IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横店集団東磁股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特表2024-539777希土類磁性粉の表面処理方法、射出希土類磁性材料及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】希土類磁性粉の表面処理方法、射出希土類磁性材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20241024BHJP
   H01F 1/06 20060101ALI20241024BHJP
   H01F 1/08 20060101ALI20241024BHJP
   H01F 1/055 20060101ALI20241024BHJP
   H01F 1/057 20060101ALI20241024BHJP
   H01F 1/059 20060101ALI20241024BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241024BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20241024BHJP
   B22F 1/145 20220101ALI20241024BHJP
   B22F 1/16 20220101ALI20241024BHJP
   B22F 1/10 20220101ALI20241024BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20241024BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20241024BHJP
   B22F 1/148 20220101ALI20241024BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20241024BHJP
【FI】
H01F41/02 G
H01F1/06 110
H01F1/08 130
H01F1/055 120
H01F1/057 120
H01F1/059 160
B22F1/00 Y
B22F1/102 100
B22F1/145 100
B22F1/145
B22F1/16 100
B22F1/10
B22F3/00 C
B22F3/02 L
B22F1/148
B22F1/14 500
B22F3/02 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542205
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 CN2021129091
(87)【国際公開番号】W WO2023070735
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111258526.6
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517366220
【氏名又は名称】横店集団東磁股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー,ジアンピン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ジーホン
【テーマコード(参考)】
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K018AA11
4K018AA27
4K018BA05
4K018BA18
4K018BC09
4K018BC11
4K018BC12
4K018BC29
4K018BC32
4K018CA09
4K018CA29
4K018KA46
5E040AA03
5E040AA04
5E040AA06
5E040AA19
5E040BB03
5E040BC01
5E040CA01
5E040HB05
5E040HB11
5E040HB14
5E040HB15
5E040HB19
5E040NN04
5E040NN17
5E040NN18
5E062CC05
5E062CD05
5E062CE02
5E062CE03
5E062CG03
5E062CG07
(57)【要約】
本発明は希土類磁性粉の表面処理方法、射出希土類磁性材料及びその製造方法を提供する。前記表面処理方法は、希土類磁性粉の表面に対して弱酸化処理を行うように希土類磁性粉を弱酸溶液に添加し、弱酸化磁性粉を形成させるステップS1であって、弱酸溶液における弱酸は酸性度係数pKa値が4.5より大きい無機弱酸及び/又は酸性度係数が1.0より大きい有機弱酸であるステップS1と、リン化液を用いて弱酸化磁性粉に対してリン化処理を行い、リン化磁性粉を形成するステップS2と、リン化磁性粉に対してカップリング化処理を行うようにリン化磁性粉をカップリング剤と混合し、続いて乾燥させて表面処理後の希土類磁性粉を得るステップS3と、を含む。本発明は、従来技術における希土類磁性粉の耐酸化能力が弱いため、射出後の希土類磁性材料の磁気特性が悪いという問題を解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類磁性粉の表面に対して弱酸化処理を行うように、前記希土類磁性粉を弱酸溶液に添加し、弱酸化磁性粉を形成させるステップS1であって、前記弱酸溶液における弱酸は酸性度係数pKa値が4.5より大きい無機弱酸及び/又は酸性度係数が1.0より大きい有機弱酸であるステップS1と、
