(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-30
(54)【発明の名称】エネルギー蓄積素子及び製造工程
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20241023BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241023BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20241023BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20241023BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20241023BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241023BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20241023BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20241023BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20241023BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20241023BHJP
H01M 50/54 20210101ALI20241023BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M10/0562
H01M10/0585
H01M50/536
H01M10/0587
H01M10/052
H01M50/107
H01M50/119
H01M50/103
H01M50/463 B
H01M50/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520853
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2022072029
(87)【国際公開番号】W WO2023057113
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502350250
【氏名又は名称】ヴァルタ マイクロバッテリー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】シュテルン ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ゾルトナー アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】エルマー マルティン
【テーマコード(参考)】
5H011
5H021
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA05
5H011CC06
5H011DD13
5H011KK01
5H021CC02
5H021CC04
5H021EE04
5H021HH03
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM16
5H029BJ02
5H029BJ12
5H029BJ14
5H029CJ07
5H029CJ21
5H029HJ04
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA13
5H043EA15
5H043EA16
5H043EA18
5H043HA11E
5H043JA08E
5H043KA07E
5H043KA08E
5H043KA09E
5H043LA02E
(57)【要約】
カソード(101)及びアノード(102)を備え、カソード(101)及びアノード(102)が、それらがセパレータ又は固体電解質層(110)によって分離され、カソード(101)/セパレータ又は固体電解質層(110)/アノード(102)の順序で存在するアセンブリ(109)の一部である、エネルギー蓄積素子(100)が知られている。カソード(101)及びアノード(102)は、集電体(101a及び102a)を備え、集電体(101a及び102a)は、電極材料(117及び118)で両側をコーティングされた領域(101b及び102b)に加えて、各々が電極材料でコーティングされていないエッジストリップ(101c及び102c)を有する。カソード集電体(101a)の自由なエッジストリップ(101c)は、アセンブリ(109)の一方の側面から突出し、アノード集電体(102a)の自由なエッジストリップ(102c)は、アセンブリ(109)の別の側面から突出し、エッジストリップ(101c、102c)の一方は、第1のコンタクトシート金属部材(119)と直接接触しており、他方は、第2のコンタクトシート金属部材(120)と直接接触している。コンタクトシート金属部材(119、120)の一方と直接接触しているエッジストリップ(101c、102c)の少なくとも1つが、電極材料(117、118)で両側をコーティングされた、隣接する主領域(101b、102b)における、関連するカソード(101)又はアノード(102)の厚さに少なくとも相当する厚さを有するように、折り畳まれること、及び/又は巻き上げられることが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特徴:
a.エネルギー蓄積素子(100)が、カソード(101)及びアノード(102)を備え、前記カソード(101)及び前記アノード(102)が、前記カソード(101)及び前記アノード(102)がセパレータ又は固体電解質層(110)によって分離され、前記カソード(101)/前記セパレータ又は固体電解質層(110)/前記アノード(102)の順序で存在するアセンブリ(109)の一部であることと、
b.前記カソード(101)が、カソード集電体(101a)と、正極材料(117)と、を備えることと、
c.前記カソード集電体(101a)が、
前記正極材料(117)の層が両側に充填された主領域(101b)と、
前記カソード集電体(101a)のエッジに沿って延在し、前記正極材料(117)が充填されていない自由なエッジストリップ(101c)と、
を有することと、
d.前記アノード(102)が、アノード集電体(102a)と、負極材料(118)と、を備えることと、
e.前記アノード集電体(102a)が、
前記負極材料(118)の層が両側に充填された主領域(101b)と、
前記アノード集電体(102a)のエッジに沿って延在し、前記負極材料(118)が充填されていない自由なエッジストリップ(102c)と、
を有することと、
f.前記カソード集電体(101a)の前記自由なエッジストリップ(101c)が前記アセンブリ(109)の一方の側面(109a)から突出し、前記アノード集電体(102a)の前記自由なエッジストリップ(102c)が前記アセンブリ(109)の別の側面(109b)から突出するように、前記カソード(101)及び前記アノード(102)が、前記電極-セパレータアセンブリ(109)内で互いに対して形成及び/又は配置されることと、
g.前記エネルギー蓄積素子が、前記自由なエッジストリップ(101c、102c)の一方と直接接触する第1のコンタクトシート金属部材(119)と、前記自由なエッジストリップ(101c、102c)の他方と直接接触する第2のコンタクトシート金属部材(120)と、を備えることと、
を有し、
h.前記コンタクトシート金属部材(119、120)の一方と直接接触している前記エッジストリップ(101c、102c)の少なくとも1つが、折り畳み及び/又は巻き上げ工程の結果として、前記電極材料(117、118)で両側をコーティングされた隣接する主領域(101b、102b)における前記関連するカソード(101)又はアノード(102)の厚さに少なくとも相当する厚さを有する、エネルギー蓄積素子(100)。
【請求項2】
以下のさらなる特徴:
a.前記電極(101、102)と、前記集電体(101a、102a)と、前記電極材料(117、118)の層とが、リボン状であることと、
b.前記エネルギー蓄積素子が、少なくとも1つのリボン状のセパレータ(110、111)、又は少なくとも1つのリボン状の固体電解質層(110)を備えることと、
c.前記アセンブリ(109)が、前記電極(101、102)及び前記少なくとも1つのセパレータ(110、111)が巻き取り軸の周りに螺旋状に巻かれた、円筒巻線の形状であり、前記アセンブリ(109)が、第1及び第2の端子端面(109a、109b)と、巻線シェルと、を含み、前記カソード集電体(101a)の前記自由なエッジストリップ(101c)が、前記第1の端面(109a)から突出し、前記アノード集電体(102a)の前記自由なエッジストリップ(102c)が、前記第2の端面(109b)から突出することと、
