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▶ ヒタチ・エナジー・リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】送電線の距離保護
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/08 20200101AFI20241022BHJP
【FI】
G01R31/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525982
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 EP2022080859
(87)【国際公開番号】W WO2023079100
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】202141050738
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】21217593.9
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナイドゥ,オーディ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ,ニィートゥ
(72)【発明者】
【氏名】ズビック,シニサ
(72)【発明者】
【氏名】ガイッチ,ゾラン
【テーマコード(参考)】
2G033
【Fターム(参考)】
2G033AA01
2G033AB01
2G033AC02
2G033AD15
2G033AG14
(57)【要約】
本開示は、複数の相を搬送する送電線の距離保護のための方法に関し、本方法は、送電線で搬送される第1の相および接地電位によって形成された第1の電気ループの第1のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得することと、送電線で搬送される第2の相および接地電位によって形成された第2の電気ループの第2のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得することと、第1の端子に見られる送電線の見かけのインピーダンスを第1のインピーダンスおよび第2のインピーダンスに基づいて計算することと、見かけのインピーダンスに基づいて距離保護を実行することと、を含む。本開示はまた、各々の装置、コンピュータ可読媒体、およびシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の相のうちの第1の相および第2の相を相-相-地絡故障における故障相として含む、前記相-相-地絡故障に対して前記複数の相を搬送する送電線の距離保護のための方法であって、前記第1の相は前記第2の相とは異なり、前記方法は、
前記送電線で搬送される前記第1の相および接地電位によって形成された第1の電気ループの第1のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得することと、
前記送電線で搬送される前記第2の相および接地電位によって形成された第2の電気ループの第2のインピーダンスを前記ゼロシーケンス電流に基づいて取得することと、
第1の端子に見られる前記送電線の見かけのインピーダンスを前記第1のインピーダンスおよび前記第2のインピーダンスに基づいて計算することと、
前記見かけのインピーダンスに基づいて前記距離保護を実行することと、を含む方法。
【請求項2】
前記送電線の前記見かけのインピーダンスは、前記ゼロシーケンス電流を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記距離保護を実行することは、距離保護リレーを制御することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記計算された見かけのインピーダンスに基づいて相-相-地絡故障の点を識別することをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記識別された相-相-地絡故障の点が前記第1の端子と前記第2の端子との間の前記距離内にあるかどうかを判定することをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記見かけのインピーダンスを計算することは、前記第1のインピーダンスと前記第2のインピーダンスとの平均を計算することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のインピーダンスおよび前記第2のインピーダンスを取得すること、および/または前記送電線リレーの前記見かけのインピーダンスを計算することは、リレー、コントローラ、サーバ、またはクラウドのうちの少なくとも1つによって実行される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記送電線は、平行線、同軸ケーブル、平面送電線、またはラジアルラインのいずれか1つである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の端子は、第1の発電機に結合され、および/または前記送電線を終端している、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記送電線は第2の端子によってさらに終端され、および/または第2の発電機は前記第2の端子に結合される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の発電機および/または前記第2の発電機は、同期発電機または非同期発電機、特に再生可能発電プラント、より具体的にはインバータベースのリソースIBRを備える、および/または同期発電機または非同期発電機、特に再生可能発電プラント、より具体的にはインバータベースのリソースIBRである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
複数の相のうちの第1の相および第2の相を相-相-地絡故障における故障相として含む、前記相-相-地絡故障に対して前記複数の相を搬送する送電線の距離保護のための装置であって、前記第1の相は前記第2の相とは異なり、前記装置はプロセッサを備え、前記プロセッサは、
前記送電線で搬送される前記第1の相および接地電位によって形成された第1の電気ループの第1のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得し、
前記送電線で搬送される前記第2の相および接地電位によって形成された第2の電気ループの第2のインピーダンスを前記ゼロシーケンス電流に基づいて取得し、
第1の発電機に結合された第1の端子に見られる前記送電線の見かけのインピーダンスを前記第1のインピーダンスおよび前記第2のインピーダンスに基づいて計算し、
前記見かけのインピーダンスに基づいて前記距離保護を実行するように構成されている、装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、請求項2~11のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実行するための命令を担持する、送電線の距離保護のためのコンピュータ可読媒体。
【請求項15】
送電線と、請求項12または13に記載の装置とを備える、複数の相を搬送する送電線の距離保護のためのシステムであって、前記装置は、請求項2~11のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されたプロセッサを備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電機を接続する送電線の距離保護を実行するための方法、装置、コンピュータ可読媒体、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
送電線に接続された発電機、特に分散型発電機を備える電気グリッドは、グリッド網を通じた故障のさらなる伝播を防止するために厳しいフォルトライドスルー条件を必要とし、それによってグリッドの故障が存在しても信頼性の高い電力供給を保証する。多くのシステムは、送電線に沿ってリレーを実施し、故障検出の場合、故障した線路の電気的絶縁を達成するようにリレーを制御する。特に、距離保護原理は、電気的特性、特にリレーから見た見かけのインピーダンスを計算することによって、リレーの位置に対する故障位置を決定する。グリッド内のリレーは、計算された故障位置に基づいて制御される。
【0003】
従来の同期発電機は、分散型エネルギーリソース(DER)、特に非同期発電機と比較して、異なる電気的特性を示す。発電された電気の周波数は、グリッドの動作周波数とは異なるため、インバータを介して同期されなければならない。したがって、そのような発電機は、光起電力発電機および風力タービン発電機を含むインバータベースのリソース(IBR)とも呼ばれる。既存の線路保護、特に距離保護では、同期発電機の電気的特性に基づいて故障位置が計算されるため、非同期発電機を考慮すると重大なエラーが発生する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下では、2つの同期発電機を備えるシステムと、同期発電機および非同期発電機を備えるシステムとを提示する。さらに、見かけのインピーダンス計算方法およびそれらの性能を添付の図面と共に提示する。
【0005】
