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特表2024-539744可動物体の移動を検出するための磁石による検出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】可動物体の移動を検出するための磁石による検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
G01D5/245 W
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532264
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2021084157
(87)【国際公開番号】W WO2023099008
(87)【国際公開日】2023-06-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517258925
【氏名又は名称】フラバ ベスローテン ヴェンノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】FRABA B.V.
【住所又は居所原語表記】Jan Campertstraat 11,6416 SG Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベスト, トビアス
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA24
2F077NN02
2F077NN17
2F077NN24
2F077PP13
2F077TT87
(57)【要約】
本発明は、可動物体(12;12’)の移動を検出するための磁石による検出システム(10;10’)である。その磁石による検出システム(10;10’)は、励起磁場を生成する少なくとも1つの励起磁石(24;24’)を有する励起ユニット(16;16’)と、励起磁場により励起されると電力出力信号を生成するように構成された電力ウィーガンドモジュール(30;30’)および励起磁場により励起されるとセンサ出力信号を生成するように構成されたセンサウィーガンドモジュール(28;28’)を有するセンサユニット(18;18’)と、を備える。ここで、センサウィーガンドモジュール(28;28’)のセンサウィーガンドワイヤ集合体(34;34’)は、電力ウィーガンドモジュール(30;30’)の電力ウィーガンドワイヤ集合体(40;40’)とは異なっており、および/または、センサウィーガンドモジュール(28;28’)のセンサウィーガンドワイヤコイル(32;32’)は、電力ウィーガンドモジュール(30;30’)の電力ウィーガンドコイル(38;38’)とは異なっている。また、センサユニットは、電力ウィーガンドモジュール(30;30’)の電力出力信号により供給される電気エネルギーを貯蔵するように構成されたエネルギー貯蔵装置(44;44’)と、少なくとも1つの移動パラメータを決定するために、前記センサウィーガンドモジュール(28;28’)の前記センサ出力信号を評価するように構成された評価ユニット(50;50’)と、を有する。励起ユニット(16;16’)またはセンサユニット(18;18’)のいずれか一方は、可動物体(12;12’)と連動して移動するように可動物体(12;12’)に取り付けられるように構成され、他方は、不動に配置されるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動物体(12;12’)の移動を検出するための磁石による検出システム(10;10’)であって、前記磁石による検出システム(10;10’)は、
励起磁場を生成する少なくとも1つの励起磁石(24;24’)を有する励起ユニット(16;16’)と、
電力ウィーガンドモジュール(30;30’)、センサウィーガンドモジュール(28;28’)、エネルギー貯蔵装置(44;44’)、および評価ユニット(50;50’)を有するセンサユニット(18;18’)と、を備え、
前記電力ウィーガンドモジュール(30;30’)は、
電力ウィーガンドコイル(38;38’)および
前記電力ウィーガンドコイル(38;38’)内に少なくともその一部が配置された電力ウィーガンドワイヤ集合体(40;40’)を有しており、
