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特表2024-539571耐食性及び表面外観に優れためっき鋼板及びその製造方法
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  • 特表-耐食性及び表面外観に優れためっき鋼板及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】耐食性及び表面外観に優れためっき鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/06 20060101AFI20241022BHJP
   C23C 2/02 20060101ALI20241022BHJP
   C23C 2/26 20060101ALI20241022BHJP
   C22C 18/04 20060101ALI20241022BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20241022BHJP
   C22C 38/38 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
C23C2/06
C23C2/02
C23C2/26
C22C18/04
C22C38/00 301T
C22C38/38
C22C38/00 301W
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519266
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 KR2022014541
(87)【国際公開番号】W WO2023055065
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0130131
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】キム、 テ-チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム、 スン-ユ
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ミュン-ス
(72)【発明者】
【氏名】ユ、 ボン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、 ヨン-キュン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 イル-リョン
【テーマコード(参考)】
4K027
【Fターム(参考)】
4K027AA05
4K027AA22
4K027AB03
4K027AB13
4K027AB44
4K027AC12
4K027AC18
4K027AC52
4K027AC64
4K027AE02
4K027AE03
(57)【要約】
本発明は、耐食性に優れると同時に、溶接性及び化成処理性のうち1つ以上の特性に優れたZn-Mg-Al系めっき鋼板及びこの製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板;及び
前記素地鋼板の少なくとも一面に備えられたZn-Mg-Al系めっき層;を含み、
前記めっき層は、下記関係式1及び2を満たす、めっき鋼板。
[関係式1]
-10.0≦[Zn]1/10t-[Zn]≦-5.0
(前記関係式1において、前記[Zn]1/10tはめっき層の表面から厚さ方向に1/10t位置(tはめっき層の全体厚さ)におけるZnの重量%含有量を表し、前記[Zn]はめっき層の表面におけるZnの重量%含有量を表す。)
[関係式2]
+3.0≦[Al]1/10t-[Al]≦+13.0
(前記関係式2において、前記[Al]1/10tはめっき層の表面から厚さ方向に1/10t位置(tはめっき層の全体厚さ)におけるAlの重量%含有量を表し、前記[Al]はめっき層の表面におけるAlの重量%含有量を表す。)
【請求項2】
前記素地鋼板と前記Zn-Mg-Al系めっき層との間に備えられたFe-Al系抑制層;をさらに含む、請求項1に記載のめっき鋼板。
【請求項3】
前記めっき層は、重量%で、Mg:4.0~7.0%、Al:8.2~19.5%、残部Zn及びその他の不可避不純物を含む、請求項1に記載のめっき鋼板。
【請求項4】
下記関係式3をさらに満たす、請求項1に記載のめっき鋼板。
[関係式3]
-1.0≦[Mg]1/10t-[Mg]≦+1.0
(前記関係式3において、前記[Mg]1/10tはめっき層の表面から厚さ方向に1/10t位置(tはめっき層の全体厚さ)におけるMgの重量%含有量を表し、前記[Mg]はめっき層の表面におけるMgの重量%含有量を表す。)
【請求項5】
前記めっき層の表面から厚さ方向に2/3t位置におけるMgの重量%含有量は、めっき層内のMgの重量%平均含有量に対して±0.5重量%を満たす、請求項1に記載のめっき鋼板。
【請求項6】
前記めっき層の表面でZn固溶率が27原子%以上であるAl相の面積率は、2.0~10.1%である、請求項1に記載のめっき鋼板。
【請求項7】
1200~2000mpmの回転速度で金属材が循環するショットブラストキャビンで進行する鋼板に対して、粒度が0.6~1.0mmの金属材ボールが400~1200kg/minで素地鋼板の表面に投射するように1次ショットブラスト処理を実行する段階;
1200~2000mpmの回転速度で金属材が循環するショットブラストキャビンで進行する鋼板に対して、粒度が0.2~0.5mmの金属材ボールが400~1200kg/minで素地鋼板の表面に投射するように2次ショットブラスト処理を実行する段階;
前記ショットブラスト処理された素地鋼板を重量%で、Mg:4.0~7.0%、Al:8.2~19.5%、残部Zn及びその他の不可避不純物を含み、平衡状態図上の凝固開始温度(Ts)に対してTs+20℃~Ts+80℃の温度で維持されるめっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきする段階;及び
前記溶融亜鉛めっきされた鋼板を凝固開始温度から凝固終了温度まで2~8℃/sの平均冷却速度で不活性ガスを用いて冷却する段階;を含む、めっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記溶融亜鉛めっきを行う前に、前記ショットブラスト処理された素地鋼板を表面粗さRaが1.8~2.8μmであるダルロールを用いて100~400tonのロール圧下を鋼板表面に加える事前調質圧延を行う段階をさらに含む、請求項7に記載のめっき鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐食性及び溶接性に優れた高耐食めっき鋼板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
亜鉛系めっき鋼板は、腐食環境に晒されたとき、鉄より酸化還元電位が低い亜鉛が先に腐食され、鋼材の腐食が抑制される犠牲防食の特性を有する。また、めっき層の亜鉛が酸化しながら鋼材の表面に緻密な腐食生成物を形成させて、酸化雰囲気から鋼材を遮断することで鋼材の耐腐食性を向上させる。このような有利な特性のため、亜鉛系めっき鋼板は最近建資材、家電製品及び自動車用鋼板にその適用範囲が拡大している。
【0003】
しかし、産業高度化に伴う大気汚染の増加により腐食環境が徐々に悪化しており、資源及び省エネに対する厳しい規制により、従来の亜鉛めっき鋼材よりもさらに優れた耐食性を有する鋼材の開発に対する必要性が高まっている。
【0004】
かかる問題を改善するために、亜鉛めっき浴にアルミニウム(Al)及びマグネシウム(Mg)等の元素を添加して鋼材の耐食性を向上させる亜鉛合金系めっき鋼板の製造技術に関する研究が様々に進められている。代表的な例としては、Zn-Alめっき組成系にMgをさらに添加したZn-Mg-Al系亜鉛合金めっき鋼板がある。
【0005】
一方、Zn-Mg-Al系亜鉛合金めっき鋼板は、通常塗装加工又は溶接加工されて用いられる場合が多いが、めっき層の表面にAl成分が多量分布する場合、Al系の酸化物により塗装前処理に必要な化成処理性を劣化するようにし、塗装接着性が悪くなるという欠点がある。さらに、アーク溶接時のAl蒸気の影響で溶接金属内の気孔が残存し、溶接継手の強度を低下させるという問題もある。
【0006】
また、加工後の亜鉛系めっき鋼板は製品の外側に備えられる場合が多いが、塗装接着性の劣化による部分的剥離現象及び溶接気孔による溶接継手の形状不良などの表面損傷要素が加わることによって表面品質に満たず、外観品質の改善が必要であった。
【0007】
したがって、これまでに上述した耐食性、溶接性及び化成処理性などのすべての特性に優れた高度な需要を満たすことができるレベルの技術は開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開公報第2010-0073819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一側面によると、耐食性及び溶接性に優れためっき鋼板及びこの製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明の他の一側面によると、耐食性、溶接性及び化成処理性の全てに優れためっき鋼板及びこの製造方法を提供する。
【0011】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、誰でも本発明の明細書の全体内容から発明の追加的な課題を理解するのに困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面は、
素地鋼板;及び
上記素地鋼板の少なくとも一面に備えられたZn-Mg-Al系めっき層;を含み、
上記めっき層は、下記関係式1及び2を満たす、めっき鋼板を提供する。
[関係式1]
-10.0≦[Zn]1/10t-[Zn]≦-5.0
(上記関係式1において、上記[Zn]1/10tはめっき層の表面から厚さ方向に1/10t位置(tはめっき層の全体厚さ)におけるZnの重量%含有量を表し、上記[Zn]はめっき層の表面におけるZnの重量%含有量を表す。)
[関係式2]
+3.0≦[Al]1/10t-[Al]≦+13.0
(上記関係式2において、上記[Al]1/10tはめっき層の表面から厚さ方向に1/10t位置(tはめっき層の全体厚さ)におけるAlの重量%含有量を表し、上記[Al]はめっき層の表面におけるAlの重量%含有量を表す。)
【0013】
本発明の他の一側面は、
1200~2000mpmの回転速度で金属材が循環するショットブラストキャビンで進行する鋼板に対して、粒度が0.6~1.0mmの金属材ボールが400~1200kg/minで素地鋼板の表面に投射するように1次ショットブラスト処理を実行する段階;
1200~2000mpmの回転速度で金属材が循環するショットブラストキャビンで進行する鋼板に対して、粒度が0.2~0.5mmの金属材ボールが400~1200kg/minで素地鋼板の表面に投射するように2次ショットブラスト処理を実行する段階;
