(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】粉末ベースの付加製造のための耐亀裂性Co-Ni-Cr-W-La合金
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20241022BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20241022BHJP
B22F 1/065 20220101ALI20241022BHJP
B22F 10/25 20210101ALI20241022BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20241022BHJP
B22F 10/366 20210101ALI20241022BHJP
B22F 10/36 20210101ALI20241022BHJP
B22F 10/38 20210101ALI20241022BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20241022BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241022BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20241022BHJP
C22C 30/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B22F1/00 M
B22F1/05
B22F1/065
B22F10/25
B22F10/28
B22F10/366
B22F10/36
B22F10/38
B33Y70/00
B33Y10/00
B33Y50/02
C22C30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525886
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 US2022048955
(87)【国際公開番号】W WO2023081353
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515195347
【氏名又は名称】エリコン メテコ(ユーエス)インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】リ,ドンミョン
(72)【発明者】
【氏名】クダパ,サティヤ・エヌ
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA10
4K018BA04
4K018BB03
4K018BB04
4K018EA51
(57)【要約】
要約20~24重量%のNi、20~24重量%のCr、13~16重量%のW、0.2~0.50重量%のSi、0~3重量%のFe、0~1.25重量%のMn、0~0.015のB、>0のC、>0のLa、及び残量のCoを有する、粉末を含み、合金中のC対Laの含有量の比が、<1.75である、粉末ベースの付加製造のための合金が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末ベースの付加製造のための合金粉末であって、
粉末であって、
20~24重量%のNiと、
20~24重量%のCrと、
13~16重量%のWと、
0.2~0.50重量%のSiと、
>0重量%のMnと、
>0重量%のCと、
>0重量%のLaと、
残量のCoと、を含む、粉末を含み、
前記粉末中のC対Laの含有量の比が、0.1~1.75である、合金粉末。
【請求項2】
C含有量が、0.01~0.05重量%である、請求項1に記載の合金粉末。
【請求項3】
前記粉末が、10~120μmの粒度分布を有する、請求項1に記載の合金粉末。
【請求項4】
前記粉末が、球状形態、並びに10~50μmの粒度分布及び25~35μmのD50を有する、請求項1に記載の合金粉末。
【請求項5】
前記粉末が、
>0~3重量%のFeと、
>0~1.25重量%のMnと、
>0~0.015重量%のBと、を更に含む、請求項1に記載の合金粉末。
【請求項6】
三次元物品を付加製造するための方法であって、
請求項1に記載の合金粉末に、以下によって計算されるレーザ体積エネルギー密度を有する粉末ベースの付加製造プロセスを受けさせることを含み、
E
D=P/v.h.t、
式中、Pが、レーザ出力であり、vが、レーザ表面走査速度であり、hが、ハッチ間隔であり、tが、各溶接粉末層の層厚さであり、
前記三次元物品を印刷するための前記レーザ体積エネルギー密度E
Dが、50~150J/mm
3である、方法。
【請求項7】
前記三次元物品を印刷するための前記レーザ体積エネルギー密度E
Dが、75~100J/mm
3である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記三次元物品を印刷するための前記レーザ体積エネルギー密度E
Dが、80~90J/mm
