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特表2024-539695水性ポリウレタン分散剤の製造方法及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】水性ポリウレタン分散剤の製造方法及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/52 20220101AFI20241022BHJP
   C09B 67/04 20060101ALI20241022BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20241022BHJP
   C09B 7/00 20060101ALI20241022BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20241022BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20241022BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20241022BHJP
   C08G 18/34 20060101ALI20241022BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20241022BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20241022BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C09K23/52
C09B67/04
C09B67/20 F
C09B67/20 L
C09B7/00
C08G18/00 C
C08G18/48 033
C08G18/32 015
C08G18/32 006
C08G18/34 080
C08G18/75 010
C08G18/73
C09D17/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525004
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 CN2022072840
(87)【国際公開番号】W WO2023077679
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】202111298675.5
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】殷 允杰
(72)【発明者】
【氏名】張 蘇文
(72)【発明者】
【氏名】王 潮霞
【テーマコード(参考)】
4D077
4J034
4J037
【Fターム(参考)】
4D077AB03
4D077AC05
4D077CA03
4D077DD29Y
4D077DD29Z
4D077DD46Y
4J034BA06
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA22
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB07
4J034CB08
4J034CC03
4J034CC12
4J034CC62
4J034CC65
4J034CD05
4J034CE02
4J034DA01
4J034DA05
4J034DB04
4J034DB07
4J034DC50
4J034DG03
4J034DG08
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA02
4J034JA14
4J034JA23
4J034JA30
4J034JA32
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB07
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD12
4J034KE02
4J034LA24
4J034LA36
4J034LB02
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4J034MA12
4J034PA03
4J034QA03
4J034QB08
4J034QC05
4J034RA07
4J037CC26
4J037EE08
4J037EE28
(57)【要約】
