(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】デュークラバシチニブの局所製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/501 20060101AFI20241022BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241022BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20241022BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241022BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20241022BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20241022BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241022BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241022BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241022BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
A61K31/501
A61P37/02
A61P17/06
A61P19/02
A61P17/14
A61K9/06
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/22
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525532
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 US2022048088
(87)【国際公開番号】W WO2023076515
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ラバン,モニカ
(72)【発明者】
【氏名】ケスター,ウメシュ
(72)【発明者】
【氏名】デサイ,ディブヤカント
(72)【発明者】
【氏名】エバンズ,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】セイヤー,ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ギダリ,フロレンシア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076BB31
4C076CC07
4C076CC17
4C076CC20
4C076DD09
4C076DD21
4C076DD30
4C076DD31
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD43
4C076DD46
4C076DD59
4C076EE09
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE51
4C076FF12
4C076FF16
4C076FF17
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC60
4C086GA07
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA89
4C086ZA92
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZC20
(57)【要約】
本明細書は、デュークラバシチニブの局所製剤および当該製剤の製造方法を記載する。また、当該製剤の局所投与を含む治療方法についても記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュークラバシチニブおよび2つのエーテル溶媒を含む、局所医薬組成物。
【請求項2】
2つのエーテル溶媒が、ポリエチレングリコール400、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、イソソルビドジメチルエーテル、コハク酸d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000、およびプロピレングリコールから選択される、請求項1に記載の局所医薬組成物。
【請求項3】
当該2つのエーテル溶媒にポリエチレングリコール400が含まれる、請求項1に記載の局所医薬組成物。
【請求項4】
2つのエーテル溶媒がポリエチレングリコール400およびジエチレングリコールモノエチルエーテルである、請求項1に記載の局所医薬組成物。
【請求項5】
2つのエーテル溶媒がポリエチレングリコール400およびイソソルビドジメチルエーテルである、請求項1に記載の局所医薬組成物。
【請求項6】
2つのエーテル溶媒がポリエチレングリコール400およびイソソルビドジメチルエーテルであり、ジエチレングリコールモノエチルエーテルをさらに含む、請求項1に記載の局所医薬組成物。
【請求項7】
デュークラバシチニブおよび3つのエーテル溶媒を含む、局所医薬組成物。
【請求項8】
3つのエーテル溶媒が、ポリエチレングリコール400、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、イソソルビドジメチルエーテル、コハク酸d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000、およびプロピレングリコールから選択される、請求項7に記載の局所医薬組成物。