d.前記エネルギー蓄積素子が、周方向ハウジングシェル、並びに前記端面において円形の底部及び蓋を備えた、円筒ハウジング、特に円筒金属ハウジングを備えることと、
e.前記ハウジング内で、巻線の形状の前記アセンブリ(109)が、前記巻線シェルが前記周方向ハウジングシェルの内側に当接するように軸方向にアライメントされることと、
を有する、請求項1に記載のエネルギー蓄積素子。
【請求項3】
以下のさらなる特徴:
a.前記リボン状の正極(101)、したがって前記第1の端面(109a)から突出した前記カソード集電体(101a)の前記自由なエッジストリップ(101c)も、前記巻線において、半径方向の一連の隣接する巻(160~174)を含むことと、
b.前記巻の各々が、前記折り畳み及び/又は前記巻き工程の結果として厚くなった前記エッジストリップ(101c)の部分を含むことと、
c.隣接する巻において、前記厚くなったエッジストリップ(101c)の前記部分が互いに直接接触していることと、
d.前記カソード集電体(101a)の前記自由なエッジストリップ(101c)が、前記第1の端面(109a)に垂直な方向において、前記端面(109a)の少なくとも80%を覆う、連続した金属層を形成することと、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項2に記載のエネルギー蓄積素子。
【請求項4】
以下のさらなる特徴:
a.前記リボン状の負極(102)、したがって前記第2の端面(109b)から突出した前記アノード集電体(102)の前記自由なエッジストリップ(102c)も、前記巻線において、半径方向の一連の隣接する巻(141~156)を含むことと、
b.前記巻の各々が、前記折り畳み及び/又は前記巻き工程の結果として厚くなった前記エッジストリップ(102c)の部分を含むことと、
c.隣接する巻において、前記厚くなったエッジストリップ(102c)の前記部分が互いに直接接触していることと、
d.前記アノード集電体(102a)の前記自由なエッジストリップ(102c)が、前記第2の端面(109b)に垂直な方向において、前記端面(109b)の少なくとも80%を覆う、連続した金属層を形成することと、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項2又は3に記載のエネルギー蓄積素子。
【請求項5】
以下のさらなる特徴:
a.前記アセンブリ(109)が、前記カソード(101)及び前記アノード(102)が、さらなるカソード(103、105、107)及びさらなるアノード(104、106、108)と共に積み重ねられた角柱スタックの形状であることと、
b.前記電極(101、102、103、104、105、106、107、及び108)と、前記集電体(101a、102a、103a、104a、105a、106a、107a、及び108a)と、前記電極材料の前記層とが、多角形、特に矩形であることと、
c.前記エネルギー蓄積素子が、少なくとも1つのリボン状若しくは多角形の、特に矩形のセパレータ(110、111、112、113、114、115、116)、又は少なくとも1つのリボン状若しくは多角形の、特に矩形の固体電解質を含むことと、
d.前記スタックが、角柱ハウジング(125)内に収納されることと、
を有する、請求項1に記載のエネルギー蓄積素子。
【請求項6】
以下のさらなる特徴:
a.前記スタックの前記カソード(101、103、105、107)の各々が、前記折り畳み及び/又は巻き上げ工程の結果として厚くなった前記エッジストリップ(101c、103c、105c、107c)を特徴とすることと、
b.前記スタックの前記アノード(102、104、106、108)の各々が、前記折り畳み及び/又は巻き上げ工程の結果として厚くなった前記エッジストリップ(102c、104c、106c、108c)を特徴とすることと、
c.前記スタックの前記カソードの前記カソード集電体の前記自由なエッジストリップ(101c、103c、105c、107c)が、前記スタックの一方の側面から突出し、前記第1のコンタクトシート金属部材(119)と直接接触することと、
d.前記スタックの前記アノードの前記アノード集電体の前記自由なエッジストリップ(102c、104c、106c、108c)が、前記スタックの別の側面から突出し、前記第2のコンタクトシート金属部材(120)と直接接触することと、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項5に記載のエネルギー蓄積素子。
【請求項7】
以下のさらなる特徴:
a.前記カソード集電体の前記自由なエッジストリップ(101c、103c、105c、107c)が、互いに平行に配置されることと、
b.前記カソード集電体の前記自由なエッジストリップ(101c、103c、105c、107c)のうち、隣接するエッジストリップが互いに直接接触することと、
c.前記カソード集電体の前記自由なエッジストリップ(101c、103c、105c、107c)が、前記自由なエッジストリップ(101c、103c、105c、107c)が突出する前記スタックの前記側面に垂直な方向において、前記側面の少なくとも80%を完全に覆う、連続した金属層を形成することと、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項5又は6に記載のエネルギー蓄積素子。
【請求項8】
以下のさらなる特徴:
a.前記アノード集電体の前記自由なエッジストリップ(102c、104c、106c、108c)が、互いに平行に配置されることと、
b.前記アノード集電体の前記自由なエッジストリップ(102c、104c、106c、108c)のうち、隣接するエッジストリップが互いに直接接触することと、
c.前記アノード集電体の前記自由なエッジストリップ(102c、104c、106c、108c)が、前記自由なエッジストリップ(102c、104c、106c、108c)が突出する前記スタックの前記側面に垂直な方向において、前記側面の少なくとも80%を完全に覆う、連続した金属層を形成することと、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項5~7のいずれか一項に記載のエネルギー蓄積素子。
【請求項9】
以下のさらなる特徴:
a.前記第1のコンタクトシート金属部材(119)が、溶接によって前記カソード集電体(101a)の前記自由なエッジストリップ(101c)に接続され、及び/又は前記第2のコンタクトシート金属部材(120)が、溶接によって前記アノード集電体(102a)の前記自由なエッジストリップ(102c)に接続されることと、
b.前記第1のコンタクトシート金属部材(119)が、前記カソード集電体(101a)の前記自由なエッジストリップ(101c)に機械的に接続され、及び/又は前記第2のコンタクトシート金属部材(120)が、前記アノード集電体の前記自由なエッジストリップ(102c)に機械的に接続されることと、
を有する、請求項1に記載のエネルギー蓄積素子。
【請求項10】
特徴:
a.エネルギー蓄積素子(100)が、カソード(101)及びアノード(102)を備え、前記カソード(101)及び前記アノード(102)が、前記カソード(101)及び前記アノード(102)がセパレータ又は固体電解質層(110)によって分離され、前記カソード(101)/前記セパレータ又は固体電解質層(110)/前記アノード(102)の順序で存在するアセンブリ(109)の一部であることと、
b.前記カソード(101)が、カソード集電体(101a)と、正極材料(117)と、を備えることと、
c.前記カソード集電体(101a)が、
前記正極材料(117)の層が両側に充填された主領域(101b)と、
前記カソード集電体(101a)のエッジに沿って延在し、前記正極材料(117)が充填されていない自由なエッジストリップ(101c)と、
を有することと、
d.前記アノード(102)が、アノード集電体(102a)と、負極材料(118)と、を備えることと、
e.前記アノード集電体(102a)が、
前記負極材料(118)の層が両側に充填された主領域(102b)と、
前記アノード集電体(102a)のエッジに沿って延在し、前記負極材料(118)が充填されていない自由なエッジストリップ(102c)と、
を有することと、
f.前記カソード集電体(101a)の前記自由なエッジストリップ(101c)が前記アセンブリ(109)の一方の側面(109a)から突出し、前記アノード集電体(102a)の前記自由なエッジストリップ(102c)が前記アセンブリ(109)の別の側面(109b)から突出するように、前記カソード(101)及び前記アノード(102)が、前記電極-セパレータアセンブリ(109)内で互いに対して形成及び/又は配置されることと、
g.前記エネルギー蓄積素子が、前記自由なエッジストリップ(101c、102c)の一方と直接接触する第1のコンタクトシート金属部材(119)と、前記自由なエッジストリップ(101c、102c)の他方と直接接触する第2のコンタクトシート金属部材(120)と、を備えることと、
を有する前記エネルギー蓄積素子(100)を製造する方法であって、