図1a)および図1b)は、発電機に接続された2端子送電線システムの概略図を示す。図1a)は、2つの同期発電機を接続する2端子送電線システムの概略図を示す。220kVおよび50Hzで動作する2端子送電線システム100は、送電線110を用いて第2の同期発電機102に接続された第1の同期発電機101を備える。送電線110は、一方の側では第1の同期発電機101に向かってBUS N(等価的には、端子Nまたはリモート端子)111によって終端され、他方の側では第2の同期発電機102に向かってBUS M(等価的には、端子Mまたはローカル端子)112によって終端される。端子N111と端子M112との距離は、この例では100kmである。端子M112は、リレー、特に距離保護制御方法によって制御される距離リレーを備える。電圧計122は、端子M112の電圧を監視し、測定値をインテリジェント電子デバイス(IED)121に供給する。電流計123は、端子M112の電流を測定し、測定値をIED121に供給する。IED121は、距離保護方法に必要な任意の計算を実行するように構成される。故障131は、端子M112と端子N111とによってカバーされる距離の間の送電線110上の任意の点に位置する。
【0006】
図1b)は、1つの同期発電機および1つの非同期発電機をデルタ-ワイ、Δ-Y、変圧器およびワイ-デルタ、Y-Δ、変圧器を介して接続する2端子送電線システムの概略図を示す。Δ-Y変圧器は、単相負荷を3相間で中性点に分配でき、Y-Δ変圧器ではその逆となる。220kVおよび50Hzで動作する2端子送電線システム150は、送電線160を用いて、Y-Δ変圧器153およびΔ-Y変圧器152を介して第2の非同期発電機(複数の風力タービン)154に接続された第1の同期発電機151を備える。この例では、各風力タービンの定格有効電力は2MWであり、100台の風力タービンが考慮されている。送電線160は、一方の側では第1の同期発電機151に向かってBUS N(等価的には、端子Nまたはリモート端子)161によって終端され、他方の側では第2の非同期発電機162に向かってBUS M(等価的には、端子Mまたはローカル端子)162によって終端される。端子N251と端子M152との距離は、例示的に100kmである。端子M152は、リレー、特に距離保護制御方法によって制御される距離リレーを備える。電圧計172は、端子M162の電圧を監視し、測定値をIED171に供給する。電流計173は、端子M162の電流を測定し、測定値をIED171に供給する。IED171は、本開示の距離保護方法に必要な任意の計算を実行するように構成される。故障181は、端子M162と端子N161とによってカバーされる距離の間の送電線160上の任意の点に位置する。
【0007】
図2は、送電線システム、特に図1a)および図1b)に開示されているシステムにおける相B-相C-接地(BC-g)故障の等価回路図である。送電線は、第1の相(相A)を搬送する第1の線路210と、第2の相(相B)を搬送する第2の線路220と、第3の相(相C)を搬送する第3の線路230とを備える。端子M112および162で測定された相A、B、およびCに対応する電圧フェーザは、各々、VAM、VBM、およびVCMとして示されている。同様に、端子N111および161で測定された相A、BおよびCに対応する電圧フェーザは、各々、VAN、VBNおよびVCNとして示される。端子M112および162で測定された相BおよびCに対応する電流フェーザは、それぞれIBMおよびICMと示される。同様に、端子N111および161で測定された相BおよびCに対応する電流フェーザは、それぞれIBNおよびICNとして示される。端子Mから故障点F131、181までの線路インピーダンスはZFとして示される。故障耐性の相間および相接地間の構成要素は、それぞれRppおよびRpgとして示される。相Bおよび相Cの故障によって形成される電気ループは、ZF、Rpp、およびRpgを備え、相-相-接地ループと呼ばれる。
【0008】
見かけのインピーダンス計算方法は、以下の工程を含む。
キルヒホッフの電圧法則(KVL)を第1の相-接地(相B-接地)ループに適用すると、第1の電圧方程式は次のように得られる。
【0009】
【数1】
【0010】
同様に、KVLを第2の相対接地(相C対接地)ループに印加すると、第2の電圧方程式は次のように得られる。
【0011】
【数2】
【0012】
Rpp=Rpg,と仮定して、式(1)および式(2)間の電圧差を計算すると、次のようになる。
【0013】
【数3】
【0014】
ここで、RFは故障耐性を示し、Rpp=Rpgと等価である。式(3)の両辺を電流差IBM-ICMで割ると、従来の見かけのインピーダンスが得られる。
【0015】
【数4】
【0016】
ここで、NおよびDは、式(4)における項((IBM-ICM+IBN-ICN)/(IBM-ICM))の分子および分母を示す。NおよびDは複素電流項であり、したがって、NとDとの間の相角が0に収束するにつれて、項((IBM-ICM+IBN-ICN)/(IBM-ICM))は実数値に収束する。これは、線路インピーダンス、端子M112および162における電源インピーダンス、ならびに端子N111および161における電源インピーダンスの相角の間の差が最小である場合に当てはまり、これは、項((IBM-ICM+IBN-ICN)/(IBM-ICM))の虚数部を無視できるものにする。均質システムは、NとDとの間の相角が無視できるシステムを指し、項((IBM-ICM+IBN-ICN)/(IBM-ICM))をほぼ現実的なものにする。対照的に、非均質システムは、NとDとの間の相角が無視できないシステムを指し、項((IBM-ICM+IBN-ICN)/(IBM-ICM))を有意な虚数部を含むようにする。式(4)から明らかなように、式(4)中の計算された見かけのインピーダンスZappの虚数部は、RFおよび項((IBM-ICM+IBN-ICN)/(IBM-ICM))の虚数部と共に線形に変化する。したがって、高さRFを有する非均質システムは、式(4)中の計算された見かけのインピーダンスZappのリアクタンスに著しいシフトを引き起こす。式(4)中の計算された見かけのインピーダンスZappの大幅なリアクタンスのシフトの効果は、添付の図面を用いて以下の説明に示される。ここで、式(4)に従って見かけのインピーダンスを計算することは、見かけのインピーダンスを計算する第1の方法と呼ばれる。したがって、第1の見かけのインピーダンスは、第1の方法に従って計算された見かけのインピーダンスを指す。
【0017】
図3は、0オーム故障耐性(等価的に、RF=0Ω)を考慮した、図1a)に示す均質システムおよび非均質システムにおける、第1の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。
【0018】

角度プロット351および352は、均質システムおよび非均質システムにおける、測定期間にわたる、式(4)中の項((IBM-ICM+IBN-ICN)/(IBM-ICM))の分子(N)301と分母(D)302との間の相角差のシミュレーション結果を示す。角度プロット351および352のy軸は度単位の角度であり、そのx軸は時間である。60%の相-相-地絡故障が想定され、その結果、実際の故障見かけのインピーダンスZtrue=2.14+30.46jとなり、jは虚数を表し、故障開始は0.1sである。軌道プロット353および354は、各々の見かけのインピーダンス311およびゾーン1インピーダンス境界312の軌道のシミュレーション結果を示す。軌道プロット353および354における見かけのインピーダンス311の各々の軌道は、角度プロット351および352に示される時間枠内で経時的に第1の見かけのインピーダンスに従う。軌道プロット353および354のy軸は仮想値であり、x軸は実値である。見かけのインピーダンス計算355および356は、式(4)を使用して相-相-地絡故障の見かけのインピーダンスを計算し、見かけのインピーダンス311の各々の軌道が最終的に角度プロット351および352に示される時間枠内に到達するセトリング見かけのインピーダンスを表す。
【0019】
均質システムでは、故障開始後に測定される分子301と分母302との間の相角差は約12°である。見かけのインピーダンス計算355は、RF=0Ωを有するシステムについて、項((IBM-ICM+IBN-ICN)/(IBM-ICM))が計算された見かけのインピーダンスにいかなるリアクタンスシフトも引き起こさないことを示す。したがって、見かけのインピーダンス計算355で計算された第1の見かけのインピーダンスは、実際の故障インピーダンスに等しい。
【0020】
非均質システムでは、故障開始後に測定される分子301と分母302との間の相角差は、約36°である。見かけのインピーダンス計算356は、RF=0Ωを有するシステムについて、項((IBM-ICM+IBN-ICN)/(IBM-ICM))が、有意な相角差にもかかわらず、見かけのインピーダンス計算356で計算された見かけのインピーダンスにいかなるリアクタンスのシフトも引き起こさないことを示す。したがって、見かけのインピーダンス計算356で計算された見かけのインピーダンスは、実際の故障インピーダンスに等しい。
【0021】
図4は、20オーム故障耐性(等価的に、RF=20Ω)を考慮した、図1a)に示す均質システムおよび非均質システムにおける、第1の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。
【0022】
角度プロット451および452は、均質システムおよび非均質システムそれぞれにおける、測定期間にわたる、式(4)中の項((IBM-ICM+IBN-ICN)/(IBM-ICM))の分子(N)401と分母(D)402との相角差のシミュレーション結果を示す。角度プロット451および452のy軸は度単位の角度であり、そのx軸は時間である。60%の相-相-地絡故障が想定され、その結果、実際の故障見かけのインピーダンスZtrue=2.14+30.46jとなり、jは虚数を表し、故障開始は0.1sである。軌道プロット453および454は、各々の見かけのインピーダンス411およびゾーン1インピーダンス境界412の軌道のシミュレーション結果を示す。軌道プロット453および454における見かけのインピーダンス411の各々の軌道は、角度プロット451および452に示される時間枠内で経時的に第1の見かけのインピーダンスに従う。軌道プロット453および454のy軸は仮想値であり、x軸は実値である。見かけのインピーダンス計算455および456は、式(4)を使用して相-相-地絡故障の見かけのインピーダンスを計算し、見かけのインピーダンス411の各々の軌道が最終的に角度プロット451、452に示される時間枠内に到達するセトリング見かけのインピーダンスを表す。