リン化液を用いて前記弱酸化磁性粉に対してリン化処理を行い、リン化磁性粉を形成するステップS2と、
前記リン化磁性粉に対してカップリング化処理を行うように前記リン化磁性粉をカップリング剤と混合し、続いて乾燥させて表面処理後の前記希土類磁性粉を得るステップS3と、を含む、ことを特徴とする希土類磁性粉の表面処理方法。
【請求項2】
前記弱酸はシュウ酸、酢酸及び炭酸の一種又は複数種であり、
好ましくは、前記弱酸溶液のpH値は5~7であり、
好ましくは、エタノールを用いて前記弱酸溶液のpH値を調整し、
好ましくは、前記弱酸溶液と前記希土類磁性粉との体積比は1.5~3:1である、ことを特徴とする請求項1に記載の表面処理方法。
【請求項3】
前記ステップS1において、前記希土類磁性粉を前記弱酸溶液に添加した後、前記弱酸化処理を行うように第一超音波振動を行い、
好ましくは、前記第一超音波振動のパワーは1500~2500Wであり、時間は2~5minである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理方法。
【請求項4】
前記リン化液は、亜鉛系リン化液又はマンガン系リン化液であり、
好ましくは、前記弱酸化処理が終了した後、前記リン化処理を行うように、前記弱酸化磁性粉を含む系に、系のpH値が4~5に達するまで前記リン化液を直接添加し、続いて第二超音波振動を行い、
好ましくは、前記第二超音波振動のパワーは1000~1500Wであり、時間は10~15minであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理方法。
【請求項5】
前記カップリング剤はシランカップリング剤であり、好ましくはKH550、KH560、KH792のうちの一種又は複数種であり、
好ましくは、前記リン化処理が終了した後、前記カップリング化処理を行うように、前記リン化磁性粉を含む系に前記カップリング剤を直接添加し、続いて第三超音波振動を行い、
好ましくは、前記カップリング剤の添加量は前記希土類磁性粉重量の0.5~1%であり、
好ましくは、前記第三超音波振動のパワーは1200~2000Wであり、時間は10~15minであり、
好ましくは、前記乾燥過程は真空乾燥を採用し、乾燥温度は70~90℃である、ことを特徴とする請求項4に記載の表面処理方法。
【請求項6】
前記希土類磁性粉は同性ネオジム鉄ホウ素磁性粉、異性ネオジム鉄ホウ素磁性粉、同性サマリウム鉄窒素磁性粉、異性サマリウム鉄窒素磁性粉、サマリウムコバルト磁性粉のうちの一種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の表面処理方法を用いて希土類磁性粉を表面処理するステップと、
表面処理後の前記希土類磁性粉と結着剤を混合した後、押出造粒して射出希土類磁性材料を得るステップと、を含む、ことを特徴とする射出希土類磁性材料の製造方法。
【請求項8】
前記結着剤はナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンのうちの一種又は複数種であり、好ましくは、前記結着剤の使用量は前記希土類磁性粉重量の8~15%である、ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記押出造粒プロセスは二軸押出機を採用し、前記押出造粒の温度は200~310℃である、ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の製造方法によって製造される、ことを特徴とする射出希土類磁性材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は希土類永久磁石分野に関し、具体的には、希土類磁性粉の表面処理方法、射出希土類磁性材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出磁石は、有機高分子樹脂と磁性粉を溶融ブレンドして押出造粒したものである。常用の高分子樹脂にはポリアミドPA6、PA66、PA12、PA11、PA612シリーズ及びさらに耐温度性のより高いポリフェニレンサルファイドPPS、ポリエーテルエーテルケトンPEEKなどがあり、磁性粉には、性能の低いフェライト(FeO)や性能の高い希土類磁性粉であるネオジム鉄ホウ素(Nd-Fe-B)、サマリウム鉄窒素(Sm-Fe-N)、サマリウムコバルト(Sm-Co)などがある。市場の発展に伴い、性能及び製品の小型化に対する要求がますます高くなり、射出希土類磁性材料の需要がますます大きくなる。
【0003】
しかし、希土類磁性粉はフェライト粉末と異なり、希土類磁性粉自体は合金粉に属し、造粒加工プロセスにおいて、比較的高い温度を必要とするため、磁性粉が極めて容易に酸化され、それにより性能が著しく低下する。
【0004】
特に、異方性SmFeN粉などの粉末粒度の細かい希土類粉である。製粉プロセスにおいて、異性SmFeN粉の磁気特性を向上させるために、メーカーは粉末の粒度を調整する方法により、多くの微粉末の存在を引き起こすことが多く、これらの微粉末の粒度は往々にして1~2μmに粉砕され、これらの粉末は非常に酸化されやすく、同時に露出した高温空気において自然発火する場合さえある。
