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特表2024-539647式LiaPSbXc(I)の固体材料粒子粉末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】式LiaPSbXc(I)の固体材料粒子粉末
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/14 20060101AFI20241022BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20241022BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241022BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241022BHJP
【FI】
C01B25/14
H01B1/06 A
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/62 Z
H01M4/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522424
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2022078257
(87)【国際公開番号】W WO2023062011
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21306437.1
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523287012
【氏名又は名称】スペシャルティ オペレーションズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ダレンコン, ローリアーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンテ, ジュール
(72)【発明者】
【氏名】ル メルシェ, ティエリー
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5G301CA16
5G301CA19
5G301CA22
5G301CD01
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AM12
5H029HJ02
5H050DA13
5H050EA15
(57)【要約】
本開示は、式(I):LiPS (I)(式中、- Xは、少なくとも1つのハロゲン元素を表し、- aは、2.0~7.0の数を表し、- bは、3.0~6.0の数を表し、- cは、0~3.0の数を表す)の固体材料粒子粉末であって、50μm未満のd50値を有し、L*a*b*表色系におけるL*値が60.0未満であることを特徴とする、固体材料粒子粉末に関する。本開示は、そのような粉末の調製方法、及び特に固体電解質又は電池物品を製造するためのそのような粉末の使用にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
LiPS (I)
(式中、
Xは、少なくとも1つのハロゲン元素を表し、
aは、2.0~7.0の数を表し、
bは、3.0~6.0の数を表し、
cは、0~3.0の数を表す)
の固体材料粒子の粉末であって、
パラキシレンを使用するレーザー回折によって測定される2μmから70μm未満の範囲のd50値を有し、
L*a*b*表色系におけるL*値が60.0未満であることを特徴とする、
粉末。
【請求項2】
前記固体材料が、式(II):
Li7-xPS6-x (II)
(式中、
Xは、F、Cl、Br及びIからなる群の中で選択される少なくとも1つのハロゲン元素又はこれらの組み合わせを表し、
xは、0.5~2.0の正の数を表す)
に従う、請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
前記固体材料が、LiPSCl、Li、LiPS、Li11又はLiPSである、請求項1又は2に記載の粉末。
【請求項4】
パラキシレン中でのレーザー回折により測定した場合に、
50μm未満のd50値、
0.05μm超のd10値、及び/又は
100μm未満のd90
を示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項5】
インピーダンス分光法により圧縮(500MPa)ペレットにおいて測定した場合に少なくとも1.5mS/cmのイオン伝導率を示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項6】
炭素系溶媒を用いる湿式メカノケミストリーを含む方法によって得られる、請求項1~5のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項7】
前記方法が、
a)混合手段、好ましくは混合ビーズを使用して、混合物(M+S)1リットル当たり少なくとも7×10回転のエネルギーで、出発材料(M)を、好ましくは脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素の中から選択される炭素系溶媒(S)と混合することで、スラリー状態のペーストを得る工程と、