【0023】
均質システムでは、故障開始後に測定される分子401と分母402との間の相角差は約8°である。見かけのインピーダンス計算455は、RF=20Ωを有するシステムについて、項((IBM-ICM+IBN-ICN)/(IBM-ICM))が見かけのインピーダンスの実数成分と虚数成分の両方にシフトを引き起こすことを示す。それにもかかわらず、計算された見かけのインピーダンスは依然としてゾーン1の境界内に存在する。言い換えれば、故障は、BUS M112およびBUS N111の2つの端子によってカバーされる距離内で発生したと判定される。
【0024】
非均質システムでは、故障開始後に測定される分子401と分母402との間の相角差は、約30°である。見かけのインピーダンス計算456は、RF=20Ωを有するシステムでは、項((IBM-ICM+IBN-ICN)/(IBM-ICM))が見かけのインピーダンスの実数成分と虚数成分の両方にシフトを引き起こすことを示す。その結果、見かけのインピーダンスは、ゾーン1の境界内の点に安定しない。言い換えれば、BUS M112およびBUS N111の2つの端子によってカバーされる距離内に故障が発生していないと判定される。
【0025】
図5は、0オームおよび20オームの故障耐性を考慮した、特に図1b)に示すような、非均質システムにおける、第1の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。
【0026】
角度プロット551および552は、0オームおよび20オームの故障耐性を考慮した非均質なシステムにおける、測定期間にわたる、式(4)中の項((IBM-ICM+IBN-ICN)/(IBM-ICM))の分子(N)501と分母(D)502との間の相角差のシミュレーション結果を示す。角度プロット551および552のy軸は度単位の角度であり、そのx軸は時間である。60%の相-相-地絡故障が想定され、その結果、実際の故障見かけのインピーダンスZtrue=2.14+30.46jとなり、jは虚数を表し、故障開始は0.6sである。軌道プロット553および554は、各々の見かけのインピーダンス511およびゾーン1インピーダンス境界512の軌道のシミュレーション結果を示す。軌道プロット553および554における見かけのインピーダンス511の各々の軌道は、角度プロット551および552に示される時間枠内で経時的に見かけのインピーダンス計算に従う。軌道プロット553および554のy軸は仮想値であり、x軸は実値である。見かけのインピーダンス計算555および556は、式(4)を使用して相-相-地絡故障の見かけのインピーダンスを計算し、見かけのインピーダンス511の各々の軌道が最終的に角度プロット551および552に示される時間枠内に到達するセトリング見かけのインピーダンスを表す。
【0027】
非均質システムでは、故障開始後に測定される分子501と分母502との間の相角差は、約70°である。見かけのインピーダンス計算555は、RF=0Ωを有するシステムについて、この項((IBM-ICM+IBN-ICN)/(IBM-ICM))は、有意な相角差にもかかわらず、計算された見かけのインピーダンスにいかなるリアクタンスのシフトを引き起こさないことを示す。したがって、見かけのインピーダンス計算555で計算された見かけのインピーダンスは、実際の故障インピーダンスに等しい。
【0028】
非均質システムでは、故障開始後に測定される分子501と分母502との間の相角差は、約79°である。見かけのインピーダンス計算556は、RF=20Ωを有するシステムでは、項((IBM-ICM+IBN-ICN)/(IBM-ICM))が見かけのインピーダンスの実数成分と虚数成分の両方にシフトを引き起こすことを示す。その結果、見かけのインピーダンスは、ゾーン1の境界512内の点に安定しない。言い換えれば、BUS M162およびBUS N161の2つの端子によってカバーされる距離内に故障が発生していないと判定される。
【0029】
上記の例から明らかなように、第1の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能は、非均質送電線システム、特に非同期発電機を含むシステムに適用されると劣化する。特に、相-相-地絡故障の場合、ローカル電流とリモート電流との間の相角差と故障耐性との複合影響は、計算された見かけのインピーダンスのリアクタンスを著しくオーバーリーチさせ、その結果、インピーダンス軌道はゾーン1の境界の外側の点に落ち着く。その結果、2つの端子によってカバーされる距離内に故障が発生していないと判定される。
【0030】
したがって、同期発電機および/またはDER、特に非同期発電機を備える非均質送電システムで実施される距離保護のための、相-相-地絡故障の場合に送電線の見かけのインピーダンスを計算するために使用される計算方法を改善する必要がある。上述したように、従来の方法は見かけのインピーダンスを計算するが、そのリアクタンス部分は、インピーダンス軌道が四辺形特性の第4象限に入るほど著しくオーバーリーチしている。このような問題は、見かけのインピーダンスの計算においてゼロシーケンス成分を含むことによって本開示によって有利に解決される。特に、IBR接続線路の場合、ゼロシーケンス電流は、変圧器によって供給されるため、コンバータ制御システムによって制限されない。さらに、ゼロシーケンス電流の大きさは、これらのシステムの正シーケンス電流よりも大きい。
【0031】
本開示は、複数の相を搬送する送電線の距離のための方法に関し、本方法は、送電線で搬送される第1の相および接地電位によって形成された第1の電気ループの第1のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得することと、送電線で搬送される第2の相および接地電位によって形成された第2の電気ループの第2のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得することと、第1の端子に見られる送電線の見かけのインピーダンスを第1のインピーダンスおよび第2のインピーダンスに基づいて計算することと、見かけのインピーダンスに基づいて距離保護を実行することと、を含む。
【0032】
本開示はまた、複数の相のうちの第1の相および第2の相を相-相-地絡故障における故障相として含む、相-相-地絡故障に対して複数の相を搬送する送電線の距離保護のための方法であって、第1の相は第2の相とは異なる方法に関し、本方法は、送電線で搬送される第1の相および接地電位によって形成された第1の電気ループの第1のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得することと、送電線で搬送される第2の相および接地電位によって形成された第2の電気ループの第2のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得することと、第1の端子に見られる送電線の見かけのインピーダンスを第1のインピーダンスおよび第2のインピーダンスに基づいて計算することと、見かけのインピーダンスに基づいて距離保護を実行することと、を含む。
【0033】
様々な実施形態は、好ましくは、以下の特徴を実装することができる。
一実施形態によれば、複数の相は、第1の相、第2の相、および第3の相であるか、それらを含む。複数の相は、少なくとも1つのさらなる相、例えば、第4、第5、第6などの相を含んでもよい。
【0034】
一実施形態によれば、複数の相のうちの第1の相は、相-相-地絡故障の第1の故障相である。
【0035】
一実施形態によれば、複数の相のうちの第2の相は、相-相-地絡故障の第2の故障相である。
【0036】
一実施形態によれば、第1のインピーダンスは、第1の相の第1の端子に見られる見かけのインピーダンスである。一実施形態によれば、第1のインピーダンスは、第1の端子で測定された第1の相の電圧および第1の端子で測定された第1の相の電流に基づいて決定される。一実施形態によれば、第1のインピーダンスは、すべてのそれぞれの複数の相の電流、特にそこから計算されるゼロシーケンスに基づいて決定される。
【0037】
一実施形態によれば、第2のインピーダンスは、第2の相の第1の端子に見られる見かけのインピーダンスである。一実施形態によれば、第2のインピーダンスは、第1の端子で測定された第2の相の電圧および第1の端子で測定された第1の相の電流に基づいて決定される。一実施形態によれば、第2のインピーダンスは、すべてのそれぞれの複数の相の電流、特にそこから計算されるゼロシーケンスに基づいて決定される。
【0038】
一実施形態によれば、送電線の見かけのインピーダンスを計算することは、第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとを結合すること、特に線形結合すること、より詳細には平均化することであるか、またはそれを含む。一実施形態によれば、送電線の計算された見かけのインピーダンスは、第1の端子に見られる、特に、相-相-地絡故障が発生したときの送電線上の相-相-地絡故障の方向を見た、見かけのインピーダンスである。一実施形態によれば、計算された見かけのインピーダンスは、相-相-地絡故障が発生したときに第1の端子で測定された電流および電圧に基づいて計算される。したがって、送電線の計算された見かけのインピーダンスは、相-相-接地相における送電線の故障が発生した第1および第2の相の等価インピーダンスであり得る。見かけのインピーダンスが計算される基準となる、第1の端子で測定される電圧は、第1の端子で測定される第1の相および第2の相の電圧である。見かけのインピーダンスが計算される基準となる、第1の端子で測定される電流は、すべてのそれぞれの複数の相の電流、特にそこから計算されるゼロシーケンスである。
【0039】