前記方法が、以下のステップ:
h.前記アセンブリ(109)が形成される前に、少なくとも1つのエッジストリップ(101c、102c)が、折り畳み及び/又は巻き上げ工程を受け、前記工程の結果として、前記少なくとも1つのエッジストリップ(101c、102c)が、電極材料(117、118)で両側をコーティングされた前記隣接する主領域(101b、102b)における前記関連するカソード(101)又はアノード(102)の厚さに少なくとも相当する厚さを有すること、
を含む、方法。
【請求項11】
以下の一連のステップ:
a.前記電極材料で両側をコーティングされた前記集電体(101a、102a)を設けることと、
b.前記エッジストリップ(101c、102c)の少なくとも1つが、前記折り畳み及び/又は巻き上げ工程を受け、少なくとも1つの折り畳まれた及び/又は巻き上げられたエッジストリップを得ることと、
c.前記少なくとも1つの折り畳まれた及び/又は巻き上げられたエッジストリップを含む、前記電極材料で両側がコーティングされた前記集電体(101a、102a)が、カレンダー工程を受けることと、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
以下のさらなる特徴:
a.前記折り畳み工程が、複数回の折り畳みを含むことと、
b.前記折り畳み工程が、多層エッジストリップを生じさせることと、
c.前記エッジストリップの目標とされる構造的弱体化が、前記折り畳み工程に先行することと、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超大電流を供給するのに適したエネルギー蓄積素子、及びそのようなエネルギー蓄積素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学エネルギー蓄積素子は、酸化還元反応により、蓄積された化学エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。電気化学エネルギー蓄積素子の最も単純な形態は、電気化学セルである。それは、セパレータによって互いに分離される正極及び負極を備える。放電中、電子は、酸化プロセスの結果として負極で放出される。これにより、外部の電気消費者(この外部の電気消費者のために、電気化学セルがエネルギー供給者として機能する)によって引き出され得る電子電流が生じる。同時に、電極反応に対応するイオン電流が、セル内で生じる。このイオン電流は、セパレータを横切り、イオン伝導性電解質によって可能となる。
【0003】
放電が可逆的である場合、すなわち、放電中に化学エネルギーの電気エネルギーへの変換を逆転させ、再びセルを充電することが可能である場合、これは、セカンダリセルと呼ばれる。セカンダリセルでは一般に、負極はアノードと呼ばれ、カソードとしての正極は、電気化学セルの放電機能を指す。
【0004】
リチウムイオンセカンダリセルは、大電流を供給することができ、比較的高いエネルギー密度を特徴とするため、現代の多くの用途のエネルギー蓄積素子として使用されている。リチウムイオンセカンダリセルは、リチウムの使用に基づき、リチウムは、イオンの形態でセルの電極間を行ったり来たり移動することができる。リチウムイオンセルの負極及び正極は一般に、電気化学的不活性成分及び電気化学的活性成分を含む、いわゆる複合電極によって形成される。
【0005】
原理上は、リチウムイオンを吸収及び放出できるすべての物質が、リチウムイオンセカンダリセルの電気化学的活性成分(活性物質)として使用され得る。例えば、グラファイトカーボンなどの炭素系粒子が負極に用いられる。正極用の活性物質は、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、又はこれらの誘導体であってもよい。電気化学的活性物質は、一般に粒子状で電極に含まれる。
【0006】
電気化学的不活性成分として、複合電極は一般に、それぞれの活性物質の担体として機能する平形及び/又はストリップ状の集電体(例えば金属箔)を含む。負極用の集電体(アノード集電体)は、例えば、銅又はニッケルでできていてもよく、正極用の集電体(カソード集電体)は、例えば、アルミニウムでできていてもよい。さらに、これらの電極は、電気化学的不活性成分として、電極バインダ(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又は別のポリマー、例えばカルボキシメチルセルロース)、導電性向上添加剤、及び他の添加剤を含み得る。電極バインダは、電極の機械的安定性を確保し、多くの場合、集電体に対する活性物質の接着性も確保する。
【0007】
電解液として、リチウムイオンセルは一般に、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)などのリチウム塩の有機溶媒(例えば、炭酸のエーテル及びエステル)溶液を含む。
【0008】
リチウムイオンセルを製造する際に、複合電極は、1つ又は複数のセパレータと組み合わされて、アセンブリを形成する。この工程では、電極及びセパレータは通常、加圧下で接続され、場合によってはラミネーション又はボンディングによって接続される。次に、アセンブリに電解液を含浸させることによって、セルの基本的機能を確立することができる。
【0009】
多くの実施形態では、アセンブリは、巻線状に形成され、又は巻線に加工される。代替的に、アセンブリは、電極のスタックであってもよい。
【0010】
自動車分野の用途、電動自転車の場合、又は工具などの高エネルギー要件を有する他の用途では、可能な限り高いエネルギー密度を有し、充電時及び放電時の大電流にも耐えることが可能なリチウムイオンセルが要求される。
【0011】
国際公開第2017/215900A1号パンフレットには、アセンブリがリボン状の電極から形成され、巻線状である円筒型セル(cylindrical round cell)が記載されている。各電極は、電極材料が充填された集電体を有する。正極の集電体の長手方向エッジが巻線の一方の側から突出し、負極の集電体の長手方向エッジが巻線の他方の側から突出するように、逆の極性を有する電極がアセンブリ内で互いにオフセットして配置される。集電体の電気的接触のために、セルは、巻線の端面に載置され、集電体の長手方向エッジに溶接によって接続されるコンタクトプレートを有する。これにより、集電体、ひいては関連する電極と、それらの全長にわたって電気的に接触することが可能となる。これにより、説明したセル内の内部抵抗が大幅に減少する。その結果、大電流の発生をはるかに良く吸収することができ、巻線からの熱をより良く放散することもできる。
【0012】
ここでの潜在的問題は、集電体のエッジが、コンタクトプレートが付与される際に、制御されないやり方で圧縮されることが多く、それにより、不定の折り目が生じ得ることである。これにより、端面とコンタクトプレートとの間の大面積のフォームフィット(form-fit)接触がより難しくなる。加えて、例えば電極間に位置するセパレータの損傷の結果として、端面の微細回路(fine circuit)又は短絡のリスクが高まる。
【0013】
この問題を解決するために、国際公開第2020/096973A1号パンフレットは、集電体のエッジを前処理すること、特に、形状が矩形となるように、集電体エッジの一部を除去することを提案している。
【0014】
集電体のエッジの目標とされる事前変形は、米国特許出願公開第2018/0190962A1号明細書及び特開2015-149499号公報から公知である。
【0015】
公知の解決策は、集電体エッジの前処理が非常に複雑であるという欠点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
これに対して、本発明の目的は、前記コンタクトプレートによってより簡単に接触させることができる、電極及び場合によっては1つ又は複数のセパレータのアセンブリを特徴とするエネルギー蓄積素子を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、独立請求項1の特徴を有するエネルギー蓄積素子によって達成される。請求項10の特徴を有する方法もまた、課題の解決に寄与する。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項において定義される。
【0018】
本発明によるエネルギー蓄積素子
本発明によるエネルギー蓄積素子は常に、次の特徴a.~h.を有する:
a.それが、カソード及びアノードを備え、カソード及びアノードが、それらが、セパレータ又は固体電解質層によって分離され、カソード/セパレータ又は固体電解質層/アノードの順序で存在するアセンブリの一部であること、
b.カソードが、カソード集電体と、正極材料と、を備えること、
c.カソード集電体が、
・正極材料の層が両側に充填された主領域と、
・カソード集電体の1つのエッジに沿って延在し、正極材料が充填されていない自由なエッジストリップと、
を有すること、
d.アノードが、アノード集電体と、負極材料と、を備えること、
e.アノード集電体が、
