(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】冷却管理システム、それとダイバータアセンブリとを含むシステム、トカマク及びステラレータ
(51)【国際特許分類】
G21B 1/05 20060101AFI20241022BHJP
H05H 1/10 20060101ALI20241022BHJP
G21B 1/13 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G21B1/05
H05H1/10
G21B1/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024526590
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2022080647
(87)【国際公開番号】W WO2023078982
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512317995
【氏名又は名称】トカマク エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】バンバー、 ロバート
(72)【発明者】
【氏名】バンティング、 パトリック
(72)【発明者】
【氏名】テイラー、 ジャック
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA21
2G084FF27
2G084FF31
(57)【要約】
磁気閉じ込めプラズマチャンバにおけるプラズマ対向アセンブリのための冷却管理システムである。この冷却管理システムは、プラズマ対向アセンブリのそれぞれの部分に冷却を与えるようにそれぞれが構成される複数の冷却材ユニット群であって、冷却材ソースラインに流体的に接続される複数の冷却材ユニット群と、冷却材ソースラインから各冷却材ユニット群までの冷却材の流量を当該冷却ユニット群の温度に応じて制御するべく動作可能なバルブ装置とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気閉じ込めプラズマチャンバにおけるプラズマ対向アセンブリのための冷却管理システムであって、
複数の冷却材ユニット群と、
バルブ装置と
を含み、
前記複数の冷却材ユニット群はそれぞれが、前記プラズマ対向アセンブリの各部分に冷却を与えるように構成されて冷却材ソースラインに流体的に接続され、
前記バルブ装置は、前記冷却材ソースラインから各冷却材ユニット群への冷却材の流量を、前記各冷却材ユニット群における温度に応じて制御するように動作可能である、冷却管理システム。
【請求項2】
各冷却材ユニット群は、その一以上の冷却材ユニットに冷却材を供給するように構成される導管を含み、各冷却材ユニットは、前記プラズマ対向アセンブリの前記各部分の対応領域に冷却材を与えるように構成される冷却材チャネルを含む、請求項1に記載の冷却管理システム。
【請求項3】
前記バルブ装置は、各冷却材群の前記導管の中に配列されるバルブを含む、請求項2に記載の冷却管理システム。
【請求項4】
前記複数の群は、流体的に直列に接続される、請求項1から3のいずれか一項に記載の冷却管理システム。
【請求項5】
前記複数の群は、流体的に並列に接続される、請求項1から4のいずれか一項に記載の冷却管理システム。
【請求項6】
各バルブを、前記各バルブの流れ抵抗を変えるように第1の事前決定温度と第2の事前決定温度との間で単調にさらに閉及び開に作動させるべく構成される制御器をさらに含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の冷却管理システム。
【請求項7】
各バルブは受動的である、請求項3から5のいずれか一項に記載の冷却管理システム。
【請求項8】
各バルブは、
第1の事前決定温度から第2の事前決定温度まで温度が上昇するにつれて、前記各バルブの流れ抵抗を単調減少させるように開くことと、
第2の事前決定温度から第1の事前決定温度まで温度が低下するにつれて、前記各バルブの流れ抵抗を単調増加させるように閉じることと
を行うように構成される、請求項7に記載の冷却管理システム。
【請求項9】
各バルブは、前記第2の事前決定温度に実質的に等しい融点を有する一以上の積層された膨張可能要素を含み、前記膨張可能要素が溶融すると、前記膨張可能要素に機械的に結合されたロッドの一端に取り付けられたキャップがバルブシートから離れるように付勢されて前記各バルブが開く、請求項8に記載の冷却管理システム。
【請求項10】
各バルブは、異なる熱膨張係数を有する少なくとも2つの材料を含む構造物を含み、前記構造物は、温度が低ければ低いほど前記各バルブを通る流れを大きな程度まで妨げるように配列される、請求項8に記載の冷却管理システム。
【請求項11】
前記第1の事前決定温度は350から450℃であり、前記第2の事前決定温度は550から650℃である、請求項6、又は8から10のいずれか一項に記載の冷却管理システム。
【請求項12】
各バルブは、対応する群の入口の近くに配置される、請求項3から11のいずれか一項に記載の冷却管理システム。
【請求項13】
前記プラズマ対向アセンブリはダイバータアセンブリである、請求項1から12のいずれか一項に記載の冷却管理システム。
【請求項14】
各冷却材ユニットは、ダイバータの一タイルの一部分に、又はダイバータの複数タイルの一以上に、一体的に形成される、請求項2から13のいずれか一項に記載の冷却管理システム。
【請求項15】
各群は、100から10,000個の冷却材ユニット、好ましくは1000から5000個の冷却材ユニットを含む、請求項14に記載の冷却管理システム。
【請求項16】
各群は、前記ダイバータの複数タイルの一アレイを画定し、前記一アレイは、第1の横方向に沿って10から100個のダイバータタイルを、第2の横方向に沿って10から100個のダイバータタイルを含む、請求項14又は15に記載の冷却管理システム。
【請求項17】
前記冷却材ユニットアセンブリの群の異なるセットに並列に冷却材を与えるように動作可能な一以上の冷却材ソースラインをさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の冷却管理システム。
【請求項18】
前記冷却材ユニットアセンブリの群の各セットは3から100個の群を含む、請求項17に記載の冷却管理システム。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の冷却管理システムを含むトカマク。
【請求項20】
前記トカマクは、球形トカマクであり、好ましくは2.5以下のアスペクト比を有する球形トカマクであり、前記アスペクト比は、前記トカマクのトロイダルプラズマ閉じ込め領域の主半径と副半径との比として定義される、請求項18に記載のトカマク。
【請求項21】
請求項1から18のいずれか一項に記載の冷却管理システムを含むステラレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トカマクのための冷却管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トカマクは、プラズマをプラズマ容器内に閉じ込めるために磁場を使用するデバイスである。トカマクは、磁場に包含されない「高温」プラズマのための放熱器又は排気チャネルとして作用するダイバータを有する。この理由から、ダイバータは非常に大きな熱流束を受ける。