b)工程a)からの前記ペーストを乾燥させて、乾燥ペーストを得る工程と、
b’)任意選択的に、工程b)からの前記乾燥ペーストをペレットへとプレスする工程と、
c)例えばペレットの形態で、少なくとも2時間、350℃~580℃の温度まで、前記乾燥されたペーストを加熱する工程と
を含む、請求項6に記載の粉末。
【請求項8】
前記出発材料(M)が、少なくとも硫化リチウム(LiS)及び硫化リンである、請求項7に記載の粉末。
【請求項9】
前記溶媒が、p-キシレン、ヘプタン、オクタン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6~8のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項10】
式(I):
LiPS (I)
(式中、
Xは、少なくとも1つのハロゲン元素を表し、
aは、2.0~7.0の数を表し、
bは、3.0~6.0の数を表し、
cは、0~3.0の数を表す)
の固体材料粒子の粉末であって、
50μm未満のd50値を有し、
L*a*b*表色系におけるL*値が60.0未満であることを特徴とする、
固体材料粒子の粉末の製造方法であって、
前記方法が、
a)混合手段、好ましくは混合ビーズを使用して、混合物(M+S)1リットル当たり少なくとも7.0×10回転のエネルギーで、出発材料(M)を、好ましくは脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素の中から選択される炭素系溶媒(S)と混合することで、スラリー状態のペーストを得る工程と、
b)工程a)からの前記ペーストを乾燥させて、乾燥ペーストを得る工程と、
b’)任意選択的に、工程b)からの前記乾燥ペーストをペレットへとプレスする工程と、
c)例えばペレットの形態で、少なくとも2時間、350℃~580℃の温度まで、前記乾燥されたペーストを加熱する工程と
を含む方法。
【請求項11】
固体電解質を製造するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の粉末の使用。
【請求項12】
少なくとも請求項1~9のいずれか一項に記載の粉末を含む固体電解質。
【請求項13】
少なくとも請求項12に記載の固体電解質を含む固体電池。
【請求項14】
少なくとも、
金属基材と、
前記金属基材に直接接着された少なくとも1つの層であって、
(i)請求項1~9のいずれか一項に記載の粉末と、
(ii)少なくとも1つの電気活性化合物(EAC)と、
(iii)任意に、本発明の前記固体材料以外の少なくとも1つのリチウムイオン伝導性材料(LiCM)と、
(iv)任意に、少なくとも1つの導電性材料(ECM)と、
(v)任意に、リチウム塩(LIS)と、
(vi)任意に、少なくとも1つのポリマー結合材料(P)と、を含む組成物から作製される少なくとも1つの層と
を含む電極。
【請求項15】
少なくとも、
請求項1~9のいずれか一項に記載の粉末と、
任意に、少なくとも1つのポリマー結合材料(P)と、
任意に、少なくとも1つの金属塩、特にリチウム塩と、
任意に、少なくとも1つの可塑剤と
を含むセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本特許出願は、2021年10月14日に出願された欧州特許出願第21306437.1号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全内容は本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、式(I):
LiPS (I)
(式中、
- Xは、少なくとも1つのハロゲン元素を表し、
- aは、2.0~7.0の数を表し、
- bは、3.0~6.0の数を表し、
- cは、0~3.0の数を表す)
の固体材料粒子粉末であって、
70μm未満のd50値を有し、
L*a*b*表色系におけるL*値が60.0未満であることを特徴とする、
固体材料粒子粉末に関する。
【0003】
本開示は、そのような粉末の調製方法、及び特に固体電解質又は電池物品を製造するためのそのような粉末の使用にも関する。
【背景技術】
【0004】
リチウムイオン電池は、特に家電製品の電源として広く使用されている。このような二次電池では、有機溶媒が有機液体電解質として使用され、電池が充電中であるか又は放電中であるかに応じて、リチウムイオンが一方の電極からもう一方の電極に移動する。
【0005】
電解質として使用される溶媒は引火性であるため、有機溶媒を使用しない全固体リチウムイオン電池は非常に魅力的である。このような全固体リチウムイオン電池は、全て固体である構成要素、すなわちカソード、アノード、及び電解質を使用して電池全体を固体化することによって形成される。電解質を含め、全固体電池の全ての構成要素は、固体であるため、全固体電池は、液体電解質を使用した電池に比べて、電気抵抗が大きく、出力電流が小さくなる。これは、高い導電率と、この高い導電率を経時に渡り維持する適性とを有する電解質が必要であることを意味する。
【0006】
