(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電池用難燃性断熱防火材料
(51)【国際特許分類】
C09K 21/02 20060101AFI20241024BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20241024BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241024BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20241024BHJP
C09K 21/14 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C09K21/02
C08L83/04
C08K3/013
C08K3/20
C09K21/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506941
(86)(22)【出願日】2023-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 CN2023120328
(87)【国際公開番号】W WO2024082911
(87)【国際公開日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】202211274999.X
(32)【優先日】2022-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523360061
【氏名又は名称】浙江葆潤応用材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】NINGBO BOOER NEW MATERIAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.516, Nanda Road, Jinping Street, Fenghua District Ningbo, Zhejiang 315000 China
(74)【代理人】
【識別番号】100178434
【氏名又は名称】李 じゅん
(72)【発明者】
【氏名】丁 凱
(72)【発明者】
【氏名】施 暁麗
(72)【発明者】
【氏名】▲ほう▼ 佩燕
【テーマコード(参考)】
4H028
4J002
【Fターム(参考)】
4H028AA05
4H028AA06
4H028AA08
4H028AA49
4H028BA04
4J002CP031
4J002DE076
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4J002DJ009
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4J002FD019
4J002FD137
4J002FD140
4J002GQ00
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、電池用難燃性断熱防火材料を開示し、有機シリコーンゴム、磁器形成充填剤、難燃剤、助剤及び異なる初期溶融温度を有すると共に溶融状態の温度区間が300℃~1500℃をカバーするガラス粉末を含む難燃性断熱層、並びに耐衝撃層を含む、シリコーンゴム難燃性断熱材料に関する。この材料は、異なる溶融状態の温度区間を有する様々なガラス粉末を添加することで、防火材料が300℃~1500℃の温度区間内で燃えてセラミック層を形成する時、その内部に常に溶融状態のガラス粉末を有し、溶融状態のガラス粉末は異なる温度でセラミック層内に生じた気孔及び亀裂を適時に充填することができ、セラミック層の連続性、完全性、緻密性を最大限に保証して、当該防火材料は同時に、低温で素早く磁器を形成し、1500℃程度の高温に耐えるという特徴を備える。従来のガラス粉末は、溶融状態の温度区間が単一であり、高温時にガラス粉末が気化してセラミック層に気孔が生じるため、構造の緻密性が低下し、溶け落ちやすいという問題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池用難燃性断熱防火材料であって、
有機シリコーンゴム、磁器形成充填剤、難燃剤及び助剤を含むことに加えて、幾つかの異なる初期溶融温度を有するガラス粉末を更に含む難燃性断熱層、並びに耐衝撃層を含み、前記難燃性断熱層は前記耐衝撃層表面に塗布し、前記難燃性断熱層と前記耐衝撃層の厚さ比は(2~10):1であり、幾つかのガラス粉末の溶融状態の温度区間は300℃~1500℃をカバーする、
ことを特徴とする電池用難燃性断熱防火材料。
【請求項2】
前記耐衝撃層はガラス繊維布である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池用難燃性断熱防火材料。
【請求項3】
前記耐衝撃層はガラス繊維布を多層に複合したものである、
ことを特徴とする請求項2に記載の電池用難燃性断熱防火材料。
【請求項4】
ガラス粉末は、溶融状態の温度区間が300℃~700℃の間をカバーするガラス粉末A及び溶融状態の温度区間が700℃~1500℃の間をカバーするガラス粉末Bを含み、質量比で、ガラス粉末Aとガラス粉末Bの比は1~2:1~3である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池用難燃性断熱防火材料。
【請求項5】
ガラス粉末は、溶融状態の温度区間が300℃~550℃の間をカバーするガラス粉末C、溶融状態の温度区間が550℃~900℃の間をカバーするガラス粉末D及び溶融状態の温度区間が900℃~1500℃をカバーするガラス粉末Eを含み、質量比で、ガラス粉末C、ガラス粉末D及びガラス粉末Eの比は1~2:1~2:2~3である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池用難燃性断熱防火材料。
【請求項6】
ガラス粉末は、溶融状態の温度区間が300℃~800℃の間をカバーするガラス粉末F、溶融状態の温度区間が600℃~1000℃の間をカバーするガラス粉末G、溶融状態の温度区間が700℃~1250℃の間をカバーするガラス粉末H及び溶融状態の温度区間が1000℃~1500℃をカバーするガラス粉末Iを含み、質量比で、ガラス粉末F、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iの比は1~3:1~3:1~3:1~3である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池用難燃性断熱防火材料。
