(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】硫黄系バッテリーを充電及び/又は放電する方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/44 20060101AFI20241022BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241022BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20241022BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20241022BHJP
H01M 4/46 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01M10/44 P
H01M10/052
H01M10/054
H01M4/40
H01M4/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518469
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 SG2022050782
(87)【国際公開番号】W WO2023075703
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10202112088V
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セルヒオ・グラニエロ・エチェヴェリガライ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴェク・ナイル
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・ヘリオ・デ・カストロ・ネト
【テーマコード(参考)】
5H029
5H030
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK05
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL13
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029HJ18
5H029HJ19
5H030AA10
5H030AS20
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF41
5H030FF43
5H030FF44
5H050AA07
5H050BA15
5H050BA16
5H050CA11
5H050CB11
5H050CB12
5H050HA18
5H050HA19
(57)【要約】
本開示は、硫黄系バッテリーを充電及び/又は放電する方法であって、全比容量並びに硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応で移動する電子の数に基づいてバッテリーの充電及び/又は放電比容量を制限する工程と、バッテリーの電気パラメーターに対する電圧の変化率に基づいてバッテリーの充電及び/又は放電電圧を制限する工程であり、変化率が、硫黄及び/又はその化学種のレドックス反応の間の遷移を表す、工程とを含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄系バッテリーを充電及び/又は放電する方法であって、
a)
【数1】
(式中、全比容量は、完全充電及び/又は放電から導出された前記バッテリーの比容量であり、
nは、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応で移動する電子の数である)
に基づいて、前記バッテリーの充電及び/又は放電比容量を制限する工程と、
b) 前記バッテリーの電気パラメーターに対する電圧の変化率に基づいて、前記バッテリーの充電及び/又は放電電圧を制限する工程であり、前記変化率が、硫黄及び/又はその化学種のレドックス反応の間の遷移を表す、工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記バッテリーの前記充電及び/又は放電比容量の限界が、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応で移動する電子の数に基づいて、段階的な手法で調節可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バッテリーの前記充電及び/又は放電比容量の限界が、前記バッテリーの動作中にリアルタイムで調節可能である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
nが偶数である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記全比容量が約1,675mAh/g
(S)であり、各電子移動が、約104mAh/g
(S)の比容量によって特徴付けられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
硫黄及び/又はその化学種の間の6電子レドックス反応が、
S
6
2-
(約75%)⇔S
4
2-⇔S
3
2-⇔S
2
2-⇔S
2-
(約35%)
S
8⇔S
8
2-⇔S
6
2-⇔S
4
2-
から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記バッテリーが6電子レドックス反応に制限されるとき、前記比容量が約628mAh/g
(S)に制限される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
硫黄及び/又はその化学種の間の8電子レドックス反応が、
S
6
2-⇔S
4
2-⇔S
3
2-⇔S
2
2-⇔S
2-
(約35%)
S
8⇔S
8
2-⇔S
6
2-⇔S
4
2-⇔S
2~3
2-
から選択され、前記比容量が約837.5mAh/g
(S)に制限される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
硫黄及び/又はその化学種の間の10電子レドックス反応が、
S
8(60%)⇔S
8
2-⇔S
6
2-⇔S
4
2-⇔S
3
2-⇔S
2
2-⇔S
2-
(35%)
から選択され、前記比容量が約1,046.9mAh/g
(S)に制限される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
硫黄及び/又はその化学種の間の12電子レドックス反応が、
S
8⇔S
8
2-⇔S
6
2-⇔S
4
2-⇔S
3
2-⇔S
2
2-⇔S
2-
(50%)
から選択され、前記比容量が約1,256mAh/g
(S)に制限される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記バッテリーの前記充電及び/又は放電電圧の限界が、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応のタイプに基づいて、段階的な手法で調節可能である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記バッテリーの前記充電及び/又は放電電圧の限界が、前記バッテリーの動作中にリアルタイムで調節可能である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記電圧が、電圧に対する充電の変化率に基づいて制限される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
電圧に対する充電の前記変化率が、電流-電圧関数の一次導関数であり、前記電圧が、電流-電圧関数の一次導関数における負のピークに基づいて制限される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
電流-電圧関数が、サイクリックボルタンメトリー測定から得られる、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
電圧に対する充電の前記変化率が、容量-電圧関数の二次導関数であり、前記電圧は、容量-電圧関数の二次導関数における負のピークに基づいて制限される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記電圧が、容量-電圧関数の偏向点又は屈曲点での外挿接線の交点に基づいて制限される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記容量-電圧関数が、ガルバニック充電(GChg)プロットから得られる、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記バッテリーが6電子レドックス反応に制限されるとき、前記充電電圧は、約2.3Vから約2.5V、又は好ましくは約2.33V若しくは約2.42Vに制限される、請求項1から7及び11から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記バッテリーが8電子レドックス反応に制限されるとき、前記充電電圧は、約2.3Vから約2.4V、又は好ましくは約2.33V若しくは約2.37Vに制限される、請求項1から5、8、及び11から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記バッテリーが10電子レドックス反応に制限されるとき、前記充電電圧は、約2.3Vから約2.4V、又は好ましくは約2.37Vに制限される、請求項1から5、9、及び11から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記硫黄系バッテリーが、アルカリ金属-硫黄バッテリー、アルカリ土類金属-硫黄バッテリー、合金-硫黄バッテリー、又は金属-硫黄バッテリーであり、前記金属が、アルミニウム、バナジウム、チタン、モリブデン、鉄、ニオブ、又はタングステンから選択される、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記アルカリ金属が、Li、Na、K、又はこれらの組合せから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記アルカリ土類金属が、Mg、Ca、Sr、Ba、又はこれらの組合せから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記合金が、Li-Sn、Li-Mg、Li-B、Fe-Co、Li-Si、Li-Hg、Li-Al、ナトリウム合金、アルミニウム合金、カリウム合金、及びマグネシウム合金から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
