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特表2024-539560結晶層を堆積させる力平衡式メニスカス塗布器、および結晶パターン化機能部を印刷する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】結晶層を堆積させる力平衡式メニスカス塗布器、および結晶パターン化機能部を印刷する方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 71/13 20230101AFI20241022BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20241022BHJP
   B05D 1/32 20060101ALI20241022BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20241022BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241022BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20241022BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20241022BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241022BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20241022BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241022BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241022BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20241022BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20241022BHJP
   H10K 85/40 20230101ALI20241022BHJP
【FI】
H10K71/13
B05D1/26 Z
B05D1/32 Z
B05D3/00 D
B05D3/00 B
B05D7/00 Z
B05C5/02
B05C5/00 102
B05C11/10
H01L29/78 618B
H10K50/10
H10K59/10
H10K85/60
H10K85/10
H10K85/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518668
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 US2022044062
(87)【国際公開番号】W WO2023049090
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/247,605
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519097168
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ バーモント アンド ステイト アグリカルチュラル カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】ランドール エル. ヘッドリック
(72)【発明者】
【氏名】リチャーズ ゴールト ミラー スリー
【テーマコード(参考)】
3K107
4D075
4F041
4F042
5F110
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107DD58
3K107DD78
3K107FF15
3K107GG07
3K107GG11
3K107GG24
3K107GG35
4D075AC02
4D075AC72
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC93
4D075AC94
4D075AC99
4D075AD02
4D075AD05
4D075CA22
4D075CA37
4D075DA31
4D075DA37
4D075DC21
4D075DC22
4D075EA07
4D075EA33
4D075EB16
4D075EB54
4D075EC01
4D075EC07
4D075EC10
4D075EC17
4D075EC53
4F041AA02
4F041AA05
4F041AA06
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA07
4F041BA12
4F041BA13
4F041BA19
4F041BA34
4F041CA02
4F041CA06
4F041CA25
4F042AA02
4F042AA06
4F042BA02
4F042BA08
4F042BA10
5F110CC05
5F110DD02
5F110EE03
5F110FF01
5F110FF27
5F110GG05
5F110GG06
5F110GG13
5F110GG42
5F110HK02
(57)【要約】
【課題】結晶性成分および溶媒を含有する溶液などの溶液を、制御された方法で基材上に塗布する塗布器。
【解決手段】いくつかの実施形態では、本開示の塗布器は、塗布器と基板との間に溶液がメニスカスを形成するように、基板と協働する細長いスロットおよび対応するスロット開口を含む。塗布器は、例えば、溶液をスロットから流出させるような流れが望ましくないときに、溶液と相互作用して力を平衡させる湿潤構造を含む力平衡貯液槽をさらに含む。半導体デバイスの機能部などの結晶機能部を基板上に書き込む方法も開示される。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、基板上に、関連溶液に対して疎水性または親水性のいずれかである領域を戦略的に配置して、機能部が形成される機能領域を画定することを含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積方向に沿って塗布器と表面との間に移動が生じるとき、および、溶液が前記塗布器と前記表面との間にメニスカスを形成するときに、前記堆積方向に沿って前記表面に前記溶液を塗布する塗布器であって、
前記塗布器の使用時に前記表面に直ぐに隣接するスロット開口を有する塗布スロットと、
前記塗布スロットの前記スロット開口の長さに沿って前記塗布スロットと流体連通し、前記塗布器の使用中に前記溶液の一部を保持するように設計および構成される力平衡貯液槽と
を備え、
前記スロット開口は、前記堆積方向に対して少なくとも名目上垂直な長さ、および、前記堆積方向に対して少なくとも名目上平行な幅を有し、前記スロット開口の前記長さは、前記スロット開口の前記幅の少なくとも2倍であり、前記スロット開口は、前記スロット開口の前記長さに沿って連続しており遮られておらず、
前記力平衡貯液槽は、前記塗布方向における前記塗布器と前記溶液との間に動きが生じるときに、前記溶液を前記スロット開口から流出させることを許容し、前記塗布方向における前記塗布器と前記表面との間に動きが生じないときに、前記溶液を前記スロット開口から流出させないように配置される複数の湿潤機能部を含む
塗布器。
【請求項2】
前記塗布スロットは、前記塗布器の使用中に前記溶液が沿って流れる流れ軸を有し、
前記力平衡貯液槽は、前記塗布器の使用中に前記力平衡貯液槽内を前記溶液が沿って流れる総流れ軸を有し、
前記塗布スロットの前記流れ軸は、前記力平衡貯液槽の前記総流れ軸に対して垂直である
請求項1に記載の塗布器。
