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特表2024-539700キューティバクテリウム属菌株を含む炎症性皮膚疾患の予防、改善、または治療用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】キューティバクテリウム属菌株を含む炎症性皮膚疾患の予防、改善、または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20241022BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20241022BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20241022BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20241022BHJP
   A23K 10/18 20160101ALI20241022BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
A61K35/74
C12N1/20 E ZNA
A23L33/135
A61P29/00
A61P17/00
A61P17/14
A61P17/06
A61P37/08
A61P17/10
A23K10/18
C12N15/31
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525398
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 KR2022016508
(87)【国際公開番号】W WO2023075430
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0144908
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521440334
【氏名又は名称】シージェイ バイオサイエンス, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】シン,チャンシク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジ・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ボ・ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハンソル
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョンギョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジョン・ウン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
2B150AA02
2B150AA03
2B150AA05
2B150AA06
2B150AA08
2B150AB10
2B150AD04
2B150AD13
2B150AE02
2B150AE12
2B150AE13
2B150BA03
2B150BD01
2B150CA06
2B150CJ02
2B150CJ07
2B150CJ08
2B150DA43
2B150DD47
2B150DE01
2B150DE10
2B150DF13
2B150DF15
2B150DH05
2B150DH14
2B150DH35
4B018MD85
4B018ME14
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC55
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZB11
(57)【要約】
本出願はキューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせの炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療用途に関するものであって、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む組成物は細胞毒性を示さず、皮膚炎症を誘発する免疫細胞の増殖を抑制し、免疫反応を抑制し、ニキビ誘発菌に対する抗菌効果があり、皮膚細胞の再生を促進させて炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療効果が優れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キューティバクテリウム属(Cutibacterium)菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含み、
前記キューティバクテリウム属菌株は、
(a)Lrp/AsnC系転写調節因子(Lrp/AsnC family transcriptional regulator)またはこれをコードする遺伝子、および
(b)ラクトコシン972系バクテリオシン(lactococcin 972 family bacteriocin)またはこれをコードする遺伝子を含むものである、炎症性皮膚疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記キューティバクテリウム属菌株は、下記(1)~(6)からなる群より選択される1種以上のタンパク質またはこれをコードする遺伝子を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
(1)ベータ-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)またはこれをコードする遺伝子、
(2)2-イソプロピルリンゴ酸合成酵素(2-isopropylmalate synthase)またはこれをコードする遺伝子、
(3)3-イソプロピルリンゴ酸脱水酵素(3-isopropylmalate dehydratase)またはこれをコードする遺伝子、
(4)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cse1/CasA(type I-E CRISPR-associated protein Cse1/CasA)またはこれをコードする遺伝子、
(5)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cas7/Cse4/CasC(type I-E CRISPR-associated protein Cas7/Cse4/CasC)またはこれをコードする遺伝子、および
(6)CRISPR-関連ヘリカーゼ/エンドヌクレアーゼCas3(CRISPR-associated helicase/endonuclease Cas3)またはこれをコードする遺伝子。
【請求項3】
前記炎症性皮膚疾患は、脱毛、酒さ(Rosacea)、結節性紅斑、多形紅斑、毛孔性角化症、乾癬、湿疹、アトピー皮膚炎、およびニキビからなる群より選択される1種以上である、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
キューティバクテリウム属(Cutibacterium)菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含み、
前記キューティバクテリウム属菌株は、
(a)Lrp/AsnC系転写調節因子(Lrp/AsnC family transcriptional regulator)またはこれをコードする遺伝子、および
(b)ラクトコシン972系バクテリオシン(lactococcin 972 family bacteriocin)またはこれをコードする遺伝子を含むものである、炎症性皮膚疾患誘発菌に対する抗菌用組成物。
【請求項5】
前記キューティバクテリウム属菌株は、下記(1)~(6)からなる群より選択される1種以上のタンパク質またはこれをコードする遺伝子を含まないことを特徴とする、請求項4に記載の抗菌用組成物:
(1)ベータ-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)またはこれをコードする遺伝子、
(2)2-イソプロピルリンゴ酸合成酵素(2-isopropylmalate synthase)またはこれをコードする遺伝子、
(3)3-イソプロピルリンゴ酸脱水酵素(3-isopropylmalate dehydratase)またはこれをコードする遺伝子、
(4)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cse1/CasA(type I-E CRISPR-associated protein Cse1/CasA)またはこれをコードする遺伝子、
(5)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cas7/Cse4/CasC(type I-E CRISPR-associated protein Cas7/Cse4/CasC)またはこれをコードする遺伝子、および
(6)CRISPR-関連ヘリカーゼ/エンドヌクレアーゼCas3(CRISPR-associated helicase/endonuclease Cas3)またはこれをコードする遺伝子。
【請求項6】
前記炎症性皮膚疾患誘発菌は、キューティバクテリウム・アクネ(C.acnes)、キューティバクテリウム・アビドーム(C.avidum)、キューティバクテリウム・グラニュローサム(C.granulosum)、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)、およびスタフィロコッカス・エピデルミディス(S.epidermidis)からなる群より選択される1種以上である、請求項4または5に記載の抗菌用組成物。
【請求項7】
キューティバクテリウム属(Cutibacterium)菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含み、
前記キューティバクテリウム属菌株は、
(1)Lrp/AsnC系転写調節因子(Lrp/AsnC family transcriptional regulator)またはこれをコードする遺伝子、および
(2)ラクトコシン972系バクテリオシン(lactococcin 972 family bacteriocin)またはこれをコードする遺伝子を含むものである、炎症性皮膚疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項8】
前記キューティバクテリウム属菌株は、下記(1)~(6)からなる群より選択される1種以上のタンパク質またはこれをコードする遺伝子を含まないことを特徴とする、請求項7に記載の食品組成物:
(1)ベータ-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)またはこれをコードする遺伝子、
(2)2-イソプロピルリンゴ酸合成酵素(2-isopropylmalate synthase)またはこれをコードする遺伝子、
(3)3-イソプロピルリンゴ酸脱水酵素(3-isopropylmalate dehydratase)またはこれをコードする遺伝子、
(4)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cse1/CasA(type I-E CRISPR-associated protein Cse1/CasA)またはこれをコードする遺伝子、
(5)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cas7/Cse4/CasC(type I-E CRISPR-associated protein Cas7/Cse4/CasC)またはこれをコードする遺伝子、および
(6)CRISPR-関連ヘリカーゼ/エンドヌクレアーゼCas3(CRISPR-associated helicase/endonuclease Cas3)またはこれをコードする遺伝子。
【請求項9】
前記炎症性皮膚疾患は、脱毛、酒さ(Rosacea)、結節性紅斑、多形紅斑、毛孔性角化症、乾癬、湿疹、アトピー皮膚炎、およびニキビからなる群より選択される1種以上である、請求項7または8に記載の食品組成物。
【請求項10】
キューティバクテリウム属(Cutibacterium)菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含み、
前記キューティバクテリウム属菌株は、
(1)Lrp/AsnC系転写調節因子(Lrp/AsnC family transcriptional regulator)またはこれをコードする遺伝子、および
(2)ラクトコシン972系バクテリオシン(lactococcin 972 family bacteriocin)またはこれをコードする遺伝子を含むものである、炎症性皮膚疾患の予防または改善用飼料組成物。
【請求項11】
前記キューティバクテリウム属菌株は、下記(1)~(6)からなる群より選択される1種以上のタンパク質またはこれをコードする遺伝子を含まないことを特徴とする、請求項10に記載の飼料組成物。
(1)ベータ-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)またはこれをコードする遺伝子、
(2)2-イソプロピルリンゴ酸合成酵素(2-isopropylmalate synthase)またはこれをコードする遺伝子、
(3)3-イソプロピルリンゴ酸脱水酵素(3-isopropylmalate dehydratase)またはこれをコードする遺伝子、
(4)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cse1/CasA(type I-E CRISPR-associated protein Cse1/CasA)またはこれをコードする遺伝子、
(5)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cas7/Cse4/CasC(type I-E CRISPR-associated protein Cas7/Cse4/CasC)またはこれをコードする遺伝子、および
(6)CRISPR-関連ヘリカーゼ/エンドヌクレアーゼCas3(CRISPR-associated helicase/endonuclease Cas3)またはこれをコードする遺伝子。
【請求項12】
前記炎症性皮膚疾患は、脱毛、酒さ(Rosacea)、結節性紅斑、多形紅斑、毛孔性角化症、乾癬、湿疹、アトピー皮膚炎、およびニキビからなる群より選択される1種以上である、請求項10または11に記載の飼料組成物。
【請求項13】
(a)Lrp/AsnC系転写調節因子(Lrp/AsnC family transcriptional regulator)またはこれをコードする遺伝子、および
(b)ラクトコシン972系バクテリオシン(lactococcin 972 family bacteriocin)またはこれをコードする遺伝子を含むキューティバクテリウム属(Cutibacterium)菌株。
【請求項14】
前記キューティバクテリウム属菌株は、下記(1)~(6)からなる群より選択される1種以上のタンパク質またはこれをコードする遺伝子を含まないものである、請求項13に記載のキューティバクテリウム属菌株:
(1)ベータ-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)またはこれをコードする遺伝子、
(2)2-イソプロピルリンゴ酸合成酵素(2-isopropylmalate synthase)またはこれをコードする遺伝子、
(3)3-イソプロピルリンゴ酸脱水酵素(3-isopropylmalate dehydratase)またはこれをコードする遺伝子、
(4)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cse1/CasA(type I-E CRISPR-associated protein Cse1/CasA)またはこれをコードする遺伝子、
(5)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cas7/Cse4/CasC(type I-E CRISPR-associated protein Cas7/Cse4/CasC)またはこれをコードする遺伝子、および
(6)CRISPR-関連ヘリカーゼ/エンドヌクレアーゼCas3(CRISPR-associated helicase/endonuclease Cas3)またはこれをコードする遺伝子。
【請求項15】
前記キューティバクテリウム属菌株は、配列番号8の16S rRNA遺伝子を含むものである、請求項13に記載のキューティバクテリウム属菌株。
【請求項16】
前記菌株は、抗炎症活性、炎症性皮膚疾患誘発菌に対する抗菌活性、皮膚再生活性、皮膚保湿活性、および炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療活性からなる群より選択される1種以上の活性を有するものである、請求項13~15のうちのいずれか一項に記載のキューティバクテリウム属菌株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせの炎症性皮膚疾患の予防、改善、または治療用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚は各種酸化物質、大気汚染、重金属、紫外線(ultraviolet radiation、UV)などから人体を保護し、細菌、かび、ウイルスなどが皮膚に侵犯することを防止し、水分損失を防ぐ保護障壁の役割を果たす。皮膚の構造は表皮、真皮、皮下脂肪の3つの層に大きく分類され、この中の90%占める真皮層はコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸および糖タンパク質から構成されている。主要構成物質コラーゲンは人体のタンパク質総質量中の約25%を占める重要な繊維性タンパク質で、結締組織の大部分を占め、細胞間マトリックスの役割、構造的支持体機能、細胞の分割と分化誘導、皮膚の引張強度提供などの重要な機能を果たす。
【0003】
しかも、体内から排出された皮脂成分、汗成分および化粧品成分中の脂肪酸、高級アルコール、タンパク質などが皮膚上に存在する皮膚常在菌によって毒性の強い物質に分解されてこれらによって皮膚炎症が誘発されることもあり、太陽の紫外線による皮膚障壁損傷による病原性微生物による2次感染露出でニキビ、かゆみ、皮膚炎、アレルギー発生など各種皮膚疾患を誘発するということはよく知られた事実である。
【0004】
このような各種有害環境から皮膚を保護するために、皮膚有害菌の成長を効果的に阻害しながら副作用のない物質の発掘およびこれを適用した医薬品および/または化粧品の開発が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許10-2032546号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の目的は、
(a)Lrp/AsnC系転写調節因子(Lrp/AsnC family transcriptional regulator)またはこれをコードする遺伝子、および
(b)ラクトコシン972系バクテリオシン(lactococcin 972 family bacteriocin)またはこれをコードする遺伝子を含むキューティバクテリウム属(Cutibacterium)菌株を提供することである。
【0007】
本出願の他の目的は、前記菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【0008】
本出願の他の目的は、前記菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患誘発菌に対する抗菌用組成物を提供することである。
【0009】
