(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】抗CD22抗体の水性製剤およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241022BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241022BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241022BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241022BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241022BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241022BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241022BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241022BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20241022BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241022BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241022BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241022BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241022BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20241022BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20241022BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241022BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241022BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241022BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K9/08
A61K47/34
A61K47/02
A61P11/06
A61P37/02
A61P25/00
A61P3/10
A61P17/06
A61P1/00
A61P37/08
A61P25/28
A61P35/00
A61P19/06
A61K38/02
A61P27/02
A61P13/12
C07K16/28
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546368
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 IB2022000593
(87)【国際公開番号】W WO2023067384
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524147203
【氏名又は名称】シノマブ バイオサイエンス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ヤウ ミン-ホン
(72)【発明者】
【氏名】シウ クワン-イン
(72)【発明者】
【氏名】チャン カ-ワ ベニー
(72)【発明者】
【氏名】レオン シュイ-オン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB13
4C076BB17
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC09
4C076CC18
4C076CC21
4C076CC27
4C076DD07
4C076DD26Z
4C076EE23
4C076FF36
4C084AA02
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA03
4C084ZA02
4C084ZA16
4C084ZA33
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB13
4C084ZB15
4C084ZB26
4C084ZC35
4C085AA14
4C085AA15
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
注射用の、治療的に活性のある抗CD22抗体、スシラスリマブ(またはSM03)の安定な医薬製剤を提供する。該製剤は、詳細には、好適な量の抗CD22抗体に加えてリン酸緩衝液などの少なくとも1つの緩衝剤および非イオン性界面活性剤を追加的に含む。そのような安定な製剤を調製するための方法およびそれらの使用もまた提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)5~25mg/mlの濃度の、IgG1抗ヒトCD22抗体、またはその抗原結合部分を含有するタンパク質;
(b)5.8~8.0のpHをもたらす1~50mMの緩衝剤;および
(c)0.01~0.08%の非イオン性界面活性剤
を含み、
該抗体が、スシラスリマブ(Suciraslimab)(SM03)である、
治療的活性のある抗CD22抗体の安定な液体医薬製剤。
【請求項2】
IgG1抗ヒトCD22抗体、またはその抗原結合部分を含有するタンパク質の濃度が、10mg/mlである、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
50~100mOsmの範囲である浸透圧を有する、請求項1記載の製剤。
【請求項4】
非イオン性界面活性剤が、0.01~0.05%の濃度である、請求項1記載の製剤。
【請求項5】
界面活性剤が、ポリソルベートである、請求項1記載の製剤。
【請求項6】
ポリソルベートが、ポリソルベート20である、請求項5記載の製剤。
【請求項7】
ポリソルベートが、ポリソルベート80である、請求項5記載の製剤。
【請求項8】
ポリソルベート80の濃度が、0.01~0.05%の範囲である、請求項7記載の製剤。
【請求項9】
ポリソルベート80の濃度が、約0.04%である、請求項8記載の製剤。
【請求項10】
pHが、6.9~7.5の範囲である、請求項1記載の製剤。
【請求項11】
注射に好適である、請求項1記載の製剤。
【請求項12】
静脈内輸注に好適である、請求項1記載の製剤。
【請求項13】
緩衝剤が、リン酸緩衝液である、請求項1記載の製剤。
【請求項14】
抗CD22抗体が、
a.SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列、SEQ ID NO: 3のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO: 4のアミノ酸配列から構成された可変軽鎖領域;ならびに
b.SEQ ID NO: 6のアミノ酸配列、SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列、およびSEQ ID NO: 8のアミノ酸配列から構成された可変重鎖領域
を含む、請求項1記載の製剤。
【請求項15】
抗CD22抗体が、
a.SEQ ID NO: 1のアミノ酸を含む可変軽鎖領域;および
b.SEQ ID NO: 5のアミノ酸配列を含む可変重鎖領域
を含む、請求項1記載の製剤。
【請求項16】
複数回の凍結および解凍サイクルの後、安定である、請求項1記載の製剤。
【請求項17】
抗CD22抗体による処置に適応する疾患または障害の処置に好適な剤形である、請求項1記載の製剤。
【請求項18】
治療的有効量のSM03を含む事前充填されたシリンジで、製剤が等張剤と共に同時投与される、請求項1記載の注射。
【請求項19】
Bリンパ球と結合しかつ/またはBリンパ球を抑制するために有効な量で請求項1記載の製剤を対象に投与する工程を含む、その必要のある対象における自己免疫障害または疾患を処置する方法。
【請求項20】
自己免疫障害または疾患が、リウマチ性関節炎(RA)、リウマチ性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、自己免疫性糖尿病、シェーグレン症候群、乾癬、炎症性腸疾患、グレーブス病、1型真性糖尿病、セリアック病、変形性関節炎、痛風性関節炎、アレルギー、自己免疫性ぶどう膜炎、ネフローゼ症候群、尋常性天疱瘡、アルツハイマー病、ベーチェット病(BD)、およびB細胞悪性腫瘍からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
