(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
C09K 23/42 20220101AFI20241022BHJP
C08F 14/18 20060101ALI20241022BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20241022BHJP
C08F 2/24 20060101ALI20241022BHJP
C08G 65/324 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
C09K23/42
C08F14/18
C08L27/12
C08F2/24
C08G65/324
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522048
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 CN2021121202
(87)【国際公開番号】W WO2022257300
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】202110653981.X
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521495079
【氏名又は名称】中昊晨光化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】唐 毅
(72)【発明者】
【氏名】叶 飛楊
(72)【発明者】
【氏名】李 慧
(72)【発明者】
【氏名】鄭 洪偉
(72)【発明者】
【氏名】蒋 玉超
(72)【発明者】
【氏名】黄 偉檳
(72)【発明者】
【氏名】李 崗
(72)【発明者】
【氏名】周 遠振
【テーマコード(参考)】
4D077
4J002
4J005
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4D077AC05
4D077DC28X
4D077DC59X
4D077DC72X
4D077DD32X
4D077DD33X
4D077DE35X
4J002BD141
4J002BD151
4J002GH02
4J002HA07
4J005AA04
4J005BB00
4J005BD00
4J011AA05
4J011KA02
4J011KB29
4J100AC24P
4J100AC26P
4J100AC31P
4J100CA01
4J100EA07
4J100FA20
4J100JA00
(57)【要約】
本発明は、フッ素含有重合体の技術分野に関するものであり、特に、ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤及びその使用に関するものである。前記ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤は、一般構造式:X-L-(O-CH2CHZ)a-(O-CR1R2CR3R4)b-O-L-X(式中、Zは、H又はCH3を表し、Lは、C1~C5のアルキレン基を表し、Xは、-COOM又は-SO3Mを表し、Mは、H+、NH4
+又はNa+を表し、R1~R4はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、非フッ素化のアルキル基又はアルコキシ基、部分的にフッ素化されたアルキル基又はアルコキシ基、完全にフッ素化されたアルキル基又はアルコキシ基を表し、a、bはそれぞれ独立に0~10の正の整数を示す。)で表されるものである。本発明で提供されるポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤は、重合系の表面張力を顕著に低減させ、フッ素含有重合体の水性分散液の安定性を向上させるとともに、フッ素含有界面活性剤の使用量を顕著に低減させることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般構造式:
X-L-(O-CH
2CHZ)
a-(O-CR
1R
2CR
3R
4)
b-O-L-X
(式中、ZはH又はCH
3を表し、Lは、C
1~C
5のアルキレン基を表し、Xは、-COOM又は-SO
3Mを表し、Mは、H
+、NH
4
+又はNa
+を表し、R
1~R
4はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、非フッ素化のアルキル基又はアルコキシ基、部分的にフッ素化されたアルキル基又はアルコキシ基、完全にフッ素化されたアルキル基又はアルコキシ基を表し、a、bはそれぞれ独立に、0~10の正の整数を示す。)
で表されることを特徴とする、ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤。
【請求項2】
ZはHを表し、LはC
2のアルキレン基を表し、Xは-COOMを表し、MはNH
4
+を表し、R
1~R
4はそれぞれ独立に水素原子を表し、a、bはそれぞれ独立に1~5の正の整数を表すことを特徴とする、請求項1に記載のポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤。
【請求項3】
前記ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤は、下記の構造式から選ばれる1種又は2種であることを特徴とする請求項2に記載のポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤。
NH
4OOC-CH
2CH
2-(O-CH
2CH
2)
3-O-CH
2CH
2-COONH
4
NH
4OOC-CH
2CH
2-(O-CH
2CH
2)
5-O-CH
2CH