バッテリー管理システムであって、
a)
【数2】
(式中、全比容量は、完全充電及び/又は放電から導出されたバッテリーの比容量であり、
nは、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応で移動する電子の数である)
に基づいて、前記バッテリーの充電及び/又は放電比容量を制限するように、並びに
b) 前記バッテリーの電気パラメーターに対する、硫黄及び/又はその化学種のレドックス反応の間の遷移を表す電圧の変化率に基づいて、前記バッテリーの充電及び/又は放電電圧を制限するように
構成された、バッテリー管理システム。
【請求項27】
前記バッテリーの前記充電及び/又は放電比容量の限界が、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応で移動する電子の数に基づいて、段階的な手法で調節可能である、請求項26に記載のバッテリー管理システム。
【請求項28】
前記バッテリーの前記充電及び/又は放電電圧の限界が、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応のタイプに基づいて、段階的な手法で調節可能である、請求項26又は27に記載のバッテリー管理システム。
【請求項29】
前記比容量及び/又は電圧に対する限界が、制御手段によって調節可能である、請求項26から28のいずれか一項に記載のバッテリー管理システム。
【請求項30】
前記比容量及び/又は電圧に対する限界が、使用者により調節可能である、請求項26から29のいずれか一項に記載のバッテリー管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に言えば、硫黄系バッテリーをサイクル動作させる方法に関する。本発明は、硫黄系バッテリーを充電及び/又は放電する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
硫黄は、電気化学反応中にS8分子当たり16個の電子の移動を伴う、約1,675mAh/g(S)の理論的比容量を有する。各電子は、約104.69mAh/g(S)の容量を提供する。多くの電気活性種は、普及しているエーテル系電解質を使用するリチウム-硫黄(Li-S)バッテリーの充放電中に生成される。Li2S8、Li2S6、及びLi2S4(高次ポリスルフィド)のような電解質可溶性種、並びにLi2S2及びLi2S(低次ポリスルフィド)のような不溶性種がある。
【0003】
完全反応は、3相反応としてまとめることができる。
I.固-液相反応(S8(sol.)⇔Li2S8(liq.)⇔Li2S6(liq.))、2電子
II.液-固相反応(Li2S6(liq.)⇔Li2S4⇔Li2S3⇔Li2S2(sol.))、6電子
III.固-固相反応(Li2S2(sol.)⇔Li2S(sol.))、8電子
【0004】
放電中、電気化学反応は、ポリスルフィドの形で電解質中に硫黄を溶解させる。全理論容量の50%(即ち、837.5mAh/g(S))が固-固相反応(III- Li2S2からLi2Sへの変換)から来ることは、十分許容される。このレドックス反応は、先の2つの相反応(I及びII)と比較して、動力学的に遅い。また、電極上でのLi2Sの形成は、不可逆的な容量損失及びセルインピーダンスの増大に至る可能性がある。Li2Sは、ポリスルフィドシャトル(PS)を促進させるアノード上に形成/堆積し、そのことがクーロン効率を低下させ、過充電及びセルの劣化を引き起こす。カソード上では、充電中、Li2S2へのLi2S変換は、例えば高電流レート動作で動力学的に好ましくない(導電率及びイオン伝導度等を低下させる)。
【0005】
Li2S形成を回避するため、Li-Sバッテリーは、高次ポリスルフィドのみ形成される相で動作することができ(相反応I及びII)、ポリスルフィドシャトルのリスクを低減させ得るが、容量を理論値の僅か50%(837.5mAh/g(S)、100%の硫黄利用と仮定する)まで制限する可能性がある。ポリスルフィドシャトルを回避することが提案されたカソード、セパレーター、及び電解質修飾を用いる様々な技法がある。しかしながら今日まで、商業規格に達するように首尾良く改善されたLi-Sセルのサイクル寿命性能を持つものはなかった。商用Li-Sバッテリーは、60~100サイクルの間のサイクル寿命を提供するだけである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の問題の少なくとも1つを克服し又は改善することが望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、アルカリ及びアルカリ土類金属/合金-硫黄バッテリーを動作させる方法を提供する。方法は、バッテリーセル構成に、例えばカソード、アノード、セパレーター、及び/又は電解質の修飾に依拠しない。方法は、セルを充放電する制限要因として比容量及び電圧を使用して、中間ポリスルフィド種の形成を制御することにより、サイクル寿命を改善することができバッテリーの過充電を防止することができる。
【0008】
本発明は、硫黄系バッテリーを充電及び/又は放電する方法であって、
a)
【0009】
【0010】
(式中、全比容量は、完全充電及び/又は放電から導出されたバッテリーの比容量であり、
nは、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応で移動する電子の数である)
に基づいて、バッテリーの充電及び/又は放電比容量を制限する工程と、
b) バッテリーの電気パラメーターに対する電圧の変化率に基づいて、バッテリーの充電及び/又は放電電圧を制限する工程であり、変化率が、硫黄及び/又はその化学種のレドックス反応の間の遷移を表す、工程と
を含む、方法を提供する。
【0011】
初期の研究では、バッテリー寿命を延ばすためにバッテリーの充電を不十分にするか又は放電を不十分にする。これは通常、バッテリーを85~25%に固定された充電状態(SoC)で保持することによって、即ち85%まで充電し25%まで放電(DoD)することによって行われる。この手法は、サイクル寿命を2000サイクルに増大させるが、60%の定格エネルギー密度しか与えない。そのような手法は、インターカレーション化学により制御されたバッテリーシステムで容易に作用するが、Li-S又はシリコンアノード系バッテリーのような変換化学では作用しない。対照的に本開示は、バッテリーの充電及び/又は放電が、本明細書に開示されるプロトコールを使用して計算された限界として容量及び電圧の両方を使用して終了する方法を提供する。プロトコールは、バッテリーのガルバニック充放電特性を使用して、バッテリーのリアルタイム動作中の限界を計算する。この方法は、バッテリーを常にモニターし且つそれを動作中に制御するように、バッテリーパックのバッテリー管理システム(BMS)に組み込まれてもよい。BMSへのこの方法の組込みは、ある特定のレベルの知能をシステムに提供し、それによって製造業者は、その劣化状態(SoH)を改善することによってバッテリーパックのサイクル寿命又は寿命時間を延ばすことが可能になる。
【0012】
一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電比容量の限界は、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応で移動する電子の数に基づいて、段階的な手法で調節可能である。
【0013】
一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電比容量の限界は、バッテリーの動作中にリアルタイムで調節可能である。
【0014】
一部の実施形態では、全比容量は、1675mAh/g(S)である、硫黄に関する理論的比容量から導出される。
【0015】
一部の実施形態では、nが偶数である。
【0016】
一部の実施形態では、全比容量が約1,675mAh/g(S)であるとき、各電子移動は、約104mAh/g(S)の比容量によって特徴付けられる。
【0017】
一部の実施形態では、比容量は、硫黄及び/又はその化学種の間の2、4、5、6、7、8、9、10、12、14、又は15電子レドックス反応に基づいて制限される。
【0018】
一部の実施形態では、方法は更に、充電及び/又は放電比容量の下限を、比容量のパーセンテージ(限界)と定めることを含む。
【0019】
一部の実施形態では、硫黄及び/又はその化学種の間の6電子レドックス反応は、
S6
2-
(約75%)⇔S4
2-⇔S3
2-⇔S2
2-⇔S2-
(約35%)
S8⇔S8
2-⇔S6
2-⇔S4
2-
から選択される。
【0020】
一部の実施形態では、バッテリーが6電子レドックス反応に制限されるとき、比容量は約628mAh/g(S)に制限される。
【0021】
一部の実施形態では、硫黄及び/又はその化学種の間の8電子レドックス反応は、
S6
2-⇔S4
2-⇔S3
2-⇔S2
2-⇔S2-
(約35%)
S8⇔S8
2-⇔S6
2-⇔S4
2-⇔S2~3
2-
から選択される。
【0022】
一部の実施形態では、バッテリーが8電子レドックス反応に制限されるとき、比容量は約837.5mAh/g(S)に制限される。
【0023】
一部の実施形態では、硫黄及び/又はその化学種の間の10電子レドックス反応は、
S8(60%)⇔S8
2-⇔S6
2-⇔S4
