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特表2024-539818リバウンドトノメーター及びリバウンドトノメーターの使用方法
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  • 特表-リバウンドトノメーター及びリバウンドトノメーターの使用方法 図1
  • 特表-リバウンドトノメーター及びリバウンドトノメーターの使用方法 図2A
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  • 特表-リバウンドトノメーター及びリバウンドトノメーターの使用方法 図2C
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  • 特表-リバウンドトノメーター及びリバウンドトノメーターの使用方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】リバウンドトノメーター及びリバウンドトノメーターの使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A61B3/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024514390
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 FI2022050660
(87)【国際公開番号】W WO2023067241
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】20216097
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514056252
【氏名又は名称】アイケア フィンランド オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ラウダソヤ マッティ
(72)【発明者】
【氏名】ホンカネン ヴィクトル
(72)【発明者】
【氏名】カンガス ラウリ
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA20
4C316FA11
4C316FC04
(57)【要約】
リバウンドトノメーターが開示される。このリバウンドトノメーターは本体(102,206,302)と、細長磁気プローブ(104,208,304)と、細長磁気プローブを囲む測定コイル(106,210,306)及び駆動コイル(108,212,308)と、コントローラ(310)とを備える。本体は、近位端(110,214)及び遠位端(112,216)を有し、近位端には開口部(114)を有する。細長磁気プローブは、本体の開口部から外側に突出する第1の端部(116,218)と本体内に残る第2の端部(118,220)を有する。第1の端部は開口部から第1の距離(D1)にある。細長磁気プローブは、リバウンドトノメーターの軸線に揃えられて前記軸線に沿って移動可能である。リバウンドトノメーターが使用されるとき、コントローラは、駆動コイルに通電して、第1の端部が前記近位端から第2の距離にあるように細長磁気プローブを動かし、測定コイルの誘起電圧を測定し、当該誘起電圧を所定の基準と比較することによって接触を検知し、接触を検出すると、リバウンドトノメーターの測定サイクルを開始するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リバウンドトノメーターであって、
近位端と、前記近位端の反対側の遠位端とを有し、前記近位端に開口部を有する本体と;
細長磁気プローブと;
いずれも前記本体の内部に配置されて前記細長磁気プローブを部分的に囲む、測定コイル及び駆動コイルと;
コントローラと;
を備え、
前記細長磁気プローブは、
第1の端部及び該第1の端部とは反対側の第2の端部を有し、
少なくとも部分的に前記本体内に配置されており、前記第1の端部は前記本体の開口部から前記本体の外側に突出して前記開口部から第1の距離にあり、前記第2の端部は前記本体の内側にあり、
前記リバウンドトノメーターの軸線と一直線に揃えられていて、前記軸線に沿って移動可能にされており、
前記コントローラは、
前記リバウンドトノメーターが使用されているときに、対象物と前記第1の端部との接触を、
・ 前記細長磁気プローブを前記本体に対して動かして、前記第1の端部が、前記近位端から、前記第1の距離より大きい第2の距離にあるようにするべく、前記駆動コイルに通電し、
・ 第1の期間中に、前記測定コイルにおける第1の誘起電圧を時間の関数として測定し、
・ 時間の関数として測定された前記第1の誘起電圧を所定の基準と比較し、
・ 前記比較に基づいて前記所定の基準が満たされた場合、前記満たされたことを、前記第1の端部と前記対象物との間の接触が検出されたことを示す情報として使用する、
ことによって検出し;
前記接触が検出されると、前記リバウンドトノメーターの測定サイクルを開始する;
するように構成される、
リバウンドトノメーター。
【請求項2】
前記所定の基準は、所定の電圧閾値、時間の関数として測定された前記第1の誘起電圧の前記第1の期間にわたる積分値、時間の関数としての前記第1の誘起電圧の微分値、又は所定のパターンのうちの1つであるように選択される、請求項1に記載のリバウンドトノメーター。
【請求項3】
前記測定サイクルを開始するとき、前記コントローラは、
前記測定コイルに通電して、前記細長磁気プローブを前記本体内に引き込み、前記近位端から前記第1の距離に前記第1の端部が位置するようにし、
前記駆動コイルに通電して、前記細長磁気プローブを本体から射出し、前記第1の端部を前記近位端から第3の距離に位置させる、
ように構成される、請求項1又は2に記載のリバウンドトノメーター。
【請求項4】
前記第3の距離は、前記第2の距離の0.5倍から2.0倍の範囲にある、請求項3に記載のリバウンドトノメーター。
【請求項5】
前記コントローラは、前記近位端からの前記対象物の距離が前記第2の距離に等しいときに、
前記第3の距離が前記第2の距離以上となるように選択し、
前記細長磁気プローブの射出の第2の期間に前記測定コイルに時間の関数として誘導される第2の電圧を測定することにより、前記リバウンドトノメーターの前記測定サイクルを完了する、
ように構成され、ここで前記第2の電圧は、前記第1の端部の前記対象物への衝突を示す、請求項3又は4に記載のリバウンドトノメーター。
【請求項6】
前記コントローラは、選択された前記第3の距離が前記第2の距離の2倍より大きい場合、前記リバウンドトノメーターのユーザインタフェース上に、前記対象物と前記本体の前記近位端との間の距離を増加させるインディケーションを提供するように構成される、請求項5に記載のリバウンドトノメーター。
【請求項7】
前記コントローラは、前記近位端からの前記対象物の距離が前記第2の距離未満であるとき、
前記第3の距離が前記第2の距離より小さくなるように選択し、
前記細長磁気プローブの射出の第2の期間に前記測定コイルに時間の関数として誘導される第2の電圧を測定することにより、前記リバウンドトノメーターの測定サイクルを完了する、
ように構成され、ここで前記第2の電圧は、前記第1の端部の前記対象物への衝突を示す、請求項3又は4に記載のリバウンドトノメーター。
【請求項8】
前記コントローラは、前記第2の電圧を使用して前記対象物の特性を決定するように構成される、請求項5から7のいずれかに記載のリバウンドトノメーター。
【請求項9】
少なくとも1つのセンサを更に備え、前記コントローラが、
測定サイクル中に、前記少なくとも1つのセンサから、時間の関数としての細長磁気プローブの変位及び/又は速度を示すセンサデータを収集し、
前記センサデータに基づいて、細長磁気プローブの速度及び/又は加速度を決定し、
細長磁気プローブの速度及び/又は加速度の変化に基づいて、対象物の特性を決定する、
ように構成される、請求項1から8のいずれかに記載のリバウンドトノメーター。
【請求項10】
前記コントローラは、時間の関数として測定された前記第1の誘起電圧を第2の所定の基準と比較するように更に構成され、
前記比較に基づいて前記第2の所定の基準が満たされる場合、該満たされたことを、前記リバウンドトノメーターのユーザインタフェース上に警告インジケータを提供するための情報として使用するように構成される、
請求項1から9のいずれかに記載のリバウンドトノメーター。
【請求項11】
前記第2の所定の基準は、第2の所定の電圧閾値、時間の関数として測定された前記第1の誘起電圧の前記第1の期間にわたる第2の積分値、時間の関数としての前記第1の誘起電圧の第2の微分値、又は第2の所定のパターンのうちの1つであるように選択される、請求項10に記載のリバウンドトノメーター。
【請求項12】
対象物の特性を決定するためにリバウンドトノメーターを使用する方法であって、前記リバウンドトノメーターは本体と細長磁気プローブと測定コイルと駆動コイルとを備え、前記方法は、
