(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】液体のための堆肥化可能なフィルタ材料としての熱可塑性物質含浸セルロース不織布
(51)【国際特許分類】
D21H 27/08 20060101AFI20241022BHJP
D21H 17/57 20060101ALI20241022BHJP
D04H 1/425 20120101ALI20241022BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20241022BHJP
D06M 15/507 20060101ALI20241022BHJP
B65D 85/804 20060101ALI20241022BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20241022BHJP
B01D 39/18 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
D21H27/08
D21H17/57
D04H1/425
D06M15/564
D06M15/507
B65D85/804
B01D39/16 A
B01D39/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518511
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2022076530
(87)【国際公開番号】W WO2023046904
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518147286
【氏名又は名称】アールストローム オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルデ,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ビグルー,マルジョリー
【テーマコード(参考)】
4D019
4L033
4L047
4L055
【Fターム(参考)】
4D019AA03
4D019BA12
4D019BA13
4D019BB03
4D019BB04
4D019BD01
4D019CB03
4D019CB06
4D019DA02
4D019DA03
4L033AB07
4L033AC15
4L033CA45
4L033CA50
4L047AA08
4L047CC12
4L047CC16
4L055AF09
4L055AF10
4L055AG82
4L055AG85
4L055AG97
4L055AH48
4L055BE10
4L055EA04
4L055EA08
4L055EA12
4L055EA15
4L055EA32
4L055FA11
4L055FA22
4L055GA30
4L055GA31
(57)【要約】
本発明は、完全に堆肥化可能である液体のためのヒートシール可能なフィルタ材料に関する。フィルタ材料は、50~1000L/m2#sのTextest空気透過性を有する熱可塑性物質含浸セルロース不織布である。フィルタ材料は、接着剤を追加使用することなく、支持層に積層することができる。本発明の更なる態様は、本明細書に記載の堆肥化可能なフィルタ材料を含む堆肥化可能なパッケージング要素を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体のための堆肥化可能なフィルタ材料であって、
前記フィルタ材料がヒートシール可能な熱可塑性物質含浸セルロース不織布であり、前記フィルタ材料が、ISO9237に従って測定された、196Paで50~1000L/m
2・sのTextest空気透過性を有する、堆肥化可能なフィルタ材料。
【請求項2】
前記フィルタ材料が、最小孔径を有する最小孔及び最大孔径を有する最大孔を含む孔径分布を有し、前記フィルタ材料の平均孔径が、10~60μmである、請求項1に記載の堆肥化可能なフィルタ材料。
【請求項3】
前記最大孔が、少なくとも50μm、好ましくは50~120μmの最大孔径を有する、請求項2に記載の堆肥化可能なフィルタ材料。
【請求項4】
前記最小孔が、1~30μmの最小孔径を有する、請求項3に記載の堆肥化可能なフィルタ材料。
【請求項5】
前記熱可塑性物質含浸セルロース不織布が、セルロース不織布材料及び少なくとも1つの熱可塑性結合剤を含み、前記セルロース不織布材料が、セルロース系繊維を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の堆肥化可能なフィルタ材料。
【請求項6】
熱可塑性結合剤の量が、前記熱可塑性物質含浸セルロース不織布の総重量に基づいて、10~75重量%であり、かつ/又は
前記熱可塑性結合剤が、堆肥化可能な結合剤であり、好ましくは、前記熱可塑性結合剤が、家庭で堆肥化可能な結合剤である、請求項5に記載の堆肥化可能なフィルタ材料。
【請求項7】
前記セルロース不織布材料中の前記セルロース系繊維の量が、前記セルロース不織布材料の総重量に基づいて、90重量%以上であり、かつ/又は
前記セルロース系繊維が、天然セルロース繊維若しくは人工セルロース繊維、又は両方の混合物であり、前記セルロース系繊維が、好ましくは、天然セルロース繊維対人工セルロース繊維の比率が7:3~9:0.5である混合物であり、かつ/又は
前記熱可塑性結合剤が、ポリウレタン、ポリブチレンサクシネート、及びポリ乳酸からなる群から選択される1つ以上であり、好ましくは、前記熱可塑性結合剤がポリウレタンである、請求項6に記載の堆肥化可能なフィルタ材料。
【請求項8】
前記熱可塑性物質含浸セルロース不織布が、少なくとも15g/m
2、好ましくは20~90g/m
2の坪量を有し、かつ/又は
前記熱可塑性物質含浸セルロース不織布が、少なくとも60μm、好ましくは80~150μmの厚さを有し、かつ/又は
前記熱可塑性物質含浸セルロース不織布が、10~50μmの平均流動孔直径を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の堆肥化可能なフィルタ材料。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の堆肥化可能なフィルタ材料を含む、堆肥化可能なパッケージング要素。
【請求項10】
前記堆肥化可能なパッケージング要素が、コーヒーカプセル、コーヒーカプセルの蓋、又はティーバッグである、請求項9に記載の堆肥化可能なパッケージング要素。
【請求項11】
前記堆肥化可能なパッケージング要素が、コーヒーカプセルの蓋であり、前記蓋が、セルロース支持層を更に含む、請求項10に記載の堆肥化可能なパッケージング要素。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の堆肥化可能なフィルタ材料を製造するための方法であって、
i)セルロース不織布を提供することと、
ii)前記セルロース不織布に熱可塑性結合剤を含浸させることと、を含む、方法。
【請求項13】
コーヒーを製造するための方法における、請求項1~11のいずれか一項に記載の堆肥化可能なフィルタの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶又はコーヒーなどの液体のための堆肥化可能なフィルタ材料として使用することができるヒートシール可能な熱可塑性物質含浸セルロース不織布に関する。本発明の更なる態様は、本明細書に記載の堆肥化可能なフィルタ材料を含む堆肥化可能なパッケージング要素を含む。