2-⇔S3
2-⇔S2
2-⇔S2-
(35%)
から選択される。
【0024】
一部の実施形態では、バッテリーは10電子レドックス反応に制限され、比容量は約1,046.9mAh/g(S)に制限される。
【0025】
一部の実施形態では、硫黄及び/又はその化学種の間の12電子レドックス反応は、
S8⇔S8
2-⇔S6
2-⇔S4
2-⇔S3
2-⇔S2
2-⇔S2-
(50%)
から選択される。
【0026】
一部の実施形態では、バッテリーが12電子レドックス反応に制限され、比容量は約1,256.25mAh/g(S)に制限される。
【0027】
一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電電圧の限界は、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応のタイプに基づいて、段階的な手法で調節可能である。
【0028】
一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電電圧の限界は、バッテリーの動作中にリアルタイムで調節可能である。
【0029】
一部の実施形態では、電圧は、電圧に対する充電の変化率に基づいて制限される。
【0030】
一部の実施形態では、電圧に対する充電の変化率は、電流-電圧関数の一次導関数である。
【0031】
一部の実施形態では、電圧は、電流-電圧関数の一次導関数の負のピークに基づいて、制限される。
【0032】
一部の実施形態では、電流-電圧関数は、サイクリックボルタンメトリー測定から得られる。
【0033】
一部の実施形態では、電圧に対する充電の変化率は、容量-電圧関数の二次導関数である。
【0034】
一部の実施形態では、電圧は、容量-電圧関数の二次導関数の負のピークに基づいて制限される。
【0035】
一部の実施形態では、電圧は、容量-電圧関数の偏向点又は屈曲点での、外挿接線の交点に基づいて、制限される。
【0036】
一部の実施形態では、容量-電圧関数は、ガルバニック充電(GChg)プロットから得られる。
【0037】
一部の実施形態では、バッテリーが6電子レドックス反応に制限されるとき、充電電圧は約2.3Vから約2.5Vに制限される。
【0038】
一部の実施形態では、バッテリーが6電子レドックス反応に制限されるとき、充電電圧は約2.33V又は約2.42Vに制限される。
【0039】
一部の実施形態では、バッテリーが8電子レドックス反応に制限されるとき、充電電圧は約2.3Vから約2.4Vに制限される。
【0040】
一部の実施形態では、バッテリーが8電子レドックス反応に制限されるとき、充電電圧は約2.33V又は約2.37Vに制限される。
【0041】
一部の実施形態では、バッテリーが10電子レドックス反応に制限されるとき、充電電圧は約2.3Vから約2.4Vに制限される。
【0042】
一部の実施形態では、バッテリーが10電子レドックス反応に制限されるとき、充電電圧は約2.37Vに制限される。
【0043】
一部の実施形態では、硫黄系バッテリーは、アルカリ金属-硫黄バッテリー、アルカリ土類金属-硫黄バッテリー、合金-硫黄バッテリー、又は金属-硫黄バッテリーであり、その金属が、アルミニウム、バナジウム、チタン、モリブデン、鉄、ニオブ、又はタングステンから選択されるものである。
【0044】
一部の実施形態では、アルカリ金属は、Li、Na、K、又はこれらの組合せから選択される。
【0045】
一部の実施形態では、アルカリ土類金属は、Mg、Ca、Sr、Ba、又はこれらの組合せから選択される。
【0046】
一部の実施形態では、合金は、Li-Sn、Li-Mg、Li-B、Li-Si、Li-Hg、Li-Al、ナトリウム合金、アルミニウム合金、カリウム合金、及びマグネシウム合金から選択される。
【0047】
本発明は、バッテリー管理システムであって、
a)
【0048】
【0049】
(式中、全比容量は、完全充電及び/又は放電から導出されたバッテリーの比容量であり、
nは、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応で移動する電子の数である)
に基づいて、バッテリーの充電及び/又は放電比容量を制限するように、並びに
b) バッテリーの電気パラメーターに対する、硫黄及び/又はその化学種のレドックス反応の間の遷移を表す電圧の変化率に基づいて、バッテリーの充電及び/又は放電電圧を制限するように
構成された、バッテリー管理システムも提供する。
【0050】
一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電比容量の限界は、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応で移動する電子の数に基づいて、段階的な手法で調節可能である。
【0051】
一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電電圧の限界は、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応のタイプに基づいて、段階的な手法で調節可能である。
【0052】
一部の実施形態では、比容量及び/又は電圧に対する限界は、制御手段によって調節可能である。
【0053】
一部の実施形態では、比容量及び/又は電圧に対する限界は、使用者により調節可能である。
【0054】
次に本発明の実施形態について、図面を参照しながら非限定的な例として記述する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】0.05Cレートで、Li-Sセルに関する第1の比放電容量を示す図である。
【
図2】ガルバニック充電試験から得られた電圧の関数としての容量の二次導関数により、充電電圧限界を決定する方法の例を示す図である。
【
図3】ガルバニック充電試験から得られた充電容量の関数としての電圧からのデータを使用する外挿接線法により、電圧限界を決定する例を示す図である。
【
図4】10、8、及び6電子プロトコール並びに標準プロトコールに関する放電電圧限界1.8Vによる、0.2電流レートで試験されたLi-Sセルに関する容量保持率対サイクル寿命のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
実施形態はLi-Sバッテリーに関するが、本発明はそのようなものに限定されないことに留意すべきである。方法は、全てのタイプのアルカリ及びアルカリ土類金属/合金-硫黄バッテリーに適用することもでき、任意の可能性ある組合せで使用されてもよい。
【0057】
本発明は、Li-Sバッテリーが1.0Vから3.0Vの間で動作することができるという理解に基づく。典型的には、Li-Sバッテリーの動作中、バッテリーは、それぞれ1.0Vから2.0Vの間及び2.2Vから3.0Vの間のカットオフ電圧まで定電流で放電され充電される。放電プロセス中(例えば、
図1で)、硫黄(S
8)はまず高次ポリスルフィドLi
2S
x(8≧x≧4)に還元され、次いで低次ポリスルフィドLi
2S
x(4>x≧1)に還元される。電気化学エネルギー貯蔵における最も難しい課題の中に、Li-Sバッテリーのレドックスプロセスのような化学変換に基づいて動作するセルをサイクル動作させながら形成された化学種を制御する、ということがある。
【0058】
Li-Sバッテリーでは、金属リチウムの溶解がアノードで生じ、それと共に電子及びリチウムイオンが放電中に生成される。
Li→Li++e-
【0059】
放電中、電解質中のリチウムイオンはカソードに移行し、そこで硫黄が硫化リチウム(Li2S)に還元される。硫黄は、補充段階中にS8に再酸化される。ここでは多硫化リチウム(Li2Sx、2≦x≦8)が、
S8→Li2S8→Li2S6→Li2S4→Li2S3→Li2S2→Li2S
に従い鎖長を減少させながら形成される。
【0060】
エーテル系有機電解質を使用するLi-Sバッテリーでは、2つの主な放電平坦域があり、1つは約2.3及びもう1つは約2.1Vにあり、これらはそれぞれS8からLi2S4への及びLi2S4からLi2Sへの変換に相当し、その中間生成物はS8
2-、S6
2-、S4
2-、及びS3
2-である。続く充電プロセス中に、Li2Sは、同じ中間多硫化リチウムの形成を介して元素硫黄(S8)に酸化される。充放電中の化学変換は、電圧プロットの関数としての容量で観察される電圧の上昇及び降下と同時に生じる。
【0061】
本発明は、硫黄系バッテリーを充電及び/又は放電する方法であって、
a)
【0062】
【0063】
(式中、全比容量は、完全充電及び/又は放電から導出されたバッテリーの比容量であり、
nは、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応で移動する電子の数である)
に基づいて、バッテリーの充電及び/又は放電比容量を制限する工程と、
b) バッテリーの電気パラメーターに対する電圧の変化率に基づいて、バッテリーの充電及び/又は放電電圧を制限する工程であり、変化率が、硫黄及び/又はその化学種のレドックス反応の間の遷移を表す、工程と
を含む、方法を提供する。
【0064】
Li-Sセルの不十分な点の1つは、電解質との不要な又は望ましくない反応である。S及びLi2Sはほとんどの電解質に比較的不溶であるが、多くの中間ポリスルフィドはそうではない。電解質へのLi2Snの溶解は、活性硫黄の不可逆的損失を引き起こす。例えば多硫化リチウムLi2Sx(6≦x≦8)は、Li-Sバッテリーに使用される一般的な電解質に非常に可溶である。それらはカソードから形成され漏出する可能性があり、アノードに拡散し、そこで短鎖ポリスルフィドに還元され、元のカソードに拡散して、そこで長鎖ポリスルフィドを再び形成する。このプロセスは、カソードからの活性材料の連続漏出、リチウム腐食、低クーロン効率、及び低バッテリー寿命をもたらす。更に「シャトル」効果は、静止状態でも生じるポリスルフィドの低速溶解により、Li-Sバッテリーの特徴的自己放電の原因になる。
【0065】
