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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】細胞分離のためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/02 20060101AFI20241022BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20241022BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20241022BHJP
   C12Q 1/24 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C12N1/02
C12M1/26
C12N5/0783
C12Q1/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521266
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 US2022078750
(87)【国際公開番号】W WO2023076974
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/263,161
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】500553730
【氏名又は名称】サウスウエスト リサーチ インスティテュート
【住所又は居所原語表記】6220 CULEBRA ROAD SAN ANT ONIO,TEXAS 78238 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リン,ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ウェリングホフ,ステファン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】キャンテュ,カルロス マーティン
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス,アンジェリカ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB11
4B029CC01
4B029CC02
4B029CC10
4B029HA02
4B063QA05
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS15
4B063QS39
4B065AA92X
4B065AA94X
4B065AC12
4B065AC14
4B065BD14
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
複数の細胞から1つ以上の標的細胞を分離する方法であって、直径Dを有する複数の空隙と、細胞分離のための表面領域を含む、直径dを有する、前記空隙間の複数の細孔開口部とを有する生体適合性ポリマー材料を含むデバイスを供給することと、前記空隙上に表面コーティングを提供することであって、前記表面コーティングは、細胞結合をもたらす、提供することと、流体中の複数の細胞を前記デバイスに通して、流体生成物を提供することと、(1)前記デバイスのコーティングされた表面上の前記複数の細胞から1つ以上の選択された細胞を捕捉すること、又は(2)前記流体生成物中の複数の細胞から1つ以上の選択された細胞を捕捉することとを含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細胞から1つ以上の標的細胞を分離する方法であって、
(a)直径Dを有する複数の空隙と、細胞分離のための表面領域を含む、直径dを有する、前記空隙間の複数の細孔開口部とを有する生体適合性ポリマー材料を含むデバイスであって、前記空隙の90%以上は、+/-10.0%を超えて変動しない選択された空隙容積(V)を有し、及び前記空隙間の前記細孔開口部の90%以上は、+/-10.0%を超えて変動しないdの値を有する、デバイスを供給することと、
(b)表面コーティングであって、細胞結合をもたらす、前記表面コーティングを、
前記空隙上に提供することと、
(c)流体中の複数の細胞を前記デバイスに通して、流体生成物を提供することと、
(1)前記デバイスのコーティングされた表面上の前記複数の細胞から1つ以上の選択された細胞を捕捉すること、又は
(2)前記流体生成物中の前記複数の細胞から前記1つ以上の選択された細胞を捕捉することと
を含む方法。
【請求項2】
前記空隙直径Dは、0.09mm~100mmの範囲の値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記空隙直径Dは、0.2mm~50.0mmの範囲の値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記空隙直径Dは、0.4mm~25.0mmの範囲の値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細孔開口部直径dは、0.01mm~10.0mmの範囲の値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細孔開口部直径dは、0.05mm~2.0mmの範囲の値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細孔開口部直径dは、0.1mm~2.0mmの範囲の値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記デバイスは、前記デバイスの前記コーティングされた表面上の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の50%超を捕捉する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記デバイスは、前記デバイスの前記コーティングされた表面上の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の60%~100%を捕捉する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記デバイスは、前記デバイスの前記コーティングされた表面上の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の70%~100%を捕捉する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記デバイスは、前記デバイスの前記コーティングされた表面上の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の80%~100%を捕捉する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記デバイスは、前記デバイスの前記コーティングされた表面上の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の90%~100%を捕捉する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記デバイスは、前記デバイスの前記コーティングされた表面上の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の95%~100%を捕捉する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記デバイスは、前記流体生成物中の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の50%超を捕捉する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記デバイスは、前記流体生成物中の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の60%~100%を捕捉する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記デバイスは、前記流体生成物中の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の70%~100%を捕捉する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