【0005】
そのため、高性能の射出希土類磁石素材を製造するために、一般的にまず希土類磁性粉に対して表面処理を行う必要があり、磁性粉表面に一層の保護層を提供し、磁性粉の加工プロセスでの酸化を低減させ、その磁気特性を保護する。現在、多くの会社はカップリング化処理の方式を採用して磁性粉表面を処理し、カップリング化の処理方式は結着剤PA、PPSとの結合性を向上させることができ、二軸押出機において結着剤が溶解して磁性粉を被覆した後に結着剤内部の磁性粉を酸化されないように保護することができるが、結着剤が磁性粉を完全に被覆する前に、磁性粉が酸化される可能性が大きい。
【0006】
中国特許CN201510454107.8には、さらに磁性粉をカップリング剤、リン酸複合溶液に浸漬して希土類SmFeN磁性粉を処理する方法が言及されている。リン酸溶液により粉末表面に一定のリン化膜を形成することができ、それにより磁性粉の耐高温性能を向上させ、磁性粉を造粒プロセスで酸化されないように保護し、リン酸は磁性粉表面活性点にリン酸塩の結晶核を形成することにより、続いて結晶核が成長し続け、安定したリン化膜を形成する。
【0007】
リン化膜の品質及び完全性は磁性粉表面活性点の数と大きな相関性を有し、単純にリン酸溶液に浸漬するだけでは、磁性粉表面活性点が非常に弱く、安定した高品質のリン化膜を形成しにくく、後続の高温造粒プロセスにおいて、処理後の希土類磁性粉が酸化されるおそれが大きい。
【0008】
以上の理由に基づき、より良好な耐酸化能力を有し、さらに射出後の希土類磁性材料の磁気特性を改善するために、新たな希土類磁性粉の表面処理方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術における希土類磁性粉の耐酸化能力が弱いため、射出後の希土類磁性材料の磁気特性が悪いという問題を解決するために、希土類磁性粉の表面処理方法、射出希土類磁性材料及びその製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、希土類磁性粉の表面処理方法を提供し、当該方法は、希土類磁性粉の表面に対して弱酸化処理を行うように希土類磁性粉を弱酸溶液に添加し、弱酸化磁性粉を形成させるステップS1であって、弱酸溶液における弱酸は酸性度係数pKa値が4.5より大きい無機弱酸及び/又は酸性度係数が1.0より大きい有機弱酸であるステップS1と、リン化液を用いて弱酸化磁性粉に対してリン化処理を行い、リン化磁性粉を形成するステップS2と、リン化磁性粉に対してカップリング化処理を行うようにリン化磁性粉をカップリング剤と混合し、続いて乾燥させて表面処理後の希土類磁性粉を得るステップS3と、を含む。
【0011】
さらに、弱酸はシュウ酸、酢酸及び炭酸の一種又は複数種であり、好ましくは、弱酸溶液のpH値は5~7であり、好ましくは、エタノールを用いて弱酸溶液のpH値を調整し、好ましくは、弱酸溶液と希土類磁性粉との体積比は1.5~3:1である。
【0012】
さらに、ステップS1において、希土類磁性粉を弱酸溶液に添加した後、弱酸化処理を行うように第一超音波振動を行い、好ましくは、第一超音波振動のパワーは1500~2500Wであり、時間は2~5minである。
【0013】
さらに、リン化液は亜鉛系リン化液又はマンガン系リン化液であり、好ましくは、弱酸化処理が終了した後、リン化処理を行うように、弱酸化磁性粉を含む系に、系のpH値が4~5に達するまでリン化液を直接添加し、続いて第二超音波振動を行い、好ましくは、第二超音波振動のパワーは1000~1500Wであり、時間は10~15minである。
【0014】
さらに、カップリング剤はシランカップリング剤であり、好ましくはKH550、KH560、KH792のうちの一種又は複数種であり、好ましくは、リン化処理が終了した後、カップリング化処理を行うように、リン化磁性粉を含む系にカップリング剤を直接添加し、続いて第三超音波振動を行い、好ましくは、カップリング剤の添加量は希土類磁性粉重量の0.5~1%であり、好ましくは、第三超音波振動のパワーは1200~2000Wであり、時間は10~15minであり、好ましくは、乾燥プロセスは真空乾燥を採用し、乾燥温度は70~90℃である。
【0015】
さらに、希土類磁性粉は同性ネオジム鉄ホウ素磁性粉、異性ネオジム鉄ホウ素磁性粉、同性サマリウム鉄窒素磁性粉、異性サマリウム鉄窒素磁性粉、サマリウムコバルト磁性粉のうちの一種又は複数種である。
【0016】
本発明の別の態様によれば、さらに射出希土類磁性材料の製造方法を提供し、当該方法は、上記表面処理方法を採用して希土類磁性粉に対して表面処理を行うステップと、表面処理後の希土類磁性粉を結着剤と混合し、続いて押出造粒して射出希土類磁性材料を得るステップとを含む。
【0017】
さらに、結着剤はナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンのうちの一種又は複数種であり、好ましくは、結着剤の使用量は希土類磁性粉重量の8~15%である。
【0018】
さらに、押出造粒プロセスは二軸押出機を採用し、押出造粒の温度は200~310℃である。
【0019】
本発明の別の態様によれば、さらに射出希土類磁性材料を提供し、当該材料は上記製造方法により製造される。
【発明の効果】
【0020】
