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特表2024-539554電気化学素子用分離膜及びそれを備える電気化学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】電気化学素子用分離膜及びそれを備える電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/443 20210101AFI20241022BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241022BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20241022BHJP
【FI】
H01M50/443 M
H01M50/414
H01M50/451
H01M50/457
H01M50/434
H01M50/489
H01M4/505
H01M50/446
H01M50/42
H01M50/429
H01M50/46
H01M4/525
H01G11/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518489
(86)(22)【出願日】2023-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 KR2023012756
(87)【国際公開番号】W WO2024049152
(87)【国際公開日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】10-2022-0108673
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヨ・ジュ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ミ・ジョン
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
5H050
【Fターム(参考)】
5E078CA06
5H021AA06
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE06
5H021EE11
5H021EE22
5H021EE23
5H021EE32
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH04
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050DA19
5H050EA12
5H050EA14
5H050EA15
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA06
5H050HA07
(57)【要約】
本発明は、多孔性高分子基材;第1無機物粒子及び第1無機物粒子より比表面積が大きい第2無機物粒子を含み、前記多孔性高分子基材の第1面に形成される第1多孔性コーティング層;及び前記多孔性高分子基材の第2面に形成される第2多孔性コーティング層を含み、前記第2無機物粒子は表面にスルホン酸基が導入されたものであり、前記スルホン酸基の少なくとも一部は水素陽イオンがリチウム陽イオンに置換されたものである、リチウムマンガン系活物質を含む電気化学素子用分離膜に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性高分子基材;
第1無機物粒子及び前記第1無機物粒子より比表面積が大きい第2無機物粒子を含み、前記多孔性高分子基材の第1面に形成される第1多孔性コーティング層;及び
前記多孔性高分子基材の第2面に形成される第2多孔性コーティング層を含み、
前記第2無機物粒子は、
表面にスルホン酸基が導入されたものであり、前記スルホン酸基の少なくとも一部は水素陽イオンがリチウム陽イオンに置換されたものである、リチウムマンガン系活物質を含む電気化学素子用分離膜。
【請求項2】
前記第1多孔性コーティング層は、
前記第1無機物粒子と前記第2無機物粒子を2:8ないし3:7の重量比率で含む、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項3】
前記第2無機物粒子は、
平均直径が1.5nmないし50nmの気孔を含むメソポーラス無機物粒子である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項4】
前記第1無機物粒子は、
前記第2無機物粒子とは異なるものであり、気孔を含まないものである、請求項3に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項5】
前記スルホン酸基は、
メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸からなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項6】
前記第1無機物粒子は、
LiPO、LiTi(PO(0<x<2、0<y<3)、LiAlTiz(PO(0<x<2、0<y<1、0<z<3)、LiLaTiO(0<x<2、0<y<3)、LiGe(0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、Li(0<x<4、0<y<2)、LiSi(0<x<3、0<y<2、0<z<4)、Li(0<x<3、0<y<3、0<z<7)、LiLaZr12BaTiO、BaSO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、HfO、Sb、Sb、Sb、SrTiO、SnO、CeO、MgO、Mg(OH)2、NiO、CaO、ZnO、ZnSnO、ZnSnO、ZnSn(OH)、ZrO、Y、SiO、Al、AlOOH、Al(OH)、SiC、TiO、HBO及びHBOからなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項7】
