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特表2024-539732スピーカおよびマイクロホンとしてのオーディオ機器の同時二重用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】スピーカおよびマイクロホンとしてのオーディオ機器の同時二重用途
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20241022BHJP
   H04R 19/02 20060101ALI20241022BHJP
   H04R 19/04 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R19/02
H04R19/04
H04R3/00 320
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528446
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 IL2022051192
(87)【国際公開番号】W WO2023089607
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】2116592.3
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524178229
【氏名又は名称】ウェーブス オーディオ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ゼルツァー,ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】シャシュア,ミール
【テーマコード(参考)】
5D021
5D220
【Fターム(参考)】
5D021CC19
5D220AA47
5D220BA14
5D220BA22
5D220BA23
(57)【要約】
静電型音響機器をスピーカとしておよびマイクロホンとして同時に動作させる。静電型音響機器は、膜と、膜に近接して配置された電極とを含む。入力変動オーディオ信号が静電型音響機器に入力される。膜は、変動オーディオ信号入力に応答して変動電場に機械的に応答するように構成される。入力変動オーディオ信号の一部は、基準信号を生成するためにタップされる。膜の動きに応答して信号が検出され、その信号を出力変動電圧信号に変換する。出力変動電圧信号は、基準信号と比較されて、マイクロホン信号を生成する。マイクロホン信号は、周囲音の空気圧変動によって誘発される膜の動きに応答する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカとしておよびマイクロホンとして同時に動作させるように静電型音響機器を構成するステップであって、前記静電型音響機器は、膜と前記膜に近接して配置された電極とを含み、
入力変動オーディオ信号入力を前記静電型音響機器に印加するステップであって、前記膜は前記変動オーディオ信号入力に応答して変動電場に機械的に応答するように構成される、印加ステップと、
前記入力変動オーディオ信号の一部をタップして、基準信号を生成するステップと、
前記膜の動きに応答する信号を検出して、前記信号を出力変動電圧信号に変換するステップと、および
記出力変動電圧信号を前記基準信号と比較して、周囲音の空気圧変動によって誘発される前記膜の動きに応答するマイクロホン信号を生成するステップと
を可能にすることによって、前記静電型音響機器を構成するステップを含む方法。
【請求項2】
前記入力変動オーディオ信号を前記膜に入力するステップと、
前記電極を高電圧DCバイアスに接続するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記入力変動オーディオ信号を前記電極に入力するステップと、
前記膜を高電圧DCバイアスに接続するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電極は、前記膜の第1の側に配置された第1の電極と、前記第1の側とは反対側の前記膜の第2の側に配置された第2の電極とを含み、前記入力変動オーディオ信号は、前記第1の電極に入力された反転変動オーディオ信号と、前記第2の電極に入力された非反転変動オーディオ信号とを含み、前記基準信号は、前記反転変動オーディオ信号入力および前記非反転変動オーディオ信号入力に応答する、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
無線周波数で変動するプローブ信号を前記静電型音響機器の入力に注入するステップと、