2-COONH
4
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤のフッ素含有重合体の製造における使用であって、好ましくはフッ素含有重合体の水性分散液の製造における使用である、使用。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤、及びフッ素含有界面活性剤を含む分散剤であって、
好ましくは、前記フッ素含有界面活性剤が、一般構造式:
R
f-O-CZ
1Z
2CZ
3Z
4-X
(式中、R
fは、C
1~C
5のパーフルオロアルキル基又はアルコキシ基を表し、Z
1~Z
4は、水素原子又はフッ素原子を表し、Xは-COOM又は-SO
3Mを表し、MはH
+、NH
4
+又はNa
+を表す。)
で表されるものであり、
より好ましくは、前記フッ素含有界面活性剤が、下記の構造式から選ばれる1種又は多種であり、
CF
3-O-CF(CF
3)CF
2-O-CH
2CH
2COOM
CF
3OCF
2OCF
2CF
2-O-CH
2CH
2COOM
CF
3-OCF(CF
3)CF
2-O-CH
2CH
2SO
3M
CF
3OCF
2OCF
2CF
2-O-CH
2CH
2SO
3M
(式中、MはH
+又はNH
4
+を表す。)
最も好ましくは、前記フッ素含有界面活性剤が、構造式:
CF
3-OCF(CF
3)-CF
2-O-CH
2CH
2COONH
4
で表されるものであることを特徴とする、分散剤。
【請求項6】
前記分散剤の総質量を基準として、前記フッ素含有界面活性剤の使用量は、5~50%であり、好ましくは10~30%であることを特徴とする、請求項5に記載の分散剤。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の分散剤を分散剤として、水分散系で少なくとも1種のフッ素含有モノマーを重合させることを含むことを特徴とする、フッ素含有重合体の水性分散液の製造方法。
【請求項8】
前記分散剤の水における含有量は、10~10000ppmであり、好ましくは50~5000ppmであることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記フッ素含有重合体の水性分散液は、ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液、ポリクロロトリフルオロエチレンの水性分散液又はポリフッ化ビニリデンの水性分散液であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の方法によって製造されるものであることを特徴とするフッ素含有重合体の水性分散液。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2021年6月11日に出願された発明の名称が「ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤及びその使用」である中国特許出願第202110653981.X号に基づき優先権を主張し、引用によりその全内容を本願に援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、フッ素含有重合体の技術分野に関するものであり、特にポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤及びその使用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
数多く存在する界面活性剤において、フッ素含有界面活性剤は、優れる性能を有しており、その中でも、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)及びその塩類(例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩)は、フッ素含有界面活性剤で最も広く用いられている種類であり、その重要な用途は、フッ素含有機能性高分子材料の製造における助剤として用いられることである。近年、PFOAが広く用いられることにつれ、その環境や健康に影響を与えるという潜在的な問題が徐々に明らかになり、その生産や使用もますます厳しく制限されるようになっている。
【0004】
分子の構造から言えば、PFOAに代わるフッ素含有界面活性剤は、撥水性、撥油性、高い界面活性の要求を満せる優れる表面性能だけではなく、環境保護や健康からの要求を満す低毒性、易分解性等の特性を有する必要がある。現在、国内外のPFOA代替物開発の技術ルートは、主に短鎖または分岐鎖含有のフッ化炭素系界面活性剤を開発するものと、フッ化炭素鎖にエーテル結合およびメチレン基または類似の基を導入するものの2種に分けられている。
【0005】
CN101535352Aでは、数平均分子質量が少なくとも800g/molのフッ素含有ポリエーテル酸又はその塩を主な乳化剤とし、[R1-On-L-A-]-Y+構造(式中、R1は、エーテル結合を含んでもよい直鎖または分岐鎖の部分的にまたは完全にフッ素化された脂肪族基であり、nは0又は1であり、Lは非フッ素化、部分的にまたは完全にフッ素化された、エーテル結合を含んでもよい直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、A-はカルボキシレート基、スルホネート基、スルホンアミド基またはホスホネート基などのアニオンであり、Y+は水素、アンモニウム、またはアルカリ金属カチオンであり、R1-On-L-の鎖長は6原子以下である)を有する化合物又はシロキサン界面活性剤を補助乳化剤とすることにより、性能の良いフッ素含有重合体の水性分散体を製造しており、そして、フッ素含有乳化剤の使用量は、水分散体の使用量の0.03%(質量部)よりも低いものである。
【0006】
