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特表2024-539697芳香族窒素化合物の水素化処理のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】芳香族窒素化合物の水素化処理のための方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 67/02 20060101AFI20241022BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20241022BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20241022BHJP
   C10G 45/44 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C10G67/02
C08J11/12 ZAB
C10G45/02
C10G45/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525109
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2022079932
(87)【国際公開番号】W WO2023073018
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】21204787.2
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ストゥムマン・マウヌス・スィンラー
(72)【発明者】
【氏名】ハンスン・イェンス・アナス
(72)【発明者】
【氏名】シムレング・マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェアディーア・スュルヴァイン
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA02
4F401AA24
4F401AA26
4F401AA27
4F401BA02
4F401BA06
4F401CA02
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4F401CA30
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4F401CB10
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4H129KA08
4H129KB03
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4H129KD16X
4H129KD22X
4H129KD24X
4H129KD25X
4H129KD26X
4H129NA04
4H129NA15
4H129NA37
(57)【要約】
本発明は、少なくとも0.5重量%の窒素、少なくとも2重量%の窒素または少なくとも5重量%の窒素、かつ、10重量%未満または15重量%未満の窒素を含有する、固体の熱分解に由来する供給原料の転化のための方法であって、以下のステップを含む方法に関する:a.前記供給原料を、二水素の存在下、活性な水素化処理条件下で、水素化処理において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化処理された中間体を提供するステップ、b.水素化処理された中間体ストリームの1つまたは複数の条件を、芳香族窒素化合物と非芳香族窒素不含化合物との間の平衡を非芳香族窒素不含化合物へとシフトさせる、活性な水素化脱芳香族条件に調節するステップ、c.前記の水素化処理された中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、前記の活性な水素化脱芳香族条件下で、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、さらに転化された中間体を提供するステップ。
これは、パイロリシス油から芳香族窒素を効率的に除去する能力を有するパイロリシスプラントを提供する、という関連の利点を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.5重量%の窒素、少なくとも2重量%の窒素または少なくとも5重量%の窒素、かつ、10重量%未満または15重量%未満の窒素を含有する、固体の熱分解に由来する供給原料の転化のための方法であって、以下のステップを含む方法:
a.前記供給原料を、二水素の存在下、活性な水素化処理条件下で、水素化処理において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化処理された中間体を提供するステップ、
b.水素化処理された中間体ストリームの1つまたは複数の条件を、芳香族窒素化合物と非芳香族窒素不含化合物との間の平衡を非芳香族窒素不含化合物へとシフトさせる、活性な水素化脱芳香族条件に調節するステップ、
c.前記の水素化処理された中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、前記の活性な水素化脱芳香族条件下で、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、さらに転化された中間体を提供するステップ。
【請求項2】
1つまたは複数の条件の調節が、水素化処理された中間体の温度を少なくとも25℃、50℃または75℃低下させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つまたは複数の条件の調節が、水素化処理された中間体から、例えば洗浄水の添加および後続のフラッシュ分離によって、ある量のアンモニアを取り出すことを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1つまたは複数の条件の調節が、圧力を少なくとも5MPa、10MPaまたは50MPaかつ70MPaまたは100MPa未満だけ増加させることを含む、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
供給原料が、熱分解プロセスであって、材料が酸素の不存在を含めた化学量論量未満の酸素の存在下で、高められた温度、例えば250℃超、400℃超、600℃超かつ800℃未満または1000℃未満で部分的に分解される熱分解プロセスに由来する、請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項6】
水素化脱芳香族において触媒的に活性な前記材料が、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、タングステンおよびモリブデンを含む群から選択される活性金属、好ましくは1種または複数の元素貴金属、例えば白金またはパラジウム、ならびに耐熱性担体、好ましくは非晶質シリカ-アルミナ、アルミナ、シリカ、チタニアもしくはモレキュラーシーブまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1、2、3、4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記水素化脱芳香族条件が、200~350℃の区間の温度、3~20MPaの区間の圧力、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)を含む、請求項1、2、3、4、5または6に記載の方法。
【請求項8】
固体の熱分解に由来する不安定化された供給原料を、二水素の存在下、前処理条件下で、水素化処理において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、固体の熱分解に由来する前記組成物を提供することをさらに含む、請求項1、2、3、4、5、6または7に記載の方法。
【請求項9】
水素化処理された中間体を、ステップ(b)に導かれない少なくとも1つのフラクションと、150℃、180℃または200℃を超えて沸騰する材料を少なくとも90重量%含む高沸点の水素化処理された中間体であって、ある量の二水素と一緒にステップ(b)に導かれる中間体とに分離するステップをさらに含む、請求項1、2、3、4、5、6、7または8に記載の方法。
【請求項10】
以下のステップをさらに含む、請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9に記載の方法
d.前記のさらに転化された中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化分解された中間体を提供するステップ。
【請求項11】
少なくとも、250℃、300℃または350℃を超えて沸騰する材料を少なくとも90重量%含む高沸点のさらに水素化処理されたフラクションを分離するステップをさらに含み、この高沸点のさらに水素化処理されたフラクションと、ある量の二水素とがステップ(d)に導かれる、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも、450℃を超えて沸騰する材料を少なくとも90重量%含む高沸点のさらに水素化処理されたフラクションを分離するステップをさらに含み、この高沸点のさらに水素化処理されたフラクションと、ある量の二水素とが前記ステップ(d)に導かれない、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも0.5重量%の窒素から15重量%未満までの窒素を含有し、少なくとも0.5重量%の芳香族結合窒素を含有する炭化水素質供給原料の転化のための方法であって、以下のステップを含む方法:
i.前記供給原料を、ある量の二水素と組み合わせて、250~400℃の区間の温度、3~15MPaの区間の圧力、200~2000Nm/mのガス油比、および0.1~2の区間の液空間速度(LHSV)で、シリカ、チタニアまたはアルミナを含む耐熱性担体上に、任意にニッケルまたはコバルトと組み合わせて、モリブデンおよびタングステンのうちの少なくとも1つを含む第1の触媒活性材料と接触するように導いて、低下した窒素の含有率およびある量のアンモニアを有する炭化水素質液体を含む生成物ストリームを生成するステップ、
ii.水素化処理された中間体ストリームの1つまたは複数の条件を、芳香族窒素化合物と非芳香族窒素不含化合物との間の平衡を非芳香族窒素不含化合物へ、例えばある量のアンモニアを取り出すこと、減少させることにより、シフトさせる、活性な水素化脱芳香族条件に調節するステップ、
iii.芳香族窒素化合物と非芳香族窒素不含化合物との間の平衡が非芳香族窒素不含化合物に向かってシフトするように、ステップ(i)に関する少なくとも1つのプロセス条件を能動的に調節した後に、水素化処理された中間体のうちの少なくともある量を第2の触媒活性材料と接触するように導くステップ。
【請求項14】
水素化処理において触媒的に活性な材料を含有する第1の反応器と、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料を含有する第2の反応器とを含む、パイロリシス油転化プラントであって、前記第2の反応器は、第1の反応器から出る流れを受けるように構成され、前記パイロリシス油転化プラントは、第2の反応器へ入る流れの温度を低下させるように、第2の反応器の前の圧力を増加させるように、またはある量の水で第1の反応器から出る流れを洗浄するように構成されている、前記パイロリシス油転化プラント。
【請求項15】