【請求項7】
ガラス粉末の原料は、酸化ケイ素、酸化ホウ素及び金属酸化物から選ばれる1つ又は複数を含む、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の電池用難燃性断熱防火材料。
【請求項8】
金属酸化物は、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化リチウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バナジウム、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化錫、酸化ビスマス及び酸化アンチモンから選ばれる1つ又は複数を含む、
ことを特徴とする請求項6の何れか一項に記載の電池用難燃性断熱防火材料。
【請求項9】
ガラス粉末の原料は、フッ化第一スズを更に含む、
ことを特徴とする請求項6の何れか一項に記載の電池用難燃性断熱防火材料。
【請求項10】
質量部で、前記難燃性断熱層は、40部~60部の有機シリコーンゴム、20部~30部の磁器形成充填剤、15部~25部の難燃剤、2部~10部のガラス粉末、2部~5部の助剤を含む、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の電池用難燃性断熱防火材料。
【請求項11】
前記難燃性断熱層は、10部~17部の増量充填剤を更に含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の電池用難燃性断熱防火材料。
【請求項12】
難燃性断熱防火材料は1500℃の炎衝撃で少なくとも30分間で溶け落ちない、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池用難燃性断熱防火材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2022年10月18日に中国に提出された中国特許出願番号202211274999.Xの優先権を主張し、その内容全体が参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明はシリコーンゴム難燃性断熱防火材料に関し、特に新エネルギー自動車電池パック用難燃性断熱防火材料に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、電池の熱暴走の確率は1000万分の1であるが、電気自動車に数千個の電池を集積して電池パックを形成すると、電池パックの熱暴走の確率は1万分の1に上昇し、且つ1つの電池の熱暴走は電池パック全体の熱暴走を引き起こす可能性があり、電池パックの熱暴走後の燃焼温度は1500℃に達することができ、更に衝撃が強いため、電気自動車の安全性に対して大きな課題である。研究によると、セラミック化シリコーンゴムは、電池コアの連続的な熱暴走を防止し、隣接するモジュールの発火を回避するために、現在、新エネルギー自動車電池パックに最適な材料の解決策である。
【0004】
セラミック化シリコーンゴムは、磁器化可能な高分子複合材料であり、この材料は常温で通常のポリマーの優れた特性を持ち、そして高温で緻密なセラミック構造を形成することができるため、セラミック特性を示す。シリコーンゴムにおいて、Si-O結合の結合エネルギーが高いため、シリコーンゴム自体の熱安定性が良好であり、更に高温の炎で燃焼する時、Si-O結合が連続した耐酸化性、絶縁性の網状SiO2灰を形成して電池コアの表面を覆い、それにより炎の更なる燃焼を効果的に阻止する。また、シリコーンゴムマトリックスの燃焼過程で生成した煙は、主に側鎖基の燃焼により生成するCO2及びH2Oであり、有毒ガスが生成せず、環境汚染の恐れがない。有機シリコーンポリマーを使用してセラミック化シリコーンゴムを製造することは、プロセスと原材料の選択の点でも、セラミック製品の耐高温と力学的特性などの点でも、独特の利点がある。
【0005】
セラミック化シリコーンゴム難燃・断熱・防火の主な原理は、触媒、熱安定剤、耐火充填剤、ガラス粉末などを添加することで、シリコーンゴムの熱安定性を向上させ、セラミック層の生成と安定化を促進することである。通常、セラミック化シリコーンゴムが燃焼した後、セラミック化の具体的なプロセスは次の通りである。燃焼又は高温時、シリコーンゴムマトリックスがまず非晶質SiO2に分解し、そして異なるサイズの気孔が生成する。次に、温度の上昇に伴って、低融点のガラス粉末(セラミック化粉末、磁器形成溶融補助剤)がまず徐々に溶融し、シリコーンゴム系において液相物質が生じ、マトリックスに生じた非晶質SiO2と耐温性磁器形成充填剤(雲母、カオリン、珪灰石など)を結合し、充填剤の境界に「低共融混合物」を形成し、共結晶反応と呼ばれる。低共融混合物が非晶質SiO2と充填剤との間の架け橋として機能し、それにより発火温度で原状を保持する。最後に、時間の経過に伴って、温度が更に上昇し、磁器形成充填剤と非晶質SiO2及び低共融混合物との間により十分に相互浸透し、充填剤の境界が消え、新しい無機相が生成し、連続した完全で、緻密なセラミック体構造を形成する。
【0006】
中国特許CN110845850Aは、磁器化可能なハロゲンフリー難燃性シリコーンゴム及びその製造方法を開示する。中国特許CN107286636Aは、低煙難燃性セラミック化可能な熱可塑性ポリウレタンエラストマー複合材料、その製造方法及び応用を開示する。中国特許CN202111191443.Xは、セラミック化難燃性断熱防火材料、その製造方法及び応用を開示する。上記特許は、何れもセラミック化シリコーンゴム及びその応用方法を開示しているが、電池パックの保護において依然として欠陥がある。
【0007】
通常、セラミック化シリコーンゴムは高温で燃焼する時、その各成分の反応温度の差別が大きい。例えば、シリコーンゴムは350℃で分解が始まり、非晶質SiO2を生成し、その表面に異なるサイズの気孔が多数生じる。白雲母(一般的な磁器形成充填剤)は700℃以上でのみ分解が始まる。異なる成分の通常のガラス粉末は、その初期溶融温度が300℃~700℃の間である。電池が熱暴走した場合、燃焼温度が徐々に1500℃に達し、そして熱衝撃を伴うため、ガラス粉末の初期溶融温度が高く(700℃を超える)、低温区間内(350℃~700℃)でシリコーンゴムが磁器形成充填剤、ガラス粉末と共に連続した完全で、緻密なセラミック体構造を形成することができず、気孔を有する非晶質SiO2が衝撃力に破壊されやすく、それにより溶け落ちるという問題がある。ガラス粉末の初期溶融温度が低い(700℃未満である)場合、高温区間内(1200℃以上)でガラス粉末が気相揮発し、セラミック体骨格構造に気孔が生じるため、セラミック体構造の緻密性が低下し、熱衝撃を受けやすく、溶け落ちることになる。
