(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】改善された微生物耐性を有する低VOC水性着色剤組成物及び着色剤組成物の微生物耐性を評価するための方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20241022BHJP
C09D 167/08 20060101ALI20241022BHJP
C09D 113/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D167/08
C09D113/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523697
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 US2022078685
(87)【国際公開番号】W WO2023076923
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518155030
【氏名又は名称】エスダブリューアイエムシー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドンロン、ジェイコブ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ディール、ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】オロフソンーエルコウ、パトリシア エル.
(72)【発明者】
【氏名】クレイトン、リニー
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、カール
(72)【発明者】
【氏名】ルーク、トニー エー.
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038EA011
4J038JA24
4J038JB32
4J038JC18
4J038KA08
4J038KA09
4J038NA05
4J038PB05
(57)【要約】
着色装置においてベース塗料又はステインを着色するのに好適であり、抗菌剤の組み合わせを含むことによって微生物汚染に対する改善された耐性を提供する着色剤組成物。微生物増殖に対する着色剤組成物の耐性を評価するための方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤組成物であって、
以下の構造を有する、約25ppm~約200ppmの量のアルキル-イソチアゾリン-3-オン
【化1】
(式中、R1は、1~8個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である)と、
以下の構造を有する、約1,000ppm~約10,000ppmの量のハロ-プロピニルアルキルカルバメート
【化2】
(式中、R1及びR2は、H又は1~7個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であり、R3は、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I、又はAt)である)と、
以下の構造を有する、約500ppm~約4,000ppmの量の二級アミノ-ベンズイミダゾール
【化3】
(式中、R1は、カルボキシレート基又はエステル基である)と、を含み、
前記着色剤組成物が、200g/L未満のVOCを含有し、
前記着色剤組成物が、1つ以上の顔料及びキャリアを含み、フィルム形成量未満のフィルム形成ポリマーを含有し、
前記着色剤組成物が、ベースコーティング組成物への添加に好適である、着色剤組成物。
【請求項2】
着色剤組成物を作製する方法であって、
以下の構造を有する、アルキル-イソチアゾリン-3-オン
【化4】
(式中、R1は、1~8個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である)を、約25ppm~約200ppmの量で、着色剤組成物に添加することと、
以下の構造を有する、ハロ-プロピニルアルキルカルバメート
【化5】
(式中、R1及びR2は、H又は1~7個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であり、R3は、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I、又はAt)である)を、約1,000ppm~約10,000ppmの量で、前記着色剤組成物に添加することと、
以下の構造を有する、二級アミノ-ベンズイミダゾール
【化6】
(式中、R1は、少なくとも2個の酸素原子を含むカルボキシル基又はエステル基である)を、約500ppm~約4,000ppmの量で、前記着色剤組成物に添加することと、を含み、
前記着色剤組成物が、1つ以上の顔料及びキャリアを含み、フィルム形成量未満のフィルム形成ポリマーを含有し、
前記着色剤組成物が、ベースコーティング組成物への添加に好適である、着色剤組成物を作製する方法。
【請求項3】
前記方法が、
最初に、前記アルキル-イソチアゾリン-3-オン、ヨード-プロピニルブチルカルバメート、及び前記二級アミノ-ベンズイミダゾールを混合して、半湿潤状態の防腐剤パッケージを形成することと、
次いで、前記半湿潤状態の防腐剤パッケージを前記着色剤組成物に添加することと、を含む、請求項2に記載の着色剤組成物を作製する方法。
【請求項4】
前記アルキル-イソチアゾリン-3-オンが、75ppmを超える量を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物又は方法。
【請求項5】
前記アルキル-イソチアゾリン-3-オンが、125ppmを超える量を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物又は方法。
【請求項6】
前記アルキル-イソチアゾリン-3-オンが、150ppm未満の量を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物又は方法。
【請求項7】
前記ハロ-プロピニルアルキルカルバメートが、2500ppmを超える量を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物又は方法。
【請求項8】
前記ハロ-プロピニルアルキルカルバメートが、5000ppmを超える量を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物又は方法。
【請求項9】
前記ハロ-プロピニルアルキルカルバメートが、7500ppm未満の量を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物又は方法。
【請求項10】
前記二級アミノベンズイミダゾールが、1,500ppmを超える量を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物又は方法。
【請求項11】
前記二級アミノベンズイミダゾールが、2,500ppmを超える量を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物又は方法。
【請求項12】
前記二級アミノベンズイミダゾールが、3,000ppm未満の量を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物又は方法。
【請求項13】
前記アルキル-イソチアゾリン-3-オンが、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンである、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項14】
前記ハロ-プロピニルアルキルカルバメートが、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメートである、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項15】
前記二級アミノ-ベンズイミダゾールが、カルベンダジムである、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項16】
前記着色剤組成物が、100g/L未満のVOCを含有する、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項17】
前記着色剤組成物が、50g/L未満のVOCを含有する、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項18】
前記着色剤組成物が、20g/L未満のVOCを含有する、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項19】