3である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの溶接粉末層が適用され、各溶接粉末層の前記層厚さが、0.01~0.1mmの範囲内である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
各溶接粉末層の前記層厚さが、0.02~0.07mmの範囲内である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
亀裂のない構造を有する物品を三次元印刷するための方法であって、
Co-Ni-Cr-W-La合金粉末であって、重量%単位のC含有量対重量%単位のLa含有量の比が、1.75未満であるように、C及びLaを含む組成を有する、Co-Ni-Cr-W-La合金粉末の連続層を粉末ベースの付加製造プロセスに供給することと、
50J/mm
3~150J/mm
3の体積エネルギー密度を前記粉末の前記連続層に適用することと、を含む、方法。
【請求項12】
Co-Ni-Cr-W-La合金粉末組成のC含有量が、0.01~0.05重量%である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記Co-Ni-Cr-W-La合金粉末組成が、20~24重量%のNi、20~24重量%のCr、13~16重量%のW、0.2~0.50重量%のSi、及び>0重量%のMnを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記Co-Ni-Cr-W-La合金粉末組成が、>0~3.0重量%のFe、>0~1.25重量%のMn、及び>0~0.015重量%のBを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記付加製造プロセスが、選択的レーザ溶融(SLM)プロセス、レーザベースの粉末床溶融(L-PBF)プロセス、直接エネルギー堆積(DED)/レーザメタル堆積(LMD)プロセス、又は電子ビーム溶融(EBM)プロセスのうちの1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記体積エネルギー密度(E
D)が、以下の方程式から決定され、
E
D=P/v・h・t、
式中、Pが、W単位のレーザ出力であり、vが、レーザ表面走査速度であり、hが、ハッチ間隔であり、tが、前記粉末ベースの付加製造プロセスにおけるj前記溶接粉末層の各々の層厚さである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記粉末が、球状形態、並びに10~50μmの粒度分布及び25~35のD50μmを有する、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その開示が参照によりその全体で本明細書に明示的に組み込まれる、2021年11月5日に出願された米国仮出願第63/276191号の35 U.S.C.§119(e)の下での利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、レーザベースの粉末床溶融結合(laser-based powder bed fusion、L-PBF)としても知られる選択的レーザ溶融(selective laser melting、SLM)、直接エネルギー堆積(direct energy deposition、DED)/レーザ金属堆積(laser metal deposition、LMD)、又は電子ビーム溶融(electron beam melting、EBM)プロセスなどの粉末ベースの付加製造によって三次元金属物品を生産することに関する。特に、本開示は、SLM/L-PBF、LMD/DED、及びEBMプロセスによって、亀裂のない又はほぼ亀裂のない部品及び物品を製造するための類似組成の鋳造及び/又は鍛錬合金と比較して修正された化学組成を有するCo-Ni-Cr-W-La合金に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景情報の議論)
SLM/L-PBF(例えば、溶融物からの急速凝固)を用いた、3D印刷としても知られる金属付加製造の独自の処理に起因して、従来の合金が、SLM/L-PBFプロセスではなく、鍛造、圧延、又は鋳造プロセスのために本来開発されているため、これらの合金は、3D印刷中に亀裂を生じやすい。
【0004】
しばしば、付加製造のための材料が必要とされる場合、当業者は、シート、プレート、バー、又は鋳物を含む、圧延、鍛造、又は他の鍛錬形態で以前から使用されている既知の合金を使用する。頻繁に、鍛錬又は鋳造合金組成物の化学組成は、従来のCo-Ni-Cr-W-La合金の場合のように、付加製造のための粉末材料の仕様にコピーされる。しかしながら、これは、付加的に構築されたレーザ溶接金属物品に関する巨視亀裂及び/又は微小亀裂の問題につながり得る。
【0005】
