(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】半導体検出装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/24 20060101AFI20241022BHJP
H01L 31/08 20060101ALI20241022BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20241022BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G01T1/24
H01L31/08 Z
G01J1/02 B
H01L31/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519518
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 FI2022050653
(87)【国際公開番号】W WO2023052688
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
【氏名又は名称原語表記】TEKNOLOGIAN TUTKIMUSKESKUS VTT OY
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】カインローリ,マルック
(72)【発明者】
【氏名】キルピ,オリ-ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】バルプラ エアポ
(72)【発明者】
【氏名】プルッニラ,ミカ
【テーマコード(参考)】
2G065
2G188
5F149
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB05
2G065BA02
2G188AA02
2G188BB02
2G188BB04
2G188BB05
2G188BB06
2G188CC28
5F149AA02
5F149AA20
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5F149LA07
5F149XB32
5F149XB36
(57)【要約】
本発明の例示的な態様によれば、放射線/光子入射窓の材料量が少なく、半導体基板のドーピングを最小限に抑えた、光検出装置等の半導体放射線検出装置が提供される。より具体的には、電気分極材料に基づく誘起接合が利用される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線検出装置であって、
半導体材料により構成される基板と、
前記基板の第1面上の電界発生層であって、前記基板に反転層を形成する為に前記基板に電界を誘起する、電界発生層と、
前記基板の前記第1面上であって前記電界発生層に隣接する第1電気接点と、
前記基板の第2面上であって前記電界発生層の反対側の第2電気接点と、
を備え、前記電界発生層は、前記電界を誘起する為の分極及び/又は電荷を有する誘電体層を備え、前記誘電体層は、強誘電体材料、エレクトレット材料、強エレクトレット材料の内の少なくとも1つを備えることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記電界発生層は、ScAlNやHfZrO等の強誘電体材料を備える請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記電界発生層と前記基板との間に、SiО
2等の非強誘電体の層を備える請求項2に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記電界発生層は、ポリマー又は酸化シリコンと窒化シリコンの積層等のエレクトレット材料を含む請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項5】
前記電界発生層は、空気が充填されたセル状ポリマー構造を備えるポリマーフォーム等の強誘電体材料を含む請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項6】
前記基板は、シリコン、ゲルマニウム、III-V族半導体、II-VI族半導体の内の少なくとも1つを含む請求項1乃至5の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項7】
前記基板の厚さは200nmから50mm、好ましくは1μmから5000μmである請求項1乃至6の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項8】
前記検出装置は、前記電界発生層上に前記誘電体層を分極する為の誘起電極を備える請求項1乃至7の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項9】
