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特表2024-539741電気送信装置、アンテナ、送信装置の操作方法、及び、位相シフタ
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  • 特表-電気送信装置、アンテナ、送信装置の操作方法、及び、位相シフタ 図1A
  • 特表-電気送信装置、アンテナ、送信装置の操作方法、及び、位相シフタ 図1B
  • 特表-電気送信装置、アンテナ、送信装置の操作方法、及び、位相シフタ 図2A
  • 特表-電気送信装置、アンテナ、送信装置の操作方法、及び、位相シフタ 図2B
  • 特表-電気送信装置、アンテナ、送信装置の操作方法、及び、位相シフタ 図3A
  • 特表-電気送信装置、アンテナ、送信装置の操作方法、及び、位相シフタ 図3B
  • 特表-電気送信装置、アンテナ、送信装置の操作方法、及び、位相シフタ 図4A
  • 特表-電気送信装置、アンテナ、送信装置の操作方法、及び、位相シフタ 図4B
  • 特表-電気送信装置、アンテナ、送信装置の操作方法、及び、位相シフタ 図5
  • 特表-電気送信装置、アンテナ、送信装置の操作方法、及び、位相シフタ 図6
  • 特表-電気送信装置、アンテナ、送信装置の操作方法、及び、位相シフタ 図7
  • 特表-電気送信装置、アンテナ、送信装置の操作方法、及び、位相シフタ 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】電気送信装置、アンテナ、送信装置の操作方法、及び、位相シフタ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/34 20060101AFI20241022BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
H01Q3/34
H01Q21/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529949
(86)(22)【出願日】2022-11-19
(85)【翻訳文提出日】2024-07-02
(86)【国際出願番号】 IB2022061169
(87)【国際公開番号】W WO2023089573
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/281,593
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/399,570
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/989,486
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524191114
【氏名又は名称】スデロテック,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SDEROTECH,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【弁理士】
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 香子
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】ハジザ,デディ ダビデ
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA09
5J021AB06
5J021FA06
(57)【要約】
ドメインが自然な緩和状態を取るための自然な応答時間は、ドメインを自然な状態に強制することによって早められる。この強制は、電界や磁界の印加によって、又は、機械、液体若しくは音波による圧力の印加によって実施され得る。さらに、RFチョーク及び/又は1つ以上のRFトラップが構造体に組み込まれる。前記強制が電界によって実施される場合、制御信号は、送信線に印加され、かつ、信号線のそれぞれの側部に配される少なくとも1つの制御線に印加される。
【選択図】図1A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を送信する電気送信装置であって、
下部誘電体プレートと上部誘電体プレートとの間に挟まれた可変なVDC材料を有する可変誘電率(VDC)構造を含み、前記VDC材料は複数の配向可能なドメインを有し、
前記下部誘電体プレートの下に配置された共通電位プレートと、
前記上部誘電体プレートの上に配された複数の送信線とを含み、前記各送信線は電気信号を送信し、
複数の制御線を含み、前記送信線の1本が少なくとも1本の前記制御線とペアとなり、ペアとなった前記制御線と前記送信線との影響領域が重なり合い、
前記共通電位プレート、複数の前記送信線及び複数の前記制御線の間の制御電位を接続し、これにより、前記ドメインの空間的な配向を制御する複数のポートを含む、
電気送信装置。
【請求項2】
前記共通電位プレートは、接地電位の周辺領域、浮遊電位の内部領域、及び、前記周辺領域と前記内部領域との間に配置されたRFチョークを含む、請求項1に記載の電気送信装置。
【請求項3】
それぞれの前記送信線が2本の前記制御線とペアになっている、請求項1に記載の電気送信装置。
【請求項4】
複数の前記送信線が共通RFポートに結合している、請求項1に記載の電気送信装置。
【請求項5】
前記複数のポートのそれぞれは、前記送信線又は前記制御線のいずれか1つだけに接続されている、請求項4に記載の電気送信装置。