本出願の他の目的は、前記菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患の予防または改善用食品組成物を提供することである。
【0010】
本出願の他の目的は、前記菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患の予防または改善用飼料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人は、ニキビ(acne)、酒さ(rosacea)などの炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療に効果がある組成物を開発しようと鋭意努力した結果、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む組成物が炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療に効果があることを確認して本出願を完成した。
【0012】
そこで、本出願は、新規なキューティバクテリウム属菌株を提供する。
【0013】
本出願は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療に使用するための用途を提供する。
【0014】
本出願の一例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療用組成物を提供する。
【0015】
一例で、前記組成物は、薬学的組成物、化粧料組成物、食品組成物、または飼料組成物であってもよい。
【0016】
他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療用薬学的組成物を提供する。
【0017】
他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患の予防および/または改善用食品組成物を提供する。前記食品組成物は、食品添加剤または健康機能食品であってもよい。
【0018】
他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患の予防および/または改善用飼料組成物を提供する。前記飼料組成物は、飼料添加剤であってもよい。
【0019】
他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患の予防および/または改善用、または皮膚改善用化粧料組成物を提供する。
【0020】
他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせの有効量を炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療を必要とする対象に投与する段階を含む炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療方法を提供する。
【0021】
他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせの炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療用組成物(例えば、薬学的組成物、化粧料組成物、食品組成物、または飼料組成物)の製造に使用するための用途を提供する。
【0022】
他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせの炎症性皮膚疾患誘発菌を抑制するための用途を提供する。
【0023】
他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患誘発菌に対する抗菌用組成物を提供する。
【0024】
他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせの有効量を炎症性皮膚疾患誘発菌に対する抗菌が必要な対象に適用する段階を含む炎症性皮膚疾患原因菌に対する抑制方法を提供する。
【0025】
他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせの炎症性皮膚疾患誘発菌に対する抗菌用組成物の製造に使用するための用途を提供する。
【0026】
他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを有効成分として含む消毒剤を提供する。
【0027】
他の例は、前記キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせの消毒剤製造に使用するための用途を提供する。
【0028】
他の例は、前記消毒剤を消毒が必要な対象に適用する段階を含む、消毒方法を提供する。
【0029】
他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを有効成分として含む洗浄剤を提供する。
【0030】
他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせの洗浄剤製造に使用するための用途を提供する。
【0031】
他の例は、前記洗浄剤を洗浄が必要な対象に適用する段階を含む、洗浄方法を提供する。
【0032】
以下、本出願をより詳しく説明する。
【0033】
キューティバクテリウム属菌株およびその培養物
【0034】
一態様は、キューティバクテリウム属菌株を提供する。
【0035】
本明細書で、キューティバクテリウム属菌株は全てのキューティバクテリウム属菌株を含むことができる。前記キューティバクテリウム属菌株は例えば、キューティバクテリウム・アクネ(C.acnes)、キューティバクテリウム・アビドーム(C.avidum)、およびキューティバクテリウム・グラニュローサム(C.granulosum)からなる群より選択される1種以上(1種、2種、または3種)であってもよいが、これに制限されない。
【0036】
一例で、前記キューティバクテリウム属菌株は、C.acnes亜種acnes(タイプI(Type I))、C.acnes亜種defendens(タイプII(Type II))、またはC.acnes亜種elongatum(タイプIII(Type III))であってもよいが、これに制限されない。一例で、前記キューティバクテリウム属菌株は、C.acnes亜種defendens(タイプII)であってもよい。
【0037】
一例で、前記キューティバクテリウム属菌株は、リボタイプ(Ribotype)がRT1、RT2、RT3、RT4、RT5、RT6、RT7、RT8、RT9、またはRT10であってもよいが、これに制限されない。一例で、前記キューティバクテリウム属菌株はRT2であってもよい。
【0038】
一例で、前記キューティバクテリウム属菌株は、シーケンスタイプ(Sequence type)が69または153であるものであってもよい。
【0039】
一例で、前記キューティバクテリウム属菌株は、CC(クローナルコンプレックス(clonal complex))がCC72(タイプII(Type II))であるものであってもよい。
【0040】
一例で、前記キューティバクテリウム属菌株は、
(a)Lrp/AsnC系転写調節因子(Lrp/AsnC family transcriptional regulator;NCBIリファレンス配列(Reference Sequence):WP_002531510.1)および/またはこれをコードする遺伝子、および
(b)ラクトコシン972系バクテリオシン(lactococcin 972 family bacteriocin;NCBI Reference Sequence:WP_070651130.1)および/またはこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上(1種または2種)を含むか、および/または
下記(1)~(6)からなる群より選択される1種以上(1種、2種、3種、4種、5種、または6種)のタンパク質および/またはこれをコードする遺伝子を含まないものであってもよい:
(1)ベータ-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase;NCBI Reference Sequence:WP_002518535.1)またはこれをコードする遺伝子、
(2)2-イソプロピルリンゴ酸合成酵素(2-isopropylmalate synthase;NCBI Reference Sequence:WP_142263178.1)またはこれをコードする遺伝子、
(3)3-イソプロピルリンゴ酸脱水酵素(3-isopropylmalate dehydratase;NCBI Reference Sequence:WP_002513330.1)またはこれをコードする遺伝子、
(4)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cse1/CasA(type I-E CRISPR-associated protein Cse1/CasA;NCBI Reference Sequence:WP_002514606.1)またはこれをコードする遺伝子、
(5)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cas7/Cse4/CasC(type I-E CRISPR-associated protein Cas7/Cse4/CasC;NCBI Reference Sequence:WP_002514608.1)またはこれをコードする遺伝子、および
(6)CRISPR-関連ヘリカーゼ/エンドヌクレアーゼCas3(CRISPR-associated helicase/endonuclease Cas3;NCBI Reference Sequence:WP_002514605.1)またはこれをコードする遺伝子。
【0041】
一例で、前記キューティバクテリウム属菌株は、
(a)Lrp/AsnC系転写調節因子(Lrp/AsnC family transcriptional regulator;NCBI Reference Sequence:WP_002531510.1)および/またはこれをコードする遺伝子、および
(b)ラクトコシン972系バクテリオシン(lactococcin 972 family bacteriocin;NCBI Reference Sequence:WP_070651130.1)および/またはこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上(1種または2種)を含み、
下記(1)~(6)からなる群より選択される1種以上(1種、2種、3種、4種、5種、または6種)のタンパク質および/またはこれをコードする遺伝子を含まないものであってもよい:
(1)ベータ-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase;NCBI Reference Sequence:WP_002518535.1)またはこれをコードする遺伝子、
(2)2-イソプロピルリンゴ酸合成酵素(2-isopropylmalate synthase;NCBI Reference Sequence:WP_142263178.1)またはこれをコードする遺伝子、
(3)3-イソプロピルリンゴ酸脱水酵素(3-isopropylmalate dehydratase;NCBI Reference Sequence:WP_002513330.1)またはこれをコードする遺伝子、
(4)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cse1/CasA(type I-E CRISPR-associated protein Cse1/CasA;NCBI Reference Sequence:WP_002514606.1)またはこれをコードする遺伝子、
(5)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cas7/Cse4/CasC(type I-E CRISPR-associated protein Cas7/Cse4/CasC;NCBI Reference Sequence:WP_002514608.1)またはこれをコードする遺伝子、および
(6)CRISPR-関連ヘリカーゼ/エンドヌクレアーゼCas3(CRISPR-associated helicase/endonuclease Cas3;NCBI Reference Sequence:WP_002514605.1)またはこれをコードする遺伝子。
【0042】
一例で、前記キューティバクテリウム属菌株は、
(a)Lrp/AsnC系転写調節因子(Lrp/AsnC family transcriptional regulator;NCBI Reference Sequence:WP_002531510.1)またはこれをコードする遺伝子、および
(b)ラクトコシン972系バクテリオシン(lactococcin 972 family bacteriocin;NCBI Reference Sequence:WP_070651130.1)またはこれをコードする遺伝子を含み、
下記(1)~(6)のタンパク質またはこれをコードする遺伝子全てを含まないものであってもよい:
(1)ベータ-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase;NCBI Reference Sequence:WP_002518535.1)またはこれをコードする遺伝子、
(2)2-イソプロピルリンゴ酸合成酵素(2-isopropylmalate synthase;NCBI Reference Sequence:WP_142263178.1)またはこれをコードする遺伝子、
(3)3-イソプロピルリンゴ酸脱水酵素(3-isopropylmalate dehydratase;NCBI Reference Sequence:WP_002513330.1)またはこれをコードする遺伝子、
(4)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cse1/CasA(type I-E CRISPR-associated protein Cse1/CasA;NCBI Reference Sequence:WP_002514606.1)またはこれをコードする遺伝子、
(5)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cas7/Cse4/CasC(type I-E CRISPR-associated protein Cas7/Cse4/CasC;NCBI Reference Sequence:WP_002514608.1)またはこれをコードする遺伝子、および
(6)CRISPR-関連ヘリカーゼ/エンドヌクレアーゼCas3(CRISPR-associated helicase/endonuclease Cas3;NCBI Reference Sequence:WP_002514605.1)またはこれをコードする遺伝子。
【0043】
一例で、前記キューティバクテリウム属菌株は16S rRNAで配列番号8からなる遺伝子を含むものであってもよい。
【0044】
一例で、前記キューティバクテリウム属菌株は下記からなる群より選択されるものであってもよい:
CJRS-10651、
CJRS-10652、
CJRS-10653、
CJRS-10654、
CJRS-10655、および
CJRS-10656。
【0045】
前記CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、およびCJRS-10656菌株からなる群より選択された菌株は、共通的に配列番号8の16S rRNAを含むものであってもよい。
【0046】
前記CJRS-10651菌株は、寄託番号KCCM13032P(寄託者によって“Cutibacterium acnes CJRS-10651”と命名)のものであってもよい。
【0047】
前記CJRS-10652菌株は、寄託番号KCCM13033P(寄託者によって“Cutibacterium acnes CJRS-10652”と命名)のものであってもよい。
【0048】
前記CJRS-10653菌株は、寄託番号KCCM13034P(寄託者によって“Cutibacterium acnes CJRS-10653”と命名)のものであってもよい。
【0049】
前記CJRS-10654菌株は、寄託番号KCCM13035P(寄託者によって“Cutibacterium acnes CJRS-10654”と命名)のものであってもよい。
【0050】
前記CJRS-10655菌株は、寄託番号KCCM13036P(寄託者によって“Cutibacterium acnes CJRS-10655”と命名)のものであってもよい。
【0051】
前記CJRS-10656菌株は、寄託番号KCCM13037P(寄託者によって“Cutibacterium acnes CJRS-10656”と命名)のものであってもよい。
【0052】
本明細書で、キューティバクテリウム属菌株の“培養物”はキューティバクテリウム属菌株を培養して得られた産物を意味することができる。前記キューティバクテリウム属菌株の培養物は、菌株(菌体)が除去された形態であるか、菌株が除去されていない形態であってもよい。前記菌株が除去されていない形態のキューティバクテリウム属菌株の培養物は、培養物内キューティバクテリウム属菌株を含むものであってもよい。
【0053】
前記培養物はキューティバクテリウム属菌株の全体培養物、その希釈液、濃縮物、乾燥物(例、凍結乾燥物など)、破砕物、および/または分画物などであり得、前記濃縮物は前記培養物を遠心分離または蒸発させて得ることができ、前記乾燥物を前記培養物を乾燥機などを用いて乾燥して得ることができ、前記凍結乾燥物は前記培養物を凍結乾燥機などを用いて凍結乾燥して得ることができ、破砕物は前記菌株または培養物を物理的にまたは超音波処理して得ることができ、前記分画物は前記培養物、破砕物などを遠心分離、クロマトグラフィーなどの方法に適用して得ることができる。
【0054】
前記培養物は固相(固体、例えば乾燥物)、液相(液体)、または流動相であってもよいが、これで制限されない。
【0055】
一例で、前記培養物は、キューティバクテリウム属菌株を一定期間培養して得られた培養された菌株、その代謝物、および/または余分の栄養分などを含む全体培地を意味することができる。
【0056】
一例で、前記培養物は、キューティバクテリウム属菌株を培地で培養した後に菌体(菌株)を除去した無細胞(cell-free)培養物であってもよい。前記菌体除去は分離(例えば、遠心分離)、ろ過などの通常の方法によることであってもよく、例えば、遠心分離によることであってもよい。一具体例で、前記無細胞培養物は、キューティバクテリウム属菌株を培地で培養した培養物を遠心分離して得られた上澄み液(supernatant)であってもよい。
【0057】
また、前記培養物は、キューティバクテリウム属菌株を培地で培養して得られた培養物または菌株を除去した無細胞培養物をろ過した後に残った液体(または培養濾液)であってもよい。
【0058】
一例で、前記培養物は、培養物内に含まれる成分の分子量が特定数値範囲を満足するものであってもよい。前記培養物は、菌株が除去された形態であるか、菌株が除去されていない形態であってもよい。
【0059】
例えば、前記培養物は、培養物内に含まれる成分の分子量が10kDa以下、9kDa以下、8kDa以下、7kDa以下、6kDa以下、5kDa以下、4kDa以下、3kDa以下、2.5kDa以下、2kDa以下、1.5kDa以下、1kDa以下、0.5kDa以下であるものであってもよいが、これに制限されるわけではない。本明細書でkDaはキロダルトン(kilodalton)を意味し、ダルトン(dalton)は原子質量単位(g/mol)を意味する。また本明細書で、“以下”は、0を超過する範囲を含むと解釈されなければならない。例えば、3kDa以下は0超過3kDa以下の数値範囲を意味することができる。
【0060】
より具体的に、前記培養物は、培養物内に含まれる成分の分子量が10kDa以下、9kDa以下、8kDa以下、7kDa以下、6kDa以下、5kDa以下、4kDa以下、3kDa以下、2.5kDa以下、2kDa以下、1.5kDa以下、1kDa以下、0.5kDa以下、または