前記着色剤組成物が、フィルム形成ポリマーを実質的に含有しない、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項20】
前記着色剤組成物が、フィルム形成ポリマーを本質的に含有しない、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項21】
着色剤組成物の微生物耐性を評価するための試験方法であって、
a)着色剤組成物で少なくとも部分的にコーティングされた物品を、少なくとも1つの真菌種の胞子が接種された第1の寒天プレートに、前記物品を前記第1の接種された寒天プレート内に配置することによって、曝露して、第1の寒天プレート試験床を形成することと、
b)前記第1の寒天プレート試験床を、高温で第1の曝露期間インキュベートすることと、
c)前記物品を、前記第1の寒天プレート試験床から取り出すことと、
d)前記物品を、前記少なくとも1つの真菌種の前記胞子が接種された第2の寒天プレートに、前記物品を前記第2の接種された寒天プレート内に配置することによって、曝露して、第2の寒天プレート試験床を形成することであって、前記第2の寒天プレート試験床が、面積を有する、形成することと、
e)前記第2の寒天プレート試験床を、高温で第2の曝露期間インキュベートすることと、
f)前記第2の曝露期間後の前記第2の接種された寒天プレート内の前記物品上の真菌被覆率を、格付け尺度に従って格付けして、真菌被覆率格付け等級を生成することと、を含む、試験方法。
【請求項22】
胞子の少なくとも1種類が、Aspergillus nigerを含む、請求項21に記載の試験方法。
【請求項23】
胞子の少なくとも1種類が、Penicillium citrinumを含む、請求項21に記載の試験方法。
【請求項24】
胞子の少なくとも1種類が、環境的に単離された胞子の種類である、請求項21に記載の試験方法。
【請求項25】
前記格付け尺度が、前記第2の寒天試験プレート上の汚染物質の百分率量に各々対応する2つ以上の連続指標からなる数字又はアルファベットの尺度である、請求項21~24のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項26】
前記格付け尺度が、格付け尺度番号0、格付け尺度番号1、格付け尺度番号2、格付け尺度番号3、及び格付け尺度番号4を含み、
前記格付け尺度番号0が、前記第2の寒天試験プレート試験床上に胞子被覆が殆どないことを示し、
前記格付け尺度番号1が、前記第2の寒天試験プレート試験床上の胞子被覆率が前記第2の寒天試験プレート試験床の前記面積の約10%未満であることを示し、
前記格付け尺度番号2が、前記第2の寒天試験プレート試験床上の前記胞子被覆率が前記第2の寒天試験プレート試験床の前記面積の約10%~約30%であることを示し、
前記格付け尺度番号3が、前記第2の寒天試験プレート試験床上の前記胞子被覆率が前記第2の寒天試験プレート試験床の前記面積の約30%~約60%であることを示し、前記格付け尺度番号4が、前記第2の寒天試験プレート試験床上の前記胞子被覆率が前記第2の寒天試験プレート試験床の前記面積の約60%~約100%であることを示す、請求項21~25のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項27】
前記第2の曝露期間が、約6週間である、請求項21~26のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項28】
前記着色剤組成物が、着色剤微生物耐性試験に準拠して3以下の胞子被覆率格付けを有する、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項29】
前記着色剤組成物が、メチル-イソチアゾリン-3-オンではないアルキル-イソチアゾリン-3-オンを実質的に含まないか、本質的に含まないか、又は本質的に完全に含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項30】
前記着色剤組成物が、ジシアノブタンを実質的に含まないか、本質的に含まないか、又は本質的に完全に含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項31】
前記ジシアノブタンが、1,2-ジブロモ-2,4-ジシアノブタンを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は請求項21に記載の着色剤組成物。
【請求項32】
前記着色剤組成物が、ピリチオンを実質的に含まないか、本質的に含まないか、又は本質的に完全に含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項33】
前記ピリチオンが、ジンクピリチオンを含む、請求項23に記載の着色剤組成物。
【請求項34】
前記ピリチオンが、ナトリウムピリチオンを含む、請求項23に記載の着色剤組成物。
【請求項35】
前記着色剤組成物が、酸化亜鉛を実質的に含まないか、本質的に含まないか、又は本質的に完全に含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項36】
前記着色剤組成物が、保湿剤を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項37】
前記保湿剤が、ポリエーテルである、請求項27に記載の着色剤組成物。
【請求項38】
前記着色剤組成物が、体質顔料を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項39】
前記着色剤組成物が、分散剤を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項40】
前記着色剤組成物が、界面活性剤を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項41】
前記ベースコーティング組成物が、アルキド塗料である、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【請求項42】
前記ベースコーティング組成物が、ラテックス塗料である、先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物を作製する方法、又は先行請求項のいずれか一項に記載の着色剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年10月29日に出願された米国仮特許出願第63/273,383号の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本出願は、概して、抗菌剤の組み合わせの添加から生じる改善された微生物耐性を有する着色剤組成物に関する。本出願は更に、微生物増殖に対する着色剤組成物の耐性を評価するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
建築用塗料及びステイン製造業者は、一般に、少数の人気のある色のプレミックス塗料及びステインを流通させている。消費者の要望に対応し、既存の塗装表面又はステイン表面への色合わせを可能にするために、製造業者はまた、典型的には、1つ以上の着色剤をベース塗料又はステインに添加する装置を使用して、カスタムに選択された色に着色され得る、着色可能なベース塗料又はステインのセットを流通させ、したがって、塗料が、プレミックス製品において典型的に利用可能な限定された色の選択肢よりもはるかに多くの色にカスタム着色されることを可能にする。
【0004】
建築用塗料及びステイン製造業者は、例えば、明るい白色塗料から比較的着色されていない塗料までの範囲のいくつか(例えば、2~4種)の着色可能なベース塗料を流通させる傾向にあった。ベース塗料及びステインは、様々な結合剤(例えば、天然又は合成樹脂)、及びキャリア(例えば、溶媒系又は水系の塗料又はステインをそれぞれ形成するための溶媒又は水)を用い得る。いくつかの製造業者は、予め着色された塗料(例えば、赤色、青色、及び黄色の着色ベース)を販売しており、これらは、販売時点で追加的な着色剤と混合され得る。着色剤は、典型的には、着色剤組成物製造業者によって密閉容器に入れて流通し、着色装置で使用されて、販売時点で着色装置内の各着色剤用の補充可能なキャニスターを補充する。
【0005】
着色装置を利用して、着色剤は、典型的に用いられる異なる色を有する多数(通常12~20種)の着色剤と共に、複数の着色剤分配ステーション内の着色剤キャニスターから容積測定的に計量され得る。添加後、着色塗料は混合又は振盪されて、着色剤組成物をベース塗料全体に均一に分散させる。したがって、1つ以上の着色剤をベース塗料に容積測定的に添加することによって、塗料小売業者は、ベース塗料を顧客の所望の色にカスタム着色し得る。水系ベースコーティング組成物のみと混和性である着色剤は、水のみの着色剤組成物と称され、一方、水系及び溶媒系のベースコーティング組成物の両方と混和性である着色剤は、ユニバーサル着色剤組成物と称される。