【請求項3】
前記塗布スロットは、前記塗布器の使用中に前記溶液が沿って流れる流れ軸を有し、
前記力平衡貯液槽は、前記塗布器の使用中に前記力平衡貯液槽内を前記溶液が沿って流れる総流れ軸を有し、
前記塗布スロットの前記流れ軸は、前記力平衡貯液槽の前記総流れ軸に対して平行である
請求項1に記載の塗布器。
【請求項4】
前記塗布スロットは、前記塗布器の使用中に前記溶液が沿って流れる流れ軸を有し、
前記力平衡貯液槽は、前記塗布器の使用中に前記力平衡貯液槽内を前記溶液が沿って流れる総流れ軸を有し、
前記塗布スロットの前記流れ軸は、前記力平衡貯液槽の前記総流れ軸に対して斜めである
請求項1に記載の塗布器。
【請求項5】
前記塗布スロットは、前記塗布器の使用中に前記溶液が沿って流れる流れ軸を有し、
前記力平衡貯液槽は、前記塗布器の使用中に前記力平衡貯液槽内を前記溶液が沿って流れる総流れ軸を有し、
前記塗布スロットの前記流れ軸は、前記力平衡貯液槽の前記総流れ軸に対して角度φをなし、
前記湿潤機能部は、前記角度φの関数として配置される
請求項1に記載の塗布器。
【請求項6】
前記塗布器は、前記力平衡貯液槽および前記スロット開口の両方が、使用中に前記塗布器を取り囲む周囲雰囲気に対して開放されるように設計および構成される
請求項1に記載の塗布器。
【請求項7】
前記力平衡貯液槽は、下壁を有する開放路として構成され、前記湿潤機能部は、前記下壁上に配置される
請求項1に記載の塗布器。
【請求項8】
前記開放路と取り外し可能に係合されると共に、使用者が前記力平衡貯液槽の内容物を視認することを可能にする透明閉塞部をさらに備える
請求項7に記載の塗布器。
【請求項9】
前記湿潤機能部は、前記力平衡貯液槽に挿入される挿入構造として設けられる
請求項1に記載の塗布器。
【請求項10】
前記湿潤機能部は、前記力平衡貯液槽の容積を画定する総体積を有する
請求項1に記載の塗布器。
【請求項11】
前記湿潤機能部は、相互接続された開孔を含む
請求項1に記載の塗布器。
【請求項12】
前記湿潤機能部は、前記力平衡貯液槽内に柱状構造を備える
請求項1に記載の塗布器。
【請求項13】
前記湿潤機能部は、複数の開放路を含む
請求項1に記載の塗布器。
【請求項14】
前記湿潤機能部は、複数の閉塞路を含む
請求項1に記載の塗布器。
【請求項15】
前記湿潤機能部は、使用中に前記溶液と接触するように配置される親水性表面を有する
請求項1に記載の塗布器。
【請求項16】
溶媒に溶解した堆積性物質を含む前駆体溶液を用いて基板上に機能部を印刷する方法であって、
各機能部は、面内寸法および面内形状を有し、前記溶媒が前記機能部を去った後の前記堆積性物質から構成され、前記方法は、
非機能領域に囲まれた複数の機能領域を含む印刷領域を有する基板を提供することを備え、
前記方法は、前記基板に沿った印刷方向を有し、
前記印刷領域は、前記印刷方向に直交する幅を有し、
前記機能領域は、前記結晶性機能部の位置を規定し、
前記機能領域それぞれは、前記印刷方向に沿って、かつ、前記印刷方向に垂直に、互いに離間されており、
各機能領域は、前記前駆体溶液に対して親水性であり、前記対応する結晶性機能部の面内寸法および面内形状にそれぞれ一致するように寸法決定されると共に成形される親水性表面を有し、
各機能領域は、前記親水性表面と、前記親水性表面を取り囲むと共に前記前駆体溶液に対して疎水性である疎水性表面との間に形成される複数の機能境界によって画定され、
前記前駆体溶液のメニスカスを、前記印刷領域の幅全体に亘って前記印刷領域と接触させた状態で前記印刷方向に沿って移動させて、前記溶液の一部を前記機能領域の前記親水性表面上に堆積させると共に、前記溶液のいずれも前記疎水性表面上に堆積させないようにすることをさらに備える
方法。
【請求項17】
前記メニスカスを移動させることは、前記基質に対して前記メニスカス力平衡塗布器を移動させること、前記メニスカス力平衡塗布器に対して前記基質を移動させること、または、前記メニスカス力平衡塗布器および前記基質の両方を互いに対して移動させることを含む
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記メニスカス力平衡塗布器は、前記印刷領域の幅全体に延在する溶液配送スロットを有する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記メニスカスを移動させることは、浸漬コーティングプロセスを用いることを含む
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記堆積性物質は、結晶性物質である
請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記結晶性物質は、有機半導体物質である
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記結晶性物質は、ハイブリッド有機-無機半導体物質である
請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記メニスカスを移動させることにより、横方向結晶成長接触線を、各親水性表面上に形成させると共に前記疎水性表面上に形成させない
請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記機能領域のいずれかの最大寸法が20ミクロン以下である
請求項16に記載の方法。
【請求項25】
疎水性マスクを用いて前記機能領域を生成して、前記印刷領域に前記非機能領域を生成することをさらに含む
請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記印刷領域に一時的に適用されるテンプレートシートを用いて前記機能領域を生成することをさらに含む
請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、2021年9月23日に出願された「基板上にパターン化結晶層を形成する方法、およびその方法のための装置」という名称の米国仮特許出願第63/247,605号の優先権の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、半導体製造の分野に関する。特に、本開示は、結晶層を堆積させる力平衡式メニスカス塗布器、および結晶パターン化機能部を印刷する方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
有機半導体薄膜は、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機発光ダイオード(OLED)、エレクトロルミネセントディスプレイ、低コスト光起電装置、無線周波数(RF)識別タグ、センサ、およびウェアラブルコンピュータを含む様々な分野において潜在的な用途を有する。高スループットプロセス(一般に、>1mm/秒)によって溶液から堆積される薄膜は、一般に、比較的小さい結晶粒径を有し、粒界の特性によって悪影響を受ける。その結果、このような膜は、典型的には、より大きな結晶粒径を有する膜と比較して、より低い電子キャリア移動度およびより大きな電荷トラップ密度を有し、多くの電子用途にはあまり有用ではない。例えば、蒸着に基づいて有機半導体薄膜を堆積させる従来の方法は、常に、10ミクロンよりも小さいドメイン寸法を有する物質を生成する。エレクトロニクス産業に近い観察者は、有機マイクロエレクトロニクスが、可撓性の軽量物質を利用することができるため、最終的には携帯デバイスおよびウェアラブルデバイスに用途を見出すことを期待している。しかしながら、以下の領域において、多くの問題に対処する必要がある。
【0004】
1)薄膜物質を製造するための低コストで高スループットの方法。
2)直接印刷によってパターン化された薄膜を製造する方法。