欧州特許出願公開第3026749A1号明細書(Mitsui)は、空間群F-43mに属する立方晶の結晶構造を有し、組成式:Li7-xPS6-xHa(HaはCl又はBrであり、xは0.2~1.8の範囲で変化する)で表されるリチウムイオン電池用硫化物系固体電解質であって、L*a*b*表色系における明度L*の値が60.0以上、好ましくは70.0以上、より好ましくは75.0以上であるリチウムイオン電池用硫化物系固体電解質に関する。この文献では、固体電解質中の硫黄の量は、L*a*b*表色系における前記電解質のL*値と相関している。より正確には、固体電解質中の硫黄欠陥は明度の低下につながり、性能の目的のためには避けるべきであると考えられている。言い換えると、L*値が高いほど導電性がよいとみなされる。
【0007】
しかしながら、本発明者らは、L*a*b*表色系において高いL*値を有するそのような製品は、セパレータ及びカソード液用の複合層を作製する際に使用することが非常に困難な傾向があることを確認した。
【0008】
本発明の目的は、高い導電性を保持しながらもセパレータ及び電解質用の複合層を作製するために都合よく使用することができる、固体材料粒子粉末を提供することである。本発明の別の目的は、経時的に高い導電性を維持する能力などの耐老化性を有する粉末を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、式(I):
LiPS (I)
(式中、
- Xは、少なくとも1つのハロゲン元素を表し、
- aは、2.0~7.0の数を表し、
- bは、3.0~6.0の数を表し、
- cは、0~3.0の数を表す)
の固体材料粒子粉末であって、
70μm未満のd50値を有し、
L*a*b*表色系におけるL*値が60.0未満であることを特徴とする、
固体材料粒子粉末に関する。
【0010】
いくつかの実施形態では、固体材料は、式(II):
Li7-xPS6-x (II)
(式中、
- Xは、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される少なくとも1つのハロゲン元素又はこれらの組み合わせを表し、
- xは、0.5~2.0の正の数を表す)
に従う。
【0011】
固体材料は、好ましくは、LiPSCl、Li、LiPS、Li11又はLiPSである。
【0012】
本発明は、本発明の粉末の製造方法であって、
a)混合手段、好ましくは混合ビーズ(好ましくはセラミック製)を使用して、混合物(M+S)1リットル当たり少なくとも7×10回転のエネルギーで、出発材料(M)を、好ましくは非プロトン性鎖状炭化水素及び芳香族炭化水素の中から選択される炭素系溶媒(S)と混合することで、スラリー状態のペーストを得る工程、
b)工程a)からのペーストを乾燥させて、乾燥ペーストを得る工程、
b’)任意に、工程b)からの乾燥ペーストをペレットへとプレスする工程、
c)例えばペレットの形態で、少なくとも2時間、例えば少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、又は少なくとも12時間の期間、350℃~580℃に含まれる温度まで、乾燥されたペーストを加熱する工程、
を含む方法にも関する。
【0013】
本発明は、固体電解質を製造するための本発明の粉末の使用、少なくともこのような粉末を含む固体電解質、少なくともこのような固体電解質を含む電気化学デバイス、少なくともこのような固体電解質を含む固体電池、及び少なくともこのような粉末を含む電極又は電池セパレータにも関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本出願において、
- いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本発明の他の実施形態に適用可能であり、且つそれらと交換可能であり、
- 要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれ、且つ/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に想定される関連する実施形態では、要素又は成分は、個々の列挙された要素又は成分のいずれか1つであり得るか、又は明示的に列挙された要素又は成分の任意の2つ以上からなる群からも選択され得、要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分もこのようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり、
- 端点による数値範囲の本明細書でのいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び均等物を含む。
【0015】
本発明は、式(I):
LiPS (I)
(式中、
- Xは、少なくとも1つのハロゲン元素を表し、
- aは、2.0~7.0の数、例えば3.0~6.0、4.0~6.0又は5.0~6.0の数を表し、
- bは、3.0~5.0の数、例えば3.5~5.0又は3.9~5.0の数を表し、
- cは、0~3.0の数、例えば約0.9~約2.9、又は約1.0~約2.5、更には約1.0~約2.0の数を表す)
の固体材料粒子粉末であって、
50μm未満のd50値を有し、
