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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】小容量流体装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20241022BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20241022BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20241022BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20241022BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20241022BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20241022BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
G01N35/08 A
B81B1/00
G01N33/48 T
G01N37/00 101
G01N35/02 A
G01N27/327 353Q
C12M1/34 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519691
(86)(22)【出願日】2022-08-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 IB2022057635
(87)【国際公開番号】W WO2023052861
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/250,377
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524062087
【氏名又は名称】ソルベンタム インテレクチュアル プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】スワンソン, スティーブン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ハルバーソン, カート ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン, キャレブ ティー.
【テーマコード(参考)】
2G045
2G058
3C081
4B029
【Fターム(参考)】
2G045CA25
2G045CB12
2G045DA12
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA31
2G045FB05
2G045FB11
2G045FB12
2G045FB13
2G045HA06
2G045HA10
2G045JA07
2G058CC09
2G058GA01
2G058GA11
3C081AA13
3C081BA23
3C081CA19
3C081CA32
3C081CA40
3C081DA10
3C081EA27
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA15
4B029GA08
4B029GB06
4B029GB10
(57)【要約】
本開示は、流体装置を提供する。流体装置は、a)実質的に平面である第1の主表面を有する第1の結合可能なポリマー層と、b)実質的に平面である第1の主表面を有する第2のポリマー層と、c)第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分上に配置された親水性マスク材料と、を含む。親水性マスク材料の表面は、90度未満の水との前進接触角を示す。第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第2の部分は、第2のポリマー層の第1の主表面の第1の部分に結合される。親水性マスク材料及び第2のポリマー層の第1の主表面の第2の部分は、少なくとも1つの点で互いに直接接触している。開放容積は、親水性マスク材料と第2のポリマー層の第1の主表面の第2の部分との間に位置する間隙空間によって画定される。開放容積は、2つ以上の開口部を含み、開口部のうちの少なくとも1つは、第1の結合可能なポリマー層の縁に位置する。流体装置は、血糖検査ストリップなどの精密流体装置として使用するために、小容積を有するように形成することができる。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)実質的に平面である第1の主表面を有する第1の結合可能なポリマー層と、
b)実質的に平面である第1の主表面を有する第2のポリマー層と、
c)前記第1の結合可能なポリマー層の前記第1の主表面の第1の部分上に配置された親水性マスク材料であって、前記親水性マスク材料の表面が、90度未満の水との前進接触角を示す、親水性マスク材料と、を含む流体装置であって、
前記第1の結合可能なポリマー層の前記第1の主表面の第2の部分が、前記第2のポリマー層の前記第1の主表面の第1の部分に結合されており、前記親水性マスク材料と前記第2のポリマー層の前記第1の主表面の第2の部分とが、少なくとも1つの点で互いに直接接触しており、開放容積が、前記親水性マスク材料と前記第2のポリマー層の前記第1の主表面の前記第2の部分との間に位置する間隙空間によって画定されており、前記開放容積が、前記2つ以上の開口部を含み、前記開口部のうちの少なくとも1つが、前記第1の結合可能なポリマー層の縁に位置する、流体装置。
【請求項2】
前記親水性マスク材料が配置される前記第1の結合可能なポリマー層の前記第1の主表面の前記第1の部分は、前記第1の結合可能なポリマー層の第1の縁から、前記第1の結合可能なポリマー層の対向する第2の縁、及び前記第1の結合可能なポリマー層の前記第1の縁と前記第2の縁との間に位置する前記第1の結合可能なポリマー層の第3の縁のそれぞれまで延びる連続領域である、請求項1に記載の流体装置。
【請求項3】
前記第1の部分は、前記第3の縁の全体に沿って延びる、請求項2に記載の流体装置。
【請求項4】
前記親水性マスク材料が配置される前記第1の結合可能なポリマー層の前記第1の主表面の前記第1の部分が、
a)前記第1の結合可能なポリマー層の前記第3の縁の第1の部分から、i)前記第1の結合可能なポリマー層の前記第1の縁若しくは前記第2の縁のうちの少なくとも1つに、又はii)前記第3の縁の前記第1の部分から離間した位置で前記第1の結合可能なポリマー層の前記第3の縁に戻して、
b)前記第1の結合層の前記第2の縁の第1の部分から、i)前記第1の結合可能なポリマー層の前記第1の縁若しくは前記第3の縁のうちの少なくとも1つに、又はii)前記第2の縁の前記第1の部分から離間した位置で前記第1の結合可能なポリマー層の前記第2の縁に戻して、又は
c)前記第1の結合可能なポリマー層の前記第1の縁の第1の部分から、i)前記第1の結合可能なポリマー層の前記第2の縁若しくは前記第3の縁のうちの少なくとも1つに、又はii)前記第1の縁の前記第1の部分から離間した位置で前記第1の結合可能なポリマー層の前記第1の縁に戻して流体経路を画定するパターンである、請求項1に記載の流体装置。
【請求項5】
前記第1の結合可能なポリマー層の前記第1の主表面の前記第1の部分が、形状の幅よりも少なくとも10倍大きい長さを有する形状を有する、請求項4に記載の流体装置。
【請求項6】
前記第1の結合可能なポリマー層の前記第1の主表面の前記第1の部分が、直線部分、曲線部分、又はこれらの組合せを含む線形形状を有する、請求項4又は5に記載の流体装置。
【請求項7】
前記親水性マスク材料が、プラズマ堆積ケイ素/酸素材料若しくはダイヤモンド様ガラス、ナノ構造、界面活性剤、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ゴムエラストマー、又はそれらの組合せを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の流体装置。
【請求項8】
前記第1の結合可能なポリマー層が、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、エチレンアクリル酸、ポリウレタン、ポリエステルとポリオレフィンとのコポリマー、ポリウレタンと芳香族ポリ(メタ)アクリレートとのコポリマー、ポリカプロラクトンとポリウレタンとのコポリマー、又はこれらの組合せを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の流体装置。
【請求項9】
前記第2のポリマー層が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(塩化ビニル)、ポリエーテルエステル、ポリイミド、ポリエステルアミド、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、エチレンアクリル酸接着剤、若しくはポリビニルアセテートの加水分解誘導体、又はこれらの組合せを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の流体装置。
【請求項10】
前記第1のポリマー層は、摂氏100度(℃)以下のビカット軟化温度(T)を有する、請求項9に記載の流体装置。
【請求項11】
前記第1の結合可能なポリマー層又は前記第2のポリマー層のうちの少なくとも1つは、試料と反応し、電気化学、光学、蛍光、化学発光、又はこれらの組合せから選択される応答を提供するように構成された試薬を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の流体装置。
【請求項12】
前記第1の結合可能なポリマー層又は前記第2のポリマー層のうちの少なくとも1つが、検出器を更に含む、請求項11に記載の流体装置。
【請求項13】
前記間隙空間が、前記第1の結合可能なポリマー層の前記第1の主表面の前記第1の部分の1平方センチメートル当たり500ナノリットル以下の容積を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の流体装置。
【請求項14】
前記第1の結合可能なポリマー層の前記第1の主表面の前記第1の部分を、前記第1の結合可能なポリマー層の第2の主表面又は前記第2のポリマー層の第2の主表面のうちの少なくとも1つに接続するチャネルを更に備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の流体装置。
【請求項15】
前記第1の結合可能なポリマー層の前記第1の主表面の前記第1の部分又は前記第2のポリマー層の前記第1の主表面の前記第2の部分のうちの少なくとも1つが、1ナノメートル(nm)~5マイクロメートル(μm)の平均表面粗さ(R)を示し、前記親水性マスク材料と前記第1の主表面の前記第2の部分との間の前記少なくとも1つの接触点が、前記表面粗さの最大高さの位置で生じる、請求項1~14のいずれか一項に記載の流体装置。