一実施形態によれば、本方法は、送電線で搬送される第1の相および接地電位によって形成された第1の電気ループの第1のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて計算することと、送電線で搬送される第2の相および接地電位によって形成された第2の電気ループの第2のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて計算することと、を含む。言い換えれば、一実施形態によれば、第1のインピーダンスおよび/または第2のインピーダンスを取得する代わりに、またはそれに加えて、第1のインピーダンスおよび/または第2のインピーダンスが計算される。
【0040】
一実施形態によれば、送電線の見かけのインピーダンスは、ゼロシーケンス電流を含む。
【0041】
一実施形態によれば、距離保護を実行することは、距離保護リレーを制御することを含む。
【0042】
一実施形態によれば、本方法は、計算された見かけのインピーダンスに基づいて相-相-地絡故障の点を識別することを含む。
【0043】
一実施形態によれば、本方法は、識別された相-相-地絡故障の点が第1の端子と第2の端子との間の距離内にあるかどうかを判定することを含む。
【0044】
一実施形態によれば、見かけのインピーダンスを計算することは、第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとの平均を計算することを含む。
【0045】
一実施形態によれば、第1のインピーダンスおよび第2のインピーダンスを取得すること、および/または送電線リレーの見かけのインピーダンスを計算することは、リレー、コントローラ、サーバ、またはクラウドのうちの少なくとも1つによって実行される。
【0046】
一実施形態によれば、送電線は、平行線、同軸ケーブル、平面送電線、またはラジアルラインのいずれか1つである。
【0047】
一実施形態によれば、第1の端子は、第1の発電機に結合され、および/または送電線を終端している。
【0048】
一実施形態によれば、送電線は第2の端子によってさらに終端され、および/または第2の発電機は第2の端子に結合される。
【0049】
一実施形態によれば、第1の発電機および/または第2の発電機は、同期発電機または非同期発電機、特に再生可能発電プラント、より具体的にはインバータベースのリソースIBRを備える、および/または同期発電機または非同期発電機、特に再生可能発電プラント、より具体的にはインバータベースのリソースIBRである。一実施形態によれば、ゼロシーケンス電流は、相電流のフェーザ和である。
【0050】
一実施形態によれば、ゼロシーケンス電流は、発電機の変圧器によって供給されるため、コンバータ制御システムによって制限されない送電線、特にIBR接続線路内にある。
【0051】
一実施形態によれば、ゼロシーケンス電流の大きさは、正シーケンス電流よりも大きい。
【0052】
一実施形態によれば、相の任意の組み合わせは、相-相-地絡故障を引き起こす可能性がある。
【0053】
本開示はまた、複数の相を搬送する送電線を保護するための装置に関し、装置はプロセッサを備え、プロセッサは、送電線で搬送される第1の相および接地電位によって形成された第1の電気ループの第1のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得し、送電線で搬送される第2の相および接地電位によって形成された第2の電気ループの第2のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得し、第1の発電機に結合された第1の端子に見られる送電線の見かけのインピーダンスを第1のインピーダンスおよび第2のインピーダンスに基づいて計算し、見かけのインピーダンスに基づいて距離保護を実行するように構成される。
【0054】
本開示はさらに、複数の相のうちの第1の相および第2の相を相-相-地絡故障における故障相として含む、相-相-地絡故障に対して複数の相を搬送する送電線の距離保護のための装置であって、第1の相は第2の相とは異なる装置に関し、装置はプロセッサを備え、プロセッサは、送電線で搬送される第1の相および接地電位によって形成された第1の電気ループの第1のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得し、送電線で搬送される第2の相および接地電位によって形成された第2の電気ループの第2のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得し、第1の発電機に結合された第1の端子に見られる送電線の見かけのインピーダンスを第1のインピーダンスおよび第2のインピーダンスに基づいて計算し、見かけのインピーダンスに基づいて距離保護を実行するように構成される。
【0055】
一実施形態によれば、複数の相は、第1の相、第2の相、および第3の相であるか、それらを含む。複数の相は、少なくとも1つのさらなる相、例えば、第4、第5、第6などの相を含んでもよい。
【0056】
一実施形態によれば、複数の相のうちの第1の相は、相-相-地絡故障の第1の故障相である。
【0057】
一実施形態によれば、複数の相のうちの第2の相は、相-相-地絡故障の第2の故障相である。
【0058】
一実施形態によれば、第1のインピーダンスは、第1の相の第1の端子に見られる見かけのインピーダンスである。一実施形態によれば、第1のインピーダンスは、第1の端子で測定された第1の相の電圧および第1の端子で測定された第1の相の電流に基づいて決定される。一実施形態によれば、第1のインピーダンスは、すべてのそれぞれの複数の相の電流、特にそこから計算されるゼロシーケンスに基づいて決定される。
【0059】
一実施形態によれば、第2のインピーダンスは、第2の相の第1の端子に見られる見かけのインピーダンスである。一実施形態によれば、第2のインピーダンスは、第1の端子で測定された第2の相の電圧および第1の端子で測定された第1の相の電流に基づいて決定される。一実施形態によれば、第2のインピーダンスは、すべてのそれぞれの複数の相の電流、特にそこから計算されるゼロシーケンスに基づいて決定される。
【0060】
一実施形態によれば、プロセッサは、第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとを結合すること、特に線形結合すること、より具体的には平均化することによって、送電線の見かけのインピーダンスを計算するように構成されている。一実施形態によれば、送電線の計算された見かけのインピーダンスは、第1の端子に見られる、特に、相-相-地絡故障が発生したときの送電線上の相-相-地絡故障の方向を見た、見かけのインピーダンスである。一実施形態によれば、計算された見かけのインピーダンスは、相-相-地絡故障が発生したときに第1の端子で測定された電流および電圧に基づいて計算される。したがって、送電線の計算された見かけのインピーダンスは、相-相-接地相における送電線の故障が発生した第1および第2の相の等価インピーダンスであり得る。見かけのインピーダンスが計算される基準となる、第1の端子で測定される電圧は、第1の端子で測定される第1の相および第2の相の電圧である。見かけのインピーダンスが計算される基準となる、第1の端子で測定される電流は、すべてのそれぞれの複数の相の電流、特にそこから計算されるゼロシーケンスである。
【0061】
一実施形態によれば、送電線の見かけのインピーダンスは、ゼロシーケンス電流を含む。
【0062】
一実施形態によれば、プロセッサは、距離保護リレーを制御することを含むことによって距離保護を実行するように構成される。
【0063】
一実施形態によれば、プロセッサは、計算された見かけのインピーダンスに基づいて相-相-地絡故障の点を識別することをさらに実行するように構成される。
【0064】
一実施形態によれば、プロセッサは、識別された相-相-地絡故障の点が第1の端子と第2の端子との間の距離内にあるかどうかを判定することをさらに実行するように構成される。
【0065】
一実施形態によれば、プロセッサは、第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとの平均を計算することを含むことによって見かけのインピーダンスを計算するように構成される。
【0066】
一実施形態によれば、プロセッサは、リレー、コントローラ、サーバ、またはクラウドのうちの少なくとも1つを使用して、第1のインピーダンスおよび第2のインピーダンスを取得し、および/または送電線リレーの見かけのインピーダンスを計算するように構成される。
【0067】
一実施形態によれば、送電線は、平行線、同軸ケーブル、平面送電線、またはラジアルラインのいずれか1つである。
【0068】
一実施形態によれば、第1の端子は、第1の発電機に結合され、および/または送電線を終端している。
【0069】
一実施形態によれば、送電線は第2の端子によってさらに終端され、および/または第2の発電機は第2の端子に結合される。
【0070】
一実施形態によれば、第1の発電機および/または第2の発電機は、同期発電機または非同期発電機、特に再生可能発電プラント、より具体的にはインバータベースのリソースIBRを備える、および/または同期発電機または非同期発電機、特に再生可能発電プラント、より具体的にはインバータベースのリソースIBRである。
【0071】
一実施形態によれば、ゼロシーケンス電流は、相電流のフェーザ和である。
一実施形態によれば、ゼロシーケンス電流は、発電機の変圧器によって供給されるため、コンバータ制御システムによって制限されない送電線、特にIBR接続線路内にある。
【0072】
一実施形態によれば、ゼロシーケンス電流の大きさは、正シーケンス電流よりも大きい。
【0073】
一実施形態によれば、相の任意の組み合わせは、相-相-地絡故障を引き起こす可能性がある。
【0074】
本開示はさらに、送電線と、上述の装置実施形態のいずれか1つによる装置とを含む、複数の相を搬送する送電線の距離保護のためのシステムに関し、装置は、上述の方法実施形態のうちのいずれか1つを実行するように構成されたプロセッサを備える。
【0075】
