IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ランザテク,インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-柔軟性のある生成物の分離と回収 図1
  • 特表-柔軟性のある生成物の分離と回収 図2
  • 特表-柔軟性のある生成物の分離と回収 図3
  • 特表-柔軟性のある生成物の分離と回収 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】柔軟性のある生成物の分離と回収
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/06 20060101AFI20241022BHJP
   C12P 7/28 20060101ALI20241022BHJP
   C12P 7/04 20060101ALI20241022BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241022BHJP
   B01D 3/10 20060101ALI20241022BHJP
   B01D 3/40 20060101ALI20241022BHJP
   B01D 3/14 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C12P7/06
C12P7/28
C12P7/04
C12M1/00 D
C12M1/00 H
B01D3/10
B01D3/40
B01D3/14 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522191
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 US2022077591
(87)【国際公開番号】W WO2023064695
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】17/450,802
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518403425
【氏名又は名称】ランザテク,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,アラン ハイミング
(72)【発明者】
【氏名】コンラド,ロバート ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クームス,ジョス アントン
(72)【発明者】
【氏名】ブルダコス,ニコラス
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4D076
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB02
4B029DA04
4B064AC02
4B064AC03
4B064AC33
4B064CA02
4B064CC15
4B064CE08
4B064DA16
4D076AA16
4D076AA23
4D076AA24
4D076BB04
4D076BB05
4D076BB10
4D076BB13
4D076BB23
4D076CC03
4D076CC06
4D076CD33
4D076EA08Z
4D076EA12Z
4D076EA14Z
4D076FA02
4D076FA04
4D076FA11
4D076FA15
4D076FA22
4D076FA31
4D076FA33
4D076GA02
4D076HA20
(57)【要約】
本開示は、エタノールおよび水を含む第一の生成物流、またはエタノール、アセトン、および水を含む第二の生成物流、またはエタノール、アセトン、イソプロパノール、および水を含む第三の生成物流のうちの少なくとも一つを含む発酵ブロスを生成する発酵バイオリアクターに送られるC1含有ガスを使用する発酵プロセスから、少なくとも一つの発酵生成物を生成および回収するための方法および装置に関する。生成物は、共有生成物回収システムを使用することにより回収される。特に、共有生成物回収システムは、富化エタノール流、富化アセトン流、富化イソプロパノール流、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つの富化生成物流を選択的に回収する。共有生成物回収システムは、真空蒸留ユニット、精留ユニット、アセトン除去ユニット、乾燥ユニット、エタノール-アセトン分離ユニット、抽出蒸留ユニット、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵プロセスから少なくとも一つの生成物を生成および回収するための方法であって、
a)エタノールおよび水を含む第一の生成物流、またはエタノール、アセトン、および水を含む第二の生成物流、またはエタノール、アセトン、イソプロパノール、および水を含む第三の生成物流のうちの少なくとも一つを含む発酵ブロスを生成するために、C1含有ガスを供給源から、液体栄養培地中に少なくとも一つのC1固定微生物を含有する発酵バイオリアクターに導入することと、
b)富化エタノール流、富化アセトン流、富化イソプロパノール流、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つの富化生成物流を選択的に回収するために、前記発酵ブロスを前記発酵バイオリアクターから共有生成物回収システムに移すことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記共有生成物回収システムが、真空蒸留ユニット、精留ユニット、アセトン除去ユニット、乾燥ユニット、エタノール-アセトン分離ユニット、抽出蒸留ユニット、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つのC1固定微生物が、前記少なくとも一つのC1固定微生物によって生成されるものとは同じではない、前記第一の生成物流、前記第二の生成物流、または前記第三の生成物流のうちの一つを生成する別のC1固定微生物と置き換えられることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記富化エタノール流が、前記第一の生成物流を含む前記発酵ブロスを、富化エタノール流と生成物枯渇流とを生成する条件で動作する前記真空蒸留ユニットに送ることによって生成され、前記生成物枯渇流が前記発酵バイオリアクターに戻される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記富化エタノール流を前記真空蒸留ユニットから前記精留ユニットに送り、塔頂部エタノール流と塔底部水流とを生成することをさらに含み、前記塔底部水流が、直接または廃水処理プロセスで処理された後のいずれかに前記発酵バイオリアクターに再循環される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記塔頂部エタノール流を前記精留ユニットから前記乾燥ユニットに送り、無水エタノール流とパージ流とを生成することをさらに含み、前記パージ流が前記精留ユニットに戻される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記生成物枯渇流の少なくとも一部を前記廃水処理プロセスに送り、前記発酵バイオリアクターに再循環される精製水流を生成することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記富化アセトン流が、前記第二の生成物流を含む前記発酵ブロスをアセトンおよびエタノールに富む濃縮流と生成物枯渇流とを生成する条件で動作する前記真空蒸留ユニットに送ることによって生成され、前記生成物枯渇流が前記発酵バイオリアクターに戻される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記濃縮流を前記真空蒸留ユニットから前記精留ユニットに送り、アセトンおよびエタノールに富む塔頂部流と塔底部水流とを生成することをさらに含み、前記塔底部水流が、直接または廃水処理プロセスで処理された後のいずれかに前記発酵バイオリアクターに再循環される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アセトンおよびエタノールに富む前記塔頂部流を前記精留ユニットから前記乾燥ユニットに送り、アセトンおよびエタノールに富む無水濃縮流とパージ流とを生成することをさらに含み、前記パージ流が前記精留ユニットに戻される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アセトンおよびエタノールに富む前記無水濃縮流を前記乾燥ユニットから前記エタノール-アセトン分離ユニットに送り、無水アセトン流と無水エタノール流とを生成することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記生成物枯渇流の少なくとも一部を前記廃水処理プロセスに送り、前記発酵バイオリアクターに再循環される精製水流を生成することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記富化イソプロパノール流が、前記第三の生成物流を含む前記発酵ブロスを前記真空蒸留ユニットに送り、イソプロパノール、アセトン、およびエタノールに富む濃縮流と生成物枯渇流とを生成することにより生成され、前記生成物枯渇流が前記発酵バイオリアクターに戻される、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
イソプロパノール、アセトン、およびエタノールに富む前記濃縮流を前記真空蒸留ユニットから前記アセトン除去ユニットに送り、イソプロパノールおよびエタノールに富む塔底部流と、アセトンに富む塔頂部流とを生成することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記塔頂部流を前記アセトン除去ユニットから前記発酵バイオリアクターに再循環させてイソプロパノールを生成することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
イソプロパノールおよびエタノールに富む前記塔底部流を前記アセトン除去ユニットから前記精留ユニットに送り、イソプロパノールおよびエタノールに富む塔頂部流と塔底部水流とを生成することをさらに含み、前記塔底部水流が、直接または廃水処理プロセスで処理された後のいずれかに前記発酵バイオリアクターに再循環される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
イソプロパノールおよびエタノールに富む前記塔頂部流を前記精留ユニットから前記乾燥ユニットに送り、イソプロパノールおよびエタノールに富む無水濃縮流とパージ流とを生成することをさらに含み、前記パージ流が前記精留ユニットに戻される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記生成物枯渇流の少なくとも一部を前記廃水処理プロセスに送り、前記発酵バイオリアクターに再循環される精製水流を生成することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