【背景技術】
【0002】
環境保護要件がますます厳しくなるにつれて、持続可能な材料の使用も食品業界で重要な役割を果たしている。パッケージング材料は、環境の汚染において重要な役割を果たしている。特に1回分の場合、パッケージング率は非常に高くなる。このカテゴリに該当する製品は、輸液バッグ又は使い捨て調製用のカプセルなどの飲料要素である。
【0003】
パッケージング材料の個々の構成要素を置き換えるための様々なアプローチを調査した。上述した飲料要素では、フィルタ材料は重要な構成要素である。フィルタ材料は、一般に、湿式配置、スパンボンド、又はメルトブロー材料などの不織布で作製される。パッケージング材料の製造に不織布を使用するために、重要な特徴はヒートシール性である。不織布では、そのようなヒートシール特性は一般に、熱可塑性繊維によって付与される。
【0004】
飲料要素として使用され得る不織布を製造するために、より持続可能なバイオベースの熱可塑性繊維が使用され得る。これらの繊維は堆肥化可能であり、飲料要素を更に持続可能にする。例えば、WO2017/187024A1では、飲料カプセルを密封するために、植物パーチメント層に接着されたポリ乳酸(PLA)スパンボンドの多層複合体が提案された(
図1Aを参照)。PLAスパンボンド材料は、2つの主要な機能を果たす:第一に、それは、カプセル上のシール層として機能する。第二に、挽いたコーヒーがコーヒーカプセルから離れるのを防ぐためのフィルタ機能がある。しかしながら、現在スパンボンド及び植物パーチメントの積層に使用されている接着剤は、堆肥化不可能である。
【0005】
異なるアプローチでは、セルロース繊維及びPLA繊維を含む湿式は、ティーバッグ用のヒートシール可能な媒体として、又はコーヒーポッド用のフィルタとして使用され得る。この製品は、ティーバッグとして使用される他の純粋に合成された不織布よりもカーボンフットプリントが低くなっている。それにもかかわらず、PLA繊維は、EN13432に規定されているように、特定の条件下、特に産業環境でのみ堆肥化可能である。重要なパラメータのうちの1つは、堆肥化のための温度である。試料が工業用堆肥化試験に合格するには、55~60℃であることが必要である。これはもちろん、家庭用コンポスターの熱条件とはかけ離れている。繊維の紡績は複雑なプロセスであるため、PLA繊維を他のタイプのバイオポリマー繊維に置き換えることは困難な作業である。更に、合成バイオポリマーの価格は比較的高いままである。
【0006】
コーヒーカプセルの蓋のための別のアプローチは、ヒートシール層として機能する不織布層の代わりに、パーチメント層上で押出コーティング又はワニスコーティングを使用することである。しかしながら、この解決策は、不織布層がフィルタとしても機能するため、満足のいくものではないであろう。押出層は、連続フィルムを形成する。コーヒーカプセルの蓋で使用する場合、このフィルムは、何らかの気泡効果を生じさせるであろうが、これは、浸出ステップ中には望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、完全に堆肥化可能であり、好ましくは家庭で堆肥化可能である液体のためのヒートシール可能なフィルタ材料に対する需要がある。ヒートシール性は、持続可能性の問題を引き起こす追加の接着剤層を使用せずに得る必要がある。そのようなフィルタ材料は、十分に確立された、又は更に改善された浸出特性を有するべきである。更に、フィルタ材料は、単純な方法で低コストで利用可能であるべきである。更に、堆肥化可能なフィルタ材料を含む堆肥化可能なパッケージング要素に対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体のためのフィルタ材料として熱可塑性物質含浸セルロース不織布を提供することによって、従来技術の問題を解決する。セルロース不織布に熱可塑性結合剤を含浸させることによって、本発明は、ヒートシール可能なフィルタ材料を達成するための驚くほど簡単な解決策を提供する。かかる熱可塑性物質含浸セルロース不織布は、接着剤を追加使用することなく、支持層に積層することができる。
【0009】
セルロース繊維は、生分解性パッケージング材料として知られている。その結果として、本発明の熱可塑性物質含浸セルロース不織布のプレーン組成物により、堆肥化可能性は、熱可塑性結合剤にのみ依存することになる。選択される結合剤に応じて、本発明のフィルタ材料は、家庭で堆肥化可能であってもよい。したがって、フィルタ材料は、廃棄後に強化された生分解性及び分解速度を示す。
【0010】
驚くべきことに、特定の空気透過性は、当該技術分野で知られている飲料フィルタ材料と比較して、本発明のフィルタ材料に改善された浸出特性を付与することが見出された。詳細には、フィルタ材料は、196Paで50~1000L/m2・sのTextest空気透過性を有する。
【0011】
更に、本発明はまた、堆肥化可能なフィルタ材料を含む堆肥化可能なパッケージング要素を提供する。その主な用途は飲料用途にある。これには、1回分のコーヒーカプセル又はティーバッグ若しくはコーヒーポッド用のフィルタなどのヒートシール可能な飲料フィルタ用の蓋ソリューションが含まれる。
【0012】
本発明は、以下の実施形態を包含する。
実施形態1.液体のための堆肥化可能なフィルタ材料であって、
フィルタ材料がヒートシール可能な熱可塑性物質含浸セルロース不織布であり、フィルタ材料が、ISO9237に従って測定された、196Paで50~1000L/m2・sのTextest空気透過性を有する、堆肥化可能なフィルタ材料。
【0013】
実施形態2.
フィルタ材料は、最小孔径を有する最小孔及び最大孔径を有する最大孔を含む孔径分布を有し、フィルタ材料の平均孔径は、10~60μmである、実施形態1の堆肥化可能なフィルタ材料。
【0014】
実施形態3.最大孔は、少なくとも50μm、好ましくは50~120μmの最大孔径を有する、実施形態2に記載の堆肥化可能なフィルタ材料。
【0015】
実施形態4.最小孔が、1~30μmの最小孔径を有する、実施形態3に記載の堆肥化可能なフィルタ材料。
【0016】
実施形態5.
熱可塑性物質含浸セルロース不織布は、セルロース不織布材料及び少なくとも1つの熱可塑性結合剤を含み、セルロース不織布材料は、セルロース系繊維を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の堆肥化可能なフィルタ材料。
【0017】
実施形態6.
熱可塑性結合剤の量は、熱可塑性物質含浸セルロース不織布の総重量に基づいて、10~75重量%であり、かつ/又は
熱可塑性結合剤が、堆肥化可能な結合剤であり、好ましくは、熱可塑性結合剤が、家庭で堆肥化可能な結合剤である、実施形態5に記載の堆肥化可能なフィルタ材料。
【0018】
実施形態7.
セルロース不織布材料中のセルロース系繊維の量が、セルロース不織布材料の総重量に基づいて、90重量%以上であり、かつ/又は
セルロース系繊維が、天然セルロース繊維若しくは人工セルロース繊維、又は両方の混合物であり、セルロース系繊維が、好ましくは、天然セルロース繊維対人工セルロース繊維の比率が7:3~9:0.5である混合物であり、かつ/又は
熱可塑性結合剤が、ポリウレタン、ポリブチレンサクシネート、及びポリ乳酸からなる群から選択される1つ以上であり、好ましくは、熱可塑性結合剤がポリウレタンである、実施形態6に記載の堆肥化可能なフィルタ材料。
【0019】
実施形態8.
