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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】歪みを補正する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024514540
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2021080376
(87)【国際公開番号】W WO2023078528
(87)【国際公開日】2023-05-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ウーアマン
(72)【発明者】
【氏名】マークス ヴィンプリンガー
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ パウル リンドナー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ブルクグラーフ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴァーゲンライトナー
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ツィナー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン フィンガー
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト ローリンガー
(57)【要約】
本発明は、基板(1)の基板表面(1a,1p)上の歪み(4)を補償(7)する方法および装置、2つの基板をボンディングする方法ならびに製品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1)の少なくとも1つの基板表面(1a,1p)上の歪み(4)を補償(7)する方法であって、
前記基板表面のうちの少なくとも1つに、少なくとも1つの局所的なアクションが生成される、方法。
【請求項2】
前記局所的なアクションは、電磁ビームによって、好適にはレーザーによって生成される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記基板表面(1a,1p)の監視が実施され、前記補償(7)は、その場で観察される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記局所的なアクションは、前記基板表面(1a,1p)上に被着されるコーティング(5)によって生成される、請求項1から3までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項5】
前記局所的なアクションは、前記基板(1)の材料の除去によって生成される、請求項1から4までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの局所的なアクションは、前記基板(1)の変形を、特に前記基板の縁部において引き起こす、請求項1から5までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項7】
前記基板表面(1a,1p)の測定が行われ、その後、前記基板表面(1a,1p)上の前記歪み(4)の補償(7)が行われ、それに続いて、前記基板表面(1a,1p)が新たに測定される、請求項1から6までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項8】
2つの基板(1)をボンディングする方法であって、
前記基板(1)の少なくとも一方の歪みが、請求項1から7までの少なくとも1項記載の方法を用いて補償され、その後で、前記2つの基板(1)は相互にボンディングされる、方法。
【請求項9】
基板(1)の少なくとも1つの基板表面(1a,1p)上の歪み(4)を補償(7)するための装置であって、
前記基板表面(1a,1p)のうちの少なくとも1つに、少なくとも1つの局所的なアクションが生成可能である、装置。
【請求項10】
前記装置は、前記局所的なアクションを生成する手段を有し、前記局所的なアクションを生成する手段は、好適にはレーザーを含む、請求項9記載の装置。
【請求項11】
請求項1から8までの少なくとも1項記載の方法および/または請求項9もしくは10記載の装置を用いて製造された、製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項に記載の方法および装置に関する。
【0002】
半導体産業においては、構成部材、いわゆるデバイスを製造するために異なる基板が使用される。最も頻繁に使用される基板の種類はいわゆるウェーハである。
【0003】
そのような構成部材の製造プロセスは、複数のプロセスステップを有する複数の、場合によっては数百のプロセスを含む。これらのプロセスは、例えば、コーティングプロセス、エンボス加工プロセス、露光プロセス、洗浄プロセス、エッチングプロセス、ボンディングプロセス、デボンディングプロセス、または裏面薄肉化プロセスである。異なるプロセスの目的は、多くの場合、1つの基板上で数百から数千の個々の構成部材を製造することである。
【0004】