容量フェード率を低減させるため、したがってバッテリー寿命を延ばすために、バッテリーを不十分に充電し又は不十分に放電する初期の研究とは対照的に、本開示は、バッテリーのガルバニック充放電特性を使用してバッテリーのリアルタイム動作中に限界を計算することによって、バッテリーのサイクル寿命を改善する。バッテリーは過充電も防止し、したがってバッテリーの劣化を遅くする。これは容量及び電圧を、ある特定の組のレドックス反応に制限することによって実現される。これらのレドックス反応は、充電中に使用される又は放電中に与えられる、十分に定められた電子カウント数を有する。電子の数に基づいてバッテリーを動作させることにより、バッテリーで生じるレドックス反応を制御することができる。レドックス反応における電子カウント数は一定であるので、パターンは常に同じである。
【0066】
レドックス反応は、ある特定の比電圧又は「標準レドックス電位」と一般に呼ばれる電圧で生じ、充電は、その比電圧で変換される前記レドックス種の数を制御する。充電は、最初に「定電流」下で、その後「定電圧」で行うことができ、この定電圧は、事前に定められた動作のために本発明で提供される電圧限界値である。充電は、CCCVモード又は「定電流及び定電圧モード」で直接行うこともできる。放電は定電流モードで行われる。これらはそれぞれ、前記化学種のどの程度の量が完全に変換されるのか;即ち、得ることができる、方法によって設定された必要とされる数又はレドックス種のどの程度の量が完全に変換されるのかを決定することになるので、バッテリーの動作において特定の関連性がある。
【0067】
バッテリーは、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する、又はその逆を行うデバイスである。セルは、バッテリーがとることのできる最も小さいパッケージ形態であり、一般に1から6ボルト程度である。モジュールは、一般に直列又は並列のいずれかで接続されるいくつかのセルからなる。次いでバッテリーパックは、モジュールを一緒に接続することによって、この場合も直列又は並列のいずれかで接続することによって組み立てることができる。本明細書で使用されるセル、モジュール、及びバッテリーパックは、バッテリーの範囲内にある。この範囲には、二次バッテリーが再充電可能なものである二次バッテリーも含まれる。
【0068】
セルは、典型的にはアノード、カソード、電解質、及び好ましくは、アノードとカソードとの間に有利に位置決めされ得る多孔質セパレーターを含む。アノードは、アルカリ金属、アルカリ土類、又は金属合金から形成されてもよい。好ましくは、アノードは、金属箔電極、例えばリチウム箔電極である。リチウム箔は、リチウム金属又はリチウム金属合金で形成されてもよい。セルのカソードは、電気活性硫黄材料と導電性材料との混合物を含むことができる。この混合物は、集電子に接触して配置され得る電気活性層を形成する。電気活性硫黄材料及び導電性材料の混合物は、溶媒(例えば、水又は有機溶媒)中のスラリーの形で集電子に付着されてもよい。次いで溶媒は除去されてもよく、得られた構造はカレンダー掛けされて複合構造を形成し、所望の形状にカットされてカソードを形成し得る。セパレーターはカソード上に配置されてもよく、リチウムアノードはセパレーター上に配置されてもよい。次いで電解質は、組み立てられたセル内に導入されて、カソード及びセパレーターを濡らしてもよい。
【0069】
電気活性硫黄材料は、任意の形の元素硫黄を含むカソード活性材料に関係し、電気化学活性は、硫黄-硫黄共有結合を破壊し又は形成することに関与する。適切な電気活性硫黄含有材料の例には、限定するものではないが元素硫黄、並びに硫黄原子及び炭素原子の両方を含む有機材料であって、ポリマーであってもそうでなくてもよい材料が含まれる。適切な有機材料は、ヘテロ原子、伝導性ポリマーセグメント、複合体、及び伝導性ポリマーを更に含むものを含む。一実施形態では、電気活性硫黄含有材料は元素硫黄を含む。別の実施形態では、電気活性硫黄含有材料は、元素硫黄及び硫黄含有ポリマーの混合物を含む。
【0070】
カソードは更に、電気活性金属カルコゲナイド、電気活性伝導性ポリマー、及びこれらの組合せを含んでいてもよい。カソードは、高い電子伝導度を提供するため、1種又は複数の伝導性充填剤を更に含んでいてもよい。カソードは結合剤も含んでいてもよい。結合剤材料の選択は、広く様々であってもよい。有用な結合剤は、バッテリー電極複合体の加工を容易にすることが可能な材料、通常はポリマーであり、電極製作の分野の当業者に公知である。カソードは更に、本発明の1種又は複数のN-O添加剤を含んでいてもよい。
【0071】
電解質に使用される有機溶媒は、例えば、電気活性硫黄材料がセルの放電中に還元されるときに形成される、式Sn
2-(式中、n=2から12)のポリスルフィド種を溶解するのが可能であるべきである。適切な有機溶媒は、テトラフドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルプロピルプロピオネート、エチルプロピルプロピオネート、酢酸メチル、ジメトキシエタン、1,3-ジオキソラン、ジグライム(2-メトキシエチルエーテル)、テトラグライム、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジオキソラン、ヘキサメチルホスホアミド、ピリジン、ジメチルスルホキシド、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、及びスルホン、及びこれらの混合物である。好ましくは、有機溶媒はスルホン又はスルホンの混合物である。スルホンの例は、ジメチルスルホン及びスルホランである。スルホランは、単独溶媒として、又は組み合わせて、例えばその他のスルホンと組み合わせて用いられてもよい。
【0072】
バッテリーの容量は、どの程度のエネルギーをバッテリーが保持できるのかを指す(Ah又はWhで)。比容量は、どの程度のエネルギーを、バッテリーが単位質量当たり保持できるのかを指す(例えば、Ah/g又はWh/gで)。
【0073】
比容量は、材料が活性バッテリー材料のキログラム当たり実現できる電荷の量(Ah)を定義する。放電比容量は、材料のレドックス限界よりも最も高い又は等しい活性バッテリー材料のレドックス限界により決定されるように又は動作制御システムにより指定されるように、負荷がバッテリーに掛かったときに電圧が下限カットオフ電圧に達するまで材料が実現できる比容量を指す。
【0074】
充電比容量は、材料のレドックス限界よりも常に最も低い又は等しい活性バッテリー材料のレドックス限界により決定されるように又は動作制御システムにより指定されるように、電圧が上限カットオフ電圧に達するまで、充電電位がバッテリーに印加されたときに材料が実現できる比容量を指す。
【0075】
バッテリーの電圧は、バッテリー内の化学反応、バッテリー成分の濃度、及びバッテリーの分極によって決定される。平衡条件から計算された電圧は、典型的には、公称バッテリー電圧として公知である。実際に、公称バッテリー電圧は容易に測定できず、実際のバッテリーシステムでは(過電圧及び非理想効果が低い)、開回路電圧は公称バッテリー電圧の良好な近似値である。
【0076】
充電及び/又は放電電圧は、完全/ゼロ容量まで充放電されるときまで、バッテリーが充放電される電圧を指す。充電スキームは一般に、バッテリー電圧が充電電圧に達するまでの定電流充電、次いで定電圧充電からなり、充電電流は、非常に小さくなるまで徐々に低下可能になる。
【0077】
一部の実施形態では、比容量は、
【0078】
【0079】
(式中、全比容量は、完全充電及び/又は放電から導出されたバッテリーの比容量であり;
nは、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応で移動する電子の数である)
に基づいて制限される。
【0080】
一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電比容量の限界は調節可能である。一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電比容量の限界は、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応で移動する電子の数に基づいて、段階的な手法で調節可能である。これはバッテリーの充電及び/又は放電サイクルに関して計算されてもよい。各レドックス反応は、変換される化学種に関する特定のレドックス電位で生じる。したがって、制限される電子の数が、レドックス反応のいずれかで移動する電子の数よりも大きいとき、多数のレドックス電位及び多数のレドックス種を充放電中に形成/変換することができる。
【0081】
一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電比容量の限界は、バッテリーの動作中にリアルタイムで調節可能である。セル/電極の組成及び構成又は電解質のpHに基づいてレドックスピーク/電位には僅かなシフトがある可能性があるが、レドックスピークはリアルタイムで計算されることになり且つ更なる限界はバッテリーを動作させるように自動的に計算されるので、問題であるとは予測されない。
【0082】
一部の実施形態では、nは1から16の整数である。一部の実施形態では、nは2から15の整数である。一部の実施形態では、nが偶数である。偶数は、4、6、8、10、12、又は14から選択することができる。一部の実施形態では、nは奇数であり、3、5、7、9、11、13、又は15から選択される。
【0083】
一部の実施形態では、各電子移動は、約90mAh/g(S)から約130mAh/g(S)の比容量を特徴とする。一部の実施形態では、各電子移動は、約104mAh/g(S)の比容量を特徴とする。この点に関し、16電子反応としての完全な電気化学的充放電反応は、約1,675mAh/g(S)を実現する。一部の実施形態では、全比容量は、硫黄に関する理論的比容量から導出される。他の実施形態では、全比容量が1675mAh/g(S)である。
【0084】
電極の設計製作及び組成、セルの機構、並びに電解質のような様々な要因は、セルのインピーダンスに影響を及ぼす可能性があり、それによって所与の実際のセルの全比容量は、200mAh/g(S)から1675mAh/g(S)の間の容量で様々になる可能性があることに、留意すべきである。これは各「n」電子反応ごとに「比容量限界値」の範囲を変化させることになる。例えば、実際のセルの全比容量が500mAh/gである場合、8電子に関する比容量限界は250mAh/gになる。