・負極材料の層が両側に充填された主領域と、
・アノード集電体の1つのエッジに沿って延在し、負極材料が充填されていない自由なエッジストリップと、
を有すること、
f.カソード集電体の自由なエッジストリップがアセンブリの一方の側面から突出し、アノード集電体の自由なエッジストリップがアセンブリの別の側面から突出するように、カソード及びアノードが、電極-セパレータアセンブリ内で互いに対して形成及び/又は配置されること、
g.エネルギー蓄積素子が、自由なエッジストリップの一方と直接接触する第1のコンタクトシート金属部材と、自由なエッジストリップの他方と直接接触する第2のコンタクトシート金属部材と、を備えること、
h.コンタクトシート金属部材の一方と直接接触しているエッジストリップの少なくとも1つが、折り畳み及び/又は巻き上げ(rolling-up)工程の結果として、電極材料で両側をコーティングされた隣接する主領域における関連するカソード又はアノードの厚さに少なくとも相当する厚さを有すること。
【0019】
したがって、本発明によるエネルギー蓄積素子は、特に、自由なエッジストリップが成形工程を受けた集電体をそれが有するという事実を特徴とする。これにより、コンタクトシート金属部材への集電体のより良好な接続が可能となり、その結果として、ハウジングへの電極の熱的接続及びセルの内部抵抗を低減することができる。加えて、集電体の折り畳まれた、又は巻き上げられたエッジストリップにより、コンタクトプレートが押し付けられたときに、エッジストリップの制御されない圧縮がより困難になるか、或いはそれが防止されるため、内部短絡のリスクも減少する。
【0020】
円筒形の設計
本発明によるエネルギー蓄積素子は、円筒型セルとして、又は角柱形として設計することができる。円筒形の実施形態では、それは、次の特徴a.~e.を有する:
a.電極と、集電体と、電極材料の層とが、リボン状であること、
b.それが、少なくとも1つのリボン状のセパレータ、又は少なくとも1つのリボン状の固体電解質層を備えること、
c.アセンブリが、電極及び少なくとも1つのセパレータが巻き取り軸の周りに螺旋状に巻かれた、円筒巻線の形状であり、アセンブリが、第1及び第2の端子端面と、巻線シェルと、を含み、カソード集電体の自由なエッジストリップが、第1の端面から突出し、アノード集電体の自由なエッジストリップが、第2の端面から突出すること、
d.それが、周方向ハウジングシェル、並びに端面において円形の底部及び蓋を備えた、円筒ハウジング、特に円筒金属ハウジングを備えること、
e.ハウジング内で、巻線として設計されたアセンブリが、巻線シェルが周方向ハウジングシェルの内側に当接するように軸方向にアライメントされること。
【0021】
この実施形態では、アセンブリは、好ましくは、1つのリボン状のセパレータ又は2つのリボン状のセパレータを備え、各リボン状のセパレータは、第1及び第2の長手方向エッジと、2つの端部とを有する。
【0022】
この実施形態では、コンタクトシート金属部材は、好ましくは、2つの端面上に平坦に載置される。
【0023】
この実施形態では、本発明によるエネルギー蓄積素子は、特に好ましくは、次の特徴a.を特徴とする:
a.金属ハウジングは、端子開口部を有するカップ状円筒ハウジング部と、カップ状ハウジング部の端子開口部を閉じる蓋構成要素とを備えること。
【0024】
好ましくは、蓋構成要素は、円周を有し、エッジが周方向の接触ゾーンに沿ってカップ状ハウジング部の内側に当接するようにカップ状ハウジング部の円形開口部内に配置され、蓋構成要素のエッジは、周方向の溶接線を介してカップ状ハウジング部に接続される。この場合、2つのハウジング部は、好ましくは同じ極性を有し、すなわちそれらは、正極又は負極のいずれかに電気的に結合される。この場合、ハウジングは、ハウジングに電気的に接続されていない電極と電気的に接触するために使用されるポールブッシングも備える。
【0025】
代替実施形態では、蓋構成要素のエッジに電気絶縁シールが装着され、これにより、蓋構成要素がカップ状ハウジング部から電気的に分離される。この場合、ハウジングは通常、圧着クロージャによって封止される。
【0026】
円筒型セルとして設計されたエネルギー蓄積素子の高さは、好ましくは50mm~150mmの範囲内である。円筒型セルの直径は、好ましくは15mm~60mmの範囲内である。これらのフォームファクタを有する円筒型セルは、自動車の電気駆動装置に電力を供給するのに特に適している。
【0027】
本発明によるセルが円筒型セルである実施形態において、アノード集電体、カソード集電体、及び1つ又は複数のセパレータは、好ましくは以下の寸法を有する:
-0.5m~25mの範囲内の長さ
-30mm~145mmの範囲内の幅。
【0028】
この実施形態において、コンタクトシート金属部材は、好ましくは円形の基本形状を有する。
【0029】
円筒形の実施形態の幾つかの好ましい変形形態において、本発明によるエネルギー蓄積素子は、次の特徴a.~d.のうちの少なくとも1つを特徴とする:
a.リボン状の正極、したがって第1の端面から突出したカソード集電体の自由なエッジストリップも、巻線において、半径方向の一連の隣接する巻を含むこと。
b.巻の各々が、折り畳み及び/又は巻き上げ工程の結果として厚くなったエッジストリップの部分を含む。
c.隣接する巻において、厚くなったエッジストリップの部分が、互いに直接接触していること。
d.カソード集電体の自由なエッジストリップが、第1の端面に垂直な、端面の少なくとも80%を覆う、連続した金属層を形成すること。
【0030】
好ましくは、直前の特徴a.~c.、特に好ましくは特徴a.~d.までもが、互いに組み合わせて実現される。
【0031】
この実施形態は、特に有利である。理想的には、連続した金属層は、第1の端面を完全に覆う閉じた層である。
【0032】
巻線の製造時に形成された隣接する巻は、異なる直径を有する。内側の巻は、常に外側の巻よりも直径が小さく、又は言い換えれば、巻線の直径は、巻線の巻ごとに外側に向かって大きくなる。
【0033】
円筒形の実施形態の幾つかのさらに特に好ましい変形形態において、本発明によるエネルギー蓄積素子は、次の特徴a.~d.のうちの少なくとも1つを特徴とする:
a.リボン状の負極、したがって第2の端面から突出したアノード集電体の自由なエッジストリップも、巻線において、半径方向の一連の隣接する巻を含むこと。
b.巻の各々が、折り畳み及び/又は巻き上げ工程の結果として厚くなったエッジストリップの部分を含むこと。
c.隣接する巻において、厚くなったエッジストリップの部分が互いに直接接触していること。
d.アノード集電体の自由なエッジストリップが、第2の端面に垂直な、端面の少なくとも80%を覆う、連続した金属層を形成すること。
【0034】
ここでも、直前の特徴a.~c.、特に好ましくは特徴a.~d.までもが、互いに組み合わせて実現されることが好ましい。
【0035】
角柱の設計
角柱の実施形態において、本発明によるエネルギー蓄積素子は、次の特徴a.~d.を特徴とする:
a.アセンブリが、カソード及びアノードが、他のカソード及び他のアノードと共に積み重ねられた角柱スタックの形状であること。
b.電極と、集電体と、電極材料の層とが、多角形、特に矩形であること。
c.それが、少なくとも1つのリボン状若しくは多角形の、特に矩形のセパレータ、又は少なくとも1つのリボン状若しくは多角形の、特に矩形の固体電解質を含むこと。
d.スタックが、角柱ハウジング内に収納されること。
【0036】
スタックにおいて、逆の極性を有する電極が常に、セパレータ又は固体電解質層によって互いに分離される。
【0037】
角柱ハウジングは、好ましくは、端子開口部を有するカップ状ハウジング部及び蓋構成要素で構成されている。この実施形態では、カップ状ハウジング部の底部及び蓋構成要素は、好ましくは多角形、特に好ましくは矩形のベースを有する。カップ状ハウジング部の端子開口部の形状は、底部及び蓋構成要素の形状に一致する。加えて、ハウジングは、底部と蓋構成要素とを互いに接続する幾つかの(好ましくは4つの)矩形側面部を含む。
【0038】
セパレータ層は、幾つかのセパレータによって形成することができ、各セパレータは、隣接する電極間に配置される。しかしながら、リボン状のセパレータがスタックの電極を互いに分離することも可能である。アノードとカソードとの間に幾つかのセパレータがある場合、これらのセパレータも、好ましくは多角形、特に矩形のベースエリアを有する。
【0039】
この実施形態では、コンタクトシート金属部材は、好ましくは矩形の基本形状を有する。
【0040】
角柱の実施形態の幾つかの好ましい変形形態では、本発明によるエネルギー蓄積素子は、次の特徴a.~d.のうちの少なくとも1つを特徴とする:
a.スタックの各カソードが、折り畳み及び/又は巻き上げ工程の結果として厚くなったエッジストリップを特徴とすること。
b.スタックの各アノードが、折り畳み及び/又は巻き上げ工程の結果として厚くなったエッジストリップを特徴とすること。
c.スタックのカソードのカソード集電体の自由なエッジストリップが、スタックの一方の側面から突出し、第1のコンタクトシート金属部材と直接接触すること。