本発明は希土類磁性粉の表面処理方法を提供し、それは順に希土類磁性粉に対して弱酸化処理、リン化処理及びカップリング化処理を行うことである。弱酸化処理は、リン処理及びカップリング化処理の基礎であり、それは希土類磁性粉の表面の活性点数を向上させると共に、希土類磁性粉の表面に不溶な第一鉄、鉄化合物不純物を溶解し、それを弱酸第一鉄に変換させることができる。
【0021】
弱酸化処理を行った後にリン化処理とカップリング化処理を行い、希土類磁性粉の表面により完全で、品質のより高いリン化膜とカップリング化保護層を形成することができ、それにより処理後の希土類磁性粉により良好な耐酸化性を備えさせ、後続で結着剤と射出造粒する前及びプロセス中に希土類磁性粉を保護してそれが酸化されることを防止することができ、得られた射出希土類磁性材料は相応的により良好な磁気特性を備える。
【発明を実施するための形態】
【0022】
なお、矛盾がない場合、本願の実施例及び実施例の特徴は、互いに組み合わせることができる。以下、実施例を組み合わせて本発明について詳細に説明する。
【0023】
背景技術の部分で説明したように、従来技術における希土類磁性粉の耐酸化能力が弱いため、射出後の希土類磁性材料の磁気特性が悪い。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明は、希土類磁性粉の表面処理方法を提供し、当該方法は、
希土類磁性粉の表面に対して弱酸化処理を行うように希土類磁性粉を弱酸溶液に添加し、弱酸化磁性粉を形成させるステップS1であって、弱酸溶液における弱酸は酸性度係数pKa値が4.5より大きい無機弱酸及び/又は酸性度係数が1.0より大きい有機弱酸であるステップS1と、
リン化液を用いて弱酸化磁性粉に対してリン化処理を行い、リン化磁性粉を形成するステップS2と、
リン化磁性粉に対してカップリング化処理を行うようにリン化磁性粉をカップリング剤と混合し、続いて乾燥させて表面処理後の希土類磁性粉を得るステップS3と、を含む。
【0025】
本発明は希土類磁性粉の表面処理方法を提供し、それは順に希土類磁性粉に対して弱酸化処理、リン化処理及びカップリング化処理を行うことである。弱酸化処理は、リン処理及びカップリング化処理の基礎であり、それは希土類磁性粉の表面の活性点数を向上させると共に、希土類磁性粉の表面に不溶な第一鉄、鉄化合物不純物を溶解し、それを弱酸第一鉄に変換させることができる。
【0026】
活性点数が多くなり、希土類磁性粉の表面のリン化反応及びカップリング化反応に関与するサイトの数を高めることができ、それによりリン化処理プロセスにおけるリン化度を向上させ、カップリング化処理もより十分になる。第一鉄、鉄化合物などの不純物が溶解して形成された弱酸第一鉄は希土類磁性粉の表面に接近し又は残留するため、リン化プロセスにおいてある程度のリン化核の役割を果たすことができ、リン化膜の成長形成にも有利である。以上の2つの理由はいずれもリン化膜の完全性及び品質の向上に寄与し、カップリング化保護層もそれに応じてより完全である。
【0027】
そのため、弱酸化処理を行った後にリン化処理とカップリング化処理を行うことによって、希土類磁性粉の表面により完全で、品質のより高いリン化膜とカップリング化保護層を形成することができ、それにより処理後の希土類磁性粉により良好な耐酸化性を備えさせ、後続で結着剤と射出造粒する前及びプロセス中に希土類磁性粉を保護してそれが酸化されることを防止することができ、得られた射出希土類磁性材料は相応的により良好な磁気特性を備える。
【0028】
また、リン化液とカップリング剤を配合して処理する方式に比べ、本発明は弱酸化処理の後にリン化処理とカップリング処理を順次行い、このようにリン化膜の成長がより完全で、対応するカップリング化保護層もより完全であり、さらに希土類磁性粉の耐酸化性を向上させることに役立つ。それと共に、このような操作は希土類磁性粉の後期混練造粒プロセスにおける高分子材料との相溶性及び結合力を向上させることに役立つ。
【0029】
要するに、本発明により提供される表面処理方法を用いて希土類磁性粉を処理し、その耐酸化性を顕著に改善することができ、それに応じて高性能、高安定性の射出希土類磁性材料を製造することができる。
【0030】
上記弱酸は酸性度係数pKa値が4.5より大きい無機弱酸及び/又は酸性度係数が1.0より大きい有機弱酸を採用し、希土類磁性粉本体を損傷しない上で磁性粉表面の活性点数をできる限り増加させることができ、弱酸化処理をより効果的にするために、好ましい一実施形態では、弱酸はシュウ酸、酢酸及び炭酸の一種又は複数種を採用する。
【0031】
好ましくは、弱酸溶液のpH値は5~7である。弱酸溶液のpH値を上記範囲内に制御することで、弱酸化処理の安定性を制御することに役立つと共に、弱酸化処理をより十分に促進し、後続のリン化膜及びカップリング化保護層の成長品質及び完全性に対してさらに促進作用を有する。また、弱酸溶液中に希土類磁性粉をより十分に分散や被覆させるためには、好ましくは、pH調整剤としてエタノールを用いて弱酸溶液のpH値を5~7に調整する。弱酸溶液における具体的な溶媒はイソプロピルアルコール、エタノール、脱イオン水のうちの一種又は複数種を含むが、それらに限定されない。
【0032】
上記弱酸溶液の添加量は、希土類磁性粉を十分に被覆できる量であればよく、処理効果をより改善することを考慮すると、好ましい一実施形態では、弱酸溶液と希土類磁性粉との体積比は1.5~3:1である。
【0033】