電流信号出力または電荷信号出力を変調電圧信号に変換することによる前記検出ステップであって、前記電流信号または電荷信号は、前記プローブ信号の前記無線周波数を変調するオーディオ周波数で変動するオーディオ信号を含む、検出ステップと、
前記変調電圧信号を復調して、オーディオ周波数で変動する前記出力変動電圧信号を生成するステップと
をさらに含む、請求項1~請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
オーディオ周波数で変動する前記出力変動電圧信号は、無線周波数の前記変調電圧信号のホモダイン検出によって取得される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
無線周波数の前記変調電圧信号および無線周波数で変動する前記プローブ信号に応答する無線周波数搬送波信号を位相/周波数ロックするステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記変調電圧信号の無線周波数搬送波と同期した発振器信号を生成するステップと、
前記同期発振器信号に応答して前記プローブ信号を出力するステップと
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記変調電圧信号を復調するステップは、ローパスフィルタリングによって実行される、請求項5~請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ローパスフィルタリングの前に整流することによって前記復調を実行するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
膜と前記膜に近接して配置された電極とを含む静電型音響機器のドライバであって、
入力変動オーディオ信号入力を前記静電型音響機器に印加し、前記膜は、前記変動オーディオ信号入力に応答して変動電場に機械的に応答するように構成され、
前記入力変動オーディオ信号の一部をタップして基準信号を生成し、
前記膜の動きに応答する信号を検出して、前記信号を出力変動電圧信号に変換し、および
前記出力変動電圧信号を前記基準信号と比較して、周囲音の空気圧変動によって誘発される前記膜の動きに応答するマイクロホン信号を生成する
ことによって、前記静電型音響機器をスピーカおよびマイクロホンとして同時に動作させるように構成されるドライバ。
【請求項12】
前記入力変動オーディオ信号を前記膜に入力し、
前記電極を高電圧DCバイアスに接続する
ようにさらに構成される、請求項11に記載のドライバ。
【請求項13】
前記入力変動オーディオ信号を前記電極に入力し、
前記膜を高電圧DCバイアスに接続する
ようにさらに構成される、請求項11に記載のドライバ。
【請求項14】
前記静電型音響機器は、前記膜の第1の側に配置された第1の電極と、前記第1の側とは反対側の前記膜の第2の側に配置された第2の電極とを含み、前記ドライバは、
反転変動オーディオ信号を前記第1の電極に入力し、非反転変動オーディオ信号を前記第2の電極に入力するように構成され、前記基準信号は、前記反転変動オーディオ信号入力および前記非反転変動オーディオ信号入力に応答する、請求項11または請求項13に記載のドライバ。
【請求項15】
無線周波数で変動するプローブ信号を前記静電型音響機器の入力に注入し、
前記静電型音響機器から出力された電流信号または電荷信号であって、前記プローブ信号の前記無線周波数を変調するオーディオ周波数で変動するオーディオ信号を含む電流信号または電荷信号を変調電圧信号に変換し、
前記変調電圧信号を復調して、オーディオ周波数で変動する前記出力変動電圧信号を生成する
ようにさらに構成される、請求項11に記載のドライバ。
【請求項16】
無線周波数の前記変調電圧信号のホモダイン検出によって、オーディオ周波数で変動する前記出力変動電圧信号を取得するようにさらに構成される、請求項15に記載のドライバ。
【請求項17】
無線周波数の前記変調電圧信号および無線周波数の前記プローブ信号に応答する無線周波数搬送波信号を位相/周波数ロックするようにさらに構成される、請求項15に記載のドライバ。
【請求項18】
前記変調電圧信号の無線周波数搬送波と同期した発振器信号を生成し、
前記同期発振器信号に応答して前記プローブ信号を出力する
ようにさらに構成される、請求項15に記載のドライバ。
【請求項19】
前記変調電圧信号を復調するためのローパスフィルタをさらに備える、請求項15に記載のドライバ。
【請求項20】
ローパスフィルタリングの前に整流することによって復調するように構成された整流器をさらに備える、請求項15に記載のドライバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤホンおよびスピーカを含む静電型オーディオ機器に関する。
