(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-30
(54)【発明の名称】検出装置、遺伝子配列決定システム、および検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525413
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 CN2021128444
(87)【国際公開番号】W WO2023077306
(87)【国際公開日】2023-05-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516122667
【氏名又は名称】深▲セン▼華大智造科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MGI Tech Co.,LTD
【住所又は居所原語表記】Main Building and Second Floor of No.11 Building,Beishan Industrial Zone,Yantian District,Shenzhen,Guangdong 518083,China
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】韋 毅
(72)【発明者】
【氏名】黄 怡
(72)【発明者】
【氏名】姜 鶴鳴
(72)【発明者】
【氏名】楊 斌
(72)【発明者】
【氏名】温 欣
(72)【発明者】
【氏名】黄 恒
(72)【発明者】
【氏名】曹 明友
(72)【発明者】
【氏名】▲ダン▼ 茜
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043EA01
2G043FA01
2G043HA05
2G043HA09
2G043JA02
2G043KA09
2G043LA03
2G043NA01
(57)【要約】
本開示は、検出装置、システム、および方法を提供し、検出の技術分野に属する。前記検出装置は、ビーム分割装置と、第1ダイクロイックミラーと、対物レンズと、蛍光誘導装置と、複数の撮像装置を含む撮像システムとを含む。前記ビーム分割装置は、光ファイバーからのレーザによって形成される複数の異なる波長の入射光線を受光して分割し、前記入射光線の前記複数の異なる波長に対応し前記ビーム分割装置から異なる出射方向に出射される複数の励起ビームを形成し、前記第1ダイクロイックミラーは、前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起レーザを受光してそれらを前記対物レンズに伝達し、複数の蛍光を受光してそれらを前記蛍光誘導装置に伝送し、前記対物レンズは、前記複数の励起レーザを受光してそれらを前記サンプルの前記複数の異なる領域にそれぞれ集光させて蛍光を励起し、前記複数の蛍光を第1ダイクロイックミラーに伝送し、前記蛍光誘導装置は、前記第1ダイクロイックミラーを介して伝送された前記複数の蛍光を受光し、前記複数の蛍光を前記複数の撮像装置にそれぞれ誘導する。本開示は、検出持続時間を増加させることなく、サンプル上のレーザの出力密度を低減することができ、「高速」および「高検出品質および長い読み取り長」の2つの側面が関連技術においてうまく両立できないという問題を解決することができる。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム分割装置と、第1ダイクロイックミラーと、対物レンズと、蛍光誘導装置と、複数の撮像装置を含む撮像システムとを含み、
前記ビーム分割装置は、光ファイバーからの複数の異なる波長の入射光線を受光して分割し、前記入射光線の前記複数の異なる波長に対応し前記ビーム分割装置から異なる出射方向に出射される複数の励起光線を形成し、前記励起光線の各々が前記入射光線の前記複数の異なる波長と1対1に対応する波長を有するように構成され、
前記第1ダイクロイックミラーは、前記入射光線の前記複数の異なる波長と1対1に対応し前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起光線を受光し、前記複数の励起光線を前記対物レンズに伝送して前記複数の励起光線を前記対物レンズを通して被検出サンプルの複数の異なる領域にそれぞれ集光させて、前記複数の励起光線がそれぞれ集光された前記サンプルの前記複数の異なる領域において複数の蛍光を励起し、前記複数の励起光線によってそれぞれ励起された前記複数の蛍光を受光して前記複数の蛍光を前記蛍光誘導装置に伝送するように配置され、
前記対物レンズは、前記第1ダイクロイックミラーによって伝送された前記複数の励起光線を受光し、前記複数の励起光線をそれぞれ前記サンプルの前記複数の異なる領域に集光させ、前記複数の励起光線によって励起された前記複数の蛍光をそれぞれ前記第1ダイクロイックミラーに伝送するように配置され、
前記蛍光誘導装置は、前記第1ダイクロイックミラーによって伝送された前記複数の蛍光を受光し、前記複数の蛍光を前記複数の撮像装置にそれぞれ誘導し、前記複数の蛍光の各蛍光を前記蛍光に対応する前記複数の撮像装置のうちの1つによって撮像するように配置され、
前記複数の撮像装置の各々は、前記蛍光誘導装置によって誘導された前記複数の蛍光のうちの1つの蛍光を受光し、前記蛍光を撮像して検出用の蛍光に対応する蛍光情報を得るように配置される、検出装置。
【請求項2】
さらに、異なる波長の複数の励起光を生成するように構成された少なくとも1つの光源を含み、
前記光ファイバーは、前記少なくとも1つの光源から前記異なる波長の複数の励起光を受光し、前記複数の異なる波長の入射光線を形成し、前記複数の異なる波長の入射光線を前記ビーム分割装置に伝送するように配置される、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光源は、それぞれ前記異なる波長の複数の励起光を生成する複数の光源を含む、
請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記ビーム分割装置は、前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起光線のうち、隣り合う波長の励起光線の出射方向の間の挟角が閾値角度以上となるように選択される、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
前記閾値角度が、前記対物レンズの焦点距離に対する所定の最小間隔の比に基づいており、
前記所定の最小間隔が、前記複数の励起光線によって前記サンプル上に形成される互いに離間する必要がある集光スポット間の最小距離を示す、
請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
さらに、
前記光ファイバーと前記ビーム分割装置との間に配置され、前記光ファイバーから出射された前記複数の異なる波長の入射光線を整形し、前記整形された入射光線を前記ビーム分割装置に伝送するように配置された第1ビーム整形装置と、
前記ビーム分割装置と前記第1ダイクロイックミラーとの間に配置され、前記複数の異なる波長の入射光と1対1に対応し前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起光線を整形し、前記整形された複数の励起光線を前記第1ダイクロイックミラーに伝送するように配置された第2ビーム整形装置とのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記第2ビーム整形装置は、角度倍率を有し、
前記検出装置が前記第2ビーム整形装置を含む場合には、前記閾値角度は、前記対物レンズの前記焦点距離に対する前記所定の最小間隔の比と前記角度倍率の絶対値の逆数との積に等しい、
請求項5に係る請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記第1ビーム整形装置は、第1レンズ群を含み、
前記第2ビーム整形装置は、第2レンズ群を含む、
請求項6に記載の検出装置。
【請求項9】
前記ビーム分割装置は、少なくとも1つの分散プリズムを含む、
請求項4または5に記載の検出装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの分散プリズムは、単分散プリズムを含み、
前記単分散プリズムが、
前記光ファイバーからの前記複数の異なる波長の入射光線が前記単分散プリズムの第1屈折面に入射し、
その後、前記複数の励起光線の各々が前記単分散プリズムの前記第1屈折面とは異なる第2屈折面から出射するように、配置される、
請求項9に記載の検出装置。
【請求項11】
前記複数の異なる波長の入射光線が、前記単分散プリズムの前記第1屈折面に所定の入射角で入射し、
前記所定の入射角が、前記第1屈折面に入射する前記入射光線の入射方向と前記入射光線に対応し前記第2屈折面から出射する前記複数の励起光線の出射方向との間の偏差角が最小となるように選択される、
請求項10に記載の検出装置。
【請求項12】
前記第1屈折面と前記第2屈折面とが、前記単分散プリズムの隣接面であり、
前記単分散プリズムが、前記第1屈折面と前記第2屈折面との間に形成される頂角を有し、
前記単分散プリズムが、前記単分散プリズムの前記頂角と前記単分散プリズムを形成するために選択された材料との組合せによって前記挟角を前記閾値角度以上とすることができるように選択される、
請求項10に記載の検出装置。
【請求項13】
前記単分散プリズムが、N-SF11の材料からなる頂角45度の直角プリズムである、
請求項12に記載の検出装置。
【請求項14】
前記単分散プリズムが、三角プリズムである、
請求項12に記載の検出装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの分散プリズムが、連続的に配置された複数の分散プリズムを含み、
前記複数の分散プリズムの各々が、隣接するその第1屈折面と第2屈折面との間に形成される頂角を有し、それに入射する各光をその前記第1屈折面で受光して前記光をその前記第2屈折面から出射するように配置され、
前記複数の分散プリズムの数および前記複数の分散プリズムの各々の頂角と材料の組合せが、前記挟角が前記閾値角度以上となるように選択される、
請求項9に記載の検出装置。
【請求項16】
前記複数の分散プリズムのうち、
前記光ファイバーからの前記複数の異なる波長の入射光線を最初に受光する第1分散プリズムが、前記光ファイバーからの前記複数の異なる波長の入射光線が前記第1分散プリズムの第1屈折面に入射し、その後、前記第1分散プリズムの第2屈折面から出射するように配置され、
前記第1分散プリズム以外の前記複数の分散プリズムの各々が、それに隣接する1つ前の分散プリズムから出射された光の各々がその第1屈折面に入射してその第2屈折面から出射するように配置される、
請求項15に記載の検出装置。
【請求項17】
前記ビーム分割装置は、少なくとも1つの格子を有する、
請求項4に記載の検出装置。
【請求項18】
前記蛍光誘導装置は、連続的に配置された複数の第2ダイクロイックミラーを含み、
前記複数の第2ダイクロイックミラーは、前記第1ダイクロイックミラーから離間した最終第2ダイクロイックミラーと、前記最終第2ダイクロイックミラーと前記第1ダイクロイックミラーとの間に配置された少なくとも1つの先行第2ダイクロイックミラーとを含み、前記第1ダイクロイックミラーによって受光した前記複数の蛍光を、前記複数の第2ダイクロイックミラーを介して順次伝播し、
