、全長配列)である。配列同一性は、配列解析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group、University of Wisconsin Biotechnology Center、1710 University Avenue、Madison、WI 53705)をデフォルト設定で使用して測定することができる。そのようなソフトウェアは、様々な置換、欠失、及び他の改変に相同性の程度を割り当てることによって、類似の配列を一致させ得る。
【0076】
組換えDNA技術は、本開示に包含される一本鎖抗体(例えば、単一ドメイン)、ダイアボディ、ミニボディ、ナノボディ等の様々な抗体形式の設計を可能にする。
【0077】
本明細書で言及される「抗原結合断片」は、当該技術分野で公知の任意の好適な抗原結合断片を含み得る。抗原結合断片は、天然に存在する断片であってもよく、又は天然に存在する抗体の操作によって、若しくは組換え方法を使用して得てもよい。例えば、抗体断片としては、Fv、一本鎖Fv(scFv;ペプチドリンカーと連結されたVL及びVHからなる分子)、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体(sdAb;単一のVL又はVHから構成される断片)、及びこれらのうちのいずれかを多価提示する断片が挙げられ得るが、これらに限定されない。先に記載されたような抗体断片は、断片の異なる部分を連結するために、リンカー配列、ジスルフィド結合、又は他の種類の共有結合を必要とし得る;当業者は、異なる種類の断片及び様々なアプローチの要件、並びにそれらの構築のための様々なアプローチに精通している。
【0078】
本開示のその抗原結合断片は、抗原に特異的結合を付与するアミノ酸残基を含む抗原結合部位(例えば、1つ又は複数のCDR)を有する分子を包含する。
【0079】
したがって、抗原結合断片開示の例示的な実施形態は、(i)V、V、C及びC1ドメインからなる一価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)断片、(iii)Vドメイン及びC1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVドメイン及びVドメインからなるFv断片、(v)VドメインからなるdAb断片(Wardら、(1989)、Nature 341:544-546)、並びに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、例えば、V CDR3を含むが、これらに限定されない。
【0080】
抗原結合断片の具体的な実施形態は、例えば、scFv、Fab、Fab’又は(Fab’)を含み得る。
【0081】
「ヒト化抗体」という用語は、完全にヒト化された抗体(つまり、フレームワークが100%ヒト化されている)及び部分的にヒト化された抗体(例えば、少なくとも1つの可変領域が、ヒト抗体由来の1つ又は複数のアミノ酸を含み、他のアミノ酸が非ヒト親抗体のアミノ酸である)を包含する。典型的には、「ヒト化抗体」は、非ヒト親抗体(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類等)のCDRと、天然ヒト抗体又はヒト抗体コンセンサスのものと同一であるフレームワークとを含む。そのような場合、それらの「ヒト化抗体」は、完全にヒト化されていると特徴付けられる。「ヒト化抗体」は、ヒト抗体又はヒト抗体コンセンサスのアミノ酸に対応物がない1つ又は複数のアミノ酸置換を含んでもよい。そのような置換としては、例えば、抗体特性(例えば、親和性、特異性等)を保持し得る逆突然変異(例えば、非ヒトアミノ酸の再導入)が挙げられる。そのような置換は、通常、フレームワーク領域内にある。「ヒト化抗体」は、通常、ヒト抗体のものである定常領域(Fc)も含む。典型的には、「ヒト化抗体」の定常領域は、ヒト抗体の定常領域と同一である。ヒト化抗体は、CDRグラフティングによって得ることができる(Tsurushitaら、2005;Jonesら、1986;Tempestら、1991;Riechmannら、1988;Queenら、1989)。そのような抗体は、完全にヒト化されていると考えられる。
【0082】
「キメラ抗体」という用語は、親抗体とは異なる起源からの定常領域を有する抗体を指す。「キメラ抗体」という用語は、ヒト定常領域を有する抗体を包含する。典型的には、「キメラ抗体」は、マウス抗体に由来する可変領域及びヒト定常領域から構成される。
【0083】
「ハイブリッド抗体」という用語は、その重鎖又は軽鎖可変領域(その重鎖又は軽鎖)の1つがある種類の抗体(例えば、ヒト化)からのものであり、一方で、他方の重鎖又は軽鎖可変領域(重鎖又は軽鎖)は、別の種類(例えば、マウス、キメラ)からのものである、抗体を指す。
【0084】
本開示の抗体及び/又は抗原結合断片は、例えば、マウス、ラット、又は任意の他の哺乳動物に由来し得るか、又は組換えDNA技術などの他の供給源に由来し得る。本開示の抗体又は抗原結合断片は、例えば、合成抗体、非天然抗体、非ヒト哺乳動物の免疫化後に得られた抗体等を含み得る。
【0085】
本開示の抗体又はその抗原結合断片は、単離されていてもよく、及び/又は実質的に精製されていてもよい。
【0086】
抗原結合物質バリアント
本開示はまた、抗原結合物質のバリアントを包含し、ここで前記抗原結合物質は、抗原結合化合物、構築物、ポリペプチド、又は本明細書に記載の抗体、抗原結合物質若しくは抗原結合断片を含む任意の化合物を指し得る。
【0087】
より具体的には、本開示は、抗体又は抗原結合断片、CAR及びBiTEのバリアントを包含し、ADC、放射免疫コンジュゲート、又は本明細書で提供される抗原結合物質、抗体若しくは抗原結合断片を含む任意の化合物をさらに含む。バリアント(例えば、抗体又は抗原結合断片、CAR、BiTE等)には、それらのアミノ酸配列、例えば、1つ又は複数のCDR、1つ又は複数のフレームワーク領域、及び/又は定常領域に変異を有するものが含まれる。本開示に含まれるバリアント(例えば、抗体又は抗原結合断片、CAR、BiTE等)は、例えば、元の抗体又は抗原結合断片と比較して、同様の又は改善された結合親和性を有するものである。
【0088】
本開示に包含されるバリアントは、挿入、欠失、又はアミノ酸置換(保存的又は非保存的)を含み得るバリアントである。これらのバリアントは、そのアミノ酸配列において少なくとも1つのアミノ酸残基が、除去されていてもよく、異なる残基がその位置に挿入されていてもよい。
【0089】
より具体的には、本開示に包含されるバリアントには、本明細書に開示される抗体又は抗原結合バリアントの軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域と少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を有するものが含まれる。バリアント抗体のCDRは、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片のCDRと同一であってもよい。
【0090】
本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片のものと同一であるCDRアミノ酸残基と、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片のものと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%同一である配列であるフレームワーク領域とを有するバリアントも本開示に包含される。
【0091】
保存的置換は、以下に列挙される群(第1~6群)のうちの1つから(CDR、可変鎖、フレームワーク領域、又は定常領域等の)アミノ酸残基を、同じ群の別のアミノ酸と交換することによって行われ得る。
【0092】
保存的置換の他の例示的な実施形態を下記の表に示す。
(第1群)疎水性:ノルロイシン、メチオニン(Met)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)
(第2群)中性親水性:システイン(Cys)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)
(第3群)酸性:アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)
