(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ツインワイヤアーク溶射用フラックスコアドワイヤ
(51)【国際特許分類】
B23K 35/368 20060101AFI20241022BHJP
B23K 35/30 20060101ALI20241022BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20241022BHJP
【FI】
B23K35/368 E
B23K35/30 340C
B22F1/00 T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526956
(86)(22)【出願日】2023-02-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 KR2023001802
(87)【国際公開番号】W WO2023153789
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】10-2022-0017232
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,チュンニョン ポール
(72)【発明者】
【氏名】ハム,ギ ス
【テーマコード(参考)】
4E084
4K018
【Fターム(参考)】
4E084BA02
4E084BA03
4E084BA04
4E084BA05
4E084BA08
4E084BA09
4E084BA12
4E084BA22
4E084DA09
4E084DA22
4E084GA02
4K018BA16
4K018BA17
4K018BB04
(57)【要約】
本発明の一側面によるフラックスコアドワイヤは、ツインワイヤアーク溶射の適用時に、コーティング層内に一定水準以上のカーバイド及びボライドが形成されるようにしながらも、コーティング層内における気孔及び酸化物の形成を積極的に抑制することで、コーティング層の耐摩耗性を効果的に向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼の外皮にフラックスが充填されたフラックスコアドワイヤであって、
前記フラックスは、重量%で、クロム(Cr):13.0~18.0%、ボロン(B):1.0~7.0%、炭素(C):0.5~3.0%、モリブデン(Mo):6.0~25.0%、シリコン(Si):1%以下(0%を含む)、マンガン(Mn):1%以下(0%含む)、残りの鉄(Fe)及び不可避な不純物を含む合金粉末である、フラックスコアドワイヤ。
【請求項2】
請求項1において、前記フラックスは、重量%で、クロム(Cr):14.0~15.0%、ボロン(B):3.5~4.5%、炭素(C):0.5~1.0%、モリブデン(Mo):8.0~9.0%、シリコン(Si):0.1%以下(0%含む)、マンガン(Mn):0.1%以下(0%含む)、残りの鉄(Fe)および不可避な不純物を含む合金粉末である、フラックスコアドワイヤ。
【請求項3】
請求項1において、前記ステンレス鋼の外皮は、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、およびデュプレックス系ステンレス鋼の中から選択されたいずれか1つである、フラックスコアドワイヤ。
【請求項4】
請求項1において、前記フラックスコアドワイヤの直径は1.6~3.2mmであり、前記ステンレス鋼外皮の厚さは0.3~0.8mmである、フラックスコアドワイヤ。
【請求項5】
請求項1において、前記フラックスコアドワイヤをツインワイヤアーク溶射して形成されたコーティング層は、カーバイド及びボライドの分率は8面積%以上であり、酸化物分率は9面積%以下であり、気孔率は2.5%以下である、フラックスコアドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の外皮にFe系合金フラックスが充填された、フラックスコアドワイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ツインワイヤアーク溶射(twin wire arc spray、TWAS)は、多様な技術分野でコーティング層を形成するために利用される溶射方法の中の一つであって、2つのワイヤが交差した地点に発生する電気アークを利用して、ワイヤを溶解するのであり、溶解されたワイヤを加工対象物上に溶射してコーティング層を形成する方法である。
【0003】
ツインワイヤアーク溶射に適用されるワイヤの素材は多様であるが、その中で、鋼材の外皮に、合金粉末が充填されたフラックスコアドワイヤ(flux cored wire)が、最も代表的である。フラックスコアドワイヤを利用してツインワイヤアーク溶射を実施する場合、外皮と合金粉末とが均質に混合されたコーティング層を形成することができる。