【0008】
現在開示されたセラミック化シリコーンゴムは何れも、1つの初期溶融温度のガラス粉末のみを添加し、即ち従来の材料中のガラス粉末は300℃~1500℃の溶融状態の温度区間を完全にカバーすることができないため、上記問題が常に発生する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、従来技術の不足に対して、電池用難燃性断熱防火材料を提供し、本発明は、異なる溶融状態の温度区間を有する様々なガラス粉末を添加することで、防火材料が300℃~1500℃に燃える時、その内部に常に溶融状態のガラス粉末を有し、これらの溶融状態のガラス粉末はSiO2灰及び耐火充填剤の共結晶によって形成されたセラミック層に異なる温度で生じた気孔及び亀裂を適時に充填することができ、セラミック層の連続性、完全性、緻密性を最大限に保証して、防火材料は同時に、低温で素早く磁器を形成し、1500℃以上高温に耐えるという特徴を備える。従来の材料は、ガラス粉末の溶融状態の温度区間が単一であり、高融点のガラス粉末が低温時に適時に溶融してセラミック層の隙間を充填することができず、及び低融点のガラス粉末が高温時に気化しやすくセラミック相に気孔が生じるため、構造の緻密性が低下し、溶け落ちやすいという問題を解決する。
【0010】
上記技術問題を解決するために、本発明は、下記技術的解決手段によって解決される。有機シリコーンゴム、磁器形成充填剤、難燃剤及び助剤を含むことに加えて、幾つかの異なる初期溶融温度を有するガラス粉末を更に含む難燃性断熱層、並びに耐衝撃層を含む電池用難燃性断熱防火材料であって、上記難燃性断熱層は上記耐衝撃層表面に塗布し、上記難燃性断熱層と上記耐衝撃層の厚さ比は(2~10):1であり、幾つかのガラス粉末の溶融状態の温度区間は300℃~1500℃をカバーする。
【0011】
上記技術的解決手段において、選択可能に、上記耐衝撃層はガラス繊維布である。
【0012】
上記技術的解決手段において、選択可能に、上記耐衝撃層はガラス繊維布を多層に複合したものである。
【0013】
上記技術的解決手段において、選択可能に、ガラス粉末は、溶融状態の温度区間が300℃~700℃の間をカバーするガラス粉末A及び溶融状態の温度区間が700℃~1500℃の間をカバーするガラス粉末Bを含む。質量比で、ガラス粉末Aとガラス粉末Bの比は1~2:1~3である。
【0014】
上記技術的解決手段において、選択可能に、ガラス粉末は、溶融状態の温度区間が300℃~550℃の間をカバーするガラス粉末C、溶融状態の温度区間が550℃~900℃の間をカバーするガラス粉末D及び溶融状態の温度区間が900℃~1500℃をカバーするガラス粉末Eを含む。質量比で、ガラス粉末C、ガラス粉末Dとガラス粉末Eの比は1~2:1~2:2~3である。
【0015】
上記技術的解決手段において、選択可能に、ガラス粉末は、溶融状態の温度区間が300℃~800℃の間をカバーするガラス粉末F、溶融状態の温度区間が600℃~1000℃の間をカバーするガラス粉末G、溶融状態の温度区間が700℃~1250℃の間をカバーするガラス粉末H及び溶融状態の温度区間が1000℃~1500℃をカバーするガラス粉末Iを含む。質量比で、ガラス粉末F、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iの比は1~3:1~3:1~3:1~3である。
【0016】
上記技術的解決手段において、選択可能に、ガラス粉末の原料は、酸化ケイ素、酸化ホウ素及び金属酸化物から選ばれる1つ又は複数を含む。金属酸化物は、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化リチウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バナジウム、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化錫、酸化ビスマス及び酸化アンチモンから選ばれる1つ又は複数を含む。
【0017】
上記技術的解決手段において、選択可能に、ガラス粉末の原料は、フッ化第一スズを更に含む。
【0018】
上記技術的解決手段において、選択可能に、40部~60部の有機シリコーンゴム、20部~30部の磁器形成充填剤、15部~25部の難燃剤、2部~10部のガラス粉末、2部~5部の助剤を含む。
【0019】
上記技術的解決手段において、選択可能に、10部~17部の増量充填剤を更に含む。
上記技術的解決手段において、選択可能に、難燃性断熱防火材料は1500℃の炎衝撃で少なくとも30分間で溶け落ちない。
【0020】
ガラス粉末は、一般に、SiO2、B2O3、Al2O3、PbO及び幾つかの金属酸化物が一定の割合で十分に混合した後、溶融、水焼入れ、粉砕によって製造される。異なる成分の割合の調整及び異なる金属酸化物の添加により、ガラス粉末の初期溶融温度及び溶融状態の温度区間は僅かに異なる。
【0021】
リチウム電池の熱暴走時、爆燃現象が発生し、即ち高温燃焼が衝撃を伴う。シリコーンゴムは350℃の時点で、分解が始まり、非晶質SiO2を生成し、異なるサイズの気孔が多数生じる。この場合、ガラス粉末が溶融し、液相を形成し、気孔に充填し、非晶質SiO2と磁器形成充填剤とを連結して、燃焼及び衝撃下で安定性を保持する必要がある。このようにして、従来の材料におけるガラス粉末の初期溶融温度は、シリコーンゴムの分解が始まると溶融し、気孔をできる限り早期に充填するように、300℃~700℃の間で選択されることが多いが、初期溶融温度が300℃~700℃の間であるガラス粉末の溶融状態の温度区間は基本的に1000℃を超えず、即ち燃える温度がガラス粉末の溶融状態の温度区間より高い時、ガラス粉末が気相揮発し、即ち形成したセラミック層に気孔が生じるため、セラミック層全体構造の緻密性が低下し、熱衝撃及び燃焼の相乗作用下で従来の防火材料は、1000℃~1500℃の炎に溶け落ちて、防火材料が失効することになる。それだけでなく、燃焼の全過程において熱衝撃が発生し、このような衝撃は、セラミック層の亀裂を極めて引き起こしやすく、亀裂が生じた後に修復しない場合でも、防火材料全体が失効することになり、即ち1500℃までセラミック層が依然として連続的で、完全で、緻密であるように、防火材料が燃える全過程において溶融状態のガラス粉末が気孔及び亀裂を随時充填する必要がある。