【請求項6】
それぞれの前記制御線は、少なくとも1つのRFトラップを含む、請求項1に記載の電気送信装置。
【請求項7】
それぞれの前記RFトラップは、
前記制御線に接続された共通ステムと、
前記共通ステムに接続する分岐器と、
複数の周波数マッチングブランチとを含み、
それぞれの前記周波数マッチングブランチは、前記分岐器と接続され、かつ、別の前記周波数マッチングブランチに含まれる重複セクションと空間的に平行な重複セクションを含む、請求項6に記載の電気送信装置。
【請求項8】
前記周波数マッチングブランチの各ブランチは、同じ前記周波数マッチングブランチの他のブランチとは異なる長さを有する、請求項7に記載の電気送信装置。
【請求項9】
機械的圧力、磁気的圧力、音圧又は液圧のうちの1つを前記VDC構造に印加する圧力アプリケータをさらに含む、請求項1に記載の電気送信装置。
【請求項10】
アンテナであって、
上部誘電体プレートと、下部誘電体プレートと、前記上部誘電体プレートと前記下部誘電体プレートとの間の可変誘電材料とを有する可変誘電率プレートと、
前記下部誘電体プレートの下に設けられた共通電位プレートと、
複数の放射器と、
前記上部誘電体プレートの上に設けられた複数の制御線と、
前記上部誘電体プレートの上に設けられた複数の送信線であって、それぞれの前記送信線は1つの前記放射器及びRFポートと結合しており、ペアとなる前記制御線と前記送信線との影響範囲が重なるように、前記送信線の1つが少なくとも1つの前記制御線とペアとなっている、送信線と、
前記共通電位プレートと、複数の前記送信線と、複数の前記制御線との間の制御電位を接続し、これにより、前記可変誘電率材料内のドメインの空間的な配向を制御する複数の制御ポートとを含む、
アンテナ。
【請求項11】
複数の制御ポートに適用される制御電位に応じて操作可能な放射ビームを有するアレイとして前記放射器が配置されている、請求項10に記載のアンテナ。
【請求項12】
前記共通電位プレートは、接地電位での周辺領域と、浮遊電位での内部領域と、前記周辺領域と前記内部領域との間に配置されたRFチョークとを含む、請求項11に記載のアンテナ。
【請求項13】
前記制御線のそれぞれは、少なくとも1つのRFトラップを含む、請求項12に記載のアンテナ。
【請求項14】
前記送信線のそれぞれは、2つの前記制御線とペアになっている、請求項13に記載のアンテナ。
【請求項15】
電気信号を送信する電気送信装置であって、
下部誘電体プレートと上部誘電体プレートとの間に挟まれた可変なVDC材料を有する可変誘電率(VDC)構造を含み、前記VDC材料は複数の配向可能なドメインを有し、
前記下部誘電体プレートの下に配置された共通電位プレートと、
前記上部誘電体プレートの上に配された複数の送信線とを含み、前記各送信線は電気信号を送信し、
機械的圧力、磁気的圧力、音圧又は液圧のうちの1つを前記VDC構造に印加する圧力アプリケータを含む、
電気送信装置。
【請求項16】
前記圧力アプリケータは、前記VDC構造に静的な機械的圧力を及ぼす圧力プレート及びクランプを含む、請求項15に記載の電気送信装置。
【請求項17】
前記圧力アプリケータは、瞬間的な圧力を前記VDC構造に印加するトランスデューサからなり、これによって前記VDC構造の全体を伝播する衝撃波を伝播させる、請求項15に記載の電気送信装置。
【請求項18】
前記圧力アプリケータは、音響トランスデューサを含む、請求項15に記載の電気送信装置。
【請求項19】
圧力アプリケータは、磁気プレートを含む、請求項15に記載の電気送信装置。
【請求項20】
可変誘電率プレートの上に導体が設けられた送信装置の操作方法であって、
前記導体の少なくとも第1サブセットに信号を印加して、前記信号の送信を引き起こすこと、
前記導体の少なくとも第2サブセットに制御信号を印加して、前記可変誘電率プレート内のドメインを前記制御信号によって生成された電界にしたがって整列させること、
前記制御信号の印加を停止して、それによって前記ドメインを自然な配向に緩和させること、
前記ドメインに圧力を印加して、前記ドメインが自然な配向に緩和するのに必要な時間を早めることを含む、
操作方法。
【請求項21】
RF送信線用の位相シフタであって、
区分送信線と、
前記区分送信線の第1の側に配置された第1制御線と、
前記第1制御線に接続された第1端子と、
前記区分送信線の前記第1の側とは反対側の第2の側に配置された第2制御線と、
前記第2制御線に接続された第2端子と、
それぞれが前記第1制御線に接続された複数の第1RFトラップと、
それぞれが前記第2制御線に接続された複数の第2RFトラップとを含む、
位相シフタ。
【請求項22】
アンテナであって、
アレイに配置された複数の放射パッチと、
それぞれが1つの放射パッチと接続しかつ1つのRFポートに結合する複数の送信線と、
それぞれが1つの前記送信線の部分に沿って配置されており、かつ、それぞれが対応する前記送信線とオーミック接触していない複数の位相シフタと、を含み、
それぞれの前記位相シフタは、対応する前記送信線の部分を挟んで配置された少なくとも1つの制御線と、前記制御線の長さに沿って配置された複数のRFトラップとを含む、
アンテナ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願のクロスリファレンス)
本出願は、2021年11月19日に出願された米国仮出願第63/281,593号、2022年8月19日に出願された米国仮出願第63/399,570号、及び、2022年11月17日に出願された米国仮出願第17/989,486号からの優先権を主張するものであり、これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