【0003】
図1は、例示的なトカマクのポロイダル断面を示す。トカマク100は、トロイダルプラズマチャンバ101を含む。ポロイダル磁場コイル(図示せず)は、プラズマを閉じ込めるポロイダル磁場を生成する。磁力線は、プラズマ(すなわち荷電粒子の「スープ」)が閉じ込められるトロイダル方向に対称な入れ子状表面を有効に形成する。これらの入れ子状表面は、
図1において一定ポロイダル磁束線113として表される。これらの入れ子状表面の内側で、プラズマは、「プラズマコア」の内側に閉じ込められていると言われる。しかしながら、衝突及び他のそのようなプロセスを介して、プラズマは、プラズマコアから、プラズマチャンバ壁に向かってゆっくりと拡散する。プラズマチャンバ壁との相互作用を低減するべく、ポロイダル磁場ヌル112(「X」点)が、専用の成形コイルを使用して生成される。ヌル点112は、いくつかの磁束線(例えば磁束線114)をヌル点112の下にある2つの表面、すなわち外側(すなわち径方向外側)ダイバータ表面121及び内側(すなわち径方向内側)ダイバータ表面122、と交差する。ヌル点112(すなわちヌルを通過する磁束線)を画定する磁束線はまた、外側及び内側ダイバータ表面121、122とも交差する。これらの交差の箇所は、「ストライク点」と称される。ストライク点では、熱流束は最大である。一定数の理由により、ヌル点112の位置は移動する。ダイバータ表面121、122におけるストライク点も、それに対応して移動する。
【0004】
ITERのために提案されているもののような典型的なダイバータ冷却装置200が
図2A及び
図2Bに示される。
図2Aが冷却チャネル202に沿った縦断面を示す一方、
図2Bは冷却チャネル202を横切る横断面(AA’)を示す。冷却システム200は、開口をそれぞれが画定する複数のタングステン「モノブロック」を含む。CuCrZr配管204が、複数のタングステン「モノブロック」の各アパチャを貫通し、それによってチャネル202を画定する。動作時、チャネル202は、タングステン「モノブロック」を冷却するべく、冷却材入口208から冷却材出口210まで冷却材(例えば水)を輸送する。いくつかの例において、CuCrZr配管とタングステンモノブロック(図示せず)との間にバッファ層が存在する。
【0005】
従来のダイバータ冷却配置の問題は、最大熱流束の位置(すなわちストライク点)が変わり得ることにより、トカマク動作中の任意の所与時点における最大熱流束の位置が不明になることである。したがって、ダイバータを横切る熱プロファイルも不明となる。過熱を防ぐべく、ダイバータの各冷却チャネルには冷却材が、最大熱流束箇所において金属温度を合理的な温度まで冷却するのに必要な流量で与えられる。これが必要となるのは、冷却能力が流量の相対的に強い関数だからである。ポンピングパワーを有意に低減するとともにストライク位置に応じて変化する最適な冷却構成が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-338887号公報
【特許文献2】特開2000-098072号公報
【特許文献3】中国特許第107507651号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1側面によれば、磁気閉じ込めプラズマチャンバにおけるプラズマ対向アセンブリのための冷却管理システムが与えられる。この冷却管理システムは、プラズマ対向アセンブリのそれぞれの部分に冷却を与えるようにそれぞれが構成される複数の冷却材ユニット群であって、冷却材ソースラインに流体的に接続される複数の冷却材ユニット群と、冷却材ソースラインから各冷却材ユニット群までの冷却材の流量を当該冷却ユニット群の温度に応じて制御するべく動作可能なバルブ装置とを含む。したがって、最適な冷却構成が可能となる。
【0008】
各冷却材ユニット群は、その一以上の冷却材ユニットに冷却材を供給するように構成される導管を含み、各冷却材ユニットが、プラズマ対向アセンブリの前記部分の、対応する領域に冷却材を与えるように構成される冷却材チャネルを含む。
【0009】
バルブ装置は、各冷却材群の導管内に配列されるバルブを含み得る。
【0010】
冷却管理システムにおける複数の群は、流体的に直列に接続されても、並列に接続されてもよい。
【0011】
冷却管理システムにおけるバルブは、受動的であっても能動的であってもよい。
【0012】
能動的に制御されるバルブは、制御器を使用して制御することができる。制御器は、温度に応じて各バルブをさらに閉又は開に作動させるように構成される。すなわち、制御器は、第2の事前決定温度と第1の事前決定温度との間でバルブをさらに単調に閉じるように構成され、又は、第1の事前決定温度と第2の事前決定温度との間でバルブをさらに単調に開けてその流れ抵抗を変化させるように構成されてよい。
【0013】
受動バルブの状態は、受動的に温度に依存し得る。すなわち、各バルブは、(制御器を必要とせずに)温度が第1の事前決定温度から第2の事前決定温度まで上昇するにつれて単調に開いてバルブの流れ抵抗を減少させるように構成され、温度が第2の事前決定温度から第1の事前決定温度まで低下するにつれて単調に閉じてバルブの流れ抵抗を増加させるように構成される。
【0014】
第1の事前決定温度はほぼ350から450℃としてよく、第2の事前決定温度はほぼ550から650℃としてよい。
【0015】
随意的に、各受動バルブは、第2の事前決定温度に実質的に等しい融点を有する一以上の積層された膨張可能要素を含み、前記膨張可能要素が溶融すると、前記膨張可能要素に機械的に結合されたロッドの一端に取り付けられたキャップがバルブシートから離れるように付勢されてバルブが開く。
【0016】
代替的に、各受動バルブが、異なる熱膨張係数を有する少なくとも2つの材料を含む構造物を含み、この構造物は、温度が低ければ低いほどバルブを通る流れを大きな程度まで妨げるように配列される。
【0017】
各バルブは、対応群の入口(すなわち導管と冷却材ソースラインとの接合部)近くに配置され得る。
【0018】
プラズマ対向アセンブリは、ダイバータアセンブリであってよく、各冷却ユニットは、ダイバータの一タイルの一部分に、又はダイバータの複数タイルの一以上に、一体的に形成されてよい。各群は、100から10,000個の冷却材ユニット、好ましくは1,000から5,000個の冷却材ユニットを含んでよく、各群は、ダイバータ上に複数のタイルの一アレイを画定してよく、このアレイは、第1の横方向に沿って10から100個のダイバータタイル、及び第2の横方向に沿って10から100個のダイバータタイルを含む。
【0019】
冷却管理システムはさらに、冷却ユニットアセンブリの群の異なるセットに並列に冷却材を与えるように動作可能な一以上の冷却ソースラインを含んでよく、冷却ユニットアセンブリの群の各セットは、3から10個の群を含んでよい。
【0020】
本発明の第2側面によれば、上述の冷却管理システムを含むトカマク又はステラレータが与えられる。
【0021】
トカマクは、球状トカマクであってよく、好ましくは、2.5以下のアスペクト比を有する球状トカマクであってよく、アスペクト比は、トカマクのトロイダルプラズマ閉じ込め領域の主半径と副半径との比として定義される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
ここで、本発明の実施形態が、単なる例として、以下の添付図面を参照して記載される。