前記検出装置は、前記電界発生層上に前記誘電体層を帯電する為の誘起電極を備える請求項1乃至8の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項10】
前記誘起電極はグラフェン層で形成されている請求項8又は9に記載の放射線検出装置。
【請求項11】
前記電界発生層は、電流が前記電界発生層を介して前記誘起電極と前記基板との間を流れることができるようにリーク性である請求項8乃至10の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項12】
前記基板の抵抗率は1kΩcm以上、特に10kΩcmを超える請求項1乃至11の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項13】
前記基板がドーピングされておらず、これにより前記基板が意図的に添加された不純物を含まない請求項1乃至12の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項14】
前記第1電気接点は、前記基板に接点ドーピングを備える請求項1乃至13の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項15】
前記第1電気接点は前記基板にフロント接点ドーピングウェルを備え、
前記検出装置は、前記電界誘起反転層と前記フロント接点ドーピングウェルとの間に、前記放射線誘起電流を流す為の電流流路が形成されるように構成されている請求項1乃至14の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項16】
前記第1電気接点は、電極絶縁体層の周囲に位置する請求項1乃至15の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか1項に記載の放射線検出装置を製造する方法であって、前記検出装置は、片面加工のみを用いて製造される方法。
【請求項18】
請求項1乃至16の何れか1項に記載の放射線検出装置を製造する方法であって、前記検出装置は、両面加工を用いて製造される方法。
【請求項19】
放射線検出装置であって、
半導体材料により構成される基板と、
前記基板の第1面上の電界発生層であって、前記基板に反転層を形成する為に前記基板に電界を誘起する為の分極及び/又は電荷を有する誘電体層を備え、前記誘電体層は、強誘電体材料、エレクトレット材料、強エレクトレット材料の内の少なくとも1つを備える、電界発生層と、
前記電界発生層の周囲にある前記基板の前記第1面上の第1電気接点と、
前記基板の第2面上であって前記電界発生層の反対側の第2電気接点と、
を備える放射線検出装置。
【請求項20】
前記第1電気接点は、前記電界発生層を取り囲む請求項19に記載の放射線検出装置。
【請求項21】
前記第1電気接点は、前記基板に接点ドーピングウェルを備える請求項19又は20に記載の放射線検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出装置や光検出装置等の半導体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁波検出装置では、一般に電磁波検出層として半導体材料が使用される。
【0003】
フォトダイオードは、光子(又は光)を電流に変換するP-N接合を有する半導体デバイスである。P層は正孔(プラス)を多く含み、N層は電子(マイナス)を多く含む。フォトダイオードは、これらに限定されるものではないが、シリコン、ゲルマニウム、ヒ化インジウムガリウム等、様々な材料から製造することができる。夫々の材料は、コスト効果、感度の向上、波長範囲、低ノイズレベル、又は応答速度等、様々な特性を利用している。
【0004】
光検出装置は、フォトダイオード(PN接合、PIN接合、ショットキーダイオード)を含む様々な技術に基づくことができる。従来のPN接合の放射線検出装置や光検出装置は、検出装置の表面よりかなり深い位置にあるPN接合に基づいている。この為、入射窓と検出装置のPN接合との間に電気的な不感層が残るので、不感層内における放射線信号の吸収によって検出装置の電気出力信号が低下する。更に、従来のPN接合をベースとする検出装置では、PN接合の上部に中程度又は高濃度のドーピングを施すと、この領域におけるオージェ再結合が増加し、量子効率と出力信号が低下する。吸収による信号の減少は、特に紫外線やX線の光子や、ガンマ線の検出において不利に働く。PN接合の過剰な深さと(オージェ再結合による)ドーピングに関連する信号の減少は、紫外線光子の吸収長が非常に小さい為、紫外線検出装置では極めて重要である。
【0005】
検出装置の表面近くにある浅いPN接合は、入射窓とPN接合の間の光電気的な不感層が最小限である為、高エネルギー光子(紫外線やX線等)の検出において特に必要とされる。誘起接合は、浅いPN接合を実現する効率的な方法を提供し、低エネルギー光子の検出においても効率的である。
【0006】