(分野)
本開示は、液晶ドメインの応答時間の改善に関し、例えば可変誘電率アンテナや電磁信号送信素子などの電子デバイスと組み合わせて使用する場合に特に有益である。
【0003】
(従来技術)
主題の発明者は以前に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,705,391号において、液晶ドメインの配向が改善された制御を開示している。この特許で開示された実施形態では、それぞれが独立した制御ラインを有する複数の電極を利用して、ドメインシステムを所望の状態に迅速に配置できるようにする。本明細書に開示された特定の実施形態及び特徴を完全に理解するためには、前記’391特許を研究することが強く推奨される。
【0004】
前記’391特許で説明されているように、適切な電界が印加されると、分子(ドメイン) は印加された電界の強度と相関する量だけ回転し、電界が除去されると分子は緩和状態に戻る。しかし、電界の適用(すなわち「オンにする」)またはドメインの整列についての時間的応答は、電界を外す(すなわち「オフにする」)またはドメインの弛緩についての時間的応答よりもはるかに高速である。本件の発明者によって開示された米国特許第7,466,269号、第7,884,766号及び第10,199,710号(これらは参照により本明細書に組み込まれる)などの特定の出願では、オフにする応答速度が、オンにする応答速度と近似しているのが望ましいとされている。
【0005】
前記’391特許に開示された実施形態では、それぞれが独立した制御ラインを有する複数の電極を利用して、ドメインシステムを所望の状態に迅速に配置できるようにしている。個々の電極に異なる偏光で異なる電位を印加することにより、液晶システム内でさまざまなモードまたは状態を特徴づけることができる。ディレクターの方向と振幅は、印加電位の大きさと、電位が印加される電極の選択によって制御されることができる。例えば、前記’391特許の図4の実施形態に開示されているように、RF送信線に電位を印加することにより、RF送信線はドメインの配向を制御する機能も果たすことができる。しかしながら、本発明者らは、このような配置における制御線の存在が、RF送信線を伝わるRF信号に干渉することを発見した。したがって、発明者らは、電源オフ応答時間を悪化させることなく、このような干渉を回避することを試みた。この問題は、これまでアンテナ内部に多電極ソリューションを実装することを妨げてきた根本的な課題である。
【発明の概要】
【0006】
以下の開示の概要は、本発明の特徴及びいくつかの側面についての基本的な理解を提供するために記載されている。この概要は、本発明の広範な概要ではなく、このため、本発明の主要または重要な要素を特に特定したり、本発明の範囲を描写したりすることを意図したものではない。その唯一の目的は、以下に示すより詳細な説明の前置きとして、本発明のいくつかの概念を簡略化した形で提示することである。
【0007】
開示された実施形態は、可変誘電率(VDC)層内のドメインの応答時間を早める。ドメインは、機械的摩擦及び/または他の機械的調整が表面層に適用された領域に近くない限り、整列された電界(「オン」)が除去されたことによって、自然な緩和状態になり、ドメインは整列せず、互いにランダムに配向されるところ、前記実施形態は特に、電界が除去されたときの遅い自然応答時間に取り組むものである。本明細書で開示されているように、この自然な緩和時間は、ドメインを強制的に自然な状態にすることによって早められる。前記強制は、電界、磁界の印加、及び、機械的、液的、または音波による圧力の印加によって行うことができる。開示された実施形態のいずれにも、本明細書に開示されたRFチョーク及び/又は1つ以上のRFトラップを追加的に組み込むことができる。前記強制が電界を介して実施される場合、制御信号は送信線及び各信号線を挟む少なくとも1つの制御線に適用されることが有益である。
【0008】
電気信号を送信する電気送信装置が開示されており、以下を含む。下部誘電体プレートと上部誘電体プレートとの間に挟まれた可変なVDC材料を有する可変誘電率(VDC)構造を含み、前記VDC材料は複数の配向可能なドメインを有し、前記下部誘電体プレートの下に配置された共通電位プレートと、前記上部誘電体プレートの上に配された複数の送信線とを含み、前記各送信線は電気信号を送信し、複数の制御線を含み、前記送信線の1本が少なくとも1本の前記制御線とペアとなり、ペアとなった前記制御線と前記送信線との影響領域が重なり合い、前記共通電位プレート、複数の前記送信線及び複数の前記制御線の間の制御電位を接続し、これにより、前記ドメインの空間的な配向を制御する複数のポートを含む。
【0009】
また、アンテナも開示されており、以下を含む。上部誘電体プレートと、下部誘電体プレートと、前記上部誘電体プレートと前記下部誘電体プレートとの間の可変誘電材料とを有する可変誘電率プレートと、前記下部誘電体プレートの下に設けられた共通電位プレートと、複数の放射器と、前記上部誘電体プレートの上に設けられた複数の制御線と、前記上部誘電体プレートの上に設けられた複数の送信線であって、それぞれの前記送信線は1つの前記放射器及びRFポートと結合しており、ペアとなる前記制御線と前記送信線との影響範囲が重なるように、前記送信線の1つが少なくとも1つの前記制御線とペアとなっている、送信線と、前記共通電位プレートと、複数の前記送信線と、複数の前記制御線との間の制御電位を接続し、これにより、前記可変誘電率材料内のドメインの空間的な配向を制御する複数の制御ポートとを含む。