【0023】
【
図3】冷却材ユニットアセンブリの模式的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここに提案される新規な冷却管理システムは、所与の熱負荷分布に応じてダイバータ標的プレートの一領域にわたる冷却の程度を制御することができるので、この熱負荷が、効率的な冷却材分布を通じて効率的にダイバータによって収容される。ここに記載される例において、冷却管理システムはダイバータに使用されるが、冷却管理システムは、他のプラズマ対向コンポーネント(PFC)にも同様に適している。ダイバータは、例えばトカマクの、好ましくは球状トカマクの、磁気閉じ込めプラズマチャンバの中に設けられてよい。必ずしもそうではないが、好ましくは、球状トカマクのアスペクト比は、2.5以下である。アスペクト比は、トカマクのトロイダルプラズマ閉じ込め領域の主半径と副半径との比である。ダイバータは、ステラレータ又は他のプラズマ閉じ込めシステムの中に設けてもよい。
【0025】
図3は、複数の「フィンガーユニット」314、316、318を含むアセンブリ300の垂直断面を示す。例示のみを目的として、各フィンガーユニット314、316、318は、その隣接するユニットから分離されている。フィンガーユニットは、ここでは「冷却材ユニット」とも称されてよい。フィンガーアセンブリは、それに従って解釈されるべきである。
【0026】
各フィンガーユニット314、316、318は、フィンガーユニット314のシンブル部分312にろう付け又は他の方法で接合されたダイバータタイル306の一部分又は一以上のダイバータタイル306と、タイル306の近くに冷却材を与える内部チャネル302の少なくとも一部を画定するカートリッジ322とを含む。いくつかの例において、カートリッジ322は開放端であるが、他の例では(及び
図3に示されるように)、カートリッジ322は、カートリッジ322からフィンガーユニット314のシンブル部分312に冷却材を流すための一アレイのアパチャ320を含むキャップを有する。一アレイの開口320により、ジェット冷却を介してのダイバータタイル306の冷却が強化される。
【0027】
アセンブリ300において、複数のフィンガーユニットが直列に流体接続されることにより、冷却材が一方のフィンガーユニット314のシンブル部分312から流れ、チャネル304を介して隣接するフィンガーユニット316のカートリッジ322へと至る。同様のフィンガーユニットは、ジャーナルペーパー“Status of development of the EU He-cooled divertor for DEMO”, January 2008, Norajitra et al.”に記載されている。
【0028】
図4Aは、ダイバータのための冷却管理システム400の垂直断面の模式図を示す。冷却管理システム400は、各フィンガーユニット群408a~408gに冷却材を与えるように構成されるチャネル402と、チャネル402を対応フィンガーユニット群408a~408gに流体的に接続されるように構成される複数の導管404a~404gと、複数のバルブ406a~406gとを含み、各フィンガーユニット群は、複数のフィンガーユニット314、316を含み、複数のバルブ406a~406gはそれぞれが、対応する導管404a~404gの中に配列され、チャネル402から対応フィンガーユニット群408a~408gへの冷却材の流量を制御するように動作可能である。模式的な図において、導管404a~404gは、異なる箇所においてチャネル402に接続されるように示されるが、実際には、導管404a~404gのチャネル402への接続点が実質的に同じ箇所にあってもよい。一以上のポンプ(図示せず)が、冷却管理システム400を通して冷却材を輸送するべく、冷却管理システム400の入口418と冷却管理システム400の出口420との間に圧力差を生じさせるように動作可能である。フィンガーユニット群のうち複数が、ここではフィンガーアセンブリ410と称される。フィンガー群408a~408gのそれぞれにおける、及びフィンガー群408a~408g又はフィンガーアセンブリ410における、フィンガーユニット314、316、318は、
図3に示されるものであってよい。入口418は、冷却材ソースラインとも称される。
【0029】
図4Aにおいて、フィンガーユニット群408a~408gは、チャネル402を介して互いに並列に流体的に接続される。各導管404a~404gは、チャネル402を、対応フィンガーユニット群408a~408gの入口に流体的に接続される。各フィンガーユニット群408a~408gの出口は、さらなるチャネル422を介して冷却管理システム400の出口420に流体的に接続される。
【0030】
図4Bは、ダイバータにおけるストライク点412の位置が変わる前の初期ダイバータ熱負荷に対応する、フィンガーアセンブリ410に沿った例示的な温度プロファイル414を示す。説明を目的として、フィンガーアセンブリ410に沿った温度プロファイル414が一定であるように示されるが、フィンガーアセンブリ410に沿った温度プロファイル414は異なっていてもよいことを理解すべきである。
【0031】
背景セクションに記載されるように、ダイバータにおけるストライク点412の位置が変化し、それに応じてダイバータに入射する熱負荷条件も経時的に変化する。熱負荷の変化により、
図4Bに示される温度プロファイル414に摂動が与えられる。一例として、新たなストライク点412のすぐ下のフィンガーアセンブリ410への冷却材の流量が、加熱を防ぐには低すぎるかもしれない一方、従前のストライク点の位置のすぐ下のフィンガーアセンブリへの冷却材の流量は大きすぎるかもしれず、冷却をもたらし得る。
【0032】
図4Cは、ストライク点412の位置が移動した後の(新たな位置は
図4Aに示される)フィンガーアセンブリ410に沿った例示的な摂動温度プロファイル416を示す。
図4Cに示される温度は、各フィンガーユニット群408a~408g全体の平均温度である。当業読者であればわかることだが、温度プロファイルは実際には異なり得る。図示の例において、「新たな」ストライク点412は、フィンガーユニット群408eの中に配置される。これに対応して、「新たな」ストライク点412に近いフィンガーアセンブリ410の領域が加熱を受け得る一方、「新たな」ストライク点412から遠隔するフィンガーアセンブリ410の領域は、当初のストライク位置の領域よりも冷却を受け得る。
【0033】
正確な温度応答は、
・ストライク点412の従前の位置、形状及び大きさと、各フィンガーユニット群408a~408gへの従前の流量とを含むシステムの履歴と、
・フィンガーアセンブリ410の熱拡散率と、
・熱拡散率と従前の冷却材構成とに存在する任意の異方性と
に依存し得る。
【0034】
第1の近似として、フィンガーアセンブリ410に沿った温度プロファイル416は、ストライク点412を中心に対称である。これは、熱流束プロファイルが大まかに対称であり、各フィンガーユニット群408a~408gが互いに並列に流体接続されているからである。
【0035】
図4Cに示される例において、フィンガーユニット群408a及び408bが「冷却過多」である一方、フィンガーユニット群408d、408e、408fは「冷却不足」である。フィンガーユニット群408c、408gの温度は、ほとんど変化しないままである。本開示の目的は、ストライク点のシフトに引き続いての温度プロファイルを均一にすることにある。
