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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】活性化可能なポリペプチド複合体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20241022BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241022BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241022BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241022BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241022BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241022BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241022BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241022BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522466
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 US2022078157
(87)【国際公開番号】W WO2023064927
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/256,410
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/370,895
(32)【優先日】2022-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520011599
【氏名又は名称】シートムエックス セラピューティクス,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ブースタニー,レイラ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ペイドフンガット,マダン エム.
(72)【発明者】
【氏名】フォックス,エレイン アン マリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ミトラ,サヤンタン
(72)【発明者】
【氏名】カバナー,ダブリュー.マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ブリアンテ,ラファエラ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス,ジェニッテ リーアン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA16
4C085BB11
4C085CC23
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド複合体(HBPC)ならびにその作製方法及び使用方法に関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド複合体(HBPC)であって、
(a)(i)第1の重鎖可変ドメイン(VH1)及び第1の軽鎖可変ドメイン(VL1)を含み、前記VH1及び前記VL1が一緒に、CD3ポリペプチドに特異的に結合するT細胞分化抗原群(CD3)標的化ドメインを形成する、一本鎖可変断片(scFv)、(ii)第1のマスキング部分(MM1)、(iii)第1の切断可能な部分(CM1)、(iv)第2の重鎖可変ドメイン(VH2)、ならびに(v)第1の単量体Fcドメイン(Fc1)を含む、第1のポリペプチドと、
(b)(i)第2の軽鎖可変ドメイン(VL2)であって、前記VH2及び前記VL2が一緒に、EGFRに特異的に結合するEGFR標的化ドメインを形成する、前記第2の軽鎖可変ドメイン(VL2)、(ii)第2のマスキング部分(MM2)、ならびに(iii)第2の切断可能な部分(CM2)を含む、第2のポリペプチドと、
(c)(i)第2の単量体Fcドメイン(Fc2)を含み、(ii)免疫グロブリン可変ドメインを含まない、第3のポリペプチドと、を含む、前記活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド複合体(HBPC)。
【請求項2】
前記CD3ポリペプチドが、CD3のイプシロン鎖である、請求項1に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項3】
前記VH1が、
(i)アミノ酸配列KYAMN(配列番号3)を含むVH CDR1、
(ii)アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKD(配列番号4)を含むVH CDR2、及び
(iii)アミノ酸配列HGNFGNSYISYWAY(配列番号5)を含むVH CDR3、を含み、前記VL1が、
(i)アミノ酸配列GSSTGAVTSGNYPN(配列番号6)を含むVL CDR1、
(ii)アミノ酸配列GTKFLAP(配列番号7)を含むVL CDR2、及び
(iii)アミノ酸配列VLWYSNRWV(配列番号8)を含むVL CDR3、を含む、請求項1に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項4】
前記scFvが、配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するVH1及び/または配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するVL1を含む、請求項3に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項5】
前記scFvが、配列番号9のアミノ酸配列を有するVH1及び配列番号10のアミノ酸配列を有するVL1を含む、請求項4に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項6】
前記VH2が、
(i)アミノ酸配列NYGVH(配列番号15)を含むVH CDR1、
(ii)アミノ酸配列VIWSGGNTDYNTPFTS(配列番号16)を含むVH CDR2、及び
(iii)アミノ酸配列ALTYYDYEFAY(配列番号17)を含むVH CDR3、を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項7】
前記VL2が、
(i)RASQSIGTNIH(配列番号18)を含むVL CDR1、
(ii)YASESIS(配列番号19)を含むVL CDR2、及び
(iii)QQNNNWPTT(配列番号20)を含むVL CDR3、を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項8】
前記VH2が、配列番号21と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項9】
前記VH2が、配列番号21のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項10】
前記Fc1が、配列番号23と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項11】
Fc1が、配列番号23のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項12】
前記第1のポリペプチドが、前記VH2と前記Fc1との間に重鎖CH1ドメインをさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項13】
前記第1のポリペプチドが、前記VH2と前記Fc1との間に免疫グロブリンヒンジ領域をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項14】
前記第1のポリペプチドが、アミノ末端からカルボキシ末端に、MM1-CM1-scFv-VH2-CH1-ヒンジ領域-Fc1の構造配置を含み、構造中、各「-」が独立して、直接的連結または間接的連結である、請求項1~13のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項15】
前記第1のポリペプチドが、1つまたは複数のリンカーを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項16】
前記リンカーが、約1~約20個のアミノ酸を含む、請求項15に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項17】
前記VL2が、
(i)アミノ酸配列RASQSIGTNIH(配列番号18)を含むVL CDR1、
(ii)アミノ酸配列YASESIS(配列番号19)を含むVL CDR2、及び
(iii)アミノ酸配列QQNNNWPTT(配列番号20)を含むVL CDR3、を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項18】
前記VL2が、配列番号22と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項19】
前記VL2が、配列番号22のアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項20】
前記第2のポリペプチドが、アミノ末端からカルボキシ末端に、MM2-CM2-VL2の構造配置を含み、構造中、各「-」が独立して、直接的連結または間接的連結である、請求項1~19のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項21】
前記第2のポリペプチドが、1つまたは複数のリンカーを含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項22】
前記リンカーが、約1~約20個のアミノ酸を含む、請求項21に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項23】
前記Fc2が前記Fc1に結合する、請求項1~22のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項24】
前記Fc2が、配列番号28と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項25】
前記Fc2が、配列番号28のアミノ酸配列を含む、請求項24に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項26】
前記第1のポリペプチド及び前記第3のポリペプチドのうちの少なくとも一方が、免疫グロブリンヒンジ領域をさらに含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項27】
前記第1のポリペプチド及び前記第3のポリペプチドの各々が、免疫グロブリンヒンジ領域を含む、請求項26に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項28】
前記第1のポリペプチドの前記免疫グロブリンヒンジ領域及び前記第3のポリペプチドの前記免疫グロブリンヒンジ領域が、同じアミノ酸配列を含む、請求項27に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項29】
前記第1のポリペプチドの前記免疫グロブリンヒンジ領域及び前記第3のポリペプチドの前記免疫グロブリンヒンジ領域が、異なるアミノ酸配列を含む、請求項27に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項30】
前記第3のポリペプチドが、アミノ末端からカルボキシ末端に、ヒンジ領域-Fc2の構造配置で免疫グロブリンヒンジ領域を含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項31】
前記第1のポリペプチド、前記第2のポリペプチド、及び/または前記第3のポリペプチドが、1つまたは複数のリンカーを含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項32】
MM1が、リンカーL1を介してCM1に連結されている、請求項1~31のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項33】
MM2が、リンカーL2を介してCM2に連結されている、請求項1~32のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項34】
L1及びL2のアミノ酸配列が同じである、請求項1~31のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項35】
L1及びL2のアミノ酸配列が異なる、請求項1~31のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項36】
前記CM1及び前記CM2が各々、がんを有する対象の腫瘍微小環境に存在するプロテアーゼのための基質を含む、請求項1~35のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項37】
前記CM1及び前記CM2が各々、同じプロテアーゼのための基質を含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項38】
前記CM1及び前記CM2が、異なるプロテアーゼのための基質を含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項39】
CM1及びCM2が各々独立して、表2に示されるプロテアーゼの群から選択されるプロテアーゼのための基質を含む、請求項32~38のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項40】
前記CM1及び前記CM2のうちの少なくとも一方が、セリンプロテアーゼまたはマトリックスメタロペプチダーゼ(MMP)のための基質を含む、請求項1~39のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項41】
CM1が、配列番号2のアミノ酸配列を含み、及び/またはCM2が、配列番号14のアミノ酸配列を含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項42】
CM1が、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項41に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項43】
CM2が、配列番号14のアミノ酸配列を含む、請求項41または42のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項44】
CM1が、配列番号73のアミノ酸配列を含み、及び/またはCM2が、配列番号14のアミノ酸配列を含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項45】
CM1が、配列番号73のアミノ酸配列を含む、請求項44に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項46】
CM2が、配列番号14のアミノ酸配列を含む、請求項44または45のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項47】
前記MM1及び/または前記MM2が、約5個のアミノ酸~約40個のアミノ酸を含む、請求項1~46のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項48】
前記MM1が、配列番号1、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、または配列番号72からなる群から選択される、請求項1~46のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項49】
MM2が、配列番号13のアミノ酸配列を含む、請求項1~48のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項50】
MM1が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項1~49のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項51】
前記1つまたは複数のリンカーのうちの少なくとも1つが、
(i)(GS)(配列中、nは少なくとも1の整数である)、(GGS)(配列中、nは少なくとも1の整数である)(例えば、約1~約20、または約1~約10の整数)、(GGGS)(配列番号40)(配列中、nは少なくとも1の整数である)(例えば、約1~約20、または約1~約10の整数)、(GGGGS)n(配列番号126)(配列中、nは少なくとも1の整数である)(例えば、約1~約20、または約1~約10の整数)、(GSGGS)n(配列番号41)(配列中、nは少なくとも1の整数である)(例えば、約1~約20、または約1~約10の整数)、GSSGGSGGSG(配列番号12)、GGSG(配列番号42)、GGSGG(配列番号43)、GSGSG(配列番号44)、GSGGG(配列番号45)、GGGSG(配列番号46)、及びGSSSG(配列番号47)、GGGGSGGGGSGGGGSGS(配列番号48)、GGGGSGS(配列番号49)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号50)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号51)、GGGGS(配列番号52)、GGGGSGGGGS(配列番号53)、GGGS(配列番号54)、GGGSGGGS(配列番号55)、GGGSGGGSGGGS(配列番号56)、GSSGGSGGSGG(配列番号57)、GGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号58)、GGGSSGGS(配列番号127)、及びGSからなる群から選択される、グリシン-セリンベースのリンカー、ならびに
(ii)GSTSGSGKPGSSEGST(配列番号59)、SKYGPPCPPCPAPEFLG(配列番号60)、GGSLDPKGGGGS(配列番号61)、PKSCDKTHTCPPCPAPELLG(配列番号62)、GKSSGSGSESKS(配列番号63)、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号64)、GSTSGSGKSSEGSGSTKG(配列番号65)、及びGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号66)からなる群から選択される、グリシンとセリン、及びリジン、トレオニン、またはプロリンのうちの少なくとも1つを含むリンカー、からなる群から選択される、請求項15~50のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項52】
(1)前記第1のポリペプチドが、配列番号30のアミノ酸配列を含み、(2)前記第2のポリペプチドが、配列番号31のアミノ酸配列を含み、(3)前記第3のポリペプチドが、配列番号32のアミノ酸配列を含む、請求項1~51のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項53】
(1)前記第1のポリペプチドが、配列番号120のアミノ酸配列を含み、(2)前記第2のポリペプチドが、配列番号37のアミノ酸配列を含み、(3)前記第3のポリペプチドが、配列番号32のアミノ酸配列を含む、請求項1~51のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項54】
(1)前記第1のポリペプチドが、配列番号144のアミノ酸配列を含み、(2)前記第2のポリペプチドが、配列番号37のアミノ酸配列を含み、(3)前記第3のポリペプチドが、配列番号32のアミノ酸配列を含む、請求項1~51のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体。
【請求項55】
請求項1~54のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項56】
請求項55に記載の薬学的組成物を含むキット。
【請求項57】
請求項1~54のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチドの前記第1のポリペプチド、前記第2のポリペプチド、及び前記第3のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【請求項58】
請求項57に記載の核酸を含むベクター。
【請求項59】
請求項58に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項60】
活性化可能なヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド複合体(HBPC)を生産する方法であって、
(a)請求項59に記載の宿主細胞を液体培地中、前記HBPCを生産するのに十分な条件下で培養することと、
(b)前記HBPCを回収することと、を含む、前記方法。
【請求項61】
対象における疾患を処置する方法であって、治療上有効量の請求項1~54のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体または請求項55に記載の薬学的組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項62】
前記対象が、ヒトである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記疾患が、がんである、請求項61または62に記載の方法。
【請求項64】
腫瘍増殖の阻害を必要とする対象において前記腫瘍増殖を阻害する際に使用するための、請求項1~54のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチドまたは請求項55に記載の薬学的組成物。
【請求項65】
がんを処置するための医薬の製造における、請求項1~54のいずれか1項に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体または請求項55に記載の薬学的組成物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年10月15日に出願された米国仮出願第63/256,410号、及び2022年8月9日に出願された同第63/370,895号の優先権の利益を主張するものであり、同文献は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0002】
EFS WEBを介して電子的に提出された配列表への参照
本願で提出された、電子的に提出された配列表(4681_001PC02_Seqlisting_ST26.xml、サイズ:179,444バイト、及び作成日:2022年10月13日)の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0003】
本開示は、活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド複合体(HBPC)ならびにその作製方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
腫瘍抗原特異的T細胞の発生及び活性化は、発達及び抗腫瘍活性の免疫介在性制御に関与する。これには、複数のT細胞共刺激受容体及びT細胞の負のレギュレーター、すなわち共抑制受容体が共同して作用して、T細胞の活性化、増殖、及びエフェクター機能の獲得または喪失を制御することが必要とされる。腫瘍特異的T細胞の応答は、腫瘍細胞の免疫回避機構に起因して、がん患者において発動及び維持することが困難である。しかしながら、がん療法にT細胞を利用する試みがなされている。かかるアプローチは、がん細胞上の表面標的抗原及びT細胞上のCD3等のT細胞表面抗原の両方に結合する、T細胞誘導二重特異性抗体を使用することを含む。一般に、各標的に結合することによって、T細胞誘導二重特異性物質は、T細胞をがん細胞に物理的に近接して保ち、T細胞タンパク質及び酵素が腫瘍細胞を攻撃してアポトーシスを引き起こすことを可能にし、それによってがん細胞を殺傷する。
【0005】
内因性のチロシンキナーゼ活性を示す受容体・膜貫通型糖タンパク質である、上皮成長因子受容体(EGFR)は、細胞増殖、分化、細胞生存、アポトーシス、血管新生、有糸分裂、及び転移を制御するシグナル伝達経路の活性化を含むがこれらに限定されない、多数の細胞プロセスを調節する(Atalay et al.,Ann.Oncology 14:1346-1363(2003)、Tsao and Herbst,Signal 4:4-9(2003)、Herbst and Shin,Cancer 94:1593-1611(2002)、Modjtahedi et al.,Br.J.Cancer 73:228-235(1996))。EGFRの過剰発現は、膀胱、脳、頭頸部、膵臓、肺、乳房、卵巣、結腸、前立腺、及び腎臓の癌を含めた、多数のヒトがんに関連する。EGFRは、悪性細胞に発現するよりも低いレベルで正常組織の細胞にも発現する。
【0006】
EGFR及びCD3に結合する二重特異性抗体は、T細胞媒介性毒性(すなわち、サイトカイン放出)及び腫瘍外(off-tumor)結合に起因するEGFR関連毒性を含めた欠点に悩まされる。さらに、二重特異性抗体の複雑な構造ならびに製造及びスケールアップ中の凝集レベルの高さに起因して、製造上の課題が生じる。したがって、改善された安全性プロファイルと同時に、改善された製造性を有する免疫療法の選択肢に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド複合体(HBPC)を提供し、該活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド複合体(HBPC)は、(a)(i)第1の重鎖可変ドメイン(VH1)及び第1の軽鎖可変ドメイン(VL1)を含み、該VH1及び該VL1が一緒に、CD3ポリペプチドに特異的に結合するT細胞分化抗原群(CD3)標的化ドメインを形成する、一本鎖可変断片(scFv)、(ii)第1のマスキング部分(MM1)、(iii)第1の切断可能な部分(CM1)、(iv)第2の重鎖可変ドメイン(VH2)、ならびに(v)第1の単量体Fcドメイン(Fc1)を含む、第1のポリペプチドと、(b)(i)第2の軽鎖可変ドメイン(VL2)であって、該VH2及び該VL2が一緒に、EGFRに特異的に結合するEGFR標的化ドメインを形成する、該第2の軽鎖可変ドメイン(VL2)、(ii)第2のマスキング部分(MM2)、ならびに(iii)第2の切断可能な部分(CM2)を含む、第2のポリペプチドと、(c)(i)第2の単量体Fcドメイン(Fc2)を含み、(ii)免疫グロブリン可変ドメインを含まない、第3のポリペプチドと、を含む。一部の態様では、CD3ポリペプチドは、CD3のイプシロン鎖である。
【0008】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、VH1は、(i)アミノ酸配列KYAMN(配列番号3)を含むVH CDR1、(ii)アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKD(配列番号4)を含むVH CDR2、及び(iii)アミノ酸配列HGNFGNSYISYWAY(配列番号5)を含むVH CDR3を含み、VL1は、(i)アミノ酸配列GSSTGAVTSGNYPN(配列番号6)を含むVL CDR1、(ii)アミノ酸配列GTKFLAP(配列番号7)を含むVL CDR2、及び(iii)アミノ酸配列VLWYSNRWV(配列番号8)を含むVL CDR3を含む。
【0009】
一部の態様では、scFvは、配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するVH1及び/または配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するVL1を含む。一部の態様では、scFvは、配列番号9のアミノ酸配列を有するVH1及び配列番号10のアミノ酸配列を有するVL1を含む。
【0010】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、VH2は、(i)アミノ酸配列NYGVH(配列番号15)を含むVH CDR1、(ii)アミノ酸配列VIWSGGNTDYNTPFTS(配列番号16)を含むVHCDR2、及び(iii)アミノ酸配列ALTYYDYEFAY(配列番号17)を含むVH CDR3を含む。一部の態様では、VH2は、配列番号21と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VH2は、配列番号21のアミノ酸配列を含む。
【0011】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、Fc1は、配列番号23と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、Fc1は、配列番号23のアミノ酸配列を含む。