【0004】
耐摩耗環境に適用される素材についての耐摩耗性を向上させるために、素材の表面に、硬質の溶射コーティング層を形成する方法が利用されている。ただし、ツインワイヤアーク溶射を利用して溶射コーティング層を形成する場合、コーティング層内に気孔及び酸化物が必然的に形成されるので、当該素材を極限の耐摩耗環境に適用するには限界点が存在する。
【0005】
一方、特許文献1は、耐摩耗性の側面で有利な物性を持つ非晶質合金溶射コーティング層を、素材の表面に形成する方案を提示するが、ツインワイヤアーク溶射の適用時に、コーティング層内の気孔および酸化物形成を抑制して、耐摩耗性を向上させる現実的な解決方案を提示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許公報第10-2301383号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一側面によれば、ツインワイヤアーク溶射の適用時、コーティング層内に一定水準以上のカーバイド及びボライドが形成されるようにしながらも、コーティング層内での気孔及び酸化物の形成を積極的に抑制し、コーティング層の耐摩耗性を効果的に向上させることができるフラックスコアドワイヤを提供することができる。
【0008】
本発明の課題は上述の内容に限定されない。通常の技術者であれば、本明細書の全般的な内容から本発明の追加的な課題を理解するのに何の困難もないだろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、
ステンレス鋼の外皮にフラックスが充填されたフラックスコアドワイヤであって、
前記フラックスは、重量%で、クロム(Cr):13.0~18.0%、ボロン(B):1.0~7.0%、炭素(C):0.5~3.0%、モリブデン(Mo):6.0~25.0%、シリコン(Si):1%以下(0%含む)、マンガン(Mn):1%以下(0%含む)、残りの鉄(Fe)および不可避な不純物を含む合金粉末であるフラックスコアフラックスを提供する。
【0010】
あるいは、本発明の一側面によれば、前記フラックスは、重量%で、クロム(Cr):14.0~15.0%、ボロン(B):3.5~4.5%、炭素(C):0.5~1.0%、モリブデン(Mo):8.0~9.0%、シリコン(Si):0.1%以下(0%を含む)、マンガン(Mn):0.1%以下(0%含む),残りの鉄(Fe)及び不可避な不純物を含む合金粉末であっても良い。
【0011】
あるいは、本発明の一側面によれば、前記ステンレス鋼の外皮はSUS 304、STS 316L、STS 430、STS 630などのステンレス鋼であっても良い。
【0012】
あるいは、本発明の一側面によれば、前記フラックスコアドワイヤの直径は1.6~3.2mmであり、前記ステンレス鋼外皮の厚さは0.3~0.8mmであっても良い。
【0013】
あるいは、本発明の一側面によれば、前記フラックスコアドワイヤをツインワイヤアーク溶射して形成されたコーティング層は、カーバイド及びボライドの分率は8面積%以上であり、酸化物の分率は9面積%以下であり、気孔率は2.5%以下であっても良い。
【0014】
前記課題の解決手段は、本発明の特徴を全て列挙したものではなく、本発明の多様な特徴とそれによる長所と効果は下記の具体的な実施例を参照してより詳細に理解できるだろう。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によるフラックスコアドワイヤは、ツインワイヤアーク溶射の適用時に、コーティング層内に一定水準以上のカーバイド及びボライドが形成されるようにしながらも、コーティング層内での気孔及び酸化物の形成を積極的に抑制して、コーティング層の耐摩耗性を効果的に向上させることができる。
【0016】
本発明の効果は、前述した事項に限定されるものではなく、本明細書に記載された事項から合理的に類推可能な事項を含むものと解釈されることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】フラックスコアドワイヤNo.1ないしNo.5によって形成されたコーティング層の走査電子顕微鏡の観察写真(1)である。
【
図2】フラックスコアドワイヤNo.1ないしNo.5によって形成されたコーティング層の走査電子顕微鏡の観察写真(2)である。
【
図3】フラックスコアドワイヤNo.1ないしNo.5によって形成されたコーティング層の走査電子顕微鏡の観察写真(3)である。
【
図4】フラックスコアドワイヤNo.1ないしNo.5によって形成されたコーティング層の走査電子顕微鏡の観察写真(4)である。
【
図5】フラックスコアドワイヤNo.1ないしNo.5によって形成されたコーティング層の走査電子顕微鏡の観察写真(5)である。