【背景技術】
【0002】
高忠実度の音響再生の技術において、静電型スピーカは、広い周波数範囲にわたって、固有の優れた音質と滑らかな応答を有するために注目されてきた。このような機器では、可撓性の発音膜が電極の近くに位置決めされ、または、プッシュプル構成の場合には、一対の電極の近くに(膜の両側に1つずつ)位置決めされる。分極電位が膜と電極との間に印加され、オーディオ信号が電極に重畳され、その結果、オーディオ信号に応答して膜を移動させる。電極は、可動膜によって生成される音が電極を通って外側に向かって聴取エリアへ放射されるように、音響透過性である。
【0003】
静電型機器は、電気的にも機械的にも高効率である。電気インピーダンスは高く、音響周波数の増加と共に減少する。高い電気インピーダンスは、非常に低い動作電流および最小限の電気損失をもたらす。機械的には、非常に軽量な可動膜以外の可動部品は存在しない。したがって、静電型機器は、バッテリ駆動式の電子機器に現在使用されている動電型オーディオ機器よりも本質的にエネルギー効率が高い。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において、スピーカとしておよびマイクロホンとして同時に動作させるように静電型音響機器を構成するための様々な方法およびドライバが開示されている。静電型音響機器は、膜と、膜に近接して配置された電極とを含む。入力変動オーディオ信号が静電型音響機器に入力される。膜は、変動オーディオ信号入力に応答して変動電場に機械的に応答するように構成される。入力変動オーディオ信号の一部は、基準信号を生成するためにタップされる。膜の動きに応答して信号が検出され、その信号を出力変動電圧信号に変換する。出力変動電圧信号は、基準信号と比較されて、マイクロホン信号を生成する。マイクロホン信号は、周囲音の空気圧変動によって誘発される膜の動きに応答する。入力変動オーディオ信号は膜に入力され、電極は高電圧デュアルDCバイアス対称または非対称ソースに接続され得る。あるいは、入力変動オーディオ信号は電極に入力され、膜は高電圧DCバイアスに接続され得る。電極は、膜の第1の側に配置された第1の電極と、第1の側とは反対側の膜の第2の側に配置された第2の電極とを含み得る。入力変動オーディオ信号は、第1の電極に入力された反転変動オーディオ信号と、第2の電極に入力された非反転変動オーディオ信号とを含み得る。基準信号は、反転変動オーディオ信号入力および非反転変動オーディオ信号入力に応答し得る。無線周波数で変動するプローブ信号は、静電型音響機器の入力に注入され得る。検出は、電流信号出力または電荷信号出力を変調電圧信号に変換することによって実行され得る。電流信号または電荷信号は、プローブ信号の無線周波数を変調するオーディオ周波数で変動するオーディオ信号を含み得る。変調電圧信号は、オーディオ周波数で変動する出力変動電圧信号を生成するために復調され得る。オーディオ周波数で変動する出力変動電圧信号は、無線周波数の変調電圧信号のホモダイン検出によって取得され得る。変調無線周波数搬送波信号のホモダイン検出は、対象となるオーディオ周波数範囲よりも高い出力ローパスフィルタ帯域幅を有するロックイン増幅器検出器を介して達成され得る。無線周波数の変調電圧信号は、位相/周波数ロックされ、プローブ信号に応答する無線周波数搬送波信号は、無線周波数で変動し得る。発振器信号は、変調電圧信号の無線周波数搬送波と同期して生成され得る。プローブ信号は、同期発振器信号に応答して出力され得る。変調電圧信号の復調は、ローパスフィルタリングによって、またはローパスフィルタリングの前に整流することによって実行され得る。
【0005】
本明細書において、添付図面を参照しながら単なる例として本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の特徴に従う、静電型機器の概略断面図である。
図2】スピーカおよびマイクロホンとしての二重用途のための静電型音響機器およびそのドライバを含むシステム図である。
図3A】静電型音響機器およびそのドライバの電子ブロック図である。
図3B図3Aに示す本発明の実施形態のさらなる詳細図である。
図4A】本発明の特徴に従う、静電型音響機器の代替ドライバの概略図である。
図4B図3Aに示す本発明の実施形態のさらなる詳細図である。
図5】本発明の特徴を示す方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
前述の態様および/または他の態様は、添付図面と併せて検討した場合に、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0008】