0.5~4kDa、0.5~3.75kDa、0.5~3.5kDa、0.5~3.25kDa、0.5~3kDa、0.5~2.75kDa、0.5~2.5kDa、0.5~2.25kDa、0.5~2kDa、0.5~1.75kDa、0.5~1.5kDa、0.5~1.25kDa、0.5~1kDa、0.5~0.75kDa、0.75~4kDa、0.75~3.75kDa、0.75~3.5kDa、0.75~3.25kDa、0.75~3kDa、0.75~2.75kDa、0.75~2.5kDa、0.75~2.25kDa、0.75~2kDa、0.75~1.75kDa、0.75~1.5kDa、0.75~1.25kDa、075~1kDa、1~4kDa、1~3.75kDa、1~3.5kDa、1~3.25kDa、1~3kDa、1~2.75kDa、1~2.5kDa、1~2.25kDa、1~2kDa、1~1.75kDa、1~1.5kDa、1~1.25kDa、1.25~4kDa、1.25~3.75kDa、1.25~3.5kDa、1.25~3.25kDa、1.25~3kDa、1.25~2.75kDa、1.25~2.5kDa、1.25~2.25kDa、1.25~2kDa、1.25~1.75kDa、1.25~1.5kDa、1.5~4kDa、1.5~3.75kDa、1.5~3.5kDa、1.5~3.25kDa、1.5~3kDa、1.5~2.75kDa、1.5~2.5kDa、1.5~2.25kDa、1.5~2kDa、1.5~1.75kDa、1.75~4kDa、1.75~3.75kDa、1.75~3.5kDa、1.75~3.25kDa、1.75~3kDa、1.75~2.75kDa、1.75~2.5kDa、1.75~2.25kDa、1.75~2kDa、2~4kDa、2~3.75kDa、2~3.5kDa、2~3.25kDa、2~3kDa、2~2.75kDa、2~2.5kDa、2~2.25kDa、2.25~4kDa、2.25~3.75kDa、2.25~3.5kDa、2.25~3.25kDa、2.25~3kDa、2.25~2.75kDa、2.25~2.5kDa、2.5~4kDa、2.5~3.75kDa、2.5~3.5kDa、2.5~3.25kDa、2.5~3kDa、2.5~2.75kDa、2.75~4kDa、2.75~3.75kDa、2.75~3.5kDa、2.75~3.25kDa、2.75~3kDa、3~4kDa、3~3.75kDa、3~3.5kDa、3~3.25kDa、3.25~4kDa、3.25~3.75kDa、3.25~3.5kDa、3.5~4kDa、3.5~3.75kDa、または3.75~4kDa範囲を満足するものであってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0061】
一例で、前記培養物内に含まれる成分の分子量が前記数値範囲を満足するようにするために適切な手段、手続、工程などを行うことができ、例えば、ろ過、分離過程などを行うことができる。本明細書で、“ろ過”は“分離”と相互互換されて使用でき、培養物内に含まれる成分を特定数値範囲の大きさまたは分子量で獲得するために行われる全ての種類の工程を意味することができる。
【0062】
一例で、前記培養物は、キューティバクテリウム属菌株を培養した培養物をフィルターを用いて0.3μm以下、0.29μm以下、0.28μm以下、0.27μm以下、0.26μm以下、0.25μm以下、0.24μm以下、0.23μm以下、0.22μm以下、0.21μm以下、または0.2μm以下にろ過して得られた培養物であってもよいが、これに制限されるわけではない。一具体例で、前記培養物は、キューティバクテリウム属菌株を培養した培養物をフィルターを用いて0.22μmにろ過して得られた培養物であってもよい。本明細書で“以下”は0を超過する範囲を含むものと解釈されなければならない(例えば、“0.3μm以下”は0超過0.3μm以下の数値範囲を意味する)。前記フィルターは、前記培養物をろ過することに通常使用されるものであればいずれのものでも制限なく使用することができる。前記培養物は、キューティバクテリウム属菌株が除去された形態であるか、除去されていない形態であってもよい。
【0063】
一例で、前記培養物は、キューティバクテリウム属菌株を培養した培養物をフィルターを用いて10kDa以下、9kDa以下、8kDa以下、7kDa以下、6kDa以下、5kDa以下、4kDa以下、3kDa以下、2.5kDa以下、2kDa以下、1.5kDa以下、1kDa以下、0.5kDa以下にろ過して得られたろ過物であってもよいが、これに制限されるわけではない。一具体例で、前記培養物はキューティバクテリウム属菌株を培養した培養物をフィルターを用いて3kDa以下にろ過した培養物であってもよい。前記フィルターは前記培養物をろ過することに通常使用されるものであればいずれのものでも制限なく使用することができる。
【0064】
本明細書で、特定数値のkDa以下にろ過して得られた培養物は、特定数値のkDa以下に分離して得られた分離物として相互互換可能に使用できる。即ち、特定数値のkDa以下にろ過して得られた培養物(または分離して得られた分離物)は、前記培養物内に含まれる物質が特定数値のkDa以下の分子量を有するものであるのを意味するものであり得る。
【0065】
一例で、前記3kDa以下にろ過して得られた培養物は、前記培養物内に含まれる物質が3kDa以下の分子量を有するものであるのを意味するものであり得る。即ち、本明細書で特定数値範囲(kDa)でろ過して得られた培養物とは、前記培養物内に含まれる物質の分子量が全て前記特定数値範囲(kDa)を満足するものを意味することができる。
【0066】
より具体的に、前記培養物はキューティバクテリウム属菌株を培養した培養物をフィルターを用いて10kDa以下、9kDa以下、8kDa以下、7kDa以下、6kDa以下、5kDa以下、4kDa以下、3kDa以下、2.5kDa以下、2kDa以下、1.5kDa以下、1kDa以下、0.5kDa以下、または
0.5~4kDa、0.5~3.75kDa、0.5~3.5kDa、0.5~3.25kDa、0.5~3kDa、0.5~2.75kDa、0.5~2.5kDa、0.5~2.25kDa、0.5~2kDa、0.5~1.75kDa、0.5~1.5kDa、0.5~1.25kDa、0.5~1kDa、0.5~0.75kDa、0.75~4kDa、0.75~3.75kDa、0.75~3.5kDa、0.75~3.25kDa、0.75~3kDa、0.75~2.75kDa、0.75~2.5kDa、0.75~2.25kDa、0.75~2kDa、0.75~1.75kDa、0.75~1.5kDa、0.75~1.25kDa、0.75~1kDa、1~4kDa、1~3.75kDa、1~3.5kDa、1~3.25kDa、1~3kDa、1~2.75kDa、1~2.5kDa、1~2.25kDa、1~2kDa、1~1.75kDa、1~1.5kDa、1~1.25kDa、1.25~4kDa、1.25~3.75kDa、1.25~3.5kDa、1.25~3.25kDa、1.25~3kDa、1.25~2.75kDa、1.25~2.5kDa、1.25~2.25kDa、1.25~2kDa、1.25~1.75kDa、1.25~1.5kDa、1.5~4kDa、1.5~3.75kDa、1.5~3.5kDa、1.5~3.25kDa、1.5~3kDa、1.5~2.75kDa、1.5~2.5kDa、1.5~2.25kDa、1.5~2kDa、1.5~1.75kDa、1.75~4kDa、1.75~3.75kDa、1.75~3.5kDa、1.75~3.25kDa、1.75~3kDa、1.75~2.75kDa、1.75~2.5kDa、1.75~2.25kDa、1.75~2kDa、2~4kDa、2~3.75kDa、2~3.5kDa、2~3.25kDa、2~3kDa、2~2.75kDa、2~2.5kDa、2~2.25kDa、2.25~4kDa、2.25~3.75kDa、2.25~3.5kDa、2.25~3.25kDa、2.25~3kDa、2.25~2.75kDa、2.25~2.5kDa、2.5~4kDa、2.5~3.75kDa、2.5~3.5kDa、2.5~3.25kDa、2.5~3kDa、2.5~2.75kDa、2.75~4kDa、2.75~3.75kDa、2.75~3.5kDa、2.75~3.25kDa、2.75~3kDa、3~4kDa、3~3.75kDa、3~3.5kDa、3~3.25kDa、3.25~4kDa、3.25~3.75kDa、3.25~3.5kDa、3.5~4kDa、3.5~3.75kDa、または3.75~4kDaでろ過して得られた培養物であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0067】
一例で、前記範囲でろ過して得られた培養物は、(1)炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療効果、および/または(2)ニキビ誘発菌に対する抗菌効果に優れているものであり得る。
【0068】
一例で、キューティバクテリウム属菌株の培養物は、キューティバクテリウム属菌株を培地で一定期間培養して得られた培養物であるか、前記培養物を熱処理(または滅菌(例えば、オートクレーブまたは熱風乾燥))して得られたキューティバクテリウム属菌株の死菌体が含まれている培養物であってもよい。
【0069】
本明細書で、“培養”は、微生物を適当に人工的に調節した環境条件で増殖させる一連の行為を意味する。前記培養は、当業界に知られた任意の培養条件および培養方法を使用することができる。例えば、前記培養は、公知された回分式培養方法、連続式培養方法、流加式培養方法、バッチ工程または注入バッチまたは反復注入バッチ工程(fed batch or repeated fed batch process)で連続式で行うことができる。この時、培養条件は、特にこれに制限されないが、塩基性化合物(例えば:水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニア)または酸性化合物(例:リン酸または硫酸)を使用して適正pH(例えば、pH5~9、pH6~8、またはpH6.8)を調節することができる。一例で、脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を使用して気泡生成を抑制することができ/できるか、酸素または酸素-含有ガス混合物を培養物に導入させて好気性条件を維持することができる。
【0070】
一例で、培養温度は20~45℃、25~40℃、30~40℃、30~35℃、または35~40℃であってもよく、培養条件は100~500rpm、150~300rpm、150~250rpm、または200rpmであってもよく、培養時間(期間)は1~160時間、10~100時間、12~72時間、24~72時間、30~60時間、40~50時間、45~50時間、または48時間であってもよい。一例で、培養は前記範囲の培養温度で前記範囲の培養時間行うことができる。
【0071】
培養に使用される培地は適切な方式で特定菌株の要件を充足しなければならず、当業者は公知された内容によって適切に使用することができる。
【0072】
前記キューティバクテリウム属菌株を培養するためには適当な炭素源、窒素源、アミノ酸、ビタミンなどを含む通常の培地内で嫌気性条件下で温度、pHなどを調節しながら適切な方式で特定菌株の生存要件を充足させることができる。前記培地で使用できる炭素源としては炭素供給源としては糖および炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、モラセ、デンプン、およびセルロース)、油脂および脂肪(例えば、大豆油、ヒマワリ種子油、落花生油、およびヤシ油)、脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、およびリノール酸)、アルコール(例えば、グリセロールおよびエタノール)および有機酸(例えば、酢酸)などを個別的に使用するかまたは混合して使用することができるが、これに限定されるのではない。窒素供給源としては窒素-含有有機化合物(例:ペプトン、酵母抽出液、肉汁、麦芽抽出液、とうもろこし浸漬液、大豆粕の粉末および尿素)、または無機化合物(例:硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、および硝酸アンモニウム)などを個別的に使用するかまたは混合して使用することができるが、これに限定されるのではない。リン供給源としてリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、これに相応するナトリウム含有塩などを個別的に使用するか、または混合して使用することができるが、これに限定されるのではない。また、培養培地は成長に必要なその他の金属塩(例えば、硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄)を含有することができ/できるかアミノ酸およびビタミンのような必須成長物質を含むことができるが、これに限定されるのではない。
【0073】
キューティバクテリウム属菌株および/またはその培養物の効果
【0074】
一例で、前記キューティバクテリウム属菌株および/または前記菌株の培養物は抗炎症活性、抗菌活性、皮膚再生活性、皮膚保湿活性、および炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療活性からなる群より選択される1種以上(1種、2種、3種、4種、または5種全て)の活性を有するものであるか、前記活性が強化されたものであってもよい。前記活性強化は、本来有していなかった活性を示すようになること、または内在的活性または変形前活性に比べて向上した活性を示すようになることを全て含むことができる。
【0075】
本明細書で用語“抗炎症活性”は、炎症発生を抑制するか、炎症の程度を軽減するなど炎症を減少させる全ての活性を意味することができる。一例で、前記抗炎症活性は、炎症を誘発する炎症細胞(例えば、大食細胞(マクロファージ)など)の増殖を抑制するか炎症細胞が生成する炎症物質(例えば、炎症性サイトカイン、ヒスタミンなど)の遺伝子転写抑制またはタンパク質翻訳抑制などの活性を意味することができる。一例で、前記抗炎症活性は免疫反応で生成された炎症物質(例えば、炎症性サイトカイン(インターロイキン-6など)、ケモカインリガンド(CCL2(C-C Motif Chemokine Ligand 2、ケモカインリガンド2)など)、腫瘍壊死因子(TNF-α(tumor necrosis factor alpha)など)など)を減少させることを意味することができる。前記炎症は炎症性皮膚疾患によるものであってもよい。
【0076】
本明細書で、用語“抗菌活性”は、炎症を誘発する細菌の成長を阻害するか、および/または死滅させるなどの活性を意味することができる。前記炎症を誘発する細菌は炎症性皮膚疾患誘発菌であってもよい。
【0077】
本明細書で、用語“皮膚”は顔だけでなく、頭皮、全身も含まれる概念であってもよい。本明細書で、用語“皮膚改善活性”は皮膚再生、皮膚保湿、皮膚美白、皮膚弾力改善、皮膚シワ改善、皮膚老化防止、皮膚水分供給、皮膚栄養供給、皮膚トーン改善、毛穴縮小、皮膚の肌理改善、角質除去、皮膚ボリューム改善、頭皮保護、頭皮または皮膚の皮脂防止、脱毛防止、毛髪水分供給、毛髪栄養供給、毛髪ボリューム改善、皮膚保護(例えば、皮膚炎症緩和または改善用、皮膚かゆみ症改善用、またはアトピー改善用)、または皮膚状態改善などを全て含む概念であってもよい。
【0078】
前記皮膚改善は、皮膚シワ改善、皮膚弾力改善、皮膚老化防止、皮膚保湿改善、皮膚水分供給、および皮膚栄養供給からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0079】
前記皮膚改善は、頭皮保護、脱毛防止、毛髪水分供給、および毛髪栄養供給からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0080】
前記皮膚改善は敏感性皮膚改善を意味することができる。前記敏感性皮膚改善は、温度(例えば、高温または低温)、風、有害物質(例えば、微細埃、皮脂、油、細菌など)、化学物質(例えば、ホルモンなど)によって起こる皮膚反応(例えば、皮膚トラブル、免疫反応、炎症反応など)を改善することであってもよい。
【0081】
本明細書で、用語“皮膚再生活性”および“皮膚保湿活性”は、皮膚状態を健康な状態で維持するか疾患によって悪化した皮膚状態を改善するか増進する全ての活性を意味することができる。前記“皮膚再生活性”および“皮膚保湿活性”は、皮膚の表皮、真皮、および/または皮下組織に存在する細胞の増殖を促進するか増殖を誘導することであってもよい。前記皮膚状態を悪化させる疾患は炎症性皮膚疾患であってもよい。一例で、前記“皮膚再生活性”および“皮膚保湿活性”はそれぞれ皮膚再生関連マーカ(例えば、SrcまたはMMP2(メタロプロテイナーゼ-2(metalloproteinase-2))などのタンパク質または遺伝子)の発現量を増加させることであるか、皮膚保湿関連マーカ(例えばHAS3(ヒアルロン酸シンターゼ3(Hyaluronic acid Synthase 3))またはAQP3(アクアポリン3(Aquaporin 3))などのタンパク質または遺伝子)の発現量を増加させることなどを意味することができる。
【0082】
一例で、前記キューティバクテリウム属菌株および/または前記菌株の培養物は
(a)Lrp/AsnC系転写調節因子(Lrp/AsnC family transcriptional regulator;NCBI Reference Sequence:WP_002531510.1)またはこれをコードする遺伝子、および
(b)ラクトコシン972系バクテリオシン(lactococcin 972 family bacteriocin;NCBI Reference Sequence:WP_070651130.1)またはこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上(1種または2種)を含まないか、および/または
下記(1)~(6)からなる群より選択される1種以上(1種、2種、3種、4種、5種、または6種)のタンパク質またはこれをコードする遺伝子を含む菌株(例えば、キューティバクテリウム属菌注)および/またはその培養物と比較して、前記活性に優れるのであり得る:
(1)ベータ-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase;NCBI Reference Sequence:WP_002518535.1)またはこれをコードする遺伝子、
(2)2-イソプロピルリンゴ酸合成酵素(2-isopropylmalate synthase;NCBI Reference Sequence:WP_142263178.1)またはこれをコードする遺伝子、
(3)3-イソプロピルリンゴ酸脱水酵素(3-isopropylmalate dehydratase;NCBI Reference Sequence:WP_002513330.1)またはこれをコードする遺伝子、
(4)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cse1/CasA(type I-E CRISPR-associated protein Cse1/CasA;NCBI Reference Sequence:WP_002514606.1)またはこれをコードする遺伝子、
(5)タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cas7/Cse4/CasC(type I-E CRISPR-associated protein Cas7/Cse4/CasC;NCBI Reference Sequence:WP_002514608.1)またはこれをコードする遺伝子、および
(6)CRISPR-関連ヘリカーゼ/エンドヌクレアーゼCas3(CRISPR-associated helicase/endonuclease Cas3;NCBI Reference Sequence:WP_002514605.1)またはこれをコードする遺伝子。
【0083】
キューティバクテリウム属菌株および/またはその培養物を含む薬学的組成物
【0084】