【請求項16】
前記第1の結合可能なポリマー層の第1の縁と前記第2のポリマー層の直接隣接する第1の縁との間に最大5μmの間隙を備える、請求項1~15のいずれか一項に記載の流体装置。
【請求項17】
前記親水性マスク材料が、1nm~1μmの平均厚さを有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の流体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、小流体容積とともに使用するための流体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ダイ切断及び回転変換プロセスは、診断装置及びウェアラブル装置において使用される流体装置の製造のためにしばしば利用される。これらのプロセスは、小さく複雑な構造体を製造する能力が制限され、多くの場合、高価で組み立てが困難な複数の個々のフィルム構造体を必要とする。例えば、流体装置チャンバを形成するための一般的なアプローチは、両面塗布テープから小さなノッチを切断し、ノッチがセンサの上に位置合わせされた状態でテープを底部層に積層し、その後、親水性カバーフィルムを積層してチャンバの上部を形成することである。しかしながら、テープから小さな特徴をダイ切断することには実際的な限界があり、必要とされる試料の容積を約1マイクロリットル未満に低減することを困難にしている。チャンバの容積は、両面塗布テープの厚さによって画定され、接着剤塗布プロセスでは達成することが困難な正確なキャリパー制御を必要とする。更に、接着剤の薄層は、より厚い層よりも低い接着強度を有する傾向がある。また、薄い又は極薄のフィルムを使用することは、流体装置の製造における取り扱い中にフィルムが伸張又は破断する危険性がある。流体装置アセンブリに関連する課題に加えて、毛細管特徴を形成するために両面塗布テープを利用することに関連する材料問題もある。例えば、テープをダイ切断することによって形成される側壁を親水性にすることは困難であり、したがって、カバーフィルムの表面エネルギーは、体液などの水性試料の自発的な毛管作用を誘発するために非常に高くなければならない。
【発明の概要】
【0003】
第1の態様において、本開示は、流体装置を提供する。流体装置は、a)実質的に平面である第1の主表面を有する第1の結合可能なポリマー層と、b)実質的に平面である第1の主表面を有する第2のポリマー層と、c)第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分上に配置された親水性マスク材料と、を含む。親水性マスク材料の表面は、90度未満の水との前進接触角を示す。第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第2の部分は、第2のポリマー層の第1の主表面の第1の部分に結合される。親水性マスク材料及び第2のポリマー層の第1の主表面の第2の部分は、少なくとも1つの点で互いに直接接触している。開放容積は、親水性マスク材料と第2のポリマー層の第1の主表面の第2の部分との間に位置する間隙空間によって画定される。開放容積は、2つ以上の開口部を含み、開口部のうちの少なくとも1つは、第1の結合可能なポリマー層の縁に位置する。
【0004】
2つの(例えば、実質的に)平面層の選択された部分を結合し、1つ以上の非結合(例えば、親水性)部分の間の間隙空間を流体流動のために利用することによって、小容積の流体とともに使用するための流体装置を調製することが可能であることが発見されている。これは、現在の製造方法によって達成され得るよりも正確でより少ない容積の試料を使用することによって、並びに装置における空洞の形成を必要としないことによって、増加した性能のうちの少なくとも1つの有利な特性を提供する。流体装置は、単純なプロセスによって形成されてもよく、それは、例えば、ダイ切断及び回転変換プロセスと比較して、必要とされる入力材料の数を低減する。
【0005】
本開示による流体装置は、空洞を必要とせず、したがって、(例えば、垂直な)側壁を必要とせず、側壁を有する空洞を含む物品又は装置と比較して、幾何学形状の複雑さを排除する。更に、これらの流体装置は、現在市販されている設計よりもはるかに小さい容積の液体の輸送、すなわち2つの(実質的に)平坦な表面間の間隙輸送を可能にする。
【0006】
本開示の上記の概要は、本開示の各開示された実施形態又はすべての実装形態を説明することを意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願全体のいくつかの箇所において、実施例のリストを通してガイダンスが提供され、これらの実施例は様々な組合せで使用することができる。各例において、列挙されたリストは代表的な群としてのみ機能し、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】例示的な流体装置の分解一般化された概略図である。
図1B図1Aの例示的流体装置の一部の断面の一般化された概略図である。
図1C図1Aの例示的流体装置の一部の別の断面の一般化された概略図である。
図2A】流体と接触する前の例示的な流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。
図2B】流体との接触の0.5秒後の図2Aの例示的な流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。
図2C】流体との接触の1秒後の図2Aの例示的な流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。
図3】電極を有する検出器を含む第2のポリマー層の一般化された概略図である。
図4A】本開示による3つの異なるパターン化マスクを含むテープの写真である。
図4B】本開示による、試料の残りの部分から例示的な流体装置を切断する前の実施例1の試料の写真である。
図4C】流体と接触する前の実施例1の流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。
図4D】流体との接触の1.685秒後の実施例1の流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。
図4E】流体との接触の3.370秒後の実施例1の流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。
図5A】本開示による、試料の残りの部分から例示的な流体装置を切断する前の実施例2の試料の写真である。
図5B】流体との接触の0.062秒後の実施例2の流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。
図5C】流体との接触の3.577秒後の実施例2の流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。
図5D】流体との接触の4.555秒後の実施例2の流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。
図5E】流体との接触の7.051秒後の実施例2の流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。
図6A】本開示による、試料の残りの部分から例示的な流体装置を切断する前の実施例3の試料の写真である。
図6B】流体との接触の1.841秒後の実施例3の流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。
図6C】流体との接触の1.934秒後の実施例3の流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。
図6D】流体との接触の2.4021秒後の実施例3の流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。
【0008】
上記で特定された図は、本開示のいくつかの実施形態を説明しているが、本明細書に記載されているように、他の実施形態も企図される。図面は必ずしも縮尺通りに描かれていない。すべての場合において、本開示は、限定ではなく代表として本発明を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で使用される場合、成分を本質的に含まない組成物の文脈における「本質的に含まない」という用語は、組成物の総重量に基づいて、1重量%(wt.%)未満、0.5wt.%以下、0.25wt.%以下、0.1wt.%以下、0.05wt.%以下、0.001wt.%以下、又は0.0001wt.%以下の成分を含有する組成物を指す。構造の特徴(例えば、層の表面)の文脈における「本質的に含まない」という用語は、構造の総面積に基づいて、5面積%未満の構成要素、4面積%以下、3面積%以下、2面積%以下、又は1面積%以下の構成要素を有する構造を指す。
【0010】
本明細書で使用するとき、用語「ポリマー」は、少なくとも1種のポリマーを含有することを指す。
【0011】
本明細書で使用するとき、用語「結合可能」は、結合後に、23~25℃でASTM D-1002-94に従って測定して、少なくとも1メガパスカル(MPa)又は2MPa以上の重なり剪断を有する材料(例えば、層)を指す。感圧接着剤及び熱結合性材料の各々は、用語「結合性」に包含される。
【0012】
本明細書で使用するとき、用語「熱結合性」は、加熱されたときに1つ以上の表面への結合を形成し、形成された結合がその後の加熱時に解放され得る材料(例えば、層)を指す。感圧接着剤とは対照的に、一般に、熱結合性材料は、室温で基材に結合するのに不十分な粘着性を有する。熱硬化性材料とは異なり、熱結合性材料によって形成される結合は、一般に可逆的である。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「感圧接着剤」は、以下を含む特性を有する材料を指す:(1)強力かつ永久的な粘着性、(2)指圧以下の圧力による接着、(3)被着体上に保持する十分な能力、及び(4)被着体からきれいに除去するのに十分な凝集力。PSAとして良好に機能することが見出されている材料としては、必要な粘弾性特性を示すように設計及び配合されたポリマーが挙げられ、粘着性、剥離接着力、及び剪断保持力の所望のバランスが得られる。PSAは、室温で通常粘着性であることを特徴とする。単に粘着性であるか又は表面に接着する材料は、PSAを構成しない。PSAという用語は、追加の粘弾性特性を有する材料を包含する。PSAは、粘着性に関するDahlquist基準を満たす接着剤であり、これは、剪断貯蔵弾性率が、25℃及び1ヘルツ(6.28ラジアン/秒)で測定した場合に、典型的には3×10Pa(300kPa)以下であることを意味する。PSAは典型的には、室温で接着性、凝集性、コンプライアンス、及び弾性を示す。本明細書で使用される場合、「空洞」という用語は、(例えば、固体)物体のうちの少なくとも1つの壁によって画定される空の空間を指す。