【0010】
さらに、電気信号を送信する電気送信装置が開示されており、以下を含む。下部誘電体プレートと上部誘電体プレートとの間に挟まれた可変なVDC材料を有する可変誘電率(VDC)構造を含み、前記VDC材料は複数の配向可能なドメインを有し、前記下部誘電体プレートの下に配置された共通電位プレートと、前記上部誘電体プレートの上に配された複数の送信線とを含み、前記各送信線は電気信号を送信し、機械的圧力、磁気的圧力、音圧又は液圧のうちの1つを前記VDC構造に印加する圧力アプリケータを含む。
【0011】
本開示において、共通電位プレートは、接地電位での周辺領域、浮遊電位での内部領域、及び、前記周辺領域と前記内部領域との間に配置されたRFチョークを含み得る。各送信線は、2つの制御線とペアになり、複数の送信線は、共通RFポートに接続され得る。複数の制御ポートのそれぞれは、送信線または制御線のいずれか一方のみに接続されても良い。各制御線は、少なくとも1つのRFトラップを含んでも良く、各RFトラップは、制御線に接続された共通ステム、前記共通ステムに接続されたスプリッタ、複数の周波数マッチングブランチであって、それぞれがスプリッタに接続され、他の周波数マッチングブランチとの重なり部分に、空間的に平行な重なり部分を持つものを含んでも良い。周波数マッチングブランチの各ブランチは、同じ周波数マッチングブランチの他のブランチと異なる長さを持っている。このデバイスはさらに、前記VDC構造に機械的圧力、磁気的圧力、音圧又は液圧の内の1つを適用する圧力アプリケータを含んでも良い。
【0012】
さらに、可変誘電率プレートの上に導体が設けられた送信装置を操作する方法が開示されており、前記方法は、少なくとも第1サブセットに信号を印加して、前記信号の送信を引き起こすこと、前記導体の少なくとも前記第2サブセットに制御信号を印加して、前記可変誘電率プレート内のドメインを前記制御信号によって生成された電界にしたがって整列させること、前記制御信号の印加を停止して、それによって前記ドメインを自然な配向に緩和させること、前記ドメインに圧力を印加して、ドメインが自然な配向に緩和するのに必要な時間を早めることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の他の側面及び特徴は、以下の図面を参照して行われる詳細な説明から明らかになる。詳細な説明及び図面は、添付の請求項によって特徴づけられる本発明の様々な実施形態の様々な非限定的な例を提供していることを理解されたい。
【0014】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を例示するものであり、説明とともに、本発明の原理を説明し、例示するものである。図面は、例示的な実施形態の主な特徴を図式的に説明することを目的としている。図面は、実際の実施形態のすべての特徴や、描写された要素の相対的な寸法を描写することを意図しておらず、縮尺通りには描かれていない。
【0015】
図1A-1B】図1Aは、一実施形態に従ったドメイン制御を示す電子デバイスの一部の断面図であり、図1Bは、図1Aの破線の楕円で示したデバイスの部分の上面図である。
【0016】
図2A-2B】図2Aは、一実施形態に従ったドメイン制御を示す電子デバイスの一部の断面図であり、図2Bは、図2Aで破線の楕円で示したデバイスの部分の上面図である。
【0017】
図3A-3B】図3Aは、一実施形態に従ったドメイン制御を示す電子デバイスの一部の断面図であり、図3Bは、図3Aの実施形態を別のデバイスに実装したものを示す。
【0018】
図4A-4B】図4Aは、一実施形態に従った機械的圧力によるドメイン制御を示す電子デバイスの一部の断面図であり、図4Bは、一実施形態に従った音圧によるドメイン制御を示す電子デバイスの一部の断面図である。
【0019】
図5図5は、一実施形態に従った液圧によるドメイン制御を示す電子デバイスの一部の断面図である。
【0020】
図6図6は、一実施形態に従った磁気的圧力によるドメイン制御を示す電子デバイスの一部の断面図である。
【0021】
図7図7は、一実施形態に従った位相シフタの等角図である。
【0022】
図8図8は、一実施形態に従った2×2アンテナアレイの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、可変誘電率の応答時間を改善するための本発明のシステム及び方法の実施形態が説明される。異なる実施形態またはその組み合わせは、異なる用途に、または異なる利点を達成するために使用され得る。目指す結果に応じて、本明細書で開示された異なる特徴は、利点と要件及び制約のバランスをとって、単独でまたは他の特徴と組み合わされて、部分的又は最大限に活用され得る。したがって、特定の利点は、さまざまな実施形態を参照して強調されるが、開示された実施形態に限定されるものではない。つまり、本明細書で開示される特徴は、それらが記載されている実施形態に限定されるものではなく、他の特徴と「組み合わせて」、他の実施形態に組み込むこともできる。
【0024】