(第4群)塩基性:アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)
(第5群)鎖の配向に影響を与える残基:グリシン(Gly)、プロリン(Pro)、及び
(第6群)芳香族:トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)
非保存的置換は、これらの群のうちの1つのメンバーを別の群のメンバーと交換することを伴う。
【0093】
【表1】
【0094】
同一性パーセントは、元のペプチドと比較して同一であり、同じ又は類似の位置を占め得るアミノ酸の指標である。類似性パーセントは、同じ又は類似の位置にある元のペプチドと比較して、同一であるアミノ酸及び保存的アミノ酸置換で置き換えられているアミノ酸の指標となろう。
【0095】
全体的に、可変鎖間の類似性及び同一性の程度は、デフォルト設定、つまり、blastpプログラム、BLOSUM62マトリックス(オープンギャップ 11、及び伸長ギャップペナルティ 1;gapx ドロップオフ 50、期待値 10.0、ワードサイズ 3)及び活性化フィルターを用い、Blast2配列プログラム(Tatiana A.Tatusova、Thomas L.Madden(1999),「Blast2 sequences-a new tool for comparing protein and nucleotide sequences」、FEMS Microbiol Lett.174:247-250)を使用して、本明細書で決定されている。
【0096】
「実質的に同一である」配列は、生物学的に機能的な活性が維持されることを可能にする1つ又は複数の保存的アミノ酸変異又はアミノ酸欠失を含み得る。参照配列に対する1つ又は複数の保存的アミノ酸変異が、参照配列と比較して生理学的、化学的、物理化学的、又は機能的特性に実質的な変化を有しないバリアントペプチドを生じ得ることは、当該技術分野において公知であり、そのような場合、参照配列及びバリアント配列は、「実質的に同一」のポリペプチドと考えられるであろう。
【0097】
したがって、本開示のバリアントは、元の配列又は元の配列の一部と少なくとも70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有し得るものを含む。
【0098】
核酸、ベクター、及び細胞
抗体は、通常、軽鎖及び/又は重鎖をコードする核酸配列を含むベクター(複数可)から発現される軽鎖及び重鎖の発現を可能にする細胞において作製される。
【0099】
したがって、本開示は、本明細書に記載のCDR、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、軽鎖、重鎖のいずれかをコードすることができる核酸を包含する。
【0100】
本明細書で使用されるとき、「核酸」という用語は、RNA、DNA、cDNAなどを指す。
【0101】
遺伝子コードの固有の縮重により、同じアミノ酸配列をコードする他の核酸配列を生成し、本開示の抗体又はその抗原結合断片を発現するために使用してもよい。ヌクレオチド配列は、クローニング、プロセシング、及び/又は遺伝子産物の発現の変更を含むがこれらに限定されない様々な目的のためにヌクレオチド配列を改変するために、当該技術分野で一般的に知られた方法を使用して操作されてよい。遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのランダム断片化及びPCR再アセンブリによるDNAシャッフリングを使用して、ヌクレオチド配列を操作してもよい。例えば、オリゴヌクレオチド媒介性部位特異的変異誘発を使用して、新しい制限部位を生成する変異を導入し、グリコシル化パターンを変更し、コドン選好を変更し、スプライスバリアント等を作製してもよい。
【0102】
さらに別の態様において、本開示は、本明細書に記載の核酸を含むベクターに関する。
【0103】
本開示によれば、ベクターは、発現ベクターであってもよい。
【0104】
発現ベクターは、通常、特定の宿主における挿入されたコード配列の転写及び翻訳制御のためのエレメントを含有する。これらのエレメントは、エンハンサー、構成的及び誘導性プロモーター、並びに5’及び3’非翻訳領域などの調節配列を含み得る。当業者に周知の方法を使用して、そのような発現ベクターを構築してもよい。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換えが含まれる。
【0105】
抗体又はその抗原結合断片の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、同じ核酸分子(例えば、同じベクター)によって、又は別個の分子(例えば、別個のベクター)によってコードされてもよい。
【0106】
したがって、本開示は、ベクターのセットであって、ベクターの1つが、軽鎖又は軽鎖可変領域を発現することができ、他のベクターが、重鎖又は重鎖可変領域を発現することができる、セットを提供する。
【0107】
本開示のさらなる態様は、本開示の抗体又はその抗原結合断片の軽鎖又は軽鎖可変領域をコードする核酸又はベクターを含む第1のバイアルと、抗体又はその抗原結合断片の重鎖又は重鎖可変領域をコードする核酸又はベクターを含む第2のバイアルと、を含むキットに関する。
【0108】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載の核酸、ベクター、抗体、又は抗原結合断片を含み得る、単離された細胞に関する。
【0109】
単離された細胞は、軽鎖可変領域をコードする核酸と重鎖可変領域をコードする核酸とを、別個のベクターに又は同じベクターに含み得る。また単離された細胞は、軽鎖をコードする核酸と重鎖をコードする核酸とを、別個のベクターに又は同じベクターに含み得る。
【0110】
本開示によれば、細胞は、抗体又はその抗原結合断片を発現、アセンブル、及び/又は分泌することができる。
【0111】
また、本開示によれば、細胞は、本明細書に記載の抗体を含み得る、及び/又は発現し得る。
【0112】
さらに、本開示によれば、細胞は、軽鎖可変領域をコードする核酸及び重鎖可変領域をコードする核酸を含み得る。
【0113】
細胞における抗体又は抗原結合断片の産生
本明細書に開示される抗体は、ハイブリドーマの方法論又は組換えDNA法を含む、当業者によく知られた様々な方法によって作製することができる。
【0114】
慣用のハイブリドーマ技術は、げっ歯類を抗原で免疫化し、脾細胞を単離し、HGPRT発現を欠く骨髄腫細胞と融合させ、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミン(HAT)を含有する培地によってハイブリッド細胞を選択することを伴う。ハイブリドーマをスクリーニングして、所与の抗原に特異的な抗体を産生するものを特定する。ハイブリドーマは、拡張され、クローニングされる。軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の核酸配列は、標準的な配列決定方法によって得られ、抗体の軽鎖及び重鎖核酸配列を含む発現ベクターが生成される。
【0115】
抗体の組換え発現のために、宿主細胞は、抗体又はその抗原結合断片の軽鎖及び重鎖の核酸配列を(同じベクター又は別個のベクターに)含む、ベクター又はベクターのセットを用いて形質転換される。
【0116】
哺乳動物系における組換えタンパク質の長期的な産生のために、タンパク質を安定的に発現する細胞株を得てもよい。例えば、本明細書に記載される免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のいずれか1つをコードすることができるヌクレオチド配列を、ウイルス複製起点及び/又は内因性発現エレメント並びに選択又は可視マーカー遺伝子を同じベクター又は別個のベクターに含み得る発現ベクターを使用して、細胞株に形質転換してもよい。本開示は、用いられるベクター又は宿主細胞によって限定されない。本開示のある特定の実施形態において、本明細書に記載の免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のいずれか1つをコードすることができるヌクレオチド配列を、それぞれ、別個の発現ベクター及び別個に発現される各鎖にライゲーションしてもよい。別の実施形態において、本明細書に記載される免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のいずれか1つをコードすることができる軽鎖及び重鎖の両方を、単一の発現ベクターにライゲーションし、同時に発現させてもよい。
