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特表2024-539778変性ビスマレイミドプレポリマー、樹脂組成物及び樹脂組成物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】変性ビスマレイミドプレポリマー、樹脂組成物及び樹脂組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 222/40 20060101AFI20241024BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C08F222/40
C08L79/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542487
(86)(22)【出願日】2023-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 CN2023085348
(87)【国際公開番号】W WO2024077886
(87)【国際公開日】2024-04-18
(31)【優先権主張番号】202211244008.3
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211241831.9
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211241813.0
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523263175
【氏名又は名称】ションイー テクノロジー (スウジョウ) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENGYI TECHNOLOGY (SUZHOU) CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.288 XingLong St., Suzhou Industrial Park, Suzhou, Jiangsu 215000 CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】523263186
【氏名又は名称】ションイー テクノロジー (チャンシュウ) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENGYI TECHNOLOGY (CHANGSHU) CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.99 Xiangyuan Road, Changshu High Tech Industrial, Development Zone, Suzhou, Jiangsu 215000 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】チェン シァンシゥ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ フォン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ホイ
(72)【発明者】
【氏名】ツイ チュンメイ
(72)【発明者】
【氏名】マー ジェン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002CM041
4J002EU026
4J002FD206
4J002GQ00
4J100AS11P
4J100AS11Q
4J100AS11R
4J100FA19
4J100JA43
(57)【要約】
本発明は、ビスマレイミド化合物と、二重結合含有有機シリコーン樹脂と、炭素水素樹脂とを反応させて得られ、前記ビスマレイミド化合物の質量:前記二重結合含有有機シリコーン樹脂の質量:前記炭素水素樹脂の質量の比が100:(3~40):(5~50)である変性ビスマレイミドプレポリマーを提供する。本発明はケイ素-酸素結合及び炭素-水素結合をビスマレイミド化合物に導入し、ビスマレイミド化合物と、二重結合含有有機シリコーン樹脂と、炭素水素樹脂との質量比を制御することで、予備重合のプロセス性が向上するとともに、ビスマレイミド化合物硬化系の靭性及び誘電特性が向上する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマレイミド化合物と、二重結合含有有機シリコーン樹脂と、炭素水素樹脂とを反応させて得られ、前記ビスマレイミド化合物の質量:前記二重結合含有有機シリコーン樹脂の質量:前記炭素水素樹脂の質量の比が100:(3~40):(5~50)であることを特徴とする、変性ビスマレイミドプレポリマー。