上記ショットブラスト処理された素地鋼板を重量%で、Mg:4.0~7.0%、Al:8.2~19.5%、残部Zn及びその他の不可避不純物を含み、平衡状態図上の凝固開始温度(Ts)に対してTs+20℃~Ts+80℃の温度に維持されるめっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきする段階;
上記溶融亜鉛めっきされた鋼板を凝固開始温度から凝固終了温度まで2~8℃/sの平均冷却速度で不活性ガスを用いて冷却する段階;を含む、めっき鋼板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によると、耐食性及び溶接性に優れためっき鋼板及びその製造方法を提供することができる。
【0015】
また、本発明の他の一側面によると、耐食性、溶接性及び化成処理性の全てに優れためっき鋼板及びこの製造方法を提供することができる。
【0016】
本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例7から得られためっき鋼板に対するGDSを用いた成分分析プロファイルを示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で用いられる用語は、特定実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定する意図ではない。また、本明細書において用いられる単数の形態は、関連定義がこれと明らかに反対される意味を表しない限り、複数の形態も含む。
【0019】
明細書で用いられる「含む」の意味は、構成を具体化し、他の構成の存在や付加を除外するものではない。
【0020】
異なって定義しない限り、本明細書において用いられる技術用語及び科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。辞書で定義されている用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有するものとして解釈される。
【0021】
以下、本発明の一側面に係る「めっき鋼板」について詳細に説明する。本発明において各元素の含有量を表すときには、特に断りのない限り、重量%を意味する。
【0022】
従来のZn-Mg-Al系亜鉛合金めっき鋼板の関連技術では耐食性の向上のためにMgを添加したが、Mgを過度に添加する場合、めっき浴浮遊ドロスの発生が多くなって、ドロスを頻繁に除去しなければならない問題があり、Mg添加量の上限を3%に制限していた。
【0023】
そこで、Mg添加量を3%より増加させて耐食性をさらに改善するために研究したが、Mgを多く添加するほどめっき浴浮遊ドロスの発生が格段に高くなりめっき浴管理が難しいだけでなく、製品の外観が暗くなり、表面損傷要素が加わることによって、外観品質を確保することが難しいという問題があった。
【0024】
したがって、上述した問題点を解決するために、Mg添加量を高くするほどAl添加量を同時上向して、Mg酸化物よりもAl酸化物が優先的にめっき浴表面に形成されて、Mg酸化物基盤の浮遊ドロスを抑制し、製品の外観が容易に黒化する現象を防止する技術的試みがなされていた。
【0025】
しかし、Al添加量を高く成分系を設定し、たとえ、めっき作業性及び外観品質を確保しても、めっき層の表面に必然的に生成されるAl酸化物により、塗装接着性劣化による部分的剥離現象及び溶接気孔による溶接継手の形状不良などの表面損傷要素が加わることによって塗装加工及び溶接加工後の外観品質を確保することが難しいという問題があった。
【0026】
それ故に、従来技術では優れた耐食性確保と同時に、優れた溶接性及び/または化成処理性までも確保するZn-Mg-Al系亜鉛合金めっき鋼板を提供することは技術的に困難であった。
【0027】
そこで、本発明者らは、上述した問題を解決すると同時に、耐食性だけでなく、溶接性及び/又は化成処理性にも優れためっき鋼板を提供するために鋭意検討を行った結果、めっき層から酸化による影響を除いた後、めっき層の表面から厚さ方向に1/10t位置(tはめっき層の全体厚さ)までの表層部領域における各成分(例えば、Zn及びAl、さらにはMgを含む)の含有量の変化が重要な要素であることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0028】
したがって、以下では耐食性に優れると同時に、さらに溶接性及び/または化成処理性にも優れためっき鋼板の構成について具体的に説明する。
【0029】
まず、本発明によるめっき鋼板は、素地鋼板;上記素地鋼板の少なくとも一面に備えられたZn-Mg-Al系めっき層;を含む。
【0030】
本発明では、素地鋼板の種類については特に限定しないことができる。例えば、上記素地鋼板は、通常の亜鉛系めっき鋼板の素地鋼板として用いられるFe系素地鋼板、すなわち熱延鋼板または冷延鋼板であることができるが、これに限定されない。あるいは、上記素地鋼板は、例えば、建築用、家電用、自動車用素材として用いられる炭素鋼、極低炭素鋼または高マンガン鋼であることもできる。
【0031】
但し、一例として、上記素地鋼板は、重量%で、C:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)0.18%以下、Si:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)1.5%以下、Mn:0.01~2.7%、P:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)0.07%以下、S:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)0.015%以下、Al:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)0.5%以下、Nb:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)0.06%以下、Cr:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)1.1%以下、Ti:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)0.06%以下、B:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)0.03%以下、及び残部Fe及びその他の不可避不純物を含む組成を有することができる。
【0032】
特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上記素地鋼板の少なくとも一面にはZn-Mg-Al系合金からなるZn-Mg-Al系めっき層が備えられることができる。上記めっき層は、素地鋼板の一面にのみ形成されていることもでき、あるいは、素地鋼板の両面に形成されていることもできる。このとき、上記Zn-Mg-Al系めっき層は、Mg及びAlを含み、Znを主に含む(すなわち、Znを50%以上含む)めっき層をいう。
【0033】
特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上記Zn-Mg-Al系めっき層の厚さは9~100μmであることができ、より好ましくは20~90μmであることができる。めっき層の厚さが9μm未満であると、めっき層の厚さ偏差から生じる誤差により局部的にめっき層が薄すぎる場合があり、耐食性が劣る場合がある。めっき層の厚さが100μm超過であると、溶融めっき層の冷却が遅れることがあり、一例として垂れ形状などめっき層の表面に凝固欠陥が発生する余地があり、めっき層を凝固させるために鋼板の生産性が低下することがある。
【0034】
一方、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上記素地鋼板と上記Zn-Mg-Al系めっき層との間にはFe-Al系抑制層をさらに含むことができる。上記Fe-Al系抑制層は、FeとAlの金属間化合物を主に含む(例えば、60%以上)層であり、FeとAlの金属間化合物としてはFeAl、FeAl、FeAl等が挙げられる。その他にも、Zn、Mgなどのようにめっき層に由来する成分が一部、例えば40%以下さらに含まれることもできる。上記抑制層は、めっき初期素地鋼板から拡散したFe及びめっき浴成分による合金化により形成された層である。上記抑制層は、素地鋼板とめっき層との密着性を向上させる役割を果たし、同時に素地鋼板からめっき層へのFe拡散を防止する役割を果たすことができる。上記抑制層は、素地鋼板とZn-Mg-Al系めっき層との間に連続的に形成されることもでき、不連続的に形成されることもできる。このとき、上記抑制層については、上述した説明を除いては、当該技術分野で通常的に知られた内容を同様に適用することができる。
【0035】
特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上記抑制層の厚さは0.01~2.50μmであることができる。上記抑制層は、合金化を防ぎ、耐食性を確保する役割を果たすが、ブリトルであるため、加工性に影響を及ぼすことがあり、その厚さを2.50μm以下にすることができる。但し、抑制層としての役割を果たすためには、その厚さを0.01μm以上にすることができる。上述した効果をより向上させる観点から、好ましくは上記抑制層の厚さの上限は、1.80μmであることができる。また、上記抑制層の厚さの下限は0.02μmであることができる。このとき、上記抑制層の厚さは、素地鋼板の界面に対して垂直な方向への最小厚さを意味することができる。
【0036】
一方、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上記Zn-Mg-Al系めっき層は、重量%で、Mg:4.0~7.0%、Al:8.2~19.5%、残部Zn及びその他の不可避不純物を含むことができる。以下では、各成分について具体的に説明する。
【0037】
Mg:4.0%以上7.0%以下
Mgは、めっき鋼材の耐食性を向上させる役割を果たす元素であり、本発明では目的とする優れた耐食性を確保するためにめっき層内のMg含有量を4.0%以上に制御する。一方、Mgが過度に添加される場合にはドロスが発生する可能性があるため、Mg含有量を7.0%以下に制御する。一方、上述した効果をより最大化する観点からより好ましくは、上記Mg含有量の下限は4.7%であることができ、あるいは上記Mg含有量の上限は6.0%であることができる。
【0038】
Al:8.2%以上19.5%以下