CN101223228Aでは、非イオン性の非フッ素化乳化剤を用いてフッ素含有重合体の水性分散液を製造することが開示されており、用いられる乳化剤は、繰り返し単位を3~100個有するポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールセグメントを含む乳化剤であって、構造の点から、各末端に、同じまたは異なる末端基、例えば、水酸基、カルボン酸エステル、安息香酸エステル、アクリレート、メタクリレート、エーテル、炭化水素、フェノール、官能基化フェノール、エステル、脂肪酸エステルなどを含んでもよいものである。
【0007】
本発明は、上記のことに鑑みてなされたものである。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、使用が安全で環境に優しく、分解しやすく、一部のフッ素含有界面活性剤のフッ素含有重合体への使用を代替することができるポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤を提供する。本発明の他の態様は、前記ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤の使用を提供する。
【0009】
具体的には、本発明は以下の技術案を提供する。
【0010】
本発明は、一般構造式:
X-L-(O-CH2CHZ)a-(O-CR1R2CR3R4)b-O-L-X
(式中、ZはH又はCH3を表し、Lは、C1~C5のアルキレン基を表し、Xは、-COOM又は-SO3Mを表し、Mは、H+、NH4+又はNa+を表し、R1~R4はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、非フッ素化のアルキル基又はアルコキシ基、部分的にフッ素化されたアルキル基又はアルコキシ基、完全にフッ素化されたアルキル基又はアルコキシ基を表し、a、bはそれぞれ独立に、0~10の正の整数を表す。)
で表される、ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤を提供する。
【0011】
本発明では、上記ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤が、重合系の表面張力を顕著に低減させ、フッ素含有重合体の水性分散液の安定性を向上させるとともに、フッ素含有界面活性剤の使用量を顕著に低減させることができることが意外に発見された。
【0012】
本発明において、前記ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤のポリエーテルセグメントは、分子主鎖における酸素原子が2つの炭素原子を有する飽和炭化水素基によって隔てられた任意の鎖構造を有する。ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤の構造式において、1種以上のフッ素化炭化水素基が存在してもよい。代表的な構造は、下記の繰り返し単位を有する。
-CH2-CH2-O- (2)
-CH2-CF2-O- (3)
-CF2-CF2-O- (4)
-CH2-CCH3-O- (5)
-CF2-CCF3-O- (6)
-CH2-CH(OCH3)-O- (7)
-CH2-CH(CH2OH)-O- (8);
【0013】
本発明で提供されるポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤は、2つの末端基Xがカルボキシレート基又はスルホネート基であり、カルボキシレート基及びスルホネート基は、酸又はその塩の形態として存在してもよく、そして少なくとも2つのエーテル結合、好ましくは少なくとも4つのエーテル結合、さらにより好ましくは少なくとも6つのエーテル結合を有する。
【0014】
好ましい態様として、ZはHを表し、LはC2のアルキレン基を表し、Xは-COOMを表し、MはNH4
+を表し、R1~R4はそれぞれ独立に水素原子を表し、a、bはそれぞれ独立に1~5の正の整数を表す。
【0015】
さらに、前記ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤は、下記の構造式から選ばれる1種又は2種である。
NH4OOC-CH2CH2-(O-CH2CH2)3-O-CH2CH2-COONH4
NH4OOC-CH2CH2-(O-CH2CH2)5-O-CH2CH2-COONH4
【0016】
本発明は、また、前記ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤の、フッ素含有重合体の製造における使用、好ましくはフッ素含有重合体の水性分散液の製造における使用を提供する。
【0017】
本発明は、また、前記ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤、及びフッ素含有界面活性剤を含む分散剤を提供する。
【0018】
本発明で提供されるポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤を分散剤とすると、フッ素含有重合体を水性分散液から分離することが容易となる。
【0019】
好ましい態様として、前記フッ素含有界面活性剤は、一般構造式:
Rf-O-CZ1Z2CZ3Z4-X
(式中、Rfは、C1~C5のパーフルオロアルキル基又はアルコキシ基を表し、Z1~Z4は、水素原子又はフッ素原子を表し、Xは-COOM又は-SO3Mを表し、MはH+、NH4
+又はNa+を表す。)
で表されるものである。
【0020】
本発明において、上記フッ素含有界面活性剤は、特に、本発明に係るポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤と併用することに適する。
【0021】
さらに、前記フッ素含有界面活性剤は、下記の構造式から選ばれる1種又は多種である。