前記電力ウィーガンドワイヤ集合体(40;40’)は、前記励起磁場により励起されると前記電力ウィーガンドコイル(38;38’)に電力出力信号を生成するように構成されており、
前記センサウィーガンドモジュール(28;28’)は、
センサウィーガンドコイル(32;32’)および
前記センサウィーガンドコイル(32;32’)内に少なくともその一部が配置されたセンサウィーガンドワイヤ集合体(34;34’)を有しており、
前記センサウィーガンド集合体(34;34’)は、前記電力ウィーガンドワイヤ集合体(40;40’)とは異なっており、および/または、前記センサウィーガンドコイル(32;32’)は前記電力ウィーガンドコイル(38;38’)とは異なっており、
前記センサウィーガンドワイヤ集合体(34;34’)は、前記励起磁場により励起されると前記センサウィーガンドコイル(32;32’)がセンサ出力信号を生成するように構成されており、
前記エネルギー貯蔵装置(44;44’)は、前記電力ウィーガンドモジュール(30;30’)の前記電力出力信号により供給される電気エネルギーを貯蔵するように構成されており、
前記評価ユニット(50;50’)は、少なくとも1つの移動パラメータを決定するために前記センサウィーガンドモジュール(28;28’)の前記センサ出力信号を評価するように構成されており、
前記励起ユニット(16;16’)または前記センサユニット(18;18’)のいずれか一方は、前記可動物体(12;12’)と連動して移動するように前記可動物体(12;12’)に取り付けられるように構成され、他方は、不動に配置されるように構成される、磁石による検出システム(10;10’)。
【請求項2】
前記センサユニット(18)は、複数の電力ウィーガンドモジュール(30)を有しており、前記電力ウィーガンドモジュール(30)のそれぞれは、電力ウィーガンドコイル(38)および前記電力ウィーガンドコイル(38)内に少なくともその一部が配置された電力ウィーガンドワイヤ集合体(40)を有しており、それぞれの電力ウィーガンドモジュール(30)の前記電力ウィーガンドワイヤ集合体(40)は、前記センサウィーガンドワイヤ集合体(34)とは異なっており、および/または前記電力ウィーガンドコイル(38)は、前記センサウィーガンドコイル(32)とは異なっており、前記電力ウィーガンドワイヤ集合体(40)は、前記励起磁場により励起されると前記電力ウィーガンドコイル(38)に電力出力信号を生成するように構成されており、前記エネルギー貯蔵配置(44)は、すべての前記電力ウィーガンドモジュール(30)の前記電力出力信号により供給される電気エネルギーを貯蔵するように構成される、請求項1に記載の磁石による検出システム(10)。
【請求項3】
前記電力ウィーガンドモジュール(30)は、前記可動物体(12)の移動方向(D)に対して互いに変位して配置される、請求項2に記載の磁石による検出システム(10)。
【請求項4】
それぞれの電力ウィーガンドモジュール(30;30’)の前記電力ウィーガンドワイヤ集合体(40;40’)の総電力ウィーガンドワイヤ体積は、前記センサウィーガンドモジュール(28;28’)の前記センサウィーガンドワイヤ集合体(34;34’)の総センサウィーガンドワイヤ体積よりも大きい、請求項1から3までのいずれか一項に記載の磁石による検出システム(10;10’)。
【請求項5】
それぞれの電力ウィーガンドモジュール(30;30’)の前記電力ウィーガンドコイル(38;38’)の電力ウィーガンドコイルインダクタンスは、前記センサウィーガンドモジュール(28;28’)の前記センサウィーガンドコイル(32;32’)のセンサウィーガンドコイルインダクタンスよりも高い、請求項1から4までのいずれか一項に記載の磁石による検出システム(10;10’)。
【請求項6】
前記評価ユニット(50;50’)は、前記エネルギー貯蔵装置(44;44’)に貯蔵された電気エネルギーが供給されるように、前記エネルギー貯蔵装置(44;44’)と電気的に接続されている、請求項1から5までのいずれか一項に記載の磁石による検出システム(10;10’)。
【請求項7】
前記センサユニット(18;18’)は、無線データ伝送のための無線データインターフェイス(46)をさらに有し、前記無線データインターフェイス(46)は、前記エネルギー貯蔵装置(44;44’)に貯蔵された電気エネルギーが供給されるように、前記エネルギー貯蔵装置(44;44’)と電気的に接続される、請求項1から6までのいずれか一項に記載の磁石による検出システム(10;10’)。