他の態様は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療用薬学(的)組成物を提供する。他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせの有効量を炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療を必要とする対象に投与する段階を含む炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療方法を提供する。
【0085】
本出願で、“予防”とは一例による組成物の投与によって疾患(疾病)の発病を抑制または遅延させる全ての行為を意味し、“治療”とは一例による組成物の投与によって疾患の疑心および発病個体の症状が好転するか有利に変更される全ての行為を意味し、“改善”とは、一例による組成物の投与で疾患が治療される状態に関連するパラメータ、例えば、症状の程度を少なくとも減少させる全ての行為を意味することができる。前記疾患は炎症性皮膚疾患を意味することができる。
【0086】
本明細書で、“炎症性皮膚疾患”は脱毛、酒さ(Rosacea)、皮膚の赤み、突起、水ぶくれ、じんましん、かゆみ、皮膚の剥け、発疹、アレルギー性薬物発疹、非アレルギー性薬物発疹(例えば、抗精神病薬、テトラサイクリン、サルファ剤抗生剤、ヒドロクロロチアジド、または非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)による薬物発疹)、スティーブンス-ジョンソン症候群、毒性表皮怪死溶解、結節性紅斑、多形紅斑、毛孔性角化症、乾癬、湿疹、細菌性皮膚炎(例えば、キューティバクテリウム属細菌(例えば、キューティバクテリウム・アクネ、キューティバクテリウム・アビドーム、および/またはキューティバクテリウム・グラニュローサム)による皮膚炎)、ウイルス性皮膚炎、アトピー皮膚炎、注射皮膚炎、およびニキビからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0087】
一例による薬学的組成物は目的組織に到達できる限り投与方法には制限がない。例えば、腹腔投与、腹腔注射、関節腔内注射、動脈注射、静脈注射、経皮投与(例えば、頭皮または皮膚に塗布)、経皮注射、局所塗布、筋肉投与、腹膜内投与のような非経口投与であるか、経口投与であってもよいが、これに制限されるわけではない。また、前記薬学的組成物は活性物質が標的細胞に移動できる任意の装置によって投与できる。
【0088】
一例による薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤または希釈剤を追加的に含むことができる。具体的に、前記薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口型剤形、外用剤、坐剤および滅菌注射液の形態に剤形化して使用できる。前記薬学的組成物に含まれる担体、賦形剤、および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート、および鉱物油が挙げられる。製剤化する場合には通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。経口投与のための固相製剤には錠剤、丸剤、散剤(粉末剤)、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固相製剤は前記組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混合して調製される。また単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。経口投与のための液相製剤としては懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当し、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々の賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としてはプロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤としてはウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用できる。
【0089】
一例による薬学的組成物は薬剤学的に有効な量で投与でき、本出願で、“薬剤学的に有効な量”とは医学的治療または予防に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比率で疾患を治療または予防するに十分な量を意味し、有効容量レベルは疾患の重症度、薬物の活性、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する敏感度、使用された本出願組成物の投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、使用された本出願の組成物と配合または同時使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野によく知られた要素によって決定できる。一例による薬学的組成物は個別治療剤として投与するか他の治療剤と併用して投与でき、従来の治療剤とは順次にまたは同時に投与できる。そして、単一または多重投与できる。前記要素を全て考慮して副作用なく最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要である。
【0090】
一例による薬学的組成物の投与量(キューティバクテリウム属菌株の培養物の乾燥物重量基準)は例えば、哺乳動物に一日間約0.0001~10000mg/kg、0.0001~5000mg/kg、0.0001~1000mg/kg、0.0001~900mg/kg、0.0001~800mg/kg、0.0001~700mg/kg、0.0001~600mg/kg、0.0001~500mg/kg、0.0001~400mg/kg、0.0001~300mg/kg、0.0001~200mg/kg、1~1000mg/kg、1~900mg/kg、1~800mg/kg、1~700mg/kg、1~600mg/kg、1~500mg/kg、1~450mg/kg、1~400mg/kg、1~350mg/kg、1~300mg/kg、1~250mg/kg、10~1000mg/kg、10~900mg/kg、10~800mg/kg、10~700mg/kg、10~600mg/kg、10~500mg/kg、10~450mg/kg、10~400mg/kg、10~350mg/kg、10~300mg/kg、10~250mg/kg、100~1000mg/kg、100~900mg/kg、100~800mg/kg、100~700mg/kg、100~600mg/kg、100~500mg/kg、100~450mg/kg、100~400mg/kg、100~350mg/kg、100~300mg/kg、100~250mg/kg、200~1000mg/kg、200~900mg/kg、200~800mg/kg、200~700mg/kg、200~600mg/kg、200~500mg/kg、200~450mg/kg、200~400mg/kg、200~350mg/kg、200~300mg/kg、または200~250mg/kgで投与することができるが、これに制限されるわけではない。本出願の薬学的組成物の投与頻度は特にこれに制限されないが、1日1回投与するか、または容量を分割して数回投与することができる。前記投与量はいかなる面でも本出願の範囲を限定するのではない。
【0091】
本明細書で提供される薬学的組成物の投与対象は人間、犬、猫、馬、牛、豚、ヤギ、ウサギ、マウス、ラットなどを含む哺乳動物またはこれから分離された細胞、組織、またはその培養物であってもよく、一例で、前記対象は先に説明したような炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療を必要とするか、炎症性皮膚疾患を有する個体(人間などの哺乳動物)またはこれから分離された細胞、組織、またはその培養物であってもよい。
【0092】
一例による薬学的組成物は前記キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを1~80重量%、5~80重量%、5~75重量%、5~70重量%、5~65重量%、50~70重量%、55~65重量%、60~65重量%、10~60重量%、15~60重量%、20~60重量%、1~50重量%、5~50重量%、10~50重量%、15~50重量%、20~50重量%、1~40重量%、5~40重量%、10~40重量%、15~40重量%、20~40重量%、1~30重量%、5~30重量%、10~30重量%、15~30重量%、20~30重量%、1~25重量%、5~25重量%、10~25重量%、15~25重量%、20~25重量%、または23~25重量%で含むことができる。
【0093】
キューティバクテリウム属菌株および/またはその培養物を含む食品組成物
【0094】
また他の態様は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患の予防および/または改善用食品組成物を提供する。前記食品組成物は食品自体であるか、食品に添加される食品添加剤形態であるか、または健康機能食品であってもよい。
【0095】
一例による食品組成物は肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合剤、健康機能食品、および健康食品などを意味することができ、通常の意味での食品を全て含む。
【0096】
前記健康機能食品(functional food)とは、特定保健用食品(food for special health use、FoSHU)と同一な用語で、栄養供給以外にも生体調節機能が効率的に示されるように加工された医学、医療効果の高い食品を意味する。ここで“機能”とは人体の構造および機能に対して栄養素を調節するか生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。本出願の食品は当業界で通常使用される方法によって製造可能であり、前記製造時には当業界で通常添加する原料および成分を添加して製造することができる。また、前記食品の剤形も食品と認定される剤形であれば制限なく製造できる。本出願の食品用組成物は多様な形態の剤形に製造でき、一般薬品とは異なり、食品を原料にして薬品の長期服用時発生することがある副作用などがない長所があり、携帯性に優れて、本出願の食品は炎症性皮膚疾患の予防または改善の効果を増進させるための補助剤として摂取が可能である。
【0097】
前記健康食品(health food)は一般食品に比べて積極的な健康維持や増進効果を有する食品を意味し、健康補助食品(health supplement food)は健康補助目的の食品を意味する。場合によって、健康機能食品、健康食品、健康補助食品の用語は相互互換的に使用できる。
【0098】
具体的に、前記健康機能食品は一例による組成物を飲料、茶類、香辛料、ガム、菓子類などの食品素材に添加するか、カプセル化、粉末化、懸濁液などに製造した食品で、これを摂取する場合、健康上特定の効果をもたらすものを意味するが、一般薬品とは異なり、食品を原料にして薬品の長期服用時発生することがある副作用がない長所がある。
【0099】
一例による食品組成物は、日常的に摂取することが可能であるため、炎症性皮膚疾患の予防または改善に対して高い効果を期待することができるので、非常に有用に使用できる。
【0100】
前記食品組成物は生理学的に許容可能な担体を追加的に含むことができるが、担体の種類は特に制限されず当該技術分野で通常使用される担体であればいずれのものでも使用することができる。
【0101】
また、前記食品組成物は、食品組成物に通常使用されて香、味、視覚などを向上させることができる追加成分を含むことができる。例えば、ビタミンA、C、D、E、B1、B2、B6、B12、ナイアシン(niacin)、ビオチン(biotin)、ホレート(folate)、パントテン酸(pantothenic acid)などを含むことができる。また、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、クロム(Cr)などのミネラルを含むことができる。また、リシン、トリプトファン、システイン、バリンなどのアミノ酸を含むことができる。
【0102】
また、前記食品組成物は、防腐剤(ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸ナトリウムなど)、殺菌剤(さらし粉と高度さらし粉、次亜塩素酸ナトリウムなど)、酸化防止剤(ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)など)、着色剤(タール色素など)、発色剤(亜硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウムなど)、漂白剤(亜硫酸ナトリウム)、調味料(MSGグルタミン酸ナトリウムなど)、甘味料(ズルチン、シクラメート、サッカリン、ナトリウムなど)、香料(バニリン、ラクトン類など)、膨張剤(ミョウバン、D-酒石酸水素カリウムなど)、強化剤、乳化剤、増粘剤(糊料)、被膜剤、ガム基礎剤、泡抑制剤、溶剤、改良剤などの食品添加物(food additives)を含むことができる。前記添加物は食品の種類によって選別され適切な量で使用できる。
【0103】
一例による組成物はそのまま添加するか他の食品または食品成分と共に使用でき、通常の方法によって適切に使用できる。有効成分の混合量はその使用目的(予防、健康または治療的処置)によって適するように決定できる。一般に、食品または飲料の製造時に本出願の食品組成物は食品または飲料に対して50重量部以下、具体的に20重量部以下の量で添加できる。しかし、健康および衛生を目的にして長期間摂取する場合には前記範囲以下の含量を含むことができ、安全性面で何ら問題ないため有効成分は前記範囲以上の量でも使用できる。
【0104】
前記食品組成物の一例で健康飲料組成物として使用でき、この場合、通常の飲料のように様々の香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。前述の天然炭水化物は、ブドウ糖、果糖のようなモノサッカライド;マルトース、スクロースのようなジサッカライド;デキストリン、シクロデキストリンのようなポリサッカライド;キシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールであってもよい。甘味剤は、タウマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤;サッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤などを使用することができる。前記天然炭水化物の比率は、本出願の健康飲料組成物100mL当り一般に約0.01~0.04g、具体的に約0.02~0.03gになり得る。
【0105】
前記以外に、健康飲料組成物は様々の栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸、ペクチン酸の塩、アルギン酸、アルギン酸の塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコールまたは炭酸化剤などを含有することができる。その他に天然果物ジュース、果物ジュース飲料、または野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。このような成分は独立的に、または混合して使用することができる。このような添加剤の比率は大きく重要ではないが、本出願の健康飲料組成物100重量部当り0.01~0.1重量部の範囲で選択されることが一般的である。
【0106】
一例による食品組成物は炎症性皮膚疾患の予防または改善効果を示すことができれば多様な重量%で含むことができるが、例えば、一例による組成物を食品組成物の総重量に対して0.00001~100重量%または0.01~80重量%で含むことができるが、これに制限されない。
【0107】
キューティバクテリウム属菌株および/またはその培養物を含む飼料組成物
【0108】
また他の態様は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患の予防および/または改善用飼料組成物を提供する。
【0109】
本明細書で“飼料”は、動物が食べ、摂取し、消化させるための、またはこれに適当な任意の天然または人工の規定食(diet)、食餌(meal)など、または前記食餌(meal)の成分を意味することができる。
【0110】
本明細書でキューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患の予防および/または改善用飼料組成物は、飼料自体で使用されるか、飼料に添加される飼料添加剤形態で使用できる。
【0111】
前記飼料の種類は特に制限されず、当該技術分野で通常使用される飼料を使用することができる。前記飼料の非制限的な例としては、穀物類、根菜類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、製薬副産物類、油脂類、デンプン類、ユウガオ類または穀物副産物類などのような植物性飼料;タンパク質類、無機物類、油脂類、鉱物性類、単細胞タンパク質類、動物性プランクトン類または飲食物などのような動物性飼料が挙げられる。これらは単独で使用されるか、2種以上を混合して使用できる。
【0112】
前記飼料組成物は、賦形剤、希釈剤、および/または添加剤などをさらに含むことができる。前記飼料組成物は前記構成成分以外にも動物の成長促進に有効な成分、栄養成分、栄養補助成分、保存安定性を高める成分、被服剤成分、疾病予防などのためのアミノ酸剤、ビタミン剤、酵素剤、非タンパク質態窒素化合物、ケイ酸塩剤、緩衝剤、抽出剤、生菌剤;アミラーゼ、リパーゼなどの酵素;L-アスコルビン酸、塩化コリン、イノシトールなどのビタミン;塩化カリウム、クエン酸鉄、酸化マグネシウム、リン酸塩類などのミネラル;リシン、アラニン、メチオニンなどのアミノ酸;フマル酸、酪酸、乳酸などの有機酸またはその塩;ビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化剤、プロピオン酸カルシウムなどのかび防止剤;レシチン、グリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤;および/または色素などを含むことができる。前記に記述されていなくても一例による飼料組成物は通常の技術者が予想することができる範囲内のその他の栄養成分を追加的に含むことができる。
【0113】
一例による組成物を含む飼料を給与することができる個体(動物)は特に制限はないが、哺乳類、魚類、甲殻類および/または貝殻類であってもよく、例えば、豚、牛、馬、ヤギ、鹿、羊、鶏、鴨、ガチョウ、七面鳥、犬、猫、ウサギ、魚であってもよい。
【0114】
前記飼料組成物が飼料添加剤形態で使用される場合、市販される飼料に一例による飼料添加剤を添加した形態として製造できる。一例による飼料添加剤が使用できる飼料は粉末またはペレット剤形、または液相剤形であることが好ましいが、これに制限されるわけではない。また、飼料に添加される本出願の飼料添加剤の添加量は特別な限定を要するのではない。
【0115】
前記飼料は、本出願の組成物を飼料添加剤形態に別に製造して飼料に混合するか、飼料製造時に直接添加して製造することができる。前記飼料内に含まれる本出願の飼料添加剤は液状または乾燥状態であってもよく、例えば、乾燥された粉末形態であってもよい。前記飼料添加剤は全体飼料重量の0.005~10重量%、0.05~10重量%、0.1~10重量%、0.005~5重量%、0.05~5重量%、0.1~5重量%、0.005~2重量%、0.05~2重量%、または0.1~2重量%含まれてもよいが、これに制限されるわけではない。また、前記飼料は前記飼料添加剤以外に飼料の保存性を高めることができる通常の添加剤を追加的に含むことができる。
【0116】