本発明は、水性ポリウレタン分散剤の製造方法及びその応用を開示し、高分子分散剤の分野に属し、具体的なステップは以下のとおりであり、開始剤としてイソシアネート基含有化合物を秤取し、窒素及び触媒の存在下でポリエチレングリコールとともにポリウレタンプレポリマーを生成し、反応系に有機溶媒を加えて粘度を制御し、75~80℃で、鎖延長剤1を加えて鎖延長反応を2~2.5h行い、75~80℃で、鎖延長剤2を加えて鎖延長反応を2~2.5h継続し、温度を50~55℃に下げ、末端封止剤を加えて末端封止反応を1~1.5h行い、反応終了後、トリエチルアミンを加えて中和反応を1h行い、脱イオン水を加えて20~30min高速乳化し、室温で減圧蒸留して有機溶媒を除去して水性ポリウレタン分散剤を得る。該構造の分散剤は、液体インジゴ染料を製造するときに粉砕効率が高く、且つ染料の保存安定性が良好である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリウレタン分散剤の製造方法であって、具体的な操作ステップは以下のとおりであり、
(1)、開始剤としてイソシアネート基含有化合物を秤取し、窒素及び触媒の存在下で一定分子量のポリエチレングリコールと75~80℃で2~2.5h反応させて、ポリウレタンプレポリマーを生成し、
反応系に適量の有機溶媒を加えて粘度を制御し、
(2)、温度を一定に保ち、鎖延長剤1を加えて鎖延長反応を2~2.5h行い、
(3)、温度を一定に保ち、鎖延長剤2を加えて鎖延長反応を2~2.5h継続し、
(4)、温度を50~55℃に下げ、末端封止剤を加えて末端封止反応を1~1.5h行い、
(5)、反応終了後、鎖延長剤1と等モルのトリエチルアミンを加えて中和反応を1h行い、脱イオン水を加えて20~30min高速乳化し、室温で減圧蒸留して有機溶媒を除去して最終的に水性ポリウレタン分散剤を得る、ことを特徴とする水性ポリウレタン分散剤の製造方法。
【請求項2】
ステップ(1)では、前記開始剤は、ヘキサメチレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートのいずれかであり、
前記ポリエチレングリコールは、PEG 400とPEG 600のいずれかであり、
前記開始剤とポリエチレングリコールとのモル比は、4:1~1.2である、ことを特徴とする請求項1に記載の水性ポリウレタン分散剤の製造方法。
【請求項3】
ステップ(1)では、前記触媒は、ジブチル錫ジラウレートであり、
その使用量は、開始剤とポリエチレングリコールの2種類のモノマーの2質量%~3質量%を占める、ことを特徴とする請求項1に記載の水性ポリウレタン分散剤の製造方法。
【請求項4】
ステップ(1)では、前記有機溶媒は、アセトン又はブタノンのいずれかである、ことを特徴とする請求項1に記載の水性ポリウレタン分散剤の製造方法。
【請求項5】
ステップ(2)では、前記鎖延長剤1は、2,2-ヒドロキシメチルプロピオン酸又は2,2-ヒドロキシメチル酪酸のいずれかであり、
また、前記開始剤とポリエチレングリコールと鎖延長剤1のモル比は、4:1~1.2:1.2~1.5である、ことを特徴とする請求項1に記載の水性ポリウレタン分散剤の製造方法。
【請求項6】
ステップ(3)では、前記鎖延長剤2は、1-フェニル-1,2-エチレングリコールであり、
また、前記開始剤とポリエチレングリコールと鎖延長剤1と鎖延長剤2のモル比は、4:1~1.2:1.2~1.5:1.2である、ことを特徴とする請求項1に記載の水性ポリウレタン分散剤の製造方法。
【請求項7】
ステップ(4)では、前記末端封止剤は、メチルエチルケトンオキシムであり、
また、前記開始剤とポリエチレングリコールと鎖延長剤1と鎖延長剤2と末端封止剤のモル比は、4:1~1.2:1.2~1.5:1.2:0.2~1.2である、ことを特徴とする請求項1に記載の水性ポリウレタン分散剤の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法により製造された水性ポリウレタン分散剤の液体インジゴ染料の製造における応用。
【請求項9】
具体的な過程は、インジゴ染料、水性ポリウレタン分散剤及び水を混合し、まず粉砕カップにて1500r/minで5~10min予備粉砕し、その後ジルコニアビーズを加え、次にサンドミルにて3000r/minで1~2時間粉砕し続けて、液体インジゴ染料を得るステップを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の応用。
【請求項10】
前記水性ポリウレタン分散剤は、インジゴ染料の乾燥重量の25%~35%を占め、液体インジゴ染料中の染料の含有量は、25%であり、前記サンドミルの回転数は、3000~3500r/minであり、ジルコニアビーズの直径の大きさは、1~2mmである、ことを特徴とする請求項9に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子分散剤の分野に属し、水性ポリウレタン分散剤の製造方法、及び液体インジゴの製造におけるその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