d.スタックのアノードのアノード集電体の自由なエッジストリップが、スタックの別の側面から突出し、第2のコンタクトシート金属部材と直接接触すること。
【0041】
好ましくは、直前の特徴a.及びc.、並びにb.及びd.が、互いに組み合わせて実現される。特に好ましくは、特徴a.~d.が、互いに組み合わせて実現される。
【0042】
角柱の実施形態のさらに好ましい変形形態では、本発明によるエネルギー蓄積素子は、次の特徴a.~c.のうちの少なくとも1つを特徴とする:
a.カソード集電体の自由なエッジストリップが、互いに平行に配置されること。
b.カソード集電体の自由なエッジストリップのうち、隣接するエッジストリップが互いに直接接触すること。
c.カソード集電体の自由なエッジストリップが、それらが突出するスタックの側面に垂直な方向において、その側面の少なくとも80%を完全に覆う、連続した金属層を形成すること。
【0043】
好ましくは、直前の特徴a.及びb.、特に好ましくは特徴a.~c.までもが、互いに組み合わせて実現される。
【0044】
角柱の実施形態のさらに好ましい変形形態では、本発明によるエネルギー蓄積素子は、次の特徴a.~c.のうちの少なくとも1つを特徴とする:
a.アノード集電体の自由なエッジストリップが、互いに平行に配置されること。
b.アノード集電体の自由なエッジストリップのうち、隣接するエッジストリップが互いに直接接触すること。
c.アノード集電体の自由なエッジストリップが、それらが突出するスタックの側面に垂直な方向において、その側面の少なくとも80%を完全に覆う、連続した金属層を形成すること。
【0045】
好ましくは、直前の特徴a.及びb.、特に好ましくは特徴a.~c.までもが、互いに組み合わせて実現される。
【0046】
好ましい電気化学実施形態
本発明のさらに特に好ましい実施形態では、本発明によるエネルギー蓄積素子は、以下の特徴のうちの1つを特徴とする:
a.エネルギー蓄積素子は、リチウムイオンセルである。
b.エネルギー蓄積素子は、リチウムイオンセルを含む。
【0047】
特徴a.は、特に、円筒型セルとしての本発明によるエネルギー蓄積素子の記載された実施形態を指す。この実施形態において、エネルギー蓄積素子は、好ましくは、正確に1つの電気化学セルを含む。
【0048】
特徴b.は、特に、本発明によるエネルギー蓄積素子の記載された角柱の実施形態を指す。この実施形態では、エネルギー蓄積素子は、2つ以上の電気化学セルを含むことも可能である。
【0049】
基本的に、リチウムイオンセカンダリセルで知られている電極材料はすべて、エネルギー蓄積素子の電極に使用することができる。
【0050】
リチウムをインターカレートできるグラファイトカーボン又は非グラファイトカーボン材料などの炭素系粒子、好ましくは粒子状のものを、負極の活性物質として使用することができる。代替的又は追加的に、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)又はその誘導体も、負極に、好ましくは粒子状で含有させることができる。さらに、負極は、活性物質として、ケイ素、アルミニウム、スズ、アンチモン、又はリチウムを可逆的に蓄積及び放出することができるこれらの材料の化合物若しくは合金(例えば、酸化ケイ素)を含む群からの少なくとも1つの材料を、任意選択的に炭素系活性物質と組み合わせて含有することができる。スズ、アルミニウム、アンチモン、及びケイ素は、リチウムと金属間化合物相を形成することができる。リチウムを吸収する能力は、特にケイ素の場合、グラファイト又は同等の材料のものを何倍も上回る。金属リチウムでできた薄いアノードも可能である。
【0051】
正極に適した活性物質には、LiCoO2及びLiFePO4などのリチウム金属酸化物化合物及び金属リン酸リチウム化合物が含まれる。また、化学式LiNixMnyCozO2(式中、x+y+zは、一般的に1である)を有するリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、化学式LiMn2O4を有するリチウムマンガンスピネル(LMO)、又は化学式LiNixCoyAlzO2(式中、x+y+zは、一般的に1である)を有するリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)も特に適している。それらの誘導体、例えば、化学式Li1.11(Ni0.40Mn0.39Co0.16Al0.05)0.89O2を有するリチウムニッケルマンガンコバルトアルミニウム酸化物(NMCA)、又は(oder)Li1+xM-O化合物、及び/又は前述の材料の混合物も使用することができる。カソード活性物質はまた、好ましくは微粒子状で使用される。
【0052】
加えて、本発明によるエネルギー蓄積素子の電極は、好ましくは、電極バインダ及び/又は導電性を改善するための添加剤を含有する。活性物質は、好ましくは、電極バインダのマトリクス中に埋め込まれ、マトリクス中の隣接する粒子は、好ましくは互いに直接接触している。導電剤は、電極の導電性を高める機能を有する。一般的な電極バインダは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリレート、又はカルボキシメチルセルロースをベースとしている。一般的な導電剤は、カーボンブラック及び金属粉末である。
【0053】
本発明によるエネルギー蓄積素子は、好ましくは電解質、特にリチウムイオンセルの場合には、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)などの少なくとも1つのリチウム塩をベースとした電解質を含み、これは、有機溶媒(例えば、有機カーボネートの混合物、又はTHF若しくはニトリルなどの環状エーテル)に溶解して存在する。使用可能な他のリチウム塩は、例えば、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、及びリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)である。
【0054】
円筒型セルとして設計された本発明によるリチウムイオン系エネルギー蓄積素子の公称容量は、好ましくは最大で90000mAhである。21×70のフォームファクタの場合、リチウムイオンセルとしての一実施形態におけるエネルギー蓄積素子は、好ましくは1500mAh~7000mAhの範囲内の公称容量、特に好ましくは3000~5500mAhの範囲内の公称容量を有する。18×65のフォームファクタの場合、リチウムイオンセルとしての一実施形態におけるセルは、好ましくは1000mAh~5000mAhの範囲内、特に好ましくは2000~4000mAhの範囲内の公称容量を有する。
【0055】
欧州連合では、二次電池の公称容量に関する製造業者情報は、厳しく規制されている。例えば、ニッケルカドミウム二次電池の公称容量に関する情報は、IEC/EN 61951-1及びIEC/EN 60622規格に従った測定値に基づいていなければならず、ニッケル水素二次電池の公称容量に関する情報は、IEC/EN 61951-2規格に従った測定値に基づいていなければならず、リチウム二次電池の公称容量に関する情報は、IEC/EN 61960規格に従った測定値に基づいていなければならず、鉛酸蓄電池の公称容量に関する情報は、IEC/EN 61056-1規格に従った測定値に基づいていなければならない。本出願における公称容量に関するいずれの情報も、好ましくは、これらの規格に基づく。
【0056】
セパレータ及び固体電解質の好ましい実施形態
好ましくは、1つ又は複数のセパレータは、電気絶縁性プラスチックフィルムから形成される。セパレータは、電解液が浸透できることが好ましい。このために、使用されるプラスチックフィルムは、例えば、ミクロ細孔を有してもよい。箔は、例えばポリオレフィン又はポリエーテルケトンから成ってもよい。プラスチック材料でできた不織布及び織物、又は他の電気絶縁性の織物も、セパレータとして使用することができる。5μm~50μmの範囲内の厚さを有するセパレータが好ましい。
【0057】
特にエネルギー蓄積素子の角柱の実施形態において、アセンブリの1つ又は複数のセパレータはまた、固体電解質の1つ又は複数の層であってもよい。
【0058】
固体電解質は、例えば、ポリマー-導電性塩複合体をベースとしたポリマー固体電解質であり、これは、液体成分を含まない単相で存在する。ポリマー固体電解質は、ポリマーマトリクスとして、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレングリコール(PEG)、又はポリメチルメタクリレート(PMMA)を有し得る。リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホニルイミド(LiTFSI)、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)、及びリチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)などのリチウム導電性塩をこれらに溶解させることができる。