【0085】
一部の実施形態では、全比容量は、1Vから3Vの電圧範囲にあるバッテリーの初期充電容量から導出される。初期充電容量は、0.01C、0.02C、0.05C、又は0.1CのCレートを使用して測定することができる。初期充電容量は、1Vから3Vの電圧範囲内で、新たに製作されたセルに関して初期放電を行った後に得ることが可能である。
【0086】
比容量は、16よりも下の任意の数の電子に制限される。一部の実施形態では、比容量は、硫黄及び/又はその化学種の間の2、4、5、6、7、8、9、10、12、14、又は15電子レドックス反応に基づいて制限される。一部の実施形態では、比容量は、硫黄及び/又はその化学種の間の6、8、10、又は12電子レドックス反応に基づいて制限される。一部の実施形態では、比容量は、硫黄及び/又はその化学種の間の6、8、又は10電子レドックス反応に基づいて制限される。一部の実施形態では、比容量は、硫黄及び/又はその化学種の間の6、8、10、12、14、又は16電子レドックス反応に基づいて制限される。
【0087】
一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電比容量は、
【0088】
【0089】
(式中、nは9未満の数値である)
に基づいて更に制限される。
【0090】
これは更に有利に比容量を、限界比容量のパーセンテージまで制限する。
【0091】
一部の実施形態では、硫黄及び/又はその化学種の間の6電子レドックス反応は、
S6
2-
(約75%)⇔S4
2-⇔S3
2-⇔S2
2-⇔S2-
(約35%)
S8⇔S8
2-⇔S6
2-⇔S4
2-
から選択される。
【0092】
示されるパーセンテージはそれらの電子寄与に関し、これはレドックス変換を受け、それによって前記数の電子を生成する、化学種の量を表す。残りの量は、未反応の化学種として留まる。
【0093】
6電子に関する理論的限界は、即ち上記方程式に従って
【0094】
【0095】
である。硫黄の理論的容量は、ファラデーの法則: Q理論値=(nF)/(3600×Mw) mAh g-1により標準から計算された1675mAh g-1である。
【0096】
比容量の下限は、上記にて開示されたように比容量(限界パーセント)に基づいて様々にすることができる。例えば、n=6の場合、比容量は392.58mAh/g(S)であり、6電子レドックス反応に基づいて628.12mAh/g(S)の約62.5%である。これは適用の要件並びに所望のバッテリー容量及び/又はサイクル寿命に応じて決定されてもよい。
【0097】
電子プロトコールに関わる電子の数の選択は、2から15の間の任意の整数であってもよく、所望のバッテリー容量及びバッテリーのサイクル寿命に基づいて決定されてもよい。これは動作要件に依存し得る。電子プロトコールは、より大きい容量又はより長いサイクル寿命を実現するのに使用されてもよい。
【0098】
一部の実施形態では、バッテリーが6電子レドックス反応に制限されるとき、比容量は約390mAh/g(S)から約785mAh/g(S)に制限される。他の実施形態では、比容量は、約400mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、約420mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、約440mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、約460mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、約480mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、約500mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、約520mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、約540mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、約560mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、約580mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、約600mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、約620mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、約640mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、約660mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、約680mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、約700mAh/g(S)から約785mAh/g(S)、又は約720mAh/g(S)から約785mAh/g(S)に制限される。一部の実施形態では、比容量は約628mAh/g(S)に制限される。
【0099】
一部の実施形態では、硫黄及び/又はその化学種の間の8電子レドックス反応は、
S6
2-⇔S4
2-⇔S3
2-⇔S2
2-⇔S2-
(約35%)
S8⇔S8
2-⇔S6
2-⇔S4
2-⇔S2~3
2-
から選択される。
【0100】
一部の実施形態では、バッテリーは8電子レドックス反応に制限され、比容量は約410mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)に制限される。他の実施形態では、比容量は約420mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約440mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約460mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約480mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約500mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約520mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約540mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約560mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約580mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約600mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約620mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約640mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約660mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約680mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約700mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約720mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約740mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約760mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約780mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約800mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約820mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約840mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約860mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約880mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約900mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、約950mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)、又は約1000mAh/g(S)から約1050mAh/g(S)に制限される。一部の実施形態では、比容量は約838mAh/g(S)に制限される。
【0101】
一部の実施形態では、硫黄及び/又はその化学種の間の10電子レドックス反応は、
S8(60%)⇔S8
2-⇔S6
2-⇔S4
2-⇔S3
2-⇔S2
2-⇔S2-
(35%)
から選択される。
【0102】