イソプロパノールおよびエタノールに富む前記無水濃縮流を前記乾燥ユニットから前記抽出蒸留ユニットに送り、少なくとも一つの抽出蒸留剤の存在下で前記無水濃縮流を蒸留して、塔頂部流と蒸留塔底部流とを得ることをさらに含み、
i.無水エタノールの少なくとも一部が塔頂部流で回収され、無水イソプロパノールの少なくとも一部が蒸留塔底部流で回収される、または、
ii.無水イソプロパノールの少なくとも一部が前記塔頂部流で回収され、無水エタノールの少なくとも一部が前記蒸留塔底部流で回収される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記無水エタノールの少なくとも一部が前記塔頂部流で回収され、前記無水イソプロパノールの少なくとも一部が前記蒸留塔底部流で回収され、
前記抽出蒸留剤が、α-ピネン、β-ピネン、メチルイソブチルケトン、リモネン、α-フェランドレン、α-テルピネン、ミルセン、カラン、p-メンタ-1,5-ジエン、ブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、n-ブチルアセテート、n-アミルアセテート、酢酸ベンジル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、エチレングリコールジアセテート、2-ブトキシエチルアセテート、酪酸メチル、プロピオン酸エチル、n-吉草酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸エチル、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、o-sec-ブチルフェノール、3-イソプロピルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、o-tert-ブチルフェノール、4-エチルフェノール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソオクチル、アジピン酸ジメチル、三酢酸グリセリン、マロン酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、プロポキシプロパノール、ブトキシプロパノール、p-キシレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールt-ブチルエーテルメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、アニソール、フェネトール、フェニルエーテル、1,2-メチレンジオキシベンゼン、イソホロン、エチル-3-エトキシプロピオネート、オルトケイ酸テトラエチル、2-ヒドロキシアセトフェノン、1,1,1-トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、2,2,2-トリクロロエタノール、m-ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、2,6-ジクロロトルエン、1-クロロヘキサン、ジエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、スルホラン、イソホロン、2-ピロリジオン、1-メチル-2ピロリニジノン、イソデシルアルコール、シクロドデカノール、ベンジルアルコール、1-ドデカノール、トリデシルアルコール、フェネチルアルコール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、2-ニトロプロパン、1-ニトロプロパン、ニトロ-エタン、ニトロメタン、3-ニトロトルエン、2-ニトロトルエン、トリアセチン、3-ニトロ-o-キシレン、1,4-ジオキサン、酢酸イソブチル、酪酸エチル、ギ酸イソアミル、カプロ酸メチル、カプロ酸エチル、カプロ酸プロピル、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、イソブチルイソブチレート、酢酸ヘキシル、イソ酪酸エチル、酪酸プロピル、イソブチルブチレート、イソボルニルアセテート、1,3-ジオキソラン、ニトロベンゼン、酪酸ブチル、4-メチル-2-ペンタノン、およびポリエチレングリコール400から選択される少なくとも一つの化合物を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記無水イソプロパノールの少なくとも一部が前記塔頂部流で回収され、前記無水エタノールの少なくとも一部が前記蒸留塔底部流で回収され、
前記抽出蒸留剤が、エチルベンゼン、トルエン、p-キシレン、ヘプタン、フェノール、および2-tert-ブチルフェノールから選択される少なくとも一つの化合物を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記C1固定微生物が、少なくとも一つのカルボキシド栄養性菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記カルボキシド栄養性菌が、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、またはそれらの組合せから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ガス発酵プロセスから少なくとも一つの生成物を回収するためのシステムであって、前記ガス発酵プロセスが、
生成物富化流および生成物枯渇流の出口を有する真空蒸留ユニットと流体連通するC1ガス発酵バイオリアクターと、
前記生成物富化流出口と流体連通する精留ユニットであって、前記精留ユニットが塔頂部生成物流出口および塔底部水流出口を有する、精留ユニットと、前記塔頂部生成物流出口と流体連通する乾燥ユニットであって、前記乾燥ユニットが無水生成物流出口およびパージ流出口を有する、乾燥ユニットと、を備える、システム。
【請求項25】
前記真空蒸留ユニットと熱力学的に一体化される自己蒸気機械圧縮システムをさらに備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記無水生成物流出口と流体連通する分離ユニットをさらに備え、前記分離ユニットが分離ユニット塔頂部出口および分離ユニット塔底部出口を有する、請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
前記分離ユニットが、分留ユニットまたは抽出蒸留ユニットである、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記生成物富化流出口、前記精留ユニット、および前記C1ガス発酵バイオリアクターと流体連通する副生成物除去ユニットをさらに備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記分離ユニット塔頂部出口と流体連通し、かつ第一の蒸留塔生成物出口を有する第一の蒸留塔と、前記分離ユニット塔底部出口と流体連通し、かつ第二の蒸留塔生成物出口を有する第二の蒸留塔と、をさらに備える、請求項28に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月13日に出願された、米国非仮特許出願第17/450,802号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、発酵ブロスから生成物を回収するための柔軟性のある方法に関し、発酵ブロスは、エタノール、アセトン、およびイソプロパノールのうちの少なくとも一つを含む。
【背景技術】
【0003】
二酸化炭素(CO)は人間の活動による世界の温室効果ガス排出の約76%を占め、メタン(16%)、亜酸化窒素(6%)、及びフッ素化ガス(2%)が残りを占めている(米国環境保護庁(United States Environmental Protection Agency))。工業及び林業の施業も大気中にCOを放出するが、COの大部分は化石燃料を燃焼させてエネルギーを生成することに由来する。温室効果ガス排出、特にCOの削減は、地球温暖化の進行並びにそれに伴う気候及び天候の変化を止めるのに重要である。
【0004】
触媒プロセス、例えばフィッシャー・トロプシュ法を使用して、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、および/または水素(H)を含有するガス、例えば産業廃ガス、もしくは合成ガス、またはそれらの混合物を、さまざまな化学物質、例えば、エタノール、アセトン、イソプロパノールに変換できることは長い間認識されてきた。合成ガスはまた、モンサント法によって、最初の工程としてメタノールに変換することにより、さまざまな化学物質に変換されることもできる。フィッシャー・トロップシュおよびメタノール合成ユニットの両方は、非常に高い容量で最適化される。それらは、触媒の毒作用を避けるために、明確に規定された供給ガス組成物および低不純物の合成ガス供給を必要とする。フィッシャー・トロップシュ法では、高純度の工業化学物質を生成するために、複雑で高価な精製装置を必要とする。最近、ガス発酵がそのようなガスの生物学的固定のための代替プラットフォームとして浮上している。C1固定微生物は、CO、CO、および/またはHを含有するガス、例えば産業廃ガス、もしくは合成ガス、またはその混合物を、生成物、例えばエタノールおよび2,3-ブタンジオールに変換することが実証されてきた。
【0005】
場合によっては、C1含有工業用ガスの発酵は、特定の化学生成物、例えばエタノール、アセトン、またはイソプロパノールを生成するように調整される。しかし、特定の生成物の生産が目的であっても、発酵生成物には他の成分、例えばエタノールとアセトン、またはイソプロパノールとエタノールが含有されることになる。特定の化学生成物の下流での分離と回収には、化学生成物、例えばエタノール、アセトン、イソプロパノールごとに個別にカスタマイズされた分離システムが必要とされる。
【0006】
したがって、生成物の組み合わせごとにカスタマイズされた分離および回収成分を使用する代わりに、共有の分離および回収成分を使用して、さまざまな化学製品の組み合せ、例えばエタノール/アセトンまたはイソプロパノール/エタノールを回収できる柔軟性を備える統合回収システムの必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態では、発酵プロセスから少なくとも一つの生成物を生成および回収するための方法は、液体栄養培地中に、供給源からのC1含有ガスを、少なくとも一つのC1固定微生物を含む発酵バイオリアクターに導入して、エタノールおよび水を含む第一の生成物流、またはエタノール、アセトン、および水を含む第二の生成物流、またはエタノール、アセトン、イソプロパノール、および水を含む第三の生成物流のうちの少なくとも一つを含む発酵ブロスを生成することと、富化エタノール流、富化アセトン流、富化イソプロパノール流、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つの富化生成物流を選択的に回収するために、発酵ブロスを発酵バイオリアクターから共有生成物回収システムに移すことと、を含む。