Bリンパ球と結合しかつ/またはBリンパ球を抑制するために有効な量で請求項14記載の製剤を対象に投与する工程を含む、その必要のある対象における自己免疫障害または疾患を処置する方法。
【請求項22】
自己免疫障害または疾患が、破綻した免疫自己寛容と関連する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
自己免疫障害または疾患が、リウマチ性関節炎、リウマチ性脊椎炎、変形性関節炎、痛風性関節炎、アレルギー、多発性硬化症、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ぶどう膜炎、およびネフローゼ症候群からなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
請求項1記載の製剤を含有する1つまたは複数のバイアルと、その必要のある患者への製剤の静脈内投与に関する使用説明書と、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2021年10月18日出願の米国特許仮出願第63/256,883号の恩典を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Web経由でST.26 XMLファイルとして提出されておりその全体が参照により本明細書に組み入れられる配列表を含む。2022年10月18日に作成された前記XMLファイルは、
と命名され、サイズは9,878バイトである。
【0003】
発明の分野
本発明は、概して、抗CD22抗体の水性製剤に関し、より詳細には、注射または静脈内投与に好適なSM03抗体(スシラスリマブ(Suciraslimab))の水性製剤、および特に抗CD22抗体による処置に適応する疾患または障害の処置に関連した、それらの薬学的使用に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
抗シグレック抗体、具体的には抗CD22抗体の投与は、様々な障害、特に、リウマチ性関節炎(RA)、リウマチ性脊椎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、自己免疫性糖尿病、シェーグレン症候群もしくはシェーグレン病、乾癬、炎症性腸疾患、グレーブス病、1型真性糖尿病、セリアック病、変形性関節炎および痛風性関節炎、アレルギー、自己免疫性ぶどう膜炎、ネフローゼ症候群、尋常性天疱瘡、アルツハイマー病、ベーチェット病(BD)、ならびに/またはB細胞悪性腫瘍などの自己免疫疾患に対して治療効果を示すことが示された。「スシラスリマブ」と称される抗CD22抗体、SM03を、RA患者へ投与すると、制御性B細胞(Breg)などの異なるB細胞サブタイプを含むB細胞の制御性および/または抑制性機能の喪失が回復することによって、疾患に関連する合併症を改善することが見出された。この回復は、CD22および/もしくはその他のシグレックの、それらのリガンドに対する結合についてcis結合からtrans結合への配置の転換が不十分となることに起因するか、またはヒトCD22および/もしくはその他のシグレック上のリガンド結合部位がcisリガンド結合によって「覆い隠されて」いることによりフリーなリガンド結合部位が利用できないことに起因する。しかしながら、SMO03がその意図される治療的活性を保持したまま保存および輸送されうるような延長された有効期限を有するSM03の安定な医薬製剤の必要性が存続している。本発明は、治療的適用に好適な、SM03のそのような安定な組成物を提供する。本発明のSM03の医薬製剤は、注射および/または輸注による患者対象への投与に好適である。
【発明の概要】
【0005】
延長された有効期限を有する、CD22および/またはその他のシグレック経路を調節することによって治療的使用に好適である抗体の安定な医薬製剤が、当技術分野において必要である。延長された有効期限を有するそのような安定な医薬製剤が容易に投与され、高いタンパク質濃度を含有することも、当技術分野においてさらに必要である。
【0006】
したがって、本発明の目的は、そのような液体水性医薬製剤を提供することであり、より詳細には、治療的有効量の抗CD22抗体、具体的にはSM03(またはそのヒト化バージョン、SM06)を、約5.8~約8.0のpHを有しかつ少なくとも36カ月の有効期限を有する製剤を形成する緩衝溶液中に含む、水性製剤を提供することである。本発明はまた、治療的有効量の抗体を、液体状態で約5.8~8.0のpHを有しかつ少なくとも18カ月の有効期限を有する製剤を形成する緩衝溶液中に含む、水性医薬製剤も含む。一態様では、医薬製剤は、増強された安定性を有する。さらなる態様では、本発明の製剤は、少なくとも3回の製剤の凍結/解凍サイクルの後、安定である。別の態様では、抗体は、CD22に向けられる。また別の態様では、本発明の抗体は、ヒトCD22に向けられる。
【0007】
本発明のさらなる目的は、治療的有効量の抗体を、5.8~8.0のpHを有しかつ2~8℃の温度で少なくとも12カ月の増強された安定性を有する製剤を形成する緩衝溶液中に含む、液体水性医薬製剤を提供することである。一態様では、該製剤は、少なくとも18カ月の増強された安定性を有する。別の態様では、抗体は、CD22に向けられる。また別の態様では、抗体は、ヒトCD22に向けられる。
【0008】
本発明の一態様では、液体水性医薬製剤は、注射に好適である。さらなる態様では、該製剤は、頓用の静脈内注射に好適である。別の態様では、液体水性医薬製剤中の抗体の濃度は、約5~25mg/mlである。また別の態様では、該製剤中の抗体の濃度は、約10mg/mlである。さらに別の態様では、該製剤は、高いタンパク質濃度を有する。本発明のまた別の態様では、該製剤は、光感受性ではない。
【0009】
本発明の別の態様は、抗体またはその抗原結合部分がヒトCD22に結合する製剤を含む。
【0010】
本発明の別の態様では、液体水性医薬製剤は、抗体、またはその抗原結合部分を含有するタンパク質、すなわち、組換え型の、抗体、またはその抗原結合部分を含有するタンパク質、を含有する。別の態様では、該製剤は、ヒトBリンパ球上のヒトCD22に結合する、抗体、またはその抗原結合部分を含有するタンパク質、を含有する。
【0011】
本発明のまた別の態様では、液体水性医薬製剤は、SEQ ID NO: 3のアミノ酸配列または1、4、5、7、もしくは8位での1つのアラニン置換を含むSEQ ID NO: 3の改変型を含むCDR3ドメインから構成された軽鎖可変領域(LCVR)と、SEQ ID NO: 4のアミノ酸配列または2、3、4、5、6、8、9、10、もしくは11位での1つのアラニン置換を含むSEQ ID NO: 4の改変型を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)とを有する、抗体、またはその抗原結合部分を含有するタンパク質、を含有する。さらなる態様では、本発明の製剤は、抗体を含有し、この抗体では、抗体のLCVRまたはその抗原結合部分は、SEQ ID NO: 5のアミノ酸配列から構成されたCDR2ドメインをさらに有する一方で、抗体のHCVRまたはその抗原結合部分は、SEQ ID NO: 6のアミノ酸配列から構成されたCDR2ドメインをさらに有する。また別の態様では、本発明の製剤は、抗体を含有し、この抗体では、抗体のLCVRまたはその抗原結合部分は、SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列から構成されたCDR1ドメインをさらに有し、HCVRは、SEQ ID NO: 8のアミノ酸配列から構成されたCDR1ドメインを有する。
【0012】
本発明のまた別の態様では、液体水性医薬製剤中に含有された抗体またはその抗原結合部分は、SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列から構成された軽鎖可変領域(LCVR)と、SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列から構成され重鎖可変領域(HCVR)とを有する。別の態様では、抗体またはその抗原結合部分は、IgG1軽鎖定常領域を有する。さらに別の態様では、抗体またはその抗原結合部分は、IgG1重鎖定常領域を有する。別の態様では、抗体またはその抗原結合部分は、Fabフラグメントである。さらにさらなる態様では、抗体またはその抗原結合部分は、単鎖Fvフラグメントである。
【0013】
本発明の一態様では、液体水性医薬製剤は、ヒトCD22、ならびにヒヒCD22、マーモセットCD22、カニクイザルCD22、およびアカゲザルCD22からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる霊長類CD22に結合する、抗体、またはその抗原結合部分を含有するタンパク質、を含有する。
【0014】
また本発明のさらなる目的は、界面活性剤と、約5.8~8.0のpHを有するリン酸塩を含有する緩衝系とを、治療的使用のために抗体を約5mg/mlを超える濃度で製剤化するのに十分な量で含む、水性医薬組成物を提供することである。一態様では、界面活性剤は、ポリソルベート80である。別の態様では、該組成物は、0.01~0.08%のポリソルベート80を含む。さらなる態様では、該組成物は、抗体SM03を含む。