【請求項9】
さらに増粘剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の局所医薬組成物。
【請求項10】
増粘剤がカルボマーである、請求項9に記載の局所医薬組成物。
【請求項11】
増粘剤がカルボマー誘導体である、請求項9に記載の局所医薬組成物。
【請求項12】
さらに酸性緩衝液を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の局所医薬組成物。
【請求項13】
デュークラバシチニブ、エーテル溶媒、および酸性緩衝液を含む、局所医薬組成物。
【請求項14】
エーテル溶媒が、ポリエチレングリコール400、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、イソソルビドジメチルエーテル、コハク酸d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000、およびプロピレングリコールから選択される、請求項13に記載の局所医薬組成物。
【請求項15】
エーテル溶媒がポリエチレングリコール400である、請求項13に記載の局所医薬組成物。
【請求項16】
エーテル溶媒がジエチレングリコールモノエチルエーテルである、請求項13に記載の局所医薬組成物。
【請求項17】
エーテル溶媒がイソソルビドジメチルエーテルである、請求項13に記載の局所医薬組成物。
【請求項18】
さらにポリエチレングリコール400を含む、請求項16および17のいずれか一項に記載の局所医薬組成物。
【請求項19】
当該局所医薬組成物が非水性ゲルである、請求項1~11のいずれか一項に記載の局所医薬組成物。
【請求項20】
当該局所医薬組成物が軟膏である、請求項1~11のいずれか一項に記載の局所医薬組成物。
【請求項21】
当該局所医薬組成物が水性ゲルである、請求項9~18のいずれか一項に記載の局所医薬組成物。
【請求項22】
当該局所医薬組成物がクリームである、請求項12~18のいずれか一項に記載の局所医薬組成物。
【請求項23】
デュークラバシチニブが局所医薬組成物の総重量に基づいて約0.075%w/w~約1.1%w/wの量含まれる、請求項1~22のいずれか一項に記載の局所医薬組成物。
【請求項24】
対象の乾癬を治療する方法であって、対象に請求項1~23のいずれか一項に記載の局所医薬組成物を投与することを特徴とする、方法。
【請求項25】
対象の乾癬性関節炎を治療する方法であって、対象に請求項1~23のいずれか一項に記載の局所医薬組成物を投与することを特徴とする、方法。
【請求項26】
対象の全身性エリテマトーデスを治療する方法であって、対象に請求項1~23のいずれか一項に記載の局所医薬組成物を投与することを特徴とする、方法。
【請求項27】
対象の円形脱毛症を治療する方法であって、対象に請求項1~23のいずれか一項に記載の局所医薬組成物を投与することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害剤である、デュークラバシチニブの局所製剤に関する。当該製剤は、疾患(例えば乾癬、乾癬性関節炎、狼瘡、および円形脱毛症)の治療およびコントロールにおいて有用である。
【背景技術】
【0002】
デュークラバシチニブは、特定の炎症性疾患および自己免疫性疾患(例えば乾癬)の治療において有効な、選択的TYK2阻害剤である。デュークラバシチニブは経口投与用に製剤化されているが、局所投与形態のデュークラバシチニブが必要とされている。本発明はそのような需要に応えるものである。
【0003】
本発明の要約
本明細書には、デュークラバシチニブを含む新規な局所医薬組成物が記載されている。デュークラバシチニブは、6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d
3)ピリダジン-3-カルボキサミドとしても知られる、式(I):
【化1】
の構造を有する化合物である。
【0004】
デュークラバシチニブとは、特定の炎症性疾患および自己免疫性疾患(例えば乾癬、乾癬性関節炎、狼瘡、ループス腎炎、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、強直性脊椎炎、および円形脱毛症)の治療に有用な、選択的TYK2阻害剤である。そのような疾患については、治療中に1以上の治療剤を局所投与することが望ましい場合もある。しかしながら、デュークラバシチニブの水への溶解度の低さなどから、デュークラバシチニブの局所製剤の開発は困難とされてきた。
【0005】
本開示は、局所投与に適切なデュークラバシチニブの製剤であって、デュークラバシチニブが完全に溶解し、保管中も安定な製剤を提供する。本明細書の記載通りにデュークラバシチニブを製剤化することにより、デュークラバシチニブの局所投与が望ましい、炎症性疾患および自己免疫性疾患(例えば、乾癬、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス、および円形脱毛症)の治療に使用され得る、局所投与形態(例えば、クリーム、軟膏、ゲル)のデュークラバシチニブが投与されてもよい。
【0006】