本開示の様々な例示的な実施形態は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することによって容易に明らかになる特徴を提供することを対象とする。様々な実施形態によれば、例示的なシステム、方法、およびデバイスが本明細書に開示される。しかしながら、これらの実施形態は限定ではなく例として提示されていることが理解され、本開示を読んだ当業者には、開示された実施形態に対する様々な修正が本開示の範囲内に留まりながら行われ得ることが明らかであろう。
【0076】
したがって、本開示は、本明細書に記載および図示された例示的な実施形態および用途に限定されない。さらに、本明細書に開示される方法におけることの特定の順序および/または階層は、単なる例示的な手法である。設計の選好に基づいて、開示された方法またはプロセスのことの特定の順序または階層は、本開示の範囲内に留まりながら再配置することができる。したがって、当業者であれば、本明細書に開示される方法および技術は、サンプルの順序で様々なステップまたは動作を提示し、本開示は、特に明記されない限り、提示される特定の順序または階層に限定されないことを理解するであろう。
【0077】
以下、本開示の例示的な実施形態について説明する。記載された実施形態のいずれか1つのいくつかの態様は、特に明記されない限りまたは明らかでない限り、いくつかの他の実施形態にも見られ得ることに留意されたい。しかしながら、了解度を高めるために、各態様は、最初に言及されたときにのみ詳細に説明され、同じ態様の繰り返しの説明は省略される。
【0078】
上記および他の態様ならびにそれらの実施態様は、図面、説明、および特許請求の範囲においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1a図1a)および図1b)は、本開示の一実施形態による発電機に接続された2端子送電線システムの概略図を示す。
図1b図1a)および図1b)は、本開示の一実施形態による発電機に接続された2端子送電線システムの概略図を示す。図1a)および図1b)は、本開示の一実施形態による発電機に接続された2端子送電線システムの概略図を示す。
図2図2は、本開示の一実施形態による送電線システムにおける相B-相C-設置(BC-g)故障の等価回路図である。
図3図3は、図1a)に示す均質および非均質システムにおける、第1の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。
図4図4は、図1a)および図1b)にそれぞれ示される均質および非均質システムにおける、第1の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。
図5図5は、図1b)に示す非均質システムにおける、第1の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。
図6図6は、本開示の一実施形態による方法のフローチャートを示す。
図7a図7a)および図7b)は、図1b)に示す非均質システムにおける、第1および第2の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。
図7b図7a)および図7b)は、図1b)に示す非均質システムにおける、第1および第2の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。
図8a図8a)および図8b)は、図1b)に示す非均質システムにおける、第1および第2の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。
図8b図8a)および図8b)は、図1b)に示す非均質システムにおける、第1および第2の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。
図9図9は、図1b)に示す非均質システムにおける、第1および第2の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。
図10図10は、図1b)に示す非均質システムにおける、第1および第2の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。
図11a図11a)および図11b)は、装置および装置と送電線とを備えるシステムを示す。
図11b図11a)および図11b)は、装置および装置と送電線とを備えるシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図6は、本開示の一実施形態による方法のフローチャートを示す。一実施形態によれば、図6に示すフローチャートは、複数の相を搬送する送電線の距離保護のための方法、特に、複数の相のうちの第1の相および第2の相を相-相-地絡故障における故障相として含む、相-相-地絡故障のための方法であり、第1の相は第2の相とは異なる。ステップS601は、送電線で運ばれる第1の相および接地電位によって形成された第1の電気ループの第1のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得する。順次、ステップS602は、送電線で運ばれる第2の相および接地電位によって形成された第2の電気ループの第2のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得する。次に、ステップS603は、第1の端子に見られる送電線の見かけのインピーダンスを第1のインピーダンスおよび第2のインピーダンスに基づいて計算する。次に、ステップ604において、見かけのインピーダンスに基づいて距離保護が実行される。
【0081】
あるいは、第1の端子に見られる見かけのインピーダンスの計算は、等価物を用いて、任意の他の等価物によって、任意の他の等価物見た見かけのインピーダンスの計算として解釈することができる。見かけのインピーダンスは、本開示における第1の端子である注入点における電圧と電流との間の比として定義されることが当業者によって理解される。
【0082】
一実施形態によれば、複数の相は、第1の相、第2の相、および第3の相であるか、それらを含む。複数の相は、少なくとも1つのさらなる相、例えば、第4、第5、第6などの相を含んでもよい。
【0083】
一実施形態によれば、送電線の見かけのインピーダンスは、ゼロシーケンス電流を含む。
【0084】
一実施形態によれば、距離保護を実行することは、距離保護リレーを制御することを含む。
【0085】
一実施形態によれば、本方法は、見かけのインピーダンスに基づいて相-相-地絡故障の点を識別することを含む。
【0086】
一実施形態によれば、本方法は、識別された相-相-地絡故障の点が第1の端子と第2の端子との間の距離内にあるかどうかを判定することを含む。
【0087】
一実施形態によれば、見かけのインピーダンスを計算することは、第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとの平均を計算することを含む。
【0088】
一実施形態によれば、第1のインピーダンスおよび第2のインピーダンスを取得すること、および/または送電線リレーの見かけのインピーダンスを計算することは、リレー、コントローラ、サーバ、またはクラウドのうちの少なくとも1つによって実行される。
【0089】
一実施形態によれば、送電線は、平行線、同軸ケーブル、平面送電線、またはラジアルラインのいずれか1つである。
【0090】
一実施形態によれば、第1の端子は、第1の発電機に結合され、および/または送電線を終端している。
【0091】
一実施形態によれば、送電線は第2の端子によってさらに終端され、および/または第2の発電機は第2の端子に結合される。
【0092】
一実施形態によれば、第1の発電機および/または第2の発電機は、同期発電機または非同期発電機、特に再生可能発電プラント、より具体的にはインバータベースのリソースIBRを備える、および/または同期発電機または非同期発電機、特に再生可能発電プラント、より具体的にはインバータベースのリソースIBRである。一実施形態によれば、ゼロシーケンス電流は、相電流のフェーザ和である。
【0093】
一実施形態によれば、ゼロシーケンス電流は、発電機の変圧器によって供給されるため、コンバータ制御システムによって制限されない送電線、特にIBR接続線路内にある。
【0094】
一実施形態によれば、ゼロシーケンス電流の大きさは、正シーケンス電流よりも大きい。
【0095】
一実施形態によれば、相の任意の組み合わせは、相-相-地絡故障を引き起こす可能性がある。
【0096】
一実施形態によれば、第1の電圧方程式は、以下のように図2の第1の相-接地(相B-接地)ループにキルヒホッフの電圧法則(KVL)を適用することによって得られる。
【0097】
【数5】
【0098】
同様に、第2の電圧方程式は、以下のように図2の第2の相-接地(相C-接地)ループにキルヒホッフの電圧法則(KVL)を適用することによって得られる。
【0099】
【数6】
【0100】
ここで、
I0Mは端子Mにおけるゼロシーケンス電流を示し、Kは(Z-Z)/Zによって定義される補償係数を示し、ZおよびZは、それぞれゼロシーケンスおよび正シーケンスのラインインピーダンスを示す。
【0101】
第1の相-接地ループの第1のインピーダンスは、以下のように式(5)に基づいて取得される。
【0102】
【数7】
【0103】
同様に、第2の相-接地ループの第2のインピーダンスは、以下のように式(6)に基づいて取得される。
【0104】
【数8】
【0105】
式(7)の第1のインピーダンスと式(8)の第2のインピーダンスを足すと次のようになる。
【0106】
【数9】
【0107】
ここで、
【0108】
【数10】
【0109】
【数11】
【0110】
【数12】
【0111】
【数13】
【0112】
相-相-接地ループの見かけのインピーダンスは、式(9)を2で割ることによって計算される。
【0113】
【数14】
【0114】
ここで、Z'=((PS+QR)/2QS)である。項Z'の相角は最小であり、特に約0.1°である。式(8)中の計算された見かけのインピーダンスZBC-gにおいて、最小のリアクタンスシフトを引き起こす項Z'の最小相角の効果を、添付の図を用いて以下の説明で説明する。