インジゴ染料は、構造が簡単で、水溶性が極めて低い染料の1種であり、主にジーンズの染色及びプリントに使用される。現在のインジゴ染料は主に粉体を主とし、粉体分散染料は、包装が簡単で、搬送しやすく、保存安定性が良好で、加工機器への適応能力が強く、操作が簡単であるという利点を有するが、インジゴ染料の綿繊維に対する親和性が強くなく、濃い色に染まりにくいため、染料のほとんどは、繊維の表面に集中しており、実際に工場でのジーンズ生産過程では、織物表面の色浮き及び関連助剤を除去するために、20回以上の水洗工程を行う必要があり、これは、大量の水資源の消費及び水資源の汚染を引き起こしており、また、粉体インジゴ染料には、化学反応過程では粉塵汚染が発生し、及びペースト調製又は調液計量が不正確であるという欠陥が存在し、人々の健康に一定の危害を及ぼしている。
【0003】
世界的なグリーン環境保護の風潮が推し進められるにつれて、生態環境保護の理念は、社会の様々な業種に徐々に組み込まれており、「自然への回帰、グリーン環境保護、生態健康」という生活様式は、より多くの人々によって提唱され始め、人々が非常に依存する伝統産業として紡績アパレル業界によって引き起こされた生態汚染問題は、常に世界的な注目の的となっており、紡績アパレル業界での最も汚染されているものとして、デニム製品の染色及び水洗過程は、生態環境の極めて深刻な汚染を引き起こしている。液体インジゴ染料は、粉体分散染料のいくつかの欠陥を解消することができ、少ない分散剤を用いて良好な分散効果を達成することができ、染料利用率を向上させ、染色又はプリントに関して、その染料粒子が小さいため、染色率を向上させてさらに濃い色に染めることができ、同時に染料を繊維の内部に拡散しやすくさせ、繊維の表面の色浮きを少なくさせ、さらにその後の水洗工程を減らし、発生源からプリント染色廃水の排出を大幅に低減させることができ、それにより染色廃水中の染料量及び関連助剤の量を減らし、染色過程に起因する環境の破壊行動が少なくなり、省エネルギー環境保護の発展理念を実現する。従って、液体染料の製造は、近年研究のホットスポットとなっている。しかしなら、現在、液体インジゴ染料の製造に関する研究が非常に少なく、且つ液体染料の製造中に粉砕効率が低く、製造されたナノスケールの液体インジゴ染料の保存過程にナノスケールが大きくなり、ひいては凝集、沈殿が発生する等の問題が存在するため、染色が不均一で、及び再現性が悪くなる等の問題が引き起こされる。
【0004】
上記問題を解決する鍵となる要因は分散剤の構造であり、適切な分散剤構造は、液体染料の粉砕効率を向上させることができるだけでなく、液体染料に良好な安定性を持たせることができる。現在、液体インジゴ染料を製造する分散剤の多くは、例えばナフタレン系、リグニンスルホン酸塩類、及び異なるポリオキシエチレンエーテル型分散剤などの、いくつかの低分子量の陰イオンと非イオン性分散剤であり、それらによってナノスケールの液体染料を製造できるが、粉砕効率が低く、安定性が悪いという問題が依然として存在する。高分子分散剤は、特殊なアンカー基構造を有し、粒子の表面に強固に吸着できるだけでなく、系が安定した溶媒和セグメントを提供することから注目されており、現在の高分子分散剤は、液体顔料、塗料の製造に関して非常に多くの有益な成果を上げている。例えば、出願番号がCN201910844629.7(公開番号CN110540639A)の中国発明特許出願には、パラレル型高分子水性顔料分散剤が開示されており、合成された該パラレル型高分子水性顔料分散剤は、櫛型の分岐構造を有し、ナフタレン環及び周辺のエチレンオキサイド/プロピレンオキシドポリマー長鎖を含み、パラレル型高分子水性顔料分散剤は、有機顔料に対して優れた分散安定性、保存安定性及び再溶解性を有し、粉砕効率が高く、粘度低下性が強く、発色性が良好である。出願番号がCN202110585011.0(公開番号CN113278111A)の中国発明特許出願には、三元共重合体分散剤が開示されており、該構造の分散剤は、液体分散染料を製造するときに粉砕効率が高く、且つ染料の保存安定性が良好である。しかしながら、現在、液体インジゴの製造における高分子分散剤に関する研究が少なく、新たな製品をさらに研究開発することが早急に必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の目的は以下のとおりである。本発明の目的は、設計合成された水性ポリウレタン分散剤の製造方法及びその応用を提供し、具体的には合成された分散剤と粉末インジゴ染料を機械的に粉砕することにより保存安定性の良好な液体インジゴ染料を成功に製造することである。