ある実施態様において、デュークラバシチニブの局所製剤には、デュークラバシチニブに加え、エーテル溶媒が含まれる。当該エーテル溶媒は、ポリエチレングリコール400(PEG 400)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGEE)、イソソルビドジメチルエーテル(DMI)、コハク酸d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000(TPGS)、およびプロピレングリコールから選択されるエーテル溶媒であり得る。ある実施態様において、当該エーテル溶媒はPEG 400である。さらなる実施態様において、デュークラバシチニブの局所製剤には、デュークラバシチニブおよび2つのエーテル溶媒が含まれる。ある実施態様において、当該2つのエーテル溶媒は、ポリエチレングリコール400(PEG 400)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGEE)、イソソルビドジメチルエーテル(DMI)、コハク酸d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000(TPGS)、およびプロピレングリコールから選択される。また別の実施態様において、局所製剤にはデュークラバシチニブおよび3つのエーテル溶媒が含まれる。ここで当該3つのエーテル溶媒は、ポリエチレングリコール400(PEG 400)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGEE)、イソソルビドジメチルエーテル(DMI)、コハク酸d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000(TPGS)、およびプロピレングリコールから選択される。ある実施態様において、当該製剤は、少なくともPEG 400を含む。例えば、2つのエーテル溶媒が製剤に含まれている実施態様において、当該エーテル溶媒は、PEG 400およびDEGEE、またはPEG 400およびDMIである。3つのエーテル溶媒が製剤に含まれる実施態様において、当該エーテル溶媒は、PEG 400、DEGEE、およびDMIであってもよい。上述の任意の実施態様において、デュークラバシチニブの局所製剤は、水性製剤(例えば水性のゲルまたはクリーム)であってもよく、酸性緩衝液をさらに含んでもよい。
【0007】
本発明の実施態様は、デュークラバシチニブ、エーテル溶媒、および酸性緩衝液を含む、デュークラバシチニブの局所製剤にも関係する。一部の実施態様において、当該エーテル溶媒は、ポリエチレングリコール400(PEG 400)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGEE)、イソソルビドジメチルエーテル(DMI)、コハク酸d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000(TPGS)、およびプロピレングリコールから選択される。ある実施態様において、当該エーテル溶媒はPEG 400である。さらに、本発明の実施態様は、デュークラバシチニブ、2つのエーテル溶媒、および酸性緩衝液を含む局所製剤に関係する。そのような実施態様において、当該2つのエーテル溶媒は、ポリエチレングリコール400(PEG 400)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGEE)、イソソルビドジメチルエーテル(DMI)、コハク酸d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000(TPGS)、およびプロピレングリコールから選択され、例えば、PEG 400およびDEGEE、またはPEG 400およびDMIであってもよい。さらなる実施態様において、局所製剤は、デュークラバシチニブ、3つのエーテル溶媒、および酸性緩衝液を含む。
【0008】
上述の任意の実施態様において、本明細書に記載の1以上の別の賦形剤(例えば増粘剤、防腐剤など)が製剤に含まれていてもよい。さらに上述の任意の実施態様において、デュークラバシチニブは、組成物の総重量に基づいて、約0.075%w/w~約1.1%w/wの範囲の量で製剤に含まれていてもよい。そのような実施態様において、デュークラバシチニブは、組成物の総重量に基づいて、約0.3%w/w~約1.1%w/wの範囲の量で製剤に含まれていてもよい。
【0009】
デュークラバシチニブの局所投与形態を製造する方法もまた、本明細書に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、デュークラバシチニブを含む局所医薬組成物に関する。本明細書で用いる用語「局所医薬組成物」、「局所組成物」、「局所製剤」、および「局所投与形態」は、一般に、医薬的に許容され、対象にデュークラバシチニブを局所投与することに適している組成物をいう。そのような組成物には、以下に限らないが、クリーム、軟膏(ointment)、ゲル、発泡体、スプレー、ローション、溶液、エマルション、懸濁液、ミスト、エアロゾル、軟膏(unguent)、およびペーストが挙げられる。局所組成物は一般に、デュークラバシチニブに加え、少なくとも1つのエーテル溶媒を含む。当該組成物は、本明細書に記載の1以上の別の賦形剤を含んでもよい。そのようなデュークラバシチニブを含む局所医薬組成物は、疾患(例えば乾癬、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス、および円形脱毛症など)を治療するために用いられても良い。
【0011】
デュークラバシチニブおよびデュークラバシチニブを製造する方法は、米国特許RE47,929 Eに開示されており、その内容は全体として引用により本明細書に援用される。デュークラバシチニブは、6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d
3)ピリダジン-3-カルボキサミドとしても知られる、式(I):
【化2】
の構造を有する化合物である。
【0012】