前記第1多孔性コーティング層は、
水系高分子バインダーをさらに含み、
前記水系高分子バインダーは、
前記第1無機物粒子相互間、前記第2無機物粒子相互間及び前記第1無機物粒子と前記第2無機物粒子を結合させて、無機物粒子間の隙間で形成されるインタースティシャルボリュームを形成するものである、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項8】
前記水系高分子バインダーは、
アクリル系高分子、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリアリレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体及びポリイミドからなる群から選択される1つ以上である、請求項7に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項9】
前記第1多孔性コーティング層は、
前記電気化学素子の負極と対面するものである、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項10】
前記第2多孔性コーティング層は、
前記第1無機物粒子を含み、前記第2無機物粒子は含まないものである、請求項9に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項11】
前記リチウムマンガン系活物質は、
Li1+xMn2-x(0≦x≦0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnO、LiNi1-xMn(0.01≦x≦0.3)、LiMn2-x(M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、0.01≦x≦0.1)、LiMnMO(M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)、LiNiMn2-x(0<x<0.5)及びLiMnからなる群から選択される1つ以上の正極活物質である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項12】
前記第1多孔性コーティング層に含まれた前記第1無機物粒子及び前記第2無機物粒子の平均比表面積は500m/gないし700m/gである、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項13】
前記第1多孔性コーティング層は、
厚さが1μmないし6μmである、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項14】
前記リチウムマンガン系活物質を含む正極から溶出されるマンガンイオンの吸着率が20%ないし50%である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項15】
正極、負極及び前記正極と前記負極の間に配置される分離膜を含む電気化学素子であって、
前記分離膜は、請求項1から14のいずれか一項による電気化学素子用分離膜である、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2022年8月29日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2022-0108673号の出願日の利益を主張し、その内容の全部は本発明に含まれる。
【0002】
本発明は、電気化学素子用分離膜とそれを備える電気化学素子に関し、リチウムマンガン系正極活物質を使用する電気化学素子の容量損失を最小化するための分離膜に関する。
【背景技術】
【0003】
電気化学素子は、電気化学反応を利用して化学的エネルギーを電気的エネルギーに転換するものであり、最近は、エネルギー密度と電圧が高く、サイクル寿命が長く、多様な分野に使用可能なリチウム二次電池が広く使われている。
【0004】
リチウム二次電池は、正極、負極、正極と負極の間に配置される分離膜で製造される電極組立体を含み、前記電極組立体が電解液と共にケースに収納されて製造される。正極はリチウムイオンを提供し、リチウムイオンは多孔性素材からなる分離膜を通過して負極に移動する。負極は電気化学反応電位がリチウム金属に近く、リチウムイオンの挿入及び脱離が可能なものとして炭素系活物質などを使用できる。
【0005】
正極活物質はリチウムと様々な金属または遷移金属元素を含んでもよい。例えば、ニッケルは電気化学素子の容量を向上させ、コバルトは電気化学素子の容量とサイクル安定性を向上させ、マンガンは電気化学素子の安定性を向上させ、アルミニウムは電気化学素子の出力特性を向上させることができる。ただし、ニッケルは熱安定性が低く、ニッケルとコバルトは価格が高いため、最近はマンガンを含むリチウムマンガン系正極活物質に対する関心が高まっている。
【0006】
しかしながら、マンガンを含む正極活物質を使用する電気化学素子においては、充放電過程で正極からマンガンイオンが溶出する可能性がある。前記溶出されたマンガンイオンは、負極に移動して負極の表面においてマンガンを含む不純物として析出され、不均一な膜を形成して前記電気化学素子の容量減少を誘発する。