【0022】
そのため、本願は、様々な初期溶融温度のガラス粉末を混合することで、様々な溶融状態の温度区間を有し、300℃~1500℃をカバーするため、防火材料の燃える温度がどれほど高くても、セラミック層の気孔及び亀裂を充填するための溶融状態のガラス粉末が常に存在し、セラミック層の連続性、完全性、緻密性を最大限に保証して、セラミック層に断熱性と難燃性の役割を最大限に発揮させる。
【0023】
従来技術と比べると、本発明は、異なる溶融状態の温度区間を有する様々なガラス粉末を添加することで、300℃~1500℃の温度区間内で常に溶融状態のガラス粉末を有し、溶融状態のガラス粉末は異なる温度でセラミック層に生じた気孔及び亀裂を適時に充填することができ、セラミック層の連続性、完全性、緻密性を最大限に保証して、電池用難燃性断熱防火材料は同時に、低温で素早く磁器を形成し、1500℃程度の高温に耐えるという特徴を備える。従来の材料は、ガラス粉末の溶融状態の温度区間が単一であり、高融点のガラス粉末が低温時に適時に溶融してセラミック層の隙間を充填することができず、及び低融点のガラス粉末が高温時に気化しやすくセラミック層に気孔が生じるため、構造の緻密性が低下し、溶け落ちやすいという問題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施例17によって製造された電池用難燃性断熱防火材料が15 min、1500℃の炎衝撃、5標準大気圧の爆燃試験を経た後にセラミック化完全状態を示す実物の画像である。
【
図2】本発明の実施例17によって製造された電池用難燃性断熱防火材料が15 min、1500℃の炎衝撃、7標準大気圧の爆燃試験を経た後にセラミック化亀裂状態を示す実物の画像である。
【
図3】本発明の実施例17によって製造された電池用難燃性断熱防火材料が15 min、1500℃の炎衝撃、10標準大気圧の爆燃試験を経た後にセラミック化破壊状態を示す実物の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を容易に理解するために、本発明は以下の実施例が列挙される。当業者は、上記実施例が本発明の理解を助けるものに過ぎず、本発明を具体的に限定するものではないと理解されるべきである。
【0026】
本願の実施例において、有機シリコーンゴムは、液体シリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム又はメチルフェニルビニルシリコーンゴムから選ばれる何れか1つ又は少なくとも2つの組み合わせである。下記実施例及び比較例において、有機シリコーンゴムは、広州市せき友新材料科技有限公司(「せき」は「石」と「夕」からなる漢字)からのメチルビニルシリコーンゴム:1103である。実際の応用においてメチルビニルシリコーンゴムに限定されない。
【0027】
磁器形成充填剤は、白雲母、金雲母、カオリン、ブルーサイト及びタルクから選ばれる何れか1つ又は少なくとも2つの組み合わせである。下記実施例及び比較例において、磁器形成充填剤は、広東永豊化工有限公司からの白雲母である。実際の応用において白雲母に限定されない。
【0028】
増量充填剤は、珪藻土、珪灰石、炭酸カルシウム及びヒュームドシリカから選ばれる何れか1つ又は少なくとも2つの組み合わせである。下記実施例及び比較例において、増量充填剤は、広州市昊兆化工有限公司からの珪藻土、東莞市きん科新材料有限公司(「きん」は「日」と「斤」からなる漢字)からの325~6250(メッシュ)の炭酸カルシウム、及び済南か松化工有限公司(「か」は「上」と「ト」からなる漢字)からのナノシリカKS-8200を含む。珪藻土、炭酸カルシウム及びナノシリカの質量比は0.8:1:3であり、実際の応用において上記材料の混合物に限定されない。
【0029】
難燃剤は、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン含有無機難燃剤、ホウ素含有無機難燃剤及びリン含有有機難燃剤から選ばれる何れか1つ又は少なくとも2つの組み合わせである。下記実施例及び比較例において、難燃剤は、合肥中科難燃新材料有限公司からの水酸化アルミニウム、石家庄市きん盛化工有限公司(「きん」は三つの「金」からなる漢字)からのリン含有無機難燃剤、及び鄭州翰碩化工原料有限公司からのリン含有有機難燃剤を含む。水酸化アルミニウム、リン含有無機難燃剤、リン含有有機難燃剤の質量比は3:0.9:1.3であり、実際の応用において上記材料の混合物に限定されない。
【0030】
助剤は、シランカップリング剤、シリコーンオイル及び加硫剤を含む。ここで、加硫剤は、過酸化ベンゾイル、過安息香酸tert-ブチル、過酸化ジ-tert-ブチル、過酸化ジクミル、2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルヘキサンペルオキシド、プラチナ加硫剤から選ばれる1つである。下記実施例及び比較例において、助剤は、江蘇全力化学有限公司からのシランカップリング剤とシリコーンオイルであり、加硫剤は、過酸化ベンゾイルである。シランカップリング剤、シリコーンオイル、過酸化ベンゾイルの質量比は0.5:5:1.8であり、実際の応用において上記材料の混合物に限定されない。
【0031】
ガラス粉末は、酸化ケイ素、酸化ホウ素及び金属酸化物から選ばれる何れか1つ又は少なくとも2つの組み合わせである。ここで、金属酸化物は、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化リチウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バナジウム、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化錫、酸化ビスマス及び酸化アンチモンから選ばれる何れか1つ又は少なくとも2つの組み合わせである。一部のガラス粉末は、フッ化第一スズを更に含む。ガラス粉末は、成分と配合比に応じて、様々な初期溶融温度及び溶融状態の温度カバー区間を有し、本願において、溶融状態の温度カバー区間は、ガラス粉末がこの区間内で溶融状態であることを示すだけであり、両端点の温度が融点及び沸点ではなく、温度カバー区間外でガラス粉末が溶融状態であってもよい。
下記実施例及び比較例において、ガラス粉末は、広州億峰化工科技有限公司が出願人の要求によって提供されるか、又は出願人が自己配置されるものである。
【0032】