【0006】
ベース塗料及びステイン、並びに着色塗料及びステインの両方と同様に、着色剤組成物は、湿潤状態(例えば、液体形態)又は乾燥状態(例えば、乾燥フィルム)の両方において微生物汚染を受けやすい。その結果、着色剤組成物は一般に、湿潤状態及び乾燥フィルムの両方において着色剤組成物にマイクロビスタット特性を付与するために、殺生物剤又は抗菌剤を含む。殺生物剤は、細菌、ウイルス、カビ、及び真菌などの生物を殺す働きをする。ベース塗料及びステイン、並びに着色剤組成物の両方において、殺生物剤は、缶中又はキャニスター中の微生物による腐敗を防止するための湿潤状態防腐効果を有し得、また、乾燥フィルム防腐効果又は抗汚損効果も有し得、それによって、殺生物剤は、生物体の増殖を防止するか若しくは生物体を不活性化するか、又は乾燥フィルムを生物学的増殖に対してあまり好ましくない/生物学的増殖の影響を受けにくいものにする。しかしながら、塗料及びステインは、塗布時にフィルムを形成するのに十分なポリマーを含むのに対して、着色剤組成物はフィルムを形成するのに十分なポリマーを含まないため、防腐戦略は、着色剤組成物と塗料及びステインとの間で異なり得る。適切な抗菌剤の選択は、水系着色剤組成物に対して特に重要であり得、これは、一般に、それらの溶媒系対応物よりも微生物増殖による微生物汚染を受けやすいからである。
【0007】
歴史的に、高VOC水系着色剤組成物は、低分子量グリコール(すなわち、エチレングリコール、ジエチレングリコール)を含有しており、これは、配合物中で使用される成分の生物静力学特性に起因して微生物汚染に対する十分な耐性を提供した。配合物がより少ない量のVOCを含有するようにシフトしたので、これらの本質的に生物静力学成分の低減は、微生物汚染(例えば、細菌、真菌、酵母、又は藻類増殖による)に対する感受性を増加させた。この感受性にもかかわらず、様々な国及び州の規制が、全体的なVOC及び有害大気汚染物質(Hazardous Air Pollutant、HAP)含有量を制限しているので、より低いVOC配合物が好ましい場合がある、例えば、40 Code of Federal Regulations Part 59,National Volatile Organic Compound Emissions Standards for Architectural Coatingsを参照されたい。
【0008】
組成物への1つ以上の湿潤状態防腐剤の添加は、低VOC水系着色剤組成物の貯蔵安定性を増加させ得る。湿潤状態防腐剤としては、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(1,2-Benzisothiazolin-3-one、BIT)、及び5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリノン(5-chloro-2-methyl-4-isothiazolinone、CMIT)と2-メチル-4-イソチアゾリノン(2-methyl-4-isothiazolinone、MIT)との反応生成物が挙げられる。しかしながら、ある種の防腐剤の有効性は、時間的に制限されており、一部の殺菌剤は、極めて短時間作用であり、一部は、わずかに長い日数にわたって効果を維持し、他のものは、より長期間効果を維持する。有効性に加えて、市販製品に添加され得るこのような湿潤状態防腐剤の量は、経済的な懸念、並びに環境的及び毒物学的リスクの認識によって制限される。防腐特性を有する一部の材料の添加され得る量は、米国では連邦殺虫殺菌殺鼠剤法(Federal Insecticide Fungicide and Rodenticide Act、FIFRA)に基づく環境保護庁(Environmental Protection Agency)の規制によって、並びに欧州連合及び他の国々では規制によって制限されている。
【0009】
乾燥フィルム防腐は、乾燥状態のマイクロビスタット防腐剤の添加によって増加し得る。典型的な乾燥フィルム防腐剤としては、体質顔料酸化亜鉛、又はナトリウムピリチオン若しくはジンクピリチオンなどのピリチオンが挙げられる。しかしながら、ほとんどの乾燥フィルム防腐剤は、限られた時間の間、微生物増殖に対する乾燥フィルム耐性を提供する。湿潤状態防腐剤と同様に、乾燥状態防腐特性を有する一部の材料は、米国及び他の国々において規制又は監視の強化がなされている。
【0010】
着色装置における微生物増殖の制御及び防止は、特に困難であった。着色剤の防腐は、基本量の湿潤状態防腐剤を着色剤に添加することによって流通プロセスを通して維持され得るが、着色剤組成物は、着色剤容器が着色装置に導入される直前に使用のために開封される場合、空気中及び水中に存在する微生物に曝露される。
【0011】
使用時に、再充填可能な着色剤キャニスター内の着色剤組成物の一部が、部分的に乾燥して部分的湿潤状態/部分的乾燥状態になるので、着色剤の防腐及び着色装置内での微生物増殖の防止はより困難である。部分的湿潤状態/部分的乾燥状態の材料の微生物増殖は、着色剤容器が使用によって空になり再充填される際に、部分的乾燥状態の着色剤が新しい液体着色剤組成物と繰り返し接触することに起因して、より容易に起こり得る。理論に束縛されるものではないが、キャリアの蒸発及び凝縮のサイクルが着色剤容器内で起こり、部分的乾燥状態の着色剤が微生物増殖をより受けやすくなると考えられている。
【0012】
着色装置内の着色剤組成物の使用率は様々であり、経時的に(通常、数週間又は数ヶ月)、連続的な環境曝露は、微生物増殖を引き起こす可能性があり、再充填可能な着色剤容器及び着色装置の接触部品における目に見えるカビ増殖及び悪臭のような望ましくない影響をもたらす。着色装置の操作者は、着色装置を洗浄するために着色剤組成物の再充填可能な容器をパージして洗浄する必要があり、その結果、機械の稼働率が低減し、時間が失われ、費用が増加する。
【0013】
したがって、微生物増殖に対する改善された耐性を有する低VOC水性着色剤組成物の必要性が存在する。
【0014】
着色剤組成物のための許容可能なマイクロビスタットパッケージの開発は、湿潤状態及び部分的乾燥状態の両方の汚染物質によって起こり得る、着色機内での微生物増殖のための環境をシミュレートするための適切な試験方法の欠如によって挫折してきた。
【0015】
例えば、ASTM D3273は、熱帯環境をシミュレートする環境チャンバ内の接種された土壌の上にコーティングされたパネルを吊るすことを求めている。2~3週間後、パネルは、コーティングの汚損に基づいて評価され得るカビ又は真菌の増殖を発達させ得る。D3273は、微生物汚染に対する乾燥状態耐性のみを評価する。
【0016】
「Standard Test Method for Determining the Resistance of Paint Films and Related Coatings to Fungal Defacement by Accelerated Four-Week Agar Plate Assay」と題するASTM D5590は、コーティングでコーティングされた濾紙に液体接種物を添加することを必要とする。しかしながら、この試験の有効性は、フィルム形成量の結着剤樹脂を含まない、着色剤組成物を評価する場合に限定される。例えば、液体接種物が着色剤組成物でコーティングされた紙に添加される場合、着色剤中にフィルム形成結着剤樹脂が存在しないことに起因して、着色剤は、濾紙から分散する。対照的に、コーティングがD5590下で試験される場合、フィルム形成結着剤樹脂は、このような分散に対する耐性を提供する。あるいは、D5590は、液体接種物を試料及び寒天プレート上に滅菌綿棒で広げることによって塗布することを可能にする。しかしながら、着色剤組成物中にフィルム形成結着剤樹脂がないと、このような塗布は、着色剤組成物を濾紙から周囲の寒天に広げ、微生物増殖に対する着色剤組成物の耐性の測定を妨げる。したがって、ASTM D5590は、着色剤組成物の真菌による汚損の適切な試験を提供しない。
【0017】
ASTM D2574-16などの湿潤状態抗菌耐性の標準試験方法は、流通中の着色剤組成物の抗菌耐性を評価するのに有用であるが、半乾燥状態にある再充填可能な容器内の着色剤部分の評価を可能にすることができない。
【0018】
あるいは、実験用着色剤組成物防腐剤パッケージは、着色装置内の着色剤キャニスターにおける現場での使用によって評価され得る。このようなシミュレートされた使用の条件は、試行ごとに変化する場合があり、現場での試験は、許容可能な速度での大量試験を可能にはしない。
【0019】
したがって、着色剤組成物の微生物耐性を試験及び評価するための改善された方法の必要性も存在する。
【0020】
定義
「着色剤組成物」という用語は、内容積の大部分(例えば、容器容積の3分の2以上)がベース塗料又はステインで満たされているが、完全には満たされていない販売時点での容器に、このようなベース塗料又はステインの色相又は明度を変化させるために添加され得る(例えば、分配され得る)組成物を意味する。着色剤組成物は、顔料及びキャリアを含むが、フィルム形成量未満の結着剤樹脂を含有する。