3)大きな結晶ドメインから成る高品質物質を製造する方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、製造者にとって、従来の実用可能なものよりも数桁大きい結晶ドメインを有する高品質の有機膜を製造できることが望ましい。また、製造業者にとって、基板の或る所定の機能領域が、個々のパターン化された機能領域の寸法と同等またはそれより大きい粒径を有する有機半導体薄膜で被覆される、パターン化された薄膜を達成することが可能であることも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、本開示は、堆積方向に沿って塗布器と表面との間に移動が生じるとき、および、溶液が塗布器と表面との間にメニスカスを形成するときに、堆積方向に沿って表面に溶液を塗布する塗布器を対象とする。塗布器は、使用時に表面に直ぐに隣接するスロット開口を有する塗布スロットを含む。スロット開口は、堆積方向に対して少なくとも名目上垂直な長さ、および、堆積方向に対して少なくとも名目上平行な幅を有する。スロット開口の長さは、スロット開口の幅の少なくとも2倍である。スロット開口は、スロット開口の長さに沿って連続しており遮られていない。塗布器は、塗布スロットのスロット開口の長さに沿って塗布スロットと流体連通し、塗布器の使用中に溶液の一部を保持するように設計および構成される力平衡貯液槽を備える。力平衡貯液槽は、塗布方向における塗布器と溶液との間に動きが生じるときに、溶液をスロット開口から流出させることを許容し、塗布方向における塗布器と表面との間に動きが生じないときに、溶液をスロット開口から流出させないように配置される複数の湿潤機能部を含む。
【0007】
別の実施形態において、本開示は、溶媒に溶解した堆積性物質を含む前駆体溶液を用いて基板上に機能部を印刷する方法に関する。各機能部は、面内寸法および面内形状を有し、溶媒が機能部を去った後の堆積性物質から構成される。この方法は、非機能領域に囲まれた複数の機能領域を含む印刷領域を有する基板を提供することを含む。この方法は、基板に沿った印刷方向を有する。印刷領域は、印刷方向に垂直な幅を有する。機能領域は、結晶性機能部の位置を規定する。機能領域それぞれは、印刷方向に沿って、かつ、印刷方向に垂直に、互いに離間されている。各機能領域は、前駆体溶液に対して親水性である親水性表面を有する。親水性表面は、対応する結晶性機能部の面内寸法および面内形状にそれぞれ一致するように寸法決めされると共に成形されている。各機能領域は、親水性表面と疎水性表面との間に形成された機能境界によって画定される。疎水性表面は、親水性表面を取り囲み、前駆体溶液に対して疎水性である。また、この方法は、前駆体溶液のメニスカスを、印刷方向の幅全体に亘って印刷領域と接触させた状態で印刷方向に沿って移動させて、溶液の一部を機能領域の親水性表面上に堆積させると共に、溶液のいずれも疎水性表面上に堆積させないようにすることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明を例示する目的で、図面は、本発明の1つ以上の実施形態の態様を示す。しかしながら、本発明は、図面に示された正確な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【0009】
図1A】本開示に従って作製された力平衡メニスカス(FBM)塗布器の側面図である。
図1B図1Aの線1B-1Bに沿った拡大断面図であり、FBM塗布器のスロットを示している。
図1C図1Aの線1C-1Cに沿った拡大断面図であり、図1Bに示される配向に対して斜めの配向にあるFMB塗布器のスロットを示している。
図1D図1Aの線1D-1Dに沿った拡大断面図であり、FBM塗布器の貯液槽が開放路貯液槽である例を示している。
図1E図1Aの線1E-1Eに沿った拡大断面図であり、FBM塗布器の貯液槽が閉路貯液槽であると共に、湿潤構造が貯液槽に挿入された挿入構造によって提供される例を示している。
図1F図1Aの線1F-1Fに沿った拡大断面図であり、FBM塗布器の貯液槽が閉路貯液槽であると共に、貯液槽の容積が湿潤構造の容積によって規定される例を示している。
図2A】本開示のFBM塗布器の例示的な実施形態の長手方向断面図である。
図2B図2AのFBM塗布器の本体の斜視図である。
図2C図2Bの線2C-2Cに沿った断面図であり、湿潤路およびカバー板を示している。
図2D図2AのFBM塗布器の拡大底面図である。
図3】線形パッチコータに取り付けられた図2A図2DのFBM塗布器の斜視図である。
図4A図3の線形パッチコータを用いて書き込まれたサンプル結晶層の写真である。ここで、結晶層には偏光が照射されている。
図4B図3の線形パッチコータを用いて作製された電界効果トランジスタ(FET)の伝達曲線のグラフである。
図5】ロールコータに取り付けられた図2A図2DのFBM塗布器の斜視図である。
図6A図5のロールコータを用いて作製された複数の電界効果トランジスタ(FET)のそれぞれの構造を示す図である。
図6B】1.5重量%のC8-BTBT-トルエン溶液から60℃で25mm/秒の書込条件で製造されたガラス基板上のC8-BTBT薄膜の偏光光学顕微鏡画像である。
図6C図5のロールコータを用いて作製されたFETの1つの伝達曲線のグラフである。
図7】任意の半導体分子および誘電体分子の分子構造の図である。
図8A】親水性表面上に形成された本開示のFBM塗布器のメニスカスを示す図である。
図8B】疎水性表面上に形成された本開示のFBM塗布器のメニスカスを示す図である。
図8C】疎水性表面から親水性表面への遷移後の本開示のFBM塗布器のメニスカスを示すと共に、疎水性表面と親水性表面との間の遷移における接触線のピン止めを示す図である。
図9A】45°交差偏光子を用いて撮影された、複数のFETを形成する際の前駆体溶液の堆積の写真であり、溶液と親水性領域および疎水性領域との相互作用を示している。
図9B】45°交差偏光子を用いて撮影された、複数のFETを形成する際の前駆体溶液の堆積の写真であり、溶液と疎水性領域のみとの相互作用を示す。
図10A】本開示のFBM塗布器を用いて書き込まれた前駆体溶液の結晶化の初期核形成時のパターン化機能部の写真である。
図10B】パターン化された機能部の部分結晶化後の図10Aのパターン化された機能部の写真である。
図10C】パターン化された機能部の完全な結晶化後の図10Aおよび10Bのパターン化された機能部の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
いくつかの態様では、本開示は、塗布器と表面との間に動きが生じていないときではなく、塗布器および/または表面が互いに対して動きが生じているときに、表面に溶液を塗布する力平衡メニスカス(FBM)塗布器、または、単に「塗布器」を対象とする。複合記述子「力平衡メニスカス」における用語「メニスカス」は、堆積中に、塗布された溶液が、表面、または、少なくともその親水性(溶液に対して)部分とメニスカスを形成する、本開示の塗布器の特性を対象とする。有機半導体前駆体溶液の文脈におけるメニスカスの形成に関するメニスカス型塗布器の詳細は、例えば、2008年4月1日および2016年9月13日にそれぞれ発行された「結晶薄膜構造を作製するシステムおよび方法」および「基板に1層以上の結晶層を形成する方法」という名称の米国特許第7,351,283号および第9,444,049号、ならびに、2008年6月12日に公開された「メニスカス成長技術を用いて結晶薄膜構造を作製するシステムおよび方法」という名称の米国特許出願公開第2008/0138927号に見出すことができる。これらは、以下に記載されるように、メニスカスの幾何学的形状、他のメニスカス特性、および、メニスカスからの結晶成長に関する教示について参照により本明細書に組み込まれる。以下に詳細に記載されるように、上記の複合記述子における用語「力平衡」は、塗布器と表面との間に動きが生じるときに、相対的な動きによって溶液が塗布器から引き出されて、溶液が表面上に堆積するが、相対的な動きが生じない場合、溶液は、少なくとも溶液が表面との接触しなくなる程度までは、塗布器から流出せず、塗布器に引き戻されないという、本開示の塗布器の特性に関する。したがって、溶液と堆積表面との間の任意の親水性引力を含む、塗布器と溶液との間のような力の釣り合いがある。この力のバランスにより、溶液の堆積の制御に改善がもたらされて、堆積された溶液から形成される、結果として生じる堆積層、例えば、有機半導体層またはハイブリッド有機-無機-半導体層の形成の制御を改善することができる。