一般的にMgが1%以上添加される場合、耐食性向上の効果は発揮されるが、Mgが2%以上添加すると、めっき浴内のMgの酸化によるめっき浴浮遊ドロス発生が増加して、ドロスを頻繁に除去する必要があるという問題がある。このような問題により、従来技術ではZn-Mg-Al系亜鉛合金めっきでMgを1.0%以上添加して耐食性を確保するが、Mg含有量の上限線を3.0%に設定して常用化していた。しかし、上述したように、耐食性をさらに向上させるためには、Mg含有量を4%以上に高める必要があるが、めっき層内のMgを4%以上含むと、めっき浴内のMgの酸化によるドロスが発生する問題があるため、Alを8.2%以上添加させる必要がある。但し、ドロス抑制のためにAlを過度に添加すると、めっき浴の融点が高くなり、それに伴う操業温度が高すぎることによってめっき浴構造物の浸食及び鋼材の変性が生じるなどの高温作業による問題が生じることがある。さらに、めっき浴内のAl含有量が過度であると、Alが素地鉄のFeと反応してFe-Al抑制層の形成に寄与せず、AlとZnの反応が急激に起こり、塊状のアウトバースト相(Outburst相)が過度に形成されて耐食性が却って悪化することがある。したがって、めっき層内のAl含有量の上限は19.5%に制御することが好ましい。一方、上述した効果をより最大化する観点からより好ましくは、上記Al含有量の下限は11.0%であることができ、あるいは上記Al含有量の上限は18.0%であることができる。
【0039】
残部Zn及びその他の不可避不純物
上述しためっき層の組成以外に、残部はZn及びその他の不可避不純物であることができる。不可避不純物は、通常の溶融亜鉛めっき鋼板の製造工程で意図せずに混入されるものであれば全て含まれることができ、当該技術分野の技術者であれば、その意味を容易に理解することができる。
【0040】
本発明によると、上記めっき層は下記関係式1及び2を満たす。
[関係式1]
-10.0≦[Zn]1/10t-[Zn]≦-5.0
(上記関係式1において、上記[Zn]1/10tはめっき層の表面から厚さ方向に1/10t位置(tはめっき層の全体厚さ)におけるZnの重量%含有量を表し、上記[Zn]はめっき層の表面におけるZnの重量%含有量を表す。)
[関係式2]
+3.0≦[Al]1/10t-[Al]≦+13.0
(上記関係式2において、上記[Al]1/10tはめっき層の表面から厚さ方向に1/10t位置(tはめっき層の全体厚さ)におけるAlの重量%含有量を表し、上記[Al]はめっき層の表面におけるAlの重量%含有量を表す。)
【0041】
本発明者らは従来技術に比べてさらに向上した耐食性確保と同時に、溶接性及び/又は化成処理性を確保するために鋭意検討を行った結果、めっき層における酸化による影響を除き、めっき層の表面から厚さ方向に1/10t位置(tはめっき層の全体厚さ)までの表層部領域における各成分(例えば、Zn及びAl、さらにはMgを含む)の含有量の変化が重要な要素であることを見出した。
【0042】
本発明において、上記Zn-Mg-Al系めっき層は、高耐食めっき鋼板において共通して現れる相であるZn単相及びZn-MgZn-Al系3元共晶相を含むことができる。通常めっき層内のAlとMg含有量が少ないほど、全体めっき層で上記Zn単相及びZn-MgZn-Al系3元共晶相が生成される量が多くなり、めっき層内のAl及びMg含有量が多くなるほどMgZn相及びAl単相が生成される量が多くなる傾向がある。このとき、Mg含有量が4%以上である本発明のようなめっき成分系では、Mg含有量が増えるほどドロス抑制のためにAl含有量も同時に増加しなければならないため、それに応じてAl単相も共存するようになる。そこで、本発明者らは研究を重ねることにより、上述したMgZn相及びAl単相の核生成-成長をめっき層の表面で抑制し、めっき層の内部で促進させることが、めっき層の表面にZn単相、Al-Zn系2元共晶相及びZn-MgZn-Al系3元共晶相の分布を高くすることができ、Zn成分の含有量が高いと同時にAl成分の含有量が低いめっき層の表面を製作するのに寄与することを見出した。
【0043】
すなわち、本発明者らは、上述した耐食性の確保と同時に、溶接性及び化成処理性に直接的な影響を及ぼす領域は、めっき層の表面から厚さ方向に1/10t位置までの表層部領域であることを確認した。したがって、上記めっき層の表層部領域におけるZn含有量の変化及びAl含有量の変化を上述した関係式1及び2を満たすように制御することで、耐食性だけでなく、溶接性及び/又は化成処理性にも優れためっき鋼板を効果的に得られることが分かった。
【0044】
一方、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上述した効果をより最大化する観点からより好ましくは、上記関係式1で定義される[Zn]1/10t-[Zn]値の下限は-9.9であることができ、あるいは上記[Zn]1/10t-[Zn]値の上限は-5.3(最も好ましくは-7.0)であることができる。また、上記関係式2で定義された[Al]1/10t-[Al]値の下限は+6.4であることができ、あるいは上記[Al]1/10t-[Al]値の上限は+11.1であることができる。
【0045】
また、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、本発明者らは、耐食性をさらに改善するために鋭意検討を行った結果、選択的に、下記関係式3をさらに満たすように厚さ方向にMg含有量のプロファイルを制御することで、厚さ方向に均一に腐食が進行することにより、さらに高いレベルの耐食性に向上させる効果があることをさらに発見した。
[関係式3]
-1.0≦[Mg]1/10t-[Mg]≦+1.0
(上記関係式3において、上記[Mg]1/10tはめっき層の表面から厚さ方向に1/10t位置(tはめっき層の全体厚さ)におけるMgの重量%含有量を表し、上記[Mg]はめっき層の表面におけるMgの重量%含有量を表す。)
【0046】
本発明の一実施形態によると、上記Zn-Mg-Al系めっき層の耐食性機構として作用する犠牲防食セルは、MgZnの電位が水素還元電位上-1.2Vであり、Alの電位が水素還元電位上-0.7Vとして大きな電位差を確保することで、それぞれ陽極と陰極として作用して、隣接しているMgZn相とAl単相の微細組織との間のガルバニックセル(Galvanic cell)を形成する。すなわち、腐食が進行する際に、溶出が行われる犠牲防食セルの陽極(MgZn)がめっき層の深さ方向に不規則的に形成されている場合、上述した優れた耐食性及び犠牲防食性を有するガルバニックセルの陽極-陰極の電位差が平板の位置別に異なるように形成されて、特定の部位が先に腐食が起こり、位置別に不均一に腐食が進行されることができる。したがって、上記関係式3を満たすようにめっき層の表層部のMg含有量の変化を少なく制御することで、厚さ方向への均一な腐食を促進して全体的な耐食性をさらに改善することができるようになる。
【0047】
一方、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上述した効果をより最大化する観点からより好ましくは、上記関係式3で定義された[Mg]1/10t-[Mg]値の下限は-0.8であることができ、あるいは上記[Mg]1/10t-[Mg]値の上限は+0.8であることができる。
【0048】
上述した関係式1~3で定義した1/10t位置における各成分の含有量及びめっき層の表面における各成分の含有量に対する測定方法については特に限定しないが、例えば次のような方法で測定することができる。
【0049】
すなわち、めっき鋼材を垂直方向に切断した後、グロー放電分光分析器(GDS;Glow Discharge Optical Emission Spectrometry)を用いてめっき層断面におけるZn、Al、Mg、及びFe等の各成分に対する含有量分布を測定する。続いて、めっき層の酸化による影響を排除するために、本発明ではめっき層最表面から厚さ方向に0.1μmまでの領域は除外する。したがって、本明細書において、上述した「めっき層の表面」とは、上記酸化による影響を受ける領域を除き、厚さ方向にめっき層の最表面から0.1μm位置となる地点を意味する。したがって、上記関係式1~3で定義されためっき層の表面における各成分の含有量は、めっき層最表面から0.1μm位置における各成分(Zn、Al、及びMg)の含有量と定義することができる。
【0050】
一方、上述しためっき層の表面から厚さ方向に1/10t位置における各成分の含有量を定義するために、全体めっき層の厚さ(t)は、上記GDSを用いて測定された各成分のプロファイルに基づいて、めっき層の表面からZn及びFeの含有量が互いに一致する位置までの距離をtと定義する。これにより、上記めっき層の全体厚さtに対する1/10t位置を定義可能であるため、1/10tとなる地点でのGDSで測定された各成分(Zn、Al及びMg)の含有量を測定することができる。
【0051】
例えば、図1で定義された実施例7の場合には、ZnとFeの含有量が互いに一致する位置までのtの値は34μm程度となる。したがって、1/10t位置はめっき層の表面から3.4μm程度の地点を意味するため、上記めっき層の表面から3.4μm程度の地点における各成分の重量%含有量を測定することで、[Zn]1/10t、[Al]1/10t、[Mg]1/10tの値を測定することができる。
【0052】
また、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上記めっき層の表面から厚さ方向に2/3t位置におけるMgの重量%含有量は、めっき層内のMgの重量%平均含有量に対して±0.5wt%範囲であることができる。これを満たすことにより、厚さ方向に均一に腐食が進行されて、さらに高いレベルの耐食性に向上させる効果を発揮することができる。
【0053】
一方、特に限定するものではないが、上述した効果をより最大化する観点からより好ましくは、上記めっき層の表面から厚さ方向に2/3t位置におけるMgの重量%含有量はめっき層内のMgの重量%平均含有量に対して±0.3wt%の範囲を満たすことができる。
【0054】
このとき、上記めっき層内のMgの重量%平均含有量の測定方法については特に限定されない。但し、一例として、上述したGDSを用いて測定された厚さ方向におけるMg含有量の変化を基準に、めっき層の最表面から0.1μmまでの領域を除き、最短距離tまで0.5μm毎に各地点におけるMg含量を測定した後、これによって計算された平均値で定義することができる。
【0055】
また、上記めっき層の表面から厚さ方向に2/3t位置におけるMgの重量%含有量についても同様に、めっき層最表面から0.1μmまでの領域を除き、先に定義したtを基準として2/3t位置におけるMg含有量を意味することができる。
【0056】
一方、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、選択的に、上記めっき層の表面でZn固溶率が27原子%以上であるAl単相の面積率は、2.0~10.1%であることができる。上記Zn固溶率が27原子%以上のAl単相の面積率が2.0%未満であるか、10.0%超過であると、溶接性及び化成処理性のうち1つ以上の特性が悪化される余地がある。上述した効果をより向上させる観点から、好ましくは、上記Zn固溶率が27原子%以上のAl単相の面積率の下限は2.2%であることができ、あるいは上記Zn固溶率が27原子%以上のAl単相の面積率の上限は、4.0%であることができる。