【0014】
本明細書で使用される場合、「チャンバ」という用語は、少なくとも1つの追加の壁によって囲まれた空洞を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「チャネル」という用語は、気体又は液体が流体装置から出ることを可能にする通路を指す。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「寸法安定性」とは、様々な環境条件及び歪み下であっても、材料(例えば、物品又はポリマー層)がそのサイズ及び形状を維持する能力を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、ポリマーの「ガラス転移温度」(T)という用語は、ガラス状態からゴム状態へのポリマーの転移を指し、示差走査熱量測定(DSC)を使用して、例えば窒素流中で10℃/分の加熱速度で測定することができる。モノマーのTが言及される場合、それはそのモノマーのホモポリマーのTである。ホモポリマーは、Tが限界値に達するように十分に高い分子量でなければならず、これは、ホモポリマーのTが分子量の増加とともに限界値まで増加することが一般に認識されているからである。ホモポリマーはまた、水分、残留モノマー、溶媒、及びTに影響を及ぼし得る他の汚染物質を実質的に含まないと理解される。好適なDSC法及び分析モードは、Matsumoto,A.et.al.,J.Polym.Sci.A.,Polym.Chem.1993年、31巻、2531~2539頁に説明されている通りである。
【0018】
本明細書で使用される場合、ポリマーの「ビカット軟化温度」という用語は、明確な融点を有さない材料の軟化点の決定を指す。これは、試験片が、特定の荷重下で先端が平らな針によって1mmの深さまで貫通される温度として取られる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「親水性」という用語は、水溶液によって濡れており、材料が水溶液を吸収するか否かを表さない表面を指す。「湿潤」とは、表面が、90°未満、好ましくは45°以下の前進(最大)水接触角を示すことを意味する。本明細書で使用するとき、用語「疎水性」は、90°以上の前進水接触角を示す表面を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「基準」という用語は、比較の固定された基準を提供する構造又はマークを指す。
【0021】
本明細書で使用するとき、「硬化」は、任意の機構による、例えば、熱、光、放射線、電子ビーム、マイクロ波、化学反応、又はこれらの組合せによる組成物の硬化又は部分硬化を意味する。本明細書で使用される場合、「硬化性」という用語は、例えば、加熱して溶媒を除去すること、加熱して重合を引き起こすこと、化学架橋、放射線誘起重合又は架橋などによって硬化又は固化され得る材料を指す。本明細書で使用される場合、「硬化された」とは、硬化によって硬化又は部分的に硬化された(例えば、重合又は架橋された)材料又は組成物を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「表面粗さ」は、材料表面の平滑度を指し、「R」として定量化され、これは、平均表面粗さを指し、平均高度からの距離の絶対値の積分として画定される。平均高さは、表面の高さプロファイルの算術平均である。関数z(x)は、評価長さlにわたって測定された位置xにおける高さと平均高度との間の差を指す。
【0023】
【数1】

項「R」は、サンプリング長l内の縦座標値z(x)の二乗平均平方根値を表す。
【0024】
【数2】

項「Rsk」は、サンプリング長l内の縦座標値z(x)の平均三乗値とRの三乗との商を指す。
【0025】
【数3】
【0026】
高さは、光学プロフィロメーター(例えば、Veeco Instruments Inc.(Plainview,New Jersey)製のWyko NT3300光学プロフィロメーター)を使用して測定することができる。
【0027】
本明細書で使用するとき、層に関して「実質的に平面」とは、層の表面が、層の平面の上及び/又は下に延びる凹部及び/又は突起を本質的に含まないことを意味し、凹部及び/又は突起は、5マイクロメートル(μm)、4.75μm、4.5μm、4.25μm、4μm、3.75μm、3.5μm、3.25μm、3μm、2.75μm、2.5μm、2.25μm、2μm、1.75μm、1.5μm、1.25μm、1μm、750nm、600nm、500nm、400nm、300nm超、又は200nm超の深さ又は高さを有する。典型的には、凹部及び/又は突起は、5nm以上、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、40nm、50nm、75nm、100nm、125nm、又は150nm以上の深さ又は高さを有する。いくつかの場合において、平面性からの逸脱は、親水性マスクの厚さによって引き起こされる。典型的には、表面上の突起は、設計されたパターンを欠いているが、むしろランダムである傾向がある。層表面に存在する凹部又は突起の深さ又は高さは、共焦点顕微鏡を用いて測定することができる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「熱可塑性」は、そのガラス転移点よりも十分に高い温度に加熱されると流動し、冷却されると固体になるポリマーを指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「熱硬化性」は、硬化時に永久的に硬化し、その後の加熱時に流動しないポリマーを指す。熱硬化性ポリマーは、典型的には架橋ポリマーである。
【0030】
本明細書で使用するとき、「透明」は、可視光スペクトルの少なくとも400ナノメートル(nm)~700nm部分にわたって、少なくとも50%の透過率、70%の透過率、又は任意選択的に90%を超える透過率を有する材料(例えば、層)を指す。
【0031】
「好ましい」及び「好ましくは」という語は、特定の状況下で特定の利益をもたらし得る本開示の実施形態を指す。しかしながら、同じ又は他の状況下では、他の実施形態も好ましい場合がある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを暗示するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものでもない。
【0032】
本出願において、「a」、「an」、及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、例示のために特定の例が使用され得る一般的なクラスを含む。用語「a」、「an」、及び「the」は、用語「少なくとも1つ」と互換的に使用される。リストが続く「のうちの少なくとも1つ」及び「のうちの少なくとも1つを備える」という句は、リスト内の項目のうちのいずれか1つ、及びリスト内の2つ以上の項目の任意の組合せを指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「又は」という用語は、一般に、内容が明確に別段の指示をしない限り、「及び/又は」を含むその通常の意味で使用される。「及び/又は」という用語は、列挙された要素の1つ若しくはすべて、又は列挙された要素の任意の2つ以上の組合せを意味する。
【0034】
また、本明細書において、すべての数は、用語「約」によって、好ましくは用語「正確に」によって修飾されると想定される。測定された量に関連して本明細書で使用される場合、用語「約」は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定装置の精度に見合ったレベルの注意を払う当業者によって予想されるような、測定された量の変動を指す。
【0035】
特性又は属性に対する修飾語として本明細書で使用される場合、「概して」という用語は、別段に具体的に画定されない限り、特性又は属性が当業者によって容易に認識可能であるが、絶対的な精度又は完全な一致(例えば、定量化可能な特性について+/-20%以内)を必要としないことを意味する。「実質的に」という用語は、特に画定されない限り、高度の近似(例えば、定量化可能な特性について+/-10%以内)を意味するが、ここでも絶対的な精度又は完全な一致を必要としない。同じ、等しい、均一、一定、厳密などの用語は、絶対精度又は完全な一致を必要とするのではなく、特定の状況に適用可能な通常の公差又は測定誤差の範囲内であると理解される。
【0036】
本開示の少なくとも特定の実施形態による流体装置は、例えば、液体試料取得に有用であり得る多層の溶融接合可能な自発的毛細管マイクロ流体物品を提供する。適切な用途としては、例えば、診断装置(例えば、血糖ストリップ)及び医療用装着具(例えば、汗センサ)のための体液取得が挙げられる。例えば、血糖検査ストリップは、例えば人の指へのスティックからの少量の血液を分析するように設計された使い捨てポイントオブケアセンサの一種である。ストリップは、従来、血液がストリップに入り、センサ化学物質に曝露されるための小さなチャンバを形成するように構成された複数のフィルム層に積層された底部センサ層を含む。
【0037】
ある成形プロセスは、流体装置を作製する現在の方法のうちの少なくとも1つの制限を克服するために、結合可能領域を伴う平面ポリマー層を生成することが可能であることが発見されている。結合はポリマー層間に気密シールを形成するが、親水性パターン化領域は結合しない。また、例えば、熱接着の際に、溶融したポリマーが親水性パターン領域を突き破って、望ましくない領域で接着することがないことも見出された。有利なことに、結合プロセスは、高い接着強度を達成しながら、存在する任意のセンサ化学物質(例えば、試薬)の不活性化を最小限に抑えるように適合させることができる。本開示の少なくとも特定の実施形態による構造におけるこれらの特徴の組み込みは、単一の機械的に堅牢な流体装置を形成するために必要とされる入力材料の数を低減することによって、装置アセンブリを簡略化する。
【0038】
第1の態様において、本開示は、流体装置を提供する。流体装置は、
a)実質的に平面である第1の主表面を有する第1の結合可能なポリマー層と、
b)実質的に平面である第1の主表面を有する第2のポリマー層と、
c)第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分上に配置された親水性マスク材料であって、親水性マスク材料の表面が、90度未満の水との前進接触角を示す、親水性マスク材料と、を含み、
