IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニーの特許一覧

特表2024-539808三元触媒用途のための、ポリマレイン酸支援金属ナノ粒子合成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】三元触媒用途のための、ポリマレイン酸支援金属ナノ粒子合成
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/46 20060101AFI20241024BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20241024BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20241024BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B01J23/46 311A
F01N3/10 A
F01N3/24 E
F01N3/28 301A
F01N3/28 301P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503538
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 GB2022052708
(87)【国際公開番号】W WO2023073353
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/263,035
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ハワード、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ルー、ジン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、チンヘ
【テーマコード(参考)】
3G091
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA17
3G091AA18
3G091AB03
3G091AB13
3G091GA06
3G091GB04W
3G091GB04X
3G091GB05W
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091GB09X
3G091GB10X
3G091GB17X
4G169AA04
4G169BA01B
4G169BB04B
4G169BC71B
4G169CA03
4G169CA09
4G169DA06
4G169EA11
4G169FA03
4G169FB23
4G169FB34
(57)【要約】
触媒物品を製造する方法であって、本方法は、マレイン酸含有ポリマーとPGMとの錯体を提供することと、担体材料を提供することと、錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、担持済み担体材料を基材上に配置することと、担持済み担体材料を加熱して、担体材料上にPGMのナノ粒子を形成することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒物品を製造する方法であって、前記方法が、
マレイン酸含有ポリマーとPGMとの錯体を提供することと、
担体材料を提供することと、
前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
前記担持済み担体材料を基材上に配置することと、
前記担持済み担体材料を加熱して、前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記マレイン酸含有ポリマーが、ポリマレイン酸、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸)及びポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)のうちの1種以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マレイン酸含有ポリマーが、ポリマレイン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマレイン酸が、100~6,000,000g/molの重量平均分子量Mwを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマレイン酸が、10,000~4,000,000g/molの重量平均分子量Mwを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマレイン酸が、100,000~2,000,000g/molの重量平均分子量Mwを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記マレイン酸含有ポリマーが、コポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コポリマーが、ポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)が、1,000~5,000の重量平均分子量Mwを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)が、1.5:1~1:1.5のアクリル酸対マレイン酸のモル比を有する、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記PGMが、ロジウム、パラジウム、及び白金のうちの1種以上から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記PGMが、ロジウムを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記PGMが、ロジウム及び白金を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記担体材料が、酸化物、好ましくは、Al、SiO、TiO、CeO、ZrO、CeO-ZrO、V、La及びゼオライトのうちの1種以上を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記担体材料が、アルミナ、好ましくは、ガンマ-アルミナを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記担体材料が、ジルコニアを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記アルミナ及び/又は前記ジルコニアが、ドープされている、請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アルミナ及び/又は前記ジルコニアが、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオビウム、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1種以上の酸化物、好ましくは、ランタン、ネオジム、及びイットリウムのうちの1種以上の酸化物でドープされている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ドーパントが、0.001重量%~20重量%、好ましくは、0.5重量%~10重量%の量で、前記アルミナ及び/又は前記ジルコニア中に存在する、請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記担体材料が、0.1~25μm、好ましくは、0.5~5μmのD90を有する粉末の形態である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記担持が、ウォッシュコーティングを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されている、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
マレイン酸含有ポリマーとPGMとの前記錯体を提供することが、前記スラリー中で前記錯体をその場で(in situ)合成することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記スラリーが、
水中でPGM塩とマレイン酸含有ポリマーとを接触させて、水溶液中でマレイン酸含有ポリマーとPGMとの前記錯体を形成することと、
前記担体材料を前記水溶液と接触させることによって、前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