前記飼料添加剤が添加できる飼料は市販される飼料、または穀物類、根菜類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、製薬副産物類、油脂類、デンプン類、ユウガオ類、穀物副産物類、タンパク質類、無機物類、鉱物性類、単細胞タンパク質、動物性プランクトン類、残った飲食物などからなる群より選択できるが、これに制限されるわけではない。
【0117】
キューティバクテリウム属菌株および/またはその培養物を含む抗菌用組成物
【0118】
また他の態様は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患誘発菌に対する抗菌用組成物を提供する。他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせの有効量を炎症性皮膚疾患誘発菌に対する抗菌が必要な対象に適用する段階を含む炎症性皮膚疾患原因菌に対する抑制方法を提供する。他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせの炎症性皮膚疾患誘発菌に対する抗菌用組成物の製造に使用するための用途を提供する。
【0119】
本明細書で“抗菌用組成物”は抗菌活性を有する組成物を意味することができる。前記抗菌活性は前述の通りであり、炎症性皮膚疾患誘発菌の成長を阻害するか、および/または死滅させることなどを意味することができる。前記抗菌活性は抗生活性と相互互換的に使用でき、前記抗菌用組成物は炎症性皮膚疾患の誘発菌に対して成長阻害能および/または死滅能を有する全ての形態の製剤を包括するもので、特別な言及がない限り抗生用組成物、抗菌剤、抗生剤、防腐剤、殺菌剤などと相互互換的に使用できる。
【0120】
前記炎症性皮膚疾患の誘発菌はキューティバクテリウム・アクネ(C.acnes)、キューティバクテリウムアビドーム(C.avidum)、キューティバクテリウム・グラニュローサム(C.granulosum)、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)、バクテロイデス・フラジリス(B.fragilis)、およびスタフィロコッカス・エピデルミディス(S.epidermidis)からなる群より選択される1種以上(1種、2種、3種、4種、5種、または6種全て)であってもよいが、これに制限されない。
【0121】
前記炎症性皮膚疾患は前述の通りであり、例えば、ニキビまたは酒さなどの疾患であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0122】
他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを有効成分として含む消毒剤を提供する。他の例は、前記キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせの消毒剤製造に使用するための用途を提供する。他の例は、前記消毒剤を消毒が必要な対象に適用する段階を含む、消毒方法を提供する。他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを有効成分として含む洗浄剤を提供する。他の例は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせの洗浄剤製造に使用するための用途を提供する。他の例は、前記洗浄剤を洗浄が必要な対象に適用する段階を含む、洗浄方法を提供する。
【0123】
前記消毒剤は病原菌感染を防止するための製剤を総称するもので、一般生活消毒剤、食品および調理場所および設備の消毒剤、養鶏場、畜舎などの建物、家畜、飲水、寝藁、卵トレー、運搬車両、食器などの各種生育用品の消毒などに使用できる。
【0124】
前記抗菌用組成物が炎症性皮膚疾患の誘発菌に対して抗菌効果を有するので、炎症性皮膚疾患の誘発菌に露出されるか露出される可能性がある個体の皮膚表面または身体各部位などを洗浄する用途として適用できる。
【0125】
キューティバクテリウム属菌株および/またはその培養物を含む化粧料組成物
【0126】
また他の態様は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む炎症性皮膚疾患の予防および/または改善用、または皮膚改善用化粧料組成物を提供する。
【0127】
一例による化粧料組成物は化粧料組成物または皮膚外用剤組成物であってもよく、このような化粧料組成物または皮膚外用剤組成物は抗炎症、または皮膚改善活性例えば、皮膚再生活性促進、および/または皮膚保湿活性(機能)強化効果)を有することができる。前記皮膚改善活性は前述の通りである。
【0128】
本明細書で提供される皮膚外用剤組成物または化粧料組成物の剤形には特別な制限がなく、例えば、溶液、懸濁液(無水および水系)、乳濁液(エマルジョン)、ペースト、ゲル、クリーム(水中油滴型、油中水滴型、多重相など)、パウダー、軟膏、パッチ、化粧水、エッセンス、ジェル、ローション、溶液、無水生成物(オイルおよびグリコール系)、マスク、パック、粉末、またはゼラチンなどの被膜があるカプセル(ソフトカプセル、ハードカプセル)剤形または噴霧剤などに剤形化することができる。
【0129】
前記化粧料組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、パウダー、軟膏、パッチ、化粧水、エッセンス、ジェル、ローション、マスク、パック、粉末、カプセル、および噴霧剤からなる群より選択されるいずれか一つの剤形であってもよい。
【0130】
本出願における皮膚は顔だけでなく、頭皮、全身も含まれる概念で、このような頭皮に適用できる皮膚外用剤組成物として、シャンプー、リンス、トリートメント、発毛剤などがあり、全身に適用できるボディークレンザーなどの用途として多様な形態に製造できる。
【0131】
一例で、前記組成物は通常の界面活性剤(乳化剤)を含み、O/W(oil in water;水中油)、W/O(water in oil;油中水)、W/O/W、またはO/W/O剤形の乳化または可溶化形態の性状を有するものであってもよい。前記界面活性剤は皮膚外用剤組成物および/または化粧料組成物の製造に通常使用される全ての界面活性剤のうちから選択された1種以上であってもよく、例えば、非イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。前記非イオン界面活性剤はポリオキシエチレン系界面活性剤、ポリグリセリン系界面活性剤、シュガーエステル系界面活性剤などからなる群より選択された1種以上であってもよく、例えば、ポリグリセリル-メチルグルコースジステアレート、ポリグリセリル-メチルグルコースステアレート、ポリグリセリル-ジステアレート(例えば、ポリグリセリル-10ジステアレートなど)、ポリグリセリル-ステアレート、ハイドロジェネイテッドレシチン、セテアリルオリベート、ソルビタンオリベート、PEG(poly(ethylene glycol))-ステアレート類(例えば、PEG-100ステアレート、PEG-40ステアレートなど)、グリセリルステアレート、グリセリルステアレートエスイ、デシルグルコシド、ココ-グルコシド、ラウリルグルコシド、カプリリル/カプリルグルコシド、アラキジルグルコシド、C12-20(直鎖または分枝型)アルキルグルコシド、セテアリルグルコシド、セテアレス類(例えば、セテアレス-20など)、ステアレス類(例えば、ステアレス-2、ステアレス-21、など)、オレイルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(例えば、オレス-20、など)、メチルグルコースセスキステアレート、ソルビタンステアレート、スクロースココエート、ポリソルベート類(例えば、ポリソルベート60など)、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンオリベート、アブラヤシオイル、アブラヤシカーネルオイルなどからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。陰イオン界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸アンモニウム、ソジウムココアンポアセテート、アンモニウムラウレススルフェート、アンモニウムラウリルスルフェート、コカミドMEA、ジソジウムラウレススルホサクシネート、TEA-ココイルグルタメート、ソジウムココイルリンゴアミノ酸、コカミドDEA、ソジウムラウレススルフェート、ソジウムラウリルスルフェート、ポタシウムココイルグリシネート、ソジウムステアロイルグルタメート、ポタシウムセチルホスフェートなどからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0132】
前記皮膚外用剤組成物および/または化粧料組成物は、キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせ以外に、皮膚に適用するために通常含まれる成分、オイル、ポリマー、増粘剤、添加剤などからなる群より選択される1種以上を含むものであってもよい。前記通常含まれる成分およびこれらの含量は目的とする組成物の機能、性状などによって適切に調節できる。
【0133】
例えば、前記オイルは、シリコンオイル、例えば、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、ジメチコノール、シクロメチコン、トリシロキサン、アモジメチコン、フェニルトリメチコン、ジシロキサン、シクロヘキサシロキサン、PEG-ジメチコン類(例えば、PEG-12ジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-7ジメチコンなど)、ポリシリコン類(例えば、ポリシリコン-11など)、シメチコン、ジフェニルジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンなどからなる群より選択された1種以上;非シリコンオイル、例えば、カプリリック/カプリックトリグリセリド、ブチレングリコールジカプリレート/ジカプレート、ハイドロジェネイテッドポリイソブテン、イソプロピルミリステート、セチルエチルヘキサノエート、ハイドロジェネイテッドポリデセン、ジエトキシエチルサクシネート、ヘキシルラウレート、トリエチルヘキサノイン、イソノニルイソノナノエート、ポリイソブテンなどからなる群より選択された1種以上;トリグリセリド;ワックスなどからなる群より選択された1種以上であってもよい。前記ポリオールはブチレングリコール、グリセリン、グリセレス(例えば、グリセレス-26など)、メチルプロパンジオール、PEG(poly(ethylene glycol))/PPG(poly(propylene glycol))コポリマー類(例えば、PEG/PPG-17/6コポリマーなど)、メチルグルセス類(例えば、メチルグルセス-20など)、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、カプリリルグリコール、ペンチレングリコールなどからなる群より選択された1種以上であってもよい。前記増粘剤はカルボマー、アンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/VPコポリマー、キサンタンガム、ソジウムポリアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、ソジウムポリアクリレート、ソジウムアクリレート/ソジウムアクリロイルジメチルタウレートコポリマー、マグネシウムアルミニウムシリケート、ソジウムカルボマーなどからなる高分子化合物のうちから選択された1種以上であってもよい。前記添加剤は皮膚外用剤および/または化粧料の製造に通常使用される、イオン封鎖剤、乳化安定剤、pH調節剤、皮膚コンディショニング剤、香料、防腐剤、殺菌剤、酸化安定化剤、酸化防止剤、フリーラジカル消去剤、不透明化剤、安定化剤、エモリエント(emollient)、ビタミン、昆虫忌避剤、保存剤、消炎剤、塩基性化または酸性化剤、着色剤(顔料)、溶解剤、担体などからなる群より選択された1種以上を含むものであってもよいが、これに制限されない。
【0134】
前記組成物は皮膚外用剤および/または化粧料組成物製造に通常使用される溶剤を含むことができ、使用可能な溶剤は精製水、岩盤水、温泉水、氷河水、海水、深層海洋水、植物抽出水などからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0135】
前記組成物は前述の成分以外にスキン(皮膚)ケアおよび/または毛髪/頭皮ケアに有利な効果を発揮する活性成分を追加的に含むことができる。例えば、前記有利な効果は皮膚美白、皮膚弾力改善、皮膚シワ改善、皮膚老化防止、皮膚水分供給、皮膚保湿、皮膚栄養供給、毛穴縮小、皮膚の肌理改善、角質除去、皮膚ボリューム改善、頭皮保護、頭皮または皮膚の皮脂防止、脱毛防止、毛髪水分供給、毛髪栄養供給、毛髪ボリューム改善などを意味することができるが、これに制限されるわけではなく、適用対象の皮膚/毛髪/頭皮で所望する全ての効果であってもよい。例えば、前記活性成分は各種植物抽出物(例えば、知母抽出物、緑茶抽出物、ブドウ抽出物、ハスの花抽出物、トマト抽出物、金銀花抽出物、椿の花抽出物、海藻類抽出物など)、植物カルス培養物または培養抽出物、酵母抽出物、細胞含有または無細胞酵母培養物または培養抽出物、ビタミン、各種ペプチド、脂質、または脂肪酸(例えば、各種魚貝類由来の脂質、脂肪酸、ペプチドなど)ヒアルロン酸、グリコシド(例えば、アルブチンなど)、以外の各種皮膚用化合物などからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるわけではなく、所望する効果によって適切な活性成分を選択して使用することができる。一例で、前記活性成分は水素添加ポリイソブテン(hydrogenated polyisobutene)と知母抽出物の混合物であってもよいが、これに制限されない。
【0136】
他の例は前記皮膚外用剤組成物または化粧料組成物を含む製品を提供する。前記製品は皮膚、毛髪、および/または頭皮ケア用製品であってもよく、例えば、顔、手、足、全身などの皮膚、頭皮、毛髪などに適用するための全ての形態の化粧品および/または洗浄用(クレンジング)製品であってもよい。一例で、前記製品は、スキン、ローション、クリーム、エッセンス、パック、ファンデーション、色調化粧品、サンクリーム(紫外線遮断剤)、ビービークリーム、ツーウェイケーキ、フェースパウダー、コンパクト、メーキャップベース、スキンカバー、アイシャドウ、リップスティック、リップグロス、リップフィックス、アイブロウペンシル、化粧水などの化粧品;およびシャンプー、石鹸、クレンジングフォーム、ボディークレンザーなどの洗浄用製品などからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0137】
本明細書で提供するキューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む組成物(薬学的組成物、化粧料組成物、食品組成物、飼料組成物、および/または抗菌用組成物)および方法の投与対象は人間、犬、猫、馬、牛、豚、ヤギ、ウサギ、マウス、ラットなどを含む哺乳動物またはこれから分離された細胞、組織、またはその培養物であってもよく、一例で前記対象は先に説明したような炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療を必要とするか、炎症性皮膚疾患を有する個体(人間などの哺乳動物)またはこれから分離された細胞、組織、またはその培養物であってもよい。
【発明の効果】
【0138】
本出願はキューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせの炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療用途に関するものであって、前記キューティバクテリウム属菌株、前記菌株の培養物、またはこれらの組み合わせを含む組成物は炎症性皮膚疾患の予防、改善、および/または治療効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
図1】本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651、CJRS-10652、CJRS-10653、CJRS-10654、CJRS-10655、およびCJRS-10656菌株;以下、同一である。)の溶血活性による毒性有無を確認するために溶血性試験を行った結果である。
図2a】本出願で選別したリボタイプ(Ribotype)がRT2である6つの菌株が有する共通的な遺伝的な特徴を確認するために系統樹(phylogenetic tree)形態に示したグラフである。
図2b】本出願で選別したリボタイプ(Ribotype)がRT2である6つの菌株が有する共通的な遺伝的な特徴を確認するために系統樹(phylogenetic tree)形態に示したグラフである。
図3】本出願で選別した6つの菌株の培養物を処理した時、対照群(細胞のみ w/刺激(Cell only w/ stimuli);炎症反応のみ誘導した群)、陽性対照群(炎症反応誘導後Dex処理群)、陰性対照群(炎症反応後植物性共培地(ブロス(broth))処理群)および比較群(炎症反応誘導後タイプI(ATCC 6919)、Type II(ATCC 11828)、タイプI(CJIN1-1)、タイプI(CJIN1-2)、タイプII(CJIN2-1)、タイプII(CJIN2-2)、タイプIII(CJIN3-1)、B.fragilisおよびS.epidermidisの培養物処理群)と比較して、免疫細胞で免疫反応(免疫細胞の増殖(proliferation)およびIL-6、CCL2、およびTNF-aの発現量)を確認したグラフである。
図4】本出願で選別した6つの菌株の培養物を処理した時、対照群(細胞のみ w/刺激(Cell only w/ stimuli);炎症反応のみ誘導した群)、陽性対照群(炎症反応誘導後Dex処理群)、陰性対照群(炎症反応後植物性共培地(ブロス)処理群)および比較群(炎症反応誘導後タイプI(ATCC 6919)、Type II(ATCC 11828)、タイプI(CJIN1-1)、タイプI(CJIN1-2)、タイプII(CJIN2-1)、タイプII(CJIN2-2)、タイプIII(CJIN3-1)、B.fragilisおよびS.epidermidisの培養物処理群)と比較して、免疫細胞で免疫反応(免疫細胞の増殖(proliferation)およびIL-6、CCL2、およびTNF-aの発現量)を確認したグラフである。
図5】本出願で選別した6つの菌株の培養物それぞれのニキビ誘発菌株であるC.acnes(ATCC 6919)に対する抗菌活性(antimicrobial activity)を確認したグラフである。(NC:何も処理していない、Doxy:陽性対照群としてドキシサイクリン(doxycycline)を処理した群)
図6】本出願で選別した6つの菌株の培養物それぞれの細菌(S.epidermidis)のバイオフィルム(biofilm)形成抑制効果を確認したグラフである。(NC:何も処理していない、Doxy:陽性対照群としてドキシサイクリン(doxycycline)を処理した群)
図7】本出願で選別した6つの菌株の培養物それぞれを濃度別(5%(v/v)、10%(v/v)、20%(v/v))に処理した時の細胞毒性効果を確認したグラフである。
図8a】本出願で選別した6つの菌株の培養物をそれぞれ処理した時、皮膚効能(皮膚細胞再生効能)を確認した図およびグラフである(傷後0時間、4時間後および8時間後)。
図8b】本出願で選別した6つの菌株の培養物をそれぞれ処理した時、皮膚効能(皮膚細胞再生効能)を確認した図およびグラフである(傷後0時間、4時間後および8時間後)。
図9】本出願で選別した6つの菌株の培養物をそれぞれ処理した時、皮膚再生関連マーカであるSrc、MMP2(メタロプロテイナーゼ-2(metalloproteinase-2))の発現量と、皮膚保湿関連マーカであるHAS3(ヒアルロン酸シンターゼ3(Hyaluronic acid Synthase 3))とAQP3(Aquaporin 3)の発現量を確認したグラフである。