前記細長磁気プローブを、少なくとも部分的に本体内に配置することであって、前記細長磁気プローブの第1の端部は前記本体の開口部から前記本体の外側に突出して前記開口部から第1の距離にあり、前記第2の端部は前記本体の内側にあり、前記細長磁気プローブは、前記リバウンドトノメーターの軸線に沿って移動可能にされる、前記配置することと;
前記対象物と短期第1の端部との接触を検出することと:
前記接触が検出されると、前記リバウンドトノメーターの測定サイクルを開始することと;
を含み、前記対象物と短期第1の端部との接触を検出することは、
前記第1の端部が、前記近位端から、前記第1の距離より大きい第2の距離にあるようにするべく、前記細長磁気プローブを前記本体に対して動かすことと;
第1の期間中、前記対象物に対して前記リバウンドトノメーターを動かすことと;
リバウンドトノメーターが移動させられる第1の期間中、第1の誘起電圧を時間の関数として測定することと;
時間の関数として測定された前記第1の誘起電圧を所定の基準と比較することと;
前記比較に基づいて前記所定の基準が満たされる場合、前記満たされたことを、前記第1の端部と前記対象物との間の接触が検出されたことを示す情報として使用することと;
によって行われる、
方法。
【請求項13】
前記所定の基準は、所定の電圧閾値、時間の関数として測定された前記第1の誘起電圧の前記第1の期間にわたる積分値、時間の関数としての前記第1の誘起電圧の微分値、又は所定のパターンのうちの1つであるように選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記測定サイクルは、
前記測定コイルに通電して、前記細長磁気プローブを本体内に引き込み、前記近位端から前記第1の距離に前記第1の端部を位置させることと;
前記駆動コイルに通電して、前記細長磁気プローブを本体から射出し、前記第1の端部を前記近位端から第3の距離に位置させることと;
前記細長磁気プローブの射出の第2の期間に、前記測定コイルに時間の関数として誘導される第2の電圧を測定することにより、前記測定サイクルを完了することと;
対象物の特性を決定するために前記第2の電圧を使用することと;
を含み、前記第2の電圧は、前記第1の端部の前記対象物への衝突を示す、
請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記近位端からの前記対象物の距離が前記第2の距離と等しい場合、前記第3の距離を前記第2の距離と等しいかそれより大きくなるように選択することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第3の距離が前記第2の距離の2倍より大きい場合、前記リバウンドトノメーターのユーザインタフェース上に、前記対象物と前記本体の前記近位端との間の距離を増加させるインディケーションを提供することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記近位端からの前記対象物の距離が前記第2の距離より短い場合、前記第3の距離を前記第2の距離より短くするように選択することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記測定サイクル中に、前記リバウンドトノメーターの少なくとも1つのセンサから、時間の関数として前記細長磁気プローブの変位及び/又は速度を示すセンサデータを収集することと;
前記センサデータに基づいて、前記細長磁気プローブの速度及び/又は加速度を決定することと;
前記細長磁気プローブの速度及び/又は加速度の変化に基づいて、前記対象物の特性を決定することと;
を更に含む、請求項12から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
時間の関数として測定された前記第1の誘起電圧を第2の所定の基準と比較することを更に含み、
当該比較に基づいて第2の所定の基準が満たされる場合、前記満たされたことを、前記リバウンドトノメーターのユーザインタフェース上に警告インジケータを提供するための情報として使用することを含む、
請求項12から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記第2の所定の基準は、第2の所定の電圧閾値、時間の関数として測定された第1の誘起電圧の第1の期間にわたる第2の積分値、時間の関数としての第1の誘起電圧の第2の微分値、又は第2の所定のパターンのうちの1つであるように選択される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示事項(以下、本開示という)は、リバウンドトノメーター(Rebound Tonometer,反跳式眼圧計と称されることがある)に関する。また本開示は、対象物の特性を決定するためにリバウンドトノメーターを使用する方法にも関する。
【背景】
【0002】
過去数十年にわたり、測定装置は、医学、工学などの様々な分野で支持を得てきた。特に医学の分野では、測定装置は、例えば、医療専門家(検眼医、眼科医、医師など)によって、対象物(患者の眼、患者の身体の一部など)を観察し、対象物に関連するパラメータを測定するためにしばしば用いられる。一例として、リバウンドトノメーターは、眼球の角膜と凹みとの相互作用によって患者の眼球の眼圧(即ち、眼球内の流体圧)を測定するために採用され得る。一般に、リバウンドトノメーターを使用する場合、リバウンドトノメーターは、対象物から特定の距離を置いて対象物の前に配置(即ちセット)される。
【0003】
しかし、(対象物に関連するパラメータを測定するために)対象物に対するトノメーターの配置には、非常に特殊な要件が存在する。場合によっては、既存のトノメーターは対象物から離れすぎて配置されている。このような場合、パラメータは不正確に測定されるか、全く測定されない。他の場合であるが、既存のリバウンドトノメーターが対象物に近すぎるように配置されている場合、当該トノメーターの1つ又は複数の部品が、パラメータを測定している間に誤って対象物を傷つけてしまう可能性がある。いずれの場合も、信頼性の低い誤った測定値しか得られない。
【0004】
いくつかの既存のリバウンドトノメーターは、対象物の周囲部分に接触するためのホルダーを備える。このホルダーは、リバウンドトノメーターを対象物の前に配置することを容易にする。ホルダーは、リバウンドトノメーターと対象物との間の距離を規定する。しかし、このようなホルダーは、対象物の前にリバウンドトノメーターを精密でなく不正確に配置する。これは、ホルダーが機械的にリバウンドトノメーターにセットされ、対象物に対して手動で配置されるためであり、従って、このような機械的セットアップ及び手動介入のために誤差が生じやすい。例えば、リバウンドトノメーターは、患者の眼の眼圧を測定するときに患者の額に接触させることが可能なホルダーを備えることがある。このようなホルダーは、様々な患者の額の様々な形状や特徴を埋め合わせることができず、眼に正確にリバウンドトノメーターを位置合わせすることができない。また、ホルダーを備えるトノメーターは重量が重く、高価である。超音波センサ、カメラなどの典型的な距離測定ソリューションを既存のトノメーターに使用することは、これらのソリューションが高価であり、実装が困難であるため、実現性が薄い。
【0005】
これらの議論に鑑みると、既存のリバウンドトノメーターに関連する前述の欠点を克服する必要性が存在する。
【摘要】
【0006】
本開示は、リバウンドトノメーターを提供しようとするものである。本開示はまた、対象物の特性を決定するためにリバウンドトノメーターを使用する方法を提供しようとするものである。本開示の目的は、従来技術で遭遇した問題を少なくとも部分的に克服する解決策を提供することである。
【0007】
ある捉え方によれば、本開示の実施形態はリバウンドトノメーターを提供する。このリバウンドトノメーターは、
近位端と、前記近位端の反対側の遠位端とを有し、前記近位端に開口部を有する本体と;
細長磁気プローブと;
いずれも前記本体の内部に配置されて前記細長磁気プローブを部分的に囲む、測定コイル及び駆動コイルと;
コントローラと;
を備え、
前記細長磁気プローブは、
第1の端部及び該第1の端部とは反対側の第2の端部を有し、
少なくとも部分的に前記本体内に配置されており、前記第1の端部は前記本体の開口部から前記本体の外側に突出して前記開口部から第1の距離にあり、前記第2の端部は前記本体の内側にあり、
前記リバウンドトノメーターの軸線と一直線に揃えられていて、前記軸線に沿って移動可能にされており、
前記コントローラは、
前記リバウンドトノメーターが使用されているときに、対象物と前記第1の端部との接触を、
・ 前記細長磁気プローブを前記本体に対して動かして、前記第1の端部が、前記近位端から、前記第1の距離より大きい第2の距離にあるようにするべく、前記駆動コイルに通電し、
・ 第1の期間中に、前記測定コイルにおける第1の誘起電圧を時間の関数として測定し、
・ 時間の関数として測定された前記第1の誘起電圧を所定の基準と比較し、
・ 前記比較に基づいて前記所定の基準が満たされた場合、前記満たされたことを、前記第1の端部と前記対象物との間の接触が検出されたことを示す情報として使用する、