【0007】
従って、リチウムマンガン系活物質を含む電気化学素子に使用するための分離膜として、正極から溶出されるマンガンイオンを捕獲(capture)して負極に移動することを防止することで、負極及びこれを含む電気化学素子の劣化を防止できる分離膜に関する研究が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、リチウムマンガン系活物質を含む電気化学素子に使用するための分離膜として、正極から溶出されるマンガンイオンの吸着が可能な電気化学素子用分離膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、多孔性高分子基材、第1無機物粒子及び前記第1無機物粒子より比表面積が大きい第2無機物粒子を含み、前記多孔性高分子基材の第1面に形成される第1多孔性コーティング層及び前記多孔性高分子基材の第2面に形成される第2多孔性コーティング層を含み、第2無機物粒子は、表面にスルホン酸基が導入されたものであり、前記スルホン酸基の少なくとも一部は水素陽イオンがリチウム陽イオンに置換されたものである、リチウムマンガン系活物質を含む電気化学素子用分離膜を提供する。
【0010】
前記第1多孔性コーティング層は、前記第1無機物粒子と前記第2無機物粒子を2:8ないし3:7の重量比率で含んでもよい。
【0011】
前記第2無機物粒子は、平均直径が1.5nmないし50nmである気孔を含むメソポーラス無機物粒子であってもよい。
【0012】
前記第1無機物粒子は、前記第2無機物粒子とは異なるものであり、気孔を含まないものであってもよい。
【0013】
前記スルホン酸基は、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸からなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0014】
前記第1無機物粒子は、BaTiO、BaSO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、ハフニア(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、Mg(OH)、NiO、CaO、ZnO、ZrO、Y、SiO、Al、AlOOH、Al(OH)、SiC及びTiOからなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0015】
前記第1多孔性コーティング層は、水系高分子バインダーをさらに含み、前記水系高分子バインダーは、前記第1無機物粒子相互間、前記第2無機物粒子相互間及び前記第1無機物粒子と前記第2無機物粒子を結合させて、無機物粒子間の隙間で形成されるインタースティシャルボリュームを形成するものであってもよい。
【0016】
前記水系高分子バインダーは、アクリル系高分子、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリアリレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体及びポリイミドからなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0017】
前記第1多孔性コーティング層は、前記電気化学素子の負極と対面してもよい。
【0018】
前記第2多孔性コーティング層は、前記第1無機物粒子を含み、前記第2無機物粒子は含まないものであってもよい。
【0019】
前記リチウムマンガン系活物質は、Li1+xMn2-x(0≦x≦0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnO、LiNi1-xMn(0.01≦x≦0.3)、LiMn2-x(M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、0.01≦x≦0.1)、LiMnMO(M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)、LiNiMn2-x(0<x<0.5)及びLiMnからなる群から選択される1つ以上の正極活物質であってもよい。
【0020】
前記第1多孔性コーティング層に含まれた前記第1無機物粒子及び前記第2無機物粒子の平均比表面積は500m/gないし700m/gであってもよい。
【0021】
前記第1多孔性コーティング層は、厚さが1μmないし6μmであってもよい。
【0022】
前記電気化学素子用分離膜は、前記リチウムマンガン系活物質を含む正極から溶出されるマンガンイオンの吸着率が20%ないし50%であってもよい。
【0023】
本発明の他の一側面は、正極、負極及び前記正極と前記負極の間に配置される分離膜を含む電気化学素子を提供し、前記分離膜は本発明の一側面による電気化学素子用分離膜であってもよい。
【0024】
前記電気化学素子はリチウム二次電池であってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明による電気化学素子用分離膜は、多孔性コーティング層に含まれる無機物粒子の表面にスルホン酸基を導入し、前記スルホン酸基の少なくとも一部に含まれた水素陽イオンをリチウム陽イオンに置換して、従来に比べて向上したマンガンイオン吸着能を提供する。
【0026】
また、本発明による電気化学素子用分離膜は、スルホン酸基が導入された無機物粒子と導入されていない無機物粒子の含量比率と、前記スルホン酸基が導入された無機物粒子を含む多孔性コーティング層の配置位置を制御して、従来に比べて向上したマンガンイオン吸着能を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の各構成をより詳しく説明するが、これは1つの例に過ぎず、本発明の権利範囲が次の内容により制限されない。