3D印刷で使用される従来の合金は、Haynes合金188である。Haynes合金188のベースライン鍛錬/鋳造についての製造業者の情報によれば、合金は、ガスタングステンアーク(Gas Tungsten Arc、GTAW)、ガス金属アーク(Gas Metal Arc、GMAW)、被覆金属アーク(Shielded Metal Arc、SMAW)、電子ビーム溶接、及び抵抗溶接技術によって容易に溶接可能であるものとして分類される。Haynes International-HAYNES 188 alloy、www.haynesintl.com/docs/default-source/pdfs/new-alloy-brochures/high-temperature-alloys/brochures/188-brochureを参照されたい。製造業者の情報に基づいて、Haynes合金188の基本的合金組成は、溶接可能な材料のクラスにある。しかしながら、亀裂が、この従来の合金のSLM/L-PBF処理中に3D印刷材料で観察された。そのような亀裂は、レーザ溶接プロセス中に三次元金属部品に蓄積される内部応力によって主に引き起こされると一般に認められている(Fraunhofer ILT,「Flying High with VCSEL Heating,」press release,October 4,2018を参照)。
【0006】
内部応力は、生成された部品内の温度勾配によって引き起こされる。レーザスポットでは、例えば、融点を上回る温度が優勢である一方で、部品の残りの領域は急速に冷却される。形状及び合金に応じて、この温度勾配は、3D印刷材料の亀裂につながり得る。
【0007】
上記のFraunhoferのプレスリリースでは、Co-Ni-Cr-W-La合金における亀裂問題を解決するための従来のアプローチは、SLM/L-PBF機械の構築チャンバーのベースプレートから、又はより効果的には、能動的に溶接されている層を直接加熱することによって機械の構築チャンバーの上部からのいずれかで、3D印刷プロセス中に高温で粉末床を加熱することによって説明され、これは、最終的に亀裂につながる物品内の内部応力を回避又は低減する。後者の加熱プロセスを使用すると、最上層における温度は、亀裂を回避するために十分高い、最高900℃まで達し得る。
【0008】
しかしながら、完成した部品をそのような加熱された粉末床から取り出すことができる前に、それを周囲温度まで冷却しなければならない。粉末床の低い熱伝導率に起因して、粉末床の加熱及び冷却は、かなりの量の時間を必要とし、SLM/L-PBFプロセスの生産性の著しい減少につながる。更に、高価な加熱機器、断熱、及びプロセスチャンバーの適合が、この従来のプロセスでは必要である。現在市販されている市販のSLM/L-PBF機械は、高温で粉末床の加熱を提供する能力が限定されている。
【0009】
付加製造中のNi及びCoベースの合金における亀裂問題を解決するための別のアプローチは、高い外圧及び高温で熱処理を適用して、3D印刷材料に形成された任意の残存多孔性及び亀裂を閉鎖及び修復することである。これは、熱間等方圧加圧(Hot Isostatic Pressing、HIP)として知られている。HIPは、閉鎖内部細孔及び亀裂に効果的であるが、全ての表面亀裂を修復するわけではない。また、このHIPアプローチは、物品の3D印刷に対する追加の処理ステップを含み、これは、製造コストを増加させる。
【0010】
したがって、例えば、熱間等方圧加圧などの加圧熱処理によって亀裂を修復するための3D印刷後処理ステップを必要としない、粉末形態であり、加熱されていないか、又はわずかに加熱された粉末床で処理することができる、鍛錬/鋳造材料と同様のCo-Ni-Cr-W-La合金を提供する必要性がある。
【発明の概要】
【0011】
実施形態は、粉末床における付加製造中に微細構造に亀裂を形成する傾向が著しく低減した、三次元物品の粉末ベースの付加製造のための高いNi、Cr、及びW含有量を有するCoベースの合金、並びにそのような物品を製造するためのプロセスを提供する。本開示の実施形態では、Co-Ni-Cr-W-La合金組成物は、以下の化学組成を有する粉末を含む:
20.0~24.0重量%のNi、
20.0~24.0重量%のCr、
13.0~16.0重量%のW、
0.2~0.5重量%のSi、
0~3重量%のFe、
>0~1.25重量%のMn、
0~0.015重量%のB、
>0重量%のC、
>0重量%のLa、及び
残量のCo、並びに不可避の残留元素及び不純物。
【0012】
実施形態では、合金組成物は、0.05~0.15重量%の範囲のC(Carbon、炭素)含有量及び0.02~0.12重量%の範囲のLa(Lanthanum、ランタン)含有量を有する鍛錬材料として利用可能である。他の実施形態では、合金組成物は、粉末材料として提供される。粉末材料として、合金組成物は、10~100μmの範囲の典型的な粒度分布を有する、SLM/L-PBF、DED/LMD、又はEBMなどの粉末ベースの付加製造で使用することができ、これが、プロセスによって物品に形成される亀裂につながることは稀である。
【0013】