【0036】
フィンガーユニット群408a~408gが並列に流体接続されている場合、各群408a~408gへの冷却材の流量は、他群408a~408gと比べた各群408a~408gの流れ抵抗の相対的な大きさに関連する。すなわち、群408aが他群408b~408gと比べて低い抵抗を有する場合、群408aを通って流れる総冷却材の割合は、他群408b~408gよりも大きい。例えば、群408aに流れる冷却材の割合は近似的に、
i)群408a、導管406a及びバルブ404aの総流動抵抗と、
i)すべての群408a~408g、導管406a~406g、及びバルブ404a~404gの総流動抵抗との比をマイナスしたものに比例する(例えば等しい)。
【0037】
第1の近似として、導管及び出口420の抵抗は、バルブ404a~404g及びフィンガーユニット群408a~408gの抵抗よりも有意に小さいとして無視することができる。
【0038】
随意的に、各フィンガーユニット群408a~408gは、等しい固有の流れ抵抗を有する(すなわちバルブからの寄与は計算に入れない)。これは、各群408a~408gが同数の等価フィンガーユニット314、316、318を有する場合に、又はフィンガーユニット314、316、318のサイズ及び/若しくは構成が異なる場合であって、異なる数のフィンガーユニット314、316、318が存在する場合に、達成することができる。いくつかの例において、固有の流れ抵抗は、予測されるストライク点(例えばダイバータのエッジ)から遠く離れた群において大きくなり得る。
【0039】
各群408a~408gへの流量は、その群408a~408gに流体接続された対応バルブ406a~406gの抵抗を変化させることによって制御することができる。例えば、バルブ406a~406gを様々な程度まで開閉するように作動させることによって制御することができる。
【0040】
図5は、
図4A~
図4Cに係る冷却管理システム400における温度プロファイルを均一にするためのフローチャートを示す。
【0041】
ステップ502において、ストライク点412が位置を変える。ストライク点412の位置の変化は、後に詳述されるように、検出され、予測され、又は他の方法で決定される。
【0042】
ステップ504において、新たなストライク点の位置に近いバルブ406d~406fが開かれる(完全に又はさらに開かれる)。バルブ406a~406gは、この目的のために温度制御されてよく、又は温度応答性であってよい。バルブ406d~406fを開くことにより、各対応フィンガーユニット群408e~408fの流れ抵抗が減少し、これらのフィンガーユニット群408d~408fへの冷却材流量が増加する。冷却管理システム400にわたる圧力差が一定であると仮定すると、他群408a~408c、408gへの冷却材流量が対応して減少する。これにより、摂動温度プロファイルのいずれかの冷却不足が均一化される。
【0043】
随意的なさらなるステップ506において、新たなストライク点の位置から遠くに離れたバルブ406a~406bが閉じられる(完全に又はさらに閉じられる)。これにより、これらの群408a~408bの流れ抵抗が増加し、これらの群408a~408bへの冷却材流量が減少する(又は完全に停止する)。これによりさらに、摂動温度プロファイルの冷却過多が均一化される。ステップ506は、ステップ504の代替として又はステップ504に加えて使用してよい。
【0044】
必ずしもそうではないが、好ましくは、各群408d~408fへの冷却材の流量の増加は、その群408d~408fの温度の(例えば第1の事前決定温度を上回る)増加に関連する。例えば、これは、バルブ406eをバルブ406d、406fよりも大きく開くことによって達成することができる。
【0045】
必ずしもそうではないが、好ましくは、各群408a~408bへの流量の減少は、その群408a~408bの温度の(例えば第1又は第2の事前決定温度を下回る)減少に関連する。例えば、これは、バルブ406aをバルブ406bよりも大きく閉じることによって達成することができる。
【0046】
図6Aは、ダイバータのための他の冷却管理システム600の垂直断面の模式図を示す。冷却管理システム600は
図4Aの冷却管理システム400に実質的に対応するが、フィンガーユニット群608a~608gが互いに直列に流体的に接続されて冷却材が隣接するフィンガーユニット群608a~608gの間を通過できるようになっている点が異なる。代替装置(
図6Aには示されない)において、複数の導管604a~604gは、各フィンガーユニット群608a~608gを冷却管理システム600の(入口618からチャネル602を介してというよりもむしろ)出口620に流体的に接続するように構成される。これに対応して、バルブ606a~606gがこれらの導管内に配列され、対応フィンガーユニット群608a~608gから出口620への流量が制御される。入口618は、冷却材ソースラインとも称される。
【0047】
図4に関連して上述したように、フィンガーアセンブリ610に沿った温度プロファイル614は、ダイバータにおけるストライク点612が変わると摂動を受ける。例示的な初期温度プロファイル614及び摂動温度プロファイル616が、
図6B及び
図6Cに示される。
【0048】
フィンガーユニット群608a~608gが流体的に直列に接続されているので、温度プロファイル616は、ストライク点612に関して非対称であり、冷却材の流れの方向に傾斜し得る。これは、冷却材がさらに加熱され、直列に接続されたフィンガーユニット群608a~608gを流れるときに熱を放散するからである。図示の例において、フィンガーユニット群608a~608bは温度が低下して「冷却過多」になり、フィンガーユニット群608d~608gは「冷却不足」になる。フィンガーユニット群608cにおける温度は、ほとんど変化しないままである。なお、この例においては、フィンガーアセンブリ600におけるストライク点612から最も下流の群608gの温度は、その群608gにおけるダイバータタイルが必ずしもプラズマからの熱負荷の増加を受けるわけではないという事実にもかかわらず、上昇している(
図4Cの温度プロファイルを参照)。
【0049】
フィンガーユニット群608a~608gが直列に接続されると、流れ抵抗が増加する。したがって、多くのフィンガーユニット群608a~608gを通る(冷却管理システム600の入口618と出口620との間の)冷却材の流れ抵抗は、少ないフィンガーユニット群608a~608gを通る冷却材の流れに対する抵抗よりも大きくなる。
【0050】
他方、各導管が直接的な流体経路を画定し得るので、各導管604a~604gを通る流れ抵抗は、各フィンガーユニット群608a~608gを通る流れ抵抗よりもはるかに小さくなる。
【0051】
それゆえ、導管604a~604gにおける閉状態からバルブ606a~606gを開くことにより、チャネル602から、導管604a~604gが流体的に接続するフィンガーユニット群608a~608gへの冷却材のバイパスが形成される。すなわち、低い抵抗の導管を通って流体が流れていくつかのフィンガーユニット群をバイパスすることが許容される。このバイパスは、(多くのフィンガーユニット群608a~608gを通過する経路と比べて)流れ抵抗が低いので、バルブの上流に配置される群608a~608gへの冷却材の流量が減少する一方、バルブの下流に配置される群608a~608gへの冷却材の流量は増加する。