【0028】
本明細書に使用された「含む」という用語は、本発明に有用な材料、組成物、装置、及び方法を羅列する時に使用され、その羅列された例に制限されるものではない。
【0029】
本明細書に使用された「約」、「実質的に」は固有の製造及び物質許容誤差を勘案して、その数値や程度の範疇またはこれに近接した意味として使用され、本発明の理解を容易にするために提供された正確または絶対的な数値が言及された開示内容を侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0030】
本明細書に使用された「電気化学素子」は、一次電池、二次電池、スーパーキャパシタなどを意味する。
【0031】
本明細書に使用された「粒径」は、他の特別な記載がない限り、粒径による粒子個数累積分布において50%に該当する粒径であるD50を意味する。
【0032】
本発明の一実施例は、多孔性高分子基材、第1無機物粒子及び前記第1無機物粒子より比表面積が大きい第2無機物粒子を含み、前記多孔性高分子基材の第1面に形成される第1多孔性コーティング層、及び前記多孔性高分子基材の第2面に形成される第2多孔性コーティング層を含む電気化学素子用分離膜を提供する。前記第2無機物粒子は、表面にスルホン酸基が導入されたものであり、前記スルホン酸基の少なくとも一部は水素陽イオンがリチウム陽イオンに置換されたものであり、前記電気化学素子はリチウムマンガン系活物質を含む。
【0033】
前記多孔性高分子基材は、正極及び負極を電気的に絶縁させて短絡を防止するとともに、リチウムイオンは通過できる気孔を提供する。前記多孔性高分子基材は有機溶媒である電気化学素子の電解液に対して耐性を有してもよい。例えば、前記多孔性高分子基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブテンなどのポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン及びこれらの共重合体又は混合物などの高分子樹脂を含んでもよいが、これに限定されない。好ましくは、前記多孔性高分子基材はポリオレフィン系高分子を含み、多孔性コーティング層形成のためのスラリー塗布性に優れ、薄い厚さの分離膜製造に有利なものであってもよい。
【0034】
前記多孔性高分子基材の厚さは1μmないし100μmであり、好ましくは1μmないし30μmであり、より好ましくは15μmないし30μmであってもよい。前記多孔性高分子基材は、平均直径が0.01μmないし10μmである気孔を含んでもよい。前述の範囲で多孔性高分子基材の厚さを調節することにより、正極と負極を電気的に絶縁させながら電気化学素子の体積を最小化して電気化学素子に含まれる活物質の量を増加させることができる。
【0035】
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面にはスラリーが塗布及び乾燥されて後述の多孔性コーティング層が形成される。前記スラリーは無機物粒子、高分子バインダー、分散媒などを含んでもよい。前記スラリーの塗布前に電解液に対する含浸性を向上させるために、前記多孔性高分子基材にプラズマ処理やコロナ放電のような表面処理が行われることができる。
【0036】
前記電気化学素子用分離膜は、前記多孔性高分子基材と多孔性コーティング層を含んでもよい。多孔性コーティング層は複数で備えられてもよく、前記多孔性高分子基材の第1面に形成される第1多孔性コーティング層と前記多孔性高分子基材の第2面に形成される第2多孔性コーティング層を含んでもよい。前記多孔性高分子基材の第1面に第1スラリーを塗布及び乾燥して第1多孔性コーティング層を形成し、前記第1面の反対側に位置する第2面に第2スラリーを塗布及び乾燥して第2多孔性コーティング層を形成することができる。
【0037】
前記多孔性コーティング層は、前記多孔性高分子基材の機械的物性と絶縁性を向上させるための無機物粒子及び電極と分離膜との間の接着力を向上させるための高分子バインダーを含んでもよい。前記高分子バインダーは、電極と分離膜との間の接着力を提供すると同時に、隣接した無機物粒子を結合させ、前記結合を維持することができる。無機物粒子は隣接した無機物粒子と結合して無機物粒子間の空隙であるインタースティシャルボリュームを提供することができ、リチウムイオンが前記インタースティシャルボリュームを介して移動することができる。
【0038】
具体的に、前記第1多孔性コーティング層は、第1無機物粒子と前記第1無機物粒子より比表面積が大きい第2無機物粒子を含んでもよい。前記第2多孔性コーティング層は、第1無機物粒子と同一または異なる種類の無機物粒子を含むものの、前記第2無機物粒子は含まないものであってもよい。
【0039】
前記第1無機物粒子は、多孔性コーティング層の厚さを均一に形成し、適用される電気化学素子の作動電圧範囲内において酸化還元反応が起きないものであってもよい。例えば、前記第1無機物粒子はリチウムイオン伝達能力、圧電性(piezoelectricity)及び難燃性のうち1つ以上の特性を有してもよい。
【0040】
リチウムイオン伝達能力のある無機物粒子は、リチウム元素を含有するものの、リチウムを貯蔵せずにリチウムイオンを移動させる機能を有することを意味する。リチウムイオン伝達能力のある無機物粒子は粒子構造内部に存在する一種の欠陥(defect)によりリチウムイオンを伝達及び移動させることができる。従って、電気化学素子内のリチウムイオン伝導度が向上し、これにより電気化学素子の性能向上を図ることができる。