【0117】
ポリペプチドの発現を検出及び測定するための免疫学的方法は、当該技術分野において公知である。かかる技術の例としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、又はフローサイトメトリーが挙げられる。当業者は、これらの方法論を本開示に容易に適応させることができる。
【0118】
翻訳後活性のための特定の細胞機構及び特徴的なメカニズムを有する様々な宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、MDCK、HEK293、及びWI-38)が市販されており、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手可能であり、発現されたポリペプチドの正しい修飾及びプロセシングを確実にするために選択され得る。
【0119】
典型的には、抗体又はその抗原結合断片は、CHO細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、PER.C6(登録商標)ヒト細胞において産生される。
【0120】
本開示は、抗体又はその抗原結合断片の作製方法であって、本開示の抗体又は抗原結合断片の軽鎖及び重鎖を培養細胞で発現するステップを含む方法に関する。
【0121】
本方法は、本開示の抗体又は抗原結合断片を精製又は単離するステップをさらに含み得る。本方法は、本開示の抗体又は抗原結合断片を、治療部分又は検出可能部分等のカーゴ分子にコンジュゲートするステップをさらに含み得る。
【0122】
抗体コンジュゲート
本開示の抗体又はその抗原結合断片は、治療用若しくは診断用の化合物、構築物若しくは組成物に含まれてもよく、又はカーゴ分子に連結されてもよい。カーゴ分子の例示的な実施形態としては、治療部分、検出可能部分、ポリペプチド(例えば、ペプチド、酵素、成長因子)、ポリヌクレオチド、リポソーム、ナノ粒子、ナノワイヤ、ナノチューブ、量子ドット等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
より詳細には、本開示の抗体又はその抗原結合断片は、治療部分とコンジュゲートされてもよい。治療部分は、通常、切断可能な又は切断可能でないリンカーを介して抗体に結合される。
【0124】
治療部分を列挙すると、細胞毒性剤、細胞分裂阻害剤、抗癌剤(化学療法剤)、及び放射線療法剤(例えば、放射性同位体)が挙げられる。
【0125】
細胞毒性剤の例示的な実施形態としては、限定されないが、α-アマニチン、クリプトフィシン、デュオカルマジン、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、デルクステカン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、ドラスタチン、シュードモナスエンドトキシン、リシン、オーリスタチン(例えば、モノメチルオーリスタチンE、モノメチルオーリスタチンF)、メイタンシノイド(例えば、メルタンシン)、ピロロロベンゾジアゼピン(PBD)及び類似体が挙げられる。
【0126】
放射線療法剤の例示的な実施形態としては、限定されないが、イットリウム-90、スカンジウム-47、レニウム-186、ヨウ素-131、ヨウ素-125、及び当業者によって認識される多くの他のもの(例えば、ルテチウム(例えば、Lu177)、ビスマス(例えば、Bi213)、銅(例えば、Cu67)、アスタチン-211(211At)、アクチニウム225(Ac-225)等)が挙げられる。
【0127】
化学療法剤の例示的な実施形態としては、限定されないが、5-フルオロウラシル、アドリアマイシン、イリノテカン、タキサン、カルボプラチン、シスプラチン等が挙げられる。
【0128】
本開示の抗体又は抗原結合断片は、検出可能部分と(つまり、検出又は診断目的のために)コンジュゲートされてもよい。
【0129】
「検出可能部分」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、及び/又は他の物理的手段によって検出可能な薬剤を含む。検出可能部分は、当該技術分野で周知の方法を使用して、本開示の抗体及びその抗原結合断片に、直接的及び/又は間接的に(例えば、限定されないが、DOTA又はNHS結合等の結合を介して)連結されてもよい。多種多様な検出可能部分を、必要とされる感度、コンジュゲーションの容易性、安定性要件、及び利用可能な計測に応じて選択して、使用することができる。好適な検出可能部分としては、蛍光標識、放射性標識(例えば、限定されないが、125I、In111、Tc99、I131、及びPETスキャナ等のための陽電子放出同位体を含む)、核磁気共鳴活性標識、発光標識、化学発光標識、発色団標識、酵素標識(例えば、限定されないが、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、量子ドット、及び/又はナノ粒子が挙げられるが、これらに限定されない。検出可能部分は、検出可能なシグナルを誘発及び/又は生成し、それにより、検出可能部分からのシグナルを検出することを可能にする。
【0130】
キメラ抗原受容体及び他の免疫療法剤
本開示の抗体及びその抗原結合断片の配列は、キメラ抗原受容体(CAR)、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、又は他の免疫療法剤、例えば、限定されないが、二重特異性キラー細胞エンゲージャー(BiKE)、三重特異性キラー細胞エンゲージャー(TriKE)、又は任意の免疫療法化合物を生成するために使用され得る。
【0131】
本開示のCARは、例えば、a)上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)に特異的に結合する抗体の抗原結合ドメイン、b)必要に応じてスペーサー、c)膜貫通ドメイン、d)必要に応じて少なくとも1つの共刺激ドメイン、及びe)少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含んでもよい。
【0132】
キメラ抗原受容体は、抗原結合ドメイン及び膜貫通ドメインを接続するヒンジ領域又はスペーサーを含んでもよい。スペーサーは、細胞の表面における抗原結合ドメインのより良い提示を可能にし得る。
【0133】
本開示によれば、スペーサーは、任意選択であり得る。代替的に、スペーサーは、例えば、1~200個のアミノ酸残基、典型的には10~100個のアミノ酸残基、より典型的には25~50個のアミノ酸残基を含み得る。スペーサーは、ヒトタンパク質に由来するものでもよい。
【0134】
本開示によれば、スペーサー又はヒンジ領域は、例えば、限定されないが、CD8ヒンジ(例えば、マウス、ヒトCD8)又はIgGヒンジ(ヒト免疫グロブリンヒンジ)又はそれらの組合せであり得る。
【0135】
膜貫通ドメインの例示的な実施形態としては、例えば、限定されないが、T細胞受容体複合体のアルファ、ベータ、又はCD3ゼータ鎖、CD28、CD27、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154が挙げられる。
【0136】
いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、例えば、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278),4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Ra、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD1d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244,2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKG2D、NKG2Cの少なくとも膜貫通領域(複数可)を含み得る。
【0137】
膜貫通ドメインの特定の実施形態は、CD28の膜貫通ドメインである。
【0138】