【
図6】フラックスコアドワイヤNo.1ないしNo.5によって形成されたコーティング層のEBSDフェーズマップ(phase map)(1)である。
【
図7】フラックスコアドワイヤNo.1ないしNo.5によって形成されたコーティング層のEBSDフェーズマップ(phase map)(2)である。
【
図8】フラックスコアドワイヤNo.1ないしNo.5によって形成されたコーティング層のEBSDフェーズマップ(phase map)(3)である。
【
図9】フラックスコアドワイヤNo.1ないしNo.5によって形成されたコーティング層のEBSDフェーズマップ(phase map)(4)である。
【
図10】フラックスコアドワイヤNo.1ないしNo.5によって形成されたコーティング層のEBSDフェーズマップ(phase map)(5)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明はフラックスコアドワイヤに関するものであって、以下では、本発明の望ましい具現例を説明しようとする。本発明の具現例は、様々な形態に変形することができ、本発明の範囲が以下で説明される具現例に限定されるものと解釈されてはならない。 本具現例は、当該発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者に本発明をさらに詳細にするために提供されるものである。
【0019】
本発明の一側面によるフラックスコアドワイヤは、ステンレス鋼の外皮および前記外皮に充填されたフラックスを含む。
【0020】
前記外皮は、約10重量%以上のクロム(Cr)を含むステンレス鋼であっても良く、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼及びデュプレックス系ステンレス鋼の中から選択されたいずれかが利用できる。望ましくは、前記外皮は、SUS 304、STS 316L、STS 430、STS 630などのステンレス鋼であっても良い。TWAS工程時に、外皮がフラックス(flux)と共にコーティング層を形成することになるので、外皮もやはり一定水準の耐腐食特性および機械的強度が要求される。したがって、前述したステンレス鋼を外皮として適用する場合、目的に符合した水準の耐腐食特性および機械的強度を確保することができる。
【0021】
望ましい前記フラックスコアドワイヤの直径は1.6~3.2mmであり、前記ステンレス鋼外皮の厚さは0.3~0.8mmであっても良い。
【0022】
本発明のフラックスは、Fe系合金粉末であっても良く、重量%で、クロム(Cr):13.0~18.0%、ボロン(B):1.0~7.0%、炭素(C):0.5~3.0%、モリブデン(Mo):6.0~25.0%、シリコン(Si):1%以下(Fe)、マンガン(Mn):1%以下(0%を含む)、残りの鉄(Fe)及び不可避な不純物を含む合金粉末であっても良い。
【0023】
以下、本発明のフラックスに含まれる合金成分について、より詳しく説明する。以下、特に別に表示しない限り、各元素の含量を示す%は重量を基準とする。
【0024】
<クロム(Cr):13.0~18.0%>
クロム(Cr)は、強度及び耐食性の向上に効果的に寄与する成分である。本発明の一側面によるフラックスは、このような効果を達成するために13.0%以上のクロム(Cr)を含むことができる。望ましいクロム(Cr)含量は13.5%以上であり、より望ましいクロム(Cr)含量は14.0%以上であっても良い。一方、クロム(Cr)が過度に添加される場合、金属間化合物が形成されることでコーティング層の脆性が強くなるか、クロム系酸化物が過度に形成されることでコーティング層の耐摩耗性の低下を誘発すしうるので、本発明のフラックスは、クロム(Cr)含量について上限を18.0%に制限することができる。望ましいクロム(Cr)含量は16.0%以下であり、より望ましいクロム(Cr)含量は15.0%以下であっても良い。
【0025】
<ボロン(B):1.0~7.0%>
ボロン(B)は、鉄(Fe)及びクロム(Cr)と結合してコーティング層内にボライドを形成するので、コーティング層の硬度向上に効果的に寄与する成分である。また、ボロン(B)のコーティング層の非晶質形成能(glass forming ability)の向上に効果的に寄与する成分でもある。本発明の一側面によるフラックスは、このような効果を達成するために1.0%以上のボロン(B)を含むことができる。望ましいボロン(B)含有量は2.0%以上であっても良く、より望ましいボロン(B)含有量は3.5%以上であっても良い。反面、フラックスにボロン(B)が過度に添加される場合、ボライドの過多生成によるコーティング層の靭性が低下する恐れがあるので、本発明はフラックスに含まれるボロン(B)含量の上限を7.0%に制限することができる。望ましいボロン(B)含量は6.0%以下であり、より好ましいボロン(B)含量は4.5%以下であっても良い。