【0012】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、第1のポリペプチドは、VH2とFc1との間に重鎖CH1ドメインをさらに含む。一部の態様では、第1のポリペプチドは、VH2とFc1との間に免疫グロブリンヒンジ領域をさらに含む。一部の態様では、第1のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端に、MM1-CM1-scFv-VH2-CH1-ヒンジ領域-Fc1の構造配置を含み、構造中、各「-」は独立して、直接的連結または間接的連結である。
【0013】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、第1のポリペプチドは、1つまたは複数のリンカーを含む。一部の態様では、リンカーは、約1~約20個のアミノ酸を含む。
【0014】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、VL2は、(i)アミノ酸配列RASQSIGTNIH(配列番号18)を含むVL CDR1、(ii)アミノ酸配列YASESIS(配列番号19)を含むVL CDR2、及び(iii)アミノ酸配列QQNNNWPTT(配列番号20)を含むVL CDR3を含む。一部の態様では、VL2は、配列番号22と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VL2は、配列番号22のアミノ酸配列を含む。
【0015】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、第2のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端に、MM2-CM2-VL2の構造配置を含み、構造中、各「-」は独立して、直接的連結または間接的連結である。一部の態様では、第2のポリペプチドは、1つまたは複数のリンカーを含む。一部の態様では、リンカーは、約1~約20個のアミノ酸を含む。
【0016】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、Fc2は、Fc1に結合する。一部の態様では、Fc2は、配列番号28と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、Fc2は、配列番号28のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、Fc2は、配列番号29のアミノ酸配列を含む。
【0017】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、第1のポリペプチド及び第3のポリペプチドのうちの少なくとも一方は、免疫グロブリンヒンジ領域をさらに含む。一部の態様では、第1のポリペプチド及び第3のポリペプチドは、免疫グロブリンヒンジ領域を含む。一部の態様では、第1のポリペプチドの免疫グロブリンヒンジ領域及び第3のポリペプチドの免疫グロブリンヒンジ領域は、同じアミノ酸配列を含む。一部の態様では、第1のポリペプチドの免疫グロブリンヒンジ領域及び第3のポリペプチドの免疫グロブリンヒンジ領域は、異なるアミノ酸配列を含む。
【0018】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、第3のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端に、ヒンジ領域-Fc2の構造配置で免疫グロブリンヒンジ領域を含む。
【0019】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び/または第3のポリペプチドは、1つまたは複数のリンカーを含む。一部の態様では、MM1は、リンカーL1を介してCM1に連結されている。一部の態様では、MM2は、リンカーL2を介してCM2に連結されている。一部の態様では、L1及びL2のアミノ酸配列は同じである。一部の態様では、L1及びL2のアミノ酸配列は異なる。
【0020】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、CM1及びCM2は各々、がんを有する対象の腫瘍微小環境に存在するプロテアーゼのための基質を含む。一部の態様では、CM1及びCM2は各々、同じプロテアーゼのための基質を含む。一部の態様では、CM1及びCM2は、異なるプロテアーゼのための基質を含む。一部の態様では、CM1及びCM2は各々独立して、表2に示されるプロテアーゼの群から選択されるプロテアーゼのための基質を含む。一部の態様では、CM1及びCM2のうちの少なくとも一方は、セリンプロテアーゼまたはマトリックスメタロペプチダーゼ(MMP)のための基質を含む。一部の態様では、CM1は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、及び/またはCM2は、配列番号14のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、CM1は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、CM2は、配列番号14のアミノ酸配列を含む。
【0021】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、MM1及び/またはMM2は、約5個のアミノ酸~約40個のアミノ酸を含む。一部の態様では、MM1は、配列番号1、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、または配列番号72からなる群から選択される。一部の態様では、MM2は、配列番号13のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、ここで、MM1は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0022】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、1つまたは複数のリンカーのうちの少なくとも1つは、(i)(GS)n(配列中、nは少なくとも1の整数である)、(GGS)n(配列中、nは少なくとも1の整数である)(例えば、約1~約20、または約1~約10の整数)、(GGGS)n(配列番号40)(配列中、nは少なくとも1の整数である)(例えば、約1~約20、または約1~約10の整数)、(GGGGS)n(配列番号126)(配列中、nは少なくとも1の整数である)(例えば、約1~約20、または約1~約10の整数)、(GSGGS)n(配列番号41)(配列中、nは少なくとも1の整数である)(例えば、約1~約20、または約1~約10の整数)、GSSGGSGGSG(配列番号12)、GGSG(配列番号42)、GGSGG(配列番号43)、GSGSG(配列番号44)、GSGGG(配列番号45)、GGGSG(配列番号46)、及びGSSSG(配列番号47)、GGGGSGGGGSGGGGSGS(配列番号48)、GGGGSGS(配列番号49)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号50)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号51)、GGGGS(配列番号52)、GGGGSGGGGS(配列番号53)、GGGS(配列番号54)、GGGSGGGS(配列番号55)、GGGSGGGSGGGS(配列番号56)、GSSGGSGGSGG(配列番号57)、GGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号58)、GGGSSGGS(配列番号127)、及びGSからなる群から選択される、グリシン-セリンベースのリンカー、ならびに(ii)GSTSGSGKPGSSEGST(配列番号59)、SKYGPPCPPCPAPEFLG(配列番号60)、GGSLDPKGGGGS(配列番号61)、PKSCDKTHTCPPCPAPELLG(配列番号62)、GKSSGSGSESKS(配列番号63)、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号64)、GSTSGSGKSSEGSGSTKG(配列番号65)、及びGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号66)からなる群から選択される、グリシンとセリン、及びリジン、トレオニン、またはプロリンのうちの少なくとも1つを含むリンカーからなる群から選択される。
【0023】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、(1)第1のポリペプチドは、配列番号30のアミノ酸配列を含み、(2)第2のポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列を含み、(3)第3のポリペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列を含む。
【0024】
本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、(1)第1のポリペプチドは、配列番号120のアミノ酸配列を含み、(2)第2のポリペプチドは、配列番号37のアミノ酸配列を含み、(3)第3のポリペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列を含む。
【0025】
本明細書では、本明細書に開示の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物が開示される。
【0026】
本明細書ではまた、本明細書に開示の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を含む、キットも開示される。
【0027】
本明細書ではまた、本明細書に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチドの第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸も開示される。本明細書ではさらに、記載される核酸を含むベクター及び該ベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0028】
本明細書ではまた、活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体を生産する方法も開示され、該方法は、(a)宿主細胞を液体培地中、活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体を生産するのに十分な条件下で培養することと、(b)活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体を回収することと、を含む。
【0029】
本明細書ではまた、対象における疾患を処置する方法も開示され、該方法は、治療上有効量の本明細書に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体または本明細書に記載の薬学的組成物を対象に投与することを含む。一部の態様では、対象は、ヒトである。一部の態様では、疾患は、がんである。一部の態様では、活性化可能な二重特異性ポリペプチドまたは薬学的組成物は、腫瘍増殖の阻害を必要とする対象において腫瘍増殖を阻害する際に使用するためのものである。
【0030】
本明細書ではまた、がんを処置するための医薬の製造における、本明細書に記載の活性化可能な二重特異性ポリペプチド複合体または本明細書に記載の薬学的組成物の使用も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド複合体(HBPC)の概略図である。
図2A】CI106(活性化可能なダブルアーム二価抗CD3、抗EGFR二重特異性抗体対照)、複合体-57(活性化可能なHBPC)、及び複合体-67(活性化可能なHBPC)、ならびに活性化CI106、活性化複合体-57、及び活性化複合体-67によるEGFRへの結合を示す。
図2B】CI106(対照)、複合体-57(活性化可能なHBPC)、複合体-67(活性化可能なHBPC)、ならびに活性化CI106、活性化複合体-57、及び活性化複合体-67によるCD3への結合を示す。
図3A】活性化CI106(対照)、活性化複合体-57、及び活性化複合体-67、ならびにCI106(ダブルアーム二価二重特異性対照構築物)及び複合体-57での処理に次ぐHT29細胞に対する細胞傷害作用を示す。
図3B】CI106(対照)、複合体-67、活性化CI106(対照)、及び活性化複合体-67での処理に次ぐHT29細胞に対する細胞傷害作用を示す。
図4】ビヒクル、1.0mg/kgのCI106(対照)、ならびに0.2、0.6、及び1.8mg/kgの複合体-67での処置に次ぐ時間の関数としてのHT29-luc2異種移植腫瘍モデルにおける腫瘍体積を示す。
図5】ビヒクル、0.3mg/kg及び1mg/kgの活性化複合体-67及び複合体-67での処置に次ぐ時間の関数としてのHCT116異種移植腫瘍モデルにおける腫瘍体積を示す。
図6】CI106(対照)、複合体-57、及び複合体-67についての単量体パーセンテージ(%)対濃度を示す。
図7】A~Cは、HT29細胞(A)、HCT116細胞(B)、またはJurkat細胞(C)の表面上に発現したEGFR及びCD3へのCI107の結合のフローサイトメトリーによる評定を示す。見かけ上のKdは、HT29細胞における二連の実験及びJurkat細胞における三連の実験から算出した。
図8A】HCT116-Luc2細胞におけるCI107によって媒介される細胞傷害作用パーセントを示す。48時間の培養後、HCT116-Luc2の細胞生存率及び細胞傷害作用を未処理の対照と比べて測定した。
図8B】HT29-Luc2細胞におけるCI107によって媒介される細胞傷害作用パーセントを示す。48時間の培養後、HT29-Luc2の細胞生存率及び細胞傷害作用を未処理の対照と比べて測定した。
図8C】HCT116-Luc2細胞におけるCI107によって媒介される細胞傷害作用パーセントを示す。16時間の培養後、CD69発現をフローサイトメトリーによって測定した。MFI、平均蛍光強度。
図8D】HT29-Luc2細胞におけるCI107によって媒介される細胞傷害作用パーセントを示す。16時間の培養後、CD69発現をフローサイトメトリーによって測定した。MFI、平均蛍光強度。
図9A】16時間の培養後に測定した、CI107での処理に次ぐサイトカイン放出を示す(IFN-γ)。
図9B】16時間の培養後に測定した、CI107での処理に次ぐサイトカイン放出を示す(IL-2)。
図9C】16時間の培養後に測定した、CI107での処理に次ぐサイトカイン放出を示す(IL-6)。
図9D】16時間の培養後に測定した、CI107での処理に次ぐサイトカイン放出を示す(MCP-1)。
図9E】16時間の培養後に測定した、CI107での処理に次ぐサイトカイン放出を示す(TNF-α)。
図10】A~Bは、HT29-Luc2腫瘍を保有し、ヒトPBMCを移植されたマウスにおける試験TCBでの処置後の腫瘍体積を示す。(A)マウスをビヒクル(PBS)または0.3mg/kgのCI020、CI011、CI040、もしくはCI048(1群当たりn=8)で週1回、3週間にわたって処置した。腫瘍体積を週2回測定した。(B)HT29-Luc2腫瘍を保有し、ヒトPBMCを移植されたNSGマウスをビヒクルまたは1mg/kgのCI020、CI011、CI040、もしくはCI048で処置した。投与から7日後に腫瘍を採取し、CD3に対する免疫組織化学的検査を実施した。濃い染色はCD3+細胞を示す。
図11】A~Bは、HT29(A)及びHCT116(B)異種移植腫瘍におけるCI107での週1回、3週間の処置に次ぐ腫瘍体積を示す。腫瘍体積を週2回測定した。p<0.5、**p<0.01、****p<0.0001。
図12A】CI107の投与から8時間後に測定したIL-6のレベルを示す。
図12B】CI107の投与から8時間後に測定したIFN-γのレベルを示す。
図12C】CI107の投与から48時間後に血清生化学分析によって測定したアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルを示す。
図12D】抗イディオタイプのキャプチャー及び抗ヒトFcの検出を使用したELISAによって測定したAct-CI107及びCI107の血漿中濃度を示す。CI107の線は、2.0mg/kgのCI107を投与した3匹の個々の動物からのデータを表し、Act-TCBの線は、0.06mg/kgまたは0.18mg/kgのAct-TCBを投与した単一の動物を表す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示がより容易に理解され得るように、ある特定の用語を最初に定義する。本願で使用されるとき、本明細書で別途明示的に規定される場合を除き、以下の用語の各々は、下記に定められる意味を有するものとする。追加の定義は、本願全体を通して定められる。
【0033】
定義
本明細書で使用されるとき、「ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド複合体」及び「HBPC」という用語は、2つの異なる生物学的標的に結合することができる結合ドメインを有する複合体を一緒に形成する一組のポリペプチドを指して本明細書で互換的に使用される。
【0034】
「ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド複合体」または「HBPC」という用語に関連して使用される場合の「活性化可能な」という用語は、本明細書で、HBPCの構造に付加されたマスキング部分の存在によって結合活性が損なわれているHBPCを指す。「活性化」及び「act-」という用語は各々、活性化HBPCを指して使用され得る。「活性化」及び「マスクされていない」という用語は、本明細書で互換的に使用される。
【0035】
本明細書で使用されるとき、「EGFR」という用語は、受容体・膜貫通型糖タンパク質及びタンパク質キナーゼスーパーファミリーのメンバーを指す。ヒト上皮成長因子受容体は、c-erb B-1がん原遺伝子によってコードされる170kDaの膜貫通型受容体であり、内因性のチロシンキナーゼ活性を示す(Modjtahedi et al.,Br.J.Cancer 73:228-235(1996)、Herbst and Shin,Cancer 94:1593-1611(2002))。EGFRの既知のアイソフォーム及びバリアント(例えば、選択的RNA転写物、切り詰めバージョン、多型等)もまた存在し、これらは本明細書における使用に企図される。EGFRは、細胞増殖、分化、細胞生存、アポトーシス、血管新生、有糸分裂、及び転移を制御するシグナル伝達経路の活性化を含むがこれらに限定されないチロシンキナーゼ媒介性シグナル伝達経路を介して、多数の細胞プロセスを調節する(Atalay et al.,Ann.Oncology 14:1346-1363(2003)、Tsao and Herbst,Signal 4:4-9(2003)、Herbst and Shin,Cancer 94:1593-1611(2002)、Modjtahedi et al.,Br.J.Cancer 73:228-235(1996))。EGFRの過剰発現は、膀胱、脳、頭頸部、膵臓、肺、乳房、卵巣、結腸、前立腺、及び腎臓の癌を含めた、多数のヒトがんに関連する。EGFRは、悪性細胞に発現するよりも低いレベルで正常組織の細胞にも発現する。例となる抗EGFR抗原結合タンパク質には、ヒト野生型EGFR(NCBI受託番号NG_007726.E)、ヒト野生型EGFR転写物バリアント1(NCBI受託番号NP_005219.2)、ヒト野生型EGFR転写物バリアント2(NCBI受託番号NP_958439.1)、ヒト野生型EGFR転写物バリアント3(NCBI受託番号NP_958440.1)、ヒト野生型EGFR転写物バリアント4(NCBI受託番号NP_958441.1)、ヒト野生型EGFR転写物バリアント5(NCBI受託番号NP_001333826.1)、ヒト野生型EGFR転写物バリアント6(NCBI受託番号NP_001333827.1)、ヒト野生型EGFR転写物バリアント7(NCBI受託番号NP_001333828.1)、ヒト野生型EGFR転写物バリアント8(NCBI受託番号NM_001346941.2)、ヒト野生型EGFR転写物バリアントEGFRvIII(NCBI受託番号NP_001333870.1)等が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で使用される「CD3」または「分化抗原群3」という用語は、T細胞受容体複合体のサブユニットである6本の鎖でできたタンパク質複合体を指す(Janeway et al.,p.166,9th ed.)。TCR α:βヘテロ二量体は、CD3サブユニットと会合して、TCR細胞表面抗原受容体を完成させる。2本のCD3ε鎖、CD3γ鎖、及びCD3δ鎖、ならびにCD3ζ鎖のホモ二量体がT細胞受容体複合体を完成させ、これが主要組織適合性複合体クラスI及びIIに結合したペプチドの認識に関与し、T細胞活性化に影響を及ぼす。CD3抗原は、成熟Tリンパ球及び胸腺細胞のサブセットに発現する。本明細書に開示されるCD3ポリペプチドに特異的に結合するCD3標的化ドメインは、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含めた任意の脊椎動物源からものであり得る。この用語は、「完全長」のプロセシングされていないCD3(例えば、プロセシングされていないまたは未修飾のCD3εまたはCD3γ)、ならびに細胞におけるプロセシングからもたらされる任意の形態のCD3を包含する。この用語はまた、CD3の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたはアレルバリアントも包含する。本明細書に記載の抗CD3標的化ドメインは、ヒト野生型CD3E(NCBI受託番号NM_000733.3)に特異的に結合することができる。
【0037】
本明細書で使用される「T細胞」という用語は、様々な細胞媒介性免疫反応に関与する胸腺由来のリンパ球として定義される。本明細書で使用される「制御性T細胞」という用語は、
CD4CD25FoxP3 T細胞を指す。「Treg」は、制御性T細胞に対する本明細書で使用される略号である。
【0038】
本明細書で使用される「ヘルパーT細胞」という用語は、CD4 T細胞を指す。ヘルパーT細胞は、MHCクラスII分子に結合した抗原を認識する。Th1及びTh2の少なくとも2種類のヘルパーT細胞が存在し、これらは異なるサイトカインを産生する。ヘルパーT細胞は、活性化されるとCD25となるが、FoxP3となるのは一過性にすぎない。
【0039】
本明細書で使用される「細胞傷害性T細胞」という用語は、CD8 T細胞を指す。細胞傷害性T細胞は、MHCクラスI分子に結合した抗原を認識する。
【0040】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗原結合タンパク質(例えば、抗体)を抗原に結合させることに関与する、抗原結合タンパク質(例えば、抗体)の重鎖または軽鎖のドメインを指す。抗体等の抗原結合タンパク質の重鎖及び軽鎖(それぞれVH及びVL)の可変領域または可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が散在する、超可変領域(HVR)または相補性決定領域(CDR)等の、超可変領域(regions of hypervariability)(または超可変領域(hypervariable regions)(これは構造的に規定されたループの配列及び/または形態が高度に可変であり得る))にさらに細分され得る。一般に、各重鎖可変領域において3つのHVR(HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3)またはCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、及び各軽鎖可変領域において3つのHVR(HVR-L1、HVR-L2、HVR-L3)またはCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)が存在する。「フレームワーク領域」及び「FR」は、当該技術分野において重鎖及び軽鎖の可変領域の非HVRまたは非CDR部分を指すことが知られている。一般に、各完全長重鎖可変領域において4つのFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4)、及び各完全長軽鎖可変領域において4つのFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4)が存在する。各VH及びVL内で、3つのHVRまたはCDR及び4つのFRは、典型的に、アミノ末端からカルボキシ末端に、以下の順序で配置される:HVRの場合はFR1、HVR1、FR2、HVR2、FR3、HVR3、FR4、またはCDRの場合はFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(Chothia and Lesk J.Mot.Biol.,195,901-917(1987)も参照されたい)。抗原結合特異性を付与するには単一のVHまたはVLドメインで十分であり得る。加えて、特定の抗原に結合する抗体を、その抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使用して単離して、相補的VLまたはVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングすることができる。例えば、Portolano et al.J.Immunol.150:880-887(1993)、Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照されたい。
【0041】
本明細書で使用される「重鎖可変領域」(VH)という用語は、重鎖HVR-H1、FR-H2、HVR-H2、FR-H3、及びHVR-H3を含む領域を指す。例えば、重鎖可変領域は、重鎖CDR-H1、FR-H2、CDR-H2、FR-H3、及びCDR-H3を含んでもよい。一部の態様では、重鎖可変領域はまた、FR-H1の少なくとも一部分及び/またはFR-H4の少なくとも一部分も含む。
【0042】
本明細書で使用される「重鎖定常領域」という用語は、少なくとも3つの重鎖定常ドメイン、すなわちC1、C2、及びC3を含む領域を指す。非限定的な例となる重鎖定常領域には、γ、δ、及びαが含まれる。非限定的な例となる重鎖定常領域にはまた、ε及びμも含まれる。
【0043】
本明細書で使用される「軽鎖可変領域」(VL)という用語は、軽鎖HVR-L1、FR-L2、HVR-L2、FR-L3、及びHVR-L3を含む領域を指す。一部の態様では、軽鎖可変領域は、軽鎖CDR-L1、FR-L2、CDR-L2、FR-L3、及びCDR-L3を含む。一部の態様では、軽鎖可変領域はまた、FR-L1及び/またはFR-L4も含む。
【0044】
本明細書で使用される「軽鎖定常領域」という用語は、軽鎖定常ドメイン、すなわちCを含む領域を指す。非限定的な例となる軽鎖定常領域には、λ及びκが含まれる。
【0045】
本明細書で使用される「軽鎖」(LC)という用語は、リーダー配列の有無にかかわらず、少なくとも軽鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。一部の態様では、軽鎖は、軽鎖定常領域の少なくとも一部分を含む。本明細書で使用される「完全長軽鎖」という用語は、リーダー配列の有無にかかわらず、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0046】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、または免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に特異的に結合する(それと免疫反応を起こす)抗原結合部位を含有する分子を指す。抗体またはポリペプチドの「抗原結合部分」(別称「抗原結合断片」)とは、標的抗原に特異的に結合する抗体またはポリペプチドの1つまたは複数の部分を指す。抗体及び抗原結合部分には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ドメイン抗体、一本鎖抗体、Fab、及びF(ab’)断片、scFv、Fd断片、Fv断片、単一ドメイン抗体(sdAb)断片、二重親和性標的変更(dual-affinity re-targeting)抗体(DART)、二重可変ドメイン免疫グロブリン;単離された相補性決定領域(CDR)、及び2つ以上の単離されたCDRの組み合わせ(これらは任意選択で合成リンカーによって連結され得る)、ならびにFab発現ライブラリーが含まれるが、これらに限定されない。非ヒト抗体、例えば、ラクダ科動物抗体が、ヒトにおけるその免疫原性を低減するために組換え法によってヒト化されてもよい。
【0047】
本明細書で指定されるCDR配列は、Abhinandan,K.R.and Martin,A.C.R.(2008)“Analysis and improvements to Kabat and structurally correct numbering of antibody variable domains”,Molecular Immunology,45,3832-3839(同文献は参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されるようなKabat番号付けシステムに従って決定される(すなわち、「Kabat CDR」)。Kabat CDRは、CDR-L1:残基L24~L34;CDR-L2:残基L50~L56;CDR-L3:残基L89~L97;CDR-H1:残基H31~H35;CDR-H2:残基H50~H65;及びCDR-H3:残基H95~H102として定義され、ここで、「L」は軽鎖可変ドメインを指し、「H」は重鎖可変ドメインを指す。