これらの全てのプロセスは、基本的に欠陥を伴う。例えば、コンピュータでは、高い精度でリソグラフィマスクを定義することが可能である。しかしながら、それらの製造には、製造方法によっては欠陥を伴うかもしれない。欠陥を伴うマスクからは、欠陥を伴う露光も必然的に生じる。マスクレスフォトリソグラフィ方法が使用されることも考えられ、ここでは、1つまたは複数のSLM(英語表記:spatial light modulators)、特にDMD(英語表記:digital micromirror device)が使用され、これにより、欠陥を伴う露光が行われ、これは修正の必要がある。
【0005】
同様の問題は、基板に対して強い機械的な作用が存在する方法においても発生する。基板は、非常に正確な構造体を基板表面に有することができる。しかしながら、基板の背面を折り返し研削したり、単に研磨しただけの場合、これは、基板の、特に基板表面の不所望な歪みにつながる可能性がある。
【0006】
つまり、基板が大面積で変形し、歪むことも可能である。例えば、基板は、研削および/または研磨プロセスによって一方では薄肉化され、他方では内部応力も基板内で構築される。この内部応力は、凸状、凹状の湾曲につながるかまたは大域的な湾曲パターンにつながり、これは、場所の関数として変化する。これにより、そのような基板上の構成部材は、研削および/または研磨プロセスの前に歪みのない状態にあったとしても、後から新たに歪んでしまう。
【0007】
2つの基板を相互にボンディングし、ボンディング過程によって、外側の基板表面のうちの1つに歪みが生じることも考えられよう。それにもかかわらず、外側の基板表面の一方が、歪みのないさらなる基板とボンディングされるならば、2つの基板の間のボンディング表面には欠陥が伴うことになる。
【0008】
この明細書では、実際状態と目標状態との間の差分が歪みと称される。この歪みは、例えば、研磨プロセスによって機械的な応力が導入されたときに生じるような機械的な性質のものであってもよく、あるいはこの歪みは、欠陥を伴うもしくは少なくとも不良に製造されたリソグラフィマスクによって生じる、フォトリソグラフィ露光された層の目標状態からの偏差であってもよい。つまり、この場合には、フォトリソグラフィ露光された層が存在する基板自体が歪んでいなくてもよいが、この基板上で製造された構造体は歪んで製造される。
【0009】
歪みは、一般に、場所に依存する。特に、歪みは、場所の関数として連続的に変化する。それゆえ、歪みは、歪みフィールドとして示すことも可能である。つまり、歪みは、局所的でかつ/または大域的である。しかしながら、簡潔化の理由から、本明細書のさらなる経過では、常に歪みについてのみが言及される。歪みは、好適には、特に2次元ベクトルとして説明される。ベクトルは、接平面内でその原点の点にある。
【0010】
歪みは、基板能動表面に、かつ/または基板能動表面とは反対側の基板受動表面に存在していてもよく、かつ/または補償され得る。基板能動表面とは、特に、例えばMEMS、LED、トランジスタ、コーティングなどの機能素子が存在している基板表面であると理解され、それに対して、基板受動表面は、例えば固定に用いられる。各基板受動表面は、製造方法において基板能動表面になることができる。1つの基板が2つの基板能動表面を有することも考えられる。
【0011】
方法の開始時に、2つの基板の表面は、多くの場合、受動的である。特に薄い基板の場合には、歪みの補償が基板の厚さを超えて、ひいては反対側の基板側にも作用することが考えられる。これにより、基板受動表面からの基板能動表面への歪みの補償が可能となる。ただし、好適には、歪みは基板能動表面において直接補償される。なぜなら、これによって、特に好適で効率的な監視が可能になると考えられるからである。
【0012】
従来技術には、基板の変形の影響が明らかにされた刊行物が存在している。刊行物、国際公開第2012083978号には、例えば、複数の変形要素を用いて、基板の局所的および/または大域的な歪みを補償することができる基板ホルダが示されている。刊行物、国際公開第2021079786号には、歪みを計測し、部分的に補償することができる装置が示されている。
【0013】
従来技術における問題は、特に、局所的および/または大域的な歪みの補償が基板ホルダによって行われることにある。特に、歪みの補償は永続的ではなく、すなわち、歪みは、基板ホルダの能動的に制御可能な変形要素がスイッチオフされるかまたは基板が取り出されると再び生じる。
【0014】
基板は、つまり弾性的に作用する特性があるので、自身の元の形態に戻るように変形する。従来技術では、基板においてさらなるプロセスステップが実施される前に、この種の基板ホルダにより歪みを補償することが試みられている。その際の最も重要な方法の1つは、上述のボンディングであるさらなる方法が行われる前に、少なくとも1つの基板表面において局所的および/または大域的な歪みが補償されたことを保証しなければならないことである。
【0015】
それゆえ、本発明の課題は、従来技術の欠点を排除することにある。
【0016】
この課題は、本発明の対象によって解決される。本発明の好適な発展形態は、従属請求項に示されている。本発明の枠内には、明細書、請求の範囲、および/または図面に示されている少なくとも2つの特徴から成る全ての組み合わせも含まれる。数値範囲が示されている場合には、上記の限界の範囲内にある値も限界値として開示され、任意の組み合わせにおいて請求可能である。
【0017】
本発明は、基板の少なくとも1つの基板表面上の歪みを補償する方法に関しており、ここでは、基板表面のうちの少なくとも1つに、少なくとも1つの局所的なアクションが生成される。
【0018】
本発明はさらに、基板の少なくとも1つの基板表面上の歪みを補償するための装置に関し、ここで、基板表面のうちの少なくとも1つに、少なくとも1つの局所的なアクションが生成可能である。