ことによって検出し;
前記接触が検出されると、前記リバウンドトノメーターの測定サイクルを開始する;
するように構成される。
【0008】
別の捉え方によれば、本開示の実施形態は、対象物の特性を決定するためにリバウンドトノメーターを使用する方法を提供する。このリバウンドトノメーターは、本体と細長磁気プローブと測定コイルと駆動コイルとを備え、前記方法は、
前記細長磁気プローブを、少なくとも部分的に本体内に配置することであって、前記細長磁気プローブの第1の端部は前記本体の開口部から前記本体の外側に突出して前記開口部から第1の距離にあり、前記第2の端部は前記本体の内側にあり、前記細長磁気プローブは、前記リバウンドトノメーターの軸線に沿って移動可能にされる、前記配置することと;
前記対象物と短期第1の端部との接触を検出することと:
前記接触が検出されると、前記リバウンドトノメーターの測定サイクルを開始することと;
を含み、前記対象物と短期第1の端部との接触を検出することは、
前記第1の端部が、前記近位端から、前記第1の距離より大きい第2の距離にあるようにするべく、前記細長磁気プローブを前記本体に対して動かすことと;
第1の期間中、前記対象物に対して前記リバウンドトノメーターを動かすことと;
リバウンドトノメーターが移動させられる第1の期間中、第1の誘起電圧を時間の関数として測定することと;
時間の関数として測定された前記第1の誘起電圧を所定の基準と比較することと;
前記比較に基づいて前記所定の基準が満たされる場合、前記満たされたことを、前記第1の端部と前記対象物との間の接触が検出されたことを示す情報として使用することと;
によって行われる。
【0009】
本開示の実施形態は、従来技術における前述の問題を実質的に排除するか、又は少なくとも部分的に対処し、対象物の特性を測定するための測定サイクル中に、対象物に対してリバウンドトノメーターを正確且つ確実に位置合わせすることを可能にする。
【0010】
本願に開示されるものの更なる側面や利点、特徴及び目的は、添付の特許請求の範囲と共に解釈される、添付図面及び例示的実施形態の詳細説明によって明らかにされよう。
【0011】
本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせで組み合わせることが可能であることも理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
上記の摘要、及び例示的な実施形態に関する以下の詳細説明は、添付の図面と併せて読むとより良く理解される。本開示を説明する目的で、本開示の例示的構成を図面に示す。ただし本開示は、本明細書に開示される特定の方法及び装置に限定されるものではない。また、図面の縮尺は正しいものではない。同様の要素は可能な限り同一の番号で示されている。
以下、本開示の実施形態を、例として次の図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の一実施形態による、リバウンドトノメーターの例示的な概略図である。
図2A図2B及び図2Cは、本開示の様々な実施形態に従った、リバウンドトノメーターの使用状態の例示的な概略図である。
図3は、本開示の一実施形態による、リバウンドトノメーターのブロック図である。
図4Aは、本開示の実施形態に従って、第1の期間中に時間の関数として測定コイルに誘導される第1の電圧の第1の波形を示し、図4Bは、第2の期間中に時間の関数として測定コイルに誘導される第2の電圧の第2の波形を示す。
図5は、本開示の一実施形態による、対象物の特性を決定するためにリバウンドトノメーターを使用する方法のステップを示すフローチャートである。
添付の図面において、下線付きの番号は、その番号が位置している場所のアイテム又はその番号に隣接するアイテムを表わすために使用される。下線無しの番号は、当該番号から延びる線によって特定されるアイテムに関連付けられる。番号に下線が無く矢印を伴って書かれている場合、その番号は矢印が示す一般的なアイテムを特定するために使用される。
【実施形態の詳細説明】
【0013】
以下の詳細説明は、本開示の実施形態及びそれらが実施され得る方法を例示する。本開示を実施するための形態をいくつか開示したが、当業者であれば、本開示を実施するための他の形態も実現可能であることを認識するであろう。
【0014】
ある捉え方によれば、本開示の実施形態はリバウンドトノメーターを提供する。このリバウンドトノメーターは、
近位端と、前記近位端の反対側の遠位端とを有し、前記近位端に開口部を有する本体と;
細長磁気プローブと;
いずれも前記本体の内部に配置されて前記細長磁気プローブを部分的に囲む、測定コイル及び駆動コイルと;
コントローラと;
を備え、
前記細長磁気プローブは、
第1の端部及び該第1の端部とは反対側の第2の端部を有し、
少なくとも部分的に前記本体内に配置されており、前記第1の端部は前記本体の開口部から前記本体の外側に突出して前記開口部から第1の距離にあり、前記第2の端部は前記本体の内側にあり、
前記リバウンドトノメーターの軸線と一直線に揃えられていて、前記軸線に沿って移動可能にされており、
前記コントローラは、
前記リバウンドトノメーターが使用されているときに、対象物と前記第1の端部との接触を、
・ 前記細長磁気プローブを前記本体に対して動かして、前記第1の端部が、前記近位端から、前記第1の距離より大きい第2の距離にあるようにするべく、前記駆動コイルに通電し、
・ 第1の期間中に、前記測定コイルにおける第1の誘起電圧を時間の関数として測定し、
・ 時間の関数として測定された前記第1の誘起電圧を所定の基準と比較し、
・ 前記比較に基づいて前記所定の基準が満たされた場合、前記満たされたことを、前記第1の端部と前記対象物との間の接触が検出されたことを示す情報として使用する、
ことによって検出し;
前記接触が検出されると、前記リバウンドトノメーターの測定サイクルを開始する;
するように構成される。
【0015】
別の捉え方によれば、本開示の実施形態は、対象物の特性を決定するためにリバウンドトノメーターを使用する方法を提供する。このリバウンドトノメーターは、本体と細長磁気プローブと測定コイルと駆動コイルとを備え、前記方法は、
前記細長磁気プローブを、少なくとも部分的に本体内に配置することであって、前記細長磁気プローブの第1の端部は前記本体の開口部から前記本体の外側に突出して前記開口部から第1の距離にあり、前記第2の端部は前記本体の内側にあり、前記細長磁気プローブは、前記リバウンドトノメーターの軸線に沿って移動可能にされる、前記配置することと;
前記対象物と短期第1の端部との接触を検出することと:
前記接触が検出されると、前記リバウンドトノメーターの測定サイクルを開始することと;
を含み、前記対象物と短期第1の端部との接触を検出することは、
前記第1の端部が、前記近位端から、前記第1の距離より大きい第2の距離にあるようにするべく、前記細長磁気プローブを前記本体に対して動かすことと;
第1の期間中、前記対象物に対して前記リバウンドトノメーターを動かすことと;
リバウンドトノメーターが移動させられる第1の期間中、第1の誘起電圧を時間の関数として測定することと;
時間の関数として測定された前記第1の誘起電圧を所定の基準と比較することと;
前記比較に基づいて前記所定の基準が満たされる場合、前記満たされたことを、前記第1の端部と前記対象物との間の接触が検出されたことを示す情報として使用することと;
によって行われる。
【0016】
本開示は、前述のリバウンドトノメーター及び前述の方法を提供する。ここで、リバウンドトノメーターのコントローラは、本体の近位端からの対象物の最適な必要距離を得るために、リバウンドトノメーターの正確なアライメント較正を実行する。そのため、較正後にリバウンドトノメーターの測定サイクルを開始すると、対象物の特性が正確且つ確実に決定される。測定サイクルは、対象物と第1の端部との接触が検出された後にのみ開始される。これは、対象物がリバウンドトノメーターの本体の近位端から第2の距離内にあることを確実にするためである。その結果、測定サイクルにおいて、リバウンドトノメーターの第1の端部が対象物に接触又は衝突するだけであり、対象物に偶発的な損傷を与えることはない。言い換えれば、細長磁気プローブは、対象物から遠すぎず、対象物に近すぎない、必要な距離で射出される。測定サイクルの開始前に、対象物に対するトノメーターの正確なアライメントを保証する(すなわち対象物に対してトノメーターの位置を正確に合わせる)このアプローチは、極めて簡単で、実施しやすく、安価である。その結果、リバウンドトノメーターを用いた対象物の検査及び/又は診断が、信頼性が高く、正確で、エラーのないものとなる。更に、このトノメーターは軽量で費用対効果が高い。また上記方法は、迅速で、効果的で、信頼性が高く、簡単に実行できる。
【0017】
本開示全体を通して、用語「リバウンドトノメーター」は、対象物の特性を測定するために使用される器具を指す。ここで、用語「特性」は、対象物の生理学的パラメータを指す。例えばトノメーターは、眼の眼圧や眼の触覚感度などの、眼の生理学的パラメータを測定するために使用することができる。実施形態によっては、トノメーターは眼科的測定から眼圧を測定するために使用される。