所望により、酸素貯蔵材料、好ましくは、セリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1種以上を、前記水溶液に追加することと、を含む方法によって調製されている、請求項22又は請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記スラリーが、
PGM塩と担体材料とを水中で接触させて、担体材料懸濁液を形成することと、
前記担体材料懸濁液をマレイン酸含有ポリマーと接触させて、担持済み担体材料を形成することであって、前記担持済み担体材料は、その上に錯体が担持された担体材料を含み、前記錯体が、前記マレイン酸含有ポリマーと前記PGMとの錯体を含む、担持済み担体材料を形成することと、
所望により、酸素貯蔵材料、好ましくは、セリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1種以上を、前記担体材料懸濁液に追加することと、を含む方法によって調製されている、請求項22又は請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記スラリーが、10~40%、好ましくは、15~35%の固形分含有量を有する、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記スラリーが、
酸素貯蔵材料、好ましくは、セリア-ジルコニア、
助触媒塩、
結合剤、
酸又は塩基、
増粘剤、及び
還元剤のうちの1種以上を更に含む、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、アルミナを含み、前記スラリーが、セリア-ジルコニアを更に含む、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記基材上に更なるスラリーを配置することを更に含み、前記更なるスラリーが、更なる担体材料、酸素貯蔵材料、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1種以上を含み、前記更なるスラリーを前記基材上に配置することが、前記担体材料を前記基材上に配置する前に、及び/又は前記担持済み担体材料を加熱して、前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成した後に行われる、請求項22~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記担持済み担体材料を基材上に配置することが、前記スラリーを前記基材と接触させること、並びに所望により、
真空を前記基材に適用すること、及び/又は
前記基材上の前記スラリーを乾燥させること、を含む、請求項22~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記乾燥が、
60℃~200℃、好ましくは、70℃~130℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは、15~60分間、行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記基材が、コーディエライトを含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記基材が、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ、又はフロースルーフィルタの形態である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記加熱が、
400℃~700℃、好ましくは、400℃~600℃、より好ましくは、450℃~600℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは、35~120分間、実施される、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記加熱が、焼成を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ナノ粒子が、0.1nm~10nm、好ましくは、0.2~5nm、より好ましくは、0.2~4nmのD50を有する、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
請求項1~36のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる触媒物品であって、前記触媒物品が、排出処理システムにおいて使用するためのものである、触媒物品。
【請求項38】
三元触媒作用のための、請求項37に記載の触媒物品。
【請求項39】
1g/in~3g/inのウォッシュコート担持量を有する、請求項37又は請求項38に記載の触媒物品。
【請求項40】
前記基材が、ウォールフローフィルタ基材を含む、請求項37~39のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項41】
前記基材が、フロースルー基材を含む、請求項37~39のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項42】
ロジウムをその上に有する担体材料の最下層と、パラジウムをその上に有する担体材料の最上層と、を含む、請求項37~41のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項43】
パラジウムをその上に有する担体材料の最下層と、ロジウムをその上に有する担体材料の最上層と、を含む、請求項37~41のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項44】
前記担体材料が、アルミナを含む、請求項42又は請求項43に記載の触媒物品。
【請求項45】
2g/ft~15g/ftのロジウム、好ましくは、3g/ft~10g/ftのロジウムを含む、請求項42~44のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項46】
20g/ft~200g/ftのパラジウム、好ましくは、30g/ft~150g/ftのパラジウムを含む、請求項42~45のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項47】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されており、前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、アルミナを含み、前記スラリーが、セリア-ジルコニアを更に含む、請求項37~46のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項48】
請求項37~47のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、排出処理システム。
【請求項49】
ガソリンエンジンのための、請求項48に記載の排出処理システム。
【請求項50】
前記ガソリンエンジンが、化学量論的条件下で作動する、請求項49に記載の排出処理システム。
【請求項51】
排気ガスを処理する方法であって、前記方法が、
請求項37~47のいずれか一項に記載の触媒物品を提供することと、
前記触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む、方法。
【請求項52】
前記排気ガスが、ガソリンエンジンからのものである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ガソリンエンジンが、化学量論的条件下で作動する、請求項52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒物品を製造する方法、本方法によって得ることができる触媒物品、排出処理システム、及び排気ガスを処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三元触媒(Three-Way Catalyst、TWC)は、化学量論的空燃比において、ガソリンエンジンの排気からのCO、HC、及びNOを無害な化合物へと同時に転化(約98%)することを、可能にする。具体的には、CO及びHCの、CO及び水蒸気(HO)への酸化は、主にPdによって触媒され、一方、NOのNへの還元は、主にロジウム(Rh)によって触媒される。現代のTWCは、単層、二層、又は多層状の担体上に堆積された担持白金族金属(以下、「Platinum Group Metal、PGM」)触媒(パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)等)を使用するが、担体材料は、高比表面積を有する金属酸化物、主に安定化ガンマアルミナ、及びセリア含有酸素貯蔵材料からなる。担持触媒は、セラミックモノリス担体上にウォッシュコートされる。