本願の実施例において、ガラス粉末Aの成分は、SnF2、P2O5、SiO2、Sb2O3、Bi2O3を含み、質量部で、40部~50部のSnF2、35部~45部のP2O5、1部~7部SiO2、1部~7部Sb2O3及び1部~7部Bi2O3を含む。選択可能に、ガラス粉末Aの成分は、45部のSnF2、40部のP2O5、5部のSiO2、5部のSb2O3及び5部のBi2O3を含む。ガラス粉末Aの溶融状態の温度区間は300℃~700℃をカバーし、実際の応用においてガラス粉末Aの成分に関わらず、ガラス粉末Aの溶融状態の温度区間が300℃~700℃をカバーするだけでよく、上記はガラス粉末Aの1つの成分の例に過ぎない。
【0033】
ガラス粉末Bの成分は、SiO2、B2O3、PbOを含み、質量部で、25部~35部のSiO2、10部~15部のB2O3、15部~25部のPbOを含む。選択可能に、ガラス粉末Bは、30部のSiO2、11部のB2O3、22部のPbOを含む。ガラス粉末Bの溶融状態の温度区間は700℃~1500℃をカバーし、実際の応用においてガラス粉末Bの成分に関わらず、ガラス粉末Bの溶融状態の温度区間が700℃~1500℃をカバーするだけでよく、上記はガラス粉末Bの1つの成分の例に過ぎない。
【0034】
ガラス粉末Cの成分は、SnF2、P2O5、V2O5、Sb2O3、Bi2O3を含み、質量部で、45部~55部のSnF2、30部~40部のP2O5、1部~7部のV2O5、1部~7部のSb2O3及び1部~7部のBi2O3を含む。選択可能に、ガラス粉末Cは、50部のSnF2、35部のP2O5、5部のV2O5、5部のSb2O3及び5部のBi2O3を含む。ガラス粉末Cの溶融状態の温度区間は300℃~550℃をカバーし、実際の応用においてガラス粉末Cの成分に関わらず、ガラス粉末Cの溶融状態の温度区間が300℃~550℃をカバーするだけでよく、上記はガラス粉末Cの1つの成分の例に過ぎない。
【0035】
ガラス粉末Dの成分は、SiO2、TiO2、B2O3、PbOを含み、質量部で、10部~15部のSiO2、1部~5部のTiO2、10部~15部のB2O3、15部~20部のPbOを含む。選択可能に、ガラス粉末Dは、14部のSiO2、2部のTiO2、12部のB2O3、17部のPbOを含む。ガラス粉末Dの溶融状態の温度区間は550℃~900℃をカバーし、実際の応用においてガラス粉末Dの成分に関わらず、ガラス粉末Dの溶融状態の温度区間が550℃~900℃をカバーするだけでよく、上記はガラス粉末Dの1つの成分の例に過ぎない。
【0036】
ガラス粉末Eの成分は、SiO2、PbOを含み、質量部で、30部~40部のSiO2、20部~25部のPbOを含む。選択可能に、ガラス粉末Eは、35部のSiO2、20部のPbOを含む。ガラス粉末Eの溶融状態の温度区間は900℃~1500℃をカバーし、実際の応用においてガラス粉末Eの成分に関わらず、ガラス粉末Eの溶融状態の温度区間が900℃~1500℃をカバーするだけでよく、上記はガラス粉末Eの1つの成分の例に過ぎない。
【0037】
ガラス粉末Fの成分は、SnF2、P2O5、SiO2、Bi2O3、V2O5を含む。質量部で、35部~45部のSnF2、35部~45部のP2O5、1部~7部のV2O5、5部~15部のSiO2、1部~7部のBi2O3を含む。選択可能に、ガラス粉末Fの成分は、40部のSnF2、40部のP2O5、5部のV2O5、10部のSiO2及び5部のBi2O3を含む。ガラス粉末Fの溶融状態の温度区間は300℃~800℃をカバーし、実際の応用においてガラス粉末Fの成分に関わらず、ガラス粉末Fの溶融状態の温度区間が300℃~800℃をカバーするだけでよく、上記はガラス粉末Fの1つの成分の例に過ぎない。
【0038】
ガラス粉末Gの成分は、SiO2、TiO2、B2O3、PbOを含み、質量部で、10部~20部のSiO2、7部~13部のTiO2、10部~15部のB2O3、10部~15部のPbOを含む。選択可能に、ガラス粉末Gは、15部のSiO2、10部のTiO2、13部のB2O3、12部のPbOを含む。ガラス粉末Gの溶融状態の温度区間は600℃~1000℃をカバーし、実際の応用においてガラス粉末Gの成分に関わらず、ガラス粉末Gの溶融状態の温度区間が600℃~1000℃をカバーするだけでよく、上記はガラス粉末Gの1つの成分の例に過ぎない。
【0039】
ガラス粉末Hの成分は、SiO2、B2O3、TiO2、PbOを含む。質量部で、15部~20部のSiO2、10部~15部のTiO2、10部~20部のB2O3、15部~25部のPbOを含む。選択可能に、ガラス粉末Hは、17部のSiO2、12部のTiO2、15部のB2O3、20部のPbOを含む。ガラス粉末Hの溶融状態の温度区間は700℃~1250℃をカバーし、実際の応用においてガラス粉末Hの成分に関わらず、ガラス粉末Hの溶融状態の温度区間が700℃~1250℃をカバーするだけでよく、上記はガラス粉末Hの1つの成分の例に過ぎない。
【0040】
ガラス粉末Iの成分は、SiO2、PbOを含む。質量部で、25部~35部のSiO2、10部~15部のPbOを含む。選択可能に、ガラス粉末Iは、30部のSiO2、13部のPbOを含む。ガラス粉末Iの溶融状態の温度区間は1000℃~1500℃をカバーし、実際の応用においてガラス粉末Iの成分に関わらず、ガラス粉末Iの溶融状態の温度区間が1000℃~1500℃をカバーするだけでよく、上記はガラス粉末Iの1つの成分の例に過ぎない。
【0041】
実施例1:質量部で、40部の有機シリコーンゴム、20部の磁器形成充填剤、10部の増量充填剤、15部の難燃剤、2部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末A及びガラス粉末Bを含む。ガラス粉末Aとガラス粉末Bの質量比は1:1であった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は10:1であり、材料の総厚さは2mmであった。
【0042】
実施例2:質量部で、60部の有機シリコーンゴム、30部の磁器形成充填剤、17部の増量充填剤、25部の難燃剤、10部のガラス粉末及び5部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末C、ガラス粉末D及びガラス粉末Eを含む。ガラス粉末C、ガラス粉末D及びガラス粉末Eの質量比は1:1:2であった。耐衝撃層は三層のガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は2:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0043】