【0026】
<炭素(C):0.5~3.0%>
炭素(C)はコーティング層の強度を向上に効果的に寄与する成分である。本発明の一側面によるフラックスは、このような効果を達成するために0.5%以上の炭素(C)を含むことができる。望ましい炭素(C)含量は0.6%以上であり、より望ましい炭素(C)含量は0.7%以上であっても良い。炭素(C)は高温亀裂感受性を高める成分であって、炭素(C)が過度に添加される場合、コーティング層の凝固亀裂要素として作用することができる。したがって、本発明は、フラックスに含まれる炭素(C)含有量の上限を3.0%に制限することができる。望ましい炭素(C)含量は2.0%以下であり、より望ましい炭素(C)含量は1.0%以下であっても良い。
【0027】
<モリブデン(Mo):6.0~25.0%>
モリブデン(Mo)は、非晶質形成能及び硬度向上に効果的に寄与する成分である。また、モリブデン(Mo)は、鋼の高温安定性の向上に効果的に寄与することでコーティング層におけるFe-Cr系酸化物の形成を効果的に制御できる成分でもある。本発明の一側面によるフラックスは、このような効果を達成するために6.0%以上のモリブデン(Mo)を含むことができる。望ましいモリブデン(Mo)含量は7.0%以上であり、より望ましいモリブデン(Mo)含量は8.0%以上であっても良い。一方、酸素親和度の高いモリブデン(Mo)がフラックスに過度に添加される場合、偏析発生及びFe系/Mo系酸化物の過度な発生によるコーティング層の耐摩耗性低下になるので、本発明は、フラックスに含まれるモリブデン(Mo)含量の上限を25.0%に制限することができる。望ましいモリブデン(Mo)含量は13.0%であり、より望ましいモリブデン(Mo)含量の上限は9.0%であっても良い。
【0028】
<シリコン(Si):1.0%以下(0%含む)>
シリコン(Si)は、非晶質形成能及び強度向上に寄与する成分である。本発明の一側面によるフラックスは、このような効果を達成するために一定含量のシリコン(Si)を含むことができる。ただし、シリコン(Si)が過多に添加される場合、脆性が増加して熱膨張係数の差による亀裂が形成されうるので、本発明は、フラックスに含まれるシリコン(Si)の含量は1.0%以下に制限することができる。望ましいシリコン(Si)含有量の上限は0.5%であり、より望ましいシリコン(Si)含有量の上限は0.1%であっても良い。
【0029】
<マンガン(Mn):1.0%以下(0%含む)>
マンガン(Mn)は、コーティング層の靭性及び強度向上に寄与する成分である。本発明の一側面によるフラックスは、このような効果を達成するために、一定の含量のマンガン(Mn)を含むことができる。ただし、マンガン(Mn)はスラグ形成による欠陥発生を誘発することができるので、本発明は、フラックスに含まれるマンガン(Mn)含量の上限を1.0%に制限することができる。望ましいマンガン(Mn)含量の上限は0.5%であり、より望ましいマンガン(Mn)含量の上限は0.1%であることができる。
【0030】
本発明のフラックスは、前述した成分以外に、残りのFeおよびその他の不可避な不純物を含むことができる。ただし、通常の製造過程では、原料または周囲環境から意図されない不純物が不可避に混入する可能性があるため、これを全面的に排除することはできない。これらの不純物は、本技術分野における通常の知識を有する者であれば、誰でも知ることができるものであるため、そのすべての内容を本明細書で特に言及することはない。加えて、前述した成分以外に有効な成分の追加的な添加が、全面的に排除されるわけではない。
【0031】
本発明のフラックスの平均粒度は特に制限されないが、一例としてフラックスの平均粒度は400~800μmの範囲であっても良い。また、フラックスを形成する合金粉末の製造方法も特に制限されるわけではなく、望ましくはアトマイジング方法が適用されうる。
【0032】
一方、特に限定するものではないが、本発明の一側面によるフラックスコアドワイヤをツインワイヤアーク溶射して形成されたコーティング層は、8面積%以上のカーバイド及びボライドを含み、酸化物の分率は9面積%以下(0%を含む)であり、気孔率は2.5%以下(0%を含む)であっても良い。ここで、カーバイドおよびボライドは、鉄系またはクロム系カーバイドおよびボライドであり、Cr23(C、B)6、Fe2B、Fe3C、Cr2Bを含む概念と解釈できる。
【0033】
一方、特に限定するものではないが、前記コーティング層において、前述したカーバイドおよびボライドの分率の下限は、一例として0.1%であっても良い。あるいは、前記コーティング層において、前述した酸化物の分率の下限は0.1%であっても良い。あるいは、前記コーティング層において、前述した気孔率は0.1%であっても良い。