【請求項8】
前記センサユニット(18;18’)は、物理的特性を感知するための追加のセンサ素子(48)をさらに有し、前記追加のセンサ素子(48)は、前記エネルギー貯蔵装置(44;44’)に貯蔵された電気エネルギーが供給されるように、前記エネルギー貯蔵装置(44;44’)と電気的に接続される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の磁石による検出システム(10;10’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動物体の移動を検出するための磁石による検出システムに関し、その検出システムは、励起磁場を生成する少なくとも1つの励起磁石を有する励起ユニットと、センサウィーガンドコイルおよびセンサウィーガンドコイル内に少なくともその一部が配置されたセンサウィーガンドワイヤ集合体を含むセンサウィーガンドモジュールを有するセンサユニットと、を備え、センサウィーガンドワイヤ集合体は、励起磁場により励起されるとセンサウィーガンドコイル内に出力信号を生成するように構成されており、評価ユニットは、少なくとも1つの移動パラメータを決定するためにセンサウィーガンドモジュールの出力信号を評価するように構成されており、励起ユニットまたはセンサユニットのいずれか一方は、可動物体と連動して移動するように可動物体に取り付けられる。他方は、不動に配置されるように構成されるので、センサウィーガンドモジュールの位置で生成される励起磁場が可動物体の移動に応じて変化する。
【背景技術】
【0002】
このような検出システムは、リニアエンコーダ、変位エンコーダ、変位測定/検出システム、ロータリエンコーダ、回転角測定/検出システム、または回転角センサとも称され得る。検出される物体の移動は、一般に、任意の種類の移動であり得るが、典型的には線形移動または回転移動である。
【0003】
ウィーガンドコイルと、ウィーガンドコイル内に少なくともその一部が配置されたウィーガンドワイヤ集合体と、を有するウィーガンドモジュールは、当該技術分野において周知である。ウィーガンドワイヤ集合体は、少なくとも1つのウィーガンドワイヤを含み、ウィーガンドワイヤは、一般に硬磁性シェルおよび軟磁性コアを有するか、またはその逆である磁気的に双安定なワイヤである。ウィーガンドワイヤまたはウィーガンドモジュールは、本発明の意味において、それぞれパルスワイヤまたはパルスワイヤモジュールとしても称され得る。例えば、励起ユニットにより生成される励起磁場のような外部磁場の影響下で、少なくとも1つのウィーガンドワイヤの磁化方向、つまり、ウィーガンドワイヤ集合体全体の磁化方向が比較的急激に変化し、ウィーガンドワイヤ集合体を半径方向に囲むウィーガンドコイルに比較的短い電圧パルスを生じさせる。この効果はウィーガンド効果と称され、当業者には周知である。ウィーガンドコイルで発生された電圧パルスは、以下ではウィーガンドモジュールの出力信号と称される。
【0004】
出力信号の電圧パルスの数/周波数を使用して、可動物体の移動距離および/または移動速度を決定可能であることは、当業者では周知である。また、出力信号の電圧パルスの電気エネルギーをエネルギー格納装置に貯蔵して評価ユニットへの電力の供給に使用可能であることから、検出システムが完全にエネルギーを自給して動作可能なことも、当業者では周知である。
【0005】
しかしながら、単一のウィーガンドワイヤを有する通常のウィーガンドモジュールの出力信号により供給される電気エネルギーは比較的低いので、ウィーガンドモジュールの出力信号により供給される電気エネルギーにより電力を供給可能な構成部品の個数および複雑さを大幅に制限する。このことは、そのような検出システムの適用範囲を制限する。
【0006】