【0048】
「特異的に結合する」または「免疫特異的に(immunospecifically)結合する」とは、標的化ドメイン、抗体または抗原結合断片が、所望の抗原の1つまたは複数の抗原決定基と反応し、かつ他のポリペプチドとは反応しないか、またはそれよりはるかに低い親和性(Kd>10-6)(Kdが小さいほど親和性がより高いことを表す)で結合することを意味する。選択のポリペプチドの免疫学的結合特性は、当該技術分野で周知の方法を使用して定量することができる。1つのかかる方法は、抗原結合部位/抗原複合体の形成及び解離の速度を測定することを伴い、ここで、それらの速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、及び両方向の速度に等しく影響を及ぼす幾何学的パラメータに依存する。故に、「オン速度定数」(kon)及び「オフ速度定数」(koff)のいずれも、濃度ならびに会合及び解離の実際の速度の計算によって決定することができる(Nature 361:186-87(1993)を参照されたい)。koff/konの比は、親和性に関連しない全てのパラメータの解除を可能にし、解離定数Kdに等しい(全般的に、Davies et al.(1990)Annual Rev Biochem 59:439-473を参照されたい)。一部の態様では、対応する抗原に特異的に結合する抗原標的化ドメイン、抗体、または抗原結合断片は、標的抗原に対して約10μM未満、一部の態様では約100μM未満のKdを示す。
【0049】
免疫グロブリンは、IgA、分泌型IgA、IgG、及びIgMを含むがこれらに限定されない公知のアイソタイプのうちのいずれかに由来し得る。IgGサブクラスもまた当業者に周知されており、これにはヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4が含まれるが、これらに限定されない。「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域の遺伝子によってコードされる抗体クラスまたはサブクラス(例えば、IgMまたはIgG1)を指す。
【0050】
「抗抗原(anti-antigen)」抗体またはポリペプチドとは、当該抗原に特異的に結合する抗体またはポリペプチドを指す。例えば、抗CD3ポリペプチドは、CD3に特異的に結合する。
【0051】
本明細書で使用されるとき、「MM」及び「マスキング部分」という用語は、標的化ドメインがその対応する抗原に結合することを妨害するペプチドを指して本明細書で互換的に使用される。例えば、MM1は、第1の標的化ドメインが第1の標的に結合することを妨害するペプチドであり、MM2は、第2の標的化ドメインが第2の標的に結合することを妨害するペプチドである。マスキング部分が、標的化ドメインがその対応する標的に結合することを妨害する程度は、その「マスキング効率」によって定量される。「マスキング効率」及び「ME」という用語は、以下のように決定される比率を指して本明細書で互換的に使用される:
ME=EC50、活性化可能なHBPC(すなわち、プロテアーゼによって切断されない)
EC50、活性化HBPC
【0052】
本明細書で使用されるとき、「CM」及び「切断可能な部分」という用語は、腫瘍細胞において上方制御されるプロテアーゼによる切断に感受性があるペプチド基質を指して互換的に使用される。CMのプロテアーゼ媒介性切断は、活性化可能なHBPCの構造からのMMの解放をもたらし、それによって、各々対応する「活性化された」(すなわち、マスクされていない)第1の標的化ドメイン及び/または第2の標的化ドメインがそれぞれの標的に自由に結合する、「活性化された」(すなわち、マスクされていない)生成物が生成される。
【0053】
本明細書で使用される「単離されたポリヌクレオチド」という用語は、組換えポリヌクレオチドまたは合成由来のポリヌクレオチドであって、その起源に基づいて、「単離されたポリヌクレオチド」が、(1)「単離されたポリヌクレオチド」が自然界で見られる、ポリヌクレオチドの全てまたは一部分に関連しないか、(2)自然界では連結されないポリヌクレオチドに作動可能に連結されているか、または(3)より大きな配列の一部として自然界に存在しないものを指す。本開示によるポリヌクレオチドには、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドをコードする核酸分子が含まれる。
【0054】
本明細書で使用される「作動可能に連結された」という用語は、そのように説明される構成要素の位置が、それらの意図される様態でそれらが機能することを可能にする関係にあることを指す。コード配列に「作動可能に連結された」制御配列は、制御配列と適合性の条件下でコード配列の発現が達成されるような方式でライゲーションされている。
【0055】
本明細書で考察されるとき、本明細書に記載のアミノ酸配列(すなわち、各参照配列)における軽微な変化は、結果として生じる類似配列が参照配列と少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、最も好ましくは99%の配列同一性を維持する限り、本開示により包含されることが企図される。特に、保存的アミノ酸置換が企図される。保存的置換は、アミノ酸の側鎖の性質に関して関連するアミノ酸のファミリー内で起こるものである。アミノ酸は、下記のファミリーに分類され得る:(1)酸性アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸であり、(2)塩基性アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジンであり、(3)非極性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンであり、(4)極性非荷電アミノ酸は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンである。親水性アミノ酸には、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、セリン、及びトレオニンが含まれる。疎水性アミノ酸には、アラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、及びバリンが含まれる。アミノ酸の他のファミリーには、(i)脂肪族ヒドロキシファミリーである、セリン及びトレオニン、(ii)アミド含有ファミリーである、アスパラギン及びグルタミン、(iii)脂肪族ファミリーである、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン、ならびに(iv)芳香族ファミリーである、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンが含まれる。例えば、本明細書に記載のHBPCポリペプチド及びポリペプチド複合体内で、ロイシンとイソロイシンまたはバリンとの、アスパラギン酸とグルタミン酸との、トレオニンとセリンとの単独の置換、またはあるアミノ酸と構造的に関連するアミノ酸との類似の置換は、とりわけ置換がCDRまたはフレームワーク領域内のアミノ酸を伴わない場合、結果として生じる分子の結合または特性に大きな影響を有することはないと予想するのが妥当である。アミノ酸変化が機能的ポリペプチド複合体をもたらすかどうかは、結果として生じる分子、すなわち、結果として生じる類似配列の比活性をアッセイすることによって容易に決定することができる。アッセイは、本明細書に詳述される。類似体の好ましいアミノ末端及びカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界付近に存在する。構造的ドメイン及び機能的ドメインは、公開または専有配列データベースとのヌクレオチド及び/またはアミノ酸配列データの比較によって同定することができる。好ましくは、コンピュータによる比較方法を使用して、構造及び/または機能が知られている他のタンパク質に存在する配列モチーフまたは予測されるタンパク質立体構造ドメインが同定される。既知の3次元構造へと折り畳まれるタンパク質配列を同定するための方法が知られている(Bowie et al.Science 253:164(1991))。故に、上述の例は、本開示による構造的ドメイン及び機能的ドメインを画定するために使用され得る配列モチーフ及び構造的立体構造を当業者が認識できることを示す。
【0056】
保存的アミノ酸置換は、参照配列の構造特性を実質的に変化させるべきではない(例えば、代替のアミノ酸は、参照配列に存在するヘリックスを切断する、または参照配列を特徴付ける他の種類の二次構造を破壊する傾向があるべきではない)。当該技術分野で認識されるポリペプチド二次構造及び三次構造の例は、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.,W.H.Freeman and Company,New York(1984))、Introduction to Protein Structure(C.Branden and J.Tooze,eds.,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991))、及びThornton et al.Nature 354:105(1991)に記載される。
【0057】
例となるアミノ酸置換にはまた、(1)CMを含む切断可能なリンカー以外における、活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの領域におけるタンパク質分解に対する感受性を低減する、(2)酸化に対する感受性を低減する、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させる、(4)抗原に対する結合親和性を変化させる、及び(4)かかる類似体の他の物理化学的特性または機能的特性を付与するかまたは改変するものが含まれる。かかるアミノ酸置換は、本明細書に記載のアッセイを使用した既知の変異誘発法及び/または指向性分子進化法を使用して同定されてもよい。例えば、国際公開第WO2001/032712号、米国特許第7,432,083号、米国公開第2004/0180340号、及び米国特許第6,297,053号を参照されたく、同文献の各々は参照により本明細書に援用される。類似体は、活性化可能なHBPC内の参照配列に1つまたは複数の変異を導入することによって調製されてもよい。例えば、参照配列において(好ましくは、分子間接触を形成するドメイン(複数可)の外側にあるポリペプチドの部分において)単一または複数のアミノ酸置換を行ってもよい。
【0058】
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される」または「薬理学的に適合性の」とは、生物学的にまたは別様に望ましくないことのない材料を意味し、例えば、その材料は、いずれの顕著な望ましくない生物学的作用を引き起こすことも、組成物中に含まれる組成物の他の構成成分のいずれとも有害な様態で相互作用することもなく、個体または対象に投与される薬学的組成物に組み込まれてもよい。薬学的に許容される担体または賦形剤は、例えば、毒性試験及び製造試験の所要の基準を満たしたものであり、及び/または米国食品医薬品局によって作成される不活性成分ガイドに含まれている。
【0059】
本明細書で使用される「患者」には、がんに罹患したいずれの患者も含まれる。「対象」及び「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用される。
【0060】
「がん」、「がん性」、または「悪性」という用語は、典型的には無制御な細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理的状態を指すか、または説明する。がんの例としては、例えば、切除不能または転移性黒色腫等の黒色腫、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、癌腫、及び肉腫が挙げられる。かかるがんのより具体的な例としては、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病(Ph+ ALL)、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、消化管癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、神経芽細胞腫、膵臓癌、多形膠芽腫、子宮頸癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、及び頭頸部癌、胃癌、胚細胞腫瘍、小児肉腫、副鼻腔ナチュラルキラー、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、及び慢性リンパ性白血病(CML)が挙げられる。
【0061】
本明細書で使用される「腫瘍」という用語は、良性(非がん性)または前がん性病変を含めた悪性(がん性)のいずれであれ、過剰な細胞成長または増殖からもたらされる任意の組織塊を指す。
【0062】
「投与する」とは、当業者に既知の種々の方法及び送達系のうちのいずれかを使用した、治療剤を含む組成物の対象への物理的導入を指す。本明細書に開示される製剤の投与経路には、例えば注射または注入による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄、または他の非経口投与経路が含まれる。本明細書で使用される「非経口投与」という語句は、通常は注射による、経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内(intrasternal)注射及び注入、ならびにインビボエレクトロポレーションを含む。一部の態様では、製剤は、非経口経路を介して投与され、一部の態様では経口で投与される。他の非経口経路には、例えば、鼻腔内、膣、直腸内、舌下、または局所への、局所、上皮、または粘膜投与経路が含まれる。投与はまた、例えば、1回、複数回、及び/または1つもしくは複数の長期間にわたって実施することができる。
【0063】
対象の「処置」または「療法」は、疾患に関連する症状、合併症もしくは病態、または生化学的兆候を好転させる、緩和する、改善させる、阻害する、その進行、発症、重症度、もしくは再発を減速させることを目的とした、対象に対して実施される任意の種類の介入もしくは過程、または対象への活性薬剤の投与を指す。
【0064】
本明細書で使用されるとき、「有効な処置」とは、有益な効果、例えば、疾患または障害の少なくとも1つの症状の改善をもたらす処置を指す。有益な効果は、ベースラインを上回る改善、すなわち、本方法による療法の開始前に行われた測定または観察を上回る改善の形態をとることができる。有益な効果はまた、腫瘍のマーカーの有害な進行の停止、減速、遅延、または安定化の形態をとることもできる。有効な処置は、がんに関連する少なくとも1つの症状の緩和を指す場合がある。かかる有効な処置は、例えば、患者の疼痛を低減し得る、病変のサイズ及び/または数を低減し得る、腫瘍の転移を低減もしくは予防し得る、及び/または腫瘍増殖を減速させ得る。
【0065】
「有効量」という用語は、所望の生物学的結果、治療結果、及び/または予防結果をもたら薬剤の量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状、もしくは原因のうちの1つもしくは複数の低減、改善、一時的緩和、軽減、遅延、及び/または緩和、または生体系の任意の他の所望の変化であり得る。固形腫瘍に関して、有効量は、腫瘍の縮小及び/または腫瘍の増殖速度の減少(腫瘍増殖の抑制等)を引き起こすか、または他の望まれない細胞増殖を遅延させるのに十分な量を含む。一部の態様では、有効量は、腫瘍再発を予防または遅延させるのに十分な量である。有効量は、1回または複数回の投与で投与され得る。有効量の薬物または組成物は、(i)がん細胞の数を低減し得る、(ii)腫瘍サイズを低減し得る、(iii)周囲の臓器へのがん細胞の浸潤をある程度阻害、遅延、減速し得、停止させ得る、(iv)腫瘍転移をある程度阻害、減速させ得、停止させ得る、(v)腫瘍増殖を阻害し得る、(vi)腫瘍の発生及び/または再発を予防もしくは遅延させ得る、及び/または(vii)がんに関連する症状のうちの1つもしくは複数をある程度緩和し得る。
【0066】
「免疫応答」とは、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞、及び好中球)、ならびにこれらの細胞のうちのいずれかまたは肝臓、脾臓、及び/または骨髄によって産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン、及び補体を含む)による、侵入病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、がん性もしくは他の異常な細胞、または、自己免疫状態もしくは病的炎症の場合には、正常なヒト細胞もしくは組織の選択的標的化、それへの結合、それへの損傷、その破壊、及び/または脊椎動物の身体からのその排除をもたらす作用を指す。
【0067】
選択肢(例えば、「または」)の使用は、選択肢のうちの1つ、両方、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味するように理解されるべきである。本明細書で使用されるとき、不定冠詞「a」または「an」は、任意の列挙されるまたは挙げられる構成要素のうちの「1つまたは複数」を指すように理解されるべきである。
【0068】
本明細書で使用される場合の「及び/または」という用語は、2つの明記される特徴または構成要素の各々が、他方の有無にかかわらず明確に開示されていると解釈されるべきである。故に、本明細書で「A及び/またはB」等の語句において使用される「及び/または」という用語は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/またはC」等の語句において使用される「及び/または」という用語は、以下の態様の各々、すなわち、A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)を包含することが意図される。
【0069】
態様が「~を含む」という言い回しとともに本明細書に記載される場合はいずれも、「~からなる」及び/または「~から本質的になる」という用語で記載される、その他の点では類似した態様もまた提供されることが理解される。
【0070】
「約」という用語は、当業者によって決定される特定の値または組成物に対して許容される誤差範囲内である値または組成物を指し、これは値または組成物がどのように測定または決定されるか、すなわち、測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」または「~から本質的になる」とは、当該技術分野における慣習に従って、1標準偏差以内または1標準偏差超を意味し得る。代替として、「約」または「~から本質的になる」とは、最大10%または20%の範囲(すなわち、±10%または±20%)を意味し得る。例えば、約3mgは、2.7mg~3.3mgの間(10%の場合)または2.4mg~3.6mgの間(20%の場合)の任意の数を含み得る。さらに、特に生物系またはプロセスに関して、この用語は、値の最大で一桁、または最大5倍を意味し得る。本明細書及び特許請求の範囲において特定の値または組成物が提供される場合、別途定めのない限り、「約」の意味は、その特定の値または組成物に対して許容される誤差範囲内であることが想定されるべきである。
【0071】
本明細書に記載されるとき、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲、または整数範囲は、別途指示されない限り、列挙される範囲内の任意の整数の値、及び適切な場合、その分数(整数の10分の1及び100分の1等)を含むことが理解されるべきである。
【0072】
別途規定されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press、The Dictionary of Cell and Molecular Biology,5th ed.,2013,Academic Press、及びthe Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,2006,Oxford University Pressは、本開示で使用される用語の多くについての一般辞書を当業者に提供する。
【0073】
単位、接頭辞、及び記号は、それらの国際単位系(SI)により承認される形態で表される。数値範囲は、その範囲を画定する数を含む。本明細書で提供される見出しは、本明細書を全体として参照することによって得ることができる、本開示の種々の態様の限定ではない。したがって、上記で定義された用語は、本明細書を全体的に参照することによってより十分に定義される。
【0074】
本開示の活性化可能なポリペプチドの概略図(例えば、図1)は、排他的であることは意図されない。リンカー、スペーサー、及びシグナル配列等の他の配列要素が、かかる概略図において列挙される配列要素の前、後、またはそれらの間に存在してもよい。MM及びCMは、抗体またはポリペプチドのVLの代わりに抗体またはポリペプチドのVHに連結され得、逆も成立することもまた理解されるべきである。
【0075】
本開示の種々の態様は、以下の小節にさらに詳細に記載される。
【0076】
活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド複合体
本開示は、活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド(HBPC)を提供し、該活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド(HBPC)は、(a)(i)第1の重鎖可変ドメイン(VH1)及び第1の軽鎖可変ドメイン(VL1)を含み、該VH1及び該VL1が一緒に、CD3ポリペプチドに特異的に結合するT細胞分化抗原群(CD3)標的化ドメインを形成する、一本鎖可変断片(scFv)、(ii)第1のマスキング部分(MM1)、(iii)第1の切断可能な部分(CM1)、(iv)第2の重鎖可変ドメイン(VH2)、ならびに(v)第1の単量体Fcドメイン(Fc1)を含む、第1のポリペプチドと、(b)(i)第2の軽鎖可変ドメイン(VL2)であって、該VH2及び該VL2が一緒に、EGFRに特異的に結合するEGFR標的化ドメインを形成する、該第2の軽鎖可変ドメイン(VL2)、(ii)第2のマスキング部分(MM2)、ならびに(iii)第2の切断可能な部分(CM2)を含む、第2のポリペプチドと、(c)(i)第2の単量体Fcドメイン(Fc2)を含み、(ii)免疫グロブリン可変ドメインを含まない、第3のポリペプチドと、を含み、ここで、MM1は、CD3標的化ドメインがCD3ポリペプチドに結合することを妨害するペプチドであり、MM2は、EGFR標的化ドメインがEGFRに結合することを妨害するペプチドである。本明細書の実施例で実証されるように、本開示の活性化可能なHBPCは、耐凝集性、濃度依存的凝集レベルの低さ(これは、比較的高濃度の活性化可能なHBPC生成物が生成され得る精製中に特に有益である)、活性化されたときの効力の高さ、及び改善された抗腫瘍活性(活性化されたとき)を含めて、当該技術分野で既知の活性化可能なまたはマスクされた分子に勝る利点を提供する。
【0077】
本明細書の上記に記載されるとき、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの第1のポリペプチドに存在する構成要素の中には、CD3ポリペプチドに特異的に結合する一本鎖可変断片(scFv)を含む、T細胞CD3標的化ドメインがある。一部の態様では、CD3ポリペプチドは、CD3のイプシロン鎖である。一部の態様では、本明細書で用いられるscFv(抗CD3 scFv)は、重鎖可変ドメイン(VH1)及び軽鎖可変ドメイン(VL1)を含む。
【0078】
VH1は、可変重鎖CDR1(VH CDR1、本明細書でCDRH1とも称される)、可変重鎖CDR2(VH CDR2、本明細書でCDRH2とも称される)、及び可変重鎖CDR3(VH CDR3、本明細書でCDRH3とも称される)を含み、VL1は、可変軽鎖CDR1(VL CDR1、本明細書でCDRL1とも称される)、可変軽鎖CDR2(VL CDR2、本明細書でCDRL2とも称される)、及び可変軽鎖CDR3(VL CDR3、本明細書でCDRL3とも称される)を含む。
【0079】
本明細書で提供される活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCは、マスキング部分(MM)を含む。本明細書で使用されるとき、「マスキング部分」及び「MM」という用語は、標的化ドメインの近位に位置付けられるときに、標的化ドメインがその標的に結合することを妨害するペプチドを指して本明細書で互換的に使用される。一部の態様では、MMは、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCに連結、または別様に結合させられるアミノ酸配列であり、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCに結合させられることにより、各MMが、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCがその標的に特異的に結合する能力を低減するようになる。一部の態様では、MM1は、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCがCD3に特異的に結合することを阻止するか、またはその能力を減少させる。一部の態様では、MM2は、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCがEGFRに特異的に結合することを阻止するか、またはその能力を減少させる。一部の態様では、MMは、抗原標的化ドメイン(複数可)に特異的に結合する。好適なMMは、様々な既知の技法のうちのいずれかを使用して特定することができる。
【0080】
例えば、様々な抗体結合ドメインに関連して本開示の実施において使用するのに好適である抗EGFRマスキング部分には、例えば、PCT公開第WO2013/163631号、同第WO2015/013671号、同第WO2016/014974号、同第WO2019/075405号、及び同第WO2019/213444号に記載されるものを含めて、当該技術分野で知られているいずれも含まれ、同文献の各々は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。本開示の実施において使用するのに好適である抗CD3マスキング部分には、WO2013/163631、WO2015/013671、WO2016/014974、WO2019/075405、及びWO2019/213444に記載されるものを含めて、当該技術分野で知られているもののいずれも含まれ、同文献の各々は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0081】
本明細書で提供される活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの一部の態様では、MM1及び/またはMM2は、5個のアミノ酸~約40個のアミノ酸、またはそれらの間ならびに5個のアミノ酸及び40個のアミノ酸の両方を含む任意の範囲を含む。本明細書で使用されるとき、「MM1」という用語は、CD3標的化ドメインに対するマスキング部分を表す。本明細書で使用されるとき、「MM2」という用語は、EGFR標的化ドメイン上のマスキング部分を表す。
【0082】
本明細書で提供される活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの一部の態様では、MMIは、配列番号1、67、68、69、70、71、及び72からなる群から選択される。一部の態様では、MM1は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、MM2は、配列番号13のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、MM1は、配列番号1を含み、MM2は、配列番号13である。一部の態様では、MM1は、配列番号72を含み、MM2は、配列番号13を含む。
【0083】
本開示の一部の態様では、一本鎖可変断片は、(i)アミノ酸配列KYAMN(配列番号3)を含むVH CDR1、(ii)アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKD(配列番号4)を含むVH CDR2、及び(iii)アミノ酸配列HGNFGNSYISYWAY(配列番号5)を含むVH CDR3を含む、重鎖可変ドメイン(VH1)、ならびに(i)アミノ酸配列GSSTGAVTSGNYPN(配列番号6)を含むVL CDR1、(ii)アミノ酸配列GTKFLAP(配列番号7)を含むVL CDR2、及び(iii)アミノ酸配列VLWYSNRWV(配列番号8)を含むVL CDR3を含む、軽鎖可変ドメイン(VL1)を含む。
【0084】
本開示の一部の態様では、VH1は、配列番号9のアミノ酸配列を含む。本開示の一部の態様では、VL1は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。本開示の具体的な態様では、scFvは、配列番号11(これは配列番号9及び10を含む)のアミノ酸配列を含む。
【0085】
本開示の一部の態様では、VH1は、配列番号9と少なくとも90%同一、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。本開示の一部の態様では、VL1は、配列番号10と少なくとも90%同一、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0086】