熱可塑性物質含浸セルロース不織布は、少なくとも15g/m2、好ましくは20~90g/m2の坪量を有し、かつ/又は
熱可塑性物質含浸セルロース不織布は、少なくとも60μm、好ましくは80~150μmの厚さを有し、かつ/又は
熱可塑性物質含浸セルロース不織布は、10~50μmの平均流動孔直径を有する、実施形態1~7のいずれか1つに記載の堆肥化可能なフィルタ材料。
【0020】
実施形態9.実施形態1~8のいずれか1つに記載の堆肥化可能なフィルタ材料を含む、堆肥化可能なパッケージング要素。
【0021】
実施形態10.堆肥化可能なパッケージング要素が、コーヒーカプセル、コーヒーカプセルの蓋、又はティーバッグである、実施形態9に記載の堆肥化可能なパッケージング要素。
【0022】
実施形態11.堆肥化可能なパッケージング要素が、コーヒーカプセルの蓋であり、蓋が、セルロース支持層を更に含む、実施形態10に記載の堆肥化可能なパッケージング要素。
【0023】
実施形態12.実施形態1~11のいずれか1つに記載の堆肥化可能なフィルタ材料を製造するための方法であって、
i)セルロース不織布を提供することと、
ii)セルロース不織布に熱可塑性結合剤を含浸させることと、を含む、方法。
【0024】
実施形態13.コーヒーを製造するための方法における、実施形態1~11のいずれか1つに記載の堆肥化可能なフィルタの使用。
【0025】
本説明が「好ましい」実施形態/特徴を指す場合、これらの「好ましい」実施形態/特徴の組み合わせも、「好ましい」実施形態/特徴のこの組み合わせが技術的に有意義である限り、開示されたものとみなされる。
【0026】
以下、「含む(comprising)」という用語の使用は、より限定的な実施形態として、「からなる(consisting of)」という用語も、これが技術的に有意義である限り、開示するものとして理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】堆肥化不可能な接着剤によって植物パーチメント支持層に接着されたPLAスパンボンドの多層蓋を有する、本発明の範囲外の「Nespresso」タイプの飲料カプセルである。
【
図1B】液体のための堆肥化可能なフィルタ材料としてヒートシール可能な熱可塑性物質含浸セルロース不織布を有する、本発明による「Nespresso」タイプの飲料カプセルである。
【
図2】液体のための堆肥化可能なフィルタ材料としてヒートシール可能な熱可塑性物質含浸セルロース不織布を有する、本発明による「Kカップ」タイプの飲料カプセルである。
【
図3】不織布に熱可塑性結合剤を含浸させる概略図である。
【
図4A】結合剤がまだ濡れている間に、セルロース不織布に熱可塑性結合剤を含浸させ、それを支持層に組み立てる概略図である。
【
図4B】乾燥後に組み立てられ、少量の結合剤を備えた支持層に積層される、熱可塑性結合剤をセルロース不織布に含浸させる概略図である。
【
図4C】セルロース不織布に含浸させるために十分な量の熱可塑性結合剤が堆積される支持層にセルロース不織布を直接積層することによって、セルロース不織布に熱可塑性結合剤を浸させる概略図である。
【
図5】実施例で使用されるコーヒー試料の粒径分布である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、液体のための堆肥化可能なフィルタ材料に関し、フィルタ材料は、ヒートシール可能な熱可塑性物質含浸セルロース不織布であり、196Paで50~1000L/m2・sのTextest空気透過性を有する。
【0029】
本発明の文脈では、以下の定義及び分析方法が適用される。
上述したように、本発明の第1の態様は、堆肥化可能であるフィルタ材料に関する。「堆肥化可能」という表現は、概して、EN13432に沿って定義される。「堆肥化可能なフィルタ材料」という用語は、最大10重量%、好ましくは5重量%の堆肥化不可能な成分を含むフィルタ材料を指し、それによってEN13432を満たす。材料又は製品に適用される場合、「堆肥化可能」という表現は、材料又は製品全体が生分解及び崩壊することを意味する。「生分解する」とは、化学構造又は材料が微生物の作用下で分解することを意味する。「崩壊する」という用語は、材料又はそれから作られた製品が、典型的な堆肥化サイクルの終わりに、細かい視覚的に区別できない断片に物理的に崩壊することを意味する。
【0030】
「工業用堆肥化可能な」材料は、産業環境で上記のように堆肥化可能であり得る。材料は、6ヶ月未満で55℃~60℃の温度で崩壊し、生分解してもよい。詳細には、産業環境での崩壊には3ヶ月未満かかる場合があり、生分解には6ヶ月未満かかる場合がある。材料が「家庭で堆肥化可能な」と記載されている場合、家庭用コンポスター環境に存在する条件下で、上記のように堆肥化可能である。材料は、55℃未満、好ましくは10~45℃、最も好ましくは25~30℃の温度で、12ヶ月未満で崩壊し、生分解し得る。詳細には、崩壊は6ヶ月未満かかる場合があり、一方、生分解は家庭用コンポスター環境では12ヶ月未満かかる場合がある。
【0031】
本発明は、少なくとも1つの堆肥化可能な熱可塑性結合剤を含むため、上述のように堆肥化可能である。「堆肥化可能な熱可塑性物質」とみなされるためには、熱可塑性物質の鎖は、微生物の作用下で分解されなければならず、その結果、全鉱化が、野菜廃棄物の通常の堆肥化プロセスと互換性のある高い速度で達成される。「鉱化」という用語は、好気性条件下でのCO2、水、無機化合物、及びバイオマスへの材料の変換を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「熱可塑性結合剤」は、ある高温で成形可能になり、冷却時に固化するプラスチックポリマーを指す。任意の熱可塑性堆肥化可能な結合剤は、本発明のヒートシール可能なフィルタ材料を提供するのに好適である。好ましくは、熱可塑性結合剤は、家庭で堆肥化可能な結合剤である。好ましくは、熱可塑性結合剤は、200~95℃、好ましくは200~100℃、より好ましくは190~105℃、最も好ましくは180~110℃の融解温度を有し得る。本発明による例示的な結合剤エマルションは、ポリウレタン(PU)、ポリブチレンサクシネート(PBS)及びPLAを含む。好ましい熱可塑性結合剤は、ポリウレタンであってよい。この結合剤は、家庭で堆肥化可能であってもよく、したがって、廃棄後に強化された生分解性及び分解速度を有するヒートシール可能なフィルタ材料を提供する。家庭で堆肥化可能なPU結合剤の例としては、修飾PU、すなわち、SciTechのST6515などのPUへの共重合を介して1つ以上の更なるモノマーを挿入することによって修飾されたPUが挙げられる。
【0033】
本発明の重要な態様は、液体のための堆肥化可能なフィルタ材料である。本明細書で使用される場合、「フィルタ材料」という用語は、濾過に好適な固体材料を指す。したがって、本発明のフィルタ材料は、液体中で使用される場合、不活性である。言い換えれば、熱可塑性結合剤が一度乾燥すると、それは液体中に可溶性でも架橋することもない。
【0034】
本発明の文脈における「濾過」は、フィルタ材料を使用することによる物理的分離の進行を説明する。本明細書で言及される「液体のためのフィルタ材料」は、濾液と呼ばれる液体及び特定のサイズ未満の微粒子が通過することができる複雑な構造を有する。特定のサイズを超える粒子は、フィルタ材料を通過し、フィルタ材料の上にフィルタケーキを形成することはできない。
【0035】