前述したように、弱酸化処理は、希土類磁性粉の表面の第一鉄、鉄化合物不純物を溶解し、弱酸第一鉄に変化させることもできる。これらの弱酸第一鉄は、リン化処理のプロセスである程度のリン化核として機能するが、この機能をより十分に発揮させるために、好ましい一実施形態では、ステップS1において、弱酸化処理を行うように、希土類磁性粉を弱酸溶液に添加した後、第一超音波振動を行う。超音波振動により、弱酸第一鉄を弱酸化磁性粉の表面により均一に分布させることができ、さらにリン化膜の成長をより均一で完全にさせ、リン化処理の効率を改善することにも役立つ。
【0034】
それと共に、超音波振動中に磁性粉間が軽く摩擦され、さらにミクロ程度で磁性粉の形状を向上させることができ、それを球状により接近させ、それにより後続製品の流動性を向上させ、射出製品の配向度を向上させ、射出希土類磁性材料の磁気特性をさらに改善する。好ましくは、第一超音波振動のパワーは1500~2500Wであり、時間は2~5minである。当該パワー及び時間において、上記機能がより十分に発揮される。好ましいパワーは2000Wである。
【0035】
好ましい一実施形態では、リン化液は、亜鉛系リン化液又はマンガン系リン化液(エルスムから購入する)である。上記リン化液を採用して弱酸化磁性粉に対してより十分なリン化処理を行うことができ、形成されたリン化膜の品質がより高く、より完全で安定的である。より好ましくは、亜鉛系リン化液(例えば、エルスムBW-231特殊材亜鉛マンガン系リン化液)をリン化液として採用する。
【0036】
リン化処理プロセスの効果をよりよくするために、好ましい一実施形態では、弱酸化処理が終了した後、リン化処理を行うように、弱酸化磁性粉を含む系に、系のpH値が4~5に達するまでリン化液を直接添加し、続いて第二超音波振動を行う。具体的な実施プロセスにおいて、第二超音波振動処理と第一超音波振動処理との間は途切れず、このように継続的に振動している状態でリン化液の添加及びリン化処理を行うことができ、より効果的である。好ましくは、第二超音波振動のパワーは1000~1500Wであり、時間は10~15minであり、より好ましいパワーは1500Wである。
【0037】
以上のカップリング剤は本分野の常用タイプを採用することができ、好ましくは、カップリング剤はシランカップリング剤である。シランカップリング剤を用いてリン化磁性粉表面により良好なカップリング化保護膜を形成することができ、且つそれは後続で結着剤との射出造粒プロセスにおいて磁性粉と結着剤との間の融合性をさらに向上させることができ、材料分布をより均一にさせ、最終材料の磁気特性がより良好である。より好ましくは、カップリング剤はKH550、KH560、KH792のうちの一種又は複数種である。
【0038】
カップリング化処理の効果をよりよくするために、好ましい一実施形態では、リン化処理が終了した後、カップリング化処理を行うように、リン化磁性粉を含む系にカップリング剤を直接添加し、続いて第三超音波振動を行う。具体的な実施プロセスにおいて、第三超音波振動と第二超音波振動との間は途切れず、このように継続的に振動している状態でカップリング化処理を行うことができ、形成されたカップリング化保護層はより均一で完全である。
【0039】
好ましくは、カップリング剤の添加量は希土類磁性粉重量の0.5~1%である。カップリング剤の使用量を上記範囲に制御し、それをリン化磁性粉表面に十分に分布させ、磁性粉の耐酸化性と射出プロセスにおける結着剤との間の融合性を向上させることにより有利であり、それにより、最終的に造粒して得られた材料はより良好な磁気特性と安定性を有する。好ましくは、第三超音波振動のパワーは1200~2000Wであり、時間は10~15minであり、好ましいパワーは1500Wである。好ましくは、乾燥プロセスは真空乾燥を採用し、乾燥温度は70~90℃である。
【0040】
本発明の上記表面処理方法は多くのタイプの希土類磁性粉に適用し、希土類磁性粉は同性ネオジム鉄ホウ素磁性粉(Nd-Fe-B)、異性ネオジム鉄ホウ素磁性粉(Nd-Fe-B)、同性サマリウム鉄窒素磁性粉(Sm-Fe-N)、異性サマリウム鉄窒素磁性粉(Sm-Fe-N)、サマリウムコバルト磁性粉(Sm-Co)のうちの一種又は複数種であることを含むがそれらに限定されない。
【0041】
本発明の別の態様によれば、さらに射出希土類磁性材料の製造方法を提供し、当該方法は、上記表面処理方法を採用して希土類磁性粉に対して表面処理を行うステップと、表面処理後の希土類磁性粉を結着剤と混合し、続いて押出造粒して射出希土類磁性材料を得るステップとを含む。本発明により提供される表面処理方法を用いて希土類磁性粉を処理し、その耐酸化性を顕著に改善することができ、後続で結着剤と射出造粒する前及びプロセス中に希土類磁性粉を保護してそれが酸化されることを防止することができ、それに応じて高性能、高安定性の射出希土類磁性材料を製造することができる。
【0042】
上記結着剤はナイロン6、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン66などのナイロンであってもよく、さらに耐温度性に優れたポリフェニレンサルファイドPPS、又はポリエーテルエーテルケトンPEEKなどの材料であってもよく、これらの材料は一種又は複数種の組み合わせであってもよい。好ましくは、結着剤の使用量は希土類磁性粉重量の8~15%である。
【0043】
好ましい一実施形態では、押出造粒プロセスは二軸押出機を採用し、押出造粒の温度は200~310℃である。
【0044】