既存の誘起接合検出装置は、検出装置の表面に表面電荷を誘起する材料を堆積することに基づいている。誘起層の特徴は、この層の材料特性によって決定されるが、利用可能な材料、堆積及び堆積後のプロセスによって制限される。一般的には、熱成長酸化シリコンとALDにより形成されたAl2О3とが使用される。これらの材料では利用可能な電荷範囲が限られている為、誘起接合の強度が低くなり、従ってデバイスの性能も低下する。例えば、引用により本明細書に組み込まれる、ドンスベルク(Doensberg)等著による刊行物「n型シリコンフォトダイオードに基づく予測可能な量子効率検出装置(Predictable quantum efficient detector based on n-type silicon photodiodes)」、2017年、メトロロジア(Metrologia)54巻821頁には、Al2О3(Al2О3、酸化アルミニウム)ベースの誘起接合検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ドンスベルク(Doensberg)等「n型シリコンフォトダイオードに基づく予測可能な量子効率検出装置(Predictable quantum efficient detector based on n-type silicon photodiodes)」、2017年、メトロロジア(Metrologia)54巻821頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の技術における課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の範囲は独立請求項に定義されている。幾つかの実施形態は従属請求項に定義されている。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、放射線検出装置であって、半導体材料により構成される基板と、前記基板の第1面上の電界発生層であって、前記基板に反転層を形成する為に前記基板に電界を誘起する、電界発生層と、前記基板の前記第1面上であって前記電界発生層に隣接する第1電気接点と、前記基板の第2面上であって前記電界発生層の反対側の第2電気接点と、を備え、前記電界発生層は、前記電界を誘起する為の分極及び/又は電荷を有する誘電体層を備え、前記誘電体層は、強誘電体材料、エレクトレット材料、強エレクトレット材料の内の少なくとも1つを備える放射線検出装置が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、本明細書に開示される放射線検出装置の何れか1つを製造する方法が提供される。第2の態様の更なる態様によれば、製造は、片面加工又は両面加工を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1B】少なくとも幾つかの実施形態に係る半導体検出装置の構造を示す断面図又は側面図である。
【
図2】少なくとも幾つかの実施形態に係る半導体検出装置の構造を示す断面図又は側面図である。
【
図3】少なくとも幾つかの実施形態に係る半導体検出装置の構造を示す断面図又は側面図である。
【
図4】少なくとも幾つかの実施形態に係る半導体検出装置の構造を示す断面図又は側面図である。
【
図5】少なくとも幾つかの実施形態に係る半導体検出装置の構造を示す断面図又は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態は、放射線/光子入射窓の材料量が少なく、半導体基板のドーピングが最小限の、光検出装置等の半導体放射線検出装置を提供する。より具体的には、本開示の実施形態は、電気的に分極され帯電した材料に基づく誘起接合を利用する。既存の誘起接合デバイスと比較して、このアプローチは、より強い誘起電荷を得ることを可能にし、性能の向上に繋がる。
【0014】
本明細書中「検出装置」とあるが、これは半導体検出装置を意味し、例えば放射線検出装置、光検出装置等、任意の適切な検出装置を含む。
【0015】
本開示の実施形態において、半導体基板は最小限のドーピングのみを必要とする。より具体的には、幾つかの実施形態において、接合は誘起層によって形成される為、接合を形成する為にドーピングは必要無い。言い換えれば、ドーピングは、例えば、フロント及びバック接点、並びにガード接点にのみ使用され、これにより、放射線は、特に検出装置の前側において、ドーピングされた領域を通過しない。
【0016】
本開示の実施形態において、基板のシリコン表面に電子又は正孔を誘起する為に誘起層が使用される。このような誘起電荷は、ピンダイオードの動作中にリーク電流の増加を引き起こす空乏領域がシリコン-誘電体界面に達しないように、シリコン表面を不動態化する。誘起層は、検出装置のカソード/アノードとしても動作する。ガードリングは、ダイオード領域の外側から発生する電流を収集する為に使用される。
【0017】
性能の向上は、本明細書に記載の実施形態によって有益に達成される。既存の誘起接合デバイスと比較して、このアプローチでは、より強い誘起電荷を得ることができ、ダイオードの特性及び性能の改善に繋がる。低量の材料が入射窓内に存在する。
【0018】
