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特表2024-539772RF信号から血流の速度を測定する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-30
(54)【発明の名称】RF信号から血流の速度を測定する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
A61B8/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531529
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 KR2022018405
(87)【国際公開番号】W WO2023121002
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0187018
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514039912
【氏名又は名称】ナショナル キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デ・ウ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ドン・チャン・パク
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD03
4C601EE30
4C601JC04
4C601JC06
4C601JC23
(57)【要約】
本発明は、RF信号から血流の速度を測定する方法に関し、前記RF信号から変換された複素信号を、特異値分解を利用して基底信号に分解するステップと、前記基底信号をクラッタ信号、血流信号、及び雑音信号に分類するステップと、分類された前記クラッタ信号及び血流信号に基づいてクラッタ領域及び血流領域を分割する分割ステップと、前記クラッタ領域では前記クラッタ信号から前記血流信号を除去し、前記血流領域では前記血流信号から前記クラッタ信号を除去することで、出力信号を得るステップと、前記出力信号からスペックル非相関を計算して前記血流の速度を測定するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF信号から血流の速度を測定する方法において、
前記RF信号から変換された複素信号を、特異値分解を利用して基底信号に分解するステップと、
前記基底信号をクラッタ信号、血流信号、及び雑音信号に分類するステップと、
分類された前記クラッタ信号及び血流信号に基づいてクラッタ領域及び血流領域を分割するステップと、
前記クラッタ領域では前記クラッタ信号から前記血流信号を除去し、前記血流領域では前記血流信号から前記クラッタ信号を除去することで、出力信号を得るステップと、
前記出力信号からスペックル非相関を計算して前記血流の速度を測定するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記基底信号は、複数の個別基底信号の和で表され、
前記複数の個別基底信号の各々は、空間特異ベクトル、時間特異ベクトル、及び特異値を含み、
前記分類するステップでは、前記特異値に基づいて前記血流信号、前記クラッタ信号、及び前記雑音信号を分類する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分類するステップでは、前記特異値の大きさを基準にして前記血流信号及び前記クラッタ信号を分類する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分割するステップは、
前記血流信号及び前記クラッタ信号のうち少なくともいずれか一つに基づいて特徴マップを得るステップと、
前記特徴マップを映像分割して前記クラッタ領域及び前記血流領域を得るステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記特徴マップは、前記血流信号のエネルギーを示すエネルギーマップをデシベルスケールに変換して得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記特徴マップを得た後、前記特徴マップを平滑化するステップをさらに含み、
前記映像分割は、平滑化された前記特徴マップを対象に実行される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記血流の速度を測定するステップは、
前記出力信号の符号を抽出するステップと、
抽出された前記符号を1-bit相関器に入力して相関値を得るステップと、
前記相関値を補正して補正された相関値を得るステップと、
前記補正された相関値を、スペックルキャリブレーションを利用して血流の速度に変換するステップと、を含み、