前記先行第2ダイクロイックミラーの各先行第2ダイクロイックミラーが、前記複数の蛍光のうち、それに入射する少なくとも1つの蛍光のうちの1つを前記先行第2ダイクロイックミラーに対応する前記撮像装置に誘導し、前記少なくとも1つの蛍光の残りの蛍光を前記先行第2ダイクロイックミラーに隣接する次の第2ダイクロイックミラーに誘導するように配置され、
前記最終第2ダイクロイックミラーが、それに入射する蛍光を前記最終第2ダイクロイックミラーに対応する前記撮像装置に誘導するように配置される、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの先行第2ダイクロイックミラーのうち、
前記第1ダイクロイックミラーに最も近い位置にある前記第2ダイクロイックミラーが、それによって誘導された前記蛍光をそれに対応する前記撮像装置に伝送し、それに入射した前記複数の蛍光の残りの蛍光をそれに隣接する次の第2ダイクロイックミラーに反射するように選択され、それに入射した前記蛍光を、反射により、前記最終第2ダイクロイックミラーに対応する前記撮像装置に誘導するように選択され、
前記第1ダイクロイックミラーに最も近い位置にある前記第2ダイクロイックミラーおよび前記最終第2ダイクロイックミラー以外の前記複数の第2ダイクロイックミラーの各々について、前記第2ダイクロイックミラーが、それに誘導された前記蛍光をそれに対応する前記撮像装置に反射し、それに入射した前記少なくとも1つの蛍光の残りの蛍光をそれに隣接する次の第2ダイクロイックミラーに伝送するように選択される、
請求項18に記載の検出装置。
【請求項20】
前記少なくとも1つの先行第2ダイクロイックミラーのうち、
前記第1ダイクロイックミラーに最も近い位置にある前記第2ダイクロイックミラーが、それによって誘導された前記蛍光をそれに対応する前記撮像装置に反射し、それに隣接する次の第2ダイクロイックミラーにそれに入射した前記複数の蛍光の残りの蛍光を伝送するように選択され、
前記最終第2ダイクロイックミラーが、それに入射した前記蛍光を、反射により、前記最終第2ダイクロイックミラーに対応する前記撮像装置に誘導するように選択され、
前記第1ダイクロイックミラーに最も近い位置にある前記第2ダイクロイックミラーおよび前記最終第2ダイクロイックミラー以外の前記複数の第2ダイクロイックミラーの各々について、前記第2ダイクロイックミラーが、それに誘導された前記蛍光をそれに対応する前記撮像装置に反射し、それに入射した前記少なくとも1つの蛍光の残りの蛍光をそれに隣接する次の第2ダイクロイックミラーに伝送するように選択される、
請求項18に記載の検出装置。
【請求項21】
各撮像装置は、光学フィルタと、結像レンズと、カメラとを連続的に配置されるように含み、
前記各撮像装置について、
その前記光学フィルタは、前記蛍光誘導装置によって前記撮像装置に誘導された前記蛍光をフィルタリングした後、フィルタリングされた蛍光をその前記結像レンズに伝送し、
その前記結像レンズは、その前記光学フィルタを介して伝送された前記フィルタリングされた蛍光をその前記カメラに集光してその前記カメラで撮像し、前記検出用の蛍光に対応する蛍光情報を取得する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項22】
前記光ファイバーが、単一の光ファイバーである、
請求項1~5および18~21のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項23】
前記単一の光ファイバーが、同軸結合光ファイバーである、
請求項22に記載の検出装置。
【請求項24】
前記サンプルが、生体サンプルまたは化学サンプルである、
請求項1~5および18~21のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項25】
遺伝子検出装置である、
請求項1~5および18~21のいずれかに記載の検出装置。
【請求項26】
配列決定チップ上の蛍光シグナルを収集する撮像システムと、前記撮像システムと前記配列決定チップとの間に配置された光学システムとを含み、
前記光学システムは、
複数の異なる波長の入射光線を出射するように構成された光源と、
前記光源からの前記複数の異なる波長の入射光線を受光して分割し、前記入射光線の前記複数の異なる波長に対応し前記ビーム分割装置から異なる出射方向に出射される複数の励起光線を形成し、前記励起光線の各々が前記入射光線の前記複数の異なる波長と1対1に対応する波長を有するように構成されたビーム分割装置と、
前記入射光線の前記複数の異なる波長と1対1に対応し前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起光線を受光するように構成された第1ダイクロイックミラーと、
前記配列決定チップと前記第1ダイクロイックミラーとの間に配置され、前記第1ダイクロイックミラーによって伝送された前記複数の励起光線を受光し、前記複数の励起光線を前記配列決定チップ上の複数の異なる領域に集光して前記複数の異なる領域において前記複数の励起光線とそれぞれ1対1に対応して複数の蛍光を励起し、前記複数の蛍光を前記第1ダイクロイックミラーに伝送するように構成された対物レンズと、
前記第1ダイクロイックミラーを介して伝送された前記複数の蛍光を受光し、前記複数の蛍光をそれぞれ前記撮像システムに誘導するように構成された蛍光誘導装置とを含み、
前記撮像システムは、
前記複数の蛍光と1対1に対応する複数の撮像装置を含み、
前記複数の撮像装置の各々は、前記蛍光誘導装置によって誘導された前記複数の蛍光のうち、前記撮像装置に対応する1つの蛍光を受光し、前記蛍光を撮像して前記蛍光に対応する蛍光情報を取得するように構成される、
遺伝子配列決定システム。
【請求項27】
前記ビーム分割装置は、前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起光線のうち、隣り合う波長の励起光線の出射方向の間の挟角が閾値角度以上となるように選択される、
請求項26に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項28】
前記閾値角度が、前記対物レンズの焦点距離に対する所定の最小間隔の比に基づいており、
前記所定の最小間隔が、前記複数の励起光線によって前記配列決定チップ上に形成される互いに離間する必要がある集光スポット間の最小距離を示す、
請求項27に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項29】
前記光学システムが、さらに、
前記光源と前記ビーム分割装置との間に配置され、前記光源から出射された前記複数の異なる波長の入射光線を整形し、前記整形された入射光線を前記ビーム分割装置に伝送するように配置された第1ビーム整形装置と、
前記ビーム分割装置と前記第1ダイクロイックミラーとの間に配置され、前記複数の異なる波長の入射光線と1対1に対応し前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起光線を整形し、前記整形された複数の励起光線ビームを前記第1ダイクロイックミラーに伝送するように配置された第2ビーム整形装置とのうちの少なくとも1つを含む、
請求項26~28のいずれか一項に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項30】
前記第2ビーム整形装置は、角度倍率を有し、
前記光学システムが前記第2ビーム整形装置を含む場合には、前記閾値角度が前記対物レンズの前記焦点距離に対する前記所定の最小間隔の比と前記角度倍率の絶対値の逆数との積に等しい、
請求項28に係る請求項29に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項31】
前記ビーム分割装置は、少なくとも1つの分散プリズムを含む、
請求項26~28のいずれか一項に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項32】
前記少なくとも1つの分散プリズムは、単分散プリズムを含み、
前記単分散プリズムが、
前記光源からの前記複数の異なる波長の入射光線が前記単分散プリズムの第1屈折面に入射し、
その後、前記複数の励起光線の各々が前記単分散プリズムの前記第1屈折面とは異なる第2屈折面から出射するように、配置される、
請求項27に係る請求項31に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項33】
前記複数の異なる波長の入射光線が、前記単分散プリズムの前記第1屈折面に所定の入射角で入射し、
前記所定の入射角が、前記第1屈折面に入射する前記入射光線の入射方向と前記入射光線に対応し前記第2屈折面から出射する前記複数の励起光線の出射方向との間の偏差角が最小となるように選択される、
請求項32に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項34】
前記第1屈折面と前記第2屈折面とが、前記単分散プリズムの隣接面であり、
前記単分散プリズムが、前記第1屈折面と前記第2屈折面との間に形成される頂角を有し、
前記単分散プリズムが、前記単分散プリズムの前記頂角と前記単分散プリズムを形成するために選択された材料との組合せによって前記挟角が前記閾値角度以上とすることができるように選択される、
請求項32に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項35】
前記単分散プリズムが、三角プリズムである、
請求項34に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項36】
前記少なくとも1つの分散プリズムが、連続的に配置された複数の分散プリズムを含み、
前記複数の分散プリズムの各々が、隣接するその第1屈折面と第2屈折面との間に形成される頂角を有し、それに入射する各光をその前記第1屈折面で受光して前記光をその前記第2屈折面から出射するように配置され、
前記複数の分散プリズムの数および前記複数の分散プリズムの各々の頂角と材料の組合せが、前記挟角が前記閾値角度以上となるように選択される、
請求項27に係る請求項31に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項37】
前記複数の分散プリズムのうち、
前記光源からの前記複数の異なる波長の入射光線を最初に受光する第1分散プリズムが、前記光源からの前記複数の異なる波長の入射光線が前記第1分散プリズムの第1屈折面に入射し、その後、前記第1分散プリズムの第2屈折面から出射するように配置され、
前記第1分散プリズム以外の前記複数の分散プリズムの各々が、前記分散プリズムに隣接する1つ前の分散プリズムから出射された光の各々が前記分散プリズムの第1屈折面に入射して前記分散プリズムの第2屈折面から出射するように配置される、
請求項36に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項38】
前記ビーム分割装置は、少なくとも1つの格子を有する、
請求項26~28のいずれか一項に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項39】
前記蛍光誘導装置は、連続的に配置された複数の第2ダイクロイックミラーを含み、