【0018】
「本体」という用語は、リバウンドトノメーターの最も外側の物理的構造を指す。本体はハウジングであり、リバウンドトノメーターの少なくとも一部の構成要素(細長磁気プローブ、測定コイル、駆動コイルなど)が配置される。言い換えれば、本体は、(部分的に又は完全に、)リバウンドトノメーターの構成要素を収容するように構成されている。本体は、それぞれ近位端及び遠位端である、2つの対向する端部を有する。リバウンドトノメーターが使用されるとき、本体の近位端は、対象物の近傍に位置する。リバウンドトノメーターの本体は器具に取り付けることができ、又はトノメーターを利用するために手で持つことができる。場合によっては、リバウンドトノメーターは、使用者(例えば医療従事者など)によって手動で保持される。このような場合、本体は、トノメーターを把持するための溝を備えてもよい。そのような溝があると、そのような溝が設けられていない場合と比較して、手動でトノメーターをより良好に把持することができる。他の場合には、機械的なホルダーのような器具を使用してトノメーターを保持する。医療従事者は、例えば、医師(眼科医、検眼医、開業医など)、看護師、医療支援スタッフなどでありうるだろう。
【0019】
リバウンドトノメーターの構成要素は、接着手段、機械的手段、磁気手段などによって、本体内に配置(すなわち保持又は取り付け)され得る。場合によっては、リバウンドトノメーターの構成要素は、個々に製造されてもよく、その後に本体内で組み合わせられてもよい。他の場合にはリバウンドトノメーターの構成要素の少なくとも一部は、本体と一体に製造され得る。
【0020】
本体は近位端に開口部を有する。この開口部は、細長磁気プローブを、当該開口部を通って移動することを許すように配置することを可能にする。実施形態によっては、開口部の形状及びサイズは、細長磁気プローブの形状及びサイズに対応する。一例として、細長磁気プローブは円筒形であり、所定の半径を有するので、開口部は、当該半径より大きい半径を有する円形の形状を有する。
【0021】
本開示を通じて、「細長磁気プローブ」という用語は、対象物の特性を決定するために採用される細長いツールを指す。細長磁気プローブは、部分的に本体の開口部内に位置するように配置される。細長磁気プローブは、2つの対向する端部である第1の端部及び第2の端部を有し、第2の端部は本体の内部に配置され、第1の端部は本体の開口部から本体の外部に突出している。細長磁気プローブはまた、第1の端部と第2の端部の間の中間部を有する。実施形態によっては、細長磁気プローブの第1の端部は生体適合材料から作られ、使用時に対象物(眼球など)の表面と衝突する。第1の部分が生体適合材料で作られていることにより、有益なことに、プローブが眼球の生体組織と直に接触して機能することが可能となり、例えば、不快感や痛みを最小限に抑えることができる。生体適合材料は、発癌性や毒性がなく、腐食に強いことは注目すべきである。細長磁気プローブを部分的に本体内に配置する例として、本体に開口部を設けることが挙げられる。開口部は、細長磁気プローブを本体の円柱のような空洞に挿入するためのアクセスを提供する。円柱状の空洞の直径は、細長い磁性体の少なくとも中間部及び第2端部の直径よりも大きく、細長い磁性体プローブが空洞内を前後に移動できるようになっている。使用の際、最初は、第2の端部と、中間部分の約80%~90%とが空洞内にある。第1の端部と、中間部の残りの部分とは、本体の外側にある(開口部を通じて突出している)。測定サイクル中、プローブは、開口部を通じてボディの空洞から射出される。しかし、プローブが本体の開口部から最も遠い距離にあるときでも、中間部分の40~80%は空洞内にある。
【0022】
実施形態によっては、細長磁気プローブ(又は細長磁気プローブの少なくとも中間部分)は磁性材料で作られている。細長磁気プローブは、例えば磁性材料の細いワイヤで作られてもよい。細長磁気プローブは、例えば、長さが20ミリメートル、幅が0.5ミリメートルであってもよい。細長磁気プローブの磁性材料は強磁性体であってもよい。第1の端部と近位端とは、リバウンドトノメーターのデフォルトの使用状態において、第1の距離だけ離間している。既定の使用状態は、細長磁気プローブが静止している(すなわち、細長磁気プローブが動いていない)状態であってもよい。例えば、第1の距離は、開口部から3~5ミリメートル(mm)の範囲であってもよい。つまり開口部から対象物に向かって、すなわち使用時にリバウンドトノメーターの本体の開口部から外側に向かって、3~5ミリメートル(mm)の範囲であってもよい。リバウンドトノメーターの「軸線」とは、リバウンドトノメーターの長手方向を通過し、細長磁気プローブと一直線に並び、細長磁気プローブが移動可能な経路を規定する仮想線を表す。軸線は所定の幾何学的方向に沿っている。一例として、光軸は、トノメーターの使用者の眼と対象物との間の水平軸であってもよい。
【0023】
測定コイルは本体内部に配置され、細長磁気プローブを部分的に囲む。実施形態によっては、測定コイルは有限個のループを有する。細長磁気プローブは、測定コイルのループの中空空間内に部分的に配置されてもよい。このような場合、細長磁気プローブは測定コイルのループ内を移動することができる。測定コイル内で細長磁気プローブが動くことにより、測定コイルに誘起電圧が発生する。
【0024】
駆動コイルも本体内部に配置され、細長磁気プローブを部分的に囲んでいる。駆動コイルは、細長磁気プローブが移動できる一連のループとして構成されている。また駆動コイルは有限個のループを有する。電流が駆動コイルに供給されると、駆動コイルは細長磁気プローブを移動させる。実施形態によっては、駆動コイルは細長磁気プローブを引っ張り、細長磁気プローブを対象物の表面に向かって突き出す。その際の細長磁気プローブの速度は、駆動コイルを通して供給される電流と、細長磁気プローブの磁化との積に等しい。実施形態によっては、駆動コイルは、細長磁気プローブが移動できる一連のループとして構成される。また駆動コイルは有限数のループを有する。駆動コイルは、第1の端部と第2の端部との間の任意の点に沿って配置されてもよい。例えば、駆動コイルは、第1の端部に近い位置に配置されてもよい。
【0025】
実施形態によっては、測定コイルと駆動コイルは別々のコイルとして実装される。この場合、測定コイルと駆動コイルは物理的に互いに分離されている。あるいは、実施形態によっては、測定コイルと駆動コイルは単一コイルの異なる部分として実装され、リバウンドトノメーターの動作において、単一コイルの一部分が測定コイルとして利用され、単一コイルの残りの部分が駆動コイルとして利用される。
【0026】
「コントローラ」という用語は、リバウンドトノメーターの全体的な動作を制御するために動作可能なコンピュータ装置を指す。コントローラは、動作中、細長磁気プローブの移動制御、情報への応答及び処理などのタスクを実行する。なお、実行するタスクはこれらに限定されない。一例では、コントローラは、組み込みマイクロコントローラ、マイクロプロセッサなどであってもよい。実施形態によっては、コントローラは測定コイル及び駆動コイルに組み合わされる。コントローラは、リバウンドトノメーターの内部構成要素として実装されてもよく、リバウンドトノメーターの外部構成要素として実装されてもよい。また、これらの組み合わせとして実装されてもよい。
【0027】
対象物と第1の端部との接触は、細長磁気プローブの第1の端部が対象物に物理的に接触することにより生じる。「対象物」という用語は、特性が測定される要素を指す。実施形態によっては、この対象物は、ある実体の体部の物理的な一部である。この実体は、例えば、人間、動物、又は同様のものである。例えば、上記対象物は、人間の眼である。測定サイクル中に、対象物が細長磁気プローブの第1の端部から必要な動作距離内に位置するように、測定サイクルの初期化前に、対象物と第1の端部との接触が検出される。その結果、測定サイクルにおいて、細長磁気プローブは、対象物を損傷することなく、また不快感を与えることなく、対象物の表面から反発するように適切な距離へと射出され、対象物の特性の正確な測定が可能となる。
【0028】
実施形態によっては、駆動コイルはコントローラによって作動される。これは、駆動コイルに電流を供給するという形で行われ、それによって、駆動コイルを磁気的に励起させる。駆動コイルが磁気的に励起されると、細長磁気プローブは、細長磁気プローブの第1の端部と本体の近位端又は開口部との間の第2の距離が、上記の第1の距離よりも大きくなるように、本体に対して対象物に向かって移動する。実施形態によっては、第2の距離は6mm~8mmの範囲にある。第2の距離は、例えば、6、6.2、6.4、6.6、6.8、7又は7.5mmから6.5、7、7.2、7.4、7.6、7.8又は8mmまでとすることができる。実施形態によっては、細長磁気プローブの第2の端部を囲む駆動コイルの少なくとも一部が第2の端部に対して正に帯電するように、駆動コイルが磁気的に励起される。駆動コイルのこのような磁気的励起は、第2の端部を反発させ、細長磁気プローブの第2の端部を第1の端部の方向に向かって突出させる。