【0019】
本発明はさらに、本発明による方法および/または本発明による装置を用いて製造された製品に関する。
【0020】
特に、複数の歪みが存在する場合、全ての存在する歪みが補償される必要はない。所望の変形を達成するために、いくつかの歪みを生じさせることも可能である。しかしながら好適には、とりわけ歪みは、機能的なユニットおよび構造体の近傍において補償される。なぜなら、この種の歪みは、さらなる方法ステップの場合には欠点を表すからである。
【0021】
特に、基板を所望の形態にもたらすために、変形を生成するという目的で、少なくとも1つの局所的なアクションが生成されることが考えられる。特に、歪みを有さない、基板の部分領域は、別の部分領域における歪みを補償するために、少なくとも1つの局所的なアクションによって変形され得る。
【0022】
少なくとも1つの局所的なアクションは、少なくとも1つの基板表面における少なくとも1つの歪みを補償し、特に変形を別の箇所で生成する。新たに生成された変形は、少なくとも1つの基板表面の新たに得られた状態を改善する。
【0023】
特に、装置は、局所的なアクションを生成する手段を有し、ここで、局所的なアクションを生成する手段は、好適にはレーザーを含むことが想定されている。
【0024】
この基板は特にウェーハである。
【0025】
1つもしくは複数の基板は、それぞれ任意の形状を有することができるが、好適には円形である。基板の直径は、特に業界で規格化されている。ウェーハについて、業界標準の直径は、1Zoll、2Zoll、3Zoll、4Zoll、5Zoll、6Zoll、8Zoll、12Zoll、および18Zollである。しかしながら、本発明は基本的にはこれらの直径に依存することなくあらゆる基板に適用することが可能である。
【0026】
歪みとは、局所的な歪みも、大域的な歪みも含む。
【0027】
局所的な歪みとは、特に、基板の全面に対して全く影響を与えない、または僅かな影響しか与えない、局地的に限定された小面積の歪みであると理解される。
【0028】
大域的な歪みとは、特に、基板、特にウェーハの、その平坦な形態から大面積の偏差であると理解される。特に薄い基板は、機械的および/または化学的な影響および/または重力により、大面積で変形もしくは湾曲するという特性を有している。基板は、そのような場合には、平坦性からの著しい大域的な偏差を有している。典型的には、例えば上方の基板ホルダに周辺でのみ固定された基板の凸状に連続した形状である。このような重力作用は、基板が全面的に支持されると同時に多くの場合、可逆的となる。研削および研磨プロセスは、基板を持続的にかつ大面積で湾曲させることができる。これらの湾曲は、凸状または凹状であってもよく、あるいは場所の関数として変化し得る。基板のコーティングおよび/またはエッチングも、同様に、大域的な歪みにつながる可能性がある。コーティングの場合、大域的な歪みは、多くの場合、コーティングと基板との間の熱膨張係数の差分に起因する。コーティングは、多くの場合、比較的高い温度で実施され、コーティングされた基板は、コーティングの後で冷却されるため、熱応力の構築により基板の大域的な歪みが起こる。
【0029】
大域的な歪みは、局所的な歪みの補償によって補償することが可能である。特に、少なくとも1つの基板表面のグリッドに沿った局所的な歪みの複数の補償を実施することにより、大域的な歪みを補償することができる。グリッドにおける補償の種類および/または強さ、特に強度は、場所の関数として変化し、そのため、大域的な歪みが補償される。
【0030】
歪みの原点は、歪みが基板の特性によって、または周囲によって生成されるかどうかに関して区別することもできる。例えば、コーティング、研削または研磨プロセス、基板内で生成された構成部材、場所の関数として変化する基板上の構成部材の密度などが歪みにつながる可能性がある。これらの歪みは内在的と称される。これらの歪みは、最初に基板ホルダへの固定によって初めて可能性もあり、場合によっては可逆的であり、すなわち、通常は、基板ホルダからの取り出しの際に消滅する。これらの歪みは、外在的と称される。ただし、基板は、多くの場合、基板ホルダ上で処理されるので、基板ホルダによって引き起こされる歪みの補償にも同様に大きな意味がある。本発明によれば、この種の歪みも補償することができる。外在的な歪みは、例えば、特殊な基板ホルダトポグラフィによって引き起こされる。基板ホルダ表面を完全に研削および研磨することはできず、常にリプルを有している。
【0031】
そのような基板ホルダが、例えばボンディング設備において使用される場合には、ボンディングプロセスのために設けられた基板表面をボンディング結果が最適となるように適合化するために、基板を基板ホルダ上に固定し、その後で本発明による歪みを補償する方法を実施することは利点となるであろう。それどころか、基板ホルダに基板を固定する前に、基板ホルダにおける基板の固定時に所望の基板表面が存在するように歪みを補償することも考えられる。
【0032】
本発明は、上記の全ての種類の歪みを補償するために適している。
【0033】
局所的なアクションは、以下のもの:
-物理的および/または化学的な反応、ならびに/あるいは
-機械的および/または熱的な応力、ならびに/あるいは
-基板の、特に基板の縁部における変形および/または湾曲、ならびに/あるいは
-少なくとも1つの基板表面における材料除去、
を含むもしくは生成する。
【0034】
歪みは、特に基板能動表面上に存在する。基板能動表面は、特に、例えばLED、MEMSなどの構造体を有する。
【0035】
1つまたは複数の歪みを補償することができる。これらは、同時にまたは相前後して補償することが可能である。