本開示の一実施形態では、炭素含有量は、0.05~0.15重量%である。本開示の好ましい実施形態では、炭素含有量は、0.05~0.10重量%である。本開示の別の実施形態では、炭素含有量は、0.01~0.05重量%である。本開示の更に別の実施形態では、炭素含有量は、0.01~0.04重量%である。本開示の別の実施形態では、炭素含有量は、0.01~0.03重量%である。
【0014】
例示的な実施形態では、合金組成物は、予熱なし及びHIPなしで、ある範囲の処理パラメータにわたってレーザベースの粉末床付加製造プロセスによって亀裂のない又はほぼ亀裂のない物品を生産するC/Laの比を含む。
【0015】
本発明者らは、複雑な形状の亀裂のない又はほぼ亀裂のない三次元物品が一貫して提供されることを意図している場合、従来のCo-Ni-Cr-W-La合金の鍛錬合金組成におけるC及びLaの一般に認められている含有量範囲が、粉末ベースの付加製造にとって許容できないほど広いC/Laの比を有することを見出した。従来のCo-Ni-Cr-W-La合金中のC及びLaの典型的な含有量範囲については、C/Laの理論上の最小比(C/La)minは、0.42であり、理論上の最大比(C/La)maxは、7.50である。従来のCo-Ni-Cr-W-La合金組成物のC及びLaの公称含有量範囲での比は、(C/La)nom=0.10/0.03=3.33である。
【0016】
本開示の実施形態では、Co-Ni-Cr-W-La合金実施形態におけるC/Laの含有量比は、0.1~2、好ましくは0.1~1.5、より好ましくは0.1~1である。
【0017】
本開示の有利な実施形態では、粉末形態のCo-Ni-Cr-W-La合金は、SLM/L-PBFなどの粉末ベースの付加製造プロセスで亀裂のない印刷を達成するために、<1.75のC/Laの比を有する。
【0018】
本開示の例示的な実施形態では、レーザベースの粉末床付加製造処理パラメータは、生産される金属物品の>99.90%の相対密度に変換される、<0.10体積%などの最終構造におけるわずかな量の多孔性を示す高密度構造を達成する。例示的な実施形態では、レーザ体積密度EDは、50~150J/mm3、好ましくは75~100J/mm3、より好ましくは80~90J/mm3の範囲内である。
【0019】
レーザ体積エネルギー密度は、以下のように計算される:
ED=P/(v.h.t)
式中、Pは、ワット単位のレーザ出力であり、vは、レーザ表面走査速度(mm/s単位)であり、hは、ハッチ間隔(mm単位)であり、tは、粉末ベースの付加製造プロセス中に形成される溶接粉末層の各々の層厚さ(mm単位)である。
【0020】
本開示の他の実施形態では、付加製造された金属部品内の各溶接粉末層の層厚さは、0.01~0.1mmの範囲内、好ましくは0.02~0.07mmの範囲内である。
【0021】
実施形態は、粉末を含む粉末ベースの付加製造のための合金粉末を対象とする。粉末は、20~24重量%のNi、20~24重量%のCr、13~16重量%のW、0.2~0.50重量%のSi、>0重量%のMn、>0重量%のC、>0重量%のLa、及び残量のCoを含む。粉末中のC対Laの含有量の比は、0.1~1.75である。
【0022】
実施形態によれば、C含有量は、0.01~0.05重量%であり得る。
【0023】
実施形態によれば、粉末は、10~120μmの粒度分布を有し得る。
【0024】
他の実施形態では、粉末は、球状形態、並びに10~50μmの粒度分布及び25~35μmのD50を有する。
【0025】
なおも他の実施形態によれば、粉末は、>0~3重量%のFe、>0~1.25重量%のMn、及び>0~0.015重量%のBを更に含み得る。
【0026】
なおも他の実施形態では、三次元物品を付加製造するための方法は、請求項1に記載の合金粉末に、ED=P/v.h.tによって計算されるレーザ体積エネルギー密度を有する粉末ベースの付加製造プロセスを受けさせることを含むことができ、式中、Pは、レーザ出力であり、vは、レーザ表面走査速度であり、hは、ハッチ間隔であり、tは、各溶接粉末層の層厚さである。三次元物品を印刷するためのレーザ体積エネルギー密度EDは、50~150J/rnm3、好ましくは75~100J/rnm3、より好ましくは80~90J/rnm3であり得る。更に、少なくとも1つの溶接粉末層が適用され得、各溶接粉末層の層厚さは、0.01~0.1mmの範囲内、好ましくは0.02~0.07mmの範囲内であり得る。
【0027】
実施形態は、亀裂のない構造を有する物品を三次元印刷するための方法を対象とする。本方法は、Co-Ni-Cr-W-La合金粉末であって、重量%単位のC含有量対重量%単位のLa含有量の比が、1.75未満であるように、C及びLaを含む組成を有する、Co-Ni-Cr-W-La合金粉末の連続層を粉末ベースの付加製造プロセスに供給することと、50J/mm3~150J/mm3の体積エネルギー密度を粉末の連続層に適用することと、を含む。
【0028】
実施形態によれば、Co-Ni-Cr-W-La合金粉末組成のC含有量は、0.01~0.05重量%であり得る。
【0029】