【0021】
「結着剤樹脂」という用語は、結着剤が連続相を表し得る乾燥、硬化、又は他の方法で固化されたコーティング又はフィルムを形成するためのコーティング及び仕上げ組成物における使用に好適な天然又は合成ポリマーを意味する。
【0022】
現場、場所、店舗、又は他の販売店に関して、本明細書で使用される場合、「販売時点」及び「小売」という用語は、カスタム混合された塗料又はステインが着色され、最終使用者(例えば、塗装業者、建築業者、住宅所有者)に販売するために、小さなバッチロット(例えば、1/2パイント、1パイント、1クォート、1リットル、1ガロン、4リットル、5ガロン、又は20リットルの容器、約0.2~20Lの容器に相当)で混合される場所を意味する。代表的な販売時点小売、卸売り、又は小売/卸売り組み合わせ販売店としては、塗料店、金物店、建築資材店(倉庫を含む)、及び流通センターが挙げられる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ベースコーティング組成物」という用語は、開閉可能な蓋、キャップ、又は他の閉鎖具を備えた約0.2~20Lの容量を有する大部分が充填されているが不完全に充填されている販売時点での容器に包装された水性又は溶媒性の塗料又はステイン製品を意味し、それはそのまま使用され得るが、通常は、容器内の塗料又はステイン製品に1つ以上の着色剤組成物を添加し、容器内容物を撹拌、振盪、又は他の方法で混合して、着色剤組成物をベース塗料又はステイン製品全体に分散させることによって販売時点で着色される。
【0024】
「顔料」という用語は、光反射特性又は光吸収特性、並びに着色塗料及び他のコーティング組成物での使用に好適な表面エネルギー及び粒径を有する天然又は合成粒子状材料を意味し、無機又は有機粉末顔料などの不溶性材料、有機染料などの可溶性材料、又はこれらのブレンドの両方を含む。
【0025】
「フィルム形成」という用語は、ポリマー結着剤に関して使用される場合、ポリマー結着剤を含有する溶液又は分散液が、好適な基材上に薄い湿潤層(例えば、約150~200vimの厚さ)でコーティング、乾燥、硬化、又は他の方法で(好適な合体剤を用いて)固化されて、基材上にポリマーを含有する実質的に連続した乾燥フィルムコーティング層(例えば、約75~100vimの厚さ)を形成し得ることを意味する。
【0026】
「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」という用語及びその変形形態は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲に現れる場合には、限定的な意味を有するものではない。したがって、化合物を「含む」組成物はまた、記載又は特許請求の範囲に現れない他の化合物も含み得る。
【0027】
「VOC」は、通常の室温で高い蒸気圧を有する有機化学物質であり、米国における規制によって定義されている。連邦規則集41編第51.100条(s)(Part 41 Code of Federal Regulations Section 51.100(s))は、VOCを、「一酸化炭素、二酸化炭素、炭酸、金属炭化物又は金属炭酸塩、及び炭酸アンモニウムを除く、大気光化学反応に関与する任意の炭素化合物」であると定義しており、規則で定義された除外化合物リストに従う。
【0028】
VOCとして一般的に分類される化合物の例としては、アセトン、アクロレイン、アクリロニトリル、ベンゼン、ブロモジクロロメタン、ブロモホルム、ブロモメタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、クロロエタン、クロロホルム、ジブロモクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、ジクロロプロペン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチルベンゼン、塩化メチル、メチルエチルケトン、テトラクロロエタン、ホルムアルデヒド、トルエン、トリクロロエタン、スチレン、及び塩化ビニルが挙げられる。
【0029】
化合物を「実質的に含まない」という用語は、引用された材料が、詳述された化合物を100ppm未満しか含有しないことを意味する。
【0030】
化合物を「本質的に含まない」という用語は、引用された材料が、詳述された化合物を50ppm未満しか含有しないことを意味する。
【0031】
化合物を「本質的に完全に含まない」という用語は、引用された材料が、詳述された化合物を10ppm未満しか含有しないことを意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、数又は量に関する「約」という用語は、測定又は報告における慣習的な誤差又は不正確さ、及び原材料における通常の変動に関連する量を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの(at least one)」、及び「1つ以上の(one or more)」は、互換的に使用される。したがって、例えば、「1つの(an)」添加剤を含む着色剤は、1つ以上の添加剤を含み得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、方法の工程は、文脈上別段の定めがない限り、任意の順序で行われ得、例えば、各方法工程の前に、順番にその位置を特定する文字(例えば、a)、b)、c))が付されている場合などである。
【0035】
試験方法
組成物中に存在するVOCの量は、「Standard Test Method for Determination of the Weight Percent of Individual Volatile Organic Compounds in Waterborne Air-Dry Coatings by Gas Chromatography」と題するASTM D6886-18によるガスクロマトグラフィーによって測定され得る。VOC量は、除外化合物を除いたグラム/リットル(g/L)で報告される。
【0036】
着色剤組成物中の抗菌添加剤の濃度は、組成物中の原材料として添加される活性防腐剤の量に基づいて計算され得る。原材料防腐剤中の活性抗菌構成成分濃度は、一般に、米国環境保護庁(United States Environmental Protection Agency)によって承認されたラベルから入手可能である。活性防腐剤の濃度は、重量ppmで報告される。
【0037】
着色剤組成物がフィルム形成量のポリマーを含有するかどうかの評価は、基材上の着色剤組成物の薄いフィルムを乾燥させ、次いで乾燥した着色剤組成物を水などの水性溶媒で洗浄することによって行われ得る。フィルム形成量未満のポリマーを含有する着色剤組成物は、溶媒と共に洗い流される。
【発明の概要】
【0038】
本開示は、微生物汚染に対する改善された耐性を提供し、一態様では、25ppm~200ppmの量のアルキル-イソチアゾリン-3-オンと、1,000ppm~10,000ppmの量のハロ-プロピニルアルキルカルバメートと、500ppm~4,000ppmの量の二級アミノベンズイミダゾールと、を含む着色剤組成物を含み、着色剤組成物は、200g/L未満のVOCを含有し、着色剤は、1つ以上の顔料及びキャリアを含有し、フィルム形成量未満のフィルム形成ポリマーを含有し、着色剤は、ベースコーティング組成物への添加に好適である。
【0039】
いくつかの手法では、先の段落の着色剤組成物は、100g/L未満のVOC、好ましくは50g/L未満のVOC、更により好ましくは20g/L未満のVOCを含有し得る。
【0040】
別の態様では、本発明は、着色剤組成物を作製する方法であって、着色剤組成物にアルキル-イソチアゾリン-3-オンを約75ppm~約158ppmの量で添加することと、着色剤組成物にハロ-プロピニルアルキルカルバメートを1000ppm~約9,550ppmの量で添加することと、着色剤組成物にカルベンダジムを約500ppm~約3,450ppmの量で添加することと、を含み、着色剤組成物が、ベースコーティング組成物への添加に好適である、着色剤組成物を作製する方法を含む。
【0041】
別の態様において、本開示は、着色剤組成物の微生物耐性を評価する方法であって、
(a)着色剤組成物で少なくとも部分的にコーティングされた物品を、少なくとも1つの真菌種の胞子が接種された第1の寒天プレートに、物品を第1の接種された寒天プレート内に配置することによって、曝露して、第1の寒天プレート試験床を形成することと、
(b)第1の寒天プレート試験床を、高温で第1の曝露期間インキュベートすることと、
(c)物品を、第1の寒天プレート試験床から取り出すことと、
(d)物品を、少なくとも1つの真菌種の胞子が接種された第2の寒天プレートに、物品を第2の接種された寒天プレート内に配置することによって、曝露して、第2の寒天プレート試験床を形成することと、
(e)第2の寒天プレート試験床を、高温で第2の曝露期間インキュベートすることと、