L*a*b*表色系におけるL*値が60.0未満であることを特徴とする、
固体材料粒子粉末に関する。
【0016】
本発明者らは、驚くべきことに、L*a*b*表色系におけるL*値が60.0未満であるそのような製品が、特にセパレータ層及びカソード液層用の複合層を作製する際にスラリーにおいて使用するのによく適していることを見出した。
【0017】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、60.0未満のL*値を示す粉末は、複合層の作製に使用される溶媒と混合するのによく適した疎水性を示すと考えられる。一方で、本発明者らの知見によれば、例えば接触角の測定を行う際に材料の表面と相互作用しないような溶媒を特定できないため、そのような材料の疎水性を特性評価することは不可能であるが、本発明者らは、粉末のL*値とその疎水性との間で直接的な相関関係を得ることができると考えている。 そのため、材料の疎水性は、材料のL*a*b*表色系のL*値を測定することによって間接的に評価することができる。先行技術の教示に反して、本発明の粉末は、実際には先行技術の教示よりも低いL*a*b*表色系におけるL*値を示す。
【0018】
また、粉末の疎水性が、経時老化に対する粉末の耐性にプラスの影響を与えることも見出された。ここでも特定の理論に拘束されるものではないが、粉末の疎水性が高いほど、水の吸収が少なくなり(水は特に経時的に硫化物粉末に悪影響を与えることが確認されている)、粉末の老化の影響を受けにくくなると考えられる。
【0019】
そのような低いL*値を示す固体材料粒子の粉末は、特に特定の量のエネルギーと組み合わせた選択した炭素系溶媒を用いた湿式メカノケミストリーによって調製することができる。粉末の調製プロセス中にそのような炭素系溶媒を使用すると、粉末の表面に特定の炭素種が生じる。
【0020】
一般に、炭素残留物がイオン伝導性(粒界による低下)及び電子伝導性(炭素含有量が高い場合は増加する可能性がある)に悪影響を及ぼす可能性があることが認められているが、本発明者らは、粉末の表面に炭素残留物が存在することにより、材料の伝導性、耐老化性、及び電解質複合層の作製に使用する際の利便性の間の改善された折り合いが実際に得られることを見出した。これにより、本発明の材料は、全固体リチウムイオン電池の製造に使用するのに非常に適したものになる。
【0021】
したがって、本発明の粉末は、L*a*b*表色系におけるL*値が60.0未満、好ましくは59.0未満、より好ましくは58.0未満、更に好ましくは56.0未満であることを特徴とする。
【0022】
実施例においてより正確に記載されるように、L*値は、特に、ソフトウェアOnColorによって操作されるX-Rite Ci52分光光度計を用いて測定することができる。装置は、硫化物で測定を行う前に、白色標準(L*a*b=95.82 -0.60 2.15)と黒色トラップによって校正される。分析される粉末の薄層は、測定中の試料の安定性を保証するために、石英窓付きの試料ホルダーに入れられる。
【0023】
本発明の粉末は、0.4~2.5重量%に含まれるC含有量、例えば0.5~2.0重量%又は0.6~1.9重量%のC含有量によって特徴付けることもできる。
【0024】
式(I)によれば、cはゼロであってもよい。この場合、固体材料は、いかなるハロゲン成分をも含まず、固体材料は、式(I’):
LiPS (I’)
(式中、
- aは、2.0~7.0の数、例えば、3.0~7.0の数を表し、
- bは、3.0~5.0の数、例えば、3.9~4.9又は4.0~4.5の数を表す)
に従う。
【0025】
式(I)によれば、cは0.9~1.1であってよい。この場合、固体材料は、式(I’’):
LiPSc’ (I’’)
(式中、
- c’は、0.9~1.1の数を表し、例えば1.0に等しい)
に従うものであってよい。
【0026】
この式(I’’)によれば、Xは好ましくはClである。この場合、式(I’’)は、以下の通りである:
LiPSClc’ (I’’)。
【0027】
いくつかの実施形態では、固体材料は、式(II):
Li7-xPS6-x (II)
(式中、
- Xは、F、Cl、Br及びIからなる群の中で選択される少なくとも1つのハロゲン元素又はこれらの組み合わせを表し、
- xは、0.5~2.0の正の数を表す)
に従う。
【0028】
これらの実施形態によれば、
- xは、より具体的には0.8~1.8の範囲であってよく、例えば、xは1.0又は1.5であってよく、xは0.95~1.05、又は1.45~1.55の範囲であってよい、及び/又は
- Xは、より具体的には、Cl、Br、又はこれらの組み合わせであり、Xは、より具体的にはClであってよい。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態では、固体材料は、LiPSCl、Li、LiPS、Li11又はLiPS、より好ましくはLiPSCl又はLiPSである。
【0030】
本開示に記載される固体材料の配合は、周知の分析技術に従って決定され得る。
【0031】
本発明において、その式、本明細書では式(I)又は(II)によって特徴付けられる固体材料は、粉末の主成分であり得る。この固体材料の割合は、粉末の総重量に基づいて、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、或いは更には少なくとも98重量%又は99重量%であり得る。
