(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-30
(54)【発明の名称】連続化学処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/18 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
B01J19/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525925
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 US2022048144
(87)【国際公開番号】W WO2023076540
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524161427
【氏名又は名称】ザイプット フロー テクノロジーズ
【氏名又は名称原語表記】ZAIPUT FLOW TECHNOLOGIES
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア アダモ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ポール ヴィアノ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ ミラニ
(72)【発明者】
【氏名】コリン オシェイ
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA13
4G075AA23
4G075AA27
4G075BA10
4G075BB05
4G075BD04
4G075BD05
4G075BD15
4G075DA02
4G075DA12
4G075DA18
4G075EA01
4G075EB01
4G075EC11
4G075ED02
4G075ED08
4G075FB02
4G075FB04
4G075FB06
4G075FB12
(57)【要約】
連続した沈殿又は固体に含む化学反応を行うための装置を提供する。当該装置は複数の直列接続されたチャンバーを含む。チャンバーの1以上は下流のチャンバーへの流体のパルスを生じさせるためにチャンバーの容積を減少及び増大させる容積レデューサーを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体連通する第1のチャンバー及び最終のチャンバーを含む線状の複数のチャンバー;
第1のチャンバーと流体連通する入口;
複数の撹拌機(複数の撹拌機の各々は、複数のチャンバーの1個に配置される)
を含んでなり、複数のチャンバーの少なくとも1個は、第1の容積及び第2の容積の両方を保持するように構成及び準備されており、前記第2の容積は前記第1の容積よりも小さい、連続化学処理装置。
【請求項2】
第1の容積は、第2の容積よりも少なくとも5%、10%、15%、20%、50%、80%、90%又は95%大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第1のチャンバーが容積モジュレーターを含み、前記容積モジュレーターはチャンバーの容積を変更するように構成及び準備されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
チャンバーは連続流体連通している、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
さらに、複数のチャンバーの少なくとも1個の表面と接触する着脱可能なライナーを含んでなる、請求項1に記載の装置
【請求項6】
ライナーは可撓性であり、第1のチャンバーの容積が変更される際に屈曲する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
複数のチャンバーはハウジング内に保持され、前記ハウジングは金属、合金、セラミック、ポリマー及びガラスの少なくとも1つからなる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
チャンバーは、装置が作動中である際、相互関係で直線的に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
ハウジングは第1の部分及び第2の部分を含んでなり、前記第1の部分及び前記第2の部分は可逆的に接続されて流体シールを形成する、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
容積レデューサーを制御するためのマイクロプロセッサーを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
容積モジュレーターは、流体流入の速度を越えない又は等しい速度でチャンバーの容積を拡大する請求項10に記載の装置。
【請求項12】
容積モジュレーターはピストン、嚢、機械的ローラー、加圧流体、隔膜、及び可撓性ライナーの少なくとも1個を含んでなる、請求項3に記載の装置。
【請求項13】
羽根車は共通のシャフトによって駆動される請求項1に記載の装置
【請求項14】
少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10、又は少なくとも20個のチャンバーを含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
チャンバーの1個以上が実質的に球形である、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
連続するチャンバーは、1のチャンバーを次のチャンバーに接続する通路によって又はチャンバーの直接のオーバーラップを介して流体接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
チャンバーの少なくとも1つ又は個々のチャンバーの容積は、10L以下、1L以下、500 ml以下、250 ml以下、100 ml以下、50ml以下、25ml以下、1ml以上、5ml以上、10ml以上、50ml以上、100 ml以上、500 ml以上、1L以上、5L以上、又は10L以上である、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
第1の容積、第2の容積、又はその両方を変更するように構成及び準備された容積モジュレーターを含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
容積モジュレーターは、第1のチャンバー、最後のチャンバー、又は中間のチャンバーにおいて第1の容積又は第2の容積を変更する、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