図10】本出願で選別した6つの菌株の培養物をそれぞれ処理した時、皮膚再生関連マーカであるSrc、MMP2(メタロプロテイナーゼ-2(metalloproteinase-2))の発現量と、皮膚保湿関連マーカであるHAS3(ヒアルロン酸シンターゼ3(Hyaluronic acid Synthase 3))とAQP3(Aquaporin 3)の発現量を確認したグラフである。
図11】本出願で選別した6つの菌株(生菌)をRaw264.7大食細胞を共に培養してRaw264.7大食細胞が分泌する炎症性サイトカイン(IL-6)と抗炎症性サイトカイン(IL-10)の分泌量をIL-10/IL-6の比率で計算してグラフで示したものである。(対照群としてB.fragilis菌株を使用した。)
図12】本出願で選別した2つの菌株(CJRS-10652菌株およびCJRS-10653菌注)の培養物をそれぞれ処理した時、免疫細胞の増殖と炎症性サイトカイン(IL-6およびIL-8)の発現量を確認したグラフである。(陽性対照群:デキサメタゾン(Dex)を使用した群)
図13】本出願で選別した2つの菌株(CJRS-10652菌株およびCJRS-10653菌注)の培養物をそれぞれ処理した時、免疫細胞の増殖と炎症性サイトカイン(IL-6およびIL-8)の発現量を確認したグラフである。(陽性対照群:デキサメタゾン(Dex)を使用した群)
図14a】本出願で選別した2つの菌株(CJRS-10652菌株およびCJRS-10653菌注)の培養物をそれぞれ酒さが誘導されたマウスに腹腔投与した時、皮膚紅斑、上皮組織過形成および皮膚炎症の程度を確認したグラフおよび写真である。(ビヒクル(Vehicle):何も処理していない対照群、LL37:LL37ペプチドを処理して酒さ病変を誘導した群、Doxy:陽性対照群として、病変を誘導したマウスにドキシサイクリン(doxycycline)を腹腔投与した群)
図14b】本出願で選別した2つの菌株(CJRS-10652菌株およびCJRS-10653菌注)の培養物をそれぞれ酒さが誘導されたマウスに腹腔投与した時、皮膚紅斑、上皮組織過形成および皮膚炎症の程度を確認したグラフおよび写真である。(ビヒクル(Vehicle):何も処理していない対照群、LL37:LL37ペプチドを処理して酒さ病変を誘導した群、Doxy:陽性対照群として、病変を誘導したマウスにドキシサイクリン(doxycycline)を腹腔投与した群)
図15】本出願で選別した2つの菌株(CJRS-10652菌株およびCJRS-10653菌注)の培養物をそれぞれ酒さが誘導されたマウスに腹腔投与した時、皮膚紅斑、上皮組織過形成および皮膚炎症の程度を確認したグラフおよび写真である。(ビヒクル(Vehicle):何も処理していない対照群、LL37:LL37ペプチドを処理して酒さ病変を誘導した群、Doxy:陽性対照群として、病変を誘導したマウスにドキシサイクリン(doxycycline)を腹腔投与した群)
図16】皮膚モデルT&R HuSkinに本出願で選別した菌株培養物を処理して障壁改善指標であるフィラグリン(filaggrin)および保湿改善指標であるアクアポリン-3(aquaporin-3)の発現量を確認した結果である。
図17】皮膚モデルT&R HuSkinに本出願で選別した菌株培養物を処理して障壁改善指標であるフィラグリン(filaggrin)および保湿改善指標であるアクアポリン-3(aquaporin-3)の発現量を確認した結果である。
図18】ヒト線維芽細胞に本出願で選別した菌株培養物を処理して細胞毒性有無およびコラーゲン生成機能を確認した結果である。
図19】ヒト線維芽細胞に本出願で選別した菌株培養物を処理して細胞毒性有無およびコラーゲン生成機能を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0140】
以下、本発明を以下の実施例によってより具体的に説明する。しかし、これらは本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されるわけではない。
【実施例
【0141】
実験例1.菌株確保
【0142】
1)被試験者選定
満18歳以上39歳以下の健康な成人男女73人を対象にして(シーアルエーコリア社を人体皮脂採取委託機関と選定、IRB承認(承認番号:CRAIRB20-030502)本試験を行った。
【0143】
2)皮膚皮脂採取
水で軽く洗顔後、滅菌水をガーゼに濡らして鼻を軽くぬぐい取った。暖かい水に濡らした滅菌ガーゼを約5分間鼻に上げておいて待った。瞬間接着剤(シアノアクリレート(Cyanoacrylate))1滴をテープに付けた後、約10秒間待った。テープを鼻に適用後、1分間待った後に皮脂を抽出した(SSB、皮膚表面生検(Skin Surface Biopsy))。皮脂が付いたテープを1.5ml e-tube(グリセロール(glycerol) 50%+RCM(強化クロストリジア培地(Reinforced Clostridial Medium)、BD Difco)50%)に入れて、皮膚皮脂サンプルを採取した。
【0144】
3)皮膚菌株培養および確保
前記皮脂サンプルをPBSに希釈した(10~10)後、RCM寒天プレート(agar plate)にstreaking後、嫌気ガスパックジャー(anaerobic gas pack jar)に入れて37℃で96時間培養した。個別plate当り10~20個のシングルコロニー(single colony)をRCMブロスに入れて24時間anaerobic gas pack jar(37℃)で活性化させた。24時間後、fresh RCMブロスにサンプルの1%を接種した後、anaerobic gas pack jarに入れて37℃で48時間培養して総1735個のヒト皮膚由来菌株を確保した。確保された菌株を下記表1に記載されたprimerを用いて16S rRNAとRecAシーケンシングを行い、シーケンシングに基づいて166個の特異的なC.acnes菌株を選別した。大食細胞基盤の増殖および炎症指標(IL-6、CCL2、TNF-α)抑制試験を通じて6つの特異的なC.acnes菌株を選別した。
【0145】
本出願で選別した6つの菌株であるCJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、およびCJRS-10656菌株は共通的に配列番号8の16S rRNAを含むことが確認された。確保された菌株のシーケンスタイプ(Sequence type)、リボタイプ(Ribotype)、および免疫学的表現型(Immunological phenotype)を確認してこれを下記表2に示した。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
確保されたC.acnes菌株のシーケンスタイプ(Sequence type)およびリボタイプ(Ribotype)は下記実施例2-2のeMLST分析結果によって分類し、Immunological phenotypeは下記実施例3-3の免疫指標分析結果によって分類した。
【0149】
前記表2に示されているように、本出願で選別した6つの菌株であるCJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、およびCJRS-10656菌株はSequence typeがタイプII、リボタイプ(Ribotype)がRT2、Immunological phenotypeが有効である特徴を共通的に有することが確認された。
【0150】
実験例2.培養物確保
前記表2に示された菌株、および比較群として使用されるB.fragilis(Bacteroides fragilis、バクテロイデスフラジリス、KCTC5013)菌株、およびS.epidermidis(Staphylococcus epidermidis、スタフィロコッカスエピデルミディス、表皮ブドウ球菌、KCTC3958)菌株をそれぞれ48時間RCM培地(BD Difco)または植物性培地(下記表3に植物性培地の組成を示した)で培養した後、遠心分離機(4000g、20分、常温)を使用して遠心分離して菌株を除いた培養物(Cell free supernatant)を確保した。
【0151】
【表3】
【0152】
前記確保された培養物のpHをNaOHを用いてpH7に調整した後、培養物を0.22μmポアサイズフィルターでろ過し、3kDa amicon filterを通じて3kDa以下にろ過された培養物を得て、これを最終試験物質として調製した。
【0153】
以下の実施例で、炎症反応を誘導するための物質として前記表2のC.acnes(ATCC 6919)菌株の培養物をpH7に調整した後、0.22μmポアサイズフィルターでろ過された培養物を調製して使用した。
【0154】
実施例1.皮膚由来菌株の溶血活性試験
本出願で選別した6つの皮膚由来菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、およびCJRS-10656菌注)の溶血活性による毒性有無を確認するために溶血性試験を行った。
【0155】
RCMブロスで活性化させた前記皮膚由来菌株をそれぞれヒツジ血液寒天培地(sheep blood agar)に塗抹して嫌気チャンバー(anaerobic chamber)で37℃で48時間培養した。コロニークラスター周囲に赤血球が溶解されて透明帯(clear zone)が生成されるか確認し、これを図1に示した。
【0156】
図1に示されているように、試験結果、本出願で選別した全ての菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、およびCJRS-10656菌注)に対して溶血性を示さなくて、本出願で選別した菌株は安全なものと判断された。
【0157】
実施例2.選別された菌株遺伝子分析
【0158】
実施例2-1.菌株の系統学的特徴(phylogenetic feature)確認。
C.acnesは種内菌株間(intraspecies level)ゲノムの差が大きいと知られている。実際に種内菌株間のゲノムの差が大きいため、現在は同じC.acnes種に分類されているが、タイプIはC.acnes亜種acnesに、タイプIIはC.acnes亜種defendensに、タイプIIIはC.acnes亜種elongatumに再分類(reclassification)されなければならないと提案される。これらタイプ(type)も16S rDNA配列が異なり、様々の多様な人々の皮膚メタゲノム(metagenome)の相対的存在量(relative abundance)によって様々のリボタイプ(ribotype;RT)に分けられると知られている。
【0159】
実験例1で製造された菌株のリボタイプ(ribotype;RT)を各菌株の全ゲノムシーケンス解析(Whole Genome Sequencing;WGS)を通じて確認した(このような結果を前記表2に示した)。本出願で選別したリボタイプがRT2である6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、およびCJRS-10656菌注)と、NCBIゲノムサイト(genome site)から確保したリボタイプがRT2である37個の菌株(リファレンス(reference)菌株)の全ゲノムデータを用いて、roary tool基盤でコア遺伝子(core gene)とアクセサリー遺伝子(accessory gene)を求めた。全ゲノムの配列を用いてphylogenetic featureを確認した後、MUSCLE algorithmを用いてアラインメント(alignment)を行い、最尤(maximum likelihood)方法でツリー(tree)形状を表現してこれを図2aおよび図2bに示した。即ち、コア遺伝子セット(core gene set)を用いて系統樹(phylogenetic tree)を描いてcore geneとaccessory gene setを含んでマトリクス(matrix)形態の図で図2aおよび図2bに示した。エッジ(edge)にあるスコア(score)はブートストラップ(bootstrap)を10,000回反復時出た信頼値である。本出願で選別した6つの菌株は図2aに赤色ボックス内に赤色文字で記載し左矢印で表示し、reference菌株は黒色で記載した。
【0160】
図2bで、菌株が有している遺伝子クラスタ(gene clusters)を青色で表示した。
【0161】
図2bから確認できるように、リボタイプがRT2であるreference菌株(図2aで、赤色ボックスに含まれていない残りの菌株)は特定遺伝子クラスタ(gene clusters)を有しているが、本出願で分離した6つの菌株は前記のような特定遺伝子クラスタがないことを確認した(このような部分を図2bで上矢印で表示した)。
【0162】
図2aで赤色ボックスに含まれている菌株のうちの黒色で表示されたJCM18920菌株は、図2bから確認できるように、本出願で分離した6つの菌株と比較して追加的なaccessory geneを有していた。このような点はJCM18920菌株が本出願で分離した6つの菌株と異なる様子を有しているものであるのを示し、本出願で分離した6つの菌株と異なるものであるのを確認した(このような部分を図2bで下矢印で表示した)。
【0163】
実施例2-2.菌株のeMLST(Expanded Multi-locus Sequence Typing)分析
追加的に、前記NCBI genome siteから確保したリボタイプがRT2である37個の菌株(reference菌注)と本出願で選別したリボタイプがRT2である6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、およびCJRS-10656菌株)を比較するためにeBURSTv3 program(http://eburst.mlst.net/default.asp)を用いてeMLST分析を行った(Dreno et al.2018)。eMLST分析はC.acnes菌株に保存されて(conserved)いながら16S rRNA配列よりphylogenetic resolutionを向上させた遺伝子の配列を用いて分離することである。遺伝子の配列多様性(sequence variation)によって特定のSequence type(ST)に分けられ、分けられたSTは頻度(frequency)によって下記表4のように特定のclonal complex(CC)にグルーピングされた。STは配列の多様性に基づいて分ける方法であり、CCは分けられたSTを配列の差を用いて一つのクラスタに分類する方法である。下記の表4は選別されたRT2 C.acnesのeMLST分析を通じたSequence type(ST)およびclonal complexを示す。
【0164】
【表4】
【0165】
上記表4から確認できるように、本出願で選別した6つの菌株は、eMLST分析結果、ST(Sequence type)が69または153であることが確認された(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、およびCJRS-10656菌株の場合、STが69、CC(clonal complex)がCC72(タイプII)、CJRS-10653菌株の場合、ST 153、CCはNA(確認されない))。
【0166】
ST 69とST 153の差はhemolytic factor関連遺伝子であるcamp2のシングルヌクレオチド配列(single nucleotide sequence)差と確認されてその差が微弱であるので、ST 153と確認されたCJRS-10653菌株のCCはCJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、およびCJRS-10656菌株のCCであるCC72(タイプII)と近いと判断することができる。
【0167】
eMLST分析結果、本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、およびCJRS-10656菌注)と類似のeMLST分布を有している菌株としてC.acnes JCM 18920およびC.acnes CA17菌株と確認されたが、以下のような理由で本出願で選別した6つの菌株はC.acnes JCM 18920菌株およびC.acnes CA17菌株と異なることが確認された。
【0168】
C.acnes JCM 18920菌株は前記実施例2-1でも確認したように、本出願で選別した6つの菌株とは異なり、追加的なaccessory geneを有していると確認されて、本出願で選別した6つの菌株と異なるのを確認した。
【0169】
本出願で選別した6つの菌株がC.acnes CA17菌株と異なる点を確認するためにC.acnes CA17菌株のゲノム比較を実施した。本出願で選別した6つの菌株とC.acnes CA17菌株のWGSとゲノム配列アラインメント(genome sequence alignment)結果を通じて確認した結果、4番scaffoldに1-3467領域のプラスミドがC.acnes CA17菌株にのみ特異的に存在することを確認した。前記領域をBLASTを通じてヌクレオチド配列データベース(nucleotide sequence database)(GenBank、EMBL、DDBJ、PDB、そしてRefSeq)とマッチングした結果、前記領域はSalmonella enterica菌株に由来したプラスミド配列(plasmid sequence)と確認された。即ち、C.acnes CA17菌株はSalmonella enterica菌株に由来したプラスミド(plasmid)があるので、本出願で選別した6つの菌株と異なることを確認した。
【0170】
実施例2-3.菌株のオルソログ遺伝子(Orthologous Gene)分析
本出願で選別したリボタイプがRT2である6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、およびCJRS-10656菌注)のorthologous geneをOrthofinderを通じて分析した。
【0171】
BLASTPを用いて特定閾値(thresholds)(同一性(identity)>40%そしてカバレッジ(coverage)>80%)を通じた菌株特異的に存在する遺伝子を選別し、機能不明のタンパク質(hypothetical protein)や特定ファミリーのタンパク質(family protein)としてアノテーション(annotation)がよくされていない遺伝子は除いた。また、菌株特異的な文献調査を実施し、C.acnesと免疫表現型に関連した文献で言及された遺伝子を中心にしてカテゴリー(category)を分けて整理した。このような結果中の一部を下記表5に示した。
【0172】
【表5】
【0173】
(選別(Selected):本出願で選別したリボタイプがRT2である6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、およびCJRS-10656菌注);ATCC 11828:既存のリボタイプがRT2である菌株(reference))
【0174】
上記表5に示されているように、本出願で選別したリボタイプがRT2である6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、およびCJRS-10656菌株)は既存の明らかになったリボタイプがRT2である菌株(対照群、ATCC 11828菌注)と異なることを確認した。
【0175】
即ち、本出願で選別したリボタイプがRT2である6つの菌株はATCC 11828菌株と異なり、Lrp/AsnC系転写調節因子(Lrp/AsnC family transcriptional regulator;NCBI Reference Sequence:WP_002531510.1)またはこれをコードする遺伝子、およびラクトコシン972系バクテリオシン(lactococcin 972 family bacteriocin;NCBI Reference Sequence:WP_070651130.1)またはこれをコードする遺伝子を含むことが確認された。
【0176】