【0003】
TWCウォッシュコートスラリーの従来の調製は、一般に、無機PGM前駆体、例えば硝酸塩、酢酸塩、又は塩化物塩の溶液を使用して、初期湿潤(incipient wetness)又は湿式含浸によって、PGM元素を酸化物担体上に堆積させることを含む。TWC性能を向上させるために、多くの場合、ウォッシュコート配合物に、助触媒塩が追加される。モノリス担体が、調製されたままの状態のスラリーでウォッシュコートされると、続いて、乾燥工程及び焼成工程が行われて、無機塩を分解し、PGM及び助触媒元素を担体材料上に固定させる。担持金属触媒の性能は、金属ナノ粒子の構造及び組成、並びに担体の性質に依存することが周知である。上記の方法を使用して調製された従来のTWCは、多くの場合、触媒活性種の構造(すなわち、平均PGM粒径及び組成、活性成分の位置、並びに金属-担体の相互作用)に対して、限定的な制御しか提供しない。これは主として、高温焼成プロセス中の金属移動及び粒子成長が原因である。
【0004】
ますます厳しくなる環境規制に伴い、より高い排出削減効率を有するTWCが、必要とされている。一方、PGMコストの増加に伴い、TWC性能を備えることなくPGM担持量を低減することが、緊急に必要とされている。PGMの粒径及び金属-担体の相互作用のより良好な制御は、TWC性能を最適化することにおいて、不可欠である。更に、均一化されたPGM粒径分布は、多くの場合、燃費向上のために使用されるエンジン戦略である燃料遮断プロセス中に生じるような、オストワルド熟成による金属焼結の程度の低減に、寄与し得る。
【0005】
触媒着火は、触媒反応を開始するのに必要な最低温度である。具体的には、着火温度は、転化率が50%に達する温度である。着火温度の低い触媒物品が、必要とされている。
【0006】
米国特許第2012/0077669(A1)号は、自動車用途のための担持金属触媒のポリマー支援合成について、記載している。実施例で使用されるポリマーとしては、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、及びポリ(エチレンイミン)が挙げられる。記載された合成手順では、最初に、担体(アルミナ粉末)にポリマー含有水溶液を含浸させる。次に、含浸した担体は、濾過工程及び乾燥工程によって、上記溶液から分離される。初期湿潤含浸によって、乾燥された含浸担体に、PGM前駆体溶液を更に含浸させる。記載されたプロセスは、特許請求の範囲に記載された担持金属触媒の形成のための複数の工程を伴うが、これは、商業規模の製造のためのコスト及び困難性を増加させる。米国特許第2012/0077669(A1)号は、本技術を応用するために、ディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンなどの希薄燃焼エンジンが好ましくは使用されることを示している。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一態様は、触媒物品を製造する方法に関し、本方法は、マレイン酸含有ポリマーとPGMとの錯体を提供することと、担体材料を提供することと、錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、担持済み担体材料を基材上に配置することと、担持済み担体材料を加熱して、担体材料上にPGMのナノ粒子を形成することと、を含む。
【0008】
本開示の別の態様は、第1の態様における方法によって得られる触媒物品に関する。
【0009】
本発明は、第2の態様における触媒物品を含む、内燃機関のための排気システムもまた包含する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1a】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験の、NO転化率の結果を示す。
図1b】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験の、CO転化率の結果を示す。
図1c】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験の、THC転化率の結果を示す。
図2a】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験の、NO転化率の結果を示す。
図2b】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験の、CO転化率の結果を示す。
図2c】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験の、THC転化率の結果を示す。
図3a】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験の、NO転化率の結果を示す。
図3b】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験の、CO転化率の結果を示す。
図3c】本発明の方法に従って製造された実施例の触媒物品及び参照例の触媒物品の摂動着火性能試験の、THC転化率の結果を示す。
図4】硝酸ロジウム基準による、Laドープアルミナ上の1重量%のロジウムのロジウム取り込み、及び様々なロジウム-PMAによる、ロジウムのその場での(in-situ)修飾を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、先行技術に関連する問題の少なくともいくつかに取り組むこと、又は少なくとも商業的に許容可能な代替解決策を提供することを、目的とする。
【0012】
第1の態様では、本発明は、触媒物品を製造する方法を提供するが、本方法は、
マレイン酸含有ポリマーとPGMとの錯体を提供することと、
担体材料を提供することと、
錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
担持済み担体材料を、基材上に配置することと、
担持済み担体材料を加熱して、担体材料上にPGMのナノ粒子を形成することと、を含む。
【0013】
本明細書において定義される各態様又は実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意のその他の態様(複数可)又は実施形態(複数可)と組み合わされ得る。具体的には、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意のその他の特徴と、組み合わされ得る。
【0014】
驚くべきことに、排出処理システムにおいて使用される場合、本発明の方法によって製造された触媒物品は、好ましい触媒活性、特に好ましい三元触媒活性を示し得る。例えば、触媒物品は、化学量論的ガソリンエンジンの三元触媒排出削減中に、好ましい着火性能、特にNO、CO、及び全炭化水素の転化を示し得る。このような好ましい触媒活性及び着火性能は、同じ/同様のPGM種(複数可)、担持量(複数可)、担体(複数可)、及び構成(複数可)を有する従来の触媒物品によって示されるものよりも優れている場合がある。触媒物品は、従来の触媒物品と比較して、より耐久性があり得る。換言すれば、このような好ましい触媒活性は、エージング後であっても示され得る。
【0015】
有利なことに、このような優れた性能は、従来の触媒物品と比較してより低い担持量のPGMを、触媒性能を損なうことなく使用することを容易にし得る。これは、このような金属、特にロジウムの高いコストを考慮すると、有益であり得る。更に、このような優れた性能は、触媒性能を損なうことなく、高コストのPGMをより低コストのPGM又はその他の遷移金属で、部分的に/完全に置換することを容易にし得る。
【0016】
理論に束縛されるものではないが、このような優れた性能は、担体材料上のPGMナノ粒子の好ましい粒径分布によって提供され得ることが、仮定される。PGMとマレイン酸含有ポリマーとの錯体形成中に、PGMのイオンがカルボキシル官能基と反応する場合があり、同じ予測可能な量のPGMイオンが、各ポリマー単位構造によって「取り込まれる(uptaken)」が、「取り込まれる」PGMの総量は、ポリマーの分子構造/サイズ及びPGM-ポリマー配位比によって決定される。次に、各錯体は、表面官能基(例えば、ヒドロキシル基)又は表面電荷と反応/相互作用して、PGM-ポリマー錯体が担体材料表面上に「しっかり固定する(anchoring)」ことを、可能にし得る。「しっかり固定された(anchored)」PGM-ポリマー錯体は、ポリマーの立体効果及び担体材料の表面官能基/電荷の利用可能な量に起因して、分離され得る。錯体と担体材料官能基との間の相互作用により、従来の方法によって調製された触媒と比較して、担体によるPGM取り込みが増加し得る。理論に束縛されるものではないが、このような均一な分離は、加熱(焼成)時にPGMナノ粒子のより狭い粒径分布(より均一化された粒径)をもたらし得るが、これは更に、エージング及び/又は燃料カット事象中のPGM粒子の過剰な凝集及び/又は焼結の低減をもたらすこともまた、仮定される。換言すれば、従来の触媒と比べると、本発明の方法を使用することによって、より耐焼結性の高い触媒物品を得ることができる。