(f)第2の曝露期間後の第2の接種された寒天プレート内の物品上の真菌被覆率を、格付け尺度に従って格付けして、真菌被覆率格付け等級を生成することと、を含む、着色剤組成物の微生物耐性を評価する方法を含む。
【0042】
前述の手法は、本明細書で更に記載されるように、1つ以上の任意選択的な特徴と組み合わせられ得る。
【発明を実施するための形態】
【0043】
驚くべきことに、本発明によれば、アルキル-イソチアゾリン-3-オン、ハロ-プロピニルアルキルカルバメート、及び二級アミノ-ベンズイミダゾールを含む改善された着色剤組成物は、1つ又は2つ又は前述の化合物のみを含有する組成物、及び従来の量だけの湿潤状態防腐剤を含有する化合物と比較して、強化された抗菌有効性を示すことが見出された。したがって、1つ又は2つのマイクロビスタット成分のみを含む既存の着色剤組成物と比較して、着色剤組成物の微生物耐性を増加させるために、これらの複数の微生物添加剤を利用する相乗効果が見出された。
【0044】
本発明の着色剤組成物の微生物有効性は、着色装置で使用される場合の着色剤組成物の部分的湿潤状態/部分的乾燥状態をシミュレートする新規な試験方法を使用して評価された。本発明の着色剤組成物は、新規な試験方法による、以前の試験方法では判別することができなかった改善された抗菌特性を示すことが見出された。
【0045】
一態様では、本発明は、25ppm~200ppmの量のアルキル-イソチアゾリン-3-オンと、1,000ppm~10,000ppmの量のハロ-プロピニルアルキルカルバメートと、500ppm~4,000ppmの量の二級アミノ-ベンズイミダゾールと、を含む着色剤組成物を含み、着色剤組成物は、50ppm未満のVOCを含有し、着色剤組成物は、1つ以上の顔料及びキャリアを含有し、フィルム形成量未満のフィルム形成ポリマーを含有し、着色剤組成物は、ベースコーティング組成物への添加に好適である。
【0046】
本発明の着色剤組成物は、アルキル-イソチアゾリン-3-オン、好ましくは2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを含む。本発明のアルキル-イソチアゾリン-3-オンは、以下の構造を有し、
【0047】
【化1】
式中、R1は、1~8個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である。
【0048】
好ましい実施形態では、アルキル-イソチアゾリン-3-オンは、好ましくは、以下の構造を有する2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(2-methyl-4-isothiazalin-3-one、MIT)である。
【0049】
【化2】
MITは、Lonza Specialty IngredientsからのProxel MB(商標)、Proxel(商標)DMB、Proxel(商標)CMC-E、及びProxel(商標)BC防腐剤;Thor CorporationからのActicide(登録商標)RS、Acticide(登録商標)GA、Acticide(登録商標)LA、Acticide(登録商標)MBS、Acticide(登録商標)CBM 2、Acticide(登録商標)MBL、Acticide(登録商標)MBZ 4、Acticide(登録商標)M20S、Acticide(登録商標)MBS 2550;Clariant Corp.からのNipacide(登録商標)FC、Nipacide(登録商標)BNK、Nipacide(登録商標)CI、Nipacide(登録商標)CI 15 HS、Nipacide(登録商標)CI 15 MV、Nipacide(登録商標)HF1、及びNipacide(登録商標)CFX 3;Lanxess Corp.からのPreventol(登録商標)BP-15、Preventol(登録商標)BP-509、Preventol(登録商標)BM5、Preventol(登録商標)BM25、Preventol(登録商標)BM75、及びPreventol(登録商標)BMP;Dow CorporationからのKathon(登録商標)LX、Kathon(登録商標)CG/ICP II、及びBioban 557;並びにTroy CorporationからのMergal(登録商標)MC14、Mergal(登録商標)K9N、Mergal(登録商標)K14、Mergal(登録商標)K12N、及びMergal(登録商標)760の成分として市販されている。
【0050】
本発明の着色剤組成物はまた、ハロ-プロピニルアルキルカルバメート、好ましくは3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメートも含有する。本発明のハロ-プロピニルアルキルカルバメートは、以下の構造を有し、
【0051】
【化3】
式中、R1及びR2は、H又は1~7個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であり、R3は、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I、又はAt)である。
【0052】
好ましくは、ハロ-プロピニルアルキルカルバメートは、以下の構造を有する3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(3-iodo-2-propynyl butylcarbamate、IPBC)である。
【0053】
【化4】
IPBCは、Lonza Specialty IngredientsからのOmacide(商標)IPBC 100、Omacide(商標)IPBC 20、Omacide(商標)IPBC 30、及びOmacide(商標)IPBC 40;Dow CorporationからのBioban(登録商標)IPBC 20、及びBioban(登録商標)IPBC 40LE;Lanxess Corporationからの、Preventol(登録商標)A 31-D、及びPreventol(登録商標)A40、Preventol(登録商標)MP 100、Preventol(登録商標)MP 200、Preventol(登録商標)MP 260、Preventol(登録商標)MP 330、Preventol(登録商標)MP 360、Preventol(登録商標)MP 400-D、Preventol(登録商標)MP 700;Thor Specialties,Inc.からのActicide(登録商標)MKW 2、Acticide(登録商標)IPD 30、Acticide(登録商標)IPS 40、Acticide(登録商標)IPW40、及びActicide(登録商標)IPW50、Acticide(登録商標)IMS;Troy Corporationから入手可能なPolyphase(登録商標)663、Polyphase(登録商標)678、Polyphase(登録商標)662、Polyphase(登録商標)PW40、Polyphase(登録商標)Pl 00、Polyphase(登録商標)AF1、Polyphase(登録商標)P20T、Polyphase(登録商標)600、Polyphase(登録商標)641、及びPolyphase(登録商標)2085の成分として市販されている。
【0054】
本発明の着色剤組成物はまた、二級アミノ-ベンズイミダゾール、好ましくはカルベンダジムも含む。本発明の二級アミノ-ベンズイミダゾールは、以下の構造を有し、
【0055】
【化5】
式中、R1は、少なくとも2個の酸素原子を含むカルボキシレート基又はエステル基である。
【0056】
好ましくは、二級アミノ-ベンズイミダゾールは、以下の構造を有するカルベンダジム(N-ベンズイミダゾリル-2-カルバミン酸メチルエステル)である。
【0057】
【化6】
カルベンダジムは、単独で、又は他のマイクロビスタット若しくは非マイクロビスタット構成成分との混合物として提供され得る。カルベンダジムは、Troy Corporationから入手可能なPolyphase(登録商標)678;及びLanxess CorporationからのBiox(登録商標)M 148、Biox(登録商標)M 248、Biox(登録商標)AM139、Biox(登録商標)AM146、Preventol(登録商標)A14D、Preventol(登録商標)BCMの成分として市販されている。
【0058】
本発明の着色剤組成物は、水系であり、キャリアとして少なくとも水を含む。
【0059】