また、本出願で選別したリボタイプがRT2である6つの菌株はATCC 11828菌株と異なり、ベータ-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase;NCBI Reference Sequence:WP_002518535.1)またはこれをコードする遺伝子を含まないことが確認された。前記ベータ-グルクロニダーゼは胆嚢から出る胆汁を凝集(aggregation)させて結石を作るものであることがよく知られており、大腸癌(colon cancer)を誘発することが知られている。
【0177】
また、本出願で選別したリボタイプがRT2である6つの菌株はATCC 11828菌株と異なり、2-イソプロピルリンゴ酸合成酵素(2-isopropylmalate synthase;NCBI Reference Sequence:WP_142263178.1)またはこれをコードする遺伝子、および3-イソプロピルリンゴ酸脱水酵素(3-isopropylmalate dehydratase;NCBI Reference Sequence:WP_002513330.1)またはこれをコードする遺伝子を含まない(L-ロイシン経路(L-Leucine pathway)が欠失(deletion)された)ことが確認された。
【0178】
また、本出願で選別したリボタイプがRT2である6つの菌株はATCC 11828菌株と異なり、タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cse1/CasA(type I-E CRISPR-associated protein Cse1/CasA;NCBI Reference Sequence:WP_002514606.1)またはこれをコードする遺伝子、タイプI-E CRISPR-関連タンパク質Cas7/Cse4/CasC(type I-E CRISPR-associated protein Cas7/Cse4/CasC;NCBI Reference Sequence:WP_002514608.1)またはこれをコードする遺伝子、およびCRISPR-関連ヘリカーゼ/エンドヌクレアーゼCas3(CRISPR-associated helicase/endonuclease Cas3;NCBI Reference Sequence:WP_002514605.1)またはこれをコードする遺伝子を含まないことが確認された。
【0179】
実施例3.免疫指標分析
本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物に対する免疫細胞(Raw264.7大食細胞)の免疫指標を確認した。
【0180】
実施例3-1.免疫細胞培養
本実験に使用した免疫細胞はRaw264.7(KCLB 40071)大食細胞を使用した。本実験に入る一週間前にRaw264.7大食細胞をFBS 10%(v/v) DMEMに培養および維持した。実験18時間前にRaw264.7大食細胞を5×10/ウェルで平底96ウェルプレート(flat bottom 96 well plate)に蒔種(seeding)した。
【0181】
実施例3-2.菌株培養物と免疫細胞との共培養(co-culture):
Raw264.7大食細胞に炎症反応を誘導するためにRaw264.7大食細胞に実験例2で製造された病原菌(pathogen)C.acnes(ATCC 6919)菌株の培養物を5μl/ウェルで処理しRPMI Media(gibco)95ulを入れて総100μlを37℃インキュベーターで1時間処理した。炎症反応誘導時、正常細胞(図3の一番左側、Cell only)グループを除いた全てのグループに病原菌(pathogen)C.acnes(ATCC 6919)菌株の培養物を5μl/ウェルで処理して炎症刺激を与えた。
【0182】
1時間後、実験例2で製造された菌株の培養物(20μl)とfresh RPMI Media(80μl)を加えて総100μlを炎症誘導物質である病原菌(pathogen)C.acnes(ATCC 6919)菌株の培養物で処理されたプレートに追加して(総200μl/ウェル)総24時間37℃インキュベータで培養した。
【0183】
即ち、Raw264.7大食細胞に免疫反応を誘導するためにC.acnes(ATCC 6919)菌株の培養物を処理し、その後、多様な菌株の培養物を処理し免疫指標を確認してその結果を図3および図4に示した。
【0184】
陽性対照群(Positive control)としてはデキサメタゾン(dexamethasone、sigma)(100nM)(図3のDex)を使用した。陰性対照群(negative control)としては植物性共培地(図3のブロス)またはfresh RPMI Media(gibco)を入れた正常細胞(Cell only)を使用した。
【0185】
実施例3-3.免疫指標分析
24時間後、上澄み液(cultured supernatant)を全て確保して残ったRaw264.7大食細胞の生存率(viability)および増殖(proliferation)程度を確認するためにcell counting kit 8(Enzo、5μl/ウェル)+fresh RPMI media(95μl)を処理して37℃インキュベータで2時間反応した後、450nmで吸光度を測定した。
【0186】
確保された上澄み液(supernatant)を用いてRaw264.7大食細胞で分泌された炎症性サイトカイン(IL-6(interleukin 6、インターロイキン6)、CCL2(C-C Motif Chemokine Ligand 2、ケモカインリガンド2)、TNF-α(腫瘍壊死因子アルファ(tumor necrosis factor alpha)))の量をELISAを通じて測定した。Raw264.7大食細胞を使用して菌株のタイプ別に前記炎症性サイトカインレベルの減少およびRaw264.7大食細胞の増殖(proliferation)抑制程度を確認してこれを図3、および図4に示し、炎症抑制機能の程度によって有効または非有効菌株と表記した(有効/非有効結果は前記表2に示した)。
【0187】
図3の上側グラフおよび図4に示されているように、正常細胞(Raw264.7大食細胞に何も処理していない;Cell only)は炎症性サイトカインが分泌されなかったが、Raw264.7大食細胞に病原菌(pathogen)C.acnes(ATCC 6919)菌株の培養物を処理して炎症反応を誘導した場合(Cell only w/stimuli)炎症性サイトカイン(IL-6、CCL2、TNF)が大きく増加した。陽性対照群として、Raw264.7大食細胞に病原菌(pathogen)C.acnes(ATCC 6919)菌株の培養物で炎症反応を誘導しデキサメタゾン(Dex)を処理した場合、炎症性サイトカインの量が減少したことを確認した。陰性対照群としてRaw264.7大食細胞に病原菌(pathogen)C.acnes(ATCC 6919)菌株の培養物で炎症反応を誘導し植物性共培地(ブロス)を処理した場合、炎症反応が減少しなかった。
【0188】
本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物をそれぞれ処理した場合には病原菌(pathogen)C.acnes(ATCC 6919)菌株の培養物で炎症反応が誘導されて増加した炎症性サイトカイン(IL-6、CCL2、TNF)の分泌量を顕著に減少させ、このような結果は陽性対照群であるデキサメタゾン(Dex)を使用した場合の効果と同等であるかそれ以上に炎症性サイトカインの分泌量を減少させるのであることを確認した。
【0189】
他の種類のキューティバクテリウム属菌株(ATCC 6919、ATCC 11828、CJIN1-1、CJIN1-2、CJIN2-1、CJIN2-2、CJIN3-1)または他の細菌(B.fragilisまたはS.epidermidis)の培養物を処理した場合には本出願で選別した6つの菌株の培養物をそれぞれ処理した場合と相反して、病原菌(pathogen)C.acnes(ATCC 6919)菌株の培養物で炎症反応が誘導されて増加した炎症性サイトカイン(IL-6、CCL2、TNF)の分泌量に変化がないか、むしろさらに大きく増加することを確認した。
【0190】
図3の下側グラフは、正常細胞(Raw264.7大食細胞に何も処理していない;Cell only)を基準にして、炎症反応を誘発するRaw264.7大食細胞の増殖程度を%で示したものである。図3の下側グラフに示されているように、Raw264.7大食細胞に病原菌(pathogen)C.acnes(ATCC 6919)菌株の培養物を処理して炎症反応を誘導した場合(Cell only w/stimuli)炎症反応を誘発するRaw264.7大食細胞の増殖が増加した。
【0191】
本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物をそれぞれ処理した場合にはRaw264.7大食細胞の増殖がRaw264.7大食細胞に何も処理していない場合と同等であるかそれ以下に減少したことを確認した。
【0192】
実施例4.ニキビ誘発菌株C.acnes(ATCC 6919)成長阻害効果
本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物のニキビ誘発菌と知られたC.acnes(ATCC 6919)に対する抗菌活性を確認した。陽性対照群としてドキシサイクリン(doxycycline)(0.025μg/ml)を使用した。
【0193】
前記菌株の培養物濃縮液をRCM brothに希釈して96-ウェルプレートに添加した後、C.acnes ATCC 6919菌株をRCMブロスを用いて10^6CFU/mLまで希釈して96-ウェルプレートに10%(v/v)接種した。菌株接種後、嫌気チャンバー(anaerobic camber)で48時間37℃環境で培養した後、600nmで吸光度を測定し、その結果を図5に示した。
【0194】
図5は、ATCC 6919菌株に何も処理していない場合(陰性対照群(Negative Control);NC)を基準にして成長阻害効果を%で(抗菌活性(antimicrobial activity)(阻害の%(% of inhibition)))で示したグラフである。
【0195】
図5に示されているように、陽性対照群としてドキシサイクリン(Doxy)を処理した場合、C.acnes ATCC 6919菌株の成長が低下したことを確認した。本出願で選別した6つの菌株の培養物をそれぞれ処理した場合にもC.acnes ATCC 6919菌株の成長が低下し、このような結果は陽性対照群であるドキシサイクリン(Doxy)を使用した場合の効果と同等であるかそれ以上であったのを確認した。
【0196】
実施例5.バイオフィルム(Biofilm)形成抑制
本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物がS.epidermidis細菌のバイオフィルム(biofilm)形成を抑制することを確認した。陽性対照群としてドキシサイクリン(doxycycline;Doxy)(4μg/ml)を使用した。
【0197】
96-ウェル細胞培養プレートにS.epidermidis細菌を1×10CFU/mLで24時間培養して付着させた後、何も処理しないか(陰性対照群(Negative Control);NC)、陽性対照群としてドキシサイクリン(Doxy)を処理するか、本出願で選別した6つの菌株の培養物を処理し、TSB(トリプティックソイブロス(Tryptic Soy Broth)、BD difco)培地、37℃条件で24時間培養した。24時間後にバイオフィルム形成程度を測定するためにクリスタルバイオレット(crystal violet)(0.1%v/v)で処理してバイオフィルムを染色しTecanで570nmで測定した。その後、O.D.サンプル/O.D.対照×100の公式で換算してバイオフィルム(biofilm)形成抑制率(inhibition rate)を計算した。
【0198】
具体的に、ディープフリーザー(Deep freezer)に保管されていたS.epidermidis細菌を取り出してTSB(Tryptic Soy Broth、BD difco)に3%(v/v)で接種し、37℃で16時間培養した。増殖培養液をfresh TSB培地に1×10CFU/mLになるように希釈した。実験群である凍結乾燥された培養液は濃度に合うように蒸留水で希釈してサンプルを調製した。
【0199】
96-ウェルマイクロタイターポリスチレンプレート(96-well microtiter polystyrene plate)の各ウェルに100μlのバイオフィルム(biofilm)を形成させるS.epidermidis細菌と本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物5%(v/v)10μl、TSB培地90ulを共に処理して総200μlで各ウェルを構成した。24時間37℃インキュベータでプレート状態で培養した。24時間培養した微生物菌株はクリスタルバイオレット(crystal violet)溶液染色のために前処理過程を行った。菌株plate底面の生物膜を除いた上澄み液は吸引(suction)して除去した。各ウェルに100μlの1XPBS溶液を用いて1回洗浄(wash)した。洗浄された生物膜は0.1%クリスタルバイオレット(crystal violet)溶液を用いて20分間光がない常温条件で染色した。染色が終わった後、1×PBS溶液100ulを用いて洗浄した。33%の酢酸(acetic acid)溶液を用いて染色された生物膜をプレートから剥がした。溶解された生物膜は光学密度プレートリーダー(optical density plate reader)装置を用いてOD570nm波長での値を通じて形成/抑制を評価し、このような結果を図6に示した。
【0200】
図6に示されているように、S.epidermidis細菌に何も処理していない場合(陰性対照群(negative Control);NC)、バイオフィルム(Biofilm)形成抑制効果が示されなかった。陽性対照群としてS.epidermidis細菌にドキシサイクリン(Doxy)を処理した場合、バイオフィルム(biofilm)形成抑制効果が示された。
【0201】
S.epidermidis細菌に本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物をそれぞれ処理した場合にもバイオフィルム(biofilm)形成抑制効果が示され、このような結果は陽性対照群であるドキシサイクリン(Doxy)を使用した場合の効果と同等であるかそれ以上にバイオフィルム(biofilm)形成を抑制することを確認した。
【0202】
実施例6.毒性試験
本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物が細胞毒性がないのを確認した。
【0203】
96-ウェル細胞培養プレートにHaCaT細胞をそれぞれ2×10^4/ウェルで24時間付着した後、ブロス(植物性共培地)を濃縮して添加するか(0%(v/v)、5%(v/v)、10%(v/v)、または20%(v/v))(陰性対照群(Negative Control);ブロス)、本出願で選別した6つの菌株の培養物をそれぞれ濃縮後添加して(5%(v/v)、10%(v/v)、20%(v/v))5% CO、37℃条件で24時間培養する。24時間後に培養された細胞培地を除去しcell counting kit-8溶液を細胞に処理して2時間反応させた後、Tecanで450nmで吸光度を測定した。その後、O.Dサンプル/O.D対照×100の公式で換算してHaCaT細胞株の生存率(survival rate)(細胞生存率(cell viability))を計算し、その結果を図7に示した。
【0204】
図7に示されているように、HaCaT細胞に何も処理していない場合と比較して、本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物をそれぞれ処理した場合にもHaCaT細胞の生存率に影響を与えず、むしろ細胞生存率を増加させることができるのを確認した。
【0205】
このような結果は本出願で選別した6つの菌株の培養物は細胞毒性がなく、むしろ細胞毒性減少効果を期待することができるのを確認した。
【0206】
実施例7.皮膚効能試験
本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物の皮膚再生効能を確認した。
【0207】
Cell culture insert(Ibidi)にHaCaT細胞をそれぞれ1×10^6/mlの量で70μlずつ蒔種(seeding)後、5% CO、37℃条件で24時間培養した。細胞培養24時間後、滅菌されたフォーセプスを用いてinsertを除去して創傷治癒アッセイ(wound healing assay)に必要な創傷(wound)条件を形成した後、PBSで2回洗浄する。FBSを含まない培地に交換し、何も処理しないか(Cell only)、本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物をそれぞれ15%(v/v)添加して5% CO、37℃条件で培養する。培養物処理後、0時間、4時間、8時間に顕微鏡を用いて細胞写真を撮影し、cell profilerプログラムを用いて創傷(wound)面積を計算、(0時間面積-n時間面積)/0時間面積×100の公式で換算してHaCaT細胞株の創傷閉鎖(wound closure)を確認し、その結果を図8aおよび図8bに示した。
【0208】
図8aおよび図8bに示されているように、HaCaT細胞に何も処理していない場合(Cell only)と比較して、本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物をそれぞれ処理した場合、創傷閉鎖(wound closure)が増加して皮膚細胞再生効能に優れていることを確認した。
【0209】
また、HaCaT細胞株に本出願で選別した6つの菌株の培養物を添加して皮膚再生関連マーカであるSrc、MMP2(メタロプロテイナーゼ-2(metalloproteinase-2))発現を確認した。Srcの活性増加は表皮上皮細胞、真皮層および血管内皮の再生が促進されることを意味し、MMP2は組織再生に重要な細胞外基質の再生を助け角質細胞、線維芽細胞のように再上皮化に重要な細胞の移動を促進させる役割を果たすと知られている。
【0210】
HaCaT細胞を24ウェル細胞培養プレートに1×10^5の量で蒔種(seeding)後、5% CO、37℃条件で24時間培養した。細胞培養24時間後、FBSを含まない培地に交換し、何も処理しないか(Cell only)、本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物をそれぞれ15%(v/v)添加して5% CO、37℃条件で24時間反応させてSrcとMMP2の発現をRNA上で確認し、その結果を図9に示した。
【0211】
図9に示されているように、HaCaT細胞に何も処理していない場合(Cell only)と比較して、本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物をそれぞれ処理した場合、Src、MMP2の発現量が増加することを確認した。このような結果は本出願で選別した6つの菌株の培養物の皮膚再生効能を示す。
【0212】
また、皮膚保湿効果を確認するためにHaCaT細胞を24ウェル細胞培養プレートに1×10^5の量で蒔種(seeding)後、5% CO、37℃条件で24時間培養した。細胞培養24時間後、FBSを含まない培地に交換し、何も処理しないか(Cell only)、本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物をそれぞれ15%(v/v)添加して5% CO、37℃条件で24時間反応させて皮膚保湿機能のマーカであるHAS3(ヒアルロン酸シンターゼ3(Hyaluronic acid Synthase 3))とAQP3(アクアポリン3(Aquaporin 3))の発現をRNA上で確認し、その結果を図10に示した。
【0213】
図10に示されているように、HaCaT細胞に何も処理していない場合(Cell only)と比較して、本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物をそれぞれ処理した場合、HAS3、AQP3の発現量が増加することを確認した。このような結果は本出願で選別した6つの菌株の培養物の皮膚保湿機能強化効能が優れていることを示す。