図1Aは、実施形態に従ったドメイン制御を示す電子デバイスの一部の断面図であり、図1Bは、図1Aの破線の楕円でマークされたデバイスの一部の上面図を示す。図1Aは、可変誘電率(VDC)構造90上に形成された送信線116を有する送信デバイスの例を示している。送信線116は、アンテナのRF信号などの対象信号を送信する。液晶材料112(例えば、ネマチック液晶)は、スペーサー114によって分離された上部誘電体プレート105と下部誘電体プレート110との間に挟まれている。複数の送信線(2本が図示される)116が上部誘電体プレート105の上方に配置され、各送信線116の隣に制御線126が設けられ、送信線と制御線とのペアが提供される。制御線126は電気信号を送信せず、ドメイン112を配向させる電界を印加するためにのみ使用される。送信線116、制御線126またはその両方に電圧を印加することにより、送信線の下の領域に局在するディレクターの配向が制御される。上記で引用された特許文献で説明されている通り、前記構造がアンテナとして実装される場合、各送信線は放射器アレイの放射器Rに結合されており、前記アレイの焦点制御及び方向制御は、各送信線における送信特性を制御することで行われる。
【0025】
本開示の文脈において、制御線が送信線とペアになっていると言われる場合、それはペアとなった制御線と送信線の影響領域が重なっていることを意味する。これは、制御電位が制御線に印加されると、その影響領域、すなわち制御電位の適用によってドメインの配向が変化するVDCプレート内の領域が、ペアとなった送信線に制御電位が印加されたときの影響領域とある程度重なることを意味する。別の言い方をすると、送信線に制御電位が印加されると、前記送信線の下のドメインが配向を変え、それによって前記送信線の下の誘電率が局所的に変化する。同様に、ペアとなった制御線に制御電位が印加されると、ペアとなった送信線の下にあるドメインの配向が変化し、それによって送信線の下の誘電率が変化する。この意味で、ペアとなる制御線と送信線の影響範囲は重なり合っていると言える。重要なのは、影響領域が完全かつ正確に重ならなければならないということを意味するものではなく、制御線に制御電位を印加すると、その下にあるペアとなった送信線の下の誘電率に影響を与える程度に十分に重なっていることを意味する。
【0026】
システムを通じて送信される信号、例えば、Ka、Ku、その他の周波数帯のRF信号は、RFポートPRFに結合された1つ以上の送信線116を介して送られる。RFポートはすべての送信線に共通であり、例えば、同軸コネクタであることに留意すべきである。各送信線の下のドメインの配向を独立して変更することにより、送信特性が制御され、送信線116のいずれかを伝わる信号に遅延が導入され得る。前述のように、これは、送信線116、制御ライン126またはその両方に電位を印加することによって実行することができる。これは、図1Aにおける制御部140から送信線116及び制御線126への分離かつ独立したラインで示されている。制御線及び送信線のそれぞれが相違かつ独立した制御電位を受け取るために、分離かつ独立した制御ポートPcが制御線及び送信線に提供されていることに留意すべきである。ちなみに、制御部からの信号出力は一般的に矩形波であり、矩形波の周期(デューティサイクル)と振幅を制御することで、液晶材料に印加される電界の強度を制御することができる。
【0027】
図1Aの実施形態では、送信信号と制御信号の両方に単一の共通プレートを使用できるようにするために、追加的にRFチョーク130が実装されている点に留意すべきである。図1Aの点線は、縮小した共通プレート115の上面図を示す。図1Aでは、標準的な接地プレートを使用する代わりに、制御部140及びRF電源145の接地電位が、RFチョーク130の外側にある共通プレート115の周囲に接続されている。したがって、共通プレート115の周辺は、接地電位にあり、RFチョーク及びプレートの内部セクションの周囲にフレームとして形成されている。逆に、RFチョーク130の内部に位置する共通プレート115の内部セクションは、浮遊状態であり、DC接地されていない。RFチョークは、RF信号がチョークを「ジャンプ」することを可能にし、つまり、RF信号の観点からは、共通プレート115全体が接地されている。逆に、RFチョークは、ドメインを制御するために適用されるDC電位から、直流遮断を形成し、共通プレート115は接地されず、円で囲まれたFLで示されるように浮遊状態になる。つまり、開示された実施形態では、共通電位プレートは、接地、浮遊、または部分的に接地され部分的に浮遊し、浮遊部分と接地部分の間にRFチョークが配置された状態であってもよい。
【0028】
本開示では、電気信号を送信するための電気送信装置が提供され、この電気送信装置は、下部誘電体プレートと上部誘電体プレートとの間に挟まれた可変誘電率材料(VDC材料)を持つ可変誘電率(VDC)構造を含み、前記VDC材料は複数の配向可能なドメインを有しており、下部誘電体プレートの下に配された共通電位プレートを含み、上部誘電体プレートの上に配置された複数の送信線を含み、それぞれの送信線は電気信号を送信するものであり、複数の制御線であって、各送信線が少なくとも1つの制御線とペアになっており、ペアになった制御線と送信線の影響領域が重なるようになっているものを含み、前記共通電位プレート、複数の前記送信線、及び、複数の前記制御線の間の制御電位を接続し、これにより、ドメインの空間的な配向を制御する複数のポートを含む。共通電位プレートは、接地されているものでも、浮遊しているものでも良く、部分的に接地され部分的に浮遊しており、浮遊部分と接地部分の間にはRFチョークが設けられてものでも良い。
【0029】
上記のようにシステムを動作させることが可能であるが、各送信線116とそのペアになっている制御線126との間に容量結合が生じるという問題が発生する。この容量結合は、送信線116における信号送信の効率を低下させる。したがって、図1Bの上面図に示されるように、RFトラップ135が制御線に追加されている。このRFトラップ135は、送信線116からペアになっている制御線126に結合される信号を打ち消すように設計されている。