【0015】
また本発明のさらなる目的は、0.01~0.08%のTween-80と、5.8~8.0のpHを有するリン酸塩を含有する緩衝系と、から構成された、液体水性医薬製剤を提供することである。一態様では、抗体は、CD22に向けられる。別の態様では、該製剤は、約10mg/mlの抗体を含有する。本発明は、約10mg/mlの抗体と、約0.04%のTween-80と、約5.8~約8.0のpHを有するリン酸塩を含有する緩衝系と、から構成された、液体水性医薬製剤をさらに提供する。一態様では、該製剤のpHは、約6.2~約7.7の範囲である。別の態様では、pHは、約6.5~約7.5に入る。また別の態様では、本発明のpHは、約6.9~約7.2に入る。
【0016】
本発明の一態様では、液体水性医薬製剤はまた、約7.16mg/mlのリン酸二ナトリウム十二水和物、約1.38mg/mlのリン酸二水素ナトリウムも含む。別の態様では、本発明の製剤は、CD22に向けられる抗体を含む。またさらなる態様では、本発明の製剤は、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、非ホジキンリンパ腫などの自己免疫障害を患う対象に投与される。
【0017】
本発明のこれらの目的および特徴ならびにその他の目的および特徴は、下記の詳細な説明を添付の図面および実施例と併せて読むと、より完全に明らかとなるであろう。ただし、上記の発明の概要および下記の詳細な説明はどちらも、好ましい態様のものであり、本発明または本発明のその他の代替的態様を限定するものではないことを理解されたい。特に、本発明は本明細書においていくつかの特定の態様に照らして説明されているが、この説明は、本発明を例証するものであり、本発明を限定するものとして構成されてはいないことが理解されるであろう。当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって記載されているように、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく、様々な改変および適用を想起することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】SM03の静脈注射用製剤を隔週でリウマチ性関節炎の患者に投与した、実施例4の試験の結果をグラフによって示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、約1~約25mg/mlの範囲の抗体濃度を含む高いタンパク質濃度を含有し、かつ増強された安定性を有する、約5.8~約8.0のpHを有する液体水性医薬製剤に関する。本発明はまた、自己免疫障害を患う対象の処置のための液体水性医薬製剤にも関する。本発明の製剤は、好ましくは以下の成分を含む:高い親和性、低いオフレート、および高い内在化刺激率でヒトCD22に結合する抗体;リン酸二ナトリウム十二水和物およびリン酸二水素ナトリウムを含む、緩衝液;ポリソルベート80またはポリソルベート20を含む、界面活性剤;ならびに、pH調整用の、水酸化ナトリウムまたは塩酸。
【0020】
I.定義:
特段の定義がないかぎり、本明細書において使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明が属す技術分野の技術者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。ただし、矛盾がある場合、本明細書が、定義を含め、基準となる。したがって、本発明の文脈では、以下の定義を適用する。
【0021】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、文脈で特に明確な指摘がないかぎり、複数の言及を含む。よって、例えば、「ペプチド」への言及は、1つまたは複数のペプチドおよび当業者に公知のそれらの均等物などへの言及である。
【0022】
「対象」という用語は、生物、例えば、原核生物および真核生物を含むことが意図される。対象の例としては、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、およびトランスジェニック非ヒト動物、を含む。本発明の特定の態様では、対象はヒトである。
【0023】
「医薬製剤」および「医薬組成物」という用語は、本明細書では、活性成分の生物学的活性を確実に有効にさせるような形態であり、かつ製剤が投与されることになる対象に対し有意に有毒である付加成分を含有しない調製物を指すために互換的に使用される。同様に、「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)という用語は、用いられる活性成分の有効量を提供するために対象に妥当に投与されうる賦形剤を指す。
【0024】
「安定な」製剤とは、保存中、製剤中で抗体がその物理的安定性および/もしくは化学的安定性ならびに/または生物学的活性を本質的に維持している製剤である。安定性を測定するための様々な分析技術が当該分野で利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery, 247-301, Vincent Lee Ed., Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Pubs. (1991)、およびJones, A. Adv. Drug Delivery Rev. 10: 29-90 (1993)において概説されている。安定性は、選択された温度で、選択された期間、測定されうる。好ましくは、本発明の製剤は、室温(約15~25℃)で少なくとも6カ月間、安定であり、かつ/または約2~8℃で少なくとも3年(36カ月)間、安定である。さらに、本発明の製剤は、好ましくは、以下「凍結/解凍サイクル(F/Tサイクル)」と称する製剤の凍結(例えば-40℃未満)および解凍の後、安定である。
【0025】
色および/もしくは透明度の視覚的検査において、またはUV光散乱もしくはサイズ排除クロマトグラフィーによる測定に際し、抗体が凝集、沈殿、および/もしくは変性の徴候を実質的に示していない場合、抗体は、医薬製剤中で「その物理的安定性を維持している」。
【0026】
所与の期間における化学的安定性が、抗体が下記にて定義されるようなその生物学的活性を依然として維持していると判断されるようなものである場合、抗体は、医薬製剤中で「その化学的安定性を維持している」。化学的安定性は、化学的に変化した形態の抗体を検出および定量化することによって評価することができる。化学的変化は、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、SDS-PAGE、および/またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型質量分析(MALDI/TOF MS)を使用して評価することができる、サイズ改変(例えばクリッピング)を伴っていてもよい。その他の種類の化学的変化としては、例えばイオン交換クロマトグラフィーによって評価することができる電荷変化(例えば脱アミド化の結果として発生する)を含む。
【0027】
医薬製剤中の抗体がその意図された目的に関して生物学的に活性である場合、抗体は、医薬製剤中で「その生物学的活性を維持している」。例えば、医薬製剤中の抗体の生物学的活性が、該医薬製剤の調製時に示された生物学的活性(例えば、抗原結合アッセイにおいて決定された場合)の、約30%、約20%、または約10%以内(該アッセイの誤差内)である場合、生物学的活性は維持されている。
【0028】
本明細書において使用される場合、「緩衝液」は、その酸塩基共役成分の作用によるpHの変化を阻む緩衝溶液を指す。本発明の緩衝液は、約5.8~約8.0の;好ましくは約6.5~約7.5の範囲のpHを有し;最も好ましくは約6.9~約7.2の範囲のpHを有する。この範囲においてpHを制御する緩衝液の例としては、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(コハク酸ナトリウムなど)、リン酸塩(リン酸ナトリウムなど)、ヒスチジン、クエン酸塩、およびその他の有機塩緩衝液を含む。
【0029】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「含む」という用語は、後ろに続く要素を含むがその他の要素を除外するものではないことを意味する。
【0030】
「自己免疫疾患または障害」という用語は、正常な身体の細胞、組織、臓器、または全身部に対する異常な免疫応答を特徴とする疾患または障害を指す。例えば、免疫系が、正常な身体組織を攻撃する抗体を産生することもある。一部の態様では、自己免疫疾患または障害は、機能障害性免疫制御によって引き起こされる。自己免疫疾患または障害には、リウマチ性関節炎(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、乾癬、炎症性腸疾患、グレーブス病、1型真性糖尿病、セリアック病、リウマチ性脊椎炎、変形性関節炎および痛風性関節炎、アレルギー、自己免疫性ぶどう膜炎、ネフローゼ症候群、尋常性天疱瘡、アルツハイマー病、ベーチェット病(BD)、ならびにB細胞悪性腫瘍などを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0031】