この背景に関して、独国特許発明第19925884号明細書および国際公開第2020/160766号は、複数のウィーガンドワイヤを有するウィーガンドワイヤ集合体を備えるウィーガンドモジュールを開示している。ウィーガンドワイヤの本数が多いので、開示されたウィーガンドモジュールの出力信号は、単一のウィーガンドワイヤを備えるウィーガンドモジュールの通常の出力信号と比較して、より多くの電気エネルギーを供給する。ただし、複数のウィーガンドワイヤは、一般に、それらの磁化方向が同時に変化するのではなく、わずかな遅延を伴いながら次々に変化する。このことにより、ウィーガンドコイルにおいて生成される電圧パルスは比較的広くなるか、または複数の電圧パルスに分割されるため、出力信号に基づいた移動パラメータの確実な決定は非常に困難である、または不可能にさえなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、可動物体の移動を検出するための信頼性が高く汎用的な磁石による検出システムを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を備える磁石による検出システムにより達成される。
【0009】
本発明の磁石による検出システムは、励起磁場を生成するための少なくとも1つの励起磁石を含む励起ユニットと、励起磁場を検出するための別個のセンサユニットと、を備える。励起ユニットまたはセンサユニットのいずれか一方は、移動検出対象の可動物体と連動して移動するように取り付けられ、他方は、不動に配置されるように構成される。その結果、センサユニットの規定の位置で励起ユニットにより生成される励起磁場は、可動物体の移動に応じて変化し、これにより、センサユニットは、検出された励起磁場に基づいて少なくとも1つの移動パラメータを決定可能である。励起ユニットおよびセンサユニットは、特に、可動物体が移動したときに、交番励起磁場がセンサユニットの規定の位置で生成されるように設計される。
【0010】
本発明のセンサユニットには、電力ウィーガンドモジュールおよびセンサウィーガンドモジュールの2つの別個のウィーガンドモジュールが設けられている。電力ウィーガンドモジュールは、電力ウィーガンドコイルと少なくとも1つの電力ウィーガンドワイヤとを有し、電力ウィーガンドコイル内に少なくともその一部が配置された電力ウィーガンドワイヤ集合体を有する。電力ウィーガンドワイヤ集合体は、電力ウィーガンドワイヤ集合体が、励起磁場により励起されると電力ウィーガンドコイルに電力出力信号を生成するように構成される。センサウィーガンドモジュールは、センサウィーガンドコイルと少なくとも1つのセンサウィーガンドワイヤとを有しており、少なくともその一部がセンサウィーガンドコイル内に配置されたセンサウィーガンドワイヤ集合体を有するセンサウィーガンドワイヤ集合体は、センサウィーガンドワイヤ集合体が励起磁場により励起されるとセンサウィーガンドワイヤコイルにセンサ出力信号を生成するように構成される。
【0011】
本発明の磁石による検出システムは、少なくとも1つの移動パラメータを決定する評価ユニットも設けられる。本発明では、評価ユニットには、電力ウィーガンドモジュールの電力出力信号により供給される電気エネルギーが供給されて、センサウィーガンドモジュールのセンサ出力信号を評価して少なくとも1つの移動パラメータを決定するように構成される。
【0012】
本発明の磁石による検出システムには、電力ウィーガンドモジュールの電力出力信号により供給される電気エネルギーを貯蔵するように構成されたエネルギー格納装置も設けられる。エネルギー格納装置は、単純なコンデンサまたは電気エネルギーを貯蔵可能な他の任意の装置であり得る少なくとも1つのエネルギー貯蔵器を有する。エネルギー貯蔵装置に貯蔵された電気エネルギーは、評価ユニットおよび/またはセンサユニットの他の構成部品への電力供給に使用される。
【0013】
本発明では、出力信号が評価ユニットにより評価されるセンサウィーガンドモジュールと、出力信号の電気エネルギーが評価ユニットおよび/またはセンサユニットの他の構成部品への電力供給用にエネルギー貯蔵装置に貯蔵される電力ウィーガンドモジュールと、は設計が異なっている。特に、センサウィーガンドワイヤ集合体は電力ウィーガンドワイヤ集合体とは異なり、および/またはセンサウィーガンドコイルは電力ウィーガンドコイルとは異なる。センサウィーガンドワイヤ集合体および電力ウィーガンドワイヤ集合体は、例えば、異なる本数のウィーガンドワイヤまたは異なるワイヤ直径を有するウィーガンドワイヤの設置が可能である。センサウィーガンドコイルおよび電力ウィーガンドコイルは、例えば、異なる巻回数または異なるコイル直径での設置が可能である。
【0014】