【0030】
図1Bに示されているように、RFトラップ135には、制御線からRF信号を分岐器137に結合する接続ステム134が含まれるように設計されており、それにより、送信線から制御線に結合された任意の送信信号を、複数の枝(図1Bでは2つの枝)に分割する。各枝の信号の移動経路の総長さは、移動経路の終端において信号が枝間で補完的な極性の配向になるように設計されており、これにより信号が互いに建設的に打ち消し合う。例えば、図1Bの実施形態のように、2つの枝が示されている実施形態では、1つの枝の信号は、他方の枝に対して180°の位相シフトを伴って到着する。分岐後、各信号部分は、マッチスタブ136及び重複セクション139を含んだ周波数一致セクション138に入る。信号は、重複セクション139で互いに打ち消し合う。
【0031】
マッチスタブ136は、RFトラップを目的の周波数帯域に調整するために使用される。それは、送信線で生成される反応性成分を排除し、したがって、RFトラップの動作周波数の帯域でのマッチ[S11]の調整を支援するために使用される。一方の枝の重複セクション139は、他方の枝の重複セクションと平行な配向で重複するように設計されている。枝における信号が補完的な極性で重複セクション139に到着するため、これらが互いに打ち消し合う。その結果、制御線に結合された送信信号はゼロに相殺されるため、送信線を通る送信信号に干渉しない。
【0032】
図2Aは、実施形態におけるドメイン制御を示す電子デバイスの一部の断面図であり、図2Bは、図2Aの破線の楕円でマークされたデバイスの一部の上面を示している。図2A及び図2Bでは、各送信線116の両側に1本ずつの制御線126に挟まれており、これら3本の線が上記の意味でペアとなっている。送信線116及び制御線126は、通信信号の送受信中に送信線の下のドメインの配向を制御するために使用される。これは、制御部140から各送信線116及び制御線126への分離かつ独立したラインによって例示されている。
【0033】
例えば、破線で示されるように、各送信線116を挟むそれぞれの制御線126の間に電位V1が印加されることで、曲線の点線矢印及びドメイン112Aで示されるように、ドメインを一方向に配置することができる。逆に、送信線116と接地プレートの間に電位V2が印加されることができ、その結果、ドメインは直線の破線矢印及びドメイン112Bで示される配置とされる。理解できるように、ドメイン112Aの方向とドメイン112Bの方向とは互いに直交している。したがって、この配置によって「緩和」時間は必要ない。むしろ、ドメインは、電界によって、示された2つの配向の間を含んだ、所望の配向に強制される。その結果、ドメインの応答時間は、もはやドメインの自然な緩和時間に依存せず、大幅に早められる。代わりに、電位が各所望の配向、すなわち、オン位置及びオフ位置の両方に対して印加される。
【0034】
同様の配置は図1Aの実施形態でも実装され得る。例えば、追加のスイッチ131が、共通プレート115の接地された周辺部とRFチョーク130の内側に位置する共通プレート115の内部セクションとの間に接続され得る。前記スイッチ131がオフの位置とされると、内部セクションが浮動し、第1電位が送信線116と制御線126との間に印加されることができ、例えば、制御線126が接地電位に接続し、直流電位が送信線116に印加される。直交配置を得るために、接地電位が制御線126から除去され、スイッチ131が閉じられて内部セクションが接地電位に結合され、第2直流電位が送信線116に印加される。
【0035】
図2Bは、本明細書で開示された他の実施形態に実装され得る2つの特徴を示している。第1に、2つの制御線126がそれぞれの送信線116とペアとなっているため、各制御線にはRFトラップ135が設けられている。したがって、この特徴を一般化すると、デバイスで使用される制御線の数に関係なく、各制御線に少なくとも1つのRFトラップがあると、送信線の送信効率が向上する。さらに、図2Bに示されている第2の特徴によれば、各制御線は、複数のRFトラップ135を備えることができる。図2Bに示された小さいセクションでは、各制御線126が複数のRFトラップ135を含んでいるが、図がデバイズの一部のみを示しているため、それぞれの制御線に2つのRFトラップ135が見えるだけである。
【0036】
言うまでもなく、本明細書で開示された実施形態や特徴は、分子の配向を利用して材料効果を生成する他のデバイスに適している。例えば、液晶テレビは、液晶分子の配向を利用して画面に通過する光を制御し、それにより所望の画像を生成する。ここでも、前記分子のオン設定は、制御線によって印加された電位によって制御されるところ、前記分子のオフ設定は、単純な電位の除去、及び、化学的プロセスによって分子が緩和状態を取る傾向の利用によって行われる。したがって、オフ動作はオン動作よりも遅くなる。しかしながら、本明細書で開示された制御線の特徴や実施形態を利用することで、前記分子のオフ時間を劇的に早めることが可能となる。したがって、画像の変化をより速くすることが可能となり、特にスポーツイベントやアクションシーンなど高速に変化する映像において特に有益である。
【0037】
さらに、図2AのようにRF送信と組み合わせて使用する場合、送信線の両側に前記トラップを備えている制御線を持つことが送信線の効率を向上させることが、予期せず発見された。送信線が両側に制御線を持たない場合、RF信号が送信線を流れると、フリンジが生成され、その結果、送信効率が低下すると規定される。しかしながら、送信線が制御線で挟まれている場合、前記フリンジは制御線に結合されるところ、制御線はRFトラップを含んでいるため、前記フリンジのエネルギーは、送信線に戻され、その結果、送信線の送信効率が向上する。これは、VDC構造の使用に関係なく真実である。