【0059】
巻線として形成されたアセンブリの好ましい構造
リボン状のアノード、リボン状のカソード、及びリボン状のセパレータは、好ましくは、巻線として形成されたアセンブリにおいて螺旋状に巻かれている。アセンブリを製造するために、リボン状の電極は、リボン状のセパレータと共に巻き取りデバイスに供給され、好ましくは、巻き取りデバイスにおいて巻き取り軸の周りに螺旋状に巻き上げられる。幾つかの実施形態では、電極及びセパレータは、この目的のために、円筒形又は中空円筒形の巻芯上に巻かれ、この巻芯は、巻き取りマンドレル上に設置され、巻き取り後も巻線に残る。
【0060】
巻線シェルは、例えば、プラスチックフィルム又は粘着テープによって形成されてもよい。巻線シェルが1つ又は複数のセパレータ巻線によって形成されることも可能である。
【0061】
集電体の好ましい実施形態
エネルギー蓄積素子の集電体は、可能な限り広いエリアにわたって、それぞれの電極材料に含有される電気化学的活性成分と電気的に接触する機能を有する。好ましくは、集電体は、金属から成るか、又は少なくとも表面上で金属化されている。リチウムイオン技術に基づくエネルギー蓄積素子の場合、アノード集電体に適した金属には、銅又はニッケル又は他の導電性材料、特に銅及びニッケルの合金、又はニッケル被覆金属が含まれる。ステンレス鋼も、選択肢の1つである。リチウムイオン技術に基づくエネルギー蓄積素子の場合、カソード集電体の金属として、アルミニウム、又はアルミニウム合金を含む他の導電性材料が、特に適している。
【0062】
好ましくは、アノード集電体及び/又はカソード集電体はそれぞれ、4μm~30μmの範囲の厚さを有する金属箔であり、円筒型セルとしてのエネルギー蓄積素子の記載された構成の場合には、4μm~30μmの範囲内の厚さを有するリボン状の金属箔である。
【0063】
しかしながら、箔に加えて、金属若しくは金属化不織布、又は開孔金属発泡体、又はエキスパンドメタルなどの他のストリップ状基材も、集電体として使用することができる。
【0064】
円筒型セルとしてのエネルギー蓄積素子の記載された構成の場合、セパレータの長手方向エッジが、巻線として設計されたアセンブリの端面を形成することが好ましい。
【0065】
エネルギー蓄積素子の記載された角柱の構成の場合、セパレータのエッジが、集電体の自由なエッジストリップが突出するスタックの側面を形成することが好ましい。
【0066】
巻線の端子端面又はスタックの側面から突出した集電体の自由なエッジストリップは、端面又は側面から5500μmを超えて、好ましくは4000μmを超えて突出しないことがさらに好ましい。
【0067】
特に好ましくは、アノード集電体の自由なエッジストリップは、3000μm以下、特に好ましくは、2000μm以下だけスタックの側面又は巻線の端面から突出する。特に好ましくは、カソード集電体の自由なエッジストリップは、4000μm以下、特に好ましくは3000μm以下だけスタックの側面又は巻線の端面から突出する。
【0068】
第1のコンタクトシート金属部材/アノード集電体への第1のコンタクトシート金属部材の接続の好ましい実施形態
第1のコンタクトシート金属部材は、好ましくはアノード集電体に電気的に接続される。特に好ましくは、溶接によってアノード集電体の自由なエッジストリップに直接接続される。
【0069】
追加的に、又は代替実施形態において、第1のコンタクトシート金属部材は、例えば、プレス接続、又はクランプ接続、又はばね接続によって、アノード集電体の自由なエッジストリップに機械的に接続することもできる。
【0070】
本発明の特に好ましい実施形態では、第1のコンタクトシート金属部材は、次の特徴a.又はb.の少なくとも1つを特徴とする:
a.コンタクトシート金属部材が、ニッケル、又は銅、又はチタン、又はニッケル若しくは銅若しくはチタン合金、又はステンレス鋼から成ること。
b.コンタクトシート金属部材が、アノード集電体と同じ材料から成ること。
【0071】
直前の特徴a.及びb.が、互いに組み合わせて実現されることが好ましい。
【0072】
コンタクトシート金属部材は、ハウジングに電気的に接続されるか、又はハウジングを貫通し、ハウジングから電気的に絶縁されたコンタクトポールに電気的に接続される。電気的接触は、溶接又は機械的接続によって実現することができる。必要に応じて、別個の導電体を介して電気的接続を行うこともできる。
【0073】
本発明のさらに特に好ましい実施形態において、第1のコンタクトシート金属部材は、次の特徴a.~g.のうちの少なくとも1つを特徴とする:
a.コンタクトシート金属部材が、50μm~600μmの範囲内、好ましくは150μm~350μmの範囲内の好ましくは均一な厚さを有すること。
b.コンタクトシート金属部材が、2つの対向する平坦な側面を有し、基本的に一次元においてのみ延在すること。
c.コンタクトシート金属部材が、円板、又は好ましくは矩形のプレートであること。
d.コンタクトシート金属部材が、それに接続されたアノード集電体の自由なエッジストリップが現れる側面又は端面の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%をそれが覆うような大きさにされること。
e.コンタクトシート金属部材が、少なくとも1つのアパーチャ、特に少なくとも1つの穴及び/又は少なくとも1つのスロットを有すること。
f.コンタクトシート金属部材が、少なくとも1つのビードを有し、これは、コンタクトシート金属部材の一方の平坦な側面上に細長いくぼみとして現れ、反対側の平坦な側面上に細長い隆起として現れ、コンタクトシート金属部材が、細長い隆起を有する平坦な側面で、アノード集電体の自由なエッジストリップ上に載置されること。
g.コンタクトシート金属部材が、ビードの領域で、特にビード内に配置された1つ又は複数の溶接線を介して、アノード集電体の自由なエッジストリップに溶接されること。
【0074】
直前の特徴a.及びb.及びd.が互いに組み合わせて実現されることが特に好ましい。好ましい実施形態では、特徴a.及びb.及びd.は、特徴c.又はe.の1つ、又は特徴f.及びg.と組み合わせて実現される。特に好ましくは、すべての特徴a.~g.が互いに組み合わせて実現される。
【0075】
端面を可能な限り多く覆うことは、接地エネルギー蓄積素子の熱管理にとって重要である。覆いが大きいほど、アノード集電体の第1のエッジに全長にわたって接触することがより簡単になる。したがって、アセンブリ内で生じた熱を、コンタクトシート金属部材を介して上手く放散することができる。
【0076】
例えば、アセンブリに電解液を含浸させることができるためには、コンタクトシート金属部材の少なくとも1つのアパーチャが役立ち得る。
【0077】
第2のコンタクトシート金属部材/カソード集電体への第2のコンタクトシート金属部材の接続の好ましい実施形態
第2のコンタクトシート金属部材は、好ましくはカソード集電体に電気的に接続される。特に好ましくは、それは、溶接によってカソード集電体の自由なエッジストリップに直接接続される。
【0078】
しかしながら、代替実施形態では、第2のコンタクトシート金属部材は、例えば、プレス接続、ばね接続、又はクランプ接続によって、カソード集電体の自由なエッジストリップに機械的に接続することもできる。
【0079】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明によるエネルギー蓄積素子は、次の特徴a.を特徴とする:
a.第2のコンタクトシート金属部材が、アルミニウム又はアルミニウム合金から成ること。
【0080】
コンタクトシート金属部材は、ハウジングに電気的に接続されるか、又はハウジングを貫通し、ハウジングから電気的に絶縁されたコンタクトポールに電気的に接続される。電気的接触は、溶接又は機械的接続によって実現することができる。必要に応じて、別個の導電体を介して電気的接続を行うこともできる。
【0081】
第2のコンタクトシート金属部材は、好ましくは、その材料組成は別として、アノード集電体の自由なエッジストリップ上にあるコンタクトシート金属部材と同様である。それは、好ましくは、次の特徴a.~g.のうちの少なくとも1つを特徴とする:
a.第2のコンタクトシート金属部材が、50μm~600μmの範囲内、好ましくは150μm~350μmの範囲内の好ましくは均一な厚さを有すること。
b.第2のコンタクトシート金属部材が、2つの対向する平坦な側面を有し、基本的に一次元においてのみ延在すること。
c.第2のコンタクトシート金属部材が、円板、又は好ましくは矩形のプレートであること。
d.第2のコンタクトシート金属部材が、カソード集電体の自由なエッジストリップが現れる側面又は端面の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%をそれが覆うような大きさにされること。
e.第2のコンタクトシート金属部材が、少なくとも1つのアパーチャ、特に少なくとも1つの穴及び又は少なくとも1つのスロットを有すること。