一方で電気エネルギーを供給して、他方で移動パラメータを決定するセンサ出力信号を供給するために2つの別個のウィーガンドモジュールを使用することで、それぞれの用途に合わせて、それぞれのウィーガンドモジュールの個別の最適化が可能になる。特に、本発明の電力ウィーガンドモジュールは、特に高い電気エネルギーを供給する電力出力信号を生成するように最適化可能であり、本発明のセンサウィーガンドモジュールは、移動パラメータを確実かつ正確な決定を可能にするセンサ出力信号を生成するように最適化可能である。電力ウィーガンドモジュールにより供給される高い電気エネルギーは、例えば、比較的複雑な評価ユニット、追加のセンサ部品、および/または無線データインターフェイスの動作を可能にする。
【0015】
したがって、本発明の2つの異なるウィーガンドモジュールを有するセンサユニットは、可動物体の移動を検出するための信頼性が高く汎用的な磁石による検出システムの実現を可能にする。
【0016】
センサユニットには、複数の電力ウィーガンドモジュールが設けられ、それぞれの電力ウィーガンドモジュールは、電力ウィーガンドコイルと、電力ウィーガンドコイル内に少なくともその一部が配置された電力ウィーガンドワイヤ集合体と、を有する。電力ウィーガンドワイヤ集合体は、励起磁場により励起されると電力ウィーガンドコイル内に電力出力信号を生成するように構成されることが好ましい。それぞれの電力ウィーガンドモジュールは、センサウィーガンドモジュールとは異なるように設計される。特に、それぞれの電力ウィーガンドモジュールの電力ウィーガンドワイヤ集合体はセンサウィーガンドワイヤ集合体と異なり、および/または電力ウィーガンドコイルはセンサウィーガンドコイルと異なる。通常、すべての電力ウィーガンドモジュールに対して異なる設計が可能である。すべての電力ウィーガンドモジュールは実質的に同一であることが好ましく、このことは電力ウィーガンドセンサのより効率的な製造を可能にする。エネルギー貯蔵装置は、すべての電力ウィーガンドモジュールの電力出力信号により供給される電気エネルギーを貯蔵するように構成することで、すべての電力ウィーガンドモジュールの電力出力信号の総エネルギーを、評価ユニットおよび/またはセンサユニットの他の構成部品への電力供給のために使用可能となる。複数の電源ウィーガンドモジュールを使用することで、センサユニットが生成する電気エネルギー量の大幅な増加が可能になり、より多くのまたは複雑な構成部品への電力の供給が可能になる。これにより、可動物体の移動を検出するための特に信頼性が高く汎用的な磁石による検出システムの実現が可能になる。
【0017】
電力ウィーガンドモジュールは、可動物体の移動方向に対して互いに変位させて配置され、例えば、回転可能な物体では円周方向に対して、または直線的に可動な物体では直線方向に対して変位させて配置されることが好ましい。電力ウィーガンドモジュールは、可動物体の移動距離に沿って等距離に割り振られ、例えば、回転可能な物体では円周に沿って等距離に割り振られ、または、直線的に可動な物体では直線移動距離に沿って等距離に割り振られることが好ましい。これにより、可動物体の移動中に、電力ウィーガンドモジュールによる比較的効率的で比較的継続的な電気エネルギーの供給を実現可能となる。
【0018】
それぞれの電力ウィーガンドモジュールのそれぞれの電力ウィーガンドワイヤ集合体のすべての電力ウィーガンドワイヤの総体積である電力ウィーガンドワイヤ集合体の総電力ウィーガンドワイヤ体積は、センサウィーガンドワイヤ集合体のすべてのセンサウィーガンドワイヤの総体積であるセンサウィーガンドモジュールのセンサウィーガンドワイヤ集合体の総センサウィーガンドワイヤ体積よりも大きいことが好ましい。例えば、電力ウィーガンドワイヤ集合体は、センサウィーガンドワイヤ集合体のセンサウィーガンドワイヤの本数と比較してより多くの本数の電力ウィーガンドワイヤを有し得、および/またはセンサウィーガンドワイヤの直径と比較してより大きい直径を有する電力ウィーガンドワイヤを有し得る。電力ウィーガンドワイヤ集合体の総電力ウィーガンドワイヤ体積が相対的に大きいので、電力ウィーガンドワイヤモジュールは、センサウィーガンドワイヤモジュールと比較してより多くの電気エネルギーを生成可能である。他方では、センサウィーガンドワイヤ集合体の総センサウィーガンドワイヤ体積が比較的小さいので、センサウィーガンドワイヤモジュールは、評価ユニットにより確実に評価され得る相対的に鋭い電圧パルスを有するセンサ出力信号を提供可能である。これにより、可動物体の移動を検出するための信頼性が高く汎用的な磁石による検出システムの実現が可能となる。