【0041】
例えば、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子は、LiPO、LiTi(PO(0<x<2、0<y<3)、LiAlTiz(PO(0<x<2、0<y<1、0<z<3)、LiLaTiO(0<x<2、0<y<3)、LiGe(0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、LiNのようなリチウムナイトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、LiPO-LiS-SiSのようなSiS系ガラス(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI-LiS-PのようなP系ガラス(Li、0<x<3、0<y<3、0<z<7)、LiLaZr12のようなLLZO系及びこれらの混合物からなる群から選択された1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0042】
圧電性を有する無機物粒子は、常圧では不導体であるが、一定圧力が印加された場合、内部構造の変化により電気が通る物性を有する物質を意味する。前記無機物粒子は誘電率定数が100以上の高誘電率特性を示し、一定圧力を印加して引張または圧縮されると、電荷が発生して一面は正に、反対面は負にそれぞれ帯電することにより、両面間に電位差が発生する機能を有することができる。前記のような無機物粒子は、ローカルクラッシュ(Local crush)、ネイル(Nail)などの外部衝撃により正極と負極の内部短絡が発生する場合、分離膜にコーティングされた無機物粒子により正極と負極が直接接触しないだけでなく、無機物粒子の圧電性により粒子内電位差が発生し、これにより正極と負極間の電子移動、すなわち、微細な電流の流れが行われることにより、緩やかな電気化学素子の電圧減少及びこれによる安全性向上を図ることができる。
【0043】
例えば、圧電性のある無機物粒子は、BaTiO、BaSO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)(0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、HfO(ハフニア)及びこれらの混合物からなる群から選択された1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0044】
難燃性を有する無機物粒子は、分離膜に難燃特性を付加するか、電気化学素子内部の温度が急激に上昇することを防止できる。
【0045】
例えば、難燃性のある無機物粒子は、Sb、Sb、Sb2O、SrTiO、SnO、CeO、MgO、Mg(OH)、NiO、CaO、ZnO、ZnSnO、ZnSnO、ZnSn(OH)、ZrO、Y、SiO、Al、AlOOH、Al(OH)、SiC、TiO、HBO、HBO及びこれらの混合物からなる群から選択された1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
前記第1無機物粒子の平均粒径は50nmないし5000nmであってもよく、好ましくは200nmないし1000nm、より好ましくは300nmないし700nmであってもよい。前記第1無機物粒子の平均粒径が50nm未満であると、無機物粒子間の結合のための高分子バインダーが追加で必要であるため電気抵抗の側面で不利である。前記第1無機物粒子の平均粒径が5000nmを超過すると、コーティング層の表面の均一性が低下し、コーティング後に突出した粒子によりラミネーション時に分離膜と電極が損傷して短絡が発生する可能性がある。前記第1無機物粒子の比表面積は1m/gないし50m/gであってもよい。好ましくは、前記第1無機物粒子は気孔を含まないものである。
【0047】
前記の第2無機物粒子は、気孔を含めて前記第1無機物粒子より比表面積が大きいものであってもよく、前記第1多孔性コーティング層に実質的にマンガンイオンを吸着する性能を付与することができる。前記第2無機物粒子は平均直径が1.5nmないし50nmの気孔を含むメソポーラス無機物粒子であってもよい。気孔の平均直径が1.5nm未満のマイクロポーラス無機物粒子は気孔のサイズが小さ過ぎ、気孔の平均直径が50nmを超過するマクロポーラス無機物粒子は比表面積が小さいため、スルホン酸基導入によるマンガンイオンの吸着性能の確保が難しい。
【0048】
前記第2無機物粒子は、表面にスルホン酸基(HSO)が導入できるものであれば、その種類は限定されないが、好ましくは第1無機物粒子とは異なるものであってもよく、より好ましくはスルホン酸基の導入前の無機物粒子の表面にヒドロキシ基が存在するものであってもよい。前記表面は、前記第2無機物粒子において気孔が形成されていない表面と、前記気孔の内部表面を包括して意味する。例えば、第2無機物粒子はメソポーラスシリカナノ粒子、メソポーラスチタニアナノ粒子、メソポーラスジルコニアナノ粒子及びメソポーラスアルミナナノ粒子からなる群から選択される1つ以上であってもよい。好ましくは、第2無機物粒子はメソポーラスシリカナノ粒子であってもよい。
【0049】
前記スルホン酸基は、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸からなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0050】
前記第2無機物粒子に導入されたスルホン酸基から水素陽イオンが離脱するとともに電子が豊富になった酸素原子と前記マンガンイオンの間に引力が作用して、前記第2無機物粒子にマンガンイオン吸着能を付与することができる。