f.第2のコンタクトシート金属部材が、少なくとも1つのビードを有し、これは、コンタクトシート金属部材の一方の平坦な側面上に細長いくぼみとして現れ、反対側の平坦な側面上に細長い隆起として現れ、コンタクトシート金属部材が、細長い隆起を有する平坦な側面で、カソード集電体の自由なエッジストリップ上に載置されること。
g.第2のコンタクト金属部材が、ビードの領域で、特にビード内に配置された1つ又は複数の溶接線を介して、カソード集電体の自由なエッジストリップに溶接されること。
【0082】
ここでも、直前の特徴a.及びb.及びd.が互いに組み合わせて実現されることが特に好ましい。好ましい実施形態では、特徴a.及びb.及びd.は、特徴c.又はe.の1つ、又は特徴f.及びg.と組み合わせて実現される。特に好ましい実施形態ではまた、すべての特徴a.~g.が、互いに組み合わせて実現される。
【0083】
第2のコンタクトシート金属部材へのカソード集電体の自由なエッジストリップの接続又は溶接は、好ましくは、上記のアノード集電体の自由なエッジストリップの接続と同じやり方で、すなわち、特に好ましくは、ビードの領域内の溶接部を介して実現される。
【0084】
好ましい実施形態では、第2のコンタクトシート金属部材は、カップ状ハウジング部の底部又は底部の一部に直接溶接される。さらに好ましい実施形態では、第2のコンタクトシート金属部材は、別個の電流導体を介してカップ状ハウジング部の底部に接続される。後者の場合、別個の電流導体は、カップ状ハウジング部の底部及び第2のコンタクトシート金属部材の両方に溶接されることが好ましい。別個の電流導体は、好ましくはアルミニウム又はアルミニウム合金から成る。
【0085】
ハウジング部の好ましい実施形態
本発明のさらに特に好ましい実施形態では、本発明によるエネルギー蓄積素子は、次の特徴a.及びb.のうちの少なくとも1つを特徴とする:
a.カップ状ハウジング部が、アルミニウム、ステンレス鋼、又はニッケルめっき鋼から成ること。
b.蓋構成要素が、アルミニウム、ステンレス鋼、又はニッケルめっき鋼から成ること。
【0086】
直前の特徴a.及びb.は、特に好ましくは組み合わせて実現される。
【0087】
幾つかの実施形態では、ハウジングへのカソード集電体の自由なエッジストリップの直接的な接続が望ましい。このために、自由なエッジストリップは、例えばレーザを用いてカップ状ハウジング部の底部に溶接することができる。この場合、カップ状ハウジング部の底部は、第2のコンタクトプレートとして機能する。
【0088】
逆に、幾つかの実施形態では、第1のコンタクトプレートが蓋構成要素として機能すること、すなわち、ハウジングの一部として機能することが定められてもよい。
【0089】
電極の好ましい実施形態
本発明のさらに特に好ましい実施形態では、本発明によるエネルギー蓄積素子は、次の特徴a.又はb.のうちの1つを特徴とする:
a.本発明によるエネルギー蓄積素子が、円筒型セルとして設計され、その電極が、40μm~300μmの範囲内、好ましくは40μm~100μmの範囲内の厚さを有すること。
b.本発明によるエネルギー蓄積素子が、角柱状であり、その電極が、40μm~1000μmの範囲内の厚さ、好ましくは、>100μmから最大300μmの厚さを有すること。
【0090】
本発明による方法
本発明による方法は、上記のエネルギー蓄積素子、特に以下の特徴を有するエネルギー蓄積素子を製造するために使用される:
a.それが、カソード及びアノードを備え、カソード及びアノードが、それらが、セパレータ又は固体電解質層によって分離され、カソード/セパレータ又は固体電解質層/アノードの順序で存在するアセンブリの一部であること、
b.カソードが、カソード集電体と、正極材料と、を備えること、
c.カソード集電体が、
・正極材料の層が両側に充填された主領域と、
・カソード集電体の1つのエッジに沿って延在し、正極材料が充填されていない自由なエッジストリップと、
を有すること、
d.アノードが、アノード集電体と、負極材料と、を備えること、
e.アノード集電体が、
・負極材料の層が両側に充填された主領域と、
・アノード集電体の1つのエッジに沿って延在し、負極材料が充填されていない自由なエッジストリップと、
を有すること、
f.カソード集電体の自由なエッジストリップがアセンブリの一方の側面から突出し、アノード集電体の自由なエッジストリップがアセンブリの別の側面から突出するように、カソード及びアノードが、電極-セパレータアセンブリ内で互いに対して形成及び/又は配置されること、
g.エネルギー蓄積素子が、自由なエッジストリップの一方と直接接触する第1のコンタクトシート金属部材と、自由なエッジストリップの他方と直接接触する第2のコンタクトシート金属部材と、を備えること。
【0091】
製造されるエネルギー蓄積素子の個々の構成要素の好ましい実施形態に関して、本発明によるエネルギー蓄積素子の説明に関連して上記の説明を参照する。
【0092】
この方法は、特に以下のステップを特徴とする:
h.アセンブリが形成される前に、少なくとも1つのエッジストリップが、折り畳み及び/又は巻き上げ工程を受け、その結果として、それが、電極材料で両側をコーティングされた隣接する主領域における関連するカソード又はアノードの厚さに少なくとも相当する厚さを有すること。
【0093】
別の特に好ましい実施形態において、本方法は、追加的に、次のステップa.~c.の組み合わせを特徴とする:
a.電極材料で両側をコーティングされた集電体を設けること。
b.少なくとも1つの折り畳まれた及び/又は巻き上げられたエッジストリップを維持しながら、集電体の少なくとも1つのエッジストリップの少なくとも1つ、好ましくは、各集電体の1つのエッジストリップが、折り畳み及び/又は巻き上げ工程を受けること。
c.少なくとも1つの折り畳まれた及び/又は巻き上げられたエッジストリップを含む、電極材料で両側がコーティングされた集電体が、カレンダー工程を受けること。
【0094】
カレンダー工程中に、それぞれの電極材料の層が、集電体の主領域において、1つ又は複数のカレンダーローラによって加工され、層が圧縮される。それらの厚さは、この工程で減少する。好ましくは、カレンダー工程中に、電極材料の層と、折り畳まれた又は巻き上げられたエッジストリップが、全く同一のカレンダーローラを用いて同時に処理される。
【0095】
この時点で、本発明のさらなる、特に有利な態様に言及することが役に立つ。集電体上の電極材料の層をカレンダーにかける際の問題の1つは、カレンダー加工中に生じる圧力が、電極材料の層の厚さを減少させるだけでなく、層によって覆われた主領域の集電体の厚さも減少させることである。これらは、カレンダーローラを通り抜ける際に、通過方向に引き伸ばされる。対照的に、自由なエッジストリップからの範囲内の集電体は、古典的には、カレンダー加工中にカレンダーローラによってカバーされない。その結果、長さは変化しない。集電体内で蓄積される応力により、このような工程に従って製造された電極の湾曲が生じることが多い(「キャンバー効果」として知られる)。これは、例えば電極巻線の製造において問題を引き起こす場合がある。また、電極材料の層と、本発明に従って折り畳まれた又は巻き上げられたエッジストリップとの同時カレンダー加工により、自由なエッジストリップの集電体の引き伸ばしも引き起こされ得る(これらが、折り畳み及び/又は巻き上げ工程の結果として、電極材料の層の厚さを超える厚さを有する場合があるため)。その結果、集電体内で蓄積される前述の応力は、より低い程度でのみ生じるか、又は全く生じなくなり得る。
【0096】
さらに特に好ましい実施形態において、本方法は、追加的に、以下の特徴の少なくとも1つを特徴とする:
a.折り畳み工程が、複数回の折り畳みを含むこと。
b.折り畳み工程が、多層エッジストリップを生じさせること。
c.エッジストリップの目標とされる構造的弱体化が、折り畳み工程に先行すること。
【0097】
1つ又は複数の細長い、好ましくは平行なビード又は他の弱体化ラインを自由なエッジストリップに導入することが好ましい場合がある。これらは、集電体の構造を弱体化し、1つ又は複数のビードに沿った、及びストリップ状の主領域と平行な、エッジストリップの目標とされる折り畳みを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0098】
本発明のさらなる特徴及び利点は、特許請求の範囲と、図面と併せた本発明の好ましい例の以下の記載から明らかである。個々の特徴は、個々に、又は互いに組み合わせて実現されてもよい。図面は、概略的に以下を示す。
【
図1】コンタクトプレートが集電体の突出したエッジに押し付けられている、先行技術のセルを通る断面の図。
【
図2】電極材料で両側をコーティングされたカソード集電体(上面図及び断面)。
【
図3】電極材料で両側をコーティングされたアノード集電体(上面図及び断面)。
【
図4】本発明によるエネルギー蓄積素子用の電極であり、そのエッジストリップが、巻き上げ工程の結果、電極材料で両側をコーティングされた主領域における電極の厚さに相当する厚さを有する(断面図)。
【
図5】本発明によるエネルギー蓄積素子用の電極であり、そのエッジストリップが、複数回の折り畳みの結果、電極材料で両側をコーティングされた主領域における電極の厚さの約2倍に相当する厚さを有する(断面図)。