【0017】
米国特許第2012/0077669(A1)号の方法と比較して、本発明の方法は、より単純でより効率的な「ワンポット(one-pot)」法である。本発明の方法は、担体材料上にポリマー分子を堆積させるための別個の含浸工程、濾過工程、及び乾燥工程を、必要としない。本発明の方法を使用することによって、追加された各ポリマー分子が相互作用のために利用されるので、ポリマーと担体との相互作用及びPGMとポリマーとの相互作用の発生が増加し得る。対照的に、米国特許第2012/0077669(A1)号では、限られた量のポリマー分子のみが、濾過工程及び洗浄工程後に担体上に留まり得る。更に、本発明の方法によって調製された触媒物品は、特に、化学量論的ガソリン排出削減のための三元触媒として、使用され得る。対照的に、米国特許第2012/0077669(A1)号の方法によって製造された触媒物品は、希薄燃焼ディーゼル又はガソリンエンジンにおいて、特定の用途を有する。
【0018】
本明細書で使用される「触媒物品」という用語は、触媒がその上に又はその内部に担持されている物品を包含し得る。物品は、例えば、ハニカムモノリス、又はフィルタ、例えば、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタの形態をとり得る。触媒物品は、排出処理システム、特にガソリンエンジン、好ましくは、化学量論的ガソリンエンジンのための排出処理システムでの使用のためのものであり得る。触媒物品は、三元触媒作用での使用のためのものであり得る。
【0019】
マレイン酸含有ポリマーとPGMとの錯体を提供することは、典型的には、溶液、例えば、水溶液又はアルコール溶液中で錯体を提供することを伴う。マレイン酸含有ポリマーとPGMとの錯体を提供することは、典型的には、純粋な形態又は溶液の形態の無機PGM前駆体(複数可)とマレイン酸含有ポリマーとを、水性媒体中で混合すること、例えば、硝酸PGMとマレイン酸含有ポリマーとを水中で混合することを伴う。
【0020】
本明細書で使用される「マレイン酸(maleic acid)」という用語は、シス-ブテン二酸、すなわち、以下を包含し得る。
【0021】
【化1】
【0022】
本明細書で使用される「マレイン酸含有ポリマー(maleic acid-containing polymer)」という用語は、少なくとも部分的にマレイン酸から形成されるポリマーのクラスを包含し得る。ポリマーは、ホモポリマー、すなわち、ポリマレイン酸を含み得る。あるいは、ポリマーは、マレイン酸及び少なくとも1種のその他のモノマーから形成されるコポリマーを含み得る。ポリマーは、直鎖状又は分岐鎖状であり得るが、好ましくは、分岐鎖状である。ポリマーは、デンドリマー形態であり得る。
【0023】
本明細書で使用される「白金族金属(platinum group metal)」又は「PGM」という用語は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金を包含し得る。PGMは、これらの金属のうちの1つを含み得る。あるいは、PGMは、これらの金属のうちの2つ以上を含み得る。PGMは、合金の形態であり得る。
【0024】
錯体は、1:1~1:10、好ましくは、1:2~1:8、より好ましくは、1:5~1:7のPGM対カルボキシル基比を有し得る。
【0025】
担体材料は、その上に又はその内部に錯体及びナノ粒子を支持することが可能な任意の材料であり得る。担体材料は、任意の形態をとり得るが、典型的には、粉末、より典型的には、高表面積粉末の形態である。本発明の方法が、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタなどの触媒化フィルタを調製するために使用される場合、担体材料は、典型的には、TEM(Transmission Electron Microscopy、透過型電子顕微鏡法)を使用して測定して、例えば、0.1~25μm、より典型的には、0.5~5μmのD50を有する粉末の形態となる。このような粒径は、フィルタをコーティングするために使用されるスラリーの望ましいレオロジー特性を、容易にし得る。担体材料は、ウォッシュコートとして機能し得る。担体材料は、ウォッシュコートであり得るか、ウォッシュコートの一部であり得る。
【0026】
担体材料はまた、三元触媒転化を容易にするために、燃料希薄条件及び燃料富化条件でそれぞれ酸素を貯蔵及び放出する、酸素貯蔵材料としての役割を果たし得る。
【0027】
担体材料への錯体の適用は、典型的には、スラリーを生成するように、溶媒(典型的には水)の存在下で錯体と担体材料とを接触させることを含む。本明細書で使用される「スラリー(slurry)」という用語は、不溶性材料、例えば、不溶性粒子を含む液体を包含し得る。スラリーは、(1)溶媒、(2)可溶性含有物、例えば、未反応マレイン酸含有ポリマー、無機PGM及び助触媒前駆体(複数可)、並びにPGM-ポリマー錯体(担体の外側)、及び(3)不溶性含有物、例えば、ポリマー及び金属前駆体と相互作用するか、相互作用しない、担体粒子、を含み得る。スラリーは、典型的には、撹拌され、より典型的には、少なくとも10分間、より典型的には、少なくとも30分間、更により典型的には、少なくとも1時間、撹拌される。接触時間及び/又は撹拌時間を増加させることにより、担体材料上に担持される錯体の量を増加させ得る。
【0028】
本明細書で使用される「担持済み担体材料(loaded support material)」という用語は、その上に(例えば、高表面積金属酸化物担体材料の表面上に)担持された及び/又はその内部に(例えば、ゼオライト担体材料の細孔内に)担持されたPGM-ポリマー錯体を有する担体材料を包含し得る。錯体は、典型的には、例えば、静電気力、水素結合、配位結合、共有結合、及び/又はイオン結合によって、担体に固定される。例えば、酸化物の場合、マレイン酸含有ポリマー中のカルボキシル官能基と担体上の表面ヒドロキシル基とは、静電気力又は水素結合形成を介して相互作用し得る。
【0029】
本明細書で使用される「基材(substrate)」という用語は、例えば、セラミックハニカム若しくは金属ハニカム、又はフィルタブロック、例えば、ウォールフローフィルタ若しくはフロースルーフィルタを包含し得る。基材は、セラミックモノリス担体を含み得る。基材は、その材料組成、サイズ及び構成、セルの形状及び密度、並びに壁厚の点で異なり得る。好適な基材は、当該技術分野において周知である。
【0030】
担持済み担体材料を基材上に配置することは、当該技術分野で周知の技術を使用して実施され得る。典型的には、担持済み担体材料は、担持済み担体材料のスラリーを、特定の成形ツールを使用して、基材の入口に所定の量で注ぐことによって、基材上に配置される。以下でより詳細に考察されるように、後続の真空及び乾燥工程が、配置工程中に用いられ得る。担体がフィルタブロックである場合、担持済み担体材料は、フィルタ壁上、フィルタ壁内(多孔性の場合)、又はその両方に配置され得る。
【0031】
担持済み担体材料の加熱は、典型的には、オーブン又は炉、より典型的には、ベルト又は静電オーブン(static oven)又は炉中で、典型的には、一方向からの特定の流れの熱風中で実施される。加熱は、乾燥を含み得る。加熱はまた、焼成も含み得る。乾燥工程及び焼成工程は、連続的又は逐次的であり得る。例えば、基材が既にウォッシュコーティングされ、前のウォッシュコーティングと一緒に乾燥させた後に、別個のウォッシュコーティングが適用され得る。ウォッシュコーティングされた基材はまた、コーティングが完了した場合に、1つの連続的な加熱プログラムを使用して、乾燥及び焼成され得る。加熱中、錯体は、少なくとも部分的に、実質的に、又は完全に分解し得る。換言すれば、錯体の配位子、すなわちマレイン酸含有ポリマーは、PGMから少なくとも部分的に、実質的に、又は完全に除去又は分離され、最終触媒物品から除去される。次に、このように分離されたPGMの粒子は、金属-金属結合及び金属-酸化物結合を形成し始め得る。加熱(焼成)の結果として、基材は、典型的には、マレイン酸含有ポリマーを実質的に含まず、より典型的には、マレイン酸含有ポリマーを完全に含まない。
【0032】
本明細書で使用される「ナノ粒子(nanoparticle)」という用語は、TEMによって測定して0.01nm~100nmの直径を有する粒子を包含し得る。ナノ粒子は、任意の形状、例えば、球形、プレート状、立方体、円筒形、六角形、又は桿状であり得るが、典型的には球形である。ナノ粒子の最大寸法(すなわち、ナノ粒子が球状である場合には、直径)は、TEMによって測定して、典型的には、0.5~10nm、より典型的には、1~5nmである。
【0033】
加熱工程の後、基材は、典型的には、冷却され、より典型的には、室温まで冷却される。冷却は、典型的には、冷却剤/冷却媒体を用いて又は用いずに、典型的には、冷却剤を用いずに、空気中で実施される。