【0057】
このとき、本明細書において、Al単相とは、Zn固溶率に関わらず、Alを主体とする相を意味するものであり、固溶したZn及び不可避に含まれるMg等の不純物を除いては残部がAlである相を意味する。具体的には、通常的に従来技術では、Al単相としてZn固溶率が27%未満と低いAl単相のみが存在することが知られていた。しかし、本発明者らは鋭意検討を行った結果、めっき層の表面に存在するAl単相はZn固溶率が27%未満と低いAl単相だけでなく、Zn固溶率が27%以上と高いAl単相も存在することが分かった。さらに、追加的に上述した耐食性、溶接性及び化成処理性などを改善するためには、Zn固溶率が27%以上のAl単相の面積率を低く制御するが、2.0面積%以上含ませることが溶接性及び化成処理性に悪影響を与えるめっき層の表面に生成されるAl酸化物を減少させる観点から有効な要素であることが分かった。
【0058】
また、上記めっき層の表面におけるZn固溶率が27原子%以上であるAl単相の面積率の測定方法については特に限定されない。但し、一例として、走査電子顕微鏡(SEM)の測定条件で導出されたイメージを浦項産業科学研究院(RIST)のRISA(微細組織相分率の分析ソフト)のスーパーピクセル(Super-pixel)アルゴリズム基盤、イメージ自動生成ソフトを利用する。スーパーピクセルアルゴリズムは、全体イメージを数千個から数万個の領域(スーパーピクセル)に分割して、パターンや特徴が類似したスーパーピクセルを比較して類似度を測定し、ピクセルの明るさ値に対するヒストグラムを計算した後、類似度が事前に定義した閾値以上の場合、スーパーピクセルを自動的に選択する機構である。事前に定義した閾値を指定する一例として、SEMで導出されたイメージの上記Al単相の境界はEDSを活用してAl単相組織内に固溶されているZn固溶率27原子%を基準に各相に対する定義を事前に行うことで、ソフト上の明るさ値に対するヒストグラム化及び組織の区別が可能になる。上述したRISA(微細組織相分率の分析ソフト)に対する技術的思想は、韓国公開公報第2019-0078331号を通じて確認することができる。
【0059】
次に、本発明の他の一側面に係る「めっき鋼板の製造方法」について詳細に説明する。但し、本発明のめっき鋼板が必ずしも以下の製造方法により製造されなければならないことを意味するものではない。
【0060】
本発明の一実施形態によると、まず、素地鋼板を準備する段階をさらに含むことができ、素地鋼板の種類は特に限定されない。通常の溶融亜鉛めっき鋼板の素地鋼板として用いられるFe系素地鋼板、すなわち熱延鋼板または冷延鋼板であることができるが、これに限定されるものではない。また、上記素地鋼板は、例えば、建築用、家電用、自動車用素材として用いられる炭素鋼、極低炭素鋼、または高マンガン鋼であることができるが、これに制限されるものではない。このとき、上記素地鋼板については上述した説明を同様に適用することができる。
【0061】
本発明によると、1200~2000mpmの回転速度で金属材が循環するショットブラストキャビンで進行する鋼板に対して、粒度が0.6~1.0mmの金属材ボールが400~1,200kg/minで素地鋼板の表面に投射するように1次ショットブラスト処理を行う。上記1次ショットブラスト処理の条件を満たすことにより、めっき前の素地鋼板の表面酸化物を1次的に除去して、酸化物による影響を最小化する効果を確保することができる。
【0062】
上記1次ショットブラスト処理に続いて、1200~2000mpmの回転速度で金属材が循環するショットブラストキャビンで進行する鋼板に対して、粒度が0.2~0.5mmの金属材ボールが400~1200kg/minで素地鋼板の表面に投射するように2次ショットブラスト処理を行う。上記2次ショットブラスト処理の条件を満たすことにより、鋼板表面に微細な塑性変形を付与して素地鉄組織に転位(dislocation)密度を増加させてめっき反応を活性化させる効果を確保することができる。
【0063】
次いで、上記1次及び2次ショットブラスト処理された素地鋼板を、重量%で、Mg:4.0~7.0%、Al:8.2~19.5%、残部Zn及びその他の不可避不純物を含み、平衡状態図上の凝固開始温度(Ts)に対してTs+20℃~Ts+80℃の温度に維持されるめっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを行う。
【0064】
このとき、本発明の一実施形態によると、上述しためっき浴における成分添加理由及び含有量の限定理由については、素地鋼板から流入される余地がある少量のFeの含有量を除き、上述しためっき層の成分に対する説明を同様に適用することができる。
【0065】
一方、上述した組成のめっき浴を製造するためには、所定のZn、Al及びMgを含有する複合インゴット又は個別成分が含有されたZn-Mg、Zn-Alインゴットを用いることができる。溶融めっきで消耗されるめっき浴を補うためには、上記インゴットをさらに溶解して供給するようになる。この場合、インゴットを直接めっき浴に浸漬して溶解する方法を選ぶこともでき、インゴットを別途のポートに溶解させた後、溶融した金属をめっき浴に補充する方法を選ぶこともできる。
【0066】
また、めっき浴の温度は、平衡状態図上の凝固開始温度(Ts)に対して20~80℃高い温度(すなわち、Ts+20℃~Ts+80℃)に維持されることができる。このとき、特に限定するものではないが、上記平衡状態図上の凝固開始温度は390~460℃の範囲であることができ、あるいは上記めっき浴の温度は440~520℃の範囲で維持されることができる。上記めっき浴の温度が高いほど、めっき浴内の流動性確保及び均一な組成形成が可能であり、浮遊ドロスの発生量を減少させることができる。めっき浴の温度がTs+20℃未満であると、インゴットの溶解が非常に遅く、めっき浴の粘性が大きくて優れためっき層の表面品質を確保しにくいことがある。一方、めっき浴の温度がTs+80℃を超過すると、Zn蒸発によるアッシュ(ash)性欠陥がめっき表面に誘発される問題が発生する可能性がある。
【0067】
一方、上記溶融亜鉛めっきされた鋼板を表面温度の基準で、凝固開始温度から凝固終了温度まで2~8℃/sの平均冷却速度で不活性ガスを用いて冷却する。本発明によると、このような徐冷によりめっき層の表面よりもめっき層の内部への核生成及び成長を促進するのに寄与することができる。したがって、上述した平均冷却速度が2℃/s未満であると、MgZn組織が表面に非常に粗大に発達して、めっき層全体がブリトル(brittle)になってクラック発生が激しくなり、均一な耐食性及び加工性確保に不利になることができる。一方、上記平均冷却速度が8℃/s超過であると、溶融めっき過程中の液相から固相への変化が過度に急激に起こり、めっき層の表面に局部的に均一でない相が形成されてめっき鋼板の幅方向の色偏差及び耐食性の低下の結果を招く可能性がある。
【0068】
また、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、選択的に、上記溶融亜鉛めっきを行う前に、上記ショットブラスト処理された素地鋼板を表面粗さRaが1.8~2.8μmのダルロールを利用して100~400tonのロール圧下を鋼板表面に加える事前調質圧延を行う段階をさらに含むことができる。
【0069】
本発明者らは、さらに溶接性及び/または化成処理性を向上させるために鋭意検討を行った結果、上述した条件を満たすダルロール(dull roll)を用いて事前調質圧延(SPM)処理を行うことにより、素地鋼板の表面形状を不規則的に制御することができ、これにより後続するめっき工程によりめっき層の内部への凝固核の生成サイトを最大化させる効果が発揮されることが分かった。
【0070】
具体的には、上記ダルロールの表面粗さRaが1.8μm未満であると、めっき層の内部の核生成よりもめっき層の表層部の核生成を促進するという問題が生じることがある。一方、上記ダルロールの表面粗さRaが2.8μm超過であると、素地鋼板に過度の凹んだ痕が発生して、後続のめっき工程により形成された溶融めっき層の厚さが幅方向に不均一になる問題が生じることがある。
【0071】
また、上記ダルロール(dull roll)のロール圧下が100ton未満であると、素地鋼板の形状制御効果が低く、上述しためっき層の内部の凝固核生成促進効果を期待することが困難であり、上記ダルロール(dull roll)のロール圧下が400ton超過であると、素地鋼板のC反り等を誘導するおそれがあり、めっき層厚さ方向に均一な形成寄与の効果を期待することが難しい。
【0072】
上述したように、めっき組成及び製造条件を精密制御することにより、耐食性だけでなく、溶接性及び/または化成処理性に全て優れためっき鋼板を効果的に提供することができる。
【実施例
【0073】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は例示によって本発明を説明するためのもので、本発明の権利範囲を限定するためのものではないことに留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項及びこれから合理的に類推される事項によって決定されるためである。
【0074】
(実施例)
C:0.018%、Si:0.01%、Mn:0.2%、P:0.009%、S:0.005%、Al:0.1%、Nb:0.02%、Cr:0.2%、Ti:0.02%、B:0.015%、残部Fe及び不純物の組成を有する素地鋼板に、下記表1に記載された条件で1次及び2次ショットブラスト処理を行った。続いて、下記表1に記載の条件を満たすように、事前調質圧延(SPM)処理を行った。この後、下記表2に記載のめっき浴組成(残部Zn及び不純物)及びめっき浴温度を満たすように溶融亜鉛めっきを行った後、下記表2の条件を満たすように不活性ガスNを用いて冷却した。
【0075】
【表1】
Bright:ロールの表面粗さRaが0.2~0.6μmのブライトロールを使用
Dull:ロールの表面粗さRaが1.8~2.8μmのダルロールを使用
【0076】
【表2】
Ts:平衡状態図上の凝固開始温度[℃]
Te:凝固終了温度[℃]
【0077】
上述しためっき鋼板の試験片を製作して、めっき層を塩酸溶液に溶解した後、溶解された液体を湿式分析(ICP)方法で分析してめっき層の組成を測定し、下記表3に示した(但し、残部はZn及び不純物に該当)。
【0078】
また、上記めっき層と素地鉄の界面が観察されるように鋼板の厚さ方向(すなわち、圧延方向に垂直な方向)に切断した断面試験片を製造した後、走査電子顕微鏡(SEM)で撮影して、素地鋼板とZn-Mg-Al系めっき層との間に0.02μm厚さのFe-Al系抑制層が形成されることを確認した。
【0079】
また、GDS測定装置を用いてめっき層の表面から厚さ方向への成分分析を行い、Zn、Al、及びMgの各成分に対する1/10t位置における含有量及び酸化による影響を除くために、表面から0.1μmである地点までの領域を除いて、上記0.1μm地点である表面での含有量を測定し、これを下記表3に示した。