以下に、本発明の特徴について詳細に説明するが、その実施例が添付図面に示されており、図面において、同様の参照符号は同様の要素を指す。ここでは、添付図面を参照することによって、その特徴について述べることで本発明を説明する。
【0009】
前置きとして、本発明の異なる態様は、ヘッドホンおよびマイクロホンとして同時に使用され得るインイヤー式および/またはオーバーイヤー式静電型音響機器のための回路を対象とし得る。回路は、最大寸法(例えば、50ミリメートル以下の直径D)の静電型スピーカ、またはいくつかの実施形態では25ミリメートル以下の寸法Dの静電型スピーカ、またはさらに他の実施形態では10ミリメートル以下の寸法Dの静電型スピーカ用に設計され得る。イヤホン用途の場合、静電型スピーカは、最大寸法(例えば、5ミリメートル以下の直径D)を有し得る。
【0010】
したがって、イヤホンとして使用され、外耳道に封入される静電型音響機器10を含む本発明の実施形態では、鼓膜の機械的変位は、膜15の機械的変位と結合され得る。ユーザの声は、骨伝導によって、および膜15をマイクロホンとして使用することを可能にする膜15への内部結合によって、鼓膜に内部伝達される。
【0011】
ここで、図面について説明する。まず図1を参照すすると、図1は、本発明の特徴に従う静電型音響機器10の概略図である。垂直軸Zは、音響機器10の中心を通って示されている。張設された膜15は、電極11の縁部によって、本質的に垂直軸Zに垂直な平面において支持される。膜15には、膜15が電場の変化に機械的に応答するように、導電性、抵抗性、および/または静電性の材料が含浸され得る。電極11の中央領域は、膜15に近接して(例えば、平行に)、名目上等距離に、膜15から距離D(例えば、20~500マイクロメートル)の位置に取り付けられる。図示されている電極11には、静電型音響機器10が動作しているときに膜15から発せられる音波を透過する開口12が穿孔され得る。代替としてまたは追加として、1つまたは複数のサイドポート13は、膜15を取り囲む空気から機器10の外側に音波を通過させ得る。
【0012】
静電型音響機器10の動作中、一定の直流(DC)バイアス電圧(例えば、+VDC=+100~+1000ボルト)が、導電性接触子を用いて膜15に印加され得る。オーディオ入力電圧信号±Vが、電極11に印加され得る。あるいは、電圧信号Vは、膜15に印加され得、電極11は、±VDCでバイアスされ得る。電圧信号±Viは、公称20~20,000ヘルツのオーディオ周波数で変動し得る。非反転電圧信号+Vが電極11の一方に印加され、同一であるが反転された電圧信号-Vが他方の電極11に印加され得る。点線は、電圧信号±Vによる電圧の変化に応答して移動する膜15を概略的に示している。
【0013】
次に、静電型音響機器10を含む簡略化された電子システムブロック図20である図2、およびスピーカとしておよびマイクロホンとして同時に二重動作させるための本発明の特徴に従う方法のフロー図50である図5について説明する。ブロック26は、静電型音響機器10を駆動して可動膜15から音を発生させるために電圧信号Vを入力する(ステップ51)ドライバまたは電子回路を表す。基準信号21は、入力オーディオ信号Vから分割されまたはタップされ(ステップ53)、比較器23に入力される。ブロック26は、膜15の機械的な動きに比例する、または膜15の機械的な動きに応答する信号を検出し(ステップ55)、膜15の動きに応答して、信号、例えば、電圧Vを出力する(ステップ57)。電圧出力信号Vは、比較器23への第2の入力である。比較器23は、基準信号21を出力電圧信号Vと比較する(例えば、基準信号21を出力電圧信号Vから差し引く)ように構成され、適切な信号処理を用いて、外部音圧によって引き起こされる膜15の振動に応答するマイクロホン信号25を抽出し得る。
【0014】
膜15の機械的な動きに比例する、または膜15の機械的な動きに応答する信号の検出(ステップ55)は、当技術分野で周知の様々な検出方法によって実行され得る。膜15と電極11との間の静電気電流の変化または静電容量の変化の検出については、以下に、図3図7を参照しながらさらに詳細に説明する。本発明の異なる実施形態によれば、例として、光学センサ、ホール効果磁気センサを使用する静電場または磁場勾配などの外部場勾配(力)検出を含む、膜15の動きを測定するための他の検出(ステップ55)方法が使用され得る。
【0015】
膜15の動きに応答する任意の検出方法(ステップ55)に対して、マイクロホン信号が抽出され得る(ステップ59)。減算は、適切なレベル調整および/または時間遅延を伴うデジタル信号処理によって時間領域で実行され得る。あるいは、減算は、信号を変換すること(例えば、短時間フーリエ変換)、周波数領域で減算を実行すること、および時間領域に戻す逆フーリエ変換を実行してマイクロホン信号を抽出することによって、周波数領域で実行され得る(ステップ59)。