「CD22」という用語は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属し、分子サイズが135kDであるI型膜貫通シアロ糖タンパク質、別名シアル酸結合免疫グロブリン-タイプレクチン(シグレック)である、B細胞限定抗原を指す。休止B細胞では、CD22は、自身に対する突起したcisリガンドであり、CD22ホモオリゴマーを形成している。
【0032】
「シグレック」という用語は、本明細書において使用される場合、ヒトCD22およびシグレック-10などのシアル酸結合免疫グロブリン-タイプレクチンを指す。シグレック-10およびCD22は、B細胞表面上でのみ発現されるシグレックである。これらの分子は、B細胞上で恒常的に発現され、B細胞寛容の維持および自己免疫疾患の予防においてB細胞抗原受容体(BCR)の抑制性共受容体として作用する。
【0033】
「ヒトCD22」または「hCD22」という用語は、本明細書において使用される場合、分子サイズが135kDであるI型膜貫通シアロ糖タンパク質として存在するヒトB細胞限定表面抗原CD22を指すことが意図される。CD22は、別のB細胞限定抗原であり;免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属し、分子サイズが135kDであるI型膜貫通シアロ糖タンパク質である。ヒトCD22という用語は、細胞外、細胞内、および膜貫通領域を含有するその完全な分子形態のものか、または細胞外領域のみもしくは抗CD22抗体の結合エピトープを含有する細胞外部分の部分を含有する可溶性形態として発現されたものかのいずれかである、組換えヒトCD22(rhCD22)を含むことが意図される。これらは、標準的な組換え体発現方法によって調製されうるかまたは市販品として購入されうる(例えば、Abcam、カタログ番号Ab50033、Cambridge、MA;Creative Biomart、カタログ番号CD22-3946H、Shirely、NY;Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11958H08H5、Waltham、MA)。
【0034】
薬理学的意味において、本発明の文脈では、「治療的有効量」および「有効量」という句は、特に抗体について、本明細書では、抗体が有効である障害の処置に関して障害の予防または処置において有効な量を指すために互換的に使用される。「障害」とは、抗体による処置から恩恵を得ると思われる任意の状態である。これには、対象に対し問題となっている障害の病因となるこれらの病理学的状態を含む、慢性および急性の障害または疾患が含まれる。
【0035】
「処置」とは、治療的処置および保護的または予防的措置の両方を指す。処置を必要とする者としては、既に障害を有する者、ならびに障害が予防されるべきである者が含まれる。
【0036】
「抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、ジスルフィド結合によって相互接続された、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖の4つのポリペプチド鎖から構成された免疫グロブリン分子を指すことが意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVHと略記される)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2、およびCH3の3つのドメインから構成され、CH1ドメインとCH2ドメインとを連結する短い可動性ヒンジ領域が存在する。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVLと略記される)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成される。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域に点在している、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる高可変領域にさらに細分されうる。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成されており、これらは、アミノ末端からカルボキシ末端へ、以下の順序で配置している:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0037】
「組換え抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、宿主細胞中にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体などの、組換え手段によって調製、発現、もしくは創製、もしくは単離されたあらゆるキメラおよびヒト化抗体(下記セクションIIにてさらに説明される)、組換えの、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(下記セクションIIIにてさらに説明される)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor, L.D., et al (1992) Nucl. Acids Res. 20: 6287-6295を参照されたい)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列をその他のDNA配列にスプライシングすることを伴うその他の手段によって調製、発現、創製、もしくは単離された抗体を含むことが意図される。
【0038】
「単離された抗体」とは、本明細書において使用される場合、異なる抗原特異性を有するその他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことが意図される(例えば、ヒトCD22に特異的に結合する単離された抗体は、ヒトCD22以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、ヒトCD22に特異的に結合する単離された抗体は、その他の種由来のCD22などのその他の抗原への交差反応性を有してもよい。さらに、単離された抗体は、その他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含んでいなくてもよい。
【0039】
「SM03」という用語は、ヒトCD22(hCD22)に対するキメラ抗体を指す。そのような抗体は、Leung et al.による中国特許第ZL03123054.7号ならびに米国特許第9,371,396 B2号および第10,613,099 B2号に記載されており、それらの各内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0040】
「SM06」という用語は、その潜在的免疫原性を低減するように再設計され、かつSM03のものに匹敵するヒトCD22に対する親和性および特異性を示す、キメラ抗体SM03のヒト化バージョンを指す(Liang et al. (2006) Chinese J New Drug 15 (21): 1832-1836を参照されたい)。フレームワークパッチドSM06の構築およびその使用が、中国特許第ZL 011 44894.6号、ならびに米国特許第7,321,026 B2号および第7,338,659 B2号に記載されており、それらの各内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0041】
「単離された抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、異なる抗原性特異性を有するその他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことが意図される(例えば、CD22に特異的に結合する単離された抗体は、CD22以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、CD22に特異的に結合する単離された抗体は、その他の種由来のCD22分子などのその他の抗原への交差反応性を有してもよい。さらに、単離された抗体は、その他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含んでいなくてもよい。