【0214】
実施例8.生菌の炎症調節有効性評価試験
本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌株)を植物性培地(表3)で培養した後、遠心分離して(4000g、20分、常温)、菌株培養物を除いた生菌を確保した。確保された生菌と免疫細胞(Raw264.7大食細胞)をそれぞれ5×10^4/ウェルの同一な比率(1:1)で96ウェルプレートで24時間共培養(co-culture)した後、菌株の炎症調節効能を確認した。対照群としては炎症緩和菌株と知られているB.fragilis菌株を使用した。Raw264.7大食細胞から分泌された炎症性サイトカイン(IL-6)と抗炎症性サイトカイン(IL-10)の分泌量をELISAで測定した後、その値をIL-10/IL-6の比率で計算し、これを図11に示した。
【0215】
図11から確認できるように、本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌株)は、B.fragilis菌株と比較して、炎症性サイトカイン(IL-6)の分泌量を減少させ、抗炎症性サイトカイン(IL-10)の分泌量を促進させて全体的に抗炎症活性に優れていた。
【0216】
実施例9.Primary免疫細胞培養および免疫指標分析
本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物処理時免疫細胞の免疫指標を確認した。
【0217】
本実験に使用した免疫細胞は、マウス由来の骨髄由来大食細胞(marrow derived macrophages)(マウスBMDM、(株)ハンリム)とヒト単球由来大食細胞(human monocyte derived macrophage)(HMDM、ATCC)である。実験に入る一週間前に次の条件下で細胞を培養した。BMDM with 10ng/ml of mouse M-CSFまたはHMDM with 50ng/ml of human M-CSF in 10% RPMI Mediaの条件で細胞を培養し、M-CSFを入れたfresh RPMI Mediaを3日間隔で変えた。実験18時間前に試験しようとする免疫細胞を5×10/ウェルで平底96ウェルプレート(flat bottom 96 well plate)に蒔種(seeding)した。
【0218】
96ウェル細胞培養プレートにマウスBMDM(図12)またはHMDM(図13)をM-CSFが含まれている培地を用いて5×10^4/ウェルで蒔種(seeding)後、5% CO、37℃条件で24時間培養した。本実験時、炎症反応を誘導するために免疫細胞にC.acnes(ATCC 6919)菌株の培養物を5μl/ウェルで処理し、RPMI Media 95μlを入れてトータル100μlを37℃インキュベータで1時間処理した。炎症反応誘導時、正常細胞(Cell only)グループを除いた全てのグループにはC.acnes(ATCC 6919)菌株の培養物を処理して炎症刺激を与えた。1時間後、本出願で選別したCJRS-10652菌株またはCJRS-10653菌株それぞれの培養物(20μl)とfresh Media(80μl)を加えて総100μlを炎症誘導物質が処理されたplateに追加して(total 200μl/ウェル)総24時間、37℃インキュベータで培養した。陽性対照群(Positive control)としてはデキサメタゾン(dexamethasone;Dex)(100nM)を使用した。陰性対照群(negative control)としてはfresh Mediaが処理された正常細胞(Cell only)を使用した。24時間培養後、上澄み液(cultured supernatant)を全て確保して残った免疫細胞の増殖程度を確認するためにcell counting kit-8(5μl ウェル)+fresh media(95μl)を処理して37℃ incubatorで2時間反応した後、450nmで吸光度を測定し、Cell only基準で細胞増殖程度を%で表記した。確保された細胞上澄み液を用いて免疫細胞から分泌されたサイトカイン(cytokines)(IL-6、IL-8)の量をELISAを通じて測定した。
【0219】
図12から確認できるように、マウスBMDM細胞に何も処理していない場合(Cell only)、炎症性サイトカイン(IL-6)が分泌されなかった。Cell w/stimuliの場合、炎症性サイトカイン(IL-6)の分泌が大きく増加し、免疫細胞であるマウスBMDM細胞の増殖が何も処理していない場合(Cell only)と比較して大きく増加した。陽性対照群としてデキサメタゾン(Dex)を使用した場合にはマウスBMDM細胞に炎症反応が誘導されて増加したIL-6の量と増加したマウスBMDM細胞の増殖が大きく低まることを確認した。
【0220】
本出願で選別したCJRS-10652菌株またはCJRS-10653菌株の培養物をそれぞれ処理した場合にはマウスBMDM細胞に炎症反応が誘導されて増加したIL-6の量と増加したマウスBMDM細胞の増殖が大きく低まることを確認し、このような結果は陽性対照群であるデキサメタゾンを使用した場合と同等であるか、それより優れた効果を示すのであることを確認した。
【0221】
図13はマウスBMDM細胞の代わりにHMDM細胞を使用して炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8)の分泌量を確認した結果で、HMDM細胞に何も処理していない場合(Cell only)、炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8)がほとんど分泌されなかった。Cell w/stimuliの場合、炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8)の分泌が大きく増加したが、陽性対照群としてデキサメタゾン(Dex)を使用した場合にはHMDM細胞に炎症反応が誘導されて増加したIL-6、IL-8の量が大きく減少した。
【0222】
本出願で選別した菌株(CJRS-10652菌株またはCJRS-10653菌注)の培養物をそれぞれ処理した場合もHMDM細胞に炎症反応が誘導されて増加したIL-6、IL-8の分泌量が大きく減少することを確認した。
【0223】
実施例10.酒さ動物モデル有効性評価
本動物有効性試験のために32匹の5週齢雌BALB/cマウスをオリエントバイオ社から購入し、12時間人工光周期を与える飼育室に搬入して1週間純化させた後、実験に使用した。
【0224】
酒さ動物モデルを作るためにマウスの背中部位の毛を除毛機と除毛クリームを用いて除去する。除毛24時間後に酒さ病変を誘導するために320μMのLL37ペプチド((株)ぺプトロン)を50μlずつインシュリン注射器を用いて皮内注射(intradermal injection)した。LL37注射は1日2回、2日間(総4回)実施し、本出願で選別した菌株(CJRS-10652菌株またはCJRS-10653菌注)の培養物は2番目のLL37注射と同時に150μlずつ1日1回、3日間(総3回)腹腔に投与する。既存の酒さ治療用法の一つであるドキシサイクリン(doxycycline)は1mg/kg 1日1回、3日間(総3回)腹腔に投与した。
【0225】
最後の菌株培養物投与24時間後、キャリパを用いて紅斑の大きさ(広さ)を測定し、COガスを使用して動物を安楽死させた後、病変部位を写真で撮って紅斑の程度を肉眼観察し、組織写真と炎症部位の広さをグラフで図14aおよび図14bに示した。
【0226】
図14aおよび図14bに示されているように、マウスに何も処理していない場合(ビヒクル(vehicle))と比較して、マウスにLL37ペプチドを処理して酒さを誘導した場合、皮膚に紅斑が大きく現れることを確認した。陽性対照群としてマウスにドキシサイクリン(Doxy)を処理したところ、皮膚に紅斑が多少減少することを確認した。
【0227】
マウスに本出願で選別した菌株(CJRS-10652菌株またはCJRS-10653菌注)の培養物をそれぞれ処理(腹腔投与)したところ、皮膚に紅斑が大きく減少することを確認し、このような結果は陽性対照群であるドキシサイクリンを処理した場合と比較しても驚くべき優れた効果が示されることを確認した。
【0228】
また、本出願で選別した菌株(CJRS-10652菌株またはCJRS-10653菌注)の培養物投与による注射動物モデルの病理学的検査結果を確認するために、LL37ペプチド投与部位の皮膚を摘出して組織染色用として4%ホルムアルデヒド(formaldehyde)溶液に固定してパラフィン包埋した。パラフィン包埋した組織で切片を作った後、組織学的変化観察のためにヘマトキシリン-エオジン(hematoxyline-eosin;H&E)染色を実施して顕微鏡で観察し、組織写真を図15に示し、組織病理学的評価点数を下記表6に示した。
【0229】
【表6】
【0230】
図15に示されているように、マウスに何も処理していない場合(ビヒクル(vehicle))と比較して、マウスにLL37ペプチドを処理して酒さを誘導した場合(LL37)、炎症部位の広さが大きく増加した。陽性対照群としてマウスにドキシサイクリン(Doxy)を処理したところ、炎症部位の広さが多少減少したことを確認した。マウスに本出願で選別した菌株(CJRS-10652菌株またはCJRS-10653菌注)の培養物をそれぞれ処理したところ、炎症部位の広さが大きく減少することを確認し、このような結果は陽性対照群であるドキシサイクリンを処理した場合と比較しても数等優れた効果が示されることを確認した。
【0231】
また、前記表6に示されているように、マウスに何も処理していない場合(Vehicle)と比較して、マウスにLL37ペプチドを処理して酒さを誘導した場合(LL37)、上皮組織過形成(Epithelial hyperplasia)と皮膚炎症(Dermal inflammation)が大きく増加した。陽性対照群としてマウスにドキシサイクリン(Doxy)を処理したところ、上皮組織過形成(Epithelial hyperplasia)は減少したが、皮膚炎症(Dermal inflammation)は減少させることができないことを確認した。
【0232】
しかし、マウスに本出願で選別した菌株(CJRS-10652菌株またはCJRS-10653菌注)の培養物をそれぞれ処理したところ、増加された上皮組織過形成(Epithelial hyperplasia)と皮膚炎症(Dermal inflammation)が大きく減少したことを確認した。
【0233】
このような結果から、本出願で選別した菌株の培養物をマウスに腹腔処理した時、紅斑、上皮組織過形成(Epithelial hyperplasia)および皮膚炎症(Dermal inflammation)が全て減少することを確認した。
【0234】
実施例11.皮膚障壁改善および保湿効果確認
皮膚シワおよび老化の主原因としては皮膚真皮層の崩れた障壁、水分損失およびコラーゲン生成減少などがある。特に、コラーゲンは皮膚真皮を構成する主要タンパク質であって皮膚構造と弾力を維持する役割を果たす。コラーゲンの欠乏は皮膚シワの発生原因のうちの一つであり、老化が進むことによって生成の減少を示し分解も増加して、皮膚真皮層の陥没を誘導して皮膚のシワを生成すると知られている。加えて、水分損失は皮膚再生を遅くして弾力が減少して小ジワの原因になり皮膚老化を促進させる。したがって皮膚障壁(フィラグリン(filaggrin))改善、コラーゲン(プロコラーゲンタイプI(procollagen type I))の生成程度および保湿(アクアポリン-3(aquaporin-3))改善の重要指標を確認して皮膚シワ改善および抗老化効果を確認することができる。
【0235】
(株)ティアンドアルバイオファブ(T&R BIOFAB)で製作した皮膚3Dミニティッシュ(オルガノイド(organoid))であるT&R HuSkinにpoly I:Cを用いて炎症を誘導した。その後、本出願で選別した菌株培養物を適用して、皮膚改善指標(障壁改善および保湿)の変化を確認した。
【0236】
試験方法
1)T&R HuSkinは真皮層と表皮層から構成された全層(full thickness)皮膚モデルであり、(株)ティアンドアルバイオファブ(T&R BIOFAB)の3DXPrinterバイオプリンターを用いて製作された。
2)真皮層の製作のために豚皮膚由来細胞外基質基盤ハイドロゲルとヒト由来線維芽細胞(fibroblast;Lonza、Basel、Switzerland)を100×10^4細胞/mlの濃度で混合したバイオインクをプリンティングし、37℃インキュベータで40分間露出させてゲル化した。
3)その後、ゲル化された真皮層の上にヒト由来角質形成細胞(keratinocyte;Lonza)を55×10^4細胞/insertで分注し、1日間角質形成細胞培養液(Keratinocytes growth media、KGM;Lonza)に完全に浸った状態で培養した。
4)1日以後、皮膚と同じ培養条件を付与するために角質形成細胞が分注された真皮層表面のみを空気中に露出させる気-液界面(Air-liquid interface)(ALI)条件を実現して7日間組織化した。
5)7日間ALI条件で培養して確保したT&R HuSkinに炎症誘導物質(poly I:C、20μg/mL)および試験物質(本出願で選別した菌株培養物、0.5x濃度、5%(v/v))を同時に処理して2日間HuSkin追加培養後、皮膚改善関連指標の変化を確認した。(各条件当りN=2)。
6)IF蛍光写真確保後、Image Jのmean gray valueを通じて各写真(area of interest:写真全体面積)の蛍光強度(intensity)値を数値化した。
【0237】
試験結果
1)障壁改善
T&R HuSkinで障壁改善指標であるフィラグリン(filaggrin)の発現量をIF染色を通じて比較分析して、その結果を図16に示した。
【0238】
図16から確認できるように、本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物を処理した群の全てでフィラグリン(filaggrin)の発現量が陰性対照群(Poly I:C単独処理)と比較して同等以上に増加した。そのうちのCJRS-10651、CJRS-10653、CJRS-10654、またはCJRS-10655菌株培養物処理群はフィラグリン(filaggrin)の発現量が正常対照群(non-treated)同等レベルまで回復されたことを確認することができ、CJRS-10656菌株培養物処理群の場合はフィラグリン(filaggrin)の発現量が正常対照群(non-treated)と比較してさらに増加したことを確認した。
【0239】
2)保湿改善
T&R HuSkinで保湿改善指標であるアクアポリン(aquaporin-3)の発現量をIFを通じて比較分析してその結果を図17に示した。
【0240】
図17から確認できるように、本出願で選別した6つの菌株(CJRS-10651菌株、CJRS-10652菌株、CJRS-10653菌株、CJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌注)の培養物を処理した群の全てでアクアポリン(aquaporin-3)の発現量が陰性対照群(Poly I:C単独処理)と比較して同等以上に増加した。そのうちのCJRS-10654菌株、CJRS-10655菌株、またはCJRS-10656菌株培養物処理群は正常対照群(non-treated)と比較してアクアポリン(aquaporin-3)の発現量が同等レベルまで回復されたことを確認した。
【0241】
実施例12.コラーゲン指標確認。
本出願で選別した菌株培養物をヒト線維芽細胞に処理時、培養物の毒性および培養物によるコラーゲン生成および分泌程度を確認した。
【0242】
実験方法
1)ヒト線維芽細胞培養
本実験ではヒト線維芽細胞(human fibroblast cell、CCD-986sk cell)を使用した。本実験に入る一週間前にヒト線維芽細胞をFBS 10%(v/v) DMEMに培養および維持した。実験18時間前にヒト線維芽細胞を1×10/ウェルで平底96ウェルプレート(flat bottom 96 well plate)に蒔種(seeding)した。
【0243】
2)菌株培養物とヒト線維芽細胞との共培養(co-culture)
菌株培養物原液((実験例2で、菌株培養物を遠心分離して菌株を除いた培養物(cell free supernatant))および実験例2で製造された3kDa以下にろ過された菌株培養物の濃度が10、20、30、40%(v/v)になるようにFBS 10%(v/v) DMEMを用いて製造した後、ヒト線維芽細胞100μLがあるplateに100μLずつ追加して最終濃度5、10、15、20%(v/v)で処理し(総200μL/ウェル)、総24時間37℃インキュベータで培養した。
【0244】
培養液がヒト線維芽細胞の生存率(viability)に与える影響およびコラーゲン生成程度を確認して、その結果を図18および図19に示した。陰性対照群(negative control)としてはFBS 10%(v/v) DMEMを入れた正常細胞(Cell only)を使用した。
【0245】
3)ヒト繊維芽細胞毒性テスト
24時間後、上澄み液(cultured supernatant)を全て確保して残ったヒト線維芽細胞の生存率(viability)程度を確認するためにcell counting kit 8(Enzo、5μL/ウェル)およびfresh RPMI media(95μL)を処理して37℃インキュベータで2時間反応した後、450nmで吸光度を測定し、その結果を図18に示した。
【0246】
図18から確認できるように、本出願で選別した菌株培養物原液および3kDa以下にろ過した培養物を処理した時、全ての濃度でヒト線維芽細胞での細胞毒性がないことを確認した。
【0247】
4)ヒト線維芽細胞コラーゲン生成機能測定
前記3)で確保された上澄み液(supernatant)を用いてヒト線維芽細胞から分泌されたプロコラーゲンタイプI C-ペプチド(Procollagen type I C-peptide;PIP)をELISAキットを使用してコラーゲン生成機能を確認し、その結果を図19に示した。
【0248】
図19から確認できるように、本出願で選別した菌株培養物原液および3kDa以下にろ過した培養物を処理した時、全ての濃度でPIP分泌が対照群(Cell only)と比較して同等以上増加したことを確認した。
【0249】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者は本発明がその技術的な思想や必須的特徴を変更せずに他の具体的な形態に実施できるということを理解することができるはずである。これに関連して、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的なものでないと理解しなければならない。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは後述の特許請求範囲の意味および範囲、そしてその等価概念から導出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【0250】
〔受託番号〕
寄託機関名:韓国微生物保存センター
受託番号:KCCM13032P
受託日付:2021年8月13日
寄託機関名:韓国微生物保存センター
受託番号:KCCM13033P
受託日付:2021年8月13日
寄託機関名:韓国微生物保存センター
受託番号:KCCM13034P
受託日付:2021年8月13日
寄託機関名:韓国微生物保存センター
受託番号:KCCM13035P
受託日付:2021年8月13日
寄託機関名:韓国微生物保存センター
受託番号:KCCM13036P
受託日付:2021年8月13日
寄託機関名:韓国微生物保存センター
受託番号:KCCM13037P
受託日付:2021年8月13日
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
図13
図14a
図14b
図15
図16
図17
図18
図19
【配列表】
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【国際調査報告】