【0032】
粉末は、例えば非晶質相、及び粉末を調製するために使用される出発材料、例えばLiX(Xは、ハロゲン、例えばClである)、LiS、硫化リン(例えば、P)、及び/又はLiPOも含み得る。
【0033】
粉末は、そのサイズ又は粒度分布(PSD)によっても特徴付けられる。粉末の粒子のサイズは、パラキシレン中でのレーザー回折によって測定した場合に、
- 70m未満、例えば65μm未満、50μm未満、又は40μm未満のd50値、
- 0.05μm超のd10値、及び/又は
- 100μm未満、例えば90μm未満、80μm未満、又は70μm未満のd90
を示すものであり得る。
【0034】
好ましくは、d50値は、パラキシレン中でのレーザー回折によって測定した場合に2μmから70μm未満の範囲である。
【0035】
粉末は、凝集している粒子から構成され得る。
【0036】
50-値は、粒子の直径の数値の分布の中央値に対応する。粒度分布(PSD)の測定値、例えば、d50-値、d10-値、及びd90-値は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、少なくとも150である多数の粒子について実行されることができる。或いは、パラキシレン中でのレーザー回折によって実行されることができる。
【0037】
粉末の粒子は、球状の形状であり得る。
【0038】
粉末の粒子は、0.8~1.0、より具体的には0.85~1.0、更により具体的には0.90~1.0の球形度SRを示し得る。SRは、好ましくは0.90~1.0又は0.95~1.0であり得る。粒子の球形度は、次式を用いて、測定された外周P及び粒子の投影面積Aの測定値から算出される:
SR=4πA/P
【0039】
理想的な球については、SRは1.0であり、球状粒子についてはそれは1.0未満である。SRは、動的画像分析(DIA)によって決定され得る。DIAを実施するために使用することができる装置の例は、RetschのCAMSIZER(登録商標)P4又はSympatecのQicPic(登録商標)である。球形度は、より具体的には、ISO 13322-2(2006)に従って測定することができる。DIAは一般的に、統計学的に意味のある多数の粒子(例えば少なくとも500又は更に少なくとも1000)の分析を必要とする。
【0040】
粉末の結晶相(空間群F-43mに属する立方晶構造に相当)は、Cu放射線源を使用したX線回折法(XRD)によって評価することができる。
【0041】
粉末は、インピーダンス分光法により圧縮(500MPa)ペレットにおいて測定した場合に、少なくとも1.5mS/cm、例えば少なくとも1.7mS/cm、又は1.9~5.0mS/cmのイオン伝導率、例えば2.0~4.5mS/cmのイオン伝導率を有利に示し得る。
【0042】
イオン伝導率の測定は、加圧ペレットにおいて行われる。典型的には、加圧ペレットは、一軸性圧力又は等方圧力を用いて製造される。一軸性圧力を適用してペレットが形成される場合、100MPa超、有利には300Mpa超の圧力が少なくとも30秒の時間の間適用される。測定は、典型的には2MPa~200MPaの一軸性圧力下、室温で行われ、続いて30℃の値に変換される。
【0043】
本発明の粉末は、特に経時的な導電率変化及び重量変化によって測定される、その耐老化性によって特徴付けることもできる。
【0044】
本発明は、炭素系溶媒を用いる湿式メカノケミストリーを含む方法によって得られる粉末にも関する。
【0045】
本発明は、
a)混合手段、好ましくは混合ビーズ(例えばセラミック製)を使用して、混合物(M+S)1リットル当たり少なくとも7×10回転のエネルギーで、出発材料(M)を、好ましくは脂肪族炭化水素(ヘプタンなど)及び芳香族炭化水素(キシレンなど)の中から選択される炭素系溶媒(S)と混合することで、スラリー状態のペーストを得る工程、
b)工程a)からのペーストを乾燥させて、乾燥ペーストを得る工程、
b’)任意選択的に、工程b)からの乾燥ペーストをペレットへとプレスする工程、
c)例えばペレットの形態で、少なくとも2時間、例えば少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、又は少なくとも12時間の期間、350℃~580℃に含まれる温度まで、乾燥されたペーストを加熱する工程、
を含む、上述した粉末を製造するためのそのような方法にも関する。
【0046】
出発材料(M)は、好ましくは少なくとも硫化リチウム(LiS)及び硫化リンである。
【0047】
炭素系溶媒(S)は、好ましくは、脂肪族炭化水素(例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、又はノナン、好ましくはヘプタン)及び芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、又は液体ナフテン、好ましくはキシレン)の中から選択される。より好ましくは、炭素系溶媒(S)は、キシレン、パラキシレン、ヘプタン、オクタン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