共刺激ドメインは、例えば、限定されないが、CD28、CD27,4-1BB、OX40、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83に特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD1d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244,2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、Nkp46、及びNKG2D、又はそれらの組合せからのものであり得る。
【0139】
細胞内シグナル伝達ドメインは、例えば、限定されないが、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、共通FcRガンマ(FCERIG)、FcRベータ(FcイプシロンRib)、CD79a、CD79b、FcガンマRlla、DAP10又はDAP12からのものであり得る。
【0140】
分泌経路を標的とするために、キメラ抗原受容体は、シグナルペプチド、例えば、CD28のシグナルペプチド又は免疫細胞に好適な任意の他のシグナルペプチドなどを含んでもよい。シグナルペプチドは切断される(切断可能である)。
【0141】
BiTE、BiKE及びTriKE分子は、EGFRvIIIに特異的に結合する抗原結合ドメイン(例えば、scFv)、並びにT細胞特異的分子(例えば、CD3)及びNK細胞表面分子(例えば、CD16)を含むが、これらに限定されない、特異的免疫細胞に結合する別のドメイン(scFv)を含み得る。これらは一般に、可撓性リンカーによってタンデムに連結された複数のscFvを含む。
【0142】
医薬組成物
本開示はまた、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片(コンジュゲートされているもの又はコンジュゲートされていないもの)を含む化合物、組成物、構築物及び医薬組成物に関する。
【0143】
活性成分に加えて、医薬組成物は、限定されないが、水、PBS、塩溶液、ゼラチン、油、アルコール、並びに活性化合物の薬学的に使用され得る製剤への処理を容易にする他の賦形剤及び補助剤を含む、薬学的に許容できる担体を含んでもよい。他の例において、そのような調製物は、滅菌されてもよい。
【0144】
本明細書において、「医薬組成物」は、薬学的に許容できる希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント及び/又は担体と一緒になった治療有効量の薬剤を意味する。本明細書で使用されるとき、「治療有効量」とは、所与の状態及び投与レジメンに対して治療効果をもたらす量を指す。かかる組成物は、液体、又は、凍結乾燥若しくは他の方法で乾燥された製剤であり、種々のバッファー成分(例えば、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH及びイオン強度の希釈剤、表面への吸収を防止するためのアルブミン又はゼラチン等の添加剤、界面活性剤(例えば、Tween20、Tween80、Pluronic F68、胆汁酸塩)を含む。可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、充填物質又は張度調整剤(例えば、ラクトース、マンニトール)、ポリエチレングリコール等のポリマーのタンパク質への共有結合、金属イオンとの錯体化、又はポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲル等のポリマー化合物の粒子状調製物中への若しくはその上への又はリポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層若しくは多層小胞、赤血球ゴースト、若しくはスフェロプラスト中への若しくはその上への材料の組込み。このような製剤は、物理的状態、溶解度、安定性、in vivo放出速度、in vivoクリアランス速度に影響を及ぼし得る。制御放出組成物又は徐放性組成物としては、親油性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、油)中の製剤が挙げられる。ポリマー(例えば、ポロキサマー又はポロキサミン)でコーティングされた粒子状組成物も本開示に包含される。本開示の組成物の他の実施形態は、非経口、肺、鼻、口腔、膣、直腸経路を含む様々な投与経路のための、粒子状形態保護コーティング、プロテアーゼ阻害剤、又は透過促進剤を組み込む。一実施形態では、医薬組成物は、非経口的に、癌近傍(paracancerally)に、経粘膜で、経皮で、筋肉内に、静脈内に、皮内に、皮下に、腹腔内に、脳室内に、頭蓋内に、及び腫瘍内に投与される。
【0145】
さらに、本明細書で使用される「薬学的に許容できる担体」又は「薬学的担体」は、当該技術分野において公知であり、限定されないが、0.01~0.1M又は0.05Mのリン酸バッファー又は0.8%の生理食塩水が挙げられる。加えて、かかる薬学的に許容できる担体は、水性又は非水性の溶液、懸濁液、及びエマルジョンであってよい。非水性溶媒としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びエチルオレエートなど注射用有機エステルが挙げられる。水性担体としては、水、アルコール溶液/水溶液、エマルジョン、又は懸濁液、例えば生理食塩水及び緩衝化媒体が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、又は固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養補給液、電解質補給液、例えばリンゲルデキストロースベースの補給液などが挙げられる。保存剤及びその他の添加剤、例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、コレーティング剤(collating agent)、及び不活性ガスなどが存在してもよい。
【0146】
任意の化合物について、治療有効量は、初めに細胞培養アッセイにおいて又はマウス、ラット、ウサギ、イヌ、若しくはブタなどの動物モデルにおいて推定され得る。また動物モデルを用いて適切な濃度範囲及び投与経路が決定され得る。次いで、そのような情報を用いて、ヒトにおける投与のための有用な用量及び経路が決定され得る。これらの技術は当業者にとって周知であり、治療有効量は、症状又は状態を改善する活性成分の量を指す。治療有効性及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手法によって、例えば、ED50(集団の50%で治療的に有効な量)統計及びLD50(集団の50%に対して致死的な用量)統計を計算し、対比させることによって決定され得る。任意の上述の治療組成物は、かかる治療を必要とする、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、及びヒトなどの哺乳動物を含むがこれらに限定されない、任意の対象に適用され得る。
【0147】
本開示で利用される医薬組成物は、限定されないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、局所、舌下、又は直腸手段を含む任意の数の経路によって投与され得る。
【0148】
本開示のさらなる態様は、本明細書に記載の1つ又は複数の抗体又は抗原結合断片又は抗体薬物コンジュゲートを含有するバイアルを含み得るキットに関する。
【0149】
使用方法
本開示の態様は、抗体又はその抗原結合断片、CAR、BiTE、BiKE、又はTriKE分子を、必要とする対象に投与することを含む。
【0150】
本開示の他の態様は、CAR、BiTE、BiKE、又はTriKE分子を発現するように操作された免疫細胞を、必要とする対象に投与することを含む。
【0151】
本開示のCAR、BiTE、BiKE又はTriKE構築物は、EGFRvIII陽性腫瘍に向けて、遺伝子操作された免疫細胞を再標的化するために使用され得る。
【0152】
遺伝子操作された免疫細胞は、必要とする対象に投与され得る。
【0153】
本開示の一態様によれば、免疫細胞は、対象から単離され、CAR、BiTE、BiKE又はTriKE構築物を発現するように操作され、同じ対象に再投与される。
【0154】
本開示の抗体又はその抗原結合断片は、癌の治療において、非コンジュゲート形態で、又は治療部分とコンジュゲートされて、使用され得る。
【0155】