【請求項2】
前記二重結合含有有機シリコーン樹脂及び前記炭素水素樹脂の二重結合当量の和と前記ビスマレイミド化合物の二重結合当量との比が1:(5~0.8)であることを特徴とする、請求項1に記載の変性ビスマレイミドプレポリマー。
【請求項3】
前記ビスマレイミド化合物と前記二重結合含有有機シリコーン樹脂を50~90℃で30~120min反応させて予備反応物を得、
そして前記予備反応物に前記炭素水素樹脂を加え、90~130℃下で30~150min反応させ、前記変性ビスマレイミドプレポリマーを得るような反応によって製造されることを特徴とする、請求項1に記載の変性ビスマレイミドプレポリマー。
【請求項4】
前記ビスマレイミド化合物と二重結合含有有機シリコーン樹脂及び炭素水素樹脂の反応中にアミノフェノール、カルボン酸又はカルボン酸無水物のうちの少なくとも1つを、0.1~10重量部の含有量で添加することを特徴とする、請求項3に記載の変性ビスマレイミドプレポリマー。
【請求項5】
得られた前記変性ビスマレイミドプレポリマーに反応性二重結合が含有されることを特徴とする、請求項3に記載の変性ビスマレイミドプレポリマー。
【請求項6】
重量で、
(a)変性ビスマレイミドプレポリマー10~80部と、
(b)マレイミド化合物又はその誘導体10~80部と、
の組成成分を含み、前記変性ビスマレイミドプレポリマーは請求項1に記載の変性ビスマレイミドプレポリマーであることを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項7】
3~50部のエラストマーをさらに含み、前記エラストマーはスチレン系エラストマー、メタクリレート系エラストマー、有機シリコーン系エラストマーのうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂組成物にさらに難燃剤が5~50重量部で含まれることを特徴とする、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記難燃剤は臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、有機シリコーン難燃剤、有機金属塩難燃剤から選ばれ、
前記臭素系難燃剤はデカブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエタン、臭素化スチレン又はテトラブロモフタルアミドから選ばれ、
前記リン系難燃剤は無機リン、リン酸エステル、リン酸、次リン酸、酸化リン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO-HQ)、下記構造式(1)で表される化合物(1)、下記構造式(2)で表される化合物(2)、10-フェニル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスホフェナントレン-10-オキシド、トリス(2,6-ジメチルフェニル)リン、ホスファゼン、変性ホスファゼンから選ばれ、
【化1】

【化2】

前記窒素系難燃剤はトリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアン酸化合物、フェノチアジンから選ばれ、
前記有機シリコーン難燃剤は有機シリコーンオイル、有機シリコーンゴム、有機シリコーン樹脂から選ばれ、
前記有機金属難燃剤はフェロセン、アセチルアセトン金属錯体、有機金属カルボニル化合物から選ばれることを特徴とする、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
シランカップリング剤及び分散剤をさらに含み、前記シランカップリング剤と分散剤の重量比が(2~10):1であることを特徴とする、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記シランカップリング剤はエポキシシランカップリング剤であり、前記分散剤はリン酸エステル系分散剤及び/又は変性ポリウレタン系分散剤であることを特徴とする、請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
プリプレグ、積層板、絶縁薄膜、絶縁板、銅張板、回路基板及び電子デバイスのための、請求項6に記載の樹脂組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子材料の技術分野に関し、特に変性ビスマレイミドプレポリマー、樹脂組成物及び樹脂組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