【0029】
駆動コイルが励起されると、細長磁気プローブの第1の端部の方向への移動を促す磁力が生じることが理解されよう。ここで、励起とは、駆動コイルの電源電圧をオン又はオフに切り替えることを意味する。駆動コイルの供給電圧がONに切り替えられると電界が生じる。通常、駆動コイルの供給電圧が高いほど磁力は大きくなる。その結果、細長磁気プローブの加速度は増加する。磁力は細長磁気プローブの磁化(即ち磁気分極)の関数である。ここで、磁化という用語は、細長磁気プローブに誘導される双極子モーメントの密度を意味する。磁化が高いほど磁力は大きくなる。駆動コイルに通電することで、細長磁気プローブは第1の端部の方向(特に、対象物の表面方向)へと移動する。通電によって駆動コイルの極性が反転した場合には、細長磁気プローブは逆方向に(すなわち、近位端から離れる方向に)移動する。細長磁気プローブの移動方向は、コントローラによって制御される。
【0030】
「第1の誘起電圧」とは、対象物に接触した際の細長磁気プローブの反発運動により測定コイルに誘起される電圧を指す。対象物に接触すると、細長磁気プローブの第1の端部は減速し、その後、第2の端部の方向(すなわち、本体の遠位端部方向)に移動するように反発する。その結果、第1の誘起電圧が測定コイルに誘起される。第1の誘起電圧は、細長磁気プローブの第1の端部と対象物との間の距離が第2の距離以下であることを示すものである。ここで、第1の誘起電圧の測定値は、第1の期間中に細長磁気プローブの速度及び加速度が変化するため、時間の経過とともに変化する。ここで第1の期間は、測定サイクルの前に実施されるアライメント較正サイクルの期間を指し、当該期間は、第1の端部を近位端から第2の距離に位置させるための第1の端部の方向への細長磁気プローブの移動の開始から、第1の端部が再び近位端から第1の距離に位置するまでの細長磁気プローブの移動の終了までの期間である。
【0031】
細長磁気プローブの第1の端部が本体の近位端から第2の距離になると、リバウンドトノメーターと対象物は互いに対して動いてもよい。対象物とリバウンドトノメーターの相対的な位置関係が、対象物がちょうど第1の端部に接触するようなものである場合、対象物は近位端から第2の距離に等しい距離にあると判定される。しかし、対象物とリバウンドトノメーターの相対的な位置関係が、第1の端部が近位端から第2の距離にあるときに細長磁気プローブが対象物に押し付けられるような位置関係であることも可能である。これは、対象物が近位端から第2の距離より小さい距離にあることを示す。
【0032】
本開示を通じて、「所定の基準」という用語は、決定を行うために利用される予め定義された基準を指す。実施形態によっては、所定の基準は、所定の電圧閾値、時間の関数として測定された第1の誘起電圧の第1の期間にわたる積分値、時間の関数としての第1の誘起電圧の微分値、又は所定のパターンのうちの1つであるように選択される。「所定の電圧閾値」という用語は、細長磁気プローブの第1の端部が対象物に接触していないときに、測定された第1の誘起電圧がその範囲内に留まると予想される、予め知られた限界値を指す。プローブが対象物に接触すると、電圧値は所定の電圧閾値よりも大きくなると予想される。この値は対象物との衝突速度の関数である。「時間の関数として測定された第1の誘起電圧の第1の期間にわたる積分値」という語句は、細長磁気プローブの第1の端部が第1の期間中に対象物に接触しない場合に、測定された第1の誘起電圧の、第1の期間にわたる、期待される累積値を指す。誘起電圧は速度の関数であるため、積分値は実用的には速度の積分値となる。積分値を使用する場合、プローブの速度はある閾値を超える必要がないため、積分値を使用することは有益である。積分値は、プローブが初期位置から移動したかどうかを速度とは無関係に示すため、プローブが対象物に向かってゆっくり移動したことを検出する手段となる。積分値を使用するさらなる利点は、閾値を高く設定できることである。「時間の関数としての第1の誘起電圧の微分値」という表現は、測定された第1の誘起電圧の予想される経時変化を意味する。微分値を使用すると、トリガの感度を高めることができる。これは、微分値が速度の変化(加速度)に関係するためである。微分値は、例えば、装置のランダムな振動(例えば、医師の手の震えによるもの)に起因する非常に速い加速度をフィルタリングして取り除くためにも使用することができる。「所定のパターン」という用語は、予め知られている値のパターンを意味する。所定の基準の比較は測定された誘起電圧との間で行われるため、所定のパターンは、実施形態によっては、電圧値の経時パターンを意味する。
【0033】
「所定の基準を満たす」とは、以下のいずれかに該当することを意味する。
・ 測定された第1の誘起電圧が所定の電圧閾値を超える。
・ 時間の関数として測定された第1の誘起電圧の第1の期間にわたる積分を評価することによって得られた計算した積分値が、前記積分値よりも大きい。
・ 時間の関数としての第1の誘起電圧の微分を評価することによって得られた微分値の計算値が、前記微分値を超える。
・ 測定された第1の誘起電圧の値の経時的なパターンが、(経時的な電圧値の)前記所定のパターンに類似している。
【0034】
所定の基準を満たすことは、第1の端部が対象物に接触することを示し、このことは、対象物が本体の近位端から必要な作動距離内にあるか、又は必要な作動距離にあることを意味することが理解されよう。この場合、必要な作動距離は第2の距離である。対象物と第1の端部との接触が検出されると、リバウンドトノメーターの測定サイクルが開始される。このような接触が検出されない場合、測定サイクルは開始されない。「測定サイクル」という用語は、対象物の特性を測定する目的で、細長磁気プローブを磁力で射出して対象物に衝突させる動作サイクルを指す。測定サイクルの間、反跳式細長磁気プローブは、リバウンドトノメーターがデフォルトの使用状態になるように本体内に収納され、その後、第1の端部が近位端から第3の距離になるように本体から射出される。細長磁気プローブは、対象物に当たった後、対象物から跳ね返る。磁性細長体は、その運動(対象物へ射出され、対象物に接触し、対象物からの跳ね返り)の間、測定コイルに第2の電圧を誘起する。この第2の電圧は時間の関数である。時間の関数としての第2の電圧は、時間の関数としてのプローブの速度を示す。(磁界が変化するとコイルに電圧が誘起されるためである。)時間の関数としての速度は、対象物の特性を決定するために使用することができる。例えば弾力性を決定するためや、対象物が目の場合は眼圧を決定するために使用することができる。測定サイクルは、対象物の特性を決定するために開始されることが理解されよう。測定サイクルは1回だけかもしれないし、数回繰り返されるかもしれない。
【0035】
実施形態によっては、リバウンドトノメーターの測定サイクルを開始するとき、コントローラは以下のように構成される。
・ 測定コイルに通電して、細長磁気プローブを本体内に引き込み、近位端から第1の距離に第1の端部が位置するようにする。
・ 駆動コイルに通電して、細長磁気プローブを本体から射出し、第1の端部を近位端から第3の距離に位置させる。
【0036】
このように、測定コイルと駆動コイルに順次通電することにより、細長磁気プローブの本体内への移動と本体外への移動を可能するための磁力が生じる。まず、細長磁気プローブを本体内に引き込んで第1の端部が近位端から第1の距離にあるようにするために、第2の端部を囲む測定コイルの少なくとも一部分が、細長磁気プローブに対して(実施形態によっては)負に帯電させられる。その結果、リバウンドトノメーターが既定の使用状態になる。次に、近位端から第3の距離に第1の端部が位置するように細長磁気プローブを体外に射出するために、細長磁気プローブを囲む駆動コイルの少なくとも一部分が、(実施形態によっては)第2の端部に対して正に帯電される。駆動コイル内の電流パルスは細長磁気プローブに作用する磁界を発生させ、細長磁気プローブは、駆動コイル内の電流パルスによって加速される。
【0037】
実施形態によっては、第3の距離は、第2の距離の0.5倍から2.0倍の範囲にある。一例として、第3の距離は、第2の距離の0.5倍、0.6倍、0.7倍、0.8倍、1.0倍、1.2倍、1.5倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍の範囲にある。例えば、第2の距離が6mmの場合、第3の距離は4.8mm~12mmの範囲にある。一例として、第3の距離は7.5mmであってもよい。
【0038】
実施形態によっては、近位端からの対象物の距離が第2の距離に等しいとき、コントローラは更に以下のように構成される。
・ 第3の距離が第2の距離以上となるように選択する。
・ 細長磁気プローブの射出の第2の期間に測定コイルに時間の関数として誘導される第2の電圧を測定することにより、リバウンドトノメーターの測定サイクルを完了する。ここで第2の電圧は、第1の端部の対象物への衝突を示す。
【0039】
ここで、第3の距離が第2の距離と等しくなるように選択されると、第1の端部はちょうど対象物に接触する。
【0040】