第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第2の部分が、第2のポリマー層の第1の主表面の第1の部分に結合されており、親水性マスク材料と第2のポリマー層の第1の主表面の第2の部分とが、少なくとも1つの点で互いに直接接触しており、開放容積が、親水性マスク材料と第2のポリマー層の第1の主表面の第2の部分との間に位置する間隙空間によって画定されており、開放容積が、2つ以上の開口部を含み、開口部のうちの少なくとも1つが、第1の結合可能なポリマー層の縁に位置する。典型的には、間隙空間は、450ナノリットル、400ナノリットル、350ナノリットル、300ナノリットル、又は更には250ナノリットル以下、及び0.5ナノリットル以上、1ナノリットル、2ナノリットル、5ナノリットル、7ナノリットル、10ナノリットル、15ナノリットル、20ナノリットル、25ナノリットル、30ナノリットル、35ナノリットル、40ナノリットル、45ナノリットル、50ナノリットル、55ナノリットル、60ナノリットル、70ナノリットル、80ナノリットル、90ナノリットル、又は100ナノリットル以上など、第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分の1平方センチメートル当たり500ナノリットル以下の容積を含む。これは、流体が流入する空洞を含む装置よりも、本開示による流体装置を用いてはるかに小さい流体試料の使用を可能にする点で有利である。
【0039】
図1A~1Bを参照すると、流体装置100の分解図及び断面図の一般的な概略図がそれぞれ提供されている。流体装置100は、実質的に平面である第1の主表面112を有する第1の結合可能なポリマー層110と、第1の結合可能なポリマー層110の第1の主表面112の第1の部分116上に配置された親水性マスク材料114とを備える。流体装置100は、実質的に平面である第1の主表面122を有する第2のポリマー層120を更に備える。第1の結合可能なポリマー層110の第1の主表面112の第2の部分118は、第2のポリマー層120の第1の主表面122の第1の部分124に結合される(132)。
【0040】
この実施形態では、親水性マスク材料114が配置される第1の結合可能なポリマー層110の第1の主表面112の第1の部分116は、第1の結合可能なポリマー層110の第1の縁111から、第1の結合可能なポリマー層110の対向する第2の縁113及び第1の結合可能なポリマー層110の第1の縁111と第2の縁113との間に位置する第1の結合可能なポリマー層110の第3の縁115のそれぞれまで、並びに第1の部分116と第2の部分118との間の界面190まで延びる連続領域である。任意選択的に、第1の部分116は、第3の縁115の全体119に沿って延びる。例えば、この実施形態では、第1の主表面112の第1の部分116は、界面190、第1の縁111、第2の縁113、及び第3の縁115によって境界付けられた連続的な四辺形形状を有する。
【0041】
図1Cを参照すると、流体装置100の断面の一部の概略図が提供されており、親水性マスク材料114と第2のポリマー層120の第1の主表面122の第2の部分126とは、少なくとも1つの点、この場合は4つの点140、142、144、146で互いに直接接触している。開放容積130は、親水性マスク材料114と第2のポリマー層120の第1の主表面122の第2の部分126との間に位置する間隙空間によって画定される(そのような開放容積130については図1Bも参照)。開放容積130は、2つ以上の開口部134、136を含み、開口部134、136のうちの少なくとも1つは、第1の結合可能なポリマー層110の縁(図1Aに示される縁111、113、及び/又は115のいずれか)に位置する。したがって、親水性マスク材料114と第2のポリマー層120の第1の主表面122の第2の部分126との間には、非接合領域全体にわたって(例えば、第1の接合可能なポリマー層110の第1の部分116の全体にわたって)密接な接触はなく、むしろ領域内の特定の点で接触する。流体装置のいくつかの実施形態では、第1の結合可能なポリマー層の第1の縁と第2のポリマー層の直接隣接する第1の縁との間に最大5μmの間隙がある(例えば、図1Cの開口部134及び/又は136を参照)。
【0042】
本開示による任意の流体装置において、第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分、又は第2のポリマー層の第1の主表面の第2の部分のうちの少なくとも1つは、1ナノメートル(nm)~5マイクロメートル(μm)の平均表面粗さ(R)を示し得る。例えば、主表面は、1nm以上、2nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、75nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、又は1nm以上;及び5μm以下、4.75μm、4.5μm、4.25μm、4μm、3.75μm、3.5μm、3.25μm、3μm、2.75μm、2.5μm、2.25μm、2μm、1.75μm、1.5μm、1.25μm、1μm、750nm、500nm、又は250nm以下の平均表面粗さ(R)を示し得る。図1Cの実施形態では、第1の結合可能なポリマー層110の第1の主表面122の第1の部分116及び第2のポリマー層120の第1の主表面112の第2の部分126の上の両方の親水性マスク材料114が粗い表面を有し、上述の範囲内の平均表面粗さ(R)を示すことができる。場合によっては、親水性マスク材料と第1の主表面の第2の部分との間の少なくとも1つの接触点は、表面粗さの最大高さの位置、例えば図1Cの点144で生じる。
【0043】
図1Aの実施形態の第1の結合可能なポリマー層は、基準マーク160、すなわち、第1の結合可能なポリマー層110の第1の主表面112上に位置する所定の形状のマークを更に含む。基準構造又はマークは、有利には、更なる製造及び/又は処理ステップ中の物品の改善された位置合わせのための基準マークを提供する。任意選択的に、第1の結合可能なポリマー層、第2のポリマー層、又はその両方は、基準構造又はマークを含む。ある実施形態では、マークの代わりに、基準構造が、流体装置上に提供されてもよい。基準構造は、例えば、流体装置上に形成された(例えば、第1又は第2のポリマー層の形成中に)三次元構造であってもよい。
【0044】
本開示による任意の流体装置において、第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分を第1の結合可能なポリマー層の第2の主表面又は第2のポリマー層の第2の主表面のうちの少なくとも1つと接続するチャネルが提供されてもよい。チャネルは、気体又は液体が流体装置から出ることを可能にする通路であり、置換された気体又は液体がチャネルを通って流体装置から(例えば、より多く)容易に出ることができるので、流体を流体装置に吸い上げるのに役立ち得る。図1A及び図1Bに示される実施形態では、チャネル150は略円筒形状を有する。ただし、形状は特に限定されない。例えば、第1の結合可能なポリマー層110又は第2のポリマー層120のうちの少なくとも1つを通るレーザ穿孔を使用して、略円筒形のチャネルを形成することができる。
【0045】
ここで図2A~2Cを参照すると、流体と接触する前(図2A)、流体と0.5秒間接触した後(図2B)、及び流体と1秒間接触した後(図2C)の実施例4(後述)の例示的な流体装置の一部の顕微鏡画像が提供されている。図2Aは、第1の主表面(図示せず)及び反対側の第2の主表面217上に配置された親水性マスク材料(図示せず)を有する第1の結合可能なポリマー層210を有する流体装置200の一部の画像を提供する。第1の結合可能なポリマー層210は、第1の結合可能なポリマー層210の第2の部分218において第2のポリマー層220に結合されるが、第1の結合可能なポリマー層210の第1の部分216においては結合されない。この実施形態では、第1の部分216は、第1の縁211に沿って、対向する第2の縁213に沿って、及び第1の縁211と第2の縁213との間に位置する第3の縁215に沿って完全に延びる連続部分である。この構成は、流体装置200の使用中に縁の各々に沿った任意の点で空気及び/又は液体の通気を可能にする。
【0046】
ヒト血液295の3マイクロリットルの試料を、流体装置200の第3の縁215と接触させ、図2Bは、接触の時間から2分の1秒後に、血液の試料の一部が、第3の縁215から流体装置200内に(すなわち、非結合親水性マスク材料と第2のポリマー層220との間の間隙空間によって形成された開放容積内に)少なくとも2000マイクロメートルの距離を移動したことを示す。移動した距離は、血液295の存在によって提供され、2211.38μmとラベル付けされた括弧によって血液295の前縁に沿った1つの点でマークされた、より暗い色調の灰色の存在によって見ることができる。図2Cは、接触時間から1秒後に、血液295の一部が、第3の縁215から界面290まで、開放容積を通って横方向に、流体装置200内へと全距離を移動し、第1の結合可能なポリマー層210の第1の部分216(すなわち、親水性マスク材料を含む)が、第1の結合可能なポリマー層210の第2の部分218と接触する(すなわち、第2のポリマー層220に結合される)ことを示す。界面は、290の矢印が指し示す垂直線に沿って位置し、4648.05μmとラベル付けされた括弧によってマークされている。
【0047】
有利なことに、親水性マスク材料の使用は、微細複製、エンボス加工、又はダイ切断によって容易に製造されない複雑な流体設計の形成を可能にする。デザインやパターンは特に限定されるものではなく、様々に構成することができる。例えば、本開示による任意の流体装置において、親水性マスク材料が配置される第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分には、
a)第1の結合可能なポリマー層の第3の縁の第1の部分から、i)第1の結合可能なポリマー層の第1の縁若しくは第2の縁のうちの少なくとも1つに、又はii)第3の縁の第1の部分から離間した位置で第1の結合可能なポリマー層の第3の縁に戻して、
b)第1の結合可能なポリマー層の第2の縁の第1の部分から、i)第1の結合可能なポリマー層の第1の縁若しくは第3の縁のうちの少なくとも1つに、又はii)第2の縁の第1の部分から離間した位置で第1の結合可能なポリマー層の第2の縁に戻して、又は
c)第1の結合可能なポリマー層の第1の縁の第1の部分から、i)第1の結合可能なポリマー層の第2の縁若しくは第3の縁のうちの少なくとも1つに、又はii)第1の縁の第1の部分から離間した位置で第1の結合可能なポリマー層の第1の縁に戻して流体経路を画定するパターンがある。
【0048】
したがって、再び図1Aを参照すると、流体装置に少なくとも2つの開口部を提供するために、親水性マスク材料114のパターン(図示せず)が、第1の縁111、第2の縁113、又は第3の縁115のいずれか1つに沿った位置から始まる流体経路を画定する第1の結合可能なポリマー層110の第1の主表面112の第1の部分116に適用されてもよい。更に、流体経路は、それが開始した同じ縁の別個の位置まで延びてもよく、又は他の2つの縁のいずれかの位置まで延びてもよい。第2のポリマー層上の任意のパターン(例えば、表面粗さなどの平面性からの偏差)と親水性マスク材料のパターンとの間に位置合わせはない。いくつかの特定の適切な親水性マスク材料パターンを図4Aに示し、以下で詳細に説明する。
【0049】