一部の実施形態では、バッテリーが10電子レドックス反応に制限されるとき、比容量は約650mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)に制限される。他の実施形態では、比容量は、約700mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約720mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約740mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約760mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約780mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約800mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約820mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約840mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約860mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約700mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約880mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約900mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約920mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約940mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約960mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約980mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約1000mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約1020mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約1040mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約1060mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約1080mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約1100mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約1150mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、約1200mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)、又は約1250mAh/g(S)から約1,310mAh/g(S)に制限される。一部の実施形態では、比容量は約1,047mAh/g(S)に制限される。
【0103】
一部の実施形態では、硫黄及び/又はその化学種の間の12電子レドックス反応は、
S8⇔S8
2-⇔S6
2-⇔S4
2-⇔S3
2-⇔S2
2-⇔S2-
(50%)
から選択される。
【0104】
S8⇔S2
2-からの反応は8個の電子を提供し、一方、S2
2-⇔S2-
(50%)は更に4電子を提供する。
【0105】
一部の実施形態では、バッテリーが12電子レドックス反応に制限されるとき、比容量は約940mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)に制限される。他の実施形態では、比容量は、約960mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約980mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1000mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1020mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1040mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1060mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1080mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1100mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1120mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1140mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1160mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1180mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1200mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1220mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1240mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1260mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1280mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1300mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1320mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1340mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1360mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1380mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1400mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1440mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、約1480mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)、又は約1520mAh/g(S)から約1570mAh/g(S)に制限される。一部の実施形態では、比容量は約1,256mAh/g(S)に制限される。
【0106】
方法は、バッテリーの電気パラメーターに対する電圧の変化率に基づいて、バッテリーの充電及び/又は放電電圧も制限する。変化率は、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応の開始及び/又は終了を表すことができることが見出された。特に、変化率が正の値と負の値との間で様々になるとき、それはレドックス反応間の遷移を示す。
【0107】
一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電電圧の限界は、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応のタイプに基づいて、段階的な手法で調節可能である。
【0108】
一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電比容量の限界は、バッテリーの動作中にリアルタイムで調節可能である。
【0109】
一部の実施形態では、電圧は、電圧に対する充電の変化率に基づいて制限される。一部の実施形態では、電圧に対する充電の変化率は、電流-電圧関数の一次導関数である。
【0110】
一部の実施形態では、電圧は、電流-電圧関数の一次導関数における負のピークに基づいて制限される。一部の実施形態では、電流-電圧関数はサイクリックボルタンメトリー測定から得られる。
【0111】
一部の実施形態では、電圧に対する充電の変化率は、容量-電圧関数の二次導関数である。
【0112】
一部の実施形態では、電圧は、容量-電圧関数の偏向点又は屈曲点での外挿接線の交点に基づいて制限される。一部の実施形態では、電圧は、容量-電圧関数の二次導関数の負のピークに基づいて制限される。一部の実施形態では、容量-電圧関数は、ガルバニック充電(GChg)プロットから得られる。
【0113】
下方電圧限界は、放電カットオフ電圧であってもよい。この値は、本明細書に記述される方法に従って得られてもよく又は計算されてもよい。
【0114】
一部の実施形態では、バッテリーが6電子レドックス反応に制限されるとき、充電電圧は約2.3Vから約2.5Vに制限される。一部の実施形態では、バッテリーが6電子レドックス反応に制限されたとき、充電電圧が約2.33V又は約2.42Vに制限される。
【0115】
一部の実施形態では、バッテリーが8電子レドックス反応に制限されたとき、充電電圧は約2.3Vから約2.4Vに制限される。一部の実施形態では、バッテリーが8電子レドックス反応に制限されたとき、充電電圧は約2.33V又は約2.37Vに制限される。
【0116】
一部の実施形態では、バッテリーが10電子レドックス反応に制限されたとき、充電電圧は約2.3Vから約2.4Vに制限される。一部の実施形態では、バッテリーが10電子反応に制限されたとき、充電電圧は約2.37Vに制限される。