【
図6】本発明によるエネルギー蓄積素子用の電極の好ましい実施形態の製造(断面図)。
【
図7】カソード及びアノードを螺旋状に巻くことによって形成された円筒アセンブリの幾つかの巻を通る断面。
【
図8】カソード及びアノードを螺旋状に巻くことによって形成された別の円筒アセンブリの幾つかの巻を通る断面。
【
図9】角柱アセンブリと、そのためのハウジングとを備えた、本発明によるエネルギー蓄積素子(同じく断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0099】
図1は、負極と、正極と、その間のセパレータ(図面には不図示)とから成るアセンブリ203の一方の側面から突出した集電体の突出エッジ202にコンタクトプレート201を押し付けた結果を示している。押し付け時に、集電体のエッジ202の制御されない圧縮が生じている。この圧縮は、その結果として、エッジ202の右側の領域で特にはっきりと見られるように、幾つかの不定の折り目を生じさせる。これにより、集電体エッジ202とコンタクトプレート201との間の大面積のフォームフィット接触がより難しくなる。
【0100】
図2は、正極材料117の層が付与されたストリップ状のカソード集電体101aを、一方では上方からの平面図で示し、他方では断面図(S1に沿った断面)で示す。集電体101は、好ましくはアルミニウム箔である。
【0101】
ストリップ状の集電体101aは、電極材料117が充填された主領域101bと、電極材料を含まないストリップ状のエッジストリップ101cとを含む。
【0102】
図3は、負極材料118の層が付与されたストリップ状のアノード集電体102aを、一方では上方からの平面図で示し、他方では断面図(S2に沿った断面)で示す。集電体101は、好ましくは銅箔である。
【0103】
ストリップ状の集電体102aは、電極材料118が充填されたストリップ状の主領域102bと、電極材料を含まない、ストリップ状の材料を含まないエッジストリップ102cとを含む。
【0104】
図4は、本発明によるエネルギー蓄積素子用の正極101の一実施形態を示し、そのエッジストリップ101cは、巻き上げ工程の結果、厚さD1を有し、これは、電極材料117で両側をコーティングされた主領域101bにおける電極101の厚さD2に相当する。集電体101aは、好ましくはアルミニウム箔である。
【0105】
本発明によるエネルギー蓄積素子の負極は、構造的には同一であり、使用される電極材料及び集電体の材料においてのみ、示された正極とは異なってもよい。
【0106】
図5は、本発明によるエネルギー蓄積素子用の正極101の一実施形態を示し、そのエッジストリップ101cは、複数回の折り畳みの結果、厚さD1を有し、これは、電極材料117で両側をコーティングされた主領域101bにおける電極101の厚さD2の約2倍に相当する。集電体101aは、好ましくはアルミニウム箔である。
【0107】
本発明によるエネルギー蓄積素子用の負極は、構造的に同一であり、使用される電極材料においてのみ、示された正極とは異なってもよい。
【0108】
図6は、本発明によるエネルギー蓄積素子用の正極101の好ましい実施形態の製造を示す。このために、第1のステップAにおいて、正極材料117の層が両側に付与されたストリップ状のカソード集電体101aが設けられる(断面で示される)。カソード集電体101aは、好ましくはアルミニウム箔である。
【0109】
ストリップ状の集電体101aは、電極材料117が充填されたストリップ状の主領域101bと、電極材料を含まないストリップ状のエッジストリップ101cとを含む。互いに平行に伸びる3つの細長いビード101dが、自由なエッジストリップ101cに巻き込まれている。これらは、集電体101aの構造を弱体化し、ビードに沿った、及びストリップ状の主領域101bと平行なエッジストリップ101cの目標とされる折り畳みを可能にする。これらの折り畳みは、Bに示す結果をもたらす。
【0110】
さらなるステップCにおいて、Bで示した電極材料117でコーティングされた集電体が、カレンダーステップを受ける。ここで、電極材料117がコーティングされた主領域101bと、複数回折り畳まれたエッジ領域101cとが、同じ厚さD1に調整される。
【0111】
本発明によるエネルギー蓄積素子用の負極は、同じ手順を用いて製造することができる。
【0112】
図7は、リボン状のカソード101及びリボン状のアノード102を螺旋状に巻くことによって形成された円筒アセンブリ109の幾つかの巻を通る断面を示す。アセンブリ109内では、カソード101及びアノード102は、2つのリボン状のセパレータ又は固体電解質層110及び111によって互いに分離される。
【0113】
アセンブリ109の円筒巻線は、第1の端子端面109a及び第2の端子端面109bを有する。カソード集電体の自由なエッジストリップ101cは、第1の端面109aから突出し、アノード集電体の自由なエッジストリップ102cは、第2の端面109bから突出する。
【0114】
複数回の折り畳みの結果、正極101のエッジストリップ101cは、電極材料117で両側をコーティングされた主領域101bにおける電極101の厚さに相当する厚さを有する。集電体101aは、好ましくはアルミニウム箔である。
【0115】
複数回の折り畳みの結果、負極102のエッジストリップ102cは、電極材料118で両側をコーティングされた主領域102bにおける電極102の厚さに相当する厚さを有する。集電体102aは、好ましくは銅箔である。
【0116】
図8は、リボン状のカソード101及びリボン状のアノード102を螺旋状に巻くことによって形成された円筒アセンブリ109の幾つかの巻を通る断面を示す。アセンブリ109内では、カソード101及びアノード102は、2つのリボン状のセパレータ又は固体電解質層110及び111によって互いに分離される。巻線は、正極101及び負極102の一連の巻で構成されている。
【0117】
アセンブリ109の円筒巻線は、第1の端子端面109a及び第2の端子端面109bを有する。カソード集電体の自由なエッジストリップ101cは、第1の端面109aから突出し、アノード集電体の自由なエッジストリップ102cは、第2の端面109bから突出する。
【0118】
巻き工程の結果、正極101のエッジストリップ101cは、電極材料117で両側をコーティングされた主領域101bにおける電極101の厚さの2倍に相当する厚さを有する。集電体101aは、好ましくはアルミニウム箔である。
【0119】
巻き工程の結果、負極102のエッジストリップ102cは、電極材料118で両側をコーティングされた主領域102bにおける電極102の厚さの2倍に相当する厚さを有する。集電体102aは、好ましくは銅箔である。
【0120】
巻線は、正極101及び負極102の一連の巻で構成されており、正極101の巻の各々が、巻き工程の結果として厚くなったエッジストリップ101cの一部を含み、負極102の巻きの各々が、巻き工程の結果として厚くなったエッジストリップ102cの一部を含む。
【0121】
エッジストリップ101c及び102cの領域における電極の厚さが比較的大きいため、厚くなったエッジストリップ102cの部分は、隣接する巻で互いに直接接触する。
【0122】
したがって、集電体の自由なエッジストリップ101c及び102cは、それぞれの端面の大部分を覆う、視線方向において端面109a及び109bに垂直な連続した金属層を形成する。
【0123】
図9は、本発明によるエネルギー蓄積素子100を示す。それは、角柱アセンブリ109及び角柱ハウジング125を備える。角柱ハウジング125は、カップ状ハウジング部128と、蓋構成要素129とで構成されている。溶接によってコンタクトシート金属部材120に接続されたコンタクトポール126は、蓋構成要素129を通って案内される。コンタクトポール126は、絶縁要素127によって蓋構成要素129から電気的に絶縁される。コンタクトシート金属部材119は、ハウジング部128の底部に溶接される。
【0124】
ハウジング部は、角柱スタック形状のアセンブリ109を中に含む。正極101、103、105、及び107、並びに負極102、104、106、及び108は、それぞれセパレータ層110、111、112、113、114、115、及び116によって分離されてスタック状に積み重ねられている。各電極は、矩形の基本形状を有する。
【0125】
正極の自由なエッジストリップ101c、103c、105c、及び107c、並びに負極の自由なエッジストリップ102c、104c、106c、及び108cは、
図7に従って形成される。したがって、それらのエッジストリップは、複数回の折り畳みの結果、厚さが増している。
【0126】
自由なエッジストリップ101c、103c、105c、107cは、角柱スタックの一方の側面から突出し、すべてコンタクトシート金属部材119と直接接触している。自由なエッジストリップ102c、104c、106c、及び108cは、角柱スタックの反対の側面から突出し、すべてコンタクトシート金属部材120と直接接触している。
【国際調査報告】