図4Aを参照すると、3つの異なるパターン化マスク400、500、及び600を含むテープの写真が提供されている。パターン化マスク400において、パターンは、第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分が、形状の幅よりも少なくとも10倍大きい長さを有する形状を有するように設計される。そのような形状は、90度の角度で開口領域405に接続された開口領域403(すなわち、1mmの幅及び10mmの長さを有する)によって与えられ得る。このパターンは、流体が流体装置の1つの縁から異なる(例えば、隣接する)縁に吸い上げられるように設計される。
【0050】
パターン化マスク500において、パターンは、第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分が直線部分を含む線形形状を有するように設計される。他の場合には、曲線部分、又は直線部分と曲線部分との組合せを含む線形形状が提供される。このパターンは、流体が、流体装置の1つの縁から異なる(すなわち、対向する)縁に吸い上げるように設計される。パターン化されたマスク600において、パターンは、第1のポリマー層の第1の主表面の第1の部分が図2Aと本質的に同じ形状(例えば、第1の縁に沿って、対向する第2の縁に沿って、及び第1の縁と第2の縁との間に位置する第3の縁に沿って完全に延びる連続部分)を有するように、長方形設計を有する。
【0051】
好適な親水性マスク材料としては、例えば、プラズマ堆積シリコン/酸素材料又はダイヤモンド様ガラス、ナノ構造(例えば、米国特許第8634146号及び同第10134566号(それぞれDavidら)に記載されている方法を使用するものなど)、界面活性剤、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ゴムエラストマー、又はこれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
(結合された)流体装置を調製するために、第1の結合可能なポリマー層は、例えば、限定されないが、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、エチレンアクリル酸、ポリウレタン、ポリエステルとポリオレフィンとのコポリマー、ポリウレタンと芳香族ポリ(メタ)アクリレートとのコポリマー、ポリカプロラクトンとポリウレタンとのコポリマー、又はこれらの組合せを含む。1つの好適な市販のポリウレタンは、Lubrizol(Wickliffe,OH)から商品名「PEARLBOND 1160L」である。好適な市販のエチレン酢酸ビニル(EVA)は、The Dow Chemical Companyから商品名「DUPONT ELVAX 3180」で市販されている。好適な市販のエチレンアクリル酸は、SK Global Chemical(Seoul South Korea)から商品名「PRIMACOR 3330」で市販されている。更に、様々な添加剤、例えば可塑剤、酸化防止剤、顔料、剥離剤、帯電防止剤などが、第1の結合可能なポリマー層に含まれてもよい。
【0053】
任意の実施形態において、第1の結合可能な層の平均厚さは、5マイクロメートル以上、7.5マイクロメートル、10マイクロメートル、12.5マイクロメートル、15マイクロメートル、17.5マイクロメートル、又は20マイクロメートル以上であり、50マイクロメートル以下、45マイクロメートル、40マイクロメートル、35マイクロメートル、30マイクロメートル、又は25マイクロメートル以下である。別の言い方をすれば、第1の結合可能なポリマー層は、5マイクロメートル~50マイクロメートルの平均厚さを有し得る。平均厚さは、互いに少なくとも0.5ミリメートル離れて位置する少なくとも5箇所で厚さを測定し、測定された厚さのすべての平均を取ることによって決定され得る。
【0054】
場合によっては、第1の結合可能なポリマー層に好適なポリマー材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリエステルとポリオレフィンとのコポリマー、ポリウレタンと芳香族ポリ(メタ)アクリレートとのコポリマー、ポリカプロラクトンとポリウレタンとのコポリマー、又はこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。更に、様々な添加剤、例えば可塑剤、酸化防止剤、顔料、剥離剤、帯電防止剤などが、第1の結合可能なポリマー層に含まれてもよい。
【0055】
第2のポリマー層に好適なポリマー材料としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、又は低密度ポリエチレン(LDPE))、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(塩化ビニル)、ポリエーテルエステル、ポリイミド、ポリエステルアミド、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、又はポリビニルアセテートの加水分解誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、ポリオレフィンは、それらの優れた物理的特性、加工の容易さ(例えば、ツールの表面を複製すること)、及び典型的には低コストのために好ましい。また、ポリオレフィンは一般に強靭で、耐久性があり、その形状を良好に保持するので、物品形成後の取り扱いが容易である。選択された実施形態において、第2のポリマー層は、ポリエステルポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。1つの好適な市販のPETは、Tekra(New Berlin,WI)から商品名「MELINEX 454」で販売されている厚さ5ミル(127マイクロメートル)のPETシートである。好適な市販のLDPEは、The Dow Chemical Company(Midland Michigan)から商品名「DOW 955I LDPE」で市販されている。
【0056】
第2のポリマー層の表面に表面処理を施して、第1の結合可能なポリマー層との結合を改善することができる。好適な表面処理としては、火炎処理、コロナ処理、金属プライマー(例えば、金などの金属の層)、又は化学プライマーを挙げることができる。
【0057】
好ましくは、第2のポリマー層は、最大厚さ500マイクロメートル、475マイクロメートル、450マイクロメートル、425マイクロメートル、400マイクロメートル、375マイクロメートル、350マイクロメートル、325マイクロメートル、300マイクロメートル、275マイクロメートル、250マイクロメートル、225マイクロメートル、200マイクロメートル、又は175マイクロメートルであり、最小厚さが50マイクロメートル、75マイクロメートル、100マイクロメートル、125マイクロメートル、又は150マイクロメートルである。
【0058】
特定の実施形態において、第1の結合可能なポリマー層は、摂氏100度(℃)以下、95℃、90℃、85℃、80℃、75℃、又は70℃以下、及び45℃以上、50℃、55℃、60℃、又は65℃以上のビカット軟化温度(T)を有する。第1の結合可能なポリマー層のビカット軟化温度は、多くの場合、第2のポリマー層のビカット軟化温度よりも少なくとも10%低く、第2のポリマー層のビカット軟化温度よりも15%低く、20%低く、25%低く、30%低く、35%低く、又は少なくとも40%低い。特定の実施形態では、第2のポリマー層は、摂氏150度(℃)以下、145℃、140℃、130℃、120℃、115℃、又は110℃以下、及び65℃以上、70℃、75℃、80℃、又は85℃以上のビカット軟化温度(T)を有する。異なるビカット軟化温度を有するポリマー層を使用することは、各ポリマー層がその実質的に平坦な第1の主表面を維持しながら、第2のポリマー層を第1の結合可能なポリマー層に熱結合するのを助けることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、第1の結合可能なポリマー層、第2のポリマー層、又はその両方は、可視光に対して透明である(上で画定したように)。1つ以上の透明層を提供することは、試料反応が物品のうちの少なくとも一部を通して光学的に検出され得る特定の用途に有利であり得る。
【0060】
好ましい実施形態では、物品は、有利には、摂氏25度(℃)の温度で50%、40%、30%、20%、15%、10%未満、又は5%未満の歪みで寸法安定性である。本明細書で使用される場合、「歪み」は、延伸比又は伸長比を指す。それは、任意の特定の方向における材料ラインの最終長さlと初期長さLとの間の比として画定される。例えば、50%の伸び=1.5Lである。寸法安定性は、装置が取り扱われるときに流体装置の変形に抵抗するのに役立ち、使用前又は使用中に構造を損傷する可能性を減少させる。
【0061】
本開示の少なくとも特定の実施形態による流体装置は、液体(例えば、水、尿、血液、又は他の水溶液)を、親水性マスク材料と第2のポリマー層の第1の主表面の第2の部分との間の開放容積に沿って、液体が接触する第1の開口部から少なくとも第2の開口部に向かって自発的かつ均一に輸送することができる。この能力は吸い上げと呼ばれることが多い。液体を自発的に輸送する層の能力に影響を及ぼす2つの一般的な因子は、(i)表面の構造又はトポグラフィー(例えば、毛管現象、空洞の形状)、及び(ii)表面の性質(例えば、表面エネルギー)である。第1及び第2のポリマー層はそれぞれ実質的に平面であり、互いに直接隣接しているので、特定の所望の量の流体輸送能力を達成するために、設計者は、親水性マスキング材料が配置されるポリマー層表面の表面エネルギーを調整することができる。吸い上げを達成するために、そのポリマー層の表面は、輸送される液体によって「濡れる」ことができなければならず、これは親水性マスク材料を使用して達成される。一般に、固体表面の液体による濡れやすさは、液体が水平に配置された表面上に堆積され、その上で安定化された後に固体表面となす接触角によって特徴付けられる。この角度は、「静的平衡接触角」と呼ばれることもあり、本明細書では単に「前進接触角」と呼ばれることもある。上で画定したように、材料は、90度未満の前進接触角を有する場合に親水性である。
【0062】