本開示の一部の態様では、第1のポリペプチド一本鎖可変断片は、(i)アミノ酸配列KYAMN(配列番号3)を含むVH CDR1、(ii)アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKD(配列番号4)を含むVH CDR2、(iii)アミノ酸配列HGNFGNSYISYWAY(配列番号5)を含むVH CDR3を含む、重鎖可変ドメイン(VH1)を含み、配列番号9と少なくとも90%同一、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一の重鎖可変ドメインを含む。
【0087】
本開示の一部の態様では、VL1は、(i)アミノ酸配列GSSTGAVTSGNYPN(配列番号6)を含むVL CDR1、(ii)アミノ酸配列GTKFLAP(配列番号7)を含むVL CDR2、(iii)アミノ酸配列VLWYSNRWV(配列番号8)を含むVL CDR3を含む、アミノ酸配列を含み、ここで、VL1のアミノ酸配列は、配列番号10と少なくとも90%同一、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。
【0088】
一部の態様では、VH1が、(i)アミノ酸配列KYAMN(配列番号3)を含むVH CDR1、(ii)アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKD(配列番号4)を含むVH CDR2、及び(iii)アミノ酸配列HGNFGNSYISYWAY(配列番号5)を含むVH CDR3を含み、VL1が、(i)アミノ酸配列GSSTGAVTSGNYPN(配列番号6)を含むVL CDR1、(ii)アミノ酸配列GTKFLAP(配列番号7)を含むVL CDR2、及び(iii)アミノ酸配列VLWYSNRWV(配列番号8)を含むVL CDR3を含む場合、MM1は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0089】
代替の態様では、一本鎖可変断片は、(i)アミノ酸配列TYAMN(配列番号128)を含むVH CDR1、(ii)アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKD(配列番号129)を含むVH CDR2、及び(iii)アミノ酸配列HGNFGNSYVSWFAY(配列番号130)を含むVH CDR3を含む、重鎖可変ドメイン(VH1)、ならびに(i)アミノ酸配列RSSTGAVTTSNYAN(配列番号131)を含むVL CDR1、(ii)アミノ酸配列GTNKRAP(配列番号132)を含むVL CDR2、(iii)アミノ酸配列ALWYSNLWV(配列番号133)を含むVL CDR3を含む、軽鎖可変ドメイン(VL1)を含む。
【0090】
本開示のこれらの態様のうちの一部において、VH1は、配列番号134のアミノ酸配列を含む。本開示のある特定の態様では、VL1は、配列番号135のアミノ酸配列を含む。本開示の具体的な態様では、scFvは、配列番号122(これは配列番号134及び135を含む)のアミノ酸配列を含む。
【0091】
本開示の一部の態様では、VH1は、配列番号134と少なくとも90%同一、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。本開示の一部の態様では、VL1は、配列番号135と少なくとも90%同一、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0092】
本開示の一部の態様では、第1のポリペプチド一本鎖可変断片は、(i)アミノ酸配列TYAMN(配列番号128)を含むVH CDR1、(ii)アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKD(配列番号129)を含むVH CDR2、(iii)アミノ酸配列HGNFGNSYVSWFAY(配列番号130)を含むVH CDR3を含む、重鎖可変ドメイン(VH1)を含み、配列番号135と少なくとも90%同一、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一の重鎖可変ドメインを含む。
【0093】
本開示の一部の態様では、VL1は、(i)アミノ酸配列RSSTGAVTTSNYAN(配列番号131)を含むVL CDR1、(ii)アミノ酸配列GTNKRAP(配列番号132)を含むVL CDR2、(iii)アミノ酸配列ALWYSNLWV(配列番号133)を含むVL CDR3を含む、アミノ酸配列を含み、ここで、VL1のアミノ酸配列は、配列番号135と少なくとも90%同一、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。
【0094】
これらの態様のうちの一部において、VH1が、(i)アミノ酸配列TYAMN(配列番号128)を含むVH CDR1、(ii)アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKD(配列番号129)を含むVH CDR2、及び(iii)アミノ酸配列HGNFGNSYVSWFAY(配列番号130)を含むVH CDR3を含み、VL1が、(i)アミノ酸配列RSSTGAVTTSNYAN(配列番号131)を含むVL CDR1、(ii)アミノ酸配列GTNKRAP(配列番号132)を含むVL CDR2、(iii)アミノ酸配列ALWYSNLWV(配列番号133)を含むVL CDR3を含む場合、MM1は、配列番号72のアミノ酸配列を含む。
【0095】
EGFR標的化ドメインは、VH2(第1のポリペプチド内に配置される)及びVH1(第2のポリペプチド内に配置される)を含む。VH2は、可変重鎖CDR1(VH CDR1、本明細書でCDRH1とも称される)、可変重鎖CDR2(VH CDR2、本明細書でCDRH2とも称される)、及び可変重鎖CDR3(VH CDR3、本明細書でCDRH3とも称される)を含み、VL2は、可変軽鎖CDR1(VL CDR1、本明細書でCDRL1とも称される)、可変軽鎖CDR2(VL CDR2、本明細書でCDRL2とも称される)、及び可変軽鎖CDR3(VL CDR3、本明細書でCDRL3とも称される)を含む。
【0096】
本開示の一部の態様では、EGFR標的化重鎖可変ドメイン(VH2)は、(i)アミノ酸配列NYGVH(配列番号15)を含むVH CDR1、(ii)アミノ酸配列VIWSGGNTDYNTPFTS(配列番号16)を含むVH CDR2、及び(iii)アミノ酸配列ALTYYDYEFAY(配列番号17)を含むVH CDR3を含む。
【0097】
本開示の一部の態様では、VH2は、(i)アミノ酸配列NYGVH(配列番号15)を含むVH CDR1、(ii)アミノ酸配列VIWSGGNTDYNTPFTS(配列番号16)を含むVH CDR2、及び(iii)アミノ酸配列ALTYYDYEFAY(配列番号17)を含むVH CDR3を含み、ここで、VH2のアミノ酸配列は、配列番号21と少なくとも90%同一、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。
【0098】
本開示の一部の態様では、VH2は、配列番号21のアミノ酸配列を含む。
【0099】
本開示のある特定の具体的な態様では、活性化可能なHBPCは、配列番号1のアミノ酸配列を有するMM1;配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号4のアミノ酸配列を含むVH CDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を含むVH CDR3を有するVH1;配列番号6のアミノ酸配列を有するVL CDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVL CDR3を有するVL1;ならびに配列番号15のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含むVH2を含む、第1のポリペプチドを含む。これらの活性化可能なHBPCのうちの一部において、第2のポリペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列を有するMM2、ならびに配列番号18のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含むVL2を含む。
【0100】
本開示の別の具体的な態様では、活性化可能なHBPCは、配列番号72のアミノ酸配列を有するMM1;配列番号128のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号129のアミノ酸配列を含むVH CDR2、及び配列番号130のアミノ酸配列を含むVH CDR3を有するVH1;配列番号131のアミノ酸配列を有するVL CDR1、配列番号132のアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号133のアミノ酸配列を有するVL CDR3を有するVL1;ならびに配列番号15のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含むVH2を含む、第1のポリペプチドを含む。これらの活性化可能なHBPCのうちの一部において、第2のポリペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列を有するMM2、ならびに配列番号18のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含むVL2を含む。
【0101】
上述したように、第1のポリペプチドは、単量体Fcドメイン(Fc1)をさらに含む。当該技術分野で既知のFcドメインが、本開示の活性化可能なHBPCにおいて使用するのに好適であり、本明細書の下記により詳細に記載される。
【0102】
本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、Fc1は、配列番号23と少なくとも90%同一、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、Fc1は、配列番号23のアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、Fc1は、配列番号24のアミノ酸配列を含む。
【0103】
本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの一部の態様では、第1のポリペプチドは、VH2とFc1との間に配置された重鎖CH1ドメインをさらに含む。
【0104】
本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの一部の態様では、第1のポリペプチドは、VH2とFc1との間に配置された免疫グロブリンヒンジ領域をさらに含む。CH1ドメインが存在する、一部の態様では、免疫グロブリンヒンジ領域は、CH1ドメインとFc1ドメインとの間に配置される。
【0105】
本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの一部の態様では、第1のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端に、
MM1-CM1-scFv-VH2-CH1-ヒンジ領域-Fc1の構造配置を含み、構造中、各「-」は独立して、直接的連結または間接的(例えば、リンカーを介した)連結である。
【0106】
本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの一部の態様では、第1のポリペプチドは、本明細書の下記により詳細に記載される、1つまたは複数の任意選択的なリンカーをさらに含む。
【0107】
本開示の一部の態様では、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCは、配列番号23または配列番号24に定められるアミノ酸配列を有するFc1を含む、第1のポリペプチドを含む。本開示の一部の態様では、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCは、ヒンジ-1(配列番号34)またはヒンジ-2(配列番号35)の配列を有するヒンジ領域を含む、第1のポリペプチドを含む。
【0108】
本開示の一部の態様では、活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドは、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含むEGFR標的化軽鎖可変ドメイン(VL2)を含む、第2のポリペプチドを含む。
【0109】
一部の態様では、本開示は、(i)アミノ酸配列RASQSIGTNIH(配列番号18)を含むCDR1、(ii)アミノ酸配列YASESIS(配列番号19)を含むCDR2、及び(iii)アミノ酸配列QQNNNWPTT(配列番号20)を含むCDR3を含む、EGFR標的化軽鎖可変ドメイン(VL2)を含む、第2のポリペプチドを含む、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCを提供する。
【0110】
本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、第2のポリペプチドは、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも90%同一、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するVL2を含む。
【0111】
本開示の一部の態様では、VL2は、配列番号22に定められるアミノ酸配列を含む。
【0112】
本開示の上述の態様のうちのある特定のものにおいて、MM2は、配列番号13のアミノ酸配列を含む。
【0113】
本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、第2のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端に、MM2-CM2-VL2の構造配置を含み得、構造中、各「-」は独立して、直接的連結または間接的(例えば、リンカーを介した)連結である。
【0114】
本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの一部の態様では、第2のポリペプチドは、1つまたは複数のリンカーを含む。一部の態様では、MM2は、リンカーを介してCM2に連結される。
【0115】
一部の態様では、本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの第2のポリペプチドは、約1~約20個のアミノ酸を含むリンカーをさらに含む。本開示において使用するのに好適なリンカーは、下記でより詳細に考察される。
【0116】
一部の態様では、第2のポリペプチドは、定常軽鎖ドメイン(CL)をさらに含む。例となるCLには、当該技術分野で知られているもののうちのいずれも含まれる。一部の態様では、第2のポリペプチドは、配列番号25のアミノ酸配列を有するCLを含む。これらの態様のうちのある特定のものにおいて、第2のポリペプチドは、アミノ末端からカルボキシ末端に、MM2-CM2-VL2-CLの構造配置を含み、構造中、各「-」は独立して、直接的連結または間接的(例えば、リンカーを介した)連結である。
【0117】
一部の態様では、本明細書に記載の活性化可能なHBPCの第3のポリペプチドは、単量体Fcドメイン(Fc2)を含み、免疫グロブリン可変ドメインを含まない。
【0118】
一部の態様では、本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCは、アミノ末端からカルボキシ末端に、ヒンジ領域-Fc2の構造配置を含む、第3のポリペプチドを含み、構造中、各「-」は独立して、直接的連結または間接的(例えば、リンカーを介した)連結である。一部の態様では、第3のポリペプチドは、配列番号28(任意選択でC末端リジンを有する、すなわち配列番号29)を含むアミノ酸配列を有するFc2を含む。一態様では、第3のポリペプチドは、配列番号35のアミノ酸配列を含むヒンジ及び配列番号28(任意選択でC末端リジンを有する、すなわち配列番号29)のアミノ酸配列を含むFc2を含む。ある特定の態様では、第1のポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸配列を含むヒンジ及び配列番号23(任意選択でC末端リジンを有する、すなわち配列番号24)のアミノ酸配列を含むFc1を含む。
【0119】
上記に規定されるように、一部の態様では、第3のポリペプチドは、例えば、ヒンジ領域と第2のFcドメインとの間に、リンカーを含み得る。リンカーは、本明細書で考察されるリンカーのうちのいずれも含み得る。
【0120】
本開示の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCは、切断可能な部分がプロテアーゼによって切断されるときに活性化され、それによって、EGFR及びCD3に結合することができる活性化された(すなわち、マスクされていない)抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド複合体(HBPC)が生成される。比較すると、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCは、活性化可能なHBPCが腫瘍環境におけるプロテアーゼによって活性化されるまでマスクされたままであるため、活性化されたヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドと比較してEGFR及びCD3への結合の大幅な低減を示す。理論または機構に拘束されることを望むものではないが、健常組織における典型的なプロテアーゼ活性レベルは、内在性インヒビターの存在及び/またはプロテアーゼに不利なpH条件に起因して低減されている可能性が高い一方で、腫瘍環境内ではプロテアーゼ活性は、プロテアーゼ発現の上方制御、チモーゲンの活性化、インヒビター発現の下方調節、またはこれらの効果の組み合わせを介して一般に上方制御される(Desnoyers et al.,ScienceTranslationalMedicine.org,vol.5,Issue 207(October 2013)(参照により本明細書に援用される)を参照されたい)。
【0121】
したがって、これらの活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCは、腫瘍微小環境におけるタンパク質分解活性が正常組織と比べて上方制御され、正常組織においては制御される、がんを有する対象の処置において有用であり得る。正常組織における活性化可能なHBPCによるEGFR及びCD3への結合の大幅な低減は、腫瘍の外側での抗EGFR及び抗CD3への結合に関連する副作用の低減を可能にし得る。一部の態様では、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCは、第1のCM及び第2のCM(それぞれCM1及びCM2)を含む。
【0122】
一部の態様では、CMは、腫瘍細胞において上方制御されるプロテアーゼのための基質を含む。本明細書に開示されるHBPCの一部の態様では、CMは、腫瘍細胞において上方制御される2つ以上のプロテアーゼ(すなわち、第1のプロテアーゼ、第2のプロテアーゼ、第3のプロテアーゼ等)のための基質を含んでもよい。いくつかのがん、例えば、液状腫瘍または固形腫瘍においてプロテアーゼのレベルが増加しているという文献の報告が存在する。例えば、La Rocca et al,(2004)British J.of Cancer 90(7):1414-1421を参照されたい。多数の研究が、固形腫瘍における異常なプロテアーゼレベル、例えば、uPA、レグマイン、MT-SP1、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の相関関係を実証している(例えば、Murthy R V,et al.“Legumain expression in relation to clinicopathologic and biological variables in colorectal cancer,”Clin Cancer Res.11(2005):2293-2299、Nielsen B S,et al.“Urokinase plasminogen activator is localized in stromal cells in ductal breast cancer,”Lab Invest 81(2001):1485-1501、Look O R,et al.“In situ localization of gelatinolytic activity in the extracellular matrix of metastases of colon cancer in rat liver using quenched fluorogenic DQ-gelatin,”J Histochem Cytochem.51(2003):821-829を参照されたい)。CMは、複数のプロテアーゼのための基質、例えば、セリンプロテアーゼ及び第2の異なるプロテアーゼ、例えば、MMPのための基質を含んでもよい。一部の態様では、CMは、1つよりも多くのセリンプロテアーゼ、例えば、マトリプターゼ及び/またはuPAのための基質を含んでもよい。一部の態様では、CMは、1つよりも多くのMMP、例えば、MMP9及びMMP14のための基質を含んでもよい。
【0123】
ある特定の実施形態では、CM1及びCM2は各々独立して、下記の表1に定められるプロテアーゼのための基質であるアミノ酸配列を含む。


【表1】


【0124】
本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの一部の態様では、CM1及び/またはCM2は、約3個のアミノ酸~約15個のアミノ酸を含む。一部の態様では、CM1及び/またはCM2は、2つ以上の切断部位を含んでもよい。一部の態様では、CM1上の2つ以上の切断部位は、1つのプロテアーゼのための基質を含んでもよい。一部の態様では、CM2上の2つ以上の切断部位は、2つ以上のプロテアーゼのための基質を含んでもよい。一部の態様では、第1のプロテアーゼ及び第2のプロテアーゼは、同じプロテアーゼである。一部の態様では、CM1及びCM2は、同じプロテアーゼのための異なる基質を含む。一部の態様では、CM1及びCM2は、同じアミノ酸配列を含む。一部の態様では、CM1及びCM2は、異なるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、CM1は、配列番号73のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、CM1は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、CM2は、配列番号14のアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCは、配列番号2のアミノ酸配列を含むCM1及び配列番号14のアミノ酸配列を含むCM2を含む。一部の態様では、本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド複合体は、配列番号73のアミノ酸配列を含むCM1及び配列番号14のアミノ酸配列を含むCM2を含む。
【0125】
本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCにおいて使用するのに好適である例となるCMには、当該技術分野で既知のCMが含まれる。例となるCMには、例えば、表2、ならびに国際公開第WO2009/025846号、同第WO2010/081173号、同第WO2015/013671号、同第WO2015/048329号、同第WO2015/116933号、同第WO2016/014974号、及び同第WO2016/118629号(同文献の各々は参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0126】
一部の態様では、CM1及び/またはCM2は、下記の表2に定められるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、CM1及びCM2は各々独立して、下記の表2に定められるアミノ酸配列を含む。


【表2】


【0127】
本開示の一部の態様では、活性化可能なHBPCが、(i)アミノ酸配列KYAMN(配列番号3)を含むVH CDR1、アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKD(配列番号4)を含むVH CDR2、及びアミノ酸配列HGNFGNSYISYWAY(配列番号5)を含むVH CDR3を含む、重鎖可変ドメイン(VH1)、ならびにアミノ酸配列GSSTGAVTSGNYPN(配列番号6)を含むVL CDR1、アミノ酸配列GTKFLAP(配列番号7)を含むVL CDR2、及びアミノ酸配列VLWYSNRWV(配列番号8)を含むVL CDR3を含む、VL1を含む場合、CM1は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。これらの活性化可能なHBPCのうちのある特定のものにおいて、MM1は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0128】
本開示の一部の態様では、活性化可能なHBPCが、(i)アミノ酸配列KYAMN(配列番号3)を含むVH CDR1、アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKD(配列番号4)を含むVH CDR2、及びアミノ酸配列HGNFGNSYISYWAY(配列番号5)を含むVH CDR3を含む、重鎖可変ドメイン(VH1)、ならびにアミノ酸配列GSSTGAVTSGNYPN(配列番号6)を含むVL CDR1、アミノ酸配列GTKFLAP(配列番号7)を含むVL CDR2、及びアミノ酸配列VLWYSNRWV(配列番号8)を含むVL CDR3を含む、VL1を含む場合、CM1は、配列番号73のアミノ酸配列を含む。これらの活性化可能なHBPCのうちのある特定のものにおいて、MM1は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。これらの活性化可能なHBPCのうちの一部において、MM1は、配列番号1のアミノ酸配列を含み、CM1は、配列番号73のアミノ酸配列を含む。
【0129】
本開示の具体的な態様では、活性化可能なHBPCは、
(a)第1の重鎖可変ドメイン(VH1)、第1の軽鎖可変ドメイン(VL1)、及び第2の重鎖可変ドメイン(VH2)、第1のマスキング部分(MM1)、第1の切断可能な部分(CM1)、ならびに第1のFcドメイン(Fc1)を含む、第1のポリペプチドであって、
該VH1が、
(i)アミノ酸配列KYAMN(配列番号3)を含むVH CDR1、
(ii)アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKD(配列番号4)を含むVH CDR2、及び
(iii)アミノ酸配列HGNFGNSYISYWAY(配列番号5)を含むVH CDR3を含み、
該VL1が、
(i)アミノ酸配列GSSTGAVTSGNYPN(配列番号6)を含むVL CDR1、
(ii)アミノ酸配列GTKFLAP(配列番号7)を含むVL CDR2、及び
(iii)アミノ酸配列VLWYSNRWV(配列番号8)を含むVL CDR3を含み、
該VH2が、
(i)アミノ酸配列NYGVH(配列番号15)を含むVH CDR1、
(ii)アミノ酸配列VIWSGGNTDYNTPFTS(配列番号16)を含むVH CDR2、及び
(iii)アミノ酸配列ALTYYDYEFAY(配列番号17)を含むVH CDR3を含む、該第1のポリペプチドと、
(b)第2の軽鎖可変ドメイン(VL2)及び第2のマスキング部分(MM2)及び第2の切断可能な部分(CM2)を含む、第2のポリペプチドであって、
該VL2が、
(i)RASQSIGTNIH(配列番号18)を含むVL CDR1、
(ii)YASESIS(配列番号19)を含むVL CDR2、及び
(iii)QQNNNWPTT(配列番号20)を含むVL CDR3を含む、該第2のポリペプチドと、
(c)第2のFcドメイン(Fc2)を含む第3のポリペプチドと、を含み、
該Fc1は、Fc2に結合し、
該VH1及び該VL1は一緒に、CD3ポリペプチドに特異的に結合する標的化ドメインを形成し、
該VH2及び該VL2は一緒に、EGFRに特異的に結合する標的化ドメインを形成し、
該第3のポリペプチドは、免疫グロブリン可変ドメインを含まず、
該MM1は、第1の標的化ドメインが第1の標的に結合することを妨害するペプチドであり、
該MM2は、第2の標的化ドメインが第2の標的に結合することを妨害するペプチドであり、
該CM1及び該CM2は各々独立して、プロテアーゼのための基質を含み、該第3のポリペプチドは、免疫グロブリン可変ドメインを含まない。本開示のある特定の態様では、VH1及びVL1は、scFv内に配置される。これらの態様のうちの一部において、MM1は、配列番号1を含み、CM1は、配列番号73を含み、MM2は、配列番号13を含み、CM2は、配列番号14を含む。これらの態様のうちの一部において、第2のポリペプチドは、定常軽鎖ドメイン(CL)をさらに含み、第3のポリペプチドは、ヒンジ(HR)をさらに含む。
【0130】