記デバイスは、前記流体生成物中の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の80%~100%を捕捉する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記デバイスは、前記流体生成物中の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の90%~100%を捕捉する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記デバイスは、前記流体生成物中の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の95%~100%を捕捉する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記コーティングは、置換又は未置換ポリ(p-キシリレン)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記コーティングは、β-カゼインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記コーティングは、ポリドーパミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
複数の細胞から1つ以上の標的細胞を分離する方法であって、
(a)外側表面を有する複数の固体幾何学的構造を有する生体適合性ポリマー材料を含むデバイスであって、前記幾何学的構造の90%以上は、+/-10.0%を超えて変動しない容積(V)を有する、デバイスを供給することと、
(b)表面コーティングあって、細胞結合をもたらす、前記表面コーティングを、前記幾何学的構造の前記外側表面上に、提供することと、
(c)流体中の複数の細胞を前記デバイスに通して、流体生成物を提供することと、
(1)前記デバイスのコーティングされた表面上の前記複数の細胞から1つ以上の選択された細胞を捕捉すること、又は
(2)前記流体生成物中の前記複数の細胞から前記1つ以上の選択された細胞を捕捉することと
を含む方法。
【請求項24】
前記構造間の複数の固体相互連結要素を含み、前記固体相互連結要素の90%以上は、+/-10.0%を超えて変動しない容積を画定する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記固体相互連結要素は、1.0μm~12.5mmの範囲の直径を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記固体相互連結要素は、0.1μm~25.0mmの範囲の長さを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記デバイスは、前記デバイスの前記コーティングされた表面上の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の50%超を捕捉する、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記デバイスは、前記デバイスの前記コーティングされた表面上の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の60%~100%を捕捉する、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記デバイスは、前記デバイスの前記コーティングされた表面上の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の70%~100%を捕捉する、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記デバイスは、前記デバイスの前記コーティングされた表面上の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の80%~100%を捕捉する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記デバイスは、前記デバイスの前記コーティングされた表面上の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の90%~100%を捕捉する、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記デバイスは、前記デバイスの前記コーティングされた表面上の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の95%~100%を捕捉する、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記デバイスは、前記流体生成物中の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の50%超を捕捉する、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記デバイスは、前記流体生成物中の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の60%~100%を捕捉する、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
前記デバイスは、前記流体生成物中の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の70%~100%を捕捉する、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
前記デバイスは、前記流体生成物中の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の80%~100%を捕捉する、請求項23に記載の方法。
【請求項37】
前記デバイスは、前記流体生成物中の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の90%~100%を捕捉する、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
前記デバイスは、前記流体生成物中の前記複数の細胞からの前記1つ以上の選択された細胞の95%~100%を捕捉する、請求項23に記載の方法。
【請求項39】
前記コーティングは、置換又は未置換ポリ(p-キシリレン)を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項40】
前記コーティングは、β-カゼインを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項41】
前記コーティングは、ポリドーパミンを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項42】
細胞分離のためのデバイスであって、
a.外側表面を有する固体幾何学的構造であって、前記固体幾何学的構造の90%以上は、+/-10.0%を超えて変動しない容積(V)を有し、前記外側表面上の表面コーティングを含み、前記表面コーティングは、細胞結合をもたらす、固体幾何学的構造と、
b.前記固体幾何学的構造間の複数の固体相互連結要素であって、前記固体相互連結要素の90%以上は、+/-10.0%を超えて変動しない容積を画定する、複数の固体相互連結要素と、
c.分離のための細胞を含有する流体を流入及び流出させる入口及び出口と
を含むデバイス。
【請求項43】
前記コーティングは、置換若しくは未置換ポリ(p-キシリレン)、β-カゼイン又はポリドーパミンを含む、請求項42に記載のデバイス。
【請求項44】
前記固体幾何学的形状は、2.0μm~25.0mmの範囲の直径D’を有する、請求項42に記載のデバイス。
【請求項45】
前記固体幾何学的相互連結要素は、1.0μm~12.5mmの範囲の直径D’’を有する、請求項42に記載のデバイス。
【請求項46】
前記固体幾何学的相互連結要素は、0.1μm~25.0mmの長さを有する、請求項42に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品医薬品局から与えられた契約75F40119C10158の元で政府支援を受けて行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、細胞分離に適したデバイス及び方法に関する。本明細書におけるデバイスは、非ランダムの細孔を通して相互連結された非ランダムの空隙及び/又は固体の非ランダムの相互連結要素を通して任意選択で連結された非ランダムの固体幾何学的構造を含む。このようなデバイスは、好ましくは、結合相互作用に依存する親和性ベースの細胞単離技術に適している。