より詳細には、本開示の抗体又はその抗原結合断片は、EGFRvIIIを発現する腫瘍細胞の増殖を阻害するために使用されてもよい。抗体薬物コンジュゲート及び放射免疫コンジュゲートが、かかる目的のために特に企図されている。
【0156】
本開示は、より具体的には、癌を有するか又は有する疑いがある対象を、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片又は抗体薬物コンジュゲートを投与することによって、治療する方法に関する。
【0157】
抗体又はその抗原結合断片又は抗体薬物コンジュゲートは、医薬組成物として、単独で、又は他の抗癌剤と組み合わせて投与されてもよい。
【0158】
本明細書で使用されるとき、用語「対象」は、ヒト、及び、動物、例えば非ヒト霊長類、ウシ、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ウマ、鳥類などを包含する。「対象」という用語は、特に、ヒトを包含する。
【0159】
治療から利益を受けるであろう、必要がある対象は、EGFRvIIIを発現する腫瘍細胞を有するヒトを含む。より具体的には、抗体又はその抗原結合断片又は抗体薬物コンジュゲートは、多形性膠芽腫(GBM)を有する疑いがある対象に投与され得る。必要とする対象は、癌腫、例えば、乳房、頭頚部、又は口腔由来の癌腫等を有するか又は有する疑いがある対象も包含する。
【0160】
本開示の目的のための「治療」という用語は、治療的処置と防御的又は予防的処置との両方を指し、目的は、標的とする病理学的状態又は障害を減速させる(減少させる)ことである。治療を必要とする対象には、既に障害を有する対象、障害を有する傾向にある対象、又は障害を予防すべき対象が含まれる。特に、必要とする対象には、1つ又は複数の癌マーカーのレベルが上昇した対象が含まれる。
【0161】
或いは、本開示の方法を実施するために及び当該技術分野において知られているように、本開示の抗体又は抗原結合断片(コンジュゲートされたもの又はコンジュゲートされていないもの)は、本開示の抗体又は抗原結合断片に特異的に結合することが可能であり、所望の検出可能部分、診断部分又は治療部分を担持し得る第2の分子(例えば、二次抗体等)と組み合わせて使用してもよい。
【0162】
本開示の抗体又はその抗原結合断片は、EGFRvIIIの検出を伴うアッセイ又は方法において、非コンジュゲート形態で、又は検出可能部分とコンジュゲートされて、使用されてもよい。
【0163】
EGFRvIII発現に関連する癌を有する対象を治療する方法が特に企図されている。かかる方法は、本明細書に開示の抗原結合物質又はかかる抗原結合物質を発現する細胞を投与するステップを含み得る。
【0164】
例示的な実施形態では、本方法は、抗体-薬物コンジュゲートを投与するステップを含み得る。
【0165】
別の例示的な実施形態では、本方法は、キメラ抗原受容体、二重特異性T細胞エンゲージャー、二重特異性キラー細胞エンゲージャー、又は三重特異性キラー細胞エンゲージャーを発現する細胞を投与するステップを含み得る。
【0166】
本開示の別の態様は、EGFRvIIIを検出するための方法に関し、該方法は、EGFRvIIIを発現する細胞、又はEGFRvIIIを含むか又は含む疑いがある試料(生検、血清、血漿、尿等の体液)を、本明細書に記載の抗体又は抗原結合断片と接触させるステップ、及び結合を測定するステップを含み得る。試料は、癌(例えば、多形性膠芽腫又は癌腫)を有し得るか又はかかる癌を有する疑いがある哺乳動物(例えば、ヒト)に由来し得る。試料は、哺乳動物から得られた組織試料又は細胞培養上清であってよい。
【0167】
本開示によれば、試料は、哺乳動物から得られた血清試料、血漿試料、血液試料、又は腹水であり得る。
【0168】
本開示のさらなる範囲、適用性、及び利点は、以下に示す非限定的な詳細な説明から明らかになるであろう。ただし、この詳細な説明は、添付の図面を参照して、本開示の例示的な実施形態を示す一方で、例としてのみ与えられていることが理解されるべきである。
【実施例
【0169】
実施例1:ヒト化V領域配列の設計
マウス抗EGFR vIII特異的抗体4E11の可変領域を本実施例でヒト化した。対応するマウスVH及びVLアミノ酸配列は、配列表にそれぞれ配列番号1及び配列番号2で列挙されており、それぞれmVH及びmVLと名付けられている。これらのV領域配列に埋設されたCDRループは、図1において、組み合わせたカバット及びチョシアの定義(Wu及びKabat、1970;Kabat及びWu、1991;Chothia及びLesk、1987;Al-Lazikaniら、1997)に従って描写されたCDR-H1ループを除き、カバットの定義に従って描写されている。この定義は、CDRグラフトアプローチ(Riechmannら、1988)によるmVH及びmVLのフレームワーク領域(FR)のヒト化の基礎を形成した。
【0170】
CDRグラフト化は、ソースmVH配列の3つのCDRセグメントをヒトVH鋳型配列の4つのFRセグメントに適切な順序でステッチすること、及びソースmVL配列の3つのCDRセグメントをヒトVL鋳型の4つのFRセグメントに適切な順序でステッチすることによって行った。本発明者らは先ず、4E11抗体のmVH配列及びmVL配列について、最も近いヒト生殖細胞系VHファミリー及びVLファミリーが、それぞれ、ヒトVH-4ファミリー及びヒトVk-1ファミリーであることを同定した。次いで、VBASE2ヒト生殖細胞系データベース(Retterら、2005)を使用して、親マウス配列のFRとの配列相同性の点で高いスコアを有するいくつかのヒトV遺伝子配列及びヒトJ遺伝子配列を同定した。ヒト化のために選択した最終的なヒト生殖細胞系鋳型配列を、対応するマウス配列にアラインメントして図1に示す。それらは、mVH配列についてのヒトIGHV312(Vセグメント)及びヒトIGHJ4(Jセグメント)、並びにmVL配列についてのヒトIGKV069(Vセグメント)及びヒトIGKJ2(Jセグメント)である。これらの鋳型を考慮すると、mVH FRを完全にヒト化するためにマウスからヒトへの20個のアミノ酸変異が必要であり、mVL FRを完全にヒト化するためにマウスからヒトへの16個のアミノ酸変異が必要である(図1の強調表示されたアミノ酸を参照)。これらの36個のアミノ酸全てを変異させることは、配列番号5を有するhVH1(hH1にも含まれる)バリアント及び配列番号8を有するhVL1(hL1にも含まれる)バリアントによって表される100%ヒト化V領域をもたらす。
【0171】
多くの場合、100%ヒト化バリアントは、親マウスバリアントと比較して幾分減少した抗原結合を有することが観察されている。抗原結合親和性喪失のリスクを軽減するために、元の親マウスアミノ酸残基への「逆突然変異」を設計した。直接的又は間接的に抗原結合に影響を与え得るアミノ酸残基はソース抗体フレームワークに存在する。逆突然変異の同定を支援するために、鋳型として適切な結晶構造(Protein Data Bankコード:3G5V)を使用した相同性モデリングによってマウス4E11可変領域の3Dモデルを構築した。この分子モデルのレンダリングを図2に示す。この構造モデルの綿密な目視検査と詳細な構造解析に基づいて、以下の逆突然変異:重鎖中のM49、I67及びR71;並びに軽鎖中のL36、F44及びG46(全体を通してカバット付番を使用)を選択した;図2において、これらの逆突然変異アミノ酸を強調表示している。
【0172】
VHにおいて、アルギニンアミノ酸側鎖がCDR-H1及びCDR-H2のコンフォメーションを直接支持している71位の逆突然変異は、抗原結合に関与している可能性が高い。この位置でのヒト化に必要な非保存的R71V変異は、CDRに有意な構造変化を導入し得る。したがって、この変異(R71)の実施により、配列番号6を有するヒト化バリアントhVH2を導いた。より埋設されている49位及び67位の疎水性残基は、関与はより少ないが、CDR-H2ループのコンフォメーションを直接支持する正しいパッキングを維持するために依然として重要である。これらの2つの位置でのヒト化は、保存的変異M49I及びI67Vを必要とするが、正しいパッキングは損なわれるであろう。したがって、前述のR71逆突然変異に加えて、これらの逆突然変異(M49、I67)の実施により、配列番号7を有するヒト化バリアントhVH3を導いた。
【0173】