【0038】
したがって、一般的な側面では、以下を含んだ送信装置が提供され、これは、誘電体基板と、前記誘電体基板の第1面上に設けられた接地プレートと、前記誘電体基板の前記第1面とは反対側の第2面上に設けられた複数のRF送信線と、複数の結合線とを含み、各複合線は少なくとも1つのRFトラップを持ち、ここで各RF送信線は少なくとも1つの結合線と近接している。ここで、「近接」とは、結合線が十分にRF送信線に近接しており、RF送信線によって送信されるRF信号によって生成されるフリンジが結合線に結合されることを意味する。また、この側面では、前記誘電体基板は可変誘電率構造である必要はなく、むしろ、PCBボードやRogers(登録商標)PCBボード等でも良い。
【0039】
図3Aは、液晶ドメインの応答時間、特に緩和時間を改善させるために実装された実施形態を示している。前述の通り、「オン動作」は、電位を印加してドメインを整列させる電界を生成することで行われる。したがって、前記応答時間は、適用された電界に対するドメインの反応時間に依存する。逆に、「オフ動作」は通常、電位を除去することによって行われるため、ドメインの自然な緩和時間に依存する。しかし、本発明者らは、ドメインに物理的圧力を印加することで、前記自然な緩和時間が早められることを発見した。したがって、図3A及び図3Bに示されている実施形態では、前記VDC構造が一定の圧力下に置かれている。
【0040】
図3Aは、前記VDC構造の上に設けられた送信線116を有する送信装置を示している。前記VDC構造には定圧配置が組み込まれており、この特定の例では、前記定圧配置は、機械装置である。特にこの例では、圧力プレート142が誘電性プレート105、110の上に配置され、ボルト144のようなクランプ装置によって圧力下で一緒に固定されている。前記圧力プレート142及び前記ボルト144は、VDC構造全体にわたって比較的均一な圧力を加え、ドメインにストレスを与えるように設計されている。勿論、他の配置もVDC装置に一定の圧力を加えるために実装され得るが、より有益には、圧力がVDC構造の全体に均等に分散されて印加されるべきである。
【0041】
図3Bは、図1Aの実施形態の文脈で適用される、図3Aに示されているものと同様の一定の定圧配置を示している。つまり、VDC構造に一定の圧力を加えるという概念は、本明細書で開示された他の実施形態や特徴と一緒に実装され得る。特に、図3Aの実施形態には、別の制御線は含まれておらず、制御信号が送信線116と接地プレート115との間に印加される。
【0042】
図3A及び図3Bの実施形態では、VDC構造に一定の圧力を加えることによって前記緩和時間が早められる。しかしながら、本発明者らによって、機械的に又は衝撃波の手段によって一時的な圧力を印加することでも、同様の結果が達成できることが発見された。例えば、図4Aの実施形態では、VDC構造に瞬間的な圧力を印加するために、圧電トランスデューサ155が使用され、それによってVDC構造全体に伝播する衝撃波を引き起こす。この例では、制御部140が、「オン信号」が終了するごとに、圧電トランスデューサ155に起動信号を送信し、圧電トランスデューサ155は、前記信号を、VDC構造に瞬間的な圧力を印加するための機械的な動きに変換する(この例では、グラウンドプレートを介して下からであるが、上からもあり得る。)。
【0043】
超音波衝撃波トランスデューサは、例えば、腎臓結石を破砕するための医療用途で、過去に開示されており、例えば、米国特許第5,193,527号が参照される。このような用途では、前記トランスデューサは、平面衝撃波を生成し、その後、リフレクターが使用されて衝撃波のエネルギーを焦点に集中させる。しかし、図4Aの例では、平面衝撃波を、そのエネルギーを焦点に集中させることなく、直接VDC構造に適用することが望ましい。この方法では、衝撃波が平面的な波面によってVDC構造全体を伝播する。
【0044】
図4Aの実施形態における衝撃波の適用は物理的及び機械的接触を介して行われるが、これは必須ではない。例えば、図4Bの実施形態では、音響トランスデューサ156が制御部140から適切な信号を受信すると、音波を生成する。これまでと同様に、制御部140は、「オン」信号が終了するたびに起動信号を発生し、音響トランスデューサが音波を生成してドメインに圧力を印加し、自然な緩和時間を早める。
【0045】
ちなみに、図4Bの点線の「雲」は、音響トランスデューサ156とVDC構造との間の媒質を示しており、これは空気、液体(例:油)、または固体(例:誘電体材料)であっても良い。前記媒質は、音波をVDC構造に結合させるのに役立つだけでなく、破線で示される漏斗157によって示されるように、波を形作りかつ方向づけるためにも使用され得る。例えば、漏斗状の誘電体プレートが音響トランスデューサと共通電位プレートとの間に配置され得る。
【0046】
別の実施形態によれば、制御部140からの信号は、所望の周波数で連続矩形波158の形をしている。選択された周波数は、緩和期間中において統計的に常に高い状態になるような十分な速さを有し、これによりドメインの緩和時間が早められる。代替的に、特定の使用方法において緩和期間の周波数が予め分かっている場合、それに応じて連続矩形波の周波数を設定することができる。
【0047】