【0016】
ここで図3Aを参照すると、図3Aは、本発明の特徴に従う、図2のシステム26の代替形態である回路26Aをさらに詳細に示した概略図である。ドライバ26Aは、静電型音響機器10を含み、静電型音響機器10は、静電型音響機器10によって音に変換することを意図したオーディオ周波数で変動する、第1の電極11における高電圧オーディオ入力+Vと、第2の電極11における反転高電圧オーディオ入力-Vとを受信するように構成され得る。加えて、膜15は、機器10が周囲音波に対してマイクロホンとして挙動し得るように、機械的に応答し得る。
【0017】
周囲音に応答して、膜15と電極11との間の距離D(図1)が変化し、静電型音響機器10の静電容量Cの変化をもたらす。周囲音による電流i(t)の変化は、トランスインピーダンス増幅器を含み得る検出器30を使用して感知され得る。電流i(t)の変化は、以下の式によって近似され得る。
【数1】
【0018】
基準信号21は、1つまたは複数の入力オーディオ信号±Vから分割されまたはタップされ(ステップ53)、比較器23に入力される。電圧出力信号Vは、比較器23への第2の入力である。比較器23は、基準信号21を出力電圧信号Vと比較する(例えば、基準信号21を出力電圧信号Vから差し引く)ように構成され、または膜10の振動を誘発する音に応答するマイクロホン信号25を抽出するように構成される。
【0019】
ここで図3Bを参照すると、図3Bは、本発明の特徴に従う、図3Aのドライバ26Aをさらに詳細に示した概略図である。例えば0.1~2メガヘルツの無線周波数の局部発振器(LO)51からのプローブ信号は、変圧器Tの一次巻線P間に結合され得る。オーディオ信号+Vおよび反転オーディオ信号-Vは、変圧器Tの直列接続された二次巻線S1、S2を介して電極11にそれぞれ供給され得る。オーディオ信号±Vは、高電圧信号であり得る。あるいは、オーディオ信号±Vは、機器10(図1)内に示すような膜15に印加される直流高電圧を有する約±20V以下の低電圧信号であり得る。プローブ信号は、膜15と電極11、本質的には可変コンデンサによって形成される電気回路の特性リアクタンスによって決定される大きさを有する電流を生成する。無線周波数を使用する利点は、無線周波数が知覚可能な機械的な動きを生成しないが、オーディオ信号が存在するときに生成される機械的な動きに関連する静電容量の電気的変化によって変調されるという点にある。さらに、無線周波数振幅変調信号は、関係式(2)に示される直接静電容量変化によって誘導される電流と比較した場合、機器の全静電容量変化に関して、より高いSNRを有し得る。
【0020】
周囲音による電流i(t)の変化は、トランスインピーダンス増幅器40を使用して明示的に示される。局部発振器(LO)51からのプローブ信号は、信号合成器/乗算器32において増幅器40の電圧出力と合成され得る。増幅器40は、LO51の無線周波数を含む0.1~2メガヘルツのオーディオ周波数の帯域外に中心が置かれ、好ましくは膜15のあらゆる共鳴から離れて、反転または非反転であるように構成され得る。信号合成器/乗算器32は、ローパスフィルタ34に出力し、ローパスフィルタ34は、オーディオ周波数で変動する電圧出力信号Vを復調して送信する。システム26Aは、基準として増幅器40の測定信号出力と乗算される局部発振器51を使用するホモダイン検出回路であり得る。この乗算のベースバンドまたはDC成分は、非常に高い信号対雑音比で検出されたLO52周波数付近の狭帯域から周波数変換された信号を含む。乗算器32は、例えば、Analog Devices社(NorwooD、MA、USA)製のアナログ回路AD835で実現され得る。
【0021】
あるいは、トランスインピーダンス増幅器40の代わりに、電荷増幅器が考えられ得、これは、電流i(t)を積分して、静電型音響機器10の静電容量の変化と共に変動する電荷Q(t)を感知し、感知された電荷は、出力電圧信号Vに変換される。増幅器40は、反転または非反転であるように構成され得、20~20000ヘルツのオーディオ周波数を含む帯域通過を有し得る。
【0022】
次に、図4A、さらに図5を参照すると、これらは、本発明の特徴に従う、図2のブロック26の別の代替形態26Bの概略図である。ドライバ26Bにおいて、オーディオ電圧Vが膜15に印加され得る(ステップ51)。バイアス電圧VDCは、第1の電極11に-VDC/2が印加され、第2の電極11に+VDC/2が印加される形で、電極11に対称的に印加される。検出器31は、電極11にそれぞれ容量結合された入力と共に使用され得る。検出器31の電圧出力Vは、機器10の静電容量と共に変動し得る(ステップ55)。基準信号21は、入力オーディオ信号Vから分割されまたはタップされ(ステップ53)、比較器23に入力される。電圧出力信号Vは、比較器23への第2の入力である。比較器23は、基準信号21を出力電圧信号Vと比較する(ステップ59)、例えば、基準信号21を出力電圧信号Vから差し引くように構成され、または膜10の振動を誘発する音に応答するマイクロホン信号25を抽出するように構成される。