【0080】
【表3】
[Zn]1/10t:めっき層の表面から厚さ方向に1/10t位置(tはめっき層の全体厚さ)におけるZnの重量%含有量
[Zn]:めっき層の表面におけるZnの重量%含有量
[Al]1/10t:めっき層の表面から厚さ方向に1/10t位置(tはめっき層の全体厚さ)におけるAlの重量%含有量
[Al]:めっき層の表面におけるAlの重量%含有量
[Mg]1/10t:めっき層の表面から厚さ方向に1/10t位置(tはめっき層の全体厚さ)におけるMgの重量%含有量
[Mg]:めっき層の表面におけるMgの重量%含有量
【0081】
さらに、めっき層の表面から厚さ方向に2/3t位置におけるMgの重量%含有量を明細書で上述した方法と同様に測定した。同様に、めっき層内のMgの重量%平均含有量も明細書で上述した方法と同様に測定した。
【0082】
また、めっき層の表面をSEMで撮影した後、Zn固溶率が27原子%以上のAl単相の面積率を測定した。上記値を下記表4に示した。
【0083】
【表4】
Al :めっき層の表面において、Zn固溶率が27原子%以上のAl単相の面積率[%]
【0084】
各実施例及び比較例について、下記の基準で特性を評価し、特性の評価結果を下記表5に示した。
【0085】
<耐食性>
耐食性を評価するために、塩水噴霧試験装置(Salt Spray Tester)を用いてISO14993に準じた試験方法により、下記基準によって評価した。
◎:赤錆発生にかかる時間が同一厚さのZnめっきに対して40倍超過
○:赤錆発生にかかる時間が同一厚さのZnめっきに対して30倍以上40倍未満
△:赤錆発生にかかる時間が同一厚さのZnめっきに対して20倍以上30倍未満
×:赤錆発生にかかる時間が同一厚さのZnめっきに対して20倍未満
【0086】
<化成処理性>
化成処理性を評価するために、鋼板を脱脂-水洗-表面調整-リン酸塩処理の工程順に実施し、リン酸塩溶液中の自由酸度(Free Acid)は0.7~0.9であり、全酸度(Total Acid)は19~21であり、促進度(Accelerator)は4~4.5とした。また、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、鋼板表面の任意の3地点を1,000倍倍率で拡大して観察し、1つの観察視野内でリン酸塩粒子の長方向の大きさが大きい順に20個を選定した後、平均を出して再び3地点の平均値を求めた後、その値によって以下のように評価した。
○:リン酸塩粒子の長方向の長さ<5μm
△:リン酸塩粒子の長方向の長さ5~8μm
×:リン酸塩粒子の長方向の長さ>8μm
【0087】
<溶接性>
溶接性を評価するために、溶接作業性に影響を及ぼすスパッタ発生量及び溶接部の引張強度に影響を与える気孔率を評価した。上記溶接性評価は、ガスCO、溶接材料KC-28 solid wire、電流150A、電圧20V、溶接速度0.6m/minの条件でガスメタルアーク(GMA)溶接を行った。スパッタ発生量は溶接開始直後5秒単位に5回写真撮影して相対的な発生量を比較し、溶接気孔率は溶接部放射線非破壊検査後に溶接線に対する気孔欠陥の分布率(%)を測定した。
○:同一厚さのZnめっきに対してスパッタ量5倍未満、気孔率15%未満
△:同一厚さのZnめっきに対してスパッタ量5倍以上15倍未満、気孔率15%以上30%未満
×:同一厚さのZnめっきに対してスパッタ量15倍以上、気孔率30%以上
【0088】
また、各実施例及び比較例から得られる鋼板について、耐食性、化成処理性、及び溶接性を評価し、その評価結果を下記表5に示した。
【0089】
【表5】
【0090】
上記表5から分かるように、本発明のめっき組成及び製造条件を全て満たす実施例1~9の場合、本発明で規定する関係式1及び2を満たすことにより、めっき鋼板の耐食性、化成処理性及び溶接性のうち1つ以上の特性が比較例に比べて、全て優れることを確認した。
【0091】
特に、上記実施例7~9の場合、めっき層の表面から厚さ方向に2/3t位置までMgの重量%含有量がめっき層内のMgの重量%平均含有量に対して±0.5wt%を満たすことにより、実施例1~6よりも耐食性にさらに優れていた。
【0092】
一方、本発明のめっき組成を満たさない比較例1~4の場合、上述した耐食性、化成処理性及び溶接性のうち1つ以上の特性が劣化することを確認した。
【0093】
具体的には、比較例1及び3は、めっき層のMg含有量が未達であるため、耐食性が最も劣化するだけでなく、関係式2から定義される[Al]1/10t-[Al]の値が満たなくて、化成処理性及び溶接性が劣化することを確認した。
【0094】
また、比較例2及び4は、めっき層のMg含有量を満たして耐食性は確保可能であっても、関係式1及び2を満たさず、めっき層の表面にAl含有量が過度であるため、化成処理性及び溶接性が非常に劣化した。
【0095】
また、本発明で規定するめっき組成は満たすが、製造条件を満たさない比較例5~8の場合、めっき組成を満たすことで耐食性は確保可能であっても、関係式1及び2を満たさないことにより、化成処理性及び溶接性が劣化した。
図1
【図
【誤訳訂正書】
【提出日】2024-06-12
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐食性及び表面外観に優れた高耐食めっき鋼板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
亜鉛系めっき鋼板は、腐食環境に晒されたとき、鉄より酸化還元電位が低い亜鉛が先に腐食され、鋼材の腐食が抑制される犠牲防食の特性を有する。また、めっき層の亜鉛が酸化しながら鋼材の表面に緻密な腐食生成物を形成させて、酸化雰囲気から鋼材を遮断することで鋼材の耐腐食性を向上させる。このような有利な特性のために、亜鉛系めっき鋼板は最近、建資材、家電製品及び自動車用鋼板にその適用範囲が拡大している。
【0003】
しかし、産業高度化に伴う大気汚染の増加により腐食環境が徐々に悪化しており、資源及び省エネに対する厳しい規制により、従来の亜鉛めっき鋼材よりもさらに優れた耐食性を有する鋼材の開発に対する必要性が高まっている。
【0004】
かかる問題を改善するために、亜鉛めっき浴にアルミニウム(Al)及びマグネシウム(Mg)等の元素を添加して鋼材の耐食性を向上させる亜鉛合金系めっき鋼板の製造技術に関する研究が様々に進められている。代表的な例としては、Zn-Alめっき組成系にMgをさらに添加したZn-Mg-Al系亜鉛合金めっき鋼板がある。
【0005】
しかし、Zn-Mg-Al系亜鉛合金めっき鋼板の場合、加工されて用いられる場合が多いが、めっき層の表面が不均一であり、粗さが高くて塗装後の鮮映性が悪いという欠点がある。
【0006】
それだけでなく、Zn-Mg-Al系亜鉛合金めっき鋼板は、徐冷時にスパングルが発生し易く、これにより表面外観が美麗でないという問題がある。
【0007】
したがって、これまで耐食性のみならず、塗装後の鮮映性及び表面外観にも全て優れた高級の需要を満たすことができるレベルの技術は開発されていない実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開公報第2010-0073819号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一側面によると、耐食性及び表面外観に優れためっき鋼板及びその製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明の他の一側面によると、耐食性、表面外観及び塗装後の鮮映性にも全て優れためっき鋼板及びこの製造方法を提供する。
【0011】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、誰でも本発明の明細書の全体内容から発明の追加的な課題を理解するのに困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面は、
素地鋼板;及び
上記素地鋼板の少なくとも一面に備えられたZn-Mg-Al系めっき層;を含み、
上記めっき層は、重量%で、Mg:4.0~6.3%、Al:11.0~19.5%、残部Zn及びその他の不可避不純物を含み、
下記関係式1を満たす、めっき鋼板を提供する。
[関係式1]
0.1≦I(110)/I(103)≦0.25
(上記関係式1において、上記I(110)はMgZn相の(110)面の結晶ピークのX線回折積分強度を示し、上記I(103)はMgZn相の(103)面の結晶のX線回折積分強度を示す。)
【0013】
また、本発明の他の一側面は、
めっき浴温度(T)に対してT-10℃~T-40℃の引き込み温度を満たすように、素地鋼板を重量%で、Mg:4.0~6.3%、Al:11.0~19.5%、残部Zn及びその他の不可避不純物を含むめっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきする段階;
上記溶融亜鉛めっきされた鋼板に1~20℃で冷却された不活性ガスを供給してエアワイピングを行う段階;
上記エアワイピングされた鋼板を420℃まで10~15℃/sの平均冷却速度で1次冷却する段階;及び
上記1次冷却された鋼板を420℃未満300℃以上の温度範囲で5~8℃/sの平均冷却速度で2次冷却する段階;を含み、
下記関係式2を満たす、めっき鋼板の製造方法を提供する。
[関係式2]
air×(1-T/T)+5≦Pair
(上記関係式2において、上記Wairはエアナイフの間隔を表し、単位はmmである。上記Pairはエアナイフの圧力を表し、単位はkPaである。上記Tは供給された不活性ガスの温度を表し、単位は℃である。上記Tは大気の平均温度を表し、25℃とする。)
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によると、耐食性及び表面外観に優れためっき鋼板及びこの製造方法を提供することができる。
【0015】
また、本発明の他の一側面によると、耐食性、表面外観及び塗装後の鮮映性に全て優れためっき鋼板及びこの製造方法を提供することができる。
【0016】
本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】発明例8及び比較例8から得られためっき鋼板について、めっき層の表面でX-ray diffraction(以下、「XRD」という)で測定されたX線回折角度(2θ)によるX線回折ピークを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で用いられる用語は、特定実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定する意図ではない。また、本明細書において用いられる単数の形態は、関連定義がこれと明らかに反対される意味を表しない限り、複数の形態も含む。
【0019】
明細書で用いられる「含む」の意味は、構成を具体化し、他の構成の存在や付加を除外するものではない。
【0020】