実施形態において、検出装置は基板を備える。基板は、高抵抗率の半導体材料で構成されてもよい。基板は、N型であってもP型であってもよく、平面、凹凸面、又はこれら2つの組み合わせを有してもよい。適切な半導体材料には、シリコン、ゲルマニウム、III-V族半導体、II-VI族半導体(CdTe等)が含まれる。
【0019】
実施形態において、検出装置は、基板の第1面上に電界発生層を備える。電界発生層は、シリコン表面に電子又は正孔を誘起する為に使用される。このような誘起電荷は、ピンダイオードの動作中に、リーク電流の増加を引き起こす空乏領域がシリコン-誘電体界面に達しないように、表面を不動態化する。誘起層(誘起電荷層)は、検出装置のカソード/アノードとしても動作する。電界発生層は、パターン化された層、又は複数のパターン化された層を備えてもよい。幾つかの実施形態において、層は異なる材料であってもよい。幾つかの実施形態において、本開示に係る検出装置は、電界発生層によって基板に電界誘起反転層が誘起されるように構成される。P型基板を使用する場合、これは、電子が半導体-酸化物界面の非常に薄い層に現れることを意味し、電子はP型材料で優勢である正孔と反対に帯電している為、反転層と呼ばれる。N型基板では、反転層は正孔によって同様に形成される。反転層が形成されると、誘起電荷Qの増加に伴う空乏幅の拡大が無くなる。
【0020】
幾つかの実施形態において、電界発生層は、強誘電体材料、強エレクトレット材料及び/又はエレクトレット材料等の電気分極材料を備える。強誘電体電界発生層と基板との間には、SiО2等の非強誘電体材料の層が存在してもよい。強誘電体材料は、外部電界の印加によって反転し得る自発的な電気分極を有する。適切な材料としては、ScAlN(スカンジウムドープ窒化アルミニウム)、HfZrO(酸化ハフニウムジルコニウム)、強誘電体材料(空気が充填されたセル状ポリマー構造を備えるポリマーフォームを含み、例えばポリマーはポリプロピレンであってもよい)及びエレクトレット材料が挙げられる。エレクトレットは、準永久的な電荷又は双極子分極を持つ誘電体材料である。例えば、酸化シリコンと窒化シリコンの積層は、表面をコロナ電荷で帯電させ、その後層をアニールすることで安定したエレクトレットにすることができる。帯電したエレクトレットは、まずエレクトレット材料を加熱し、その後強い電界の存在下で冷却することによっても製造することができる。この誘起電荷は数十年以上安定している。更に、ポリマー材料を使用することもできる。適切なエレクトレット材料の例としては、ポリマー(PTFE等のフッ素ポリマーを含む)、又は酸化ケイ素と窒化ケイ素の積層等が挙げられる。エレクトレット材料を使用する利点は、電気分極の発現に加えて、1つ又は2つの極性の静的表面及び/又は体積電荷を保持する能力である。
【0021】
強誘電体、強エレクトレット及び/又はエレクトレット材料を使用する利点は、製造中に分極の方向を制御することによって誘起電荷の極性を選択できることである。更に、典型的なSiО2又はAl2О3ベースの実装では、堆積と熱処理に基づいてのみ電荷を増加させることができる為、これらの限られた方法のみを使用して誘起電荷を増加させることは困難である。しかしながら、FE、強エレクトレット及び/又はエレクトレット材料を使用する場合、電荷は、堆積及び/又は熱処理に加えて、製造プロセス中の外部電界及び/又は電荷を使用して制御することができる為、改善された方法で制御することができる。更に、上記の材料を使用することで、放射線吸収、電荷持続時間、電荷安定性、耐熱性、製造工程への適合性を考慮する際に、様々な選択肢が提供される。
【0022】
幾つかの実施形態において、検出装置は、基板の第1面上で、電界発生層に隣接する第1電気接点を備える。第1面は、基板の所謂前面又は上面とすることができる。
【0023】
幾つかの実施形態において、検出装置は、基板の第2面上で、電界発生層とは反対側の第2電気接点を備える。第2面は、基板の所謂背面又は底面とすることができる。
【0024】
幾つかの実施形態において、検出装置は1つ以上のガードレールを備える。ガードレールは、ダイオード領域の外側から発生する電流を収集する為に使用することができる。フロント接点とバック接点、及びガードメタルは、任意の適切な材料、例えばアルミニウムであってもよい。
【0025】
幾つかの実施形態において、本開示に係る検出装置は、0.5kΩcm以上の抵抗率値を有する基板を備える。シリコンの場合、非常に良好な値は10kΩcm以上である。
【0026】
幾つかの実施形態において、本開示に係る検出装置は、少なくとも1つのドーパントを含み、前記ドーパントは、以下の材料:ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、リチウム、ケイ素、ゲルマニウム、窒素、金、白金、テルル、硫黄、スズ、ベリリウム、亜鉛、クロム、炭素、セレン、マグネシウム、塩素、ヨウ素、フッ素の内の少なくとも1つを含む。フロント接点とガードのドーピングは、基板がP型の場合はN型ドーピングとし、基板がN型の場合はP型ドーピングとする。バック接点とガードのドーピングは基板がP型の場合はP型ドーピングとし、基板がN型の場合はN型ドーピングとする。