親水性は、材料選択、材料に含まれる添加剤、又は表面処理のうちの1つ以上を通して達成され得る。多くの場合、親水性マスク材料は、1nm~1μmの(例えば、第1又は第2のポリマー層上に配置された材料の)平均厚さを有する。例えば、親水性マスク材料は、1nm以上、2nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、75nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、又は500nm以上;及び1μm以下、950nm、900nm、850nm、800nm、750nm、700nm、650nm、600nm、550nm、500nm、450nm、400nm、350nm、300nm、又は250nm以下の平均厚さを有し得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、親水性マスク材料は、界面活性剤、表面構造、表面処理、親水性ポリマー、又はそれらの組合せを含む。好適な界面活性剤としては、例えば、C8~C18アルカンスルホネートが挙げられるが、これらに限定されない。C8~C18第二級アルカンスルホネート;アルキルベンゼンスルホネート;C8~C18アルキルスルフェート;アルキルエーテルスルフェート;ラウレス4硫酸ナトリウム;ラウレス8硫酸ナトリウム;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩;ラウロイルラシレート;ステアロイルラクチレート;又はそれらの任意の組合せ。1つ以上の界面活性剤は、従来の方法によって、例えば、第2のポリマー層の表面上の界面活性剤の塗布を拭き取り、塗布を乾燥させることによって適用することができる。好適な表面構造は、ピラーとピラー間の間隙空間とを含む不連続塗布を含む。ナノピラーは、例えば、米国特許第8634146号及び同第10134566号(それぞれDavidら)に記載されている方法を使用して形成することができる。好適な表面処理としては、プラズマ堆積ケイ素/酸素材料及び/又はダイヤモンド様ガラス(DLG)材料を含む親水性塗布が挙げられる。シリコン/酸素材料及びDLG材料のそれぞれのプラズマ堆積は、例えば、国際公開第2007/075665号(Somasiriら)に記載されている。更に、好適なDLG材料の例は、米国特許第6696157(Davidら)、6881538(ハダドら)、及び8664323(Iyerら)に開示されている。好適な親水性ポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ゴムエラストマー、又はこれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本開示による任意の流体装置において、第1の結合可能なポリマー層又は第2のポリマー層のうちの少なくとも1つは、試薬、例えば、層の主表面上に配置された試薬を含んでもよい。試薬は、試料と反応し、電気化学、光学、蛍光、及び/又は化学発光の応答タイプから選択される少なくとも1つの応答を提供するように構成されることが好ましい。いくつかの好適な試薬としては、例えば、蛍光発生又は発色指示薬、電気化学試薬、凝集試薬、分析物特異的結合剤、酵素及び触媒などの増幅剤、フォトクロミック剤、誘電体組成物、酵素結合抗体プローブなどの分析物特異的レポーター、DNAプローブ、RNAプローブ、蛍光又はリン光ビーズ、又はそれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。層が試薬を含む場合、その層は更に検出器を含むことが多い。例えば、図3を参照すると、試薬(図示せず)を含む、第2のポリマー層320の第1の主表面322上に配置された検出器370を含む第2のポリマー層320の一般化された概略上面図が示されている。選択された実施形態では、検出器370は、第2のポリマー層320の第1の主表面122上にも配置された電極380を含む。そのような実施形態では、流体装置の開放容積(例えば、第2のポリマー層320の第1の部分324の上)は、電極と流体連通している。あるいは、このような任意の検出器及び電極は、第1の結合可能なポリマー層上に提供されてもよい。例えば、血糖検査ストリップの装置用途では、指穿刺からの血液が流体装置の開口部に入り、試薬と接触し、試薬と血液との反応からの応答が検出器によって測定される。
【0065】
方法
本開示による流体装置は、以下を含む方法によって形成することができる:
a)第1のポリマーの第1の主表面の第1の部分に親水性マスク材料を適用することと、
b)第1のポリマー上に第2のポリマーを配置することと、
c)高温で第1のポリマー及び第2のポリマーに圧縮を適用して、第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第2の部分を第2のポリマー層に結合して、流体装置を形成することと、を含む、方法。
【0066】
多くの場合、第1のポリマー及び第2のポリマーは、実質的に平坦な主表面を有するツールを使用して(ステップcにおいて)互いに結合される。親水性マスク材料は、典型的には、第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第2の部分の上にマスクを配置して親水性マスク材料の適用を阻止し、続いて、第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分上に親水性マスク材料を堆積させることによって適用される。マスクは、親水性マスク材料を適用することが望まれない領域を遮断することによって、表面の所望の領域のみを材料で覆うことを補助するために当業者に知られている。あるいは、親水性マスク材料は、例えばフレキソ印刷プロセスを使用して、材料をパターンで印刷することによって適用されてもよい。
【0067】
第1のポリマー及び第2のポリマーは、それぞれ、流体装置の第1の結合可能なポリマー層及び第2のポリマー層のための材料に関して詳細に上述した通りである。いくつかの実施形態において、第1のポリマー及び第2のポリマーは、独立して、シート(例えば、層)の形態で、又は微粒子(例えば、ペレット)として提供される。本方法の特定の実施形態において使用される高温は、華氏300度(°F)以下、290°F、285°F、280°F、275°F、270°F、265°F、260°F、255°F、250°F、245°F、240°F、235°F、230°F、又は225°F以下;及び150°F以上、155°F、160°F、165°F、170°F、175°F、180°F、185°F、190°F、195°F、又は200°F以上である。圧縮を適用することは、任意選択で、周囲温度への曝露によって冷却させることによって、又はツール及び/若しくは流体物品を能動的に冷却することによってなど、高温への曝露後に流体装置を冷却することを更に含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、本方法は、10分以下、9分、8分、7分、6分、5分、又は4分以下、及び0.5分以上、1分、2分、又は3分以上の間、圧縮を適用するステップを含む。本方法は、15000ポンド以下、14000ポンド、13000ポンド、12500ポンド、12000ポンド、11000ポンド、10,000ポンド、9000ポンド、8000ポンド、又は7500ポンド以下、及び3000ポンド以上、3500ポンド、4000ポンド、4500ポンド、5000ポンド、5500ポンド、6000ポンド、6500ポンド、又は7000ポンドの圧力で領域全体に圧縮を加えることを含んでもよい。例えば、81平方インチ(522.58平方センチメートル)の面積に10,000ポンドで圧縮を加える場合、圧縮は12psi(0.083メガパスカル)となる。
【0069】
選択された実施形態では、方法は、流体装置を後硬化に供することを更に含み、後硬化は、UV放射、電子ビーム放射、可視放射、又はそれらの任意の組合せなどの化学線を使用して実施することができる。当業者は、過度の実験を行うことなく、特定の用途に適した放射線源及び波長範囲を選択することができる。UV放射と熱エネルギーとを組み合わせる、いわゆる後硬化オーブンは、後硬化プロセスにおける使用に特によく適している。一般に、後硬化は、後硬化されていない同じ物品と比較して、物品の機械的特性及び安定性を改善する。
【0070】
本発明の方法の少なくとも特定の実施形態は、予想外にも、実質的に平坦な表面の間に小さな開口容積を有する多層自発的毛細管マイクロ流体装置を提供する。対照的に、国際公開第2020/261086号(Halversonら)は、物品に形成された空洞の組み込みを記載しており、これは、装置を通る流体の毛細管流動を達成するために、本流体装置では必要とされない。更に、PCT公開WO98/45693(Soaneら)及び米国特許第7553393号(Derandら)の各々は、第2のフィルムに形成されたマイクロ流体構造へのヒートシールカバー層の使用を記載している。しかしながら、これらの文献は、検出(例えば、センサ)層への積層に必要とされるような、熱結合が空洞側(例えば、マイクロ流体構造のチャネル)に位置する状況に対処していない。米国特許第5798031号(Charltonら)及び同第8617367号(Edelbrockら)のそれぞれは、その後の検出層への積層のための熱結合性フィルムにおける熱形成特徴を記載している。これらの実施例では、フィルムは、熱成形中に熱結合性層がツール表面に接着するのを防止するために、熱結合性層が熱成形ツールから離れて面するように配置される。この配向要件の結果は、Z軸プロファイルを有するフィルムの生成であり、これは少なくとも1つの平坦な主表面を有する物品よりも機械的に堅牢性が低い。
【0071】
発明を実施するための最良の形態
第1の実施形態では、本開示は、流体装置を提供する。流体装置は、a)実質的に平面である第1の主表面を有する第1の結合可能なポリマー層と、b)実質的に平面である第1の主表面を有する第2のポリマー層と、c)第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分上に配置された親水性マスク材料と、を含む。親水性マスク材料の表面は、90度未満の水との前進接触角を示す。第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第2の部分は、第2のポリマー層の第1の主表面の第1の部分に結合される。親水性マスク材料及び第2のポリマー層の第1の主表面の第2の部分は、少なくとも1つの点で互いに直接接触している。開放容積は、親水性マスク材料と第2のポリマー層の第1の主表面の第2の部分との間に位置する間隙空間によって画定される。開放容積は、2つ以上の開口部を含み、開口部のうちの少なくとも1つは、第1の結合可能なポリマー層の縁に位置する。
【0072】
第2の実施形態では、本開示は、第1の実施形態による流体装置を提供し、親水性マスク材料が配置される第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分は、第1の結合可能なポリマー層の第1の縁から、第1の結合可能なポリマー層の対向する第2の縁、及び第1の結合可能なポリマー層の第1の縁と第2の縁との間に位置する第1の結合可能なポリマー層の第3の縁のそれぞれまで延びる連続領域である。
【0073】
第3の実施形態では、本開示は、第1の部分が第3の縁の全体に沿って延びる、第2の実施形態による流体装置を提供する。
【0074】