異なって定義しない限り、本明細書において用いられる技術用語及び科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。辞書で定義されている用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有するものと解釈される。
【0021】
以下、本発明の一側面に係る「めっき鋼板」について詳細に説明する。本発明において各元素の含有量を表すときには、特に断りのない限り、重量%を意味する。
【0022】
従来のZn-Mg-Al系亜鉛合金めっき鋼板の関連技術では耐食性の向上のためにMgを添加したが、Mgを過度に添加する場合、めっき浴浮遊ドロスの発生が多くなって、ドロスを頻繁に除去しなければならないという問題があり、Mg添加量の上限を3%に制限していた。
【0023】
そこで、Mg添加量を3%より増加させて耐食性をさらに改善するために研究したが、Mg及びAlの添加量が高くなるにつれて相間の不均一によって粗さが高く、塗装後の鮮映性が確保できないという問題点があった。
【0024】
このような塗装後の鮮映性の問題だけでなく、Zn-Mg-Al系亜鉛合金めっき鋼板は製造過程中に徐冷時の結晶成長が加速化して、スパングルの発生により表面外観が美麗でないという問題もあって、家電及び自動車などに適用するには限界があった。
【0025】
したがって、従来技術では耐食性確保と同時に、塗装後の鮮映性及び表面外観にも優れためっき鋼板を提供することは技術的に困難であった。
【0026】
そこで、本発明者らは、上述した問題を解決すると同時に、耐食性だけでなく、塗装後の鮮映性及び/又は表面外観にも優れためっき鋼板を提供するために、鋭意検討を行った結果、めっき層の組成だけでなく、めっき層の表面でXRDで分析して得られたMgZn相の(110)面の結晶ピークのX線回折積分強度と、MgZn相の(103)面の結晶のX線回折積分強度との比を特定の範囲に制御することが重要な要素であることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0027】
したがって、以下では耐食性に優れると同時に、さらに塗装後の鮮映性及び/または表面外観にも優れためっき鋼板の構成について具体的に説明する。
【0028】
まず、本発明によるめっき鋼板は、素地鋼板;上記素地鋼板の少なくとも一面に備えられたZn-Mg-Al系めっき層;を含む。
【0029】
本発明では、素地鋼板の種類については特に限定しないことができる。例えば、上記素地鋼板は、通常の亜鉛系めっき鋼板の素地鋼板として用いられるFe系素地鋼板、すなわち熱延鋼板または冷延鋼板であることができるが、これに限定されない。あるいは、上記素地鋼板は、例えば、建築用、家電用、自動車用素材として用いられる炭素鋼、極低炭素鋼または高マンガン鋼であることもできる。
【0030】
但し、一例として、上記素地鋼板は、重量%で、C:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)0.18%以下、Si:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)1.5%以下、Mn:0.01~2.7%、P:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)0.07%以下、S:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)0.015%以下、Al:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)0.5%以下、Nb:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)0.06%以下、Cr:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)1.1%以下、Ti:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)0.06%以下、B:0%超過(より好ましくは、0.001%以上)0.03%以下、及び残部Fe及びその他の不可避不純物を含む組成を有することができる。
【0031】
特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上記素地鋼板の少なくとも一面にはZn-Mg-Al系合金からなるZn-Mg-Al系めっき層が備えられることができる。上記めっき層は、素地鋼板の一面にのみ形成されていることもでき、あるいは、素地鋼板の両面に形成されていることもできる。このとき、上記Zn-Mg-Al系めっき層は、Mg及びAlを含み、Znを主に含む(すなわち、Znを50%以上含む)めっき層をいう。
【0032】
特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上記Zn-Mg-Al系めっき層の厚さは5~100μmであることができ、より好ましくは7~90μmであることができる。めっき層の厚さが5μm未満であると、めっき層の厚さ偏差から生じる誤差により局部的にめっき層が非常に薄くなる場合があり、耐食性が劣る場合がある。めっき層の厚さが100μmを超過すると、溶融めっき層の冷却が遅れることがあり、一例として垂れ形状などめっき層の表面に凝固欠陥が発生する余地があり、めっき層を凝固させるために鋼板の生産性が低下することがある。
【0033】
一方、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上記素地鋼板と上記Zn-Mg-Al系めっき層との間にはFe-Al系抑制層をさらに含むことができる。上記Fe-Al系抑制層は、FeとAlの金属間化合物を主に含む(例えば、60%以上)層であり、FeとAlの金属間化合物としてはFeAl、FeAl、FeAl等が挙げられる。その他にもZn、Mgなどのようにめっき層に由来する成分が一部、例えば40%以下さらに含まれることもできる。上記抑制層は、めっき初期素地鋼板から拡散したFe及びめっき浴成分による合金化により形成された層である。上記抑制層は、素地鋼板とめっき層の密着性を向上させる役割を果たし、同時に素地鋼板からめっき層へのFe拡散を防止する役割を果たすことができる。このとき、上記抑制層は、素地鋼板とZn-Mg-Al系めっき層との間に連続的に形成されることもでき、不連続的に形成されることもできる。上記抑制層については、上述した説明を除いては、当該技術分野で通常的に知られた内容を同様に適用することができる。
【0034】
特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上記抑制層の厚さは0.1~1μmであることができる。上記抑制層は、合金化を防ぎ、耐食性を確保する役割を果たすが、ブリトルであるため、加工性に影響を及ぼすことがあり、本発明では上記抑制層の厚さを1μm以下にすることができる。但し、抑制層としての役割を果たすためには、その厚さを0.1μm以上にすることができる。上述した効果をより向上させる観点から、好ましくは上記抑制層厚さの上限は、1.00μmであることができ、または上記抑制層厚さの下限は0.15μmであることができる。
【0035】
このとき、上記抑制層の厚さは、めっき鋼板を厚さ方向(すなわち、圧延方向に垂直な方向を意味する)に切断した断面試験片を製造した後、上記断面を走査電子顕微鏡(以下、「SEM」という)で撮影して、上記抑制層に対する厚さ方向への最小厚さを意味することができる。
【0036】
また、本発明によると、上記めっき層は、重量%で、Mg:4.0~6.3%、Al:11.0~19.5%、残部Zn及びその他の不可避不純物を含む。以下では、各成分の添加理由及び含有量の限定理由について具体的に説明する。
【0037】
Mg:4.0%以上6.3%以下
Mgは、めっき鋼材の耐食性を向上させる役割を果たす元素であり、本発明では目的とする優れた耐食性を確保するためにめっき層内のMg含有量を4.0%以上に制御する。一方、Mgが過度に添加される場合にはドロスが発生する可能性があるため、Mg含有量を6.3%以下に制御することができる。
【0038】
Al:11.0%以上19.5%以下
一般的にMgが1%以上添加される場合、耐食性向上の効果は発揮されるが、Mgが2%以上添加されると、めっき浴内のMgの酸化によるめっき浴浮遊ドロス発生が増加して、ドロスを頻繁に除去する必要があるという問題がある。
【0039】
このような問題により、従来技術ではZn-Mg-Al系亜鉛合金めっきでMgを1.0%以上添加して耐食性を確保するが、Mg含有量の上限線を3.0%に設定して常用化していた。
【0040】
しかし、本発明では、耐食性をさらに向上させるためには、Mg含有量を4%以上に高める必要があるが、めっき層内のMgを4%以上含むと、めっき浴内のMgの酸化によるドロスが発生するという問題があるため、Alを11.0%以上添加させる必要がある。
【0041】
但し、ドロス抑制のためにAlを過度に添加すると、めっき浴の融点が高くなり、それに伴う操業温度が高すぎることによってめっき浴構造物の浸食及び鋼材の変性が生じるなどの高温作業による問題が生じることがある。それだけでなく、めっき浴内のAl含有量が過度であると、Alが素地鋼板のFeと反応してFe-Al抑制層の形成に寄与せず、AlとZnの反応が急激に起こり、塊状のアウトバースト相(Outburst)が過度に形成されて耐食性が却って悪化することがある。したがって、めっき層内のAl含有量の上限は19.5%に制御することが好ましい。
【0042】
残部Zn及びその他の不可避不純物
上述しためっき層の組成以外に、残部はZn及びその他の不可避不純物であることができる。不可避不純物は、通常の溶融亜鉛めっき鋼板の製造工程で意図せずに混入されるものであれば全て含まれることができ、当該技術分野の技術者であれば、その意味を容易に理解することができる。
【0043】
一方、本発明によると、上記めっき鋼板は、耐食性確保と同時に、目的とするレベルの優れた塗装後の鮮映性及び美麗な表面外観の特性を確保するために、下記関係式1を満たすことが好ましい。
[関係式1]
0.1≦I(110)/I(103)≦0.25
(上記関係式1において、上記I(110)はMgZn相の(110)面の結晶ピークのX線回折積分強度を示し、上記I(103)はMgZn相の(103)面の結晶のX線回折積分強度を示す。)
【0044】
本発明者らは、めっき層に存在するMgZn相の(110)面の結晶とMgZn相の(103)面の結晶の存在割合に優れた塗装後の鮮映性及び美麗な表面外観の特性を確保する上で重要な要素であることが分かった。すなわち、めっき層の表面でXRDで分析して得られたMgZn相の(110)面の結晶ピークのX線回折積分強度と、MgZn相の(103)面の結晶ピークのX線回折積分強度の比を上記関係式1を満たすように制御することにより、優れた耐食性の確保だけでなく、塗装後の鮮映性及び表面外観の特性の向上も可能となる。
【0045】
具体的には、本発明において、MgZn相の(103)面の結晶が多いと垂直方向に結晶が生成した部分が多いことを意味し、これにより結晶が横方向に成長することが妨げられることで、スパングル形成を抑制することができるようになる。