【0006】
技術的解決手段は以下のとおりである。本発明に記載の水性ポリウレタン分散剤の製造方法であって、具体的な操作ステップは以下のとおりであり、
(1)、開始剤としてイソシアネート基含有化合物を秤取し、窒素及び触媒の存在下で一定分子量のポリエチレングリコールと75~80℃で2~2.5h反応させて、ポリウレタンプレポリマーを生成し、
反応系に適量の有機溶媒を加えて粘度を制御し、
(2)、温度を一定に保ち、鎖延長剤1を加えて鎖延長反応を2~2.5h行い、
(3)、温度を一定に保ち、鎖延長剤2を加えて鎖延長反応を2~2.5h継続し、
(4)、温度を50~55℃に下げ、末端封止剤を加えて末端封止反応を1~1.5h行い、
(5)、反応終了後、鎖延長剤1と等モルのトリエチルアミンを加えて中和反応を1h行い、適量の脱イオン水を加えて20~30min高速乳化し、室温で減圧蒸留して有機溶媒を除去して最終的に水性ポリウレタン分散剤を得る。
【0007】
さらに、ステップ(1)では、前記開始剤は、ヘキサメチレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートのいずれかであり、
前記ポリエチレングリコールは、PEG 400とPEG 600のいずれかであり、
前記開始剤とポリエチレングリコールとのモル比は、4:1~1.2である。
【0008】
さらに、ステップ(1)では、前記触媒は、ジブチル錫ジラウレートであり、
その使用量は、開始剤とポリエチレングリコールの2種類のモノマーの2質量%~3質量%を占める。
【0009】
さらに、ステップ(1)では、前記有機溶媒は、アセトン又はブタノンのいずれかである。
【0010】
さらに、ステップ(2)では、前記鎖延長剤1は、2,2-ヒドロキシメチルプロピオン酸又は2,2-ヒドロキシメチル酪酸のいずれかであり、
また、前記開始剤とポリエチレングリコールと鎖延長剤1のモル比は、4:1~1.2:1.2~1.5である。
【0011】
さらに、ステップ(3)では、前記鎖延長剤2は、1-フェニル-1,2-エチレングリコールであり、
また、前記開始剤とポリエチレングリコールと鎖延長剤1と鎖延長剤2のモル比は、4:1~1.2:1.2~1.5:1.2である。
【0012】
さらに、ステップ(4)では、前記末端封止剤は、メチルエチルケトンオキシムであり、
また、前記開始剤とポリエチレングリコールと鎖延長剤1と鎖延長剤2と末端封止剤のモル比は、4:1~1.2:1.2~1.5:1.2:0.2~1.2である。
【0013】
さらに、前記製造方法により製造された水性ポリウレタン分散剤の液体インジゴ染料の製造における応用である。
【0014】
さらに、具体的な過程は、インジゴ染料、水性ポリウレタン分散剤及び水を混合し、まず粉砕カップにて1500r/minで5~10min予備粉砕し、その後ジルコニアビーズを加え、次にサンドミルにて3000r/minで1~2時間粉砕し続けて、液体インジゴ染料を得るステップを含む。
【0015】
さらに、前記水性ポリウレタン分散剤は、インジゴ染料の乾燥重量の25%~35%を占め、液体インジゴ染料中の染料の含有量は、25%であり、前記サンドミルの回転数は、3000~3500r/minであり、ジルコニアビーズの直径の大きさは、1~2mmである。
【0016】
有益な効果は以下のとおりである。本発明と従来技術とを比較すると、本発明は以下の特徴を有する。1、本発明で製造された水性ポリウレタン分散剤は、外観が透明で、色が非常に薄い淡黄色のみであるが、現在の関連文献における液体インジゴの製造過程で使用された分散剤は、ナフタレン系及びリグニン系分散剤であり、これらの分散剤自体は、一定の色を有し、製造された液体インジゴ染料は、後続の染色又はプリント時に、織物に着色影響を与えることが避けられず、淡黄色で透明な水性ポリウレタンは、この問題を大きく解決することができる。2、本発明で製造された液体インジゴ染料は、工場の生産環境を大幅に改善し、従来の粉末染料を工場で大量に計量、使用し及び搬送する時に粉塵汚染が存在して、環境に危害を及ぼすとともに、計量及び迅速な材料配合を正確に制御することが適切でないという欠陥を解決することができ、作業場労働者の身体の健康を保障して、将来の作業場での清潔な自働化生産のために基礎を築くことができる。