1個以上のチャンバーと熱的に連通するクーラー又はヒーターを含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
流体から物質を連続的に沈殿させる方法であって、
第1のチャンバー及び第1のチャンバーの下流の複数の副次的チャンバー(前記副次的チャンバーは第1のチャンバーと流体連通する)に流体を通過させ;
チャンバーの少なくとも1個において物質の一部を沈殿させ(前記チャンバーの少なくとも1個はゼロのヘッドスペースを有する);
前記少なくとも1個のチャンバーの開始時容積を減少させて、流体及び沈殿物を前記少なくとも1個のチャンバーから近接する副次的チャンバーに強制的に送り;及び
前記少なくとも1個のチャンバーの容積を、前記少なくとも1個のチャンバーへの流体流入速度よりも小さい又は等しい速度で前記開始時容積の少なくとも90%に増大させる
ことを含んでなる、方法。
【請求項22】
流体が懸濁化溶液である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
容積の減少を容積の増大よりも速い速度で行う、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
容積の減少を1回目とは異なる速度で又は異なる容積で繰り返すことを含んでなる請求項21に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1個のチャンバーの容積を、前記少なくとも1個のチャンバーに配置されたピストンを延ばすこと、嚢を拡張させること及び/又はライナーを曲げることによって減少させる、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
沈殿される物質が医薬である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
流体が、少なくとも1個のチャンバーから複数の副次的チャンバーに垂直方向で上方に通過する、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
チャンバーの少なくとも1個に逆溶媒を流入させることを含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
チャンバーの少なくとも1個において流体を冷却することを含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
1個以上のチャンバーに流体を直接供給することを含んでなる請求項21に記載の方法。
【請求項31】
チャンバーの1個、1個以上、又は全てにおいて流体を撹拌することを含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
開始時容積の減少が少なくとも1個のチャンバーの開始時容積の3~20%である、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
容積の減少を、5秒以下、2秒以下、1秒以下、0.5秒以下、0.1秒以上、0.3秒以上、0.5秒以上、又は1秒以上で完了する、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
容積の減少が、第1のチャンバーから第2のチャンバーへの流体及び沈殿物のパルスを生じ、パルスは1分当り1回以上、2回以上、3回以上、及び10回以上繰り返される、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
固体が関与する化学反応を容易にする方法であって、
第1のチャンバー及び第1のチャンバーの下流の複数の副次的チャンバー(前記副次的チャンバーは第1のチャンバーと流体連通する)に流体を通過させ;
2つ以上の反応物質を流体中で反応させて、1個以上のチャンバーにおいて固体生成物を生成し;
第1のチャンバーの開始時容積を減少させて、流体及び沈殿物を第1のチャンバーから近接する副次的チャンバーに強制的に送り;及び
第1のチャンバーの容積を、第1のチャンバーへの流体流入速度よりも小さい又は等しい速度で開始時容積に増大させる
ことを含んでなる、方法。
【請求項36】
固体が関与する化学反応を容易にする方法であって、
固体の反応物質を含んでなる流体を、第1のチャンバー及び第1のチャンバーの下流の複数の副次的チャンバー(前記副次的チャンバーは第1のチャンバーと流体連通する)に通過させ;
前記固体の反応物質を1つ以上の副次的反応物質と反応させ;
第1のチャンバーの開始時容積を減少させて、流体及び固体の反応物質を第1のチャンバーから近接する副次的チャンバーに強制的に送り;及び
第1のチャンバーの容積を、第1のチャンバーへの流体流入速度よりも小さい又は等しい速度で開始時容積に増大させる
ことを含んでなる、方法。
【請求項37】
容積の減少を容積の増大よりも速い速度で行う、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
容積の減少を1回目とは異なる速度で又は異なる容積で繰り返すことを含んでなる請求項35に記載の方法。
【請求項39】
第1のチャンバーの容積を、第1のチャンバーに配置されたピストンを延ばすこと、嚢を拡張させること及び/又はライナーを曲げることによって減少させる、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
流体が第1のチャンバーから複数の副次的チャンバーに垂直方向で上方に通過する、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
追加の反応物質をチャンバーの少なくとも1個に流入させることを含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
チャンバーの少なくとも1個において流体を冷却することを含んでなる、請求項35記載の方法。
【請求項43】
1個以上のチャンバーに流体を直接供給することを含んでなる請求項35に記載の方法。
【請求項44】
チャンバーの1個、1個以上、又は全てにおいて流体を撹拌することを含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
開始時容積の減少が第1のチャンバーの開始時容積の3~20%である、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
容積の減少を、5秒以下、2秒以下、1秒以下、0.5秒以下、0.1秒以上、0.3秒以上、0.5秒以上、又は1秒以上で完了する、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