【背景技術】
【0003】
細胞精製は、依然として、治療、診断及び研究の目的のための細胞の分離を改善するための重要なツールである。細胞精製方法は、細胞の生理化学的特性、例えばそれらのサイズ、形状及び密度に依存する非親和性方法を利用している。非親和性方法に依存する技術は、密度勾配遠心分離、誘電泳動、超音波処理及び濾過を含む。結合相互作用に焦点を合わせた親和性方法は、クロマトグラフィー、蛍光活性化細胞選別(FACS)及び磁気活性化細胞選別(MACS)を含み得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、例えば、相対的に大きく制御された表面-容積比並びに所与の細胞精製プロトコルのために最適化することができる最適化された幾何学的及び空間的特性を提供する、細胞単離を改善するための新規なデバイス及び方法の開発に継続的に焦点が当てられている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
複数の細胞から1つ以上の標的細胞を分離する方法であって、
(a)直径Dを有する複数の空隙と、細胞分離のための表面領域を含む、直径dを有する、前記空隙間の複数の細孔開口部とを有する生体適合性ポリマー材料を含むデバイスであって、前記空隙の90%以上は、+/-10.0%を超えて変動しない選択された空隙容積(V)を有し、及び前記空隙間の前記細孔開口部の90%以上は、+/-10.0%を超えて変動しないdの値を有する、デバイスを供給することと、
(b)表面コーティングあって、細胞結合をもたらす、前記表面コーティングを、前記空隙上に提供することと、
(c)流体中の複数の細胞を前記デバイスに通して、流体生成物を提供することと、
(1)前記デバイスのコーティングされた表面上の前記複数の細胞から1つ以上の選択された細胞を捕捉すること、又は
(2)前記流体生成物中の複数の細胞から1つ以上の選択された細胞を捕捉することと
を含む方法。
【0006】
複数の細胞から1つ以上の標的細胞を分離する方法であって、
(a)複数の固体幾何学的構造を有する生体適合性ポリマー材料を含むデバイスであって、前記幾何学的構造の90%以上は、+/-10.0%を超えて変動しない容積(V)を有する、デバイスを供給することと、
(b)表面コーティングであって、細胞結合をもたらす、前記表面コーティングを、幾何学的構造の前記外側表面上に提供することと、
(c)流体中の複数の細胞を前記デバイスに通して、流体生成物を提供することと、
(1)前記デバイスのコーティングされた表面上の前記複数の細胞から1つ以上の選択された細胞を捕捉すること、又は
(2)前記流体生成物中の複数の細胞から1つ以上の選択された細胞を捕捉することと
を含む方法。
【0007】
細胞分離のためのデバイスであって、外側表面を有する固体幾何学的構造であって、前記固体幾何学的構造の90%以上は、+/-10.0%を超えて変動しない容積(V)を有し、前記外側表面上の表面コーティングを含み、前記表面コーティングは、細胞結合をもたらす、固体幾何学的構造と、前記固体幾何学的構造間の複数の固体相互連結要素であって、前記固体相互連結要素の90%以上は、+/-10.0%を超えて変動しない容積を画定する、複数の固体相互連結要素と、分離のための細胞を含有する流体を流入及び流出させる入口及び出口とを含むデバイス。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】非ランダムの空隙及び非ランダムの開口部又は細孔を含む、本明細書における第1の立体構造の第1の細胞分離デバイスの断面図を例示する。
図1B】近隣の球の重複を示す第1の立体構造の細胞分離デバイスの単位ネガモデルを例示する。
図1C】単位ネガモデルを例示し、各球(空隙領域を画定する)は、12個の同一の近隣の球で囲まれている。
図1D】相互連結された空隙系を示す、第1の立体構造のデバイス及びその固定床幾可学的形状を例示する。
図1E】第1の立体構造のデバイスを断面図で例示する。
図1F】このような球状空隙間の相互連結された開口部又は細孔を形成する、非ランダムの球状空隙及びそれらの重複領域を含む第1の立体構造のデバイスを2D図で例示する。
図2A】第2の立体構造の本明細書におけるデバイスの一部を例示する。
図2B】第2の立体構造の本明細書におけるデバイスの一部を例示する。
図2C】第2の立体構造の本明細書におけるデバイスの好ましい立体構造を例示する。
図2D】第2の立体構造の本明細書におけるデバイスの好ましい形状を例示し、非ランダムの幾何学的形状は、楕円形構造を含む。
図2E】第2の立体構造の本明細書におけるデバイスの好ましい形状を例示し、非ランダムの固体幾何学的構造は、多角形構造を含む。
図2F】第2の立体構造のデバイスの別の好ましい形状を例示し、固体相互連結構造は、多角形形状を含む。
図3】球の例示的な使用及び相互連結ロッド要素の任意選択の使用を例示する、第2の立体構造のデバイスの一部を例示する。
図4】分離のための細胞を含有する流体の流入及び流出のための入口及び出口間でハウジングに配置される第1又は第2の立体構造のデバイスを例示する。
図8】PDA-mPEGがコーティングされた試験ディスク上に非特異的に付着したPBMCの緑色蛍光画像A、B、C、D、E及びFを提供する。
図6】30μg/mLが、最も高い面濃度の結合された抗体(テストクーポン表面上1.5μg/cm)をもたらしたことを示すグラフである。
図7】PDAがプレコーティングされた試験ディスク上に非特異的に付着したPBMCのパーセントを例示する。
図8】PDA-mPEGがコーティングされた試験ディスク上に非特異的に付着したPBMCの緑色蛍光画像を提供する。
図9】異なるコーティングを有する試験ディスク上に非特異的に付着したPBMCのパーセントを示す。
図10A】試験ディスクの中央(左の列画像A、B、C、D、E及びF)並びに端部(右側の列画像A’、B’、C’、D’、E’及びF’)における、表2における試験群番号の一連の蛍光画像を提供する。
図10B】試験ディスクの中央(左の列画像A、B、C、D、E及びF)並びに端部(右側の列画像A’、B’、C’、D’、E’及びF’)における、表2における試験群番号の一連の蛍光画像を提供する。
図11】非特異的及び特異的結合の場合にクーポン上に残存するジャーカット細胞の百分率を示す。
図12】非特異的付着による、図11における細胞の蛍光顕微鏡画像を示す。
図13】特異的付着による、図11における細胞の蛍光顕微鏡画像を示す。
図14】非特異的及び特異的結合の場合にクーポン上に残存するジャーカット細胞の百分率を示す。
図15】非特異的結合による、クーポン上に残存するジャーカット細胞の蛍光画像を示し、殆どの細胞は、ディスクに付着していない。
図16】特異的結合による、クーポン上に残存するジャーカット細胞の蛍光画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1Aは、非ランダムの空隙14及び非ランダムの開口部又は細孔16を含む、本明細書における第1の細胞分離デバイス10の断面図を例示する。細胞分離への言及は、細胞単離、及び/又は細胞精製、及び/又は細胞濃縮を含むと理解され得る。より具体的には、第1のデバイスは、好ましくは、球状形状であり、及び好ましくは表面対容積比を最大化する内部凹面表面を有する非ランダムの空隙14を伴う相互連結された3D表面領域12を含む。空隙は、いくらかの同定された容積を有する開放空間であると理解される。非ランダムへの言及により、望ましい許容差の反復する空隙サイズ又は孔径をもたらすデバイス中の、標的とするか又は選択された数の空隙及び選択された数の細孔を同定できることが理解されるべきである。
【0010】
したがって、デバイス10は、非ランダムの空隙間として、非ランダムの相互連結細孔開口部16を含む。再び、非ランダムへの言及は、ここで、望ましい許容差の細孔直径を有する細孔の実際の数をもたらす、選択された細孔直径の空隙について標的とするか又は選択された数の細孔を同定できるものと理解されるべきである。切断図で例示したようなデバイスは、非ランダムの空隙の層も最終的に画定し(矢印「L」参照)、デバイスの複数の層は、カラム内の複数のこのような非ランダムの空隙(矢印「C」参照)の同定を可能にし得ることを認識し得る。
【0011】