本発明で使用されるフィルタ材料は、セルロース系繊維を含み、上記で定義されるように完全に家庭で堆肥化可能である、セルロース不織布材料を含み得る。「不織布」という用語は、特に明記しない限り、本発明の目的のために「紙」という用語と交換可能に使用することができる。「セルロース不織布」という用語は、セルロースから誘導又は調製された個々の繊維の構造を有する織物様シートを指す。これらは絡み合い、互いに交錯しているが、織物又はニット生地のように識別可能な方法ではない。不織布は、例えば、スピンレイイング、カーディング、空気レイイング(ドライレイイングとしても知られる)及びウォーターレイイングプロセスなどの多くのプロセスから形成され得る。これらは、それぞれ、スピンレイド、カード化、空気レイド(ドライレイドとしても知られる)、及び湿式不織布をもたらす。
【0036】
本発明で使用されるセルロース不織布は、好ましくは、製紙機上で作製された湿式不織布であり得る。湿式不織布は、水に繊維を懸濁させ、水が引き抜かれる前に成形ワイヤ上に繊維を連続的に堆積させるために分散液をポンピングすることによって製造することができる。セルロース不織布は、単層構造又は2層又は多層構造を有することができる。少なくとも2層構造を有するセルロース不織布は、複数の区画を有するヘッドボックスを備えた製紙機を使用して得ることができる。異なる層は、製紙機の連続的に移動する成形ワイヤ上に同時に形成される。少なくとも2つの層を有するセルロース不織布を、層間に結合剤を使用することなく得てもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「繊維」という用語は、長さ対直径の非常に高い比率を特徴とする材料形態を指す。一般に、セルロース繊維(天然及び人工)は、繊維の種類及び繊維の供給源に依存する様々な直径及び長さを有する。本発明のフィルタ材料で好ましくは使用される繊維の平均長は、0.1mm~12mm、好ましくは1mm~10mmの範囲であり得る。繊維の直径は、10μm~50μm、好ましくは10μm~40μmの範囲であり得る。したがって、繊維のアスペクト比(繊維長対繊維直径の比)は、2~1,200、好ましくは25~1,000の範囲であり得る。「繊維」及び「フィラメント」という用語は、特に明記しない限り、本発明の目的のために交換可能に使用することができる。
【0038】
本発明のセルロース不織布は、実質的にセルロースからなる。それは、パルプを含む天然セルロース繊維、又は人工セルロース繊維、又は両方の混合物を含み得る。人工セルロース繊維は、再生セルロース繊維としても知られている。再生セルロースには、2つの主なクラスがある。リヨセル及びビスコース、別名レーヨンである。セルロース不織布は、好ましくは、天然セルロース繊維及び人工セルロース繊維を含み得る。本発明のセルロース不織布中の天然セルロース対人工セルロース繊維の比は、7:3~9:0.5、好ましくは8:2.5~9:1であり得る。全体のセルロース系繊維含有量は、不織布の総重量に基づいて、90重量%超、好ましくは95重量%超、より好ましくは97重量%超であり得る。セルロース不織布は、不織布の総重量に基づいて、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満の添加剤を更に含み得る。そのような添加剤は、結合剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)及びPAE(ポリアミド-エピクロロヒドリン)Kymeneを含み得る。CMCは、紙の品質を向上させる結合剤として機能し得る。PAE Kymeneは、湿潤強度剤として機能し得る。しかし、後者は生分解性ではないため、その量を低く保つことが好ましい。
【0039】
詳細には、セルロース不織布は、不織布の総重量に基づいて、年間植物由来の0%~55%、好ましくは15%~55%、より好ましくは25%~54%の天然セルロースパルプを含み得る。本発明の所望の特性を提供するのに好適な、任意の年間植物由来の天然セルロースパルプを使用することができる。年間植物の例はアバカである。アバカ繊維は比較的長くなる傾向がある。それらは、セルロース不織布に機械的強度を提供するために導入され得る。これは、特に紙の製造プロセスで重要である。
【0040】
セルロース不織布はまた、精製されたセルロース材料を含んでもよい。精製は、フィブリル化を引き起こし、ある程度はセルロース繊維の破損を引き起こす機械的処理である。精製のレベルの指標は、Schopper-Riegler度(°SR)である。Schopper-Riegler度は、繊維の懸濁液の自由度を指定する。より大きな°SRは、より遅い排水に等しい。本明細書で使用される°SR値は、ISO5267-1:1999に適合した方法に従って測定した。
【0041】
セルロース不織布は、それぞれ、不織布の総重量に基づいて、0重量%~40重量%、好ましくは15重量%~38重量%、より好ましくは30重量%~36重量%の軟木繊維、及び0重量%~55重量%、好ましくは25重量%~54重量%、より好ましくは45重量%~52重量%の硬木繊維を含み得る。軟木繊維は、アバカ繊維と比較して長さが小さいが、硬木繊維よりも長い。軟木及び硬木繊維は、製紙で最も一般的に使用される繊維である。軟木及び硬木繊維は、30~60°SRの精製レベルを有するように精製されてもよい。
【0042】
更に、セルロース不織布は、不織布の総重量に基づいて、0重量%~10重量%、好ましくは2重量%~9重量%、より好ましくは5重量%~8重量%のフロックを含み得る。フロックは、非常に精製されたセルロースパルプであり、通常は非常に高い精製に供される軟木又は硬木パルプである軟木及び硬木のフロックは、75~85°SRの精製のレベルを有し得る。フロックは、不織布においてより密な孔構造を得るために使用され得る。
【0043】
加えて、セルロース不織布は、不織布の総重量に基づいて、それぞれ独立して、0重量%~30重量%、好ましくは5重量%~25重量%のリヨセル及びレーヨンを含み得る。これらの繊維は、天然セルロース繊維と比較してより大きな直径を有する傾向があり、また、より長い傾向がある。それらはまた、滑らかであり、多くのフィブリルを有さない傾向がある。人工セルロース繊維は、セルロース不織布の構造を開くのに有用である。
【0044】
最後に、セルロース不織布は、それぞれ独立して、又は組み合わせて、0重量%~1.5重量%、好ましくは0.5重量%~1.3重量%、より好ましくは0.9重量%~1.2重量%のPAE Kymeneなどの湿潤強度剤、及び0重量%~3重量%、好ましくは1重量%~2.8重量%、より好ましくは2重量%~2.7重量%のCMCなどの結合剤を含み得、それぞれが不織布の総重量に基づいている。
【0045】
一実施形態では、本発明のセルロース不織布は、不織布の総重量に基づいて、0重量%~55重量%の年間植物由来の天然セルロースパルプ、好ましくは、アバカ、0重量%~40重量%の軟木、0重量%~55重量%の硬木、0重量%~10重量%のフロック、0重量%~20重量%のリヨセル、0重量%~20重量%のレーヨン、0重量%~1.5重量%のPAE Kymene、及び0重量%~3重量%のCMCを含み得る。
【0046】
好ましい実施形態では、セルロース不織布は、不織布の総重量に基づいて、15重量%~55重量%の年間植物由来の天然セルロースパルプ、好ましくは、アバカ、15重量%~38重量%の軟木、25重量%~54重量%の堅木、2重量%~9重量%のフロック、5重量%~16重量%のリヨセル、5重量%~16重量%のレーヨン、0.5重量%~1.3重量%のPAE Kymene及び1重量%~2.8重量%のCMCを含み得る。
【0047】
より好ましい実施形態では、セルロース不織布は、不織布の総重量に基づいて、25重量%~54重量%の年間植物由来の天然セルロースパルプ、好ましくは、アバカ、30重量%~36重量%の軟木、45重量%~52重量%の硬木、5重量%~8重量%のフロック、8重量%~14重量%のリヨセル、8重量%~14重量%のレーヨン、0.9重量%~1.2重量%のPAE Kymene及び2重量%~2.7重量%のCMCを含み得る。