【0027】
幾つかの実施形態において、本開示に係る検出装置は、意図的に添加された不純物を含まない、ドーピングされていない基板を備える又はこれから成る。このような基板は、純粋な半導体結晶、又は空孔等の結晶学的欠陥に由来する天然由来のドーピングを有する半導体結晶を備える又はこれから成ってもよい。
【0028】
幾つかの実施形態において、検出装置は、ウェル及びドーピングを備える第1接点を備える。当該第1接点は、電界発生層の誘電体層の周囲に配置されてもよい。一実施形態において、第1電気接点は電極絶縁体層を取り囲む。
【0029】
幾つかの実施形態において、検出装置の基板の厚さは200nmから50mm、好ましくは1μmから5000μmである。
【0030】
図1Aは、少なくとも幾つかの実施形態に係る検出装置101の断面図である。検出装置101は、基板1と、電界発生層(誘起層)2と、フロントガード接点(FGC)4と、フロント接点5と、バック接点ドーピング7と、バック接点8と、バックガード接点(BGC)9と、バックガード接点10とを備える。更に、検出装置101は、フロントガードドーピング(FGD)11及び13、フロント接点ドーピング(FCD)12及び14、並びにバックガードドーピング(BGD)15及び16、並びに前面及び背面の誘電体17及び18を備えてもよい。
【0031】
図1Bは、電気分極材料によって誘起される接合に基づく検出装置101の例示的な実施形態の断面図であり、基板がP型、フロント接点ドーピングがN型、バック接点ドーピングがP型の場合における基板及び電流の流れ並びに電子正孔の流れが図示されている。放射線誘起電流は、バック接点ドーピング7、基板1の一部、及びフロント接点ドーピング12、14を介して、バック接点8とフロント接点5の間に流れる。基板1の一部は、基板1の表面層(図示せず)に電界誘起反転層を備える。基板1の一部は更に、電界誘起反転層とバック接点ドーピング7との間の基板1の体積を有し、この体積は空乏領域を有する。フロントガードとバックガードは、基板寄生電流を収集する。
【0032】
図中で使用されている用語、すなわちe、h、Isに関して、eは電子、hは正孔、Isはガード電極によって収集された半導体基板からの寄生電流である。VdiodeはPN接合にわたって印加される電圧である。Vguardはガード電極に印加される電圧である。
【0033】
図2は、少なくとも幾つかの実施形態に係る、片面加工によって作製された、電気分極材料によって誘起される接合に基づく半導体検出装置102の断面図である。検出装置102はP型基板で示されており、フロント接点ドーピングはN型であり、バック接点ドーピングはP型である。
【0034】
図3は、少なくとも幾つかの実施形態に係る、検出装置103の断面図である。半導体検出装置103は、両面加工によって作製された、電気分極材料によって誘起される接合に基づく。検出装置103は、フロント接点ドーピングがN型であり、バック接点ドーピングがP型であるP型基板1を備える。
【0035】
更なる実施形態において、検出装置は、バック接点はN型、フロント接点はP型であるN型基板を備える。
【0036】
図4は、誘起層2(電界発生層の誘電体層)の表面に誘起電極3を設けているが、他の点では
図2の検出装置と同様である実施形態を示す。更に、
図4の検出装置104は、誘起電極3に電圧を接続する為の接点6を備えている。誘起電極は、好ましくは検出装置によって検出される放射線の減衰係数が低い、導電材料の薄層である。この構成では、層2はリーク性であってもよく、すなわち、電流の一部又は全部がそこを流れることができる。誘起電極の目的は、検出装置を作動させる際に誘起層2上に分極及び/又は帯電電圧を印加することである。誘起層2が分極及び/又は帯電された後、検出装置はその動作の為に誘起電極3を必要としなくなる。従って、誘起電極3は実用的な限り薄いことが望ましい。誘起電極3の好ましい材料はグラフェンである。
【0037】
図5は、誘起層2(電界発生層の誘電体層)の表面に誘起電極3を設けているが、他の点では
図1Aの検出装置と同様の実施形態を示す。更に、
図5の検出装置105は、誘起電極3に電圧を接続する為のゲート接点6を備える。誘起電極3の目的、構造及び材料は、
図4の実施形態と同じである。
【0038】
図に示す検出装置を含め、本明細書に開示する検出装置の構造には、以下の材料の組み合わせを採用することができる。単一の材料の組み合わせが単一の行に開示されている。
【0039】
【0040】
例えば、上記実施形態1-20において、以下のドーパント及び接点材料が使用される。N型シリコン及びゲルマニウムの基板ドーパントは、リン、ヒ素、アンチモン等の元素を含んでもよい。P型シリコン及びゲルマニウムの基板ドーパントは、ホウ素及びアルミニウム等の元素を含んでもよい。フロント及びバック誘電体は、SiО2を含んでもよい。フロント接点金属、フロントガード接点金属、誘起電極接点金属、バック接点金属及びバックガード接点金属は、アルミニウム、金、チタン、タングステン、ニッケル、銅、モリブデン等の金属を含んでもよい。(Pb,La)(Zr,Ti)O3の表記は、PbZrO3、PbTiO3、LaZrO3、又はLaTiO3を意味する。(SiNx)は、ケイ素と窒素の全ての化学量論的形態を意味する。コロナ放電等で帯電させると、SiО2とSiNxの積層はエレクトレットになる。