図1Bは、近隣の球の重複を示すデバイス10の単位ネガモデルを例示する。したがって、デバイスは、好ましくは、ネガモデルを反転させて、相互連結された空隙系を含むポジモデルを生じさせることによって生じる。デバイス10を形成するためのより特定の技術を本明細書で考察する。図1Cは、12個の同一の近隣の球で囲まれている各球(空隙領域を画定する)を有する単位ネガモデルを例示する。図1Dは、相互連結された空隙系を示すデバイス10の固定床幾可学的形状を例示する。図1Eは、デバイス10を断面図で例示する。好ましくは、デバイス10は、2.0mm~10,000mmの範囲の直径φ及び1.0mm~5,000mmの範囲の高さHを有することに留意されたい。好ましくは、デバイス10は、1:1超の範囲の比φ/Hを示す。
【0012】
図1Fは、このような球状空隙間に相互連結された開口部又は細孔を形成する、同定された好ましい非ランダムの球状空隙及びそれらの重複領域を2D図で例示する。図1Fに例示した好ましい幾可学的形状について、球状空隙1は、実線の円によって表され、直径は、Dである(矢印によって示される)。したがって、直径「D」は、内部空隙表面上の任意の2つの地点間の最も長い距離であると理解され得る。球状空隙2は、破線の円によって表され、直径Dも有する(図示せず)。球状空隙2は、球状空隙1の近隣の空隙の12の1つである。近隣の空隙間の重複により、これは、球状空隙間に相互連結された細孔を形成し、全体的に水平な矢印によっても示されるような「d」の直径を伴う。したがって、直径「d」は、細孔開口部における任意の2つの地点間の最も長い距離であると理解され得る。空隙の総3D球状表面領域は、SAvoid=4×π×(D/2)である。Scap=π×D×hと称されるA及びB間の表面領域であり、式中、h=
【数1】

である。3Dバイオリアクターにおける所与の空隙についての有用な空隙表面は、SA=SAvoid-[12×Scap]である。
【0013】
空隙直径Dが小さいほど、より大きい空隙の数を所定の3D空間(容積)中に充填することができ、したがってより大きい全体的表面が生じる。大部分の哺乳動物の細胞サイズは、5~100μmであるため、細孔dの直径は、0.01mm~10.0mm、より好ましくは0.05mm~2.0mmの範囲に入り得る。最も好ましくは、d≧0.1mmであり、0.1mm~2.0mmの範囲に入る。
【0014】
D=0.018mm以下である場合、計算されたSAは、d=0.01mmであるときに0未満であり、これは、不可能な構造をもたらし、したがって、Dは、この3Dバイオリアクター幾可学的形状について>0.018mmでなければならない。しかし、Dは、0.09mm~100.0mm、より好ましくは0.2mm~50.0mmの範囲及びまた0.4mm~25.0mmの範囲の値を有し得る。したがって、図1Fに例示する好ましい幾可学的形状について、D>0.4mm(空隙の直径)であり、d>0.20mm(細孔開口部の直径)である。0.018mm~100.0mmの範囲の空隙についての直径Dの任意の選択された値及び0.2mm~10.0mmの範囲の細孔についての直径dの任意の選択された値に関して、Dの値は、dの値より大きいものである(D>1.8d)ことも注目に値する。
【0015】
ここで、デバイス10は、その非ランダムの特徴に関して特性決定され得ることを認識し得る。好ましくは、3Dバイオリアクター内の空隙は、最も効率的な3D空間の充填を達成し、及び最も大きい対応する表面領域を提供する実質的に同じ容積を有するものである。任意の所与の細胞精製デバイス中に存在する相互連結された空隙の総数に関して、好ましくは、このような空隙の90.0%以上若しくはさらにこのような空隙の95.0%以上又はさらにこのような空隙の99.0%~100%は、その許容差が+/-10.0%、又は+/-5.0%、又は+/-2.5%、又は+/-1.0%、又は+/-0.5%、又は+/-0.1%を超えて変動しないような空隙容積(V)を有する。図1Aにおける空隙は、全体的に球状であると示される一方、繰り返し留意されるように、他の空隙の幾可学的形状が意図されることに留意されたい。したがって、空隙の直径は、好ましくは、細胞精製を最適化するように選択される。
【0016】
述べたように、本明細書におけるデバイス10の別の非ランダムの特徴は、直径dを有する空隙間の細孔開口部である(再び図1Eを参照されたい)。上記と同様に、空隙間の細孔開口部の90.0%以上若しくはさらに細孔開口部の95.0%以上又はさらに細孔開口部の99.0%~100%は、その許容差が+/-10.%、又は+/-5.0%、又は+/-2.5%、又は+/-1.0%、又は+/-0.5%、又は+/-0.1%を超えて変動しないdの値を示す。細孔開口部の直径は、好ましくは、バイオリアクターから放出される非結合の細胞を最適化するように選択される。
【0017】
ここで、したがって、細胞分離のための本明細書におけるデバイス10は、直径D(内部空隙表面上の任意の2つの地点間の最も長い距離)を有する複数の空隙、直径d(細孔開口部における任意の2つの地点間の最も長い距離)を有する前記空隙間の複数の細孔開口部を含む(ここで、D>1.8dである)ことを認識し得る。さらに、空隙の90%以上は、+/-10.0%を超えて変動しない空隙容積(V)を有し、及び細孔開口部の90%以上は、+/-10.0%を超えて変動しないdの値を有する。
【0018】
さらに、細胞分離のための本明細書におけるデバイスは、直径Dを有する第1の複数の空隙、直径dを有する前記第1の複数の空隙間の複数の細孔開口部を含み得(ここで、D>dである)、第1の複数の空隙の90%以上は、+/-10.0%を超えて変動しない許容差を有する空隙容積(V)を有する。このようなデバイスは、直径Dを有する第2の複数の空隙、直径dを有する前記第2の複数の空隙間の複数の細孔開口部も有し得(ここで、D>dである)、第2の複数の空隙の90%は、+/-10.0%を超えて変動しない許容差を有する空隙容積(V)を有する。V及びVの値は、異なり、それらの許容差の変動外である。別の方法で述べると、+/-10.0%のその許容差を含めたVの値及び+/-10.0%のその許容差を含めたVの値は、異なるか、又は[V+/-10.0%]≠[V+/-10.0%]である。
【0019】
細胞分離のための本明細書におけるデバイスは、複数の非ランダムの固体幾何学的構造及び任意選択でこのような構造間の複数の非ランダムの固体相互連結要素を含む第2の立体構造でも構成され得る。このような固体幾何学的構造は、好ましくは、球、楕円形及び/又は多角形形状を含み得、それにより細胞精製のための外側表面を提示する。述べたように、このような固体幾何学的構造は、複数の固体相互連結要素を介して任意選択で連結され得る。このような固体相互連結要素は、ロッド又は円柱状形状、楕円形形状及び/又は多角形タイプの形状を含む様々な幾何学的形状も想定し得る。このような固体相互連結構造は、全て細胞分離のための外側表面も提供し得る。固体幾何学的構造及び固体相互連結要素への言及は、このような構造及び要素が、本明細書に開示されるような細胞分離のための外側表面を提供するという事実への言及であることに留意されたい。固体幾何学的構造又は固体相互連結要素自体は、必ずしも完全に固体ではなく、部分的に中空の内部を含み得る。したがって、部分的に中空の内部は、栄養素及び/又は他の試薬を配置し、及び/又は気体移動のために利用され得る。次いで、このような栄養素及び/又は試薬及び気体移動は、細胞分離のための本明細書におけるデバイスの性能を改善するように操作され得る。
【0020】
図2A及び2Bは、第2の立体構造の第1の好ましいデバイス18の一部を例示し、固体非ランダムの幾何学的構造及び任意選択の固体非ランダムの幾何学的相互連結要素は、好ましくは、球20及び相互連結ロッド22を含む。図2Cは、デバイス18についての1つの好ましい立体構造を例示し、複数の球20及び複数の相互連結ロッド22は、好ましくは、2つ以上の層で組織化されることを認識し得、各層は、隣接する層からオフセットされる。したがって、層のこのようなオフセットは、デバイス18を通して流体流を促進し、流体流及び球20間の相互作用を増進することができる。さらに、複数の球20は、それぞれ好ましくは4、5、6、7又は8つのロッドによって連結することができる。
【0021】
さらに、図2Cに例示するように、デバイス18は、好ましくは、2.0mm~10,000mmの範囲の直径φ及び1.0mm~5,000mmの範囲の高さHを有する。好ましくは、デバイス10は、1:1超の範囲の比φ/Hを示す。
【0022】
図2Dは、第2の立体構造のデバイスの好ましい形状を例示し、非ランダムの固体幾何学的形状は、楕円形構造21(卵の輪郭)を含む。図2Eは、第2の立体構造のデバイスの別の好ましい形状を例示し、非ランダムの固体幾何学的構造は、多角形構造23を含む。図2Fは、第2の立体構造のデバイスの別の好ましい形状を例示し、球間の固体相互連結構造25は、多角形形状を含む。
【0023】