容積の減少が、第1のチャンバーから第2のチャンバーへの流体及び沈殿物のパルスを生じ、パルスは1分当り1回以上、2回以上、3回以上、及び10回以上繰り返される、請求項35に記載の方法。
【請求項48】
容積の減少が、第1のチャンバーから第2のチャンバーへの流体及び沈殿物のパルスを、1日当たり1以下、1日当たり10以下、1時間当たり1以下、又は1時間当たり10以下の割合で発生させる、請求項35に記載の方法。
【請求項49】
容積の減少を容積の増大よりも速い速度で行う、請求項36に記載の方法。
【請求項50】
容積の減少を1回目とは異なる速度で又は異なる容積で繰り返すことを含んでなる請求項36に記載の方法。
【請求項51】
第1のチャンバーの容積を、第1のチャンバーに配置されたピストンを延ばすこと、嚢を拡張させること及び/又はライナーを曲げることによって減少させる、請求項36に記載の方法。
【請求項52】
流体が、第1のチャンバーから複数の副次的チャンバーに垂直方向で上方に通過する、請求項36に記載の方法。
【請求項53】
追加の反応物質をチャンバーの少なくとも1個に流入させることを含んでなる、請求項36に記載の方法。
【請求項54】
チャンバーの少なくとも1個において流体を冷却することを含んでなる、請求項36に記載の方法。
【請求項55】
1個以上のチャンバーに流体を直接供給することを含んでなる請求項36に記載の方法。
【請求項56】
チャンバーの1個、1個以上、又は全てにおいて流体を撹拌することを含んでなる、請求項36に記載の方法。
【請求項57】
開始時容積の減少が第1のチャンバーの開始時容積の3~20%である、請求項36に記載の方法。
【請求項58】
容積の減少を、5秒以下、2秒以下、1秒以下、0.5秒以下、0.1秒以上、0.3秒以上、0.5秒以上、又は1秒以上で完了する、請求項36に記載の方法。
【請求項59】
容積の減少が、第1のチャンバーから第2のチャンバーへの流体及び沈殿物のパルスを生じ、パルスは1分当り1回以上、2回以上、3回以上、及び10回以上繰り返される、請求項36に記載の方法。
【請求項60】
流体が分散液又は懸濁液からなるものである、請求項36に記載の方法。
【請求項61】
容積の減少が、第1のチャンバーから第2のチャンバーへの流体及び沈殿物のパルスを、1日当たり1以下、1日当たり10以下、1時間当たり1以下、又は1時間当たり10以下の割合で発生させる、請求項21に記載の方法。
【請求項62】
第1のチャンバーの容積を、元の容積の少なくとも95%、98%、99%又は100%に増大させる、請求項21に記載の方法。
【請求項63】
流体が液体を含んでなるものである、請求項21、35、又は36に記載の方法。
【請求項64】
流体が溶液を含んでなるものである、請求項21、35、又は36に記載の方法。
【請求項65】
流体が混合物を含んでなるものである、請求項21、35、又は36に記載の方法。
【請求項66】
チャンバーが垂直方向で整列するか、又は水平方向で整列する、請求項8に記載の装置。
【請求項67】
沈殿が結晶化を含んでなるものである、請求項21~34のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
下流側チャンバーから上流側チャンバーへの逆流を阻止するために構成又は準備された逆止弁を含んでなる、請求項1~20のいずれかに記載の装置。
【請求項69】
複数の逆止弁を含んでなる、請求項68に記載の装置。
【請求項70】
逆止弁が受動的逆止弁である、請求項68に記載の装置。
【請求項71】
逆止弁が能動的逆止弁である、請求項68に記載の装置。
【請求項72】
2個の近接するチャンバーの間の逆流を阻止するための手段を含んでなる請求項1~20のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、流体からの化合物の沈殿及び固体が関与する連続的化学反応に係る。殊に、本開示は連続沈殿法及び連続化学反応とともに、連続沈殿を実施するための装置を対象とする。
【背景技術】
【0002】
溶液からの溶質の沈殿は、有機及び無機の化合物の両方を生成及び精製するために使用されている。沈殿又は特に結晶化は、連続法又はバッチ法を使用して行われ、両技術は医薬産業において使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
バッチ法及び連続法は、各々、特に能率と純度との間のトレードオフをもたらす。連続反応又は沈殿システムにおいて固体を運動させ続けることは多数の技術的チャレンジを示す。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1態様では、連続化学処理装置が提供され、当該装置は、流体連通する第1及び最終のチャンバーを含む線状の複数のチャンバー、第1のチャンバーと流体連通する入口、複数の撹拌機(複数の撹拌機の各々は複数のチャンバーの1つに配置される)を含んでなり、複数のチャンバーの少なくとも1つは、第1の容積及び第2の容積の両方を保持するように(第2の容積は第1の容積よりも小さい)構成及び準備される。第1の容積は第2の容積よりも少なくとも5%、10%、15%、20%、50%、80%、90%又は95%大きい。容積モジュレーターを含めることができ、容積モジュレーターはチャンバーの容積を変更するために配置及び配列される。装置のチャンバーは連続して流体連通しており、ライナーは複数のチャンバーの少なくとも1つの表面と接触することができる。ライナーは可撓性であり、第1のチャンバーの容積が変更される際に曲げられる。ハウジングは、金属、合金、セラミック、ポリマー及びガラスの少なくとも1つから構成される。チャンバーは、装置が動作中の際、相互の関連で直線的に配置され、例えば、垂直に又は水平に一列に整列される。ハウジングは第1の部分及び第2の部分を含むことができ、第1及び第2の部分は可逆的に接続されて流体シールを形成する。容積モジュレーターを制御するためにマイクロプロセッサーが含まれる。容積モジュレーターはチャンバーの容積を溶液の流入速度を越えない又は等しい速度で増大できる。容積モジュレーターはピストン、嚢、機械的ローラー、加圧流体、又は隔膜である。共通のシャフトによって駆動される羽根車によって撹拌が行われる。装置は、少なくとも3個、少なくとも5個、少なくとも10個、又は少なくとも20個のチャンバーを含むことができ、チャンバーの1個以上は実質的に球形である。チャンバーは、1のチャンバーを次のチャンバーに接続する通路又は近接するチャンバーの容積の直接オーバーラップによって流体的に接続される。チャンバーの少なくとも1個の容積は、10L以下、1L以下、500 ml以下、250 ml以下、100 ml以下、50ml以下、25ml以下、1ml以上、5ml以上、10ml以上、50ml以上、100 ml以上、500 ml以上、1L以上、5L以上、又は10L以上である。装置は、第1の容積、第2の容積、又はその両方を変更するために配列又は配置された容積モジュレーターを含むことができ、モジュレーターは、第1のチャンバー、最後のチャンバー、又は中間のチャンバーにおいて第1の容積又は第2の容積を変更できる。装置は1個以上のチャンバーと熱的に連通するクーラー又はヒーターを含むことができる。
