(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】シクロスポリンの安定したナノ懸濁液
(51)【国際特許分類】
A61K 38/13 20060101AFI20241022BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241022BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241022BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241022BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241022BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
A61K38/13
A61K9/08
A61K47/38
A61K47/22
A61P27/02
A61P37/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529987
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 KR2022018606
(87)【国際公開番号】W WO2023101301
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0168284
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519209897
【氏名又は名称】ダエウー ファーマシューティカル インダストリー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEWOO PHARMACEUTICAL IND. CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンス
(72)【発明者】
【氏名】ハ ウンソル
(72)【発明者】
【氏名】ピョ ユジン
(72)【発明者】
【氏名】イム チャンベク
(72)【発明者】
【氏名】ファン スンウ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヒギョン
(72)【発明者】
【氏名】チ ヨンフン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA17
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB11
4C076BB24
4C076CC07
4C076DD09
4C076DD59
4C076EE32
4C076GG41
4C084AA02
4C084DA11
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA58
4C084MA66
4C084NA10
4C084ZA331
4C084ZB071
4C084ZB072
(57)【要約】
本発明は、注射または経口投与時に、免疫抑制剤及び点眼剤として眼球乾燥症に使われるシクロスポリンを、高分子、界面活性剤と混合することにより、組成物の安定性を改善させたナノ懸濁液及びその製造方法に関するものである。本発明によるナノ懸濁液は、湿式粉砕工程適用時に、外部力(せん断力)による薬物分解が抑制されて薬物含量を保持させることができ、表面が改質されて平均粒子サイズが500nm未満であるという特徴がある。したがって、点眼剤だけではなく、経口投与が可能な剤形の開発に適用が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロスポリン、高分子及び界面活性剤を含むナノ懸濁液組成物において、
前記高分子は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCナトリウム)、及び前記界面活性剤は、TPGSであることを特徴とするナノ懸濁液組成物。
【請求項2】
前記シクロスポリン、高分子及び界面活性剤の重量比は、1:1~2:1~2であることを特徴とする請求項1に記載のナノ懸濁液組成物。
【請求項3】
前記シクロスポリンの平均粒子サイズは、170~500nmであることを特徴とする請求項1に記載のナノ懸濁液組成物。
【請求項4】
前記シクロスポリンの含量は、95~100%に保持されることを特徴とする請求項1に記載のナノ懸濁液組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のナノ懸濁液組成物を有効成分として含む眼球乾燥症の治療または予防用薬学組成物。
【請求項6】
前記薬学組成物は、免疫活性調節させることを特徴とする請求項5に記載の薬学組成物。
【請求項7】
前記薬学組成物は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、点眼剤、及び注射溶液からなる群から選択される1つまたは2つ以上の剤形で製造されることを特徴とする請求項5に記載の薬学組成物。
【請求項8】
(a)シクロスポリンを水に懸濁させた後、均一に分散させる段階と、
(b)前記(a)段階の混合物に湿式粉砕工程を進行させる段階と、
を含む、請求項1に記載のナノ懸濁液の製造方法。
【請求項9】
前記湿式粉砕工程は、ミリング媒体を利用したミリングまたは高圧均質器を通じた下向き式方法であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ミリングは、900~1100rpmの条件で9~11時間ミリングすることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロスポリンの安定したナノ懸濁液を提供する。
【背景技術】
【0002】