第2の立体構造のデバイスの一部を、球の例示的な使用及び相互連結ロッド要素の任意選択の使用に関して、図3に例示する。本明細書における非ランダムの固体幾何学的形状は、好ましくは、2.0μm~25.0mm、200ミクロン~25.0mm、5.0μm~10.0mm又は5.0μm~6.0mmの範囲の直径D’(固体幾何学的構造の外側表面上の2つの地点間及び構造内部を通る最も長い距離)を有する。D’についての別の好ましい値は、1.0mm~25.0mmの範囲である。
【0024】
固体幾何学的相互連結要素(ICE)は、好ましくは、1.0μm~12.5mmの範囲、より好ましくは1.0μm~3.0mmの範囲の直径D’’を有する。固体相互連結構造ICEの長さは、好ましくは、0.1μm~25.0mm、より好ましくは100.0μm~5.0mm、さらにより好ましくは100.0μm~3.0mmの範囲である。固体相互連結構造(例えば、ロッド)の直径は、固体幾何学的形状(例えば、球)の直径の値の半分未満であることも好ましい。
【0025】
上で述べられたデバイスの第1の立体構造と同様に、第2の立体構造は、その全体的な非ランダムの特徴によって特性決定することもできる。すなわち、固体幾何学的構造(例えば、球20)に関して、このような固体幾何学的構造の90%以上若しくはさらにこのような固体幾何学的構造の95.0%以上又はさらにこのような固体幾何学的構造の99.0%~100%は、その許容差が+/-10.0%、又は+/-5.0%、又は+/-2.5%、又は+/-1.0%、又は+/-0.5%、又は+/-0.1%を超えて変動しないようなものである容積を画定する。同様に、固体相互連結要素(例えば、ロッド20)の任意選択の使用に関して、このような固体相互連結要素の90%以上若しくはさらにこのような固体相互連結要素の95.0%以上又はさらにこのような固体相互連結要素の99.0%~100%は、その許容差が+/-10.0%、又は+/-5.0%、又は+/-2.5%、又は+/-1.0%、又は+/-0.5%、又は+/-0.1%を超えて変動しないようなものである容積を画定する。
【0026】
第1の立体構造又は第2の立体構造のデバイスは、好ましくは、生体適合性又は生体不活性ポリマー材料、例えばポリスチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)(FDM(熱溶解積層法)3D印刷技術で使用される)で作られる。生体適合性又は生体不活性との表現は、培養細胞に対して無毒性である材料として理解すべきである。さらに、第1又は第2の立体構造のデバイスのためのポリマー材料は、好ましくは、加水分解の量が、存在するポリマー材料の5.0重量%を超えず、より好ましくは2.5重量%を超えず、最も好ましくは1.0重量%を超えないように、細胞培養中に加水分解に対して影響されにくいポリマーから選択される。第1又は第2の立体構造のデバイスは、SLA(光造形法)及びDLP(デジタルライトプロセシング)3D印刷技術で使用される生体適合性感光性材料(例えば、Pro3Dure、Somos WaterShed XC11122など)でも作られ得る。さらに、第1又は第2の立体構造のデバイスは、相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)からなり得る。IPNは、ポリマースケールで少なくとも部分的に組み合わされているが、互いに共有結合していない2種以上のネットワークを含むポリマーを指す。
【0027】
本明細書における第1又は第2の立体構造のデバイスを製作するために使用される材料は、水性媒体中で分解可能でなく、細胞精製中の水性媒体流を許容する機械的に安定な構造を実現できることが好ましい。材料及び製造工程は、固体及び相対的に滑らかな相互連結された表面領域をもたらし得ることが好ましい。固体表面への言及により、表面は、好ましくは、典型的には約20ミクロン~100ミクロンの直径を有する細胞による侵入又は埋込みを低減又は防止するものであることがさらに理解されるべきである。好ましくは、第1又は第2の立体構造の本明細書におけるデバイスは、評価長さ内で記録した平均線からのプロファイル高さ偏差の絶対値の算術平均への言及である表面粗さ値(Ra)を有する表面を有する。したがって、本明細書におけるデバイスのRaは、20μm以下、より好ましくは5μm以下の値を有することが本明細書で意図される。
【0028】
本明細書における第1又は第2の立体構造のデバイスは、好ましくは、少なくとも10又は10~95の範囲、より好ましくは45~95の範囲のショアD硬度を示す材料からも形成される。かかる点について、本明細書におけるデバイスは、好ましくは、ある量の架橋を含み、及びかなりの量の水(例えば、10~40重量%)を吸収する、親水性タイプポリマー構造として理解され得るヒドロゲルタイプ構造を利用しないことも注目に値する。本明細書におけるデバイスは、好ましくは、細胞が容易に消化され得、及びリモデリングを受ける、コラーゲン、アルギネート、フィブリン及び他のポリマーを利用しないことも注目に値する。
【0029】
さらに、第1又は第2の立体構造の本明細書におけるデバイスは、好ましくは、少なくとも0.01GPaの引張弾性率を有する材料から作製される。より好ましくは、引張弾性率は、0.01GPaの増分での0.01GPa~20.0GPaの範囲の値を有する。さらにより好ましくは、本明細書におけるデバイスのための材料の引張弾性率は、0.01GPa~10.0GPa又は1.0GPa~10GPaの範囲である。例えば、本明細書におけるデバイスの製造に適した上記で参照したポリマー材料に関して、ポリスチレンは約3.0GPaの、ポリカーボネートは約2.6GPaの、ABSは約2.3GPaの、PLAは約3.5GPaの、及びPCLは約1.2GPaの引張弾性率を示す。
【0030】
このような好ましい規則的な幾何学的特徴及び/又は表面領域を有する第1又は第2の立体構造の本明細書におけるデバイスは、好ましくは、アディティブ製造技術、例えば熱溶解積層法FDM、選択的レーザー焼結(SLS)、光造形法(SLA)、例えばSolidWorks(商標)コンピュータ支援設計(CAD)プログラムによって利用可能であるコンピュータで作った設計によるデジタルライトプロセシング(DLP)3D印刷技術などによって製作される。
【0031】
次いで、第1又は第2の立体構造のデバイスは、流体を流入及び流出させるための入口及び出口と共に固定床として構成し得るように構成され得る。図4を参照すると、上で述べられた第1又は第2の立体構造のデバイスは、ハウジング24に配置され、次いで分離のための細胞を含有する流体の流入及び流出を実現し得る入口26及び出口28間に配置され得る。
【0032】
第1又は第2の立体構造のデバイスの表面は、好ましくは、選択的リガンド又は細胞結合をさせるようにコーティング及び官能化される。したがって、細胞結合との表現は、細胞及びコーティング間の化学的相互作用、例えば共有結合及び/又は第2のタイプの結合(例えば、極性相互作用又は水素タイプ結合)を含むと理解され得る。例えば、図1Aに例示する空隙14によって例示される第1の立体構造のデバイスの場合、このような空隙の表面は、官能化することができ、第2の立体構造のデバイスの場合、図2Cにおける固体球20及び相互連結要素22の表面も同様に官能化することができる。細胞の混合集団が、このような官能化された表面を伴う第1又は第2の立体構造のデバイスを通して流れるとき、細胞の結合は、標的細胞の分離及び捕捉を可能にする一方、細胞の残りが通過することを可能にする。
【0033】
図5は、流体流中で用いられるとき、第1又は第2の立体構造の本明細書におけるデバイスで達成することができる細胞分離を例示する。30に例示するように、複数の細胞、例えばA型、B型及びC型は、好ましくは、デバイス中に及び固定床を通して流れる流体に懸濁される。固定床上の表面コーティングの特徴により、異なるレベルの細胞分離が得られる。
【0034】
例えば、表面コーティングに応じて、ケースIでは、図5における32に示すように、細胞型B及びCは、固定床の表面コーティングによって選択的に捕捉される。このように、したがって、細胞型Aは、複数の細胞型A、B及びCから選択的に分離されていると言える。これは、望まれない細胞(B及びC)が混合物から枯渇され、デバイス内に残存する点で本明細書において負の細胞選択としても理解される。上で述べたように、これは、細胞分離の親和性ベースの技術も表す。
【0035】
さらに、再び表面コーティングに応じて、ケースIIでは、34に示すように、細胞型Bは、固定床の表面コーティング上で分離及び捕捉され、細胞型A及びCが流出する。これは、標的細胞Bがデバイス中に保持され、細胞A及びCが通過する点で本明細書において正の細胞選択として知られている。このように、したがって、細胞型Bは、細胞型A及びCから選択的に分離されると言われ得ることを認識し得る。