技術のアップグレードに伴い、自動車業界、スマートフォン等の家電業界ではPCBに対して新たな要求が求められている。2018年に商用5Gが市場に投入されて以来、PCB基材は誘電特性の面で要求が一層高まるが、高周波高速銅張板が5G時代に不可欠な電子基材の1つであることにより、PCB基板材料は、高速伝送時の信号遅延、歪み及び損失、並びに信号間の干渉を低減するために、低い誘電率及び誘電正接を有さなければならない。したがって、高速化、高周波化の信号伝送において十分に低い低誘電率及び低誘電正接を表現可能である(即ち誘電率及び誘電正接は低いほど好ましい)とともに、高耐熱性、高弾性率、低CTE等を有するプリント回路基板材料を製造する熱硬化性樹脂組成物の提供が望まれている。
【0003】
ビスマレイミド樹脂硬化物は、耐高温、耐湿熱、高弾性率、低CTE、高強度等の優れた性能を有し、ICパッケージ基板及び基板様PCBのマトリックス樹脂としての利用に適するが、誘電特性が低いという問題により、高周波高速パッケージ基板の分野での使用が制限される。
【0004】
ビスマレイミド樹脂の誘電特性が低いという問題を改善するために、従来技術ではビスマレイミド樹脂にポリフェニレンエーテル樹脂を導入し、ビスマレイミド樹脂硬化物の誘電特性の低下を一定程度にしたが、ポリフェニレンエーテル樹脂は熱可塑性樹脂の特性を有し、ビスマレイミド樹脂との相溶性が低く、非常に均質な接着剤液複合物が得られにくい。また、反応性有機シリコーン樹脂をビスマレイミド樹脂系に導入し、耐熱性を向上させ、CTE値を低下させる従来技術もあるが、誘電特性の面でまだ改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、変性ビスマレイミドプレポリマー、樹脂組成物及び樹脂組成物の使用を提供することにあり、ケイ素-酸素結合及び炭素-水素結合をビスマレイミド化合物に導入し、ビスマレイミド化合物と、二重結合含有有機シリコーン樹脂と、炭素水素樹脂との重量比を制御することで、予備重合のプロセス性が向上するとともに、ビスマレイミド硬化系の靭性及び誘電特性が改善され、従来技術においてビスマレイミド硬化系の脆性が高く、誘電性が低いという問題が解決される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記発明目的の1つを実現するために、本発明の一実施形態は、ビスマレイミド化合物と、二重結合含有有機シリコーン樹脂と、炭素水素樹脂とを反応させて得られ、前記ビスマレイミド化合物の質量:前記二重結合含有有機シリコーン樹脂の質量:前記炭素水素樹脂の質量の比が100:(3~40):(5~50)である、変性ビスマレイミドプレポリマーを提供する。
【0007】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、前記二重結合含有有機シリコーン樹脂及び前記炭素水素樹脂の二重結合当量の和と前記ビスマレイミド化合物の二重結合当量との比が1:(5~0.8)である。
【0008】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、
前記ビスマレイミド化合物と前記二重結合含有有機シリコーン樹脂を50~90℃で30~120min反応させて予備反応物を得、
そして前記予備反応物に前記炭素水素樹脂を加え、90~130℃下で30~150min反応させ、前記変性ビスマレイミドプレポリマーを得るような反応によって製造される。
【0009】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、前記ビスマレイミド化合物と二重結合含有有機シリコーン樹脂及び炭素水素樹脂の反応中にアミノフェノール、カルボン酸又はカルボン酸無水物のうちの少なくとも1つを、0.1~10重量部の含有量で添加する。
【0010】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、得られた前記変性ビスマレイミドプレポリマーに反応性二重結合が含有される。
【0011】
本発明の一実施形態は、重量で、
(a)変性ビスマレイミドプレポリマー10~80部と、
(b)マレイミド化合物又はその誘導体10~80部と、
の組成成分を含み、前記変性ビスマレイミドプレポリマーは前述した変性ビスマレイミドプレポリマーである、樹脂組成物をさらに提供する。
【0012】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、3~50部のエラストマーをさらに含み、前記エラストマーはスチレン系エラストマー、メタクリレート系エラストマー、有機シリコーン系エラストマーのうちの少なくとも1つである。
【0013】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、前記樹脂組成物にさらに難燃剤が5~50重量部で含まれる。