パイロライザー、水素化処理において触媒的に活性な材料を含有する第1の反応器、および水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料を含有する第2の反応器を含む、パイロリシスプラントであって、パイロライザーは第1の反応器にパイロリシス油供給原料を提供するように構成され、前記の第2の反応器は、第1の反応器から出る流れを受けるように構成され、パイロリシス油転化プラントは、第2の反応器へ入る流れの温度を低下させるように、第2の反応器の前の圧力を増加させるように、またはある量の水で第1の反応器から出る流れを洗浄するように構成されている、前記パイロリシスプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族供給原料、例えばパイロリシス油に由来する炭化水素から窒素を効率的に除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の原料、例えばリグノセルロース系バイオマス、または特定の種類のプラスチック(例えば、ポリアミド、ポリウレタン)の熱分解、例えばパイロリシスまたは水熱液化(HTL)の液体生成物(便宜上、パイロリシス油)は、一般に高い窒素含有率を有し、そのような生成物の脱窒素は困難であることが示されており、厳しい条件を使用するプロセスにもかかわらず、そこそこのレベルの脱窒素のみが可能である。
【発明の概要】
【0003】
本発明者らは今回、屈折性の窒素化合物の大部分が芳香族である可能性が高いことを示す分析に基づいて、上記のような所望の高い脱窒素を得る可能性を有する方法であって、最初の脱窒素と後続の脱芳香族との組み合わせを含む方法を同定した。
【0004】
提案される方法は、高温での最初の水素化処理と、それに続く、熱力学的平衡を芳香族窒素含有化合物から非芳香族窒素不含化合物へシフトさせる条件、例えばより低い温度での、または水での洗浄によるアンモニアの除去後の、第2の水素化処理を含み、前記の熱力学的平衡が穏やかな温度において非芳香族構造に有利であり、およびアンモニア生成物の除去がアンモニアを形成する反応に有利であるという事実から恩恵を受ける。
【0005】
本明細書で使用される場合に、用語「熱分解(thermal decomposition)」は、便宜上、材料が、化学量論量未満の酸素の存在下で(酸素なしを含む)、上昇させた温度(典型的には250℃~800℃もしくはさらには1000℃)で部分的に分解される、任意の分解プロセスに広く使用されるものとする。生成物は、典型的には、組み合わされた液体およびガスストリーム、ならびにある量の固体チャーである。当該用語は、触媒の存在下および非存在下の両方における、パイロリシス(pyrolysis)および水熱液化(hydrothermal liquefaction)として知られるプロセスを含むと解釈されるべきである。
【0006】
簡素化のために、熱分解、例えばパイロリシスおよび熱液化(thermal liquefaction)からの全ての生成物を、元のプロセスの性質にかかわらず、以下ではパイロリシス油と呼ぶ。
【0007】
以下において、ppmという略語は、百万分の体積部、例えばモル気体濃度を示すために使用されるものとする。
【0008】
以下において、ppmという略語は、百万分の重量部、例えば液状炭化水素ストリームの質量に対する硫黄原子の質量を示すために使用されるものとする。
【0009】
以下において、重量%という略語は、重量パーセントを示すために使用されるものとする。
【0010】
以下において、体積%という略語は、ガス(気体)に関する体積パーセントを示すために使用されるものとする。
【0011】
気相中の濃度が与えられる場合、別段の特定がない限り、それらはモル濃度として与えらる。
【0012】
液相または固相中の濃度が与えられる場合、別段の特定がない限り、それらは重量濃度として与えらる。
【0013】
芳香族分子という用語は、本願の目的に関して、芳香族環中に炭素原子のみを含む単素環式、ならびに炭素以外の他の原子、例えば酸素および窒素を含む複素環式を示すために使用されるものとする。この用語はまた、縮合芳香族を含む単環式および多環式の両方を包含するものとする。
【0014】
液体の芳香族含有率は、当技術分野によれば、全分子の全質量(%)に対する、少なくとも1つの芳香族構造を有する分子の全質量である。
【0015】
本開示の第1の態様は、少なくとも0.5重量%の窒素、少なくとも2重量%の窒素または少なくとも5重量%の窒素、かつ、10重量%未満または15重量%未満の窒素を含有する、固体の熱分解に由来する供給原料の転化のための方法であって、以下のステップを含む方法に関する:
a.前記供給原料を、二水素の存在下、活性な水素化処理条件下で、水素化処理において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化処理された中間体を提供するステップ、
b.水素化処理された中間体ストリームの1つまたは複数の条件を、芳香族窒素化合物と非芳香族窒素不含化合物との間の平衡を非芳香族窒素不含化合物へとシフトさせる、活性な水素化脱芳香族条件に調節するステップ、
c.前記の水素化処理された中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、前記の活性な水素化脱芳香族条件下で、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、さらに転化された中間体を提供するステップ。
【0016】
これは、パイロリシス油から芳香族窒素を効率的に除去する能力を有するプロセスを提供する、という関連の利点を有する。水素化処理の程度は、10%、20%または50%を超えることができ、実質的に完全であるまで、すなわち90%または70%までであり得る。水素化脱芳香族の程度は、10%、15%または20%を超えることができ、実質的に完全であるまで、すなわち70%または50%までであり得る。多量の窒素に加えて、固体(特に廃棄物または生物学的材料に由来する固体)の熱分解に由来する供給原料は、典型的には、少なくとも0.5重量%、5重量%または10重量%、および20重量%まで、40重量%までまたはそれ以上の有機的に結合した酸素を含む。
【0017】
本開示の第2の態様は、1つまたは複数の条件の調節が、水素化処理された中間体の温度を少なくとも25℃、50℃または75℃低下させることを含む、第1の態様による方法に関する。
【0018】
これは、冷却ステップによってコスト効率的に、パイロリシス油から芳香族窒素を効率的に除去する能力を有するプロセスまたはパイロリシスプラントを提供する、という関連の利点を有する。
【0019】
本開示の第3の態様は、1つまたは複数の条件の調節が、水素化処理された中間体から、例えば洗浄水の添加およびフラッシュ分離によって、ある量のアンモニアを取り出すことを含む、上記のいずれかの態様による方法に関する。
【0020】
これは、アンモニアの除去(これは平衡を大きくシフトさせる)によってパイロリシス油から芳香族窒素を効率的に除去する能力を有するプロセスまたはパイロリシスプラントを提供する、という関連の利点を有する。
【0021】
本開示の第4の態様は、1つまたは複数の条件の調節が、圧力を少なくとも5MPa、10MPaまたは50MPaかつ70MPaまたは100MPa未満だけ増加させることを含む、上記のいずれかの態様による方法に関する。
【0022】
これは、平衡に対する圧力の効果を利用することにより、パイロリシス油から芳香族窒素を効率的に除去する能力を有するパイロリシスプラントを提供する、という関連の利点を有し、これは特に、高圧運転のために設計された既存のユニットが改造される場合に有益であり得る。
【0023】
本開示のさらなる態様は、少なくとも0.5重量%の窒素、少なくとも2重量%の窒素または少なくとも5重量%の窒素、かつ、10重量%未満または15重量%未満の窒素を含有する、固体の熱分解に由来する供給原料の転化のための方法であって、以下のステップを含む方法に関する:
a.前記供給原料を、二水素の存在下、水素化処理条件下で、水素化処理において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化処理された中間体を提供するステップ、
c.前記の水素化処理された中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、ステップ(a)の最大温度未満の、例えば50℃から100℃または150℃低い平均温度を伴う水素化脱芳香族条件下で、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、さらに転化された中間体を提供するステップ。
【0024】
これは、低下した温度で、芳香族窒素化合物と非芳香族化合物との間の平衡を非芳香族化合物へシフトさせ、それによって高い程度の窒素除去が観察され得る、という関連の利点を有する。
【0025】
本開示の第5の態様は、供給原料が、熱分解プロセスであって、材料が酸素の不存在を含めた化学量論量未満の酸素存在下で、上昇させた温度、例えば250℃超、400℃超、600℃超かつ800℃未満または1000℃未満で部分的に分解される熱分解プロセスに由来する、上記のいずれかの態様による方法に関する。
【0026】
これは、そのような供給原料が広範囲の固体廃棄物または副生成物から得られる、という関連の環境的および経済的利点を有する。
【0027】
本開示の第6の態様は、水素化脱芳香族において触媒的に活性な前記材料が、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、タングステンおよびモリブデンを含む群から選択される活性金属、好ましくは1種または複数の元素貴金属、例えば白金またはパラジウム、ならびに耐熱性担体、好ましくは非晶質シリカ-アルミナ、アルミナ、シリカ、チタニアまたはモレキュラーシーブ、またはそれらの組み合わせを含む、上記のいずれかの態様による方法に関する。
【0028】
これは、このような触媒活性材料が水素化脱芳香族において安定かつ活性であり、そして、穏やかな温度での水素化脱芳香族を効果的に可能にする、という関連の利点を有する。この効果は、好ましくは、耐熱性酸化性担体、例えばアルミナ、シリカ、チタニアまたはモレキュラーシーブ上に、0.1:1のNi:Mo+W~2:1のNi:Mo+Wの範囲(ここで前記比は、Niの量とMoおよびWの合計量との間のモル比を表す)のニッケルの量によって促進された、増加させた量の活性金属、例えば少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%または少なくとも1重量%から3重量%までのPtまたはPd貴金属、または少なくとも1重量%、少なくとも5重量%または少なくとも15重量%から最大で20重量%、最大30重量%または最大50重量%までのモリブデンまたはタングステンを含む、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料によって得られる。水素化脱芳香族触媒はまた、耐熱性担体上に活性金属として還元形態のNiのみを含んでいてよく、または少なくとも50%の硫化Moおよび/またはWを含む非担持バルク触媒であってもよい。
【0029】
本開示の第7の態様は、前記水素化脱芳香族条件が、200~350℃の区間の温度、3~15MPaの区間の圧力、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)を含む、上記のいずれかの態様による方法に関する。
【0030】
これは、芳香族の水素化に適しており、収率損失が最小限であるようなプロセス条件、という関連の利点を有する。好ましくは、圧力は、前記水素化処理条件の圧力より高い。
【0031】
本開示の第8の態様は、固体の熱分解に由来する不安定化された供給原料を、二水素の存在下、前処理条件下で、水素化処理において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、固体の熱分解に由来する前記組成物を提供することをさらに含む、上記のいずれかの態様による方法に関する。
【0032】
これは、固体の熱分解に由来する組成物が安定であるように、および重合および過剰な熱発生を含む望ましくない副反応のリスクが最小限に抑えられるように、不安定化された供給原料の最も反応性の成分のみを転化する、という関連の利点を有する。前処理条件は、少なくとも100℃、120℃または150℃から、および最大250℃または200℃の範囲の温度を含むことができる。