本開示の一部の態様では、活性化可能なHBPCが、(i)アミノ酸配列TYAMN(配列番号128)を含むVH CDR1、アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKD(配列番号129)を含むVH CDR2、及びアミノ酸配列HGNFGNSYVSWFAY(配列番号130)を含むVH CDR3を含む、VH1、ならびに(ii)アミノ酸配列RSSTGAVTTSNYAN(配列番号131)を含むVL CDR1、アミノ酸配列GTNKRAP(配列番号132)を含むVL CDR2、ALWYSNLWV(配列番号133)のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、VL1を含む場合、CM1は、配列番号73のアミノ酸配列を含む。これらの活性化可能なHBPCのうちの一部において、MM1は、配列番号72のアミノ酸配列を含む。
【0131】
上述の活性化可能なHBPCのうちの一部において、第1のポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号17のアミノ酸配列を含むVH CDR3を有する、VH2をさらに含む。これらの活性化可能なHBPCのうちのある特定のものにおいて、第2のポリペプチドは、配列番号18のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号19のアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、VL2を含む。これらのHBPCのうちの一部において、第3のポリペプチドは、配列番号28のアミノ酸配列を含む(かつ免疫グロブリン可変ドメインを含まない)。
【0132】
本開示の具体的な態様では、活性化可能なHBPCは、
(i)第1の重鎖可変ドメイン(VH1)、第1の軽鎖可変ドメイン(VL1)、及び第2の重鎖可変ドメイン(VH2)、第1のマスキング部分(MM1)、第1の切断可能な部分(CM1)、ならびに第1のFcドメイン(Fc1)を含む、第1のポリペプチドであって、
該VH1が、
(i)アミノ酸配列TYAMN(配列番号128)を含むVH CDR1、
(ii)アミノ酸配列RIRSKYNNYATYYADSVKD(配列番号129)を含むVH CDR2、
(iii)アミノ酸配列HGNFGNSYVSWFAY(配列番号130)を含むVH CDR3を含み、
該VL1が、
(i)アミノ酸配列RSSTGAVTTSNYAN(配列番号131)を含むVL CDR1、
(ii)アミノ酸配列GTNKRAP(配列番号132)を含むVL CDR2、及び
(iii)ALWYSNLWV(配列番号133)のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含み、
該VH2が、
(ii)アミノ酸配列NYGVH(配列番号15)を含むVH CDR1、
(ii)アミノ酸配列VIWSGGNTDYNTPFTS(配列番号16)を含むVH CDR2、及び
(iii)アミノ酸配列ALTYYDYEFAY(配列番号17)を含むVH CDR3を含む、該第1のポリペプチドと、
(b)第2の軽鎖可変ドメイン(VL2)及び第2のマスキング部分(MM2)及び第2の切断可能な部分(CM2)を含む、第2のポリペプチドであって、該VL2が、
(i)RASQSIGTNIH(配列番号18)を含むVL CDR1、
(ii)YASESIS(配列番号19)を含むVL CDR2、及び
(iii)QQNNNWPTT(配列番号20)を含むVL CDR3を含む、該第2のポリペプチドと、
(c)第2のFcドメイン(Fc2)を含む第3のポリペプチドと、を含み、該Fc1は、Fc2に結合し、
該VH1及び該VL1は一緒に、CD3ポリペプチドに特異的に結合する標的化ドメインを形成し、
該VH2及び該VL2は一緒に、EGFRに特異的に結合する標的化ドメインを形成し、
該第3のポリペプチドは、免疫グロブリン可変ドメインを含まず、
該MM1は、第1の標的化ドメインが第1の標的に結合することを妨害するペプチドであり、
該MM2は、第2の標的化ドメインが第2の標的に結合することを妨害するペプチドであり、
該CM1及び該CM2は各々独立して、プロテアーゼのための基質を含み、
該第3のポリペプチドは、免疫グロブリン可変ドメインを含まない。本開示のある特定の態様では、VH1及びVL1は、scFv内に配置される。これらの態様のうちの一部において、MM1は、配列番号72を含み、CM1は、配列番号73を含み、MM2は、配列番号13を含み、CM2は、配列番号22を含む。これらの態様のうちの一部において、第2のポリペプチドは、定常軽鎖ドメイン(CL)をさらに含み、第3のポリペプチドは、ヒンジ(HR)をさらに含む。
【0133】
本開示の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの一部の態様では、第1のポリペプチドは、MMとCMとの間に1つまたは複数のリンカーを含む。一部の態様では、MM1は、リンカーを介してCM1に連結される。一部の態様では、第1のポリペプチドは、CM1とVH2との間にリンカーを含む。ある特定の態様では、第1のポリペプチドは、VH2とFc1との間にリンカーを含む。一部の態様では、第1のポリペプチドは、MM1とCM1、CM1とscFv、scFvとVH2、及びVH2とFc1からなる群から選択される一対の要素間に配置された少なくとも1つのリンカーを含む。本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCにおいて使用するのに好適なリンカーは一般に、活性化可能なポリペプチドが標的に結合することを阻害するのを容易にするために、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの柔軟性を提供するものである。かかるリンカーは、柔軟なリンカーと総称される。好適なリンカーは、容易に選択することができ、4アミノ酸~10アミノ酸、5個のアミノ酸~9アミノ酸、6アミノ酸~8アミノ酸、または7アミノ酸~8アミノ酸を含めた、1アミノ酸(例えば、Gly)~20アミノ酸、2アミノ酸~15アミノ酸、3アミノ酸~12アミノ酸等の、異なる長さのものであり得、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20アミノ酸長であってもよい。
【0134】
例となる柔軟なリンカーには、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n、(GSGGS)n及び(GGGS)n(それぞれ配列番号41及び配列番号40)(配列中、nは少なくとも1の整数である)を含む)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、及び当該技術分野で既知の他の柔軟なリンカーが含まれる。グリシン及びグリシンセリンポリマーは、比較的構造不定であり、したがって構成要素間の中立のテザーとして機能することが可能であり得る。グリシンは、アラニンよりもさらに顕著に多くのphi-psi空間にアクセスし、より長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限が低い(Scheraga,Rev.Computational Chem.11173-142(1992)を参照されたい)。当業者であれば、HBPCのポリペプチドが、所望の構造を可能にするためにリンカーが柔軟なリンカーと同時に柔軟性の低い構造を付与する1つまたは複数の部分を含み得るように、全体的または部分的に柔軟であるリンカーを含むように設計され得ることを認識しよう。
【0135】
一部の態様では、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCは、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び/または第3のポリペプチドに配置された1つまたは複数のリンカー配列を含む。例えば、第1のポリペプチドにおいて、リンカーは、MM1とCM1との間、重鎖可変ドメインとCH1ドメインとの間、CH1ドメインとヒンジ領域との間(両方とも存在する場合)、及び/またはヒンジ領域(存在する場合)と第1のFcドメインとの間に配置される。第2のポリペプチド(本明細書の他の箇所に記載される)において、リンカーは、例えば、MM2とCM2との間、CM2と軽鎖可変ドメインとの間、及び/または軽鎖可変ドメインとCLとの間に存在し得る。第3のポリペプチド(本明細書の他の箇所に記載される)において、リンカーは、例えば、CH1ドメインと第2のFcドメインとの間、CH1ドメインとヒンジ領域との間、及びまたはヒンジ領域と第2のFcドメインとの間に存在し得る。
【0136】
本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの一部の態様では、MM1は、リンカーL1を介してCM1に連結されている。一部の態様では、MM2は、リンカーL2を介してCM2に連結されている。一部の態様では、L1及びL2のアミノ酸配列は同じである。一部の態様では、リンカーは、(i)(GS)n(配列中、nは少なくとも1の整数である)、(GGS)n(配列中、nは少なくとも1の整数である)(例えば、約1~約20、または約1~約10の整数)、(GGGS)n(配列番号40)(配列中、nは少なくとも1の整数である)(例えば、約1~約20、または約1~約10の整数)、(GGGGS)n(配列番号126)(配列中、nは少なくとも1の整数である)(例えば、約1~約20、または約1~約10の整数)、(GSGGS)n(配列番号41)(配列中、nは少なくとも1の整数である)(例えば、約1~約20、または約1~約10の整数)、GSSGGSGGSG(配列番号12)、GGSG(配列番号42)、GGSGG(配列番号43)、GSGSG(配列番号44)、GSGGG(配列番号45)、GGGSG(配列番号46)、及びGSSSG(配列番号47)、GGGGSGGGGSGGGGSGS(配列番号48)、GGGGSGS(配列番号49)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号50)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号51)、GGGGS(配列番号52)、GGGGSGGGGS(配列番号53)、GGGS(配列番号54)、GGGSGGGS(配列番号55)、GGGSGGGSGGGS(配列番号56)、GSSGGSGGSGG(配列番号57)、GGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号58)、GGGSSGGS(配列番号127)、及びGSからなる群から選択される、グリシン-セリンベースのリンカー、ならびに(ii)GSTSGSGKPGSSEGST(配列番号59)、SKYGPPCPPCPAPEFLG(配列番号60)、GGSLDPKGGGGS(配列番号61)、PKSCDKTHTCPPCPAPELLG(配列番号62)、GKSSGSGSESKS(配列番号63)、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号64)、GSTSGSGKSSEGSGSTKG(配列番号65)、及びGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号66)からなる群から選択される、グリシンとセリン、及びリジン、トレオニン、またはプロリンのうちの少なくとも1つを含むリンカーからなる群から選択される。
【0137】
本開示の一部の態様では、活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドは、上述したものに加えた構成要素を含み得る。かかる構成要素には、スペーサーが含まれ得る。「スペーサー」という用語は、本明細書で、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び/または第3のポリペプチドの自由端にて組み込まれたアミノ酸残基またはペプチドを指す。本開示の実施において使用するのに好適であるスペーサーには、任意の単一のアミノ酸残基または任意のペプチドが含まれる。好適なスペーサーには、例えば、国際公開第WO2016/014974号、同第WO2019/075405号、及び同第WO2019/213444号(同文献の各々は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される)に記載されるもののうちのいずれも含まれる。
【0138】
一部の態様では、スペーサーは、約1個のアミノ酸~約10個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、または9個のアミノ酸)またはそれらの間の任意の数を含み得る。本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの一部の態様では、スペーサーは、MM1及び/またはMM2に対してN末端側に位置付けられる。一部の態様では、スペーサーは、QGQSGS(配列番号116)の配列を有する。一部の態様では、スペーサーは、QGQSGQG(配列番号117)の配列を有する。一部の態様では、スペーサーは、QGQSGS(配列番号118)の配列を有する。一部の態様では、スペーサーは、QGQSGQG(配列番号117)の配列を有する。
【0139】
一部の態様では、Fc1及び/またはFc2として用いられるFcドメインは、天然Fcドメイン(例えば、ヒトIgG1 FcドメインまたはヒトIgG4 Fcドメイン)である。本開示の一部の態様では、Fc1及び/またはFc2として用いられるFcドメインは、天然Fcアミノ酸配列の変異型である。変異は、活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチド(及び相応して、活性化HBPC)に所望の有益な特性を付与し得る。例えば、FcRn結合部位におけるある特定の変異は、エフェクター機能を調節することが知られている(例えば、Petkova et al.,Intl.Immunol.18:1759-1769,2006、Deng et al.,MAbs 4:101-109,2012、及びOlafson et al.,Methods Mol.Biol.907:537-556,2012を参照されたい)。エフェクター機能を調節し得るFcドメインにおけるいずれの既知の変異の組み込も好適である。例えば、Fcアミノ酸配列におけるN297AまたはN297G変異を用いて、IgGのエフェクター機能(例えば、ADCC及びCDC)を低減してもよく、これにより標的非依存的毒性が低減され得る(例えば、Lund et al.,Mol.Immunol.29:35-39,1992を参照されたい)。本開示の関連において使用するのに好適なFcドメインには、例えば、ノブ・イン・ホール等といった、いずれの既知のヘテロ二量体Fcも含むがこれらに限定されない、当該技術分野で既知の任意のFcドメインが含まれる。
【0140】
一部の態様では、本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCは、免疫グロブリンヒンジ領域をさらに含む。好適なヒンジ領域には、いずれの既知のヒンジ領域も含まれる。例えば、免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、またはそれらのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)のうちのいずれからのヒンジ領域も、本開示において使用するのに好適である。異なるクラスの免疫グロブリンは、異なる周知のサブユニット構造及び3次元配置を有する。
【0141】
一部の態様では、第1のポリペプチドのFc1及び第3のポリペプチドのFc2のヒンジ領域は、同じ配列を含む。一部の態様では、本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの第1のFcドメイン及び第2のFcドメイン(それぞれFc1及びFc2)は、IgG1 FcドメインもしくはIgG4 Fcドメイン(例えば、ヒトIgG1 FcドメインまたはヒトIgG4 Fcドメイン)、またはそのバリアントである。一部の態様では、Fc1及び/またはFc2は、天然(例えば、ヒト)IgG1 Fcドメインの修飾バリアントである。一部の態様では、Fc1及び/またはFc2は、天然(例えば、ヒト)IgG4 Fcドメインの修飾バリアントである。
【0142】
本明細書に記載の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの一部の態様では、Fc1は、配列番号23と少なくとも90%同一、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、Fc1は、配列番号23(任意選択でC末端リジンを有する(すなわち配列番号24))のアミノ酸配列を含む。
【0143】
一部の態様では、第3のポリペプチドは、Fc1に結合する単量体Fcドメイン(Fc2)をさらに含む。一部の態様では、Fc2は、配列番号28と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、Fc2は、配列番号28(任意選択で末端リジンを有する(すなわち配列番号29))を含む。
【0144】
一部の態様では、第3のポリペプチドは、配列番号34及び35からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するヒンジ領域を含む。
【0145】
本明細書の他の箇所で提供されるように、本明細書に開示される活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの形式または構造は、リンカー及びスペーサーを含めた、任意の数の任意選択的な追加の構成要素を含み得る。例にすぎないが、下記に定められる構造が、企図される態様の中にある。しかしながら、下記に示される態様は、本開示をいかようにも限定することを意図するものではない。
【0146】
一部の態様では、活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドは、構造(I)を有する第1のポリペプチドを含む。
第1のポリペプチド構造(I):
(S1)-MM1-(L1)-CM1-L2-VH1-L3-VL1-(L4)-VH2-(L5)-(CH11)-(L6)-(ヒンジ1)-(L7)-Fc1
構造中、
・(S1)は、任意選択的なスペーサーであり、
・(L1)、(L4)、(L5)、(L6)、及び(L7)は各々独立して、任意選択的なリンカーであり、
・L2及びL3は、リンカーであり、
・(CH11)は、任意選択的なCH1ドメインであり、
・(ヒンジ1)は、任意選択的なヒンジ領域であり、
・Fc1は、本明細書で上述した通りである。
【0147】
一部の態様では、活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドは、構造(II)を有する第2のポリペプチドを含む。
第2のポリペプチド構造(II):
(S2)-(L8)-MM2-(L9)-CM2-(L10)-VL2-(CL)
構造中、
・(S2)は、任意選択的なスペーサーであり、
・(L8)、(L9)、及び(L10)は各々独立して、任意選択的なリンカーであり、
・MM2は、抗EGFRマスキング部分であり、
・VL2は、本明細書で上述した通りであり、
・(CL)は、任意選択的な軽鎖定常ドメインである。
【0148】
一部の態様では、活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドは、構造(III)を有する第3のポリペプチドを含む。
第3のポリペプチド構造(III):
(S3)-(CH12)-(L11)-(ヒンジ2)-(L12)-Fc2
構造中、
・(S3)は、任意選択的なスペーサーであり、
・(CH12)は、任意選択的なCH1ドメインであり、
・(L11)及び(L12)は各々独立して、任意選択的なリンカーであり、
・Fc2は、本明細書で上述した通りである。
【0149】
構造(I)、(II)、及び(III)において使用するのに好適であるリンカー、スペーサー、MM、CM、Fcドメイン、CH1(すなわち、CH11及びCH12)ドメイン、ヒンジ領域、及びCLには、当該技術分野で知られているまたは本明細書に記載されるいずれも含まれる。
【0150】
本開示の一部の態様では、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCは、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドを含み、ここで、(1)第1のポリペプチドは、配列番号30(任意選択でC末端リジンを有し、及び/または任意選択でスペーサーを有しない(例えば、配列番号120(末端リジンを有し、かつスペーサーを有しない))のアミノ酸配列を含み、(2)第2のポリペプチドは、配列番号31(または配列番号37(スペーサーを有しない))のアミノ酸配列を含み、(3)第3のポリペプチドは、配列番号32(任意選択でC末端リジンを有する(すなわち配列番号36))のアミノ酸配列を含む(かつ免疫グロブリン可変ドメインを含まない)。本開示の一部の態様では、活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドは、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドを含み、ここで、下記の配列で規定されるように、(1)第1のポリペプチドは、配列番号120のアミノ酸配列を含み、(2)第2のポリペプチドは、配列番号37のアミノ酸配列を含み、(3)第3のポリペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列を含む(かつ免疫グロブリン可変ドメインを含まない)。
【0151】
本開示の一部の態様では、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCは、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドを含み、ここで、(1)第1のポリペプチドは、配列番号30のアミノ酸配列を含み、(2)第2のポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列を含み、(3)第3のポリペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列からなるか、またはそれから本質的になる。本開示の一部の態様では、活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドは、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドを含み、ここで、下記の配列で規定されるように、(1)第1のポリペプチドは、配列番号120のアミノ酸配列を含み、(2)第2のポリペプチドは、配列番号37のアミノ酸配列を含み、(3)第3のポリペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列からなるか、またはそれから本質的になり、免疫グロブリン可変ドメインを含まない。
【0152】
本開示の一部の態様では、活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドは、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドを含み、ここで、下記の配列で規定されるように、(1)第1のポリペプチドは、配列番号144のアミノ酸配列を含み、(2)第2のポリペプチドは、配列番号37のアミノ酸配列を含み、(3)第3のポリペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列からなるか、またはそれから本質的になり、免疫グロブリン可変ドメインを含まない。
【0153】
下記に示される第1のポリペプチドにおいて、スペーサー配列は角括弧内にあり、マスク配列は下線が引かれ、リンカーは太字にされ(scFv内のリンカーもまた斜体かつ下線付きである)、基質(すなわち、切断可能な部分)は斜体にされ、scFv(CD3ポリペプチドに結合する)は斜体かつ下線付きである。
第1のポリペプチド
[QGQSGS]VSTTCWWDPPCTPNTGSSGGSGGSGGLSGRSDDHGGGSEVQLVESGGGLVQ
PGGSLKLSCAASGFTFNKYAMNWVRQAPGKGLEWVARIRSKYNNYATYYADSVKDRFTISRDD
SKNTAYLQMNNLKTEDTAVYYCVRHGNFGNSYISYWAYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGG
GGSQTVVTQEPSLTVSPGGTVTLTCGSSTGAVTSGNYPNWVQQKPGQAPRGLIGGTKFLAPG
TPARFSGSLLGGKAALTLSGVQPEDEAEYYCVLWYSNRWVFGGGTKLTVLGGGGSQVQLKQ
SGPGLVQPSQSLSITCTVSGFSLTNYGVHWVRQSPGKGLEWLGVIWSGGNTDYNTPFTS RLSINKDNSKSQVFFKMNSLQSQDTAIYYCARALTYYDYEFAYWGQGTLVTVSAASTK
GPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYS
LSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVF
LFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPCEEQYGST
YRCVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRKEM
TKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLKSDGSFFLYSKLTVDKSRW
QQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号30)(任意選択でC末端リジンを有し、及び/またはスペーサーを有しない(例えば、配列番号137))。一部の態様では、第1のポリペプチドは、配列番号120(スペーサーを有しないが、C末端リジンを有する)のアミノ酸配列または配列番号144(スペーサーを有せず、かつC末端リジンを有しない)のアミノ酸配列を有する。
【0154】
下記に示される第2のポリペプチドにおいて、スペーサー配列は角括弧内にあり、マスク配列は下線が引かれ、リンカーは太字にされ、基質(すなわち、切断可能な部分)は斜体にされている。
第2のポリペプチド
[QGQSGQG]LSCEGWAMNREQCRAGGGSSGGSISSGLLSGRSDQHGGGSQILLTQSPVIL
SVSPGERVSFSCRASQSIGTNIHWYQQRTNGSPRLLIKYASESISGIPSRFSGSGSGTDFTLS
INSVESEDIADYYCQQNNNWPTTFGAGTKLELKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVC
LLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVY
ACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号31)(任意選択でスペーサーを有しない(配列番号37))。
【0155】
下記に示される第3のポリペプチドにおいて、ヒンジ領域は太字かつ下線付きであり、配列の残りの部分はFc2である。
第3のポリペプチド
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYV
DGVEVHNAKTKPCEEQYGSTYRCVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTIS
KAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYDTTPP
VLDSDGSFFLYSDLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号32)(任意選択でC末端リジンを有する(配列番号36))。
【0156】
キット
本明細書では、本明細書に記載の1つまたは複数の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCまたはそのHBPCを含むキットが提供され、該キットは、診断用または処置のためのものである。ある特定の態様では、本明細書で提供される1つまたは複数の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCまたはその抗原結合断片等の、本明細書に記載の組成物の成分のうちの1つまたは複数が充填された1つまたは複数の容器、任意選択的な使用説明書を含む、パックまたはキットが本明細書で提供される。一部の態様では、キットは、本明細書に記載の組成物、及び本明細書に記載されるもの等の任意の診断剤、予防剤、または治療剤を収容する。
【0157】
治療的使用及び治療方法
一部の態様では、疾患、例えば、がんを処置するための方法が本明細書で提示され、該方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載される活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCもしくはそのHBPC、または本明細書に記載されるその薬学的組成物を投与することを含む。一部の態様では、腫瘍増殖の阻害を必要とする対象において腫瘍増殖を阻害する方法が本明細書で提示され、該方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載される活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCもしくはそのHBPC、または本明細書に記載されるその薬学的組成物を投与することを含む。一部の態様では、本開示は、医薬として使用するための、本明細書で提供される活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCもしくはそのHBPC、または薬学的組成物に関する。通常、対象はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含めた非ヒト哺乳動物もまた処置することができる。