【0052】
例えば、初期にバルブ606cのみが開の場合、冷却材はチャネル602から導管604c及びフィンガーユニット群608c~608gを通って出口620まで流れる。温度プロファイルの摂動に応答してバルブ606eが開く場合、チャネル602からフィンガーユニット群608eへのバイパスが形成される。その後、冷却材は、フィンガーユニット群608a~608dをバイパスし、チャネル602から導管604e及びフィンガーユニット群608e~608gを通って出口620まで流れる。よって、これらの群608c~608d(上流)における冷却材流量が減少する一方、群608e~608g(下流)への冷却材流量は増加する。
【0053】
これとは逆に、バルブ606a~606gを(完全に又はほぼ完全に)閉じることにより、バイパスの遮断/閉止が有効になり、バルブ606a~606gの上流に配置される群を通る冷却材流量が増加する。
【0054】
他例において(
図6Aに示されない)、導管604a~604gは、各フィンガーユニット群608a~608gを冷却管理システム600の(入口側というよりむしろ)出口620に流体的に接続する。これらの例において、これらの導管604a~604gの内部に配列されたバルブ606a~606gを開くことにより、冷却管理システム600の出口620に冷却材を直接流すためのバイパス(すなわち低抵抗)経路が生成される点で、実質的に同じ効果が達成される。これらの例において、さらに下流に配置される群608a~608gへの冷却材流量が減少する一方、上流に配置される群608a~608gへの冷却材流量は増加する。
【0055】
随意的に、各フィンガーユニット群608a~608gは、流れ抵抗が等しい。上述したように、これは、各フィンガーユニット群608a~608gが同数の等価フィンガーユニット314、316、318を有する場合に、又は各群に異なるサイズ及び/若しくは構成を有する異なる数のフィンガーユニット314、316、318が存在する場合に、達成することができる。
【0056】
図7は、
図6A~
図6Cに係る冷却管理システム600における温度プロファイルを均一化するためのフローチャートを示す。
【0057】
ステップ702において、ストライク点612が位置を変える。ストライク点612の位置の変化が、(後に詳述されるように)検出され、予測され、又は他の方法で決定される。
【0058】
ステップ704において、新しいストライク点の位置に近い(606d~606e)又はその下流の(606f~606g)バルブ606d~606gが、これらが流体的に接続される対応フィンガーユニットへの冷却材の低抵抗バイパスを形成するべく、閉状態から開かれる。バルブ606d~606gがすでに開状態にある場合、バルブ606d~606gはさらに開いてよい。冷却管理システム600にわたる圧力差が一定であると仮定すると、他群608a~608cへの冷却材流量が対応して減少する。これにより、摂動温度プロファイルのいずれかの冷却不足が均一化される。
【0059】
随意的なさらなるステップ706において、新たなストライク点の位置から遠くに離れて上流にあるバルブ606a~606cが閉じられる(完全に又はさらに閉じられる)。このようにして、対応群608a~608cへの低抵抗バイパスが閉じられ、群608d~608gへの冷却材流量が増加する。これにより、摂動温度プロファイルがさらに均一化される。
【0060】
バルブ606a~606gは、温度制御されてよく、又は温度応答性であってよい。
【0061】
なお、バルブ606d~606gが等しく開いている場合(又はそれらの流れに対する抵抗が等しい場合)、導管604gの流れ抵抗は一般に、フィンガーユニット群608d~608fの流れ抵抗よりもはるかに小さくてもよいので、冷却材は群608d~608fをバイパスしてよい。この挙動は、冷却材が、大きな冷却を必要とするフィンガーユニット群をバイパスするので、次善となる。
【0062】
この点において、バルブ606b~606g(バルブ606aを除く)は、第1の事前決定温度を上回ると開くように較正されることが望ましい。第1の事前決定温度は、ストライク点612の下に配置されるフィンガーユニット群608a~608gにおける予測温度に対応する。一例において、第1の事前決定温度は、350から450℃である。第1の事前決定温度は、ダイバータ標的プレートの温度が1250から1500℃となる既知のモデリング技術を使用して計算することができる。かかるシナリオにおいて、フィンガーユニット群606eのみが第1の事前決定温度を上回ることができるので、初期にバルブ606eのみが開く一方、バルブ606d、606fは、初期に閉じたままである(第1の事前決定温度を下回る)。このようにして、群608e(及び群608eの下流の群)への冷却材の流量が増加し、冷却材は群608eからバイパスされない。
【0063】
代替的に、バルブ606b~606gは、十分に高い流れ抵抗を有するように構成されることにより、バルブ606b~606g(冷却管理システム600における最も上流に配置されるフィンガーユニット群608に冷却材を与えるバルブ606aを除く)が開いているときに絞りのように作用する。よって、バルブ606b~606gは、導管604b~604gを通る冷却材のための相対的に高い抵抗の経路を画定する。かかる場合、バルブ606b~606gは、それ自体で冷却材のバイパスを設定するというよりはむしろ、特定の群608b~608gへの冷却材の流れを補完する。このアプローチにおいて、各群608e、608d、608fへの流量は、各バルブ606e、606f、606gの相対的な絞りパワーを制御することによって(ある程度)制御することができる。
【0064】
冷却管理システム400、600は、バルブ406a~406g、606a~606gを開く及び/又は閉じることによって、摂動温度プロファイル416、616を均一にするように冷却材流量を制御し得ることが示されている。バルブは、能動的(温度制御される)又は受動的(温度応答性)のいずれかでよい。
【0065】
受動バルブは、当該バルブと局所的に流体連通する流体(例えば冷却材)の現場温度に応答するように構成される。例示的な受動バルブが、
図9A及び
図9Bを参照して以下にさらに詳述される。
【0066】
能動バリューは、制御器を使用して(完全に又は大幅に)開閉するように動作可能である。制御器によって与えられる命令は、トカマクにおける診断測定値を分析することによって決定され得る。診断測定値は、例えば、各導管404a~404g、604a~604g内に配置された一以上の温度センサからの温度測定値であってよい。代替的に、プラズマ関連の診断を使用して、冷却管理システムにおける予測温度を推定してもよい。温度を決定し得る当業者周知のトカマク内の任意の診断測定が、この目的に適している。
【0067】
特に過酷な環境において、電子機器(例えば電子的に切り替え可能なバルブ)の寿命が限られているので、能動制御は実用的ではない。かかる環境において、受動制御(例えば受動バルブ)が実用的な解決策となる。
【0068】
この点において、受動バルブ406a~406g、606a~606gは、第1の事前決定温度を下回ると閉じたままとなって第2の事前決定温度を上回ると完全に開くように較正されてよい。第1の事前決定温度と第2の事前決定温度との間で、バルブの流れ抵抗は単調に減少する。いくつかの例において、第2の事前決定温度は、第1の事前決定温度よりも大きい。例えば、第1の事前決定温度は350から450℃であり、第2の事前決定温度は550から650℃である。他例において、受動バルブ406a~406g、606a~606gは、単一の温度、例えば500℃で閉状態と開状態とを切り替えるように構成される。冷却管理システム400に適した受動バルブの構造及びタイプに関するさらなる詳細は、