【0033】
本開示の第9の態様は、水素化処理された中間体を、ステップ(b)に導かれない少なくとも1つのフラクションと、150℃、180℃または200℃を超えて沸騰する材料を少なくとも90重量%含む高沸点の水素化処理された中間体であって、ある量の二水素と一緒にステップ(b)に導かれる中間体とに分離するステップをさらに含む、上記のいずれかの態様による方法に関する。
【0034】
これは、ステップ(b)に導かれる、より高い沸点の水素化処理された中間体が窒素含有芳香族化合物に富む一方で、例えば、単環芳香族ナフサ化合物は、芳香族の除去によってナフサフラクションのオクタン価を低下させるステップ(b)に導かれない、という関連の利点を有する。特に、このような方法では、ステップ(b)の圧力は、好ましくは、ステップ(a)の圧力より高くてよく、例えば2MPaまたは5MPa高くてもよい。
【0035】
本開示の第10の態様は、以下のステップをさらに含む、上記のいずれかの態様による方法に関する:
c.前記のさらに転化された中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化分解された中間体を提供するステップ。
【0036】
これは、例えば沸点を調節することによってまたは開環によって、生成物をさらに調節する、という関連の利点を有する。特に、ナフサフラクションが取り出されると、水素化分解に関連する反応器体積および収率損失が低減される。有利には、水素化分解は、アンモニアの分離(場合により水で洗浄することによる)の後に実施され、なぜならば高められた量のアルカリ性アンモニアの存在が、触媒の酸部位で起こる水素化分解プロセスを不活性化し得るからである。活性な水素化分解は、通過(pass)あたり少なくとも10%、20%または50%、および90%または70%未満という、370℃超で沸騰するさらに転化された中間体の、370℃未満で沸騰する水素化分解された中間体への水素化分解の程度を伴い得る。
【0037】
本開示の第11の態様は、少なくとも、250℃、300℃または350℃を超えて沸騰する材料を少なくとも90重量%含む高沸点のさらに水素化処理されたフラクションを分離するステップをさらに含み、この高沸点のさらに水素化処理されたフラクションと、ある量の二水素とがステップ(c)に導かれる、上記のいずれかの態様による方法に関する。
【0038】
これは、水素化分解に導かれるストリームの体積を低減し、水素化分解に関連する反応器体積および収率損失を低減する、という関連の利点を有する。
【0039】
本開示の第12の態様は、少なくとも、450℃を超えて沸騰する材料を少なくとも90重量%含む高沸点のさらに水素化処理されたフラクションを分離するステップをさらに含み、この高沸点のさらに水素化処理されたフラクションと、ある量の二水素とがステップ(d)に導かれない、上記のいずれかの態様による方法に関する。
【0040】
これは、例えば沸点を調節することによってまたは開環によって、生成物をさらに調節する上流で沸騰する多核芳香族から重質多核芳香族を形成するリスクを最小限に抑える、という関連の利点を有する。特に、ナフサフラクションが取り出されると、水素化分解に関連する反応器体積および収率損失が低減される。
【0041】
本開示の第13の態様は、少なくとも0.5重量%の窒素から15重量%未満までの窒素を含有し、少なくとも0.5重量%の芳香族結合窒素を含有する炭化水素質供給原料の転化のための方法であって、以下のステップを含む方法に関する:
i.前記供給原料を、ある量の二水素と組み合わせて、250~400℃の区間の温度、3~15MPaの区間の圧力、200~2000Nm/mのガス油比、および0.1~2の区間の液空間速度(LHSV)で、シリカ、チタニアまたはアルミナを含む耐熱性担体上に、任意にニッケルまたはコバルトと組み合わせて、モリブデンおよびタングステンのうちの少なくとも1つを含む第1の触媒活性材料と接触するように導いて、低下した窒素の含有率およびある量のアンモニアを有する炭化水素質液体を含む生成物ストリームを生成するステップ、
ii.水素化処理された中間体ストリームの1つまたは複数の条件を、芳香族窒素化合物と非芳香族窒素不含化合物との間の平衡を非芳香族窒素不含化合物へ、例えばある量のアンモニアを取り出すこと、減少させることにより、シフトさせる、活性な水素化脱芳香族条件に調節するステップ、
iii.芳香族窒素化合物と非芳香族窒素不含化合物との間の平衡が非芳香族窒素不含化合物に向かってシフトするように、ステップ(i)に関する少なくとも1つのプロセス条件を能動的に調節した後に、水素化処理された中間体のうちの少なくともある量を第2の触媒活性材料と接触するように導くステップ。
【0042】
これは、水素化処理によって大量の窒素ヘテロ原子を除去し、芳香族平衡をシフトさせる異なる機構によってさらなる量を除去するという利点を有し、2つの機構の組み合わせは有機的に結合した窒素の非常に効率的な除去をもたらす。芳香族結合窒素の量が0.5重量%を超える場合、芳香族窒素化合物と非芳香族窒素不含化合物との間の平衡は、有機的に結合した窒素の除去を制限し、従ってこの平衡をシフトさせることは、窒素含有率の有意な低減を可能にする。
【0043】
本開示の第13の態様は、水素化処理において触媒的に活性な材料を含有する第1の反応器と、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料を含有する第2の反応器とを含む、パイロリシス油転化プラントであって、前記第2の反応器は、第1の反応器から出る流れを受けるように構成され、前記パイロリシス油転化プラントは、第2の反応器の前の圧力を増加させるために、またはある量の水で第1の反応器から出る流れを洗浄するために、第2の反応器へ入る流れの温度を低下させるように構成されている、前記パイロリシス油転化プラントに関する。
【0044】
これは、パイロリシス油から芳香族窒素を効率的に除去する能力を有するパイロリシス油転化プラントを提供する、という関連の利点を有する。
【0045】
本開示の第14の態様は、パイロライザー、水素化処理において触媒的に活性な材料を含有する第1の反応器、および水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料を含有する第2の反応器を含む、パイロリシスプラントであって、パイロライザーは第1の反応器にパイロリシス油供給原料を提供するように構成され、前記の第2の反応器は、第1の反応器から出る流れを受けるように構成され、パイロリシス油転化プラントは、第2の反応器へ入る流れの温度を低下させるように、第2の反応器の前の圧力を増加させるように、またはある量の水で第1の反応器から出る流れを洗浄するように構成されている、前記パイロリシスプラントに関する。
【0046】
これは、パイロリシス油から芳香族窒素を効率的に除去する能力を有するパイロリシスプラントを提供する、という関連の利点を有する。
【0047】
熱分解、例えばパイロリシスおよび熱液化からの液体生成物は、特に地球温暖化の観点から、化石生成物、特に水素化処理後の化石生成物に対する環境に優しい代替物と考えられてきた。これらの生成物(簡素化のために、元のプロセスにかかわらずパイロリシス油)の性質は一般に、それらが含酸素物質および場合によってはオレフィンに富むことであろう。形成物の当該性質は、生成物が安定化されず、従って、典型的な化石原料とは異なり、それらが非常に反応性であり、多量の水素を必要とし、反応の間にかなりの量の熱を放出し、高い重合傾向をさらに有することを意味する。熱の放出は重合をさらに増加させ得るものであり、上昇した温度では、触媒もコーキングによって失活させられ得る。
【0048】
本開示による供給原料を提供する熱分解プロセスプラントセクションは、当技術分野で周知のような、流動床、輸送床(transported bed)または循環流動床の形態であってもよい。この分解は、パイロリシス供給原料を固体(チャー)、高沸点液体(タール)および高められた温度でガス状であるフラクションに転化する。ガス状フラクションは、標準温度で凝縮可能なフラクション(パイロリシス油または凝縮物、C5+化合物)および非凝縮性フラクション(パイロリシスオフガスを含むパイロリシスガス)を含む。例えば、熱分解プロセスプラントセクション(パイロリシスセクション)は、パイロライザーユニット(パイロリシス反応器)、粒状の固体、例えばチャーを除去するためにサイクロン(複数可)、および冷却ユニットを、それらによってパイロリシスオフガスストリームおよび前記パイロリシス油ストリーム、すなわち凝縮されたパイロリシス油を生成するために含む。パイロリシスオフガスストリームは、軽質炭化水素、例えばC1~C4炭化水素、HO、CO及びCOを含む。典型的には、パイロリシス油という用語は、凝縮物およびタールを含み、バイオマスのパイロリシスからのパイロリシス油ストリームは、バイオオイルまたはバイオクルードとも称され得、通常、200を超える異なる化合物、主に含酸素物質、例えば酸、糖、アルコール、フェノール、グアヤコール、シリンゴール、アルデヒド、ケトン、フラン、およびパイロリシスで処理された固体の解重合から生じる他の混合含酸素物質からなる、分子のブレンドに富む液体物質である。供給原料および熱分解法に応じて、対応する含窒素物質もパイロリシス油中に存在し得る。含窒素物質は特に、藻類、下水汚泥、バイオガス製造からの消化物、食品廃棄物およびプラスチック(それらのポリマー構造中に窒素を有するポリウレタン、ポリアミドおよびポリイミド、ならびに窒素含有添加剤を含む他のプラスチックを含む)等の供給原料からのパイロリシス油中に存在することが知られている。パイロリシス油の分子組成の分析は、膨大な数の種のために困難であることが示されている。それでも、元素分析は多量の芳香族を示すC:H比を示し、C:N比と相関する場合、窒素もまた、キノリンおよびカルバゾールと同様の性質であり得る芳香族構造中に結合しているが、窒素を含むより一層大きな芳香族構造もパイロリシス油中に存在すると考えることが妥当である。
【0049】
本発明の目的のために、パイロリシスセクションは、当該技術分野においてフラッシュパイロリシスとも呼ばれる急速パイロリシスであってもよい。急速パイロリシスは、典型的には350~650℃の範囲、例えば約500℃の温度、10秒以下、例えば5秒以下、例えば約2秒の反応時間での、典型的には酸素の非存在下における、固体再生可能供給原料の熱分解を意味する。急速パイロリシスは、例えば、例えば流動床反応器における、自己熱運転によって行うことができる。後者は、自己熱パイロリシスとも呼ばれ、空気(任意選択的に不活性ガスまたはリサイクルガスとともに)を流動ガスとして使用することを特徴とする。それによって、パイロリシス反応器(自己熱反応器)内で生成されるパイロリシス化合物の部分酸化は、同時に熱伝達を改善しながら、パイロリシスのためのエネルギーを提供する。いわゆる接触急速パイロリシスでは、触媒を使用することができる。パイロリシス蒸気をアップグレードするために酸触媒を使用することができ、それはin-situモード(触媒がパイロリシス反応器内に位置する)およびex-situモード(触媒が別個の反応器内に置かれる)の両方で運転することができる。触媒の使用は、酸素を除去し、それによってパイロリシス油の安定化を助け、したがって水素化加工をより容易にするという利点をもたらす。加えて、所望のパイロリシス油化合物に向かって高められた選択性を達成することができる。
【0050】
一部の場合には、水素が接触パイロリシスに供給され、これは反応性接触急速パイロリシスと呼ばれる。接触パイロリシスが高い水素圧、例えば0.5MPa超で行われる場合、それはしばしば接触水素化パイロリシスと呼ばれる。
【0051】
パイロリシス段階は、触媒および水素の存在なしに行われる急速パイロリシスであることができ、すなわち、急速パイロリシス段階は、接触急速パイロリシス、水素化パイロリシスまたは接触水素化パイロリシスではない。このことは、はるかに単純で安価なプロセスを可能にする。