【0115】
一実施形態によれば、複数の相のうちの第1の相(上記実施形態では相B)は、相-相-地絡故障(上記実施形態では相B-相C-地絡故障)の第1の故障相である。
【0116】
一実施形態によれば、複数の相のうちの第2の相(上記実施形態では相C)は、相-相-地絡故障(上記実施形態では相B-相C-地絡故障)の第2の故障相である。
【0117】
一実施形態によれば、第1のインピーダンス(上記実施形態では式(7)に従って計算されたインピーダンス)は、第1の相(上記実施形態では相B)の第1の端子に見られる見かけのインピーダンスである。一実施形態によれば、第1のインピーダンスは、第1の端子で測定された第1の相の電圧および第1の端子で測定された第1の相の電流に基づいて決定される。一実施形態によれば、第1のインピーダンスは、すべてのそれぞれの複数の相の電流、特にそこから計算されるゼロシーケンスに基づいて決定される。
【0118】
一実施形態によれば、第2のインピーダンス(上記実施形態では式(8)に従って計算されたインピーダンス)は、第2の相(上記実施形態では相C)の第1の端子に見られる見かけのインピーダンスである。一実施形態によれば、第2のインピーダンスは、第1の端子で測定された第2の相の電圧および第1の端子で測定された第1の相の電流に基づいて決定される。一実施形態によれば、第2のインピーダンスは、すべてのそれぞれの複数の相の電流、特にそこから計算されるゼロシーケンスに基づいて決定される。
【0119】
一実施形態によれば、送電線の見かけのインピーダンスを計算することは、第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとを結合すること、特に線形結合すること、より詳細には平均化すること(例えば、式(10))であるか、またはそれを含む。一実施形態によれば、送電線の計算された見かけのインピーダンス(上記実施形態における式(10)に従って計算されたインピーダンス)は、第1の端子に見られる、特に、相-相-地絡故障が発生したときの送電線上の相-相-地絡故障の方向を見た、見かけのインピーダンスである。一実施形態によれば、計算された見かけのインピーダンスは、相-相-地絡故障が発生したときに第1の端子で測定された電流および電圧に基づいて計算される。したがって、送電線の計算された見かけのインピーダンスは、相-相-接地相における送電線の故障が発生した第1および第2の相の等価インピーダンスであり得る。見かけのインピーダンスが計算される基準となる、第1の端子で測定される電圧は、第1の端子で測定される第1の相および第2の相の電圧である。見かけのインピーダンスが計算される基準となる、第1の端子で測定される電流は、すべてのそれぞれの複数の相の電流、特にそこから計算されるゼロシーケンスである。
【0120】
ここで、式(10)に従って見かけのインピーダンスを計算することは、見かけのインピーダンスを計算するための第2の方法と呼ばれる。したがって、第2の見かけのインピーダンスは、第2の方法に従って計算された見かけのインピーダンスを指す。
【0121】
図7a)および図7b)は、0オーム、10オーム、および20オームの故障耐性を考慮した、図1b)に提示された非均質システムにおける、第1および第2の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。
【0122】
図7a)に示される表は、0オーム、10オーム、および20オームの故障耐性を考慮した、図1b)に示される非均質システムについて第1の方法で計算された計算された第1の見かけのインピーダンス711および第2の方法で計算された第2の見かけのインピーダンス712を要約している。
【0123】
図7b)は、第1の見かけのインピーダンス711および第2の見かけのインピーダンス712、ならびにゾーン1インピーダンス境界713の軌道のシミュレーション結果を示す軌道プロット710、720、730を示す。軌道プロット710、720、730のy軸は仮想値であり、x軸は実値である。計算された見かけのインピーダンスは、図7a)に要約されており、第1の見かけのインピーダンス711および第2の見かけのインピーダンス712の各々の軌道が最終的に到達するセトリング見かけのインピーダンスを表す。60%の相-相-地絡故障が想定され、その結果、実際の故障見かけのインピーダンスZtrue=2.14+30.46jとなり、jは虚数を表す。あるいは、iは、図7a)の表に示されるように、虚数を示す。
【0124】
第1の軌道プロット710は、RF=0Ωを考慮した第1の見かけのインピーダンス軌道711および第2の見かけのインピーダンス軌道712を示し、第2の軌道プロット720は、RF=10Ωを考慮した第1の見かけのインピーダンス軌道711および第2の見かけのインピーダンス軌道712を示す。最初の2つの軌道プロット710および720から明らかなように、第1の見かけのインピーダンス711ならびに第2の見かけのインピーダンス712は、ゾーン1の境界713内の点に安定し、それにより、2つの端子BUS M162およびBUS N161によってカバーされる距離内の故障を正確に識別する。
【0125】
第3の軌道プロット730は、RF=20Ωを考慮した第1の見かけのインピーダンス軌道711および第2の見かけのインピーダンス軌道712を示す。第1の見かけのインピーダンス711は、ゾーン1の境界713内の点に安定することができず、誤った故障判定をもたらす。対照的に、第2の見かけのインピーダンス712は、ゾーン1の境界713内の点に安定し、それにより、2つの端子BUS M162およびBUS N161によってカバーされる距離内の故障を正確に識別する。
【0126】
図8a)および図8b)は、様々な故障前負荷電流を考慮した、図1b)に提示された非均質システムにおける、第1および第2の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。
【0127】
図8a)に示す表は、50A、370A、750A、および1500Aの故障前負荷電流(IPF)を考慮した、図1b)に提示された非均質システムの計算された第1の見かけのインピーダンス811および第2の見かけのインピーダンス812を要約している。
【0128】
図8b)は、第1の見かけのインピーダンス811および第2の見かけのインピーダンス812、ならびにゾーン1インピーダンス境界813の軌道のシミュレーション結果を示す軌道プロット810、820、830および840を示す。軌道プロット810、820、830および840のy軸は仮想値であり、x軸は実値である。図8a)に要約された計算された第1の見かけのインピーダンスおよび第2の見かけのインピーダンスは、第1の見かけのインピーダンス811および第2の見かけのインピーダンス812の各々の軌道が最終的に到達するセトリング見かけのインピーダンスを表す。RF=20Ωである線路の50%における相-相-地絡故障が想定され、その結果、実際の故障見かけのインピーダンスZtrue=1.78+25.39jとなり、jは虚数を表す。あるいは、iは、図8a)の表に示されるように、虚数を示す。
【0129】
第1の軌道プロット810は、IPF=50Aを考慮した第1の見かけのインピーダンス軌道811および第2の見かけのインピーダンス軌道812を示し、第2の軌道プロット820は、IPF=370Aを考慮した第1の見かけのインピーダンス軌道811および第2の見かけのインピーダンス軌道812を示し、第3の軌道プロット830は、IPF=750Aを考慮した第1の見かけのインピーダンス軌道811および第2の見かけのインピーダンス軌道812を示す。最初の3つの軌道プロット810、820、および830から明らかなように、第1の見かけのインピーダンス811の軌道は、ゾーン1の境界813内の点に安定することができず、誤った故障判定をもたらす。対照的に、第2の見かけのインピーダンス812は、ゾーン1の境界813内の点に到達し、それにより、2つの端子BUS M162およびBUS N161によってカバーされる距離内の故障を正確に識別する。
【0130】
第4の軌道プロット840は、IPF=1500Aを考慮した見かけのインピーダンス軌道を示す。第1の見かけのインピーダンス811および第2の見かけのインピーダンス812の軌道は、ゾーン1の境界813内の点に安定し、それにより、2つの端子BUS M162およびBUS N161によってカバーされる距離内の故障を正確に識別する。
【0131】
図9は、RF=0ΩおよびRF=20Ωを有する送電線のラジアルラインを考慮した、図1b)に提示された非均質システムにおける、第1および第2の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。
【0132】
図9は、第1の見かけのインピーダンス911および第2の見かけのインピーダンス912、ならびにゾーン1インピーダンス境界913の軌道のシミュレーション結果を示す軌道プロット910および920を示す。軌道プロット910および920のy軸は仮想値であり、x軸は実値である。RF=0ΩおよびRF=20Ωであるラジアルラインの50%における相-相-地絡故障が想定されている。軌道プロット910および920から明らかなように、第1の見かけのインピーダンス911および第2の見かけのインピーダンス912の軌道は、ゾーン1の境界913内の点に安定し、それにより、2つの端子BUS M162およびBUS N161によってカバーされる距離内の故障を正確に識別する。
【0133】
図10は、様々な電源-線路インピーダンス比(SIR)を考慮した、図1b)に提示された非均質システムにおける、第1および第2の方法に従って計算された見かけのインピーダンスの性能を示す。SIR=0.3、SIR=1、SIR=2である。
【0134】
図10は、第1の見かけのインピーダンス1001、第2の見かけのインピーダンス1002、およびゾーン1インピーダンス境界1003の軌道のシミュレーション結果を示す軌道プロット1010、1020、および1030を示す。軌道プロット1010、1020および1030のy軸は仮想値であり、x軸は実値である。RF=20Ωであるラジアルラインの50%における相-相-地絡故障が想定されている。