【0036】
少なくとも1つの局所的なアクションは、基板能動表面上に、かつ/または基板能動表面とは反対側の基板受動表面上に生成することができる。同時にもしくは相前後して生成される複数の局所的なアクションが生成可能である。
【0037】
複数の局所的なアクションが生成される場合、これらのアクションは、基板能動表面上に、かつ/または基板受動表面上に生成可能である。
【0038】
本発明によれば、特に好適には、持続的で、特に塑性的な変化を基板内で、好適には所期のように局所的に導入することが可能である。これにより、本発明によれば、特に、基板を局所的にかつ/または大域的に、その表面トポロジーが目標状態に適合化されるように変形させることが可能である。
【0039】
好適な実施形態では、局所的なアクションは、電磁ビームによって、好適にはレーザーによって生成されることが想定されている。電磁ビームもしくはレーザーは、必要なパラメータを有しており、これらのパラメータにより、歪みの比較的近傍の周辺において物理的および/または化学的な反応をトリガーすることができ、それにより、歪みを補償することができる。
【0040】
この場合、電磁ビームもしくはレーザーが正確に歪みの点に作用しなければならないことは重要ではない。レーザーは、歪みが補償されるように、歪みのより近傍の周囲に作用しなければならない。
【0041】
別の好適な一実施形態では、パルス持続時間を設定することができるレーザーが使用される。パルス持続時間を設定することができないのであれば、可及的に短いパルス持続時間を有するレーザー、好適にはピコ秒範囲またはフェムト秒範囲でレーザーが使用される。短いパルス持続時間は、純粋に局所的な加熱を引き起こし、これは、歪みの補償に必要である上記の物理的および/または化学的な反応を引き起こすために必要であろう。
【0042】
パルス持続時間は、10-5sよりも短く、好適には10-7sよりも短く、さらに好適には10-9sよりも短く、最も好適には10-12sよりも短く、極めて好適には10-15sよりも短い。
【0043】
レーザー出力は、1ワットよりも大きく、好適には10ワットよりも大きく、さらに好適には100ワットよりも大きく、最も好適には1000ワットよりも大きく、極めて好適には10000ワットよりも大きい。
【0044】
別の好適な実施形態では、そのレーザービーム形態が、特に光学素子によって成形可能であるレーザーが使用される。これにより、好適には、円形のレーザービームと長手方向のレーザービームとの間で交換することが可能になる。縦方向に成形されたレーザービームは、その水平方向の光子密度分布がその垂直方向の光子密度分布とは異なっているため、結果として異方性効果をもたらす。
【0045】
別の好適な実施形態では、レーザーは、少なくとも1つのSLM(英語表記:spatial light module)、特に少なくとも1つのDMD(英語表記:digital micromirror device)を有するマスクレス露光装置において使用される。走査と、基板表面の局所的に分解された衝撃とにより、歪みの補償を特に良好に制御することができる。
【0046】
別の好適な一実施形態では、基板表面の監視が実施され、ここで、補償は、その場で観察される。
【0047】
好適には、レーザーは、基板表面を監視するために使用することができる計測装置の光学系に入力結合される。これにより、歪みの補償を現場で観察する特に効率的な手段が得られる。
【0048】
以下の局所的なアクション、特に、歪みの補償につながる可能性のある反応もしくは物理的および/または化学的な作用が考えられる。
【0049】
例えば、レーザービームの作用が、局所的な溶融と、それに続く例えばレーザーが作用する局所的な周辺の凝固とにつながることが考えられる。この溶融および凝固により、内部応力を局所的に基板内で構築するもしくは減少させることができる。
【0050】
また、溶融および凝固が持続的な体積変化につながることも考えられる。質量保持を前提とするなら、材料は持続的に維持されなければならず、したがって密度が同じであれば体積も維持されなければならない。ただし、溶融過程の際には、原子は溶融結合から離れ、レーザービームの莫大な加熱に基づき、直ちに昇華して周囲に放出される。これにより、質量は減少し、密度が同じままであれば体積も減少する。体積の減少は、特に、周囲が圧縮内部応力下にある場合、周囲がレーザーの領域に膨張しかねないことにつながる。
【0051】
さらなる手段は、凝固過程の際に密度が変化することにある。密度の変化は、溶解成分の除去、再吸収、すなわち成分の溶解、または気泡もしくは細孔の形成により行うことができる。気泡もしくは細孔の形成は、多くの場合、望ましくないが、レーザー作用の側面が後続の方法ステップで研削または研磨されれば、許容できる場合がある。
【0052】
電磁ビームもしくはレーザービームの作用が固相転移につながることも考えられる。この固相転移は、好適には非可逆的であるべきであろう。基板は、この場合、レーザービームの熱作用により、周囲の冷却後でも安定的に維持される安定相へ変換するために、少なくとも1つの準安定相を有する。例えば、少なくとも1つの基板表面の非晶質化が考えられ、次いで、この基板表面は、レーザービームの作用後に再結晶化される。
【0053】
相転移により、より近傍の周囲を特に弾性的に変形させる引張内部応力または圧縮内部応力が生じることも考えられる。
【0054】