一方、第3の距離が第2の距離より大きく選択された場合、第1の端部は全力で対象物に接触する。これら両方のシナリオにおいて、第1の端部は対象物に接触すると反発し、測定コイルに第2の電圧が誘起される。従って、測定サイクルは、測定コイルに誘起される第2の電圧を測定することによって完了する。第2の期間は、測定サイクルの期間を意味し、当該期間は、第1の端部を近位端から第3の距離に位置させるための第1の端部の方向への細長磁気プローブの移動の開始から、第1の端部が再び近位端から第1の距離に位置するまでの細長磁気プローブの移動の終了までの期間である。
【0041】
実施形態によっては、コントローラは、選択された第3の距離が第2の距離の2倍より大きい場合、リバウンドトノメーターのユーザインタフェース上に、対象物と本体の近位端との間の距離を増加させるインディケーション(指示)を提供するように更に構成される。選択された第3の距離が第2の距離の2倍より大きいことは、第3の距離が第2の距離の少なくとも2倍であってもよいことを意味する。例えば、第2の距離が6mmである場合、選択された第3の距離は12mm以上であってもよい。このような場合、細長磁気プローブの対象物への衝突が強すぎる可能性がある。このような衝突は、対象物及び/又は細長磁気プローブを傷つける可能性があり、望ましくない。そこで、例えば、リバウンドトノメーターの使用者が、対象物と本体の近位端との間の距離を広げることができるようにするためのインディケーションが提供される。このような距離を広げる指示は、反跳式細長磁気プローブが対象物(目のような敏感な対象物であってもよい)に強く衝突しすぎるのを防止するために提供される。インディケーションが観察されると、距離は、リバウンドトノメーターの移動又は対象物の移動によって増加される。このような移動は手動であってもよく、トノメーターの使用者が行ってもよい。距離を長くすると、細長磁気プローブが対象物に衝突する力が減少し、対象物及び/又は細長磁気プローブの損傷が防止される。「ユーザインタフェース」という用語は、ユーザーがリバウンドトノメーターと相互作用するインタフェースを意味する。ユーザインタフェースは、トノメーターと、トノメーターに組み合わされるコンピューティングデバイスとのうちの少なくとも1つに実装される。コンピューティングデバイスの例としては、コンピュータ、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、ラップトップコンピュータが挙げられるが、これらに限定されない。実施形態によっては、ユーザインタフェースは、リバウンドトノメーター又はコンピューティングデバイスのディスプレイ上にレンダリングされる。この点に関して、上記インディケーションは、テキスト表示、画像表示、オーディオビジュアル表示、エラー通知、警告、又は類似のものとすることができる。あるいは、当該インディケーションは、反跳圧力計に関連する、音声装置、発光ダイオード(LED)、振動装置、触覚装置のうちの少なくとも1つを使用して提供されてもよい。一例として、コントローラは、選択された第3の距離が第2の距離の2倍よりも大きい場合に、リバウンドトノメーターに設置された振動デバイスを大きく振動させるように制御する仕方によって、当該インディケーションを提供してもよい。別の例として、コントローラは、選択された第3の距離が第2の距離の2倍より大きい場合に、赤色光を発するように、リバウンドトノメーターに設置されたLEDを制御する仕方によって、当該インディケーションを提供してもよい。
【0042】
実施形態によっては、近位端からの対象物の距離が第2の距離より小さいとき、コントローラは次のように構成される。
・ 第3の距離が第2の距離より小さくなるように選択する。
・ 長磁気プローブの射出の第2の期間に測定コイルに時間の関数として誘導される第2の電圧を測定することにより。リバウンドトノメーターの測定サイクルを完了する。ここで第2の電圧は、第1の端部の対象物への衝突を示す。
【0043】
ここで、第3の距離は、反跳式細長磁気プローブが対象物に強く衝突するのを防止するために、第2の距離よりも小さくなるように選択される。このようなシナリオでは、第3の距離は、測定サイクルの開始後、ユーザーがリバウンドトノメーターを対象物に近づけるか、又は対象物をリバウンドトノメーターに近づける可能性を考慮して選択されうる。本実施形態において、第3の距離を第2の距離よりも小さく選択することの技術的利点は、対象物を傷つけることなく、測定サイクルを完了するために必要な力で、第1の端部が対象物に接触することを確実にすることである。第1の端部は対象物に接触すると反発し、これにより測定コイルに第2の電圧が誘起される。従って、測定サイクルは、測定コイルに誘起される第2の電圧を測定することによって完了する。
【0044】
実施形態によっては、コントローラは、第2の電圧を使用して対象物の特性を決定するように構成される。「特性」という用語は、対象物の生理学的パラメータを表す。例えばトノメーターは、眼の眼圧や(眼又は皮膚の)触覚感度などの、眼の生理学的パラメータを測定するために使用することができる。例えば、トノメーターは、眼科的測定から眼の眼圧を測定するために使用されてもよい。第2の電圧は、細長磁気プローブの第1の端部が対象物(の表面)に衝突したときに対象物から反発する細長磁気プローブの時間の関数としての速度を表す。第2の電圧の大きさは、細長磁気プローブの磁気強度と速度に依存する。例えば、第2の電圧の大きさは、細長磁気プローブの速度に正比例する。一例として、第2の電圧は、眼球の眼圧を測定するために使用されうる。細長磁気プローブの速度と、細長磁気プローブが眼球表面に向かって射出され、眼球表面に衝突した後に細長磁気プローブを停止させるための眼球表面の応答とは、速度の第1導関数を計算することによって決定されてもよい。更に、細長磁気プローブが眼表面から跳ね返る速度を決定してもよい。ここで、細長磁気プローブが急激に(すなわち高速で)跳ね返った場合、眼圧が高いと判定され、細長磁気プローブがゆっくりと(すなわち低速で)跳ね返った場合、眼圧が低いと判定される。
【0045】
実施形態によっては、リバウンドトノメーターは、少なくとも1つのセンサを更に備え、リバウンドトノメーターのコントローラは次のように構成される。
・ 測定サイクル中に、前記少なくとも1つのセンサから、時間の関数としての細長磁気プローブの変位及び/又は速度を示すセンサデータを収集する。
・ 前記センサデータに基づいて、細長磁気プローブの速度及び/又は加速度を決定する。
・ 細長磁気プローブの速度及び/又は加速度の変化に基づいて、対象物の特性を決定する。
【0046】
実施形態によっては、前記センサは、細長磁気プローブの変位及び/又は速度を測定し、それに関連するセンサデータを記録する。細長磁気プローブの運動は、時間の関数として、細長磁気プローブの変位及び/又は速度で表すことができる。ある実施例では、センサは、対象物に向かう細長磁気プローブの運動による測定コイル内の磁束の変化を測定するように構成される。前述のように、測定サイクルの間、磁力は細長磁気プローブを本体から射出して対象物に衝突させる作用を発現し、その後、細長磁気プローブは本体内に引っ込む。そこで、センサは測定コイル内の磁束の変化を測定し、コントローラはその測定値を用いてプローブの変位及び/又は速度を決定する。実施形態によっては、センサは、トランスデューサ、加速度計、周波数センサ、レーザー表面速度計、圧電センサを使用して実装される。
【0047】
実施形態によっては、細長磁気プローブの速度及び/又は加速度の変化に基づいて対象物の特性を決定する場合、コントローラは、細長磁気プローブの速度及び/又は加速度を、過去に収集された医療試験の速度及び/又は加速度データと比較する。例えば、決定すべき特性が眼球の眼圧である場合、速度及び/又は加速度の値が高ければ眼圧が高いことを意味するであろう。また、当該値が低ければ眼圧が高いことを意味するであろう。これは、細長磁気プローブが急激に(即ち、高い速度及び/又は加速度で)反発する場合には眼圧が高いことが歴史的に知られており、細長磁気プローブがゆっくりと反発する場合には眼圧が低いことが歴史的に知られているからである。有益なことに、対象物の特性を決定することにより、対象物に関連する更なる診断の進展が可能となる。
【0048】
実施形態によっては、コントローラは、時間の関数として測定された第1の誘起電圧を第2の所定の基準と比較するように更に構成され、
当該比較に基づいて第2の所定の基準が満たされる場合、当該満たされたことを、リバウンドトノメーターのユーザインタフェース上に警告インジケータを提供するための情報として使用する。
【0049】
実施形態によっては、第2の所定の基準は、第2の所定の電圧閾値、時間の関数として測定された第1の誘起電圧の第1の期間にわたる第2の積分値、時間の関数としての第1の誘起電圧の第2の微分値、又は第2の所定のパターンのうちの1つであるように選択される。「第2の所定の電圧閾値」という用語は、細長磁気プローブの第1の端部が対象物に接触していないときに、測定された第1の誘起電圧がその範囲内に留まると予想される、予め知られた第2の限界値を指す。「時間の関数として測定された第1の誘起電圧の第1の期間にわたる第2の積分値」という語句は、細長磁気プローブの第1の端部が第1の期間中に対象物に接触しない場合に、測定された第1の誘起電圧の、第1の期間にわたる、期待される第2の累積値を指す。「時間の関数としての第1の誘起電圧の第2の微分値」という表現は、測定された第1の誘起電圧の予想される経時変化を意味する。「第2の所定のパターン」という用語は、予め知られている値の第2のパターンを意味する。所定の基準の比較は測定された誘起電圧との間で行われるため、第2の所定のパターンは、実施形態によっては、電圧値の第2の経時パターンを意味する。