【0051】
前記スルホン酸基の少なくとも一部は水素陽イオンがリチウム陽イオンに置換されたものであってもよい。前記リチウム陽イオンの置換は、前記スルホン酸基が導入された第2無機物粒子の分散液に水酸化リチウムを添加し、攪拌して行われる。例えば、前記第2無機物粒子に存在するスルホン酸基のうち50%ないし100%に含まれた水素陽イオンがリチウム陽イオンに置き換えられることであってもよいが、これに限定されることはない。前記リチウム陽イオンは、前記水素陽イオンに比べて前記第2無機物粒子から簡単に離脱して前記第2無機物粒子のマンガンイオン吸着能を向上させることができる。また、前記第2無機物粒子から離脱したリチウム陽イオンにより電気化学素子内のリチウムイオン伝導度が向上し、これにより電気化学素子の性能向上を図ることができる。
【0052】
前記第2無機物粒子は無機物粒子の表面にスルホン酸基が導入され、前記スルホン酸基の少なくとも一部の水素陽イオンがリチウム陽イオンに置き換えられたものであり、平均粒径は50nmないし5000nmであってもよく、好ましくは200nmないし1000nm、より好ましくは300nmないし700nmであってもよい。前記第2無機物粒子の平均粒径が50nm未満であると、無機物粒子間の結合のための高分子バインダーが追加で必要であるため、電気抵抗の側面で不利である。前記第2無機物粒子の平均粒径が5000nmを超過すると、コーティング層の表面の均一性が低下し、コーティング後に突出した粒子によりラミネーション時に分離膜と電極が損傷して短絡が発生する可能性がある。前記第2無機物粒子の比表面積は500m/gないし1000m/gであってもよい。
【0053】
前記第1多孔性コーティング層は、前記第1無機物粒子と前記第2無機物粒子を両方とも含み、前記多孔性高分子基材の機械的物性を向上させると同時にマンガンイオンの吸着能を提供することができる。具体的には、前記第1多孔性コーティング層は、前記第1無機物粒子と前記第2無機物粒子を2:8ないし3:7の重量比率で含んでもよい。前記比率に対比して前記第1無機物粒子が過量で含まれると、前記第1多孔性コーティング層の比表面積が急激に減少し、マンガンイオンに対する吸着能は前記比表面積の減少よりさらに大きな比率で減少する。前記比率に対比して前記第2無機物粒子が過量で含まれると、熱的安定性の低下により分離膜の熱収縮が発生する可能性がある。前記比率を満たす第1多孔性コーティング層において、第1無機物粒子及び第2無機物粒子の平均比表面積が500m/gないし700m/gであってもよい。
【0054】
前記多孔性コーティング層は、高分子バインダーとして水系高分子バインダーを含んでもよい。前記水系高分子バインダーの重量平均分子量は10,000ないし10,000,000であってもよい。例えば、水系高分子バインダーは、アクリル系高分子、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリアリレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体及びポリイミドからなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0055】
例えば、前記第1多孔性コーティング層は水系高分子バインダーとしてアクリレート系高分子を含んでもよく、前記水系高分子バインダーは前記第1無機物粒子相互間、前記第2無機物粒子相互間及び前記第1無機物粒子と前記第2無機物粒子を結合させて、無機物粒子間の隙間で形成されるインタースティシャルボリュームを形成することができる。
【0056】
前記第1多孔性コーティング層の厚さは1μmないし6μmであってもよい。前記第1多孔性コーティング層の厚さが1μm未満の場合、負極においてマンガンを含む不純物が析出される問題が発生する。前記第1コーティング層の厚さが6μmを超過してもマンガンイオン吸着効率が有意に増加することはない。好ましくは、前記第1多孔性コーティング層の厚さは3μmないし5μmであってもよい。
【0057】
前記多孔性高分子基材の前記第1面は負極と対面し、前記第2面はリチウムマンガン系活物質を含む正極と対面するように配置される。前記第1多孔性コーティング層は、電気化学素子の負極と対面するように配置されて負極表面において不純物の析出を遅延または低減することができる。
【0058】
前記多孔性コーティング層は無機物粒子の分散性をさらに向上させるために分散剤をさらに含んでもよい。前記分散剤はスラリー製造時に高分子バインダー内において無機物粒子の均一な分散状態を維持させる機能をする。例えば、前記分散剤は油溶性ポリアミン、油溶性アミン化合物、脂肪酸類、脂肪アルコール類、ソルビタン脂肪酸エステル、タンニン酸、ピロガロールのうちから選択されたいずれか1つ以上であってもよい。前記スラリーが分散剤を含む場合、前記多孔性コーティング層は分散剤を5重量%以下で含んでもよい。
【0059】
前記スラリーは無機物粒子と高分子バインダーを90:10ないし10:90の重量比率で含んでもよく、好ましくは80:20ないし20:80の重量比率で含んでもよい。前記範囲を外れると、前記多孔性コーティング層において高分子バインダーの移動が妨害されて電極と分離膜との間の十分な接着力を確保することができない。
【0060】
本発明の他の一実施例は、正極、負極及び前記正極と前記負極の間に配置される分離膜を含む電気化学素子であって、前記分離膜は前述の一実施例による電気化学素子用分離膜であるものを提供する。例えば、前記電気化学素子はリチウムマンガン系正極活物質を含む正極を含むリチウム二次電池であってもよい。
【0061】