【0158】
病態の処置において有効であろう活性化可能なHBPCもしくはそのHBPC、またはその組成物の量は、疾患の性質に依存しよう。組成物において用いられるべき正確な用量もまた、投与経路、及び疾患の重症度に依存しよう。
【0159】
疾患の非限定的な例としては、がん、関節リウマチ、クローン病、SLE、心血管損傷、虚血等が挙げられる。例えば、適応症には、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)を含めた白血病、多発性骨髄腫を含めたリンパ芽球性疾患、ならびに肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、及びトリプルネガティブ乳癌を含む乳癌を含めた固形腫瘍が含まれ得る。例えば、適応症には、原発腫瘍の起源を問わない、がんにおける骨疾患もしくは転移;非限定的な例としてER/PR+乳癌、Her2+乳癌、トリプルネガティブ乳癌を含めた乳癌;結腸直腸癌;子宮内膜癌;胃癌;神経膠芽腫;頭頸部扁平上皮癌等の頭頸部癌;食道癌;非限定的な例として非小細胞肺癌等の肺癌;多発性骨髄腫、卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;骨肉腫等の肉腫;非限定的な例として腎細胞癌等の腎臓癌;及び/または非限定的な例として扁平上皮癌、基底細胞癌、もしくは黒色腫等の皮膚癌が含まれ得る。
【0160】
ポリヌクレオチド
一部の態様では、本開示の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び/または第3のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド(対応して、本明細書でそれぞれ「第1のポリヌクレオチド」、「第2のポリヌクレオチド」、及び「第3のポリヌクレオチド」と称される))が本明細書で提供される。好適なポリヌクレオチドには、本明細書に記載の第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び/または第3のポリペプチド、またはそれらの一部分のうちのいずれかをコードするいずれも含まれる。第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の例示的なセットが、本明細書の下記に記載される。
【0161】
本開示のポリヌクレオチドは、例えば、コドン/RNA最適化、異種シグナル配列での置換、及びmRNA不安定性要素の排除によって、発現用に選択される宿主生物からの最適な生産のために配列最適化されてもよい。mRNAにおいてコドン変更(例えば、遺伝コードの縮重に起因して同じアミノ酸をコードするコドン変更)を導入すること及び/または阻害領域を排除することによって、組換え発現用の活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドまたはその抗原結合断片(例えば、重鎖、軽鎖、VHドメイン、またはVLドメイン)をコードする最適化された核酸を生成するための方法は、例えば、米国特許第5,965,726号、同第6,174,666号、同第6,291,664号、同第6,414,132号、及び同第6,794,498号に記載される最適化法を適宜、適合することによって実施することができる。
核酸
第1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号112)
CAAGGACAATCTGGCTCTGTGTCCACCACCTGTTGGTGGGACCCTCCATGCACAC
CTAATACCGGCAGCTCTGGTGGCTCTGGCGGAAGCGGAGGACTGTCTGGCAGAT
CCGATGATCACGGCGGAGGATCTGAGGTGCAGCTGGTTGAATCTGGTGGCGGAC
TGGTTCAGCCTGGCGGATCTCTGAAACTGAGCTGTGCCGCCAGCGGCTTCACCTT CAACAAATACGCCATGAACTGGGTCCGACAGGCCCCTGGCAAAGGCCTTGAATG
GGTCGCCAGAATCAGAAGCAAGTACAACAACTATGCCACCTACTACGCCGACAG
CGTGAAGGACAGATTCACCATCAGCCGGGACGACAGCAAGAACACCGCCTACCT
GCAGATGAACAACCTGAAAACCGAGGACACCGCCGTGTACTACTGTGTGCGGCA
CGGCAACTTCGGCAACAGCTACATCAGCTACTGGGCCTATTGGGGCCAGGGCAC
ACTGGTCACAGTTTCTAGTGGCGGAGGCGGATCTGGCGGCGGTGGAAGTGGCGG
CGGAGGTTCTCAAACAGTGGTCACCCAAGAGCCTAGCCTGACCGTTTCTCCTGGC
GGAACCGTGACACTGACATGCGGATCTTCTACAGGCGCCGTGACCAGCGGCAAC TACCCTAATTGGGTGCAGCAGAAGCCAGGCCAGGCTCCTAGAGGACTGATCGGC
GGCACAAAGTTTCTGGCTCCCGGAACACCAGCCAGATTCAGCGGTTCTCTGCTCG
GAGGAAAGGCCGCTCTGACACTTTCTGGCGTGCAGCCTGAGGATGAGGCCGAGT
ACTATTGCGTGCTGTGGTACAGCAACAGATGGGTGTTCGGCGGAGGCACCAAGC
TGACAGTTCTTGGAGGTGGCGGTAGCCAGGTCCAGCTGAAACAATCTGGACCCG
GACTCGTGCAGCCAAGCCAGAGCCTGTCTATCACCTGTACCGTGTCCGGCTTCAG
CCTGACCAATTACGGCGTGCACTGGGTTCGACAATCTCCCGGCAAGGGACTCGA
ATGGCTGGGAGTGATTTGGAGCGGCGGCAACACCGACTACAACACCCCATTCAC
CAGCAGACTGAGCATCAACAAGGACAACAGCAAGTCCCAGGTGTTCTTCAAGAT
GAACTCCCTGCAGAGCCAGGATACCGCCATCTATTACTGCGCTCGGGCCCTGACC TACTATGACTACGAGTTTGCCTACTGGGGACAGGGAACCCTCGTGACAGTGTCTG CTGCTAGCACAAAGGGCCCTAGCGTTTTCCCACTGGCTCCCAGCAGCAAGTCTAC
ATCCGGTGGAACAGCCGCTCTGGGCTGCCTGGTCAAGGATTACTTTCCCGAGCCA
GTGACCGTGTCCTGGAATAGCGGAGCACTGACATCTGGCGTGCACACATTTCCAG
CCGTGCTGCAGTCTAGCGGCCTGTACTCTCTGTCCAGCGTTGTGACAGTGCCCAG
CAGCTCTCTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAATGTGAACCACAAGCCTAGCAA CACCAAGGTGGACAAGAAGGTGGAACCCAAGAGCTGCGATAAGACACACACCT
GTCCTCCATGTCCTGCTCCAGAGCTGCTCGGAGGCCCTTCCGTGTTTCTGTTCCCT
CCAAAGCCTAAGGACACCCTGATGATCAGCAGAACCCCTGAAGTGACCTGCGTG
GTGGTGGATGTGTCCCACGAGGATCCCGAAGTGAAGTTCAATTGGTACGTCGAC
GGCGTGGAAGTGCACAATGCCAAGACCAAGCCTTGCGAGGAACAGTACGGCAGC
ACCTACAGATGCGTGTCCGTGCTGACAGTGCTGCACCAGGATTGGCTGAACGGC
AAAGAGTACAAGTGCAAGGTGTCCAACAAGGCCCTGCCTGCTCCTATCGAGAAA
ACCATCAGCAAGGCCAAGGGCCAGCCTAGAGAACCCCAGGTGTACACACTGCCT CCAAGCCGGAAAGAGATGACCAAGAATCAGGTGTCCCTGACCTGCCTGGTCAAG
GGCTTCTACCCTTCCGATATCGCCGTGGAATGGGAGAGCAATGGACAGCCCGAG
AACAACTACAAGACAACCCCTCCTGTGCTGAAGTCCGACGGCTCATTCTTCCTGT
ACAGCAAGCTGACCGTGGACAAGAGCAGATGGCAGCAGGGCAACGTGTTCAGCT
GCAGCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAACCACTACACCCAGAAGTCCCTGTCTCT
GAGCCCCGGCAAA
【0162】
末端リジンは、遺伝子における存否にかかわらず精製タンパク質には存在しない場合がある。この例示的なポリヌクレオチドの変形形態において、C末端リジンをコードするコドンは、不在である場合がある(すなわち配列番号139)。
第2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号113)
CAAGGCCAGTCTGGCCAAGGTCTTAGTTGTGAAGGTTGGGCGATGAATAGAGAA
CAATGTCGAGCCGGAGGTGGCTCGAGCGGCGGCTCTATCTCTTCCGGACTGCTGT
CCGGCAGATCCGACCAGCACGGCGGAGGATCCCAAATCCTGCTGACACAGTCTC CTGTCATACTGAGTGTCTCCCCCGGCGAGAGAGTCTCTTTCTCATGTCGGGCCAG
TCAGTCTATTGGGACTAACATACACTGGTACCAGCAACGCACCAACGGAAGCCC
GCGCCTGCTGATTAAATATGCGAGCGAAAGCATTAGCGGCATTCCGAGCCGCTTT
AGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGATTTTACCCTGAGCATTAACAGCGTGGAAAGC
GAAGATATTGCGGATTATTATTGCCAGCAGAACAACAACTGGCCGACCACCTTTG
GCGCGGGCACCAAACTGGAACTGAAACGTACGGTGGCTGCACCATCTGTCTTCA
TCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCT
GCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGC
CCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAG
CACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACA CAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAA
GAGCTTCAACAGGGGAGAGTGT
第2のポリペプチドはまた、配列番号115の配列を有するポリヌクレオチドによってもコードされる。
第3のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号114)
GATAAGACCCACACCTGTCCTCCATGTCCTGCTCCAGAACTGCTCGGCGGACCTT
CCGTGTTCCTGTTTCCTCCAAAGCCTAAGGACACCCTGATGATCAGCAGAACCCC
TGAAGTGACCTGCGTGGTGGTGGATGTGTCCCACGAGGATCCCGAAGTGAAGTT
CAATTGGTACGTGGACGGCGTGGAAGTGCACAACGCCAAGACAAAGCCCTGCGA
GGAACAGTACGGCAGCACCTACAGATGCGTGTCCGTGCTGACAGTGCTGCACCA
GGATTGGCTGAACGGCAAAGAGTACAAGTGCAAGGTGTCCAACAAGGCCCTGCC
TGCTCCTATCGAGAAAACCATCAGCAAGGCCAAGGGCCAGCCTAGAGAACCCCA
GGTGTACACACTGCCTCCAAGCCGGGAAGAGATGACCAAGAACCAGGTGTCCCT
GACCTGCCTGGTCAAGGGCTTCTACCCTTCCGATATCGCCGTGGAATGGGAGAGC
AATGGACAGCCCGAGAACAACTACGACACCACACCTCCAGTGCTGGACAGCGAC
GGCTCATTCTTCCTGTACAGCGACCTGACCGTGGACAAGAGCAGATGGCAGCAG GGCAACGTGTTCAGCTGCAGCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAACCACTACACC
CAGAAGTCCCTGAGCCTGTCTCCTGGCAAA
【0163】
この例示的なポリヌクレオチドの変形形態において、C末端リジンをコードするコドンは、不在である場合がある(すなわち配列番号141)。
【0164】
本開示のさらなる例示的な活性化可能なHBPCは実施例1に記載され、これは、配列番号30のアミノ酸配列(配列番号139または112(末端リジンは、遺伝子における存否にかかわらず精製タンパク質には存在しない)のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる)を有する第1のポリペプチド、配列番号31のアミノ酸配列(配列番号113または配列番号115のポリヌクレオチド配列によってコードされる)を有する第2のポリペプチド、及び配列番号32のアミノ酸配列(配列番号114(末端リジンは、遺伝子における存否にかかわらず精製タンパク質には存在しない)または配列番号141のポリヌクレオチド配列によってコードされる)を有する第3のポリペプチドを含む。
【0165】
実施例1に記載される本開示の別の例示的な活性化可能なHBPCにおいて、活性化可能なHBPCは、配列番号38のアミノ酸配列(配列番号142または143(末端リジンは、遺伝子における存否にかかわらず精製タンパク質には存在しない)のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる)を有する第1のポリペプチド、配列番号31のアミノ酸配列(配列番号113または配列番号115のポリヌクレオチド配列によってコードされる)を有する第2のポリペプチド、及び配列番号32のアミノ酸配列(配列番号114(末端リジンは、遺伝子における存否にかかわらず精製タンパク質には存在しない)、または配列番号141(末端リジンは、遺伝子における存否にかかわらず精製タンパク質には存在しない)のポリヌクレオチド配列によってコードされる)を有する第3のポリペプチドを含む。
【0166】
本明細書に記載のポリペプチドもしくはその抗原結合断片またはそのドメインをコードするポリヌクレオチドは、当該技術分野で周知の方法(例えば、PCR及び他の分子クローニング法)を使用して好適な供給源(例えば、ハイブリドーマ)に由来する核酸から生成すること、当該技術分野で周知の技法を使用して合成すること等が可能である。第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、宿主細胞における発現のため、ならびに例えば、キメラ抗体及びヒト化抗体またはその抗原結合断片を生成するためのさらなるクローニングのために、1つまたは複数のベクターにクローニングすることができる。
【0167】
本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、RNAまたはDNAであり得る。DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAが含まれ、DNAは、一本鎖または二本鎖であり得る。一本鎖の場合、DNAは、コード鎖または非コード(アンチセンス)鎖であり得る。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、cDNA、すなわち1つのさらなる内在性イントロンを欠いたDNAである。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、天然に存在しないポリヌクレオチドである。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、組換え生産される。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、単離される。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、実質的に純粋である。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、天然の構成要素から精製される。
【0168】
一部の態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCまたはその抗原結合断片をコードし、本明細書で提供される重鎖(VH)及び軽鎖(VL)ならびにCDRを含む。
【0169】
ベクター、宿主細胞、及び生産方法
本明細書では、本開示の第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び/または第3のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(それぞれ第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、及び第3のポリヌクレオチドに対応する)を含む1つまたは複数のベクターが提供される。一部の態様では、かかるベクターを使用して、本明細書の下記にさらに詳述されるように、宿主細胞からHBPCのポリペプチドを組換え生産してもよい。一部の態様では、ベクターは、1つまたは複数のプロモーター配列に作動可能に連結された第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、及び/または第3のポリヌクレオチドを含む。ある特定の態様では、本開示は、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(すなわち、第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、及び第3のポリヌクレオチド)を合わせて含む複数のベクターを提供し、この場合、複数とは、第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、及び第3のポリヌクレオチドのうちの2つ以下、またはわずか1つを含む少なくとも1つのベクターを含む。これらの態様では、複数のベクターにおける第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、及び第3のポリヌクレオチド配列は、通常、1つまたは複数のプロモーター配列に作動可能に連結されている。
【0170】
本明細書ではまた、本開示の活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを組換え発現させるための、上述のポリヌクレオチド及び/またはベクターのうちのいずれかを含む組換え宿主細胞も提供される。様々な宿主発現ベクター系を利用して、本明細書に記載のポリペプチドを発現させることができる(例えば、米国特許第5,807,715号を参照されたい)。かかる宿主発現系は、目的のコード配列を生産し、その後精製することができるビヒクルに相当するが、また、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされたときに、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片をインサイチュで発現することができる細胞にも相当する。上述のポリヌクレオチドのための組換え発現の宿主として使用するのに好適である、例となる宿主細胞には、哺乳類細胞系(例えば、COS(例えば、COS1またはCOS)、CHO、BHK、MDCK、HEK 293、NS0、PER.C6、VERO、CRL7O3O、HsS78Bst、HeLa、及びNIH 3T3、HEK-293T、HepG2、SP210、R1.1、B-W、L-M、BSC1、BSC40、YB/20、BMT10細胞等)が含まれる。組換え哺乳類宿主細胞の構築において用いられるベクターは、哺乳類細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳類ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含んでもよい。一部の態様では、組換え宿主細胞は、CHO細胞またはNS0細胞である。
【0171】
一部の態様では、本明細書に記載のポリペプチド、例えば、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び/または第3のポリペプチドの組換え発現は、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCをコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を伴う。HBPCをコードするポリヌクレオチドを含むベクター(複数可)は、当該技術分野で周知の技法を使用して、組換えDNA技術によって容易に生成することができる。当業者に周知の方法を使用して、本明細書に記載のポリペプチド、例えば、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び/または第3のポリペプチド、ならびに適切な転写及び翻訳制御シグナルをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技法、合成技法、及びインビボ遺伝子組換えが含まれる。また、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターも提供される。かかるベクターは、例えば、本明細書に記載のポリペプチド、例えば、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び/または第3のポリペプチドの定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むことができ(例えば、国際公開第WO86/05807号及び同第WO89/01036号、ならびに米国特許第5,122,464号を参照されたい)、ポリペプチドの可変ドメインをVH全体、VL全体、またはVH全体及びVL全体の両方の発現のためにかかるベクターにクローニングすることができる。
【0172】
発現ベクターは、従来の技法によって細胞(例えば、宿主細胞)にトランスフェクトすることができ、次いで得られた細胞を従来の技法によって培養して、本明細書に記載のHBPC(例えば、本明細書で提供される活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドのCDR、VH1、VH2、VL1、及びVL2)を生産することができる。故に、本明細書では、宿主細胞におけるかかる配列の発現のためにプロモーターに作動可能に連結された、本明細書に記載のHBPCをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞が提供される。一部の態様では、宿主細胞は、本明細書に記載のHBPCまたはそのドメインをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含有する。一部の態様では、宿主細胞は、3つの異なるベクターを含有し、第1のベクターが、本明細書に記載の第1のポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドを含み、第2のベクターが、本明細書に記載の第2のポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチドを含み、第3のベクターが、本明細書に記載の第3のポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチドを含む。
【0173】
一部の態様では、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを合わせて含むベクターの集団が本明細書で提供され、この場合、各ベクターは、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、または第3のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのうちの1つまたは2つのみを含む。ある特定の態様では、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、及び第3のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(すなわち、それぞれ第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、及び第3のポリヌクレオチド)を含む、単一のベクターが本明細書で提供される。
【0174】
一部の態様では、本開示は、活性化可能なHBPCを生産する方法を提供し、該方法は、(a)本開示のポリペプチドをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド(例えば、第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、及び/または第3のポリヌクレオチド、ならびに前述のポリヌクレオチドを含むベクター(複数可))を含む宿主細胞を液体培地中、活性化可能なHBPCを生産するのに十分な条件下で培養することと、(b)活性化可能なHBPCを回収することと、を含む。
【0175】
特定の態様では、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCを生産するための方法が本明細書で提供され、該方法は、宿主細胞においてかかるそのポリペプチドを発現させることを含む。より具体的には、活性化可能なHBPCを生産する方法が本明細書で提供され、該方法は、(a)本開示のポリペプチドをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を液体培地中、HBPCを生産するのに十分な条件下で培養することと、(b)活性化可能なHBPCを回収することと、を含む。
【0176】
別の態様では、該方法は、活性化可能なHBPCを含む水性組成物を、例えば、親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、セラミックハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー等といった単位操作に供することを含む、活性化可能なHBPCまたは他の工程内(in-process)組成物のバイオハーベスト(無細胞発現産物)を精製することをさらに含む。ある特定の態様では、単位操作は、セラミックハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーである。
【0177】
組成物
一部の態様では、本開示の活性化可能なHBPCまたはそのHBPCは、本明細書に開示される治療用途のうちのいずれかに有用な薬学的組成物において利用することができる。ある特定の態様では、薬学的組成物は、治療上有効量の1つまたは複数の活性化可能なHBPCを、薬学的に許容される希釈剤または担体と一緒に含む。他の態様では、薬学的組成物は、治療上有効量の1つまたは複数の活性化可能なHBPC、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、及び/またはアジュバントを含む。許容される製剤材料は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントにとって無毒である。薬学的組成物は、液体、凍結、または凍結乾燥組成物として製剤化され得る。
【0178】
ある特定の態様では、薬学的組成物は、例えば、組成物のpH、オスモル濃度、粘度、透明度、色、等張性、臭気、滅菌性、安定性、溶解または放出速度、吸着性または浸透性を改変、維持、または保存するための製剤材料を含有し得る。好適な製剤材料には、アミノ酸;抗菌剤;酸化防止剤;緩衝剤;増量剤;キレート剤;錯化剤;充填剤;単糖もしくは二糖等の炭水化物;タンパク質;着色剤、香味剤、及び希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー;低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウム等);防腐剤;溶媒(グリセリン、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコール等);糖アルコール;懸濁剤;界面活性剤もしくは湿潤剤;安定性向上剤;等張性向上剤;送達ビヒクル;及び/または医薬品アジュバントが含まれるが、これらに限定されない。薬学的組成物に組み込まれ得る好適な薬剤についての追加の詳細及び選択肢は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,22nd Edition,(Loyd V.Allen,ed.)Pharmaceutical Press(2013)、Ansel et al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th ed.,Lippencott Williams and Wilkins(2004)、及びKibbe et al.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd ed.,Pharmaceutical Press(2000)で提供される。