【0042】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書では、アミノ酸残基の重合体を指すために互換的に使用される。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、改変された残基、または対応する天然アミノ酸の人工的化学ミメティックなどの天然には存在しない残基であるアミノ酸重合体、ならびに天然アミノ酸重合体に適用される。
【0043】
「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「核酸」、および「核酸分子」という用語は、本明細書では、エステル結合によって連結された核酸残基の重合体を指すために互換的に使用され、別段の明記がないかぎり、アミノ酸と同様に、それらの一般的に認められた一文字略号よって表される。アミノ酸と同様に、これらは、天然および天然には存在しない核酸重合体の両方を包含する。ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、DNA、RNA、またはそれらの組合せから構成されていてもよい。
【0044】
本発明の文脈では、核酸配列が、特定のオリゴヌクレオチドに対して約70%~約80%の、またはより好ましくは約81%~約90%の、またはさらにより好ましくは約91%~約99%の配列同一性を有する場合、該核酸配列は、「実質的に同一」とみなされる。
【0045】
「単離された」という用語は、本明細書では、その天然環境から分離された(すなわち、天然には存在しない形態の)分子を指すために使用される。同様に、「精製された」という用語は、本明細書において、混入物を実質的に含まない形態の分子を指すために使用される。
【0046】
II.本発明の製剤の抗体:
本発明は、約5.8~約8.0のpH、および、好ましくは少なくとも約18カ月の、延長された有効期限を有する製剤を産するように緩衝溶液中に治療的有効量の抗体を含有する、液体水性医薬製剤を対象とする。別の態様では、本発明の液体水性医薬製剤は、増強された安定性を有する。本発明のさらなる態様では、該製剤は、光感受性ではない。本発明のまた別の態様では、本願で主張された製剤は、少なくとも3回のF/Tサイクルの後、依然として安定である。さらに別の態様では、本発明の医薬製剤は、頓用の静脈内(iv)注射に好適である。
【0047】
本発明の製剤中で使用されうる抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、組換え抗体、単鎖抗体、ハイブリッド抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはそれらの断片を含む。抗原に対する1つまたは2つの結合部位および免疫グロブリンのFc部分を含有する抗体様分子も、また使用されうる。製剤中で使用される好ましい抗体は、組換えキメラまたはヒト化抗体であり、とりわけ好ましい抗体は、ヒトCD22(hCD22)を含む、抗原CD22に対するものである。別の態様では、製剤中で使用される組換え抗体は、抗原CD22に対する単離された抗体の調製物であることが好ましい。
【0048】
別の態様では、組換え抗体は、SM03(キメラ)またはSM06(ヒト化バージョン)であり、SEQ ID NO: 4のアミノ酸配列から構成された軽鎖CDR3ドメインおよびSEQ ID NO: 8のアミノ酸配列から構成された重鎖CDR3ドメインを有する(添付の配列表に示した)。一部の態様では、SM03抗体は、SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列から構成された軽鎖可変領域(LCVR)およびSEQ ID NO: 5のアミノ酸配列から構成された重鎖可変領域(HCVR)を有する;一方、SM06抗体は、SEQ ID NO: 9のアミノ酸配列から構成された軽鎖可変領域(LCVR)およびSEQ ID NO: 010のアミノ酸配列から構成された重鎖可変領域(HCVR)を有する。これらの抗体は、中国特許第ZL 031 23054.7号および第ZL 011 44894.6号ならびに米国特許第7,321,026 B2号、第7,338,659 B2号、第9,371,396 B2号、および第10,613,099 B2号に記載されており、その各内容はその全体が本明細書に参照により組み入れられる。
【0049】
III.本発明の製剤の調製:
本発明は、当技術分野において認められている製剤と比較して改善された特性を有する製剤(例えば、タンパク質製剤および/または抗体製剤)を特徴とする。例えば、本発明の製剤は、当技術分野において認められている製剤と比較して改善された有効期限および/または安定性を有する。好ましい局面では、本発明の製剤は、例えば、約25mg/mlを超えるタンパク質濃度、約30mg/mlを超えるタンパク質濃度、約50mg/mlを超えるタンパク質濃度、または約100mg/mlを超えるタンパク質濃度を含む、高いタンパク質濃度を有する。本発明の好ましい態様では、タンパク質は、抗体である。別の好ましい態様では、抗体は、SM03である。本発明はまた、界面活性剤と、約5.8~8.0のpHを有するリン酸塩を含む緩衝系と、を含む水性医薬組成物を、治療的使用のために抗体を例えば約5mg/mlを超える濃度で製剤化するのに十分な量で提供する。
【0050】
関心対象の抗体の調製は、当技術分野において公知の標準的な方法に従って実施される。本発明の好ましい態様では、製剤中で使用される抗体は、CHO細胞またはSp2/0細胞中で発現され、標準的な一連のクロマトグラフィー工程によって精製される。さらに好ましい態様では、抗体は、哺乳類のCD22に向けられる。
【0051】
関心対象の抗体の調製、好ましくは単離された抗体の調製の後、該抗体を含む医薬製剤が調製される。製剤中に存在する抗体の治療的有効量は、例えば、所望の用量体積および投与様式(複数可)を考慮することによって決定される。本発明の一態様では、製剤中の抗体の濃度は、液体製剤1mlあたり抗体約1~約100mgである。好ましい態様では、製剤中の抗体の濃度は、1mlあたり約5~約50mgである。別の好ましい態様では、製剤中の抗体の濃度は、約10~約25mg/mlである。製剤は、8mg/mlを超える、多量の抗体投与量にとりわけ好適である。好ましい態様では、抗体の濃度は、10mg/mlである。
【0052】
本発明の別の態様では、製剤中の抗体の濃度は、約1~100mg/ml、約5~95mg/ml、約5~90mg/ml、約5~85mg/ml、約5~80mg/ml、約5~75mg/ml、約5~70mg/ml、約5~65mg/ml、約5~60mg/ml、約5~55mg/ml、約5~50mg/ml、約5~45mg/ml、約5~40mg/ml、約5~35mg/ml、約5~30mg/ml、約5~25mg/ml、約8~15mg/ml、または約10mg/mlである。上記の列挙された濃度の中間にある範囲、例えば約8~94mg/mlもまた、本発明の一部であることが意図される。例えば、上記の列挙された値のいずれかの組合せを上限および/または下限として使用した値の範囲が含まれることが意図される。
【0053】
一態様では、本発明は、リン酸二ナトリウム十二水和物、リン酸二水素ナトリウム、ポリソルベート80、注射用水、塩酸、および水酸化ナトリウムと組み合わせて、活性成分、好ましくは抗体を含有する、延長された有効期限を有する製剤を提供する。さらなる態様では、本発明の製剤は、液体状態で少なくとも約18カ月の延長された有効期限を有する。本発明の製剤を凍結させることもまた、その有効期限をさらに延長するために使用されうる。
【0054】
本発明の水性製剤は、pH緩衝溶液中に抗体を含んでいてもよい。本発明の緩衝液は、約5.8~約8.0の、好ましくは約6.5~約7.5の、より好ましくは約6.9~約7.2の範囲のpHを有し、最も好ましくは約7.0~約7.2のpHを有する。上記の列挙されたpHの範囲の中間にある範囲もまた、本発明の一部であることが意図される。例えば、上記の列挙された値のいずれかの組合せを上限および/または下限として使用した値の範囲が含まれることが意図される。この範囲内でpHを制御すると考えられる緩衝液の例としては、リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム)、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(コハク酸ナトリウムなど)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩、およびその他の有機塩緩衝液を含む。
【0055】
本発明の好ましい態様では、製剤は、約5.8~約8.0の、好ましくは約6.5~約7.5の、より好ましくは約6.9~約7.2の範囲でpHを維持するようにクエン酸塩およびリン酸塩を含有する緩衝系を含み、最も好ましくは約7.0~約7.2のpHを有する緩衝系を含む。別の好ましい態様では、緩衝系は、リン酸二ナトリウム十二水和物およびリン酸二水素ナトリウムを含む。さらに好ましい態様では、緩衝系は、約1.2mg/mLのリン酸二水素ナトリウム(例えば1.0~1.4mg/mL)、約3.6mg/mlのリン酸二ナトリウム二水和物(例えば3.4~3.8mg/ml)を含む。追加的な好ましい態様では、緩衝系は、1.1~1.5mg/mlのリン酸二水素ナトリウム一水和物または1.3~1.7mg/mlのリン酸二水素ナトリウム二水和物および7.0~7.4mg/mLのリン酸二ナトリウム十二水和物を含む。別の好ましい態様では、約10mmol/L(10mM)のリン酸二水素ナトリウムおよび20mmol/L(20mM)のリン酸二ナトリウムが、本発明の製剤中に見出される。さらなる態様では、製剤のpHは、水酸化ナトリウム溶液および/または塩酸で調整される。