前記スペックルキャリブレーションは、スペックル非相関とスペックル移動距離を測定したデータから得られる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RF信号から血流の速度を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、超微細手術などが発達しながら微細血管内に流れる血流量の測定が必要になった。また、心血管疾患の診断のための血管壁のせん断応力測定のために血管壁近くの血流速度測定が可能でなければならない。特に、手術中、血流量のリアルタイム測定が重要である。
【0003】
現在血流量は、ドップラ超音波測定法を利用して測定している。ドップラ超音波測定法は、平均血流量測定には効果的であるが、微細血流や血管壁近くの血流速度を測定するには空間解像度に問題がある。
【0004】
また、Fluorometryを利用した皮膚灌流検査法は、血管網を直接観察するには問題がある。
【0005】
組織学的観察を介した血管数測定法は、血管発達に対する定量分析がある程度可能であるが、検査者や切断された薄片に応じて、誤差の可能性が多い。
【0006】
血管造影術は、血管網の形態学的結果観察には適合するが、検査技術や実験動物の大きさに応じて解像力に差がある場合があり、血管化の定量分析には適合できなくて、結果観察時に単独で使用するには問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、RF信号から血流の速度を測定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記本発明の目的は、RF信号から血流の速度を測定する方法において、前記RF信号から変換された複素信号を、特異値分解を利用して基底信号に分解するステップと、前記基底信号をクラッタ信号、血流信号、及び雑音信号に分類するステップと、分類された前記クラッタ信号及び血流信号に基づいてクラッタ領域及び血流領域を分割する分割ステップと、前記クラッタ領域では前記クラッタ信号から前記血流信号を除去し、前記血流領域では前記血流信号から前記クラッタ信号を除去することで、出力信号を得るステップと、前記出力信号からスペックル非相関を計算して前記血流の速度を測定するステップと、を含むことにより達成される。
【0009】
前記基底信号は、複数の個別基底信号の和で表し、前記複数の個別基底信号の各々は、空間特異ベクトル、時間特異ベクトル、及び特異値を含み、前記分類するステップでは、前記特異値に基づいて前記血流信号、前記クラッタ信号、及び前記雑音信号を分類する。
【0010】
前記分類するステップでは、前記特異値の大きさを基準にして前記血流信号及び前記クラッタ信号を分類する。
【0011】
前記分割ステップは、前記血流信号及び前記クラッタ信号のうち少なくともいずれか一つに基づいて特徴マップを得るステップと、前記特徴マップを映像分割して前記クラッタ領域及び前記血流領域を得るステップと、を含む。
【0012】
前記特徴マップは、前記血流信号のエネルギーを示すエネルギーマップをデシベルスケールに変換して得られる。
【0013】
前記特徴マップを得た後、前記特徴マップを平滑化するステップをさらに含み、前記映像分割は、平滑化された前記特徴マップを対象に実行される。
【0014】
前記血流速度を測定するステップは、前記出力信号の符号を抽出するステップと、抽出された前記符号を1-bit相関器に入力して相関値を得るステップと、前記相関値を補正して補正された相関値を得るステップと、前記補正された相関値を、スペックルキャリブレーションを利用して血流の速度に変換するステップと、を含み、前記スペックルキャリブレーションは、スペックル非相関とスペックル移動距離を測定したデータから得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、血管断面RF信号から血流の速度を測定する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例に係る血流速度測定方法の流れ図である。
図2】空間特異ベクトルの類似度行列(similarity matrix)を示す。
図3a】Field IIシミュレーションで流速測定結果を示す。
図3b】Field IIシミュレーションで流速測定結果を示す。
図4】超音波流速測定実験装置を示す。
図5】In vitroファントム実験で血流速度測定手順を示す。
図6】In vitroファントム実験で信号処理前・後の血管縦断面B-mode映像を示す。
図7a】In vitroファントム実験で血流測定結果を示す。
図7b】In vitroファントム実験で血流測定結果を示す。
図8a】In vitroファントム実験で血管中心部の流速測定値を示す。
図8b】In vitroファントム実験で血管中心部の流速測定値を示す。
図9】In vivo実験で流速測定結果を示す。
図10a】In vivo実験で頸動脈測定超音波データのSVD結果を例示する。
図10b】In vivo実験で頸動脈測定超音波データのSVD結果を例示する。
図10c】In vivo実験で頸動脈測定超音波データのSVD結果を例示する。