【0014】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、前記難燃剤は臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、有機シリコーン難燃剤、有機金属塩難燃剤から選ばれ、
前記臭素系難燃剤はデカブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエタン、臭素化スチレン又はテトラブロモフタルアミドから選ばれ、
前記リン系難燃剤は無機リン、リン酸エステル、リン酸、次リン酸、酸化リン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO-HQ)、下記構造式(1)で表される化合物(1)、下記構造式(2)で表される化合物(2)、10-フェニル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスホフェナントレン-10-オキシド、トリス(2,6-ジメチルフェニル)リン、ホスファゼン、変性ホスファゼンから選ばれ、
【化1】

【化2】

前記窒素系難燃剤はトリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアン酸化合物、フェノチアジンから選ばれ、
前記有機シリコーン難燃剤は有機シリコーンオイル、有機シリコーンゴム、有機シリコーン樹脂から選ばれ、
前記有機金属難燃剤はフェロセン、アセチルアセトン金属錯体、有機金属カルボニル化合物から選ばれる。
【0015】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、シランカップリング剤及び分散剤をさらに含み、前記シランカップリング剤と分散剤の重量比が(2~10):1である。
【0016】
本発明の一実施形態のさらなる改善として、前記シランカップリング剤はエポキシシランカップリング剤であり、前記分散剤はリン酸エステル系分散剤及び/又は変性ポリウレタン系分散剤である。
【0017】
本発明の一実施形態は、プリプレグ、積層板、絶縁薄膜、絶縁板、銅張板、回路基板及び電子デバイスのための、前述の樹脂組成物の使用をさらに提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明で提供される1つ又は複数の技術的解決手段は、少なくとも以下の技術効果又は利点を有する。
(1)本発明は、ビスマレイミド化合物を二重結合含有有機シリコーン樹脂及び炭素水素樹脂と反応させ、ケイ素-酸素結合及び炭素-水素結合をビスマレイミド化合物に導入することで、予備重合のプロセス性が向上するとともに、ビスマレイミド化合物硬化系の靭性及び誘電特性が向上する。
(2)本発明は、さらに、ビスマレイミド化合物と、二重結合含有有機シリコーン樹脂と、炭素水素樹脂との重量比を制御し、ビスマレイミド化合における変性度を制御し、誘電性、脆性を改善するとともに本来の高耐熱性、低CTEを維持し、高周波高速用パッケージ基板分野での使用を効果的に満たす。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において具体的な実施形態と関連付けて本発明を詳細に説明するが、これらの実施形態は本発明を限定するものではなく、当業者がこれらの実施形態に基づいて行った反応条件、反応物又は原料使用量への変更はいずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
【0020】
本発明の実施例は、ビスマレイミド化合物と、二重結合含有有機シリコーン樹脂と、炭素水素樹脂とを反応させて得られ、ビスマレイミド化合物の質量:二重結合含有有機シリコーン樹脂の質量:炭素水素樹脂の質量の比が100:(3~40):(5~50)である、変性ビスマレイミドプレポリマーを提供する。
【0021】
さらに、二重結合含有有機シリコーン樹脂及び炭素水素樹脂の二重結合当量の和とビスマレイミド化合物の二重結合当量との比が1:(5~0.8)である。
【0022】
変性ビスマレイミドプレポリマーは、
ビスマレイミド化合物と二重結合含有有機シリコーン樹脂を50~90℃で30~120min反応させて予備反応物を得、
そして予備反応物に炭素水素樹脂を加え、90~130℃下で30~150min反応させ、前記変性ビスマレイミドプレポリマーを得るような反応によって製造される。
【0023】
ビスマレイミド化合物と二重結合含有有機シリコーン樹脂及び炭素水素樹脂との反応中にアミノフェノール、カルボン酸又はカルボン酸無水物のうちの少なくとも1つを、0.1~10重量部の含有量で添加し、アミノフェノール、カルボン酸又はカルボン酸無水物中のフェノール性水酸基、カルボキシル基及び酸無水物基のいずれもビスマレイミド化合物と反応して、反応性を向上させることができる。
【0024】