さらなる手段は、レーザービームの作用およびこれに伴う加熱により、材料の塑性変形につながる熱応力および/または材料の膨張が生成されることにある。材料は、この場合、好適には金属である。例えば、ハイブリッド基板表面における金属TSV表面が、歪みの補償につながる塑性変形を生成するために、所期のように衝撃を受けることが考えられよう。
【0055】
別の例示的な実施形態では、局所的なアクションは、基板表面上に被着されるコーティングによって生成される。
【0056】
好適には、基板表面、特に受動的な基板表面がコーティングされる。好適には、コーティングに内部応力および/または熱応力が組み込まれる。
【0057】
特に、コーティングは、金属、金属合金、酸化膜、またはセラミックである。内部応力は、原子スケールの粒子、特にイオンを用いたコーティングの衝突によって設定することができ、あまり好ましくないがナノメートルもしくはマイクロメートルスケールの粗粒粒子によって設定することができる。
【0058】
そのように設定された内部応力は、主に圧縮内部応力である。熱応力は、既知の熱膨張係数を有する材料を所期のように堆積させることによって設定することができる。基板の熱膨張係数がコーティングの熱膨張係数とは異なっている場合、コーティング温度から周囲温度への冷却時に、コーティング内で引張内部応力かまたは圧縮内部応力が生じる。
【0059】
好適には、コーティングは構造化することができる。構造化により、つまり材料の除去により、コーティング内の内部応力が局所的に減少させられるもしくは構築される。これにより、コーティングはその下方に位置する基板ひいては歪みにも影響を与える。特に構造化は、コーティングが局所的に厚さにおいて部分的にしか除去されないように行うことができる。レリーフの設定により、コーティング内の応力状態、ひいては基板内の応力状態も変化し、基板内の歪みを補償することができる。
【0060】
好適な実施形態では、コーティングは酸化膜であり、特に好適な実施形態では自然酸化膜である。好適には、周囲と接触する多くの基板は、常に数ナノメートルの厚みの自然酸化膜でコーティングされている。これにより、コストのかかるコーティングの製造が省かれる。
【0061】
コーティングは、特に、以下の材料もしくは材料クラス:
-酸化膜、特に
-二酸化ケイ素(SiO2)、好適には
-天然二酸化ケイ素(SiO2)
-セラミック、特に
-窒化ケイ素(Si3N4)
-半導体、特に
-Ge,Si,α-Sn,B,Se,Te
-化合物半導体、
-GaAs,GaNInP,InxGal-xN,InSb,InAs,GaSb,AlN,InN,GaP,BeTe,ZnO,CuInGaSe2,ZnS,ZnSe,ZnTe,CdS,CdSe,CdTe,Hg(l-x)Cd(x)Te,BeSe,HgS,AlxGal-xAs,GaS,GaSe,GaTe,InS,InSe,InTe,CuInSe2,CuInS2,CuInGaS2,SiC,SiGe
-金属、特に
-Cu,Ag,Au,Al,Fe,Ni,Co,Pt,W,Cr,Pb,Ti,Ta,Zn,Sn
-金属合金
-ポリマー、特に
-ゾルゲルからなるポリマー、特に
-ポリヘドラルオリゴシルセスキオキサン(POSS)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、ポリ(オルガノ)シロキサン(シリコーン)、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、
のうちの少なくとも1つから成る。
【0062】
好適には、酸化膜の局所的な所期の除去もしくは構造化により、コーティングの、ひいてはその下方に位置する基板の応力状態が変化する。この変化は、歪みの補償も引き起こす。自然酸化膜が過度に薄いならば、熱酸化膜が生成される可能性がある。特に好適には、熱酸化膜は、基板能動表面上で能動構成部材の製造前に既に生成される。したがって、能動構成部材が高い熱負荷に曝されることはない。特に好適な手順では、熱酸化膜を有する基板が導入され、基板能動表面が裏面薄肉化によって熱酸化膜が除去され、それによって、熱酸化膜は、基板受動表面にのみ存在し続ける。
【0063】
別の好適な一実施形態では、コーティングはポリマーである。内部応力は、ここでは主にポリマーの硬化によって引き起こされ、この硬化は、特にポリマーの架橋につながる。ポリマーの構造化は、フォトリソグラフィおよび/またはインプリントリソグラフィによって行われる。
【0064】
本発明によれば、特に引張内部応力または圧縮内部応力(以下では、単に内部応力とも称される)を生成することができる。そのように生成された内部応力は、多くの場合、囲繞する材料の弾性変形を引き起こし、これによって、存在する歪みを補償することができる。内部応力が維持されたままであると、弾性変形ひいては歪みの補償も維持され続ける。したがって、歪みの弾性補償は、歪みを補償するためのさらなる手段、特に、持続的な塑性変形により歪みを付加的に補償するためのさらなる手段を表している。上記の内部応力は、特に、少なくとも1つの基板表面上に被着された特に構造化が可能な層によって引き起こされる。
【0065】
基本的には、本発明は、特に、後続するプロセスステップ用の基板を準備するために、特に後続するプロセスステップにおいてより良好な結果を達成することができるようにするために、既に行われたプロセスステップから結果として生じる、目標状態からの偏差を補償することに適している。
【0066】
好適には本発明は、将来的なプロセスステップの既知でかつ/または推定される不規則性を事前に補償する、特に予防するためにも使用可能である。ここで、好適な実施形態では、推定される歪みが予防される。代替的な、特に好適な実施形態では、基板は、プロセスの実施前に、本発明による方法を用いて次のように変形される、すなわち、プロセスをより均一に行うことができ、それによって、不規則な歪みが最小化され、特に十分に消去することができるように変形される。