図10d】In vivo実験で頸動脈測定超音波データのSVD結果を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0018】
添付図面は、本発明の技術的思想をより具体的に説明するために図示した一例に過ぎず、本発明の思想が添付図面に限定されるものではない。添付図面は、説明のために各部分の厚さや長さなどが誇張して表現されることができる。
【0019】
本発明は、血管内の血流速度、特に、微細血管内の血流速度を測定する方法を提供する。本発明では血流速度測定のための超音波信号処理技術及び血流速度測定アルゴリズムを提供する。
【0020】
以下、本発明による血流速度の測定方法の流れ図を示す図1を参照して本発明を説明する。
【0021】
まず、超音波プローブで収集されたRF信号を複素信号に変換(S110)する。
【0022】
この過程は、公知の方法を利用して実行することができ、I/Q復調及びデシメ―ション(decimation)が実行されることができる。
【0023】
次に、複素信号を、特異値分解を利用して基底信号に分解(S120)する。
【0024】
復調された超音波信号は、次のように表現される。
【0025】
【数1】
【0026】
ここで、Nはフレーム数、Mはフレーム当たりRFライン数、LはRFライン当たりサンプル数である。各フレームを列ベクトルに変換して超音波信号からLM×N大きさのデータ行列を構成する。
【0027】
【数2】
【0028】
SVDを利用してデータ行列を分解する。
【0029】
【数3】
【0030】
ここで、u、u...、uは互いに直交するN個の左側特異ベクトル(長さLM)、v、v、...、vは互いに直交するN個の右側特異ベクトル(長さN)、σ≧σ≧…≧σ≧0はN個の特異値であり、全ての特異ベクトルはエネルギーが1である。物理的に、左側特異ベクトルは空間的な情報を示し、右側特異ベクトルは時間的な情報を示し、特異値はエネルギーを示す。
【0031】
次に、基底信号をクラッタ信号、血流信号、及び雑音信号に分類(S130)する。
【0032】
空間特異ベクトルをL×M行列で表現すると、超音波信号をN個基底信号の和で表すことができる。
【0033】
【数4】
【0034】
各基底信号は、空間特異ベクトルuと時間特異ベクトルvで構成され、特異値σは各基底信号の大きさを示す。一般的に、クラッタ信号は血流信号よりはるかに大きい強度を有するため、クラッタ信号が血流信号より大きい特異値を有すると仮定する。もし、α番目からβ番目まで特異値が血流信号に該当する場合、超音波信号s(i、j、k)は、次のようにクラッタ信号と血流信号に分解できる。
【0035】
【数5】
【0036】
残りのβ+1からN番目の特異値は、雑音に該当する。クラッタ、血流、雑音を区分する二つのパラメータα、βは、[Baranger 2018]で提案された方法等により決定できる。
【0037】
時間及び空間特異ベクトルをクラッタ/血流/雑音に分類する方法を追加説明すると、次の通りである。
【0038】
多様な特異ベクトル分類方法が提案されたが、空間類似度を利用する方法が最も性能が優れていると知られている[Baranger 2018]。この方法では空間特異ベクトル間の類似度を計算した後、類似度が高い特異ベクトル同士集めて2個のグループを作る。2個のグループのうち、特異値が大きいグループをクラッタに分類し、特異値が小さいグループを血流に分類し、グループに属しない残りの特異ベクトルを雑音に分類する。
【0039】
空間特異ベクトルの類似度を計算すると、例えば、図2のように類似度行列(similarity matrix)が求められる。ここで、1番目のグループがクラッタとして特異値1~19番、2番目のグループが血流として特異値20~77、残りが雑音として特異値78~150である。すなわち、SVDでクラッタ/血流/雑音を区分する二つのパラメータは、血流の特異値範囲である=20、=77である。
【0040】
図2は、空間特異ベクトルの類似度行列を示し、i行、j列の値は、i-番目とj番目の空間特異ベクトル間の類似度を示す。
【0041】
次に、クラッタ領域及び血流領域に分割(S140)する。
【0042】
ドップラ超音波やスペックル追跡でSVDを利用してクラッタを除去する時は、関心領域に存在する全てのクラッタ信号を除去して血流信号のみを利用して血流速度を測定する。しかし、スペックル非相関で全てのクラッタ信号を除去すると、血管壁近くと血管周囲組織で血流速度測定値に大きい誤差が発生するようになる。その理由は、スペックル非相関技術がスペックルパターンの時間による相関度を計算して流速を測定するためである。したがって、血流信号がない位置でクラッタ信号を除去すると、雑音のみが残るようになってスペックルの非相関が大きくなるようになるため、血流が無いにもかかわらず流速が非常に高く測定される。
【0043】
本発明では全ての領域でクラッタを除去する代わりに、クラッタ領域では血流信号を除去し、血流領域ではクラッタ信号を除去することによって、スペックル非相関計算に適合した信号を生成する。
【0044】