さらに、前述の反応によって製造された変性ビスマレイミドプレポリマーには、変性ビスマレイミドプレポリマーの硬化時の反応性を向上可能な反応性二重結合が含有される。
【0025】
ビスマレイミド化合物における二重結合が二重結合含有有機シリコーン樹脂における二重結合と反応することで、ケイ素-酸素結合がビスマレイミド化合物に導入され、ケイ素-酸素結合によってビスマレイミド化合物の靭性を改善することができ、さらに炭素水素樹脂によって硬化物の架橋密度が高められ、ラジカル全体の反応速度が制御され、未反応の炭素-炭素二重結合が効果的に保持され、変性ビスマレイミドプレポリマーの反応性が向上する。
【0026】
さらに、変性ビスマレイミドプレポリマーの製造中に開始剤を適量添加してもよく、樹脂組成物を100重量部として、前記開始剤は0.001~6重量部である。前記開始剤は、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤を選択してもよく、好ましくは、過酸化ジクミル、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルベンゾイルペルオキシド、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリルという開始剤のうちの1つ又は複数である。
【0027】
さらに、二重結合含有有機シリコーン樹脂は以下の構造式(3)に示されるとおりである。
【0028】
【化3】
【0029】
式中、R及びR’は、C1~C5のアルキル基であり又は少なくとも1つが反応基であり、R’’はC1~C5のアルキレン基であり、nは1~30の整数である。
【0030】
好ましくは、前述の二重結合含有有機シリコーン樹脂の側鎖R及びR’において少なくとも1つの炭素-炭素二重結合が含有され、炭素-炭素二重結合を含有する基はビニル基、アリル基、プロペニル基、スチリル基又はメタクリレート基である。二重結合含有有機シリコーン樹脂の側鎖における反応基はビスマレイミドプレポリマーの重合中に反応性を向上させるものである。
【0031】
さらに、炭素水素樹脂に1,2-ビニル基が含有され、且つ1,2-ビニル基の含有量が≧70%であり、好ましくは、炭素水素樹脂中の1,2-ビニル基の含有量が80~98%である。
【0032】
本発明の実施例は、重量で、
(a)変性ビスマレイミドプレポリマー10~80部と、
(b)マレイミド樹脂又はその誘導体10~80部と、の成分を含む、樹脂組成物をさらに提供する。
【0033】
ここで、変性ビスマレイミドプレポリマーは前述の変性ビスマレイミドプレポリマーである。
【0034】
さらに、マレイミド樹脂又は変性ビスマレイミドプレポリマー中のビスマレイミド化合物は、以下の構造のうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
ただし、R2は水素、メチル基又はエチル基であり、R1はメチレン基、エチレン基又はジメチルメチレン基であり、nは1~10の整数である。
【0040】
【化8】
【0041】
【化9】
【0042】
式中、nは1~10の整数である。
【0043】
【化10】
【0044】
ただし、nは1~10の整数である。
【0045】
【化11】
【0046】
ただし、nは1~10の整数である。
【0047】
【化12】
【0048】
【化13】
【0049】
ただし、Rは水素、メチル基又はエチル基であり、nは1~10の整数である。
【0050】
さらに、樹脂組成物は0.001~5重量部の触媒をさらに含み、該触媒は、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ドデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール又は以下の構造で示される変性イミダゾールのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0051】
【化14】
【0052】
式中、R3、R4、R5及びR6は同じ又は異なり、それぞれメチル基、エチル基又はtert-ブチル基であり、Bはメチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基、スルフィド基又はスルホニル基であり、JER製のP200F50を用いることができる。
【0053】
【化15】
【0054】
式中、R3、R4、R5及びR6は同じ又は異なり、それぞれメチル基、エチル基又はtert-ブチル基であり、Aはメチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基、スルフィド基、スルホニル基又は芳香族炭素水素基であり、第一工業製のG8009Lを用いることができる。
【0055】