【0052】
熱分解セクションは、水熱液化であってもよい。水熱液化は、固体のバイオポリマー構造を主に液体成分に分解するのに十分な時間、高温の加圧水環境中で処理することによる、バイオマスの液体燃料への熱化学的転化を意味する。典型的な水熱処理条件は、250~425℃の範囲の温度であり、4Mpa~35MPaもしくはまた40MPaの範囲の運転圧力である。この技術は、パイロリシス、例えば急速パイロリシスと比較して、より低い温度、より高いエネルギー効率という運転の利点、およびより低い酸素含有率を有する生成物を生成するという運転の利点を提供する。
【0053】
最後に、他の関連する熱分解方法は、条件がより低い温度および一般にはより高い滞留時間を伴う、穏やかなまたは遅いパイロリシスであり、これらの方法は炭化またはトレファクションとしても知られ得る。これらの熱分解方法の主要な利点は、より低い投資であるが、それらはまた、特定の供給原料に関してまたは特定の生成物要件、例えばバイオ炭に対する必要性、に関して特定の利点を有し得る。
【0054】
含酸素物質の炭化水素への転化は、再生可能な輸送燃料の製造のための一般的な方法であるが、反応性および他の特性は異なる供給原料に対しては異なる。パイロリシス油は、典型的には、ケトン、アルデヒドまたはアルコールからなる群から選択される1種または複数の含酸素物質を含み、典型的には熱分解および/または触媒分解プロセス後の、植物、藻類、動物、魚類、植物油精製、他の生物学的起源、家庭廃棄物、トールオイルまたは黒液などの産業生物学的廃棄物、ならびに適切な組成を含む非生物学的廃棄物、例えばプラスチックフラクションまたはゴム(使用済みタイヤを含む)の熱分解に由来することができる。供給原料が生物起源のものである場合、供給原料および生成物は、全炭素含有率の1兆分の0.5部を超える14C含有率を有することを特徴とするが、供給原料が化石起源の廃棄物、例えばプラスチックを含む場合、この比は異なり得る。
【0055】
炭化水素生成物の生成は、典型的には、1または複数の水素化加工ステップを必要とし、これらは最も一般的には、ヘテロ原子を除去し、二重結合を飽和させるための水素化処理、炭化水素分子構造を調節するための水素異性化、および炭化水素分子量を減少させるための水素化分解であり、本開示によれば、水素化脱芳香族もまた、窒素などの芳香族結合ヘテロ原子を除去する目的に関しても適切である。
【0056】
水素化処理の間、含酸素物質は過剰の水素と組み合わされ、水素化脱酸素プロセスにおいて、ならびに脱炭酸および脱カルボニル化プロセスにおいて反応し、水、二酸化炭素および一酸化炭素が含酸素物質から放出され、ある量の二酸化炭素が、水性/ガスシフトプロセスによって一酸化炭素に転化される。典型的には、含酸素物質供給原料の5重量%または10重量%から50重量%までは酸素であり、従って生成物ストリームのうちのかなりの量は水、二酸化炭素および一酸化炭素である。さらに、供給原料の性質および生じる副反応に応じて、ある量の軽質炭化水素も生成物ストリーム中に存在し得る。水素化処理はまた、他のヘテロ原子、特に窒素および硫黄の抽出を含むが、場合によってはハロゲンおよびケイ素の抽出、ならびに二重結合の飽和も含むことができる。特に、含酸素物質の水素化処理は非常に反応性かつ発熱性であり、中程度のまたは低い活性の触媒が、触媒を失活させるコークス形成をもたらす過剰な熱放出および暴走反応を回避するために好ましいかもしれない。触媒活性は一般に、少量の活性金属のみを使用することにより、特にニッケルおよびコバルトなどの促進金属の量を制限することによって制御される。
【0057】
典型的には、水素化処理、例えば脱酸素および水素化は、含酸素物質を含む供給原料ストリームを導いて、1種または複数の耐熱性酸化物、典型的にはアルミナ、しかし場合によってはシリカまたはチタニアを含むキャリア上に担持された、硫化モリブデンまたは場合によってはタングステンおよび/またはニッケルもしくはコバルトを含む触媒活性材料に接触させることを含む。担体は、典型的には非晶質である。触媒活性材料は、ホウ素またはリンなどのさらなる成分を含んでもよい。前記条件は典型的には、250~400℃の区間の温度、3~15Mpaの区間の圧力、200~2000Nm/mのガス油比、および0.1~2の区間の液空間速度(LHSV)を含む。脱酸素は、水を生成する水素化脱酸素の組合せを含み、含酸素物質がカルボキシル基、例えば酸またはエステルを含む場合、COを生成する脱炭酸を含む。カルボキシル基の脱酸素は、条件および触媒活性材料の性質に応じて、90%を超える水素化脱酸素から90%を超える脱炭酸まで変化し得る選択性で、水素化脱酸素または脱炭酸によって進行し得る。両方の経路による脱酸素は発熱性であり、多量の酸素の存在とともに、当該方法は、例えば、低温の水素、供給材料または生成物でクエンチすることによる、中間冷却を含むことができる。供給原料は、好ましくは、金属の活性を維持するために、金属の硫化を維持する量の硫黄を含有していてもよい。含酸素物質を含む供給原料ストリームが、10、100または500ppm未満の硫黄を含む場合、ジメチルジスルフィド(DMD)などのスルフィド供与体が典型的には供給原料に添加されている。
【0058】
不安定化された供給原料が高度に反応性である場合、穏やかな条件での前処理が、供給原料を安定化するために適切であり得る。これは、80℃、120℃または200℃という低い入口温度、2~15MPaの区間の圧力、200~1000Nm/mのガス油比、および0.1~2の区間の液空間速度(LHSV)、および非促進化モリブデン等の活性の低い触媒活性材料の意図的な選択を含み得る。反応性成分および発熱性の性質のために、熱制御は、この前処理ステップにおいて意義を有し得る。
【0059】
除去すべきヘテロ原子が窒素である場合、酸素および硫黄の除去と比較して、より厳しい条件(より高い温度、より高い水素圧、より活性な触媒)が必要であることが多くの場合に見出された。有機的に結合した窒素を含む化石供給原料の水素化加工において、水素化分解プロセスが、深度水素化脱窒素(deep hydrodenitrogenation)のために、すなわち、活性な水素化分解条件での水素化分解において触媒的に活性な材料上での転化のために必要であることも見出された。水素化分解は完全に選択的ではないので、このようなステップは以下を伴う。
【0060】
HDO反応器中の前記条件下で、水性ガスシフトプロセスの平衡は、COおよびHのCOおよびHOへの転化を引き起こす。卑金属触媒の存在下では、ある量のメタン化が起こり得、COおよびHをCHおよびHOに転化する。
【0061】
供給原料の構造に応じて、脱酸素プロセスは低温流動特性に乏しい直鎖状アルカンに富む生成物を提供し得、従って、脱酸素プロセスは、生成物の低温流動特性を改善することを目的として、水素化異性化プロセスと組み合わせることができ、および/または生成物の沸点を調節することを主目的として、水素化分解プロセスと組み合わせることができる。
【0062】
異性化において触媒的に活性な材料は、典型的には、活性金属(白金および/またはパラジウムなどの元素貴金属、あるいは、ニッケル、コバルト、タングステンおよび/またはモリブデンなどの硫化卑金属のいずれか)、酸性担体(典型的には、高い形状選択性を示し、MOR、FER、MRE、MWW、AEL、TONおよびMTTなどのトポロジーを有するモレキュラーシーブ)、および耐熱性担体(例えばアルミナ、シリカまたはチタニア、またはそれらの組み合わせ)を含む。
【0063】
異性化条件は、250~400℃の区間の温度、2~10MPaの区間の圧力、200~2000Nm/mのガス油比、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)を含む。
【0064】
水素化分解は、大きな分子をより小さな分子にクラッキングすることによって、炭化水素混合物の低温流動特性および沸点特性を調節する。典型的には、水素化分解は、中間供給原料を、活性金属(白金および/またはパラジウムなどの元素貴金属、あるいは、ニッケル、コバルト、タングステンおよび/またはモリブデンなどの硫化卑金属のいずれか)、酸性担体(典型的には、高いクラッキング活性を示し、MFI、BEAおよびFAU等のトポロジーを有するモレキュラーシーブ、しかし場合によりまたシリカ-アルミナ)、および耐熱性担体(例えばアルミナ、シリカまたはチタニア、またはそれらの組み合わせ)を含む、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導くことを含む。触媒活性材料は、ホウ素またはリンなどのさらなる成分を含んでもよい。この全体的な組成は、異性化で触媒的に活性な材料に類似しているが、相違は、典型的には、酸性担体の性質であり、これは異なる構造(非晶質シリカ-アルミナでさえも)であってもよく、または異なる -典型的にはより高い- 酸性度(例えばシリカ:アルミナ比に起因する)を有していてもよい。前記条件は、任意選択的に、低温の水素、供給原料または生成物を用いたクエンチングによる中間冷却と一緒に、典型的には、250~400℃の区間の温度(これは典型的には、対応する異性化温度よりも高い温度である)、3~15MPaの区間の圧力、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)を含む。
【0065】
パイロリシス油の組成は、原料およびパイロリシスプロセスによって定義される。多くのプロセスに関して、これは、パイロリシス油が、適度な量だけの高沸点材料のみを含有し、従って、必要とされる水素化分解条件は穏やかであり、リサイクルをほとんどまたは全く伴わないことを意味する。しかしながら、一部の熱分解プロセス、特に窒素リッチなパイロリシス油を生成するプロセスは、かなりの量の350℃を超えて沸騰する生成物を含むパイロリシス油を提供し得、従って、生成物リサイクルを必要とし得る。パイロリシス油の芳香族特性のために、リサイクルは多核芳香族の形成をもたらす可能性があり、精製プロセスにおけるこの課題に対する既知の解決策を実施しなければならない可能性がある。
【0066】
炭化水素材料が芳香族を含有する場合、これらの除去は、芳香族結合ヘテロ原子の除去を含む様々な理由から望ましい場合があり、水素化処理において高度に活性な材料がこの目的に関して、温度を下げるために、動力学的制限を最小限に抑えるために使用される。水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料は、典型的には、活性金属(促進された硫化卑金属のいずれか、例えばニッケルまたはコバルトによって促進されたタングステンおよび/またはモリブデン;ここで、水素化脱芳香族へのストリームに関連するガス相は、好ましくは、少なくとも50ppmの硫黄または -任意に、例えば硫化水素の除去による、精製後に- 貴金属、例えば白金および/またはパラジウム)、ならびに耐熱性担体(例えば非晶質シリカ-アルミナ、アルミナ、シリカ、チタニアまたはモレキュラーシーブ、またはそれらの組み合わせ)を含む。水素化脱芳香族は、芳香族に有利な高温で平衡制御されており、従って、活性金属としては貴金属が一般的には好ましく、なぜならそれらは卑金属と比較してより低い温度で活性だからである。水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料は、典型的には、耐熱性酸化性担体、例えばアルミナ、シリカ、チタニアまたはモレキュラーシーブ上に、0.1:1のNi:Mo+W~2:1のNi:Mo+Wの範囲(ここで前記比は、Niの量とMoおよびWの合計量との間のモル比を表す)のニッケルの量によって促進された、通常の水素化触媒と比較して増加された量の活性金属、例えば少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%または少なくとも1重量から3重量%までのPtまたはPd貴金属、または少なくとも1重量%、少なくとも5重量%または少なくとも15重量%から最大20重量%、最大30重量%または最大50重量%のモリブデンまたはタングステンを含む。水素化脱芳香族触媒はまた、耐熱性担体上に活性金属として還元形態のNiのみを含んでいてよく、または少なくとも50%の硫化Moおよび/またはWを含む非担持バルク触媒であってもよい。