第4の実施形態では、本開示は、第1の実施形態による流体装置を提供し、親水性マスク材料が配置される第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分は、a)第1の結合可能なポリマー層の第3の縁の第1の部分から、i)第1の結合可能なポリマー層の第1の縁若しくは第2の縁のうちの少なくとも1つに、又はii)第3の縁の第1の部分から離間した位置で第1の結合可能なポリマー層の第3の縁に戻して、b)第1の結合可能なポリマー層の第2の縁の第1の部分から、i)第1の結合可能なポリマー層の第1の縁若しくは第3の縁のうちの少なくとも1つに、又はii)第2の縁の第1の部分から離間した位置で第1の結合可能なポリマー層の第2の縁に戻して、又はc)第1の結合可能なポリマー層の第1の縁の第1の部分から、i)第1の結合可能なポリマー層の第2の縁若しくは第3の縁のうちの少なくとも1つに、又はii)第1の縁の第1の部分から離間した位置で第1の結合可能なポリマー層の第1の縁に戻して流体経路を画定するパターンである。
【0075】
第5の実施形態では、本開示は、第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分及び第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第2の部分が互いに相互貫入する、第4の実施形態による流体装置を提供する。
【0076】
第6の実施形態では、本開示は、第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分が、形状の幅よりも少なくとも10倍大きい長さを有する形状を有する、第4の実施形態又は第5の実施形態による流体装置を提供する。
【0077】
第7の実施形態では、本開示は、第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分が、直線部分、曲線部分、又はこれらの組合せを含む線形形状を有する、第4~第6の実施形態のいずれかによる流体装置を提供する。
【0078】
第8の実施形態では、本開示は、第1~第7の実施形態のいずれかによる流体装置を提供し、親水性マスク材料は、プラズマ堆積シリコン/酸素材料又はダイヤモンド様ガラス、ナノ構造、界面活性剤、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ゴムエラストマー、又はそれらの組合せを含む。
【0079】
第9の実施形態では、本開示は、第1の結合可能なポリマー層が、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリエステルとポリオレフィンとのコポリマー、ポリウレタンと芳香族ポリ(メタ)アクリレートとのコポリマー、ポリカプロラクトンとポリウレタンとのコポリマー、又はこれらの組合せを含む、第1~第8の実施形態のいずれかによる流体装置を提供する。
【0080】
第10の実施形態では、本開示は、第2のポリマー層が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(塩化ビニル)、ポリエーテルエステル、ポリイミド、ポリエステルアミド、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、エチレンアクリル酸接着剤、又はポリビニルアセテートの加水分解誘導体を含む、第1~第9の実施形態のいずれかによる流体装置を提供する。
【0081】
第11の実施形態では、本開示は、第1の結合可能なポリマー層が、摂氏100度(℃)以下のビカット軟化温度(T)を有する、第10の実施形態による流体装置を提供する。
【0082】
第12の実施形態では、本開示は、第2のポリマー層が金の層を含む表面処理を含む、第1~第8の実施形態のいずれかによる流体装置を提供する。
【0083】
第13の実施形態では、本開示は、第1~第12の実施形態のいずれかによる流体装置を提供し、第1の結合可能なポリマー層又は第2のポリマー層のうちの少なくとも1つは、試料と反応し、電気化学、光学、蛍光、化学発光、又はこれらの組合せから選択される応答を提供するように構成された試薬を含む。
【0084】
第14の実施形態では、本開示は、第1の結合可能なポリマー層又は第2のポリマー層のうちの少なくとも1つが検出器を更に含む、第13の実施形態による流体装置を提供する。
【0085】
第15の実施形態では、本開示は、検出器が、第1のポリマー層又は第2のポリマー層の第1の主表面上に配置された電極を備え、開放容積が電極と流体連通している、第14の実施形態による流体装置を提供する。
【0086】
第16の実施形態では、本開示は、第1~第14の実施形態のいずれかによる流体装置を提供し、間隙空間は、第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分の1平方センチメートル当たり500ナノリットル以下の容積を含む。
【0087】
第17の実施形態では、本開示は、第1の結合可能なポリマー層、第2のポリマー層、又はその両方が、基準構造又はマークを更に含む、第1~第16の実施形態のいずれかによる流体装置を提供する。
【0088】
第18の実施形態では、本開示は、第1~第17の実施形態のいずれかによる流体装置を提供し、第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分を、第1の結合可能なポリマー層の第2の主表面又は第2のポリマー層の第2の主表面のうちの少なくとも1つに接続するチャネルを更に含む。
【0089】
第19の実施形態では、本開示は、第1の結合可能なポリマー層の第1の主表面の第1の部分又は第2のポリマー層の第1の主表面の第2の部分のうちの少なくとも1つが、1ナノメートル(nm)~5マイクロメートル(μm)の平均表面粗さ(R)を示す、第1~第18の実施形態のいずれかによる流体装置を提供する。
【0090】
第20の実施形態では、本開示は、親水性マスク材料と第1の主表面の第2の部分との間の少なくとも1つの接触点が、表面粗さの最大高さの位置で生じる、第19の実施形態による流体装置を提供する。
【0091】
第21の実施形態では、本開示は、第1~第20の実施形態のいずれかによる流体装置を提供し、第1の結合可能なポリマー層の第1の縁と第2のポリマー層の直接隣接する第1の縁との間に最大5μmの間隙を含む。
【0092】
第22の実施形態では、本開示は、親水性マスク材料が1nm~1μmの平均厚さを有する、第1~第21の実施形態のいずれかによる流体装置を提供する。
【実施例
【0093】
本開示の目的及び利点は、以下の実施例によって更に説明されるが、これらの実施例に列挙される特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を過度に限定するように解釈されるべきではない。別段の記載がない限り、又は文脈から明らかでない限り、実施例及び本明細書の残りの部分におけるすべての部、百分率、比率などは重量による。
【0094】
流体装置の調製のための一般的手順
実施例の流体装置は、厚さ250マイクロメートルのZEONOR 1420R環状オレフィンポリマー(Zeon Chemicals L.P.,Louisville,KY)バッキング層と、PRIMACOR 3330ポリエチレン/アクリル酸コポリマー(SK Global Chemical,Seoul,South Korea)の25マイクロメートルの接着可能層とを有する2層ポリマーフィルムである装置の接着可能ポリマー層構成要素を用いて調製した。結合可能なポリマー層構成要素は、二層押出プロセスによって調製した。2つの単軸押出機を使用して、25cmのマルチマニホールドダイに供給した。押出プロセスは、2つのローラー間のニップへと水平に行った。押出機条件を表1に列挙する。
【0095】
【表1】
【0096】
実施例の装置において使用されるポリマー層構成要素は、真空蒸着を使用して金の薄層(約20ナノメートル)で塗布された75マイクロメートル厚のMelinex 454ポリエステルPETフィルム(Tekra,New Berlin,WI)であった。30ミリアンペアの電力設定で2分間、真空スパッタリングチャンバ(Desk V堆積コータ、Denton Vacuum、Moorestown、NJ)内にフィルム(5.1cm×5.1cmセクション)を配置することによって、金をPETフィルムの一方の表面に適用した。
【0097】
シラノール基及びシロキサン基を有する親水性マスク塗布を、結合可能なポリマー層構成要素の結合性層表面に適用し、米国特許第6,696,157号に記載されているような平行板容量結合プラズマ反応器を使用する。反応器内に配置する前に、親水性塗布が特定のパターンで適用され得るように、パターン化されたマスクテンプレートを結合可能な表面上に適用した。マスクテンプレート材料は、3M 851 Thポリエステル/シリコーンテープ(3M Company(St.Paul,MN))であり、各パターンは、Museレーザカッター(Full Spectrum Laser Company(ラスベガス,NV))を使用してテープから切り取った。実施例で使用した個々のパターンを図4Aに示す。ハンドローラーを使用して、パターン化されたマスクテンプレートを結合可能な表面に適用した。
【0098】
反応器のチャンバは、1.7mの表面積を有する中心円筒形電力供給電極を有していた。電力供給された電極上にフィルムを配置した後、反応器チャンバを1.3Pa(2mTorr)未満のベース圧力までポンプダウンした。酸素及びヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)ガスを、それぞれ200 SCCM(標準立方センチメートル/分)及び1000 SCCMの速度でチャンバ内に流した。処理は、13.56MHzの周波数及び7000ワットの印加電力でRF電力を反応器に結合することによって、プラズマ強化CVD法を使用して行われた。フィルムを30フィート/分(914cm/分)の速度で反応ゾーンを通して移動させることによって処理時間を制御し、およそ10秒の曝露時間をもたらした。最初の処理の後、ガス及び電力を反応器チャンバに対してオフにした。次に、チャンバを1.3Pa(2mTorr)のベース圧力までポンプダウンした。続いて、酸素ガスを1000 SCCMの流量でチャンバ内に流した。第2の処理は、13.56MHzの周波数及び5000ワットの印加電力でRF電力を反応器に結合することによって、プラズマを使用して実行された。フィルムを30フィート/分(914cm/分)の速度で反応ゾーンを通して移動させることによって処理時間を制御し、およそ10秒の曝露時間をもたらした。この処理時間の終わりに、RF電力及びガス供給を停止し、チャンバを大気圧に戻した。次いで、パターン化されたマスクテンプレートを除去して、パターン化されたマスクテンプレートによって画定された形状で結合可能層表面上に親水性マスク塗布を提供した。堆積した親水性マスク塗布の厚さは、約20~50nmであった。
【0099】
親水性マスク塗布を有する結合性層の表面がPETフィルムの金塗布表面に面するように、結合可能なポリマー層構成要素及びポリマー層構成要素を一緒に積層した。積層するために、フィルムスタックを加熱表面(110℃)上に置き、PETポリマー層を加熱表面と接触させた。加熱した表面上で30秒後、重り付きローラー(2.0kg)をフィルムスタック上に3回、前後に動かしながら通過させた。得られた積層試料を加熱表面から取り出し、室温まで冷却した。完成した装置を積層試料から切断した。
【0100】
実施例1.