CF3-O-CF(CF3)CF2-O-CH2CH2COOM
CF3OCF2OCF2CF2-O-CH2CH2COOM
CF3-OCF(CF3)CF2-O-CH2CH2SO3M
CF3OCF2OCF2CF2-O-CH2CH2SO3M
(式中、MはH+又はNH4
+を表す。)
【0022】
さらに、前記フッ素含有界面活性剤は、一般構造式:
CF3-OCF(CF3)-CF2-O-CH2CH2COONH4
で表されるものである。
【0023】
好ましい態様として、前記分散剤の総質量を基準として、前記フッ素含有界面活性剤の使用量は、5~50%であり、10~30%であることが好ましい。
【0024】
本発明において、ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤とフッ素含有界面活性剤の質量比が上記範囲内にある場合、濃度が2000ppmとなるように両者の混合物を水に溶解した場合の表面張力は、単独に同濃度のフッ素含有界面活性剤を使用した場合の表面張力より少なくとも20%低い。
【0025】
本発明は、また、上記の分散剤を分散剤とし、水分散系で少なくとも1種のフッ素含有モノマーを重合させることを含む、フッ素含有重合体の水性分散液の製造方法を提供する。
【0026】
好ましい態様として、前記フッ素含有モノマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)から選ばれる1種又は多種である。
【0027】
本発明において、重合で得られるフッ素含有重合体には、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロアルキルエチレンモノマー、フルオロビニルエーテルから選ばれる1種又は多種のコモノマーが含まれる。そのうち、前記パーフルオロアルキルエチレンモノマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フッ化ビニリデン(VDF)から選ばれる1種又は多種であり、前記フルオロビニルエーテルは、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)、例えば、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)である。
【0028】
具体的な実施態様において、前記コモノマーは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシビニルエーテル、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピレンとフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとパーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンである。
【0029】
好ましい態様として、前記分散剤の水における含有量は、10~10000ppmであり、50~5000ppmであることが好ましく、200~1500ppmであることがより好ましい。
【0030】
上記技術案において、前記の水とは、重合用水を指す。
【0031】
好ましい態様として、前記フッ素含有重合体の水性分散液は、ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液、ポリクロロトリフルオロエチレンの水性分散液又はポリフッ化ビニリデンの水性分散液である。
【0032】
具体的には、上記の製造方法は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)単独重合体及び変性PTFE分散体を製造するために用いることができる。当該PTFE単独重合体と変性PTFE分散体は、一般的に少なくとも1×108Pa・sの溶融粘度を有し、このような高い溶融粘度では、重合体の溶融状態での流動が顕著ではなく、溶融加工の方法により加工成型することができない。ポリテトラフルオロエチレン単独重合体とは、高純度のテトラフルオロエチレンモノマーを重合させて得られる高分子重合体を意味し、顕著なコモノマーは存在しない。変性PTFEとは、TFEと低濃度の第2のモノマーを共重合させて得られる共重合体を意味し、得られる重合体の融点が、PTFEの融点より顕著に低いことはない。このようなコモノマーの濃度は、1重量%未満であることが好ましく、0.5重量%未満であることがより好ましく、顕著な変性效果を得るために、少なくとも約0.05重量%との最小量を使用することが好ましい。少量のコモノマーを含む変性PTFEは、焼結過程においてより良い成膜性を有する。好適な共重合変性モノマーとしては、フッ素含有オレフィンおよびフッ素含有ビニルエーテル、例えば、パーフルオロプロピレン(HFP)又はパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)、好ましくはパーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)およびパーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)が含まれる。また、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)等のモノマーによって変性しても良い。
【0033】
上記の製造方法は、溶融加工可能な非エラストマーのフッ素含有重合体の分散体の製造に用いることもできる。このような溶融加工可能な非エラストマーのフッ素含有重合体の例は、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、又はテトラフルオロエチレン(TFE)と少なくとも1種のフッ素化された共重合可能なモノマー(コモノマー)との共重合体を含む。前記フッ素化された共重合可能なモノマーが前記の重合体中に十分な量で存在することによって、前記共重合体の融点がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)単独重合体の融点より著しく低くなり、例えば、溶融温度が315℃以下までに低減する。