【0008】
別の実施形態では、共有生成物回収システムは、真空蒸留ユニット、精留ユニット、アセトン除去ユニット、乾燥ユニット、エタノール-アセトン分離ユニット、抽出蒸留ユニット、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0009】
一態様では、真空蒸留ユニットは、第一の生成物流を含む発酵ブロスから富化エタノール流と生成物枯渇流とを生成し、生成物枯渇流は発酵バイオリアクターに戻される。別の態様では、真空蒸留ユニットは、第二の生成物流を含む発酵ブロスからアセトンおよびエタノールに富む濃縮流と生成物枯渇流とを生成し、生成物枯渇流は発酵バイオリアクターに戻される。さらに別の態様では、真空蒸留ユニットは、第三の生成物流を含む発酵ブロスからイソプロパノール、アセトンおよびエタノールに富む濃縮流と生成物枯渇流とを生成し、生成物枯渇流は発酵バイオリアクターに戻される。
【0010】
一実施形態では、少なくとも一つのC1固定微生物は、少なくとも一つのC1固定微生物によって生成されるものと同じではない、第一の生成物流、第二の生成物流、または第三の生成物流のうちの一つを生成する別のC1固定微生物と置き換えられる。
【0011】
さらに別の実施形態では、C1固定微生物は、第一の生成物流を生成するC1固定微生物から、エタノール、アセトン、および水の第二の生成物流、もしくはエタノール、アセトン、イソプロパノール、および水の第三の生成物流を生成するC1固定微生物に、または第二の生成物流を生成するC1固定微生物から、第一の生成物流もしくは第三の生成物流を生成するC1固定微生物に、または、第三の生成物流を生成するC1固定微生物から、第一の生成物流もしくは第二の生成物流を生成するC1固定微生物に切り替えられる。
【0012】
別の実施形態では、ガス発酵プロセスから少なくとも一つの生成物を回収するためのシステムは、(a)エタノールおよび水を含む第一の生成物流から富化エタノール流および生成物枯渇流を生成するように構成される真空蒸留ユニットと流体連通するC1ガス発酵バイオリアクターと、(b)真空蒸留ユニットと流体連通する精留ユニットであって、精留ユニットが、塔頂部エタノール流と塔底部水流とを生成するように構成される、精留ユニットと、を備える。
【0013】
別の実施形態では、乾燥ユニットは、精留ユニットと流体連通し、乾燥ユニットは、無水エタノール流とパージ流とを生成するように構成される。
【0014】
さらに別の実施形態では、ガス発酵プロセスから少なくとも一つの生成物を回収するためのシステムは、(a)エタノール、アセトン、および水を含む第二の生成物流から、アセトンおよびエタノールに富む濃縮流と、生成物枯渇流とを生成するように構成される真空蒸留ユニットと流体連通するC1ガス発酵バイオリアクターと、(b)真空蒸留ユニットと流体連通する精留ユニットであって、精留ユニットは、アセトンおよびエタノールに富む塔頂部流と塔底部水流とを生成するように構成される、精留ユニットと、(c)精留ユニットと流体連通する乾燥ユニットであって、乾燥ユニットは、アセトンおよびエタノールに富む無水濃縮流とパージ流とを生成するように構成される、乾燥ユニットと、(d)乾燥ユニットと流体連通するエタノール-アセトン分離ユニットであって、エタノール-アセトン分離ユニットは無水アセトン流と無水エタノール流とを生成するように構成される、エタノール-アセトン分離ユニットと、を備える。
【0015】
さらに別の実施形態では、ガス発酵プロセスから少なくとも一つの生成物を回収するためのシステムは、(a)イソプロパノール、アセトンおよびエタノールに富む濃縮流と、エタノール、アセトン、イソプロパノール、および水を含む第三の生成物流からの生成物枯渇流とを生成するように構成される真空蒸留ユニットと流体連通するC1ガス発酵バイオリアクターと、(b)真空蒸留ユニットと流体連通するアセトン除去ユニットであって、アセトン除去ユニットは、イソプロパノールおよびエタノールに富む塔底部流と、アセトンに富む塔頂部流とを、生成するように構成される、アセトン除去ユニットと、(c)アセトン除去ユニットと流体連通する精留ユニットであって、精留ユニットは、イソプロパノールおよびエタノールに富む塔頂部流と、塔底部流からの塔底部水流とを生成するように構成される、精留ユニットと、(d)精留ユニットと流体連通する乾燥ユニットであって、乾燥ユニットは、イソプロパノールおよびエタノールに富む無水濃縮流とパージ流とを生成するように構成される、乾燥ユニットと、(e)乾燥ユニットと流体連通する抽出蒸留ユニットであって、抽出蒸留ユニットは、少なくとも一つの抽出蒸留剤の存在下でイソプロパノールおよびエタノールに富む無水濃縮流の蒸留から塔頂部流と蒸留塔底部流とを得るように構成される、抽出蒸留ユニットと、を備える。
【0016】
別の実施形態は、分離塔および別の分離塔と流体連通し、(i)塔頂部流から無水エタノールの少なくとも一部、および蒸留塔底部流から無水イソプロパノールの少なくとも一部、または、(ii)塔頂部流から無水イソプロパノールの少なくとも一部、および蒸留塔底部流から無水エタノールの少なくとも一部、を回収するように構成される、抽出蒸留ユニットを有することを含む。
【0017】
さらに別の実施形態では、アセトン除去ユニットは、発酵バイオリアクターとさらに流体連通し、アセトン除去ユニットは、塔頂部流を発酵バイオリアクターに再循環させるように構成される。
【0018】
別の実施形態では、ガス発酵プロセスから少なくとも一つの生成物を回収するシステムは、生成物富化エタノール流出口および生成物枯渇流出口を有する真空蒸留ユニットと流体連通するC1ガス発酵バイオリアクターと、生成物富化流出口と流体連通する精留ユニットであって、精留ユニットは塔頂部生成物流出口および塔底部水流出口を有する、精留ユニットと、塔頂部生成物流出口と流体連通する乾燥ユニットであって、乾燥ユニットは無水生成物流出口およびパージ流出口を有する、乾燥ユニットと、を備える。システムは、真空蒸留ユニットと熱力学的に一体化される自己蒸気機械圧縮システムをさらに備えてもよい。システムは、無水生成物流出口と流体連通する分離ユニットをさらに備えてもよく、分離ユニットは分離ユニット塔頂部出口および分離ユニット塔底部出口を有してもよい。分離ユニットは、分留ユニットまたは抽出蒸留ユニットであってもよい。システムは、生成物富化流出口、精留ユニット、およびC1ガス発酵バイオリアクターと流体連通する副生成物除去ユニットをさらに備えてもよい。システムは、分離ユニット塔頂部出口と流体連通し、かつ第一の蒸留塔生成物出口を有する第一の蒸留塔と、分離ユニット塔底部出口と流体連通し、かつ第二の蒸留塔生成物出口を有する第二の蒸留塔と、をさらに備えてもよい。
【0019】
本開示の前述およびその他の、目的、実施形態、および特徴は、添付の図面を参照して進行する、以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本開示の一態様による発酵バイオリアクターおよび共有生成物回収システムを含むガス発酵プロセス全体を示す概略的な流れ図である。
図2図2は、本開示の第一の態様による、共有生成物回収システムの、真空蒸留ユニット、精留ユニット、および乾燥ユニットの詳細を示す流れ図である。
図3図3は、本開示の第二の態様による共有生成物回収システムの、真空蒸留ユニット、精留ユニット、乾燥ユニット、およびエタノール-アセトン分離ユニットの詳細を示す流れ図である。
図4図4は、第三の態様による共有生成物回収システムの、真空蒸留ユニット、アセトン除去ユニット、精留ユニット、乾燥ユニット、および連結する分離塔を有する抽出蒸留ユニットの詳細を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示によれば、発酵バイオリアクターの下流の柔軟性のある分離および回収プロセスならびにシステムは、発酵ブロス中に存在する化学生成物の様々な組み合わせ、例えば、エタノール/アセトンまたはイソプロパノール/エタノールをバイオリアクターから分離および回収することができる。柔軟性のある回収/分離システム/プロセスは、使用する必要のあるユニットの数を最小化しする。
【0022】
定義
用語「発酵ブロス」または「ブロス」は、未反応供給ガス、一つまたは複数の微生物の培養物、化学栄養素、発酵生成物、例えば、エタノール、アセトン、イソプロパノール、およびそれらの組み合わせを含有する多相気液水性混合物である構成成分の混合物を包含することが意図されている。微生物という用語と細菌という用語は、本明細書を通して互換的に使用される。
【0023】
「栄養培地(Nutrient media)」または「栄養培地(nutrient medium)」は、微生物増殖培地を説明するために使用される。一般に、この用語は、培養微生物の増殖に適した栄養素及び他の成分を含有する培地を指す。用語「栄養素」は、微生物の代謝経路において利用されることができる任意の物質を含む。例示的な栄養素として、カリウム、ビタミンB、微量金属、およびアミノ酸が挙げられる。
【0024】
用語「富化生成物流」は、発酵ブロスを、共有生成物回収システムを通過させた後、回収された生成物流中の目的生成物の重量濃度パーセントを表すために使用される。例えば、富化エタノール流は、少なくとも15%、または少なくとも30%、または少なくとも60%、または少なくとも80%、または少なくとも95%、または少なくとも98%のエタノールを含む。同様に、富化アセトン流は、少なくとも14%、または少なくとも32%、または少なくとも65%、または少なくとも85%、または少なくとも95%、または少なくとも99%のアセトンを含む。富化イソプロパノール流は、少なくとも16%、または少なくとも33%、または少なくとも66%、または少なくとも87%、または少なくとも95%、または少なくとも99%のイソプロパノールを含む。
【0025】
用語「無水流」は、重量濃度が、5%未満、または2%未満、または1%未満、または0.5%未満、または0.2%未満、または0.1%未満の水を含む、「無水エタノール流」または「無水アセトン流」または「無水イソプロパノール流」を表すために使用される。
【0026】
一実施形態では、発酵ブロスは、「バイオリアクター」/「発酵バイオリアクター」で生成される。「バイオリアクター」という用語は、連続撹拌槽反応器(CSTR)、固定化細胞反応器(ICR)、トリクルベッド反応器(TBR)、気泡塔、ガスリフト発酵槽、静的ミキサ、循環ループ反応器、中空糸膜バイオリアクター(HFM BR)などの膜反応器、または気液接触に適した他の容器もしくは他のデバイスを含む、一つまたは複数の容器および/もしくは塔、または配管配置からなる発酵デバイスを含む。バイオリアクターは、COもしくはCOもしくはHまたはこれらの混合物を含むガス状基質を受け取る。バイオリアクターは、並列または直列のいずれかで、複数の反応器(段)のシステムを備えることができる。例えば、バイオリアクターは、細菌を培養する第一の増殖反応器と、増殖反応器からの生成物が供給されて、発酵生成物の大部分が生成されることができる第二の発酵反応器とを備えることができる。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステム内の複数のバイオリアクターは別のバイオリアクターのトップ上に配置され、スタックを形成する。バイオリアクターのスタックは、土地面積の需要を大幅に増加させることなく、バイオリアクターシステムのスループットを改善する。いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、エネルギー消費を増加させることなく、気液物質移動の速度を実質的に向上させる機構を有するマイクロバブルバイオリアクターを含む。