【0179】
薬学的組成物の構成成分は、例えば、意図される投与経路、送達形式、及び所望の投薬量に応じて選択される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,22nd Edition,(Loyd V.Allen,ed.)Pharmaceutical Press(2013)を参照されたい。組成物は、開示される抗原結合タンパク質の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、及びインビボクリアランス速度に影響を及ぼすように選択される。薬学的組成物中の主要なビヒクルまたは担体は、本質的に水性または非水性のいずれであることもできる。例えば、好適なビヒクルまたは担体は、注射用水または生理食塩液であり得る。ある特定の態様では、抗原結合タンパク質組成物は、所望の純度を有する選択した組成物を任意選択的な製剤化剤と混合することによって、凍結乾燥ケークまたは水溶液の形態で保管用に調製され得る。さらに、ある特定の態様では、抗原結合タンパク質は、適切な賦形剤を使用して凍結乾燥物として製剤化され得る。
【0180】
ある特定の製剤において、活性化可能なHBPCの濃度は、少なくとも2mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、20mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/ml、100mg/ml、110mg/ml、120mg/ml、130mg/ml、140mg/ml、または150mg/mlである。他の製剤において、活性化可能なHBPCは、10~20mg/ml、20~40mg/ml、40~60mg/ml、60~80mg/ml、または80~100mg/mlの濃度を有する。
【0181】
一部の組成物は、緩衝剤またはpH調整剤を含む。代表的な緩衝剤には、有機酸塩(クエン酸、酢酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、またはフタル酸の塩等)、トリス、リン酸緩衝液、及び一部の事例では、下記に記載されるようなアミノ酸が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の態様では、緩衝剤は、組成物を生理的pHまたはそれよりも若干低いpH、典型的には約5~約8のpH範囲内に維持するために使用される。一部の組成物は、約5~6、6~7、または7~8のpHを有する。他の態様では、pHは、5.5~6.5、6.5~7.5、または7.5~8.5である。
【0182】
一部の組成物中では増量、安定剤、及び/または酸化防止剤として遊離アミノ酸またはタンパク質が使用される。例として、製剤中のタンパク質を安定化するためにリジン、プロリン、セリン、及びアラニンが使用され得る。ケークの妥当な構造及び特性を確保するためにグリシンが凍結乾燥において有用である。液体製剤及び凍結乾燥製剤の両方においてタンパク質凝集を阻害するのにアルギニンが有用であり得る。メチオニンが酸化防止剤として有用である。一部の態様ではグルタミン及びアスパラギンが含まれる。一部の製剤にはアミノ酸がその緩衝能の故に含まれる。かかるアミノ酸には、例えば、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテーム等が含まれる。ある特定の製剤はまた、血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)及び組換えヒトアルブミン(rHA))、ゼラチン、カゼイン等といったタンパク質賦形剤も含む。
【0183】
一部の組成物は、ポリオールを含む。ポリオールには、糖(例えば、マンニトール、スクロース、トレハロース、及びソルビトール)、ならびに、例えば、グリセロール及びプロピレングリコール、及びポリエチレングリコール(PEG)及び関連物質等の多価アルコールが含まれる。ポリオールは、コスモトロピックである。それらは、タンパク質を物理的分解及び化学分解プロセスから保護するために液体製剤及び凍結乾燥製剤の両方において有用な安定剤である。ポリオールはまた、製剤の等張性を調整するためにも有用である。
【0184】
ある特定の組成物は、安定剤としてマンニトールを含む。それは一般に、凍結保護剤、例えば、スクロースとともに使用される。ソルビトール及びスクロースは、等張性を調整するため、及び輸送中または製造プロセスの間のバルク製品の調製中の凍結融解ストレスに対して保護するための安定剤として有用である。PEGは、タンパク質を安定化するため及び凍結保護剤として有用であり、この点に関して本開示で使用され得る。
【0185】
一部の製剤には単糖、二糖、三糖、四糖、及びオリゴ糖を含めた糖;アルジトール、アルドン酸、エステル化糖等といった誘導糖;ならびに多糖または糖ポリマーが含まれ得る。例えば、好適な炭水化物賦形剤には、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボース等といった単糖;ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース等といった二糖;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン等といった多糖;及びマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ミオイノシトール等といったアルジトールが含まれる。
【0186】
ある特定の製剤には界面活性剤が含まれ得る。界面活性剤は、典型的に、気液、固液、及び液液界面における表面へのタンパク質の吸着及びその後の凝集を阻止、最小化、または低減するため、ならびにタンパク質の立体構造安定性を制御するために使用される。好適な界面活性剤には、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ソルビタンエステルの他の脂肪酸エステル、Triton界面活性剤、レシチン、チロキサポール、及びポロキサマー188が含まれる。
【0187】
一部の態様では、薬学的組成物中に1つまたは複数の酸化防止剤が含まれる。酸化防止剤賦形剤を使用して、タンパク質の酸化的分解を阻止することができる。還元剤、酸素/フリーラジカルスカベンジャー、及びキレート剤がこの点に関して有用な酸化防止剤である。酸化防止剤は典型的には、水溶性であり、生成物の貯蔵寿命全体にわたってそれらの活性を維持する。EDTAは、別の有用な酸化防止剤である。
【0188】
ある特定の製剤は、金属イオンを含み、これはタンパク質補因子であり、タンパク質配位錯体を形成するのに必要である。金属イオンはまた、タンパク質を分解する一部のプロセスも阻害することができる。例えば、マグネシウムイオン(10~120mM)を使用して、アスパラギン酸からイソアスパラギン酸への異性化を阻害することができる。
【0189】
ある特定の製剤には等張性向上剤もまた含まれ得る。かかる薬剤の例としては、ハロゲン化アルカリ金属、好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、マンニトール、及びソルビトールが挙げられる。
【0190】
ある特定の製剤には1つまたは複数の防腐剤が含まれ得る。防腐剤は、同じ容器からの2回以上の抽出を伴う複数回投与用の非経口製剤を開発する際に必要である。それらの主要な機能は、医薬品の貯蔵寿命または有効期間全体にわたって微生物の増殖を阻害し、製品の滅菌状態を確保することである。好適な防腐剤には、水性希釈剤中のフェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、亜硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、フェニルアルコール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えば、六水和物)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、チメロサール、安息香酸、サリチル酸、クロルヘキシジン、またはそれらの混合物が含まれる。
【0191】
薬学的組成物は、その意図される投与経路と適合性であるように製剤化される。投与経路の例は、静脈内(IV)、皮内、吸入、経皮、局所、経粘膜、及び直腸投与である。
【0192】
非経口投与(例えば、静脈内、皮下、眼内、腹腔内、筋肉内)に好適な製剤構成成分には、注射用水、食塩液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒等の滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤;EDTA等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩等の緩衝液;及び塩化ナトリウムまたはデキストロース等の等張性の調整のための薬剤が含まれる。
【0193】
静脈内投与の場合、好適な担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。担体は、製造条件下で安定であるべきであり、微生物に対して保護されるべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、及びそれらの好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。
【0194】
送達形態に応じた適切な製剤についてのさらなる手引きは、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,22nd Edition,(Loyd V.Allen,ed.)Pharmaceutical Press(2013)で提供される。
【0195】
薬学的製剤は滅菌されていることが可能である。滅菌は、任意の好適な方法、例えば、滅菌濾過膜に通した濾過によって遂行することができる。組成物が凍結乾燥される場合、凍結乾燥及び再構成の前または後に濾過滅菌を実施することができる。実施例7及び8で実証されるように、本明細書に記載の活性化可能なHBPCは、比較的高い濃度であっても比較的耐凝集性であるようである。故に、別の態様では、本明細書に記載の活性化可能なHBPCのうちのいずれか、及び水を含む組成物が本明細書で提供され、該活性化可能なHBPCは、少なくとも1mg/mLの濃度で存在し、該組成物は、少なくとも約95%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約96%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約97%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約98%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約99%単量体の活性化可能なHBPCを含む。本明細書で使用されるとき、「単量体の活性化可能なHBPC」という用語は、非凝集形態の活性化可能なHBPCを指す。これらの態様のうちのある特定のものにおいて、該組成物は、少なくとも約2mg/ml、及び少なくとも約95%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約96%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約97%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約98%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約99%単量体の活性化可能なHBPCを含む。一部の態様では、該組成物は、少なくとも約3mg/ml、及び少なくとも約95%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約96%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約97%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約98%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約99%単量体の活性化可能なHBPCを含む。一部の態様では、該組成物は、少なくとも約4mg/ml、及び少なくとも約95%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約96%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約97%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約98%単量体の活性化可能なHBPC、または少なくとも約99%単量体の活性化可能なHBPCを含む。単量体の活性化可能なHBPCのパーセンテージは、例えば、実施例7に例示されるようなサイズ排除(SE)-HPLCによって容易に決定することができ、この場合、単量体の活性化可能なHBPCのパーセントが、ピーク総面積に基づいた単量体の活性化可能なHBPCに対応するピーク面積パーセンテージとして決定される。
【実施例
【0196】
この実施例の節における実施例は、限定としてではなく例示説明として提供されるものである。
【0197】
実施例1:活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの構築及び発現
この実施例では、図1に示される構造を有する、2つの例示的な活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCである複合体-57及び複合体-67を調製した。図1を参照して、活性化可能な抗EGFR、抗CD3 HBPCの各々を下記に記載される3つのポリペプチドとして構築した。
(a)CD3マスキング部分(MM1)(100)、第1の切断可能な部分(CM1)(101)、抗CD3 scFv(102)(リンカーを介してつなげられたVH1及びVL1配列を含む)、一緒に(103)として示される抗EGFR重鎖可変ドメイン(VH2)(上)及びCH1ドメイン(下)、これらがヒンジ領域(109)を介して連結されている第1のFcドメイン(Fc1)(104)を含む、第1のポリペプチド;ならびに
(b)EGFRマスキング部分(MM2)(105)、第2の切断可能な部分(CM2)(106)、ならびに一緒に(107)として示される抗EGFR軽鎖可変ドメイン(VL2)(上)及び定常軽鎖ドメイン(CL)(下)を含む、第2のポリペプチド;ならびに
(c)ヒンジ領域(110)及び第2のFcドメイン(Fc2)(108)を含む、第3のポリペプチド。図1で見て取れるように、第1のFcドメイン及び第2のFcドメインは互いに結合し、抗EGFR重鎖及び軽鎖可変ドメインは、EGFRに特異的に結合するEGFR標的化ドメインを形成する。複合体-57及び複合体-67は、同じ抗EGFR標的化ドメインを含んでいたが、異なる抗CD3 scFvを含んでいた。複合体-67の構成要素は表4A~4Cに列挙され、複合体-57の構成要素は表5A~5Cに列挙される。
【表3】
対応するポリヌクレオチド配列は、配列番号112(末端リジンは、遺伝子における存否にかかわらず精製タンパク質には存在しない)または配列番号139である。
++N末端スペーサー、配列番号33を含有する。
ΔFc1は、CH1(配列番号26)-ヒンジ(配列番号34)配列のC末端に位置する。
【表4】
対応するポリヌクレオチド配列は、配列番号113または代替として配列番号115である。
++N末端スペーサー、配列番号117を含有する。
【表5】
対応するポリヌクレオチド配列は、配列番号114(末端リジンは、遺伝子における存否にかかわらず精製タンパク質には存在しない)または配列番号141である。
++Fc2のN末端に位置するヒンジ(配列番号35)を含有する。
【表6】
対応するポリヌクレオチド配列は、配列番号143(末端リジンは、遺伝子における存否にかかわらず精製タンパク質には存在しない)または配列番号142である。
++N末端スペーサー(配列番号117)を含有する。
ΔFc1は、CH1(配列番号26)-ヒンジ(配列番号34)配列のC末端に位置する。
【表7】
対応するポリヌクレオチド配列は、配列番号113または代替として配列番号115である。
++N末端スペーサー、配列番号117を含有する。
【表8】
対応するポリヌクレオチド配列は、配列番号114(末端リジンは、遺伝子における存在にかかわらず精製タンパク質には存在しない)または配列番号141である。
++Fc2のN末端に位置するヒンジ(配列番号35)を含有する。
【0198】
対照としての活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの構築
対照としての活性化可能な二重特異性構築物(本明細書で「CI106」と称される)は、国際特許出願公開第WO2019/075405号に記載されるように調製した(同文献は参照により本明細書に援用される)。CI106は、2本の同一の重鎖鎖(2つの第1のポリペプチド)及び同一の軽鎖(2つの第2のポリペプチド)に対応する4つのポリペプチドから成り立ち、各重鎖及び軽鎖が二重特異性構築物のアームを形成する、活性化可能なデュアルアーム二価二重特異性構築物である。CI106は、それが各種の結合ドメインを2つ(すなわち、2つのEGFR結合ドメイン及び2つのCD3結合ドメイン)有するという点で「二価」である。軽鎖のアミノ酸配列は、複合体-67及び複合体-57の第2のポリペプチドのアミノ酸配列と同一である。CI106の重鎖及び複合体-67の第1のポリペプチドは、同一のスペーサー、切断可能な部分、抗EGFR VH、切断可能な部分の構成要素を有する。CI106の重鎖及び複合体-57の第1のポリペプチドは、同一のスペーサー、抗CD3 MM/MM1、切断可能な部分、及び抗CD3 VL/VH(及び同一の抗CD3 scFv)、ならびに抗EGFR VHの構成要素を有する。CI106に関しては、4つ全ての標的化ドメイン(2つの抗CD3結合ドメイン及び2つの抗EGFR結合ドメイン)をマスクした。CI106の構成要素が表6A~6Bで提供される。
【表9】
対応するポリヌクレオチド配列は、配列番号125(タンパク質は、発現/精製中に末端リジンを喪失するようである)である。
++N末端スペーサー(配列番号116)を含有する。
ΔFcドメインは、CH1(配列番号26)-ヒンジ(配列番号34)配列のC末端に位置する。
【表10】
対応するポリヌクレオチド配列は、配列番号113または代替として配列番号115である。
++N末端スペーサー、配列番号117を含有する。
【0199】
実施例2.EGFR HT-29細胞及びCD3ε Jurkat細胞への活性化可能な抗EGFR、抗CD3ヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの結合
記載される抗EGFR及び抗CD3マスキングペプチドが、EGFR及びCD3への活性化可能なヘテロ多量体二重特異性ポリペプチドの結合を阻害し得るかどうかを評定するために、フローサイトメトリーベースの結合アッセイを実施した。
【0200】
HT-29-luc2(Perkin Elmer,Inc.,Waltham,MA(旧称Caliper Life Sciences,Inc.)及びJurkat(クローンE6-1、ATCC、TIB-152)細胞を、熱失活させた10%ウシ胎児血清(HI-FBS,Life Technologies、カタログ10438-026)を補充したRPMI1640+glutamax(Life Technologies、カタログ72400~047)中で培養した。示されるように、「活性化」(本明細書で「act」と付記される)分子をマスクされたHBPCとして生産し、タンパク質分解により切断して、活性化形態を生産した。活性化可能なHBPCは生産したが、実験前にタンパク質分解切断を行わなかった。以下のポリペプチド複合体を試験した:act-CI106(二価ダブルアーム二重特異性構築物)、act-複合体-57(HBPC)、及びact-複合体-67(HBPC)、ならびに活性化可能な(マスクされた)HBPC複合体-57、(マスクされた)HBPC複合体-67、及びデュアルマスク二価ダブルアーム二重特異性構築物CI106。実施例1で言及されるように、CI106及び複合体-57においてはCD3結合剤(抗CD3 scFv v16)及びマスク(MM H20GG)の1つの組み合わせを利用し、複合体-67においてはCD3結合剤(抗CD3 scFv I2C)及びマスク(ML15)の異なる組み合わせを利用した。
【0201】
HT29-luc2細胞をVersene(商標)(Life Technologies、カタログ15040-066)で剥離し、洗浄し、96ウェルプレートにおよそ150,000細胞/ウェルでプレートし、50μLの活性化HBPCまたは活性化可能な(マスクされた)HBPCに再懸濁した。Jurkat細胞を計数し、HT29-luc2細胞について記載したようにプレートした。活性化(マスクされていない)HBPCまたは活性化可能な(マスクされた)HBPCのタイトレーションを図2A及び2Bに示される濃度で開始し、続いてFACS染色緩衝液+2%FBS(BD Pharmingen、カタログ554656)中で3倍段階希釈した。細胞を振とうしながら4℃で約1時間インキュベートし、採取し、2×200μLのFACS染色緩衝液で洗浄した。細胞を50μLのAlexa Fluor 488コンジュゲート抗ヒトIgG Fc(10μg/ml、Jackson ImmunoResearch)に再懸濁し、振とうしながら4℃で約1時間インキュベートした。細胞を採取し、洗浄し、2.5μg/mLの7-AAD(BD Biosciences、カタログ559925)を含有する最終体積200μLのFACS染色緩衝液に再懸濁した。二次抗体単独で染色した細胞を陰性対照として使用した。データをAttune NxTフローサイトメーターで取得し、FlowJo(登録商標)V10(Treestar)を使用して生細胞の蛍光強度の中央値(MFI)を算出した。バックグラウンド減算済みのMFIデータを、曲線当てはめ分析を使用してGraphPad Prismでグラフ化した。
【0202】
図2A~2Bに示されるように、活性化可能なHBPCである複合体-57及び複合体-67の両方、ならびに対照CI106は、活性化(マスクされていない)複合体-57、活性化複合体-67、及び活性化CI106と比べてEGFR標的及びCD3標的の両方への結合の低減を示した。結合の低減は、結合曲線の右方向の移行によって表わされる。この細胞上結合実験におけるEGFRマスキング効率は、複合体-57が105、複合体-67が338、及びCI106が594であった。
【0203】
実施例3.活性化可能なHBPC及び活性化HBPCの生物活性
活性化可能な(マスクされた)HBPC及び活性化(マスクされていない)HBPCの生物活性を、細胞傷害性アッセイを使用してアッセイした。ヒトPBMCをStemcell Technologies(Vancouver,Canada)から購入し、熱失活させた5%ヒト血清(Sigma、カタログH3667)を補充したRPMI-1640+glutamax中5:1のE(CD3+):T比でEGFR発現がん細胞株HT29-luc2(Perkin Elmer,Inc.,Waltham,MA(旧称Caliper Life Sciences,Inc.))と共培養した。act-CI106、act-複合体-57及びact-複合体-67、ならびに活性化可能な(マスクされた)CI106、複合体-57、及び複合体-67のタイトレーションを試験した。48時間後、ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega,Madison,WI、カタログE6130)を使用して細胞傷害作用を評価した。発光をInfinite(登録商標)M200 Pro(Tecan Trading AG,Switzerland)で測定した。細胞傷害作用パーセントを算出し、曲線当てはめ分析を用いてGraphPad PRISMでプロットした。EC50を算出することによって活性化された分子の効力を比較した。マスキング効率を各分子について未変化EC50対活性化EC50の比として算出した。
【0204】
図3A及び3Bに示されるように、活性化可能な(マスクされた)HBPCは、活性化(マスクされていない)二重特異性抗体と比べて移行した用量応答曲線を有する。このアッセイにおいて、図3Aのデータは、CI106について29,650のマスキング効率及び複合体-57について1,034のマスキング効率を示す。図3Bのデータは、CI106について26,537のマスキング効率及び複合体-67について7,141のマスキング効率を示す。複合体-57は全般的に、このアッセイを使用した複数の実験に基づいて、複合体-67と比較して10~42倍低減された効力を示した。
【0205】
実施例4.マウスにおいて樹立されたHT29腫瘍のHBPCにより誘導される退縮
この実施例では、活性化可能な(マスクされた)HBPC複合体-67及び対照CI106を、ヒトPBMC移植NSGマウスにおいて樹立されたHT29異種移植腫瘍の退縮を誘導するまたはその増殖を低減する能力に関して分析した。
【0206】
ヒト結腸癌細胞株HT29-luc2(Perkin Elmer,Inc.,Waltham,MA))を、確立された手順に従って培養した。精製された凍結ヒトPBMCは、Hemacare,Inc.(Van Nuys,CA)から入手した。NSG(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ)マウスは、The Jackson Laboratories(Bar Harbor,ME)から入手した。
【0207】
0日目、各マウスの右脇腹に100μLのRPMI+Glutamax無血清培地中の2×10個のHT29-luc2細胞を皮下接種した。3日目、単一のドナー由来の以前に凍結されていたPBMCを1:1のCD3+ T細胞対腫瘍細胞の比で投与した(腹腔内)。腫瘍体積が150~200mmに達したとき(およそ12日目)、マウスを処置群に無作為割付けし、表7に従って投与を行った。腫瘍体積及び体重を週2回測定した。複合体-67の用量レベルは、CI106と複合体-67との間の分子量の差異を考慮に入れるように調整した。
【表11】
【0208】
腫瘍体積対初回処置投与(0日目)後日数のプロットを描く図4に示されるように、HT29-luc2異種移植腫瘍の増殖に対する複合体-67の用量依存的効果が存在する。複合体-67は、等価用量(1mg/kgのCI106及び0.6mg/kgの複合体-67)で、対照であるCI106よりも効力の高い抗腫瘍活性を実証した(p=0.0099、ダネットによるRMANOVA)。
【0209】
実施例5.マウスにおいて樹立されたHCT116腫瘍の活性化可能なHBPCでの処置後の腫瘍退縮
活性化(マスクされていない)HBPCであるact-複合体-67、及び活性化可能な(マスクされた)HBPCである複合体-67を、ヒトT細胞移植NSGマウスにおいて樹立されたHCT116異種移植腫瘍の退縮を誘導するまたはその増殖を低減する能力に関して分析した。ヒト結腸癌細胞株HCT116(ATCC)を、確立された手順に従ってRPMI+Glutamax+10%FBS中で培養した。腫瘍モデルは実施例4に記載されるように実施した。表8に従ってマウスに投与を行った。
【表12】
【0210】
実施例6:セラミックハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー(CHT)での精製後の単量体パーセントの評価
デュアルマスクCI106対照及び活性化可能な(マスクされた)HBPC複合体-67を、精製中の高濃度における二量体化の量を比較するためにセラミックハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムを使用して精製した。これは精製プロセスの各ステップにおける単量体のパーセンテージを分析することによって評定した。
【0211】
試料を、20g/L樹脂で負荷したCHTタイプI、40μmビーズカラム(Bioradカタログ157-0040及び番号157-0041)に負荷した。カラムを平衡化緩衝液である10mMのNaPO4、100mMのヒスチジン緩衝液(pH6.5)で洗浄し、次いでCI106については10mMのNaPO4、100mMのヒスチジン、200mMのリジン-HCl緩衝液(pH6.5)、複合体-67については10mMのNaPO4、100mMのヒスチジン100mMのリジン-HCl緩衝液(pH6.5)により2mL画分で溶出させた。CI106を2mL画分で収集し、次いで5つの画分をプールして溶出液を形成させた。CI106については、ピーク収集を25mAU前後で開始し、300mAU前後で停止した。複合体-67は1本の管に収集し、ピーク収集を100mAUで開始し、500mAUで停止した。これに続いて、500mMのNaPO4(pH7.0)のストリップ緩衝液ステップを行った。各画分のタンパク質濃度を280nmの波長におけるUV吸光度によって定量した。各画分における単量体パーセントを、ピーク総面積に基づいてSE-HPLC(分析規模のサイズ排除クロマトグラフィー)によって決定した。
【0212】
クロマトグラフィーの結合段階中、タンパク質は、最初にカラムの上部に結合し、上位部位が充満してから初めてカラムの下方に移動する。このことは、分子がカラムに高濃度となることにつながる。多量体形態のCI106及び複合体-67は、単量体形態よりも強い親和性でカラムに結合し、したがって、カラムから完全に除去するためにより強力な緩衝液を必要とする。したがって、カラムからより弱い緩衝液で溶出させ、次いでより強力な緩衝液でストリップする場合、溶出液は、ストリッピング液よりも低いパーセンテージの二量体(より高いパーセンテージの単量体)を有する。表10に示されるように、複合体-67(活性化可能なHBPC)の送液の結果、溶出液中の単量体パーセントは7.6%増加し、高分子量の材料をストリップステップまでカラムに残し、溶出液中の回収率が77%となった。これはCI106の送液と対照的であり、CI106の送液の結果、より多くの二量体材料(わずか30.6%の単量体)がストリップ時までカラムに留まったにもかかわらず、溶出液中の単量体パーセントは5.4%減少して65.0%であり、溶出液中の回収率が81%となった。