図4Bに示される積層試料400bは、上述の一般的手順を用いて調製された。図4Bの重ね合わされた点線407によって画定される流体装置400c(図4C)(15mm×8mmの外寸)を、カミソリ刃を使用して積層試料400bから切断した。重ねられた点線は、積層試料から切断された切片の視覚的表現として写真画像に加えられた。親水性マスク材料領域414は、縁411から延びる約11mm×2mmの第1のチャネルセクションと、第1のセクションから第3の縁415まで延びる約4mm×1mmのより狭い直交チャネルセクションとを有するL字形チャネルを形成した。
【0101】
トランスファーピペット(2mL目盛り、Molecular Bio Products,Inc.,San Diego CA)を使用して、脱イオン水の液滴を親水性材料縁開口部411(図4C)と接触させた。水をピペット内に吸引した後、ピペットバルブに圧力を加えて、ピペット先端に約10マイクロリットルの懸滴を生成した。懸滴を縁開口部と接触させた後、水の前進メニスカスを、Axiocam HSMカメラ(Zeiss)を備えたZeiss Lumar V12立体顕微鏡(Zeiss,Dublin,CA)(12X倍率)を使用して監視し、30ミリ秒フレームレートで操作した。画像を、Axiovisionソフトウェア(Zeiss)を使用して処理した。装置内の流体移動の画像を図4C~4Eに示す。
【0102】
図4Bは、試料の残りから例示的な流体装置を切断する前の、実施例1の試料400bの写真である。より具体的には、試料400bの写真において、90度の曲がり409を有するチャネルの形状を有する親水性マスク材料414を含む様々な特徴が見える。太い点線407は、試料400bから流体装置を形成するために切断される外周を示す。切断されると、流体試料は、親水性マスク材料414の位置において第1の縁411又は第3の縁415のいずれかと流体を接触させることによって、流体装置内に吸い上げられ得る。どちらの縁が使用されても、親水性マスク材料414の設計は、ガス及び流体が他方の縁から排出されることを可能にする。金材料は、親水性マスク材料414よりも暗い色調を有し、親水性マスク材料414を取り囲む試料400bの結合部分418を示す。
【0103】
図4Cは、脱イオン水と接触する前の実施例1の例示的な流体装置400cの一部の立体顕微鏡画像である。親水性マスク材料414は、流体装置400cの第1の縁411及び第3の縁415を除いて、結合部分418によって取り囲まれていることが分かり得る。図4Dは、水との接触の1.685秒後の実施例1の流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。親水性マスク材料414及び結合部分418に加えて、ある容積の水495が親水性マスク材料414上に見え、第1の縁411から線形チャネルに途中まで沿った大きな矢印421dの位置まで、親水性マスク材料414と第2のポリマー層(見えない)との間の間隙空間によって提供される開放容積に沿った距離を吸い上げる。図4Eは、水との接触の3.370秒後の実施例1の流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。流体装置400eでは、追加の吸い上げ時間により、水495が、第1の縁411からチャネルに沿って、90度の曲がりを過ぎて、大きな矢印421eの位置にある第3の縁415に向かって、開放容積内を更に移動していることが分かり得る。
【0104】
実施例2.
図5Aに示される積層試料500aは、上述の一般的な手順を用いて調製された。図5Aの重ね合わされた点線507によって画定される外周(15mm×8mmの外寸)を有する流体装置500b(図5B)を、カミソリ刃を使用して積層試料500aから切断した。親水性マスク材料514は、幅2mmであり、第1の縁511から第2の縁513まで延びる直線チャネルを形成した。
【0105】
実施例1に記載した方法に従って、脱イオン水の液滴を親水性材料縁開口部511(図5A)と接触させた。懸滴を縁開口部と接触させた後、前進する水のメニスカスを実施例1に記載の方法に従って監視した。装置内の流体移動の画像を図5B~5Eに示す。
【0106】
図5Aは、試料の残りから例示的な流体装置を切断する前の実施例2の試料の写真である。より具体的には、試料500aの写真では、直線チャネルの形状を有する親水性マスク材料514を含む様々な特徴が見える。太い点線507は、試料500aから流体装置を形成するために切断される外周を示す。切断されると、流体試料は、親水性マスク材料514の位置において第1の縁511又は第2の縁513のいずれかと流体を接触させることによって、流体装置内に吸い上げられ得る。どちらの縁が使用されても、親水性マスク材料514の設計は、ガス及び流体が他方の縁から排出されることを可能にする。親水性マスク材料514よりも暗い色調の金材料は、親水性マスク材料514の両側の試料500aの結合部分518を示す。
【0107】
図5Bは、脱イオン水と0.062秒間接触させた後の実施例2の流体装置500bの一部の立体顕微鏡画像である。親水性マスク材料514は、親水性マスク材料514の両側に結合部分518を有するチャネルの形状を有することが分かり得る。ある量の水595が、親水性マスク材料514の始まりで流体装置500bの第1の縁511内に吸い上げられ始めているのが見える。図5Cは、水と3.577秒間接触した後の実施例2の流体装置500cの一部の立体顕微鏡画像である。この時までに、水595は、親水性マスク材料514と第2のポリマー層(見えない)との間の間隙空間によって提供される開放容積に沿って、第1の縁511から、第2の縁513に向かう線形チャネルに途中まで沿った大きな矢印521cの位置までの距離を吸い上げていた。図5Dは、水との接触の4.555秒後の実施例2の流体装置の一部の立体顕微鏡画像である。流体595は、第2の縁513に向かってより近い大きな矢印521dの位置で、開放容積に沿って更なる距離を吸い上げた。図5Eは、水と7.051秒間接触した後の実施例2の流体装置500eの一部の立体顕微鏡画像である。この時までに、水595は、大きな矢印521eの位置で第2の縁513までずっと吸い上げられていた。
【0108】
実施例3.
図6Aに示される積層試料600aは、上述の一般的な手順を用いて調製された。図6Aの重ね合わされた点線607によって画定される外周(15mm×8mmの外部寸法)を有する流体装置600b(図6B)を、カミソリ刃を使用して積層試料600aから切断した。親水性マスク材料614は、第1、第2、及び第3の縁(611、613、615)と縁が位置合わせされた8mm×8mmの長方形チャネルを形成した。
【0109】
実施例1に記載した方法に従って、脱イオン水の液滴を親水性材料縁開口部615(図6B)と接触させた。懸滴を縁開口部と接触させた後、前進する水のメニスカスを実施例1に記載の方法に従って監視した。装置内の流体移動の画像を図6B~6Dに示す。
【0110】
図6Aは、試料の残りから例示的な流体装置を切断する前の実施例3の試料の写真である。より具体的には、試料600aの写真において、長方形の形状を有する親水性マスク材料614を含む様々な特徴が見える。太い点線607は、試料600aから流体装置を形成するために切断される外周を示す。切断されると、流体試料は、親水性マスク材料614の位置において、第1の縁611、第2の縁613、又は第3の縁615のいずれかと流体を接触させることによって、流体装置内に吸い上げられ得る。親水性マスク材料614は、第1の縁611に沿って、対向する第2の縁613に沿って、及び第1の縁611と第2の縁613との間に位置する第3の縁615に沿って完全に延びる連続形状を有する。この構成は、流体装置の使用中に縁の各々に沿った任意の点で空気及び/又は液体の通気を可能にする。親水性マスク材料614よりも暗い色調の金材料は、親水性マスク材料614に隣接する試料600aの結合部分618を示す。
【0111】
図6Bは、脱イオン水と1.841秒間接触させた後の実施例3の流体装置600bの一部の立体顕微鏡画像である。親水性マスク材料614は、親水性マスク材料614の左側に結合部分618を有し、親水性マスク材料614と結合部分618との間に界面690を有する長方形の形状を有することが分かり得る。ある容積の水695が、親水性マスク材料614と第2のポリマー層(見えない)との間の間隙空間によって提供される開放容積に沿って、流体装置600bの第3の縁615の中に吸い上げ始めていることが見える。図6Cは、水と1.934秒間接触した後の実施例3の流体装置600cの一部の立体顕微鏡画像である。水695は、界面690に向かって開放容積に沿って更なる距離を吸い上げ、第1の縁611の反対側の第2の縁613に到達した。図6Dは、水と2.402秒間接触した後の実施例3の流体装置600eの一部の立体顕微鏡画像である。この時までに、水695の一部は、親水性マスク材料と結合部分618との間の界面690までずっと吸い上げられていた。
【0112】
実施例4.
溶融結合性フィルムを、圧縮成形を用いて調製した。油圧プレスの上部及び下部プレスプラテンを230°F(110℃)に加熱した。ポリプロピレン(C700-35N,Braskem,Philadelphia PA)のシートを下部プラテン上に置いた。PEARLBOND 1160Lポリウレタン溶融ポリマー(Lubrizol,Wickliffe,OH)のペレットをポリプロピレンシート上に配置して、直径約10cmの高密度充填単層を形成した。MELINEX 454ポリエステルPET(Tekra、厚さ5ミル)のシートをペレットの上に置き、ステンレス鋼シート(厚さ0.8mm)をPETシートの上に置いた。プラテンを10,000ポンドの圧力まで5分間閉じ、続いて圧力下で70°F(21.1℃)まで冷却した。冷却後、プラテンを分離し、結合可能なフィルムをポリプロピレン層から剥離した。シラノール基及びシロキサン基を有する親水性マスク塗布を、図4Aに記載されるパターン化マスク600を使用して、「流体装置の調製のための一般的手順」の項に記載される手順に従って、結合可能フィルムに適用した。
【0113】
プレスの下部プラテンを50℃に加熱し、フィルムの親水性材料処理表面が下部プラテン表面から離れて面するように、結合可能なフィルムの断片を加熱した下部プラテン上に30秒間置いた。MELINEX 454ポリエステルPETフィルム(Tekra)の5ミル厚シートを、結合可能なフィルム上に配置した。プレスを閉じ、手の圧力を用いて保持してフィルムを積層した。得られた積層試料をプレスから取り出し、室温まで冷却した。積層試料をカミソリの刃で切断して、図2Aに記載される流体装置200を提供した。ヒトクエン酸血の3マイクロリットルの液滴を、トランスファーピペットを使用して流体装置の親水性縁開口部215(図2A)と接触させた。血液試料を縁開口部と接触させた後、前進する血液のメニスカスを実施例1に記載の方法に従って監視した。装置内の流体移動の画像を図2B~2Cに示す。
【0114】
上述の特許及び特許出願のすべては、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。上述した実施形態は本発明の例示であり、他の構成も可能である。したがって、本発明は、上記で詳細に説明され、添付の図面に示された実施形態に限定されると見なされるべきではなく、代わりに、それらの均等物とともに続く特許請求の範囲の公正な範囲によってのみ限定されると見なされるべきである。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図6D
【国際調査報告】