【0050】
「第2の所定の基準を満たす」とは、以下のいずれかに該当することを意味する。
・ 測定された第1の誘起電圧が第2の所定の電圧閾値を超える。
・ 時間の関数として測定された第1の誘起電圧の第1の期間にわたる積分を評価することによって得られた計算した積分値が、前記第2の積分値よりも大きい。
・ 時間の関数としての第1の誘起電圧の微分を評価することによって得られた微分値の計算値が、前記第2の微分値を超える。
・ 測定された第1の誘起電圧の値の経時的なパターンが、(経時的な電圧値の)前記第2の所定のパターンに類似している。
【0051】
測定された第1の誘起電圧が第2の所定の電圧閾値を超える場合、それは、リバウンドトノメーターが対象物に向かって速く動かされすぎていることを示し、対象物に害を及ぼす可能性があることが理解されよう。計算された微分値が第2の微分値を超えることも、リバウンドトノメーターが対象物に向かって速く動かされすぎていることを意味する(すなわち、速く動かされすぎていることを示す)。計算された積分値が第2の積分値より大きいことは、第1の端部が対象物に近すぎることを意味する。同様に、測定された第1の誘起電圧の値のパターンが第2の所定のパターンに類似していることは、第1の端部が対象物に近すぎることを意味する。従って、第2の所定の基準を満たすことは、リバウンドトノメーターが望ましくない、安全でない方法で動いていることを示す。
【0052】
「警告インジケータ」という用語は、時間の関数として測定された第1の誘起電圧が第2の所定の基準を満たしたときに、リバウンドトノメーターの使用者に提供される表示であって、リバウンドトノメーターが望ましくない、安全でない方法で動いていることを示す表示を指す。リバウンドトノメーターの使用者は、警告インジケータを観察したら、対象物の損傷を防止するための是正措置(駆動コイルの通電を停止する、対象物をリバウンドトノメーターから遠ざけるなど)を取ってもよい。警告インジケータはユーザインタフェースを通じてユーザーに提供される。警告インジケータは、テキスト表示、視覚的表示、視聴覚的表示等の形式であってもよい。あるいは、警告インジケータは、反跳圧力計に関連する、音声装置、発光ダイオード(LED)、振動装置、触覚装置のうちの少なくとも1つに提供されてもよい。別の例として、コントローラは、時間の関数として測定された第1の誘起電圧が第2の所定の基準を満たしたときに、リバウンドトノメーターに設置されたLEDを青色に発光するように制御する仕方によって、警告インジケータを提供してもよい。
【0053】
実施形態によっては、コントローラは、所与の時間に対する所与の電圧の強度を波形として少なくとも1つのディスプレイに表示するように更に構成されてもよい。このディスプレイは、オシロスコープのディスプレイ、リバウンドトノメーターのディスプレイ、コンピューティングデバイスのディスプレイのうちの少なくとも1つであってもよい。所与の電圧の「強度」は、所与の電圧の測定値を意味する。言い換えれば、強度は、所与の時間における電圧の高さ又は低さを表す。時間に対する所与の電圧の強度を表す波形が少なくとも1つのディスプレイ上に表示されることにより、リバウンドトノメーターの使用者は、所与の電圧がいつ誘起されたかを容易に見て識別することができ、所与の電圧の強度を容易に見ることができる。そして、使用者は、リバウンドトノメーターと対象物との相対的な配置を変更したり、強度に基づく診断を提供したりすることができる。本開示はまた、上述の方法に関する。前述の第1の捉え方に関して上に開示された様々な実施形態及び変形例は、本方法に準用される。
【0054】
実施形態によっては、本方法において、前記所定の基準は、所定の電圧閾値、時間の関数として測定された第1の誘起電圧の第1の期間にわたる積分値、時間の関数としての第1の誘起電圧の微分値、又は所定のパターンのうちの1つであるように選択される。
【0055】
実施形態によっては、本方法において、測定サイクルは以下を含む。
・ 測定コイルに通電して、細長磁気プローブを本体内に引き込み、近位端から第1の距離に第1の端部を位置させる。
・ 駆動コイルに通電して、細長磁気プローブを本体から射出し、第1の端部を近位端から第3の距離に位置させる。
・ 細長磁気プローブの射出の第2の期間に、測定コイルに時間の関数として誘導される第2の電圧を測定することにより、前記測定サイクルを完了する。ここで前記第2の電圧は、第1の端部の対象物への衝突を示す。
・ 対象物の特性を決定するために前記第2の電圧を使用する。
【0056】
第2の電圧は、時間の関数として細長いプローブの速度を示す情報である。この情報は、対象物の特性を判断するために使用することができる。例えば、第2の電圧が高い場合、プローブが対象物から急速に跳ね返ったことを示し、そのため対象物は、ゆっくりと跳ね返る場合(第2の電圧が低い場合)よりも硬いことを示す。測定サイクルの一例として、トノメーターは、例えば眼球の眼圧を測定するために使用することができる。測定サイクルの他の例としては、皮膚の接触感度を測定するべく、ターゲットユーザーの皮膚に衝突させるために反跳式トノメーターを使用することがある。実施形態によっては、本方法において、第3の距離は第2の距離の0.5~2.0倍の範囲にある。
【0057】
実施形態によっては、近位端からの対象物の距離が第2の距離と等しい場合、本方法は、第3の距離を第2の距離と等しいかそれより大きくなるように選択することを更に含む。
【0058】
実施形態によっては、本方法は、第3の距離が第2の距離の2倍より大きい場合、リバウンドトノメーターのユーザインタフェース上に、対象物と本体の近位端との間の距離を増加させるインディケーション(指示)を提供することを更に含む。
【0059】
実施形態によっては、近位端からの対象物の距離が第2の距離より短い場合、本方法は、第3の距離を第2の距離より短くするように選択することを更に含む。
【0060】
実施形態によっては、本方法は更に以下のことを含む。
・ 測定サイクル中に、リバウンドトノメーターの少なくとも1つのセンサから、時間の関数として細長磁気プローブの変位及び/又は速度を示すセンサデータを収集する。
・ 前記センサデータに基づいて、細長磁気プローブの速度及び/又は加速度を決定する。
・ 細長磁気プローブの速度及び/又は加速度の変化に基づいて、対象物の特性を決定する。
【0061】
実施形態によっては、本方法は、時間の関数として測定された第1の誘起電圧を第2の所定の基準と比較することを更に含み、
当該比較に基づいて第2の所定の基準が満たされる場合、当該満たされたことを、リバウンドトノメーターのユーザインタフェース上に警告インジケータを提供するための情報として使用する。
【0062】
実施形態によっては、方法において、第2の所定の基準は、第2の所定の電圧閾値、時間の関数として測定された第1の誘起電圧の第1の期間にわたる第2の積分値、時間の関数としての第1の誘起電圧の第2の微分値、又は第2の所定のパターンのうちの1つであるように選択される。
【0063】
さらなる例として、本開示は、リバウンドトノメーターと対象物との間の距離を自動的に検出し、従って測定サイクルを自動的に開始することができるリバウンドトノメーターを提供する。このこと(距離の検出)は、距離が短すぎるとプローブが対象物(眼球など)に速く当たりすぎて損傷を引き起こす可能性があるため、重要である。更に、測定サイクルが対象物から遠すぎると、プローブが対象物に当たるのが遅すぎたり、まったく当たらなかったりする可能性がある。対象物の距離は、プローブの第1の端部をリバウンドトノメーターの本体から離れた位置(対象物の方向)に移動させ、プローブの第1の端部を対象物に接触させることによって検出される。プローブは本体(本体の開口部/空洞/経路)内を移動するように配置され、測定コイルで囲まれているため、接触を検出することができる。測定コイルへの誘起電圧は、測定サイクルを開始するために使用される。
[図面の詳細説明]
【0064】
図1を参照すると、本開示の一実施形態によるリバウンドトノメーター100の例示的な概略図が示されている。リバウンドトノメーター100は、本体102、細長の磁気プローブ104、測定コイル106、駆動コイル108、及びコントローラ(図示せず)を備える。本体102は、近位端110と、近位端110とは反対側の遠位端112とを有する。また本体102は、近位端110に開口部114(点線で示す)を有する。細長磁気プローブ104は、第1の端部116と、第1の端部116とは反対側の第2の端部118とを有し、第1の端部116が本体102の開口部114から本体102の外側に突出するように、本体102内に少なくとも部分的に配置される。測定コイル106と駆動コイル108は、細長磁気プローブ104を部分的に囲むように本体102内に配置される。コントローラは、測定コイル106及び駆動コイル108に結合されている。第1の端部116は、開口部114から第1の距離DIにあり、第2の端部118は、本体102の内部にある。細長磁気プローブ104は、リバウンドトノメーター100の軸120(破線の点線で示す)と整列し、軸120に沿って移動可能にされる。