VLにおいて、逆突然変異は、対合鎖からの超可変CDR-H3ループ及び同じ鎖からのCDR-L2のコンフォメーションを直接支持する近い空間的近接性にある2つのアミノ酸、L36及びG46のタンデムの形態で現れる。これらは、抗原結合に直接関与している可能性が非常に高い。顕著な構造的特徴は、これらの2つの位置、L36Y及びG46Lで必要とされるヒト化が、比較的埋設された位置でのサイズの大幅な増加のために立体的に収容され得ないことであり、これにより、大幅な構造的変化がもたらされる可能性が高い。したがって、これらの逆突然変異(L36、G46)の実施により、配列番号9を有するヒト化バリアントhVL2を導いた。さらなる逆突然変異が、前述のタンデム逆突然変異アミノ酸の周りに同じくクラスター化されているマウスアミノ酸F44において同定され、その位置でのヒト化は、コンフォメーション的にさらに制限され、より小さいプロリンアミノ酸への変異を必要とする。したがって、前述のタンデム逆突然変異(L36、G46)に加えて、この逆突然変異(F44)の実施により、配列番号10を有するヒト化バリアントhVL3を導いた。
【0174】
4E11抗体のために設計されたヒト化V領域配列を図3A及び図3Bにおいてアラインメントしている。さらに、シリコ分析により、これら全てのヒト化配列について予測されるT細胞エピトープ(Dhandaら、2018)が存在しないことが示された。
【0175】
実施例2:全長抗体の組換え産生及び精製
実施例1に記載のキメラ及びヒト化VH領域及びVL領域を、ヒトIgG4定常領域(それぞれ、ヒトIgG4重鎖及びヒトカッパ軽鎖)との融合物としてpTT5(商標)ベクターにクローニングし、それによってキメラ抗体を生成した。ヒトIgG4重鎖配列を、IgG4ホモ二量体の安定性を増加させるために、228位でセリンアミノ酸残基からプロリン残基に変異させた(つまり、S228P変異)。重鎖のC末端リジンアミノ酸残基を、翻訳後修飾としてこのC末端リジンの部分的クリッピングに起因する不均一性を低減するために欠失させた。得られた全長重鎖及び軽鎖キメラ配列cH及びcLは、配列表にそれぞれ配列番号11及び配列番号12で示されている。得られた全長重鎖ヒト化バリアント配列hH1、hH2及びhH3は、配列表にそれぞれ配列番号13、配列番号14及び配列番号15で示されている。得られた全長軽鎖ヒト化バリアント配列hL1、hL2及びhL3は、配列表にそれぞれ配列番号16、配列番号17及び配列番号18で示されている。全ての軽鎖配列は、必要に応じたシグナルペプチドMVLQTQVFISLLLWISGAYG(配列番号20)をN末端に含み、一方で重鎖配列はシグナルペプチドMDWTWRILFLVAAATGTHA(配列番号19)をN末端に含む。これらは、シグナルペプチドの非限定的な例示的配列であり、当業者は、これらの抗体バリアントの組換え産生のために他の適切なシグナルペプチドを選択することができる。
【0176】
キメラ抗体cH-cL、及び3つのヒト化重鎖と3つのヒト化軽鎖との間の全ての可能な組合せをカバーする9つのヒト化抗体(hH1-hL1、hH1-hL2、hH1-hL3、hH2-hL1、hH2-hL2、hH2-hL3、hH3-hL1、hH3-hL2、hH3-hL3)をCHO細胞において組換え産生した。この実施例では、32℃でCHO55E1細胞を使用して25mLスケールで産生を行った。簡潔に述べると、CHO細胞を、重鎖及び軽鎖構築物(1:1の比率)で一過性にトランスフェクトした。Cedex自動細胞計数システム(Roche Innovatis)で細胞試料を直接計数することによって決定される生存細胞密度が1~3×10細胞/mL、細胞生存率が84~93%となったトランスフェクション後8日目に、条件培地を採取した。全ての抗体バリアントが、一過性にトランスフェクトされたCHO細胞によって良好に発現された。
【0177】
細胞培養上清からの精製は、Protein Makerシステム上で並行して1mLのHiTrap MabSelect SuReカラム(GE Healthcare)を使用してプロテインA親和性クロマトグラフィーによって実施した。カラム平衡及び洗浄は、DPBS(GE Healthcare Life Sciences)で行った。結合のための線形流量を約45cm/時(0.3mL/分)に設定して、約3.3分の滞留時間を得た。溶出は、クエン酸バッファー0.1M、pH3.0を用いて行い、中和は、10%(v/v)1M HEPES中で行った。抗体を含有する画分をプールし、クエン酸バッファーをDPBSに対して交換し、ZebaSpin TK MWCOカラム(ThermoFisher Scientific)を行った。精製した抗体を、0.2μmフィルターを通して濾過することによって滅菌した。超高速液体クロマトグラフィー-サイズ排除クロマトグラフィー(UPLC-SEC)を使用して、全ての溶出物の純度を評価した。純度は、5つのヒト化バリアントでは95%を超え、キメラバリアント及び残りの3つのヒト化バリアントでは89~95%であった。選択されたピーク画分を、30kDaの膜分子量カットオフを有するVivaspin(登録商標)Turbo遠心濃縮器(GE Healthcare Life Sciences)を使用して室温で製造業者の指示に従って行う限外濾過によって濃縮した。プロセス中に、タンパク質濃度を、280nmの吸光度及び各バリアントの計算された比消光係数を使用してNanoDrop(商標)2000分光光度計(ThermoFisher Scientific)でモニタリングした。純度が95%未満のバリアントは、Superdex200 10/30カラム(GE Healthcare Life Sciences)での分取SECによってさらに精製した。最終生成物をSDS-PAGE及びUPLC-SECによって分析し、最終純度を99~100%にした。
【0178】
実施例3:示差走査熱量測定による熱安定性測定
示差走査熱量測定(DSC)を使用して、Malvern MicroCal DSCシステム(Malvern Instruments)を用い、4E11ヒト化及びキメラ抗体バリアントの熱遷移中点(T)を決定した。DPBSバッファー中の試料を、DPBSバッファー中で終濃度0.4mg/mLに希釈した。熱変性は、フィードバックモード/ゲインを「低」、フィルタリング期間を8秒、プレスキャン時間を3分、及び窒素圧力を70psi未満に設定した状態で、20℃から100℃まで60℃/時の速度で温度を上昇させることによって実施した。全てのデータを、Origin7.0ソフトウェア(OriginLab)を用いて手動でベースラインを割り当てて分析し、3つの遷移への適合を使用してTを決定した。
【0179】
結果を、サーモグラムの観点から図4に示し、統合サーモグラムから得られた融解温度の観点から表1に示す。全てのヒト化バリアントは、キメラバリアントと比較して改善された熱安定性を有利に示した(図4)。ヒト化バリアントは、第2のピークが肩を有し、より高い温度に向かってシフトしている2つの十分に分離されたピークを有する一方、キメラ抗体は、複数の肩を有する単一のピークからなる完全に異なる形状を有していることが、サーモグラムから明らかである。
【0180】
これらのバリアント間の配列の差異は、Fab断片の一部であるV領域にあるため、特に興味深いのは、より高いT2値に反映されているように(表1)、キメラバリアントと比較して全てのヒト化バリアントについて観察されるFabドメインの有利な増加した安定性である。ヒト化の際のFab断片の安定性におけるこれらの改善は、1.1℃~6.2℃の範囲である。当業者は、抗体のヒト化が、典型的には熱安定性の喪失をもたらし、及び/又は安定性の改善をもたらさないことを理解するであろう。したがって、ここで提供されているヒト化バリアントが熱安定性の改善を示すことは、利点であり、予期されないことである。
【0181】
CH3ドメインの安定性も、T2値(表1)に反映されているように、キメラバリアントと比較して全てのヒト化バリアントについて改善されており、T3の増加は1.0℃~6.6℃の範囲であった。CH3ドメイン配列は、これら全てのバリアント間で同一であるため、この知見は非常に興味深く、驚くべきものである。この予期せぬ知見は、導入されたヒト化変異から離れた部位であっても、本発明で設計されたヒト化変異が4E11抗体の全体的な安定性に間接的なアロステリック効果を与えていることを示唆している。
【0182】
さらなる構造特性関係分析は、hL1軽鎖バリアントを有するヒト化バリアントがキメラバリアントと比較して安定性において最小の改善を示すのに対し、hL2軽鎖バリアントを有するものはキメラバリアントと比較して安定性において最大の改善を示すことを示す。このことは、T2(Fab融解)及びT3(CH3融解)の両方にあてはまる。ヒト化重鎖バリアント配列に関しては、折り畳み安定性の有意な依存性を検出することはできない。