本発明に係る方法によって製造される好ましい溶融加工可能な非エラストマーの共重合体は、少なくとも約40~99モル%のテトラフルオロエチレン単位と、約1~60モル%の少なくとも1種のその他の単位とを含む。TFEを含む好ましいコモノマーは、3~8個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィンであり、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及びパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)である。
【0034】
本発明に係る方法によって製造されるフッ素含有重合体は、少なくとも1種のフッ素含有モノマーからの重合単位を含み、好ましくは、少なくとも1種のフッ素モノマーからの共重合単位と第2の異なるモノマーからの共重合単位とを含む。フッ素含有モノマーは、フッ素含有オレフィン及びフッ素含有ビニルエーテルを含むが、これらに限定されない。
【0035】
本発明に係る製造方法は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やフッ化ビニリデンの共重合体の合成、及びポリフッ化ビニル(PVF)やフッ化ビニルの共重合体の合成にも用いることができる。
【0036】
本発明は、また、上記の方法によって製造されるフッ素含有重合体の水性分散液を提供する。
【発明の効果】
【0037】
本発明で提供されるポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤は、重合系の表面張力を顕著に低減させ、フッ素含有重合体の水性分散液の安定性を向上させるとともに、フッ素含有界面活性剤の使用量を顕著に低減させることできる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を制限するためのものではない。
【0039】
実施例では、特に説明がない限り、用いられる試験手段及び装置は、すべて当分野の一般的なものであり、実施例で具体的な技術や条件が特に明記されていないものは、当分野の文献に記載の技術や条件、又は製品の説明書に準じて実施する。製造元が明記されていない試薬や器具は、いずれも正規ルートから購入可能な一般的な製品である。
【0040】
本発明の実施例は、攪拌機を備えた縦型または横型の反応器内で実施された。重合方法は、バッチ重合であった。重合では、分散媒として脱イオン水を使用し、攪拌下で気相のTFEを水相に入れ、攪拌及び分散剤の作用下で水中のラジカル開始剤と十分に接触させて重合反応を起こした。重合速度を確保するためには、反応器内のモノマーの圧力を確保するとともに、反応開始後にモノマーを補充することで重合反応器内の圧力を維持する必要がある。反応器は、さらに、冷却水で重合熱を除去することによって重合反応の温度を制御するための、反応器を取り囲む冷却ジャケットを含む。
【0041】
PTFE単独重合体及び変性PTFEの典型的な重合方法において、まず、反応器に重合媒体として脱イオン水を入れ、安定剤としてパラフィンを入れた。反応器を密閉し、酸素含有量が30ppm未満となるように反応器内の酸素ガスを窒素ガスで置き換えた。分散剤の一部または全部を添加して、それを脱イオン水に分散させた。攪拌機を作動させて反応器中の脱イオン水を重合温度まで加熱した。コモノマー(例えば、HFPまたはパーフルオロアルキルビニルエーテル)の一部または全部を添加した後、TFEを加えて反応器を重合圧力まで加圧した。ラジカル開始剤溶液、例えば、過硫酸アンモニウム溶液を添加した。PTFE単独重合体および変性PTFEの凝結物を減らすためにコハク酸を使用した。過硫酸アンモニウム/亜硫酸水素ナトリウムのような酸化還元開始剤系を使用してもよく、この場合、より低い重合温度を使用することができる。重合開始後、重合圧力の安定性を維持するためにTFEを連続的に追加した。重合のそれぞれの段階では、所望の製品性能に応じてコモノマー、連鎖移動剤、及び一部の界面活性剤などの助剤、並びに一部の開始剤を添加することができる。
【0042】
投入されたモノマーの量が所定の値になった時点で、TFEの追加を止めるとともに、攪拌機の運行を止め、反応器内の未重合モノマーを回収し、反応器に窒素ガスを吹き込み反応器内を置換した後、空にした。得られたフッ素含有重合体の水性分散液を貯蔵タンクに移し、その後の処理を待った。本発明に係る方法によって製造されるフッ素含有重合体の水性分散液の固形分は、少なくとも約10重量%であることが好ましく、少なくとも約20重量%であることがより好ましい。本発明に係る方法によって製造されるフッ素含有重合体の固形分は、約20重量%~約40重量%の範囲であることが好ましく、約25重量%~約35重量%であることがより好ましい。
【0043】
本発明の好ましい方法では、重合過程で産生する未分散のフッ素含有重合体(凝結物)の総重量は、水中に分散された安定なフッ素含有重合体の5重量%よりも少なく、1重量%よりも少ないことがより好ましく、0.5重量%よりも少ないことが最も好ましい。
【0044】
本発明の重合により得られるフッ素含有重合体の水性分散液は、解乳化・凝集の方法によって平均粒径500μm程度の微粉末を得ることができ、洗浄、乾燥等のプロセスフローを経て、フィルム、繊維、押出し管等を製造する分野で用いられるフッ素含有分散樹脂の製品を得ることができる。
【0045】