【0011】
いくつかの態様では、本開示は、結晶層につき前駆体溶液を用いて、成形された結晶機能部を表面上に印刷すること、および、所望の結晶機能部に一致するように寸法決定されると共に成形される親水性(前駆体溶液に対して)機能領域を提供することを対象とする。いくつかの実施形態では、親水性機能部を提供することは、表面上に(前駆体溶液に対して)疎水性マスクを形成すること、または、表面上に重ねられたテンプレートシートを用いることにより、達成されてもよい。なお、その表面は、疎水性であってもなくてもよい。いくつかの実施形態では、本開示のFBM塗布器を用いて前駆体溶液を塗布してもよい。その一方、いくつかの実施形態では、上記の参照により組み込まれる特許文献のいずれかに開示される技術などの他の技術を用いて前駆体溶液を塗布することができる。本開示の前述の態様および他の態様は、いくつかの非限定的な例および例示によって以下で詳細に説明される。
【0012】
本開示および添付の特許請求の範囲を通して、用語「約」は、対応する数値と共に用いられる場合、その数値の±20%、典型的にはその数値の±10%、しばしばその数値の±5%、最もしばしばその数値の±2%を指す。いくつかの実施形態では、用語「約」は、数値自体を意味し得る。
【0013】
一般的なFBM塗布器の構成
【0014】
ここで図面を参照すると、図1Aおよび図1Bは、本開示に従って作製された例示的なFBM塗布器100の高レベルの概要を提供する。この例では、塗布器100は、細長い塗布スロット116(または単に「スロット」)(図1B)を介して表面、ここでは表面112上に塗布するための溶液108を収容する力平衡貯液槽104(または単に「貯液槽」)を含む。この例では、溶液108は、表面112(図1A)上に結晶層108Lを形成するための前駆体溶液である。これは溶液に対して親水性である。このため、溶液内の結晶性成分が接触線108CLで結晶化して結晶層を形成する前に、溶液が塗布器100と表面との間にメニスカス108Mを形成する。有機およびハイブリッド有機-無機半導体物質から成る結晶層の例、および、そのような結晶層を形成する前駆体溶液の例は、以下の通りである。また、接触線108CLにおける結晶成長のメカニズムについては、例えば、上記のいずれかの特許文献に詳細に記載されている。塗布器100の文脈において、溶液108の特定の組成は重要ではなく、むしろ、表面112を有する溶液と塗布器との相互作用が、塗布器の所望の力平衡特性を達成するために重要である。
【0015】
例示的なFBM塗布器100の力平衡特性は、貯液槽内に位置する構造要素であるか、または、貯液槽自体を効果的に規定する総体積を有するか、または、その両方の組み合わせである湿潤機能部104Wを貯液槽104に提供することによって達成される。一般的に、湿潤機能部104Wは、溶液108に対して親水性である表面(図示せず)を有し、溶液の自重、表面張力およびメニスカス108Mに関連する他の力などの力を相殺するように作用する力を溶液104内に生じさせるように設計され、構成され、配置される。そして、それは、湿潤機能部が存在しない場合、溶液を必要とされるか所望されるよりも高い速度で塗布器100から流出させる。例えば、結晶層108Lの堆積および形成中に、湿潤機能部104Wがなければ、溶液108は、適切な堆積および形成に必要な速度よりも速い速度で塗布器100から流出し、塗布器100と表面112との間にいかなる動きも生じないときに堆積が行われていない場合、湿潤機能部がなければ、溶液は、流れが望まれないときに塗布器から流出する。異なる流速が所望される場合、スロット116がスロットの長さに沿って異なる流速で溶液108を塗布するように、湿潤機能部104Wを調整することができることにも留意されたい。
【0016】
機能的な観点から、湿潤機能部104Wは、上述した必要な力平衡機能を実行する限り、任意の特定の形態をとる必要はない。しかしながら、当業者は、いくつかの形態の湿潤機能部104Wが、他の形態よりも実行するのが容易であり、より安価であることを容易に理解するであろう。その結果、実用性および/またはコストが、必要な湿潤機能部104Wを設計し、提供するための推進要因であり得る。湿潤機能部104Wは、溶液108によって湿潤されると、溶液の或る部分を保持することによって、それらが位置し得る場所にかかわらず、貯液槽104の一部と見なされることに留意されたい。例えば、スロット116内に位置するように見える湿潤機能部104Wは、それでもなお、貯液槽104の一部である。
【0017】
いくつかの実施形態では、所望の力平衡目標を達成するために必要とされる相殺力の全ては、名目上、または単独で、湿潤機能部104Wによって提供され、真空および/または吸引による力等の任意の他のタイプの力ではないことに留意されたい。直前の文における「名目上」という語は、スロット116内、または、溶液108をスロットに供給する従来の溶液配路(図示せず)内で発生し得る、湿潤/毛管力等の塗布器100の非力平衡機能の自然な結果として作用し得る二次的な力を説明するために提供される。相違点は、そのような二次的な力が存在する場合、塗布器の任意の用途に対して適切な力平衡を塗布器100に提供するように意図的に設計された湿潤機能部104Wが存在しなければ、必要な力平衡を達成することができないことである。典型的には、貯液槽104は、周囲環境と流体連通していると共に、表面112上で生じる結晶層108Lの堆積と同じ環境と流体連通している。したがって、貯液槽104および堆積物の両方は、貯液槽104への溶液入口104I(図1A)、104I’(図1D)とスロット116との間に全体的な吸引力が存在することができないように、同じ周囲圧力(例えば、大気圧)を受ける。
【0018】
湿潤機能部104Wの形態は、一般的に、溶液108の湿潤特性、溶液の密度、スロット116内の溶液の量、スロットの横断面寸法(すなわち、スロット長さLsおよびスロット幅Ws(図1B))、角度、φ、スロットの流れ軸FAsと貯液槽104の総流れ軸FArとの間の距離、貯液槽が上側に沿って開いているかどうか、メニスカス108Mの寸法、特の設計に依存する他のものの間の任意の適切なサブコンビネーション、その他の設計パラメータを含むが、これらに限定されない、様々な設計パラメータの考慮を必要とする。貯液槽の総流れ軸FArは、事実上、貯液槽104内のおよび/または貯液槽を通る溶液108の総流れに平行な軸であることに留意されたい。
【0019】
湿潤機能部104Wが有することができる例示的形態は、とりわけ、単独で、または相互との任意の好適な組み合わせにおいて、貯液槽の1つ以上の内壁に形成される路、貯液槽の1つ以上の壁上に形成される島状構造、1つの壁から延在し、ある場合には対向壁に継合するカラム状構造、貯液槽の境界壁内の内壁(例えば、貯液槽内で蛇行、ジグザグ、または迂回通路を形成する)、貯液槽内の管状構造、または別様の管状構造の内部体積の合計から成る集合貯液槽を機能的に形成する管状構造、および貯液槽内の開孔構造、または別様の開孔構造の開容積から成る集合貯液槽を機能的に形成する開孔構造を含むが、それらに限定されない。
【0020】