他の実施形態によれば、Co-Ni-Cr-W-La合金粉末組成は、20~24重量%のNi、20~24重量%のCr、13~16重量%のW、0.2~0.50重量%のSi、及び>0重量%のMnを更に含み得る。Co-Ni-Cr-W-La合金粉末組成は、>0~3.0重量%のFe、>0~1.25重量%のMn、及び>0~0.015重量%のBを更に含み得る。
【0030】
実施形態では、付加製造プロセスは、選択的レーザ溶融(SLM)プロセス、レーザベースの粉末床溶融(L-PBF)プロセス、直接エネルギー堆積(DED)/レーザメタル堆積(LMD)プロセス、又は電子ビーム溶融(EBM)プロセスのうちの1つを含むことができる。
【0031】
なおも他の実施形態によれば、体積エネルギー密度(energy density、ED)は、方程式:ED=P/v・h・tから決定され得、式中、Pは、W単位のレーザ出力であり、vは、レーザ表面走査速度であり、hは、ハッチ間隔であり、tは、粉末ベースの付加製造プロセスにおける溶接粉末層の各々の層厚さである。
【0032】
なおも更に他の実施形態によれば、粉末は、球状形態、並びに10~50μmの粒度分布及び25~35μmのD50を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
先行技術のCo-Ni-Cr-W-La合金組成物は、固体鍛錬形態又は粉末形態であるかどうにかかわらず、互いから独立して、Cが0.05重量%~0.15重量%の範囲であり、ランタンが0.02重量%~0.12重量%の範囲である、炭素(C)及びランタン(La)含有量を必要とする。先行技術のCo-Ni-Cr-W-La組成物中の元素の典型的又は公称含有量は、C=0.10重量%及びLa=0.03重量%の含有量を含む。先行技術のCo-Ni-Cr-W-La組成物中のC及びLaの典型的含有量が、(C/La)max=7.50及び(C/La)min=0.42の範囲のC/Laの含有量比を提供する一方で、先行技術のCo-Ni-Cr-W-La組成物中のC及びLaの公称含有量は、(C/La)nom=3.33の含有量比を提供する。
【0034】
これらの範囲は、亀裂のない又はほぼ亀裂のない物品が生産されることを意図している場合、粉末ベースの付加製造で使用するためには許容できないほど広いことが本発明者らによって見出されている。
【実施例】
【0035】
比較例1
残量のCo並びに不可避の残留元素及び不純物とともに、Ni=22.1重量%、Cr=22.2重量%、W=14.6重量%、Si=0.38重量%、Fe=0.2重量%、P<0.01重量%、S<0.01重量%、B<0.001重量%、C=0.09重量%、La=0.02重量%の実際の組成を有する、先行技術のCo-Ni-Cr-W-La組成物を、溶融及びガス噴霧化によって生産して、一般に約20~50μmのサイズの粒子並びに33μmのD50及び49μmのD90を有する、大部分が球状の粉末を提供した。この材料をSLM/L-PBF粉末床付加製造プロセスで使用して、業界標準のL-PBF機械及び85J/mm3の体積エネルギー密度を使用して3D印刷物品を生産した。
【0036】
比較例1に従って生産された3D印刷物品は、構築されたままの状態でいくつかの亀裂を示し、機械的特性について更に試験されなかった。以下の表1は、比較例1の先行技術のCo-Ni-Cr-W-La組成物が、生産された3D印刷物品について4.50のC/Laの含有量比を有することを示す。
【0037】
表1に示されるように、先行技術のCo-Ni-Cr-W-La合金組成物が従来の溶接技術によって容易に溶接可能であるものとして分類されるにもかかわらず、亀裂のない若しくはほぼ亀裂のない構造が必要とされるか、又は更に所望される場合、この先行技術のCo-Ni-Cr-W-La合金を含有する粉末の化学組成は、粉末ベースの付加加工によって3D印刷物品を生産するために好適ではない。
【0038】
【0039】
本開示及び実施形態の一態様は、本開示のCo-Ni-Cr-W-La合金組成物中の具体的な量/含有量における具体的な元素/成分及びそれらの関係の相互依存性を識別し、それによって、粉末ベースの付加製造において3D印刷されたときに亀裂のない構造を提供することによって、先行技術のCo-Ni-Cr-W-La合金組成物によって示される問題を解決することである。しかしながら、実施形態は、明示的に開示された例に限定されず、実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、先行技術のCo-Ni-Cr-W-La組成物によって示される問題を解決する、本開示に従って提案される任意の実施形態を含むと理解される。更に、表1に示されるように、C及びLaなどの既知のCo-Ni-Cr-W-La合金組成物中のある特定の元素の含有量、並びにこれらの先行技術のCo-Ni-Cr-W-La合金組成物中のC/Laの含有量比は、粉末ベースの付加製造による3D印刷物品の亀裂を回避するために効果的ではない。
【0040】
実施例1