【0005】
他の態様では、記載された装置は、固体を含有する溶液をデバイス内で移動させる手段を提供する。この装置は、固体を生成する、又は固体との相互作用を伴う、又は反応物質又は触媒として固体を要求する化学反応を行うために使用される。
【0006】
他の態様では、流体から物質を連続して沈殿させる方法が提供され、当該方法は、第1のチャンバー及び第1のチャンバーの下流の複数の副次的チャンバー(前記副次的チャンバーは第1のチャンバーと流体連通する)に流体を通過させ、チャンバーの少なくとも1個において物質の一部を沈殿させ(前記チャンバーの少なくとも1個はゼロのヘッドスペースを有する)、前記少なくとも1個のチャンバーの開始時容積を減少させて流体及び沈殿物を前記少なくとも1個のチャンバーから近接する副次的チャンバーに強制的に送り、及び前記少なくとも1個のチャンバーの容積を、前記少なくとも1個のチャンバーへの流体の流入速度よりも小さい又は等しい速度で開始時容積の少なくとも90%に増大させることを含んでなる。流体は過飽和の溶液である。容積を減少させることは、容積を増大させることよりも速い速度で行われる。デバイスの作動の間、容積変化の量、減少速度及び増大速度は変更される。第1チャンバーの容積は、ピストンを延ばすこと、嚢を拡張させること及び/又は第1のチャンバーに配置されたライナーを曲げることによって減少される。沈殿される物質は医薬でもよい。流体は第1のチャンバーから複数の副次的チャンバーに垂直方向で上方に通過できる。逆溶媒はチャンバーの少なくとも1個に流入される。チャンバーの少なくとも1個における流体は冷却される。溶液は1個以上のチャンバーに供給されてもよい。溶液はチャンバーの1個、1個以上、又は全部において撹拌される。開始時容積の減少は、第1のチャンバーの開始時容積の3~20%であり、減少は5秒以下、2秒以下、1秒以下、0.5秒以下、0.1秒以上、0.3秒以上、0.5秒以上、又は1秒以上で完了される。容積の減少は、第1のチャンバーから第2のチャンバーへの流体及び沈殿物のパルスを生ずることができ、パルスは1分当り1回以上、2回以上、3回以上、又は10回以上繰り返される。同一及び他の具体例では、流体及び沈殿物のパルスは、1日当たり1以下、1日当たり10以下、1時間当たり1以下、又はい時間当たり10以下の割合で発生される。
【0007】
他の態様では、固体が関与する化学反応を容易にする方法が提供され、当該方法は、第1のチャンバー及び第1のチャンバーの下流の複数の副次的チャンバー(前記副次的チャンバーは第1のチャンバーと流体連通する)に流体を通過させ、2つ以上の反応物質を流体中で反応させ、1個以上のチャンバーにおいて固体を生成し、第1のチャンバーの開始時容積を減少させて流体及び沈殿物を第1のチャンバーから近接する副次的チャンバーに強制的に送り、及び第1のチャンバーの容積を、第1のチャンバーへの流体の流入速度よりも小さい又は等しい速度で開始時容積に増大させることを含んでなる。チャンバーは垂直方向に一列に整列されるか又は水平方向に一列に整列される。装置は近接するチャンバー間の流路に逆止弁を含むことができ、当該逆止弁は下流側チャンバーから上流側チャンバーへの流体の逆流を阻止するために配列及び配置される。装置は複数の逆止弁を有することができる。逆止弁は受動的逆止弁であり、又は逆止弁は能動的逆止弁である。各種の具体例では、装置は近接する2個のチャンバー間の逆流を阻止するための手段を含んでなることができる。
【0008】
他の態様では、固体が関与する化学反応を容易にする方法が提供され、当該方法は、固体の反応物質を含んでなる流体を、第1のチャンバー及び第1のチャンバーの下流の複数の副次的チャンバー(前記副次的チャンバーは第1のチャンバーと流体連通する)に通過させ、前記固体の反応物質を1以上の副次的反応物質と反応させ、第1のチャンバーの開始時容積を減少させて流体及び固体の反応物質を第1のチャンバーから近接する副次的チャンバーに強制的に送り、及び第1のチャンバーの容積を、第1のチャンバーへの流体の流入速度よりも小さい又は等しい速度で開始時容積に増大させることを含んでなる。容積の減少は、容積を増大させるよりも速い速度で行われる。方法は、第1の時間とは異なる速度又は異なる容積にて容積の減少を繰り返し行うことを含むことができる。第1のチャンバーの容積は、ピストンを延すこと、嚢を拡張させること及び/又は第1のチャンバーに配置されたライナーを曲げることによって減少される。流体は第1のチャンバーから複数の副次的チャンバーに垂直方向で上方に通過できる。方法はチャンバーの少なくとも1個に追加の反応物質を流入すること、チャンバーの少なくとも1個で流体を冷却すること、流体を1個以上のチャンバーに直接供給すること、流体をチャンバーの1個、1個以上、又は全部における撹拌することを含むことができる。方法では、開始時容積の減少は第1のチャンバーの開始時容積の3~20%でもよい。容積の減少は、5秒以下、2秒以下、1秒以下、0.5秒以下、0.1秒以上、0.3秒以上、0.5秒以上、又は1秒以上で完了される。容積の減少は、第1のチャンバーから第2のチャンバーへの流体及び沈殿物のパルスを生ずることができ、パルスは1分当り1回以上、2回以上、3回以上、又は10回以上繰り返される。流体は、溶液、分散液及び/又は懸濁液である。方法は、第1のチャンバーから第2のチャンバーへの流体及び沈殿物のパルスを、1日当たり1以下、1日当たり10以下、1時間当たり1以下、又は1時間当たり10以下の割合で発生させる容積の減少を含むことができる。第1のチャンバーの容積は、元の容積の少なくとも95%、98%、99%又は100%に増大される。流体は液体からなることができ、流体は溶液でもよく、流体は混合物でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】連続沈殿装置の第2の具体例の概要図である。
【
図3】連続沈殿装置の第3の具体例の概要図である。
【
図4】連続沈殿方法の1具体例を示すフローチャートである。
【0010】