実施例3:質量部で、50部の有機シリコーンゴム、25部の磁器形成充填剤、15部の増量充填剤、20部の難燃剤、6部のガラス粉末及び3部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末F、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iを含む。ガラス粉末F、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iの質量比は1:1:1:1であった。耐衝撃層は、二層のガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は6:1であり、材料の総厚さは2.5mmであった。
【0044】
実施例4:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末A及びガラス粉末Bを含み、ガラス粉末Aとガラス粉末Bの質量比は1:1であった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0045】
実施例5:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末A及びガラス粉末Bを含み、ガラス粉末Aとガラス粉末Bの質量比は1:2であった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0046】
実施例6:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末A及びガラス粉末Bを含み、ガラス粉末Aとガラス粉末Bの質量比は2:3であった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0047】
実施例7:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末C、ガラス粉末D及びガラス粉末Eを含む。ガラス粉末C、ガラス粉末D及びガラス粉末Eの質量比は1:1:2であった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0048】
実施例8:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末C、ガラス粉末D及びガラス粉末Eを含む。ガラス粉末C、ガラス粉末D及びガラス粉末Eの質量比は1:2:3であった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0049】
実施例9:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末C、ガラス粉末D及びガラス粉末Eを含む。ガラス粉末C、ガラス粉末D及びガラス粉末Eの質量比は2:2:3であった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0050】
実施例10:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末F、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iを含む。ガラス粉末F、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iの質量比は1:1:1:1であった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0051】
実施例11:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末F、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iを含む。ガラス粉末F、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iの質量比は1:1:2:2であった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0052】
実施例12:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末F、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iを含む。ガラス粉末F、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iの質量比は1:2:2:3であった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0053】
実施例13:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末F、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iを含む。ガラス粉末F、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iの質量比は1:1:1:2であった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0054】
実施例14:質量部で、52部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、17部の増量充填剤、23部の難燃剤、5部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。その他の内容は実施例12と同様であった。
【0055】
実施例15:質量部で、47部の有機シリコーンゴム、25部の磁器形成充填剤、15部の増量充填剤、20部の難燃剤、4部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。その他の内容は実施例12と同様であった。
【0056】
上記実施例において、異なる初期溶融温度のガラス粉末の数は、本願により開示される内容に限定されず、ガラス粉末の溶融状態温度が300℃~1500℃をカバーするだけでよい。即ち、ガラス粉末の混合は、ガラス粉末A及びガラス粉末Bの混合に限定されず、ガラス粉末C、ガラス粉末D及びガラス粉末Eの混合、ガラス粉末F、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iの混合は、要件を満たす限り、互いに混合することができる。そして、本願により開示されるガラス粉末A、ガラス粉末B、ガラス粉末C、ガラス粉末D、ガラス粉末E、ガラス粉末F、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iに限定されず、溶融状態の温度区間の要件を満たす限り、ガラス粉末を互いに混合することができる。