さらに、樹脂組成物は3~50重量部のエラストマーをさらに含み、エラストマーはスチレン系エラストマー、メタクリレート系エラストマー、有機シリコーン系エラストマーのうちの少なくとも1つである。
【0056】
スチレン系エラストマーは、日本旭化成社のH1041、H1043、H1051、H1052、H1053、H1221、P1500、P2000、M1911又はM1913、クラレ社の8004、8006、8076、8104、V9827、2002、2005、2006、2007、2104、7125、4033、4044、4055、4077又は4099から選ばれる。
【0057】
メタクリレート類は、アルケマ社のM51、M52、M22又はD51N、クラレ社のLA-2330、長瀬社のSG-P3シリーズ又はSG-80シリーズから選ばれる。
【0058】
有機シリコーン系エラストマーは、信越化学社のX-40-2670、R-170S、X-40-2705、X-40-2701、KMP-600、KMP-605、X-52-7030、DOW社のAY-42-119、EP-2600、EP-2601、EP-2720、TMS-2670、EXL-2315、EXL-2655等から選ばれる。
【0059】
さらに、樹脂組成物にはシランカップリング剤及び分散剤がさらに含まれ、シランカップリング剤はエポキシシランカップリング剤であり、且つシランカップリング剤と分散剤の重量比は(2~10):1である。ここで、分散剤はリン酸エステル系分散剤又は/及び変性ポリウレタン系分散剤である。
【0060】
さらに、樹脂組成物には5~50重量部の含有量で難燃剤がさらに含まれ、難燃剤は臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、有機シリコーン難燃剤、有機金属塩難燃剤等から選ばれる。
【0061】
具体的には、臭素系難燃剤はデカブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエタン、臭素化スチレン又はテトラブロモフタルアミドから選ばれる。
【0062】
リン系難燃剤は無機リン、リン酸エステル、リン酸、次リン酸、酸化リン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO-HQ)、下記構造式(1)で表される化合物(1)、下記構造式(2)で表される化合物(2)、10-フェニル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスホフェナントレン-10-オキシド、トリス(2,6-ジメチルフェニル)リン、ホスファゼン、変性ホスファゼン等のリン含有有機化合物から選ばれる。
【化16】

【化17】
【0063】
窒素系難燃剤はトリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアン酸化合物、フェノチアジン等から選ばれる。
【0064】
有機シリコーン難燃剤は有機シリコーンオイル、有機シリコーンゴム、有機シリコーン樹脂等から選ばれる。
【0065】
有機金属難燃剤はフェロセン、アセチルアセトン金属錯体、有機金属カルボニル化合物等から選ばれる。
【0066】
難燃剤は日本大塚化学社製の品番SPB-100のホスファゼン、品番BP-PZ、PP-PZ、SPCN-100、SPV-100及びSPB-100Lの変性ホスファゼンから選ばれる。
【0067】
さらに、樹脂組成物はフィラーをさらに含み、樹脂組成物を100重量部として、その含有量は20~80重量部である。フィラーは無機フィラー、有機フィラー、複合フィラーを含む。そのうち、無機フィラーは、溶融シリカ、結晶質シリカ、球状シリカ、中空シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、滑石粉、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、雲母、ガラス繊維粉末のうちの少なくとも1つから選ばれる。有機フィラーは、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリフェニレンサルファイド粉末、ポリエーテルスルホン粉末のうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0068】
フィラーはシランカップリング剤で表面処理され、シランカップリング剤は、信越化学社製の品番KBM-573、ダウコーニング社製のZ-6883、信越化学社製の品番KBM-1003、信越化学社製の品番KBM-1403のうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0069】
さらに、樹脂組成物には染料、例えば蛍光染料又は黒色染料をさらに添加してもよい。
【0070】