分割(S140)ステップは、特徴マップ抽出と領域分割を経て実行される。
【0045】
まず、血流信号のエネルギーを次のように計算する。
【0046】
【数6】
【0047】
このエネルギーマップをデシベル(dB)スケールに変換して特徴マップ(feature map)を得る。
【0048】
【数7】
【0049】
血流エネルギーの代わりにクラッタエネルギーまたはクラッタ血流比を特徴マップとして使用することもできる。
【0050】
クラッタ血流比は、クラッタ信号と血流信号のエネルギー比をdBスケールで計算して得ることができる。
【0051】
特徴マップを平滑化(smoothing)した後、Otsu方法を利用してクラッタ領域と血流領域に分割する。平滑化のために、ガウシアンフィルタが使われることができ、他の実施例において領域分割ではOtsu方法以外にk-meansクラスタリングなど、多様な映像分割技法を利用することができる。
【0052】
以後、分割されたクラッタ領域及び血流領域から出力信号を導出(S150)する。
【0053】
領域分割を介して得られたクラッタ領域をA、血流領域をAとする。クラッタ領域から血流信号を除去し、血流領域からクラッタ信号を除去すると、次のような出力信号を得る。
【0054】
【数8】
【0055】
次に、出力信号からスペックル非相関を計算して血流速度を測定(S160)する。
【0056】
このステップでは、まずSVDフィルタ出力IQ信号の符号を抽出する(I軸で1ビット、Q軸で1ビット)。すなわち、相関器入力信号(出力信号)x(i、j、k)の符号を下記のように取る(sign関数は、実数部と虚数部の各々符号を取る)。
【0057】
【数9】
【0058】
次に、1-bit相関器を利用して符号信号の相関値を計算する。
【0059】
【数10】
【0060】
ここで、i′、j′は、i、jを中心とする空間ウィンドウであり、kは時間ウィンドウである。
【0061】
1-bit相関器は、確率統計理論の一つであるBussgang整理を利用したものである。信号の統計的性質がガウシアン分布に従う場合、この信号が非線形歪曲されても元の信号の相関度測定が可能である。すなわち、非線形歪曲された信号の相関度を計算した後、Bussgang整理によって相関度を補償すると、元の信号の相関度を得ることができる。本発明では符号抽出器が非線形歪曲の役割を遂行する。符号抽出器は、元の信号から符号ビットのみを抽出する。超音波スペックル信号は、一般的にガウシアン分布に従うため、超音波スペックル信号の符号(1ビット)のみで相関度測定が可能になる。
【0062】
この過程で信号が1ビットで表現されるため、掛け算演算が必要でなくてリアルタイム測定が可能になる。
【0063】
次に、相関値を下記のように補正する。これは1ビット相関器により発生する相関値歪曲を補償することであり、Bussgang理論に基づく。
【0064】
【数11】
【0065】
次に、補正された相関値とスペックルcalibrationデータを利用して相関値を血流速度に変換する。
【0066】
スペックルcalibrationデータは、スペックル非相関とスペックル移動距離の関係を測定したデータである。スペックルcalibrationデータは、超音波システム固有の性質として、精密ステージに超音波プローブを移動させて移動距離と非相関の関数関係を得ることができる。
【0067】
最後に、測定された血流速度を出力(S170)する。出力は、表示装置に表示及び電算網を介して外部送信など、多様な方式で実行されることができる。
【0068】
以上の本発明によると、超音波造影剤を使用せずに血流速度を測定することができる。すなわち、信号処理を介してクラッタと雑音を除去するため、超音波造影剤が必要でない。また、血流速度の計算のための計算量が減少してリアルタイムで血流速度測定が可能である。
【0069】
以下、シミュレーション及び実験を介して本発明をより詳細に説明する。
【0070】
シミュレーションを介したアルゴリズム検証
【0071】
開発したアルゴリズムの性能をMATLAB(登録商標)超音波シミュレーションツールボックスであるField IIを利用して検証した。シミュレーションパラメータは、表1の通りである。
【0072】
【表1】
【0073】
図3a及び図3bは、開発したSVDフィルタ適用前後の流速測定結果を示し、20回流速測定した後、平均値と標準偏差を表示した。
【0074】
理論で求めた流速線図(ground truth)は、赤色で表示した。図3aはSVD適用前であり、図3bはSVD適用後である。
【0075】
既存speckle decorrelation技術は、超音波造影剤を使用しない場合、流速測定値が大きくunder-estimationされた。それに対して、超音波造影剤がなくても、開発したSVD基盤speckle decorrelation技術により流速測定の正確度を高めた。
【0076】
流量測定値は、SVD適用前に8.66±0.16mL/minであったが、SVD適用後に20.99±0.14mL/minであって真の値(ground truth)19.6mL/minに近接した。