【0046】
しかし、本発明に係る成分系では、発明の特性に影響を及ぼすMgZn相の(110)面の結晶とMgZn相の(103)面の結晶が必須に存在するため、上記2種類の結晶面を調和させることにより塗装後の鮮映性と表面外観の特性が決定される。
【0047】
したがって、上記関係式1から定義されるI(110)/I(103)値が0.1未満であると結晶不整合が大きく発生して、めっき層の密着性が減少するという問題が生じることがある。一方、上記関係式1から定義されるI(110)/I(103)値が0.25を超過すると、MgZn相の(103)面の結晶に対するMgZn相の(110)面の結晶の存在割合が過度であって塗装後の鮮映性や表面外観の特性が不十分になる可能性がある。急冷時に、MgZn相の(110)面はめっき層の下部に存在し、Zn相の(002)面の結晶の形成をめっき層の上方に促進し、MgZn相の(103)面との接触により表面を美麗にする。
【0048】
すなわち、MgZn相の(110)面の結晶と、MgZn相の(103)面の結晶が上記関係式1を満たすように混在して存在しながらも、Zn相の(002)面の結晶より面間隔が小さいMgZn相の(103)面の結晶がMgZn相の(110)面の結晶に備えて多く存在することで、Mg添加により従来技術に対する耐食性を向上させると同時に、表面粗さが小さくて、美麗な表面外観を有するめっき鋼板を確保することができる。
【0049】
一方、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上述した効果をより極大化する観点からより好ましくは、上記関係式1から定義されるI(110)/I(103)値の下限は0.11であることができ、または上記I(110)/I(103)値の上限は0.15であることができる。
【0050】
このとき、上述したMgZn相の(110)面の結晶ピーク及びMgZn相の(103)面の結晶ピークは、めっき層の表面をXRDで分析して得られたX線回折積分強度から当該技術分野で知られた方法を用いて(110)面の結晶ピーク及び(103)面の結晶ピークを区分することができる。したがって、本明細書ではこれを別途定義しない。
【0051】
一方、上記X線回折積分強度の測定方法について特に限定せず、当該技術分野で知られた方法を適用することができる。例えば、めっき層の表面をXRDで分析してX線回折積分強度を測定することができ、上記X線回折積分強度を測定するための装置としてはRINT2000回折計を用いることができ、X線回折積分強度の測定条件はCuターゲット(target)、電圧:40kV、電流:200mAとし、X線回折角度(2θ)は10~100°まで測定することができる。代表的な一例として、Cuターゲット(target)を用いる場合には、上記I(110)は2θ=34.0°~34.6°の間のピークの積分強度で定義することができ、上記I(103)は2θ=37.0°~37.5°の間のピークの積分強度として定義することができる。但し、上記ターゲット物質がMo等で異なる場合には、2θの値がターゲット物質の種類によって変化するため、本発明において上記2θの範囲を特に限定するものではない。
【0052】
また、本明細書において、上記(110)面を有するMgZn結晶とは、鋼板表面でMgZn相の六方晶系(hexagonal)結晶中に(110)面が示される組織を意味する。また、上記(103)面を有するMgZn結晶とは、鋼板表面でMgZn相の六方晶系(hexagonal)結晶中に(103)面が示される組織を意味する。
【0053】
一方、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上記めっき鋼板は、選択的に、上記I(110)の値が85以下を満たすことができる。上記I(110)の値が85以下を満たすことで、関係式1を満たす範囲内でMgZn相の(110)面の結晶に対するMgZn相の(103)面の結晶の存在割合を増加させることができる。これにより、めっき層内のスパングル形成を抑制して、美麗な表面外観の特性の確保に寄与するMgZn相の(103)面の結晶による影響をより増加させることができる。
【0054】
したがって、上述した効果を極大化する観点から、より好ましくは、上記I(110)の値の上限は80であることができ、あるいは上記I(110)の値の下限は50であることができる。
【0055】
あるいは、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上記めっき鋼板は、選択的に、上記I(103)の値が525以上であることができる。上記I(103)の値が525以上を満たすことで、関係式1を満たす範囲内でMgZn相の(110)面の結晶に対するMgZn相の(103)面の結晶の存在割合を増加させることができる。これにより、めっき層内のスパングル形成を抑制して、美麗な表面外観の特性の確保に寄与するMgZn相の(103)面の結晶による影響をより向上させることができる。
【0056】
したがって、上述した効果を極大化する観点から、より好ましくは、上記I(103)の値の下限は530であることができ、あるいは上記I(103)の値の上限は600であることができる。
【0057】
このとき、特に限定するものではないが、上記I(110)の値と上記I(103)の値は、RINT2000回折計を用いて、Cuターゲット(target)で、電圧:40kV及び電流:200mAの条件で測定した値を示す。
【0058】
一方、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、選択的に、上記めっき鋼板の表面粗さは、Ra:0.3~0.6μm及びRpc:40~90(/10mm)の範囲を満たすことができる。めっき鋼板の表面粗さが上述した範囲を満たすように小さく調整することにより、スパングル形成の抑制効果をさらに向上させて、より美麗な表面外観の特性を確保することができる。
【0059】
次に、本発明の他の一側面に係る「めっき鋼板の製造方法」について詳細に説明する。但し、本発明のめっき鋼板が必ずしも以下の製造方法により製造されなければならないことを意味するものではない。
【0060】
本発明の一実施形態によると、まず、素地鋼板を準備する段階をさらに含むことができ、素地鋼板の種類は特に限定されない。通常の溶融亜鉛めっき鋼板の素地鋼板として用いられるFe系素地鋼板、すなわち熱延鋼板または冷延鋼板であることができるが、これに限定されるものではない。また、上記素地鋼板は、例えば、建築用、家電用、自動車用素材として用いられる炭素鋼、極低炭素鋼、または高マンガン鋼であることができるが、これに制限されるものではない。このとき、上記素地鋼板については上述した説明を同様に適用することができる。
【0061】
次いで、上記準備された素地鋼板を、重量%で、Mg:4.0~6.3%、Al:11.0~19.5%、残部Zn及びその他の不可避不純物を含むめっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを行う。
【0062】
このとき、上述しためっき浴における成分添加理由及び含有量の限定理由については、素地鋼板から流入される余地がある少量のFeの含有量を除き、上述しためっき層の成分に対する説明を同様に適用することができる。
【0063】
一方、上述した組成のめっき浴を製造するためには、所定のZn、Al及びMgを含有する複合インゴット又は個別成分が含有されたZn-Mg、Zn-Alインゴットを用いることができる。溶融めっきで消耗されるめっき浴を補うためには、上記インゴットをさらに溶解して供給するようになる。この場合、インゴットを直接めっき浴に浸漬して溶解する方法を選ぶこともでき、インゴットを別途のポートに溶解させた後、溶融した金属をめっき浴に補充する方法を選ぶこともできる。
【0064】
本発明によると、上記溶融亜鉛めっき時に、素地鋼板の引き込み温度は、めっき浴温度(T)に対してT-10℃~T-40℃の引き込み温度を満たすように制御する。上記素地鋼板の引き込み温度がT-10℃未満であると、結晶相が緻密でないという問題が生じ、上記素地鋼板の引き込み温度がT-40℃超過であると、めっき密着性に問題が生じる。
【0065】
この時、特に限定するものではないが、上述しためっき浴温度(T)は440~500℃の範囲であることができる。一方、より好ましくは上記めっき浴温度(T)の下限は455℃であることができ、あるいは上記めっき浴温度(T)の上限は490℃であることができる。
【0066】
次いで、上記溶融亜鉛めっきされた鋼板に1~20℃で冷却された不活性ガスを供給してエアワイピングを行う。本発明者らは鋭意研究を行った結果、エアワイピング時に、通常の方法とは異なって特定温度範囲で冷却された不活性ガスを供給してエアワイピングを行うことで、表面が酸化する問題なく、急速に冷却される効果があることが分かった。
【0067】
すなわち、上記エアワイピング時に供給される不活性ガスの温度が1℃未満であると、周辺機器に水滴が付く現象が発生してワイピングが均一でないという問題が生じることがある。一方、上記エアワイピング時に供給される不活性ガスの温度が20℃を超過すると、急冷の効果が減少して美麗な表面外観を形成することができないという問題が生じることがある。上述した効果を極大化するための観点から、より好ましくは、上記エアワイピング時に供給される窒素ガスの温度の下限は1.0℃であることができ、あるいは上記エアワイピング時に供給される窒素ガスの温度の上限は5.0℃であることができる。
【0068】
一方、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上記不活性ガスとしては、アルゴン(Ar)ガス、窒素(N)ガス、またはアルゴンと窒素の混合ガスなどを用いることができ、窒素ガスを用いることがより好ましい。
【0069】
また、本発明によると、上記エアワイピング時に、下記関係式2を満たすように制御する。下記関係式2を満たすようにエアワイピングの条件を制御することにより、MgZn相の(110)面の結晶とMgZn相の(103)面の結晶の形成割合を最適化することができる。それだけでなく、表面が乳白色を示す美麗な粗さ特性を確保することができ、これにより表面外観が非常に滑らかになる効果が発揮される。このとき、下記関係式2は経験的に得られる値であるため、特に単位を定めないことができ、下記定義されたWairの単位であるmmと、Pairの単位であるkPaと、T及びTの単位である℃を満たすと十分である。
[関係式2]
air×(1-T/T)+5≦Pair
(上記関係式2において、上記Wairはエアナイフの間隔を表し、単位はmmである。上記Pairはエアナイフの圧力を表し、単位はkPaである。上記Tは供給された不活性ガスの温度を表し、単位は℃である。上記Tは大気の平均温度を表し、25℃とする。)
【0070】