【0117】
一部の実施形態では、バッテリーは、約1,047mAh/g(S)の充電容量限界と2.4Vの充電電圧限界とを有する。他の実施形態では、バッテリーは、約1,047mAh/g(S)の充電容量限界、約2.4Vの充電電圧限界、及び約1.8Vの放電電圧限界を有する。
【0118】
一部の実施形態では、バッテリーは、約838mAh/g(S)の充電容量限界と、約2.3Vから約2.4Vの充電電圧限界とを有する。他の実施形態では、バッテリーは、約838mAh/g(S)の充電容量限界、約2.3Vから約2.4Vの充電電圧限界、及び1.8Vの放電電圧限界を有する。他の実施形態では、バッテリーは、約838mAh/g(S)の充電容量限界、約2.3Vから約2.4Vの充電電圧限界、及び約838mAh/g(S)の放電容量限界を有する。
【0119】
一部の実施形態では、バッテリーは、約628mAh/g(S)の充電容量限界と約2.3Vから約2.5Vの充電電圧限界とを有する。他の実施形態では、バッテリーは、約628mAh/g(S)の充電容量限界、約2.3Vから約2.5Vの充電電圧限界、及び1.8Vの放電電圧限界を有する。他の実施形態では、バッテリーは、約628mAh/g(S)の充電容量限界、約2.3Vから約2.5Vの充電電圧限界、及び628mAh/g(S)の放電容量限界を有する。
【0120】
一部の実施形態では、硫黄系バッテリーは、アルカリ金属-硫黄バッテリー、アルカリ土類金属-硫黄バッテリー、合金-硫黄バッテリー、又は金属-硫黄バッテリーであり、金属が、アルミニウム、バナジウム、チタン、モリブデン、鉄、ニオブ、又はタングステンから選択されるバッテリーである。
【0121】
一部の実施形態では、アルカリ金属は、Li、Na、K、又はこれらの組合せから選択される。一部の実施形態では、バッテリーがLi-Sバッテリーである。
【0122】
一部の実施形態では、アルカリ土類金属は、Mg、Ca、Sr、Ba、又はこれらの組合せから選択される。
【0123】
一部の実施形態では、合金は、Li-Sn、Li-Mg、Li-B、Fe-Co、Li-Si、Li-Hg、Li-Al、ナトリウム合金、アルミニウム合金、カリウム合金、及びマグネシウム合金から選択される。
【0124】
エネルギー密度(Wh/L)は、単位体積当たりの公称バッテリーエネルギーを指し、体積エネルギー密度と呼ばれることもある。比エネルギーは、バッテリー化学及びパッケージの特徴である。車両のエネルギー消費と共に、所与の電気範囲を実現するのに必要なバッテリーサイズを決定する。
【0125】
放電の深さ(DOD)(%)は、最大容量のパーセンテージとして表される、放電することができるバッテリー容量のパーセンテージである。一部の実施形態では、バッテリーは、少なくとも約95%のDODにより特徴付けられる。他の実施形態では、DODは、少なくとも約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約40%、約30%、又は約20%である。
【0126】
一部の実施形態では、バッテリーが6電子レドックス反応に制限されるとき、バッテリーは、約35%から約40%のDODにより特徴付けられる。他の実施形態では、バッテリーは、約37.5%のDODにより特徴付けられる。
【0127】
一部の実施形態では、バッテリーが8電子レドックス反応に制限されるとき、バッテリーは約45%から約55%のDODにより特徴付けられる。他の実施形態では、バッテリーは、約50%のDODにより特徴付けられる。
【0128】
一部の実施形態では、バッテリーが10電子レドックス反応に制限されるとき、バッテリーは、約60%から約70%のDODにより特徴付けられる。他の実施形態では、バッテリーは、約62.5%のDODにより特徴付けられる。
【0129】
一部の実施形態では、バッテリーが12電子レドックス反応に制限されるとき、バッテリーは約70%から約80%のDODにより特徴付けられる。他の実施形態では、バッテリーは、約75%のDODにより特徴付けられる。
【0130】
サイクル寿命は、特定の性能基準を満たすことができなくなる前にバッテリーが経験できる充放電サイクル数を指す。サイクル寿命は、特定の充放電条件に関して推定される。バッテリーの実際の動作寿命は、サイクルの速度及び深さによって並びに温度及び湿度等のその他の条件によって影響を受ける。一般に、DODが高くなるほどサイクル寿命は低下する。
【0131】
一部の実施形態では、バッテリーは、少なくとも約20サイクルのサイクル寿命によって特徴付けられる。他の実施形態では、サイクル寿命は少なくとも約30サイクル、約40サイクル、約50サイクル、又は約60サイクルである。
【0132】
本発明は、バッテリー管理システムであって、
a)
【0133】
【0134】
(式中、全比容量は、完全充電及び/又は放電から導出されたバッテリーの比容量であり、
nは、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応で移動する電子の数である)
に基づいて、バッテリーの充電及び/又は放電比容量を制限する工程と、
b) バッテリーの電気パラメーターに対する電圧の変化率に基づいてバッテリーの充電及び/又は放電電圧を制限する工程であり、変化率は硫黄及び/又はその化学種のレドックス反応の間での遷移を表す、工程と
を含む、バッテリー管理システムも提供する。
【0135】
一部の実施形態では、バッテリー管理システムは、
a)
【0136】
【0137】
(式中、全比容量は、完全充電及び/又は放電から導出されたバッテリーの比容量であり、
nは、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応で移動する電子の数である)
に基づいて、バッテリーの充電及び/又は放電比容量を制限するように、並びに
b) バッテリーの電気パラメーターに対する、硫黄及び/又はその化学種のレドックス反応の間の遷移を表す電圧の変化率に基づいて、バッテリーの充電及び/又は放電電圧を制限するように
構成される。
【0138】
一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電比容量の限界は、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応で移動する電子の数に基づいて、段階的な手法で調節可能である。
【0139】
一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電比容量の限界は、バッテリーの動作中にリアルタイムで調節可能である。
【0140】
一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電電圧の限界は、硫黄及び/又はその化学種の間のレドックス反応のタイプに基づいて、段階的な手法で調節可能である。
【0141】
一部の実施形態では、バッテリーの充電及び/又は放電電圧の限界は、バッテリーの動作中にリアルタイムで調節可能である。
【0142】
一部の実施形態では、比容量及び/又は電圧に対する限界は、制御手段によって調節可能である。制御手段は、電気制御手段とすることができる。制御手段は、バッテリーの充電状態に応じて自動的に限界を調節することができる。
【0143】
一部の実施形態では、比容量及び/又は電圧に対する限界は、使用者によって調節可能である。
【0144】
電気化学反応により与えられた/放出された電子の数に基づくバッテリーの動作は、ポリスルフィドシャトルを防止することによって過充電を防止し、硫黄系バッテリーの容量劣化を低減させる。更に、バッテリーの充放電中に容量及び/又は電圧を制限することによる中間電気化学種の制御された形成は、アルカリ及びアルカリ土類金属/合金-硫黄バッテリーのサイクル動作中のサイクル寿命、容量保持率、クーロン効率を改善する。
【0145】
電圧の関数としての電流の一次導関数(第1のDCV)による(サイクリックボルタンメトリー試験から得られる)又は電圧の関数としての容量の二次導関数(第2のDCV)からの(ガルバニック充電試験から得られる)、中間電気化学種の形成を制御するための方法は、バッテリー管理システムのプログラミングにより、アルカリ及びアルカリ土類金属/合金-硫黄バッテリーから構成されるバッテリーパックを動作させるのを可能にする。外挿接線により中間電気化学種の形成を制御するための方法は、アルカリ及びアルカリ土類金属/合金-硫黄バッテリーにおけるバッテリー試験の迅速な調節を可能にする。
【0146】
開示される方法は、アルカリ及びアルカリ土類金属/合金-硫黄バッテリーで構成されるバッテリーパックを動作させるため、バッテリー管理システム(BMS)で使用することができる。開示される方法は、アルカリ及びアルカリ土類金属/合金-硫黄バッテリーの寿命を試験する試験キット/設備/標準/手順を開発するのに使用することもできる。
【0147】
BMSは、プロット用のデータ(電圧、電流、時間、容量等)を記録することができ、次いでこれらをリアルタイムで接線を見出すためにプロットすることができ、又はデータ分析ツールを使用する直接的なデータ分析を行って、ガルバニック充電データに関する屈曲の開始及び終了の値を得ることができる。データ分析ツールは、様々なリアルタイム分析のためにBMS内に組み込むことができる。更に機械学習又はAIに基づく手法を使用して、サイクル寿命、レート能力、及びセルの故障のような多くの性能パラメーターを予測するのに使用することが可能な今後のサイクルに関するこれらの値を予測することもできる。これらの知能システムは、EV又はバッテリーパック充電器で使用することができ、バッテリーが充電されるときにはいつでもバッテリーの健康状態を診断し、記録し、及び予測するのに使用することが可能なものである。
【0148】
例として、種々の動作方法の下で、対電極及び参照電極としてLi金属を使用して並びに普及しているエーテル系電解質を使用して製作されたLi-Sセルの性能を、実証した。セルの構成は、動作方法を変化させることによって得られた且つセル構成に特異的ではない相違を本質的に評価するため、カソードの組成、活性材料質量負荷、電解質の組成(添加剤は使用しなかった)、電解質/硫黄比等に関して可能な限り標準として保たれた。