前記正極及び前記負極は、それぞれの集電体の少なくとも一面に活物質が塗布及び乾燥されたものであってもよい。前記集電体は電気化学素子に化学的変化を誘発することなく導電性を有する材料が使用されてもよい。例えば、正極用集電体は、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、ステンレススチール;アルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどであってもよいが、これに限定されるものではない。例えば、負極用集電体は、銅、ニッケル、チタン、焼成炭素、ステンレススチール;銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどであってもよいが、これに限定されるものではない。前記集電体は金属薄板、フィルム、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体などの多様な形態であってもよい。
【0062】
前記リチウムマンガン系正極活物質はニッケルとコバルトを含まないか、ニッケルとコバルトのいずれか1つのみを含むものであってもよい。例えば、リチウムマンガン系正極活物質は、Li1+xMn2-x(0≦x≦0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnO、LiNi1-xMn(0.01≦x≦0.3)、LiMn2-x(M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、0.01≦x≦0.1)、LiMnMO(M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)、LiNiMn2-x(0<x<0.5)及びLiMnからなる群から選択される1つ以上であってもよい。好ましくは、前記リチウムマンガン系正極活物質はリチウムとマンガンのみを含むLMO系活物質であってもよい。
【0063】
負極活物質は、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;錫系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、及びBiなどの金属酸化物; ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料等を含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0064】
前記電気化学素子は、前記第1多孔性コーティング層が前記正極に対向するように配置された分離膜を含み、前記リチウムマンガン系活物質を含む正極から溶出されるマンガンイオンの吸着率が20%ないし50%であってもよい。前記範囲において負極でのマンガンを含む不純物の析出が遅延または低減されることができる。
【0065】
前記電気化学素子は、正極、負極、分離膜及び電解液をケースやポーチに挿入して密封して製造することができる。前記ケースやポーチの形状は制限されない。例えば、前記電気化学素子は円筒形、角形、コイン形、ポーチ形リチウム二次電池であってもよい。
【0066】
前記リチウム二次電池は単位セルとしてパックまたはモジュール化されてコンピュータ、携帯電話、パワーツール(power tool)などの小型デバイスと、電池的モータにより動力を受けて動くパワーツール(power tool)、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気自動車、電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車、電気ゴルフカート(electric golf cart)、電力貯蔵用システムなどの中大型デバイスに使用できる。
【0067】
以下では、具体的な実施例及び実験例により本発明をさらに詳しく説明する。下記の実施例及び実験例は、本発明を例示するためのものであり、本発明が下記の実施例及び実験例により限定されるものではない。
【0068】
実施例1
〔第1スラリーの準備〕
【0069】
常温(25℃)で水とエタノールを1:1の重量比率で混合した溶液に界面活性剤としてセチルトリメチルアンモニウムクロライド(cetyltrimethylammonium chloride)を添加し、テトラエチルオルトシリケート(TEOS;tetraethyl orthosilicate)を添加した後、10分間撹拌した。撹拌された溶液にアンモニア水を添加し、一日放置した後、沈殿物を濾過、洗浄、乾燥及び焼成して平均気孔の大きさが10nmで、平均粒径が300nmであるメソポーラスシリカナノ粒子を合成した。
【0070】
前記合成したメソポーラスシリカナノ粒子5gをジクロロメタン200mLに投入し、超音波を利用して20分間分散させた。ジクロロメタン50mL中にクロロスルホン酸2mLを投入した後、前記メソポーラスシリカの分散液にドロップ方式で2時間かけて添加した。添加が完了した後、混合物を常温で15時間撹拌し、遠心分離して固形物を得た。前記固形物をジクロロメタンで5回以上洗浄し、常温で真空乾燥してスルホン酸基が導入されたメソポーラスシリカナノ粒子を得た。蒸留水500mLにLiOH・HOを25g溶解させた溶液に、スルホン酸基が導入されたメソポーラスシリカナノ粒子を添加し、12時間撹拌した。前記スルホン酸基の一部に含まれる水素をリチウムに置換して第2無機物粒子を製造した。
【0071】