結晶層108Lは、堆積方向108Dd(図1B)を有する。堆積中に塗布器100および表面112の一方、他方、または両方が他方に対して移動するにつれて、堆積された結晶性層の寸法は、堆積方向に沿って増加する。上述のように、スロット116は、図1Bに示されるように、長さLsおよび幅Wsを有する。長さLsは、堆積方向108Ddに対して名目上垂直であり、幅Wsは、堆積方向108Ddに対して名目上平行である。図1Bおよび図1Cの両方を参照すると、直前の文における「名目上」という用語は、実際の堆積方向108Dd’が何らかの非ゼロのスキュー角、Δ、にあり得る可能性を説明するために提供される。設計堆積方向108Ddに対して、長さLsおよび幅Wsは配向される。典型的には、スキュー角Δは、無視できるほどゼロに近い。
【0021】
スロット116は、塗布器100の使用中に表面112に近接する非分割開口116を有する。開口の面積は、長さLsおよび幅Wsによって規定される。この例では、スロット116は分割されていない。したがって、長さLsはスロットの全長に等しい。しかしながら、他の実施形態では、スロット116全体は、複数のセグメント、例えば、仕切り116D(1)および116D(2)(図1B)によってセグメント116(1)~116(3)に分割されてもよく、その各々は、対応する非分割の長さLs、および、対応する非分割の開口116O(1)~116O(3)を有する。いくつかの実施形態では、幅Wsに対する長さLsの比は、他の範囲の中でも、2:1以上、5:1以上、10:1以上、20:1以上、50:1以上、100:1以上、500:1以上、または1000:1以上である。上述の幅Ws対長さLsの比を有する実施形態を含むいくつかの実施形態では、開口116Oにおけるスロット116の幅Wsは、とりわけ、比較的低い粘度の溶液に対して約100ミクロン~約500ミクロン、比較的高い粘度の溶液に対して約500ミクロン~約2500ミクロンの範囲であってもよい。当業者は、過度の実験を行うことなく、例えば溶液108の粘度に従って、特定の用途のためにスロット116の幅Wsをどのように調整するかを容易に理解するであろう。この実施形態では、開口116Oは、スロット116に直ぐに隣接する塗布器100の部分の前面には障害物がない。いくつかの実施形態では、開口116Oは、開口の前面から、前面に最も近い湿潤機能部104Wの部分まで測定される、約0mm~約10mmまたはそれを上回る範囲内の深さ(図示せず)を有してもよい。しかしながら、大きな深さでは、溶液108の自重が、適切な湿潤機能部104Wを設計する際のより大きな要因となり得る。深さに応じて、スロット116は、スロットの長さLsに沿って互いに離間する1つ以上の仕切り116Dを任意に含んでもよい。
【0022】
図1Dおよび図1Bを参照すると、この例における貯液槽104の幅Wrは、スロット112の長さLsに等しい。しかしながら、いくつかの実施形態では、この例における貯液槽104の幅Wrは、問題の設計に応じて、スロット112の長さLsよりも小さくてもよいし、大きくてもよい。これらの場合のいずれにおいても、湿潤機能部104Wの数と、全体としての単一のスロット112との間に、または、スロットがその全長に沿って1つ以上の仕切りによって複数のセグメントに分割される場合、例えば、仕切り116D(1)および116D(2)によって分割されたセグメント116(1)~116(3)などの場合、結果として得られるスロットセグメントのいずれか1つに関連付けられた湿潤機能部の数とその特定のスロットセグメント自体との間に、多対1の関係があることを理解されたい。スロットがセグメントに分割される場合、各セグメントは、上述のように、スロット幅Wsからスロット/セグメント幅Lsのいずれかを有し得る。
【0023】
特に図1Dを参照すると、この図は、開放路貯液槽104(1)である貯液槽104の実施例を図示している。湿潤機能部104W(1)は、貯液槽の底部に向かって位置する。この例では、湿潤機能部104W(1)は、貯液槽104(1)の底壁104BW(1)に形成される開放路(例えば、直線、蛇行、ジグザグなど)(120で集合的に示される)として示されている。いくつかの実施形態では、開放路貯液槽104(1)は、とりわけ、ガラスまたは他の透明物質の片、プラスチックの片、または金属片等の好適な閉塞部104C(1)を用いて閉じられてもよい。閉塞部104C(1)を含むいくつかの実施形態では、閉塞部は、示される湿潤機能部104W(1)を補完または置換し得る、その独自の湿潤機能部(図示せず)を含んでもよい。
【0024】
図1Eは、湿潤構造体104W(2)が貯液槽の全高Hrおよび全幅Wrに亘って分布している、閉塞路貯液槽104(2)である貯液槽104の例を示す。いくつかの例では、湿潤構造104W(2)は、とりわけ、開孔発泡体または開孔焼結構造体によって形成されてもよく、複数の直線、蛇行、ジグザグ等の閉塞路であってもよい。この例では、湿潤構造104W(2)は、貯液槽104(2)に挿入される挿入構造104IS(2)内に設けられる。この例では、湿潤構造104W(2)は、貯液槽104(2)の全高Hrを占めるものとして示されている。しかしながら、他の実施形態では、湿潤構造104W(2)は、貯液槽104(2)の全高Hrに延在しない。
【0025】
図1Fは、閉塞路貯液槽104(3)である貯液槽104の例を示している。貯液槽の容積は、湿潤構造104W(3)自体によって規定される容積の総計に等しい。一般的に、図1Fの貯液槽104(3)は、図1Fの貯液槽が湿潤構造体104W(3)に対して別個に形成されず、湿潤構造体によって提供される総体積よりも大きくてもよい溶液108を保持するための体積を有さないという点で、図1Eの貯液槽104(2)と区別することができる。むしろ、貯液槽104(3)の容積は、湿潤構造104W(3)自体によって規定される容積である。いくつかの例では、湿潤構造104W(3)は、とりわけ、開孔発泡体または開孔焼結構造によって形成されてもよく、複数の直線状、蛇行、ジグザグなどの閉塞路であってもよい。そのような湿潤構造は、付加製造技術(例えば、3D印刷)または除去製造技術(例えば、フライス加工、穿孔、放電加工など)によって提供され得る。
【0026】
FMB塗布器の実施形態の例
【0027】
図2A図2Dは、図1A図1FのFBM塗布器100の具体例200(以下、「塗布器200」または「FBM塗布器200」)を示している。図2Aを参照すると、この例では、FBM塗布器200は、本体204、端片208および脱着可能なカバー板212を含む。図2B図2Dは、図2Aには見られないか、または十分に示されていない様々な詳細を示しており、読者は、必要に応じてこれらの追加図面それぞれを参照すべきである。端片208と本体204とは協働してスロット216を形成しており、カバー板212と本体とは協働して貯液槽220を形成している。いくつかの実施形態では、端片208は、異なる長さ、異なる幅、異なる数の仕切り(もしあれば)、および/または貯液槽220の容積に寄与するより多い若しくはより少ない湿潤機能部等の1つ以上の異なる特性をスロット216に提供する端片(図示せず)と交換可能であるように、脱着可能に作製されてもよい。図2Bおよび図2Cに最もよく示されるように、貯液槽220は、複数の湿潤路220W(図1Aの湿潤機能部104W)によって形成されている。図2Aは、基板228の表面228S上に溶液224を塗布して、その表面上に液膜224Fを形成するFBM塗布器200を示している。溶液224が結晶性成分を含有する前駆体溶液である場合、その成分は結晶化することができ、溶媒は蒸発するか、または別の方法で除去されて、結晶層(図示せず)を形成することができる。当業者が容易に理解するように、基板228は、任意の適切な可撓性または剛性基板であり得、液膜224Fは、電界効果トランジスタ(FET)、ダイオード、太陽電池、または他の光導電層などの半導体素子の結晶層および/または1つ以上の半導体層を形成するなどの任意の適切な目的のために提供され得る。基板228の表面228Sは、少なくとも液膜224Fが望まれる領域において親水性である。いくつかの実施形態では、カバー板212は、使用者が湿潤路220Wの内容物、およびそれに対応して貯液槽220内の溶液224の量を視認し、例えば、溶液が貯液槽に添加される必要があるときを判定することができるように、透明であってもよい。図2Dに見られるように、この実施形態におけるスロット216は、内部仕切りまたは他の内部構造を含まない。貯液槽220を大気圧に開放したままにすることにより、自動補充システムまたは手動補充システムなどの任意の適切な補充手段232を用いて、貯液槽内の溶液224を簡単に補充することが可能になる。本体204、端片208、およびカバー板212のそれぞれの構成物質は、特定の用途に適した任意の物質であってよい。