本発明の着色剤組成物は、1つ以上の顔料を含む。着色剤組成物がベース塗料に添加される場合、顔料は、ベース塗料に色を加え、塗料の光沢又は平坦性に影響を及ぼし得る。顔料は、無機若しくは有機粉末顔料、又は有機染料などの可溶性材料、又はこれらのブレンドであり得る。有機顔料の例としては、アントラキノン顔料;キノフタロン顔料;イソインドリン顔料;ニトロソ顔料;ペリノン顔料;キナクリドン顔料;ペリレン顔料;ピロピロール顔料;及びジオキサジン顔料が挙げられる。無機顔料の例としては、カーボンブラック等のカーボン顔料;クロメート顔料;硫化物顔料;酸化物顔料;水酸化物顔料;フェロシアン化物顔料;シリケート顔料;ホスフェート顔料;並びにその他(硫化カドミウム及びセレン化カドミウムなど)が挙げられる。顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、及び硫化亜鉛などの白色;硫化カドミウム、セレナイト、及び酸化鉄などの赤色;硫化カドミウム、クロム酸鉛、及び酸化鉄などの黄色;酸化クロムグリーンなどの緑色;鉄、ウルトラマリン、及びコバルトブルーなどの青色;並びにカーボンブラックなどの黒色を含む多種多様な色で入手可能である。顔料としてはまた、金属フレーク並びに天然及び合成の不活性体質顔料、例えば、カオリナイト、マイカ、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、及びタルクも挙げられ得る。
【0060】
顔料はまた、自然光に曝露された場合の退色に対する耐性を提供し得る耐光性染料であり得る。耐光性染料の中でも、耐光性金属錯体染料が特に有用である。金属錯体色素としては、アゾ染料若しくはアゾメチン染料の1:1若しくは1:2金属錯体、又は銅フタロシアニン若しくはニッケルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン;並びに他の1:1ニッケル錯体、1:1コバルト錯体、1:1銅錯体、1:1クロム錯体、1:1鉄錯体、又は対称若しくは非対称1:2コバルト錯体、1:2鉄錯体、又は1:2クロム錯体が挙げられ得る。好適な金属錯体染料としては、BASFからのNeozapon(登録商標)、Ciba-GeigyからのOrasol(登録商標)、又はClariant Pigments & AdditivesからのSavinyl(登録商標)の名称で市販されているものが挙げられ得る。
【0061】
顔料としてはまた、非水溶性固体である機能性充填剤も挙げられ得る。機能性充填剤としては、塗料に追加的な機能特性を提供する固体、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン、ペンタエリスリトール、及び類似の化合物などの膨張性構成成分が挙げられ得る。
【0062】
本発明の着色剤組成物は、色スペクトルの様々な色の一連の着色剤を生成するように選択される、多種多様な顔料又は顔料の組み合わせを含み得、これらは、ベース塗料又はコーティングを着色するために着色装置によって単独で又は組み合わせて添加され得る。
【0063】
着色剤組成物が添加されるベース塗料又はステインとは異なり、本発明の着色剤組成物は、フィルムを形成するのに必要とされるよりも少ないフィルム形成ポリマーを含有し、好ましくはフィルム形成ポリマーを実質的に含有しないか又は本質的に含有しない。フィルム形成ポリマーとしては、通常、アクリル、ビニルアクリル、又はスチレンアクリルから選択されるラテックス樹脂が挙げられる。したがって、着色剤組成物が乾燥され、水で洗浄される場合、着色剤組成物は、フィルムを形成するのに十分なフィルム形成ポリマーがないことに起因して洗い流されるが、ベース塗料又はステインは、フィルム形成ポリマーから提供される構造的安定性に起因して残留する。
【0064】
いくつかの実施形態では、本発明の着色剤は、アルキル-イソチアゾリン-3-オン、ハロ-プロピニルアルキルカルバメート、又は二級アミノ-ベンズイミダゾールではない添加マイクロビスタットを実質的に含まない、本質的に含まない、又は本質的に完全に含まない。このようなマイクロビスタットとしては、ジシアノブタン又はピリチオンが挙げられ得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明の着色剤は、メチル-イソチアゾリン-3-オンではないイソチアゾリン-3-オンを実質的に含まない、本質的に含まない、又は本質的に完全に含まない。このような化合物は、以下の構造を有し、
【0066】
【化7】
式中、R1は、2~8個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である。
【0067】
いくつかの実施形態では、着色剤は、1,2-ジブロモ-2,4-ジシアノブタンなどのジシアノブタンを実質的に含まない、本質的に含まない、又は本質的に完全に含まない。
【0068】
いくつかの実施形態では、着色剤は、追加的な乾燥状態防腐剤を必要とせず、したがって、酸化亜鉛を実質的に含まない、本質的に含まない、又は本質的に完全に含まない。
【0069】
本発明の着色剤は、一般に、アルキド塗料及びラテックス塗料の両方と混和性であり、それらに使用され得る。
【0070】
着色剤組成物中に任意選択的に存在する追加的な成分としては、追加的な顔料、キャリア、塩基、保湿剤(例えば、ポリエーテル)、界面活性剤、追加的な殺生物剤、消泡剤、体質顔料、増粘剤、pH調整剤、並びにポリアクリレートなどのカルボキシル含有ポリマー、及び/又は従来の分散剤として機能し得るカルボキシル含有ポリウレタンが挙げられる。
【0071】
本発明のキャリアは、水系であるが、別個に又は水との混合物の一部として添加される追加的な任意選択的な溶媒を含み得る。追加的な溶媒は、VOC含有量の望ましくない増加をさせないように選択されなければならない。キャリアとして使用される場合、水は、水道水、脱イオン水、蒸留水、逆浸透水、又はリサイクル水であり得る。キャリア中に存在し得る例示的な溶媒としては、アルコール(例えば、エタノール);エステル(例えば、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート);ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、及びメチルイソブチルケトン);エステル/ケトン混合物(例えば、エチル3-エトキシプロピオネート/メチルエチルケトン混合物);脂肪族溶媒(例えば、ホワイトスピリット、ミネラルスピリット、石油蒸留物、パラフィン溶媒、又は植物油);芳香族溶媒とエーテルとの混合物;並びにラテックス及び油系の塗料の両方と共に機能するユニバーサル溶媒(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、及びグリコール/水混合物)が挙げられる。
【0072】
しかしながら、保湿剤成分は、着色剤組成物中に存在し得る分散剤の希釈及び極性制御のために特に好ましい任意選択的な成分である。保湿剤としては、ポリエーテル、例えば、ポリアルキルグリコール、例えば、低~中分子量ポリエチレン及びポリプロピレングリコール;ポリヒドロキシエーテル、例えば、エポキシド重合から形成されるもの;エチレングリコールポリエーテル;エチレン及びプロピレングリコール;ヘキシレングリコール;多糖類化合物、例えば、ポリソルビタン及びポリソルビトール;グリセリン、ソルビトール、ポリグルタミン酸ナトリウム;変性尿素化合物;並びにポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンオキシドが挙げられ得る。特に有用な市販のポリエチレングリコールは、PEG 300、PEG 400、又はPEG 600である。ポリエーテルを使用するのではなく、二価又は多価アルコールが保湿剤として用いられ得る。エチレングリコールは、例示的な二価アルコールである。しかしながら、エチレングリコールは、VOCであり、したがって本発明の実施において好ましくない。プロピレングリコールは、例示的な多価アルコールである。
【0073】
コーティング組成物はまた、米国特許第8,242,206号に開示されているものなどの1つ以上の界面活性剤も含み得る。例示的な界面活性剤としては、スルホコハク酸ナトリウムのビス(トリデシル)エステル(アニオン性)(Aerosol TR-70S)、レシチン、残留油を含まないレシチン(乾燥レシチン)、ノニオン性界面活性剤を含むレシチン(W/Dレシチン)、脂肪酸変性ポリエステル(ELKA 6220)、ノニルフェノールエトキシレート(Igepal CO 430及びIgepal CO 530)、直鎖アルコールエトキシレート(L-12-3及びL-24-4)、C10-アルコール及びエチレンオキシドから形成されたアルキルポリエチレングリコールエーテル(Lutensol XP40及びLutensol XP50)、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(Pluronic L64)、二級アルコールエトキシレート(Tergitol 15-S-3及びTergitol 15-S-5)、四官能性エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、ノニオン性(Tetronic 901及びTetronic 90R4)、ノニオン性可溶化剤を含むアルキルアリールポリエーテルアルコール(Triton X-207)、NPEリン酸エステル、アニオン性(Dextrol OC-50)、低分子量ポリカルボン酸ポリマーのアルキルアンモニウム塩(Disperbyk)、ジノニルスルホスクシネート(Nekal 25L)、二官能性プロピレンオキシド/エチレンオキシドブロックコポリマー(二級-OH基を有する)(Pluronic 25R4)、APEドドキシノール-6(RC-520)などが挙げられる。これらの界面活性剤の多くは、市販の形態で入手可能である。商品名は、本明細書において上記の括弧内に列挙されている。