【0036】
そのため、その利用可能な表面を有する第1又は第2の立体構造の本明細書におけるデバイスは、選択された細胞が分離され得るようにコーティング及び官能化できることを認識されたく、デバイスは、本明細書で示されるように、細胞を複数の細胞から単離、精製及び/又は濃縮し得るという特色を含む。さらに、第1又は第2の立体構造の本明細書におけるデバイスを通過する流体中の所与の複数の細胞について、複数の細胞からの選択された細胞の分離は、(1)本明細書におけるデバイスのコーティング若しくは官能化された表面上の選択された細胞を捕捉すること、及び/又は(2)流体生成物内の選択された細胞を捕捉することによって達成され得る。
【0037】
36及び38にさらに例示するように、第1及び第2の立体構造の本明細書におけるデバイスは、上記で参照した親和性タイプの細胞の分離をもたらす表面機能化を備えることができるが、限定された量の非親和性タイプの相互作用が起こり得る。より具体的には、36では、表面は、官能化されて、細胞B及びCを捕捉するが、細胞Aのいくらかの相対的に少量の捕捉が起こり得る。同時に、相対的に少量のB又はC細胞は、デバイスの生成物に存在し得る。さらに、38に示すように、表面は、官能化されて細胞Bのみを捕捉するが、相対的に少量の細胞Aは、デバイス内で固定化することもできる。
【0038】
したがって、第1又は第2の立体構造の本明細書におけるデバイスによって起こる細胞分離の効率は、デバイス中に導入された総標的細胞の50%超のレベルで複数の細胞から標的細胞を選択的に単離すると定量的に説明することができる。より好ましくは、選択された細胞又は標的細胞は、ここで、デバイス中に導入された総標的細胞の50%超~100%のレベル、より好ましくは60%~100%、又は70%~100%、又は80%~100%、又は90%~100%、又は95%~100%のレベルで複数の細胞から分離され得る。デバイス中に導入される複数の細胞からの細胞分離のこのような定量的効率への言及は、本明細書では、(1)本明細書におけるデバイスの表面上の選択された細胞又は標的細胞を捕捉すること(又は正の選択と称される)、及び/又は(2)本明細書におけるデバイスに通した後に流体生成物内の選択された細胞又は標的細胞を提供すること(負の選択とも称される)によって起こる。
【0039】
第1又は第2の立体構造のデバイスの表面コーティングに関して、好ましくは、このようなコーティングは、親和性ベースの細胞の捕捉を同様にもたらし得るものである。したがって、コーティングは、好ましくは、パリレンモノマー、β-カゼイン又はポリドーパミン(PDA)の重合からの置換又は未置換ポリ(p-キシリレン)を含み得る。このようなコーティングは、好ましくは、200オングストローム~100.0μmの範囲の厚さで提示され得る。
【0040】
したがって、コーティング手順は、好ましくは、下記の一般反応スキームによって同定されたR、R、R及びR基で官能化され得るパリレンモノマー、例えば[2.2]パラシクロファンの使用に依存する。下記のスキームでは、重合の開始は、好ましくは、相対的により低い温度(例えば、≦100℃)に維持される3Dデバイス上の積層前に低圧気相中において遠隔で高温(約550℃)での開環によって開始することを認識されたい。
【化1】
【0041】
上記において、繰り返し単位「m」及び/又は繰り返し単位「n」毎のR基の1つが塩素であり、他のR基が水素であるとき、上記は、パリレンCの重合を表す。これは、USPクラスVI及びISO-10993-6によって認定された生体適合性材料である。同定された架橋繰り返し単位の「m」及び「n」の値は、分子量値が相対的に高い、例えば約500,000であるものである。したがって、パリレンモノマー及び結果として続くポリマーコーティングの使用は、本明細書における上記の参照の第1又は第2の立体構造のデバイスを不透過性フィルムでコーティングし得るようなものであることが意図される。フィルムは、好ましくは、200オングストローム~100.0μmの厚さを有し得る。R、R、R及びRは、水素、ハロゲン(-Cl又は-Br)及び他の官能基、例えばアミン(-NH)、脂肪族アルデヒド(-CHO)、カルボン酸官能基(-COOH)、ヒドロキシル(-OH)又はカルボキシレート官能基(-C(O)CFにおけるような)から選択され得ることを認識し得る。不透過性パリレンCの第1の層、それに続く異なるパリレンのコーティングを最初にコーティングすることもでき、例えば、R、R、R及びRは、アミン(-NH)及び/又はアルデヒド(-CHO)官能基から選択され得る。したがって、第1及び/又は第2の立体構造の本明細書におけるデバイスのためのポリマーコーティングを提供し得、コーティングは、複数の層を含み、それぞれは、それ自体の特定の及び異なる化学組成を有する(すなわち、R、R、R及びRの少なくとも1つの同一性は、層の少なくとも2つの間で異なる)。
【0042】
上で述べられたR、R、R及び/又はR基の1つ以上がエステルカルボン酸官能基を含むとき、官能化ポリ(p-キシリレン)で本明細書におけるデバイスの表面をコーティングする1つの好ましい方法が適用される。そのような場合、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を利用して、エステル連結を形成し得る。次に、NH-mPEG(メトキシ末端オリゴエチレングリコール)又はNH-PEG-ビオチンは、アミン-NHSエステル反応によってデバイス表面に共有結合し、アミド結合を形成し得る。次いで、アビジン、又はNeutrAvidin、又はストレプトアビジンは、ビオチンに結合することができる。アビジン/NeutrAvidin/ストレプトアビジンは、4つの結合部位を有するため、残りの3つの部位は、ビオチン化抗体、例えば抗CD3及び抗CD28に結合して、これらの抗体に特異的である表面受容体を介してT細胞を捕捉するのに利用可能である。
【0043】
官能化ポリ(p-キシリレン)コーティングを有する第1又は第2の実施形態の本明細書における細胞分離デバイス(ここで、R、R、R及びRの1つ以上は、アルデヒドを含む)は、例えば、異なる長さのオリゴエチレンオキシド(OEG)のアミノ終端されている末端可撓性鎖(又は他の有機末端基)を有する抗体タンパク質(例えば、抗CD3/28)との反応を受け得ることがさらに意図される。換言すると、OEGタイプの鎖の使用は、官能性末端基、例えば、
【化2】

におけるようなアミン基(式中、nの値は、1~200の範囲であり得る)を含み、これは、次いで、下記のような本明細書におけるデバイス上の官能化パリレンコーティングに結合し得、1つの結合反応部位が例示され、複数の結合反応は、反応パラメーター(例えば、結合反応収率を増加させる温度及び時間)の制御によって起こり得ることを認識されたい。
【化3】
【0044】
したがって、上記で認識し得るように、所与の細胞分離プロトコルのための所与の細胞表現型について特有である選択された細胞表面受容体を標的とする同定された抗体を変化させ得る。さらに、示したような抗体は、様々な分子量のポリ(エチレンオキシド)(PEG)及び/又はメチル末端PEG(mPEG)と表面内部分散して、非特異的吸着を最小化し得る。
【0045】
さらに、ポリ-p-キシリレンコーティングの場合、プラズマ活性化によってこのようなコーティングの表面を化学的に修飾し得ることが意図され、揮発性の重合可能なモノマーとの気体、例えば酸素、アンモニア又はこれらの気体の混合物は、プラズマ放電によってイオン化され、凝縮し、ポリ(p-キシリレン)構造上に官能化コーティングを形成することを可能にする。
【0046】
さらに、本明細書におけるポリ(p-キシリレン)が官能化されていないとき、疎水性及び親水性末端を含む分子を適用し得、これは、次いで、非官能化ポリ-p-キシリレンコーティング上でコーティングされることが意図される。したがって、分子の疎水性末端は、非官能化ポリ-p-キシリレンをコーティングし、所与の細胞の表面と親和性結合をすることができる様々な反応性基を含む親水性末端を残すことを意図する。したがって、このような線に沿って、一例としてβ-カゼインを利用し得ることが意図され、これは、次いで、ポリ(p-キシリレン)コーティング上に適用される。
【0047】
また留意されるように、デバイスは、PDAで直接コーティングして、例えばビオチンリンカー及び/又はmPEG層の結合を促進し得る。より具体的には、ここでのデバイスの表面上でPDAコーティングを形成し得、これは、pH8.5でジキノンタイプの構造に変換され、次いで、これは、マイケル付加及びシッフ塩基形成を受けることができる。より具体的には、NH-mPEG又はNH-PEG-ビオチンは、PDA層上で固定化され得る。次いで、固定化されたNH-PEG-ビオチンは、アビジン/NeutrAvidin/ストレプトアビジン並びに次いでビオチン化抗体及び又はアプタマーとさらに共役することができる。