【0135】
第1の軌道プロット1010は、リモート端子161におけるSIR=0.3の見かけのインピーダンス軌道を示す。第1の軌道プロット1010から明らかなように、第1の見かけのインピーダンス1001の軌道は、ゾーン1の境界1003内に到達することができず、誤った故障判定をもたらす。対照的に、第2の見かけのインピーダンス1002の軌道は、ゾーン1の境界1003内の点に到達し、それにより、2つの端子BUS M162およびBUS N161によってカバーされる距離内の故障を正確に識別する。
【0136】
第2の軌道プロット1020および第3の軌道プロット1030は、それぞれSIR=1およびSIR=2を考慮して、第1の見かけのインピーダンス1001ならびに第2の見かけのインピーダンス1002の軌道がゾーン1の境界1003内の各々の点に到達することを示している。その結果、故障位置は、BUS M162およびBUS N161の2つの端子によってカバーされる距離内に存在するものとして正しく識別される。
【0137】
図11a)および図b)は、装置1110と、装置1110および送電線1120を備えるシステム1100とを示す。送電線1120は、図1に示す例示的な送電線のいずれであってもよい。装置1110は、図6に例示されている工程を実行するように構成されているプロセッサを備える。
【0138】
一実施形態によれば、装置1110は、複数の相を搬送する送電線の距離保護用である。一実施形態によれば、装置1110は、複数の相のうちの第1の相および第2の相を相-相-地絡故障における故障相として含む、相-相-地絡故障に対して複数の相を搬送する送電線の距離保護のためのものであり、第1の相は第2の相とは異なる。
【0139】
一実施形態によれば、複数の相は、第1の相、第2の相、および第3の相であるか、それらを含む。複数の相は、少なくとも1つのさらなる相、例えば、第4、第5、第6などの相を含んでもよい。
【0140】
一実施形態によれば、複数の相のうちの第1の相は、相-相-地絡故障の第1の故障相である。
【0141】
一実施形態によれば、複数の相のうちの第2の相は、相-相-地絡故障の第2の故障相である。
【0142】
一実施形態によれば、第1のインピーダンスは、第1の相の第1の端子に見られる見かけのインピーダンスである。一実施形態によれば、第1のインピーダンスは、第1の端子で測定された第1の相の電圧および第1の端子で測定された第1の相の電流に基づいて決定される。一実施形態によれば、第1のインピーダンスは、すべてのそれぞれの複数の相の電流、特にそこから計算されるゼロシーケンスに基づいて決定される。
【0143】
一実施形態によれば、第2のインピーダンスは、第2の相の第1の端子に見られる見かけのインピーダンスである。一実施形態によれば、第2のインピーダンスは、第1の端子で測定された第2の相の電圧および第1の端子で測定された第1の相の電流に基づいて決定される。一実施形態によれば、第2のインピーダンスは、すべてのそれぞれの複数の相の電流、特にそこから計算されるゼロシーケンスに基づいて決定される。
【0144】
一実施形態によれば、プロセッサは、第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとを結合すること、特に線形結合すること、より具体的には平均化することによって、送電線の見かけのインピーダンスを計算するように構成されている。一実施形態によれば、送電線の計算された見かけのインピーダンスは、第1の端子に見られる、特に、相-相-地絡故障が発生したときの送電線上の相-相-地絡故障の方向を見た、見かけのインピーダンスである。一実施形態によれば、計算された見かけのインピーダンスは、相-相-地絡故障が発生したときに第1の端子で測定された電流および電圧に基づいて計算される。したがって、送電線の計算された見かけのインピーダンスは、相-相-接地相における送電線の故障が発生した第1および第2の相の等価インピーダンスであり得る。見かけのインピーダンスが計算される基準となる、第1の端子で測定される電圧は、第1の端子で測定される第1の相および第2の相の電圧である。見かけのインピーダンスが計算される基準となる、第1の端子で測定される電流は、すべてのそれぞれの複数の相の電流、特にそこから計算されるゼロシーケンスである。
【0145】
一実施形態によれば、送電線の見かけのインピーダンスは、ゼロシーケンス電流を含む。
【0146】
一実施形態によれば、プロセッサは、距離保護リレーを制御することを含むことによって距離保護を実行するように構成される。
【0147】
一実施形態によれば、プロセッサは、計算された見かけのインピーダンスに基づいて相-相-地絡故障の点を識別することをさらに実行するように構成される。
【0148】
一実施形態によれば、プロセッサは、識別された相-相-地絡故障の点が第1の端子と第2の端子との間の距離内にあるかどうかを判定することをさらに実行するように構成される。
【0149】
一実施形態によれば、プロセッサは、第1のインピーダンスと第2のインピーダンスとの平均を計算することを含むことによって見かけのインピーダンスを計算するように構成される。
【0150】
一実施形態によれば、プロセッサは、リレー、コントローラ、サーバ、またはクラウドのうちの少なくとも1つを使用して、第1のインピーダンスおよび第2のインピーダンスを取得し、および/または送電線リレーの見かけのインピーダンスを計算するように構成される。
【0151】
一実施形態によれば、送電線は、平行線、同軸ケーブル、平面送電線、またはラジアルラインのいずれか1つである。
【0152】
一実施形態によれば、第1の端子は、第1の発電機に結合され、および/または送電線を終端している。
【0153】
一実施形態によれば、送電線は第2の端子によってさらに終端され、および/または第2の発電機は第2の端子に結合される。
【0154】
一実施形態によれば、第1の発電機および/または第2の発電機は、同期発電機または非同期発電機、特に再生可能発電プラント、より具体的にはインバータベースのリソースIBRを備える、および/または同期発電機または非同期発電機、特に再生可能発電プラント、より具体的にはインバータベースのリソースIBRである。
【0155】
一実施形態によれば、ゼロシーケンス電流は、相電流のフェーザ和である。
一実施形態によれば、ゼロシーケンス電流は、発電機の変圧器によって供給されるため、コンバータ制御システムによって制限されない送電線、特にIBR接続線路内にある。
【0156】
一実施形態によれば、ゼロシーケンス電流の大きさは、正シーケンス電流よりも大きい。
【0157】
一実施形態によれば、相の任意の組み合わせは、相-相-地絡故障を引き起こす可能性がある。
【0158】
本開示はさらに、送電線と、上述の装置実施形態のいずれか1つによる装置とを含む、複数の相を搬送する送電線の距離保護のためのシステムに関し、装置は、上述の方法実施形態のうちのいずれか1つを実行するように構成されたプロセッサを備える。
【0159】
以上、本開示の様々な実施形態について説明したが、それらは限定ではなく例としてのみ提示されていることを理解されたい。同様に、様々な図は、当業者が本開示の例示的な特徴および機能を理解することを可能にするために提供される例示的なアーキテクチャまたは構成を示すことができる。しかしながら、そのような当業者は、本開示が図示された例示的なアーキテクチャまたは構成に限定されず、様々な代替的なアーキテクチャおよび構成を使用して実施することができることを理解するであろう。さらに、当業者によって理解されるように、一実施形態の1つまたは複数の特徴は、本明細書に記載の別の実施形態の1つまたは複数の特徴と組み合わせることができる。したがって、本開示の幅および範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではない。
【0160】
また、「第1」、「第2」などの指定を使用する本明細書における要素へのいかなる言及も、一般に、それらの要素の量または順序を限定するものではないことも理解される。むしろ、これらの名称は、本明細書において、2つ以上の要素または要素の例を区別する便利な手段として使用することができる。したがって、第1および第2の要素への言及は、2つの要素のみが使用され得ること、または第1の要素が何らかの方法で第2の要素の前になければならないことを意味しない。
【0161】
さらに、当業者は、情報および信号が様々な異なる技術および技法のいずれかを使用して表され得ることを理解するであろう。例えば、上記の説明を通して言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、およびシンボルは、電圧、電流、電磁波、磁場もしくは粒子、光場もしくは粒子、またはそれらの任意の組合せによって表すことができる。
【0162】
当業者であればさらに、本明細書に開示された態様に関連して記載された様々な例示的な論理ブロック、ユニット、プロセッサ、手段、回路、方法、および機能のいずれも、電子ハードウェア(例えば、デジタル実装、アナログ実装、または2つの組合せ)、ファームウェア、命令を組み込んだ様々な形態のプログラムまたは設計コード(本明細書では、便宜上、「ソフトウェア」または「ソフトウェアユニット」と言及されることができる)、またはこれらの技術の任意の組合せによって実現することができることを理解するであろう。
【0163】
ハードウェア、ファームウェア、およびソフトウェアとのこの互換性を明確に示すために、様々な例示的なコンポーネント、ブロック、ユニット、回路、および工程が、それらの機能に関して一般的に上述されている。そのような機能がハードウェア、ファームウェア、もしくはソフトウェア、またはこれらの技術の組合せとして実装されるかどうかは、特定の用途およびシステム全体に課される設計制約に依存する。当業者は、説明された機能を特定の用途ごとに様々な方法で実装することができるが、そのような実装決定は、本開示の範囲から逸脱すると解釈されるべきではない。様々な実施形態によれば、プロセッサ、デバイス、構成要素、回路、構造、機械、ユニットなどは、本明細書に記載の機能の1つまたは複数を実行するように構成することができる。指定された動作または機能に関して本明細書で使用される「ために構成された」または「ように構成された」という用語は、指定された動作または機能を実行するように物理的に構築、プログラムおよび/または配置されたプロセッサ、デバイス、構成要素、回路、構造、機械、ユニットなどを指す。