本発明の別の態様によれば、さらに射出希土類磁性材料を提供し、当該材料は上記製造方法により製造される。希土類磁性粉の表面処理後に優れた耐酸化性を有することにより、射出希土類磁性材料はより優れた磁気特性及び安定性を有する。
【0045】
以下では具体的な実施例を組み合わせて本発明の有益な効果についてさらに説明する。
【0046】
(実施例1)
本実施例における各原料及び原料の重量部は以下のとおりであり、
希土類磁性粉:同性NdFeB磁性粉(マグクン磁気会社15~9磁性粉、92部)、
カップリング剤:シランカップリング剤(KH550、0.5部)、
結着剤:ナイロン12パウダー(日本宇部ナイロン、7.5部)、
工程ステップは以下のとおりであり、
0.01mol/Lのシュウ酸のイソプロピルアルコール溶液を無水エタノールに溶解し、pH値を5に調整し、弱酸溶液を形成させ、その中に希土類磁性粉を添加し、弱酸溶液は磁性粉を完全に被覆することができ、それと磁性粉との体積比は1.5:1であり、超音波振動をONにし、パワーを2000Wに制御し、5分間処理して、弱酸化磁性粉を含む系を形成した。
【0047】
上記系に、エルスムのBW-231亜鉛系リン化液を添加し、添加量はpH値を基準とし、pH値を4に調整し、超音波振動を継続し、パワーを1500Wに制御し、15分間処理して、リン化磁性粉を含む系を形成した。
【0048】
続いて系にカップリング剤を添加し、超音波振動し、パワーを1500Wに制御し、10分間後に系を80℃の条件で5h真空乾燥し、表面処理後の希土類磁性粉を得た。
【0049】
表面処理後の希土類磁性粉と結着剤を混合して二軸押出機で造粒し、造粒温度を200~220℃に設定し、高性能射出希土類磁性材料を得た。
【0050】
IEC60404-8-1に関連する試験基準に基づき、射出希土類磁性材料サンプルに対して性能試験を行い、結果は以下のとおりであり、Br=0.58T、Hcj=737KA/m、(BH)m=52KJ/m3、メルトインデックスは306g/10minであった。
【0051】
(実施例2)
本実施例における各原料及び原料の重量部は以下のとおりであり、
希土類磁性粉:同性NdFeB磁性粉(マグクン磁気会社15~9磁性粉、90部)、
カップリング剤:シランカップリング剤(KH550、0.5部)、
結着剤:PPSパウダー(日本東ソー100#、9.5部)、
工程ステップは以下のとおりであり、
0.01mol/Lのシュウ酸のイソプロピルアルコール溶液を無水エタノールに溶解し、pH値を7に調整し、弱酸溶液を形成させ、その中に希土類磁性粉を添加し、弱酸溶液は磁性粉を完全に被覆することができ、それと磁性粉との体積比は2:1であり、超音波振動をONにし、パワーを2000Wに制御し、5分間処理して、弱酸化磁性粉を含む系を形成した。
【0052】
上記系に、エルスムのBW-231亜鉛系リン化液を添加し、添加量はpH値を基準とし、pH値を5に調整し、超音波振動を継続し、パワーを1500Wに制御し、15分間処理して、リン化磁性粉を含む系を形成した。
【0053】
続いて系にカップリング剤を添加し、超音波振動し、パワーを1500Wに制御し、10分間後に系を80℃の条件で5h真空乾燥し、表面処理後の希土類磁性粉を得た。
【0054】
表面処理後の希土類磁性粉と結着剤を混合して二軸押出機で造粒し、造粒温度を290~310℃に設定し、高性能射出希土類磁性材料を得た。
【0055】
IEC60404-8-1に関連する試験基準に基づき、射出希土類磁性材料サンプルに対して性能試験を行い、結果は以下のとおりであり、Br=0.54T、Hcj=709KA/m、(BH)m=49KJ/m3、メルトインデックスは183g/10minであった。
【0056】
(実施例3)
本実施例における各原料及び原料の重量部は以下のとおりであり、
希土類磁性粉:異性Sm217Nx磁性粉(D50は2.5μm、91部)、
カップリング剤:シランカップリング剤(KH550、0.5部)、
結着剤:ナイロン12パウダー(日本宇部ナイロン、8.5部)、
工程ステップは以下のとおりであり、
0.01mol/Lのシュウ酸のイソプロピルアルコール溶液を無水エタノールに溶解し、pH値を7に調整し、弱酸溶液を形成させ、その中に希土類磁性粉を添加し、弱酸溶液は磁性粉を完全に被覆することができ、それと磁性粉との体積比は3:1であり、超音波振動をONにし、パワーを2000Wに制御し、5分間処理して、弱酸化磁性粉を含む系を形成した。
【0057】
上記系に、エルスムのBW-231亜鉛系リン化液を添加し、添加量はpH値を基準とし、pH値を5に調整し、超音波振動を継続し、パワーを1500Wに制御し、15分間処理して、リン化磁性粉を含む系を形成した。
【0058】
続いて系にカップリング剤を添加し、超音波振動し、パワーを1500Wに制御し、10分間後に系を80℃の条件で5h真空乾燥し、表面処理後の希土類磁性粉を得た。
【0059】
表面処理後の希土類磁性粉と結着剤を混合して二軸押出機で造粒し、造粒温度を200~220℃に設定し、高性能射出希土類磁性材料を得た。
【0060】
IEC60404-8-1に関連する試験基準に基づき、射出希土類磁性材料サンプルに対して性能試験を行い、結果は以下のとおりであり、Br=0.64T、Hcj=725KA/m、(BH)m=65KJ/m3、メルトインデックスは142g/10minであった。
【0061】
(実施例4)
本実施例における各原料及び原料の重量部は以下のとおりであり、
希土類磁性粉:異性Sm217Nx磁性粉(D50は2.5μm、89部)、