本開示の好ましい実施形態による金属合金を、溶融及びガス噴霧化によって生産して、約20~50μmのサイズの粒子、32μmのD50、及び48μmのD90を有する、概して球状の粉末を生産した。この実施例1の金属合金の化学組成は、残量のCo並びに不可避の残留元素及び不純物を有する、Ni=21.7重量%、Cr=21.7重量%、W=14.1重量%、Fe=0.2重量%、Mn=0.5重量%、Si=0.36重量%、C=0.06重量%、La=0.04重量%、B<0.006重量%、P<0.01重量%、S<0.01重量%であった。この材料をSLM/L-PBF粉末床付加製造で使用して、業界標準のL-PBF機械及び85J/mm3の体積エネルギー密度を使用して3D印刷物品を生産した。表1は、実施例1の金属合金のC/Laの含有量比が、生産された3D印刷物品について1.50であったことを示す。
【0041】
実施例2
本開示の別の実施形態による金属合金を、溶融及びガス噴霧化によって生産して、概して約20~50μmのサイズの粒子、並びに32μmのD50、及び49μmのD90を有する、大部分が球状の粉末を提供した。金属合金の化学組成は、残量のCo並びに不可避の残留元素及び不純物を有する、Ni=22.1重量%、Cr=22.3重量%、W=14.4重量%、Fe=0.2重量%、Mn=0.2重量%、Si=0.39重量%、C=0.10重量%、La=0.08重量%、B<0.010重量%、P<0.01重量%、S<0.01重量%であった。表1に示されるように、この実施例2の金属合金は、C/La=1.25の含有量比を有し、85J/mm3の体積エネルギー密度を有する業界標準のL-PBF機械を使用して3D印刷物品を生産するために、SLM/L-PBF粉末床付加製造で使用された。生産された物品は、それらの構築されたままの構造では亀裂を示さず、続いて、試料が熱処理され、室温及び高温で機械的特性について試験された。
【0042】
実施例2による材料から生産された3D印刷試料を、1177℃で45分間熱処理し、続いて、空気中で急速に冷却した。続いて、熱処理された材料を、6.41mmのゲージ長における直径を有する試験片に機械加工し、次いで、20℃、537℃及び649℃でASTM E8-16aに従って材料の引張特性を決定するための試験を受けさせた。以下の表2に示されるように、試験官2に従って生産された材料は、AMS 5608Gに規定されたものなどの鍛錬材料のデータと比較して、優れた降伏強度及び最大引張強度を示した。また、材料の延性値(破断点伸び)は、良好な構築及びこの材料の結果として生じる亀裂のない構造を示す、上昇した値を示す。
【0043】
【0044】
加えて、L-PBF機械構築プレートに平行又は垂直な主軸Y及びZを伴って構築された試料の強度と延性との間の差である、実施例1及び2に記載される材料の異方性は、比較的低く、これは有益である。
【0045】
実施例1及び2に記載されるCo-Ni-Cr-W-La合金は、高温で使用するために意図されているため、いわゆる応力-破断試験の形態のクリープ試験を、典型的には、市販の材料について927℃の温度において76MPaの応力下で23時間の最小寿命を必要とする、Co-Ni-Cr-W-La材料のプレートに対するAMS 5608Gの要件に従って実施した。応力を8~10時間毎に13.8MPa増加させた。
【0046】
応力-破断試験の結果が、表3に示される。表3に示されるように、実施例2による合金組成物について市販の鍛錬材料の要件を超え、これは、実施例2に従って生産された材料の健全で亀裂のない構造に起因する。
【0047】
【0048】
本発明は、上記に記載される実施形態及び実施例に限定されない。例えば、開示されたCo-Ni-Cr-W-La合金は、SLM/L-PBFプロセスに好適であるだけでなく、記載された利点を伴って、レーザ金属堆積(LMD)又は直接エネルギー堆積(DED)並びに電子ビーム溶融(EBM)プロセスとも称される粉末ノズル付加製造プロセスにも好適である。
【0049】
更に、少なくとも、本発明は、例えば、簡潔性又は効率性などのために、特定の例示的な実施形態の開示により、それを作製及び使用することを可能にする様式で本明細書に開示されるため、本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の追加の要素又は追加の構造の非存在下で実践することができる。
【0050】
前述の実施例は、単に説明の目的のために提供されており、決して本発明の限定として解釈されるものではないことに留意されたい。本発明は、例示的な実施形態を参照して記載されているが、本明細書で使用されている用語は、限定の用語ではなく、説明及び例証の用語であることが理解される。その態様において本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、現在記述及び修正されている添付の特許請求の範囲内で、変更が行われ得る。本発明は、特定の手段、材料、及び実施形態を参照して本明細書に記載されているが、本発明は、本明細書に開示される詳細に限定されることを意図しておらず、むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲内であるような全ての機能的に同等な構造、方法、及び使用にまで及ぶ。
【国際調査報告】