【0023】
ここで図4Bを参照すると、図4Bは、本発明の特徴に従う、図2のブロック26の代替形態としてのドライバ26Bのさらなる詳細図である。ドライバ26Bにおいて、オーディオ電圧Vが膜15に印加され得る。局部発振器51からのプローブ信号は、局部発振器51と並列に接続された一次側Pと、オーディオ電圧Vと膜15との間に直列に接続された二次側Sとを有する変圧器Tを使用して、膜15上に誘導され得る。プローブ信号を膜に注入する別の方法は、専用の高電圧セラミックコンデンサを介した容量結合を使用することができる。差動増幅器41は、電極11にそれぞれ容量結合された入力と共に使用され得る。差動増幅器41の電圧出力は、機器10の静電容量と共に変動する。局部発振器(LO)51からのプローブ信号は、信号合成器/乗算器32において差動増幅器41の電圧出力と合成され得る。信号合成器/乗算器32は、ローパスフィルタ34に出力し、ローパスフィルタ34は、オーディオ周波数で変動する電圧出力信号Vを復調して送信する。差動増幅器41は、Texas Instruments/Burr-Brown(登録商標)INA105を用いて実現され得る。本発明の特徴によれば、2つではなく1つの高電圧入力増幅器を使用することができるので、ドライバ26Bはドライバ26Aに勝る利点を有する。
【0024】
さらに図4Aおよび図4Bを参照すると、本発明の代替形態は、変圧器Tを、電極11へのオーディオ電圧±Vの容量結合で置き換えて構成され得る。
【0025】
本明細書で使用される用語「ホモダイン」は、基準発振と組み合わせることによって発振信号上に位相変調および/または周波数変調された信号の検出/復調の方法を指す。
【0026】
本明細書で使用される用語「周囲」は、静電型音響機器の膜の近傍を指す。
【0027】
本明細書で使用される用語「ドライバ」は、静電型音響機器からの信号を電気的にバイアスし、入力し、および/または出力するように構成された電子回路である。
【0028】
本明細書で使用される用語「位相感応検出器回路」は、本質的に、同じ周波数の2つの交流入力信号の振幅の積と、それらの間の位相の余弦とに比例する直流出力信号を生成する乗算器(またはミキサ)およびループフィルタを含む電子回路である。
【0029】
本明細書で使用される用語「トランスインピーダンス増幅器」は、電流を電圧に変換するものである。トランスインピーダンス増幅器は、センサの電流出力を電圧信号出力に処理するために使用され得る。
【0030】
本明細書で使用される用語「電荷増幅器」は、典型的には、積分された時間変動電流信号によって、時間変動電荷を電圧出力に変換する。
【0031】
用語「オーディオ」または「オーディオ周波数」は、周波数範囲0~20,000ヘルツにおける交流電流もしくは電圧の、または磁場、電場もしくは電磁場もしくは機械系の発振レートを指す。
【0032】
本明細書で使用される用語「オーディオ信号」、「オーディオ出力」、「オーディオ出力信号」は、本質的にオーディオ周波数で変動する電気信号を指す。
【0033】
用語「無線周波数」(RF)は、毎秒約2万回(20kHz)から毎秒約3000億回(300GHz)の周波数範囲の交流電流もしくは電圧、または磁場、電場もしくは電磁場、または機械系の発振レートである。
【0034】
本明細書で使用される移行用語「備える(comprising)」は、「含む(incluDing)」と同義であり、包括的または非限定的であり、明示的に列挙されていない追加の要素または方法ステップを排除するものではない。「回路(a circuit)」または「電極(a electroDe)」のような冠詞「a」、「an」は、「1つまたは複数の回路」、「1つまたは複数の電極」の「1つまたは複数の」の意味を有する。
【0035】
記載されている実施形態および従属クレームの全ての随意の好適な特徴および修正形態は、本明細書で教示されている本発明の全ての態様において使用可能である。さらに、従属クレームの個々の特徴、および記載されている実施形態の全ての随意の好適な特徴および修正形態は、互いに組み合わせ可能であり、置き換え可能である。
【0036】
本発明の選択された特徴を示し、説明したが、本発明は説明されている特徴に限定されないことを理解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
【国際調査報告】