【0048】
特定の好ましい実施形態では、本発明のセルロース不織布は、不織布の総重量に基づいて、52重量%のアバカ、34.7重量%の軟木、9.6重量%のレーヨン、2.6重量%のCMC、及び1.1重量%のPAE Kymeneからなり得る。別の特定の好ましい実施形態では、本発明のセルロース不織布は、不織布の総重量に基づいて、28.6重量%のアバカ、50.9重量%の硬木、7.6重量%のフロック、12重量%のリヨセル、及び1重量%のPAE Kymeneからなり得る。
【0049】
本発明のセルロース不織布は、飲料要素に望ましい特性を提供するのに好適な任意の坪量及び厚さを有し得る。本明細書で使用される場合、「坪量」という用語は、紙製品の面積密度を指す。不織布の坪量は、通常、単位面積当たりの重量、例えば、平方メートル当たりのグラム(gsm=g/m2)又は平方フィート当たりのオンス(osf)で表される。「坪量」及び「グラム量」という用語は、特に明記しない限り、本発明の目的のために交換可能に使用することができる。本明細書で使用される場合、坪量は、規格ISO536に従って測定された。含浸ステップの前に、セルロース不織布は、少なくとも12g/m2、好ましくは16~60g/m2、より好ましくは18~45g/m2、最も好ましくは20~38g/m2の坪量を有し得る。熱可塑性物質含浸セルロース不織布は、少なくとも15g/m2、好ましくは20~90g/m2、より好ましくは22~70g/m2、最も好ましくは25~40g/m2の坪量を有し得る。更に、含浸セルロース不織布は、規格ISO534に従って測定された場合、少なくとも60μm、好ましくは80~150μm、より好ましくは85~140μmの厚さを有し得る。
【0050】
本発明の重要な態様は、熱可塑性物質含浸セルロース不織布がヒートシール可能であることに関する。本明細書で使用される場合、「ヒートシール可能」という表現は、材料が熱接合されることを可能にするホットメルト特性を指す。本発明のフィルタ材料のヒートシール性は、以下でより詳細に記載されるように、セルロース不織布に熱可塑性結合剤エマルションを含浸させることから生じ得る。含浸後のフィルタ材料中の結合剤の量は、熱可塑性物質含浸セルロース不織布の総重量に基づいて、10~75重量%、好ましくは33~66重量%であり得る。フィルタ材料が上記で指定された範囲内の量で結合剤を含む場合、フィルタ材料のヒートシール性、浸出特性、及び耐性が優れていることが見出されている。10重量%未満の量で熱可塑性結合剤を使用すると、不織布の含浸が不十分であり得る。一方、50重量%を超える結合剤が使用される場合、濾過能力が劣ってもよい。
【0051】
上述のように、本発明の1つの主な態様は、196Paで50~1000L/m2・sのTextest空気透過性を有するフィルタ材料に関する。本明細書で言及される「空気透過性」という表現は、材料の2つの表面間の所定の空気圧差の下で既知の領域を垂直に通過する気流の速度である。「空気透過性」の概念は、生地の固有の特性を解釈するために繊維産業で広く使用されている。空気透過性は、個々の孔構造を含む生地の材料及び構造特性によって影響を受ける。コーヒー抽出の流体力学は、コーヒーベッド及びフィルタ材料の透過性に影響を受ける。言い換えれば、一方のフィルタの材料及び孔径と、他方のコーヒー粉砕の程度との間の相互作用は、コーヒー抽出流体力学に関して重要であり得る。しかし、高圧下でコーヒーカプセル内で抽出するために使用される粉砕されたコーヒーは、通常、大量の微粒子(100μm未満)を含む規格化された程度の粉砕を有する。したがって、コーヒーカプセルの場合、流体力学は、フィルタの材料及び孔径の影響を主に受ける。しかしながら、これらの2つのパラメータは、フィルタ材料の空気透過性に影響を与える。
【0052】
いくつかの既存の規格は、異なる試験条件で空気透過性評価に使用することができる。本発明のフィルタ材料の空気透過性は、規格ISO9237に従って、196PaのTextest空気透過性によって測定された。この規格は、不織布などのかなり開放的な構造に好適である。発明者らは、驚くべきことに、熱可塑性物質含浸セルロース不織布が、196Paで50~1000L/m2・s、好ましくは196Paで100~700L/m2・s、より好ましくは196Paで200~500L/m2・s、最も好ましくは196Paで220~500L/m2・sのTextest空気透過性を有するとき、フィルタ材料が改善された浸出特性を有することを見出した。
【0053】
驚くべきことに、これはコーヒーカプセル及びティーバッグにも同様に当てはまるが、これら2つの飲料要素には全く異なる要求がある。理論に拘束されることを望まないが、これは、2つの要素における完全に反対の圧力-時間相関に起因する可能性がある。言い換えれば、コーヒーカプセル中の濾過は、比較的短い期間内に高圧下で行われる一方、茶の調製は、はるかに長い期間にわたる無圧拡散プロセスを伴う。
【0054】
飲料用途における液体のフィルタ材料として、196Paで50L/m2.s未満のTextest空気透過性を有する熱可塑性物質含浸セルロース不織布を使用する場合、浸出特性が劣化する。以下に記載されるように、コーヒーカプセルの蓋を調製するためにそのような材料を使用すると、滴下、すなわち不規則な流れが、抽出時に生じ得る。更に、カプセル内部で非常に高い圧力が発生し、カプセルが破裂することさえあり得る。以下でより詳細に説明するように、コーヒーポッド用のティーバッグ又はフィルタを調製するために当該材料を使用すると、非常に低い流量、したがって非常に長い抽出時間がもたらされる。
【0055】
飲料用途における液体のためのフィルタ材料として、196Paで1000L/m2.sを超えるTextest空気透過性を有する熱可塑性物質含浸セルロース不織布を使用する場合、浸出特性も乱され得る。コーヒーカプセルの蓋などの材料を使用する場合、抽出時に非常に高い圧力又は滴下が観察される場合がある。更に、得られた体積は非常に低い場合がある。
【0056】
空気透過性を測定するもう1つの可能性は、ISO5636-3規格に準拠した測定である。これは、一般的には「Bendtsen多孔性」と呼ばれる。この規格によれば、10cm2の試料は、1.47kPaの圧力差にさらされて、空気透過性を測定する。この規格は、30~1327mL/分の空気透過性に有効であり、概して、かなり密な孔構造を有する材料に使用される。Textest空気透過性と以下のBendtsen多孔性との比較を容易にするため、表1は、3つの紙試料について得られた値の差異を示す。
【0057】
【0058】
いずれの理論にも拘束されることを望まないが、表1は、ISO9237及びISO5636-3規格による方法によって得られた値間のほぼ線形の依存性を示す。しかしながら、表1に示される結果は、上記で指定されるようなTextest空気透過性を有する本発明のフィルタ材料が、ISO5636-3で指定される1327mL/minの上限範囲をはるかに上回るBendtsen多孔性を有することを予見する。実際、本発明のフィルタ材料について、1.47kPaで5000mL/分を超えるBendtsen多孔性を測定した。ISO5636-3規格の方法に従う場合、分析は5000mL/分に制限されるため、この方法によって正確な値を決定することはできない。それにもかかわらず、この測定は、本発明のフィルタ材料が、ISO5636-3規格によるタイトな細孔構造の要件を満たさないことを確認する。
【0059】