【0034】
マレイン酸含有ポリマーは、好ましくは、ポリマレイン酸(すなわち、ホモポリマー)、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸)及びポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)のうちの1種以上を含む。このようなポリマーは、直鎖状又は分枝鎖状であり得るが、好ましくは、分枝状であり、デンドリマー形態であり得る。このような種の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらし得る。
【0035】
ポリマレイン酸は、以下の一般式を有し得る。
【0036】
【化2】
【0037】
ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸)(a.k.a.、マレイン酸-メチルビニルエーテルコポリマー、ビニルメチルエーテル-マレイン酸コポリマー、ポリ(マレイン酸-メチルビニルエーテル)、メトキシエチレン-マレイン酸コポリマー)は、以下の一般式を有し得る。
【0038】
【化3】
【0039】
ポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)は、以下の一般式を有し得る。
【0040】
【化4】
【0041】
好ましい実施形態では、マレイン酸含有ポリマーは、ポリマレイン酸を含む。ポリマレイン酸の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらし得る。
【0042】
ポリマレイン酸は、光散乱によって測定して、好ましくは、100~6,000,000、より好ましくは、10,000~4,000,000g/mol、更により好ましくは、100,000~2,000,000g/mol、依然として更により好ましくは、190,000~400,000g/molの重量平均分子量Mを有する。重量平均分子量Mwは、以下の式:
【0043】
【数1】
(式中、Nは、分子質量Mの分子数である)によって決定される。このような重量平均分子量の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらし得る。
【0044】
その他の好ましい実施形態では、マレイン酸含有ポリマーは、コポリマーを含む。コポリマーは、好ましくは、ポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)を含む。
【0045】
コポリマー及び/又はポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)は、直鎖状又は分岐鎖状であり得るが、好ましくは、分岐鎖状である。コポリマー及び/又はポリマレイン酸は、デンドリマー形態であり得る。コポリマー、特に、ポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらし得る。
【0046】
ポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)は、光散乱によって測定して、好ましくは、1,000~5,000、より好ましくは、2,000~4,000g/mol、更により好ましくは、2,500~3,500g/molの重量平均分子量Mを有する。重量平均分子量Mwは、上記の式によって決定される。このような重量平均分子量の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらし得る。
【0047】
ポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)は、好ましくは、1.5:1~1:1.5、より好ましくは、1.25:1~1:1.25、更により好ましくは、1.1:1~1:1.1、依然として更により好ましくは、約1:1の、アクリル酸対マレイン酸のモル比を有する。このような比の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらし得る。
【0048】
PGMは、好ましくは、ロジウム、パラジウム、及び白金のうちの1種以上から選択され、より好ましくは、ロジウム及び白金から選択される。このような金属は、三元触媒作用を実施するために、特に好適であり得る。なお、このような金属は高価であり、このことは、同じ量の金属に対して同様のレベルの触媒活性を提供できることが有利であることを意味する。更に、本発明の方法におけるこのような金属の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらし得る。
【0049】
PGMは、より好ましくは、ロジウムを含む。ロジウムは、特に高価なPGMである。本発明の方法におけるロジウムの使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらし得る。
【0050】
好ましい実施形態では、PGMは、ロジウム及びパラジウムを含む。本発明の方法におけるこのような金属の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらし得る。
【0051】
担体材料は、好ましくは、酸化物、好ましくは、Al(酸化アルミニウム又はアルミナ)、SiO、TiO、CeO、ZrO、V、La及びゼオライトのうちの1種以上を含む。酸化物は、好ましくは、金属酸化物である。担体材料は、より好ましくは、アルミナ、更により好ましくは、ガンマ-アルミナを含む。担体材料は、好ましくは、ジルコニアを含む。アルミナ及び/又はジルコニアは、好ましくはドープされ、より好ましくは、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオビウム、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、又はナトリウムのうちの1種以上の酸化物でドープされ、更により好ましくは、ランタン、ネオジム、又はイットリウムの酸化物でドープされている。このようなドープされた酸化物は、担体材料として特に有効である。好ましくは、ドーパントは、0.001重量%~20重量%、及びより好ましくは、0.5重量%~10重量%の量で、アルミナ及び/又はジルコニア中に存在する。
【0052】
担体材料は、好ましくは、0.1~25μm、より好ましくは、0.5~5μmのD90を有する粉末の形態である。D90は、TEMによって測定され得る。
【0053】
担持は、ウォッシュコーティングを含み得る。
【0054】
担持済み担体材料は、好ましくは、スラリーの形態で基材上に配置される。スラリーは、基材上に材料を配置する際に、特にガスの拡散を最大化し、触媒転化中の圧力降下を最小化するために、特に有効である。
【0055】
PGMとマレイン酸含有ポリマーとの錯体を提供することは、好ましくは、スラリー中で錯体をその場で合成することを含む。
【0056】
好ましい実施形態では、スラリーは、
水中でPGM塩とマレイン酸含有ポリマーとを接触させて、水溶液中でマレイン酸含有ポリマーとPGMとの前記錯体を形成することと、
担体材料を水溶液と接触させることによって、錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
所望により、酸素貯蔵材料、好ましくは、セリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1種以上を、水溶液に追加することと、を含む方法によって、調製される。
【0057】
このような「ワンポット」調製方法は、従来の方法と比較して簡略化されており、低コストであり得る。本方法はまた、ポリマーの利用を最大化し得る。
【0058】
換言すれば、マレイン酸含有ポリマーとPGMとの錯体を提供する工程と、担体材料を提供する工程と、錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成する工程、及び担持済み担体材料を基材上に配置する工程は、
水中でPGM塩とマレイン酸含有ポリマーとを接触させて、水溶液中でマレイン酸含有ポリマーとPGMとの錯体を形成することと、
担体材料を水溶液に追加して、担持済み担体材料のスラリーを形成することと、
所望により、酸素貯蔵材料、好ましくは、セリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1種以上を、スラリーに追加することと、
スラリーを基材上に配置することと、を含み得る。
【0059】
別の好ましい実施形態では、スラリーは、
PGM塩と担体材料とを水中で接触させて、担体材料懸濁液を形成することと、
担体材料懸濁液をマレイン酸含有ポリマーと接触させて、担持済み担体材料を形成することであって、担持済み担体材料は、その上に錯体が担持された担体材料を含み、錯体が、マレイン酸含有ポリマーとPGMとの錯体を含む、担持済み担体材料を形成することと、