【0067】
別の好適な実施形態によれば、少なくとも1つの局所的なアクションは、基板の変形、特に基板の縁部の変形を引き起こすことが想定されている。特に、縁部における基板は、少なくとも領域ごとに上方に向かって湾曲する。特にこのことは、基板の縁部をレーザーを用いて照射することにより引き起こすことが可能である。この基板の変形により、歪みが補償される。
【0068】
特に基板の目標状態は、基板の周辺部が僅かに上方へ湾曲しているように見ることができる。本発明によるアクションは、一方では基板表面における歪みを補償することができ、同時に基板の周辺部が僅かに上方に向かって湾曲するように実施される。これにより、後続のボンディング過程では、縁部欠陥(英語表記:edge void)の発生を好適に低減させることができ、あるいは防止することさえできる。
【0069】
特に好適な実施形態では、基板の湾曲は、縁部がボンディング接触面に関して次のような程度に凹状に湾曲するように、すなわち、ウェーハ縁部に向かうボンディング波形の自然な加速度に反作用し、ボンディング波形が特に5mmまで、好適には3mmまで、特に好適には2mmまで縁部に向けて連続的な速度で延在し、かつ/またはウェーハの接触点において曲率半径を有し、この曲率半径が、ボンディング開始点から50mm後に存在するウェーハの接触点における曲率半径から最大で+/-30%または好適には+/-20%だけ偏差するような程度に凹状に湾曲するように設定される。
【0070】
代替的な実施形態では、2つのウェーハのうちの少なくとも一方の縁部は、ボンディング接触面に関して次のような程度に凸状に湾曲される、すなわち、後続のボンディング過程の際に、特にウェーハ間の空間において低下する雰囲気圧に起因して頻繁に観察される縁部領域のウェーハの比較的僅かな歪みが、ボンディング波形に沿ったウェーハの接触点の直前で、本発明による方法を用いた補償によって予防されるような程度に凸状に湾曲される。
【0071】
別の例示的な実施形態では、局所的なアクションは、基板の材料の除去によって生成される。
【0072】
特に、基板表面のうちの少なくとも1つにおいて、基板の一部が除去される。この除去は、ソーイング、レーザー、イオンもしくは原子衝撃により、あるいは材料除去のあらゆる別の適切な種類により行われる。材料除去により、基板は、特に内部応力を有している場合には、材料が取り出される周囲で相応に変形する。この実施形態は、とりわけ、これが後続の方法ステップにおいて裏面薄肉化プロセスにより薄肉化されるべき場合、基板受動表面への適用に適している。
【0073】
特に、基板において、特に少なくとも1つの基板表面上で所望の目標状態が生じるように歪みが本発明によって補償された後、基板は、継続処理することができる。
【0074】
基板が、リソグラフィにより処理された基板表面を有するならば、本発明は、リソグラフィ構造体の歪みを変更するために使用することができる。これにより、後続の方法ステップが歪みのない層もしくは歪み補償された層において実施されることが保証される。
【0075】
特に好適な実施形態では、方法が実施され、ここで、基板表面の測定が行われ、その後、基板表面上の歪みの補償が行われ、それに続いて基板表面が新たに測定される。
【0076】
特に、第1の方法ステップでは、少なくとも1つの特に基板能動表面の測定が行われる。この測定は、好適には干渉計を用いて行われる。基板表面の測定は、歪みマップにつながる。この歪みマップは、目標状態からの実際状態の偏差を表している。歪みマップは、ソフトウェアまたはハードウェアによって格納される。
【0077】
任意選択的な第2の方法ステップでは、実際状態を目標状態に変換するために、すなわち全ての歪みを相応に補償するために必要な補償の計算が行われる。このステップは、本発明による補償方法が、手近なステップによって実施できるならば省くことができる。例えば、x軸に沿った歪みを補償する必要があり、本発明による補償方法のx軸の一点への適用が、必要な結果を供給することを知っている場合、正確な計算は省くことができる。
【0078】
好適には、より複雑な補償要求のために、計算は、モデルを用いて実施され、これらのモデルは、歪みに対する補償方法の作用を表している。特に、ここでは機械モデルである。代替的に、好適には、実験的に得られたデータを表すモデルも使用することができる。好適には、2つの変形形態を組み合わせることができ、もしくは組み合わせられ、機械モデルが、特に実験的に得られたデータを用いて好適には連続的に較正される。特に好適には、このモデルは少なくとも部分的に有限要素法(FEM)シミュレーションを使用する。
【0079】
第3の方法ステップでは、歪みを補償するために、少なくとも1つの本発明による補償方法が実施される。特に好適な手順では、本発明による補償方法の適用は、基板表面の測定に対して並行して行われる。閉ループ制御により、歪みのそれぞれ実施される各補償を監視し、相応に閉ループ制御することができる。補償の現場での監視により、特に迅速で、正確かつ安価な全ての歪みの補償が可能である。
【0080】
第4の方法ステップでは、少なくとも1つの、特に基板能動表面が新たに測定される。基板表面の測定は、新たな歪みマップにつながる。この歪みマップは、目標状態からの実際状態の偏差を表している。歪みマップは、ソフトウェアまたはハードウェアによって格納される。歪みマップが依然として過度に多い歪みおよび/または過度に強い歪みを示しているのであれば、基板表面の個々の位置を新たに開始することができ、第3の方法ステップが相応に繰り返される。歪みマップが最小の歪みしか有さず、特に歪みがもはや測定されない場合には、本方法を中断することができる。