上述のように、空気透過性は、材料の組成だけでなく、その構造特性、すなわち個々の孔構造の影響も受け得る。セルロース不織布中の孔径は、Porometer(Porolux1000)を使用して、ポロメータによって決定され、ミクロン(μm)で報告される。本発明のフィルタ材料は、最小孔径を有する最小孔及び最大孔径を有する最大孔を含む孔径分布を有する。フィルタ材料の平均孔径は、ポロメータによって決定されるフィルタ材料中の孔径の平均から計算され、10~60μm、好ましくは14~50μm、より好ましくは18~45μm、最も好ましくは20~40μmであり得る。フィルタ材料の最大孔は、少なくとも50μm、好ましくは50~120μm、より好ましくは55~100μm、最も好ましくは60~90μmの最大孔径を有し得る。フィルタ材料の最小孔は、1~30μm、好ましくは2~20μm、より好ましくは4~15μm、最も好ましくは5~10μmの最小孔径を有し得る。
【0060】
これらの範囲内で、フィルタ材料の浸出特性が改善され得る。これは、上記で想定した理由により、高圧下で使用されるコーヒーカプセルなどの飲料要素と、高圧下で使用されるティーバッグなどの飲料要素にも同様に当てはまる。
【0061】
既に説明したように、コーヒー抽出の流体力学も、フィルタ材料の孔径に依存する。本発明のフィルタ材料の改善された性能は、透過性に関して上記に記載される理由により、本明細書に指定される範囲を下回る又は上回る孔径では達成され得ない。上記の範囲をはるかに上回る孔径を使用した場合、不織布はもはやフィルタ材料として好適ではない。これは、粒子がもはや液体から分離されず、不織布も通過するからである。他方、上記の範囲を下回る孔径を使用した場合、不織布はもはやフィルタ材料として好適ではないであろう。
【0062】
一実施形態では、本発明のフィルタ材料は、1~30μmの最小孔径を有する最小孔、少なくとも50μmの最大孔径を有する最大孔、及び10~60μmの平均孔径を有し得る。
【0063】
好ましい実施形態では、本発明のフィルタ材料は、2~20μmの最小孔径を有する最小孔、50~120μmの最大孔径を有する最大孔、及び14~50μmの平均孔径を有し得る。
【0064】
より好ましい実施形態では、本発明のフィルタ材料は、4~15μmの最小孔径を有する最小孔、55~100μmの最大孔径を有する最大孔、及び18~45μmの平均孔径を有し得る。
【0065】
最も好ましい実施形態では、本発明のフィルタ材料は、5~10μmの最小孔径を有する最小孔、60~90μmの最大孔径を有する最大孔、及び20~40μmの平均孔径を有し得る。
【0066】
更に、Porometer(Porolux1000)でポロメータによって孔径を測定するとき、平均流動孔直径を決定してもよい。平均流動孔直径は、流れの50%がより大きな孔を通過する直径である。本発明のフィルタ材料の平均流動孔直径は、10~50μm、好ましくは15~40μm、より好ましくは20~35μmであり得る。
【0067】
上記で指定された範囲内の平均流動孔直径を有するフィルタ材料を含む飲料要素を使用する場合、上記で既に考察された理由でこれらの2つの飲料要素に置かれる完全に異なる要求にかかわらず、フィルタ材料が飲料要素、例えば、コーヒーカプセル又はティーバッグに使用されるとき、浸出特性が特に改善されることが見出された。本明細書で指定される本発明の範囲を上回る、又は下回る平均流動孔直径を有するフィルタ材料を飲料要素に使用する場合、透過性に関して上述した理由により、性能が劣化し得る。
【0068】
別の実施形態では、本発明は、上記で詳細に説明されたフィルタ材料を含む、堆肥化可能なパッケージング要素に関する。パッケージング要素は、飲料パッケージング要素であり得る。飲料パッケージング要素は、ティーバッグ、コーヒーフィルタ、飲料ポッド用のフィルタ、又は飲料カプセル、例えば、コーヒーカプセルを密封することを意図した蓋であり得る。市場で一般的なコーヒーカプセルのいくつかは、
図1A及び
図1Bに例示される「Nespresso」タイプ、並びに
図2に例示される「Kカップ」タイプである。しかしながら、上記で詳細に説明されるようにフィルタ材料を含む本発明のパッケージング要素は、本明細書で明示的に言及されない更なるタイプのコーヒーカプセルを含み得る。
【0069】
好ましい実施形態では、飲料要素は、コーヒーカプセルの蓋である。飲料カプセルを密封するのに好適な蓋を形成するために、飲料パッケージング要素は、本発明の堆肥化可能なフィルタ材料と組み立てられたセルロース支持層を更に含み得る。コーヒーカプセルでは、コーヒー醸造時に高圧が発生する。この高圧は、蓋制御された孔が開くまで、カプセルの蓋を変形させる。支持層は、蓋が破裂するまで、蓋がカプセル内の圧力に耐えることを可能にする。支持層は、セルロース部分を含み得、当該セルロース部分は、植物パーチメント、グラシン紙又はトレーシング紙などのモノリシックセルロース構造であり得る。
【0070】
本明細書で使用される場合、「植物パーチメント」という用語は、ゼラチン化剤とセルロースとの間の反応時間がセルロースの溶解、加水分解及び分解を制御することに限定される条件下で、例えば、硫酸を含むゼラチン化剤でセルロース紙シートを処理することによって作製される紙を指す。次いで、処理された紙を徹底的に洗浄してゼラチン化剤を除去し、その後、乾燥させる。浴用化学物質は、紙シート内のセルロースを部分的に溶解又はゼラチン化する。次いで、溶解したセルロースは、浴用化学物質が処理された紙を洗浄することによって希釈されるときに沈殿する。このプロセスは、パーチメント化又はパーチメンテーションと呼ばれ、非常にタフで硬く、滑らかな紙を形成し、本物のパーチメントのような外観を有する。このように処理された紙は、乾燥すると脆くなり、しわになる傾向があるため、ときには可塑化剤、例えば、グリセリン、グルコース、又はソルビトールで処理される。加硫繊維は、例えば、塩化亜鉛を含むゼラチン化剤でセルロース紙シートを処理することによって作製される関連製品である。
【0071】
本明細書で使用される場合、「グラシン紙」という表現は、不織布、すなわち紙をスーパーカレンダー処理することによって得られる紙を指す。スーパーカレンダープロセス中に繰り返される保湿及びカレンダー処理は、非常に高密度で非多孔質の紙を製造する。本明細書で使用される場合、「トレーシング紙」は、非常に高密度で非多孔質のセルロース繊維でもある、非常に高いレベルの精製を受けた紙パルプの水性懸濁液から得られた紙である。
【0072】
支持層は、任意選択的に、酸素バリア層を含んでもよく、1.5mL/m2・日未満、好ましくは0.1~1.5mL/m2・日、より好ましくは0.5~1mL/m2・日の酸素透過率(OTR)を有してもよい。材料の「酸素透過率」という用語は、1.013バール(1気圧)の大気圧、23℃の温度、及び50%の相対湿度で、1日の間に材料の指定された面積(m2)を通って透過される酸素(mL)の量を指す。OTR(mL/m2・日)は、ASTMD3985及びASTMF1927に従って測定する。材料のOTRは、材料のガスバリア特性の尺度であり、ガスバリアレベルを示す。言い換えれば、材料のOTRが低いほど、材料を通って透過するガスの量が少なくなり、その結果、材料は、ガス、特に酸素に対して高い障壁を提供する。
【0073】
本発明は、本発明の液体のための堆肥化可能なフィルタ材料を調製する簡単で安価な方法に関する。既に上述したように、一般的に知られているPLA繊維を他のタイプのバイオポリマー繊維に置き換えることは、複雑な繊維紡績プロセスのために困難な課題である。更に、合成バイオポリマーの価格は比較的高いままである。
【0074】
本発明の方法によれば、上記で定義される堆肥化可能なフィルタ材料は、i)セルロース不織布を提供することと、ii)セルロース不織布に熱可塑性結合剤を浸させることと、を含む。
【0075】
セルロース不織布自体の含浸は、以下のプロセスに従って行うことができる。
まず、