【0056】
デタージェントまたは界面活性剤が、抗体製剤に添加されていてもよい。例示的なデタージェントとしては、ポリソルベートなどの非イオン性界面活性剤(例えばポリソルベート20、ポリソルベート80、Tween 20、Tween 80など)を含む。添加される界面活性剤の量は、製剤化された抗体の凝集を低減し、かつ/または製剤中の微粒子の形成を最小限に抑え、かつ/または吸着を低減するような量である。本発明の好ましい態様では、製剤は、ポリソルベートである界面活性剤を含む。本発明の別の好ましい態様では、製剤は、デタージェント ポリソルベート80またはTween 80を含有する。Tween 80は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートを表すのに使用される用語である(Fiedler, Lexikon der Hifsstoffe, Editio Cantor Verlag Aulendorf, 4th ed., 1996を参照されたい)。好ましい一態様では、製剤は、約0.1~約0.8mg/mlのポリソルベート80を、より好ましくは約0.3~約0.5mg/mlで含有する。別の好ましい態様では、約0.4%ポリソルベート80が本発明の製剤中に見出される。
【0057】
本発明の好ましい態様では、製剤は、表1において下記に示すようにバイアルあたりの成分を含有する約30mlの溶液の形態で、バイアル中に封入される。
【0058】
(表1)注射用の30ml溶液の1バイアルは、以下を含有する:
1)溶液の密度:1.020g/mL
2)1M溶液として添加
【0059】
本明細書における製剤はまた、処置中の特定の適応症に関して、必要に応じて、1つまたは複数のその他の治療剤または薬学的に許容される担体と、好ましくは製剤の抗体に不利に影響しない相補的活性を有するその他の治療剤または薬学的に許容される担体と、組み合わされていてもよい。そのような治療剤または薬学的に許容される担体は、意図された目的に有効である量で組み合わされて好適に存在する。
【0060】
インビボ投与のために使用されることになる製剤は、無菌でなければならない。これは、製剤の調製の前または後に滅菌ろ過膜を通すろ過によって、容易に達成される。
【0061】
IV.本発明の製剤の投与:
本明細書おいて、本発明の製剤に関して「有効量」という句は、例えば自己免疫障害の様々な形態学的および身体的症状を予防するための、障害の予防または処置における有効な量が、製剤中に存在することを意味する。別の態様では、製剤の「有効量」とは、Bリンパ球活性を調節するために、例えば有害なBリンパ球活性に関連する状態の様々な形態学的および身体的症状を予防するために必要なまたは十分な量を指す。別の態様では、製剤の有効量は、所望の結果を得るために必要な量を指す。
【0062】
一例では、製剤の有効量は、有害なCD22活性を調節するために十分な量である。別の例では、製剤の有効量は、有害なBリンパ球活性を調節するために十分な量である。また別の例では、製剤の有効量は、表1に記載したような300mgの抗体を含有する30mlの製剤である。有効量は、対象のサイズおよび体重、または疾病の種類などの因子によって様々でありうる。別の例では、製剤の有効量は、600mgの抗体を含有する60mlの製剤である。
【0063】
投与のレジメンは、有効量を構成するものに影響する可能性がある。抗CD22抗体製剤は、対象に、有害なBリンパ球活性が発生する前または後のいずれで投与されてもよい。
【0064】
「処置された」、「処置する」、または「処置」という用語は、処置中の状態、障害、もしくは疾患に関連するまたはそれらによって生じた少なくとも1つの症状の減少または軽減を含む。例えば、処置は、障害の1つもしくはいくつかの症状の減少または障害の完全な根絶であってもよい。
【0065】
本発明の医薬製剤中の活性成分(複数可)(すなわち、少なくとも1つの抗体)の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成、および投与方法に対して、患者への有毒性なく所望の治療的反応を獲得するために有効である活性成分の量を得るように、様々であってもよい。選択される投与量レベルは、様々な因子によって異なり、様々な因子としては、製剤中で見出される抗体の活性、投与経路、投与時間、用いられている特定の化合物の排出速度、処置の期間、その他の薬物、用いられた特定の化合物と併用される化合物および/または材料、処置中の患者の齢数、性別、体重、状態、全般的な健康状態、および既往歴、ならびに医学分野において周知の因子などを含む。
【0066】
当技術分野の通常の技術を有する医師または獣医師であれば、必要とされる本発明の医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師は、医薬製剤中に用いられる本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を獲得するために必要とされるレベルより低いレベルから始め、所望の効果が獲得されるまで投与量を徐々に増加することが可能である。
【0067】
一般的には、本発明の製剤の好適な1日の用量は、治療効果をもたらすのに有効な最低用量である製剤の量であると考えられる。そのような有効用量は、一般的に、上記の因子によって異なる。本発明の製剤の有効量は、自己免疫障害を患う対象におけるCD22活性を調節する量である。好ましい態様では、該製剤は、活性成分である抗体の輸注1回あたり300mgの有効用量を提供する。別の態様では、該製剤は、抗体が約1~600mgの範囲である有効用量を提供する。
【0068】
投与量の値は、軽減されるべき状態の重症度によって様々であってもよいことに留意されたい。任意の特定の対象に関して、具体的な投与量のレジメンは、個々の必要性と組成物の投与を施行または管理する人物の専門的な判断力とに応じて経時的に調整されるべきであること、および、本明細書に記載の投与量の範囲は、例示的であるに過ぎず、本願で主張される組成物の範囲または実施を限定することを意図されてはいないことを、さらに理解されたい。
【0069】
本発明は、延長された有効期限を有する医薬製剤を提供し、該医薬製剤は、一態様では、Bリンパ球活性が有害である障害を患う対象におけるCD22活性を調節するために使用され、対象におけるCD22活性が調節されるような本発明の抗体または抗体部分を対象に投与することを含む。好ましくは、CD22はhCD22であり、対象はヒト対象である。別法として、対象は、本発明の抗体が交差反応するCD22を発現する哺乳動物であってもよい。またさらに、対象は、hCD22が導入された(例えば、hCD22の投与によってまたはhCD22導入遺伝子の発現によって)哺乳動物であってもよい。本発明の製剤は、治療目的(さらに以下で論じられる)でヒト対象に投与されてもよい。好ましい態様では、本発明の製剤は、静脈内輸注によって、好ましくは頓用で投与される。さらに、本発明の製剤は、獣医学的目的でまたはヒト疾患の動物モデルとして、抗体が交差反応するCD22を発現する非ヒト哺乳動物(例えば、霊長類、ブタ、またはマウス)に投与されてもよい。後者に関して、そのような動物モデルは、本発明の抗体の治療有効性の評価(例えば、投与量の試験および投与の時間経過)に有用でありうる。
【0070】
本明細書において使用される場合、「CD22活性が有害である障害」という用語は、障害を患う対象におけるCD22の存在が障害の病態生理学を招くかもしくは障害の悪化に寄与する因子かのいずれかであることが、示されているかまたは疑われる疾患およびその他の障害を含むことが意図される。したがって、CD22活性が有害である障害は、CD22活性の抑制が障害の症状および/または進行を軽減することが期待される障害である。そのような障害は、例えば上記のような抗CD22抗体を使用して検出されうる、例えば、障害を患う対象の生物学的体液におけるCD22の濃度の上昇(例えば、対象の血清、血漿、滑液などにおけるCD22の濃度の上昇)によって証明されうる。
【0071】
特定の自己免疫障害の処置における本発明の抗CD22抗体を含有する医薬製剤の使用を、さらに以下にて論じる。
【0072】
V.本発明の製剤の治療的使用:
本発明の製剤は、自己免疫疾患、特に、リウマチ性関節炎、リウマチ性脊椎炎、変形性関節炎および痛風性関節炎、アレルギー、多発性硬化症、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ぶどう膜炎、ならびにネフローゼ症候群を含む、破綻した免疫自己寛容と関連する自己免疫疾患を処置するために使用することができる。典型的には、本発明の製剤は、単独でまたは組み合わせて、全身的に投与される。
【0073】