【0067】
典型的には、水素化脱芳香族は、中間体生成物を、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導くことを含む。上述のように、芳香族と飽和分子との間の平衡は、高められた温度で芳香族側にシフトし、従って、温度は穏やかであることが好ましい。前記条件は典型的には、200~350℃の区間の温度、2~10MPaの区間の圧力、200~2000Nm/mのガス油比、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)である。上述のように、一般に、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料上の好ましい活性金属(複数可)は貴金属(複数可)であり、低温平衡から利益を享受する。本開示によれば、分別またはストリッピングの下流の中間体は、典型的には十分に精製され、従って、その位置で水素化脱芳香族を用いる場合、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料中の活性金属(複数可)は貴金属であってもよい。しかしながら、関連する位置での精製が望まれない場合、卑金属触媒も使用することができ、この場合、水素化脱芳香族へのストリームに関連するガス相は好ましくは少なくとも50ppmの硫黄を含有する。窒素が芳香族構造の一部を形成する場合、水素化脱芳香族は、窒素を水素化処理にアクセス可能にすることができ、従って脱窒素を助けることができる。
【0068】
水素化処理プロセスは、圧力、温度、空間速度、水素分圧、供給原料組成、触媒組成、表面積および細孔分布を含む触媒のナノ構造を含む複数のパラメーターによって制御されるので、水素化脱芳香族の機能的な定義は本開示の理解にとって有益である。当業者の一般的な理解によれば、水素化脱芳香族において活性であるとは、炭化水素構造に対する実質的な構造変化なしに、芳香族結合の少なくとも10%が飽和されるプロセスとして理解することができる。好ましくは、炭化水素構造への実質的な構造変化なしとは、供給原料中の炭素-炭素結合の10%未満が破壊されると理解されるべきである。これらの定義は化学反応の観点から意味をなすものであるが、当該分野における標準的な分析方法に基づく定義を用いることが好ましい場合もある。
【0069】
触媒活性材料および供給原料の条件、組成および構造の組み合わせは、所与の組み合わせが特定のプロセスをもたらすかどうかを客観的に定義することを困難にする。当業者はこのことを認識しており、通常、条件および触媒活性材料の精査からプロセスの性質を理解し、彼の評価は、一般に入手可能な分析装置および実験施設を伴う、特定の供給材料またはモデル化合物のいずれかから決定され得る、単純でアクセス可能な実験的評価によって裏付けることができる。
【0070】
水素化処理の程度は、供給材料を、一連の条件下で触媒活性材料と接触するように導くことによって決定され得る。供給材料中の有機的に結合したヘテロ原子および生成物中の有機的に結合したヘテロ原子から計算される、除去されたヘテロ原子の相対量は、条件と触媒活性材料との前記組み合わせに関する水素化処理の程度を定義する。この水素化処理の程度は、酸素に関して(すなわち、水素化脱酸素)、窒素(すなわち、水素化脱窒素)、硫黄(すなわち、水素化脱硫)、および個々のまたは全金属(すなわち、水素化脱金属)に関して決定することができる。水素過剰では、平衡への反応が水素化処理による完全な転化を意味する。活性な水素化処理は、水素化処理の程度が少なくとも10%である条件および触媒活性材料を意味し得る。しかしながら、前記評価は、分子構造が、例えば立体障害によって、転化をブロックしないことを必要とし、従って、触媒活性材料、条件および供給原料のある組み合わせにおける水素化処理の具体的な実験的評価は、環を有さないか、または単環構造を有する置換アルカンを用いて最良に行われる。
【0071】
水素化脱芳香族の程度は、供給材料を、一連の条件下で触媒活性材料と接触するように導くことによって決定され得る。生成物中の全芳香族の濃度および供給材料中の全芳香族の濃度から計算される、全芳香族の相対的除去量は、条件と触媒活性材料との前記組み合わせに関する水素化脱芳香族の程度を定義する。関連するモデル化合物は、ヘプタン中30%ナフタレンであり得、芳香族の含有率はASTM D-6591に従って決定することができる。反応は平衡によって制限されるため、通常、完全な水素化脱芳香族は予期されず、従って、工業的観点からは10%を超える水素化脱芳香族が活性であると考えられる。
【0072】
水素化脱窒素の程度は、供給材料を、一連の条件下で触媒活性材料と接触するように導くことによって決定され得る。転化される供給材料中の有機的に結合した窒素および生成したアンモニアから計算される、有機的に結合した窒素の相対的除去量は、条件と触媒活性材料との前記組み合わせに関する水素化脱窒素の程度を定義する。関連するモデル化合物は、n-ヘキサデカン中の1%芳香族カルバゾールおよび1%N置換ヘキサデカンであり得る。水素化処理による水素化脱窒素は、少なくとも10%の非芳香族窒素がアンモニアとして放出される場合、活性であると考えられる。
【0073】
水素化分解の程度は、供給材料を、一連の条件下で触媒活性材料と接触するように導くことによって決定され得る。所与の温度、例えば370℃を超えての沸騰から前記所与の温度370℃未満での沸騰に転化された材料の相対量が、条件と触媒活性材料との前記組み合わせに関する水素化分解の程度を定義する。単一の化合物では水素化分解の程度の現実的な尺度が得られないので、関連するモデル化合物は様々な範囲の化合物を含む供給材料であろう。水素過剰では、平衡への反応は水素化分解による完全な転化を意味するであろうが、実際には転化が制限されるように条件があまり厳しくないように選択され、なぜならそれはプロセスのより良好な制御を可能にするからである。増加した全水素化分解転化率は、生成物の重質部分をリサイクルすることによって得ることができる。
【0074】
異性化の程度は、供給材料を、一連の条件下で触媒活性材料と接触するように導くことによって決定され得る。n-パラフィンから同数の炭素原子を有する分枝状パラフィンに転化された材料の相対量は、条件と触媒活性材料との前記組み合わせに関する異性化の程度を定義する。関連するモデル化合物は、n-ヘキサデカンであり得る。あるいは、触媒活性材料および異性化における活性な条件はまた、0.5重量%未満の炭化水素水素含有率の増加を伴う、改善された低温流動特性(すなわち、少なくとも5℃の流動点または曇り点の減少)によって決定され得る。
【0075】
活性な反応条件下で触媒的に活性な材料の存在下での供給原料の「支配的反応」という用語は、特定の一連の条件下で、特定の支配的反応が、上記で決定される、最も高い反応の程度を有する反応であることを意味するものとする。
【0076】
供給原料、触媒活性材料および条件の組み合わせは、特に明記しない限り、所与の反応に関して、この反応の程度が10%を超える場合に活性であると考えられる。この尺度によって、2つ以上の反応が、触媒活性材料、条件および供給原料の同一の組み合わせで活性であり得る。
【0077】
一般に、反応はより厳しい条件(すなわち、より高い温度、より多量の触媒活性組成物)でより高い程度を示し得るが、一部の反応については、反応物と生成物との間の平衡もまた、反応の程度を制御し得る。最後に、異なる傾向はまた、シビアリティが変化するにつれて、支配的反応が変化することを意味し得る。一例として、異性化に向けて触媒的に選択的な材料は、水素過剰および高いシビアリティでは、水素化分解反応を触媒し、従って、異性化と水素化分解との間の同じ材料の選択性に関して、変化し得る。選択性が変化する条件は、触媒活性材料によって異なる。
【0078】
水素化処理および水素化加工に関する制限ステップは、典型的には動力学的であり、これは、例えば温度、水素圧および触媒活性材料中の活性金属利用可能性を増加させることによって、プロセスのシビアリティの増加をサポートするが、水素化脱芳香族に関しては、反応は熱力学的平衡によって制限され、これは高温では非芳香族よりも芳香族に有利である。従って、パイロリシス油中の窒素化合物が芳香族化合物の形態であり得るという認識は、より低い温度で芳香族窒素を除去することを目的とした水素化脱芳香族プロセスステップの前に、動力学的制限を最小化することを目的とした高温での水素化処理プロセスステップの組み合わせを含む提案されたプロセス(場合によりさらなる水素化加工が続く)をもたらす。水素化脱芳香族は一般に、貴金属を含む触媒活性材料の存在下で行われるが、芳香族における窒素の存在は、卑金属が多くの場合に好ましいことを意味する(これは、貴金属を用いて実施される、一般的に好ましい水素化脱芳香族の低温運転に対して作用し得るが)。発熱性の水素化処理反応を最小限に抑え、従って水素化脱芳香族に有利な穏やかな温度を維持するために、多量のヘテロ原子が、好ましくは、水素化脱芳香族において触媒活性である高活性材料との接触の前に、水素化脱芳香族に導かれる水素化処理された中間体のフラクションにおけるヘテロ原子の量が、2重量%未満、1重量%未満または0.5重量%未満となるように、除去される。
【0079】
それぞれカルバゾールとキノリンの転化における平衡に関する反応を仮定する解析を、以下の2つの条件セットで行った:(a)T=400℃、p=8MPa、および(b)T=320℃、p=15MPa。実際のパイロリシス油に関しては、よりい一層大きなヘテロ芳香族分子が存在し、その効果はより大きくなるであろう。
【0080】
カルバゾールは、以下の機構に従って反応する:
【0081】
【化1】
この機構によれば、三環芳香族カルバゾール(左)は、二環芳香族2,3,4,9-テトラヒドロカルバゾール(中央)および単環芳香族2,3,4,4a,9,9a-ヘキサヒドロカルバゾール(右)と平衡にある。3つの分子は全て窒素を含むが、2,3,4,4a,9,9a-ヘキサヒドロカルバゾールでは窒素は芳香族構造の一部ではなく、従って非芳香族窒素は比較的反応性であり、水素化脱芳香族において触媒的に活性な活性材料の存在下で水素との反応によって容易に除去される。
【0082】
上記の平衡の化合物分析を表1に示し、平衡が、両方の平衡において、三環芳香族カルバゾールから単環芳香族2,3,4,4a,9,9a-ヘキサヒドロカルバゾールに押し進められることを示す。従って、条件(a)を選択することによって、平衡はカルバゾールに有利となり、従って、条件(b)と比較して脱窒素を著しく制限し、なぜなら大量の窒素が、条件(a)での混合された平衡によって屈折性の芳香族構造中に保持されるためである。
【0083】
類似して、キノリンは、以下の機構に従って反応する:
【0084】
【化2】
簡素化のために、芳香族窒素化合物と非芳香族窒素化合物との間の全体的な平衡を考慮して、分析は、R1、R2、R3およびR4、すなわち、キノリンと二環構造の部分を形成する窒素原子を有する化合物とを伴う反応に限定する。
【0085】
これらの4つの平衡の化合物分析を表2に示すが、4つの平衡において、平衡が二環芳香族キノリンから、芳香族誘導体なしに単環芳香族へ、さらに非芳香族窒素に、進められることを示す。従って、条件(a)を選択することによって、平衡はキノリンに有利となり、従って、条件(b)と比較して脱窒素を著しく制限し、なぜなら大量の窒素が、条件(a)での混合された平衡によってキノリンの芳香族構造中に保持される一方で、条件(b)では、芳香族窒素を含まない化合物へのほぼ定量的な転化が保持されるためである。
【0086】