【0041】
幾つかの実施形態において、検出装置の基板は、ドーパント濃度が1015ドーパント原子/cm3未満、例えば1011ドーパント原子/cm3未満、例えば109ドーパント原子/cm3未満となるようなドーパントを含む。
【0042】
上述した実施形態は、様々な用途、例えば放射線検出装置又は光検出装置として適している。本開示は、少なくとも、全スペクトル範囲の光検出装置:単一画素及び画像アレイ(カメラから光量センサ等の膨大な用途)、紫外線の検出:ソーラーブラインド紫外線検出装置、軍事用途:武器又は爆発物の発射による閃光の検出、X線、幅広い医療への用途:コンピュータ断層撮影(CT)、歯科用X線等、材料分析、構造モニタリング、X線税関検査(非侵入検査等)の用途に好適であり、産業上の利用可能性を見出すことができる。更に、少なくとも幾つかの実施形態は、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、粒子線等の放射線に感度があり、安全や監視の用途に有益である。
【0043】
開示される本発明の実施形態は、本明細書に開示される特定の構造、プロセス工程、又は材料に限定されるものではなく、当業者によって認識されるであろうそれらの均等物に拡張されることを理解されたい。又、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみに使用され、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0044】
本明細書全体を通して、一実施形態又は実施形態への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通じて様々な箇所で「一実施形態において」又は「実施形態において」という表現が現れるが、必ずしも全てが同じ実施形態を指す訳ではない。例えば、約、実質的に等の用語を用いて数値に言及する場合、正確な数値も開示する。
【0045】
本明細書において、複数の項目、構造要素、構成要素、及び/又は材料は、便宜上、共通のリストで示されることがある。しかしながら、これらのリストは、リストの各メンバーが、別個の固有のメンバーとして個々に識別されるものとして解釈されるべきである。従って、このようなリストの個々のメンバーは、反対の指示無く、共通のグループにおけるそれらの提示にのみ基づいて、同じリストの他のメンバーの事実上の均等物として解釈されるべきではない。更に、本発明の様々な実施形態及び例が、その様々な構成要素の代替物と共に本明細書で言及されることがある。このような実施形態、例、及び代替物は、互いの事実上の均等物とは解釈されず、本発明の別個の自律的な表現と見なされることが理解される。
【0046】
更に、記載された特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。先の説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供する為に、長さ、幅、形状等の例のような多数の具体的な詳細を提供した。しかしながら、当業者であれば、本発明は、具体的な詳細の1つ以上がなくても、又は他の方法、構成要素、材料等を用いても実施できることを認識するであろう。他の例では、本発明の態様を不明瞭にすることを避ける為に、周知の構造、材料、又は操作は示されず、又は詳細に説明されない。
【0047】
上述した例は、1つ以上の特定の用途における本発明の原理を例示するものであるが、形態、使用法、及び実施の詳細において、発明能力を行使すること無く、本発明の原理及び概念から逸脱することなく、多数の改変を行うことができることは、当業者には明らかであろう。従って、以下に記載する特許請求の範囲による以外は、本発明を限定することを意図していない。
【0048】
本明細書では、「備える(to comprise)」及び「含む(to include)」という動詞は、引用されていない特徴の存在を排除するものでも、要求するものでもない、開かれた限定として使用される。従属請求項に記載された特徴は、特に明示しない限り、相互に自由に組み合わせることができる。更に、本書を通じて「1つの(a)」又は「1つの(an)」、すなわち単数形の使用は、複数形を排除するものではないことを理解されたい。
【符号の説明】
【0049】
101、102、103、104、105 半導体検出装置
1 基板
2 誘起層
3 誘起電極
4 フロントガード接点
5 フロント接点
6 誘起電極への接点
7 バック接点ドーピング
8 バック接点
9、10 バックガード接点
11、13 フロントガードドーピング
12、14 フロント接点ドーピング
15、16 バックガードドーピング
17 フロント誘電体
18 バック誘電体
【国際調査報告】