前記複数の第2ダイクロイックミラーは、前記第1ダイクロイックミラーから離間した最終第2ダイクロイックミラーと、前記最終第2ダイクロイックミラーと前記第1ダイクロイックミラーとの間に配置された少なくとも1つの先行第2ダイクロイックミラーとを含み、前記第1ダイクロイックミラーによって受光した前記複数の蛍光を、前記複数の第2ダイクロイックミラーを介して順次伝播し、
前記先行第2ダイクロイックミラーの各先行第2ダイクロイックミラーが、前記複数の蛍光のうち、それに入射する少なくとも1つの蛍光のうちの1つを前記先行第2ダイクロイックミラーに対応する前記撮像装置に誘導し、前記少なくとも1つの蛍光の残りの蛍光を前記先行第2ダイクロイックミラーに隣接する次の第2ダイクロイックミラーに誘導するように配置され、
前記最終第2ダイクロイックミラーが、それに入射する蛍光を前記最終第2ダイクロイックミラーに対応する前記撮像装置に誘導するように配置される、
請求項26に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項40】
前記光源が、レーザ光源またはLED光源である、
請求項26~28および39のいずれか一項に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項41】
前記入射光線は、前記レーザ光源によって出射され、前記ビーム分割装置に直接または光ファイバーを介して伝送されるレーザによって形成される、
請求項40に記載の遺伝子配列決定システム。
【請求項42】
光源または光伝導装置によって、複数の異なる波長の入射光線を出射する工程と、
ビーム分割装置によって、前記光源または前記光伝導装置からの複数の異なる波長の入射光線を受光して分割し、前記入射光線の前記複数の異なる波長に対応し前記ビーム分割装置から異なる出射方向に出射される複数の励起光線を形成する工程であって、前記励起光線の各々が前記入射光線の前記複数の異なる波長と1対1に対応する波長を有する工程と、
第1ダイクロイックミラーによって、前記入射光線の前記複数の異なる波長と1対1に対応し前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起光線を受光する工程と、
被検出サンプルと前記第1ダイクロイックミラーとの間に配置された対物レンズによって、前記第1ダイクロイックミラーによって伝送された前記複数の励起光線を受光し、前記対物レンズによって、前記複数の励起光線を前記サンプル上の複数の異なる領域に集光して前記複数の異なる領域において前記複数の励起光線とそれぞれ1対1に対応して複数の蛍光を励起し、前記対物レンズによって、前記複数の蛍光を前記第1ダイクロイックミラーに伝送する工程と、
蛍光誘導装置によって、前記第1ダイクロイックミラーによって伝送された前記複数の蛍光を受光し、前記蛍光誘導装置によって、前記複数の蛍光を前記複数の蛍光と1対1に対応する複数の撮像装置に誘導し、前記複数の蛍光の各蛍光を前記蛍光に対応する前記複数の撮像装置のうちの1つによって受光して撮像し、検出用の蛍光に対応する蛍光情報を取得する工程と、
を含む検出方法。
【請求項43】
前記ビーム分割装置は、前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起光線のうち、隣り合う波長の励起光線の出射方向の間の挟角が閾値角度以上となるように選択される、
請求項42に記載の検出方法。
【請求項44】
前記閾値角度が、前記対物レンズの焦点距離に対する所定の最小間隔の比に基づいており、
前記所定の最小間隔が、前記複数の励起光線によって前記サンプル上に形成される互いに離間する必要がある集光スポット間の最小距離を示す、
請求項43に記載の検出方法。
【請求項45】
さらに、
前記光源または前記光伝導装置と前記ビーム分割装置との間に配置された第1ビーム整形装置によって、前記光源または前記光伝導装置から出射された前記複数の異なる波長の入射光線を整形し、前記第1ビーム整形装置によって、前記整形された入射光線を前記ビーム分割装置に伝送する工程と、
前記ビーム分割装置と前記第1ダイクロイックミラーとの間に配置された第2ビーム整形装置によって、前記複数の異なる波長の入射光線と1対1に対応し前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起光線を整形し、前記第2ビーム整形装置によって、前記整形された複数の励起光線を前記第1ダイクロイックミラーに伝送する工程とのうちの少なくとも1つを含む、
請求項43または請求項44に記載の検出方法。
【請求項46】
前記第2ビーム整形装置は、角度倍率を有し、
前記検出方法が、前記第2ビーム整形装置によって前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起光線を整形する工程を含む場合には、前記閾値角度は、前記対物レンズの前記焦点距離に対する前記所定の最小間隔の比と前記角度倍率の絶対値の逆数との積に等しい、
請求項44に係る請求項45に記載の検出方法。
【請求項47】
前記ビーム分割装置は、少なくとも1つの分散プリズムを含む、
請求項42~44のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項48】
前記少なくとも1つの分散プリズムは、単分散プリズムを含み、
前記単分散プリズムが、
前記光源または前記光伝導装置からの前記複数の異なる波長の入射光線が前記単分散プリズムの第1屈折面に入射し、
その後、前記複数の励起光線の各々が前記単分散プリズムの前記第1屈折面とは異なる第2屈折面から出射するように、配置される、
請求項43に係る請求項47に記載の検出方法。
【請求項49】
前記複数の異なる波長の入射光線が、前記単分散プリズムの前記第1屈折面に所定の入射角で入射し、
前記所定の入射角が、前記第1屈折面に入射する前記入射光線の入射方向と前記入射光線に対応し前記第2屈折面から出射する前記複数の励起光線の出射方向との間の偏差角が最小となるように選択される、
請求項48に記載の検出方法。
【請求項50】
前記第1屈折面と前記第2屈折面とが、前記単分散プリズムの隣接面であり、
前記単分散プリズムが、前記第1屈折面と前記第2屈折面との間に形成される頂角を有し、
前記単分散プリズムが、前記単分散プリズムの前記頂角と前記単分散プリズムを形成するために選択された材料との組合せによって前記挟角を前記閾値角度以上とすることができるように選択される、
請求項48に記載の検出方法。
【請求項51】
前記単分散プリズムが、三角プリズムである、
請求項50に記載の検出方法。
【請求項52】
前記少なくとも1つの分散プリズムが、連続的に配置された複数の分散プリズムを含み、
前記複数の分散プリズムの各々が、隣接するその第1屈折面と第2屈折面との間に形成される頂角を有し、それに入射する各光をその前記第1屈折面で受光して前記光をその前記第2屈折面から出射するように配置され、
前記複数の分散プリズムの数および前記複数の分散プリズムの各々の頂角と材料の組合せが、前記挟角が前記閾値角度以上となるように選択される、
請求項43にかかる請求項47に記載の検出方法。
【請求項53】
前記複数の分散プリズムのうち、
前記光源または前記光伝導装置からの前記複数の異なる波長の入射光を最初に受光する第1分散プリズムが、前記光源または前記光伝導装置からの前記複数の異なる波長の入射光が前記第1分散プリズムの第1屈折面に入射し、その後、前記第1分散プリズムの第2屈折面から出射するように配置され、
前記第1分散プリズム以外の前記複数の分散プリズムの各々が、それに隣接する1つ前の分散プリズムから出射された光の各々がその第1屈折面に入射してその第2屈折面から出射するように配置される、
請求項52に記載の検出方法。
【請求項54】
前記ビーム分割装置は、少なくとも1つの格子を有する、
請求項42~44のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項55】
前記蛍光誘導装置は、連続的に配置された複数の第2ダイクロイックミラーを含み、
前記複数の第2ダイクロイックミラーは、前記第1ダイクロイックミラーから離間した最終第2ダイクロイックミラーと、前記最終第2ダイクロイックミラーと前記第1ダイクロイックミラーとの間に配置された少なくとも1つの先行第2ダイクロイックミラーとを含み、前記第1ダイクロイックミラーによって受光した前記複数の蛍光を、前記複数の第2ダイクロイックミラーを介して順次伝播し、
前記先行第2ダイクロイックミラーの各先行第2ダイクロイックミラーが、前記複数の蛍光のうち、それに入射する少なくとも1つの蛍光のうちの1つを前記先行第2ダイクロイックミラーに対応する前記撮像装置に誘導し、前記少なくとも1つの蛍光の残りの蛍光を前記先行第2ダイクロイックミラーに隣接する次の第2ダイクロイックミラーに誘導するように配置され、
前記最終第2ダイクロイックミラーが、それに入射する蛍光を前記最終第2ダイクロイックミラーに対応する前記撮像装置に誘導するように配置される、
請求項42に記載の検出方法。
【請求項56】
前記光源が、LED光源またはハロゲン光源であり、
前記光伝導性装置が、単一の光ファイバーである、
請求項42~44および55のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項57】
前記単一の光ファイバーが、同軸結合光ファイバーである、
請求項56に記載の検出方法。
【請求項58】
前記サンプルが、生体サンプルまたは化学サンプルである、
請求項42~44および55のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項59】
遺伝子検出に使用される、
請求項42~44および55のいずれか一項に記載の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は検出の技術分野に関し、特に、検出装置、遺伝子配列決定システム、および検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学的検出の分野では、サンプルにレーザを照射して前記サンプルを励起して蛍光を発生させ、発生した蛍光を検出して、前記サンプルの所望の検出を達成することが知られている。以下、遺伝子検出を例にして、いくつかの関連技術を紹介する。
【0003】
遺伝子検出は、サンプルをレーザで励起して蛍光を発生させた後、発生した蛍光を撮像システムを用いて検出および分析して目的の塩基配列を得ることで完了する。被検出サンプル上に存在する様々な塩基は異なるプライマーによって標識され、異なる波長のレーザで励起したプライマーを使用してトレースし、対応する(塩基と1対1に対応する)蛍光を取得する。蛍光励起の過程では光退色と蛍光クロストークの付随現象があり、そのうち光退色現象は、蛍光収量を大幅に低下させ、さらには蛍光を変性させて検出結果を劣化させ、前記蛍光クロストーク現象は、励起蛍光を得るために励起される際に、一部のプライマーが他のプライマーの励起プロセスの影響を受けて量子収量に影響を及ぼし、1つの領域で複数の蛍光が同時に発生し、互いに混ざり合う現象をいう。励起光の出力密度が高いほど、励起持続時間が長くなり、検出読み取り長が長くなるほど、光退色および蛍光クロストークの現象がより顕著になる。
【0004】
高速、高スループット、低コストを追求するために、検出システムで使用されるレーザ出力密度はますます高くなり、光退色や蛍光クロストークの付随現象は、配列決定品質に深刻な影響を与え、遺伝子検出によって検出可能な塩基配列長(読み取り長)を制限する。特に、新世代の高速かつ高スループットである遺伝子検出技術は、複数波長のレーザで蛍光を同時に励起して高速走査を行う方式を用いるTDI(Time Delay Integration)撮像技術を採用しており、使用するレーザ出力密度は従来のエリアアレイ撮像方法の出力密度に比べて数百倍も高い。検出読み取り長の増加に伴い、高出力密度のレーザの影響がますます顕著になり、検出品質が急速に低下することにつながる。関連する遺伝子検出技術は、「高速」および「高検出品質および長い読み取り長」の両者をうまく両立できない。