【0028】
FBM塗布器200の使用中、溶液224は、貯液槽220に導入され、その自重でスロット216に流れ込む。薄い液膜224Fの堆積は、図2Aに示されている。塗布器200と基板228が互いに対して動くにつれて、溶液224は、毛管力によってスロット216から薄い液膜224F内に引き出される。この力平衡溶液配送技術は、(i)コーティングまたは印刷プロセスが速度を変えるとき、配送速度が新しいプロセス速度に自動的に調整されること、および、(ii)表面の疎水性部分がコーティングされているパターン化コーティング中に、溶液224がスロット116から流出することなく配送を瞬間的に停止することができることを含む、いくつかの利点を有する。したがって、従来のポンプ装置を含む従来のシステムは、本開示のFBM塗布器に対して不利であり、たとえこの不利が配送速度の能動的制御およびフィードバックによって軽減されたとしても、複雑で費用がかかる可能性があるこれらの対策は、本開示のFBM塗布器の受動的配送設計では不要である。利点(i)および(ii)の両方は、以下の「例示的なパターニング方法」の見出しの下でより詳細に説明される。
【0029】
FBM塗布器の配置例
【0030】
いくつかの実施形態では、図1AのFBM塗布器100および図2AのFBM塗布器200などの本開示のFBM塗布器を用いる本開示の方法は、有機溶媒に溶解された有機またはハイブリッド有機-無機半導体物質を含む溶液からの堆積を含む。このような課題解決は、しばしば、口語的に「電子インク」と称される。例えば、6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-ペンタセン)は、室温で約5重量%までトルエンに溶解することができる。いくつかの実施形態では、広域に亘って溶液をコーティングすることが望ましい。典型的には、ストリップがコーティングされ、ストリップは、本開示のFBM塗布器が相応に構築される場合、1mmから少なくとも1メートルまで、または更にそれより大きい範囲であり得る幅を有する。「横方向結晶化」と称されるプロセスの詳細は、上記参照により組み込まれる特許文献に記載されている。
【0031】
高スループット堆積のためのより一般的な関心のある型は、上記参照により組み込まれる米国特許第9,444,049号に記載されているように、2つのコーティング状態を分割する臨界速度を超える高速型である。例えば、室温におけるトルエン中のTIPS-ペンタセン溶液の臨界速度は、ペンライタまたは他の類似の手段による堆積中、約1mm/sである。両型は、動作パラメータのキャピラリーコーティング領域内にあると考えられる。便宜上、本開示では、低速型を「っ型1」と呼び、高速型を「型2」と称する。型1では、結晶化は、液体メニスカスとコーティングされる表面との間の接触線に非常に近接して起こる。一方、型2では、溶液は、最初に、メニスカスからかなりの距離で乾燥して結晶膜になる液体層としてコーティングされ、通常、明確な接触線は存在しない。しかしながら、高速型2は、液体薄膜の乾燥パターンに決定的に依存するので、制御するのがより困難である。高スループットで大粒径結晶薄膜を達成するために、この制御されない乾燥を軽減するプロセスを設計することが重要である。本開示のFBM塗布器は、そのようなプロセスの中心である。
【0032】
図2A図2DのFBM塗布器200は、いくつかのコーティング装置、具体的には図3に示されるようなリニアパッチコータ300、および、図5に示されるようなロールコータ500で試験された。50mm~125mm長の結晶薄膜の25.4mm幅のストリップ(スロットの長さに等しい)を製造するために型1(0.05mm/秒の堆積速度)で動作する線形パッチコータ300の結果が図4Aに示されている。図4Aは、作製されたストリップのうちの1つの一部を示している。図4Aは、偏光で照射された、作製された25.4mm幅の試料の1つの写真であり、0.05mm/秒の堆積速度での型1において、書込方向(25.4mm幅の試料に垂直)に沿って25.4mmを超える非常に大きな粒径が得られたことを示す。実際、このサンプルの最大粒子は、書込方向に沿って125mmサンプルの長さにほぼ沿って延びていた。書込方向に沿った粒子寸法が改善されたのは、明らかに、直径1mmの円形の毛細管か、幅5mmの矩形の毛細管かのいずれかを有する従来技術のペンライタから、スロットの幅を25.4mmに拡大した結果であると仮定される。これらの場合、結晶粒は、堆積中にストリップの端から成長する。したがって、この改善は、新しい粒子が核を形成し、薄膜ストリップの端から伝播するエッジ効果を最小限にすることによるものと思われる。図4Bは、図3の線形パッチコータ300に取り付けられた図2A図2DのFBM塗布器200を用いて形成された半導体層を有する有機またはハイブリッド有機-無機FET(図示しないが、FETの構造については図6Aを参照)の伝達曲線400を示す。図4Bに見られるように、見出された電荷キャリア移動度は、大きな結晶粒を有するTIPS-ペンタセンの特徴である。
【0033】
図6Aは、図5のロールコータ500を用いて作製されたFETのFET構造600を示している。図5に見られるように、FETの半導体層を形成するためにテンプレートされたテンプレートガラス基板504が、ロールコータ500のローラ508に取り付けられている様子が示されている。図6Aに見られるように、FET構造600は、ガラス基板上に形成された一対の金接点608(1)および608(2)を有する可撓性ガラス基板604上に製作された。大きな結晶粒を有するC8-BTBTの半導体層612を、金接点608(1)および608(2)ならびに2つの金接点間のガラス基板604上に堆積させた。Cytop809Mの誘電体ゲート層616を半導体層612上に堆積させ、アルミニウムゲート電極620を、2つの金接点608(1)と608(2)との間の空間の上に形成した。図6AのFET構造600を有するFETを製造する際に図5のロールコータ500を用いる書込条件は、1.5重量%のC8-BTBT溶液および1:1の比のCytop809mおよびCytop100シリーズ溶媒(AGC Inc.以前は旭硝子株式会社)を用いた場合、60℃で25mm/秒であった。トランジスタの歩留まりは85%機能し、機能しているトランジスタの平均キャリア移動度は1.1cm/V-sであった。これを背景として、型2で動作する図5のロールコータ500の結果を図6Bおよび図6Cに示している。
【0034】
図6Bは、半導体層612(図6A)のC8-BTBT薄膜の偏光光学顕微鏡像を示している。基板温度が60℃に保持されているため、粒径は、25mm/秒の速度で通常観察されるものよりも大きい。基板を加熱することにより臨界速度をより高速にシフトさせることができるが、粒子はコーティング方向に沿って伸長していないため、堆積条件が型2に対応することは粒子形態から明らかである。したがって、大きな結晶粒が観察されるのは、臨界速度がより高くシフトしたことによるものではなく、過渡液晶(LC)相からの結晶化によるものである。この効果は、最初に溶液としてコーティングされるが、直接結晶化せず、過渡LC相を経る薄膜として特徴付けられる。結晶相の核形成速度は、最終的な粒径および粒子形態を制御する。この効果は、高温で液晶相を有するBTBT分子コアに基づく分子のクラスで生じることが知られているが、結晶相が安定相であり、過渡LC相ではない基板温度で効果が生じることを強調すべきである。図6Cは、半導体層612としてC8-BTBTを有する、図6AのFET構造600を有するFETのうちの1つからの伝達曲線650の例を示している。そこから推定電荷キャリア移動度を抽出することができる。