【0074】
現在好ましいアルキド混和性界面活性剤としては、例えば、スルホコハク酸ナトリウムのビス(トリデシル)エステル(アニオン性)(Aerosol TR-70S)、レシチン、残留油を含まないレシチン(乾燥レシチン)、ノニオン性界面活性剤を含むレシチン(W/Dレシチン)、二級アルコールエトキシレート(Tergitol 15-S-3及びTergitol 15-S-5)、直鎖アルコールエトキシレート(L-12-3)、ノニオン性可溶化剤を含むアルキルアリールポリエーテルアルコール(Triton X-207)、C10-アルコール及びエチレンオキシドから形成されたアルキルポリエチレングリコールエーテル(Lutensol XP50)などが挙げられる。
【0075】
好適なラテックス混和性界面活性剤の例としては、例えば、NPEリン酸エステル、アニオン性(Dextrol OC-50)、低分子量ポリカルボン酸ポリマーのアルキルアンモニウム塩(Disperbyk)、ノニルフェノールエトキシレート(Igepal CO 530及びIgepal CO-630)、C10アルコール及びエチレンオキシドから形成されたアルキルポリエチレングリコールエーテル(Lutensol XP50及びLutensol XP60)、ジノニルスルホスクシネート(Nekal 25L)、二官能性プロピレンオキシド/エチレンオキシドブロックコポリマー(二級-OH基を有する)(Pluronic 25R4)、APEドドキシノール-6(RC-520)、二級アルコールエトキシレート(Tergitol 15-S-5)、ノニオン性ポリエチレンチオエーテル(Alcodet 218)、酸性親和性を有する基を有する変性ポリアルコキシレート(BYK 2091)、ドデシルフェノールエトキシレート(DD-10)、塩基性親和性を有する基を有する高分子量ブロックコポリマー(Disperbyk 184)、予備中和アクリルポリマー(EFKA 4580)、アルキルアリールポリグリコールエーテル(Emulsifier W)、ポリカルボン酸のアニオン性高分子電解質ナトリウム塩(Hydropalat 44)、NPEとジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩とのブレンド(Igepal CTA-639W)、ポリカルボン酸の疎水性コポリマー(Nopcosperse 100)、プロピレンオキシド/エチレンオキシド二官能性ブロックコポリマー(二級-OH基を有する)(Pluronic 17R4又はPluronic 25R4)、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(Pluronic L44、Pluronic L64、及びPluronic F68)、PEG40水添ヒマシ油(Surfactol 365)、界面活性剤ブレンド(Surfynol CT-121)、ポリカルボン酸の親水性又は疎水性コポリマーの塩(Tamol 1124、Tamol 731、Tamol 681、又はTamol 165)、Triton CF-10などの低起泡性ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤の多くは、市販の形態で入手可能である。商品名は、本明細書において上記の括弧内に列挙されている。
【0076】
現在好ましいラテックス混和性界面活性剤としては、例えば、C10アルコール及びエチレンオキシドから形成されたアルキルポリエチレングリコールエーテル(Lutensol XP50及びLutensol XP60)、二級アルコールエトキシレート(Tergitol 15-S-5及びTergitol 15-S-9)、プロピレンオキシド/エチレンオキシド二官能性ブロックコポリマー(二級-OH基を有する)(Pluronic 17R4)、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(Pluronic L44)、アルキルアリールポリグリコールエーテル(Emulsifier W)、ポリカルボン酸の親水性コポリマーのアミン塩(Tamol 731)などが挙げられる。
【0077】
ユニバーサル界面活性剤パッケージの非限定的な例は、レシチン、Tamol 731、及びTergitol 15-S-5;乾燥レシチン、Aerosol TR70S、SMA1440H、Pluronic 17R4、及びLutensol XP50;乾燥レシチン、Aerosol TR70S、SMA1440H、及びPluronic 17R4;レシチン、Pluronic 17R4、及びLutensol XP50;Tamol 731、乾燥レシチン、及びPluronic L35;乾燥レシチン、レシチン、Lutensol XP50、Tergitol 15-S-5、及びPluronic 17R4;並びにTamol 731、乾燥レシチン、及びPluronic L44である。
【0078】
製造を容易にするために消泡剤が添加され得る。本発明を実施するのに有用な消泡剤としては、例えば、鉱油、シリカ油(Drew L-474)、及び有機変性シリコーン油(Drew L-405)などの材料が挙げられる。
【0079】
追加的な殺生物剤が、製造、流通、又は貯蔵中の微生物増殖に耐性があるために、塩基性湿潤状態防腐剤として着色剤組成物に添加され得る。追加的な殺生物剤としては、塩素化炭化水素、BIT、有機金属、ハロゲン放出化合物、金属塩、有機硫黄化合物、四級アンモニウム化合物、及びフェノール類が挙げられ得る。
【0080】
組成物はまた、製造中の微生物増殖耐性を補助するために、1つ以上の速効性殺菌剤も含み得る。このような殺菌剤としては、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド(2,2-dibromo-3-nitrilopropionamide、DBNPA)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、チオメルサール、又はクロルヘキシジンが挙げられ得る。
【0081】
体質顔料粒子もまた、開示される着色剤組成物中に任意選択的に存在し得る。例示的な体質顔料粒子としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、粘土、焼成粘土、長石、ネフェリン、閃長岩、珪灰石、珪藻土、アルミナシリケート、非フィルム形成ポリマー粒子、酸化アルミニウム、シリカ、タルク、これらの混合物、及び当業者に周知である他の材料が挙げられる。選択される体質顔料のタイプ及び量は、幅広く様々であり得、通常、当業者に周知である技術を使用して経験的に決定される。
【0082】
着色剤組成物はまた、着色剤組成物の全体的な粘度を増加させるために1つ以上の増粘剤を含み得る。例示的な増粘剤としては、セルロースエーテル;カルボキシメチルセルロース;アルギネート;カゼイネート;疎水変性セルロースエーテル;ポリエチレンオキシド;ポリビニルアルコール;ポリアクリルアミド;アルカリ可溶性アクリル、及びスチレン/無水マレイン酸;アルカリ膨潤性架橋アクリルエマルジョン、例えば、疎水変性アルカリ膨潤性エマルジョン、並びにノニオン性会合性増粘剤、例えば、疎水変性ポリウレタン及びポリエーテルが挙げられる。
【0083】
アルキド混和性界面活性剤のための増粘剤としては、ベントナイト粘土、有機粘土、合成シリカ、ヒマシ油誘導体、変性アクリルコポリマー、ポリエチレングリコール、重合油誘導体、有機エステル、及び複合ポリオレフィンが挙げられる。
【0084】
着色剤組成物はまた、1つ以上のpH調整剤も含み得る。好ましいpH調整剤は、アミン系、例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、Vantex(登録商標)T(Eastman Chemical Companyから入手可能)、AEPD(登録商標)VOX 1000(Angus Chemical Companyから入手可能)、AMP95(商標)(Angus Chemical Companyから入手可能)、若しくはグルカミン;又は、無機系、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、若しくは水酸化カルシウムであり得る。
【0085】
別の態様では、本発明は、着色剤組成物の微生物耐性を評価する新規な方法(以下、「着色剤微生物耐性試験(Colorant Microbial Resistance Test)」)を含む。
【0086】
着色剤組成物試料の調製