本明細書に記載の任意の製剤を製造するために用いられるデュークラバシチニブには、非晶質および/または結晶体のデュークラバシチニブが含まれていてもよい。デュークラバシチニブ(およびデュークラバシチニブの塩)の結晶体は、例えば、国際出願番号PCT/US2018/025114、PCT/US2019/034534、およびPCT/US2020/036727(国際公開番号はそれぞれWO 2018/183656、WO 2019/232138、およびWO 2020/251911)に記載されており、それぞれの全ての内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0013】
デュークラバシチニブは、炎症性疾患および自己免疫性疾患(例えば乾癬、乾癬性関節炎、狼瘡、ループス腎炎、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、および強直性脊椎炎)の治療において、現在臨床試験中の選択的TYK2阻害剤である。TYK2は、非受容体型チロシンキナーゼのヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーのメンバーであり、マウスおよびヒトの両方において、IL-12、IL-23、およびI型インターフェロン受容体のシグナル伝達カスケードの下流の制御において極めて重要であることが示されている(マウス:Ishizaki, M. et al., "Involvement of tyrosine kinase-2 in both the IL-12/Th1 and IL-23/Th17 axes in vivo," J. Immunol., 187:181-189 (2011); Prchal-Murphy, M. et al., "TYK2 kinase activity is required for functional type I interferon responses in vivo," PLoS One, 7:e39141 (2012)、ヒト:Minegishi, Y. et al., "Human tyrosine kinase 2 deficiency reveals its requisite roles in multiple cytokine signals involved in innate and acquired immunity," Immunity, 25:745-755 (2006))。TYK2は、受容体によって誘導される転写因子STATファミリーメンバーのリン酸化、STATタンパク質の二量体化およびSTAT依存性の炎症誘発性遺伝子の転写を導く必須シグナルを仲介する。TYK2欠損マウスは、大腸炎、乾癬、および多発性硬化症の実験モデルに耐性を示し、自己免疫疾患および関連疾患におけるTYK2介在シグナルの伝達の重要性を実証した(Ishizaki, M. et al., "Involvement of tyrosine kinase-2 in both the IL-12/Th1 and IL-23/Th17 axes in vivo," J. Immunol., 187:181-189 (2011); Oyamada, A. et al., "Tyrosine kinase 2 plays critical roles in the pathogenic CD4 T cell responses for the development of experimental autoimmune encephalomyelitis," J. Immunol., 183:7539-7546 (2009))。
【0014】
ヒトにおいて、TYK2の不活性変異体を発現する個体は、多発性硬化症および場合によってはその他の自己免疫性疾患にならない(Couturier, N. et al., "Tyrosine kinase 2 variant influences T lymphocyte polarization and multiple sclerosis susceptibility," Brain, 134:693-703 (2011))。遺伝子全体での関連実験は、TYK2のその他の変異体が自己免疫性疾患(例えばクローン病、乾癬、全身性エリテマトーデス、および関節リウマチ)に関連することを示し、さらに自己免疫におけるTYK2の重要性を示している(Ellinghaus, D. et al., "Combined Analysis of Genome-wide Association Studies for Crohn Disease and Psoriasis Identifies 7Shared Susceptibility Loci," Am. J. Hum. Genet., 90:636-647 (2012); Graham, D. et al., "Association of polymorphisms across the tyrosine kinase gene, TYK2 in UK SLE families," Rheumatology (Oxford), 46:927-930 (2007); Eyre, S. et al., "High-density genetic mapping identifies new susceptibility loci for rheumatoid arthritis," Nat. Genet., 44:1336-1340 (2012))。
【0015】
デュークラバシチニブは水に溶けにくく、溶解度は約0.009mg/mLまたは0.00009%w/wである。しかしながら、水は多くの局所製剤(例えば水性のゲルおよびクリーム剤)において必須の成分である。本明細書では、水への溶解度が低いにもかかわらず、完全に溶解するデュークラバシチニブを含む、様々な局所製剤を記載する。さらに、当該デュークラバシチニブは当該局所製剤において、保管中も安定である。
【0016】