本発明の重合により得られるフッ素含有重合体の水性分散液は、水性分散液の形態で販売することもできる。通常、重合により得られる初期水性分散液を濃縮するが、濃縮する前に、ノニオン界面活性剤を添加することで水性分散液を安定化させた後、化学濃縮または真空濃縮を行う必要がある。濃縮後のフッ素含有重合体の水性分散液の固形分は、一般的に約35重量%~約65重量%である。
【0046】
溶融加工可能なフッ素含有共重合体の製造は、類似の重合プロセスを採用してもよいが、PTFE単独重合体及び変性PTFEと違って、大量のコモノマーを使用する。コモノマーは、重合過程中にバッチで反応器へ添加してもよく、TFEモノマーと均一に混合した後、反応器に連続的に添加してもよい。溶融加工可能なフッ素含有共重合体のメルトフローレートを向上させるために、通常、連鎖移動剤によって共重合体の分子量を制御する。同じフッ素含有重合体の水性分散液を用いて濃縮操作によって安定な濃縮フッ素含有重合体の水性分散液を製造することができる。また、凝集、洗浄、乾燥等のプロセスで溶融加工可能なフッ素含有共重合体を顆粒や薄いシートに加工することもできる。
【0047】
実施例1
50Lの攪拌翼付きステンレス反応器中に脱イオン水30kg、パラフィン1000g及びNH4OOC-CH2CH2-(O-CH2CH2)3-O-CH2CH2-COONH4(界面活性剤A)8g、CF3-OCF(CF3)-CF2-O-CH2CH2COONH4(フッ素含有界面活性剤B)2gを添加し、反応器を密閉し、反応器内の酸素含有量が30ppm未満になるように窒素ガスで系内を3回置換し、TFEガスで系内を2回置換した。反応器を昇温させ、80℃になった時点で、反応器内の圧力が2.0MPaになるようにTFEを添加し、計量ポンプによって過硫酸アンモニウム溶液(過硫酸アンモニウム60mgを脱イオン水100mlに溶解させて得られた水溶液)を添加し、攪拌速度を100rpmとした。重合反応開始後、TFEを連続的に追加することにより、反応器の内圧を2.0±0.05MPaに維持した。反応器ジャケット中に冷却水を流すことで重合熱を除去し、反応器内の重合温度を安定に保持した。追加されたTFEが1.6kgに達したとき、計量ポンプで界面活性剤Aとフッ素含有界面活性剤Bとの混合水溶液150g(界面活性剤の重量比が4:1であり、含有量が20重量%である)を添加した。TFEの消耗量が13kgに達した時点で、モノマーの添加及び攪拌を止め、マイクロ正圧になるまで反応器内の未反応のモノマーを回収し、反応釜を空にして重合反応を終了させ、PTFEの水性分散液Aを得た。その重合体濃度が29.9重量%であり、水性分散液中の一次粒子の粒径が0.23μmであった。
【0048】
飽和炭酸水素アンモニウムの水溶液によって、得られた水性分散液を凝結させた。重合体を温水で数回洗浄し、濾過を行い、平均粒径が506μmである重合体粉末を得た。それを180℃のオーブンで24時間乾燥させ、白い重合体12.85kgを得た。標準比重試験を実施したところ、当該重合体の標準比重は2.173であった。
【0049】
実施例2
50Lの攪拌翼付きステンレス反応器中に脱イオン水30kg、パラフィン1000g及びNH4OOC-CH2CH2-(O-CH2CH2)3-O-CH2CH2-COONH4(界面活性剤A)4g、CF3-OCF(CF3)-CF2-O-CH2CH2COONH4(界面活性剤B)1gを添加し、反応器を密閉し、反応器内の酸素含有量が30ppm未満になるように窒素ガスで系内を3回置換し、TFEガスで系内を2回置換した。反応器を昇温させ、80℃になった時点で、反応器内の圧力が2.0MPaになるようにTFEを添加し、計量ポンプによって過硫酸アンモニウム溶液(過硫酸アンモニウム60mgを脱イオン水100mlに溶解させて得られた水溶液)を添加し、攪拌速度を100rpmとした。重合反応開始後、TFEを連続的に追加することによって、反応器の内圧を2.0±0.05MPaに維持した。反応器ジャケット中に冷却水を流すことで重合熱を除去し、反応器内の重合温度を安定に保持した。追加されたTFEが1.6kgに達したとき、計量ポンプで界面活性剤Aとフッ素含有界面活性剤Bとの混合水溶液75g(界面活性剤の重量比が4:1であり、含有量が20重量%である)を添加した。TFEの消耗量が13kgに達した時点で、モノマーの添加及び攪拌を止め、マイクロ正圧になるまで反応器内の未反応のモノマーを回収し、反応釜を空にして重合反応を終了させ、PTFEの水性分散液Aを得た。その重合体濃度が29.6重量%であり、水性分散液中の一次粒子の粒径が0.26μmであった。
【0050】
飽和炭酸水素アンモニウムの水溶液によって、得られた水性分散液を凝結させた。重合体を温水で数回洗浄し、濾過を行い、平均粒径が557μmである重合体粉末を得た。それを180℃のオーブンで24時間乾燥させ、白い重合体12.72kgを得た。標準比重試験を実施したところ、当該重合体の標準比重は2.172であった。
【0051】
実施例3
50Lの攪拌翼付きステンレス反応器中に脱イオン水30kg、パラフィン1000g及びNH4OOC-CH2CH2-(O-CH2CH2)5-O-CH2CH2-COONH4(界面活性剤A)4g、CF3-OCF(CF3)-CF2-O-CH2CH2COONH4(界面活性剤B)1gを添加し、反応器を密閉し、反応器内の酸素含有量が30ppm未満になるように窒素ガスで系内を3回置換し、TFEガスで系内を2回置換した。反応器を昇温させ、80℃になった時点で、反応器内の圧力が2.0MPaになるようにTFEを添加し、計量ポンプによって過硫酸アンモニウム溶液(過硫酸アンモニウム60mgを脱イオン水100mlに溶解させて得られた水溶液)を添加し、攪拌速度を100rpmとした。重合反応開始後、TFEを連続的に追加することにより、反応器の内圧を2.0±0.05MPaに維持した。反応器ジャケット中に冷却水を流すことで重合熱を除去し、反応器内の重合温度を安定に保持した。追加されたTFEが1.6kgに達したとき、計量ポンプで界面活性剤Aとフッ素含有界面活性剤Bとの混合水溶液75g(界面活性剤の重量比が4:1であり、含有量が20重量%である)を添加した。TFEの消耗量が13kgに達した時点で、モノマーの添加及び攪拌を止め、マイクロ正圧になるまで反応器内の未反応のモノマーを回収し、反応釜を空にして重合反応を終了させ、PTFEの水性分散液Aを得た。その重合体濃度が29.7重量%であり、水性分散液中の一次粒子の粒径が0.25μmであった。