両方の場合において、低温および高圧での芳香族窒素の非芳香族構造への転化は、潜在的な転化を増加させる効果を有する。この効果はまた、低温を適用することによってのみ得られるが、圧力を、例えば通常の水素化処理に使用される圧力よりも2MPaまたは5MPa高いレベルに、上昇させると、さらに増強される。非芳香族窒素化合物は芳香族化合物よりも安定性が低いので、条件(b)は非芳香族窒素の水素化脱窒素に十分であり、従って、条件(b)は、条件(a)と比較してキノリンおよびカルバゾールからの窒素の除去に寄与し、なぜなら初期平衡が大規模な転化に十分な量で、より安定性の低い化合物側にシフトするためである。さらに、アンモニアを除去することにより、洗浄水の添加およびフラッシュステップにおける水の分離により、平衡をシフトさせることもできる。フラッシュステップを約50℃で行うと、プロセス圧力を変えることなく大量のアンモニアを取り出すことができ、これはより簡単なプロセスを可能にする。本方法で処理される供給原料は、非常に多量のアンモニアを含有するので、商業的使用のためにアンモニアを選択的に取り出し、精製することは商業的価値を有し得る。これはまた、プロセスのための水素を提供するためにアンモニアクラッキングを伴ってもよく、または肥料としての、または肥料の製造における使用を伴ってもよい。
【0087】
炭化水素、過剰な水素、およびヘテロ原子を含む無機分子を含む水素化加工されたストリームは、炭化水素およびヘテロ原子を含む分子(典型的にはガス)に分離されなければならない。これを行うために、水素化加工されたストリームは分離セクションに導かれ、これはパイロリシス油の処理に関するプロセスシナリオに関しては、典型的には、卑金属ベースの水素化処理反応器と貴金属ベースの水素化脱芳香族反応器との間にあるか、あるいは水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料が、水素化脱芳香族反応器の下流に卑金属を含むかのいずれかである。前記方法はまた、1または複数の他の転化ステップ、例えば水素化分解または水素異性化を含むことができ、およびこれらのステップの順序および使用される触媒活性金属に応じて、当業者は、リサイクルガスストリームを取り出す目的で分離セクションを導入するために可能な位置を認識するであろう。
【0088】
含酸素物質に富み、酸素以外の他のヘテロ原子を含む供給原料を処理するプロセスでは、熱の発生および水素の消費が大きいので、水素化加工反応器中のガス油比も、他の水素化加工プロセスと比較して非常に高く、例えば、1000~7000Nm/mである。この水素ガスは、冷却したガスを段階的に注入することによって、プロセス温度を制御するために使用することができる。
【0089】
パイロリシス油生成物ストリームは、芳香族炭化水素、長鎖炭化水素、ガス状炭化水素、水、およびある程度の炭素酸化物を含有することができ、加えて、炭化水素質供給原料中の窒素は、水素化加工されたストリームにアンモニアをもたらす。パイロリシス油中の添加された硫黄ならびに任意の硫黄は、水素化加工されたストリーム中に硫化水素として存在し、最終的に、過剰量の水素が未反応のまま、水素化加工されたストリームに送られる。この多様な混合物の最適な取り扱いのために中間分離ステップが必要とされ得、従って特に、貴金属を含む触媒活性材料を用いて水素化脱芳香族が行われる場合、硫化水素、二酸化炭素およびアンモニアを含む「サワーガス」が、これらの反応の前に除去される。
【0090】
さらに、パイロリシス油の炭化水素への最適な転化のために3または4種の触媒活性材料を組み合わせる必要性は当然、プロセスレイアウトを複雑にし、材料の順序は、特に、卑金属に関しては必要とされ、貴金属に関しては避けるべき硫黄の存在に関して、慎重に考慮されなければならない。
【0091】
プロセスレイアウトにおいて、リサイクルは、様々な目的のためにすることができる:水素の効率的な使用のためのガスリサイクル、所望のフラクションの収量を最大化するための水素化分解において触媒的に活性な材料の周辺での液体リサイクル、および、発熱性の脱酸素反応による温度上昇を制限するための、ならびにパイロリシス油中の反応性含酸素物質および他の反応性化合物のための重合反応の反応速度を制限するための、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料の周辺での液体リサイクル。リサイクルの構成の選択は、リサイクルループの数を最小限に抑えること、小さいリサイクル体積を有する構成を選択することにより反応器体積およびコストを最小限に抑えること、大きいリサイクル体積および/または大規模冷却によるプロセス反応性制御を最大限にすること、ならびに大きいリサイクル体積によって重合を最小限に抑えることによる、プロセスの単純さを含めた、様々な利点に関連する。
【0092】
リサイクルを伴わないプロセス構成はまた、単純さおよび低コストのために、特にプロセス体積が中程度である場合に、有益であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1図1は、窒素の除去のために2種の触媒活性材料を使用する本開示による方法を示し、両者は硫化卑金属を含み、一方は水素化処理において触媒的に活性であり、他方は水素化脱芳香族において触媒的に活性である。
図2図2は、窒素の除去のために2種の触媒活性材料を使用する本開示による方法を示し、一方は硫化卑金属を含み、水素化処理において触媒的に活性であり、他方は貴金属を含み、水素化脱芳香族において触媒的に活性である。
図3図3は、硫化卑金属を含む、窒素の除去のために水素化処理において触媒的に活性な材料を使用する、先行技術による方法を示す。
【0094】
図は主に、前記方法の炭化水素および液体の流れを示しており、当業者には水素の添加は図示されていないが、当該方法において必要とされることが理解されよう。経済的な理由から、水素リッチガスストリーム(複数可)は、任意に精製後に、リサイクルしてもよい。同様に、温度および圧力などのプロセス条件も制御に関連し得、これは、空気冷却器、燃焼加熱器および熱交換器、ならびにポンプおよび圧縮機などの図示されていない装置によって行われ得る。当業者にはまた、プロセスに実際に関連するが、本発明のために限定された特定の関連性を有する、図に示されていないプロセスにおける他の要素が認識されるであろうし、そしてさらに、リサイクルストリームなどの特定の構成が示され得るが、代替の実施が本発明を損なうことなく可能であり得る。さらに、図には示されていないが、液体リサイクルも存在し得る。分別について言及する場合、これは、単純な気液分離、ストリッパー、または気/液分離器および蒸留ユニットを含めたより広範な分別セクションであってもよい。
【0095】
図1に示される方法は、水素化処理プロセス、例えば水素化脱酸素および水素化脱金属も行うことができる水素化処理反応器(HDT)に導かれる、供給原料(102)および水素リッチガス(104)の組み合わされたストリームを示す。水素化処理された中間体(112)は、水素化処理条件下で運転される水素化処理において触媒的に活性な材料を含有する第1の脱窒素反応器(DN1)に導かれ、さらに水素化処理された中間体(114)を提供する。さらに水素化処理された中間体(114)は、水素化脱芳香族条件下で運転される水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料を含有する第2の脱窒素反応器(DN2)に導かれ、これは典型的には、水素化処理において触媒的に活性な材料と比較してより多い量の活性金属を有する触媒活性材料、および多くの場合にはより低い温度を伴う。第2の脱窒素反応器(DN2)の流出物(116)は、分別または分離セクション(FRAC1)に導かれ、ここでは、流出物(116)を、重質底部フラクション(122)およびオフガス(124)(これらはさらなる処理に導かれる)、ナフサフラクション(126)および軽質ディーゼルフラクション(128)(これらは生成物として取り出すことができる)、中間重質フラクション(130)(これは水素化分解(HDC)において触媒的に活性な材料を含む反応器に導かれて、水素化分解生成物を提供する)に分離することが示される。一般に、供給原料は含酸素物質を含み、その場合、凝縮水もまた、分別セクション(FRAC1)内の分離器内で取り出され、洗浄水がアンモニアを除去するために分別セクションの上流に注入された場合、それもこの位置で取り出される。水素化分解生成物は、オフガス(134)、第2のナフサフラクション(136)および第2のディーゼルフラクション(138)への分離のために、第2の分別セクション(FRAC2)に導かれる。この構成により、中間重質フラクション(130)のみが水素化分解され、これは、軽質ディーゼル(128)を水素化分解することからの収率損失、およびナフサフラクション(126)を開環することからのナフサの品質喪失を回避し、また、重質底部フラクション(122)の水素化分解からの重質多核芳香族(HPNA)の形成のリスクを回避する。重質底部フラクションが水素化分解に導かれる代替的な方法スキームが可能である。重質底部水素化分解フラクションはまた、第2の分別セクションから水素化分解装置(HDC)にリサイクルされてもよく、これは、条件のシビアリティーを制限しながら、水素化分解装置における高い全転化率を可能にする。
【0096】
図1に示す実施態様において、水素化脱芳香族(DN2)において触媒的に活性な材料の前の熱交換による冷却は明示的に示されていないが、一般に、温度は、別のプロセスストリームまたは蒸気との熱交換によって調整される。ストリームの冷却は、液体クエンチまたはガスクエンチによって実施することもでき、そのような冷却が必要とされないプロセス構成が存在してもよい。分別器(FRAC1)から出るストリームの流れは、この点において有用であり得、また、DN2への混合ストリームが水素化脱芳香族に有利に働くのに適切な低下された温度を有するような温度を有する。
【0097】
図2に示される方法は、貴金属を含む水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料の使用の場合のように、水、アンモニアおよび硫化水素が存在しないことを必要とする方法、または中間ストリームが他の目的のために取り出される方法を示す、図1の1つの変形実施態様である。ここでは、供給原料(202)および水素リッチガス(204)の組み合わされたストリームが、水素化処理プロセス、例えば水素化脱酸素および水素化脱金属も行うことができる水素化処理反応器(HDT)に導かれる。水素化処理された中間体(212)は、水素化処理条件下で運転される水素化処理において触媒的に活性な材料を含有する第1の脱窒素反応器(DN1)に導かれ、さらに水素化処理された中間体(214)を提供する。さらに水素化処理された中間体(214)は、第1の分別セクションに導かれ、ここでは、水素化処理された中間体(214)が重質底部フラクション(222)、オフガスフラクション(224)、第1のナフサフラクション(226)および中間重質フラクション(228)に分離されることが示されている。図1に関して、供給原料は一般に、含酸素物質を含んでいてよく、その場合、凝縮水もまた、分別セクション(FRAC1)内の分離器において取り出される。アンモニアの除去によって平衡をシフトさせることが望まれる場合、アンモニアが水に溶解され分離によって取り出されるように、ある量の水も、さらに水素化処理された中間体(214)に加えられる。中間重質フラクションは、水素の添加(図示せず)後に、水素化脱芳香族条件下で運転される水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料を含有する第2の脱窒素反応器(DN2)に導かれ、これは典型的には、水素化処理において触媒的に活性な材料と比較してより多い量の活性金属を有する触媒活性材料、および多くの場合にはより低い温度を伴う。オフガス(224)が除去されたら、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料は貴金属を含むことができ、これは、より低い温度での運転を可能にし、より高い程度の脱芳香族、および従ってより多くの窒素除去をもたらす。脱窒素ストリーム(232)は、第2の分別セクション(FRAC2)に導かれ、ここで脱窒素ストリームを、オフガス(234)、第2のナフサフラクション(236)、軽質ディーゼルフラクション(238)および重質ディーゼルフラクション(240)に分離する。重質ディーゼルフラクション(240)は、水素の添加(図示せず)後、水素化分解(HDC)において触媒的に活性な材料を含有する反応器に導かれて、水素化分解生成物を提供し、これは、オフガス(244)、水素化分解ナフサフラクション(246)および水素化分解ディーゼルフラクション(248)への分離のために第3の分別セクション(FRAC3)に導かれる。この構成により、中間重質フラクション(228)のみが水素化分解され、これにより、第1のナフサフラクション(226)からの芳香族の損失、ひいてはオクタン価の損失が回避される。さらに、それは、水素化脱芳香族(DN2)において触媒的に活性な材料中における、より効率的な貴金属の使用を可能にし、従って、より強力な脱窒素を提供する。