一部の実施態様において、デュークラバシチニブの局所製剤は、デュークラバシチニブ、およびエーテル類に属する少なくとも1つの溶媒を含む。そのような溶媒には、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEG 200、PEG 300、PEG 400、およびPEG 600)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGEE)、イソソルビドジメチルエーテル(DMI)、コハク酸d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000(TPGS)、およびプロピレングリコールが挙げられる。ある実施態様において、当該製剤は少なくとも2つのエーテル溶媒を含む。さらなる実施態様において、製剤に含まれる溶媒には、PEG(例えばPEG 400)および少なくとも1つのDEGEE、DMI、TPGS、およびプロピレングリコールが含まれる。当該製剤は、さらに酸性緩衝液および/または水を含んでもよい。
【0017】
ある実施態様において、局所製剤は、デュークラバシチニブ、PEG 400、および少なくとも1つのDEGEEおよびDMIを含む。例えば当該製剤には、デュークラバシチニブ、PEG 400、およびDEGEE(DMIも)が含まれてもよいか、あるいはデュークラバシチニブ、PEG 400、およびDMI(DEGEEも)が含まれてもよい。一部の実施態様において、局所製剤はデュークラバシチニブ、PEG 400、DMI、およびDEGEEを含む。
【0018】
一部の実施態様において、デュークラバシチニブの局所製剤は、水性成分を含む(例えば局所製剤は、水性のゲルまたはクリーム剤であってもよい)。そのような実施態様において、局所製剤はデュークラバシチニブ、エーテル溶媒、および酸性緩衝液を含む。本明細書に示されているように、デュークラバシチニブの溶解度を大きくするために、エーテルベースの溶媒(または2以上のエーテルベースの溶媒)の使用、および/または酸性緩衝液でのpHの調製がなされる。当該エーテル溶媒は、PEG(例えばPEG 400)、DEGEE、DMI、TPGS、またはプロピレングリコールであってもよい。ある実施態様において、当該エーテル溶媒はPEG 400である。さらなる実施態様において、局所製剤はデュークラバシチニブ、少なくとも2つのエーテル溶媒、および酸性緩衝液を含む。そのようなエーテル溶媒のうちの1つは、PEG(例えばPEG 400)、およびその他のエーテル溶媒はDEGEE、DMI、TPGS、またはプロピレングリコールであってもよい。例えば局所製剤は、デュークラバシチニブ、PEG 400、DEGEE、および酸性緩衝液を含んでもよいか、あるいは、デュークラバシチニブ、PEG 400、DMI、および酸性緩衝液を含んでもよい。他の実施態様において、局所製剤には、デュークラバシチニブ、PEG 400、DEGEE、DMI、および酸性緩衝液が含まれる。適切な酸性緩衝液は当業者に公知であり、例えば、塩酸、クエン酸、リン酸、およびその他の酸性化剤が含まれる。
【0019】
本明細書に記載のデュークラバシチニブの局所組成物中のエーテル溶媒の総量は、組成物の総重量に基づいて、約30%w/w~約98%w/wの範囲であってもよい。例えば、非水性製剤(例えば非水性ゲルおよび軟膏)において、1以上のエーテル溶媒は、組成物の総重量%の約60%w/w~約98%w/wを占めてもよい。ある実施態様において、非水性製剤中の1以上のエーテル溶媒の量は、組成物の総重量に基づいて、約70%w/w~約98%w/wの範囲である。水性製剤(例えば水性ゲル、乳化したゲル、およびクリーム)において、1以上のエーテル溶媒が組成物の総重量%の約40%w/w~約90%w/wを占めてもよく、水性成分(例えば水および/または緩衝溶液)が約5%w/w~約30%w/wを占めてもよい。ある実施態様において、例えば、1以上のエーテル溶媒の量は、組成物の総重量に基づいて、約50%w/w~約55%w/wの範囲であってもよく、水性成分(例えば水および/または緩衝液)の量は、約10%w/w~約25%w/wの範囲であってもよい(その他の賦形剤は残りの総重量を占める)。他の実施例において、1以上のエーテル溶媒は組成物の総重量%の約85%w/w~約90%w/wを占め、水性成分(例えば水または酸性緩衝液)は約5%w/w~約10%w/w(例えば、約7%w/w)を占める。
【0020】
デュークラバシチニブおよび1以上のエーテル溶媒を含む局所製剤は、1以上の別の医薬的に許容される賦形剤を含んでもよい。当該賦形剤には、例えば、増粘剤(例えば、カルボマーまたはカルボマー誘導体、セルロースおよびその誘導体、アニオンポリマー)、乳化剤および界面活性剤、湿潤剤、粘度増強剤、キレート剤、抗酸化剤およびその他の防腐剤、発泡剤、軟膏基剤、および噴射剤が挙げられる。
【0021】
ある実施態様において、デュークラバシチニブ、および少なくとも1つの上述のエーテル溶媒を含む局所製剤(例えばデュークラバシチニブ、および2つまたは3つのエーテル溶媒を含む局所製剤)は、さらに1以上の以下の賦形剤を含む。
-油相となる賦形剤: 例えば、ヒマシ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、モノ/ジグリセリド、ワセリン、蜜蝋
-乳化剤および界面活性剤: 例えば、ポリソルベート80、乳化ワックス、Brij 20、モノステアリン酸グリセロール、カチオン性およびアニオン性界面活性剤
-溶媒および可溶化剤: 例えば、シクロデキストリン類
-増粘剤: 例えば、セトステアリルアルコール、PEG 1500、セルロースおよびその誘導体、カルボマーおよびその誘導体(例えば、カルボマー910、940、941、1342、934P、および974P)
-防腐剤: 例えば、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール
-抗酸化剤: 例えば、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、および類似の賦形剤(例えば、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ))
-キレート剤: 例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)
-透過促進剤: 例えば、修飾脂質/脂肪酸可溶化剤、脂肪酸の塩
【0022】
以下の表3は、本明細書に記載のデュークラバシチニブの局所製剤に適切な別の賦形剤を含む。特定の賦形剤に備わっている機能は限定されるものではなく、賦形剤が複数の機能を果たすこともあれば、複数の利点をもたらすこともある。
【0023】
本明細書に記載の局所製剤は、デュークラバシチニブの量が変わることを特徴としてもよい。例えば、本明細書に記載の任意の実施態様に含まれるデュークラバシチニブの量は、組成物の総重量に基づいて、約0.075%w/w~約1.1%w/wであり得る(例えば、ある実施態様において、デュークラバシチニブは、組成物の総重量に基づいて、約0.075%w/w、または約1.1%w/w、または任意の間の量(例えば0.3%w/w)で製剤に含まれる)。一般的に、デュークラバシチニブが製剤に完全に溶解することが望ましい。デュークラバシチニブの溶解性は、例えば、製剤のサンプルを顕微鏡で検査することにより決定され得る。製剤中でデュークラバシチニブが沈殿することを避けるため、薬剤のロードの上限は、製剤の特定の溶媒におけるデュークラバシチニブの飽和溶解度の80%に設定され得る。本明細書に記載の溶媒の組み合わせを変えることにより、デュークラバシチニブの飽和溶解度に幅をもたせることができるため、デュークラバシチニブの量は一般に剤形の制約には制限されず、むしろ、治療濃度域および治療に必要な最小有効量を基にすることが出来る。高濃度のデュークラバシチニブを完全に溶解し、デュークラバシチニブの飽和溶解度を高めるために、製剤には、エーテル溶媒を組合せ、および/または酸性緩衝液(例えば塩酸、クエン酸など)が添加され得る。
【0024】
また、本発明は、本明細書に記載のデュークラバシチニブを含む局所組成物を投与する方法も関連する。例えば、本発明の態様は、対象の乾癬、乾癬性関節炎、狼瘡、または円形脱毛症を治療する方法であって、本明細書に記載のデュークラバシチニブを含む局所組成物を対象に投与することを特徴とする方法に関連する。デュークラバシチニブの局所投与は、経口投与と比較して複数の利点(例えば投与量の減量、深刻な副作用の減少および/または軽減、および(治療量のデュークラバシチニブを局所に送達することなどによる)有効性の改善、および患者の服薬遵守の改善)がもたらされ得る。
【0025】
一部の本発明の実施態様は、対象における乾癬を治療または予防する方法であって、本明細書に記載のデュークラバシチニブを含む局所組成物を対象の皮膚に局所投与することを特徴とする方法に関連する。一般に、当該皮膚は、乾癬による影響を受けているか、または受けやすい領域(例えば、乾癬のプラークなど、乾癬と関連する症状が表れている、または表れやすい皮膚の領域)である。
【0026】
さらに、本発明の実施態様は、対象における乾癬性関節炎を治療、または対象における乾癬性関節炎と関連する症状を予防する方法であって、本明細書に記載のデュークラバシチニブを含む局所組成物を対象の皮膚に投与することを特徴とする方法に関連する。
【0027】
その他の本発明の実施態様は、対象における円形脱毛症を治療、または対象の円形脱毛症に関連する脱毛を予防する方法であって、本明細書に記載のデュークラバシチニブを含む局所組成物を対象の皮膚に投与することを特徴とする方法に関連する。円形脱毛症に悩む対象に、皮膚の関連部位に組成物を局所投与することで、当該部位の発毛が促進され得る。円形脱毛症と関連する脱毛の再発を予防する方法として、本明細書に記載のデュークラバシチニブを含む局所医薬組成物は、円形脱毛症に関連する脱毛をこれまでに経験したことがある対象に投与されてもよく、ここで組成物は、例えば、脱毛しやすい可能性のある頭皮の特定の領域に投与される。
【0028】
本発明の実施態様は、さらに、対象における全身性エリテマトーデスを治療する方法であって、本明細書に記載のデュークラバシチニブを含む局所組成物を対象の皮膚に投与することを特徴とする方法に関連する。
【0029】
一部の実施態様において、本明細書に記載のデュークラバシチニブを含む局所組成物は、3日間、7日間、10日間、14日間、またはそれ以上にわたって対象(例えば乾癬やs乾癬性関節炎などに罹患している対象)に投与される。ある実施態様において、投与は数週間または数カ月(例えば1カ月、3カ月など)続いてもよい。さらに、本明細書に記載のデュークラバシチニブを含む局所組成物の投与とは、局所組成物を1日1回、1日2回、または1日3回、連続して投与することを特徴としてもよい。あるいは、例えば、1日おきに投与してもよく(例えば1日目と3日目に投与し、2日目は投与しない)、2日おきに投与してもよい(例えば1日目と4日目に投与し、2日目と3日目は投与しない)。
【0030】
本発明の文脈では、対象、特にヒトの対象は、患者とも表現され得る。
【0031】
本明細書に記載の任意の定義は、引用により本願明細書に組み込まれたあらゆる特許、特許出願および/または特許出願公報に記載の定義より優先される。引用により組み込まれている任意の特許、特許出願および/または特許出願公報、またはその他の文献の記載は、その記載と本明細書の間で矛盾が生じない範囲で引用により組み込まれ、矛盾が生じた場合は、その任意の矛盾のある記載は引用により組み込まれない。
【0032】
実施例