ナノ懸濁液は、高分子及び界面活性剤、またはこの両方ともがいずれもある条件下での安定化された薬物粒子のコロイド性の分散液を言う。ナノ懸濁液は、低い水溶解性と脂質溶解性とを示す薬物物質の物性の改善に使われる。例えば、経口投与剤形である場合、薬物の溶解度を改善して腸管吸収率を高めて生体利用率を改善して投与容量を減らし、薬効を改善し、副作用を改善する目的として主に使われる。また、食べ物効果(Food Effect)を改善して食事と関係なく投与することができる服用上の利便性も提供することができる。点眼剤や注射剤である場合、薬物を溶解するために過量で使用する可溶化剤、特に、脂質や界面活性剤の容量を画期的に減らせて、可溶化剤に起因した副作用を顕著に改善することができる点も、ナノ懸濁液の剤形上の特長点になる。ナノ懸濁液の小さな粒子は、非常に大きな薬物表面積を提供して薬物の溶解度を顕著に増加させる。ナノ懸濁液は、多様な剤形に応用が可能であるが、代表的な剤形としては、経口製剤、経皮製剤(Transdermal delivery system)、注射剤(Injection)及び吸入剤(Pulmonary delivery system)及び点眼剤(Ocular delivery system)などがある。
【0003】
シクロスポリン(Cyclosporin)は、1971年の菌系Tolypocladium inflatumから分離された免疫抑制剤であって、1983年から医学用として使われ始めた。シクロスポリンは、人体の免疫系の活性を減らすか、抑制する免疫抑制剤であって、移植後、拒絶反応の予防及び治療に主に使われ、その他に自己免疫疾患の治療にも使われる。点眼剤としては、乾性角結膜炎(眼球乾燥症)の治療剤として使われる。シクロスポリンは、水溶解性が約20~30μg/mlに非常に低くて、シクロスポリン経口用製剤、注射剤及び点眼剤を剤形化することは、製剤学的に非常に難しいと知られている。剤形化のために、経口用製剤には、SMEDDS(Self-Microemulsifying Drug Delivery System)技術を適用して軟質カプセルで販売されており、注射剤は、可溶化剤としてエタノール及びポリオキシル35ヒマシ油(Polyoxyl 35 Castor Oil)を使用している。但し、経口剤は、過量の界面活性剤を使用するために、長期間服用時に、副作用が問題となり、注射剤は、エタノールとポリオキシル35ヒマシ油とによる副作用が問題となって、使用が制限される。
【0004】
一方、点眼剤の販売製品は、懸濁点眼液及びナノエマルジョン(Nanoemulsion)技術が適用されるが、懸濁点眼剤は、未溶解主薬による粘膜刺激と一時的な視野遮蔽との問題のために、患者順応性(compliance)が問題となり、ナノエマルジョンは、脂質と過量の界面活性剤とを使用するために、長期間投与時に、粘膜刺激による眼球の痛みを訴える患者が多くて、他の薬物に置き換えられる傾向が激しい。
【0005】
したがって、可溶化剤である界面活性剤の使用量を最小化することができるシクロスポリンナノ懸濁液は、販売製品の問題点を解決することができる研究が引き続き必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、シクロスポリン、高分子及び界面活性剤を含むナノ懸濁液組成物を提供することである。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、前記ナノ懸濁液組成物を有効成分として含む眼球乾燥症の治療または予防用薬学組成物を提供することである。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、(a)シクロスポリンを水に懸濁させた後、均一に分散させる段階;及び(b)前記(a)段階の混合物に湿式粉砕工程を進行させる段階;を含む前記ナノ懸濁液の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を果たすために、本発明は、シクロスポリン、高分子及び界面活性剤を含むナノ懸濁液組成物において、前記高分子は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Sodium Carboxymethylcellulose;CMCナトリウム)、及び前記界面活性剤は、TPGS(tocopherol polyethylene glycol succinate)であることを特徴とするナノ懸濁液組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記ナノ懸濁液組成物を有効成分として含む眼球乾燥症の治療または予防用薬学組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、(a)シクロスポリンを水に懸濁させた後、均一に分散させる段階;及び(b)前記(a)段階の混合物に湿式粉砕工程を進行させる段階;を含む前記ナノ懸濁液の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、経口投与時に、免疫抑制剤及び点眼剤として眼球乾燥症に使われるシクロスポリンを、高分子、界面活性剤と混合することにより、組成物の安定性を改善させたナノ懸濁液及びその製造方法に関するものであって、本発明によるナノ懸濁液は、湿式粉砕工程適用時に、外部力による薬物分解が抑制されて薬物含量を保持させることができ、表面が改質されて平均粒子サイズが500nm以下であるという特徴があって、点眼剤だけではなく、注射剤及び経口投与が可能な剤形の開発に適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】下記の実施例19のナノ懸濁液の粒子サイズ分布を確認した結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0015】