図面は、説明のみを目的として本開示の各種の具体例を示すものである。幾多の変更、変形及び他の具体例が以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1態様では、生産スケールにスケールアップ又は実験室スケールにスケールダウン可能であり、高い結晶純度レベルを保持しつつ保持時間を最大化できる連続結晶化装置が開示される。連続結晶化装置は、医薬、ファインケミカル及びスペシャリティーケミカルズ、天然物、生物製剤、食品及び飲料を含む多数の産業及び化学合成及び精製において使用される。システムは、液体、溶液及び混合物を含む各種の流体とともに使用される。
【0012】
1セットの具体例では、デバイスは、連続して流体連通する1セットの連結されたチャンバーを含むことができる。チャンバーは、同じ又は同様の形状及び容積であり、角を有していなくてもよい。例えば、チャンバーは球形又は卵形である。1個以上のチャンバーは容積可変である。例えば、チャンバーは、可動性表面、例えば、隔膜、又は内方に移動させ、これによりチャンバーの容積を減少させることができるピストンを含むことができる。この容積の減少は、チャンバーから第1のチャンバーと流体連通する第2(及び第3及び第4及びそれ以降)のチャンバーへの流れの突然の増大(パルス)を生じさせる。チャンバーにおけるヘッドスペースの不在は、容積の減少が流体(例えば、水)の瞬時のアウトフローを生じさせることを指図する。流体及び懸濁する固体のこのパルスは、閉塞することなく、溶液及び沈殿物を次のチャンバーに移送することを補助できる。流れのパルスの後、隔膜又はピストンを縮めてチャンバーの容積の増大を生じさせ、典型的には、その元の容積に戻す。チャンバーの容積の増大は、オリフィス、通路又は弁を介して第1のチャンバーに供給される溶液又は他の液体によって行われる。
【0013】
他の具体例では、デバイスは、固体を生成する又は固体の反応物質を必要とする化学反応を行うために使用される。第1のチャンバーにおける制御された容積の減少は、デバイス内でのスラリーの運動を許容する。反応物質は第1のチャンバーにおいて、又は他のチャンバーの1個以上において混合される。
【0014】
ここで使用する「沈殿」は、固体反応物質の初期の形成及び/又は成長を含む。沈殿は播種される(初期に固体が存在する場合、その固体が、続く初期の物質の上で固体物質の沈着を介して成長し、より大きい固体物質を形成する)か、又は播種されなくてもよい(初期に固体が存在しない場合でも、初期溶液又は他の前駆体含有液体の溶解した、或いは非固体成分から固体が形成する)。「結晶化」は、結晶性の固体物質の初期形成及び/又は成長を伴う沈殿のサブセットである。結晶化は播種されるか又はされなくてもよい。結晶化は、多結晶物質又は単結晶粒子の形成を生ずる。いくつかのケースでは、結晶性及び無定形の両方の物質が形成される。
【0015】
連続沈殿プロセスはバッチ式沈殿とは異なる。連続沈殿では、沈殿(例えば結晶)がシステムから除去されると同時に、沈殿されるべき生成物の溶液がシステムに供給されるため、処理中の液体の総容積は本質的に一定である。例えば、連続沈殿の際、システムの容積は、プロセスの間に、1%以下、5%以下、10%以下、20%以下、又は30%以下で変動できる。バッチ式結晶化では、流入及び流出は同時ではない。連続プロセスはバッチ間の変動は避けられるが、典型的には、バッチ式プロセスよりも収率が低い。沈殿物(例えば結晶化物質)の質は、例えば、純度、粒径、形態、多形、光学密度、キラリティー及び収率を含む多くの特性を測定することにって評価される。連続管状結晶化装置は、栓流、セグメント流、振動バッフル結晶化装置として分類される。セグメント流及び栓流は、小型の実験室的スケール(例えば1L以下)において良好に作動することは示されていなかった。振動技術は理論的には実験室的スケールで作動できるが、これまでのところ、振動技術及び装置は一貫した実験室的スケールでの実施を達成することにおいて成功していない。ここに記載の装置及び技術は、公知の技術と比較して、例えば、収率、純度、粒度及び形態を改善できる効果的な結晶化のためのスケーラブルの方法を提供する。
【0016】
[概要]
連続沈殿装置100の1具体例の概要図を
図1に示す。図は、球形のチャンバー110、120、130及び140を限定するハウジング102を含む。また、出口170とともに、入口114、124、134及び144が示されている。ピストン180は滑動可能であり、そのチャンバー内及びチャンバー外への動きは第1のチャンバー110の容積を減少及び増大させることができる。撹拌機(このケースでは羽根車)112、122、132及び142が、それぞれ、チャンバー110、120、130及び140に配置されている。羽根車は別個に駆動されもよく、共通の駆動軸160によって駆動され得る。示すように、流体は、チャンバー110から120、130、140へと上方に通過できる。示すように、チャンバーは相互に直接的流体連通しており、1のチャンバーから次のチャンバーに物質を移動させるために任意の移送管を必要としない。
【0017】
ハウジング102は、チャンバーを収容し、羽根車、ポンプ、ピストン及び他の補助部品を支持できる各種の材料から形成される。ハウジングはチャンバーを支持する各種の形状であり、
図1に示すように円筒状である。材料は耐食性であり、チャンバーを通って流動する溶液を汚染する物質を含まないものでなければならない。好適な材料としては、金属、合金、セラミック、ガラス、ポリマー及び強化ポリマーが含まれる。具体例としては、ステンレス鋼、鉄合金、ハステロイ、アルミニウム、チタン、PTFE、ETFE、PVDF、PP、PEEK、FEP、PFA、ガラス強化ポリマー、ガラス及びセラミックが含まれる。ハウジングは鋳造されるか、材料のブロックから機械加工される。いくつかの具体例では、3Dプリントされる。チャンバーは鋳造又は機械加工されてもよく、表面処理(例えば、陽極酸化、電着、電解研磨、塗装及び専門材料又はポリマーによる被覆)を含んでもよい。
【0018】
ハウジング102は、各種の数のチャンバー、例えば、110、120、130及び140を含むことできるが。チャンバーは直線的に配置されてもよく、各々において一貫した滞留時間を促進するために同様の又は同一のサイズとされる。直線的に配置されるとは、第1のチャンバーからのアウトプットが第2のチャンバーのインプットとなり、第2のチャンバーからのアウトプットが第3のチャンバーのインプットとなり、この様式がn番目のチャンバーまで続くことを意味する。チャンバーのサイズは、例えば、滞留時間が変更されなければならない時に変更される。チャンバーの数が増大するにつれて、滞留時間分布(RTD)は密になる。種々の具体例では、装置は2個以上、3個以上、5個以上、10個以上、15個以上、20個以上、又は25個以上のチャンバーを含むことができる。チャンバーは、
図1に示すように垂直方向で配置され、
図2の具体例において示されるように、水平方向で配置されるか、或いは垂直方向及び水平方向の組み合わせとして配置される(その具体例が