【実施例
【0048】
NHS-エステル官能化ポリ(p-キシリレン)(パリレンCタイプ)
1.0cmの表面領域を有する平らなディスクテストクーポンをSLAプリントした。次いで、ディスクを洗浄し、パリレンCコーティングした。次いで、NHS-エステル官能化パリレンを合成した。NHS-エステル官能化パリレンフィルムの層を、上述したCVDプロセスを使用してテストクーポン上にコーティングした。市販のビオチン-PEG23-NH(注:次いで、(PEG)23=(-CHCH-O-)23は、NHS-エステル表面機能性を介してディスク表面に結合し、アミド結合を形成した。この市販のビオチン-PEG23-NHは、1299.60のMWを有した。
【0049】
異なる反応条件下においてクーポン上で固定化されたビオチン-PEG23-NH分子の面密度を、市販のフルオレセイン標識されたNeutraAvidinを使用して定量化した。NHS-エステル官能化パリレンコーティングを伴わないクーポンを、バックグラウンド蛍光のみを登録する陰性対照として使用した。ディスク表面からの平均蛍光強度を評価するために、クーポン上の4つの異なる位置で4つの画像を取り、平均相対蛍光単位(RFU)を各クーポンについて計算した。pH=7での6時間のインキュベーション時間は、ビオチン-PEG23-NHを、NHSコーティングされたテストクーポンにアミド結合を介して共役するのに好ましかったことが証明された。
【0050】
次に、試験ディスク上に固定化されたビオチン-PEG23-アミド-に結合する好ましい濃度のNeutraAvidinについて評価した。QuantiPro(商標)BCAアッセイキット(Sigma-Aldrich)を使用して、クーポンとのインキュベーション後に溶液中の残留するNeutrAvidinを定量化した。NeutrAvidinの残留濃度は、BCAキットを使用して、事前にNeutrAvidinの既知の濃度で生じさせた標準曲線を使用して決定した。次いで、結合したNeutrAvidin(マイクログラム)を、インキュベーション溶液中のNeutraAvidinの総量から残留する非結合のNeutrAvidinを減算することによって得た。結果は、10mg/mLのNeutrAvidinが、最も結合したNeutraAvidinを生じさせたことを示した。
【0051】
上記の結果に基づいて、5mMのビオチン-PEG23-NH及び10mg/mlのNeutrAvidin濃度を使用して、クーポンへのビオチン化CD3抗体(Miltenyi Biotech)の結合を試験した。4つの利用可能なビオチン結合部位を有するNeutraAvidinがクーポン上の固定化されたビオチン-PEG23-アミド-に結合した後、部位は、ビオチン化CD3抗体を固定化するために依然として利用可能であったが、これは、CD3+(受容体)T細胞を可逆的に結合/捕捉することができる。異なる濃度、すなわち30μg/ml、20μg/ml及び10μg/mlでのNeutrAvidinへのビオチン化CD3-抗体結合を特性決定するために、150μlのそれぞれの濃度を別々の実験でクーポンに加えた。
【0052】
全ての実験において、QuantiPro(商標)BCAアッセイを使用して、残留する非結合のCD3抗体を定量化した。反応後、クーポンをPBSで洗浄し、次いで全部の収集した洗浄溶液中の残留する非結合のタンパク質を測定し、結合したCD3抗体の量を評価した。同じBCAアッセイを使用して、異なる濃度のビオチン化CD3抗体を使用して事前に標準曲線を確立した。
【0053】
NHSエステル表面がNeutrAvidinのアミノ基に直接結合し得るかを試験するために、NHSエステル-パリレンコーティング試験ディスクを10mg/mlのNeutrAvidin及びそれに続いて10μg/mlのビオチン化CD3抗体で処理したが、ビオチン-PEG23-アミド-層によるプレコーティングを行わなかった。しかし、使用した水性反応条件は、潜在的によりゆっくりと反応するNeutrAvidinのアミノ基との反応前に不安定なNHS官能基が加水分解された可能性があるものである。このように、NeutrAvidinの結合は、起こらず、ビオチン化CD3抗体の結合は、検出されなかった。
【0054】
図6は、30μg/mLが、結合された抗体の最も高い面濃度(テストクーポン表面上の1.5μg/cm)をもたらしたことを示す。対照的に、Miltenyi BiotecのMACSiBead表面上の抗体コーティング面密度は、典型的には、同じ30μg/mLの抗体濃度を使用して0.78μg/cmである。したがって、ビーズと比較すると、表面上の抗体コーティング密度の約2倍を達成した。より高いCD3抗体表面密度は、例えば、T細胞結合(及び活性化)効率を増加させることが予想される。実験は、直接の抗体コーティング方法が、本明細書におけるデバイスのNHSエステル-パリレンコーティングされた表面のために開発されたことを示す。
【0055】
アンモニア/エチレン活性化表面への抗体の生体共役反応
2つのプラズマ方法を使用して、パリレンCでコーティングされた試験ディスク上にアミン基を生じさせた。上記で参照した文献で言及されているように、一方は、アンモニアガスのみを使用し、他方は、アンモニア及びエチレンガスの組合せを使用した。
【0056】
異なるプラズマ処理後に試験ディスク上にグラフトされた-NH基の数の定量的比較のために、2つの定量化方法を開発した。第1の方法は、クーマシーブリリアントブルー(Sigma-CBB染料)を使用し、コーティングされた表面上の-NH密度を定量化した。CBB染料の各分子は、表面上の-NH基の1つにのみ結合することができるため、-NH分子の面密度は、CBB染料の溶液枯渇によって推定することができる。第2の方法は、コーティングされた表面上の-NH基と結合するNHSエステル-フルオレセイン(緑色蛍光染料)を使用して、安定なアミド結合を形成させた。顕微鏡法によって測定した表面上の緑色蛍光強度は、コーティングされた表面上の-NH分子の面密度と比例する。
【0057】
データは、アンモニア単独によるプラズマ処理が表面上のより多い数の-NH基をもたらしたことを示す。エチレンガスを含むことは、表面の-NH基の面密度を増加させなかった。試験ディスク上の-NH基の平均面密度は、概ね1.2×1015個の-NH/cmであると推定された。この-NH面密度により、T細胞精製(及びそれに続く活性化)のために十分なものを超える抗体を結合することができる。例えば、1つの-NH基は、1つのNHSエステル-ビオチン及びそれに続いて1つのNeutrAvidin、次いで3つのビオチン化抗体を結合することができる。1つの研究によると、CD3+T細胞精製(及び活性化)のための必要とされるCD3抗体面密度は、約4×1010~1.4×1012/cmのみである。したがって、アンモニアプラズマによって生じた1.2×1015個の-NH/cm密度は、CD3+T細胞と相互作用する固定化された抗体について十分な結合部位を提供する。
【0058】
コーティングされた表面の蛍光強度からのデータは、上で述べられたデータと一致した。80~10Wでのアンモニアのみのプラズマ及び0.2ミリバールの圧力は、試験ディスク表面上に最も高い密度の-NH基を生じさせ得ることを両方のアッセイが示した。
【0059】
非特異的細胞付着を最小化するPDAプライミング及びm-PEGコーティング
PDAをプライミングコーティングとして使用して、固定床表面への末梢血単核細胞(PBMC)中の混合細胞集団の非特異的結合を低減させることにおける有効性について、異なる濃度及び長さのNH-mPEGを試験した。この研究も、固定床表面をシミュレートする試験試料として上記のような同じ試験ディスク(1cmの表面領域)を使用した。クーポンは、pH=8.5でトリス緩衝液中の2mg/mlのドーパミン塩酸塩(Sigma)溶液を使用してPDAでプレコーティングし、30℃で一晩インキュベートした。PDAコーティング後、表1に列挙したような異なる濃度及び長さを有するNH-mPEG(Biochempeg)をディスクと共に50℃で3時間インキュベートした。
【0060】
約120μLのPBSに懸濁したBPMC(約6×10個の細胞/cm)を試験ディスク上で4℃において20分間インキュベートした(三連の測定)。次いで、ディスクを、約10mLのPBSを含有する50mLのバイアル中に浸漬した。ピンセットによって保持した試験ディスクを左右上下に動かし、付着していない細胞を振り落とした。50mLのバイアル中の3つのディスクから収集した細胞(各群)を遠心し、付着していない細胞について計数した。次いで、クーポン上の残留する細胞をカルセインAM染料で染色することによって推定し、次いで緑色蛍光イメージングで観察した。