【0057】
実施例16:質量部で、47部の有機シリコーンゴム、25部の磁器形成充填剤、15部の増量充填剤、20部の難燃剤、4部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末A、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iを含む。ガラス粉末A、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Iの質量比は1:1:2:2であった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0058】
実施例17:質量部で、47部の有機シリコーンゴム、25部の磁器形成充填剤、15部の増量充填剤、20部の難燃剤、4部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末A、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Eを含む。ガラス粉末A、ガラス粉末G、ガラス粉末H及びガラス粉末Eの質量比は1:1:1:2であった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0059】
上記実施例において、異なる初期溶融温度を有するガラス粉末は、有機シリコーンゴム、磁器形成充填剤、増量充填剤又は難燃剤と単独で混合し、異なる初期溶融温度を有するガラス粉末を混合した後に有機シリコーンゴム、磁器形成充填剤、増量充填剤又は難燃剤と混合してはならない。
【0060】
比較例1:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末Aであった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0061】
比較例2:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末Bであった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0062】
比較例3:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末Cであった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0063】
比較例4:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末Dであった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0064】
比較例5:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末Eであった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0065】
比較例6:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末Fであった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0066】
比較例7:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末Gであった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0067】
比較例8:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末Hであった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0068】
比較例9:質量部で、45部の有機シリコーンゴム、27部の磁器形成充填剤、14部の増量充填剤、22部の難燃剤、8部のガラス粉末及び2部の助剤を含む。ガラス粉末は、ガラス粉末Iであった。耐衝撃層は単層ガラス繊維布であり、難燃性断熱層は耐衝撃層と複合し、難燃性断熱層と耐衝撃層の厚さ比は4:1であり、材料の総厚さは1mmであった。
【0069】
全ての実施例及び比較例における難燃性断熱層と耐衝撃層の複合は、下記製造方法によって得られた。
【0070】
S1:異なる初期溶融温度を有するガラス粉末を、有機シリコーンゴム、磁器形成充填剤、増量充填剤、難燃剤、加硫剤以外の他の助剤と、数回に分けて密閉式ミキサーにより単独で混合し、更に混練し、ゴム混合物を得た。
【0071】
S2:ゴム混合物を加硫機に入れて加硫剤を加え、難燃性断熱防火シリコーンゴムを得た。
【0072】
S3:難燃性断熱防火シリコーンゴムを耐衝撃層(即ちガラス繊維布)に塗布し、圧延し、加硫温度を130℃~160℃に制御した。
【0073】
最後に、電池用難燃性断熱防火材料を得た。
【0074】
実施例4から実施例17について、性能試験を実施し、試験基準及び結果は以下の通りであった。
【0075】
密度:ASTM D792-2013、密度計。実施例4から実施例17では、密度が1.6±0.1g/cm3であった。
【0076】
引張強度:ASTM D412、引張機。実施例4から実施例17では、引張強度が15MPaを超えた。
【0077】
難燃性:UL94、水平・垂直燃焼試験機。実施例4から実施例17では、難燃性がV0であった。
【0078】
熱伝導率:ASTM D5470、熱伝導率試験機。実施例4から実施例17では、熱伝導率が0.3W/(m・K)以下であった。
【0079】
耐電圧:電圧を2700 V DCに調整し、時間60s、漏れ電流、耐電圧試験機。実施例4から実施例17では、漏れ電流が1mA未満であった。
【0080】
絶縁:電圧を1000 V DCに調整し、時間60s、抵抗、絶縁試験機。実施例4から実施例17では、抵抗が1 GΩを超えた。
【0081】
電圧破壊:ASTM D149、電圧破壊試験機。実施例4から実施例17では、破壊電圧が20kvを超えた。
【0082】
硬度:ASTM D2240、硬度計。実施例4から実施例17では、硬度が65±7 Shore Aであった。