既存のシクロスポリンが含まれたナノ懸濁液は、外部力や経時的に薬物が分解されて含量が保持されにくいという問題点があったが、適切な高分子及び界面活性剤を混合することにより、表面が改質されて平均粒子サイズが500nmである組成物の安定性を改善させた本発明を完成した。
【0016】
本発明は、シクロスポリン、高分子及び界面活性剤を含むナノ懸濁液組成物を提供し、望ましくは、前記高分子は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下、CMCナトリウムと称する)、及び前記界面活性剤は、TPGSである。
【0017】
前記シクロスポリン、高分子及び界面活性剤の重量比は、1:1~2:1~2である。
【0018】
前記シクロスポリンの平均粒子サイズは、170~500nmである。
【0019】
前記シクロスポリンの含量は、95~100重量%に保持される。
【0020】
【0021】
本発明は、前記ナノ懸濁液組成物を有効成分として含む眼球乾燥症の治療または予防用薬学組成物を提供し、望ましくは、前記薬学組成物は、免疫活性調節させることができる。
【0022】
前記薬学組成物は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、点眼剤、及び注射溶液からなる群から選択される1つまたは2つ以上の剤形で製造可能であるが、これに限定されるものではない。
【0023】
本発明の他の具体例において、薬学組成物は、薬学組成物の製造に通常使う適切な担体、賦形剤、崩壊剤、甘味剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤、香味剤、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、及び潤滑剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含みうる。
【0024】
具体的に、担体、賦形剤及び希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油を使用することができ、経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記組成物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調剤することができる。また、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用することができる。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などがあり、よく使われる単純希釈剤である水、流動パラフィン以外に、さまざまな賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使われる。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、トゥイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使われる。
【0025】
本発明による有効成分の投与量は、対象体の状態及び体重、疾患の種類及び程度、薬物形態、投与経路及び期間によって変わり、当業者によって適切に選択され、1日投与量が0.01~200mg/kg、望ましくは、0.1~200mg/kg、より望ましくは、0.1~100mg/kgである。投与は、一日一回投与することもでき、数回に分けて投与することもでき、これにより、本発明の範囲が制限されるものではない。
【0026】
【0027】
本発明は、(a)シクロスポリンを水に懸濁させた後、均一に分散させる段階;及び(b)前記(a)段階の混合物に湿式粉砕工程を進行させる段階;を含む前記ナノ懸濁液の製造方法を提供する。
【0028】
前記湿式粉砕工程は、ミリング媒体(milling media)を利用したミリング(milling)または高圧均質器(high pressure homogenizer)を通じた下向き式方法(Bottom-up)である。
【0029】
前記ミリングは、900~1100rpmの条件で9~11時間ミリングすることができる。
【0030】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実施例などは、本発明の内容を例示するものであり、本発明の範囲が、下記の実施例などに限定されるものではない。本発明の実施例などは、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0031】
【0032】
[試験例1]工程適用による薬物含量の低下確認
【0033】
ナノ懸濁液は、湿式粉砕工程(ビード(bead)のようなミリング媒体を利用したミリングまたは高圧均質器)を通じた下向き式方法で製造されるが、表1による時、薬物を注射用水に懸濁した後、撹拌機を用いて薬物を均一に分散させた。引き続き、実施例1ないし実施例4を製造するために、製造された懸濁相とジルコニアビードとを適切な比率で入れた後、Zentrimix 380Rを用いて1000rpmの条件でミリングした。追加的に、実施例5及び実施例6を製造するために、高圧均質器(Nano DeBEE)に40,000psiの圧力で循環させた。前記の方法によって製造された懸濁液でシクロスポリンの含量は、High Pressure Liquid Chromatography(HPLC)system(Shimadzu)を用いて表2の条件によって分析した。
【0034】
【0035】
【0036】
その結果、実施例1ないし実施例6の懸濁液組成物は、湿式粉砕工程を適用するにつれて、薬物含量が減少することを確認した。特に、実施例1ないし実施例4を比較した時、工程に必要な時間が長くなるほど薬物含量が著しく減少することを確認した。
【0037】
[試験例2]従来の特許に明示された組成に対する評価
【0038】