本発明は、以下の実施例によりさらに説明される。実施例は、本発明およびその実施を説明するためにのみ用いられ、本発明の範囲及び本質を制限するものとして解釈されるものではない。
【0033】
あらゆる測定が実験誤差の影響を受けるが、それらは本発明の主旨の範囲内である。
【0034】
実施例1: デュークラバシチニブの溶解度
デュークラバシチニブの溶解度を様々な溶媒で調査した。PEG 400では、溶解度が0.64%w/wであった。他の2つのエーテル溶媒、DEGEEおよびDMIでは、溶解度がそれぞれ0.62%w/wおよび0.51%w/wであった。N-メチル-2-ピロリドン(NMP)およびジメチルスルホキシド(DMSO)では、デュークラバシチニブの溶解度が高いことが示された。場合によってはこれらの溶媒が皮膚の炎症を起こし得るため、実施例における後述の製剤の開発には用いられなかった。
【表1】
【0035】
実施例2: 異なる溶媒系におけるデュークラバシチニブの溶解度
水は、水性のゲルおよびクリームにおいて必須成分であるため、水を含む様々な溶媒系におけるデュークラバシチニブの溶解度を調査した。表2の溶媒系の例はクリーム剤用に設計されたものである。溶媒系の全体の割合は、組成物の総重量%の80%までであり、残りの20%までが油性成分用として残されている。水または酸性緩衝液(水溶液)は、組成物全体の25%w/wを占める。
【0036】
PEG 400およびその他の溶媒2つ(DEGEEおよびDMI)のうちの少なくとも1つを含む溶媒系(2つ以上の溶媒を含む溶媒系)では、相乗効果が観測された。PEG 400、DEGEE、およびDMIを含む3溶媒系(S3)でのデュークラバシチニブの溶解度は、2溶媒系(S1およびS2)で観測したデュークラバシチニブの溶解度よりも高かったため、PEG 400、DEGEE、およびDMIを組み合せた3溶媒系(S3)は、デュークラバシチニブの溶解度が最も高い。緩衝液ではない蒸留水の代わりに酸性緩衝液が用いられた場合(S4、S5、およびS6)、試験した各溶媒系でさらに溶解度が大きくなることも観測された。
【表2】
【0037】
実施例3: デュークラバシチニブの局所製剤
全てのデュークラバシチニブ製剤は、溶媒成分にデュークラバシチニブを完全に溶解することで製造される。各製剤(実施例4、5、および6)に用いられる最大の薬剤のロードは、製剤で用いられる特定の溶媒における、デュークラバシチニブの飽和溶解度の80%に制限されている。医薬的に許容される賦形剤(例えばクリーム剤の油相、ならびに湿潤剤および皮膚コンディショナー)を非溶媒成分として加えた。Brij S2、Brij S721、およびポロキサマーを界面活性剤として用いた。ベンジルアルコールは、水性成分を含む製剤中の防腐剤として用いた。クエン酸、塩酸、および水酸化ナトリウムをpH調整剤として用いた。最終製品にデュークラバシチニブまたは賦形剤の沈殿がないかを確認するために、顕微鏡で検査を行った。
【表3】
【0038】
実施例4: 水性ゲル剤の製造
水性ゲル剤(製剤F1、F2、F3、F4、およびF5)を以下の方法により製造した。
1.溶媒および防腐剤(これらの実施態様ではベンジルアルコール)を容器に加え、均一になるまで撹拌した。
2.デュークラバシチニブを加え、デュークラバシチニブが(目視で)完全に溶解するまでこの混合物を撹拌した。
3.撹拌しながら水を滴下して加えた。
4.カルボマーを増粘剤として含む製剤(製剤F1、F2、およびF4)については、撹拌しながらカルボマーをゆっくりと加え、渦の状態を維持した。カルボマーが均一に分散するまで撹拌を続けた。次に、必要に応じてpHの調製を行い、残りは目的のバッチの大きさに十分な量の水を加えた。増粘剤としてHPCを含む製剤(製剤F3およびF5)については、必要に応じて製剤のpHを調製し、残りは水を加え、次いで撹拌しながらHPCを加えた。HPCが均一に分散するまで撹拌を続けた。
5.すべての製剤F1、F2、F3、F4、およびF5について、得られた混合物を終夜撹拌した。
【0039】
デュークラバシチニブまたは賦形剤の沈殿がないかを確認するために、各最終製品から得たサンプルについて顕微鏡で検査を行った。
【表4】
【0040】
実施例5: 非水性ゲル剤および軟膏剤の製造
非水性ゲル剤(製剤F7、F8、およびF9)を以下の方法により製造した。
1.PEG 400、DEGEE、およびプロピレングリコールを製剤中の目的量に沿って容器に加え、均一になるまで撹拌した。製剤F8については、0.5Mのクエン酸をDEGEEに加えた後、その他の溶媒と混合した。
2.製剤F8については、TPGSを加え、TPGSが融解するまで混合物を65℃で撹拌した。
3.デュークラバシチニブを加え、デュークラバシチニブが(目視で)完全に溶解するまでこの混合物を撹拌した。
4.増粘剤(この実施態様ではヒドロキシプロピルセルロース(HPC))を撹拌しながらゆっくりと加え、渦の状態を維持した。
5.終夜撹拌を続けた。
【0041】
軟膏剤(製剤F6)を以下のように製造した。
1.PEG 400およびDEGEEを容器に加え、均一になるまで撹拌した。
2.PEG 3350を別の容器に加え、PEG 3350が融解するまで70℃で加熱した。
3.デュークラバシチニブを最初の容器に加え、(目視で)完全に溶解するまで撹拌した。次いで、最初の容器の混合物を70℃で5分間加熱した。
4.撹拌しながら融解したPEG 3350を最初の容器に加えた。
5.最初の容器の混合物を、冷却するまでスパチュラを用いて手動で撹拌した。
【表5】
【0042】
実施例6: クリーム剤および乳化ゲル剤の製造
クリーム剤を以下の方法により製造した。
1.溶媒および防腐剤(この実施態様ではベンジルアルコール)を容器に加え、均一になるまで撹拌した。
2.油性賦形剤、界面活性剤、および乳化安定剤を使用する場合は別の容器に加えた。Brij S2、Brij S721、セチルアルコール、ステアリン酸、鉱油、ラノリン、グリセロール、および中鎖脂肪酸トリグリセリドを含むこれらの成分は、表6に記載されている。