図3に示されている)。いくつかのケースでは、全てのチャンバーが水平方向で配置される。他のケースでは、全てのチャンバーが垂直方向で配置される。1具体例では、チャンバーは個々のモジュールであり、積み木のように異なった配列で垂直方向又は水平方向で結合させる。いくつかの具体例では、近接するチャンバーは相互に流体連通し、近接するチャンバー間の距離はゼロである。この幾何形状により、1のチャンバーから次のチャンバーへの結晶又は他の沈殿物の流動を妨害又は妨げる移送管、通路又は溝を排除できる。作動の間、チャンバーはわずかなヘッドスペースを含むか又は含まない。いくつかのケースでは、全てのチャンバー(任意に最後のディスペンシングチャンバーを除く)がヘッドスペースを持たず、作動の間、溶液の導入点から最終チャンバー(結晶出口)までヘッドスペースが存在しない。
【0019】
ハウジング102は、1個、2個又はそれ以上のチャンバーに又はそれに近接して観察窓172を含むことができる。観察を改善するため、チャンバーの少なくとも一部を照明するように、例えば、観察窓に対向して明かりが配置される。加えて、プロセスのリアルタイム分析を提供するため、1個以上のチャンバーはセンサーを含むことができる。沈殿又は反応の前、その間及び/又はその後に測定されるパラメーターとしては、例えば、流量、温度、圧力、濁度、粒子数、及び粒径が含まれる。プロセスのリアルタイムモニタリングを可能にするため、1個以上のチャンバーは、明かり、レーザー、光学センサー、温度計、圧力センサー、流量計、粒子カウンター、PATプローブ、粒径分析器及び濁度センサーを含むことができる。
【0020】
いくつかの具体例では、ハウジングは、1以上のチャンバーの壁と流体が処理されるチャンバーの内部空間との間にバリヤーを提供するライナーを含むことができる。ライナーは各チャンバー内に別々に配置された個々のライナーであるか、又は複数のチャンバーを裏打ちする単一のライナーでもよい。いくつかのケースでは、ライナーは隔膜又は嚢として作用でき、チャンバーの容積を調節するために使用される。ライナーは、溶液がチャンバーの内壁と接触すること及び/又はライナー材料と反応することを阻止する不活性材料である。これは、厳格な製造要件が求められる医薬のような化合物が接触する無菌、清浄、不活性の表面を提供できる。ライナーは、また、装置を清浄化又は殺菌することを必要とすることなく、異なる沈殿操作の間で迅速な変更を許容する。異なるライナー材料は、また、さまざまな表面エネルギー及び疎水性/親水性(チャンバーの金属壁と比較して結晶を保持する傾向が低い)を発揮できる。いくつかのケースでは、ライナーは十分な可撓性及び弾力性であり、ピストン、隔膜、空気圧、又は他の容積モジュレーターからの繰り返しの曲げに耐えることができる。ライナーの組成は、実施する具体的な沈殿操作によって調整される。ライナーは、例えば、鋳造、押出成形、打ち抜き、又は型押しされる。好適なライナー材料としては、ポリマーフィルム及び射出成型ポリマーのような可撓性の材料が含まれる。具体的な材料の例としては、PTFE、PPS、PEEK、FEP、PFA、ETFE、POM、EPDM、FKM及びFFKM及びこれらの及び他のポリマーの組み合わせのような不活性のポリマーが含まれる。
【0021】
個々のチャンバーは、結晶/固体の保持又は混合を妨げる可能性がある幾何形状を回避するように形成される。例えば、チャンバーは、いくつかの角、例えば、8個以下、4個以下、2個以下、又は0個の角を含むことができる。チャンバーは、平面壁を欠いていてもよく、1の連続する曲線的な壁からなっていてもよい。壁は各種のインプット及びアウトプットのためのオリフィスを含むことができる。各種の具体例では、チャンバーの1個以上は、球形、卵形及び/又は楕円形でもよい。同様の又は同一の滞留時間を生ずるために、チャンバーは同様の又は同一のサイズである。チャンバーの容積は、一部は、処理中の溶液の量によって決定される。一般に、製造プロセスは、実験室的スケールのプロセスよりも大きいチャンバーを利用するであろう。各種の具体例では、1個以上のチャンバーの容積は、1L以下、500 ml以下、250 ml以下、100 ml以下、50ml以下、10ml以上、20ml以上、50ml以上、100 ml以上、500 ml以上、1L以上、5L以上、又は50L以上である。装置の総容積(複数のチャンバーの合計)は、5L以下、2L以下、1L以下、500 ml以下、又は250 ml以下である。他のケースでは、総容積は、250 ml以上、500 ml以上、1L以上、5L以上、50L以上である。
【0022】
いくつかの具体例では、チャンバーは、チャンバーにおける撹拌(乱流)を促進する構造を備えることができる。構造は、バッフル(例えば、鋳造されるか又はチャンバー壁に取り付けられるか、鋳造されるか又は内壁に取り付けられるか、又は混合軸に取り付けられる)を含む。これらの混合構造は恒久性でもよく、又はチャンバーから着脱可能で、単回使用される。バッフルは金属又はポリマーのような不活性の材料からなる形成される。バッフルの例は、ここで定義する通路を含むペルフルオロポリマーシートである。シートは、例えば、2つのハウジングの半分の間に取り付けられる。
【0023】
チャンバーは、上流側チャンバー、下流側チャンバー又はその両方を流体連通する。流体連通は
図1に示すようなチャンバーの直接オーバーラップによって、又は装置への鋳造又は機械加工された配管又は溝のような接手を使用することによって達成される。流体連通接手は、チャンバー間の流体連通を許容するハウジング内の管、コネクター又は溝である。経路は逆止弁を含むことができる。各種の具体例では、これらの経路の容積は50m1以下、10ml以下、5ml以下、又は1ml以下である。いくつかの具体例では、溝又はコネクターは閉塞を回避するような大きさとされる。例えば、溝又はコネクターはチャンバーの平均直径の1以下、1/2以下、1/4以下又は1/10以下の長さを有することができる。いくつかの具体例では、溝は非可撓性であり、管材料又は他の可撓性材料からは構成されない。接続溝は、上流の溶液が一連のチャンバーを介してパルス化される際に、著しい背圧の原因とはならないように十分な幅を有する。
【0024】