本発明は、プリプレグ、積層板、絶縁薄膜、絶縁板、回路基板及び電子デバイスのための、上記樹脂組成物の使用をさらに提供し、具体的な説明は以下のとおりである。
【0071】
本発明は、補強材及び前述の樹脂組成物を含むプリプレグをさらに提供し、プリプレグの製造方法は、樹脂組成物を溶媒で接着剤液として溶解させ、続いて補強材を上記接着剤液中に浸漬し、浸漬後の補強材を取り出して100~180℃の環境下で1~15minベーキングし、乾燥させるとプリプレグが得られる。
【0072】
ここで、溶媒は、アセトン、ブタノン、トルエン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0073】
補強材は、天然繊維、有機合成繊維、有機織物、無機織物のうちの少なくとも1つから選ばれる。好ましくは、補強材にガラス繊維布を用いる。ガラス繊維布のうち、オープンフィラメント繊維布又は平織り繊維布を用いることが好ましい。ガラス繊維布はEガラス繊維布、Sガラス繊維布又はQガラス繊維布が好ましい。
【0074】
また、補強材にガラス繊維布を用いる場合、ガラス繊維布は、樹脂組成物とガラス繊維布との界面結合を改善するために、カップリング剤で化学処理される。カップリング剤は、高い耐水性及び耐熱性を提供するために、エポキシシランカップリング剤又はアミノシランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0075】
本発明の実施例は、1つのプリプレグと、プリプレグの少なくとも一側の表面に設けられた金属箔とを含むか、又は複数の前記プリプレグを互いに重ねてなる組み合わせシートと、組み合わせシートの少なくとも一側の表面に設けられた金属箔とを含む積層板をさらに提供する。
【0076】
積層板は以下の方法で製造される。1つのプリプレグの一側又は両側の表面に金属箔を被覆するか、又は少なくとも2つのプリプレグを組み合わせシートとして重ね、組み合わせシートの一側又は両側の表面に金属箔を被覆し、熱圧成形によって金属箔積層板を得る。熱圧の加圧条件は、0.2~2MPa、150~250℃下で2~4時間加圧する。
【0077】
好ましくは、金属箔が銅箔又はアルミニウム箔から選ばれる。金属箔の厚さは5ミクロン、8ミクロン、12ミクロン、18ミクロン、35ミクロン又は70ミクロンである。
【0078】
本発明の実施例は、少なくとも1つの前述のプリプレグを含む絶縁板をさらに提供する。
【0079】
本発明の実施例は、キャリアフィルムとその上に塗布された前述の樹脂組成物とを含み、熱指数が著しく向上した絶縁薄膜をさらに提供する。
【0080】
絶縁薄膜は以下の方法で製造される。前述の樹脂組成物を溶媒で接着剤液として溶解させ、続いてキャリアフィルム上に該接着剤液を塗布し、接着剤液を塗布したキャリアフィルムを加熱して乾燥させると、絶縁薄膜が得られる。
【0081】
前述した溶媒はアセトン、ブタノン、トルエン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0082】
キャリアフィルムはPETフィルム、PPフィルム、PEフィルム、PVCフィルムのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0083】
本発明の実施例は、前述したプリプレグ、積層板、絶縁板、絶縁薄膜のうちの1つ又は複数を含む回路基板をさらに提供する。
【0084】
本発明の実施例は、前述の回路基板を含む電子デバイスをさらに提供し、回路基板の耐熱性が大幅に向上したため、電子デバイスの安全性が著しく向上する。
【0085】
以下において幾つかの具体的な合成例及び比較例と関連付けて、本出願の技術的解決手段をさらに説明する。
【0086】
合成例1 変性ビスマレイミドプレポリマーY1
ステップ1で、ビーカーに200gのビスマレイミド樹脂(大和化成社製、BMI-2300)、20gの二重結合含有有機シリコーン樹脂(信越化学社製、X-22-164A)及び適量の有機溶媒を加え、80℃下で70min反応させ、予備反応物を得る。
ステップ2で、110℃まで昇温させ、30gの炭素水素樹脂(曹達社製B3000)を加え、110℃下で反応を30min続け、排出して変性ビスマレイミドプレポリマーY1を得る。
【0087】
合成例2 変性ビスマレイミドプレポリマーY2
ステップ1で、ビーカーに200gのビスマレイミド樹脂(日本化薬社製、MIR-3000)、30gの二重結合含有有機シリコーン樹脂(信越化学社製、X-22-164A)及び適量の有機溶媒を加え、90℃下で60min反応させ、予備反応物を得る。
ステップ2で、120℃まで昇温させ、45gの炭素水素樹脂(曹達社製B2000)を加え、120℃下で反応を30min続け、排出して変性ビスマレイミドプレポリマーY2を得る。
【0088】
合成例3 変性ビスマレイミドプレポリマーY3