【0083】
吸水性:24h吸水質量比。実施例4から実施例17では、3%以下であった。
【0084】
耐オゾン老化:ASTM D1171、オゾン濃度2ppm、温度23℃、湿度65%、引張15%、保湿46h。実施例4から実施例17では、亀裂がなかった。
【0085】
低温特性:-40℃/24時間、180°折り畳む。実施例4から実施例17では、亀裂がなかった。
【0086】
長期耐候性:-40℃~85℃の間、5℃/min以下の温度勾配で500サイクルを行い、各サイクルにおいて、最高温度と最低温度でそれぞれ15min保持した。85℃、85%湿度、1000時間。120℃で1200h老化した。実施例4から実施例17では、それぞれ高温低温サイクル、高温高湿及び高温老化を経た後も、上記の全ての性能は依然として標準要件を満たすことができる。
【0087】
実施例4から実施例17、及び比較例1から比較例9について、異なる圧力での爆燃試験を行った。表1に示す通りであった。
【0088】
表1:実施例4から実施例17、比較例1から比較例9のガラス繊維と複合させた状態での爆燃試験
【表1】
【0089】
セラミック化完全とは、実施例で製造された電池用難燃性断熱防火材料が爆燃試験後に材料の表面が比較的完全であり、明らかな欠陥がないことを意味する。
【0090】
セラミック化亀裂とは、実施例で製造された電池用難燃性断熱防火材料が爆燃試験後に材料の表面に明らかな亀裂が発生することを意味する。
【0091】
セラミック化破壊とは、実施例で製造された電池用難燃性断熱防火材料が爆燃試験後に材料の表面に明らかな気孔及び亀裂が発生することを意味する。
【0092】
セラミック化完全、セラミック化亀裂及びセラミック化破壊の状態は、
図1から
図3を参照することができ、実際的に各実施例及び比較例は、爆燃試験後に状態が僅かに異なる。表1から分かるように、30min、1500℃の炎衝撃、3標準大気圧で、実施例4から実施例17は、何れも本体の完全性を保証することができ、この時、比較例1~9は、一部の断熱防火機能が既に失効した。
【0093】
30min、1500℃の炎衝撃、5標準大気圧で、実施例4から実施例17は、断熱防火機能性能が低下したが、依然として一定の断熱防火機能を有した。比較例1~9は、断熱防火機能が全て失効した。
【0094】
15min、1500℃の炎衝撃、5標準大気圧で、実施例4から実施例17は、大部分の実施例の断熱防火機能が依然として存在し、比較例1~9は、断熱防火機能が全て失効した。
【0095】
15min、1500℃の炎衝撃、7標準大気圧で、実施例4から実施例17は、一部の実施例の断熱防火機能が失効し、比較例1~9は、断熱防火機能が全て失効した。
【0096】
15min、1500℃の炎衝撃、10標準大気圧で、実施例4から実施例17、及び比較例1~9は、断熱防火機能が全て失効した。
【0097】
表1から分かるように、実施例4から実施例17は、比較例1~9よりも性能が完全に優れ、溶融状態で完全にカバーする断熱防火材料の性能が部分的にカバーする断熱防火材料よりも優れることを示した。実施例4から実施例17における異なる温度及び大気圧の状態から分かるように、高融点ガラス粉末の含有量が低融点ガラス粉末より高い場合、実施例12から実施例17のように断熱防火材料の性能がより良好であった。高融点ガラス粉末と低融点ガラス粉末の含有量が等しい場合、性能が低下した。爆燃的な昇温が速いため、温度がすぐに1500℃に達し、1500℃で長時間燃焼させるには、ガラス粉末が長時間に1500℃での溶融状態にある必要があると推測された。
【0098】
実施例4から実施例17及び比較例1から比較例9において難燃性断熱層を形成する原料の配合比によって、難燃性断熱層を単独で製造し、そして異なる圧力で爆燃試験を行った。詳しくは表2に示す通りであった。
【0099】
表2:実施例4から実施例17、比較例1から比較例9のガラス繊維と複合させない状態での爆燃試験
【表2】
【0100】
表2から分かるように、耐衝撃層を有しない場合、実施例4から実施例17及び比較例1から比較例9は、15min、1500℃の炎衝撃、2標準大気圧条件での爆燃試験に耐えることができず、即ち難燃性断熱層が耐衝撃層と複合しない場合、その断熱防火性能が不十分であった。同時に15min、1500℃の炎衝撃、1標準大気圧条件での爆燃試験において、比較例1から比較例9の大部分の難燃性断熱層の本体構造が既に不完全であり、正常に使用できなかった。逆に、実施例4から実施例17は、15min、1500℃の炎衝撃、1.5標準大気圧条件での爆燃試験でのみ、セラミック相の亀裂及び破壊が発生した。
【0101】
実施例4から実施例17について、異なる温度での爆燃試験を行った。表3に示す通りであった。
【0102】
表3:実施例4から実施例17、比較例1から比較例9のガラス繊維と複合させた後の異なる温度での爆燃試験
【表3】
【0103】
表3から分かるように、15min、700℃の炎衝撃、5標準大気圧及び15min、1000℃の炎衝撃、5標準大気圧で、実施例4から実施例17は、基本的な断熱防火性能を保証することができた。比較例1から比較例9は、添加した異なるガラス粉末によって状態が異なり、700℃で、低融点ガラス粉末を添加した比較例は依然として基本的な断熱防火性能を保証することができ、高融点ガラス粉末を添加した比較例は長時間で低温燃焼させると完全なセラミック層を形成することができなかった。温度が急速に1500℃昇温する場合でのみ、高融点ガラス粉末を単独で添加することは効果的である。
【0104】
上記実験から分かるように、本願において、ガラス粉末の溶融状態の温度区間が300℃~1500℃をカバーする難燃性断熱材料は、ガラス粉末の初期溶融温度が単一である難燃性断熱材料よりも、性能がより優れた。高圧環境で1500℃の高温に長時間耐えることができる原理は、350℃以上で常に一部のガラス粉末が溶融状態に保つことができ、シリカ基体及びガラス粉末を途切れることなく複合させ、セラミック層の連続性、完全性、緻密性を最大限に保証することである。単一の初期溶融温度のガラス粉末のみを添加する場合、低温燃焼のみに耐えられるか、又は低温燃焼時にセラミック層が破壊することになる。
【0105】
一般に、材料の総厚さが厚いほど、材料の耐衝撃性能及び難燃断熱性能がより優れ、この具体的な実施形態において、試験を行う材料の総厚さは1mm程度であった。しかし、本願の材料の厚さは、具体的な実施形態に開示された厚さに限定されず、異なる適用シナリオにおいて、耐衝撃層の厚さ、難燃性断熱層の厚さ、材料の総厚さは実際の必要に応じて設定することができる。
【国際調査報告】