いくつかの実施形態では、工程a)の出発材料は、少なくとも硫化リチウム(LiS)及び硫化リンである。
【0049】
工程a)において、出発材料(M)、例えばLiS、LiCl、及びPは、一緒に混合される。これらの出発材料は一般的に、均一混合物を得るために粉末形態である。これらの出発材料の量は、目標とする化学量論比が得られるように定義される。特に焼成中の起こり得るSの損失を補うために、少し過剰なLiSを使用することができる。過剰なLiSは、例えば、目標とする化学量論比に対して最大10重量%追加することができる。
【0050】
工程a)は、炭素系溶媒(S)中で出発材料(M)を湿式ボールミル粉砕することによって都合よく行われる。
【0051】
重量比「溶媒(S)/混合物(M+S)」は、0.2~3.0、例えば0.4~2.0又は0.5~1.5であってよい。
【0052】
例えばミル粉砕などの混合の期間は、1~130時間、例えば好ましくは3~70時間又は6~40時間であってよい。
【0053】
スラリー状態のペーストを得る工程a)は、混合物(M+S)1リットル当たり少なくとも7×10回転、例えば混合物(M+S)1リットル当たり少なくとも7.1×10回転/L、少なくとも7.5×10回転、少なくとも8.0×10回転/L、又は少なくとも8.5×10回転のエネルギーで行われる。
【0054】
工程b)によれば、工程a)からのペーストが乾燥される。乾燥は、液体炭化水素の蒸発によって都合よく実行され得る。液体炭化水素の蒸発は好ましくは、100℃~150℃、より具体的には105℃~135℃の温度で行われる。蒸発は真空下で行なうことができる。蒸発の期間は一般的に、1~20時間、より具体的には2~20時間又は3~7時間である。
【0055】
工程c)では、工程b)の混合物は、例えば回転オーブンにて350℃~580℃、例えば370℃~550℃、又は390℃~530℃の温度で加熱(又は焼成)される。工程c)は、好ましくは、不活性雰囲気下、例えばN又はAr又はHSの雰囲気下で行われる。工程c)の期間は、1~12時間、より具体的には2~10時間、又は3~7時間である。工程c)中に、混合物の結晶化度が改善され、その結果、導電率が改善される。
【0056】
工程b)からの乾燥されたペースト又は工程b’)からのペレットを焼成するために使用され得る回転オーブンは、0.5~10.0rpmの回転速度で回転することができる。顆粒のサイズは速度の変動によって変動し得る。回転速度が大きくなればなるほど、粒子のサイズは大きくなる。これは、回転速度が高くなるほど、目標サイズを示す組成物の収率が高くなるということも意味する。
【0057】
このプロセスは、顆粒を篩い分けして特定のサイズの範囲を選択する追加の工程d)を含み得る。この操作は、手動又は自動で実行することができる。実験室で使用される条件では、これは有利には手動で行われる。
【0058】
本発明はまた、本明細書に記載の粉末の様々な最終用途に関する。
【0059】
本発明の粉末を使用して固体電解質を製造することができる。
【0060】
本発明はまた、
- 少なくとも本明細書に記載の粉末を含む固体電解質、
- 少なくとも本明細書に記載の固体電解質を含む電気化学デバイス、
- 少なくとも本明細書に記載の固体電解質を含む固体電池、
- 電極であって、少なくとも、
- 金属基材と、
- 前記金属基材に直接接着された少なくとも1つの層であって、
(i)本発明の粉末と、
(ii)少なくとも1つの電気活性化合物(EAC)と、
(iii)任意に、本発明の前記固体材料以外の少なくとも1つのリチウムイオン伝導性材料(LiCM)と、
(iv)任意に、少なくとも1つの導電性材料(ECM)と、
(v)任意に、リチウム塩(LIS)と、
(vi)任意に、少なくとも1つのポリマー結合材料(P)と、を含む組成物から作製される少なくとも1つの層と、を含む電極、並びに
- セパレータであって、少なくとも、
- 本発明の粉末と、
- 任意に、少なくとも1つのポリマー結合材料(P)と、
- 任意に、少なくとも1つの金属塩、特にリチウム塩と、
- 任意に、少なくとも1つの可塑剤と、を含むセパレータ
を含む。
【0061】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0062】
ここで、本開示を以下の実施例を参照してより詳細に記載するが、それらの目的は、例示的であるにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0063】
材料
本発明の材料#1
本発明の材料であるLiPSClは、以下の通りのプロセスで得られる。
【0064】
第1の工程において、15.8gのLiCl(Sigma-Aldrich、純度>99%)、41.4gのP(Sigma-Aldrich、純度>99%)及び42.5gのLiSigma-Aldrich)を、ZrOボール(10mm)が入っている500mLのジルコニア製の瓶に加えた。次いで、100.5gのパラキシレン(Sigma-Aldrich、純度>99%、乾燥)を加えた。溶媒の蒸発を防ぐために、締めた瓶を素早く密閉した。湿式ボールミル粉砕は、遊星ボールミルを用いて行った。ミルによる粉砕は500rpmで21時間行ったが、これは出発材料と溶媒との混合物1リットル当たり約3.8×10回転のエネルギーに相当する。スラリーペーストが得られる。