【0019】
それぞれの電力ウィーガンドモジュールの電力ウィーガンドコイルの電力ウィーガンドコイルインダクタンスは、センサウィーガンドモジュールのセンサウィーガンドコイルのセンサウィーガンドコイルインダクタンスよりも高いことが好ましい。例えば、電力ウィーガンドコイルは、センサウィーガンドコイルの巻回数と比較して、より多くの巻回数またはより大きなコイル直径を有し得る。電力ウィーガンドコイルの電力ウィーガンドコイルインダクタンスが相対的に高いので、電力ウィーガンドワイヤモジュールは、センサウィーガンドワイヤモジュールと比較して、より多くの電気エネルギーを生成し得る。他方では、センサウィーガンドコイルのウィーガンドコイルインダクタンスが相対的に低いので、センサウィーガンドワイヤモジュールは、評価ユニットにより確実に評価され得るセンサ出力信号の提供が可能である。これにより、可動物体の移動を検出するための特に信頼性が高く汎用的な磁石による検出システムの実現が可能になる。
【0020】
評価ユニットは、エネルギー貯蔵装置に貯蔵された電気エネルギーが供給されるようにエネルギー貯蔵装置と電気的に接続されることが好ましい。これは、外部のエネルギー供給源を必要とせずに、比較的複雑な評価ユニットへの電力供給を可能にする。したがって、可動物体の移動を検出するための特に信頼性が高く汎用的な磁石による検出システムが実現可能になる。
【0021】
センサユニットは、無線データ伝送用の無線データインターフェイスを有し、無線データインターフェイスは、エネルギー貯蔵装置に貯蔵された電気エネルギーが供給されるようにエネルギー貯蔵装置と電気的に接続されることが好ましい。無線データインターフェイスは、例えば、移動パラメータおよび/または構成データのようなデータが、完全に無線でセンサユニットに、またはセンサユニットから送信することを可能にする。無線データインターフェイスには、少なくとも1つの電力ウィーガンドモジュールの電力出力信号により供給されてエネルギー貯蔵装置に貯蔵された電気エネルギーが供給されるので、無線データインターフェイスを動作させるための外部エネルギーの供給は必要ない。したがって、センサユニットは、有線接続を必要とせずに設置可能である。これにより、可動物体の移動を検出するための特に汎用的な磁石による検出システムの実現が可能になる。
【0022】
センサユニットは、物理的特性を感知するための追加のセンサ素子を有し、追加のセンサ素子は、エネルギー貯蔵装置に貯蔵された電気エネルギーが供給されるようにエネルギー貯蔵装置と電気的に接続されることが好ましい。この別のセンサ素子は、例えば温度センサまたは圧力センサであり得る。追加のセンサ素子は、可動物体または可動物体の周囲環境の追加の物理的特性の検出を可能にする。例えば、検出された追加の物理的特性を使用して、評価ユニットによる少なくとも1つの移動パラメータのより正確な決定を可能にし得る。少なくとも1つの電力ウィーガンドモジュールの電力出力信号により供給されてエネルギー貯蔵装置に貯蔵された電気エネルギーが追加のセンサ素子に供給されるので、追加のセンサ素子を動作させるための外部エネルギーの供給は必要ない。これにより、可動物体の移動を検出するための特に信頼性の高い磁石による検出システムの実現が可能になる。
【0023】
本発明の2つの実施形態を、以下に示す添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の可動物体の動きを検出するための磁石による検出システムの第1実施形態の概略図である。
図2図2は、図1の磁石による検出システムのセンサユニットの概略図である。
図3図3は、図1の磁石による検出システムの励起ユニットの概略図である。
図4図4は、図2のセンサユニットのパワーウィーガンドモジュールおよびセンサウィーガンドモジュールの概略断面図である。
図5図5は、本発明の可動物体の移動を検出するための磁石による検出システムの第2実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に、移動方向Dに沿った可動物体12の移動を検出するように構成された磁石による検出システム10を示す。ここで、可動物体12は電気モータ14の回転可能なシャフトであり、移動方向Dはシャフトの円周方向である。
【0026】