【0035】
半導体用途のための例示的な物質
【0036】
図1Aの塗布器100または図2Aの塗布器200などの本開示のFBM塗布器が、有機および/またはハイブリッド有機-無機半導体膜を作製する際に用いられるために配置される場合、いくつかの有機およびハイブリッド有機-無機半導体分子のうちの任意の1つまたは複数を用いることができる。このような分子のクラスには、(I)アントラセンのような単純なポリ芳香族炭化水素(PAH)、(II)TIPS-ペンタセン、2,8-ジフルオロ-5,11-ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラジチオフェン(diF-TES-ADT)、2,7-ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2-b][1]ベンゾチオフェン(C8-BTBT)、および2-デシル-7-フェニル[1]ベンゾチエノ[3,2-b][1]ベンゾチオフェン(Ph-BTBT-C10)のような、有機溶媒中の溶解性を増加させると共に結晶充填に影響を与えるために付加された側基を有するPAH、(III)ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)およびポリ(フッ化ビニリデン-co-トリフルオロエチレン)[P(VDF-TrFE)]のようなポリマー、ならびに、(IV)ハイブリッドペロブスカイト(例えば、鉛ハロゲン化物ペロブスカイト(例えば、CHNHPbI))の分子のようなハイブリッド有機-無機分子が含まれる。P(VDF-TrFE)は誘電体物質であり、他は半導体であることに留意されたい。これらの分子例のいくつかの分子構造を図7に示す。
【0037】
アントラセンは、結晶化が最も容易であり、溶液からコーティングされたときに典型的には最大の結晶粒径を形成するため、クラス1として挙げられた唯一の物質である。本発明の開示に記載されているように、非常に大きな粒径を得るためには特別な方法が必要であるが、クラスIIについては良好な結果が得られる。クラスIIの中には、例外的な場合があり、例えば、加熱された基板上への堆積中などの、いくつかの条件下での溶液堆積中に過渡相として出現し得るLC相を有するBTBTコアを有する物質がある。別の例外はルブレンである(図7には示されていない)。発明者の知る限り、ルブレンの大粒子結晶薄膜は溶液コーティング法によっては得られていない。ポリマー材料(クラスIII)は、典型的には、限定された結晶化度およびコーティング方向に沿った配向整列を示す。
【0038】
例示的なパターン形成方法
【0039】
FETおよびダイオードなどの半導体デバイス、ならびにその一部は、有機もしくはハイブリッド有機-無機半導体物質および/または有機もしくはハイブリッド有機-無機誘電体物質の1つ以上の前駆体溶液を、とりわけ、上記で参照により組み込まれた米国特許第7,444,049号の浸漬技法などのメニスカス堆積技法、または、図1AのFBM塗布器100もしくは図2AのFBM塗布器200などのFBM塗布器を用いる技法を用いて堆積させることによって作製することができる。このようなプロセスは、一般に、このような技術を用いて堆積されたデバイスの各層に対して、前駆体溶液に対して親水性であるパターン化された機能領域を有する基板を提供することを含む。パターン化された領域を囲む領域すなわち非機能領域は、前駆体溶液に対して疎水性である。以下でより詳細に説明するように、前駆体溶液は、疎水性の非機能領域上には堆積しないが、親水性のパターン化された機能部領域上には堆積する。前駆体溶液の結晶性成分は、高い形状忠実度でその中で結晶化する。
【0040】
親水性パターン化機能領域は、任意の適切な方法で規定されてもよい。例えば、親水性パターン化機能領域は、任意の適切な技術を用いて疎水性非機能領域を提供することによって、例えば、親水性層を疎水性層でブランケットコーティングし、疎水性層をパターン化した後に、疎水性層のパターン化機能領域をエッチング除去して、疎水性層の下の親水性物質を露出させることによって、規定され得る。別の例として、前駆体溶液が堆積されることになる親水性層の表面は、前駆体溶液が堆積されることが望まれる親水性のパターン化領域の外側の領域において親水性層を疎水性にするために、パターン化された方法で処理されてもよい。さらなる例として、適切にパターン化された開口を有する除去可能および/または再利用可能な疎水性テンプレートシートが、基板の親水性表面上に重ねられ得るか、そうでなければ基板の親水性表面に適用され得る。
【0041】
詳細な例として、親水性のパターン化機能領域を規定る方法は、疎水性表面を疎水性単分子層、例えば、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)または別の自己組織化単層で処理することを含む。パターンは、マイクロコンタクトスタンプまたはフォトリソグラフィなどのいくつかの手段によって作製することができる。この特定の例は、以下の一般的なステップを通して達成されるフォトリソグラフィによってパターンを作製するが、正確な方法は重要ではない。(i)コーティングされる表面上にポジ型フォトレジストをスピンコーティングするステップと、(ii)シャドウマスクを介してポジ型フォトレジストを紫外線に露光するステップと、(iii)現像液を用いてフォトレジストの露光部分を溶解するステップと、(iv)表面の新たに露出した部分を疎水性自己組織化単分子層で処理するステップと、(v)残りのフォトレジストを除去するステップ。最終除去工程(v)におけるパターン化機能領域は、親水性である下の基板の特性を有する。したがって、フォトレジストに転写されたマスクパターンを用いて、それぞれ機能領域および非機能領域を規定する親水性領域および疎水性領域の相補的パターンを含む分子テンプレートが元の表面上に作製される。
【0042】
図8A~8Cは、一連の概略図800,804,808をそれぞれ示し、液体前駆体溶液と、パターン化された機能が所望される表面との間の疎水性/親水性相互作用を制御することによって、どのようにパターン化が達成されるかを示している。図8Aは、未処理の親水性表面816上に前駆体溶液812をコーティングして、結晶膜812Fを形成することを示している。メニスカス812Mの接触角θc(図8Bおよび図8C)が十分に小さい限り、コーティングがなされる。しかしながら、接触角θcに関するこの説明は、型1においては適切な説明であるが、型2においては、図8Bの812CLにあるような明確な接触線は存在しない。その代わりに、「動的メニスカス」として知られる細長い薄い液体膜812LFが観察される。図8Aに示されるように、薄い液体膜812LFは、その後、溶媒蒸発によって乾燥し、結晶固体膜812Fに変換される。
【0043】
図8Bは、疎水性表面820の場合を示す。この場合、表面張力は減少し、接触角θcは増加し、有意な動的メニスカスは存在しない。その結果、固体薄膜は生成されない。図8Cは、親水性領域824(1)および疎水性領域824(2)を有するパターン化表面824のより複雑な場合を示している。ここで、後続接触線812CL’は、親水性領域824(1)と疎水性領域824(2)との間の境界824Bで固定されている。これは、メニスカス828が動的に引き伸ばされることをもたらす。その結果、親水性領域のみに薄膜832が堆積する。膜832は、明確な接触線が存在する場合には結晶性固体膜であってもよく(型1)、または、場合によっては最終結晶状態に達する前に1つ以上の過渡相を経て変換することによって、その後に結晶化する液体薄膜であってもよい(型2)。図8Cに見られるように、膜832は、疎水性領域824(2)と親水性領域824(1)との間の境界824Bで固定される。