図3に示されるように、上述の特性を有するセルロース不織布に、上述のように熱可塑性結合剤(任意選択で乾燥固形分の30%~60%)を含むエマルションを含浸させてもよい。熱可塑性結合剤を含むエマルションは、好ましくは、水性エマルション、より好ましくは水であってもよい。含浸ステップは、本発明のフィルタ材料を達成するのに好適な任意の方法を介して行われ得る。例えば、含浸は、熱可塑性結合剤を不織布に塗布し、任意選択的に、それをロールに通過させて、過剰な結合剤を除去することによって行ってもよい。含浸はまた、不織布を浴槽に挿入又は浸漬することによって、又は熱可塑性結合剤を不織布に噴霧することによって行ってもよい。含浸プロセスは、不連続又は連続であってもよく、すなわち、不織布全体が一度に前述のプロセスのうちの1つに供されてもよく、又は不織布の個々のセクションが次々に供されてもよい。
【0076】
含浸ステップの後、不織布は、以下のステップが実行される前に、以下のコーヒーカプセルの蓋について記載されるように、任意のステップで更に処理され得る。
【0077】
第2のステップでは、含浸させたセルロース不織布を乾燥させてもよい。乾燥プロセスは、室温又はより高い温度で行ってもよい。含浸させた不織布をより高い温度で乾燥させることは、時間の観点から、したがって製造効率において有益であり得る。可能な劣化を防ぐために、温度が上昇したときに乾燥時間がそれに応じて調整され、すなわち短縮されるように注意が払われなければならない。例えば、含浸させた不織布は、90℃で1分間乾燥され得る。乾燥プロセスは、更に、静的又は非静的条件下、空気中、アルゴン又は窒素などの不活性ガス中、又は減圧下で行ってもよい。
【0078】
更に、本発明は、上記で詳述したように、フィルタ材料を含む、パッケージング要素、好ましくは飲料パッケージング要素を調製する簡単で安価な方法に関する。
【0079】
本発明のフィルタ材料のヒートシール性のために、熱可塑性物質含浸セルロース不織布の一部は、別の物品及び/又はフィルタ材料の別の部分に熱接合され得る。例えば、シート状のフィルタ材料は、ティーバッグ又はコーヒーフィルタのようなパウチ状の構造を形成するために、そのエッジ領域で別のシート状のフィルタ材料にヒートシールされ得る。
【0080】
別のアプローチでは、本発明のコーヒーカプセルの蓋を提供するために、シート状のフィルタ材料が組み立てられ、上記のように支持層に積層され得る。以下では、本発明のコーヒーカプセルの蓋を提供する3つの例示的な方法について、より詳細に説明する。
【0081】
第1の方法(
図4A)では、セルロース不織布に、含浸させた不織布を調製するための上記第1のステップに従って、本発明の熱可塑性結合剤エマルションを含浸させ得る。しかし、更なるステップでは、含浸させた不織布は、結合剤がまだ濡れている間に、上記で詳細に説明されている支持層に組み立てられ得る。積層体を形成した後、乾燥を実施する。
【0082】
第2の方法(
図4B)では、セルロース不織布に、第1のステップで本発明の結合剤を含浸させ、上記の第2のステップで乾燥され得る。その後、乾燥された含浸させた不織布を組み立て、上記のように支持層に積層してもよく、支持層には少量の熱可塑性結合剤エマルションが提供される。第1のステップで不織布に含浸させるために使用されるのと全く同じ結合剤エマルションが使用され得るため、追加の接着剤の使用は必要ない。
【0083】
第3の方法(
図4C)では、上記で詳細に説明されるように、十分な量の熱可塑性結合剤が、第1のステップで本発明の支持層に堆積される。その後、セルロース不織布を支持層に直接積層し、一方で不織布に含浸させる。
【0084】
処理されていない熱可塑性物質含浸フィルタ材料、パウチ状構造、及び積層飲料カプセル蓋構造は、飲料要素の他の構成要素、例えば、コーヒーカプセルにヒートシールされ得る(
図1B及び
図2を参照)。
【0085】
更に、本発明は、コーヒーを製造するための方法における、請求項1~11のいずれか一項に記載の堆肥化可能なフィルタ材料の使用に関する。堆肥化可能なフィルタ材料は、任意の動作圧力でそのように使用され得る。これは、意図しない故障なしに、大気圧並びに高圧、例えば、5バールから18バールの間で使用され得ることを意味する。
【実施例】
【0086】
本発明のフィルタ材料によって企図される飲料要素における様々な最終用途のうち、コーヒーカプセル用途は、最も制限を有するものである(以下の試験プロトコルを参照)。したがって、以下の試料は、「Nespresso」タイプのコーヒーカプセル上で異なる特性を有する蓋を使用して本発明の効果を説明するように設計されている。本明細書で調査した蓋試料の特性を、以下の表2にまとめる。
【0087】
以下の試料を以下のように調製した。第一に、不織布材料(ベース)に、熱可塑性結合剤の乾燥固形分の約40%を含む水性エマルションを含浸させた。次いで、浸透した材料を90℃で1分間乾燥させる。その後、乾燥した含浸させた不織布を、界面に少量の結合剤を有する支持層に組み立てた(
図4Bを参照)。それに応じて、エマルション結合剤の総量を調整して、表2に指定されているように、異なる結合剤量を有する不織布を達成した。フィルタ材料及び植物パーチメント(支持層)を積み重ねたら、90℃で1分間乾燥させる。次いで、試料を、120℃で5秒間加熱したプレートを使用することによって、200kNでプレスする。
【0088】
支持層として、2つの異なるタイプの植物パーチメント、PureBarrier又はSulflex(両方ともAhlstrom-Munksjoe Oyj由来)を以下の試料で使用した。PureBarrierは、Sulflexと比較して酸素バリア特性が改善している。
【0089】
本明細書で使用される好ましい結合剤は、SciTechが提供する市販のポリウレタン系エマルションST6515である。比較試料では、アクリルラテックス混合物(Carbobond及びHycar由来)が使用されているが、この結合剤は家庭で堆肥化可能ではない。PLA及びPBSベースのエマルション(それぞれ、Chukyo-Yushi及びOVOL Japan Pulp&Paper GmbH由来)も使用されたが、上記の定義によれば、これらの試料の家庭での堆肥化可能性は完全ではない。
【0090】
本発明のフィルタ材料を調製するための基材として、3等級のセルロース湿式不織布を使用した。試料1~3及び6~8において、同じ不織布基材が使用されている。試料4、5、及び9は、それぞれ独立して、異なる原紙を有する。異なる不織布のレシピ及び特性を以下の表3.1~3.3に示す。更に、含浸ステップ後の不織布の更なる特性は、これらの表で選択された試料についてまとめられる。
【0091】
比較試料1
PLAスパンボンド型不織布ベース(20g/m2)に、3~4g/m2(アクリル混合物)の量の熱可塑性結合剤を含浸させ、支持層(PureBarrier、70g/m2)に積層した。得られた積層体は、結合剤を除き、EN13432に指定されているように、産業環境で堆肥化可能である。
【0092】
比較試料2
55g/m2のグラムを有するPLAスパンボンド不織布ベースを使用したことを除いて、比較試料1について説明したように、積層体を調製した。
【0093】
比較試料3
70g/m2のグラム量を有するPET/PE二成分ニードルパンチ不織布ベース(Ahlstrom-Munksjoe Oyj由来)及びアクリル結合剤混合物結合剤を使用したことを除いて、比較試料1について説明したように、積層体を調製した。得られた積層体は、堆肥化不可能である。
【0094】
試料1
CMC(37g/m2)を含むセルロース湿式不織布ベースに、4g/m2の量の熱可塑性結合剤(SciTech)を浸させ、支持層(PureBarrier、70g/m2)に積層し、標準プレスした。得られた積層体は、家庭用コンポスターで完全に堆肥化可能である。
【0095】
試料2