磁石による検出システム10は、可動物体12と連動して移動するように可動物体12に取り付けられた励起ユニット16と、電気モータ14の不動のハウジング部20に取り付けられたセンサユニット18と、を備える。
【0027】
励起ユニット16は、可動物体12を半径方向で取り囲んで可動物体12に取り付けられたディスク形状の支持部品22を有する。励起ユニット16は、センサユニット18に面する支持部品22の表面に配置された4つの永久磁石励磁磁石24を有する。4つの励磁磁石24は、可動物体12の移動方向Dに対して互いに等間隔で変位するように支持部品22の円周にわたって等距離に分布するように配置されている。4つの励磁用磁石24は、隣接する励磁用磁石24の径方向内側と径方向外側とで、概ね逆向きの磁化を有するように、すなわち、径方向内側と径方向外側とで異なる磁極(N:N極、S:S極)を有するように構成されている。したがって、励起磁石24は、センサユニット18の規定の位置で可動物体12の移動方向Dへの移動とともに変化する励起磁場を生成する。
【0028】
センサユニット18は、可動物体12を半径方向に取り囲んでハウジング部20に取り付けられたディスク形状の回路基板26を有する。センサユニット18は、1つのセンサウィーガンドモジュール28と、3つの電力ウィーガンドモジュール30とを有し、これらは、回路基板26の励起ユニット16と対向する表面に配置される。4つのウィーガンドモジュール28、30は、可動物体12の移動方向Dに対して互いに等間隔で変位するように回路基板26の円周上に等距離で分布するように配置されている。
【0029】
センサウィーガンドモジュール28は、センサウィーガンドコイル32と、1つの単一センサウィーガンドワイヤ36を有するセンサウィーガンドワイヤ集合体34と、を有する。センサウィーガンドワイヤ集合体34は、センサウィーガンドコイル32がセンサウィーガンドワイヤ36の軸方向中央部を半径方向で取り囲むように、センサウィーガンドコイル32内にその一部が配置される。したがって、センサウィーガンドワイヤ集合体34は、励磁磁石24により生成された励磁磁界による励磁に応答して、センサウィーガンドコイル32においてセンサ出力信号を生成するように構成される。
【0030】
3つの電力ウィーガンドモジュール30のそれぞれは、電力ウィーガンドコイル38と、4本の電力ウィーガンドワイヤ42を有する電力ウィーガンドワイヤ集合体40と、を有する。電力ウィーガンドワイヤ集合体40は、電力ウィーガンドコイル38が4本の電力ウィーガンドワイヤ42それぞれの軸方向中央部を半径方向に取り囲むように、電力ウィーガンドコイル38内にその一部が配置される。したがって、電力ウィーガンドワイヤ集合体40は、励磁磁石24により生成された励磁磁界による励磁に応答して、電力ウィーガンドコイル38内に電力出力信号を生成するように構成される。
【0031】
電力ウィーガンドワイヤ42の本数は、センサウィーガンドワイヤ36の本数よりも多いので、電力ウィーガンドワイヤ集合体40の総電力ウィーガンドワイヤ体積は、センサウィーガンドワイヤ集合体34の総センサウィーガンドワイヤ体積よりも大きい。また、電力ウィーガンドコイル38のコイル径は、センサウィーガンドコイル32のコイル径よりも大きいので、電力ウィーガンドコイル38の電力ウィーガンドコイルインダクタンスは、センサウィーガンドコイル32のセンサウィーガンドコイルインダクタンスよりも大きい。
【0032】
センサユニット18は、3つの電力ウィーガンドモジュール30のそれぞれと電気的に接続され、3つの電力ウィーガンドモジュール30の電力出力信号により供給される電気エネルギーを貯蔵するように構成されたエネルギー貯蔵装置44を有する。
【0033】
センサユニット18は、3つの電力ウィーガンドモジュール30の電力出力信号により供給されてエネルギー貯蔵装置44に貯蔵された電気エネルギーが供給されるように、エネルギー貯蔵装置44と電気的に接続されている無線データインターフェイス46を有する。無線データインターフェイス46は、データの無線送信、好ましくは送受信を可能にするように構成される。
【0034】
センサユニット18は、3つの電力ウィーガンドモジュール30の電力出力信号により供給されてエネルギー貯蔵装置44に貯蔵された電気エネルギーが供給されるように、エネルギー貯蔵装置44と電気的に接続された追加のセンサ素子48を有する。追加のセンサ素子48は、物理的特性を感知して、それぞれのセンサ素子出力信号を提供するように構成される。追加のセンサ素子48は、例えば、温度を感知し、それぞれの温度信号を提供するように構成された温度センサであり得る。