【0005】
従来の遺伝子検出装置は、照明コストや構造の複雑さを低減するために、異なる波長のレーザを光ファイバーを通して同軸的に出力する。ビーム整形装置および対物レンズを通過する際、全ての波長の主光線が同軸的に透過し、最終的にサンプルの同じ領域に照射される。このとき、同時励起と時分割励起の2つの選択肢がある。
【0006】
図6は、第1の関連技術(同時励起)を実施するための既知の装置60を示す。
図6に示すように、第1の関連技術(同時励起)を採用した場合、マルチモード光ファイバー610は異なる波長のn個のレーザ(nは異なる波長のレーザの数、以下同じ)を同時に出力し、前記レーザはビーム整形装置670によって整形され、レーザフィルタ620によってフィルタリングされ、第1ダイクロイックミラー630によって反射され、対物レンズ640等によって集光された後、サンプル600に集光され、その後、前記異なる波長のn個のレーザが前記サンプルの同じ位置(
図6の複数波長のレーザによって形成されるスポットが存在する位置)に集光され、前記サンプル上の前記位置で蛍光を励起する。そして、前記蛍光は、前記対物レンズ640によって検出され、前記第1ダイクロイックミラー630を透過した後、蛍光誘導装置650を構成する他の特定のダイクロイックミラー(ダイクロイックミラー1、ダイクロイックミラー2、・・・、ダイクロイックミラーn)を通過し、その後、特定の光学フィルタ(光学フィルタ1、光学フィルタ2、・・・、光学フィルタn、各光学フィルタは特定の波長の蛍光のみ透過する)を通過して、異なる波長の蛍光は分光され、異なる波長の蛍光は撮像システム660における異なる波長の蛍光に対応する結像レンズ(結像レンズ1、結像レンズ2、・・・、結像レンズn)を通過した後、撮像システム660における結像レンズに対応するカメラ(カメラ1、カメラ2、・・・、カメラn)によって撮影されて蛍光情報を出力するが、n番目のレーザによって励起された蛍光は、それに対応するn番目の光学フィルタを透過し、結像レンズnによって集光された後、カメラnによって受光される。このようにして、蛍光の同時励起および同時検出のプロセスを完了することができる。各実視野(FOV)の蛍光の検出速度はカメラのシングルショットの時間に等しく、照明領域におけるレーザ出力は全てのレーザの出力の合計であり、すなわち、密度は、(各波長のレーザ出力密度が同じであると仮定すると)単一のレーザによる照射の場合のn倍になる。高出力密度では、蛍光は光退色による影響をより深刻に受け、蛍光クロストークの現象は複数の異なるチャネル間に存在し、どちらも検出結果の精度に影響する。結論として、第1の関連技術は「高速」に焦点を当てており、その方法は、蛍光が異なる波長のn個のレーザによって同時に励起され、全てのチャネルの蛍光検出が単一のFOVの領域において1回のショットだけで完了することができるが、出力密度は単一波長のレーザによる照射の場合のn倍である。
【0007】
図7は、第2の関連技術(時分割励起)を実施するための既知の装置70を示す。
図7に示すように、第2の関連技術(時分割励起)を採用した場合、マルチモード光ファイバー710は異なる波長のn個のレーザを順次出力し、出力されたレーザは、ビーム整形装置770によって整形され、レーザフィルタ720によってフィルタリングされ、ダイクロイックミラー730によって反射され、対物レンズ740等によって集光された後、サンプル700の位置(
図7の異なる時刻のレーザのスポットが存在する位置)に集光され、前記サンプル上の前記位置で蛍光を励起する。蛍光は、前記対物レンズ740によって検出され、前記ダイクロイックミラー730、蛍光フィルタ750(蛍光のみを透過し、蛍光以外の迷光を除去する)、および結像レンズ760を透過した後、カメラ780で撮影されて蛍光情報を出力する。n回のショットのみで、前記FOVの蛍光検出を完了することができる。全てのレーザは前記マルチモード光ファイバーによって順次出力される必要があり、蛍光検出は順次実行される。すなわち、前記サンプル上に照射されるレーザの出力密度は、(各レーザの出力密度が同じであると仮定すると)単一のレーザによる照射の場合と同じである。したがって、光退色の現象は比較的弱く、蛍光間のクロストークが低減される。しかしながら、各FOVの蛍光検出時間は、シングルショットの蛍光検出時間のn倍に増加する。結論として、第2の関連技術は「高い検出品質および長い読み取り長」に焦点を当てており、その方法は、異なる波長のn個のレーザが順次蛍光を励起し(同時に、1対1の対応でそれに対応するカメラが蛍光検出用の画像を撮る)、出力密度は単一のレーザが蛍光を励起するときと同じであるが、n回の励起およびn回の蛍光検出が必要であり、蛍光検出の総持続時間は第1の関連技術の場合のn倍であり、同じサンプルを検出するために必要とされる総検出時間は第1の関連技術の場合のn倍である。
【0008】
第1の関連技術は検出速度を向上させているが、レーザ照射の出力密度がn倍に増加し、同じ位置で異なる蛍光が励起され、光退色の現象が顕著であり、蛍光クロストークもあり、蛍光収率の低下を招いている。読み出し長の増加に伴い、第2の関連技術は検出誤差率の点で第1の関連技術よりも明らかに優れているが、ショット時間が第1の関連技術に比べてn倍になっている。
【0009】
したがって、検出速度を十分に考慮しながら、高い光学出力密度によって引き起こされる光退色および蛍光クロストークの問題を解決または軽減するために、生化学的検出のための改善された解決策が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示の目的は検出速度を十分に考慮しながら、高い光学出力密度によって引き起こされる光退色および蛍光クロストークの問題を解決または緩和するための、生化学的検出用の改善された解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1の態様によれば、検出装置は、ビーム分割装置と、第1ダイクロイックミラーと、対物レンズと、蛍光誘導装置と、複数の撮像装置を含む撮像システムとを含む。
【0012】
前記ビーム分割装置は、光ファイバーからの複数の異なる波長の入射光線を受光して分割し、前記入射光線の前記複数の異なる波長に対応し前記ビーム分割装置から異なる出射方向に出射される複数の励起光線を形成し、前記励起光線の各々が前記入射光線の前記複数の異なる波長と1対1に対応する波長を有するように構成される。
【0013】
前記第1ダイクロイックミラーは、前記入射光線の前記複数の異なる波長と1対1に対応し前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起光線を受光し、前記複数の励起光線を前記対物レンズに伝送して前記複数の励起光線を前記対物レンズを通して被検出サンプルの複数の異なる領域にそれぞれ集光させて、前記複数の励起光線がそれぞれ集光された前記サンプルの前記複数の異なる領域において複数の蛍光を励起し、前記複数の励起光線によってそれぞれ励起された前記複数の蛍光を受光して前記複数の蛍光を前記蛍光誘導装置に伝送するように配置される。
【0014】
前記対物レンズは、前記第1ダイクロイックミラーによって伝送された前記複数の励起光線を受光し、前記複数の励起光線をそれぞれ前記サンプルの前記複数の異なる領域に集光させ、前記複数の励起光線によって励起された前記複数の蛍光をそれぞれ前記第1ダイクロイックミラーに伝送するように配置される。
【0015】
前記蛍光誘導装置は、前記第1ダイクロイックミラーによって伝送された前記複数の蛍光を受光し、前記複数の蛍光を前記複数の撮像装置にそれぞれ誘導し、前記複数の蛍光の各蛍光を前記蛍光に対応する前記複数の撮像装置のうちの1つによって撮像するように配置される。
【0016】
前記複数の撮像装置の各々は、前記蛍光誘導装置によって誘導された前記複数の蛍光のうちの1つの蛍光を受光し、前記蛍光を撮像して検出用の蛍光に対応する蛍光情報を得るように配置される。
【0017】
本開示の第2の態様によれば、遺伝子配列決定システムは、配列決定チップ上の蛍光シグナルを収集する撮像システムと、前記撮像システムと前記配列決定チップとの間に配置された光学システムとを含み、前記光学システムは以下を含む。
【0018】
複数の異なる波長の入射光線を出射するように構成された光源。
【0019】
前記光源からの前記複数の異なる波長の入射光線を受光して分割し、前記入射光線の前記複数の異なる波長に対応し前記ビーム分割装置から異なる出射方向に出射される複数の励起光線を形成し、前記励起光線の各々が前記入射光線の前記複数の異なる波長と1対1に対応する波長を有するように構成されたビーム分割装置。
【0020】
前記入射光線の前記複数の異なる波長と1対1に対応し前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起光線を受光するように構成された第1ダイクロイックミラー。
【0021】
前記配列決定チップと前記第1ダイクロイックミラーとの間に配置され、前記第1ダイクロイックミラーによって伝送された前記複数の励起光線を受光し、前記複数の励起光線を前記配列決定チップ上の複数の異なる領域に集光して前記複数の異なる領域において前記複数の励起光線とそれぞれ1対1に対応して複数の蛍光を励起し、前記複数の蛍光を前記第1ダイクロイックミラーに伝送するように構成された対物レンズ。
【0022】
前記第1ダイクロイックミラーを介して伝送された前記複数の蛍光を受光し、前記複数の蛍光をそれぞれ前記撮像システムに誘導するように構成された蛍光誘導装置。
【0023】
前記撮像システムは、前記複数の蛍光と1対1に対応する複数の撮像装置を含み、前記複数の撮像装置の各々は、前記蛍光誘導装置によって誘導された前記複数の蛍光のうち、前記撮像装置に対応する1つの蛍光を受光し、前記蛍光を撮像して前記蛍光に対応する蛍光情報を取得するように構成される。
【0024】
本開示の第3の態様によれば、検出方法は以下の工程を含む。
【0025】
光源または光伝導装置によって、複数の異なる波長の入射光線を出射する工程。
【0026】
ビーム分割装置によって、前記光源または前記光伝導装置からの複数の異なる波長の入射光線を受光して分割し、前記入射光線の前記複数の異なる波長に対応し前記ビーム分割装置から異なる出射方向に出射される複数の励起光線を形成する工程であって、前記励起光線の各々が前記入射光線の前記複数の異なる波長と1対1に対応する波長を有する工程。
【0027】
第1ダイクロイックミラーによって、前記入射光線の前記複数の異なる波長と1対1に対応し前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起光線を受光する工程。
【0028】
被検出サンプルと前記第1ダイクロイックミラーとの間に配置された対物レンズによって、前記第1ダイクロイックミラーによって伝送された前記複数の励起光線を受光し、前記対物レンズによって、前記複数の励起光線を前記サンプル上の複数の異なる領域に集光して前記複数の異なる領域において前記複数の励起光線とそれぞれ1対1に対応して複数の蛍光を励起し、前記対物レンズによって、前記複数の蛍光を前記第1ダイクロイックミラーに伝送する工程。
【0029】