3、本発明で設計合成された水性ポリウレタン分散剤は、鎖延長過程に複数のCOOをアンカー基として導入し、従来の分散剤の単一点アンカーに比べて、高分子分散剤の多点アンカーは、染料とのアンカー効果を大幅に向上させることができ、同時に溶媒和セグメントとしてポリエチレングリコール鎖末端をポリウレタン分散剤に連結し、該鎖末端は、良好な溶媒和鎖末端として機能でき、水性媒体と良好な相溶性を有するだけでなく、十分な立体障害を生成でき、染料粒子の再凝結を効果的に防止することができる。同時に、ポリウレタンのカルバミン酸塩構造のN-H、C=O構造は、インジゴ染料構造のN-H、C=Oと水素結合を形成し、分散剤と染料粒子との間の結合力をさらに向上させることができ、1-フェニル-1,2-エチレングリコールを導入することで平面性が強く且つπ-π結合を含有するベンゼン環構造が導入され、分散剤の立体障害をさらに増加させ、それにより染料粒子間の衝突凝集を阻止し、安定した系を得ることができる。4、本発明で設計合成された分散剤は、液体分散染料を製造するときに粉砕効率が高く、且つナノスケールの染料の保存安定性が良好であり、且つ粉末染料に比べて、その染色性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は本発明の操作フローチャートである。
図2図2は本発明の実施例1で製造される水性ポリウレタン分散剤の赤外スペクトル図である。
図3図3は本発明に係る液体インジゴ染料粒子の粒径図及びSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面及び具体的な実施例を参照しながら、本発明をさらに説明する。
【0019】
図に示すように、本発明に記載の水性ポリウレタン分散剤の製造方法であって、具体的な操作ステップは以下のとおりであり、
(1)、開始剤としてイソシアネート基含有化合物を秤取し、窒素及び触媒の存在下で一定分子量のポリエチレングリコールと75~80℃で2~2.5h反応させて、ポリウレタンプレポリマーを生成し、
反応系に適量の有機溶媒を加えて粘度を制御し、
(2)、温度(75~80℃)を一定に保ち、鎖延長剤1を加えて鎖延長反応を2~2.5h行い、
(3)、温度(75~80℃)を一定に保ち、鎖延長剤2を加えて鎖延長反応を2~2.5h継続し、
(4)、温度(75~80℃)を50~55℃に下げ、末端封止剤を加えて末端封止反応を1~1.5h行い、
(5)、反応終了後、鎖延長剤1と等モルのトリエチルアミンを加えて中和反応を1h行い、適量の脱イオン水を加えて20~30min高速乳化し、室温(通常の温度が25℃である)で減圧蒸留して有機溶媒を除去して最終的に水性ポリウレタン分散剤を得る。
【0020】
さらに、ステップ(1)では、前記開始剤は、ヘキサメチレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートのいずれかであり、好ましくはイソホロンジイソシアネートであり、
前記ポリエチレングリコールは、PEG 400とPEG 600のいずれかであり、好ましくはPEG 400であり、
前記開始剤とポリエチレングリコールとのモル比は、4:1~1.2であり、好ましくは4:1である。
【0021】
さらに、ステップ(1)では、前記触媒は、ジブチル錫ジラウレートであり、
その使用量は、開始剤とポリエチレングリコールの2種類のモノマーの2質量%~3質量%を占め、好ましくは2質量%である。
【0022】
さらに、ステップ(1)では、前記有機溶媒は、アセトン又はブタノンのいずれかであり、好ましくはアセトンである。
【0023】
さらに、ステップ(2)では、前記鎖延長剤1は、2,2-ヒドロキシメチルプロピオン酸又は2,2-ヒドロキシメチル酪酸のいずれかであり、好ましくは2,2-ヒドロキシメチル酪酸であり、
また、前記開始剤とポリエチレングリコールと鎖延長剤1のモル比は、4:1~1.2:1.2~1.5であり、好ましくは4:1:1.5である。
【0024】
さらに、ステップ(3)では、前記鎖延長剤2は、1-フェニル-1,2-エチレングリコールであり、
また、前記開始剤とポリエチレングリコールと鎖延長剤1と鎖延長剤2のモル比は、4:1~1.2:1.2~1.5:1.2であり、好ましくは4:1:1.5:1.2である。
【0025】
さらに、ステップ(4)では、前記末端封止剤は、メチルエチルケトンオキシムであり、
また、前記開始剤とポリエチレングリコールと鎖延長剤1と鎖延長剤2と末端封止剤のモル比は、4:1~1.2:1.2~1.5:1.2:0.2~1.2であり、好ましくは4:1:1.5:1.2:0.6である。
【0026】
さらに、前記製造方法により製造された水性ポリウレタン分散剤の液体インジゴ染料の製造における応用である。
【0027】
さらに、具体的な過程は、インジゴ染料、水性ポリウレタン分散剤及び水を混合し、まず粉砕カップにて1500r/minで5~10min予備粉砕し、その後ジルコニアビーズを加え、次にサンドミルにて3000r/minで1~2時間粉砕し続けて、液体インジゴ染料を得るステップを含む。