図9A及び
図Bに与えられる。
【0069】
図4及び
図6に示す冷却管理システム400、600において、フィンガーアセンブリ410、610は、フィンガーユニット408a~408g、608a~608gの7つの群を有する。しかしながら、当業読者であれば理解するように、フィンガーアセンブリ410、610におけるフィンガーユニット群の数は異なってよい。
【0070】
【0071】
図8Aは、冷却管理システムの上から下を見たときの模式的な図を示し、複数の面分割ダイバータタイル306を含むダイバータ表面600を示す。図示の例において、ダイバータタイル306は正方形の形状で示されるが、当業読者であれば理解するように、他の面分割形状、例えば六角形も可能である。他例において、ダイバータタイル306は必ずしも同じ形状又はサイズでなくてもよい。一例として、ダイバータタイル306の各辺は、3mmから10mm、例えば6mm、であってよい。他のサイズも可能である。
【0072】
図8Bは、冷却管理システム(
図5Aに示されたものと同等)の第1の垂直断面の模式的な図を示す。これは、フィンガーアセンブリ610を介して
図8Aのダイバータ表面800に冷却材を与えるように構成される。フィンガーアセンブリのさらなる詳細は、
図6に与えられるので、ここでは繰り返さない。
図8Bおいて、6つの導管604a~604gと、6つのフィンガーユニット群とが存在する。
図8Aと比べると、各フィンガーユニット群608a~608gは、縦方向に3つのフィンガーユニットを含む。
【0073】
図8Cは、複数の入口618を含む冷却管理システム(
図5Aに示されたものと同等)の第2の垂直断面の模式的な図を示す。各入口618は、特定のフィンガーアセンブリ610(
図8B参照)に冷却材を与えるように構成される。
図8Cにおいて、4つの入口618が存在するので、各フィンガーユニット群608a~608gは、フィンガーユニットの3×3アレイを含み、ダイバータは、ダイバータタイル306の12×18アレイを含む。説明のみを目的として、これらの群は、
図8Aにおいて強調表示されているが、ダイバータ表面800の実際の物理的特徴を反映していない。
【0074】
プラズマ閉じ込めシステムにおいてダイバータが使用される一特定例において、ダイバータのサイズは、プラズマ閉じ込めシステムのサイズに応じて、詳しくはプラズマストライク点のための箇所の予測範囲に応じて、設定してよい。
【0075】
一般に、各フィンガーユニット314、316、318は、一以上のダイバータタイル306の一部を含み、又は一以上のダイバータタイル306を含み得る。
【0076】
各フィンガーユニット群408a~408g、608a~608gにおけるフィンガーユニット314、316、318の数は、ダイバータ表面全体の温度プロファイルにおける「温度ピークの予測幅」(例えば半値全幅)に従って設定してよい。温度ピークの幅は、ほぼ5から25mmである。フィンガーユニット群408a~408g、608a~608gが、フィンガーアセンブリ410、610における温度上昇の「有効幅」よりもはるかに大きい場合、必要(温度ピークの予想幅)以上に広い面積(フィンガーユニット群408a~408g、608a~608g)にわたって「過剰な」冷却材が与えられる。フィンガーユニット群408a~408g、608a~608gが、フィンガーアセンブリ410、610における温度上昇の「有効幅」よりもはるかに小さい場合、冷却材の制御は複雑となり、多数の導管404a~404g、604a~604gを必要とする。一特定例において、フィンガーユニット群408a~408g、608a~608gは、6mmサイズのフィンガーユニット314、316、318の5×5アレイを含み得る。各フィンガーユニット314、316、318は、温度ピークの予測幅に一致する一つのダイバータタイル306を含む。
【0077】
したがって、フィンガーアセンブリに対するフィンガーユニット群の数は、各フィンガーユニット群のサイズ、及びダイバータ表面の必要なサイズ、によって設定され得る。
【0078】
既に述べたように、各フィンガーユニットは、ダイバータの一タイルの一部分に、又はダイバータの複数タイルの一以上に、一体的に形成されてよい。したがって、各フィンガーユニット群は、ダイバータにおける複数タイルの一アレイを画定し得る。一特定例において、温度ピークの予測幅によってフィンガーユニットの数を設定することの代替として、アレイは、幅が10から100個のタイル、長さが10から100個のタイルであってよい。各群408a~408g、608a~608gにおけるフィンガーユニット314、316、318の数は、100から10000個、好ましくは1000から5000個の範囲であってよい。
【0079】
各群におけるフィンガーユニットの数は、本システムが実装されるプラズマ閉じ込めシステムの内部環境のような、パワー付与(power deposition)、熱流束プロファイル、及びストライク点安定性のような変数を含む様々な設計考慮事項によって設定されてよい。一般に、大きな群が、ダイバータシステムの構造を単純化する一方、小さな群は、ストライク点の変化に対するダイバータのより精細な応答を許容し、システムの効率の向上を許容するのが一般的である(これは、ストライク点の全熱に対して十分に冷却される必要がある領域が小さくなるからである)。
【0080】
冷却管理システムにおける入口(又は冷却材ソースライン)の数は、例えば、各フィンガーユニット群のサイズ、ダイバータ表面の必要なサイズ、及びポンピングシステムの設計ニーズのような、様々な設計考慮事項に応じて設定されてよい。一例において、冷却材をフィンガーアセンブリに並列に与える2以上の入口(したがって2以上の冷却材ソースライン)が存在する。各フィンガーアセンブリは、2から100個のフィンガーユニット群、好ましくは3から25個、さらに好ましくは3から10個のフィンガーユニット群を含み得る。
【0081】
冷却管理システムにおける冷却材は、(加圧された)液体又は気体であってよい。一例において、冷却材は加圧水であってよい。他例において、冷却材はヘリウムガスであってよい。
【0082】
【0083】
図9Aにおいて、受動バルブ900は、当業読者に周知の膨張可能素子サーモスタットを含む。受動バルブは、バルブハウジング902と、バルブハウジング902に配置されたコラム908内にシール材918を使用してシールされた一以上の膨張可能素子904、906(例えばワックス素子)と、ロッド又はピン910であって、ロッド又はピン910の一端がコラム908に機械的に結合されてロッド又はピン910の他端がキャップ912を含む、ロッド又はピン910と、バルブシート914と、バルブシート914に当接するようにキャップ912を付勢するべく構成される付勢素子916(例えば、ばね)とを含む。
【0084】
いくつかの例において、一以上の膨張可能素子904、906は、冷却管理システムのフィンガーアセンブリ410、610側に設けられ、その結果、膨張可能素子904、906は、有効にフィンガーアセンブリ410、610との熱平衡に達し得る。他例において、一以上の膨張可能素子904、906は、冷却管理システムの導管404a~404g、604a~604g側に設けられる。