蛍光誘導装置によって、前記第1ダイクロイックミラーによって伝送された前記複数の蛍光を受光し、前記蛍光誘導装置によって、前記複数の蛍光を前記複数の蛍光と1対1に対応する複数の撮像装置に誘導し、前記複数の蛍光の各蛍光を前記蛍光に対応する前記複数の撮像装置のうちの1つによって受光して撮像し、検出用の蛍光に対応する蛍光情報を取得する工程。
【発明の効果】
【0030】
本発明の構成によって、本開示は、異なる波長の光が被検出サンプル上の異なる位置を同時にかつ別々に照射し、前記異なる位置で蛍光を同時に励起することを可能にする。励起光として使用するレーザを例にとると、前記サンプル上のレーザの出力密度は、同時励起の場合、レーザ密度の1/nに低減され、全チャネルの蛍光検出は単一実視野の領域において単一の励起のみによって完了することができ、前記蛍光を同じ領域において複数回励起して検出を行う場合(すなわち、時分割励起の場合)、総検出時間は単一の蛍光励起および検出に必要な時間に等しい。本開示の解決策を使用することによって、検出持続時間を増加させることなく、前記サンプル上のレーザの出力密度を低減することができ、「高速」および「高検出品質および長い読み取り長」の2つの側面が関連技術においてうまく両立できないという問題を解決する。すなわち、検出速度を十分に考慮しながら、高い光学出力密度によって引き起こされる光退色および蛍光クロストークの問題を解決または緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1a】
図1aは、本開示の例示的な実施形態による検出装置の構成および構造の概略図である。
【
図1b】
図1bは、本開示の検出装置において使用できる例示的な蛍光誘導装置の構成および構造の概略図である。
【
図1c】
図1cは、本開示の検出装置において使用できる他の例示的な蛍光誘導装置の構成および構造の概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の他の例示的な実施形態による検出装置の構成および構造の概略図である。
【
図3】
図3は、本開示のさらに他の例示的な実施形態による検出装置を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本開示の例示的な実施形態に係る検出装置を用いて検出を行った場合に2つの励起レーザによってサンプルの表面に形成されるスポットを概略的に示す概略図である。
【
図5】
図5は、例示的な実施形態においてTDI撮像技術を用いて蛍光インテグレーション走査を実施するプロセスを概略的に示す概略図である。
【
図6】
図6は、同時励起を採用する関連する検出技術を実施する既知の装置を概略的に示す。
【
図7】
図7は、時分割励起を採用する関連する検出技術を実施する既知の装置を概略的に示す。
【
図8a】
図8aは、同時励起を採用する関連技術、時分割励起を採用する関連技術、および本開示を用いて、同一条件下でDNA塩基配列について二重末端試験を行って得られた遺伝子検出結果のデータ品質Q30と読み取り長との関係を示す。
【
図8b】
図8bは、同時励起を採用する関連技術、時分割励起を採用する関連技術、および本開示を用いて、同一条件下でDNA塩基配列について二重末端試験を行って得られた遺伝子検出結果の検出誤差率と読み取り長との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示の例示的な実施形態を、本開示の一部を形成し、本開示の実施形態とともに本開示の原理を説明する役割を果たす、添付の図面を参照して詳細に説明する。明瞭化および簡略化のために、本明細書に記載する装置の既知の機能および構造の詳細の具体的な説明は、本開示の主題を不明瞭にする可能性がある場合、省略する。
【0033】
図1に示すように、本開示の例示的な実施形態による検出装置10は、ビーム分割装置120と、第1ダイクロイックミラー130と、対物レンズ140と、蛍光誘導装置150と、撮像装置1から撮像装置iまでを含む撮像システム160とを含み、ここで、iは光ファイバーからの入射レーザの異なる波長の数を表し、1よりも大きい整数である。
【0034】
前記ビーム分割装置120は、前記光ファイバーから複数の異なる波長の入射レーザを受光して分割し、前記複数の異なる波長の入射レーザを前記ビーム分割装置から異なる出射方向に出射する際に、それに対応する各励起レーザ(
図1に示すレーザ1、レーザ2、およびレーザiなど)を形成するように構成される。各励起レーザの波長は、前記励起レーザに対応する入射レーザの波長と同じである。前記ビーム分割装置は、分散能力を有する様々な光学装置またはそのような光学装置の組合せによって実行してもよい。例えば、前記ビーム分割装置は、実際の用途の具体的な状況および対応する要件に応じて、後述するように、例えば、単一の分散プリズム、複数の分散プリズム、1つ以上の回折格子等であってもよい。前記光ファイバーは、単一の光ファイバーであってもよいが、例えば、結合光ファイバーに限定されない。必須ではないが、前記複数の異なる波長の入射レーザが、同じ入射方向で前記ビーム分割装置に入射すると有利である。
図1では前記入射レーザが前記光ファイバーによって前記ビーム分割装置に伝送されているが、前記光ファイバーの代わりに他の光伝送装置を用いて前記入射レーザを前記ビーム分割装置に提供することも可能である。なお、前記光ファイバーや前記他の光伝送装置は、前記検出装置に内蔵されていてもよいし、外付けされていてもよい。
【0035】
前記第1ダイクロイックミラー130は、複数の異なる波長の入射光レーザにそれぞれ対応し前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起レーザを受光し、前記複数の励起レーザを前記対物レンズを通して被検出サンプル100の複数の異なる領域(
図1のスポット1、スポット2、スポットiが位置する位置など)にそれぞれ集光させて前記複数の励起レーザがそれぞれ集光されたサンプルの対応する領域において蛍光を励起するように前記複数の励起レーザを前記対物レンズに伝送し、前記複数の励起レーザによってそれぞれ励起された複数の蛍光を受光して前記複数の蛍光を前記蛍光誘導装置に伝送するように配置されている。
図1に、前記サンプル上のレーザ1、レーザ2、およびレーザiの集光スポットを、スポット1、スポット2、およびスポットiと概略的に示す。ここで、被検出サンプルは、レーザ照射によって蛍光を発することができる様々な物質であってもよく、特に限定されないが、例えば、生体サンプル、化学サンプルなどが挙げられる。前記第1ダイクロイックミラーは、複数の異なる波長の入射レーザにそれぞれ対応し前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起レーザを、全て前記第1ダイクロイックミラーによって受光し、前記第1ダイクロイックミラーによって反射した後、全て前記対物レンズによって前記サンプルの前記複数の異なる領域に集光し、かつ、前記複数の励起レーザによってそれぞれ励起し前記対物レンズを介して前記サンプルから受光した前記複数の蛍光を、全て前記第1ダイクロイックミラーを介して前記蛍光誘導装置に伝送するように、適切に配向してもよい。この前提で、前記第1ダイクロイックミラーの配向は、例えば、前記ビーム分割装置および前記対物レンズに対する各励起レーザの出射角に基づいて決定してもよい。状況に応じて、前記第1ダイクロイックミラーは、異なる角度に配置されてもよい。
【0036】
前記対物レンズ140は、前記第1ダイクロイックミラーを介して伝送された前記複数の励起レーザを受光し、前記複数の励起レーザをそれぞれ前記サンプルの前記複数の異なる領域に集光させ、前記複数の励起レーザによって励起された前記複数の蛍光をそれぞれ前記第1ダイクロイックミラーに伝送するように配置される。一般に、前記対物レンズは、単一のレンズまたは複数のレンズの組合せから構成されるレンズ群である。前記レンズは、特に限定されないが、例えば、凸レンズ、凹レンズ、接着レンズなどが挙げられる。
【0037】
前記蛍光誘導装置150は、前記第1ダイクロイックミラーを介して伝送された前記複数の蛍光を受光し、前記複数の蛍光を前記複数の撮像装置にそれぞれ誘導し、前記複数の蛍光の各蛍光を前記蛍光に対応する前記複数の撮像装置のうちの1つによって撮像するように配置される。前記蛍光誘導装置は、様々な方法で実施してもよい。例えば、前記蛍光誘導装置は必要に応じて設けられる複数の第2ダイクロイックミラーであってもよく、前記複数の第2ダイクロイックミラーの数は前記励起レーザの数、つまりi、と等しくてもよい。このとき、状況に応じて、各第2ダイクロイックミラーは、特定の蛍光を伝送して残りの蛍光を反射する、および、特定の蛍光を反射して残りの蛍光を伝送する、のうちどちらか1つを行うことによって、前記複数の第2ダイクロイックミラーの組合せが上述のような蛍光の所望の誘導を達成するように構成されてもよい。前記蛍光誘導装置によって誘導される前記複数の蛍光の各々は、前記複数の撮像装置のそれぞれに1対1で対応する。1つの可能な実施形態によると、前記蛍光誘導装置は、連続的に配置された複数の第2ダイクロイックミラーを含み、前記複数の第2ダイクロイックミラーは、前記第1ダイクロイックミラーから離間した最終第2ダイクロイックミラーと、前記最終第2ダイクロイックミラーと前記第1ダイクロイックミラーとの間に配置された少なくとも1つの先行第2ダイクロイックミラーとを含み、前記第1ダイクロイックミラーによって受光した前記複数の蛍光を、前記複数の第2ダイクロイックミラーを介して順次伝播し、前記先行第2ダイクロイックミラーの各々が、前記複数の蛍光のうち、それに入射する少なくとも1つの蛍光のうちの1つを対応する撮像装置に誘導し、それに隣接する次の第2ダイクロイックミラーに前記少なくとも1つの蛍光の残りの蛍光を誘導するように配置され、前記最終第2ダイクロイックミラーが、それに入射する蛍光を対応する撮像装置に誘導するように配置される。
【0038】
具体的には、例えば、
図1bに示す蛍光誘導装置150’の一例を参照すると、前記蛍光誘導装置150’は、ダイクロイックミラー1、ダイクロイックミラー2、…、ダイクロイックミラーiの順に配置された複数の第2ダイクロイックミラーを含む。前記複数の第2ダイクロイックミラーのうちの少なくとも1つの先行第2ダイクロイックミラーのうち前記第1ダイクロイックミラーの最も近くに位置する第2ダイクロイックミラー、すなわち前記ダイクロイックミラー1は、前記第1ダイクロイックミラーからの前記複数の蛍光のうちそれに誘導された蛍光を対応する撮像装置に伝送し、それに入射した複数の蛍光のうちの残りの蛍光をそれに隣接する次の第2ダイクロイックミラー、すなわち前記ダイクロイックミラー2に反射するように選択することができ、前記複数の第2ダイクロイックミラーのうち前記最終第2ダイクロイックミラー、すなわち前記ダイクロイックミラーiは、それに入射した蛍光を、反射により前記対応する前記撮像装置に誘導するように選択され、前記第1ダイクロイックミラーに最も近い位置にある前記第2ダイクロイックミラーおよび前記最終第2ダイクロイックミラー以外の複数の第2ダイクロイックミラーの各々について、例えば、前記ダイクロイックミラー2は、それに誘導された蛍光を対応する前記撮像装置に反射し、それに入射した前記少なくとも1つの蛍光の残りの蛍光をそれに隣接する次の第2ダイクロイックミラーに伝送するように選択される。
【0039】
具体的には、他の例として、