【0061】
【表1】
【0062】
結果をそれぞれ図7及び8に例示する。データは、20~30mg/mLの濃度でのドーパミン-mPEG5000の層が非特異的細胞付着を80%低減し得ることを示す。より具体的には、図7は、10mg/ml、20mg/ml及び30mg/mlのNH-mPEG5000並びに20mg/mlの25:75比のNH-mPEG2000:NH-mPEG5000の第2層コーティングを有する、PDAがプレコーティングされた試験ディスク上に非特異的に付着したPBMCのパーセントを例示する。対照は、0.01%ポリ-リシンでコーティングされた試験ディスク及び非接着性培養ウェルを含む。図8は、(A)10mg/ml、(B)20mg/ml、及び(C)30mg/mlのNH-mPEG5000、並びに(D)20mg/mlの25:75比のNH-mPEG2000:NH-mPEG5000との反応後の、PDA-mPEGがコーティングされた試験ディスク上に非特異的に付着したPBMCの緑色蛍光画像を提供する。対照は、(E)0.01%ポリ-リシンと反応した試験ディスク、及び(F)非接着性培養ウェルを含む。
【0063】
非特異的細胞付着を防止するためのPDAプライミング、それに続くPLL-g-mPEG又はPEI-mPEGコーティング及びβ-カゼインコーティング
NH-mPEGに加えて、PDAコーティングを含めた他のコーティング、PLL(ポリl-ラクチド)-g(グラフト)-PEG2000又はPEI(ポリエチレンイミン)-PEGコーティングでそれに続いてコーティングされたものを、表2に列挙するようにβ-カゼインコーティングと比較した。PLL-g-mPEGコーティングを適用するために、PDAがプレコーティングされた試験ディスクをトリス緩衝液(pH=8.5)中の0.1mg/mLのPLL-g-PEG2000(Susos、Switzerland)と共に50℃で一晩インキュベートした。PEI-mPEGを適用するために、PDAがプレコーティングされた試験ディスクを0.25mg/mLのドーパミン及び1mg/mLのPEI-PEG2000(Biochempeg)の混合物中で室温において2時間インキュベートした。β-カゼインコーティングを、試験ディスクを1mg/mLのβ-カゼイン(Sigma)中で軽く振とうしながら室温で1時間インキュベートすることによって試験ディスク上に適用した。
【0064】
【表2】
【0065】
上記の例と同様に、次いで120μLのPBSに懸濁させたBPMC(約6×10個の細胞/cm)を上記の試験ディスクと共に4℃で20分間インキュベートした(三連の測定)。付着していない細胞をピペット操作によって表面から取り出し、次いで約10mLのPBSを含有する50mlのバイアルに加えた。新鮮なPBSを試験ディスク上にピペット操作することによって試験ディスクを3回洗浄した。その後、試験ディスクをピンセットによって保持し、50mLのバイアルに浸漬し、左右上下に動かし、付着していない細胞をさらに振り落とした。各50mLのバイアル中の3つの試験ディスクからの全部の収集した細胞を遠心し、付着していない細胞を計数した。試験ディスク上に残存するBPMCをカルセインAM染料で染色し、緑色蛍光イメージングで像を取得した。
【0066】
結果を図9、10A及び10Bに示す。具体的には、図9は、表2に記載するように異なるコーティングを有する試験ディスク上に非特異的に付着したPBMCのパーセントを示す:NH-mPEG、PLL-PEG、PEI-PEG、β-カゼイン。対照は、コーティングされていないクーポン及び非接着性培養ウェルを含む。図9から、PDA-PLL-PEG、β-カゼインがコーティングされた試験ディスク、コーティングされていないブランクディスク(ベースのパリレンCコーティングを除き、PDA一次コーティング及び他のコーティングはない)並びにCorning□超低付着対照ウェルは、低い細胞付着を示す。β-カゼインがコーティングされた試験ディスクは、より少ない非特異的細胞付着も示す。
【0067】
この実験では、蛍光画像をそれぞれクーポンの中央(図10A及びB、左の列)並びに試験ディスクの端部付近(図10A及びB、右の列)で取った。試験物の中央は、ピペット操作による洗浄中により多くの流体せん断を受けた。データは、PDA-PLL-PEG又はβ-カゼインでコーティングされた試験ディスクが最小の非特異的細胞付着を達成したことも示す。
【0068】
不死化したジャーカット細胞の特異的及び非特異的結合のためのNH-PEG-ビオチン/NeutrAvidinと共役したβ-カゼイン
この実験では、6つの試験ディスク(1cmの面積)を1mg/mLのβ-カゼインで最初にコーティングした。次いで、β-カゼインがコーティングされた試験ディスクをNH-PEG5000-ビオチン(Biochempeg)で再びコーティングした。2ステップカップリングプロトコルを使用して、反応性カルボジイミド(EDC)及び触媒としてスルホ-NHSによってコーティングを実行した。ステップ1では、β-カゼインがコーティングされたクーポン表面を、0.1MのEDC及び5mMのスルホ-NHSを含有する0.1MのMES緩衝液(pH=4.7)中で室温において15分間最初にインキュベートした。このステップは、β-カゼイン中のカルボン酸基を活性化する。活性化後、コーティングされた試験ディスク上のEDC/スルホ-NHS/MES溶液を除去した。ステップ2では、コーティングされたディスク表面をPBS(pH7.4)中の20mg/mLのNH-PEG5000-ビオチンと共に室温で2時間インキュベートした。反応後、試験ディスクを、0.05%のTween20を有するPBSで徹底的に洗浄した。
【0069】
β-カゼインによってNH-PEG5000-ビオチンで固定化された6つの試験ディスクを、NeutrAvidin-ビオチン結合を介して、0.2mg/mLのNeutrAvidinで4℃において2時間さらにコーティングする。NeutrAvidinコーティング後、NeutrAvidin上のさらなる結合部位が利用可能であるため、試験ディスクは、さらなるビオチン化分子を捕捉する状態にある。特異的及び非特異的結合研究のために試験ディスクを2つの群に分割した。
【0070】
不死化したCD3+T細胞細胞系であるジャーカット細胞クローンE6-1をこの実験で使用した。ジャーカット細胞を2つの群に分割した。第1の群のジャーカット細胞は、10μg/mLのビオチン化抗CD3で4℃において10分間標識した。この群は、特異的結合実験で使用した。第2の群のジャーカット細胞は、抗体標識を有しなかった。この群は、非特異的結合実験と称された。
【0071】
ジャーカット細胞の2つの群をそれぞれクーポンの2つの群上に播種した。各群は、3つの試験ディスクを含む。各試験ディスクに約4×10個のジャーカット細胞を播種した。細胞をクーポン表面上で4℃において15分間インキュベートした。インキュベーション後、約25mLの冷たい緩衝液を充填した50mLのfalconチューブ内で各群の3つの試験ディスクを慎重に洗浄した。ディスクから洗い落とした細胞を50mLのfalconチューブ内に収集し、計数した。非特異的及び特異的結合の場合にクーポン上に残存するジャーカット細胞の百分率は、図11に示されるように計算した。図12及び図13に示されるように、クーポン上に残存する細胞をカルセイングリーンで染色し、蛍光顕微鏡で像を取得した。結果は、1)抗体でタグ付けしていないジャーカット細胞の約8.5%が非特異的付着のためにクーポン上に残存し(図12)、2)抗CD3抗体でタグ付けしたジャーカット細胞の約39.2%が、最も可能性が高いものとして特異的付着によってクーポン上に残存した(図13)ことを示す。
【0072】
プロセスを最適化するために、本発明者らは、プロセスにおける異なるパラメーターを変化させた。例えば、本発明者らは、1)抗体標識時間を10分から20分に増加させ、2)クーポン上の細胞インキュベーション時間を15分から30分に延ばし、3)抗CD3抗体単独の代わりに抗CD3及び抗CD28抗体の両方を使用してジャーカット細胞を標識し、4)ビオチン-PEGリンカーをビオチン-PEG5000-NHからビオチン-PEG23-NHに変更した。図14、15及び16に示すように、新しい実験は、有意により良好な結果を生じさせた。非特異的及び特異的結合の場合にクーポン上に残存するジャーカット細胞の百分率を、図14に示されるように計算した。図15及び16の蛍光画像は、ディスクに非特異的に付着している細胞が殆どないことを示す(図15)。対照的に、ディスク(図16)は、特異的結合のために抗体標識されたジャーカット細胞で殆ど完全に充填されていた。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】