【0065】
第2の工程において、ペーストを乾燥アルミナるつぼ内に移し、130℃で動的真空下にてオーブン内で乾燥させて溶媒を除去した。5時間の乾燥後に、ミリングボールを4mmの篩によって乾燥粉末から分離した。
【0066】
第3の工程において、乾燥混合物をアルゴン雰囲気下(10ppm未満の水を含む)でアルミナるつぼに入れた。次いで、るつぼを管状炉に挿入し、Nを流しながら(20L/h)12時間、400℃よりも高い温度で生成物を結晶化させた。その後、オーブンを冷却してからるつぼを回収した。
【0067】
最終生成物は、異なったサイズのいくつかの凝集塊を有する多分散粉末の形態であった。完成生成物は、乾燥均質化によって得た。
【0068】
本発明の材料#2
第1の工程において、19.7gのLiCl(Sigma-Aldrich、純度>99%)、51.7gのP(Sigma-Aldrich、純度>99%)及び53.4gのLiSigma-Aldrich)を、ZrOボール(10mm)が入っているジルコニア製の瓶に加えた。次いで、125gのパラキシレン(Sigma-Aldrich、純度>99%、乾燥)を加えた。溶媒の蒸発を防ぐために、締めた瓶を素早く密閉した。湿式ボールミル粉砕は、遊星ボールミルを用いて行った。ミルによる粉砕は290rpmで65時間行った。スラリーペーストを調製するために費やされたエネルギーは、出発材料と溶媒との混合物1リットル当たり約6.8×10回転であった。
【0069】
第2の工程において、ペーストを乾燥アルミナるつぼ内に移し、130℃で動的真空下にてオーブン内で乾燥させて溶媒を除去した。5時間の乾燥後に、ミル粉砕ボールを4mmの篩によって乾燥粉末から分離した。
【0070】
第3の工程において、乾燥混合物をアルゴン雰囲気下(10ppm未満の水を含む)でアルミナるつぼに入れた。次いで、るつぼを管状炉に挿入し、Nを流しながら(20L/h)12時間、400℃より高い温度で結晶化させた。その後、オーブンを冷却してからるつぼを回収した。
【0071】
最終生成物は、異なったサイズのいくつかの凝集塊を有する多分散粉末の形態であった。完成生成物は、乾燥均質化によって得た。
【0072】
本発明の材料#3
第1の工程において、16.2gのLiCl;52.9gのP、33.1gのLiBr、及び41.6gのLiSを、ZrOボール(10mm)が入っているジルコニア製の瓶に加えた。次いで、129.4gのキシレンを加えた。溶媒の蒸発を防ぐために、締めた瓶を素早く密閉した。湿式ボールミル粉砕は、遊星ボールミルを用いて行った。ミルによる粉砕は350rpmで15時間行った。スラリーペーストを調製するために費やされたエネルギーは、出発材料と溶媒との混合物1リットル当たり約1.9×10回転であった。
【0073】
第2の工程において、ペーストを乾燥丸底フラスコに移し、回転式エバポレーターで60℃で動的真空下にて乾燥させて溶媒を除去した。3時間の乾燥後に、ミル粉砕ボールを4mmの篩によって乾燥粉末から分離した。
【0074】
第3の工程において、乾燥混合物をアルゴン雰囲気下(10ppm未満の水を含む)でアルミナるつぼに入れた。次いで、るつぼを管状炉に挿入し、Nを流しながら(20L/h)6時間、500℃で結晶化させた。その後、オーブンを冷却してからるつぼを回収した。
【0075】
最終生成物は、異なったサイズのいくつかの凝集塊を有する多分散粉末の形態であった。完成生成物は、乾燥均質化によって得た。
【0076】
本発明の材料#4
第1の工程において、14.7gのLiCl;25.7gのP、及び21.2gのLiSを、ZrOボール(10mm)が入っているジルコニア製の瓶に加えた。次いで、123gのキシレンを加えた。溶媒の蒸発を防ぐために、締めた瓶を素早く密閉した。湿式ボールミル粉砕は、遊星ボールミルを用いて行った。ミルによる粉砕は350rpmで15時間行った。スラリーペーストを調製するために費やされたエネルギーは、出発材料と溶媒との混合物1リットル当たり約1.9×10回転であった。
【0077】
第2の工程において、ペーストを乾燥丸底フラスコに移し、回転式エバポレーターで60℃で動的真空下にて乾燥させて溶媒を除去した。3時間の乾燥後に、ミル粉砕ボールを4mmの篩によって乾燥粉末から分離した。
【0078】
第3の工程において、アルゴン雰囲気下(10ppm未満の水を含む)、papyexシートで被覆された乾燥炭化ケイ素るつぼに乾燥混合物を入れた。次いで、るつぼを管状炉に挿入し、Nを流しながら(20L/h)12時間、520℃で結晶化させた。その後、オーブンを冷却してからるつぼを回収した。
【0079】
最終生成物は、異なったサイズのいくつかの凝集塊を有する多分散粉末の形態であった。完成生成物は、乾燥均質化によって得た。
【0080】
本発明の材料#5
第1の工程において、6.2gのLiCl;16.3gのP、及び16.8gのLiSを、ZrOボール(10mm)が入っているジルコニア製の瓶に加えた。次いで、91gのキシレンを加えた。溶媒の蒸発を防ぐために、締めた瓶を素早く密閉した。湿式ボールミル粉砕は、遊星ボールミルを用いて行った。ミルによる粉砕は300rpmで8時間行った。スラリーペーストを調製するために費やされたエネルギーは、出発材料と溶媒との混合物1リットル当たり約8.6×10回転であった。