チャンバーの1個以上は、結晶化装置を通してチャンバーからチャンバーへと下流側に移動する流体及び結晶のパルスを発生させるチャンバーの容積減少を提供するように駆動される容積モジュレーターと流体連通される。容積モジュレーターは、また、チャンバーをその元の容積に戻するようにリトラクトされる。容積モジュレーターは、チャンバーの容積を変更するためにチャンバーを拡大及び退縮できる可動性の表面を含んでなることができる。容積モジュレーターは、例えば、ピストン、嚢、隔膜、ソレノイド、ローラー、又は加圧流体(例えば、ライナーの背後)を含んでなることができる。容積モジュレーターは、容積モジュレーターの働きを変動させるようにプログラミングされるマイクロプロセッサーによって制御される。制御されるパラメーターとしては、例えば、容積減少の量、容積減少の速度、モジュレーターの退縮(容積の増大)前の待ち時間、退縮の速度、及び退縮の量が含まれる。容積モジュレーターは、例えば、チャンバーの元の容積の1%以上、2%以上、5%以上、10%以上、20%以上、又は30%以上でチャンバーの容積を減少及び/又は増大させることができる。容積の減少又は増大は、0.1~10秒、0.1秒以上、10秒以上、30秒以上、60秒以下、30秒以下、又は10秒以下の期間で生ずる。減少又は増大の速度は、また、シングルストロークの間に変動される。例えば、初期ストロークは、ゆっくりと、例えば1ml/秒で開始でき、ストロークの最終までに10ml/秒まで上昇される。或いは、ストロークを急速で開始し、最終で弱められる。容積モジュレーターの作動によって移動される流体の容積(絶対量)は、例えば、1ml以上、5ml以上、10ml以上、又は50ml以上である。他の具体例では、シングルストロークの容積は、例えば、1L以下、500 ml以下、100 ml以下、50ml以下、又は10ml以下である。容積モジュレーターの運動の結果としての1のチャンバーから次のチャンバーへの流速は、1ml/秒以上、2ml/秒以上、5ml/秒以上、10ml/秒以上、50ml/秒以下、10ml/秒以下、又は1ml/秒以下である。
【0025】
いくつかの具体例では、装置は下流側チャンバーから上流側チャンバーへの逆流を防止又は低減する手段を含むことができる。これらの逆流防止手段は、チャンバー間の流動が一方向でのみ生ずることを確実にすることができる。これらの逆流防止手段は、ゲート、弁、締め付け器のような逆止弁を含むことができる。逆流防止手段は、液体及び固体の両方が目的の方向へ移動することを確実にすることができ、このようにして逆混合を排除し、栓流特性を改善する。このような逆止弁は各種の方法で達成される。受動的な逆止弁は、流動方向の変化に対して受動的に作用するものである。能動的な逆止弁は、マイクロプロセッサー又は機械的インターフェースによるような、外部的に活性化されるものである。1具体例では、柔軟なプラスチックのディスクが羽根車の軸に搭載される。ディスクは、チャンバーと下流側チャンバーの表面上のレストとの間の隙間の直径よりも大きい直径を有する。スラリーの前方への動きに応じて容積変動が発生すると、ディスクは、流動に対する最小の又はゼロの抵抗に反対して上方に曲げられるか又は持ち上げられる。パルスが終わると、ディスクは、チャンバーとの接触及びディスクと軸との間の液体密封シールのため、戻り易い(例えば、重力による)流動に対する停止を提供する。ディスクは、軸に結合されたリングのような簡単な拘束具によって軸にしっかりと固定されるか又は滑動可能に固定される。このように、ディスクは軸上を滑動できないか、上下にぱたぱたと動くことができるのみであり、流路を提供するか又はそれを防止する。他の具体例では、ディスク又はコーン又は他の弁構造体が混合ロッドに取り付けられ、混合ロッド全体はチャンバー間の通路を開く又は閉じるようにシフトできる。軸上を制御された方法で滑動できる剛性要素のような単一方向への流動を提供する他の手段が配置される。単一方向の流動は弾性の逆止弁によっても達成され、これらは軸の上に搭載されるか、されなくてもよい。1例として、弾性の逆止弁は、混合が回転要素に拠らない手段によって達成されるため、軸を有していない装置において使用される。
【0026】
図1は容積モジュレーターの例としてのピストン180を示す。ピストン180はチャンバー110の容積を減少又は増大させるために横方向に動くことができる。同様に、ピストン182は最終のチャンバー140の容積を減少又は増大させるために動かされる。ピストン180の起動は、チャンバー120、130及び140を通って上方に(図示するように)移動する液体及び固体/結晶のパルスを生ずる。ピストン180が引っ込められると、ピストン180の退縮に起因して、溶液、例えば、懸濁化した溶液又は反応物質がポート114を通って供給され、増大する容積を構成できる。このようにして、システムを通る逆流が回避される。ピストン182の起動は、出口170(この部位で固体/結晶が収集される)を通る固体/結晶を含む流体のパルスを生ずる。チャンバー110、120、130及び任意の140においてヘッドスペースが存在しないことは、容積の減少のみがチャンバー140における液体の押上げ及び押出しすることを意味する。ピストン180は、ピストンがチャンバー内に動かされる際に、羽根車のクリアランスを許容する切り取り部を含むことができる。
【0027】
チャンバーは、例えば、溶液、逆溶媒、溶媒又は反応物質との流体的連通を提供する1以上のポートを具備できる。逆溶媒は、流体における標的化合物の溶解度が非常に低いことにより沈殿を促進する1以上の液体である。逆溶媒は一般に溶液において混和性であるが、標的化合物は逆溶媒には僅かにのみ溶解する。各チャンバーはゼロ、1個、2個、3個又はそれ以上のポートを伴うことができる。ポートは1種類の流体に専用であるか、2以上の異なった流体のために使用されてもよい。例えば、ポート114は溶液又は逆溶媒のいずれかをチャンバー110に供給するために使用され、ポート124は溶液のために独占的に使用され、ポート126は逆溶媒のために独占的に使用される。ポート114、124、134、144、及び126は弁を含んでいてもよく、溶液リザーバー又は逆溶媒リザーバーと流体連通される。流体ポートは個々に制御又は配管されるか、又は溶液源、逆溶媒源又は添加物源と並列に配管されてもよい。流体ポートは、圧力の増大中、例えば、パルス中における逆流を防止するために一方向弁を含んでもよい。
【0028】
いくつかの沈殿方法では、特に結晶化方法では、生成物の結晶化以前に溶液は過飽和に達している。線状システムでは、線状チェーンの第1のチャンバー、最終のチャンバー、いずれかのチャンバー内で達成される。過飽和は、例えば、n番目のチャンバーを冷却することによって又はn番目のチャンバーに逆溶媒を注入することによって達成される。他の具体例では、溶液、懸濁液、又は混合物のいずれかにおける成分を反応させて、反応の結果として、不溶性生成物、従って沈殿(いくつかのケースでは、結晶)を生成する。この沈殿又は結晶化は、温度又は逆溶媒の添加のようなパラメーターの変更には無関係である。
【0029】
多くの具体例では、1個以上のチャンバーの温度制御は沈殿又は反応を促進する。例えば、チャンバーの1個、2個、3個又はそれ以上が冷却を含むことができる。他の具体例では、装置全体を冷却又は加熱することができる。温度調節は制御されるチャンバーと近接して通過する冷媒回路の使用を介して実行される。例えば、回路はチャンバーを包囲することができ、