【0183】
【表2】
【0184】
実施例4:フローサイトメトリーによる見かけの親和性の評価
野生型EGFR(U87MG-EGFR wt又はU87 WT)を過剰発現するヒト膠芽腫細胞株U87MG、及びEGFRvIII変異を過剰発現するU87MG(EGFRのΔ2~7欠失変異;U87MG-EGFRvIII又はU87vIII)に対する用量依存的結合曲線におけるフローサイトメトリーによって、4E11抗EGFRvIIIモノクローナル抗体の組換え精製キメラバリアント及び9つのヒト化バリアントの結合特性を、それらの結合親和性及び特異性について評価した。全長wt EGFR又はEGFRvIIIを過剰発現する細胞を、W. Cavaneeの研究所(Ludwig Institute for Cancer Research、University of California at San Diego)から入手した。細胞を、10%FBS及び400μg/mLのG418を含有するDMEM高グルコース培地中で増殖させた。
【0185】
分析に先立ち、細胞を、分析日に80%コンフルエントを超えないように播種した。特に明記しない限り、全ての培地は4℃で維持し、全てのインキュベーションは湿った氷上で実施する。細胞をPBS中で洗浄し、細胞解離バッファー(Sigma)を添加することによって回収し、遠心分離し、細胞密度2×10細胞/mLで完全培地中に再懸濁した。50μL/ウェルの細胞をポリプロピレンv底96ウェルプレート中に分布させ、100nMから始まる精製mAbの1/3段階希釈物を添加し、2時間インキュベートした。細胞を遠心分離によって2回洗浄し、FITC標識F(ab’)2ヤギ抗マウス抗体(Fc特異的、#115-096-071、Jackson Immunoresearch、Cedarlane)と共にさらに1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、ヨウ化プロピジウムを含有する培地中に再懸濁して、分析から死細胞を除外した。試料を60μmのナイロンメッシュフィルタープレート(Millipore)に通して濾過し、細胞凝集塊を除去した。フローサイトメトリー分析は、製造業者の指示に従って、BD-LSRFortessaフローサイトメーター(Becton-Dickinson Biosciences)及びBD FACSDiva(商標)取得ソフトウェアを使用した標準フィルターセットを用いて、前方散乱パラメータ、側方散乱パラメータ及びヨウ化プロピジウム色素除外でゲートされた2,000個の生存単細胞事象に対して実施した。
【0186】
抗体結合の特異的検出を、ヒトIgG ChromPure(陰性対照として使用されるJackson Immuno #009-000-003)の結合の平均蛍光強度のバックグラウンドレベル減算後の各一次抗体への結合の平均蛍光強度として計算した。試験した各抗体バリアントについて、Bmax(最大特異的結合)及びKD-app(平衡での半数最大結合(half-maximum binding)を達成するために必要な濃度)を決定するために、Hill勾配非線形回帰曲線適合モデルとの一部位特異的結合を用いて、GraphPad Prism v 8.4.3ソフトウェアでデータを分析した。使用したモデルは、式:Y=Bmax /(K +X)によるものであり、式中、
maxは、Yと同じ単位で、最大特異的結合であり、
は、Xと同じ単位で表される、平衡での半数最大結合を達成するために必要なリガンド濃度であり、
hは、Hill勾配を表す変数「h」である。
【0187】
図5は、抗EGFRvIIIモノクローナル抗体の細胞表面発現EGFRvIIIへの結合特性を決定するフローサイトメトリー実験の例示的な結果を示す。複数の実験にわたって平均化した対応するKD-app値を表2に列挙する。全てのヒト化抗EGFRvIII抗体は、EGFRvIIIバリアントを過剰発現する細胞に対して強力且つ同等の結合を示した。抗体ヒト化は、典型的には抗原結合親和性の喪失をもたらすが、今回の場合、9つのヒト化バリアントのうち、3つのヒト化バリアントが、キメラバリアント(cH-cL)と比較して統計的に有意に改善された結合を有し(hH2-hL1、hH2-hL3及びhH3-hL1)、4つのヒト化バリアントは、統計的誤差内で同じ結合を有し(hH1-hL1、hH2-hL2、hH3-hL2及びhH3-hL3)、2つのヒト化バリアントは、2~3倍の範囲内で僅かに減少した結合を有する(hH1-hL2及びhH1-hL3)。したがって、これらのデータは、設計されたほとんどのヒト化バリアントについて、親結合親和性の保持、さらには改善の点で、非凡且つ予期されないヒト化の成功を表す。ここで提供されるヒト化バリアントは、親抗体と比較して、予期されない有利な熱安定性の向上を示し、ほとんどの場合で、予期されない有利な結合親和性の向上を示している。このことは、これらの全長ヒト化バリアントの2つのFabアームのそれぞれに多数の変異が導入されたこと(キメラバリアントに対するFabアームあたり30~36個の範囲の変異)を考慮すると印象的である。大まかな構造-活性関係は、各ヒト化重鎖について、hL1軽鎖バリアントが最も強い結合を有し、hL2軽鎖バリアントが最も弱い結合を有すること、並びに各ヒト化軽鎖について、hH3重鎖バリアントが最も強い結合を有し、hH1重鎖が最も弱い結合を有することを示す。
【0188】
【表3】
【0189】
野生型EGFRを発現する細胞に対するヒト化バリアントの特異性を確認するために、EGFR vIIIを発現する細胞への最良の結合を有する5つのヒト化バリアント(hH2-hL1、hH2-hL3、hH3-hL1、hH3-hL2及びhH3-hL3)をフローサイトメトリーU87MG EGFR wt細胞によって試験した。図6及び表3に示される結果は、キメラバリアントの優れた結合特異性が、試験されたヒト化バリアントで保持されており、hH2-hL1、hH3-hL1及びhH3-hL3ヒト化抗体の場合には、さらに改善されていることを示す。この有利な特異性は、野生型EGFRが発現する正常細胞及び組織への無視できる結合により、本発明のこれらのヒト化4E11抗体バリアントのさらに低い毒性をもたらし得る。
【0190】
【表4】
【0191】
示されているように、本発明のヒト化抗体は、熱安定性及び抗原結合及び特異性の点で優れた特性を示し、親4E11抗EGFRvIII抗体のマウスV領域を有するキメラ抗体と比較してこれらの特性の改善が観察されたことを考慮すると、これらは予期されない、驚くべきものである。
【0192】
本明細書に記載される実施形態及び実施例は、例示的なものであって、特許請求される本開示の範囲を限定することを意図するものではない。前述の実施形態の代替形態、改変形態、及び均等物を含む変形形態は、特許請求の範囲に包含されることが、本発明者によって意図されている。本出願に列挙された引用は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0193】
[参考文献]
本出願を通じて言及された全ての特許、特許出願及び刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
・Abhinandan, KR and Martin, ACR. Analysis and improvements to Kabatand structurally correct numbering of antibody variable domains. 2008; MolImmunol, 45, 3832-3839.
・Cleary, JM et al., Invest New Drugs, 33(3), pp. 671-8, 2015.;
・Chothia C, Lesk AM. Canonical structures for the hypervariableregions of immunoglobulins. J Mol Biol. 1987 Aug 20;196(4):901-17.
・Elvin A. Kabat, Tai Te Wu, Carl Foeller, Harold M. Perry, Kay S.Gottesman, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Vol. 1 DIANEPublishing, 1992 - 2719.