ステップ1で、ビーカーに200gのビスマレイミド樹脂(日本化薬社製、MIR-3000)、40gの二重結合含有有機シリコーン樹脂(X-22-164A)を加え、90℃下で60min反応させ、予備反応物を得る。
ステップ2で、120℃まで昇温させ、25gの炭素水素樹脂(曹達社製B3000)を加え、120℃下で反応を30min続け、排出して変性ビスマレイミドプレポリマーY3を得る。
【0089】
合成例4 変性ビスマレイミドプレポリマーY4
ビーカーに200gのビスマレイミド樹脂(大和化成社製、BMI-2300)、20gの二重結合含有有機シリコーン樹脂(信越化学社製、X-22-164A)、30gの炭素水素樹脂(曹達社製B3000)及び適量の有機溶媒を加え、100℃下で100min反応させ、変性ビスマレイミドプレポリマーY4を得る。
【0090】
合成例5 変性ビスマレイミドプレポリマーY5(合成例1と比較)
ステップ1で、ビーカーに200gのビスマレイミド樹脂(大和化成社製、BMI-2300)、30gの炭素水素樹脂(曹達社製B3000)及び適量の有機溶媒を加え、80℃下で70min反応させ、予備反応物を得る。
ステップ2で、110℃まで昇温させ、20gの二重結合含有有機シリコーン樹脂(信越化学社製、X-22-164A)を加え、110℃下で反応を30min続け、排出して変性ビスマレイミドプレポリマーY5を得る。
【0091】
合成比較例1 変性ビスマレイミドプレポリマーY6
ビーカーに200gのビスマレイミド樹脂(大和化成社製、BMI-2300)、20gの二重結合含有有機シリコーン樹脂(X-22-164A)及び適量の有機溶媒を加え、110℃下で120min反応させ、予備反応物Y4を得る。
【0092】
合成比較例2 変性ビスマレイミドプレポリマーY7
ビーカーに200gのビスマレイミド樹脂(大和化成社製、BMI-2300)、45gの炭素水素樹脂(曹達社製B3000)及び0.1gの開始剤を加え、110℃下で120min反応させ、予備反応物Y5を得る。
【0093】
表1中のデータに従って対応する固形物を秤量し、秤量した各固形物を、接着剤液の固形物含有量が60%になるように溶媒で調整し、接着剤液をEガラス繊維布上に塗布し、浸潤した後に取り出し、160℃の送風乾燥オーブン内に放置し、3~6minベーキングし、プリプレグに製造する。
【0094】
プリプレグを300×300mmにカットし、プリプレグの両側にそれぞれ1つの電解銅箔を配置し、一定の積み重ね構造として積み重ね、真空プレスに送入して圧着させて金属箔積層板(又は銅張積層板)を得る。具体的な性能検出は表2に示すとおりである。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
上記全ての実施例1~5及び比較例1~3で製造されたプリプレグ及び銅張積層板に対して性能試験を行う。
【0098】
1)ガラス転移温度はDMA(熱機械分析)を採用し、昇温速度は10℃/minとする。
2)PCT 2HR吸水率測定は、10cm×10cmで、厚さ0.40mmで、両面の金属箔を除去したサンプルを3つ採取し、100℃で2時間乾燥させ、重量を量り、W1とし、続いてプレッシャークッカー試験(Pressure Cooker test)機内で、121℃、2気圧にて2時間処理し、重量を量り、W2とし、吸水率を(W2-W1)/W1×100%として測定する。
3)X/Y熱膨張係数(CTE)測定は、TMA(熱機械分析)を採用し、昇温速度は10℃/minとし、試験温度範囲は30~100℃とする。
4)Dk及びDfは、IPC-TM-650 2.5.5.9に従って平行板法を用い、10GHz下でのものを測定する。
【0099】
上記実験データから分かるように、実施例1~5は、高Tg、低誘電率及び損失正接、低吸水率及び低CTE値という優れた性能を有する。そのうち、実施例2は比較例1に比べ、より高いTg値、低い誘電率及び損失正接を有し、実施例1は比較例2に比べ、より高いTg値及び低い誘電率と損失正接を有し、CTE及び吸水率もより低い。
【0100】
なお、本明細書は実施形態で説明をしたが、各実施形態は1つのみの独立した技術的解決手段を含むわけではなく、明細書のこのような記述方式は単なる明確化のためのものに過ぎず、当業者であれば明細書を1つの全体と見なすべきであり、各実施形態における技術的解決手段も適宜組み合わせて、当業者が理解し得る他の実施形態を形成することができることを、理解すべきである。
【0101】
上記した一連の詳細な説明は単に本発明の実現可能な実施形態についての具体的な説明に過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではなく、本発明の技術精神から逸脱しない同等の実施形態又は変更は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【国際調査報告】