【0149】
典型的なLi-Sセルの例として、セルを、0.05電流レートで1.0Vまで放電させて、完全放電パターンを評価した。セルは、約100%の硫黄利用に相当する約1,675mAh/g
(S)の初期比容量を提供した(
図1)。Li-Sセルは、16電子レドックス反応に相当する放電容量を実現し、8個の電子は最初の2つの相反応(固-液及び液-固)から得られ、残りの8固の電子は最後の相反応(固-固)から得られた。
【0150】
中間ポリスルフィド種の形成を制御するための方法
セルの充電中にポリスルフィド種の形成を制御する方法は、制限要因として容量及び/又は電圧を使用する。比容量限界は、特定のポリスルフィド種を形成する電子の数に基づいて計算される。約1,675mAh/g
(S)を実現する16電子反応として完全電気化学充放電反応を考慮すると(
図1)、各電子は約104.6875mAh/g
(S)を実現することになる。その結果、例として12-、10-、8-、及び6-電子動作は、それぞれ約1,256.3mAh/g
(S)、約1,046.9mAh/g
(S)、約837.5mAh/g
(S)、及び約628.1mAh/g
(S)の比容量をもたらす可能性がある。充電のための容量限界の設定は、様々な理由により引き起こされるセルの過充電を防止するのを助ける。
【0151】
電圧限界は、サイクリックボルタンメトリー試験から得られる電圧の関数として電流の一次導関数に基づいて、又はガルバニック充電(GChg)試験から得られる電圧の関数として容量の二次導関数から(
図2の実施例)、又はガルバニック充電曲線上で開始及び終了を見出すために屈曲上で接線を外挿することによって(サーモス分析からのデータを評価するため一般に使用される手順に類似し、例えばASTM E2550-17)、
図3の実施例で、計算される。
【0152】
電圧は、電流レート及びセルインピーダンスによる影響を受ける可能性がある。したがって電圧限界は、セルが動作することになる同じ電流レートに関して決定されるべきである(
図3の実施例)。電圧限界が、より低いレートに関してのみ決定される場合、過電位間の差に関する要因が付加されるべきである。
【0153】
例えば、特定のLi-Sセルに関して得られた0.2電流レートでGChgを考慮すると(
図2で提示される)、主にLi
2S
2、Li
2S
4、Li
2S
6、Li
2S
8、及びS
8を形成するには、充電電圧限界はそれぞれ約2.240V、約2.290V、約2.335V、約2.370V、及び約2.420Vであるべきである。
【0154】
充電は、容量又は電圧限界に達したら、終了することになる。
【0155】
典型的には、セルはサイクル動作の前に、充電に関して本明細書に開示される方法を含むことができる又はそうではない形成プロセスを受ける。形成プロセスは、0.05C又は0.01Cの非常に低いレートで実施されるプロセスであり、セルは、本研究で述べた電圧限界に従うことができる事前設定電圧限界間で放電し充電する。
【0156】
導出法により得られる電圧限界
電圧限界は、サイクリックボルタンメトリー試験から得られる電圧の関数として電流の一次導関数に基づいて、又はガルバニック充電(GChg)試験から得られる電圧の関数として容量の二次導関数から、決定することができる。
【0157】
電圧限界は、負のピーク(トラフ)により導関数曲線上で決定することができ、これは特定の電気化学的事象の終点又は最大電気化学変換事象の終点を表している(
図2)。
【0158】
外挿接線法により得られる電圧限界
開始電圧限界は、曲線屈曲上の変化の前に、確立されたベースラインから偏向が最初に観察される、GChg試験からの電圧曲線の関数としての容量上の点を選択し、この選択された点からの接線及びベースラインからの別の線を外挿することによって決定され、この点は、接線交差が開始を決定するものである(
図3の実施例)。
【0159】
終点電圧限界は、曲線屈曲上の変化に続いて確立されたベースラインから偏向が最初に観察される、GChg試験からの電圧曲線の関数として容量上の点を選択し、この点からの接線及びベースラインからの別の線を外挿することによって決定され、この点は、接線交差が終点を決定するものである。
【0160】
接線がそこを起源とする点を選択するための別の方法は、GChg試験から得られた電圧曲線の関数としての容量の一次導関数からの正及び負のピークを使用することである。
【0161】
好ましくは、ガルバニック充電曲線は、開始又は終了電圧決定に関する曲線屈曲上の変化の明らかな特定を可能にする規模に、急拡大させることができる。
【0162】
中間ポリスルフィド種の形成を制御するための開示された方法の実施例
制限要因としての容量及び電圧を持つ定電流及び定電圧(CCCV)充電プロトコールから構成された方法を使用して、高レートであってもレドックス反応の終了を確実にした。
【0163】
充電容量限界が1,046.9mAh/g
(S)であり、充電電圧限界が2.37Vであり、放電電圧限界が1.8Vである10電子動作を、
図4に示す。
S
8(60%)⇔Li
2S
8⇔Li
2S
6⇔Li
2S
4⇔Li
2S
3⇔Li
2S
2⇔Li
2S
(約35%)
【0164】
充電容量限界が837.5mAh/g
(S)であり、充電電圧限界が2.335Vであり、放電電圧限界が1.8Vである8電子動作を、
図4に示す。
Li
2S
6⇔Li
2S
4⇔Li
2S
3⇔Li
2S
2⇔Li
2S
(約35%)
【0165】
充電容量限界が837.5mAh/g(S)であり、充電電圧限界が2.38Vであり、放電容量限界が837.5mAh/g(S)である8電子動作。
S8⇔Li2S8⇔Li2S6⇔Li2S4⇔Li2S2~3
【0166】
充電容量限界が628.1mAh/g
(S)であり、充電電圧限界が2.325Vであり、放電電圧限界が1.8Vである6電子動作を、
図4に示す。
Li
2S
6(約75%)⇔Li
2S
4⇔Li
2S
3⇔Li
2S
2⇔Li
2S
(約35%)
【0167】
充電容量限界が628.1mAh/g(S)であり、充電電圧限界が2.425Vであり、放電容量限界が628.1mAh/g(S)である6電子動作。
S8⇔Li2S8⇔Li2S6⇔Li2S4
【0168】
ポリスルフィドに関して示されたパーセンテージは、レドックス変換を受けそれによって前記数の電子を生成する化学種の変換率である、それらの電子寄与率に関する。残りの量は、未反応の化学種として留まる。
【0169】
CCCV充電の各工程は、容量限界に達すると終了する。セルが、設定された上限電圧限界になるまで容量限界に到達しない場合、次いで定電圧充電は、電流が低下するまで、例えば1A/g(S)まで、又は容量限界に達するまで継続される。
【0170】
中間ポリスルフィド種の形成を制御するための方法を適用する例として、10-、8-、及び6-電子反応(上記にて詳述された)に関する種々のプロトコールを評価し、カットオフ充電電圧が2.8Vであり充電容量限界のない定電流(CC)を使用する標準プロトコール(約12電子)と比較した。Li-Sセル全ての放電を、0.2電流レートでカットオフ電圧1.4Vまで定電流(CC)の下で実施した。全てのセルは、サイクル動作評価前に形成サイクルを受ける。形成サイクルは、0.05電流レートでカットオフ電圧までCC放電により開始し、その後、CC又はCCCVプロトコール充電が続く。
【0171】
Li-Sセルの容量劣化プロット(
図4)は、標準プロトコールと比較した、開示された方法で動作させたセルのより良好な容量保持率を示す。
【0172】
図4では、Li-Sセルの放電は、電解質分解を防止するために放電電圧限界1.8Vが設定された定電流(CC)プロトコールの下で実施した。1.8Vよりも下の電圧電位で安定な電解質の使用により、この限界を1.0Vまで低下させることができる。
【0173】
レドックス反応中、カソードに存在するS8分子当たりで移動する電子の数までセルの動作(充放電)を制限することにより、制御することができる。この戦略は、エネルギー密度を犠牲にしてバッテリーのサイクル寿命を改善する。そのような手法は、本発明で開示された方法に従いバッテリーの寿命を改善することができるバッテリー管理システムと共にLi-Sセルによるバッテリーパックモジュールの設計を助け且つ構築することができる。
【0174】
記述される実施形態の様々な態様の多くのその他の修正例及び置換え例が可能であることが、理解されよう。したがって記述される態様は、添付される請求項の精神及び範囲内に含まれる全てのそのような代替例、修正例、及び変形例を包含するものとする。
【0175】
本明細書及び以下の請求項の全体を通して、文脈がその他の内容を必要としない限り、「含む(comprise)」という単語並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」等の変形例は、記述される整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群の包含を示唆し、任意のその他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群の排除を示唆するものではないことが理解されよう。
【0176】
本明細書及び以下の請求項の全体を通して、文脈がその他の内容を必要としない限り、「~から本質的になる(consisting essentially of)」という文言及び「~から本質的になる(consists essentially of)」等の変形例は、列挙される要素が必須であること、即ち本発明の必須の要素であることを示すことが理解されよう。文言は、本発明の特徴に実質的に影響を及ぼさないその他の列挙されていない要素の存在を可能にするが、定義される方法の基本的な及び新規の特徴に影響を及ぼし得る追加の指定されていない要素を除外する。
【0177】
任意の先行文献(又はそれから導かれた情報)又は公知の任意の論文に対する本明細書における参照は、その先行文献(又はそれから導かれた情報)又は公知の論文が、本明細書が関係する努力分野での共通する一般的知識の部分を形成することを了承し若しくは許可し又は任意の形の示唆であると解釈するものではなく又はそのように解釈されるべきではない。
【国際調査報告】