【0027】
用語「接種反応器」、「接種装置」等は、細胞増殖を確立および促進するための発酵装置を含む。接種反応器は、好ましくは、COもしくはCOもしくはHまたはそれらの混合物を含むガス状基質を受け取る。好ましくは、接種反応器は、細胞増殖が最初に開始される反応器ある。様々な実施形態では、接種反応器は、すでに増殖した細胞が復活する容器である。様々な実施形態では、接種反応器内での細胞増殖により接種材料が生成され、これがバイオリアクターシステムに移されることができ、そこでバイオリアクターが一つまたは複数の発酵生成物の生成を促進させる。場合によっては、接種反応器は、後続の一つまたは複数のバイオリアクターと比較した場合、容積が小さい。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステム内の増殖反応器は、接種反応器として使用されることができる。
【0028】
バイオリアクター内の微生物は、天然に存在する微生物から改質されることができる。「親微生物」は、本開示の微生物を生成する微生物である。親微生物は、自然発生型の微生物(すなわち、野生型微生物)または以前に改質された微生物(すなわち、変異体または組換え微生物)であることができる。本開示の微生物は、親微生物において発現又は過剰発現されなかった一つ以上の酵素を発現又は過剰発現するように修飾され得る。同様に、本開示の微生物は、親微生物に含まれなかった一つまたは複数の遺伝子を含むように改質されることができる。本開示の微生物は、親微生物において発現されたより少ない量の一つ以上の酵素を発現しないように、又は発現するようにも修飾され得る。一実施形態によれば、親微生物は、Clostridiumautoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、またはClostridium ragsdaleiである。一実施形態では、親微生物は、ブダペスト条約の条項下で、2010年6月7日に、Inhoffenstraβe 7B,D-38124 Braunschweigに所在するDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に寄託され、受託番号DSM23693を付与された、Clostridium autoethanogenum LZ1561である。この株は、WO2012/015317として公開されている国際特許出願第PCT/NZ2011/000144号に記載されている。
【0029】
「C1固定微生物」は、C1炭素源から一つまたは複数の生成物を生成する微生物である。典型的には、本開示の微生物は、C1固定細菌である。「C1炭素源」とは、微生物のための部分的または唯一の炭素源として機能する一炭素分子を指す。例えば、C1炭素源は、CO、CO、CH、CHOH、またはCHのうちの一つまたは複数を含むことができる。一実施形態では、C1炭素源は、COおよびCOの一方または両方を含む。
【0030】
C1-炭素源は、工業プロセスの副産物として得られる廃ガスから、または別の供給源、例えば、燃焼機関の排気ガス、バイオガス、埋め立てガス、直接空気回収、もしくは電気分解から得られることができる。基質および/またはC1炭素源は、熱分解、焙焼、またはガス化によって生成される合成ガスであってもよい。言い換えれば、廃棄物中の炭素は、熱分解、焙焼、またはガス化によって再循環されて、基質および/またはC1炭素源として使用される合成ガスを生成してもよい。基質および/またははC1炭素源は、メタンを含むガスであってもよく、特定の実施形態では、基質および/またはC1炭素源は、非廃ガスであってもよい。
【0031】
「アセトゲン」は、「Wood-Ljungdahl」経路を、(1)COからのアセチル-CoAの還元合成のための機構、(2)末端電子受容、エネルギー節約プロセス、(3)細胞炭素の合成におけるCOの固定(同化)のための機構、として使用する偏性嫌気性細菌である(Drake,Acetogenic Prokaryotes,In:The Prokaryotes,3rd edition,p.354,New York,NY,2006)。典型的には、本開示の微生物は、アセトゲンである。
【0032】
「エタノロゲン」は、エタノールを生成することが可能である微生物である。典型的には、本開示の微生物は、エタノロゲンであってもよい。
【0033】
「独立栄養生物」は、有機炭素の不在下でも増殖することが可能な微生物である。代わりに、独立栄養生物は、CO及び/又はCOなどの無機炭素源を使用する。典型的には、本開示の微生物は、独立栄養生物であってもよい。
【0034】
「カルボキシド栄養生物」は、炭素及びエネルギーの唯一の供給源としてCOを利用することが可能な微生物である。典型的には、本開示の微生物は、カルボキシド栄養生物であってもよい。
【0035】
「天然生成物」は、遺伝子修飾されていない微生物によって生成される生成物である。例えば、エタノール、アセテート、及び2,3-ブタンジオールは、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、及びClostridium ragsdaleiの天然生成物である。遺伝子組み換え微生物は、遺伝子組換え微生物が由来する遺伝子組み換えされていない微生物によっては生成されない「非天然生成物」を生成する。
【0036】
「共有生成物回収システム」は、富化エタノール流、富化アセトン流、富化イソプロパノール流、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つの富化生成物流を選択的に回収するために、類似の動作条件下で動作する配置された装置の組み合わせを備える。したがって、共有生成物回収システムは、回収される生成物流に応じて、真空蒸留ユニット、精留ユニット、アセトン除去ユニット、乾燥ユニット、エタノール-アセトン分離ユニット、抽出蒸留ユニット、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0037】
用語「真空蒸留ユニット」は、真空下で蒸留を行うための装置を包含することを意図しており、蒸留される発酵生成物はその沸点を下げるために低圧で封入されている。一実施形態では、真空蒸留ユニットは分離部を備える。発酵生成物は、バイオリアクターから供給されてもよい。
【0038】
“真空蒸留ユニット”は、一つまたは複数の「低沸点発酵生成物」を回収する。低沸点発酵生成物は、水よりも揮発性が高い。これらの生成物には、エタノール、アセトン、イソプロパノール、ブタノール、ケトン、メチルエチルケトン、2-ブタノール、1-プロパノール、酢酸メチル、酢酸エチル、ブタノン、1,3-ブタジエン、イソプレン、およびイソブテンが含まれることができるが、これらに限定されない。
【0039】
「分離部」は、気液接触のための大きな表面積を提供する任意の適切な媒体から構成されてもよく、これは真空蒸留ユニットの効率を高める。分離媒体は、複数の理論蒸留段を提供するように設計されている。少なくとも一つの実施形態では、分離媒体は一連の蒸留トレイである。少なくとも一つの実施形態では、分離媒体は少なくとも一つの充填材から構成される。充填材は、通常、流体を、真空蒸留ユニット内の望ましい経路を通って強制的に流すように配置される薄い波形金属プレートまたはガーゼを含むことができる。
【0040】
「蒸留トレイ」または「蒸留プレート」等は、気液接触を促進するために使用されるプレートおよび/またはトレイを包含することを意図している。トレイタイプには、ふるいトレイ、バルブトレイ、およびバブルキャップトレイが含まれるが、これらに限定されない。蒸気が通過するための穴を備えるふるいトレイは、低コストで高効率を提供する大容量の状況に使用される。より安価ではあるが、開閉バルブを備える、穴を備えるバルブトレイは、材料の蓄積により汚損が発生する傾向がある。バブルキャップトレイには、各穴に取り付けられた立上り部または排気筒と、立上り部を覆うキャップが付いている。キャップは、蒸気の通過を可能にするために、立上り部とキャップとの間に空間があるように取り付けられる。蒸気は排気筒を通って上昇し、キャップによって下向きに方向付けられ、最終的に排気筒の穴を通して排出され、トレイ上で泡立つ。バブルキャップトレイは三つのトレイの中で最も先進的で高価であり、液体流量が低い状況で非常に効果的で、漏れを最小限に抑える。
【0041】
「理論蒸留段」は、物質の液相および気相などの二つの相が互いに平衡を確立する仮想区域である。多くの分離プロセスの性能は、一連の理論蒸留段を有することに依存する。分離装置、例えば真空蒸留ユニットの性能は、段の数を増やすことによって強化されることができる。一実施形態では、分離媒体は、発酵ブロスから少なくとも一つの生成物を効果的に除去するのに十分な数の理論蒸留段を含む。
【0042】
用語「生成物枯渇流」は、蒸留前の発酵ブロス中の生成物の重量割合と比較して、「真空蒸留ユニット」を通して発酵ブロスを蒸留した後の生成物、例えば、エタノール、アセトン、イソプロパノール、およびそれらの組み合わせの低減された重量割合の流れを指す。場合によっては、生成物枯渇流は、発酵ブロス中に含有される生成物の20%未満、または発酵ブロス中に含有される生成物の10%未満、または発酵ブロス中に含有される生成物の5%未満、または発酵ブロス中に含有される生成物の2.5%未満、または発酵ブロス中に含有される生成物の2%未満、または発酵ブロス中に含有される生成物の1%未満を含む。生成物枯渇流は、廃水、バイオマス、酢酸塩、2,3-ブタンジオール、未使用の栄養素を含む成分をさらに含有するが、これらに限定されない。
【0043】
用語、自己蒸気機械圧縮(MVR)システムは、廃熱を再循環させて熱力学的効率を向上させるために使用できるエネルギー回収装置を包むことを意図している。通常、圧縮蒸気は蒸発した液体からMVRによって生成され、さらにその凝縮を利用して液体の蒸発に必要な熱負荷の一部が生成される。真空蒸留ユニットと熱力学的に統合された同じMVRシステムを使用すると、真空蒸留ユニットで処理されるすべての生成物流(すなわち、エタノール、アセトン、イソプロパノール、またはそれらの組み合わせ)にわたって、その塔頂部で同じ質量流量を維持するのに役立つ。
【0044】
用語「精留ユニット」は、真空蒸留ユニットの生成物から過剰な水および/または副生成物を除去することを容易にするために、真空蒸留ユニットの下流で使用される装置を包含することが意図されている。精留ユニットは、一般的に、真空蒸留ユニットと比較して、より多くの理論上の蒸留段を含む。さらに、精留ユニットには、生成物回収プロセス中に蓄積する可能性がある望ましくない生成物、例えばC3~C4アルコールを除去するための複数の取り出し点が含まれる。