所望により、酸素貯蔵材料、好ましくは、セリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1種以上を、担体材料懸濁液に追加することと、を含む方法によって、調製される。
【0060】
このような「ワンポット」調製方法は、従来の方法と比較して簡略化されており、低コストであり得る。本方法はまた、ポリマーの利用を最大化し得る。
【0061】
スラリーは、好ましくは、10~40%、好ましくは、15~35%の固形分含有量を有する。このような固形分含有量は、担持済み担体材料を基材上に配置するために好適なスラリーレオロジーを可能にし得る。例えば、基材がハニカムモノリスである場合、このような固形分含有量は、基材の内壁上へのウォッシュコートの薄層の堆積を可能にし得る。基材がウォールフローフィルタである場合、このような固形分含有量は、スラリーがウォールフローフィルタのチャネルに入ることを可能にし得、スラリーがウォールフローフィルタの壁に入ることを可能にし得る。
【0062】
好ましくは、スラリーは、
酸素貯蔵材料、好ましくは、セリア-ジルコニア、
助触媒塩、
結合剤、
酸又は塩基、
増粘剤、及び
還元剤のうちの1種以上を更に含む。
【0063】
その他の助触媒としては、例えば、非PGM遷移金属元素、希土類元素、アルカリ族元素、及び/又は周期表の同じ若しくは異なる族内の上記元素のうちの2つ以上の組み合わせが挙げられ得る。助触媒塩は、このような元素の塩であり得る。
【0064】
結合剤は、例えば、ウォッシュコートスラリー中で個々の不溶性粒子を一緒に結合するための小さな粒径を有する、酸化物材料を含み得る。ウォッシュコートにおける結合剤の使用は、当該技術分野において周知である。
【0065】
増粘剤は、例えば、ウォッシュコートスラリー中で不溶性粒子と相互作用する、官能性ヒドロキシル基を有する天然ポリマーを含み得る。増粘剤は、基材上へのウォッシュコートコーティング中のコーティングプロファイルの改善のために、ウォッシュコートスラリーを増粘する目的を果たす。増粘剤は、通常は、ウォッシュコート焼成中に焼き取られる。ウォッシュコートのための特定の増粘剤/レオロジー調整剤の例としては、ガラクトマンナンガム、グアーガム、キサンタンガム、カードランシゾフィラン、スクレログルカン、デュータンガム、ホイーランガム、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、及びエチルヒドロキシセルロースが挙げられる。
【0066】
本明細書に記載される「還元剤(reducing agent)」という用語は、ウォッシュコート調製中に、PGMカチオンをその金属状態の粒子にその場で還元し得る化合物を包含し得る。
【0067】
PGMの還元剤として作用する、及び/又は後の焼成工程中に還元環境を作り出す、有機酸を追加し得る。好適な有機酸の例としては、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、アスコルビン酸、酢酸、ギ酸、及びこれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0068】
好ましい実施形態では、PGMはロジウムを含み、担体材料はアルミナを含み、スラリーはセリア-ジルコニアを更に含む。
【0069】
本方法は、好ましくは、更なるスラリーを基材上に配置することを更に含み、更なるスラリーは、更なる担体材料、酸素貯蔵材料、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1種以上を含み、更なるスラリーを基材上に配置することが、担体材料を基材上に配置する前に、及び/又は担持済み担体材料を加熱して、担体材料上にPGMのナノ粒子を形成した後に、行われる。これにより、異なるウォッシュコートの複数の層、例えば、とりわけアルミナ上に担持されたロジウムナノ粒子を含有する最下部ウォッシュコート、及びとりわけアルミナ上に担持されたパラジウムナノ粒子を含有する上部ウォッシュコートを有する触媒物品が得られる場合がある。必要に応じて、OSC(Oxygen Storage Capacity、酸素貯蔵能)型担体を、上記層のいずれか又は両方に追加し得る。このような複数の層の更なる実施例については、以下でより詳細に考察する。
【0070】
担持済み担体材料を基材上に配置することは、好ましくは、スラリーを基材と接触させること(例えば、スラリーを基材の入口に注入すること)、及び所望により、
真空を基材に適用すること、及び/又は
基材上のスラリーを乾燥させること、を含む。
【0071】
これにより、基材上の担持済み担体材料の好ましい分布が得られる場合がある。
【0072】
乾燥は、好ましくは、以下のように行われる:
60℃~200℃、より好ましくは、70℃~130℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは、15~60分間。
【0073】
基材は、「ブランク」、すなわち、ウォッシュコーティングされていない基材であり得る。代替的に、基材は、既にその上に担持済みのもの又はウォッシュコートを有し得る。このような状況では、最終触媒物品は、異なるウォッシュコートの複数の層を含み得る。
【0074】
基材は、好ましくは、コーディエライトを含む。コーディエライト基材は、触媒物品における使用に特に適している。
【0075】
基材は、好ましくは、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタの形態である。
【0076】
加熱は、好ましくは以下のように実施される:
400℃~700℃、好ましくは、400℃~600℃、より好ましくは、450℃~600℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは、35~120分間。
【0077】
より低い温度及び/又はより短い加熱時間は、錯体の不十分な分解をもたらす場合がある、及び/又は高レベルのマレイン酸含有ポリマーが基材中に残る場合がある。より高い温度及び/又はより長い加熱時間は、おそらく焼結に起因して、好ましくない大きな粒径を有するPGMの粒子をもたらす場合がある。より高い温度及びより長い加熱時間はまた、触媒物品への損傷をもたらす場合がある。
【0078】
加熱は、好ましくは、焼成を含む。本明細書で使用される「焼成(calcining)」という用語は、熱分解を引き起こすための空気又は酸素の非存在下又は限定された供給下での熱処理プロセスを包含し得る。
【0079】
ナノ粒子は、好ましくは、0.1nm~10nm、より好ましくは、0.2~5nm、更により好ましくは、0.2~4nmのD50を有する。D50は、TEMによって測定され得る。このような粒径は、好ましいレベルの触媒活性をもたらす場合がある。
【0080】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載される方法によって得ることができる触媒物品を提供するが、触媒物品は、排出処理システムにおいて使用するためのものである。
【0081】
従来の触媒物品と比較して、本明細書に記載される方法によって得ることができる触媒物品は、有利に小さい粒径及び好ましい粒径分布(例えば、0.2~4nmのD50)を有するPGM粒子を含有し得る。更に、従来の触媒物品と比較して、本明細書に記載される方法によって得ることができる触媒物品は、基材全体にわたって、PGM粒子のより均一な分散を示し得る。
【0082】
排出処理システムにおいて使用される場合、触媒物品は、化学量論的ガソリン排出削減のための三元触媒転化中に、特に、NO、CO及び全炭化水素に対して好ましい着火性能を示し得る。
【0083】
触媒は、好ましくは、三元触媒のためのものである。
【0084】
触媒物品は、1g/in~3g/inのウォッシュコート担持量を有し得る。このような触媒物品は、従来の触媒物品と比較して同様の又はより高い触媒活性を示し得るが、使用されるPGMのレベルがより低いことを考慮すると、より低コストであり得る。
【0085】
基材は、好ましくは、ウォールフローフィルタ基材又はフロースルー基材を含む。
【0086】
好ましい実施形態では、触媒物品は、ロジウムをその上に有する担体材料の最下層と、パラジウムをその上に有する担体材料の最上層と、を含む。別の好ましい実施形態では、触媒物品は、パラジウムをその上に有する担体材料の最下層と、ロジウムをその上に有する担体材料の最上層と、を含む。本明細書で使用される「最下層(bottom layer)」という用語は、基材(すなわち、基材壁)に最も近いか、それと接触している層(例えば、ウォッシュコート層)を包含し得る。本明細書で使用される「最上層(top layer)」という用語は、最下層よりも基材(すなわち、基材壁)からより離れた層(例えば、ウォッシュコート層)を包含し得、最下層の上に位置し得る。別の好ましい実施形態では、いずれかの層又は両方の層は、同じPGM種又は異なるPGM種を含有する異なる触媒組成物で、更に層状配列化され得る。