【0081】
特に好適な実施形態では、本発明による補償方法によって刻印された歪みは、本方法適用前の測定および本方法適用後の測定からの差分の形成によって求められる。この情報は、本発明による補償方法の特に連続的な較正のために、フィードバックループにおいて使用することができる。したがって、好適には、後続処理された基板に対するプロセスおよび/または装置パラメータを、結果がより良好な努力目標状態に到達するように選択することができる。この連続的な較正は、好適には、この基板の品質が傾向推移の影響下にある場合、多数の基板にわたって安定した結果を可能にする。
【0082】
本発明の別の対象は、2つの基板をボンディングする方法に関し、ここで、2つの基板の少なくとも一方の歪みは、本発明による方法もしくは本発明による装置を用いて補償され、その後で、2つの基板は相互にボンディングされる。
【0083】
本発明による歪みの補償によれば、特にボンディング波形の経過に影響を与えることができる。好適にはボンディング波形は、接触点に関して対称にかつ/または同心的に伝播されるべきである。
【0084】
特に好適には、歪みは、ボンディング波形速度が縁部に向かって減少するように影響を与えられる。これにより、縁部欠陥の形成は可及的に最小化されるか、もしくは回避でさえもなされる。ボンディング過程に関与する2つの基板の少なくとも一方は、ボンディング境界面に向かって凸状に湾曲している。それゆえ、歪みは特に、僅かに凸状の湾曲がボンディング境界面に向かって生じるように補償される。
【0085】
2つの基板の少なくとも一方の基板では、歪みが好適には、基板表面がボンディング中に球状、放物線状、または楕円状の一部として表すことができるように補償される。基板表面のこの種の数学的な形態付与により、理想的なボンディング結果を達成することができ、すなわち2つの基板の相互にボンディングすべき部分領域の間の偏差が最小化される。
【0086】
第1の基板は、第2の基板にボンディングすることができる。第2の基板の歪みも同様に、本発明による方法によって補償されていることも考えられる。しかしながら、第1の基板の歪みが、2つの基板の相互にボンディングすべき領域が合同であるか、もしくは相互に最小の偏差を有するように補償されていることも考えられる。この場合、歪みの補償は、第1の基板においてしか実施する必要はない。良好なボンディング結果のための前提条件は、特に、2つの基板における相互にボンディングすべき領域の位置が非常に良好に測定されていることである。
【0087】
本発明は、特に、電気的領域と誘電的領域とを有する2つのハイブリッド基板の基板表面の歪みを補償するのに適している。ハイブリッド基板の金属領域は、TSV(英語表記:through silicon vias)の表面であり、それらの正確な位置決めは、2つの基板間の無傷な電気的接続を保証するためにもボンディング過程の前後で保証される必要がある。特に、国際公開第2012079786号に記載されているような歪みマップが含まれる。
【0088】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、好適な実施例の以下の説明から、ならびに図面に基づいて明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1a】目標状態における基板の平面図である。
図1b】実際状態における基板の平面図である。
図1c】補償された歪みを有する基板の平面図である。
図2】本発明による複数の補償方法を有する側面図である。
図3】大域的な歪みを有する基板の側面図である。
図4】大域的な歪みなしの基板の側面図である。
【0090】
図中、同一の構成部材または同一の機能を備えた構成部材には、同じ符号が付されている。
【0091】
図1aは、目標状態における非常に簡素化された基板1の平面図を示す。基板1は、その基板能動表面1a上に5つの構造体2を有する。これらの構造体2は、MEMS、LED、またはチップなどの構成部材であり得る。構造体2は、リソグラフィで生成された構造体であることも考えられる。見易くする理由から、5つの構造体2のみが示され、これらの構造体2の各々は、単純な正方形によって表されている。構造体2の数、形態、配向は、一般に任意であってもよい。図1aは、目標状態、すなわち基板1に関する構造体2の最適な配置および配向を表す。図1aでは、右方の構造体2についてX軸およびY軸を有する座標系が示されている。これらの2つの軸は、右方の構造体2のための平面を拡張している。
【0092】
図1bは、実際状態における非常に簡素化された基板1の平面図ならびに右下方隅部における構造体2’の拡大図を示す。基板能動表面1aおよび/または基板受動表面1pの製造または影響下における欠陥により、いくつかの、一般に全ての構造体2,2’は、その目標位置からの偏差4および配向に影響を受ける可能性がある。この偏差4は、図1bでは右方の構造体2’に基づいて示される。この構造体2’は、x軸およびy軸に沿ってシフトされている。理想位置に対する僅かな回転も考えられるであろう。見易くする理由から、図中でのそれらに関しては省かれている。目標位置からの偏差4は、歪みと称される。
【0093】