【0045】
用語「乾燥ユニット」は、精留ユニットの生成物流から過剰な水を吸着するための好適な吸着材料を含む装置、例えば、容器またはユニットを包含することを意図している。水を吸着できる材料には、アルミナ、シリカ、およびモレキュラーシーブ、例えば、合成ゼオライトまたは天然ゼオライトが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、乾燥ユニットは、生成物流からの一つの成分の一部、例えば水が通過して透過液流を生成することを選択的に可能にすることができ、かつ生成物流の他の成分、例えば、エタノール、アセトン、イソプロパノール、もしくはそれらの組み合わせの一部が膜を通過して保持液流を生成することを可能にしない、またはその逆も同じ、高分子膜を備えることができる。
【0046】
用語「エタノール-アセトン分離ユニット」は、分留を使用してアセトンとエタノールを分離する装置を包含することを意図している。アセトンの沸点は約57℃、エタノールの沸点は約78℃である。エタノールとアセトンの混合物を沸騰させると、アセトンの沸点はエタノールの沸点よりも低いため、凝縮中にアセトンが混合物から分離される。アセトンは、エタノール-アセトン分離ユニットの塔頂部から捕集されることができる。分離されたアセトンおよびエタノールの純度を改善するために、複数の蒸留段が実施されてもよい。
【0047】
用語「抽出蒸留ユニット」は、成分の相対揮発性を変えるために、第三の成分である抽出蒸留剤を添加することにより、相対揮発性の低い成分、例えば、エタノールおよびイソプロパノールを蒸留するための装置を包含することを意図している。抽出蒸留剤を回収するために、抽出蒸留ユニットの下流で少なくとも一つの分離塔が利用される。
【0048】
用語「抽出蒸留剤」は、生成物の相対揮発性を変えることができる任意の成分を包含することを意図している。一実施形態では、抽出蒸留剤は、近接する沸点の生成物、例えばエタノールとイソプロパノールとの相対揮発性を変えて、その分離を可能にすることができる。相対揮発性を修正することに加えて、抽出蒸留剤は、近接する沸点の生成物間、例えばエタノールおよび/またはイソプロパノール間で沸点差を大きくすることができる。
【0049】
説明
いくつかの実施形態では、本開示の供給ガス流は、鉄合金製品の製造、例えば鋼材製造、非鉄製品製造、石油精製、電力生産、カーボンブラック生産、紙・パルプ製造、アンモニア製造、メタノール製造、コークス製造、石油化学製品製造、炭水化物発酵、セメント製造、好気性消化、嫌気性消化、触媒プロセス、天然ガス抽出、セルロース発酵、油抽出、地質学的貯留層の工業的プロセス、化石資源、例えば、天然ガス、石炭および石油の処理、またはそれらの任意の組合せから選択される工業プロセスから得られる可能性がある。工業的プロセス内の特定の処理工程の例には、触媒再生、流動触媒クラッキング、及び触媒再生が含まれる。空気分離及び直接空気回収は、他の適切な工業プロセスである。鋼材および合金鉄製造におけるいくつかの例には、高炉ガス、塩基性酸素転炉ガス、コークス炉ガス、鉄炉トップガスの直接還元、および精錬鉄からの残留ガスが含まれる。これらの実施形態では、基質および/またはC1炭素源は、任意の公知の方法を使用して、大気中に放出される前に工業プロセスから捕捉されてもよい。
【0050】
図1は、本開示の一実施形態による、C1含有供給ガス流からの生成物の生成および分離の流れ図を示す。発酵バイオリアクター430は、ライン115からC1含有供給ガス流の第一の部分を受け取る。必要に応じて、ライン115内の供給ガス流は圧縮機410に供給されて圧縮供給ガス流415を生成することができ、圧縮供給ガス流415は、汚染物質除去反応器420に必要に応じて送られて処理済み供給ガス流425を生成することができる。処理済み供給ガス流425は、発酵バイオリアクター430を通過する。汚染物質除去反応器420は、一般的に、発酵バイオリアクター430に含まれるC1固定微生物に有害である可能性のある汚染物質を供給ガス流115から除去する。いくつかの実施形態では、汚染物質除去反応器420は、酸素を除去するための脱酸素触媒、例えば銅触媒床を含んでもよい。
【0051】
導管445を介して送られるC1含有供給ガス流の一部は、必要に応じて、第二の圧縮機450によって圧縮されて、導管455を介して接種反応器460に送られる第二の圧縮ガスを生成する。接種反応器460は、一つまたは複数の微生物の細胞増殖を開始させ、接種材料を生成する。発酵バイオリアクター430は、導管465を通じて接種材料を受け取る。いくつかの実施形態では、接種反応器460は、必要に応じて、導管421を介して直接汚染物質除去反応器420から圧縮され処理されたガスを受け取り、このガスはさらに導管465を介して発酵バイオリアクター430に移送される。
【0052】
発酵バイオリアクター430は、液体栄養培地中に少なくとも一つのC1固定微生物を含み、C1含有供給ガス流115を発酵させて、発酵生成物を含む発酵ブロス435を提供する。発酵ブロス435は、エタノールおよび水を含む第一の生成物流、またはエタノール、アセトン、および水を含む第二の生成物流、またはエタノール、アセトン、イソプロパノール、および水を含む第三の生成物流のうちの少なくとも一つを含む。エタノールは一般的に、供給ガス発酵中に、発酵中に生成されるアセチル-CoAの還元合成から得られるアセトアルデヒドから天然生成物として生成される。しかし、アセチル-CoAは、クロストリジウム属細菌のいくつかの遺伝子組換え株から得られる複数の酵素によって代謝されて、アセトンを生成する。これらの菌株は、副生成物、例えば3-ヒドロキシ酪酸塩および2,3-ブタンジオールを排除することにより、アセトン生成の選択性をさらに向上させます。イソプロパノールは、第二級アルコール脱水素酵素による酵素還元によってアセトンから生成される。すべてのアセトンがイソプロパノールに変換されるわけではない。したがって、イソプロパノールの製造中に、過剰なアセトンの一部が発酵バイオリアクターに戻され再循環される。イソプロパノールを生成する例示的な遺伝子組換え微生物は、外因性チオラーゼ、外因性CoAトランスフェラーゼ、および外因性デカルボキシラーゼを含む酵素を生成することができる組換え微生物の培養物を含む。アセトン、イソプロパノール、ならびに/またはアセトンおよび/もしくはイソプロパノールの前駆体を生成する他の例示的な遺伝子組換え微生物は、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ、アセテートCoAトランスフェラーゼA、アセテートCoAトランスフェラーゼB、アセトアセテートデカルボキシラーゼ、およびα-ケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼから選択される一つまたは複数の酵素を生成することができる組換え微生物の培養物を含む。アセトン/イソプロパノールを生成する酵素を生成することができる遺伝子組換え微生物は、付与された米国特許第9,365,868号および公開特許出願WO2012/115527に開示されており、それらの両出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
C1固定微生物は、第一の生成物流を生成するC1固定微生物から、エタノール、アセトン、および水の第二の生成物流、もしくはエタノール、アセトン、イソプロパノール、および水の第三の生成物流を生成するC1固定微生物に、または第二の生成物流を生成するC1固定微生物から、第一の生成物流もしくは第三の生成物流を生成するC1固定微生物に、または第三の生成物流を生成するC1固定微生物から、第一の生成物流もしくは第二の生成物流を生成するC1固定微生物に、切り替えられることができる。発酵バイオリアクター430内のC1固定微生物を切り替える一つの方法は、図1の接種反応器460の使用を含む。接種反応器460は停止されるが、発酵バイオリアクター430は動作を継続する。停止中、接種反応容器は、排出され、洗浄され、未使用の液体栄養培地で再充填され、別のC1固定微生物が導入される。発酵バイオリアクター430は、停止され、排出され、洗浄される。発酵バイオリアクター430が洗浄され、接種材料の準備が整った後、バイオリアクター430は導管465を介して接種材料を受け取り、新しい微生物が異なる発酵生成物を生成し始める。発酵バイオリアクター430の停止および再起動は、接種反応器460の再起動と連携し、生産休止時間を最小限に抑える。
【0054】
共有生成物回収システム440は、発酵バイオリアクター430から発酵ブロス435を受け取る。共有生成物回収システム440からの生成物流は、富化エタノール流235、富化アセトン流340、富化イソプロパノール流345、またはそれらの組み合わせ、および過剰な水流124のうちの少なくとも一つを有する生成物を含むことができる。生成物の分離および回収後、生成物枯渇流436は発酵バイオリアクター430に戻される。共有生成物回収システム440からの過剰な水は、廃水処理プロセス470に送られる。廃水処理プロセス470からの精製水は、導管437を介してバイオリアクター430に再循環される。
【0055】
図2、3、および4に示すように、共有生成物回収システム440は、発酵ブロスから回収および分離される生成物に応じて、真空蒸留ユニット110、精留ユニット120、アセトン除去ユニット130、乾燥ユニット160、エタノール-アセトン分離ユニット140、および抽出蒸留ユニット150の配置された装置の組み合わせを備える。このような共有生成物回収システム440を提供することにより、生成物、例えばエタノール、アセトン、およびイソプロパノールのそれぞれを回収するために個別にカスタマイズされた設備を構築することを回避する。したがって、共有生成物回収システム440内に配置される装置の組み合わせにより、プラントの設備投資が大幅に削減される。
【0056】
図2に示す本開示の第一の態様では、エタノールおよび水を含む第一の生成物流を含む発酵ブロスからの富化無水エタノールの回収が開示される。本態様による共有生成物回収システム440は、真空蒸留ユニット110、精留ユニット120、および乾燥ユニット160を使用する。真空蒸留ユニット110は、発酵バイオリアクター430から発酵ブロス435を受け取る。図2に示す実施形態では、リボイラー710は、真空蒸留ユニット110と併せて使用される。リボイラー710は、蒸気流を真空蒸留ユニット110に導くように設けられる。蒸気流は、導管720を介して真空蒸留ユニット110から出るその塔底部218での液体の気化によって得られる。リボイラー710からの蒸気流は、導管715を通って真空蒸留ユニット110に導かれる。真空蒸留ユニット110に入る蒸気流は、そこを通って上方に上昇する。真空蒸留ユニット110は、複数の蒸留トレイ(図示せず)を有する少なくとも一つの分離部を画成する。真空蒸留ユニット110における分離プロセスの性能は、理論上の蒸留段の数に依存する。真空蒸留ユニット110は、一実施形態では約3つを超える蒸留段、別の実施形態では約4つを超える蒸留段、さらに別の実施形態では約5つを超える蒸留段で動作する。