図1cに示す蛍光誘導装置150’’の一例を参照すると、前記蛍光誘導装置150’’は、ダイクロイックミラー1、ダイクロイックミラー2、…、ダイクロイックミラーiの順に配置された複数の第2ダイクロイックミラーを含む。前記複数の第2ダイクロイックミラーのうちの少なくとも1つの先行第2ダイクロイックミラーのうち前記第1ダイクロイックミラーの最も近くに位置する第2ダイクロイックミラー、すなわち前記ダイクロイックミラー1は、前記第1ダイクロイックミラーからの前記複数の蛍光のうちそれに誘導された蛍光を対応する撮像装置に反射し、それに入射した複数の蛍光のうちの残りの蛍光をそれに隣接する次の第2ダイクロイックミラー、すなわち前記ダイクロイックミラー2に伝送するように選択し、前記複数の第2ダイクロイックミラーのうち前記最終第2ダイクロイックミラー、すなわち、前記ダイクロイックミラーiは、それに入射した蛍光を反射により対応する前記撮像装置に誘導するように選択され、前記第1ダイクロイックミラーに最も近い位置にある前記第2ダイクロイックミラーおよび前記最終第2ダイクロイックミラー以外の複数の第2ダイクロイックミラーの各々について、例えば、前記ダイクロイックミラー2は、それに誘導された蛍光を対応する前記撮像装置に反射し、それに入射した前記少なくとも1つの蛍光の残りの蛍光をそれに隣接する次の第2ダイクロイックミラーに伝送するように選択される。
【0040】
ダイクロイックミラーは、それによって受光する光が一定の範囲の入射角でそれに入射するように配置されてもよく、これは特に混合光の場合に、前記ダイクロイックミラーが受光した光の反射および/または伝送を容易にする。前記ダイクロイックミラーの位置決めは、前記ダイクロイックミラーに光を伝送する上流構成要素を考慮することによって決定されてもよい。前記範囲は、例えば、45度を含む角度範囲であってもよい。異なるダイクロイックミラーは、設計によって必要とされる異なる入射角範囲を有することができる。
【0041】
前記複数の撮像装置の各々は、前記蛍光誘導装置によって誘導された前記複数の蛍光のうちのそれに対応する蛍光を受光し、前記蛍光を撮像して検出用の蛍光に対応する蛍光情報を得るように位置する。前記撮像装置は、様々な方法で実施してもよい。1つの可能な実施形態によると、前記複数の撮像装置の各々は、光学フィルタと、結像レンズと、カメラとを連続的に配置されるように含み、前記各撮像装置について、その前記光学フィルタは、前記蛍光誘導装置によって前記撮像装置に誘導された前記蛍光をフィルタリングした後、フィルタリングされた蛍光をその前記結像レンズに伝送し、その前記結像レンズは、その前記光学フィルタを介して伝送された前記フィルタリングされた蛍光をその前記カメラに集光してその前記カメラで撮像し、前記検出用の蛍光に対応する蛍光情報を取得する。レンズとカメラを含む前記各撮像装置について、その中心を、前記蛍光誘導装置、例えば、対応する蛍光を前記撮像装置に誘導する第2ダイクロイックミラーにおいて、それに対応する要素の伝送/反射の中心と一致した状態に保ってもよい。前記カメラは、TDI画像に適したTDIカメラであってもよい。
【0042】
異なる波長の複数のレーザは、少なくとも1つのレーザ源によって生成されてもよく、前記光ファイバーは、前記少なくとも1つのレーザ源から前記異なる波長の複数のレーザを受光し、さらに、複数の異なる波長のレーザを形成し、前記複数の異なる波長のレーザを前記ビーム分割装置に伝送して複数の異なる波長の入射レーザを実現するように位置してもよい。前記少なくとも1つのレーザ源は、前記検出装置内または前記検出装置外に含まれてもよい。
【0043】
有利には、前記少なくとも1つのレーザ源は、それぞれ前記異なる波長の複数のレーザの生成に使用され得る複数のレーザ源を含む。
【0044】
図1に示す実施形態では、有利には、前記ビーム分割装置120は、前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起レーザのうち隣り合う波長の励起レーザの出射方向の間の挟角が閾値角度以上となるように、前記隣り合う波長の励起レーザが前記第1ダイクロイックミラーに入射する入射角の間の差が所望の角度差以上となるように、選択してもよい。前記所望の角度差は、前記対物レンズの焦点距離に対する最小スポット間隔の比に基づいて決定されてもよく、例えば、前記対物レンズの前記焦点距離に対する前記最小スポット間隔の比以上である。前記最小スポット間隔は、前記複数の励起レーザによって前記サンプル上に形成される互いに離間する必要がある集光スポット間の最小距離を示し、状況に応じて様々な方法で適切に決定してもよい。例えば、前記最小スポット間隔は、特定の用途の要件に関連してもよく、前記検出装置が対象とする特定の用途に基づいて事前に決定してもよい。異なる検出シナリオ、検出目的、および/または被検出サンプルについて、前記スポット間の必要な最小間隔は変化し得る。例えば、前記最小スポット間隔は、複数のレーザを分散させることなく、前記光ファイバーからの複数の結合レーザによって前記サンプルの表面に形成されるスポットの対応する方向の大きさ(前記スポットの幅狭辺の大きさ、すなわち、前記スポットの幅。
図1の場合、図示するスポットの横方向の大きさ)よりも大きくなり、前記対応する方向が、前記離間したスポット間の間隔が沿っている方向であるという条件を満たすように決定されてもよい。前記条件が満たされる場合、前記最小スポット間隔の値ができるだけ小さいことが有利である。前記最小スポット間隔の値が比較的大きい場合、前記集光スポットおよび画像の一部が前記対物レンズの実視野の範囲を超えることがあり、前記画像の劣化の原因となることがある。例えば、場合によっては、前記最小スポット間隔は、特定の用途における前記サンプル上の前記撮像システムの実視野の高さに等しくなるように決定されてもよい。簡略化した方法として、前記閾値角度を、前記対物レンズの焦点距離に対する最小スポット間隔の比に基づいて決定してもよい。例えば、前記閾値角度は前記対物レンズの前記焦点距離に対する前記最小スポット間隔の比に係数を乗じたものに等しくなるように決定されてもよく、前記係数は、例えば、特に限定されないが、前記ビーム分割装置から出射される前記励起レーザが前記第1ダイクロイックミラーによって受光される前に整形/スケーリングする必要があるかどうか、前記ビーム分割装置から出射される前記励起レーザが前記第1ダイクロイックミラーによって受光される前に受ける必要がある角度倍率などを考慮するように予め決定されてもよい。例えば、前記係数は、例えば、前記ビーム分割装置と前記第1ダイクロイックミラーとの間に整形装置がない場合、1に等しくてもよい。他の例として、前記ビーム分割装置と前記第1ダイクロイックミラーとの間に整形装置が設けられている場合、前記係数は、例えば、前記整形装置の前記角度倍率に基づいて決定されてもよく、前記角度倍率の絶対値の逆数に等しい。
【0045】
前記検出装置は、任意に、以下の整形装置のうち少なくとも1つを含んでもよい:前記光ファイバーと前記ビーム分割装置との間に配置され、前記光ファイバーから出射された前記複数の異なる波長の入射レーザを整形し、前記整形された入射レーザを前記ビーム分割装置に伝送するように配置された第1ビーム整形装置;前記ビーム分割装置と前記第1ダイクロイックミラーとの間に配置され、前記入射レーザの複数の異なる波長とそれぞれ対応し前記ビーム分割装置から出射された前記複数の励起レーザを整形し、前記整形された複数の励起レーザを前記第1ダイクロイックミラーに伝送するように配置された第2ビーム整形装置。前記第1ビーム整形装置および前記第2ビーム整形装置の各々は、様々な方法で実施してもよい。例えば、前記第1ビーム整形装置は、前記ビーム分割装置に入射する入射レーザの所望の整形およびスケーリングを実施する第1レンズ群を含み、特に限定されないが、例えば、前記入射レーザを、所望の形状および/またはサイズのスポットを形成するように前記ビーム分割装置に入射させてもよく、前記第2ビーム整形装置は、前記ビーム分割装置から出射される励起レーザの所望の整形およびスケーリングを実施する第2レンズ群を含み、特に限定されないが、例えば、前記励起レーザを、所望の形状および/またはサイズのスポットを形成するように前記第1ダイクロイックミラーに入射させてもよい。また、前記第1ビーム整形装置および前記第2ビーム整形装置の各々について、状況に応じて適切にその角度倍率を決定することができ、その所望の角度倍率に基づいてその特定の構成および構造を設計することができる。
【0046】
1つの可能な実施形態によると、前記ビーム分割装置は、単分散プリズムを含み、前記単分散プリズムは、前記光ファイバーからの前記複数の異なる波長の入射レーザの各々が前記単分散プリズムの第1屈折面に入射し、その後、前記複数の励起光線の各々が前記単分散プリズムの前記第1屈折面とは異なる第2屈折面から出射するように、配置される。前記複数の異なる波長の入射レーザが前記単分散プリズムの前記第1屈折面に入射する入射角は、異なってもよく、決まった角度である必要はなく、前記単分散プリズムの配向および配置角度に関連してもよい。有利には、前記単分散プリズムは、前記複数の異なる波長の入射レーザが前記単分散プリズムの前記第1屈折面に所定の入射角で入射するように配置されてもよく、前記所定の入射角は、前記第1屈折面に入射する前記入射レーザの入射方向と前記入射光に対応し前記第2屈折面から出射する励起レーザの出射方向との間の偏差角が最小となるように選択される。前記単分散プリズムは、前記第1屈折面と前記第2屈折面との間に形成される頂角を有してもよく、前記第1屈折面と前記第2屈折面とが前記単分散プリズムの隣接面であり、前記単分散プリズムが、前記単分散プリズムの前記頂角と前記単分散プリズムを形成するために選択された材料との組合せによって前記挟角を前記閾値角度以上とすることができるように選択される。前記単分散プリズムは、特に限定されないが、例えば、三角プリズム、例えば、N-SF11の材料からなる頂角45度の直角プリズム、四角プリズム等であってもよい。例えば、四角プリズムを用いる場合には、前記四角プリズムのある角度は頂角として使用してもよく、この角度を規定する前記四角プリズムの隣接する2つの屈折面はレーザを受光する入射面と前記レーザを出力する出射面として前記レーザを屈折させるためにそれぞれ使用することができ、これらは前記四角プリズムを適切に配置することで実現することができる。所定の単分散プリズムについては、その材質、頂角等が知られており、所定の入射角を、テーブル索引、計算等の関連技術手段によって決定してもよい。また、所定の単分散プリズムについて、前記プリズムにそのような所定の入射角で入射する任意の波長の光に対して、前記プリズムの分散能力は、関連技術において利用可能な式やアルゴリズム(例えば、Kaihua ZHAOによる「New Concept Physics Course-Optics」)によって算出することができる。本開示の解決策のために、簡略化した方法として、前記使用される複数のレーザについて、前記複数のレーザの波長範囲内のある中間波長を有する光を選択してもよく、選択した光がそのような所定の入射角で選択され得るあるプリズムに入射し、前記プリズムよって屈折された後の、前記選択した光の伝搬方向の変化量、すなわち、前記選択した光の最小偏差角度を計算し、選択した光の最小偏差角度が上記閾値角度以上になることを満たすプリズムが、使用され得るプリズムとして決定されてもよい。
【0047】