【0044】
パターンは、自己組織化単分子層によって保護された表面の部分におけるエッチングを抑制することによって、ウェットエッチングまたはドライエッチングのいずれかの間に表面パターンを規定する等の、様々な異なる方法で用いられてきた。従来技術において、除去法として分類され得るエッチング法によって表面パターンを作製することに対して、かなりの注意が払われてきた。本開示の方法において、結晶薄膜は、溶液コーティングを用いる付加法によって作製される。上述のように、溶液の湿潤性が低いため、コーティングは親水性領域で起こるが、疎水性領域では起こらない。本開示のパターン化コーティング方法を用いる機能製作は、従来のスロット-ダイコーティング等のほとんどの拡張可能な高スループットコーティング方法が、例えば、少なくとも1mm幅の幅広ストリップに亘って表面を完全にコーティングするように設計されるため、先行技術に対して非常に独特でありかつ望ましい。対照的に、本明細書に開示される方法は、完全にパターン化された半導体層および他の層を、コーティング前に比較的小さい機能領域が予め規定される基板の比較的広い領域に亘って、付加的に作製することができる。
【0045】
例えば、図9Aおよび図9Bは、前駆体溶液が堆積される親水性パターン領域912および916(混乱を避けるために、それぞれ少数のみがラベル付けされている)と、前駆体溶液が堆積されるべきでない疎水性領域920とを有するパターン化表面に塗布されている前駆体溶液908のメニスカス908Mの動きを示すために、短時間離れて撮影された2つの画像900および904を示している。図9Aおよび図9Bを相互に比較すると、前駆体溶液908が親水性パターン化領域912の1つとまだ接触しているメニスカス908Mの領域908M(1)~908M(4)では、メニスカスは動的に引き伸ばされて(図8Cも参照)非線形接触線908CL(図9A)を形成するが、メニスカスが疎水性領域と接触している場合、濡れ力がはるかに低いために動的引き伸ばしは存在しないことが容易に分かる。図9Bのメニスカス908Mは、親水性パターン領域912の最後を十分に通過しているため、接触線908CLは、メニスカス内の表面張力がそのときでも均一な分布であるために再び線形である。この例では、印刷されたパターン化領域912および916は、結晶化C8-BTBTを含有する。印刷速度は、コーティング型1で0.3mm/秒であった。
【0046】
図10A図10Cは、とりわけ、最大方向に約200μm以上であり、最小方向に約200μm以下である機能部、最大方向に約100μm以上であり、最小方向に約100μm以下である機能部、最大方向に約50μm以上であり、最小方向に約50μm以下である機能部などの小さな機能部、または、20μm未満の最大寸法を有する機能部などのほぼ完全なコントラストおよび忠実度を有する印刷を示している。これらの顕著な結果は、メニスカス中の溶液の接触角に対するコーティングプロセスの極端な感度(上記参照)、および、メニスカスが親水性領域の境界に固定されるかどうかに起因するようである。この方法は、溶液の受動的な供給によっても改善されるように思われる。これは、上述した図1AのFBM塗布器100および図2A図2DのFBM塗布器200などの本開示のFBM塗布器を用いて容易にすることができる。
【0047】
図10A~10Cは、それぞれ、0.5重量%トルエン溶液1004から25mm/秒の書込速度で80℃でパターン化C8-BTBTを堆積させている間に撮影されたビデオから抽出された3つのフレーム1000(1)~1000(3)を示している。図10Aのフレーム1000(1)は、印刷段階が停止した後のおよそ1秒の瞬間に対応し、この時点では、図中の単一のパターン化された機能部1008は、主に溶液1004から構成される。液晶相から結晶相の初期核形成事象は、1004Nで見ることができる。パターン化された機能部1008の結晶化は、それぞれ図10Bおよび10Cのフレーム1000(2)および1000(3)において左から右に伝播することが観察される。結晶化フロント1004CFは、フレーム1000(2)においてパターン化機能部の長手方向中心にほぼ示され、パターン化機能部全体は、フレーム1000(3)において完全に結晶化される。これらの後続のフレーム1000(2)および1000(3)は、約1秒だけ互いに分離される。フレーム1000(2)もまた、約1秒だけフレーム1000(1)から分離される。この例では、パターン化機能部は、150μm×1mmである。この印刷が、通常は小粒子の薄膜が得られるコーティング型2で行われたことは注目に値する。しかしながら、加熱された基板上への堆積は、C8-BTBTを過渡液晶状態にさせて、大きな結晶粒構造をもたらした。ここではパターン化機能部1008を囲む疎水性領域1112によって提供されるテンプレート化は、パターン化機能部の下にある表面の親水性領域(図示せず)内で結晶相の核形成を生じさせた。したがって、この方法では、適切なテンプレートを利用することによって、表面上の任意の所望の位置に単結晶ドメインを配置することができる。
【0048】
高品質の結晶機能部を印刷する能力は、粒界欠陥のない電子デバイスの作製について大きな有用性を示すことができる。特に、図10A~10Cは、一般的な方法が、低コストで高スループットの方法であり、大きな結晶粒の薄膜がパターン化印刷によって生成されるため、上記の背景技術の項で説明した所望の属性の3つ全てを満たすことを実証している。パターン化は、結晶粒をFETなどの任意のデバイスの位置に配置することができるため、非常に大きな粒径(例えば、>25.4mm)を得る必要性を幾分緩和する。これは、デバイスの領域内に粒界欠陥のない半導体層を生成する手段を提供する。この方法は、パターン化薄膜について図10A図10Cに示される過渡相現象を利用すること等によって、高速(例えば、>1mm/秒)で大きな結晶粒を得る方法とも適合する。
【0049】
上述のように、パターン化は、表面の直接テンプレート化を必要としない追加の手段によって達成されてもよい。例えば、シートマスクの固体部分が疎水性の表面を有するシートマスクを作製することができる。シートマスクが親水性基板表面と係合されると、シートマスクの開口は、コーティングされる親水性表面の一部が露出されることを可能にする。マスクがメニスカスの典型的な寸法よりも薄いと仮定すると、シートマスク自体が、上述のプロセスにおけるテンプレートの役割を果たすであろう。このアプローチの利点は、シートマスクを容易に除去することができ、これにより複数の層の堆積が容易になることである。
【0050】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および追加を行うことができる。上述の様々な実施形態のそれぞれの機能部は、関連する新しい実施形態において多数の機能部の組み合わせを提供するために、必要に応じて、他の記載された実施形態の機能部と組み合わされてもよい。さらに、上記は、いくつかの別個の実施形態を説明しているが、本明細書に説明されているものは、本発明の原理の適用の単なる例示である。さらに、本明細書における特定の方法は、特定の順序で実行されるものとして例示および/または説明され得るが、順序付けは、本開示の態様を達成するために、当業者の範囲内で非常に可変である。したがって、この説明は、例としてのみ解釈されることを意味し、本発明の範囲を限定することを意味しない。
【0051】
例示的な実施形態が、上記で開示され、添付の図面に示されている。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に具体的に開示されたものに対して、様々な変更、省略および追加を行うことができることが当業者には理解されよう。

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
【国際調査報告】