【0057】
発酵ブロスから化学生成物を効果的に分離するために、真空蒸留ユニット110は、一般的に様々な温度および圧力範囲で動作される。様々な実施形態では、温度は、30℃~35℃、または35℃~40℃、または40℃~45℃、または45℃~50℃、または30℃~50℃である。様々な実施形態では、真空蒸留ユニット110の塔底部218における圧力は、概ね、6kPa(a)~8kPa(a)、または8kPa(a)~10kPa(a)、または6kPa(a)~10kPa(a)である。様々な実施形態では、真空蒸留ユニット110の塔頂部217における圧力は、概ね、3kPa(a)~5kPa(a)、または5kPa(a)~7kPa(a)、または7kPa(a)~8kPa(a)、または3kPa(a)~8kPa(a)である。
【0058】
真空蒸留ユニット110を通過した後、エタノールおよび水を含む第一の生成物流を含む発酵ブロス435は、富化エタノール流215とバイオリアクター430に戻される生成物枯渇流436とを生成する。一実施形態では、廃水を含む生成物枯渇流436の少なくとも一部は、導管250を介して廃水処理プロセス240を通過して、発酵バイオリアクター430に再循環される精製水流(図示せず)を生成する。一般的な例では、発酵ブロス435でのエタノール濃度は約2重量%である。様々な実施形態では、富化エタノール流215のエタノール濃度は、発酵ブロス435でのエタノール濃度と比較して、概ね、重量で少なくとも4倍、または重量で少なくとも6倍、または重量で少なくとも8倍、または重量で少なくとも12倍に向上する。さらに、真空蒸留ユニット110の塔頂部217における何らかの富化生成物蒸気、例えば富化エタノール蒸気は、導管216を介して機械的蒸気圧縮システム(MVR)700に送られる。真空蒸留ユニット110の塔頂部217からの富化生成物蒸気の圧縮および凝縮は、真空蒸留ユニット110が必要とする熱負荷のかなりの割合を生成するために熱力学的に有益であり、これは、概ね少なくとも50%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも95%である。したがって、富化生成物蒸気のこのような圧縮および凝縮は、全体の蒸気消費量を低減させる。結果として、リボイラー710の負荷も最適化される。
【0059】
MVRシステム700を介して真空蒸留ユニット110の塔頂部217から供給される富化エタノール流215は、精留ユニット120を通過する。一実施形態では、精留ユニット120は、少なくとも一つの分離部(図示せず)をさらに備える。分離部は、富化エタノール流215からの過剰な水および/または副生成物の除去を促進するために、一連の蒸留トレイおよび/または充填材を備えてもよい。いくつかの実施形態では、精留ユニット120は、約30を超える理論上の蒸留段で動作する。図2に示す一実施形態では、リボイラー810は、精留ユニット120によって使用される。リボイラー810は、蒸気流を精留ユニット120に導く。蒸気流は、精留ユニット120の塔底部220における液体の蒸発によって得られ、導管820を介して精留ユニット120から出る。この蒸気流は、導管815を通ってリボイラー810から精留ユニット120に導かれる。
【0060】
精留ユニット120は、塔頂部エタノール流225と、直接または廃水処理プロセス240で処理された後のいずれかに発酵バイオリアクター430に再循環される(図示せず)塔底部水流245とを生成する。一般的な例では、富化エタノール流215のエタノール濃度は約14重量%である。様々な実施形態では、塔頂部エタノール流225のエタノール濃度は、富化エタノール流215のエタノール濃度と比較して、概ね、重量で少なくとも3倍、または重量で少なくとも5倍、または重量で少なくとも7倍に向上する。様々な実施形態では、精留ユニット120の塔頂部219の温度は、概ね、100℃~110℃、または110℃~120℃、または120℃~130℃、または110℃~130℃である。様々な実施形態では、精留ユニット120の登頂部219における圧力は、概ね、300kPa(a)~400kPa(a)、または400kPa(a)~500kPa(a)、または500kPa(a)~550kPa(a)、または550kPa(a)~650kPa(a)、または650kPa(a)~800kPa(a)、または800kPa(a)~900kPa(a)、または900kPa(a)~1100kPa(a)である。精留ユニット120の塔頂部219における温度および圧力は、当該技術分野で公知の原理を使用することによって、その他の動作条件、例えば塔底部220の温度および圧力を得るための基礎として使用されることができる。精留ユニット120からの塔頂部エタノール流225は、乾燥ユニット160に移されて、無水エタノール流235およびパージ流400を生成する。乾燥ユニット160は、二つ以上の容器内に収容される二つ以上の吸着床を備え、それを通して塔頂部エタノール流225が流れる。吸着床の一つが水で飽和すると、吸着能力を再生するために吸着床から水を脱着する必要がある。飽和した吸着床は運転から外され、塔頂部エタノール流は未使用のまたは再生された吸着床に切り替えられて、エタノール流を乾燥させる。ここで、使用済みまたは飽和吸着床は、乾燥プロセスから生成される脱着剤、例えば無水エタノールを使用して、水を脱着することによって再生される。吸着床から水を脱着するための再生条件は、当該技術分野で周知である。吸着床が再生されると、現在稼働中の吸着床が水で飽和した場合、稼働できる状態になる。これにより、エタノールおよび水を有するパージ流400が生成され、乾燥ユニット160から引き出され、別の分離のために精留ユニット120に戻される。乾燥ユニット160がポリマー膜を用いて、生成物流、例えば塔頂部エタノール流から水を除去する実施形態では、一つの吸着床だけを使用する必要がある。このように、高分子膜は保持液流と透過液流とを生成する。非生成物流は、膜および分離条件の選択に応じて、透過液流であるか保持液流であるかにかかわらず、乾燥ユニットを使用する吸着剤の場合のパージ流400に類似しており、精留ユニット120に戻される。
【0061】
図3に示す本開示の第二の態様では、アセトン、エタノールおよび水を含む第二の生成物流を含む発酵ブロスからの富化無水アセトンおよび富化エタノールの回収が示される。本態様による共有生成物回収システム440は、真空蒸留ユニット110、精留ユニット120、乾燥ユニット160、およびエタノール-アセトン分離ユニット140を使用する。真空蒸留ユニット110は、バイオリアクター430から発酵ブロス435を受け取る。真空蒸留ユニット110を通過した後の発酵ブロス435は、アセトンおよびエタノールに富む濃縮流315と、生成物枯渇流436とを生成する。一実施形態では、廃水を含む生成物枯渇流436の少なくとも一部は、導管250を介して廃水処理プロセス240を通過して、発酵バイオリアクターに再循環される精製水流(図示せず)を生成する。一般的な例では、発酵ブロス435でのアセトンおよびエタノール濃度は約2重量%である。様々な実施形態では、濃縮流315のアセトンおよびエタノール濃度は、発酵ブロス435のアセトンおよびエタノール濃度と比較して、概ね、重量で少なくとも4倍、または重量で少なくとも6倍、または重量で少なくとも8倍、または重量で少なくとも12倍に向上する。
【0062】
真空蒸留ユニット110の塔頂部217からMVRシステム700を介して供給されるアセトンおよびエタノールに富む濃縮流315は、精留ユニット120を通過する。精留ユニット120は、アセトンおよびエタノールに富む塔頂部流325と、直接または廃水処理プロセス240で処理された後のいずれかに発酵バイオリアクター430に再循環される(図示せず)塔底部水流245とを生成する。
【0063】
真空蒸留ユニット110ならびにMVRシステム700およびリボイラー710および810を含む精留ユニット120の構成上の態様は、図2の実施形態で説明したものと同じである。さらに、本開示の第二の態様におけるプロセス設計パラメーター、例えば、真空蒸留ユニット110および精留ユニット120の動作温度および圧力は、本開示の第一の態様と概ね同じである。一般的な例では、アセトンおよびエタノールに富む濃縮流315のアセトンおよびエタノール濃度は約14重量%である。様々な実施形態では、塔頂部流325中のアセトンおよびエタノールの濃度は、真空蒸留ユニット110から得られるアセトンおよびエタノールに富む濃縮流315と比較して、概ね、重量で少なくとも3倍、または重量で少なくとも5倍、または重量で少なくとも7倍に向上する。精留ユニット120からのアセトンおよびエタノールに富む塔頂部流325は、乾燥ユニット160に送られる。乾燥ユニット160は、アセトンおよびエタノールに富む無水濃縮流335と、アセトン、エタノールおよび水を有するパージ流500とを生成する。吸着床または高分子膜を使用して乾燥ユニット160からパージ流500を生成するための機構は、本開示の第一の態様と同じである。パージ流500は、乾燥ユニット160から引き出され、別の分離のために精留ユニット120に戻される。
【0064】
アセトンおよびエタノールに富む無水濃縮流335は、エタノール-アセトン分離ユニット140を通過し、これは、分留原理を用いて、エタノール-アセトン分離ユニット140の塔頂部から無水アセトン流340と、無水エタノール流235とを生成する。エタノール-アセトン分離ユニットはまた、当該技術分野で公知のリボイラー(図示せず)と共に動作する。
【0065】
図4に示す本開示の第三の態様では、エタノール、アセトン、イソプロパノール、および水を含む第三の生成物流を含む発酵ブロスからの富化無水イソプロパノール流および無水エタノール流の回収が示される。本態様による共有生成物回収システム440は、真空蒸留ユニット110、アセトン除去ユニット130、精留ユニット120、乾燥ユニット160、および抽出蒸留ユニット150を使用する。エタノールおよびイソプロパノールは、それぞれ約78.4℃および約82.4℃の近接する沸点を有し、それにより分離を困難にする。したがって、抽出蒸留は、このような近接する沸点の生成物を効果的に分離することが判った。真空蒸留ユニット110は、バイオリアクター430から発酵ブロス435を受け取る。真空蒸留ユニット110を通過した後の発酵ブロス435は、イソプロパノール、アセトン、およびエタノールに富む濃縮流510と、バイオリアクター430に戻される生成物枯渇流436とを生成する。一実施形態では、廃水を含む生成物枯渇流436の少なくとも一部は、導管250を介して廃水処理プロセス240を通過して、発酵バイオリアクターに再循環される精製水流(図示せず)を生成する。一般的な例では、発酵ブロス435におけるイソプロパノール、アセトン、およびエタノール濃度は、約2重量%である。いくつかの実施形態では、濃縮流510の濃度は、発酵ブロス435のイソプロパノール、アセトン、およびエタノール濃度と比較して、概ね、重量で少なくとも4倍、または重量で少なくとも6倍、または重量で少なくとも8倍、または重量で少なくとも12倍に向上する。
【0066】