【0052】
飽和炭酸水素アンモニウムの水溶液によって、得られた水性分散液を凝結させた。重合体を温水で数回洗浄し、濾過を行い、平均粒径が536μmである重合体粉末を得た。それを180℃のオーブンで24時間乾燥させ、白い重合体12.75kgを得た。標準比重試験を実施したところ、当該重合体の標準比重が2.170であった。
【0053】
実施例4
50Lの攪拌翼付きステンレス反応器中に脱イオン水30kg、パラフィン1000g及びNH4OOC-CH2CH2-(O-CH2CH2)5-O-CH2CH2-COONH4(界面活性剤A)4g、CF3-OCF(CF3)-CF2-O-CH2CH2COONH4(界面活性剤B)1gを添加し、反応器を密閉し、反応器内の酸素含有量が30ppm未満になるように窒素ガスで系内を3回置換し、TFEガスで系内を2回置換した。パーフルオロプロピレン8gを添加して、反応器を昇温させ、80℃になった時点で、反応器内の圧力が2.0MPaになるようにTFEを添加し、計量ポンプによって過硫酸アンモニウム溶液(過硫酸アンモニウム80mgを脱イオン水100mlに溶解させて得られた水溶液)を添加し、攪拌速度を80rpmとした。重合反応開始後、TFEを連続的に追加することにより、反応器の内圧を2.0±0.05MPaに維持した。反応器ジャケット中に冷却水を流すことで重合熱を除去し、反応器内の重合温度を安定に保持した。追加されたTFEが1.6kgに達したとき、計量ポンプで20重量%の界面活性剤Aとフッ素含有界面活性剤Bとの混合水溶液75g(界面活性剤の重量比が4:1である)を添加した。TFEの消耗量が13kgになった時点で、モノマーの添加及び攪拌を止め、マイクロ正圧になるまで反応器内の未反応のモノマーを回収し、反応釜を空にして重合反応を終了させ、PTFEの水性分散液Aを得た。その重合体濃度が29.9重量%であり、水性分散液中の一次粒子の粒径が0.25μmであった。
【0054】
飽和炭酸水素アンモニウムの水溶液によって、得られた水性分散液を凝結させた。重合体を温水で数回洗浄し、濾過を行い、平均粒径が533μmである重合体粉末を得た。それを180℃のオーブンで24時間乾燥させ、白い重合体12.83kgを得た。標準比重試験を実施したところ、当該重合体の標準比重が2.176であり、押出圧力が23.2MPaである。
【0055】
実施例5
50Lの攪拌翼付きステンレス反応器中に脱イオン水30kg、パラフィン1000g及びNH4OOC-CH2CH2-(O-CH2CH2)5-O-CH2CH2-COONH4(界面活性剤A)4g、CF3-OCF(CF3)-CF2-O-CH2CH2COONH4(界面活性剤B)1gを添加し、反応器を密閉し、反応器内の酸素含有量が30ppm未満になるように窒素ガスで系内を3回置換し、TFEガスで系内を2回置換した。パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)6gを添加し、反応器を昇温させ、80℃になった時点で、反応器内の圧力が2.0MPaになるようにTFEを添加し、計量ポンプによって過硫酸アンモニウム溶液(過硫酸アンモニウム80mgを脱イオン水100mlに溶解させて得られた水溶液)を添加し、攪拌速度を80rpmとした。重合反応開始後、TFEを連続的に追加することにより、反応器の内圧を2.0±0.05MPaに維持した。反応器ジャケット中に冷却水を流すことで重合熱を除去し、反応器内の重合温度を安定に保持した。追加されたTFEが1.6kgに達したとき、計量ポンプで20重量%の界面活性剤Aとフッ素含有界面活性剤Bとの混合水溶液75g(界面活性剤の重量比が4:1である)を添加した。TFEの消耗量が13kgになった時点で、モノマーの添加及び攪拌を止め、マイクロ正圧になるまで反応器内の未反応のモノマーを回収し、反応釜を空にして重合反応を終了させ、PTFEの水性分散液Aを得た。その重合体濃度が29.8重量%であり、水性分散液中の一次粒子の粒径が0.24μmであった。
【0056】
飽和炭酸水素アンモニウムの水溶液によって、得られた水性分散液を凝結させた。重合体を温水で数回洗浄し、濾過を行い、平均粒径が566μmである重合体粉末を得た。それを180℃のオーブンで24時間乾燥させ、白い重合体12.81kgを得た。標準比重試験を実施したところ、当該重合体の標準比重が2.160であり、押出圧力が24.1MPaであった。
【0057】
比較例1
50Lの攪拌翼付きステンレス反応器中に脱イオン水30kg、パラフィン1000g及びCF3-OCF(CF3)-CF2-O-CH2CH2COONH4 10gを添加し、反応器を密閉し、反応器内の酸素含有量が30ppm未満になるように窒素ガスで系内を3回置換し、TFEガスで系内を2回置換した。反応器を昇温させ、80℃になった時点で、反応器内の圧力が2.0MPaになるようにTFEを添加し、計量ポンプによって過硫酸アンモニウム溶液(過硫酸アンモニウム60mgを脱イオン水100mlに溶解させて得られた水溶液)を添加し、攪拌速度を100rpmとした。重合反応開始後、TFEを連続的に追加することにより、反応器の内圧を2.0±0.05MPaに維持した。反応器ジャケット中に冷却水を流すことで重合熱を除去し、反応器内の重合温度を安定に保持した。追加されたTFEが1.6kgに達したとき、計量ポンプで20重量%のペルフルオロオクタン酸アンモニウム水溶液150gを添加した。TFEの消耗量が13kgになった時点で、モノマーの添加及び攪拌を止め、マイクロ正圧になるまで反応器内の未反応のモノマーを回収し、反応釜を空にして重合反応を終了させ、PTFEの水性分散液Aを得た。その重合体濃度が29.7重量%であり、水性分散液中の一次粒子の粒径が0.25μmであった。