図1cは、本発明による補償方法、このケースではレーザー3,3’の作用が、歪み4の補償7につながる非常に簡素化された基板1の平面図を示す。図示されているのは、2つのレーザー点3,3’である。レーザー点3は、細長い形態を有し、垂直方向に配向されており、レーザー点3’は、円形の形態を有している。これらのレーザー点3,3’は、それぞれ対応する影響領域6,6’を生成し、これらの影響領域6,6’では、歪み4の補償7につながる物理的および/または化学的な反応が行われる。これら2つのレーザー点3,3’では、複数のレーザー点形態が可能であることも説明されるべきである。
【0094】
図1a~図1cでは、本発明による補償方法が、基板能動表面1aにおいて実施される。全ての補償方法は、基板能動表面1aとは反対側の基板受動表面1p上で実施することも可能である。
【0095】
図2は、基板1の側面図を示す。この基板1は、その基板能動表面1aに複数の構造体2を有している。このケースでは、例えば、基板1内に生成されたマイクロチップであり得よう。一般に、基板は、再び異なる位置において歪みを有する。このような歪みは、図2には明示的に示されていない。本発明による複数の例示的な補償方法は、拡大図(A~D)に基づいて示される。
【0096】
2つの拡大図Aは、それぞれ、電磁波、特にレーザーおよび/または粒子、特にイオンを用いてエネルギーを導入することによる歪み4の補償7を表している。基板1では、それぞれ1つの影響領域6が生じ、この影響領域6において、物理的および/または化学的な反応が行われ、この反応は、特に不可逆的であり、そのため、それぞれ歪み4の補償7に寄与し得る。拡大図Aは、この種類の補償7が、好適には2つの基板表面1a,1pにおいて実施可能であることを描写するために、基板能動表面1aにおいて、ならびに基板受動表面1pにおいて示されている。
【0097】
拡大図Bは、電磁波、特にレーザーおよび/または粒子、特にイオンを用いて、基板1上に存在するコーティング5内にエネルギーを導入することによる歪み4の補償7を表している。コーティング5は、好適には、基板受動表面1pに存在している。なぜなら、基板能動表面1aは、好適にはコーティングされずに継続処理されるからである。
【0098】
コーティング5は、影響領域6において、このコーティング5内に引張内部応力または圧縮内部応力が構築されるように変化する。これらの内部応力も、別の補償方法と同じ物理的および/または化学的な反応によって生成することができる。例えば、準安定相が、準安定相よりも大きな体積を有する安定相に変換されることが考えられよう。このケースでは、圧縮内部応力が構築される。安定相が、初期相よりも小さい体積を有するならば、引張内部応力が構築される。圧力特性の構築につながるイオン、原子、または分子の注入が考えられる。昇華および/または溶融による材料除去が考えられる。熱の供給により、化合物の個々の化学成分を除去することが考えられる。コーティング5は、例えば熱の供給によって気化し、特に水、酸素、または窒素化合物を失うことがあり得よう。好適には、コーティングは、酸化膜であり、最も好適には自然酸化膜である。
【0099】
拡大図Cには、コーティング5の完全な除去による、かつ/または基板1の部分的な除去にもよる歪み4の補償7が示されている。ただし、基板1の部分的な除去は、基板能動表面1aにおいても実施することができるが、そこでは利点が少ない。なぜなら、これにより構造体2が損傷および/または汚染しかねないからである。さらに、基板受動表面1pにおける基板1の部分的な除去は、後続の方法ステップにおいて、裏面薄肉化プロセスにより除去することができる。
【0100】
拡大図Dには、コーティング5の構造化による歪み4の補償7が記載されている。この目的のために、コーティング5は、リソグラフィ法により構造化される。この構造化は、好適にはインプリントリソグラフィを用いて行われる。この場合、コーティングの材料は、好適にはポリマーである。マスクレスフォトリソグラフィを使用することも考えられる。マスクレスフォトリソグラフィでは、少なくとも1つのSLM、特にDMDを備えた装置が使用される。この構造化により、その下方に位置する基板に対するコーティング5の内部応力の作用が変化し、それによって、歪み4の補償7が可能になる。
【0101】
前述の全ての補償方法のうち、レーザーにより基板1に直接影響を与えることは、最も効率的な種類である。というのも、コーティング5の堆積を完全に省略することができるからである。コーティング5の使用は、コーティング5が自然原理、特に雰囲気によって自然酸化膜の場合のように生じると有利である。
【0102】
上述した実施形態は、単に本発明による考察の具現化に用いられるだけであり、本発明の対象をいかなる方式でも限定するものではない。
【0103】
図3は、大域的な歪みを有する基板1の側面図を示す。大域的な歪みは、基板1全体にわたって場所に依存する歪みである。本発明による方法、特にレーザーを、場所に依存して所期のように適用することにより、アクションを影響領域6(図4参照)において生成することができ、これは結果として所望の補償をもたらす。次いで、これらの補償は、所望の結果に、例えば歪みのない基板1につながる(図4参照)。
【0104】
図4は、本発明による方法の使用が示され、ここでは、縁部における変形を生成するために、アクションが影響領域6において所期のように生成され、それにより、基板1は縁部において上方に向かって湾曲している。この湾曲は、図面では見易くする理由から誇張して示されている。
【符号の説明】
【0105】
1 基板
1a 基板能動表面
1p 基板受動表面
2,2’ 構造体
3,3’ レーザー
4 歪み
5 コーティング
6 影響領域
7 補償
A,B,C,D 拡大図
x,y 軸
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
【国際調査報告】