【0098】
第2の分別セクション(FRAC2)はここでは液体生成物を分別するように示されているが、それは単純なホットストリッパーであってもよく、なぜなら最も重要な機能は、脱窒素の間に放出されたアンモニアによる、水素化分解において触媒的に活性な材料の失活を回避するためにアンモニアを除去することだからである。
【0099】
図3には、従来技術による方法が示されている。ここでは、供給原料(302)および水素リッチガス(304)の組み合わされたストリームが、水素化処理プロセス、例えば水素化脱酸素および水素化脱金属も行うことができる水素化処理反応器(HDT)に導かれる。水素化処理された中間体(312)は、厳しい水素化処理条件下で、例えば425℃までの温度で運転される水素化処理において触媒的に活性な高活性材料を含有する第1の脱窒素反応器(DN)に導かれ、さらに水素化処理された中間体(314)を提供する。さらに水素化処理された中間体(314)は、分別セクション(FRAC)に導かれ、水素化処理された中間体(314)が重質底部フラクション(322)、オフガスフラクション(324)、第1のナフサフラクション(326)および中間重質フラクション(328)に分離される。
【実施例
【0100】
例1
図1図2、および図3の例示による方法を以下で比較し、ストリームの組成を表3および表4に示す。
【0101】
全ての方法は、表3による供給原料を想定して実施され、これは藻類材料の水熱液化によって製造された供給原料に対応する例である。
【0102】
表4は、図1-3の主要なストリームにおける質量流量と窒素のパーセントを比較したものである。
【0103】
図1および2における生成物の量および質は類似している;ナフサおよびディーゼルの収量はそれぞれ24および60トン/時間であり、窒素含有率はディーゼルフラクション中2重量ppmである。図1の方法は、より単純な方法であるという利点を有し、一方で図2の方法は、反応器がナフサを処理する必要がないので、より小さいDN2反応器であるという利点を有する。さらに、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料の上流でのナフサの取り出しは、ナフサのより高いオクタン価を維持する。図1に関して、RONは75であり、図2および図3ではそれは85と見積もられる。さらに、NHの大部分はDN2の前にFRAC1で除去され、これは触媒活性も改善し、従って、より低い反応器体積に寄与することができる。
【0104】
図3に示される従来技術による概念は、9重量ppmの窒素含有率を有する17トン/時間のナフサ収量、2.0重量%の窒素含有率を有する47トン/時間のディーゼル収量、および3.0重量%の窒素含有率を有する21トン/時間の重質物質収量を与える。重質フラクション中の窒素の含有率が高いため、このフラクションは水素化分解によるさらなる処理には適しておらず、なぜならアンモニアおよび有機窒素化合物が水素化分解を阻害するからである。
【0105】
例2
例2は例1と類似しているが、図1~3による3つの方法における下水汚泥由来パイロリシス油の処理を示す。
【0106】
表5は、図1~3に示される方法に対する前処理された供給原料の特性を示し、表6は主要ストリームにおける質量流量および窒素のパーセントを示す。
【0107】
定性的な傾向は藻類由来油の傾向と類似しているが、結果は、依然として仕様に準拠しているものの、生成物中に窒素のより多い残留物を示す。
【0108】
例3
表7は、第2の分別セクションおよび水素化分解において触媒的に活性な材料を含有する反応器は除く、図2に対応するパイロットプラント実験からの供給材料および生成物の特性を示す。表から、第2の反応器内の温度を380から400℃まで上昇させても、生成物中のN含有率は減少しないことが明らかであり、従って、この温度での窒素除去が熱力学によって制限されることを示している。
【0109】
例4
表8は、第2のパイロットプラント実験からの供給材料および生成物を示し、そこでは、下水汚泥由来パイロリシス油が360℃で水素化処理され、低いシビアリティー下、すなわち水素化脱芳香族条件で運転される反応器において供給原料として使用された。これは、全ての液体炭化水素がストリーム214から反応器DN2に移される、図2と類似の方法に対応しており、第2の反応器の後にNH3ガスを除去し、より高い圧力およびより低い温度で第3の反応器において第2の反応器からの生成物を水素化処理することによって、平衡を芳香族窒素化合物から離れるようにシフトさせることが、N含有率を107重量ppmに減少させることを可能にすることを示す。
【0110】
表7を見ると、様々な反応の程度を、上記の記載に従って見積もることができる。例えば、供給原料は4768ppmwtのSを含有し、これは340℃で381ppmwt(水素化脱硫の程度は92%)に、および380℃で119ppmwt(水素化脱硫の程度は97%)に転化される。
【0111】
比較のために、供給原料は78900ppmwtのNを含み、これは340℃で34350ppmwt(水素化脱窒の程度は57%)に、380℃で5860ppmwt(水素化脱窒の程度は94%)に転化される。
【0112】
硫化物は主に非芳香族構造にあることが知られているので、水素化脱硫は、水素化処理において活性である触媒活性材料の指標である。中程度の水素化脱窒は、水素化処理が窒素ヘテロ原子の除去には不十分であることを示す。高められた温度でより多くの窒素を除去する能力は、363℃でのT50から360℃でのT90への蒸留曲線の変化に関連することが分かるが、この変化の背後にある機構は明らかではない。全芳香族含有率は360℃と380℃でそれぞれ42重量%と41重量%であり、340℃ではわずか38重量%であり、より低い温度での増加した水素化脱芳香族を示すものである。供給原料の全芳香族含有率は約45~50重量%であると見積もられるが、酸素含有化合物との干渉のため、正確な分析は不可能であった。各条件での触媒活性材料が水素化脱芳香族において活性であることを確認するために、炭化水素のみを含む単純化モデル化合物を用いた類似の試験を実施した。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
【表6】
【0119】
【表7】
【0120】
【表8】
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
提案される方法は、高温での最初の水素化処理と、それに続く、熱力学的平衡を芳香族窒素含有化合物から非芳香族窒素不含化合物へシフトさせる条件、例えばより低い温度での、または水での洗浄によるアンモニアの除去後の、第2の水素化処理を含み、前記の熱力学的平衡が穏やかな温度において非芳香族構造に有利であり、およびアンモニア生成物の除去がアンモニアを形成する反応に有利であるという事実から恩恵を受ける。
US2011/0119994A1には関連のプロセスが開示されている。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0099
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0099】
図3には、従来技術による方法が示されている。ここでは、供給原料(302)および水素リッチガス(304)の組み合わされたストリームが、水素化処理プロセス、例えば水素化脱酸素および水素化脱金属も行うことができる水素化処理反応器(HDT)に導かれる。水素化処理された中間体(312)は、厳しい水素化処理条件下で、例えば425℃までの温度で運転される水素化処理において触媒的に活性な高活性材料を含有する第1の脱窒素反応器(DN)に導かれ、さらに水素化処理された中間体(314)を提供する。さらに水素化処理された中間体(314)は、分別セクション(FRAC)に導かれ、水素化処理された中間体(314)が重質底部フラクション(322)、オフガスフラクション(324)、第1のナフサフラクション(326)および中間重質フラクション(328)に分離される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.少なくとも0.5重量%の窒素、少なくとも2重量%の窒素または少なくとも5重量%の窒素、かつ、10重量%未満または15重量%未満の窒素を含有する、固体の熱分解に由来する供給原料の転化のための方法であって、以下のステップを含む方法:
a.前記供給原料を、二水素の存在下、活性な水素化処理条件下で、水素化処理において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化処理された中間体を提供するステップ、
b.水素化処理された中間体ストリームの1つまたは複数の条件を、芳香族窒素化合物と非芳香族窒素不含化合物との間の平衡を非芳香族窒素不含化合物へとシフトさせる、活性な水素化脱芳香族条件に調節するステップ、
c.前記の水素化処理された中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、前記の活性な水素化脱芳香族条件下で、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、さらに転化された中間体を提供するステップ。
2.1つまたは複数の条件の調節が、水素化処理された中間体の温度を少なくとも25℃、50℃または75℃低下させることを含む、上記1に記載の方法。
3.1つまたは複数の条件の調節が、水素化処理された中間体から、例えば洗浄水の添加および後続のフラッシュ分離によって、ある量のアンモニアを取り出すことを含む、上記1または2に記載の方法。
4.1つまたは複数の条件の調節が、圧力を少なくとも5MPa、10MPaまたは50MPaかつ70MPaまたは100MPa未満だけ増加させることを含む、上記1、2または3に記載の方法。
5.供給原料が、熱分解プロセスであって、材料が酸素の不存在を含めた化学量論量未満の酸素の存在下で、高められた温度、例えば250℃超、400℃超、600℃超かつ800℃未満または1000℃未満で部分的に分解される熱分解プロセスに由来する、上記1、2、3または4に記載の方法。
6.水素化脱芳香族において触媒的に活性な前記材料が、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、タングステンおよびモリブデンを含む群から選択される活性金属、好ましくは1種または複数の元素貴金属、例えば白金またはパラジウム、ならびに耐熱性担体、好ましくは非晶質シリカ-アルミナ、アルミナ、シリカ、チタニアもしくはモレキュラーシーブまたはそれらの組み合わせを含む、上記1、2、3、4または5に記載の方法。
7.前記水素化脱芳香族条件が、200~350℃の区間の温度、3~20MPaの区間の圧力、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)を含む、上記1、2、3、4、5または6に記載の方法。
8.固体の熱分解に由来する不安定化された供給原料を、二水素の存在下、前処理条件下で、水素化処理において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、固体の熱分解に由来する前記組成物を提供することをさらに含む、上記1、2、3、4、5、6または7に記載の方法。