3.デュークラバシチニブを最初の容器に加え、この混合物をデュークラバシチニブが(目視で)完全に溶解するまで撹拌した。
4.撹拌しながら水または緩衝液を最初の容器に滴下して加えた。別の容器の油相を融解するまで70℃で加熱した。
5.最初の容器の水相およびホモジナイザーの先端を70℃で加熱した。
6.別の容器の油相を最初の容器の水相に加えた。
7.2つの相を混合して均一にし、冷却するまで撹拌した。
8.必要に応じてpHを調製した。
9.撹拌しながら、水(目的のバッチの大きさに十分な量)を滴下して加えた。
10.混合物が均一になるまで撹拌を続けた。
【表6】
【0043】
実施例7: デュークラバシチニブ局所製剤の安定性
表7は、5種類の製剤(F1、F6、F12、F13、およびF14)を25℃または40℃で2週間または4週間保管した際の、安定性のデータを示す。製剤F1、F6、F12、およびF14は上述の通りである。デュークラバシチニブの純度は全ての製剤において99%を上回って維持されていた。
【表7】
【0044】
実施例8: インビトロ皮膚透過および浸透試験
厚さ500±50μmで摘出したヒトの皮膚に対するデュークラバシチニブの透過性および浸透性を評価するために、flow-through型拡散セルを用いた実験を行った。製剤を10mg/平方センチメートルで塗布した。表8は、製剤の塗布から24時間後に、表皮および真皮から抽出した薬剤の量(平均±標準偏差)およびレセプターコンパートメント内で測定された薬剤の量を示す。
【0045】
各製剤は、使用する溶媒系の溶解能に応じて適切な薬剤量を送達するように設計されるため、デュークラバシチニブの濃度(表8における薬剤のロード)は製剤によって異なる。デュークラバシチニブの濃度はF1とF13では類似しているが(それぞれ0.66%w/wおよび0.69%w/w)、24時間後に皮膚の層から抽出したデュークラバシチニブの量は、F1と比較してF13の方が有意に多かった。レセプターコンパートメント内のデュークラバシチニブの量も、F1と比較してF13の方が有意に多かった。レセプターコンパートメント内のデュークラバシチニブのレベルはF12が最も多く、表皮および真皮で測定したデュークラバシチニブの量はF13に次いで2番目に多かった。デュークラバシチニブ濃度が(F12中のデュークラバシチニブ0.50%w/wよりわずかに多く、)0.55%w/wであったF14は、F12と比較して、皮膚組織およびレセプターコンパートメント内のデュークラバシチニブの量は少なかった。これらの5種類の製剤中、F1およびF6は、F12、F13、およびF14と比較して、皮膚の層およびレセプターコンパートメント内でのデュークラバシチニブの量は低かった。
【0046】
皮膚の層よりレセプターコンパートメント中でより多量の薬剤を回収できる製剤が、経皮投与には適切であり得る。皮膚組織で局所的に作用することで効果を発揮する薬剤の局所製剤については、レセプターコンパートメント中の薬剤が、(F1で見られるように)低量であることが望ましい可能性もある。さらに、有効量の薬剤を皮膚組織へ送達する局所製剤は、(薬剤が皮膚を介して吸収されていたとしても、)薬剤の局所投与に適切であり得る。例えば、F12およびF14に示されているように、当該製剤は、レセプターコンパートメント中で回収されているデュークラバシチニブの量と比べて、より多量のデュークラバシチニブを皮膚の層に送達することが出来る。このような製剤は、デュークラバシチニブの有効量を標的の皮膚組織に最小限の副作用で送達するのに有用であり得る。
【表8】
【0047】
実施例9: ミニブタにおけるインビボでの単回投与製剤の研究
ミニブタにおける単回投与の実験を行った。当該動物の指定の背面に薄い均一な層となるように、対応する投与量を計算して、各製剤を最大許容量で塗布した。投与後の各時点(24時間および48時間)で、テープで角質層を剥ぎ取って除去した後、投与した部位をパンチ生検用の皮膚サンプルとして採取した。皮膚の表皮および真皮から脂肪組織を分離するために、熱を用いて生検を行った。表9は、5種類の製剤について、真皮投与から24時間後および48時間後の皮膚内で測定したデュークラバシチニブの量を示す。
【0048】
F1は最も高用量の7.18mg/kgで投与され、次いで高容量のF14は5.83mg/kgで投与された。投与から24時間後、F1では皮膚内で195ng/gのデュークラバシチニブ、F14では皮膚内で170ng/gのデュークラバシチニブが観測された。48時間後、F1およびF14ではそれぞれ量が264ng/gおよび416ng/gに増加した。F13を3.28mg/kgで投与すると、24時間後の皮膚中のデュークラバシチニブは206ng/gであり、48時間の皮膚中のデュークラバシチニブは436ng/gであったため、F14に匹敵するレベルの薬剤であった。F12はその他の製剤と比較して最もばらつきが大きく、F6は48時間後の皮膚内のデュークラバシチニブの量が最も少なかった。
【表9】
【0049】
実施例10: ミニブタにおけるインビボでの複数回投与製剤の研究
1日2回、14日間ミニブタの指定の背面にデュークラバシチニブの製剤を局所的に投与した。14日間の治療後、治療部位から生検用の皮膚を採取し、治療した皮膚におけるデュークラバシチニブの濃度を決定するために分析した。表10は、2種類の製剤(F1およびF14)の結果を示す。
【表10】
【0050】
本発明は、その好ましい実施態様を参照して特に記載および説明されているが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から離れることなく、その形態および詳細において様々な変更がされ得ることが、本開示を踏まえて当業者に理解されるであろう。
【国際調査報告】