【0164】
さらに、当業者であれば、本明細書に記載の様々な例示的な方法、論理ブロック、ユニット、デバイス、構成要素および回路を、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)もしくは他のプログラマブル論理デバイス、またはそれらの任意の組合せを含むことができる集積回路(IC)内に実装することができ、またはそれによって実行することができることを理解するであろう。論理ブロック、ユニット、および回路は、ネットワーク内またはデバイス内の様々な構成要素と通信するためのアンテナおよび/またはトランシーバをさらに含むことができる。汎用プロセッサはマイクロプロセッサとすることができるが、代替例では、プロセッサは任意の従来のプロセッサ、コントローラ、またはステートマシンとすることができる。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組合せ、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携する1つまたは複数のマイクロプロセッサ、または、本明細書に記載された機能を実行するためのその他の任意の適切な構成として実装することができる。ソフトウェアで実装される場合、機能は、コンピュータ可読媒体上の1つまたは複数の命令またはコードとして記憶することができる。したがって、本明細書に開示される方法またはアルゴリズムの工程は、コンピュータ可読媒体に記憶されたソフトウェアとして実施することができる。
【0165】
コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体と、コンピュータプログラムまたはコードをある場所から別の場所に転送することを可能にすることができる任意の媒体を含む通信媒体との両方を含む。記憶媒体は、コンピュータによってアクセスされ得る任意の利用可能な媒体とすることができる。限定ではなく例として、そのようなコンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROMもしくは他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置もしくは他の磁気記憶装置、または命令もしくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶するために使用することができ、コンピュータによってアクセスすることができる任意の他の媒体を含むことができる。
【0166】
さらに、本開示の実施形態では、メモリまたは他の記憶装置、ならびに通信構成要素を使用することができる。明確にするために、上記の説明は、異なる機能ユニットおよびプロセッサを参照して本開示の実施形態を説明したことが理解されよう。しかしながら、本開示を損なうことなく、異なる機能ユニット、処理論理要素またはドメイン間の機能性の任意の適切な分配を使用できることは明らかであろう。例えば、別個の処理論理要素またはコントローラによって実行されるように示されている機能は、同じ処理論理要素またはコントローラによって実行されてもよい。したがって、特定の機能ユニットへの言及は、厳密な論理的または物理的な構造または組織を示すのではなく、記載された機能を提供するための適切な手段への言及にすぎない。
【0167】
本開示に記載された実施態様に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義された一般原理は、本開示の範囲から逸脱することなく他の実施態様に適用することができる。したがって、本開示は、本明細書に示される実施態様に限定されることを意図するものではなく、以下の特許請求の範囲に記載される、本明細書に開示される新規の特徴および原理と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10
図11a
図11b
【手続補正書】
【提出日】2024-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の相のうちの第1の相および第2の相を相-相-地絡故障における故障相として含む、前記相-相-地絡故障に対して前記複数の相を搬送する送電線の距離保護のための方法であって、前記第1の相は前記第2の相とは異なり、前記方法は、
前記送電線で搬送される前記第1の相および接地電位によって形成された第1の電気ループの第1のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得することと、
前記送電線で搬送される前記第2の相および前記接地電位によって形成された第2の電気ループの第2のインピーダンスを前記ゼロシーケンス電流に基づいて取得することと、
第1の端子に見られる前記送電線の見かけのインピーダンスを前記第1のインピーダンスおよび前記第2のインピーダンスに基づいて計算することと、
前記見かけのインピーダンスに基づいて前記距離保護を実行することと、を含む方法。
【請求項2】
前記送電線の前記見かけのインピーダンスは、前記ゼロシーケンス電流を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記距離保護を実行することは、距離保護リレーを制御することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記計算された見かけのインピーダンスに基づいて相-相-地絡故障の点を識別することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
別された相-相-地絡故障の点が前記第1の端子と2の端子との間の距離内にあるかどうかを判定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記見かけのインピーダンスを計算することは、前記第1のインピーダンスと前記第2のインピーダンスとの平均を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のインピーダンスおよび前記第2のインピーダンスを取得すること、および/または前記送電線リレーの前記見かけのインピーダンスを計算することは、リレー、コントローラ、サーバ、またはクラウドのうちの少なくとも1つによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記送電線は、平行線、同軸ケーブル、平面送電線、またはラジアルラインのいずれか1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の端子は、第1の発電機に結合され、および/または前記送電線を終端している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記送電線は第2の端子によってさらに終端され、および/または第2の発電機は前記第2の端子に結合される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の発電機および/または前記第2の発電機は、同期発電機または非同期発電機、特に再生可能発電プラント、より具体的にはインバータベースのリソースIBRを備える、および/または同期発電機または非同期発電機、特に再生可能発電プラント、より具体的にはインバータベースのリソースIBRである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
複数の相のうちの第1の相および第2の相を相-相-地絡故障における故障相として含む、前記相-相-地絡故障に対して前記複数の相を搬送する送電線の距離保護のための装置であって、前記第1の相は前記第2の相とは異なり、前記装置はプロセッサを備え、前記プロセッサは、
前記送電線で搬送される前記第1の相および接地電位によって形成された第1の電気ループの第1のインピーダンスをゼロシーケンス電流に基づいて取得し、
前記送電線で搬送される前記第2の相および前記接地電位によって形成された第2の電気ループの第2のインピーダンスを前記ゼロシーケンス電流に基づいて取得し、
第1の発電機に結合された第1の端子に見られる前記送電線の見かけのインピーダンスを前記第1のインピーダンスおよび前記第2のインピーダンスに基づいて計算し、
前記見かけのインピーダンスに基づいて前記距離保護を実行するように構成されている、装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、請求項2に記載の方法を実行するように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
請求項1に記載の方法を実行するための命令を担持する、送電線の距離保護のためのコンピュータ可読媒体。
【請求項15】
送電線と、請求項12に記載の装置とを備える、複数の相を搬送する送電線の距離保護のためのシステムであって、前記装置は、請求項2に記載の方法を実行するように構成されたプロセッサを備える、システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
一実施形態によれば、第2のインピーダンス(上記実施形態では式(10)に従って計算されたインピーダンス)は、第2の相(上記実施形態では相C)の第1の端子に見られる見かけのインピーダンスである。一実施形態によれば、第2のインピーダンスは、第1の端子で測定された第2の相の電圧および第1の端子で測定された第1の相の電流に基づいて決定される。一実施形態によれば、第2のインピーダンスは、すべてのそれぞれの複数の相の電流、特にそこから計算されるゼロシーケンスに基づいて決定される。
【国際調査報告】