6g/m2の量の熱可塑性結合剤(SciTech)を使用したことを除いて、試料1について説明したように、積層体を調製した。得られた積層体は、家庭用コンポスターで完全に堆肥化可能である。
【0096】
試料3
12g/m2の量の別の熱可塑性結合剤(SciTech)を使用したことを除いて、試料1について説明したように、積層体を調製した。得られた積層体は、家庭用コンポスターで完全に堆肥化可能である。
【0097】
試料4
25g/m2のグラムを有するCMCを含まない異なるセルロース湿式不織布ベースのみを使用したことを除いて、試料2について説明したように、積層体を調製した。得られた積層体は、家庭用コンポスターで完全に堆肥化可能である。
【0098】
試料5
31g/m2のグラムを有するCMCを含まない異なるセルロース系湿式不織布ベースのみを使用したことを除いて、試料2について説明したように、積層体を調製した。得られた積層体は、家庭用コンポスターで完全に堆肥化可能である。
【0099】
試料6
6g/m2の量の家庭で堆肥化可能ではない熱可塑性結合剤(PBS)を使用したことを除いて、試料1について説明したように、積層体を調製した。得られた積層体は、EN13432に指定されているように、産業環境で堆肥化可能である。
【0100】
試料7
6g/m2の量の堆肥化可能な熱可塑性結合剤(PLA、Chukyo-Yushi由来)を使用したことを除き、試料1について説明したように積層体を調製した。得られた積層体は、EN13432に指定されているように、産業環境で堆肥化可能である。
【0101】
試料8
CMC(Sulflex;70g/m2)を含む異なる支持層を使用したことを除いて、試料2について記載したように積層体を調製した。得られた積層体は、家庭用コンポスターで完全に堆肥化可能である。
【0102】
試料9
31g/m2のグラムを有するCMCを含まない異なるセルロース湿式不織布ベースを使用したことを除いて、試料4について記載したように積層体を調製した。得られた積層体飲料カプセルの蓋構造は、家庭用コンポスターで完全に堆肥化可能である。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
試験プロトコル
コーヒーカプセルは、材料固有の高い要件を満たす必要がある。浸出ステップ中、所望の圧力値に達するまで、コーヒーカプセルに熱水を注入する。これにより、蓋が変形し、ピラミッドプレートなどの静的な穿刺要素に貫通する。このプロセスは、
図1A及び2Bによって例示される。したがって、コーヒーの蓋は、破裂するまでカプセル内の圧力に耐える必要がある。発明者らは、以下のようにこの性能を評価するためのプロトコルを考案した。
【0108】
試験は、同じ身体要素、同じコーヒー量を有するコーヒーカプセルを調製し、上記の実施例で説明される異なる蓋でコーヒーカプセルを閉じることを伴う。
【0109】
密封されたコーヒーカプセルをコーヒーマシン(Pixie Machine)内に設置し、浸出中の圧力、得られた体積、及びコーヒー流量を測定する。結果は、以下の表5にまとめる。以下の表4に記載される限界を設定した。
【0110】
【0111】
結果
【0112】
【0113】
表5から、本発明による試料が最適な性能を示すことが分かる。表3.1~3.3にまとめられた空気透過性及び孔径分布を参照すると、本発明による試料は、PLAベースの比較試料よりも低い空気透過性及び小さい孔径を有することが見出される。
【0114】
試験された異なる試料は、3つのグループに分けることができる。
群1:比較試料1~3では、合成繊維を有する不織布基材を使用した。
【0115】
群2:試料1、2、3、6、7、及び8において、37g/m2の坪量を有するCMC結合剤を含む同じセルロース湿式不織布を使用した。セルロース湿式は、上述したように単層構造を有し、すなわち、2層又は多層構造を有しない。試料1~3に、様々な量の熱可塑性結合剤を含浸させる(試料1~3に、それぞれ4、6及び12g/m2のSciTech ST6515を含浸させる)。試料6及び7に、異なる熱可塑性結合剤(試料6にPBS、試料7にPLA)を含浸させる。試料8は、他の試料に使用される支持層とは異なる支持層を使用する。
【0116】
群3:試料4、5、及び9は、2層構造を有するセルロース湿式試料である。それらは、異なる繊維混合物を供給する2つの区画を備えたヘッドボックスを使用して製造される。2つの層を有する主な利点は、紙内の構造勾配である。繊維組成物を表3.3にまとめる。
【0117】
群1の試料は、それほど最適ではない方法で機能することが見出されている。比較試料1及び2の両方は、本発明による試料よりも(ほとんどの)低い流量を示す。上記で詳細に説明されるように、コーヒーカプセルからのコーヒー抽出の流体力学は、主に、材料及び孔径、すなわち、フィルタ材料の透過性の影響を主に受ける。これは、高圧下でコーヒーカプセル内で抽出するために使用されるコーヒーは、通常、大量の微粒子(<100μm)を含む規格化された程度の粉砕を有するためである。以下に記載されるように、本発明の試験プロトコルで使用されるコーヒー試料は、Mastersizer3000(Malvern)で測定した、
図5に示される粒径分布を有する。
【0118】
合成繊維は、それらが人工であるため、サイズ及び形状が均一になる傾向がある。また、滑らかな表面を有している。いずれの理論にも拘束されることを望まないが、合成繊維のみから作製された不織布は、相対的に均一な孔構造を有する傾向があり、また、セルロース湿式試料と比較してより大きな孔を有する傾向があると考えられる。コーヒー粒子は適切に保持されていないか、孔構造を均一に詰まらせる傾向がある。
【0119】
他方、セルロース湿式試料は、より均一でないランダムな孔構造並びにより小さな孔を有する天然セルロース繊維で作製される。コーヒー醸造中にセルロース不織布を使用すると、液体はフィルタを通過する経路を見つけるようである。
【0120】
同じセルロース不織布を有するが、様々な量の結合剤を含浸させた試料1、2、及び3について、流量の差異が観察された(表5を参照されたい)。いずれの理論にも拘束されることを望まないが、この不織布ベースと6g/m2の結合剤との組み合わせは、増加した流量を説明する可能性のある最適な組み合わせであるように思われる。ただし、これらの試料は全て最適な範囲で動作する。
【0121】
更に、圧力及び流量の差異は、試料2、4、5、及び9の間で観察されている。これらの差異は、不織布材料(ベース)の異なる組成によって説明され得る。しかしながら、異なる繊維混合物及び構造を有する不織布ベースが使用されているため、これらの試料を直接比較することはできない。
【0122】
しかしながら、発明者らは、不織布の空気透過性の微調整、したがって濾過性能を考慮して、2層構造を有する紙を使用することが有利であることを見出した。試料4、5、及び9では、第1の層は、より細かくなる傾向があり、したがって、透過性が低い層を形成する硬木繊維で構成される。第2の層は、その中で使用される軟木及び人工セルロース(すなわち、レーヨン又はリヨセル)繊維によるより透過性の高い層である。したがって、これらの試料は、透過性を損なうことなく、良好な濾過性能を有する。
【0123】
更に、試料5<試料4<試料9の順に増加する空気透過性が見出された。一般に、硬木のみで作られた第1の層の比率が高いほど(試料9<試料5<試料4)、不織布ベース全体の空気透過性は低い。しかしながら、第2の層に人工セルロース繊維(レーヨン又はリヨセル)を添加することによって、不織布ベース全体の空気透過性が高まる可能性があると考えられる。更に、フロックの添加は、試料の空気透過性を低下させるようである。
【0124】
したがって、PLAベースの試料と比較して、より小さい孔径及びより小さい空気透過性を有する本発明に従うコーヒー蓋は、優れた性能を発揮する。
【国際調査報告】