【0081】
第2の工程において、ペーストを乾燥丸底フラスコに移し、回転式エバポレーターで60℃で動的真空下にて乾燥させて溶媒を除去した。3時間の乾燥後に、ミル粉砕ボールを4mmの篩によって乾燥粉末から分離した。
【0082】
第3の工程において、乾燥混合物をアルゴン雰囲気下(10ppm未満の水を含む)でアルミナるつぼに入れた。次いで、るつぼを管状炉に挿入し、Nを流しながら(20L/h)6時間、510℃で結晶化させた。その後、オーブンを冷却してからるつぼを回収した。
【0083】
最終生成物は、異なったサイズのいくつかの凝集塊を有する多分散粉末の形態であった。完成生成物は、乾燥均質化によって得た。
【0084】
比較材料♯A
第1の工程において、22.7gのLiCl(Sigma-Aldrich、純度>99%)、59.5gのP(Sigma-Aldrich、20純度>99%)及び61.5gのLiSを、ZrOボール(10mm)が入っているジルコニアの瓶に加えた。次いで、130gのパラキシレン(Sigma-Aldrich、純度>99%、乾燥)を加えた。溶媒の蒸発を防ぐために、締めた瓶を素早く密閉した。湿式ボールミル粉砕は、遊星ボールミルを用いて行った。混合物1リットル当たり5×10回転に相当する200rpmで7時間のミルによる粉砕の後(回転は1リットル当たり7×10回転より小さい)、スラリーペーストが得られた。
【0085】
そのような材料は、L*a*b*表色系におけるL*値が60.0を超えており、期待される性能特性を有する固体電池のための材料として使用するには適していなかった。
【0086】
比較材料♯B
標準材料LiPSClを、以下の工程で得た。
【0087】
第1の工程において、0.631gのLiCl(純度>99%);1.655gのP(純度>99%)、及び1.713gのLiS(純度>99%)を、5mmのZrOボールが入っている45mLのジルコニア製の瓶に加えた。ボールミル粉砕は、遊星ボールミルを用いて行った。500rpmで2時間ミルによる粉砕を行った後、混合粉末を得た。
【0088】
第2の工程において、Arを満たしたグローブボックス(<1ppm HO、<1ppm O)内で粉末を乳鉢にて均質化し、次いで、500MPaでペレット化して、質量が300~500mgの範囲にある直径6mmのペレットを製造した。これらのペレットは、カーボンで覆われた石英管内にて真空下で密封した。生成物を、550℃で7時間、0.5℃/分の加熱冷却速度で結晶化させた。
【0089】
最終製品は、高密度ペレットの形態であった。完成生成物は、Arを満たしたグローブボックス内で乳鉢を使用して乾燥均質化することによって得た。
【0090】
試験方法
L*a*b*表色系におけるL*値
L値は、ソフトウェアOnColorによって操作されるX-Rite Ci52分光光度計を用いて測定される。装置は、硫化物で測定を行う前に、白色標準(L*a*b=95.82 -0.60 2.15)と黒色トラップによって校正される。分析される粉末の薄層は、測定中の試料の安定性を保証するために、石英窓付きの試料ホルダーに入れられる。
【0091】
PSD
分散液のPSDは、Malvern Mastersizer 3000で、パラキシレンを使用するレーザー回折によって測定される。
【0092】
導電率及び電気化学インピーダンス分光法(EIS)
インピーダンス分光測定の前に、粉末試料を、Arを満たしたグローブボックス内で、500MPaでコールドプレスした。導電率は、500MPaで作動する一軸プレスを使用して行われるペレットに関して取得した。ペレット化は、湿気のないアルゴン雰囲気で満たされたグローブボックス内で実験室スケールの一軸プレスを使用して行った。集電体として2枚のカーボン紙箔(MersenのPapyex軟質黒鉛N998 Ref:496300120050000、厚さ0.2mm)を使用する。次に、それらの炭素電極を取り付けたペレットを気密試料ホルダー内に充填し、測定のために40MPaの圧力を試料ホルダー上に適用する。インピーダンススペクトルは、Biologic VMP3デバイスにて取得される。試料をBinder恒温槽に入れ、異なる温度でインピーダンス測定を行う。各スペクトルは、目標温度で2時間安定させた後に取得される。温度範囲は-20℃から60℃まで10℃刻みである。インピーダンス分光法は、PEISモードで、20mVの振幅、1MHz~1kHzの範囲の周波数で取得される(10倍当たり25ポイント、周波数ポイント当たり50回の測定の平均)。
【0093】
結果
PSD結果
本発明の材料#1
・ d10値=27μm
・ d50値=61μm
・ d90値=107μm
【0094】
本発明の材料#2
・ d10値=4μm
・ d50値=16μm
・ d90値=43μm
【0095】
本発明の材料#3
・ d10-値=7μm
・ d50-値=26μm
・ d90-値=62μm
【0096】
本発明の材料#4
・ d10-値=8μm
・ d50-値=22μm
・ d90-値=50μm
【0097】
本発明の材料#5
・ d10-値=3μm
・ d50-値=10μm
・ d90-値=48μm
【0098】
比較の材料#B
・ d10-値=7μm
・ d50-値=27μm
・ d90-値=103μm
【0099】
【表1】
【国際調査報告】