他の可能な実施態様によると、前記ビーム分割装置は、複数の分散プリズムを含む。この場合、前記複数の分散プリズムの各々は、その第1屈折面と第2屈折面との間に形成される頂角を有し、それに入射するレーザをその前記第1屈折面で受光して前記レーザをその前記第2屈折面から出射するように配置され、前記複数の分散プリズムの数および前記複数の分散プリズムの各々の頂角と材料の組合せが、前記挟角が前記閾値角度以上となるように選択される。前記分散プリズムの数、配置、および相対的な位置関係を考慮する場合、そのような組み合わせは、単一のプリズムについて上述したように、関連技術において利用可能な関連するデータ、式、およびアルゴリズムを使用して決定してもよい。この場合、前記複数の分散プリズムのうち、前記光ファイバーからの前記複数の異なる波長の入射レーザを最初に受光する第1分散プリズムは、前記光ファイバーからの前記複数の異なる波長の入射レーザが前記第1分散プリズムの第1屈折面に入射し、その後、前記第1分散プリズムの第2屈折面から出射するように配置されてもよく、前記第1分散プリズム以外の前記複数の分散プリズムの各々は、それに隣接する1つ前の分散プリズムから出射されたレーザの各々がその第1屈折面に入射してその第2屈折面から出射するように配置されてもよい。単一の分散プリズムを用いる場合に比べて、複数の分散プリズムを用いる場合には、光路の方向がより柔軟になり、前記検出装置における他の構成要素の配置または角度の制約がより少なくなるが、複数の分散プリズムを用いる場合には、レーザの透過率がより低くなる。したがって、特定の用途では、実際の必要性に応じて、単一の分散プリズムを使用するか複数の分散プリズムを使用するかを選択することができる。
【0048】
上述のように、前記ビーム分割装置は、格子によって実現することもできる。格子が使用される場合、前記格子の配向、位置、および可能な数などの適切な組み合わせは、前記ビーム分割装置が上述の関連する要件を満たすように、関連技術において利用可能なデータ(利用可能な格子の種類、パラメータ、構造など)、式(格子回折の基本式など)、アルゴリズムなどによって決定してもよい。
【0049】
本明細書において、「前方」/「後方」、「前」/「後」、「先行」/「後続」、「1つ前」/「次」という用語の使用は、光の伝播方向に基づいている。例えば、同じ光線が複数の構成要素を通って伝搬する場合、光線の伝搬中に前記光線が最初に通過する構成要素は、光線の伝搬中に前記光線がその後に通過する構成要素に対して、前方構成要素、先行構成要素、または1つ前の構成要素と呼ばれる場合がある。
【0050】
なお、本開示の検出装置は、上記実施形態で説明したように光ファイバーからのレーザを用いることに限定されず、LED光源から出射される光、ハロゲン光源から出射される光等、他の各種光源からの励起光を用いてもよい。
【0051】
図2に示すように、本開示の他の実施形態に係る検出装置20は、マルチモード光ファイバー210と、第1ビーム整形装置270と、レーザフィルタ290と、分散プリズム220と、第2ビーム整形装置280と、ダイクロイックミラー1 230と、対物レンズ240と、蛍光誘導装置250を構成するダイクロイックミラー2~ダイクロイックミラーi+1および光学フィルタ1~光学フィルタiと、撮像システム260を構成する結像レンズ1~結像レンズiおよびカメラ1~カメラiとを含み、iは前記マルチモード光ファイバーを通して結合される異なる波長のレーザの種類/数を表し、1より大きい整数である。明瞭化および簡略化の目的で、3つの波長のレーザのみを
図2に示してi波長のレーザを概略的に表しているが、本開示は、3つの波長のレーザの場合にのみ適用されることに限定されず、より多いまたはより少ない波長のレーザの場合に適用されてもよいことを理解されたい。
【0052】
図2に示すように、前記検出装置は、マルチモードファイバー210を用いて、異なる波長(i≧2)のi個のレーザを同軸的に結合し、その後、マルチモードファイバーを通して異なる波長の結合レーザを出力し、前記結合レーザを、前記第1ビーム整形装置270によって光路に整形し、前記レーザフィルタ290によってフィルタリングした後、前記分散プリズム220の第1屈折面に入射する。屈折の法則によれば、異なる波長のレーザは異なる屈折率、すなわち、異なる屈折角を有する。したがって、前記異なる波長のレーザは、前記分散プリズムの前記第1屈折面によって屈折した後に異なる伝搬角度を有し、前記異なる波長のレーザが前記分散プリズムの前記第2屈折面によってさらに屈折した後、前記異なる波長のレーザの前記伝搬角度の間の差が拡大される。このようにして、前記異なる波長のレーザの伝送方向の間に、ゼロよりも大きい挟角ができる。一般に、レーザの波長が短ければ短いほど、その対応する屈折率および屈折角は大きくなる。前記分散プリズムによる分散後、異なる伝搬角度を有するi個のレーザ(
図2に概略的に示すレーザ1、レーザ2、およびレーザi)は、前記ダイクロイックミラー1 230によって反射され、前記対物レンズ240によって集光され、その後、サンプル200の表面に照射される。前記レーザはそれぞれ異なる伝搬角度を有するので、前記レーザは、それぞれ独自のスポット(
図2に概略的に示すスポット1、スポット2、およびスポットi)を形成し、前記サンプルの異なる位置で照射し、前記サンプル上の前記レーザによって照射された位置の各々におけるレーザスポットは、単一波長のレーザに由来する。
【0053】
図2に示す検出装置の動作プロセスを明確に示すために、ここではi=3であると仮定して、マルチモードファイバーを用いてA、B、およびCの3つのレーザ(図示せず)を結合する装置を例に挙げて、前記装置をさらに説明する。A、BおよびCの3つのレーザによって形成された結合レーザは、前記ダイクロイックミラー1 230によって反射され、前記対物レンズ240によって集光され、その後、前記サンプルの表面上の異なる位置で照射され、ある時点で、A、BおよびCの3つのレーザは、それぞれ前記サンプル上の照明領域a、bおよびc(図示せず)を有し、領域a、bおよびcにおいて対応する蛍光AX、BXおよびCX(図示せず)をそれぞれ励起する。前記領域cが最も前にあり、前記領域aが最も後ろにあり、前記領域bが前記サンプルの移動方向の中央にあると仮定すると、サンプル走査方向は、前記レーザAの照明領域(現下、前記領域a)の進行方向と同じである。A、B、およびCの3つのレーザは同時に蛍光を励起し、各時点で、照明されるサンプル上の各位置で、1つの蛍光のみが励起され、出射される。前記サンプル移動後の次の時点で、前記レーザAは新たな領域で蛍光AX’を励起し、前記レーザBは前記領域aで蛍光BX’を励起し、前記レーザCは前記領域bで蛍光CX’を励起する。このように前後に進むことによって、サンプル全体の走査を完了することができる。前記サンプルの走査時には、同時に励起された全ての蛍光は、前記対物レンズを介して前記ダイクロイックミラー1に伝送された後、前記ダイクロイックミラー2に伝送され、前記ダイクロイックミラー2を介してダイクロイックミラー4および前記光学フィルタ1~前記光学フィルタ3に誘導されてフィルタリングされ、その後、前記結像レンズ1~結像レンズ3によって結像し、前記カメラ1~前記カメラ3によって撮像される。例えば、前記ダイクロイックミラー2は、それに伝送された前記蛍光AX、BXおよびCXのうちの1つ、例えば、前記蛍光AXを伝送してそれを対応する前記光学フィルタ1に誘導し、残りの蛍光、例えば前記蛍光BXおよびCXを前記ダイクロイックミラー3に反射するように選択され、前記ダイクロイックミラー3は、それに伝送された前記蛍光BXおよびCXのうちの1つ、例えば前記蛍光BXを反射してそれを対応する前記光学フィルタ2に誘導し、残りの蛍光、例えば前記蛍光CXを前記ダイクロイックミラー4に伝送するように選択され、前記ダイクロイックミラー4は、それに伝送された蛍光、例えば前記蛍光CXを反射してそれを対応する前記光学フィルタ3に誘導するように選択される。これに対応し、前記光学フィルタ1は、前記蛍光AXのみがそれを通過して対応する前記結像レンズ1に到達できるように選択してもよく、前記光学フィルタ2は、前記蛍光BXのみがそれを通過して対応する前記結像レンズ2に到達できるように選択してもよく、前記光学フィルタ3は、前記蛍光CXのみがそれを通過して対応する前記結像レンズ3に到達できるように選択してもよい。このように、同時に励起される異なる蛍光は、前記カメラ1~前記カメラ3に1対1で対応する。また、前記蛍光は前記サンプル上の異なる位置で個々に励起され、異なる蛍光は分離され、異なるカメラによって撮像される。
【0054】
マルチモードファイバーを用いてn個の波長のレーザを同軸結合し、各FOVの単一チャネル蛍光検出の持続時間をT、各レーザの出力をWi、前記サンプル上のレーザスポットの面積をSiと仮定すると、上記第1の関連技術が採用される場合、前記サンプルの単位面積が受けるレーザ照射出力密度は
【数A】
であり、Wi=W、Si=Sと仮定すると、
【数B】
である。以上のような動作プロセスによれば、本開示の技術的解決策が採用される場合、前記サンプルの単位面積が受けるレーザ照射出力密度は
【数C】
であり、すなわち、前記レーザ出力密度は元の値の1/nに低減される。さらに、本開示の技術的解決策が採用される場合、全ての蛍光を同時に励起し、複数のカメラによって同時に撮影して蛍光検出情報を得ることができ、したがって、単一のFOVの検出持続時間は、関連技術における単一の蛍光の検出持続時間Tに等しい。
【0055】
図2に示す検出装置では、その分散プリズムは、様々な実現可能な角度および配向で適切に配置してもよい。前記分散プリズムの配置は、例えば、前記分散プリズムによって屈折された後に前記分散プリズムから出射する励起レーザの出射角度が、前記ダイクロイックミラー1が必要とする入射光線の角度の範囲に一致するように、前記ダイクロイックミラー1に少なくとも部分的に基づいて決定されてもよい。前記分散プリズムの選択(例えば、プリズムの材料、頂角など)に関して、さらなる例示的な説明を以下に示す。前記検出装置における対物レンズの焦点距離をfと表し、複数のレーザによって前記サンプル上に形成される互いに離間する必要があるスポット間の最小必要距離(すなわち、前記最小スポット間隔)をdと表すと仮定して、「前記対物レンズが薄いレンズであり、前記対物レンズの実視野が5°未満」という近似条件を満たす場合、前記ダイクロイックミラー1に入射する隣り合う互いに離間する必要がある波長のレーザの最小必要角度はΔθ
T≒d/fであり、この角度Δθ
Tは第1の閾値角度と呼ばれる場合がある。プリズムの分散能力は、前記プリズムの材料、頂角の大きさ(前記プリズムの入射面と出射面とのなす挟角)等によって決定される。前記分散プリズムが三角プリズムである場合を例に挙げると、前記三角プリズムの第1屈折面に最小偏差角度を生じる方向にレーザが入射すると仮定すると、前記距離dに基づいて前記角度Δθ
Tを算出することができる。Δθ
Tが決定すると、前記分散プリズムから出射する隣り合う波長の励起レーザ間の挟角が満たすべき条件、すなわち、前記挟角が第2の閾値角度Δθ
T’以上である必要があるという条件を決定することができ、これは例えば、前記ビーム分割装置と前記ダイクロイックミラー1との間に設けられた第2ビーム整形装置の角度倍率を考慮し、前記角度Δθ
Tおよび前記角度倍率に基づいて決定することができ、例えば、Δθ
T’は前記第1の閾値角度を前記角度倍率の絶対値で割ったものに等しくてもよい。選択したプリズムの材料および頂角度によって前記プリズムから出射する隣り合う波長の励起レーザ間の挟角が関連する要件を満たせるように、プリズム分散方程式に基づいて、利用可能なプリズムから適切なプリズムを選択してもよい。具体的には、幾何光学の原理から、レーザが前記最小偏差角度を生じる方向にプリズムに入射すると、得られるレーザ画像は最小限に湾曲し(すなわち収差が最小化され)、この入射角で入射するレーザについて、前記プリズムの角度分散能力D
θは式(1)によって示されることが知られている。