カップリング剤:シランカップリング剤(KH550、0.5部)、
結着剤:PPSパウダー(日本東ソー100#、10.5部)、
工程ステップは以下のとおりであり、
0.01mol/Lのシュウ酸のイソプロピルアルコール溶液を無水エタノールに溶解し、pH値を6に調整し、弱酸溶液を形成させ、その中に希土類磁性粉を添加し、弱酸溶液は磁性粉を完全に被覆することができ、それと磁性粉との体積比は1.5:1であり、超音波振動をONにし、パワーを2000Wに制御し、5分間処理して、弱酸化磁性粉を含む系を形成した。
【0062】
上記系に、エルスムのBW-231亜鉛系リン化液を添加し、添加量はpH値を基準とし、pH値を5に調整し、超音波振動を継続し、パワーを1500Wに制御し、15分間処理して、リン化磁性粉を含む系を形成した。
【0063】
続いて、系にカップリング剤を添加し、超音波振動し、パワーを1500Wに制御し、10分間後に系を80℃の条件で5h真空乾燥し、表面処理後の希土類磁性粉を得た。
【0064】
表面処理後の希土類磁性粉と結着剤を混合して二軸押出機で造粒し、造粒温度を290~310℃に設定し、高性能射出希土類磁性材料を得た。
【0065】
IEC60404-8-1に関連する試験基準に基づき、射出希土類磁性材料サンプルに対して性能試験を行い、結果は以下のとおりであり、Br=0.59T、Hcj=695KA/m、(BH)m=59KJ/m3、メルトインデックスは108g/10minであった。
【0066】
(実施例5)
実施例1との違いは、酢酸を用いて弱酸とし、KH560を用いてシランカップリング剤とすることのみである。IEC60404-8-1に関連する試験基準に基づき、射出希土類磁性材料サンプルに対して性能試験を行い、結果は以下のとおりであり、Br=0.58T、Hcj=726KA/m、(BH)m=52KJ/m3、メルトインデックスは312g/10minであった。
【0067】
(実施例6)
実施例1との違いは、炭酸を用いて弱酸とし、KH792を用いてシランカップリング剤とすることのみである。IEC60404-8-1に関連する試験基準に基づき、射出希土類磁性材料サンプルに対して性能試験を行い、結果は以下のとおりであり、Br=0.59T、Hcj=724KA/m、(BH)m=53KJ/m3、メルトインデックスは300g/10minであった。
【0068】
(実施例7)
実施例1との違いは以下のことのみであり、
エタノールで弱酸溶液のpH値を7に調整し、弱酸溶液と希土類磁性粉との体積比は3:1であり、第一回の超音波振動のパワーは1500Wであり、2分間処理し、
亜鉛系リン化液を、弱酸化磁性粉を含む系に添加し、pH値を5に調整し、超音波振動を継続し、パワーを1000Wに制御し、10分間処理して、リン化磁性粉を含む系を形成し、
続いて系にカップリング剤を添加し、カップリング剤の添加量は希土類磁性粉重量の0.5%であり、超音波振動し、パワーを2000Wに制御し、15分間後に系を90℃の条件で5h真空乾燥し、表面処理後の希土類磁性粉を得た。
【0069】
IEC60404-8-1に関連する試験基準に基づき、射出希土類磁性材料サンプルに対して性能試験を行い、結果は以下のとおりであり、Br=0.59T、Hcj=753KA/m、(BH)m=53KJ/m3、メルトインデックスは275g/10minであった。
【0070】
(実施例8)
実施例1との違いは以下のことのみであり、
エタノールで弱酸溶液のpH値を6に調整し、弱酸溶液と希土類磁性粉との体積比は2:1であり、第一回の超音波振動のパワーは2500Wであり、4分間処理し、
亜鉛系リン化液を、弱酸化磁性粉を含む系に添加し、pH値を5に調整し、超音波振動を継続し、パワーを1500Wに制御し、15分間処理して、リン化磁性粉を含む系を形成し、
続いて系にカップリング剤を添加し、カップリング剤の添加量は希土類磁性粉重量の1%であり、超音波振動し、パワーを1200Wに制御し、15分間後に系を90℃の条件で7h真空乾燥し、表面処理後の希土類磁性粉を得た。
【0071】
IEC60404-8-1に関連する試験基準に基づき、射出希土類磁性材料サンプルに対して性能試験を行い、結果は以下のとおりであり、Br=0.58T、Hcj=706KA/m、(BH)m=51KJ/m3、メルトインデックスは328g/10minであった。
【0072】
(比較例1)
本比較例における各原料及び原料の重量部は以下のとおりであり、
希土類磁性粉:同性NdFeB磁性粉(マグクン磁気会社15~9磁性粉、92部)、
カップリング剤:シランカップリング剤(KH550、0.5部)、
リン酸:0.5部、
結着剤:ナイロン12パウダー(日本宇部ナイロン、7部)、
工程ステップは以下のとおりであり、
シランカップリング剤とリン酸を適量の無水エタノールに溶解し、その中に希土類磁性粉を添加し、無水エタノールの使用量は磁性粉を完全に被覆することができ、それと磁性粉との体積比は1.5:1であり、続いて当該溶液に希土類磁性粉を添加して十分に撹拌して均一に混合させ、続いて80℃で5h真空乾燥し、表面処理後の希土類磁性粉を得た。
【0073】
表面処理後の希土類磁性粉と結着剤を混合して二軸押出機で造粒し、造粒温度を200~220℃に設定し、射出希土類磁性材料を得た。
【0074】
関連試験基準に基づき、射出希土類磁性材料サンプルに対して性能試験を行い、結果は以下のとおりであり、Br=0.56T、Hcj=716KA/m、(BH)m=48KJ/m3、メルトインデックスは264g/10minであった。