【0065】
図2A図2B及び図2Cを参照すると、本開示の様々な実施形態による、リバウンドトノメーター202の使用状態の例示的な概略図が示されている。リバウンドトノメーター202は、対象物204(眼として描かれている)の特性を決定するために使用される。リバウンドトノメーター202は、本体206、細長の磁気プローブ208、測定コイル210、駆動コイル212、及びコントローラ(図示せず)を備える。本体206は、近位端214と、近位端214とは反対側の遠位端216とを有する。また本体206は、近位端214に開口部(図示せず)を有する。細長磁気プローブ208は、第1の端部218と、第1の端部218とは反対側の第2の端部220とを有し、第1の端部218が本体206の開口部から本体206の外側に突出するように、本体206内に少なくとも部分的に配置される。測定コイル210と駆動コイル212は、細長磁気プローブ208を部分的に取り囲むように本体206内に配置される。コントローラは、測定コイル210及び駆動コイル212に結合されている。
【0066】
図2Aでは、リバウンドトノメーター202は、第1の使用状態(例えば待機状態など)にあることが示されている。待機状態では、第1の端部218は開口部から第1の距離DIにあり、第2の端部220は本体206の内部にある。細長磁気プローブ208は、リバウンドトノメーター202の軸(図示せず)と整列し、軸(図示せず)に沿って移動可能にされている。第1の端部218は対象物204から離れている(すなわち接触していない)。図2Bにおいて、リバウンドトノメーター202は、第2の使用状態にあることが示されている。第1の使用状態から第2の使用状態に移行するために、コントローラは、駆動コイル212に通電して、細長磁気プローブ208を本体206に対して移動させ、第1の端部218を近位端214から第2の距離D2に位置させる。第2の距離D2は、第1の距離D1(図2Aに示す)よりも大きい。第2の使用状態では、図2Aに示される第1の使用状態と比較して、リバウンドトノメーター202の第1の端部218は、対象204により接近している。図2Bでは、近位端214から対象物204までの距離が第2の距離D2よりも遠い例が描かれている。しかし、近位端214から対象物204までの距離が第2の距離D2と等しいか、又は第2の距離D2より近いとき、第2の使用状態において、第1の端部218は対象物204に接触する。対象物204と第1の端部218との接触が検出されると、リバウンドトノメーター202の測定サイクルが開始される。
【0067】
図2Cでは、リバウンドトノメーター202が第3の使用状態にあることが示されている。第1の使用状態から第3の使用状態に移行するために、コントローラは、駆動コイル212に通電して、細長磁気プローブ208を本体206から射出し、第1の端部218を近位端214から第3の距離D3に位置させる。ここで、第3の距離D3は第2の距離D2よりも大きいように示されている。この場合、第1の端部218は、対象物204に全力で接触する。細長磁気プローブ208の射出の第2の期間中に、測定コイル210には第2の電圧が時間の関数として誘起される。リバウンドトノメーター202の測定サイクルは、この第2の電圧を測定することによって完了する。第2の電圧は、第1の端部218の対象物204への衝突を示す。
【0068】
図1を参照すると、本開示の一実施形態によるリバウンドトノメーター300のブロック図が示されている。リバウンドトノメーター300は、本体302と、細長磁気プローブ304と、測定コイル306と、駆動コイル308と、コントローラ310と、少なくとも1つのセンサ(センサ312として描かれている)とを備える。コントローラ310は、測定コイル306と、駆動コイル308と、センサ312とに結合されている。
【0069】
図1、2A~2C、及び3は、単なる例であり、特許請求の範囲を不当に限定すべきではない。リバウンドトノメーター100、202、300は、例として提供され、リバウンドトノメーターの構成要素の数やタイプを限定するものであると解釈してはならない。当業者は、本開示の実施形態の多くの変形例、代替例、及び修正例を認識できるであろう。
【0070】
図4A及び図4Bを参照すると、図4Aは、本開示の実施形態に従って、第1の期間中に時間の関数として測定コイルに誘導される第1の電圧の第1の波形を示し、図4Bは、第2の期間中に時間の関数として測定コイルに誘導される第2の電圧の第2の波形を示す。与えられた波形は、ある時間における電圧の値/振幅を表す。Y軸は電圧の大きさを表し、X軸は時間を表す。
【0071】
図4Aでは、第1の波形の部分402と404は、対応する時間を通じて、(ほぼ)一定の電圧強度を示している。これは、部分402と404に対応する時間の間、測定コイルに電圧が誘起されていないことを意味する。第1波形の部分406、408、410(山や谷として描かれている)は、第1の誘起電圧を示す。例えば、部分406は、細長磁気プローブの第1の端部が対象物に接触し、第1の端部が対象物に押し込まれる時間に対応し、部分408は、第1の端部が対象物から遠ざかるが、依然として対象物に接触している時間に対応し、部分410は、第1の端部が対象物から遠ざかり、もはや対象物に接触していない時間に対応し得る。図4Bでは、第2の波形の点412は、第1の端部が、リバウンドトノメーターの本体の近位端の開口部から第1の距離にある時間を示す。点412では、測定コイルに電圧は誘起されない。第2の波形における点414は、第1の端部が開口部から第1の距離にある別の時間を示す。点414では、測定コイルに電圧は誘起されない。点412と点414の間にある第2波形の部分416は、測定コイルに誘導される第2の電圧を示す。第2の電圧は時間の関数として変化する。これは、部分416が山と谷によって描かれていることに現われている。第2の電圧は、細長磁気プローブが、近位端から第3の距離に第1の端部が位置するように本体から射出され、対象物に衝突し、対象物との衝突によってリバウンド(反跳)するときに誘導される。
【0072】
図5を参照すると、本開示の一実施形態による、対象物の特性を決定するためにリバウンドトノメーターを使用する方法のステップを示すフローチャートが示されている。リバウンドトノメーターは、本体、細長磁気プローブ、測定コイル、及び駆動コイルを備える。ステップ502において、細長磁気プローブは、少なくとも部分的に本体内に配置されており、細長磁気プローブの第1の端部は本体の近位端の開口部から本体の外側に突出し、細長磁気プローブの第2の端部は本体の内側にあり、前記第1の端部は前記開口部から第1の距離にあり、細長磁気プローブは、リバウンドトノメーターの軸に沿って移動可能にされている。
【0073】
ステップ504において、対象物と前記第1の端部との接触が検出される。この検出は次のステップを含む。
・ 細長磁気プローブを本体に対して動かして、前記第1の端部が前記近位端から第2の距離にあるようにする。ただし前記第2の距離は前記第1の距離よりも大きい。
・ 第1の期間中、前記対象物に対してリバウンドトノメーターを移動させる。
・ リバウンドトノメーターが移動させられる第1の期間中、第1の誘起電圧を時間の関数として測定する。
・ 時間の関数として測定された前記第1の誘起電圧を所定の基準と比較する。
・ 前記比較に基づいて前記所定の基準が満たされる場合、前記満たされたことを、前記第1の端部と前記対象物との間の接触が検出されたことを示す情報として使用する。
【0074】
接触が検出されると、ステップ506において、リバウンドトノメーターの測定サイクルが開始される。
【0075】
ステップ502,504及び506は単なる例示であって、他の選択肢も提供することができる。すなわち、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、1つ又は複数のステップを加えたり、1つ又は複数のステップを除いたり、1つ又は複数のステップを別の順序で実行したりすることができる。添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく、前述の本開示の実施形態を変更することが可能である。本開示を説明及び請求するために使用される「含む」、「備える」、「組み込む」、「有する」、「である」などの表現は、非排他的に解釈されることを意図しており、すなわち、明示的に記載されていない項目や部品、構成要素が存在することを許容する。要素が複数であることを明示しなかったとしても、当該要素が複数存在することを妨げない。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5
【国際調査報告】