【0056】
【0057】
式中、αは前記プリズムの頂角を表し、nは前記プリズムの屈折率(前記プリズムの材料によって決定される)を表し、λは前記レーザの波長を表し、dn/dλは前記プリズムの分散指数を表し、bは前記プリズムの底部エッジの長さを表し、aは前記ビームの幅(特定の用途に関連し、異なる用途には異なるビーム幅を必要とする)を表す。
【0058】
本開示のさらに他の実施形態に係る検出装置30を
図3に示す。以下、本開示の検出装置について、2つの波長のレーザが同軸結合光ファイバーを介して
図3に示す検出装置に入射し、前記ビーム整形装置が第1照明レンズ群370と第2照明レンズ群380とを含み、前記分散プリズムが三角プリズム320である場合を例に挙げてさらに説明する。前記第1の照明レンズ群および前記第2の照明レンズ群を組み合わせて整形およびスケーリングのシステムを作る。ダイクロイックミラー群330は、機能的および構造的に、
図1の前記第1ダイクロイックミラーと前記蛍光誘導装置との組み合わせ、または、
図2の前記ダイクロイックミラー1~前記ダイクロイックミラーi+1に対応してもよい。前記三角プリズムは、45°の分散プリズムである。光路はYZ平面に位置し、前記レーザによって照射されるサンプルのサンプル平面300は前記YZ平面に垂直である。
【0059】
2つの波長のレーザ、すなわち、緑色レーザおよび赤色レーザは、同軸結合光ファイバー310を介して出力される。前記第1の照明レンズ群370によって整形され、前記プリズム320の第1屈折面3201および前記プリズム320の第2屈折面3202によって順次屈折された後、2つのレーザの主光線は、その間に挟角を形成する。前記第2照明レンズ群380によってさらに前記光線が整形され、前記第2照明レンズ群から出射する2つのレーザの中心光線の間の最終挟角は、上記の閾値角度ΔθT以上である必要がある。出射角度の異なる2つのレーザの主光線は、前記ダイクロイックミラー群330のダイクロイックミラーを介して対物レンズ340に伝送されて、前記対物レンズによって前記サンプルに集光して結像され、前記サンプル上の異なる位置に2つのレーザのスポットが形成され、前記サンプル上で分離される。一方、前記レーザによって前記サンプル上で励起された蛍光は、前記対物レンズ340で受光され、分割されて撮像システム360に誘導され、前記ダイクロイックミラー群330のダイクロイックミラーによって結像される。
【0060】
前記緑色レーザと前記赤色レーザの中心波長の間の差は128nmであり、前記サンプル上の撮像システムの実視野の高さは80μmである。ここで、「中心波長」とは、レーザのピーク波長を意味する。前記サンプル上のレーザのスポットを離間させ、互いに干渉しないように保つために、前記サンプル上の隣り合う波長のレーザのスポット間の距離は、80μmを超えるように予め設定することができる。前記対物レンズの焦点距離は既知であり、前記対物レンズの光分割方向の最高画角が5°未満、すなわち、前記近似条件を満たすと仮定すると、ΔθT=0.4°、すなわち、前記第2の照明レンズ群から出射する隣り合う波長のレーザの中心光線の間の挟角|Δθ|が0.4°よりも大きい必要があると上述した方法に従って決定される。
【0061】
図3に示すYZ平面において、前記第1照明レンズ群と前記第2照明レンズ群との間の略中央位置において、前記レーザのビーム径は、約13.5mmである。前記第1の照明レンズ群からの中心位置の距離は、前記光ファイバーのサイズおよび前記第1の照明レンズ群の焦点距離に関連する。この実施形態では前記中心位置が前記第1の照明レンズ群から約50mmであり前記第1の照明レンズ群の後であると仮定すると、前記ビーム径は、前記第1の照明レンズ群の後方から約50mmで前記第1の照明レンズ群から出射するレーザのビーム径である。前記第2の照明レンズ群は、原則として望遠鏡と同様であり、その角度倍率はM2=-0.7であり、前記近似条件に従った計算(すなわち、前記対物レンズを薄いレンズとして近似し、前記対物レンズの画角が5°未満とする)によると、前記プリズムから出射して前記第2照明レンズ群に到達する異なる波長のレーザの中心光線間の角度差|Δθ’|が不等式(2)を満たす必要があると導かれる。
【0062】
【0063】
本実施形態では、N-SF11の材料からなる頂角45°のプリズムを選択する。ほとんどの光学材料の分散指数の変化量は選択されたレーザ波長内で1オーダーを超えないので、前記プリズムの分散指数|Dθ|は、選択された赤色レーザおよび緑色レーザの波長範囲内の中心波長596nmについて計算してもよく、そのように計算された分散指数は、前記プリズムから出射するときに使用される赤色レーザと緑色レーザとの間の角度差が関連する要件を満たすかどうかを判断するために利用され、それにより選択されたプリズムが要件に適合するかどうかを判断する。具体的には、テーブル索引と計算の後、以下が求められる。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
ここで、Δλは、前記赤色レーザと前記緑色レーザとの間の波長差分を表す。式(4)および式(5)によって、|Dθ|>|Δθ’|/Δλ、すなわち、選択されたプリズムは本実施形態の分散角の要件を満たすことが得られる。
【0068】
前記プリズムの材料および頂角を決定した後、前記プリズムへの前記レーザの入射角を、前記最小偏差角度の条件を満たすように調整してもよい。本実施形態では、前記入射角が43.1°のときに前記最小偏差角度の条件を満たすことが計算によって知られている。光学シミュレーションの後、このプリズムによる分散後の2つの波長のレーザの主光線の間の挟角は1.2°であり、最終的に前記対物レンズに到達すると、前記赤色レーザと前記緑色レーザの主光線が前記赤色レーザの主光線と前記緑色レーザの主光線の間に0.82°の挟角、すなわち0.57°を超える挟角を形成することになり、要件を満たす。最後に、前記サンプル上に前記赤色レーザによって形成されたスポットと前記緑色レーザによって形成されたスポットとの間のスポット距離は、約0.16mmである。シミュレーション結果は
図4に示すように、上部の帯状のスポットが前記赤色レーザで形成されたスポット4001であり、下部の帯状のスポットが前記緑色レーザで形成されたスポット4002であり、赤色のスポットと緑色のスポットの中心が約0.16mmの距離で離間している。
【0069】
本実施形態はTDI撮像技術を使用する。各レーザがオンにされると、対応するカメラが画像を撮影するように誘発され、システムによって前記サンプルが走査されるときのカメラインテグレーションプロセスを
図5に示す。蛍光励起の過程において、前記赤色レーザおよび前記緑色レーザは前記サンプルの異なる領域をそれぞれ励起し、前記サンプル上のレーザスポットの励起領域は、物体-画像関係に関して1対1の対応関係にある対応するカメラに対応する。前記赤色レーザがカメラAに対応し、前記緑色レーザがカメラBに対応すると仮定すると、TDI撮像技術では、カメラインテグレーション方向が前記スポットの幅狭辺に沿っており、蛍光励起は連続的である。レーザが前記サンプルを励起すると、カメラインテグレーションが同期して誘発される、すなわち、前記赤色レーザと前記緑色レーザに対応するカメラ誘発源間の誘発間隔は、スポットが前記サンプルに対して0.16mmの距離を移動するのに必要な時間間隔に等しい(前記スポットは固定され、前記サンプルは前記XY平面に配置されたスライドテーブルによって駆動されて移動する)。前記緑色レーザがサンプル領域に入ると、蛍光の励起が開始され、同時に、前記カメラBのインテグレーションが開始され、このとき前記カメラAは待機する。前記赤色レーザが前記サンプルに入ると、前記カメラAのインテグレーションが開始され、このとき前記カメラBはインテグレーションしている。前記緑色レーザが前記サンプルから出ると、前記カメラBのインテグレーションが終了するが前記カメラAはまだインテグレーションしており、前記赤色レーザが前記サンプルから出ると、前記カメラAのインテグレーションが終了し、前記サンプルのこの列の蛍光検出が完了する。前記サンプルを0.16mm移動させるのに必要な時間は一列のインテグレーション持続時間よりもはるかに短いので、一列の全ての蛍光検出に必要な持続時間は単一チャネル蛍光検出の持続時間にほぼ等しい。次の列に入るとき、前記赤色レーザおよび前記緑色レーザは逆の順序で前記サンプルに入り、逆の順序でインテグレーションする。このようにして、サンプル全体の走査検出が完了する。
【0070】
本開示はまた、検出システム、例えば、上記のような検出装置を含む遺伝子配列決定システムとして実施されてもよいが、これに限定されない。前記遺伝子配列決定システムの場合、本開示の検出装置の撮像システムは、被検出サンプルである配列決定チップ上の蛍光シグナルを収集するために使用される。
【0071】
図8aは、前記第1の関連技術(同時励起)と、前記第2の関連技術(時分割励起)と、本開示とを用いて、試験対象物、すなわちDNA配列に対してダブルエンド試験を行って得られた遺伝子検出結果のデータ品質Q30と読み取り長との関係を示す。
図8bは、前記第1の関連技術(同時励起)と、前記第2の関連技術(時分割励起)と、本開示とを用いて、前記試験対象物、すなわちDNA配列に対してダブルエンド試験を行って得られた遺伝子検出結果の検出誤差率と読み取り長との関係を示す。前記第1の関連技術、前記第2の関連技術、および本開示は、それぞれ、同じ条件下での遺伝子検出用に構成される。
図8aおよび
図8bにおいて、破線は前記第1の関連技術を用いて得られた検出結果を示し、中空線(「時分割励起1」)は前記第2の関連技術を用いて得られた検出結果を示し、実線(「本開示」)は本開示を用いて得られた検出結果を示す。前記第1の関連技術、前記第2の関連技術および本開示の技術的効果を比較するために、遺伝子検出結果における前記Q30および前記検出誤差率(すなわち、塩基を同定する際の誤差率)を評価指標として用い、前記Q30が高く前記検出誤差率が低いほど、より良くより正確な検出結果となる。
図8aおよび
図8bから分かるように、より短い読み取り長における2つの関連技術と本開示との間の開始結果の差異は非常に小さいが、前記第1の関連技術では前記読み取り長が増加するにつれてQ30および検出誤差率の両方が悪化し(一般に、Q30が次第に減少し、検出誤差率が次第に増加することを特徴とする)、前記第2の関連技術および本開示ではQ30および検出誤差率の劣化の程度は前記第1の関連技術の場合よりも小さく、加えて、本開示および前記第2の関連技術の両方で、Q30および検出誤差率の両方が、全体的に非常に近似し、いくつかの読み取り長で同じか、または実質的に同じである。したがって、遺伝子配列決定の結果に関する限り、前記第2の関連技術と本開示は類似しており、両方とも前記第1の関連技術よりも有意に良好であるが、前記第2の関連技術は前記第1の関連技術と比較して撮影に費やされる時間が2倍であり、一方、本開示で必要とされる検出持続時間は前記第1の関連技術の場合と同じである。
【0072】
本開示の解決策は蛍光励起および蛍光検出を必要とする様々な用途に適用することができ、特に、サンプルを励起して蛍光を発生させ前記励起された蛍光を検出することを必要とする遺伝子検出または他の場合のような生化学的検出に適している。
【0073】
本開示が本来の目的とその効果を達成するために使用する技術的手段は、具体的な実施形態に関する詳細な説明によってさらに深く具体的に理解されるべきである。しかしながら、添付の図面は、単に参照および説明のためのものであり、本開示を限定することを意図するものではない。
【国際調査報告】