【0035】
センサユニット18は、3つの電力ウィーガンドモジュール30の電力出力信号により供給されてエネルギー貯蔵装置44に貯蔵された電気エネルギーが供給されるように、エネルギー貯蔵装置44と電気的に接続された評価ユニット50を有する。評価ユニット50は、センサウィーガンドワイヤ集合体34によりセンサウィーガンドコイル32に生成されるセンサ出力信号を受信するように、センサウィーガンドモジュール28と電気的に接続される。評価ユニット50は、追加のセンサ素子48により提供されるセンサ素子出力信号を受信するように、追加のセンサ素子48と電気的に接続される。評価ユニット50は、評価ユニット50に、または評価ユニット50からのデータの送信を可能にするように、無線データインターフェイス46と電気的に接続される。評価ユニット50は、データ格納装置52を有する。
【0036】
評価ユニット50は、センサウィーガンドモジュール28のセンサ出力信号および追加のセンサ素子48のセンサ素子出力信号を評価して、現在の温度のような物理的特性パラメータ、ならびに可動物体12の現在の回転角度および/または可動物体12の総回転数を表す回転カウント値のような少なくとも1つの移動パラメータ、を決定するように構成される。評価ユニット50は、決定された物理的特性パラメータおよび決定された少なくとも1つの移動パラメータをデータ格納装置52に格納して、決定された物理的特性パラメータおよび決定された少なくとも1つの移動パラメータを、無線データインターフェイス46を介して送信可能なように構成される。評価ユニット50は、物理的特性パラメータの履歴/経過を格納するように構成可能である。
【0037】
図5は、本発明の代替の磁石による検出システム10’を示す。磁石による検出システム10から既知である磁石による検出システム10’の特徴は、図1図4のそれぞれの参照符号で参照されるが、アポストロフィ文字が付加されている。
【0038】
磁石による検出システム10’は、移動方向D’に沿って直線的に移動可能な可動物体12の移動を検出するように構成される。ここで、センサユニット18’は、可動物体12’と連動して移動するように取り付けられて、励起ユニット16’は、不動に配置される。
【0039】
励起ユニット16’は、移動方向D’に磁北極Nと磁南極Sとの交互配列を有する縦長の励起磁石24’を有する。励磁磁石24’は、単一の永久磁化体であり得、または、並べて配置された複数の永久磁石を有し得る。励起磁石24’は、センサユニット18’の規定の位置で可動物体12’の移動方向D’への移動とともに変化する励起磁場を生成する。
【0040】
センサユニット18’の構造および機能は、磁石による検出システム10のセンサユニット18の構造および機能と実質的に同一である。主な相違は、センサユニット18’が、移動方向D’においてセンサウィーガンドモジュール28’に隣接して配置された電力ウィーガンドモジュール30’を1つだけ有することである。センサウィーガンドモジュール28’および電力ウィーガンドモジュール30’自体もまた、磁石による検出システム10のセンサユニット18のセンサウィーガンドモジュール28および電力ウィーガンドモジュール30と実質的に同一に設計される。
【符号の説明】
【0041】
10;10’ 磁石による検出システム
12;12’ 可動物体
14 電気モータ
16;16’ 励起ユニット
18;18’ センサユニット
20 ハウジング部
22 支持部品
24 励磁磁石
26;26’ 回路基板
28;28’ センサウィーガンドモジュール
30;30’ 電力ウィーガンドモジュール
32;32’ センサウィーガンドコイル
34;34’ センサウィーガンドワイヤ集合体
36;36’ センサウィーガンドワイヤ
38;38’ 電力ウィーガンドコイル
40;40’ 電力ウィーガンドワイヤ集合体
42;42’ 電力ウィーガンドワイヤ
44;44’ エネルギー貯蔵装置
46 無線データインターフェイス
48 追加センサ素子
50;50’ 評価ユニット
52 データ格納装置
D;D’ 移動方向
N 磁北極
S 磁南極
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】