図1において184a、184b、184c及び184dで示すように、回路はチャンバーの周りをらせん状に周囲して十分な温度調節を提供する。示す具体例では、回路はチャンバーとは流体連通しておらず、熱の移動は、ハウジング材料102の一部を介して、回路184とチャンバー120との間で生ずる。装置は、回路184に加熱された又は冷却された流体を提供できる外部加熱源又は冷却源を有することができる。チャンバーにおける温度センサーは一定の温度の示度を提供して、温度のリアルタイム制御を確実にする。温度は一定のレベルに上昇または低下されるか、又は沈殿プロセスの進行に伴い上下される。他の具体例では、冷却又は加熱は、冷却された又は加熱された溶液又は逆溶媒を1個以上のチャンバーに直接導入することによって提供される。温度は、沈殿に有益な温度傾斜を達成するため各チャンバーで異なってもよい。例えば、栓流特性を有する複数のチャンバーは、結晶のサイズ及び形状における変動制を低減するより堅固な滞留時間分布を許容する。
【0030】
[プロセス]
図4は連続沈殿プロセスの1具体例を説明するフローチャートを提供する。記載された行動は、他の具体例では任意であり、2度繰り返されるか、又は実行される。
図1の装置は下記のプロセスの具体例に関連して参照される。
【0031】
図1の装置を提供するために、ハウジング102は、相補の半分部分を一緒に配置し、これらを緊密にボルト止めして流体密閉シールを提供するによって組み立てられる。供給ライン及び冷却ラインを取り付け、各種の機械的結合(例えば、羽根車のドライブ)を行う。1以上のライナーが使用される場合には、ライナーは装置を封止及び密閉する前に設置される。
【0032】
第1のチャンバー110は、ポート114を介して溶液を充填することによって脱気される。溶液は、例えば、結晶化される化合物の懸濁化溶液である。チャンバー110に充填した後、溶液を続くチャンバー120、130及び140に連続して充填する。いくつかのケースでは、続くチャンバーへの充填に時間的遅延があり、このため、例えば、溶液は、続くチャンバーへ前進する前に、各チャンバーにおいて特定の滞留時間を経験する。
【0033】
プロセスの間、いずれかの時点で、プロセスの促進(例えば、撹拌、逆溶媒の添加、及び温度制御(冷却))が開始される。例えば、プロセスの全体を通して羽根車が作動される。逆溶媒の添加は、例えば、1個以上のチャンバーにおいて断続的に、1個以上のチャンバーにおいて連続的に、又は特定のチャンバーによって異なった時間及び割合で行われる。
【0034】
改善された沈殿のためには、混合及び乱流を促進するように撹拌が使用される。撹拌機としては、例えば、ミキサー、羽根車、ブレンダー、流体ジェット、及び撹拌バーが含まれる。装置は、また、震盪又は振動されるが、チャンバーにおけるヘッドスペース及びガス相の不存在は、震盪を介する混合を、直接の機械的撹拌よりも効果の低いものとする。撹拌機は独立して又は一致して制御され、沈殿の間に調節される。同様に、使用可能なバッフルは独立して制御又は配置される。
【0035】
逆溶媒の添加は1以上のチャンバーにおいて行われるか、又は第1又はいずれかの他のチャンバーへの入場前に溶液と混合される。逆溶媒のポートは逆溶媒の源に配管され、逆溶媒はマイクロプロセッサーによって制御されるポンプを介して供給される。逆溶媒の流動は、マイクロプロセッサーからの指示に応じて開始、増大、減少、又は中止される。マイクロプロセッサーは、結晶化されている溶液の各種のパラメーターを監視できる。例えば、温度、濁度、粒子数、流量及び粒径が監視され、逆溶媒の流れは、これらのパラメーターの1以上の変化に応答して又は予測して調節される。
【0036】
図1に示されるように、個々のチャンバーは温度制御され、これにより、チャンバーは収容される溶液を室温以上又は以下に冷却又は加熱する。例えば、1以上のチャンバーにおける溶液は、周囲温度よりも5℃以上、10℃以上、15℃以上又は20℃以上低い温度に冷却される。他の具体例では、溶液は、周囲温度よりも5℃以上、10℃以上、15℃以上又は20℃以上高い温度に加熱される。チャンバーハウジングを冷却することに加えて、特定のチャンバーへの供給前に、溶液自体を冷却又は加熱することができる。逆溶媒も、1以上のチャンバーへ供給される前に加熱又は冷却される。
【0037】
下流側チャンバーへの溶液及び同伴される結晶をパルス化するために、容積モジュレーター180を作動させる。
図1の具体例において示されるように。、容積モジュレーターは、手動で又はマイクロプロセッサーによって制御されるピストンである。ピストンが右方向に(
図1に示すように)されると、チャンバーへの110の容積が減少され、この容積減少量が、同し容積の溶液を次のチャンバーにパルス化流動させる。同量の流体が第2のチャンバーから第3へと、第3から第4へとパルス化流動され、装置がフル能力状態であれば、等容積の溶液及び結晶が最終のチャンバーから分注される。システムを通る流体のパルスは、システムを通して一定の流量では生じない結晶の移動を提供できる。また、パルスは乱流を促進し、結晶の沈着を防止し、及び他の方法ではチャンバーの壁に接着する結晶を除去できる。ピストンを引っ込めると、ポート114を通る溶液の流動によって容積の増大が達成される。ピストン180とは異なり、ピストン182は装置の全体にわたってパルスを誘発しないが、機械的に連通する最終のチャンバーからの流体のみパルス化する。この最終のチャンバーのパルスは出口170を通る溶液及び結晶をパルス化できるが、上流側のチャンバーにおいてはヘッドスペースが欠けているため、最終のチャンバーに供給されている下流側の流動に対してわずかの効果を有するか、効果を有しない。ピストン182が引っ込められると、最終のチャンバーにおいてヘッドスペースが発現又は拡大するか、又は容積が下流側チャンバーからの供給物によって充満される。逆止弁が使用されるケースでは、容積は上流側のチャンバーから充満される。
【0038】
出口170を介して結晶が送達された後、結晶は単離され、洗浄され、所望の場合には、さらに処理される。結晶の単離は、例えば、濾過、遠心分離、又は溶媒の蒸発を介して行われる。結晶の洗浄は、当業者に知られた方法を使用して行われる。
【0039】
具体例についての上記記載は、例証及び説明を目的とするものである。これは本発明を徹底的に説明すること又は本発明を開示した厳密な様式に限定することを意図するものではない。開示に照らして、多くの変更及び変形が可能である。本発明の範囲はこの詳細な説明によっては限定されず、むしろ特許請求の範囲によって限定される。この出願に対して優先権を主張する後の出願は、開示された主題を異なる様式で特許請求でき、一般に、ここに色々に開示された又は別の方法で実証されたように1以上の制限の組み合わせを含むことができる。
【国際調査報告】