着色剤組成物を試験するために、着色剤組成物試料は、平坦で清浄な多孔質物品、好ましくは無灰紙上に堆積させることによって調製される。Whatman Grade 41の1インチ直径の無灰濾紙が好ましく利用される。いくつかの実施形態では、ガラス繊維濾紙が利用され得る。任意の好適な形状の物品が利用され得、円形の物品が利用される場合、任意の好適な直径が利用され得る。着色剤組成物の薄層を紙上に堆積させるために、ブラシ、ドローダウン、ローラー、又はドロッパーによる塗装を含む、任意の好適な方法が用いられ得る。
【0087】
真菌が接種された寒天プレートの調製
真菌の接種は、ジャガイモデキストロース寒天(potato dextrose agar、PDA)上で約25℃、高湿度環境(相対湿度85%超)で、典型的には7~10日で起こる胞子形成まで増殖させることによって、試験用に調製及び分離される。真菌の増殖を促進する任意の好適な栄養寒天、例えば、ジクロランローズベンガル寒天(dichloran rose bengal agar、DRBC)、ジャガイモデキストロース寒天(potato dextrose agar、PDA)、サブローデキストロース寒天(sabouraud dextrose agar、SDA)、トリプシン大豆寒天(tryptic soy agar、TSA)、又は麦芽エキス寒天(malt extract agar、MEA)が利用され得る。細菌増殖を防止するために、1つ以上の抗菌剤が寒天に添加され得る。胞子形成後、真菌胞子は、脱イオン水中の滅菌した0.1%ポリソルベート80を12mL使用して採取される。殺生物的影響なしに真菌胞子を分散させるのに好適な任意の界面活性剤が、採取のための希釈剤として使用され得る。好ましくは、環境的に単離されたAspergillus niger又はPenicillium citrinumが、胞子懸濁液として調製される。
【0088】
等量の各採取胞子懸濁液が一緒に混合され、ASTM D-5990と同様に滅菌栄養塩溶液を希釈することによって、集団は、好適な濃度、典型的には1×105CFU/mL~1×108CFU/mL、好ましくは1×106CFU/mLに調整される。集団濃度は、標準化された分光光度法、又はThermoFischer及びSigma-Aldrichなどの複数の主要な実験室用品供給業者から入手可能である血球計数計を使用した血球測定法によって決定される。200μLの混合真菌接種物が、サブローデキストロース寒天(Sabouraud Dextrose Agar、SDA)プレート、又はDRBC、PDA、TSA、若しくはMEAなどの別の好適な栄養寒天を含有するプレートに移される。接種物は、L字型細胞スプレッダーを使用して寒天プレートの表面全体に均一に広げられる。
【0089】
真菌が接種された寒天プレートにおける着色剤試料の堆積
接種物が寒天に吸収された後、着色剤組成物試料は、接種された寒天プレートの中心に配置される。SDAプレートは、環境試験チャンバ内で25℃~30℃でインキュベートされる。1週間後、寒天プレートは、汚損について評価される。
【0090】
好ましくは、1週間後のコロニー形成の評価は、本明細書に記載される格付け尺度に従って行われる。1週間のインキュベーション後の最初に接種されたSDAプレートにおけるコロニー形成は、不十分な微生物耐性を示す。1週間のインキュベーション後にコロニー形成を示さない調製された着色剤組成物試料は、第2の真菌が接種された寒天プレートに移される。第2の真菌が接種された寒天プレートに移した後、次いで、第2の真菌が接種された寒天プレートは、最大で試料が破損するまで、環境試験チャンバ内で25℃~30℃でインキュベートされ、試料の破損は、完全な汚損時に起こる。好ましくは、接種された寒天プレートは、最大で6週間インキュベートされる。
【0091】
第2の真菌が接種されたSDAにおける着色剤組成物試料に対する真菌増殖からの汚損は、毎週、好ましくは最大で6週間、又は微生物の過剰増殖に起因する格付けが不可能になるまで等級付けされる。
【0092】
着色剤組成物試料の微生物耐性の格付けは、格付け尺度、好ましくは、各々が第2の真菌が接種されたSDAプレートの着色剤組成物試料上の真菌被覆の量に対応する2つ以上の連続指標からなる数字又はアルファベット尺度に従って行われる。
【0093】
より好ましくは、格付け尺度は、以下の通りである。
【0094】
【表1】
3以上の格付けは、微生物増殖に対する着色剤組成物の耐性が不十分であることを示す。3未満の格付けは、着色剤が微生物増殖に十分に耐性があることを意味する。
【0095】
理論に束縛されるものではないが、この新規な試験は、着色剤容器内の部分的乾燥状態の着色剤組成物の曝露をシミュレートすると考えられる。具体的には、この試験方法は、着色装置で起こるような部分的乾燥状態の着色剤の繰り返し洗浄をシミュレートし、したがって部分的乾燥状態の材料からの防腐剤の浸出をシミュレートすると考えられる。
【0096】
実施例I:従来の湿潤状態抗菌評価方法による試験
様々な防腐剤パッケージを含む着色剤試料を、「Standard Test Method for Resistance of Emulsion Paints in the Container to Attack by Microorganisms」と題されるASTM試験方法D2574-16の修正形態を使用して試験した。
【0097】
0日目に1.20 105 CFU/mL、7日目に1.10 105 CFU/mL、かつ14日目に1.20 104 CFU/mLの総培養集団を有する、Aureobasidium種、Penicillium種、Aspergillus種、Cladosprium種、及びAlternia種の調製された真菌胞子懸濁液1mLを接種することによって、二連の50m液体着色剤組成物試料をチャレンジした。30℃±2℃でのインキュベーションが各チャレンジに続き、その後、各試料を、各チャレンジの72時間後及び7日後に微生物汚染について評価した。微生物汚染評価を、無菌技術を使用して試料を寒天プレート上に均一に広げ、寒天プレートを30℃で72時間インキュベートすることによって行った。次いで、寒天プレートを以下の格付け尺度によって評価した。
【0098】
【0099】
以下の成分を有する着色剤組成物の3つの代表的な試料を調製した。
【0100】
【0101】
以下の表3に示される追加的な防腐剤を表2の着色剤組成物に添加し、変性着色剤を、ジルコニウム粉砕ビーズを使用して7ヘグマン(Hegman)粉砕値まで粉砕した。
【0102】
【0103】
評価データは、評価期間を通して「1」の格付けによって示されるように、増殖が示されなかったことを示した。
【0104】
【0105】
殺生物剤パッケージCなどのより少ない量の殺生物剤を含む試料は、より多い量の殺生物剤を含む試料と比較して、微生物増殖に対する耐性の減少を示すことが予期された。しかしながら、この試験は、殺生物剤のタイプ及び量の相違にかかわらず、各殺生物剤パッケージ間に相違がないことを示した。したがって、ASTM D2574-16は、殺生物剤パッケージの抗菌能力を区別するのに不十分であった。
【0106】
実施例II:新規な微生物試験方法による試験
従来の体質顔料/分散剤、保湿剤、pH緩衝剤、速効性殺菌、及び塩基性湿潤状態防腐剤、界面活性剤、増粘剤、及び消泡剤を以下の量で含有する着色剤試料を調製し、水又は体質顔料分散液の添加によって着色力規格に到達するように調整した。
【0107】
【0108】
調製された着色剤試料に、以下の表に示される追加的な防腐剤を添加し、変性着色剤組成物を、ジルコニウム粉砕ビーズを使用して7ヘグマン粉砕値まで粉砕した。得られた組成物の微生物耐性を、本明細書に記載される新規な方法によって二重に試験した。増殖の各週後の平均格付け値を示す。
【0109】
【0110】
より高濃度のIPBC、MIT、又はカルベンダジムを含む、3つの防腐剤全てでの組み合わせでない場合の試料は、3つの防腐剤全てを含有する試料(試料4)と比較して、より低い抗菌有効性及びより多くの微生物増殖を示したことが理解されるであろう。高濃度のIPBC、MIT、及びカルベンダジムを含む試料(4)は、既存の配合物(対照)と比較して、経時的に優れた有効性を提供したことも理解されるであろう。
【0111】
実施例III:新規な防腐パッケージと既存の防腐剤との比較
以下の従来の保湿剤、体質顔料/分散剤、界面活性剤、増粘剤、pH緩衝剤、及び不活性顔料を含有する市販の水性マゼンタ及びユニバーサルブルー着色剤組成物の試料を調製した。
【0112】
【0113】
防腐剤を着色剤組成物に添加して、以下の濃度で着色剤組成物中に存在する活性殺生物剤を得て、変性着色剤組成物を、ジルコニウム粉砕ビーズを使用して7ヘグマン粉砕値まで粉砕した。
【0114】
【0115】
本明細書に記載される新規な方法を使用して、試料を三連で用いて抗菌効力を試験した。TSAプレート及びSDAプレート上での増殖を評価するため、並行試験を行った。試料を毎週評価し、平均結果を以下に示す。
【0116】
【0117】
試験結果は、高レベルのMIT、IPBC、及びカルベンダジムを含む新規な防腐剤パッケージが、BIT及びジンクピリチオンを含む対照着色剤組成物と比較して、微生物増殖に対する耐性の増加を提供したことを示す。
【国際調査報告】