【0058】
飽和炭酸水素アンモニウムの水溶液によって、得られた水性分散液を凝結させた。重合体を温水で数回洗浄し、濾過を行い、平均粒径が535μmである重合体粉末を得た。それを180℃のオーブンで24時間乾燥させ、白い重合体12.75kgを得た。標準比重試験を実施したところ、当該重合体の標準比重は2.169であった。
【0059】
比較例2
50Lの攪拌翼付きステンレス反応器中に脱イオン水30kg、パラフィン1000g及びCF3-OCF(CF3)-CF2-O-CH2CH2COONH4 10gを添加し、反応器を密閉し、反応器内の酸素含有量が30ppm未満になるように窒素ガスで系内を3回置換し、TFEガスで系内を2回置換した。パーフルオロプロピレン8gを添加して、反応器を昇温させ、80℃になった時点で、反応器内の圧力が2.0MPaになるようにTFEを添加し、計量ポンプによって過硫酸アンモニウム溶液(過硫酸アンモニウム80mgを脱イオン水100mlに溶解させて得られた溶液)を添加し、攪拌速度を80rpmとした。重合反応開始後、TFEを連続的に追加することにより、反応器の内圧を2.0±0.05MPaに維持した。反応器ジャケット中に冷却水を流すことで重合熱を除去し、反応器内の重合温度を安定に保持した。追加されたTFEが1.6kgに達したとき、計量ポンプで20重量%のペルフルオロオクタン酸アンモニウム水溶液150gを添加した。TFEの消耗量が13kgになった時点で、モノマーの添加及び攪拌を止め、マイクロ正圧になるまで反応器内の未反応のモノマーを回収し、反応釜を空にして重合反応を終了させ、PTFEの水性分散液Aを得た。その重合体濃度が30.0重量%であり、水性分散液中の一次粒子の粒径が0.23μmであった。
【0060】
飽和炭酸水素アンモニウムの水溶液によって、得られた水性分散液を凝結させた。重合体を温水で数回洗浄し、濾過を行い、平均粒径が546μmである重合体粉末を得た。それを180℃のオーブンで24時間乾燥させ、白い重合体12.85kgを得た。標準比重試験を実施したところ、当該重合体の標準比重が2.175であり、押出圧力が23.5MPaである。
【0061】
比較例3
50Lの攪拌翼付きステンレス反応器中に脱イオン水30kg、パラフィン1000g及びCF3-OCF(CF3)-CF2-O-CH2CH2COONH4 10gを添加し、反応器を密閉し、反応器内の酸素含有量が30ppm未満になるように窒素ガスで系内を3回置換し、TFEガスで系内を2回置換した。パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)6.0gを添加し、反応器を昇温させ、80℃になった時点で、反応器内の圧力が2.0MPaになるようにTFEを添加し、計量ポンプによって過硫酸アンモニウム溶液(過硫酸アンモニウム80mgを脱イオン水100mlに溶解させて得られた溶液)を添加し、攪拌速度を80rpmとした。重合反応開始後、TFEを連続的に追加することにより、反応器の内圧を2.0±0.05MPaに維持した。反応器ジャケット中に冷却水を流すことで重合熱を除去し、反応器内の重合温度を安定に保持した。追加されたTFEが1.6kgに達したとき、計量ポンプで20重量%のペルフルオロオクタン酸アンモニウム水溶液150gを添加した。TFEの消耗量が13kgになった時点で、モノマーの添加及び攪拌を止め、マイクロ正圧になるまで反応器内の未反応のモノマーを回収し、反応釜を空にして重合反応を終了させ、PTFEの水性分散液Aを得た。その重合体濃度が29.9重量%であり、水性分散液中の一次粒子の粒径が0.25μmであった。
【0062】
飽和炭酸水素アンモニウムの水溶液によって、得られた水性分散液を凝結させた。重合体を温水で数回洗浄し、濾過を行い、平均粒径が527μmである重合体粉末を得た。それを180℃のオーブンで24時間乾燥させ、白い重合体12.8kgを得た。標準比重試験を実施したところ、当該重合体の標準比重が2.157であり、押出圧力が25.2MPaであった。
上記では、一般的な説明、発明を実施するための形態及び試験によって本発明を詳細に説明したが、本発明に基づいていくつかの変更または改善を行ってもよいことは、当業者にとって明らかである。従って、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で行われたこれらの変更や改善は、いずれも本発明が保護しようとする範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤及びその使用を提供する。前記ポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤は、一般構造式:X-L-(O-CH2CHZ)a-(O-CR1R2CR3R4)b-O-L-X(式中、Zは、H又はCH3を表し、Lは、C1~C5のアルキレン基を表し、Xは、-COOM又は-SO3Mを表し、Mは、H+、NH4
+又はNa+を表し、R1~R4はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、非フッ素化のアルキル基又はアルコキシ基、部分的にフッ素化されたアルキル基又はアルコキシ基、完全にフッ素化されたアルキル基又はアルコキシ基を表し、a、bはそれぞれ独立に0~10の正の整数を示す。)で表されるものである。本発明で提供されるポリエーテル二酸又はその塩系界面活性剤は、重合系の表面張力を顕著に低減させ、フッ素含有重合体の水性分散液の安定性を向上させるとともに、フッ素含有界面活性剤の使用量を顕著に低減させることができ、良好な経済的価値と応用展望を有する。
【国際調査報告】