常温で水系分散媒として蒸留水100mLを用意した。前記水系分散媒にアクリル系高分子バインダー(Toyo ink社、CSB130、固形分40%、粒径177nm):カルボキシメチルセルロース(GLCHEM社、SG-L02):湿潤剤(wetting agent)を8:5:1の重量比率で分散させて有機/無機複合多孔性コーティング層形成用スラリーを用意した。前記スラリーに第1無機物粒子として平均粒径が500nmのアルミナ6g及び前記第2無機物粒子24gを投入(第1無機物粒子と第2無機物粒子の重量比=2:8)し、120分間撹拌して高分子バインダーと無機物粒子が分散された第1スラリーを製造した。
【0072】
〔第2スラリーの準備〕
常温で水系分散媒として蒸留水100mLを用意した。前記水系分散媒にアクリル系高分子バインダー(Toyo ink社、CSB130、固形分40%、粒径177nm):カルボキシメチルセルロース(GLCHEM社、SG-L02):湿潤剤(wetting agent)を8:5:1の重量比率で分散させて有機/無機複合多孔性コーティング層形成用スラリーを用意した。前記スラリーに無機物粒子として平均粒径が500nmのアルミナ30gを投入し、120分間撹拌して高分子バインダーと無機物粒子が分散された第2スラリーを製造した。
【0073】
〔多孔性高分子基材の準備〕
多孔性高分子基材として特にポリプロピレンフィルム(PP)を使用した。
【0074】
〔分離膜の製造〕
ポリプロピレンフィルムの両面にバーコーター(bar coater)を利用して第1スラリー及び第2スラリーをそれぞれコーティングして乾燥させて、分離膜を製造した。各コーティングの厚さが3μmの多孔性コーティング層を形成して、全体厚さ約15μmの分離膜を製造した。
【0075】
実施例2
第1スラリー製造時に第1無機物粒子と第2無機物粒子を3:7の重量比で投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で分離膜を製造した。
【0076】
比較例1
第1スラリー製造時に第1無機物粒子と第2無機物粒子を4:6の重量比で投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で分離膜を製造した。
【0077】
比較例2
第1スラリー製造時に第1無機物粒子と第2無機物粒子を5:5の重量比で投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で分離膜を製造した。
【0078】
比較例3
第1スラリー製造時に第1無機物粒子と第2無機物粒子を6:4の重量比で投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で分離膜を製造した。
【0079】
比較例4
第1スラリー製造時に第1無機物粒子と第2無機物粒子を7:3の重量比で投入したことを除いては、実施例1と同様の方法で分離膜を製造した。
【0080】
比較例5
第2無機物粒子としてスルホン酸基が導入されたメソポーラスシリカナノ粒子を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で分離膜を製造した。
【0081】
比較例6
第2スラリーでポリプロピレンフィルムの両面を全てコーティングしたことを除いては、実施例1と同様の方法で分離膜を製造した。
【0082】
実験例1.分離膜の物性確認
実施例1ないし2及び比較例1ないし6による分離膜と各分離膜の第1多孔性コーティング層及び第2多孔性コーティング層の厚さを厚さ測定器(Mitutoyo社、VL-50S-B)で確認し、各分離膜において第1多孔性コーティング層に含まれた無機物粒子の平均比表面積を測定して下記の表1に示した。
【0083】
【表1】
【0084】
実験例2.分離膜のマンガンイオン吸着性能の確認
実施例1ないし2及び比較例1ないし6による分離膜をそれぞれ硫酸マンガン溶液(MnSO)(初期Mn2+濃度3,400ppm)に完全に浸漬させて24時間維持した後、分離膜を回収及び乾燥した。乾燥した分離膜をEDS(JEOL社SEM、15kV)分析して、下記の表2に示した。
【0085】
また、前記分離膜を回収した後、硫酸マンガン溶液に残ったMn2+イオンの濃度を測定して、各分離膜別のMn2+吸着量を下記の表2に示した。
【0086】
【表2】
【0087】
実験例3.リチウムマンガン系活物質を含む電気化学素子におけるサイクル特性の確認
【0088】
リチウムマンガン系複合酸化物(LiMnO):導電材(Denka black):バインダー(PVdF)の量が95:2.5:2.5の重量比になるように計量した後、N-メチルピロリドン(NMP)に入れてミキシングして正極活物質スラリーを製造し、20μm厚のアルミニウムホイルに前記正極活物質スラリーを200μm厚でコーティングした後、圧延及び乾燥して正極を製造した。
【0089】
負極としては厚さ200μmのLi金属板を使用し、実施例または比較例の分離膜を挟んで正極と負極を積層した後、アルミニウムポーチに挿入した。
【0090】
前記アルミニウムポーチにエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)が3/7の重量比率で混合された溶媒に、添加剤としてビニレンカーボネート(VC)3mol、プロパンスルトン(PS)1.5mol、エチレンサルフェート(ESa)1mol及びリチウム塩LiPFを1mol含む電解液1gを注液し、ポーチをシーリングしてセルを製造した。
【0091】
製造されたセルを25℃チャンバで、3.0Vから4.35Vの電圧領域において0.1Cで1回充放電し、0.33C充電と0.33C放電を400回繰り返しながら性能維持率を確認した。前記性能維持率は、最初の放電容量対比400回サイクル反復後の放電容量の比率を計算した。
【0092】
また、前記400回サイクル前後の抵抗を測定し、抵抗増加率を確認した。
【0093】
【表3】
【国際調査報告】