【0085】
膨張可能素子904、906は、第1の事前決定温度を下回る温度において、付勢素子916(例えば、ばね)が、キャップ912とバルブシート914との間のシールを実質的に維持するのに十分な剛性を有するように構成される。シールは、必ずしも「液密」でなくてもよいが、好ましくは、シールは、バルブを通る流れを有意に制限すべきである。すなわち、第1の事前決定温度より低い温度では、受動バルブ900が実質的に閉じられて冷却材は受動バルブ900まわりを通過することができず、少なくとも、受動バルブ900を通る冷却材の流れは有意に制限される。
【0086】
他方、付勢素子916(例えば、ばね)は、膨張可能素子904、906が第1の事前決定温度を上回るように加熱されて膨張するときに、膨張可能素子904、906がバルブシート914から離れるようにキャップ912を(ロッド910を介して)付勢することができるように、十分に柔軟である。 これにより、バルブシート914とキャップ912とが(より大きく)分離するので、受動バルブ900まわりを流れる冷却材にとっての低抵抗経路が画定される。
【0087】
いくつかの例において、一以上の膨張可能素子904、906は固体であり、加熱中に相転移(すなわち溶融)を受けるように構成される。溶融は有意な膨張をもたらすので、溶融温度は第2の事前決定温度に対応し得る。
【0088】
いくつかの例において、一以上の膨張可能素子904、906は異なる融点を有するので、異なる温度で溶融する。かかる場合、一以上の膨張可能素子704、706は、異なる融点を有する各膨張可能素子904、906の溶融がキャップ912とバルブシート914との間の分離に対応する段階的変化をもたらすように、コラム908において互いに直列に配列され得る。これらの例において、第2の事前決定温度は、一以上の膨張可能素子904、906の最高融点に対応する。
【0089】
膨張可能素子904、906が固体の場合、バルブシート914とキャップ912との間の分離の変化は、温度の変化に比例する。そのような受動バルブ900は、
図4の冷却管理システム400への冷却材の流量を制御するのに適している。しかしながら、バルブシート914とキャップ912との間の分離の変化は、溶融する膨張可能素子を使用するバルブ700と比べて相対的に小さい。この点において、バルブ900は、
図6の冷却管理システム600のための絞りとして適している。それにもかかわらず、必要に応じて、機械的レバーを使用して、この相対的に小さな変位を拡大することができる。
【0090】
膨張可能素子904、906が第1及び第2の事前決定温度の間に(例えば第2の事前決定温度に)融点を有する場合、バルブ900の流れ抵抗は、これらの融点で大幅に減少し得る。したがって、「第2の事前決定温度」は、膨張可能素子904、906の融点に応じて設定することができる。かかる受動バルブ900は、フィンガーユニット群608a~608gへの冷却材のバイパスを生成する
図6の冷却管理システム600に特に適し得る。しかしながら、かかる受動バルブ900は、
図4の冷却管理システム400にも適している。
【0091】
図9Bにおいて、受動バルブ950は、異なる熱膨張係数を有する少なくとも2つの材料954、956の構造物952を含む。受動バルブは、導管404a~404g、604a~604g内に配列される。構造物の一例は、当業読者に周知のバイメタルストリップである。構造物が加熱されると、異なる材料の熱膨張の差によって曲げが生じる。例えば、
図9Bにおいて、材料954が、材料956よりも高い熱膨張を示す場合、温度が上昇するにつれて、構造物952は出口958から離れるように曲がり、バルブを開く。この作動は、バルブ950を閉じる及び/又は開くために使用され得る。随意的に、シール962は、出口958と流体密シールを形成するように構成される構造物952に設けられる。いくつかの例において、
図9Bに示される出口958は、フィンガーユニット群408a~408g、608a~608gの入口(すなわち
図4および
図6に示されるように)又は出口(すなわち、導管606a~606gが各フィンガーユニット群608a~608gの出口に流体的に接続される
図6について記載された代替オプション)のいずれかに対応する。同様に、
図9Bに示される入口960は、冷却管理システム600のチャネル402、602、又は出口620のいずれかに対応する。
図9Bにおいて、構造物950は、それが設けられる導管404a~404g、604a~604g内の一端に固定される。他例において、構造物950は両端に固定されてよい。
【0092】
一特定例において、冷却管理システムは、トカマク又はステラレータに使用される。構造物を構成する材料は、冷却管理システム400、600の動作中に腐食が制限されるか、又は無視できるように選択され得る(例えば、冷却材として水を使用するとき、サンドイッチ構造物が、例えば、ステンレス鋼、インバー、アルミニウム・ブロンズ、及びチタンから選択される材料組み合わせから形成されてよい)。構造物の変位は、温度の変化に、及び少なくとも2つの材料954、956の熱膨張係数間の差に、比例する。したがって、かかる受動バルブ950は、バルブ950の流れ抵抗が温度に比例して変化するので、
図4の冷却管理システム400への冷却材流量を制御するのに特に適している。受動バルブ950は、
図6の冷却管理システム600にも適している。
【0093】
明確に反対のことが述べられていない限り、バルブが開閉されるとの言及は、以前の状態に対することを意味する。バルブは、閉じた状態から開いてよく、同等に、すでに「開いた状態」からさらに開いてもよい。同様に、バルブは、「完全に」開いた状態から閉じてよく、又は部分的に開いた状態からさらに閉じてもよい。
【0094】
上述した冷却管理システムの一例は、以下のようにまとめられる。
【0095】
その一例は、磁気閉じ込めプラズマチャンバにおけるプラズマ対向アセンブリのための冷却管理システムを与える。この冷却管理システムは冷却材ユニットアセンブリ及びバルブを含み、冷却材ユニットアセンブリは、各群が一以上の冷却材ユニットを含む複数の群を含み、各冷却ユニットは、プラズマ対向アセンブリの対応領域に冷却材を与えるように構成される冷却チャネルを含み、各群はさらに、一以上の冷却ユニットに冷却材を供給するように構成される導管を含み、バルブは、各導管内に配列されて冷却ユニットアセンブリの各群への冷却材の流量を制御するように動作可能である。
【0096】
冷却管理システムにおける複数の群は、直列に接続されても、並列に接続されてもよい。
【0097】
冷却管理システムにおけるバルブは、受動的であっても能動的であってもよい。
【0098】
能動的に制御されるバルブは、制御器を使用して制御することができる。制御器は、温度に応じて各バルブをさらに閉又は開に作動させるように構成される。すなわち、制御器は、第2の事前決定温度と第1の事前決定温度との間でバルブをさらに単調に閉じるように構成され、又は、第1の事前決定温度と第2の事前決定温度との間でバルブをさらに単調に開けてその流れ抵抗を変化させるように構成されてよい。
【0099】
受動バルブの状態は、温度に依存してよい。すなわち、各バルブは、温度が第1の事前決定温度から第2の事前決定温度まで上昇するにつれて単調に開いてバルブの流れ抵抗を減少させるように構成され、温度が第2の事前決定温度から第1の事前決定温度まで低下するにつれて単調に閉じてバルブの流れ抵抗を増加させるように構成される。