大韓民国登録特許第10-2015152号に明示された実施例2(以下、従来の実施例と称する)を参照して比較例1ないし比較例5を製造した。比較例1は、販売製品であるレスタシス(登録商標)の組成、比較例2は、比較例1と同じ組成で薬物濃度を0.1%に製造、比較例3は、従来の実施例のB1組成、比較例4は、従来の実施例のA組成、比較例5は、比較例4と同じ組成で薬物濃度を0.1%に製造した。また、特開2018-521117に明示された内容を参照して比較例6ないし比較例8を製造した。
【0039】
それをジルコニアビードと適切な比率で混合した後、Zentrimix 380Rを用いて1000rpmの条件で10時間ミリングした。シクロスポリンの含量を測定するために、前記試験例1の方法と同様に行った。
【0040】
【0041】
その結果、表3による時、従来の特許で明示された実施例を用いて製造された比較例1ないし比較例8の組成物は、湿式粉砕工程を適用するにつれて、薬物含量が減少することを確認した。
【0042】
[試験例3]高分子の種類によるシクロスポリンナノ懸濁液の製造
【0043】
高分子をCMCナトリウム、HEC(Hydroxyethyl-cellulose)、HPMC(Hydroxypropyl Methylcellulose)、MC(Methylcellulose)、PVP K30、PVP K90、PEG 300及びPEG 400に異ならせ、その濃度を変化させたナノ懸濁液組成物を製造し、具体的なナノ懸濁液組成物の製造方法は、下記の通りである。表4に明示された濃度で実施例7ないし実施例14を製造した後、撹拌機を用いて薬物を均一に分散させる。以後、組成物とジルコニアビードとを適切な比率で入れた後、Zentrimix 380Rを用いて1000rpmの条件で10時間ミリングした。前記の方法によって製造されたナノ懸濁液点眼液の粒子サイズを粒子サイズ測定装備であるELSZ-1000を使用して測定し、シクロスポリンの含量は、前記試験例1の方法と同様に行った。
【0044】
【0045】
その結果、表4による時、実施例7は、他の高分子を使用した実施例8ないし実施例14と比較した時、ナノ懸濁液の平均粒子サイズが250.4nmに最も小さく、工程を適用した以後にも、薬物含量が保持されたので、CMCナトリウムがシクロスポリンのナノ懸濁液組成物に望ましい高分子であることを確認した。一方、実施例8ないし実施例14のように、他の高分子を使用して製造したナノ懸濁液は、湿式粉砕工程を適用するにつれて、薬物含量が低下することを確認した。
【0046】
[試験例4]界面活性剤の種類によるシクロスポリンナノ懸濁液の製造
【0047】
高分子でCMCナトリウムを固定した後、界面活性剤の種類及び含量を異ならせて試験例3と同じ方法で実施例15ないし実施例19を製造及び評価した。
【0048】
【0049】
その結果、表5による時、実施例19は、他の界面活性剤を使用した実施例15ないし実施例18と比較した時、工程を適用した以後にも、薬物含量が保持されたので、TPGSがシクロスポリンナノ懸濁液組成物に望ましい界面活性剤であることを確認した。一方、実施例15ないし実施例18のように他の界面活性剤を使用して製造したナノ懸濁液は、湿式粉砕工程を適用するにつれて、薬物含量が低下することを確認した。
【0050】
[試験例5]シクロスポリンナノ懸濁液組成物成分の最適量の導出
【0051】
シクロスポリンナノ懸濁液のうち、高分子及び界面活性剤の最適の濃度を決定するために、CMCナトリウム及びTPGSの含量を異ならせて試験例3と同じ方法で実施例19、実施例20、実施例21及び実施例7を製造及び評価した。
【0052】
【0053】
その結果、表6による時、CMCナトリウムとTPGSとの濃度によって含量低下の効果が変わるということを確認した。特に、実施例19の組成は、湿式粉砕工程で発生する外部力(shear force;せん断力)によって発生する含量低下が最も効果的に抑制されるということを確認した。したがって、シクロスポリンナノ懸濁液を製造するためには、CMCナトリウムとTPGSとがそれぞれ0.1~0.2%の濃度で含むことが最も望ましいということを確認した。
【0054】
[試験例6]高分子及び界面活性剤の組み合わせによるシクロスポリンナノ懸濁液の製造
【0055】
CMCナトリウム及びTPGSが、それぞれ0.1%または0.2%の濃度で組成物を製造した後、追加的に、高分子または界面活性剤を組み合わせて試験例3と同じ方法でナノ懸濁液組成物を製造及び評価した。
【0056】
【0057】
その結果、表7による時、実施例22ないし実施例36のように他の高分子または界面活性剤を組み合わせて使用した時、平均粒子サイズが相対的に減少するということを確認した。
【0058】
[試験例7]シクロスポリンナノ懸濁液の安定性の確認
【0059】
製造されたナノ懸濁液の安定性を確認するために、実施例19のナノ懸濁液組成物を室温で保管し、0、1、2及び4ヶ月経過時点で平均粒子サイズ及び含量を測定した。シクロスポリンの含量及び粒子サイズの測定方法は、前記試験例3の方法と同様に行った。
【0060】
【0061】
その結果、表8による時、実施例19は、室温条件で4ヶ月間平均粒子サイズ及び含量の変化が少なくて非常に安定したと表われることを確認した。
【0062】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、当業者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更せずとも、他の具体的な形態に容易に変形が可能であるということを理解できるであろう。したがって、前述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないということを理解せねばならない。
【0063】
本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そして、その均等概念から導出される、あらゆる変更または変形された形態が、本発明の範囲に含まれていると解釈されねばならない。
【国際調査報告】