【0087】
このような好ましい実施形態では、担体材料は、好ましくは、アルミナを含む。
【0088】
触媒物品は、特にこのような好ましい実施形態では、好ましくは、2g/ft~15g/ftのロジウム、より好ましくは、3g/ft~10g/ftのロジウムを含む。有利なことに、このようなロジウムレベルは、従来の触媒物品のレベルよりも低くあり得るが、触媒活性を損なうことはない。
【0089】
触媒物品は、特にこのような好ましい実施形態では、好ましくは、20g/ft~200g/ftのパラジウム、より好ましくは、30g/ft~180g/ftのパラジウムを含む。有利なことに、このようなパラジウムレベルは、従来の触媒物品のレベルよりも低くあり得るが、触媒活性を損なうことはない。
【0090】
好ましい実施形態では、担持済み担体材料は、スラリーの形態で基材上に配置されており、PGMは、ロジウムを含み、担体材料は、アルミナを含み、スラリーは、セリア-ジルコニアを更に含む。
【0091】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載される触媒物品を含む排出処理システムを提供する。
【0092】
排出処理システムは、好ましくは、ガソリンエンジンのためのものである。
【0093】
ガソリンエンジンは、好ましくは、化学量論的条件下で作動する。
【0094】
更なる態様では、本発明は、排気ガスを処理する方法を提供するが、本方法は、
本明細書に記載される触媒物品を提供することと、
触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む。
【0095】
排気ガスは、好ましくは、ガソリンエンジンからの排気ガスである。触媒物品は、このような排気ガスを処理するために、特に好適である。ガソリンエンジンは、好ましくは、化学量論的条件下で作動する。
【0096】
これから、以下の非限定的な実施例に関連して、本発明を説明する。
【0097】
マレイン酸含有ポリマー
PMA-a~PMA-dと標識された以下のマレイン酸含有ポリマーを、供給業者から直接購入した。
PMA-a:ポリマレイン酸、LSによる平均Mwは、約216,000。
PMA-b:ポリマレイン酸、LSによる平均Mは、約1,080,000。
PMA-c:ポリマレイン酸、LSによる平均Mは、約1,980,000。
PMA-d:ポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)、AA:MAのモル比は1:1、平均Mは、3,000。
【0098】
触媒物品の製造
多数の触媒物品を、以下の実施例に従って調製した。
【0099】
参照例1:0.3%のロジウム/ガンマアルミナ(硝酸ロジウムを含む)ウォッシュコート触媒。
触媒物品を、以下の工程を実施することによって調製した。
1.必要量の硝酸ロジウム(5.2g/ft)及び水を加えて溶解し、1時間混合する。
2.粉砕されたガンマアルミナ(1g/in)スラリーを追加し、1時間混合する。
3.DI水を追加して、固形分を約20%に調整する。
4.水中の4重量%の活性化増粘剤を追加して、バッチ固形分を30%に調整する。均質なゲルが形成されるまで、VWRボルテックスミキサで激しく混合する。
5.真空引き下で、流入口から1.2インチの用量(does)を目標として、1×3インチのコアをコーティングし、空気硬化で乾燥させる。
6.静電オーブンの中で、500℃で30分間、煉瓦を焼成する。
【0100】
実施例2:0.3%のロジウム/ガンマアルミナ(PMA-a、b、c、又はdで修飾したロジウムを含む)ウォッシュコート触媒。
触媒物品を、以下の工程を実施することによって調製した。
1.必要量の硝酸ロジウム(5.2g/ft)及び水を加えて溶解し、1時間混合する。
2.PMA-a、PMA-b及びPMA-cについて、8.0のPMA:ロジウム質量比、PMA-dについて、1.4のPMA:ロジウム質量比を目標として、必要量のPMAを追加する。1時間混合する。
3.粉砕したガンマアルミナスラリーを加え、1時間混合する。
4.DI水を追加して、固形分を約20%に調整する。
5.水中の4重量%の活性化増粘剤(1g/in)を追加して、バッチ固形分を30%に調整する。均質なゲルが形成されるまで、VWRボルテックスミキサ(VWR vortex mixer)で激しく混合する。
6.真空引き下で、流入口から1.2インチの用量(does)を目標として、1×3インチのコアをコーティングし、空気硬化で乾燥させる。
7.静電オーブンの中で、500℃で30分間、煉瓦を焼成する。
【0101】
参照例3:ロジウム-TWC(硝酸ロジウムを含む)ウォッシュコート触媒。
触媒物品を、以下の工程を実施することによって調製した。
1.粉砕されたガンマアルミナ担体のスラリーを調製する(0.6g/in)。
2.適切な量の硝酸ロジウム溶液を追加し(ロジウム担持量4.8g/ft)、均質になるまで混合する。
3.pH7.0~7.5に達するまで、アンモニウムを滴下する。ウォッシュコートは、アンモニウムを追加すると増粘する。
4.ロジウムがウォッシュコート全体にわたって沈殿するように、15~20分間混合する。
5.セリア-ジルコニア担体(0.65g/in)を追加し、均質になるまで30分間混合する。
6.結合剤材料(0.03g/in)を加え、30分間混合する。
7.DI水を追加して、固形分を約23%に調整する。
8.水系で、約1.0~1.2重量%を目標として、増粘剤を追加する。少なくとも6時間混合する。
9.コーディエライト基材を、真空引き下で、流入口から1.2インチの単回用量ウォッシュコートでコーティングし、空気硬化で乾燥させる。
10.ウォッシュコートされた煉瓦を、静電オーブン中で、500℃で30分間焼成する。
【0102】
実施例4:ロジウム-TWC(PMA-a、b、c、又はdで修飾したロジウムを含む)ウォッシュコート触媒。
触媒物品を、以下の工程を実施することによって調製した。
1.硝酸ロジウムのスラリーを調製する(ロジウム担持量4.8g/ft)。
2.PMA-a、PMA-b及びPMA-Cについて、8.0のPMA:ロジウム質量比、PMA-dについて、1.4のPMA:ロジウム質量比を目標として、必要量のPMAを追加する。1時間混合する。
3.粉砕されたガンマアルミナ担体(0.6g/in)スラリーを追加し、1時間混合する。
4.セリア-ジルコニア担体(0.7g/in)を追加し、30分間混合する。
5.結合剤材料を加え(0.03g/in)、30分間混合する。
6.DI水を追加して、固形分を約23%に調整する。
7.水系で、約1.0~1.2重量%を目標として、増粘剤を追加する。少なくとも6時間混合する。
8.コーディエライト基材を、真空引き下で、流入口から1.2インチの単回用量ウォッシュコートでコーティングし、空気硬化で乾燥させる。
9.ウォッシュコートされた煉瓦を、静電オーブン中で、500℃で30分間焼成する。
【0103】
参照例5:ロジウム-白金バイメタル(硝酸白金を含む)TWCウォッシュコート触媒。
触媒物品を、以下の工程を実施することによって調製した。
1.セリア-ジルコニア担体(1.1g/in)を調製し、予定した水の少なくとも50%を追加する。
2.硝酸ロジウム(ロジウム担持量3.6g/ft)を、上記セリア-ジルコニアスラリーに追加し、少なくとも15分間混合する。
3.アンモニアで、pHを6超に調整する。少なくとも1時間混合する。
4.ガンマアルミナ(0.4g/in)スラリー及び硝酸白金(白金担持量1.8g/ft)を加え、少なくとも15分間混合する。
5.アンモニアで、pHを5.8超に調整する。少なくとも30分間混合する。
6.結合剤を追加し(0.03g/in)、少なくとも30分間混合する。
7.ウォッシュコートを目標固体%(約25%を提案)に調整し、増粘剤(約0.8~1.0%を提案)を追加する。一晩混合する。
8.真空下で流入口から50~55%をコーティングし、空気硬化で乾燥させ、次に排出口から50~55%のDLをコーティングする。
9.静電オーブンの中で、500℃で30分間、煉瓦を焼成する。
【0104】
実施例6:ロジウム-白金バイメタルTWC(PMA-a、b、c、又はdで修飾した白金を含む)ウォッシュコート触媒。
触媒物品を、以下の工程を実施することによって調製した。
1.ロジウム及び白金の両方と錯体形成するために必要な、必要量のPMAを含む溶液を調製する。PMA-a、PMA-b及びPMA-Cについて、8.0のPMA:ロジウム質量比、PMA-dについて、1.4のPMA:ロジウム質量比を目標とする。PMA-a、PMA-b及びPMA-Cについて、2.8のPMA:白金質量比、PMA-dについて、0.5のPMA:白金質量比を目標とする。
2.硝酸ロジウム(ロジウム担持量3.6g/ft)を追加し、1時間混合する。
3.セリア-ジルコニア担体(1.1g/in)スラリーを追加し、1時間混合する。
4.ガンマアルミナ(0.4g/in)スラリー及び硝酸白金(白金担持量1.8g/ft)を加え、1時間混合する。