【0028】
さらに、前記水性ポリウレタン分散剤は、インジゴ染料の乾燥重量の25%~35%を占め、好ましくは27%であり、液体インジゴ染料中の染料の含有量は、25%であり、前記サンドミルの回転数は、3000~3500r/minであり、好ましくは3000r/minであり、ジルコニアビーズの直径の大きさは、1~2mmであり、好ましくは1mmである。
【0029】
実施例1
(1)、水性ポリウレタン分散剤の合成
開始剤、ポリエチレングリコール、鎖延長剤1、鎖延長剤2、末端封止剤、及び中和剤の6種類のモノマーのモル比4:1:1.5:1.2:0.6:1.5で計算し、撹拌器及び還流凝縮管を備えた三口フラスコにポリエチレングリコール400を1mol加え、三口フラスコをオイルバスに固定し、温度を120℃に上げて1h真空脱水し、次に温度を75℃に下げ、イソホロンジイソシアネート4mol及び上記2種類のモノマーの2質量%のジブチル錫ジラウレートを加え、窒素を5min吹き込んで2h反応させてポリウレタンプレポリマーを生成し、反応中に適量のアセトンを加えて粘度を制御し、温度を一定に保ち、鎖延長剤2,2-ヒドロキシメチル酪酸を1.5mol加えて鎖延長反応を2h行い、同一の温度で、鎖延長剤1-フェニル-1,2-エチレングリコールを1.2mol加えて鎖延長反応を2h継続し、温度を50℃に下げ、メチルエチルケトンオキシムを0.6mol加えて末端封止反応を1h行い、反応終了後、トリエチルアミンを1.5mol加えて中和反応を1h行い、適量の脱イオン水を加えて20min高速乳化し、室温で減圧蒸留してアセトンを除去して水性ポリウレタン分散剤を得た。
【0030】
実施例1で製造された水性ポリウレタン分散剤の赤外スペクトル図は、図2に示され、図2から分かるように、1710cm-1は、尿素結合、ウレタン結合及びDMBA上のC=O伸縮振動ピークであり、2970cm-1は、1-フェニル-1,2-エチレングリコールとIPDI中のC-Hの逆対称伸縮振動ピークに属し、1090cm-1のピークは、ポリエチレングリコールC-O-C結合伸縮振動ピークに対応し、これらの特徴ピークは、カルバミン酸塩構造が存在することが証明され、1460cm-1のピークは、メチル基のC-H変形振動ピークとメチレン基のC-Hせん断振動ピークに対応し、1560cm-1のピークは、C-C伸縮振動、C-N伸縮振動及びN-H面内曲げ振動の混合ピークに対応し、2260cm-1の前後は-NCOの特徴吸収ピークであり、ピーク値が微弱であり、IPDI中の-NCOがほぼ完全に反応に関与したことが示された。
【0031】
実施例1で製造された水性ポリウレタン分散剤水溶液と従来の分散剤の水溶液とを比較すると、一般的には、水性ポリウレタン分散剤は、外観が透明で淡黄色であるが、ナフタレン系及びリグニン系分散剤は、黒褐色である。
【0032】
(2)、水性ポリウレタン分散剤の液体インジゴ染料の製造における応用
ステップ(1)で製造された高分子分散剤、及び脱イオン水を粉砕カップに入れ、まず1500r/minで10min予備粉砕した後、インジゴ染料を加え、ジルコニアビーズを加え、3000r/minで1時間粉砕して、液体インジゴ染料を得た。インジゴ染料の乾燥重量が15gであり、水性ポリウレタン分散剤がインジゴの乾燥重量の27%を占め、脱イオン水を加えて60gに補充し、液体インジゴ中の染料の濃度が25%であり、ジルコニアビーズの直径の大きさが1mmであった。
【0033】
ステップ(2)では水性ポリウレタン分散剤で製造された液体インジゴ染料については、染料粒子の粒径分布図及びSEM写真は、図3に示され、液体インジゴ懸濁液D90が280nm程度であり、且つ粒径分布が均一であり、大きな粒径の粒子がないことが分かり、SEM写真からも、液体インジゴ懸濁液の粒子が小さく、且つ明らかな凝集現象がないことが分かった。製造された液体インジゴ染料を常温で7d保存し及び60℃で7d保存する時の粒径の大きさは、表1に示される。該構造の分散剤は、液体分散染料を製造するときに粉砕効率が高く、且つ染料の保存安定性が良好であり、染料粒子の粒径が保存前後で大きく変化しないことが分かった。
【0034】
【表1】
【0035】
以上は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の構想に属するすべての技術的解決手段は、いずれも本発明の保護範囲に属する。なお、当業者が本発明の原理から逸脱することなく行った複数の改良及び修正は、本発明の保護範囲であるとみなされるべきである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】