9.水素化処理された中間体を、ステップ(b)に導かれない少なくとも1つのフラクションと、150℃、180℃または200℃を超えて沸騰する材料を少なくとも90重量%含む高沸点の水素化処理された中間体であって、ある量の二水素と一緒にステップ(b)に導かれる中間体とに分離するステップをさらに含む、上記1、2、3、4、5、6、7または8に記載の方法。
10.以下のステップをさらに含む、上記1、2、3、4、5、6、7、8または9に記載の方法
d.前記のさらに転化された中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化分解された中間体を提供するステップ。
11.少なくとも、250℃、300℃または350℃を超えて沸騰する材料を少なくとも90重量%含む高沸点のさらに水素化処理されたフラクションを分離するステップをさらに含み、この高沸点のさらに水素化処理されたフラクションと、ある量の二水素とがステップ(d)に導かれる、上記1、2、3、4、5、6、7、8、9または10に記載の方法。
12.少なくとも、450℃を超えて沸騰する材料を少なくとも90重量%含む高沸点のさらに水素化処理されたフラクションを分離するステップをさらに含み、この高沸点のさらに水素化処理されたフラクションと、ある量の二水素とが前記ステップ(d)に導かれない、上記10または11に記載の方法。
13.少なくとも0.5重量%の窒素から15重量%未満までの窒素を含有し、少なくとも0.5重量%の芳香族結合窒素を含有する炭化水素質供給原料の転化のための方法であって、以下のステップを含む方法:
i.前記供給原料を、ある量の二水素と組み合わせて、250~400℃の区間の温度、3~15MPaの区間の圧力、200~2000Nm /m のガス油比、および0.1~2の区間の液空間速度(LHSV)で、シリカ、チタニアまたはアルミナを含む耐熱性担体上に、任意にニッケルまたはコバルトと組み合わせて、モリブデンおよびタングステンのうちの少なくとも1つを含む第1の触媒活性材料と接触するように導いて、低下した窒素の含有率およびある量のアンモニアを有する炭化水素質液体を含む生成物ストリームを生成するステップ、
ii.水素化処理された中間体ストリームの1つまたは複数の条件を、芳香族窒素化合物と非芳香族窒素不含化合物との間の平衡を非芳香族窒素不含化合物へ、例えばある量のアンモニアを取り出すこと、減少させることにより、シフトさせる、活性な水素化脱芳香族条件に調節するステップ、
iii.芳香族窒素化合物と非芳香族窒素不含化合物との間の平衡が非芳香族窒素不含化合物に向かってシフトするように、ステップ(i)に関する少なくとも1つのプロセス条件を能動的に調節した後に、水素化処理された中間体のうちの少なくともある量を第2の触媒活性材料と接触するように導くステップ。
14.水素化処理において触媒的に活性な材料を含有する第1の反応器と、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料を含有する第2の反応器とを含む、パイロリシス油転化プラントであって、前記第2の反応器は、第1の反応器から出る流れを受けるように構成され、前記パイロリシス油転化プラントは、第2の反応器へ入る流れの温度を低下させるように、第2の反応器の前の圧力を増加させるように、またはある量の水で第1の反応器から出る流れを洗浄するように構成されている、前記パイロリシス油転化プラント。
15.パイロライザー、水素化処理において触媒的に活性な材料を含有する第1の反応器、および水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料を含有する第2の反応器を含む、パイロリシスプラントであって、パイロライザーは第1の反応器にパイロリシス油供給原料を提供するように構成され、前記の第2の反応器は、第1の反応器から出る流れを受けるように構成され、パイロリシス油転化プラントは、第2の反応器へ入る流れの温度を低下させるように、第2の反応器の前の圧力を増加させるように、またはある量の水で第1の反応器から出る流れを洗浄するように構成されている、前記パイロリシスプラント。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.5重量%の窒素、少なくとも2重量%の窒素または少なくとも5重量%の窒素、かつ、10重量%未満または15重量%未満の窒素を含有する、固体の熱分解に由来する供給原料の転化のための方法であって、以下のステップを含む方法:
a.前記供給原料を、二水素の存在下、活性な水素化処理条件下で、水素化処理において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化処理された中間体を提供するステップ、
b.水素化処理された中間体ストリームの1つまたは複数の条件を、芳香族窒素化合物と非芳香族窒素不含化合物との間の平衡を非芳香族窒素不含化合物へとシフトさせる、活性な水素化脱芳香族条件に調節するステップ、
c.前記の水素化処理された中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、前記の活性な水素化脱芳香族条件下で、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、さらに転化された中間体を提供するステップ。
【請求項2】
1つまたは複数の条件の調節が、水素化処理された中間体の温度を少なくとも25℃、50℃または75℃低下させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つまたは複数の条件の調節が、水素化処理された中間体から、例えば洗浄水の添加および後続のフラッシュ分離によって、ある量のアンモニアを取り出すことを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1つまたは複数の条件の調節が、圧力を少なくとも5MPa、10MPaまたは50MPaかつ70MPaまたは100MPa未満だけ増加させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
供給原料が、熱分解プロセスであって、材料が酸素の不存在を含めた化学量論量未満の酸素の存在下で、高められた温度、例えば250℃超、400℃超、600℃超かつ800℃未満または1000℃未満で部分的に分解される熱分解プロセスに由来する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
水素化脱芳香族において触媒的に活性な前記材料が、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、タングステンおよびモリブデンを含む群から選択される活性金属、好ましくは1種または複数の元素貴金属、例えば白金またはパラジウム、ならびに耐熱性担体、好ましくは非晶質シリカ-アルミナ、アルミナ、シリカ、チタニアもしくはモレキュラーシーブまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記水素化脱芳香族条件が、200~350℃の区間の温度、3~20MPaの区間の圧力、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
固体の熱分解に由来する不安定化された供給原料を、二水素の存在下、前処理条件下で、水素化処理において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、固体の熱分解に由来する前記組成物を提供することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
水素化処理された中間体を、ステップ(b)に導かれない少なくとも1つのフラクションと、150℃、180℃または200℃を超えて沸騰する材料を少なくとも90重量%含む高沸点の水素化処理された中間体であって、ある量の二水素と一緒にステップ(b)に導かれる中間体とに分離するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
以下のステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法
d.前記のさらに転化された中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化分解された中間体を提供するステップ。
【請求項11】
少なくとも、250℃、300℃または350℃を超えて沸騰する材料を少なくとも90重量%含む高沸点のさらに水素化処理されたフラクションを分離するステップをさらに含み、この高沸点のさらに水素化処理されたフラクションと、ある量の二水素とがステップ(d)に導かれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも、450℃を超えて沸騰する材料を少なくとも90重量%含む高沸点のさらに水素化処理されたフラクションを分離するステップをさらに含み、この高沸点のさらに水素化処理されたフラクションと、ある量の二水素とが前記ステップ(d)に導かれない、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも0.5重量%の窒素から15重量%未満までの窒素を含有し、少なくとも0.5重量%の芳香族結合窒素を含有する炭化水素質供給原料の転化のための方法であって、以下のステップを含む方法:
i.前記供給原料を、ある量の二水素と組み合わせて、250~400℃の区間の温度、3~15MPaの区間の圧力、200~2000Nm/mのガス油比、および0.1~2の区間の液空間速度(LHSV)で、シリカ、チタニアまたはアルミナを含む耐熱性担体上に、任意にニッケルまたはコバルトと組み合わせて、モリブデンおよびタングステンのうちの少なくとも1つを含む第1の触媒活性材料と接触するように導いて、低下した窒素の含有率およびある量のアンモニアを有する炭化水素質液体を含む生成物ストリームを生成するステップ、
ii.水素化処理された中間体ストリームの1つまたは複数の条件を、芳香族窒素化合物と非芳香族窒素不含化合物との間の平衡を非芳香族窒素不含化合物へ、例えばある量のアンモニアを取り出すこと、減少させることにより、シフトさせる、活性な水素化脱芳香族条件に調節するステップ、
iii.芳香族窒素化合物と非芳香族窒素不含化合物との間の平衡が非芳香族窒素不含化合物に向かってシフトするように、ステップ(i)に関する少なくとも1つのプロセス条件を能動的に調節した後に、水素化処理された中間体のうちの少なくともある量を第2の触媒活性材料と接触するように導くステップ。
【請求項14】
水素化処理において触媒的に活性な材料を含有する第1の反応器と、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料を含有する第2の反応器とを含む、パイロリシス油転化プラントであって、前記第2の反応器は、第1の反応器から出る流れを受けるように構成され、前記パイロリシス油転化プラントは、第2の反応器へ入る流れの温度を低下させるように、第2の反応器の前の圧力を増加させるように、またはある量の水で第1の反応器から出る流れを洗浄するように構成されている、前記パイロリシス油転化プラント。
【請求項15】
パイロライザー、水素化処理において触媒的に活性な材料を含有する第1の反応器、および水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料を含有する第2の反応器を含む、パイロリシスプラントであって、パイロライザーは第1の反応器にパイロリシス油供給原料を提供するように構成され、前記の第2の反応器は、第1の反応器から出る流れを受けるように構成され、パイロリシス油転化プラントは、第2の反応器へ入る流れの温度を低下させるように、第2の反応器の前の圧力を増加させるように、またはある量の水で第1の反応器から出る流れを洗浄するように構成されている、前記パイロリシスプラント。
【国際調査報告】