【表13】
【0213】
これらの結果は、複合体-67がカラムに高濃度であるときに追加の二量体化を受けず、溶出液中の単量体がCI106のわずか65%と比較して98.5%で、ほぼ全ての高分子種の除去をもたらすことを示唆する。CI106の場合、元の負荷量よりも溶出液プール中により多くの高分子種が存在する。複合体-67の改善された挙動により、CHTタイプ1クロマトグラフィーを介した高度に単量体の複合体-67の精製が可能となる。しかしながら、CI106は、CI106がカラムに高濃度となるときに起こる二量体化に起因して、この結合/溶出クロマトグラフィー法または評価したいずれの結合/溶出クロマトグラフィー法によっても精製することができなかった。
【0214】
実施例7:遠心濃縮機での濃縮を介した濃度依存的二量体化の評定
複合体-67、複合体-57、及びデュアルマスク対照CI106のプロテインA及びSEC精製調製物を、遠心濃縮及び最高濃度での一晩のインキュベーション後の単量体パーセントに関して比較した。
【0215】
複合体-67、複合体-57、及びCI106をプロテインA及びSECで精製し、次いで低pH緩衝液(10mMの酢酸塩、100mMのリジン(pH6))中で調合した。試料をPBS(753-45-01)中に1:15に希釈し、Pierce(商標)タンパク質コンセントレータPES 10K MWCO 0.5ml(Thermo Fisherカタログ番号88513)を使用して、各濃度において14,000RPMで2分間遠心分離することによって濃縮した。最高濃度の試料を一晩保管し、単量体パーセントに関して評定した。得られた濃度及び単量体量パーセントが表10及び図8に示される。


【表14】
【0216】
図6及び表10は、複合体-67が、濃度を増加させるにつれて高い単量体パーセンテージ(98%~99%)及び非常に低い溶液中凝集度で維持されることを示す。これはCI106と対照的であり、CI106は、濃度を増加させるにつれて顕著な濃度依存的二量体化を示す。複合体-57は、濃度が増加するにつれてごくわずかな濃度依存的二量体化を示し、安定な単量体パーセンテージを維持した。複合体-67はまた、最高濃度での一晩のインキュベーション中にも単量体パーセンテージを維持し、より高い濃度での単量体パーセンテージの安定性が実証された。
【0217】
実施例8:活性化可能な抗EGFR、抗CD3 TCB構築物CI107の安全性及び有効性
この研究では、EGFRを発現している腫瘍の処置に対する治療可能性を評定するために、CI106対照(上述)の同じ構造形式を有する抗EGFR、抗CD3 TCB構築物であるCI107の安全性及び有効性を前臨床モデルにおいて評価した。CI107は、国際特許出願公開第WO2019/075405号に記載されるように調製した(同文献は参照により本明細書に援用される)。CI107 TCB構築物は、この実施例で代替的に「T細胞誘導二重特異性抗体」すなわち「TCB」と称される。
【0218】
方法
動物試験
全ての動物試験は、各試験を実施する施設を管理する動物実験委員会の規制に準拠して実施した。マウス異種移植研究は、CytomX Therapeutics,Inc(CytomX)によって実施され、カニクイザル試験は、Altasciences(Everett,WA)によって実施された。全ての動物試験は、USDA動物福祉法及び実験動物の管理と使用に関する指針によって定められる規制に従った。
【0219】
材料
この研究で説明される、CI107、CI128、CI020、CI011、CI040、CI048、及びCI104を含めた全てのTCB及び他の構築物は、CytomX Therapeutics,Inc.によって生成された(WO2016/014974及びWO2019/075405を参照されたい)。CI107、CI128、CI020、CI011、CI040、及びCI104は、CI106と同じ構造形式を有する。CI048は、活性化CI011に対応する。活性化TCBは、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)でのインビトロ処理、続いてSEC精製によって生成された(Desnoyers 2013)。HT29-Luc2細胞は、Caliper Life Sciences(Hopkinton,MA)から入手し、HCT116及びJurkat細胞は、American Type Culture Collection(ATCC)から入手した。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)は、HemaCare Corporation(Northridge,CA)、AllCells(Alameda,CA)、またはSTEMCELL Technologies(Seattle,WA)から個々のドナー由来の細胞の冷凍保存バイアルとして入手した。NOD.Cg-Prkcdscid Il2rg tm1Wjl/SzJ(NSG)マウスは、Jackson Laboratories(Sacramento,CA)から入手した。
【0220】
細胞結合アッセイ
HT29及びJurkat細胞を完全培地中で維持した。HT29細胞を、Versene(商標)細胞解離緩衝液を使用して採取した。細胞を250×gで5~10分間遠心分離し、2%FBSを含有するFACS緩衝液(BD Pharminogen)に再懸濁した。細胞をV底96ウェルプレート中、150,000/ウェルでプレートし、複合体-07またはインビトロプロテアーゼ活性化CI104により、HT29及びJurkat細胞の両方に対しては1.5μMのCI107、HT29細胞に対しては0.05μMの活性化CI104、ならびにJurkat細胞に対しては0.5μMの活性化CI104で開始する、FACS緩衝液中の3倍段階希釈によって得た種々の濃度で処理した。細胞を4℃で1時間インキュベートし、FACS緩衝液で2回洗浄し、10μg/mlのAlexa Fluor 647抗ヒトFc二次抗体に再懸濁した。次いで細胞を光から保護しながら4℃で30~60分間インキュベートし、FACS緩衝液で2回洗浄し、7-AADを含有するFACS緩衝液に再懸濁し、MACSQuantフローサイトメーター(Miltenyi Biotech)で分析した。平均蛍光強度データを二次抗体のバックグラウンドシグナルに対して補正し、Graphpad Prismでグラフ化し、EC50値を算出した。
【0221】
細胞傷害性アッセイ
HCT116-Luc2またはHT29-Luc2をRPMI+5%ヒト血清中、96ウェルの白色平底組織培養処理済みプレート(Costar番号3917)に10,000細胞/ウェルでプレートした。ヒトPBMCを新たに解凍し、RPMI+5%ヒト血清で2回洗浄し、100,000個のPBMCをRPMI+5%ヒト血清中、HCT116-Luc2またはHT29-Luc2を含むウェルに添加した。次いでプロテアーゼ活性化TCBまたはCI107を、3倍段階希釈によって得た種々の濃度でウェルに添加した。対照ウェルは、未処理の標的+エフェクター細胞、標的細胞のみ、エフェクター細胞のみ、または培地のみを含んでいた。次いでプレートを37℃及び5%CO2でおよそ48時間インキュベートした。ONE-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega、番号E6120)及びTecanプレートリーダーを使用して細胞生存率を測定した。細胞傷害作用パーセントを以下のように算出した:(1-(実験RLU/未処理RLU平均値))×100。
【0222】
インビトロT細胞活性化及びサイトカイン分析
T細胞活性化を、HT29-Luc2細胞またはHCT116-Luc2細胞と共培養したPBMCにおけるCD69発現の誘導によって測定した。HT29-Luc2細胞またはHCT116-Luc2細胞をU底非接着性プレートに10,000細胞/ウェルでプレートした。ヒトPBMCを新たに解凍し、血清を含有するRPMIで2回洗浄し、100,000個のPBMC/ウェルを、腫瘍細胞を含むプレートに添加した。PBMCのみを含む複製プレートをフローサイトメトリー蛍光補正対照のために播種した。CI107、活性化CI107、またはCI128の3倍段階希釈液を培地中で調製し、プレートした細胞に添加した。細胞を37℃及び5%COで16時間インキュベートした。フローサイトメトリー分析に備えて、プレートを250×gで10~15分間遠心分離した。上清をサイトカイン分析のために取り出し、Fcブロック(Human TruStain FcX,BioLegend)を各ウェルに添加し、プレートを10分間インキュベートした。抗CD45-FITC(BioLegend)、抗CD3-パシフィックブルー(BioLegend)、抗CD8a-APC(BioLegend)、及び抗CD69-PE-Cy7(BioLegend)を含有する抗体カクテル、または適切な蛍光補正対照をウェルに添加し、プレートを光から保護して振とうしながら4℃で30~60分間インキュベートした。次いでプレートをFACS緩衝液で洗浄し、7-AADを含有するFACS緩衝液に再懸濁した。発光を、Attuneフローサイトメーターを使用して測定し、PBMCに相当する15,000個の事象を収集した。
【0223】
サイトカイン分析には、Meso Scale Discovery U-PLEXプレートアッセイ(Meso Scale Diagnostics,Rockville,MA)を使用した。MCP-1、TNF-α、IL-6、IL-2、及びIFN-γのレベルを評価するためにU-PLEXプレートを製造業者のプロトコルに従って調製した。PBMCと共培養し、マスクされた(活性化可能な)CI107、活性化(本明細書で「act-」とも称される)CI107、またはCI128で処理したHT29-Luc2またはHCT116-Luc2から収集した上清試料を希釈し、プレートに添加し、製造業者の指示に従って処理した。
【0224】
インビボ有効性研究
インビボ実験のために、HT29-Luc2腫瘍またはHCT116腫瘍を保有し、ヒトPBMCの腹腔内(IP)注射からもたらされたヒトT細胞を移植されたマウスにおいて、腫瘍増殖に対するTCBの効果を測定した。0日目、200万個のHT29-Luc2細胞またはHCT116細胞を100μlの無血清RPMI中、雌性NSGマウスの脇腹に皮下注射した。3日目、単一のドナー由来の凍結PBMCを新たに解凍し、100~200μLのRPMI+Glutamax無血清培地中、IP注射を介して投与した。PBMCは、CD3+ T細胞パーセンテージに関して以前に特性評価されており、インビボ投与に使用するPBMCの数は、1:1のCD3+ T細胞対腫瘍細胞の比に基づいていた。およそ12日目の腫瘍測定値を使用して、TCB、対照物質、またはビヒクルの静脈内(IV)投与前にマウスを無作為割付けした。動物に試験物質を毎週、3週間にわたって投与し、腫瘍体積及び体重を週2回記録した。活性化TCBCI104をインビボ研究に使用した。CI104構築物は、切断可能なリンカーを使用してCD3マスクをscFvにテザリングした点のみがCI107と異なる。インビトロでのプロテアーゼ活性化によりマスクが完全に除去されると、活性化CI104は活性化CI107と同一であり、これを使用して活性化CI107の活性を評定することができ、その後のインビトロ細胞傷害性研究により、活性化CI104の活性が活性化CI107のそれと同じであることが検証された。
【0225】
非ヒト霊長類における安全性研究
雄性カニクイザルに試験物質の低速IVボーラス注射を、試験物質に応じて1日目、または1日目及び15日目に1回与えた。試験物質の投与後、臨床観察を1日2回実施した。血液試料をサイトカイン放出、血清生化学、血液、及び毒物動態の分析のために投与後の種々の時点で収集した。サイトカイン分析は、Life Technologies Monkey Magnetic 29-Plex Panel Kit(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を使用して血清試料に対して実施した。毒物動態分析については、試料を血漿へと処理し、AIT Bioscience(Indianapolis IN)またはCytomXによる分析のための発送に先立って-60~-86℃で保管した。試験物質の血漿中濃度を、抗イディオタイプキャプチャー抗体及び抗ヒトIgG(Fc)キャプチャー抗体を使用してELISAによって測定した。毒物動態分析は、Phoenix WinNonlin v6.4(Certara,Princeton,NJ)を利用したノンコンパートメント解析を使用してNorthwest PK Solutionsによって実施された。
【0226】
結果
CI107は、抗EGFRドメイン及び抗CD3ドメインを含有するデュアルマスク(活性化可能な)デュアルアーム二価二重特異性分子として設計された。CI107は、SP34由来の抗CD3ε scFvが重鎖のN末端に融合された、セツキシマブ由来の抗体を使用して生成した。CI107は、Fc機能をサイレンシングする変異を含むヒトIgG1 Fcドメインを有する。CI107を生成するために、抗EGFR抗体要素に特異的なマスキングペプチドを、以前に記載されたように(Desnoyers 2013)、柔軟なGly-Serリッチペプチドリンカーが側面に位置するプロテアーゼ切断可能な基質リンカーを使用して、軽鎖のN末端に融合した。抗CD3要素に特異的なマスキングペプチドを、プロテアーゼ切断可能な基質リンカーを使用してscFvに同様に付加した。CI107は、Fc-エフェクター機能を損なうことにより、FcγRを発現する細胞への架橋結合を最小化した。この設計は、正常組織における結合及び活性を最小化しながら、プロテアーゼが豊富な腫瘍微小環境において標的結合及び活性を最大化することが意図される。この実施例全体を通して使用された比較用TCBの全ては、EGFR結合ドメイン及びCD3結合ドメイン、マスク、ならびに様々な程度の切断性を有するリンカーペプチドを含有する。CI011及びCI040は、CI104及びCI107の第1世代バージョンである。CI104及びCI107分子は、最適化されたCD3 scFv、次世代の切断可能なリンカー、及び追加のFcサイレンシング変異を含有する。CI104及びCI107は、同じマスクならびにEGFR結合ドメイン及びCD3結合ドメインを有するが、CD3プロテアーゼリンカーが異なる。しかしながら、プロテアーゼ活性化後には、活性化TCBは同じである。EGFR結合剤が無関係の抗体(抗RSV)によって置き換えられているCI128を非標的化対照として使用した。
【0227】
マスキングは、細胞表面上のEGFRへの結合を損なう。
EGFR結合ドメインのマスキングが、細胞表面上に発現したEGFRへの結合を損なうかどうかを評定するために、EGFRを発現しているHT29細胞及びHCT116細胞へのCI107及び比較用の活性化TCB構築物(すなわち、act-TCB)の結合を測定した。
【0228】
標的細胞を漸増濃度のCI107または比較用の活性化構築物とともにインキュベートし、結合をフローサイトメトリーによって評価した。図7A及び7Bに示されるように、CI107におけるEGFRマスクの存在は、活性化TCB CI107と比較して、細胞表面上に発現したEGFRへの結合を実質的に減弱した。活性化TCB構築物は、0.17nMのKd計算値でHT29細胞に結合した一方で、CI107の結合についてのKdは91.28nMであり、これは活性化TCBと比較して500倍超の結合の減少に相当する。HCT116細胞を使用して類似の結果が得られた。CI107と同じ抗CD3モジュールを含有するがEGFR標的化を欠いている非標的化対照TCBである、CI128の結合もまた評価した。この対照は、HT29細胞にもHCT116細胞にも結合しなかった(図7A及び7Bを参照されたい)。
【0229】
マスキングは、リンパ球の表面上のCD3への結合を損なう。
抗CD3結合ドメインのマスキングが、リンパ球の表面上のCD3へのCI107の結合を損なうかどうかを決定するために、Jurkat細胞へのCI107及び活性化CI107(すなわち、活性化TCB)の結合を測定した。図7Cに示されるように、活性化TCBは、0.62nMのKdでJurkat細胞に結合した。しかしながら、CI107の結合は検出されず、Kdを算出することはできなかった。活性化対照CI128は、活性化TCBと同様の親和性でJurkat細胞に結合した。
【0230】
まとめると、これらのデータは、CI107における抗EGFR結合ドメイン及び抗CD3結合ドメインのデュアルマスキングが、EGFRまたはCD3を発現している細胞への結合を減弱することを実証する。
【0231】
マスキングは、PBMC共培養物において細胞傷害作用及びT細胞活性化を減弱する。
CI107によるEGFRの標的化が抗腫瘍細胞効果につながり得るかどうかに取り組むために、インビトロ細胞傷害性アッセイを実施した。ルシフェラーゼ発現HT29細胞またはHCT116細胞をヒトPBMCと共培養し、漸増濃度のCI107、活性化TCB、または非標的化対照CI128とともにインキュベートした。48時間の培養後、ルシフェラーゼアッセイを介してHCT116-Luc2細胞またはHT29-Luc2細胞の生存率を測定した。図8Aに示されるように、対照CI128での処理は、PBMCと共培養したHCT116-Luc2細胞に対する最小の細胞傷害作用をもたらし、細胞傷害性活性のためにEGFR及びCD3の両方の結合が必要とされることを実証した。対照的に、マスクされたCI107及び活性化CI107(すなわち、act-TCB)の両方は、HCT116-Luc2細胞に対する細胞傷害性効果を有した。しかしながら、活性化TCBは、マスクされた形態と比較してはるかにより低い濃度で細胞傷害作用をもたらし、EC50値がそれぞれ0.44pM及び7297pMであった。類似の結果がHT29-Luc2細胞において観察され、EC50値が活性化TCBについて0.25pMであるのに対し、CI107については3678pMであった(図8B)。したがって、CI107における抗EGFRドメイン及び抗CD3ドメインのデュアルマスキングは、プロテアーゼ活性化の不在下で、PBMCによって媒介される細胞傷害性活性のおよそ15,000倍の減少をもたらした。
【0232】
CI107での処理は、T細胞活性化のマーカーであるCD69発現の誘導をもたらす。
CI107がT細胞活性化をもたらすかどうかを決定するために、HCT116-Luc2細胞またはHT29-Luc2細胞と共培養したPBMCにおけるCD69レベルを、マスクされたCI107、活性化CI107(すなわち、act-TCB)、及び対照CI128での処理後に測定した。CD69はT細胞活性化のマーカーとしての機能を果たし、TCR/CD3結合後、Tリンパ球の表面上でCD69発現が迅速に誘導され、T細胞の活性化及び増殖に対する共刺激分子としての機能を果たす。HCT116-Luc2細胞またはHT29-Luc2細胞と共培養したヒトPBMCを漸増濃度のCI107、活性化TCB(すなわち、活性化CI107)、または対照CI128で16時間処理し、CD69発現レベルをフローサイトメトリーによって測定した。図8Cに示されるように、CI107は、14178pMのEC50で、HCT116-Luc2細胞と共培養したCD8+ T細胞上のCD69発現の誘導をもたらした。対照的に、活性化CI107での処理は、7.65pMのEC50でCD69誘導をもたらし、これはCI107と比較してT細胞活性化曲線におけるおよそ18,000倍の移行を反映する。非EGFR標的化対照CI128でT細胞活性化は観察されず、このことは、CD3の結合単独ではT細胞活性化に十分でないことを示す。同様に、HT29-Luc2細胞と共培養した同じドナー由来のPBMCの処理はCD69誘導をもたらし、EC50値がマスクされたCI107について65971pMであるのに対し、活性化TCBについては8.75pMで、CD69誘導能力のおよそ7500倍の差異を反映する(図8D)。
【0233】
CI107での処理は、サイトカイン放出をもたらす。
EGFRを発現しているがん細胞と共培養したPBMCにおける、TCBでの処理時のT細胞活性化をさらに評定するために、サイトカイン放出をCI107、活性化TCB(すなわち、活性化CI107)、または対照CI128での処理後に評価した。IFN-γ、IL-2、IL6、MCP-1、及びTNF-αのレベルを漸増濃度のTCBでの処理から16時間後に測定した。図9A~9Eに示されるように、104pM範囲の濃度のCI107での処理は、測定したサイトカインの各々の放出をもたらした。対照的に、活性化TCBは、1~100pM範囲の濃度での処理時にサイトカイン放出をもたらした。これらの結果は全般的に、異なるPBMCドナー細胞及びがん細胞株(HCT116-Luc2対HT29-Luc2)の間で一致していた。
【0234】
まとめると、これらのデータは、CI107におけるEGFR結合ドメイン及びCD3結合ドメインのデュアルマスキングが、プロテアーゼ活性化の不在下でT細胞活性化を減弱することを実証する。
【0235】
プロテアーゼ切断に対するTCBの感受性は、インビボでの抗腫瘍有効性及び腫瘍内T細胞と相関がある。
TCBの抗腫瘍有効性をインビボで評価した。HT29-Luc2腫瘍を保有し、ヒトPBMCを移植された免疫不全マウスをビヒクル(PBS)、または異なるプロテアーゼ感受性を有するリンカー(CI011、CI040)、切断可能でないリンカー(CI020)、もしくはマスクされていない二重特異性治療薬CI048を含有する0.3mg/kgのTCBで週1回、3週間にわたって処置した。CI020は、切断可能でないリンカーに起因して最小の抗腫瘍活性を有することが予想される一方で、マスクされていないCI048は、最大の有効性を有することが予想される。いずれもEGFRマスク及びCD3マスクを含有するCI011及びCI040は、異なるリンカーペプチドに起因して異なるプロテアーゼ感受性を有し、CI040のプロテアーゼ感受性は、CI011のそれよりも高い。
【0236】
図10Aに示されるように、マスクされていないTCB CI048での処理は、処置の開始から1週間以内に腫瘍退縮をもたらした。同様に、マスクされたCI011及びCI040での処理もまた、腫瘍退縮または静止をもたらした。CI040で見られた退縮は、この分子におけるリンカーの切断性がCI011と比較してより高いことと相関がある。対照的に、切断可能でないリンカーを含有するCI020での処理は腫瘍増殖に影響を及ぼさず、このことは、インビボでのTCBの抗腫瘍活性にプロテアーゼ切断性が必要とされることを示す。
【0237】
試験したTCBによって媒介される抗腫瘍有効性が、腫瘍におけるT細胞の存在と相関があるかどうかを決定するために、動物に1mg/kg用量のマスクされたTCBまたは活性化TCBを与えてから1週間後に腫瘍を採取し、CD3に対する免疫組織化学的検査を実施した。図10Bに示されるように、ビヒクルまたは切断可能でないCI020での処置後に腫瘍組織において最小数のT細胞が観察された。対照的に、TCB CI040またはインビトロプロテアーゼ活性化TCB CI048での処理時に増加した数のT細胞が観察された。ここでもまた、より高いプロテアーゼ感受性を有するTCB(CI040)は、腫瘍においてより多数のT細胞をもたらした。
【0238】
まとめると、これらのデータは、TCBが、EGFR結合ドメインマスク及びCD3結合ドメインマスクのプロテアーゼ切断に対する感受性と相関して、腫瘍内T細胞及びインビボでの抗腫瘍有効性をもたらし得ることを示唆する。
【0239】
CI107での処置は、樹立された異種移植腫瘍の用量依存的退縮を誘導する。
インビボでの腫瘍増殖に対するCI107の効果を評価した。NSGマウスにHT29細胞を皮下移植し、続いてPBMCのIP注射を行い、PBMCをおよそ11日間生着させた。次いで動物をビヒクル、0.5mg/kgのCI107、または1.5mg/kgのCI107で週1回、3週間にわたって処置した。図11Aに示されるように、処置開始からおよそ1週間後に始まって、0.5mg/kgのCI107での処理は腫瘍静止をもたらし、1.5mg/kgのCI107は腫瘍退縮をもたらした。
【0240】
CI107のインビボ有効性をHCT116腫瘍においても評価した。腫瘍及びPBMCの移植後、動物をビヒクル、0.3mg/kgのCI107、1mg/kgのCI107、または0.3mg/kgの活性化TCBで処置した。図11Bに示されるように、0.3mg/kgのCI107はHCT116腫瘍増殖を遅延させた一方で、1mg/kgのCI107及び0.3mgの活性化TCBは、処置の継続期間にわたって同様のレベルの腫瘍退縮及び静止をもたらした。
【0241】
これらのデータは、CI107がHT29異種移植腫瘍及びHCT116異種移植腫瘍における腫瘍増殖及び退縮の用量依存的阻害を誘導すること、ならびに3倍高い用量のCI107の抗腫瘍活性が活性化TCBのそれと同様であることを実証する。
【0242】
マスクされたCI107は、カニクイザルにおいて活性化CI107と比べて増加した安全性を提供する。
カニクイザル試験においてCI107の前臨床忍容性を評価した。動物に0.06mg/kgまたは0.18mg/kgの活性化CI107(すなわち、act-TCB)及び0.6mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、または6.0mg/kgのCI107の単回投与を与え、動物を臨床観察のために追跡した。0.18mg/kgの活性化TCBで処置した動物は、嘔吐、食欲不振、弱々しい外見、猫背の姿勢、及びやせた外見を含めた重度の臨床作用を経験し、有害作用は投与後2時間ほどの早期から10日まで認められた。0.06mg/kgの活性化TCBで処置した動物は、投与後1日目に嘔吐及び猫背の姿勢を含めた中程度の一過性の臨床作用を経験した。これらの作用の迅速な消失に基づいて、活性化TCBについて0.06mg/kgを最大耐量(MTD)と定義した。対照的に、2.0mg/kgのCI107で処置した動物は、ほんの一過性で軽度の臨床作用(2日目の嘔吐)を経験し、0.6mg/kgのCI107で処置した動物は、いずれの有害作用も経験しなかった。4.0mg/kgのCI107で処置した動物は、中程度の臨床作用(投与後4、8、及び24時間での嘔吐ならびに2日目の食欲不振を含む)を経験した。6.0mg/kgのCI107で処置した動物は、2日目に死亡が確認された。死亡前に認められた臨床徴候には、投与後の猫背の姿勢、弱々しい外見、嘔吐、及び液状便が含まれた。したがって、CI107については4.0mg/kgをMTDとみなした。全体として、マスクされたCI107は、活性化TCBと比較して60倍超の忍容性の改善を達成した。
【0243】
活性化CI107またはマスクされたCI107での処理後のサイトカインレベルもまた調査した。図12に示されるように、IL-6(12A)及びIFN-γ(12B)のレベルは、活性化TCBで処置した動物において投与後8時間で上昇した。対照的に、0.6mg/kgまたは2.0mg/kgのCI107での処置後にはIL-6またはIFN-γにおいて最小の変化が観察された。これらのサイトカインのレベルの上昇は、4.0mg/kgのCI107での処置後にのみ見られた。臨床観察と一致するように、CI107は、サイトカイン放出の用量応答を60倍超移行させる。
【0244】
血清生化学の分析においてもまた、活性化TCBとCI107との間の差異が実証された。図12Cに示されるように、活性化TCBでの処置は、投与後48時間で肝細胞損傷のマーカーであるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の用量依存的増加をもたらした。対照的に、CI107での処置後には、耐量レベルのうちのいずれでもASTの変化は何ら観察されず、このマスクされたTCBでの改善された忍容性が実証された。
【0245】
EGFR結合ドメイン及びCD3結合ドメインのマスキングが薬物動態に影響を及ぼすかどうかに取り組むために、活性化TCB(すなわち、活性化CI107)及びマスクされたCI107の投与後の血漿中濃度を測定した。図12Dに示されるように、活性化TCBは、投与後24時間以内に血液循環から迅速に除去された。対照的に、CI107は投与後最大7日間にわたって血漿中に維持され、このことは、マスキングが活性化TCBと比べて曝露量を増加させる可能性があることを示唆する。0.06mg/kgの活性化TCBの単回投与後のAUC(0~7)は0.04nM×日(n=1)であった一方で、2mg/kgのCI107の投与後のAUC(0~7)は331.7nM×日(n=3の平均)であり、忍容曝露量の8,000倍超の増加が実証された。
【0246】
このことは、マスクされたCI107で観察された忍容性及び薬物動態の改善が、正常組織環境におけるEGFR及びCD3への結合の予想される減弱と一致することを実証する。
【表15】




































【0247】
本開示は、本明細書に記載の態様によって範囲を限定されない。実際、上述の説明及び添付の図から、記載されるものに加えて本開示の種々の修飾が当業者には明らかとなろう。かかる修飾は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。
【0248】
本明細書で引用された全ての参考文献(例えば、刊行物または特許もしくは特許出願)は、あたかもそれぞれ個々の参考文献(例えば、刊行物または特許もしくは特許出願)が、参照によりその全体があらゆる目的で援用されることが明確かつ個別に示された場合と同じ程度に、参照によりそれらの全体があらゆる目的で本明細書に援用される。
【0249】
一部の態様は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
【配列表】
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【国際調査報告】