5.結合剤を追加し(0.03g/in)、少なくとも30分間混合する。
6.ウォッシュコートを目標固体%(約25%を提案)に調整し、増粘剤(約0.8~1.0%を提案)を追加する。一晩混合する。
7.真空下で流入口から50~55%をコーティングし、空気硬化で乾燥させ、次に排出口から50~55%のDLをコーティングする。
8.静電オーブンの中で、500℃で30分間、煉瓦を焼成する。
【0105】
摂動着火性能
エージング後、実施例2及び参照例1の単一の担持済み触媒物品を、模擬ガソリン排気条件下で、TWC転化率に対する摂動着火性能について、試験した。エージング条件:1000℃/酸化還元(Redox)/40時間。反応条件:富化前処理、150~700℃、λ=0.96~1.04、GHSV=200,000時間-1。結果を図1a~図1cに、それぞれ、NO、CO、及びTHC転化率について示す(PMA-a=四角形、PMA-b=点、PMA-c=ダイヤモンド形、PMA-d=三角形、硝酸ロジウム基準=線)。参照触媒と比較して、ロジウムをPMAと錯体化することによって調製された触媒は、TWC活性において著しい利点を示す。PMA修飾による単一のアルミナ担持ロジウム触媒についてのNO、CO、THCの最大T50減少は、それぞれ、35℃、45℃、及び94℃であった。
【0106】
同様の改善が、より多くの錯化配合ロジウム触媒(実施例4及び参照例3)において観察され、その結果が、NO、CO、及びTHC転化率について、それぞれ、図2a~図2cに示されている(PMA-a=四角形、PMA-b=点、PMA-c=ダイヤモンド形、PMA-d=三角形、硝酸ロジウム基準=線)。エージング条件:1000℃/酸化還元/40時間。反応条件:富化前処理、150~700℃、λ=0.96~1.04、GHSV=200,000時間-1。ロジウム-PMA触媒は、参照触媒よりも著しく良好な性能を示し、NO、CO、及びTHCの最大T50減少は、それぞれ、33℃、40℃、及び37℃であった。
【0107】
同様の改善は、ロジウム及び白金の両方がPMAによって修飾された老化白金/ロジウムバイメタル触媒(実施例6及び参照例5)において観察された。結果を図3a~図3cに、それぞれ、NO、CO、及びTHC転化率について示す(PMA-a=四角形、PMA-b=点、PMA-c=ダイヤモンド形、PMA-d=三角形、硝酸ロジウム基準=線)。エージング条件:1050℃/熱水/4時間。反応条件:富化前処理、150~700℃、λ=0.96~1.04、GHSV=200,000時間-1。ロジウム/白金-PMA触媒は、参照触媒よりも著しく良好な性能を示し、NO、CO、及びTHCの最大T90減少は、それぞれ、51℃、25℃、及び55℃であった。
【0108】
PGMの取り込み
硝酸ロジウム及び様々なロジウム-PMAを含むアルミナ上のロジウム取り込みを、測定した。本目的のために、最初に、多数の担持済み担体材料(Laドープアルミナ)を調製した。
【0109】
参照:硝酸ロジウムを含む1%のロジウム/アルミナ:
担持済み担体材料を、以下の方法に従って調製した。
1.アルミナ上の1重量%のロジウム及び30%のバッチ固体を目標として、必要量の硝酸ロジウム及びアルミナを、水に追加する。
2.1時間混合する。
【0110】
その場でのロジウム-PMA-a、b、c、又はd修飾を含む、1%のロジウム/アルミナ:
担持済み担体材料を、以下の方法に従って調製した。
1.必要量の硝酸ロジウム及びPMAを、水中に追加する。
2.30分間混合する。
3.アルミナ上の1重量%のロジウム及び30%のバッチ固体を目標として、必要量のアルミナを追加する。
4.1時間混合する。
【0111】
各場合において、最終懸濁液を遠心分離し、上清を回収した。次に、上清をICP-OESによって分析して、溶液中に依然として残留する遊離ロジウムの量を決定した。担体材料中へのロジウム取り込みを、以下の式を使用して決定した。
【0112】
【数2】
【0113】
ロジウム取り込み実験の結果を、図4に要約する。ロジウム取り込み結果(ロジウム-PMA-a≒ロジウム-PMA-c>ロジウム-PMA-b≒ロジウム-PMA-d)と、図2からのTWC性能(ロジウム-PMA-a≒ロジウム-PMA-c>ロジウム-PMA-b≒ロジウム-PMA-d>参照)との相関は、全てのPMAが、ロジウムについてTWC性能の改善を提供するが、アルミナ担体上のロジウム-PMA取り込みが増加するにつれて利点が増加することを示唆する。
【0114】
前述の詳細な説明は、説明及び例示の目的で提供されており、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に示される現時点で好ましい実施形態の多くの変形形態は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に留まる。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒物品を製造する方法であって、前記方法が、
マレイン酸含有ポリマーとPGMとの錯体を提供することと、
担体材料を提供することと、
前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
前記担持済み担体材料を基材上に配置することと、
前記担持済み担体材料を加熱して、前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記マレイン酸含有ポリマーが、ポリマレイン酸、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸)及びポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)のうちの1種以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マレイン酸含有ポリマーが、ポリマレイン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マレイン酸含有ポリマーが、コポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コポリマーが、ポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリ(アクリル酸-コ-マレイン酸)が、1.5:1~1:1.5のアクリル酸対マレイン酸のモル比を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記PGMが、ロジウム、パラジウム、及び白金のうちの1種以上から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記担体材料が、酸化物、好ましくは、Al、SiO、TiO、CeO、ZrO、CeO-ZrO、V、La及びゼオライトのうちの1種以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記担体材料が、アルミナ、好ましくは、ガンマ-アルミナを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記担体材料が、ジルコニアを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アルミナ及び/又は前記ジルコニアが、ドープされている、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アルミナ及び/又は前記ジルコニアが、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオビウム、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1種以上の酸化物、好ましくは、ランタン、ネオジム、及びイットリウムのうちの1種以上の酸化物でドープされている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記スラリーが、
水中でPGM塩とマレイン酸含有ポリマーとを接触させて、水溶液中でマレイン酸含有ポリマーとPGMとの前記錯体を形成することと、
前記担体材料を前記水溶液と接触させることによって、前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
所望により、酸素貯蔵材料、好ましくは、セリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1種以上を、前記水溶液に追加することと、を含む方法によって調製されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、アルミナを含み、前記スラリーが、セリア-ジルコニアを更に含む、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる触媒物品であって、前記触媒物品が、排出処理システムにおいて使用するためのものである、触媒物品。
【国際調査報告】