真空蒸留ユニット110の塔頂部217からMVRユニット700を介して供給されるイソプロパノール、アセトンおよびエタノールに富む流れ510は、アセトン除去ユニット130を通過する。アセトン除去ユニット130は、イソプロパノールおよびエタノールに富む塔底部流515と、アセトンに富む塔頂部流340とを生成する。アセトンに富む塔頂部流340は、アセトン除去ユニット130から発酵バイオリアクター430に再循環され、その結果、再循環されるアセトンを別のイソプロパノール生成に使用することができる。さらに、アセトン除去ユニット130からの塔底部流515は、精留ユニット120を通過する。精留ユニット120は、エタノールおよびイソプロパノールに富む塔頂部流520と、直接または廃水処理プロセス240で処理された後のいずれかに、発酵バイオリアクター430に再循環される(図示せず)塔底部水流245とを生成する。エタノールおよびイソプロパノールに富む塔頂部流520は、乾燥ユニット160に送られる。乾燥ユニット160は、イソプロパノールおよびエタノールに富む無水濃縮流535と、イソプロパノール、エタノールおよび水を有するパージ流600とを生成する。吸着床または高分子膜を使用して乾燥ユニット160からパージ流600を生成するための機構は、本開示の第一の態様または第二の態様と同じである。パージ流600は、乾燥ユニット160から引き出され、別の分離のために精留ユニット120に戻される。
【0067】
抽出蒸留ユニット150は、イソプロパノールおよびエタノールに富む無水濃縮流535を乾燥ユニット160から受け取る。抽出蒸留ユニット150は、抽出蒸留剤の使用により、低い相対揮発性を有する成分、例えばエタノールおよびイソプロパノールを蒸留することを可能にする。抽出蒸留剤は、無水濃縮流535内に存在するエタノールまたはイソプロパノールのいずれかと混合することによって溶媒として作用する。一実施形態では、抽出蒸留剤は、エタノールまたはイソプロパノールのいずれかである一つの化学生成物に対して高い親和性を有し、他の代替生成物に対しては低い親和性を有する。適切な抽出蒸留剤は、エタノールおよびイソプロパノールに富む無水濃縮流535の成分と共沸混合物を形成すべきではなく、蒸留中に後続の分離塔でこれらの生成物のそれぞれから分離されなければならない。
【0068】
抽出蒸留ユニット150からの塔頂部流525は分離塔170に送られ、無水エタノール流235の少なくとも一部が回収される。抽出蒸留ユニット150からの蒸留塔底部流530は、別の分離塔180に送られて、無水イソプロパノール流345の少なくとも一部が回収される。蒸留された抽出蒸留剤は、それぞれ導管526および531を通って分離塔170および180から再循環され、導管532を通って抽出蒸留ユニット150に戻される。あるいは、(図4には示されていない)別の実施形態では、抽出蒸留ユニット150からの塔頂部流525が分離塔170に送られて、無水イソプロパノール流345の少なくとも一部が回収される。抽出蒸留ユニット130からの蒸留塔底部流530は、別の分離塔180に送られて、無水エタノール流235の少なくとも一部が回収される。抽出蒸留ユニット150ならびに分離塔170および180はまた、当該技術分野で公知のリボイラー(図示せず)と共に併せて動作する。
【0069】
無水エタノール流235の少なくとも一部が塔頂部流525から回収され、無水イソプロパノール流345の少なくとも一部が蒸留塔底部流530から回収される場合、抽出蒸留剤は、α-ピネン、β-ピネン、メチルイソブチルケトン、リモネン、α-フェランドレン、α-テルピネン、ミルセン、カラン、p-メンタ-1,5-ジエン、ブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、n-ブチルアセテート、n-アミルアセテート、酢酸ベンジル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、エチレングリコールジアセテート、2-ブトキシエチルアセテート、酪酸メチル、プロピオン酸エチル、n-吉草酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸エチル、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、o-sec-ブチルフェノール、3-イソプロピルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、o-tert-ブチルフェノール、4-エチルフェノール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソオクチル、アジピン酸ジメチル、三酢酸グリセリン、マロン酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、プロポキシプロパノール、ブトキシプロパノール、p-キシレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールt-ブチルエーテルメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、アニソール、フェネトール、フェニルエーテル、1,2-メチレンジオキシベンゼン、イソホロン、エチル-3-エトキシプロピオネート、オルトケイ酸テトラエチル、2-ヒドロキシアセトフェノン、1,1,1-トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、2,2,2-トリクロロエタノール、m-ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、2,6-ジクロロトルエン、1-クロロヘキサン、ジエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、スルホラン、イソホロン、2-ピロリジオン、1-メチル-2ピロリニジノン、イソデシルアルコール、シクロドデカノール、ベンジルアルコール、1-ドデカノール、トリデシルアルコール、フェネチルアルコール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、2-ニトロプロパン、1-ニトロプロパン、ニトロ-エタン、ニトロメタン、3-ニトロトルエン、2-ニトロトルエン、トリアセチン、3-ニトロ-o-キシレン、1,4-ジオキサン、酢酸イソブチル、酪酸エチル、ギ酸イソアミル、カプロ酸メチル、カプロ酸エチル、カプロ酸プロピル、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、イソブチルイソブチレート、酢酸ヘキシル、イソ酪酸エチル、酪酸プロピル、イソブチルブチレート、イソボルニルアセテート、1,3-ジオキソラン、ニトロベンゼン、酪酸ブチル、4-メチル-2-ペンタノン、およびポリエチレングリコールから選択されてもよい。
【0070】
無水イソプロパノール流345の少なくとも一部が塔頂部流525から回収され、無水エタノール流235の少なくとも一部が蒸留塔底部流530から回収される場合、抽出蒸留剤は、エチルベンゼン、トルエン、p-キシレン、ヘプタン、フェノール、および2-tert-ブチルフェノールから選択されることができる。
【0071】
本明細書に列挙される公表文献、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が、あたかも参照により組込まれることが個々にかつ具体的に示され、その全体が本明細書中に記載された場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における任意の先行技術への言及は、その先行技術が任意の国の努力傾注分野において共通の一般知識の一部をなすという認識ではなく、そのように解釈されるべきではない。
【0072】
本明細書の値の範囲の記述は、本明細書に別段の指示がない限り、範囲内に入る各個々の値を個々に言及する省略法としての役割を果たすことを単に意図し、各個々の値は、あたかも本明細書に個々に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。例えば、別段の指示がない限り、任意の濃度範囲、パーセント範囲、比率範囲、整数範囲、サイズ範囲、又は厚さ範囲は、列挙された範囲内の任意の整数の値、及び適切な場合、その分数(整数の10分の1、及び100分の1など)を含むと理解されるべきである。別段の指示がない限り、比はモル比であり、パーセンテージは重量ベースである。
【0073】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と別段明らかに相反することがない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供されるありとあらゆる例又は例示的な言葉(すなわち、「など」)の使用は、本発明をより良く解明することを単に意図し、別段の主張がない限り、本発明の範囲を制限しない。本明細書におけるいかなる言葉も、本開示の実践に不可欠な任意の請求されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0074】
本開示の好ましい実施形態が本明細書に記載される。これらの実施形態の変形は、当業者にとって前述の説明を読めば明らかとなりうるものであり、そのような変形の採用は、本開示は本明細書に具体的に記述されるもの以外の方法で実施されうるため、範囲内であることが意図される。したがって、本開示は、適用法によって許可されたとおり、特許請求の範囲に記載される主題のすべての修正物及び同等物を含む。更に、その全ての考えられる変形における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と別段明らかに相反することがない限り、本開示によって包含される。
【0075】
実施形態
実施形態1:
発酵プロセスから少なくとも一つの生成物を生成および回収するための方法であって、
a)エタノールおよび水を含む第一の生成物流、またはエタノール、アセトン、および水を含む第二の生成物流、またはエタノール、アセトン、イソプロパノール、および水を含む第三の生成物流のうちの少なくとも一つを含む発酵ブロスを生成するために、C1含有ガスを供給源から、液体栄養培地中に少なくとも一つのC1固定微生物を含有する発酵バイオリアクターに導入すること、および、
b)富化エタノール流、富化アセトン流、富化イソプロパノール流、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つの富化生成物流を選択的に回収するために、発酵ブロスを発酵バイオリアクターから共有生成物回収システムに移すこと、を含む方法。
【0076】
実施形態2:
共有生成物回収システムが、真空蒸留ユニット、精留ユニット、アセトン除去ユニット、乾燥ユニット、エタノール-アセトン分離ユニット、抽出蒸留ユニット、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含む、実施形態1に記載の方法。
【0077】
実施形態3:
少なくとも一つのC1固定微生物が、少なくとも一つのC1固定微生物によって生成されるものとは同じではない、第一の生成物流、第二の生成物流、または第三の生成物流のうちの一つを生成する別のC1固定微生物と置き換えられることをさらに含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0078】
実施形態4:
富化エタノール流が、第一の生成物流を含む発酵ブロスを、富化エタノール流と生成物枯渇流とを生成する条件で動作する真空蒸留ユニットに送ることによって生成され、生成物枯渇流が発酵バイオリアクターに戻される、実施形態1~3のいずれか一つに記載の方法。
【0079】
実施形態5:
富化エタノール流を真空蒸留ユニットから精留ユニットに送り、塔頂部エタノール流と塔底部水流とを生成することをさらに含み、塔底部水流が、直接または廃水処理プロセスで処理された後のいずれかに発酵バイオリアクターに再循環される、実施形態1~4のいずれか一つに記載の方法。
【0080】
実施形態6:
塔頂部エタノール流を精留ユニットから乾燥ユニットに送り、無水エタノール流とパージ流とを生成することをさらに含み、パージ流が精留ユニットに戻される、実施形態5に記載の方法。
【0081】
実施形態7:
生成物枯渇流の少なくとも一部を廃水処理プロセスに送り、発酵バイオリアクターに再循環される精製水流を生成することをさらに含む、実施形態4~6のいずれか一つに記載の方法。
【0082】
実施形態8:
富化アセトン流が、第二の生成物流を含む発酵ブロスをアセトンおよびエタノールに富む濃縮流と生成物枯渇流とを生成する条件で動作する真空蒸留ユニットに送ることによって生成され、生成物枯渇流が発酵バイオリアクターに戻される、実施形態2に記載の方法。
【0083】
実施形態9:
濃縮流を真空蒸留ユニットから精留ユニットに送り、アセトンおよびエタノールに富む塔頂部流と塔底部水流とを生成することをさらに含み、塔底部水流が、直接または廃水処理プロセスで処理された後のいずれかに発酵バイオリアクターに再循環される、実施形態8に記載の方法。
【0084】
実施形態10:
アセトンおよびエタノールに富む塔頂部流を精留ユニットから乾燥ユニットに送り、アセトンおよびエタノールに富む無水濃縮流とパージ流とを生成することをさらに含み、パージ流が精留ユニットに戻される、実施形態9に記載の方法。
【0085】
実施形態11:
アセトンおよびエタノールに富む無水濃縮流を乾燥ユニットからエタノール-アセトン分離ユニットに送り、無水アセトン流と無水エタノール流とを生成することをさらに含む、実施形態10に記載の方法。
【0086】
実施形態12:
生成物枯渇流の少なくとも一部を廃水処理プロセスに送り、発酵バイオリアクターに再循環される精製水流を生成することをさらに含む、実施形態8に記載の方法。
【0087】
実施形態13:
富化イソプロパノール流が、第三の生成物流を含む発酵ブロスを真空蒸留ユニットに送り、イソプロパノール、アセトン、およびエタノールに富む濃縮流と生成物枯渇流とを生成することにより生成され、生成物枯渇流が発酵バイオリアクターに戻される、実施形態2、6、8~12のいずれか一つに記載の方法。
【0088】
実施形態14:
イソプロパノール、アセトン、およびエタノールに富む濃縮流を真空蒸留ユニットからアセトン除去ユニットに送り、イソプロパノールおよびエタノールに富む塔底部流と、アセトンに富む塔頂部流とを生成することをさらに含む、実施形態13に記載の方法。
【0089】
実施形態15:
塔頂部流をアセトン除去ユニットから発酵バイオリアクターに再循環させてイソプロパノールを生成することをさらに含む、実施形態14に記載の方法。
【0090】
実施形態16:
イソプロパノールおよびエタノールに富む塔底部流をアセトン除去ユニットから精留ユニットに送り、イソプロパノールおよびエタノールに富む塔頂部流と塔底部水流とを生成することをさらに含み、塔底部水流が、直接または廃水処理プロセスで処理された後のいずれかに発酵バイオリアクターに再循環される、実施形態14または15に記載の方法。
【0091】
実施形態17:
イソプロパノールおよびエタノールに富む塔頂部流を精留ユニットから乾燥ユニットに送り、イソプロパノールおよびエタノールに富む無水濃縮流とパージ流とを生成することをさらに含み、パージ流が精留ユニットに戻される、実施形態16に記載の方法。
【0092】
実施形態18:
生成物枯渇流の少なくとも一部を廃水処理プロセスに送り、発酵バイオリアクターに再循環される精製水流を生成することをさらに含む、実施形態13~16のいずれか一つに記載の方法。
【0093】
実施形態19:
イソプロパノールおよびエタノールに富む無水濃縮流を乾燥ユニットから抽出蒸留ユニットに送り、少なくとも一つの抽出蒸留剤の存在下で無水濃縮流を蒸留して、塔頂部流と蒸留塔底部流とを得ることをさらに含み、
i)無水エタノールの少なくとも一部が塔頂部流で回収され、無水イソプロパノールの少なくとも一部が蒸留塔底部流で回収される、または、
ii)無水イソプロパノールの少なくとも一部が塔頂部流で回収され、無水エタノールの少なくとも一部が蒸留塔底部流で回収される、実施形態17に記載の方法。
【0094】
実施形態20:
無水エタノールの少なくとも一部が塔頂部流で回収され、無水イソプロパノールの少なくとも一部が蒸留塔底部流で回収され、抽出蒸留剤が、α-ピネン、β-ピネン、メチルイソブチルケトン、リモネン、α-フェランドレン、α-テルピネン、ミルセン、カラン、p-メンタ-1、5-ジエン、ブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、n-ブチルアセテート、n-アミルアセテート、酢酸ベンジル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、エチレングリコールジアセテート、2-ブトキシエチルアセテート、酪酸メチル、プロピオン酸エチル、n-吉草酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸エチル、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、o-sec-ブチルフェノール、3-イソプロピルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、o-tert-ブチルフェノール、4-エチルフェノール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソオクチル、アジピン酸ジメチル、三酢酸グリセリン、マロン酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、プロポキシプロパノール、ブトキシプロパノール、p-キシレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールt-ブチルエーテルメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、アニソール、フェネトール、フェニルエーテル、1,2-メチレンジオキシベンゼン、イソホロン、エチル-3-エトキシプロピオネート、オルトケイ酸テトラエチル、2-ヒドロキシアセトフェノン、1,1,1-トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、2,2,2-トリクロロエタノール、m-ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、2,6-ジクロロトルエン、1-クロロヘキサン、ジエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、スルホラン、イソホロン、2-ピロリジオン、1-メチル-2ピロリニジノン、イソデシルアルコール、シクロドデカノール、ベンジルアルコール、1-ドデカノール、トリデシルアルコール、フェネチルアルコール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、2-ニトロプロパン、1-ニトロプロパン、ニトロ-エタン、ニトロメタン、3-ニトロトルエン、2-ニトロトルエン、トリアセチン、3-ニトロ-o-キシレン、1,4-ジオキサン、酢酸イソブチル、酪酸エチル、ギ酸イソアミル、カプロ酸メチル、カプロ酸エチル、カプロ酸プロピル、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、イソブチルイソブチレート、酢酸ヘキシル、イソ酪酸エチル、酪酸プロピル、イソブチルブチレート、イソボルニルアセテート、1,3-ジオキソラン、ニトロベンゼン、酪酸ブチル、4-メチル-2-ペンタノン、およびポリエチレングリコール400から選択される少なくとも一つの化合物を含む、実施形態19に記載の方法。
【0095】
実施形態21:
無水イソプロパノールの少なくとも一部が塔頂部流で回収され、無水エタノールの少なくとも一部が蒸留塔底部流で回収され、抽出蒸留剤が、エチルベンゼン、トルエン、p-キシレン、ヘプタン、フェノール、および2-tert-ブチルフェノールから選択される少なくとも一つの化合物を含む、実施形態19に記載の方法。
【0096】
実施形態22:
C1固定微生物が、少なくとも一つのカルボキシド栄養性菌である、実施形態1~21のいずれか一つに記載の方法。
【0097】
実施形態23:
カルボキシド栄養性菌が、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、またはそれらの組合せから選択される、実施形態1~22のいずれか一つに記載の方法。
【0098】
実施形態24:
ガス発酵プロセスから少なくとも一つの生成物を回収するためのシステムであって、ガス発酵プロセスが、生成物富化流および生成物枯渇流の出口を有する真空蒸留ユニットと流体連通するC1ガス発酵バイオリアクターと、生成物富化流出口と流体連通する精留ユニットであって、精留ユニットが塔頂部生成物流出口および塔底部水流出口を有する、精留ユニットと、塔頂部生成物流出口と流体連通する乾燥ユニットであって、乾燥ユニットが無水生成物流出口およびパージ流出口を有する、乾燥ユニットと、を備える、システム。
【0099】
実施形態25:
真空蒸留ユニットと熱力学的に一体化される自己蒸気機械圧縮システムをさらに備える、実施形態24に記載のシステム。
【0100】
実施形態26:
無水生成物流出口と流体連通する分離ユニットをさらに備え、分離ユニットが分離ユニット塔頂部出口および分離ユニット塔底部出口を有する、実施形態24または25に記載のシステム。
【0101】
実施形態27:
分離ユニットが、分留ユニットまたは抽出蒸留ユニットである、実施形態24~26のいずれか一つに記載のシステム。
【0102】
実施形態28:
生成物富化流出口、精留ユニット、およびC1ガス発酵バイオリアクターと流体連通する副生成物除去ユニットをさらに備える、実施形態24~27のいずれか一つに記載のシステム。
【0103】
実施形態29:
分離ユニット塔頂部出口と流体連通し、かつ第一の蒸留塔生成物出口を有する第一の蒸留塔と、分離ユニット塔底部出口と流体連通し、かつ第二の蒸留塔生成物出口を有する第二の蒸留塔と、をさらに備える、実施形態24~28のいずれか一つに記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】