本発明の医薬製剤はまた、CD22活性が有害である様々なその他の障害を処置するためにも使用されうる。CD22活性が病態生理学に関係づけられており、よって本発明の製剤を使用して処置することができるその他の疾患および障害の例としては。
【0074】
以下、本発明を、実施例を参照にすることによってさらに詳しく説明する。ただし、以下の材料、方法、および例は、本発明の局面を例証しているに過ぎず、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。したがって、本明細書に記載の方法および材料と類似のまたは等価の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用してもよい。
【実施例】
【0075】
本発明の抗CD22抗体の水性製剤は、下記に概説するような一般的な準備方法および分析方法ならびにアッセイを使用した、下記に示す実験結果に基づき開発された。
【0076】
A.製剤用の抗体の調製:
SM03は、組換えタンパク質の作製のための公知の一般的な技術によって作製する。遺伝子改変された動物細胞株、好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株またはSp2/0細胞株を、マスターセルバンクまたはワーキングセルバンクから、細胞培養にて調製し、増殖させた。SM03モノクローナル抗体は、アフィニティクロマトグラフィー、好ましくはプロテインAアフィニティクロマトグラフィー、続いて低pHウイルス不活性化(例えば4.0未満のpH)、アニオン交換クロマトグラフィー(例えばQ-Sepharose FF)、カチオン交換クロマトグラフィー(例えばSP-Sepharose FF)、ウイルス汚染を除去するためのろ過工程(例えば中空糸)、および限外ろ過/ダイアフィルトレーション工程を使用して細胞培養液から収集し、精製する。次いで、SM03を、約7.2のpHの30mMリン酸緩衝液中約10mg/mlの濃度に調製した。
【0077】
プロセスは、ワーキングセルバンク(WCB)またはマスターセルバンク(MCB)からの細胞の解凍、ならびに一連の振盪フラスコおよびスピナーフラスコでの細胞培養による増殖から始め、続いて培養液量を増やして一連のバイオリアクターでの増殖を行う。バイオリアクター生産段階の完了後、細胞培養液を、遠心分離および/またはろ過によって清澄化する。次いで、タンパク質を、プロセスおよび生成物に関連する不純物を除去する一連のカラムクロマトグラフィープロセスによって精製する。ウイルスろ過工程を実施し、次いで、ろ過したバルクを、限外ろ過/ダイアフィルトレーションによって、好ましくはタンジェンシャルフローろ過によって以下の最終緩衝液へと濃縮し、製剤化する:30mMリン酸緩衝液中10~100mg/mL SM03、pH7.2、0.04%(w/v)ポリソルベート80。得られた原薬バルクは、2~8℃で保存され、6カ月以上安定である。
【0078】
本発明による製剤のその他の賦形剤は、実施において広く使用され、当業者には公知である。したがって、それらをここで詳細に説明する必要はない。
【0079】
本発明による皮下投与のための液体医用薬製剤は、以下のように開発した。
【0080】
実施例1 - 製剤の調製
本発明の水性医薬製剤は、以下のプロセスに従って作製した。
【0081】
製剤中で使用された材料には、以下が含まれる:リン酸二ナトリウム二水和物(第二リン酸ナトリウム二水和物)、リン酸二水素ナトリウム二水和物(第一リン酸ナトリウム二水和物)、ポリソルベート80、および注射用水(WFI)。pH調整用に1M溶液として使用した水酸化ナトリウムおよび塩酸、ならびにスシラスリマブ原薬バルク。
【0082】
20Lのダイアフィルトレーション緩衝液の調製(20.180kgに相当-溶液の密度:1.009g/ml):成分は以下の通り計量した:143.2gリン酸二ナトリウム十二水和物、17.2gリン酸二水素ナトリウム、および19,959.6gの水。
【0083】
20Lの製剤調整緩衝液の調製(20.180kgに相当-溶液の密度:1.009g/ml):成分は、以下の通り計量した:143.2gリン酸二ナトリウム十二水和物、17.2gリン酸二水素ナトリウム、40.0gポリソルベート80、および19,919.6gの水。
【0084】
20Lの製剤緩衝液の調製(20.180kgに相当-溶液の密度:1.009g/ml):成分は、以下の通り計量した:143.2gリン酸二ナトリウム十二水和物、17.2gリン酸二水素ナトリウム、8.0gポリソルベート80、および19,959.6gの水。
【0085】
1M水酸化ナトリウム溶液は、40.0gの水酸化ナトリウムを1000.8gの注射用水と混合することによって調製した。
【0086】
1M塩酸溶液は、??mlの塩酸を1000gの注射用水と混合することによって調製した。
【0087】
これらの緩衝液は、上記のように事前に計量した成分を、好ましくはリン酸二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム、続いてポリソルベート80の順で、WFIの所要の重量の70~90%に溶解することによって調製した。すべての緩衝液成分を加えた後、溶液のpHを、上記のように調製した1M水酸化ナトリウム溶液または1M塩酸溶液で調整した。pH調整試薬(複数可)の添加後、水を最終重量まで加えた。次いで、この緩衝溶液を、滅菌フィルター(PVDFまたはPES、0.10~0.45μmの範囲の孔径を有する)を通して滅菌容器中にろ過した。
【0088】
液体製剤の調製のために、精製されたスシラスリマブを、タンジェンシャルフロー限外ろ過/ダイアフィルトレーション、公称フロー限外ろ過/希釈、または同様な技術によって、上記のように調製したダイアフィルトレーション緩衝液に対して緩衝液交換を行った。限外ろ過膜またはカセットの分子量カットオフ率は、10~100kDaである。必要な場合、緩衝液交換したSM03を、限外ろ過によって約25mg/mlの抗体濃度まで濃縮する。緩衝液交換操作の完了後、上記のような製剤調整緩衝液として、界面活性剤ポリソルベート80を抗体溶液に加えた。最後に、抗体およびポリソルベートの濃度を、さらに下記にて特定の製剤において指定されるように、約10mg/ml、25mg/ml、または50mg/mlの最終SM03濃度に、および約0.2mg/ml、0.4mg/ml、または0.8mg/mlのポリソルベート濃度に調整した。
【0089】
すべての製剤は、0.22μmの低分子タンパク質結合フィルターを通して滅菌ろ過し、ゴム栓およびアルクリンプ(alucrimp)キャップで閉じた滅菌30mlガラスバイアル中に無菌的に充填した。充填量は約30mlとした。これらの製剤を、異なる条件(5±3℃および25±2℃)、異なる期間保存し、凍結解凍ストレス法によってストレスを与えた。試料を、ストレス試験を適用する前および後に以下の分析方法によって分析した:
1)UV分光光度測定法;
2)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC);
3)カチオンイオン交換クロマトグラフィー(CEX-HPLC)による;
4)可視粒子について;および
5)抗体活性について。
【0090】
タンパク質含有量の決定のために使用したUV分光法は、UV分光光度計において190nm~400nmの紫外線波長範囲にて実施した。製剤試料は、対応する製剤緩衝液または水で、20倍、30倍、および40倍に希釈した。UV分光光度計は、製剤緩衝液または水で対応してブランク設定した。希釈した試料の吸光度を、280nmおよび320nmにて測定した。タンパク質濃度は、下記等式によって算出した。
【0091】
280nmにおけるUV光吸収は、320nmにおける光散乱に対して補正し、希釈倍率を掛け、純粋な試料および希釈緩衝液の計量した質量および密度から決定した。分子を、キュベットの光路長dと吸光係数εとの積によって割った。ここでは、吸光係数は1.3~1.5の範囲である。
【0092】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)は、製剤中の、抗体単量体(分子量約140kDa~160kDa)、可溶性高分子量種(200kDaより高い分子量を有する凝集物)、および低分子量加水分解物(LMW、100kDa未満の分子量を有する)を検出するために使用した。該方法は、Waters 2998 PDA Detectorを備えたWaters Alliance 2695 HPLC装置上で実施し、Waters Protein-Pak 300SWカラムで分解した。インタクトな単量体、凝集物、および加水分解物を、移動相として100mM酢酸ナトリウム、300mM塩化ナトリウム、pH6.5を使用するイソクラティック溶離プロファイルによって分離し、280nmの波長にて検出した。
【0093】
カチオンイオン交換クロマトグラフィー(CEX-HPLC)は、製剤中のSM03の正味の電荷を変える化学分解物を検出するために実施した。該方法では、PDA検出器(検出波長280nm)およびDionex MabPac(商標)SCX-10 LCカラムを備えた好適なHPLC装置を使用した。H2O中20mM Bis-Tris緩衝液、pH6.5、ならびに20mM Bis-Tris緩衝液、pH7.5、および190mM NaClを、それぞれ移動相AおよびBとして、0.5ml/分の流速で使用した。