【0077】
In vitroファントム実験を介した検証
【0078】
図4のように流速装置と超音波装置を含む超音波流速測定実験装置を備えた。
【0079】
流速装置は、シリンジポンプ、チューブ、超音波ファントム、ドップラ液体貯留槽で構成される。
【0080】
シリンジポンプ(NE-300)で4mm管にドップラ溶液を注入(流量20、40mL/min)した。
【0081】
4mm直径管を有する超音波ファントムを製作(Agar 2%、glass-beads 1%)した。ドップラ液体内には赤血球を模写する直径5μmの粒子を位置させた(CIRS 769DF)。
【0082】
プローブを、線形ステージを利用して1mm/sの速度で移動させてクラッタ信号を発生させた。
【0083】
超音波装置は、超音波プローブ(中心周波数:10MHz)、超音波スキャナ(フレームレート(frame rate:1000Hz)で構成された。
【0084】
図5は、超音波プローブで収集されたRF信号から血流速度を測定する手順を示す。
【0085】
超音波プローブで収集されたRF信号を複素信号に変換(I/Q復調及びdecimation実行)、複素信号を基底信号に分解(特異値分解を利用)、基底信号をクラッタ/血流/雑音に分類、領域分割に基づくクラッタ除去及びSpeckle decorrelationを計算して血流速度測定を実行した。
【0086】
ドップラ液体部分の信号にはクラッタ雑音と相当量の電気的雑音が含まれている。
【0087】
図6は、ファントム実験で信号処理前後の血流のB-モード映像を示す。信号処理技術を利用してクラッタ雑音と電気的雑音を除去することによって純粋なドップラ液体部分の信号を得たし、ドップラ液体部分のSNRが非常に向上した。
【0088】
図7a及び図7bのように、ドップラ液体と周辺組織の境界部分である血管壁を探知(A)して血流速度を測定(B)した。
【0089】
図8a及び図8bは、血管中心部の流速測定値を示し、(a)は血流量20ml/minであり、(b)は血流量40ml/minである。
【0090】
図8a及び図8bは、深さ15mmで10回測定した流速の平均と標準偏差を示す。
【0091】
固定されたクラッタだけでなく、速度1mm/sで移動するクラッタ下でも血管壁を探知して正確な血流速度を測定することができる。
【0092】
In vivo測定を介した臨床適用可能性確認
【0093】
45歳の健康な成人男性の頸動脈をSonixTouchシステムで、6.6MHz中心周波数で測定した。座った姿勢で約6mm直径の頸動脈がプローブ視野の中心に位置するように調節した後、頸動脈の縦断面をフレーム率925Hzで測定して1000フレームのRFデータを取得した。
【0094】
横5mm、縦25mmの血管中心は、深さ約15mmに位置した。
【0095】
RFデータ1,000フレームにSVDフィルタを適用した後、100フレーム毎にspeckle decorrelationアルゴリズムを適用して流速を測定した。
【0096】
図9は、SVDフィルタ前後のB-モード映像と血管中心で測定された流速プロファイルを示し、中心線(x=0)での流速(時間間隔0.1s)を示す。
【0097】
Speckle decorrelation技法で測定された流速を、ノイズを減少させるためにSavitzky-golayフィルタ(3次、5サンプル)で平坦化した。
【0098】
深い側に位置した下の血管壁近くの流速変化及び血管壁動きをよく確認することができた。
【0099】
超音波装備のフレーム率限界(1,000Hz)があって頸動脈中心の最大流速(約100cm/s)の測定には限界があるが、血管壁近くの遅い流速は高解像度で測定できた。
【0100】
図10a乃至図10dは、頸動脈測定データのSVD結果例示である。図10aは特異値曲線、図10bはspatial similarity、図10cは血流領域のパワードップラマップであり、図10dは血流領域のsegmentation結果を示す。
【0101】
特異値曲線で見るように、クラッタ信号は、血流信号よりはるかに大きい電力を有している(約40dB差)。Spatial similarityからクラッタ特異値区間は[1 54]、血流特異値区間は[55 400]に決定した。
【0102】
パワードップラとsegmentation結果は、血流信号の領域を示し、提案したSVDフィルタが頸動脈横断面データをクラッタと血流信号に明確に分解できることを示す。
【0103】
前述した実施例は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明がこれに限定されるものではない。本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、これから多様に変形して本発明を実施することが可能であるため、本発明の技術的保護範囲は、添付された特許請求の範囲により定まるべきである。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10a
図10b
図10c
図10d
【国際調査報告】