・Feldhaus MJ et al., 2003 Nat Biotechnol. 2003 Feb; 21(2):163-70.
・Gan HK, Cvrljevic AN, Johns TG. The epidermal growth factor receptorvariant III (EGFRvIII): where wild things are altered. FEBS J. 2013280):5350-70.
・Hamblett K.J, et al., Molecular Cancer Therapeutics, Vol. 14(7),pp.1614-24, 2015.
・Johnson G, Wu TT. The Kabat database and a bioinformatics example.Methods Mol Biol. 2004; 248:11-25.
・Jones PT, Dear PH, Foote J, Neuberger MS, Winter G (1986) Nature321, 522-525.
・Kabat EA, Wu TT. Identical V region amino acid sequences andsegments of sequences in antibodies of different specificities. Relativecontributions of VH and VL genes, minigenes, and complementarity-determiningregions to binding of antibody-combining sites. J Immunol. 1991;147:1709-19.
・Mendelsohn J, et al., Clin Cancer Res. 2015 Jan 15;21(2):227-9.
・Reilly, EB., Molecular Cancer Therapeutics, Vol. 14(5), pp.1141-51,2015.201
・Jones PT, Dear PH, Foote J, Neuberger MS, Winter G (1986) Nature 321, 522-525
・Riechmann L, Clark M, Waldmann H, Winter G (1988) Nature 332,323-327.
・Sato JD, et al., Mol. Biol. Med. 1: 511-529,1983.
・Tempest PR, Bremmer P, Lambert M, Taylor G, Furze JM, Carr FJ,Harris WJ (1991) Biotechnology 9, 266-271.
・Tsurushita N, Hinton, RP, Kumar S (2005) Design of humanized antibodies:From anti-Tac to Zenapax. Methods 36, 69-83.
・Queen C, Schneider WP, Selick HE, Payne PW, Landolfi NF, Duncan JF,Avdalovic NM, Levitt M, Junghans RP, Waldmann TA (1989) Proc Natl Acad Sci USA86, 10029-10033.
・Tempest PR, Bremmer P, Lambert M, Taylor G, Furze JM, Carr FJ,Harris WJ (1991 ) Biotechnology 9, 266-271.
・US Pat. No. 7,736,644.
・US Patent 4,943,533 dated Jul 24 1990.
・Yano S, Kondo K, Yamaguchi M, Richmond G, Hutchison M, Wakeling A,Averbuch S,Wadsworth P. Distribution and function of EGFR in human tissue andthe effect of EGFR tyrosine kinase inhibition. Anticancer Res. 2003Sep-Oct;23(5A):3639-50.
・Cleary JM, Reardon DA, Azad N, Gandhi L, Shapiro GI, Chaves J,Pedersen M, Ansell P, Ames W, Xiong H, Munasinghe W, Dudley M, Reilly EB, HolenK, Humerickhouse R. A phase 1 study of ABT-806 in subjects with advanced solidtumors. Invest New Drugs. 2015 Jun;33(3):671-8 2015
・Panousis C, Rayzman VM, Johns TG, Renner C, Liu Z, Cartwright G, LeeFT, Wang D, Gan H, Cao D, Kypridis A, Smyth FE, Brechbiel MW, Burgess AW, OldLJ, Scott AM. Engineering and characterisation of chimeric monoclonal antibody806 (ch806) for targeted immunotherapy of tumours expressing de2-7 EGFR oramplified EGFR. Br J Cancer. 2005 Mar 28;92(6):1069-77.
・Wu TT, Kabat EA. An analysis of the sequences of the variableregions of Bence Jones proteins and myeloma light chains and their implicationsfor antibody complementarity. J Exp Med 1970; 132 (2):211-250.
・Al-Lazikani B, Lesk AM, Chothia C. Standard conformations for thecanonical structures of immunoglobulins. J Mol Biol 1997; 273 (4):927-948.
・Retter I, Althaus HH, Munch R, Muller W. VBASE2, an integrative Vgene database. Nucl Acids Res 2005; 33 (suppl_1):D671-D674
・Dhanda SK, Grifoni A, Pham J, Vaughan K, Sidney J, Peters B, SetteA. Development of a strategy and computational application to select candidateprotein analogues with reduced HLA binding and immunogenicity. Immunology 2018;153 (1):118-132.
【0194】
配列表
【表5】



図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
【配列表】
2024539550000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-09-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)に特異的に結合する抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又はその抗原結合断片であって、
a.アミノ酸配列QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGYSITSDYAWNWIRQPPGKGLEWXGYIGYNGRTSYNPSLKSRXTISXDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARLGRGFAYWGQGTLVTVSS(配列番号3)を含む重鎖可変領域であって、X =I又はM、X =V又はI、及びX =V又はRである、重鎖可変領域、並びに
b.アミノ酸配列DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQGINSNIGWXQQKPGKAXKXLIYHGTNLEDGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCVQYAQFPYTFGQGTKLEIK(配列番号4)を含む軽鎖可変領域であって、X=Y又はL、X=P又はF、及びX=L又はGである、軽鎖可変領域
を含む、抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
a.前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が、配列番号5、配列番号6及び配列番号7のいずれか1つから選択され、
b.前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が、配列番号8、配列番号9及び配列番号10のいずれか1つから選択される、
請求項1に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項3】
キメラ抗原受容体、二重特異性T細胞エンゲージャー、二重特異性キラー細胞エンゲージャー、三重特異性キラー細胞エンゲージャー、又は任意の免疫療法化合物である、請求項1又は2に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、又は多重特異性抗体である、請求項3に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体又はその抗原結合断片が、ヒトIgG定常領域を含む、請求項4に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗体又はその抗原結合断片が、ヒトIgG4定常領域を含む、請求項5に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体又はその抗原結合断片が、S228P変異を保持するヒトIgG4定常領域を含む、請求項4に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片が、EGFRvIIIに特異的に結合し、前記抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片が、重鎖配列及び軽鎖配列を含み、
a.前記重鎖配列が、配列番号13、配列番号14又は配列番号15であり、
b.前記軽鎖配列が、配列番号16、配列番号17又は配列番号18である、
請求項7に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項9】
scFv、Fab、Fab’又は(Fab’)を含む、請求項3~8のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項10】
治療部分又は検出可能部分に連結されている、請求項3~9のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項11】
前記治療部分が、細胞毒性剤、細胞分裂阻害剤、抗癌剤、又は放射線療法剤を含む、請求項10に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片と、薬学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体若しくは抗原結合断片の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む、ベクター又はベクターのセット。
【請求項14】
請求項13に記載のベクター又はベクターのセットを含む、単離された細胞。
【請求項15】
EGFRvIIIを発現する細胞を含む癌を治療するための、請求項12に記載の医薬組成物
【請求項16】
学療法剤と組み合わせ使用のために製剤化された、請求項15に記載の医薬組成物
【請求項17】
神経膠腫又は癌腫を治療するための、請求項15又は16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
T細胞、NK細胞、又は対象にとって自家の免疫細胞である、請求項14に記載の単離された細胞。
【請求項19】
請求項11のいずれか一項に記載の抗原結合物質、抗原結合ドメイン、抗体又は抗原結合断片を発現するように操作された単離された細胞集団と、薬学的に許容できるバッファー又は賦形剤と、を含む医薬組成物。
【国際調査報告】