【0034】
また、特に限定するものではないが、前記コーティング層において、前述したカーバイドおよびボライドの分率は、その値が高いほど望ましい。したがって、前記コーティング層において、前述したカーバイド及びボライドの分率に対する上限を特に限定しないことができ、一例としてカーバイド及びボライドの分率に対する上限は30%であっても良い。
【0035】
また、前記コーティング層において、前述したカーバイド及びボライドの分率と、酸化物の分率と、気孔率の測定方法については、通常の方法を通じて測定可能なので、本発明で測定方法を特に限定することはない。
【0036】
<発明の実施のための形態>
以下、具体的な実施例を通じて本発明のフラックスコアドワイヤについて、より詳しく説明する。以下の実施例は、本発明の理解のためのものであり、本発明の権利範囲を特定するためのものではないことに留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求範囲に記載された事項と、これから合理的に類推される事項によって決定されうる。
【0037】
<実施例>
下の表1の合金組成を持つ合金粉末を製造してフラックスを準備した後、STS 316Lステンレス鋼の外皮に、当該フラックスを充填して、直径が1.6mmのフラックスコアドワイヤを製造した。下の表1に記載されていない合金成分は、Feおよびその他の不純物であり、“-“表示は、該当成分の含量が誤差範囲内で0wt%に近接した場合を意味する。No.5のフラックスコアドワイヤを製造するのに利用された合金粉末は、従来の使用材であるHX70である。
【0038】
【0039】
それぞれのフラックスコアドワイヤを利用してツインワイヤアーク溶接を実施し、S45C表面に厚さ約400μmのコーティング層を形成した。この際に適用したツインワイヤアーク溶射の条件は、以下の通りである。
【0040】
<ツインワイヤアーク溶射条件>
フラックス直径(flux diameter):1.6mm
電圧(Volts):34~36V
電流(Current):220~225AMPS
気圧(Air pressure):70 PSI
【0041】
走査電子顕微鏡(SEM)を利用して、それぞれのコーティング層の断面にて気孔率及び酸化物分率を測定し、その結果を表2に記載した。後方散乱電子回折パターン分析器(EBSD)のフェーズマップ(phase map)機能を利用して、各コーティング層断面の成分分析を実施し、カーバイド及びボライドの分率を表2に共に記載した。
【0042】
図1ないし
図5は、フラックスコアドワイヤNo.1ないしNo.5によって形成されたコーティング層の走査電子顕微鏡の観察写真であり、
図6ないし10は、フラックスコアドワイヤ No.1ないしNo.5によって形成されたコーティング層のEBSDフェーズマップ(phase map)である。
【0043】
【0044】
表2に記載されているように、本発明の一側面によるNo.1ないしNo.4フラックスコアドワイヤによって製造されたコーティング層は、気孔率が2.5%以下であり、酸化物分率が9.5面積%以下である反面、従来材であるNo.5フラックスコアドワイヤによって製造されたコーティング層は、気孔率が2.5%を超過し、酸化物分率が9.5面積%を超過することが分かる。また、本発明の一側面によるNo.1ないしNo.4フラックスコアドワイヤによって製造されたコーティング層は、ボライド及びカーバイドの分率が8面積%以上であるため、相対的に優れた耐摩耗性が予想される反面、従来材であるNo.5フラックスコアドワイヤによって製造されたコーティング層は、ボライド及びカーバイドの分率が8面積%に及ばず、相対的に劣った耐摩耗性が予想される。
【0045】
NO.4フラックスコアドワイヤによって製造されたコーティング層、およびNo.5フラックスコアドワイヤによって製造されたコーティング層に対して、摩耗量測定実験を行い、その結果は下の表3に記載した。この際、前記磨耗量測定実験は、ASTMG99 pin on disk試験法で遂行したのであって、RB102PD装備を使用したのであり、ピン(counter part):Si3N4、荷重:5kgf、速度:0.05m/sに設定した。
【0046】
【0047】
表3に記載されたように、本発明の一側面によるNo.4フラックスコアドワイヤによって製造されたコーティング層は、従来材であるNo.5フラックスコアドワイヤによって製造されたコーティング層に比べて、耐摩耗性が約15%以上改善されたことが確認できる。
【0048】
以上で実施例を通じて本発明を詳細に説明したが、これと異なる形態の実施例も可能である。したがって、以下に記載された請求項の技術的思想と範囲は実施例に限定されない。
【国際調査報告】