【0100】
第1の事前決定温度はほぼ350から450°Cとしてよく、第2の事前決定温度はほぼ550から650°Cとしてよい。
【0101】
随意的に、各受動バルブは、第2の事前決定温度に実質的に等しい融点を有する一以上の積層された膨張可能要素を含み、前記膨張可能要素が溶融すると、前記膨張可能要素に機械的に結合されたロッドの一端に取り付けられたキャップがバルブシートから離れるように付勢されてバルブが開く。
【0102】
代替的に、各受動バルブが、異なる熱膨張係数を有する少なくとも2つの材料を含む構造物を含み、この構造物は、温度が低ければ低いほどバルブを通る流れを大きな程度まで妨げるように配列される。
【0103】
各バルブは、対応群の入口の近くに配置されてよい。
【0104】
プラズマ対向アセンブリは、ダイバータアセンブリであってよく、各冷却ユニットは、ダイバータの一タイルの一部分に、又はダイバータの複数タイルの一以上に、一体的に形成されてよい。各群は、100から10,000個の冷却材ユニット、好ましくは1,000から5,000個の冷却材ユニットを含んでよく、各群は、ダイバータ上に複数のタイルの一アレイを画定してよく、このアレイは、第1の横方向に沿って10から100個のダイバータタイル、及び第2の横方向に沿って10から100個のダイバータタイルを含む。
【0105】
冷却管理システムはさらに、冷却ユニットアセンブリの群の異なるセットに並列に冷却材を与えるように動作可能な2以上のチャネルを含んでよく、冷却ユニットアセンブリの群の各セットは、3から10個の群を含んでよい。
【0106】
一補完例において、上述のまとめられた例に記載された冷却管理システムを含むトカマク又はステラレータが与えられる。
【0107】
トカマクは、球状トカマクであってよく、好ましくは、2.5以下のアスペクト比を有する球状トカマクであってよく、アスペクト比は、トカマクのトロイダルプラズマ閉じ込め領域の主半径と副半径との比として定義される。
【0108】
本発明が、上述されたように好ましい実施形態について説明されてきたにもかかわらず、これらの実施形態は例示に過ぎず、特許請求の範囲はこれらの実施形態に限定されないことを理解すべきである。異なる例からの複数の特徴を適宜組み合わせて、他の実施例を形成してよい。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-03
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気閉じ込めプラズマチャンバにおけるプラズマ対向アセンブリのための冷却管理システムであって、
複数の冷却材ユニット群と、
バルブ装置と
を含み、
前記複数の冷却材ユニット群はそれぞれが、前記プラズマ対向アセンブリの各部分に冷却を与えるように構成されて冷却材ソースラインに流体的に接続され、
前記複数の冷却材ユニット群は、流体的に直列又は並列に接続され、
前記バルブ装置は、前記冷却材ソースラインから各冷却材ユニット群への冷却材の流量を、前記各冷却材ユニット群における温度に応じて制御するように動作可能である、冷却管理システム。
【請求項2】
前記バルブ装置は、低い温度にある冷却材ユニット群と比べて高い温度にある冷却材ユニット群の方に優先的に冷却材を分布させるように動作可能である、請求項1に記載の冷却管理システム。
【請求項3】
前記バルブ装置は、低い温度にある冷却材ユニット群と比べて高い温度にある冷却材ユニット群の方に冷却材の流れを多く与えるように動作可能である、請求項1に記載の冷却管理システム。
【請求項4】
前記バルブ装置は、各対応冷却材ユニット群のためのバルブを含み、
前記バルブのそれぞれの、通過する冷却材の流れへの抵抗が、前記バルブの温度に反比例する、請求項1に記載の冷却管理システム。
【請求項5】
前記バルブ装置は受動バルブを含む、請求項1に記載の冷却管理システム。
【請求項6】
各冷却材ユニット群は、その一以上の冷却材ユニットに冷却材を供給するように構成される導管を含み、各冷却材ユニットは、前記プラズマ対向アセンブリの前記各部分の対応領域に冷却材を与えるように構成される冷却材チャネルを含む、請求項1に記載の冷却管理システム。
【請求項7】
前記バルブ装置は、各冷却材群の前記導管の中に配列されるバルブを含む、請求項
6に記載の冷却管理システム。
【請求項8】
各バルブを、前記各バルブの流れ抵抗を変えるように第1の事前決定温度と第2の事前決定温度との間で単調にさらに閉及び開に作動させるべく構成される制御器をさらに含む、請求項
7に記載の冷却管理システム。
【請求項9】
各バルブは受動的である、請求項
7に記載の冷却管理システム。
【請求項10】
各バルブは、
第1の事前決定温度から第2の事前決定温度まで温度が上昇するにつれて、前記各バルブの流れ抵抗を単調減少させるように開くことと、
第2の事前決定温度から第1の事前決定温度まで温度が低下するにつれて、前記各バルブの流れ抵抗を単調増加させるように閉じることと
を行うように構成される、請求項7に記載の冷却管理システム。
【請求項11】
各バルブは、前記第2の事前決定温度
に等しい融点を有する一以上の積層された膨張可能要素を含み、前記膨張可能要素が溶融すると、前記膨張可能要素に機械的に結合されたロッドの一端に取り付けられたキャップがバルブシートから離れるように付勢されて前記各バルブが開く、請求項
10に記載の冷却管理システム。
【請求項12】
各バルブは、異なる熱膨張係数を有する少なくとも2つの材料を含む構造物を含み、前記構造物は、温度が低ければ低いほど前記各バルブを通る流れを大きな程度まで妨げるように配列される、請求項
10に記載の冷却管理システム。
【請求項13】
前記第1の事前決定温度は350から450℃であり、前記第2の事前決定温度は550から650℃である、請求項
8に記載の冷却管理システム。
【請求項14】
各バルブは、
対応する導管と冷却材ソースラインとの接合部に配置される、請求項
7に記載の冷却管理システム。
【請求項15】
各冷却材ユニット群は、100から10000個の冷却材ユニットを含む、請求項14に記載の冷却管理システム。
【請求項16】
前記冷却材ユニット群の異なるセットに並列に冷却材を与えるように動作可能な一以上の冷却材ソースラインをさらに含む、請求項1に記載の冷却管理システム。
【請求項17】
前記冷却材ユニット群の各セットは3から100個の群を含む、請求項16に記載の冷却管理システム。
【請求項18】
ダイバータアセンブリ
と、請求項
6から
17のいずれか一項に記載の冷却管理システム
とを含むシステムであって、
各冷却材ユニットは、
前記ダイバータ
アセンブリの一タイルの一部分に、又
は複数タイルの一以上に、一体的に形成される
、システム。
【請求項19】
各
冷却材ユニット群は、前記ダイバータ
アセンブリの複数タイルの一アレイを画定し、前記一アレイは、第1の横方向に沿って10から100個のダイバータタイルを、第2の横方向に沿って10から100個のダイバータタイルを含む、請求項
18のシステム。
【請求項20】
請求項1から
17のいずれか一項に記載の冷却管理システム
又は請求項18から19のいずれか一項に記載のシステムを含むトカマク。
【請求項21】
前記トカマクは、球形トカマクで
ある、請求項
20に記載のトカマク。
【請求項22】
請求項1から
17のいずれか一項に記載の冷却管理システム
又は請求項18から19のいずれか一項に記載のシステムを含むステラレータ。
【国際調査報告】