さらに別の実施形態によれば、図5で示されるように、前記圧力は、VDC構造の製造中に生成される。つまり、通常のVDC構造は、誘電体105、110の間を真空に排気して、その後、その空隙を液状ネマチック材料で満たすことによって生成される。しかし、図5に示されるように、この実施形態によれば、真空に排気したあと、液状ネマチック材料はポンプ160によって圧力付与のもと注入され、その結果、VDC構造の内部に液圧が生成される。この液圧は、注入装置とポンプ160を取り外して液体注入ポートを密封した後も、VDC構造内に残る。したがって、ネマチックドメインは、常に液圧下にある。
【0048】
さらなる実施形態によれば、ドメインに磁界を印加することで、緩和時間が早められる。図6では、VDC構造に磁石プレート165が含まれている。磁石プレート165は、複数の永久磁石が組み込まれても良いが、より有益には、複数の電磁コイル162を含むことである。名目上、緩和期間の間だけ、電磁コイルは制御部140によって通電される。
【0049】
したがって、開示された実施形態によれば、可変誘電率プレート上に導体が設けられた送信装置を操作する方法であって、前記導体の少なくとも第1サブセットに信号を印加して、前記信号の送信を引き起こすこと、前記導体の少なくとも前記第2サブセットに制御信号を印加して、前記可変誘電率プレート内のドメインを前記制御信号によって生成された電界にしたがって整列させること、前記制御信号の印加を停止して、それによって前記ドメインを自然な配向に緩和させること、前記ドメインに圧力を印加して、ドメインが自然な配向に緩和するのに必要な時間を早めることを含むものである。圧力を印加する手順は、以下から選択され、前記可変誘電率プレートに機械的な圧力を印加すること、前記可変誘電率プレートに音圧を印加すること、前記可変誘電率プレート内部に液圧を印加すること、前記可変誘電率プレートに磁界を適用することから選択される。前記第2サブセットの導体は、前記第1サブセットの導体と同じであり得る。
【0050】
図7は、一実施形態における位相シフタの等角図である。図7は、1つの送信線上の位相シフタに関連する導体のみを描いており、絶縁基板はいずれも描かれていない。また、図7では、主となる送信線116が、送信線116を部分的に含む位相シフタと異なる高さで示されている。図7の実施形態は、送信線116の一部を挟む2本の制御線126を含んでいる。それぞれの制御線は、その長さ方向にそって分散配置されたRFトラップ135を含んでいる。各制御線126は、制御ポートPcとして機能する個別の電極に接続されている。特に、位相シフタは、対応する送信線とはオーミック接触していない。
【0051】
したがって、RF送信用の位相シフタであって、区分送信線と、前記区分送信線の第1の側に配置された第1制御線と、前記第1制御線に接続された第1端子と、前記区分送信線の前記第1の側とは反対側の第2の側に配置された第2制御線と、前記第2制御線に接続された第2端子と、それぞれが前記第1制御線に接続された複数の第1RFトラップと、それぞれが前記第2制御線に接続された複数の第2RFトラップとを含むものが提供される。
【0052】
図8は、実施形態にしたがった2×2アンテナアレイの上面図である。前記アレイは、2次元配列で配置された4つの放射パッチ180を含んでいる。各パッチ180は、送信線116に接続されている。前記アレイによって生成されるビームの指向性を制御するために、各送信線116の送信は、図7に示されている位相シフタのように、1つの送信線の一部に沿って配置された位相シフタによって制御される。各遅延線は、共通ポートPRFへとつながるコネクタ125に接続されており、共通ポートPRFは任意的に、前記構造の下に配置されていることでこの図では視認できないコーポレートフィードを利用する。図7に示されるように、各位相シフタは、それぞれ複数のRFトラップ135を有する1つ又は2つの制御線126を含む。各送信線の送信は位相シフタによって制御されるが、位相シフタは対応する送信線とオーミック接触していないことは注意すべきである。
【0053】
したがって、アンテナが提供され、このアンテナは、アレイに配置された複数の放射パッチと、それぞれが1つの放射パッチと接続しかつ1つのRFポートに結合する複数の送信線と、それぞれが1つの前記送信線の部分に沿って配置されており、かつ、それぞれが対応する前記送信線とオーミック接触していない複数の位相シフタと、を含み、それぞれの前記位相シフタは、対応する送信線の部分を挟んで配置された少なくとも1つの制御線と、前記制御線の長さに沿って配置された複数のRFトラップとを含む。
【0054】
理解すべきは、本明細書で説明されたプロセスや技術は、本質的に特定の装置に関連するものではなく、構成要素の適切な組み合わせによって実装され得ることである。さらに、本明細書での記載の教示に従って、様々なタイプの汎用デバイスが使用され得る。本発明は、特定の実施例に関連して説明されているが、これらの実施例はあらゆる点で限定的なものではなく例示的であることが意図されている。当業者は、多くの異なる組み合わせが現在の発明を実施するために適していることを理解するであろう。
【0055】
さらに、本明細書で開示された本発明の仕様及び実施を考慮することから、本発明の他の実施形態が当業者にとって明らかとなるであろう。説明された実施形態の様々な測定及び/又は構成要素は、単独又は任意の組み合わせで使用され得る。明細書及び実施例例はあくまで例示的なものとして考えられるべきであり、発明の真の範囲及び精神は以下の請求の範囲によって示される。




図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】