また、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、上述したエアワイピング段階において、上記エアナイフの間隔は10~30mm(より好ましくは10~20mm)の範囲であることができる。あるいは、上記エアナイフの圧力は5~30kPa(より好ましくは15~23kPa)の範囲であることができる。あるいは、上記供給されたガスの温度は、1~20℃(より好ましくは1~5℃)の範囲であることができる。上述した範囲を満たすようにエアワイピングの条件を調整することで、耐食性、塗装後の鮮映性、及び表面外観に優れためっき鋼板を効果的に製造することができる。
【0071】
本発明によると、上記エアワイピング段階の後に、上記エアワイピングされた鋼板を420℃まで10~15℃/sの平均冷却速度で1次冷却を行った後、上記1次冷却された鋼板を420℃未満300℃以上の温度範囲で5~8℃/sの平均冷却速度で2次冷却を行う。このとき、上記平均冷却速度は鋼板の表面温度を基準とする。
【0072】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、2段階に分けて冷却速度を精密制御しながらも1次冷却時に急冷を行うことで、MgZn相の(110)面の結晶とMgZn相の(103)面の結晶の形成割合をより最適化して表面外観の特性をさらに向上させることができるだけでなく、鋼板の幅方向に均一な表面組織を得る効果が確保されることを見出した。
【0073】
すなわち、上記1次冷却時に、平均冷却速度が10.0℃/s未満であると急冷の効果が微弱な問題が生じることがあり、上記1次冷却時に、15.0℃/sを超過すると、鋼板の幅方向に表面が不均一な問題が生じることがある。また、上記2次冷却時に、平均冷却速度が5.0℃/s未満であると表面粗さが上昇するという問題が生じることがあり、上記2次冷却時に、平均冷却速度が8.0℃/sを超過すると、鋼板の幅方向に表面が不均一な問題が生じることがある。
【0074】
一方、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、選択的に、上記冷却時に、下記関係式3及び4を満たすように冷却条件を制御することができる。1次冷却及び2次冷却時の平均冷却速度との関係を下記関係式3及び4のように制御することで、めっき鋼板のスパングル形成をより抑制して、外観特性をさらに向上させることができる。このとき、下記関係式3及び4は経験的に得られる値であるため、特に単位を定めないことができ、下記定義されたC及びCの各単位を満たすと十分である。
[関係式3]
17≦C+C
[関係式4]
5≦C-C≦10
(上記関係式3において、上記Cは1次冷却時の平均冷却速度[℃/s]を示し、上記Cは2次冷却時の平均冷却速度[℃/s]を示す。)
【0075】
一方、特に限定するものではないが、本発明の一実施形態によると、選択的に、上記2次冷却で得られためっき鋼板の表面粗さをRa:0.3~0.6μm及びRpc:40~90(/10mm)の範囲に制御することができる。めっき鋼板の表面粗さRa及びRpcが上記範囲を満たすように制御することで、表面が非常に美麗且つ外観に優れた効果を確保することができる。
【0076】
上述したように、めっき組成及び製造条件を精密制御することにより、耐食性だけでなく、曲げ性及び表面外観にも全て優れためっき鋼板を効果的に提供することができる。
【実施例
【0077】
(実施例)
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は例示により本発明を説明するためのもので、本発明の権利範囲を限定するためのものではないことに留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項及びこれから合理的に類推される事項によって決定されるためである。
【0078】
C:0.018%、Si:0.01%、Mn:0.2%、P:0.009%、S:0.005%、Al:0.1%、Nb:0.02%、Cr:0.2%、Ti:0.02%、B:0.015%、残部Fe及び不純物の組成を有し、厚さ1.5mm、幅1200mmの素地鋼板を準備する。上記準備された素地鋼板を下記表1の条件でめっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを行った。
【0079】
続いて、溶融亜鉛めっきされた鋼板に下記表1に記載された条件で、窒素(N)ガスを用いてエアワイピング処理を行った後、下記表2の条件で1次冷却及び2次冷却を行った。この後、上記2次冷却して得られた鋼板に、下記表2に記載された表面粗さを満たすように制御した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
上記表1~2の方法で得られためっき鋼板の試験片を製作して、めっき層を塩酸溶液に溶解した後、溶解された液体を湿式分析(ICP)方法で分析してめっき層の組成を測定し、下記表3に示した(但し、残部はZn及び不純物に該当)。
【0083】
また、上記めっき層と素地鉄の界面が観察されるように鋼板の圧延方向に垂直な方向に切断した断面試験片を製造した後、SEMで撮影して、上記素地鋼板とZn-Mg-Al系めっき層の間にFe-Al系抑制層が形成されることを確認した。上記SEMを用いてFe-Al系抑制層の厚さを鋼板の圧延方向に垂直な方向に測定して下記表3に示した。
【0084】
また、めっき層のX線回折積分強度を測定するために、RINT2000回折計を用いてCuターゲットで電圧:40kV、電流:200mAの条件で、2θ=34.0°~38.0°で回折ピークMgZn(110)とMgZn(103)を測定し、該当ピークの積分強度を計算した。積分強度I(110)は34°~34.6°でピークを積分して得られた値であり、積分強度I(103)は37°~37.5°でピークを積分して得られた値であり(単位はintegrated intensityとして、cps*2θに該当)、下記表3に示した。
【0085】
【表3】
【0086】
各発明例及び比較例について、下記の基準で特性を評価し、各特性の評価結果を下記表4に示した。
【0087】
<耐食性>
耐食性を評価するために、塩水噴霧試験装置(Salt Spray Tester、SST)を用いてISO14993に準じた試験方法により、下記基準によって評価した。
○:赤錆発生にかかる時間が同一厚さのZnめっきに対して30倍以上40倍未満
△:赤錆発生にかかる時間が同一厚さのZnめっきに対して20倍以上30倍未満
×:赤錆発生にかかる時間が同一厚さのZnめっきに対して20倍未満
【0088】
<塗装後の鮮映性>
塗装後の鮮映性を評価するために、該当素材を75mm×150mmに切断した後、鋼板を脱脂後のリン酸塩処理を行った後、電着塗装を行い、Wsa(鮮映性指数)(μm)値を測定した。
○:Wsa0.35以下
△:Wsa0.36以上0.40以下
×:Wsa0.41以上
【0089】
<スパングルの有無>
スパングルの大きさを評価するために、光学顕微鏡を用いて100倍率で撮影後、スパングルの大きさを縦軸と横軸の2つを測定した後、10個平均し、下記基準によって評価した。
◎:スパングル未観察
○:スパングルの大きさ(0.1~0.29mm)
△:スパングルの大きさ(0.3~0.5mm)
×:スパングルの大きさ(0.5mm以上)
【0090】
【表4】
【0091】
上記表4の実験結果から分かるように、本発明で規定するめっき組成及び製造条件を満たす発明例1~9の場合、耐食性、塗装後の鮮映性及び外観特性にいずれも優れていることを確認した。
【0092】
特に、上記発明例のうち、本発明で規定する関係式3及び4の冷却速度を満たす発明例7~9の場合、発明例1~6に比べて、表面外観にさらに優れていることを確認した。これは、Zn相の(002)面の結晶周辺に適正比率のMgZn相の(110)面の結晶及びMgZn相の(103)面の結晶が形成されると同時に、スパングルの有無に寄与が大きいMgZn相の(103)面の結晶の存在割合をより向上させることによって示される要因と推定される。
【0093】
一方、本発明で規定するめっき組成及び製造条件を全て満たさない比較例1~17の場合、耐食性、塗装後の鮮映性及び外観特性のうち1つ以上が発明例1~9に比べて劣化することを確認した。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板;及び
前記素地鋼板の少なくとも一面に備えられたZn-Mg-Al系めっき層;を含み、
前記めっき層は、重量%で、Mg:4.0~6.3%、Al:11.0~19.5%、残部Zn及びその他の不可避不純物を含み、
下記関係式1を満たす、めっき鋼板。
[関係式1]
0.1≦I(110)/I(103)≦0.25
(前記関係式1において、前記I(110)は、MgZn相の(110)面の結晶ピークのX線回折積分強度を示し、前記I(103)は、MgZn相の(103)面の結晶のX線回折積分強度を示す。)
【請求項2】
前記素地鋼板と前記Zn-Mg-Al系めっき層との間に備えられたFe-Al系抑制層;をさらに含む、請求項1に記載のめっき鋼板。
【請求項3】
前記Fe-Al系抑制層の平均厚さは0.1~1.0μmである、請求項2に記載のめっき鋼板。
【請求項4】
前記I(110)の値は80以下を満たす、請求項1に記載のめっき鋼板。
【請求項5】
前記I(103)の値は530以上を満たす、請求項1に記載のめっき鋼板。
【請求項6】
めっき浴温度(T)に対してT-10℃~T-40℃の引き込み温度を満たすように、素地鋼板を重量%で、Mg:4.0~6.3%、Al:11.0~19.5%、残部Zn及びその他の不可避不純物を含むめっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきする段階;
前記溶融亜鉛めっきされた鋼板に1~20℃で冷却された不活性ガスを供給してエアワイピングを行う段階;
前記エアワイピングされた鋼板を420℃まで10~15℃/sの平均冷却速度で1次冷却する段階;及び
前記1次冷却された鋼板を420℃未満300℃以上の温度範囲で5~8℃/sの平均冷却速度で2次冷却する段階;を含み、
下記関係式2を満たす、めっき鋼板の製造方法。
[関係式2]
air×(1-T/T)+5≦Pair
(前記関係式2において、前記Wairはエアナイフの間隔を表し、単位はmmである。前記Pairはエアナイフの圧力を表し、単位はkPaである。前記Tは供給された不活性ガスの温度を表し、単位は℃である。前記Tは大気の平均温度を表し、25℃とする。)
【請求項7】
下記関係式3及び4を満たす、請求項6に記載のめっき鋼板の製造方法。
[関係式3]
17≦C+C
[関係式4]
5≦C-C≦10
(前記関係式3において、前記Cは1次冷却時の平均冷却速度[℃/s]を示し、前記Cは2次冷却時の平均冷却速度[℃/s]を示す。)
【請求項8】
前記2次冷却で得られためっき鋼板の表面粗さをRa:0.3~0.6μm及びRpc:40~90(/10mm)の範囲で制御する、請求項6に記載のめっき鋼板の製造方法。
【誤訳訂正3】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】全図
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
図1
【国際調査報告】