【0075】
(比較例2)
本比較例における各原料及び原料の質量百分率は以下のとおりであり、
希土類磁性粉:同性NdFeB磁性粉(マグクン磁気会社15~9磁性粉、90部)、
カップリング剤:シランカップリング剤(KH550、0.5部)、
リン酸:0.5部、
結着剤:PPSパウダー(日本東ソー100#、9部)、
工程ステップは以下のとおりであり、
シランカップリング剤とリン酸を適量の無水エタノールに溶解し、その中に希土類磁性粉を添加し、無水エタノールの使用量は磁性粉を完全に被覆することができ、それと磁性粉との体積比は2:1であり、続いて当該溶液に希土類磁性粉を添加して十分に撹拌して均一に混合させ、続いて80℃で5h真空乾燥し、表面処理後の希土類磁性粉を得た。
【0076】
表面処理後の希土類磁性粉と結着剤を混合して二軸押出機で造粒し、造粒温度を290~310℃に設定し、射出希土類磁性材料を得た。
【0077】
関連試験基準に基づき、射出希土類磁性材料サンプルに対して性能試験を行い、結果は以下のとおりであり、Br=0.51T、Hcj=674KA/m、(BH)m=46KJ/m3、メルトインデックスは152g/10minであった。
【0078】
(比較例3)
本比較例における各原料及び原料の重量部は以下のとおりであり、
希土類磁性粉:異性Sm217Nx磁性粉(D50は2.5μm、91部)、
カップリング剤:シランカップリング剤(KH550、0.5部)、
リン酸:0.5部、
結着剤:ナイロン12パウダー(日本宇部ナイロン、8部)、
工程ステップは以下のとおりであり、
シランカップリング剤とリン酸を適量の無水エタノールに溶解し、その中に希土類磁性粉を添加し、無水エタノールの使用量は磁性粉を完全に被覆することができ、それと磁性粉との体積比は3:1であり、続いて当該溶液に希土類磁性粉を添加して十分に撹拌して均一に混合させ、続いて80℃で5h真空乾燥し、表面処理後の希土類磁性粉を得た。
【0079】
表面処理後の希土類磁性粉と結着剤を混合して二軸押出機で造粒し、造粒温度を200~220℃に設定し、射出希土類磁性材料を得た。
【0080】
関連試験基準に基づき、射出希土類磁性材料サンプルに対して性能試験を行い、結果は以下のとおりであり、Br=0.58T、Hcj=684KA/m、(BH)m=59KJ/m3、メルトインデックスは138g/10minであった。
【0081】
(比較例4)
本比較例における各原料及び原料の重量部は以下のとおりであり、
希土類磁性粉:異性Sm217Nx磁性粉(D50は2.5μm、89部)、
結着剤:PPSパウダー(日本東ソー100#、10.5部)、
カップリング剤:シランカップリング剤(KH550、0.5部)、
工程ステップは以下のとおりであり、
シランカップリング剤とリン酸を適量の無水エタノールに溶解し、その中に希土類磁性粉を添加し、無水エタノールの使用量は磁性粉を完全に被覆することができ、それと磁性粉との体積比は1.5:1であり、続いて当該溶液に希土類磁性粉を添加して十分に撹拌して均一に混合させ、続いて80℃で5h真空乾燥し、表面処理後の希土類磁性粉を得た。
【0082】
表面処理後の希土類磁性粉と結着剤を混合して二軸押出機で造粒し、造粒温度を290~310℃に設定し、射出希土類磁性材料を得た。
【0083】
関連試験基準に基づき、射出希土類磁性材料サンプルに対して性能試験を行い、結果は以下のとおりであり、Br=0.52T、Hcj=625KA/m、(BH)m=52KJ/m3、メルトインデックスは117g/10minであった。
【0084】
【表1】
【0085】
Br、Hcj、(BH)maxはいずれも永久磁石材料における磁気特性の重要な指標であり、希土類永久磁石材料が酸化した後、性能が低下し、これらの指標が低下し、酸化が深刻であるほど、これらの指標が大きく低下する。上記表から分かるように、本発明の実施例における表面処理方法を採用して処理された希土類磁性粉は、製造された射出希土類磁性材料のBr、Hcj、(BH)max指標がいずれも顕著に向上し、その耐酸化能力がより強く、射出希土類磁性材料の磁気特性がより良いことを示す。
【0086】
なお、異なる結着剤は、射出時に温度差が大きく、磁性粉は異なる温度で製造すると大きな差をもたらし、そのため、上記実施例1~4で製造された希土類磁性粉射出材料の性能間の差は明らかであるが、それを比較例1~4とそれぞれ比較し、同一種類の結着剤又は同一種類の磁性粉に対応する射出材料の性能が明らかに向上し、本発明の表面処理方法がもたらす有益な効果を示すのに十分である。
【0087】
流動性とは、製品が一定の溶融状態で、一定の圧力下での溶液の流速を意味する。磁性粉の凝集又は磁性粉の形状の不規則はいずれも流動性に影響を与える。上記表から分かるように、本発明の実施例における表面処理方法を採用して処理された希土類磁性粉は、製造された射出希土類磁性材料のメルトインデックスがいずれも顕著に向上し、希土類磁性粉の形状がより規則的で、表面処理後に結着剤との間の相溶性がより良好であることを示す。
【0088】
以上は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではなく、当業者にとって、本発明は様々な修正及び変更が可能である。本願の精神と原則内で行われる任意の修正、同等の置換、及び改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【国際調査報告】