【0094】
可視粒子については、Beckman HIAC 9703+粒子カウンター装置を使用することによって試料を分析した。
【0095】
50Lの製剤の調製:
次いで、ろ過した緩衝液を、貯蔵していた上記のように調製された抗体原薬に加えた。該原薬は、凍結保存されていた場合は、医薬製剤の調製の前にウォーターバス中で解凍し、または、5±3℃で保存されていた場合はそのまま使用した。10~100mg/mlの範囲のタンパク質濃縮物を含む原薬が使用可能である。原薬溶液は、約10mg/mlの濃度を目標として、製剤緩衝液で希釈した。製剤溶液の最終重量に達するまで、該緩衝液を撹拌しながら加えた。
【0096】
所要の範囲に調整されたタンパク質濃度を有する製剤を、次いで、製剤を2つの滅菌0.22μmメンブレンフィルターを通してろ過したこと以外は上記の通りに、ろ過によって滅菌した。滅菌後、製剤を、上記のようにガラスバイアルでの使用のためにパッケージングした。
【0097】
当業者であれば、本明細書に記載された重量および/または重量対体積比は、記載された成分の当技術分野において認められている分子量を使用してモルおよび/またはモル濃度に変換することができることも、また認識するであろう。本明細書において例証された重量(例えば、gまたはkg)は、記載された体積(例えば、緩衝液または医薬製剤の)に対するものである。当業者であれば、異なる製剤体積が望まれる場合、重量は比例して調整することができることを認識するであろう。例えば、40L、25L、12.5L、5L、または2.5L製剤は、それぞれ、例証された重量の80%、50%、25%、10%、または5%を含むことになる。
【0098】
(表1)本発明による液体抗CD22医用薬製剤の安定性データ
【0099】
実施例2 - 凍結/解凍試験
10mg/mLのタンパク質濃度の抗CD22抗体薬物製剤の凍結解凍挙動は、薬物製剤を凍結状態から液体状態に3回サイクルさせることによって評価した。表2に、-80℃または-30℃から開始する3回の凍結解凍サイクルの影響を評価した実験の結果をそれぞれ示す。
【0100】
表2は、D2E7抗体原薬が、化学的特性(カチオン交換HPLC、サイズ排除HPLC、色、pH)、物理化学的特性(サブビジブル粒子、透明度)、または生物学的活性(インビトロTNF中和アッセイ)のいずれにもいかなる有害な影響なく、少なくとも3回、解凍/凍結されうることを示している。また表2は、ポリソルベート80が含有されると、遅い凍結/解凍サイクル、速い凍結/解凍サイクルのどちらを使用したかにかかわらず、サブビジブル粒子数の低下によって証明されるように、D2E7抗体原薬の物理化学的特性が改善されたことを示している(表2の陰付けした領域を参照されたい)。
【0101】
【0102】
実施例3 - 静脈内投与による、抗CD22製剤での処置
本非盲検試験では、活動性RAを有する8名の患者に、実行中の(メトトレキサート)MTXでの処置に加え、0日目および15日目に、用量あたり600mgのSM03(概ね360mg/m2に相当)の2回の注射で処置した。本試験に参加した患者は、5.8年の平均疾患持続時間および5.78の疾患活動性スコア(DAS28)を有しており、これは高い疾患活動性を反映するものであった。
【0103】
SM03で処置された8名の患者のうち4名は、最も早い反応が第4週に始まり、12週間を超えるとDAS28に基づくEULAR反応およびACR20を達成し;このうち1名は、ACR70を達成した(下記表3)。
【0104】
(表3)第I相非盲検試験を通じての、SM03の1キット(2本のバイアル、合計600mg)の投与後のACRレスポンダーの割合
【0105】
レスポンダーのうち2名は、28日目にACR改善がみられ始め、残りのレスポンダーは、それぞれ56日目および84日目までACR反応を達成しなかった。これは、抗体投与後早くも第1週にはACR反応を示すことができたその他のTNFαターゲティング抗体とは異なり、RAに対する抗CD22反応は遅効性である可能性を示している。
【0106】
ACRスコアと一致して、組み入れた患者のDAS28スコアは、徐々にではあるが経時的に低下する傾向があり、DAS28スコアはSM03投与後84日目にその最低値に達した(約0.6、値が低下)。8名の患者のうち4名は、84日目にDAS EULAR反応を達成し、このうち1名は良好なEULAR反応とみなされた。高活動性RA患者の5.1を超える平均ベースライン値に関しては、観察されたDAS28スコアの変化は、SM03処置に対する反応を反映していなかった。
【0107】
個々の患者のDAS28スコアの0.6~1.2にわたる低減は「中等度反応」を反映しているとみなしたならば、2名のSM03処置患者が中等度反応を達成していたとみなすことができた。その他の2名の患者は、1名が28日目に、もう1名が56日目に、1.2を超えるDAS28低減を達成したものの、スコアは、その後のフォローアップの来院時に逆戻りした。それにもかかわらず、結果は、SM03の600mgの静脈内投与が、良好な安全性および忍容性プロファイルを伴って、RAを処置するのに有効であることを示した。
【0108】
実施例4 - 静脈内投与される抗CD22抗体製剤の全身用量
2サイクル行う、隔週でのSM03の静脈内投与。MTX処置を継続しながら、プラセボまたはSM03を、2回または3回の注射をそれぞれ2サイクル行う2種の累積用量段階で、隔週で静脈内注射した後、臨床効果、安全性、免疫原性、およびMTXに対し反応が不十分であったRA患者の耐性を調べた。
【0109】
MTXに対し不十分な反応または忍容性を有したRA患者で、プラセボ対照二重盲検無作為化多施設試験が実施された。試験の過程を通じて、患者には、下記の算入基準に指定された用量範囲でのMTXの安定的用量が継続された。
【0110】
本試験は、以下の2つの部分から構成された:1)最初の用量負荷の投与前4週間の「ウォッシュアウト期間」、この期間中に(MTX以外の)DMARDが除去された;ならびに2)「プラセボ対照期間」、この期間中に、患者は、患者52名の、3コホートのうちの1つに無作為に割り付けられて、プラセボ、2サイクルでの2×600mgのSM03、または第0週に開始する第1のサイクルと第12週に開始する第2のサイクルとの2サイクルで隔週で与えられる3×600mgのSM03を受けた。
【0111】
患者は、盲検化された医師(治験責任医師)によって実施される関節検査により、試験の第0週(SM03投与の前)、第2週、第4週、第8週、第12週、第16週、および第24週において数回にわたって検査された。
【0112】
本試験には、156名のRA患者が組み入れられた。試験集団は、中国の北部、南西部、および東部における中等症から重症のRA集団を代表しており:約86%が女性で大半が44歳を超えていた。該集団は、例えば患者は1987年改訂のAmerican College of Rheumatology(ACR)基準によって定義されているようなRAの診断を受けていなければならないという、当業者に公知の所定の算入基準および除外基準を使用して選択された(例えば、Arnett F. C., et al. (1988), “The American Rheumatism Association 1987 revised criteria for the classification of rheumatoid arthritis”, Arthritis Rheum. 31: 314-324を参照されたい)。
【0113】
結果:
図1は、隔週で2回投与または隔週で3回投与のいずれかを2サイクル行う、静脈内への隔週のSM03処置が、メトトレキサートと併用した場合、24週でRAの徴候および症状を低減させることにおいてプラセボより有意に良好であったことを示している。興味深いことに、ACR20反応によって評価した場合、SM03のすべての投与レジメンは、処置群と同じ投与スケジュールに従って与えられたプラセボより、有意に有効であった。具体的には、第24週で、2×600mgのSM03で処置された患者の約57%および3×600mgのSM03で処置された患者の65%がACR20を達成したのに対し、プラセボでは34%しかACR20を達成しなかった;さらに、2×600mgおよび3×600mgのSM03で処置された患者のそれぞれおよそ30%および45%が、ACR50を達成し(対して、プラセボ群では患者の17%がACR50反応);2×600mgおよび3×600mgのSM03で処置された患者のそれぞれおよそ10%および18.4%が、ACR70を達成した(対してプラセボ群では患者の4%がACR70反応)。
【0114】
本明細書において言及されたすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、その全体が参照により組み入れられる。
【0115】
本発明は、詳細にかつその特定の態様に照らして説明されてきたが、様々な変更および改変が、本発明の主旨と範囲から逸脱することなくそこでなされうることは、当業者には明らかであろう。
【配列表】
【国際調査報告】